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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】自動車工業用の銅腐食抑制剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 149/02 20060101AFI20231228BHJP
   C10M 149/06 20060101ALI20231228BHJP
   C10M 149/10 20060101ALI20231228BHJP
   C10M 149/04 20060101ALI20231228BHJP
   C23F 11/00 20060101ALI20231228BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20231228BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20231228BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20231228BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20231228BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20231228BHJP
   C10N 40/06 20060101ALN20231228BHJP
【FI】
C10M149/02 ZHV
C10M149/06
C10M149/10
C10M149/04
C23F11/00 B
C10N30:00 Z
C10N30:02
C10N30:00 A
C10N40:04
C10N40:08
C10N40:25
C10N40:06
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022127933
(22)【出願日】2022-08-10
【審査請求日】2023-04-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ドミトリー シャフヴォロストフ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヴィーバー
(72)【発明者】
【氏名】ローラント ヴィルケンス
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン カール マイアー
(72)【発明者】
【氏名】ボリス アイゼンベアク
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-008540(JP,A)
【文献】特表2013-537572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M
C10N
CAplus/REGISTRY(STN)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
130~240℃の温度範囲内の銅腐食を防止または抑制するための組成物であって、以下:
(A)1種以上の基油、および
(B)モノマー組成物におけるモノマーの全重量を基準として、以下:
(a)N-3-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N-ビニルピロリドン、ジメチルアミノエチルメタクリレートまたはそれらの混合物からなる群から選択される、1種以上の窒素含有エチレン性不飽和モノマー1~35重量%、
(b)線状、分岐状および環状のC~C40アルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される、1種以上のモノマー40~99重量%、および
(c)500~10000g/molの数平均分子量を有する1種以上のポリブタジエン系マクロモノマー0~45重量%、
からなるモノマー組成物のラジカル重合により得ることができる、1種以上のポリアルキル(メタ)アクリレート
を含む、前記組成物。
【請求項2】
前記モノマー組成物が、前記モノマー組成物におけるモノマーの全重量を基準として、以下:
(a)1種以上の窒素含有エチレン性不飽和モノマー1.5~30重量%、
(b)線状、分岐状および環状のC~C40アルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される、1種以上のモノマー45~98重量%、および
(c)1種以上のポリブタジエン系マクロモノマー0~40重量%
からなる、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
130~240℃の温度範囲内の銅腐食を防止または抑制するための組成物であって、以下:
(A)1種以上の基油、および
(B)モノマー組成物におけるモノマーの全重量を基準として、以下:
(a)N-3-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N-ビニルピロリドン、ジメチルアミノエチルメタクリレートまたはそれらの混合物からなる群から選択される、1種以上の窒素含有エチレン性不飽和モノマー1~35重量%、
(b)線状、分岐状および環状のC ~C 40 アルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される、1種以上のモノマー40~99重量%、
(c)500~10000g/molの数平均分子量を有する1種以上のポリブタジエン系マクロモノマー0~45重量%、および
(d)スチレンまたは炭素原子8~17個を有するスチレン誘導体0~20重量
からなるモノマー組成物のラジカル重合により得ることができる、1種以上のポリアルキル(メタ)アクリレート
を含む、前記組成物。
【請求項4】
前記の1種以上のポリアルキル(メタ)アクリレートが、5000~300000g/molの測定される重量平均分子量を有する、請求項に記載の組成物。
【請求項5】
前記の1種以上のポリブタジエン系マクロモノマー(c)が、1種以上の(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリレートと、1000~6000g/molの数平均分子量を有する1種以上のヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとのエステルである、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記の1種以上のポリアルキル(メタ)アクリレート(B)の含有率が、前記組成物の全重量を基準として、20~99.5重量%である、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
前記の1種以上のポリアルキル(メタ)アクリレート(B)の含有率が、前記組成物の全重量を基準として、0.1~20重量%である、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
潤滑剤、誘電流体、冷却剤流体または燃料への添加剤としての、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
潤滑剤、誘電流体、冷却剤流体または燃料としての、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
130~240℃の温度範囲内で、銅からなるか、または銅を含有する少なくとも1つの金属部品の銅腐食を抑制または低減させる方法であって、請求項に定義された組成物を使用する、前記方法。
【請求項11】
前記金属部品が、車両のパワートレインの部品である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記銅腐食が、ASTM D130銅腐食試験に従って測定される、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅からなる金属部品または銅を含有する銅含有金属部品の銅腐食を抑制または低減させるための、少なくとも1種の基油と、少なくとも1種の窒素官能化ポリアルキル(メタ)アクリレートとを含有する組成物、および自動車工業、特にE-モビリティ市場における銅腐食を抑制または低減させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、優れた粘度指数(VI)改善特性と、せん断安定化特性と、基油への溶解度とを有する粘度指数向上剤(VII)または流動点降下剤(PPD)として広く使用されている。それに応じて、ポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーを含有する、潤滑剤、誘電流体、冷却剤、燃料等は、優れた粘度指数およびせん断安定性を示し、ひいては燃料を節約することが知られている。それらは長い実用寿命も有する。
【0003】
それにもかかわらず、さらなる改善への根強い需要が常にある。殊に、電気自動車およびハイブリッド車の成長市場では、機械装置および電気装置において使用されうる流体の優れたVIおよびせん断抵抗を達成できるだけではなく、その金属部品の腐食も防止できる添加剤が望ましい。
【0004】
特に、銅を含有する金属または合金の腐食抑制、すなわち銅腐食抑制への需要は、殊に、銅を含有する(イエローメタル)金属部品または銅からなる金属部品が流体と高温で直接接触するE-モビリティ分野において、増加している。これらの流体は、例えば、潤滑剤、誘電流体、冷却剤、燃料またはギヤおよびアクスルフルード、電気自動車変速機油、バッテリーまたは他の電気装備システム用の流体である。現在のところ、車両に見出される電気装備、例えば電池、電動機、変圧器、コンデンサ、液体充填式伝送線、液体充填式電力ケーブル、コンピュータおよびパワーエレクトロニクスにおける温度は、使用により急速に上昇するかもしれず、かつその装備材料に挑戦を挑む。上記の流体は、イエローメタルと接触する場合があるので、高温、例えば130℃よりも高い温度での前記金属の保護が必要とされる。
【0005】
米国特許第4012408号明細書(US4012408A1)には、ASTM D130に従うが、しかし120℃の標準温度で3時間の銅板腐食試験により測定される銅腐食抑制が優れた潤滑油が開示されている。米国特許第4012408号明細書によれば、ジチオチアゾール類がこのための添加剤として使用される。
【0006】
同様の方法において、国際公開第2015/171364号(WO2015/171364A1)には、ASTM D130に従って160℃で168hの、N-ヒドロカルビル置換アミノエステルと置換チアジアゾールとの混合物を用いるギヤおよびドライブライン装置における潤滑剤配合物中の銅腐食保護が開示されている。
【0007】
米国特許出願公開第2018/0201863号明細書(US 2018/0201863)には一般に腐食を防止するための、エチレン性不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸およびα-オレフィンからなる複合コポリマーが記載されている。Cu腐食は、前記明細書中に腐食の一例として挙げられているが、しかし米国特許出願公開第2018/0201863号明細書は、130℃よりも高い温度での適用を含まない試験で試験される、鋼腐食に焦点を当てている。前記文献は、殊に、温度上昇および実際の使用に必要とされる寿命について記載されていない。
【0008】
Journal of Applied Polymer Science(B. Mueller, D. Triantafillidis, Polymeric Corrosion Inhibitors for Copper and Brass Pigments, Vol. 80, 2001, pp. 475-483)において、著者は、銅および黄銅顔料用のポリマー腐食抑制剤を論じる。一部の低分子量スチレン-マレイン酸コポリマーは、有効な腐食抑制剤であると記載されている。低い酸価が必要であるが、しかし腐食抑制に十分ではないことが挙げられている。さらに、コポリマー添加量の増加が、腐食抑制増加をもたらすことが記載されている。しかしながら、この論文によれば、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールおよび高分子量スチレン-マレイン酸コポリマーは効果がない。この研究において試験されたポリマーの最も有効な群は、アクリレートおよびスチレンモノマー単位からなるコポリマーである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第4012408号明細書
【文献】国際公開第2015/171364号
【文献】米国特許出願公開第2018/0201863号明細書
【文献】米国特許第4316973号明細書
【文献】特開昭63-175096号公報
【文献】英国特許出願公開第2270317号明細書
【文献】国際公開第96/30421号
【文献】国際公開第97/47661号
【文献】国際公開第97/18247号
【文献】国際公開第98/40415号
【文献】国際公開第99/10387号
【文献】国際公開第98/01478号
【文献】国際公開第2004/083169号
【文献】欧州特許出願公開第0776959号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0668342号明細書
【文献】国際公開第97/21788号
【文献】国際公開第00/15736号
【文献】国際公開第00/14188号
【文献】国際公開第00/14187号
【文献】国際公開第00/14183号
【文献】国際公開第00/14179号
【文献】国際公開第00/08115号
【文献】国際公開第99/41332号
【文献】欧州特許出願公開第1029029号明細書
【文献】国際公開第01/18156号
【文献】国際公開第01/57166号
【文献】国際公開第2013/189951号
【非特許文献】
【0010】
【文献】Journal of Applied Polymer Science(B. Mueller, D. Triantafillidis, Polymeric Corrosion Inhibitors for Copper and Brass Pigments, Vol. 80, 2001, pp. 475-483)
【文献】Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、第6版
【文献】J.-S. Wang, et al., J. Am. Chem. Soc, vol. 117, p. 5614-5615 (1995)、Matyjaszewski, Macromolecules, vol. 28, p. 7901-7910 (1995)
【文献】T. Mang, W. Dresel (eds.):“Lubricants and Lubrication”, Wiley-VCH, Weinheim 2001
【文献】R. M. Mortier, S. T. Orszulik (eds.):“Chemistry and Technology of Lubricants”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それに応じて、高温で、例えば130℃よりも高い温度での金属の銅腐食を抑制できる一方で、優れた粘度指数改善、溶解度、およびせん断安定性特性をなお有する、自動車工業、特にE-モビリティ市場における流体、例えば潤滑剤、誘電流体、冷却剤および燃料用の新規な添加剤を開発する必要性が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
窒素官能化ポリアルキル(メタ)アクリレート(PAMA)コポリマーまたはポリブタジエン系マクロモノマーをべースとするポリアルキル(メタ)アクリレートが、優れた銅腐食抑制を提供し、ひいては機械装置または電気装置、例えば、自動車工業における、殊に、成長するE-モビリティ市場用の、または車両における電気装備、例えば電池、電動機、電気自動車変速機、変圧器、コンデンサ、液体充填式伝送線、液体充填式電力ケーブル、コンピュータおよびパワーエレクトロニクスにおいて使用されうる潤滑剤、誘電流体、冷却剤または燃料における銅腐食抑制剤(イエローメタル不動態化剤)として有用であることが驚くべきことに見出された。
【0013】
より具体的には、本発明の発明者は、少なくとも1種の基油と、本発明による少なくとも1種のポリマーとを含有する組成物が、機械装置または電気装置の金属部品と直接接触する流体として使用される場合に、銅腐食を著しく抑制することを見出した。
【0014】
本発明の組成物は、殊に、腐食抑制試験、例えば、ASTM D130に従う銅板試験(石油製品の銅に対する腐食性の標準試験方法は通常、100~120℃で実施される)において現時点で存在するものよりも高温で、優れた銅腐食抑制を示す。本発明の組成物は、130~240℃、好ましくは130~200℃、より好ましくは150~200℃の温度で大きな銅防食効果を示す一方で、従来技術から公知のポリマーのような多様な基油への良好な溶解度、粘度指数改善特性、およびせん断安定性改善特性を維持する。
【0015】
それに応じて、第1の態様において、本発明は、請求項1に定義されたとおり、1種以上の基油と、1種以上のポリアルキル(メタ)アクリレートとを含む組成物に関する。
【0016】
第2の態様において、本発明は、130~240℃、好ましくは130~200℃、より好ましくは150~200℃の温度範囲内で、銅からなるか、または銅を含有する金属部品の銅腐食を抑制または低減する方法に関する。
【0017】
発明の詳細な説明
以下において、本発明は詳細に説明される。
【0018】
第1の態様において、本発明は、130~240℃の温度範囲内で、好ましくは銅からなるか、または銅を含有する少なくとも1つの金属部品の、銅腐食を防止または抑制するために使用するための組成物に関するものであって、以下:
(A)1種以上の基油、および
(B)モノマー組成物におけるモノマーの全重量を基準として、以下:
(a)1種以上の窒素含有エチレン性不飽和モノマー1~35重量%、好ましくは1.5~30重量%、より好ましくは2~30重量%、
(b)線状、分岐状および環状のC~C40アルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される、1種以上のモノマー40~99重量%、好ましくは45~98重量%、および
(c)500~10000g/molのDIN 55672-1に従って測定される数平均分子量を有する、1種以上のポリブタジエン系マクロモノマー0~45重量%、好ましくは0~40重量%
を含むモノマー組成物のラジカル重合により得ることができる、1種以上のポリアルキル(メタ)アクリレート
を含む。
【0019】
好ましくは、前記の(1種以上の)窒素含有エチレン性不飽和モノマー(a)は、以下:
(a1)アミノアルキル(メタ)アクリレートおよびアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、
(a2)少なくとも1個のシアノ基またはニトリル基を有する窒素官能化(メタ)アクリル酸誘導体、およびケトンに由来する(メタ)アクリレート、
(a3)少なくとも1個のさらなるカルボニル基を有する窒素官能化(メタ)アクリレート、
(a4)窒素官能化環式(メタ)アクリレート、
(a5)窒素官能化環式ビニル化合物、
またはそれらの混合物
からなる群から選択される。
【0020】
より好ましくは、前記の(1種以上の)窒素含有エチレン性不飽和モノマー(a)は、以下:
(a1)N-(3-ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、3-ジエチルアミノペンチル(メタ)アクリレート、3-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、3-ジブチル-アミノヘキサデシル(メタ)アクリレート、
(a2)N-(メタクリロイルオキシエチル)ジイソブチルケチミン、N-(メタクリロイルオキシエチル)ジヘキサデシルケチミン、(メタ)アクリロイルアミドアセトニトリル、2-メタクリロイルオキシエチルメチルシアナミド、シアノメチル(メタ)アクリレート、
(a3)N-(メタクリロイルオキシ)-ホルムアミド、N-メタクリロイル-2-ピロリジノン、N-(2-メタクリロイルオキシエチル)-2-ピロリジノン、N-(3-メタクリロイルオキシ-プロピル)-2-ピロリジノン、N-(2-メタクリロイルオキシペンタデシル)-2-ピロリジノン、N-(3-メタクリロイルオキシヘプタデシル)-2-ピロリジノン、
(a4)2-(1-イミダゾリル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-モルホリニル)エチル(メタ)アクリレート、オキサゾリジニルエチル(メタ)アクリレートおよびN-メタクリロイルモルホリン、
(a5)2-ビニルピリジン、3-ビニルピリジン、2-メチル-5-ビニルピリジン、3-エチル-4-ビニルピリジン、2,3-ジメチル-5-ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペリジン、9-ビニルカルバゾール、3-ビニルカルバゾール、4-ビニルカルバゾール、1-ビニルイミダゾール、2-メチル-1-ビニルイミダゾール、N-ビニルピロリドン、2-ビニルピロリドン、N-ビニルピロリジン、3-ビニルピロリジン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルブチロラクタム
またはそれらの混合物
からなる群から選択される。
【0021】
よりいっそう好ましくは、前記の1種以上の窒素含有エチレン性不飽和モノマー(a)は、N-3-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N-ビニルピロリドン、ジメチルアミノエチルメタクリレートまたはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0022】
本発明に関連して、用語「1種以上の」は、「1種または(それらの)混合物の」を意味する。
【0023】
前記組成物において使用されるポリマーのさらなる詳細は、以下に提供される:
本発明のポリアルキル(メタ)アクリレート
本発明のポリアルキル(メタ)アクリレートは、モノマー組成物におけるモノマーの全重量を基準として、以下:
(a)1種以上の窒素含有エチレン性不飽和モノマー1~35重量%、好ましくは1.5~30重量%、より好ましくは2~30重量%、
(b)線状、分岐状および環状のC~C40アルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される、1種以上のモノマー40~99重量%、好ましくは45~98重量%、および
(c)500~10000g/mol、好ましくは1000~6000g/mol、より好ましくは1500~5500g/molのDIN 55672-1に従って測定される数平均分子量を有する、1種以上のポリブタジエン系マクロモノマー0~45重量%、好ましくは0~40重量%
を含むモノマー組成物のラジカル重合により得ることができる。
【0024】
本明細書において使用される用語「(1種以上の)ポリブタジエン系マクロモノマー」は、(メタ)アクリル酸のエステルとヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとのエステル交換による反応生成物、または(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとの直接エステル化による反応生成物のいずれかである、(メタ)アクリル酸のエステルをいう。本発明の(1種以上の)ポリブタジエン系マクロモノマーは、以下においてMM(Macro Monomer)と呼ばれることもある。
【0025】
本明細書において使用される用語「(メタ)アクリレート」は、1種以上のアクリル酸のエステル、1種以上のメタクリル酸のエステルまたはアクリル酸およびメタクリル酸のエステルの混合物をいう。
【0026】
本明細書において使用される用語「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸類、メタクリル酸類およびアクリル酸とメタクリル酸との混合物をいう。
【0027】
本発明によれば、前記の(1種以上の)ポリアルキル(メタ)アクリレートは、少なくとも前記モノマー(a)および前記モノマー(b)を含有するが、しかし前記モノマー(c)を含有しない組成物から得られる。このタイプのポリアルキル(メタ)アクリレートは、以下においてPAMAポリマーまたはPAMAと呼ばれることもある。
【0028】
あるいは、前記の(1種以上の)ポリアルキル(メタ)アクリレートは、少なくとも前記モノマー(a)、前記モノマー(b)および前記モノマー(c)を含有する組成物から得られる。このタイプのポリアルキル(メタ)アクリレートは、以下においてポリブタジエン含有PAMAポリマー、ポリブタジエン含有PAMA、またはポリブタジエン系マクロモノマーをベースとするポリアルキル(メタ)アクリレートと呼ばれることもある。本発明に関連してポリブタジエン含有PAMAポリマーは、骨格または主鎖とも呼ばれる第1のポリマーと、側鎖と呼ばれ、かつ前記骨格に共有結合される多数のさらなるポリマーとを含む。この場合に、前記ポリマーの骨格は、前記の(メタ)アクリル酸エステルの連結された不飽和基により形成される。前記(メタ)アクリル酸エステルのアルキル基と水素化ポリブタジエン鎖とが、前記ポリマーの側鎖を形成する。(メタ)アクリル酸の1種のエステルと1種のヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとの反応生成物または1種の(メタ)アクリル酸と1種のヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとの反応生成物は、モノマー(c)に相当し、かつ本発明においてマクロモノマーまたはポリブタジエン系マクロモノマーとも呼ばれる。
【0029】
本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートは、それらがPAMAポリマーまたはポリブタジエン含有PAMAポリマーであるかにかかわらず、5000~300000g/mol、好ましくは8,000~280000g/mol、より好ましくは10000~250000g/molの重量平均分子量(M)を有する。
【0030】
本発明によれば、前記ポリマーの重量平均分子量(M)および数平均分子量(M)は、DIN 55672-1に従ってゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、PAMAポリマーについてはポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)校正標準およびポリブタジエン含有PAMAポリマーについてはポリスチレン校正標準を用い、以下の測定条件を用いて決定される:
溶離液:0.02M 2-ジエチルアミノエチルアミンを含むテトラヒドロフラン(THF)
操作温度:35℃
カラム:このカラムセットは、1本のプレカラム(SDV 10μ、8×50mm)および4本のカラム:SDV 10Å、SDV 10Åおよび2×SDV 10Å(PSS Standards Service GmbH、マインツ、ドイツ)からなり、4本すべてのカラムが、300×8mmのサイズおよび10μmの平均粒度を有する。
流量:1mL/min
注入体積:100μL
機器:オートサンプラー、ポンプおよびカラムオーブンからなるAgilent 1100シリーズ
検出装置:Agilent 1260シリーズからの屈折率検出器。
【0031】
好ましくは、本発明によるポリマーの多分散指数(PDI)は、1.0~6.0、好ましくは1.2~4.0、より好ましくは1.5~3.5、よりいっそう好ましくは1.5~3.2の範囲内である。前記多分散指数は、重量平均分子量の、数平均分子量に対する比(M/M)として定義される。
【0032】
本発明によるポリブタジエン含有PAMAポリマーは、それらのモル分岐度(「f-分岐」)により特性決定することもできる。前記モル分岐度は、前記モノマー組成物における前記の全てのモノマーの全モル量を基準とした、マクロモノマー(モノマー(c))のmol%でのパーセンテージをいう。使用されるマクロモノマーのモル量は、前記マクロモノマーの数平均分子量Mを基準にして計算される。前記モル分岐度の計算は、本明細書で明示的に参照される国際公開第2007/003238号(WO 2007/003238 A1)に、殊にp.13および14に詳細に記載されている。
【0033】
好ましくは、前記ポリブタジエン含有PAMAポリマーは、0.1~5mol%、より好ましくは1.5~4mol%および最も好ましくは1.5~2.5mol%のモル分岐度f分岐を有する。
【0034】
以下の実験の部において、本発明のポリマーが、銅板試験について未処理の基油または技術水準の腐食抑制剤で処理された基油よりもはるかに良好なレイティングを有する試験結果で確認されたように、高温での銅腐食の抑制または低減における顕著な効果を有することが示されている。それに応じて、本発明のポリマーが、金属部品の銅腐食を防止、抑制または低減するのに有効な銅腐食抑制剤であることが示されている。
【0035】
有利に、本発明によるポリマーは、金属部品の銅腐食を効率的に抑制するだけではなく、高濃度であっても両立できる低い電気伝導度も示し、このことは、E-モビリティ用途におけるそれらの使用を極めて有益にする。
【0036】
モノマー(a)
本発明によれば、1種以上の窒素含有エチレン性不飽和モノマーは、前記モノマー組成物中にモノマー(a)として、前記モノマー組成物の全重量を基準として、1~35重量%、好ましくは1.5~30重量%、より好ましくは2~30重量%の量で含まれる。
【0037】
本明細書において使用される「窒素含有エチレン性不飽和モノマー」は、本明細書において「窒素官能化モノマー」と呼ばれることもある。
【0038】
好ましくは、本発明によるモノマー(a)は、以下:
(a1)アミノアルキル(メタ)アクリレートおよびアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、
(a2)少なくとも1個のシアノ基を有する窒素官能化(メタ)アクリル酸誘導体およびケトンに由来する(メタ)アクリレート、
(a3)少なくとも1個のさらなるカルボニル基を有する窒素官能化(メタ)アクリレート、
(a4)窒素官能化環式(メタ)アクリレート、
(a5)窒素官能化環式ビニル化合物、
またはそれらの混合物
から選択される。
【0039】
より好ましくは、前記モノマー(a1)は、N-(3-ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド(DMAPMA)、3-ジエチルアミノペンチル(メタ)アクリレート、3-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(DMAEMA)、3-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、3-ジブチル-アミノヘキサデシル(メタ)アクリレート、またはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0040】
より好ましくは、前記モノマー(a2)は、N-(メタクリロイルオキシエチル)ジイソブチルケチミン、N-(メタクリロイルオキシエチル)ジヘキサデシルケチミン、(メタ)アクリロイルアミドアセトニトリル、2-メタクリロイルオキシエチルメチルシアナミド、シアノメチル(メタ)アクリレート、またはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0041】
より好ましくは、前記モノマー(a3)は、N-(メタクリロイルオキシ)-ホルムアミド、N-メタクリロイル-2-ピロリジノン、N-(2-メタクリロイルオキシエチル)-2-ピロリジノン、N-(3-メタクリロイルオキシ-プロピル)-2-ピロリジノン、N-(2-メタクリロイルオキシペンタデシル)-2-ピロリジノン、N-(3-メタクリロイルオキシヘプタデシル)-2-ピロリジノン、またはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0042】
より好ましくは、前記モノマー(a4)は、2-(1-イミダゾリル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-モルホリニル)エチル(メタ)アクリレート、オキサゾリジニルエチル(メタ)アクリレートおよびN-メタクリロイルモルホリン、またはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0043】
好ましくは、前記モノマー(a5)は、2-ビニルピリジン、3-ビニルピリジン、2-メチル-5-ビニルピリジン、3-エチル-4-ビニルピリジン、2,3-ジメチル-5-ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペリジン、9-ビニルカルバゾール、3-ビニルカルバゾール、4-ビニルカルバゾール、1-ビニルイミダゾール、2-メチル-1-ビニルイミダゾール、N-ビニルピロリドン(NVP)、2-ビニルピロリドン、N-ビニルピロリジン、3-ビニルピロリジン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルブチロラクタム、またはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0044】
より好ましくは、本発明による窒素含有エチレン性不飽和モノマー(a)は、NVP、DMAEMA、DMAPMA、またはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0045】
モノマー(b)
本発明によれば、線状、分岐状および環状のC~C40アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC~C30アルキル(メタ)アクリレート、より好ましくはC~C20アルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される、1種以上のモノマーは、前記モノマー組成物中にモノマー(b)として、前記モノマー組成物の全重量を基準として、40~99重量%、好ましくは45~98重量%の量で含まれる。
【0046】
本明細書において使用される用語「C~C40アルキル(メタ)アクリレート」は、(メタ)アクリル酸と、炭素原子1~40個を有する線状、分岐状または環状のアルコールとのエステルをいう。前記用語は、特定の長さのアルコールとの個々の(メタ)アクリル酸エステル、および同様に異なる長さのアルコールとの(メタ)アクリル酸エステルの混合物を含む。
【0047】
同様に、本明細書において使用される用語「C~C30アルキル(メタ)アクリレート」は、(メタ)アクリル酸と、炭素原子1~30個を有する線状、分岐状または環状のアルコールとのエステルをいい、かつ本明細書において使用される用語「C~C20アルキル(メタ)アクリレート」は、(メタ)アクリル酸と、炭素原子1~20個を有する線状、分岐状または環状のアルコールとのエステルをいう。
【0048】
本発明によれば、モノマー(b)は、単独または1種のアルキル(メタ)アクリレートモノマーであってよいか、または前記モノマー(b)として使用されてよいモノマーの上記の群から選択されるアルキル(メタ)アクリレートモノマーの混合物を表してもよい。
【0049】
線状または分岐状のC~Cアルキル(メタ)アクリレートモノマーの例は、メチルメタクリレート(MMA)、メチルおよびエチルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート(BMA)およびブチルアクリレート(BA)、n-ブチルメタクリレート(BMA)、イソブチルメタクリレート(IBMA)、ヘキシルメタクリレートおよびシクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレートを含むが、しかしこれらに限定されない。
【0050】
~C30アルキル(メタ)アクリレートの例は、2-ブチルオクチル(メタ)アクリレート、2-ヘキシルオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、2-ブチルデシル(メタ)アクリレート、オクタデシルメタクリレート(ステアリルメタクリレート:SMAとも呼ばれる)、2-ヘキシルデシル(メタ)アクリレート、2-オクチルデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、5-メチルウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2-メチルドデシル(メタ)アクリレート、2-ヘキシルドデシル(メタ)アクリレート、2-オクチルドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、5-メチルトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、2-デシルテトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2-メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、2-ドデシルヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、5-イソプロピルヘプタデシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルオクタデシル(メタ)アクリレート、5-エチルオクタデシル(メタ)アクリレート、3-イソプロピルオクタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、2-デシルオクタデシル(メタ)アクリレート、2-テトラデシルオクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、セチルエイコシル(メタ)アクリレート、ステアリルエイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート、エイコシルテトラトリアコンチル(メタ)アクリレート、2-デシル-テトラデシル(メタ)アクリレート、2-デシルオクタデシル(メタ)アクリレート、2-ドデシル-1-ヘキサデシル(メタ)アクリレート、1,2-オクチル-1-ドデシル(メタ)アクリレート、2-テトラデシルオクタデシル(メタ)アクリレート、1,2-テトラデシル-オクタデシル(メタ)アクリレートおよび2-ヘキサデシル-エイコシル(メタ)アクリレート、n-テトラコシル(メタ)アクリレート、n-トリアコンチル(メタ)アクリレートおよび/またはn-ヘキサトリアコンチル(メタ)アクリレートを含むが、しかしこれらに限定されない。
【0051】
好ましくは、前記C~C40アルキル(メタ)アクリレートモノマー(b)は、線状、分岐状および環状のC~C20アルキル(メタ)アクリレートである。より好ましくは、前記モノマー(b)は、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレートとも呼ばれる)、ペンタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシルメタクリレート(ステアリルメタクリレートとも呼ばれる)、またはそれらの混合物からなるリストから選択される。
【0052】
モノマー(c)
本発明によれば、前記モノマー(c)は、500~10000g/mol、好ましくは1000~6000g/mol、より好ましくは1500~5500g/mol、よりいっそう好ましくは1800~5000g/mol、最も好ましくは4500~5000g/molの数平均分子量(M)を有するポリブタジエン系マクロモノマー、またはそれらの混合物である。
【0053】
本明細書において使用される用語「(1種以上の)ポリブタジエン系マクロモノマー」は、(メタ)アクリル酸のエステルとヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとのエステル交換による反応生成物、または(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとの直接エステル化による反応生成物のいずれかである(メタ)アクリル酸のエステルをいう。
【0054】
以下において、本発明の(1種以上の)ヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンは、MA(Macro Alcohol)と呼ばれることもあり、かつ本発明の(1種以上の)ポリブタジエン系マクロモノマーは、MM(Macro Monomer)と呼ばれることもある。
【0055】
前記モノマー組成物におけるモノマー(c)の含有率は、前記モノマー組成物の全重量を基準として、0~45重量%、好ましくは0~40重量%である。
【0056】
上記のように、前記モノマー(a)、前記モノマー(b)および前記モノマー(c)を含有する組成物から得られるポリアルキル(メタ)アクリレートは、ポリブタジエン含有PAMAと呼ばれる。
【0057】
前記マクロモノマー(c)の数平均分子量(M)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、ポリブタジエン校正標準を用い、DIN 55672-1に従って、以下の測定条件を用いて決定される:
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
操作温度:35℃
カラム:このカラムセットは、1本のプレカラム(PSS-SDV、10μ、8×50mm)、300×8mmのサイズおよび10μmの平均粒度を有する4本のPSS-SDVカラム(SDV-LXL、SDV-LinL、2本のカラムSDV 100Å(PSS Standards Service GmbH、マインツ、ドイツ))、および8×100mmのサイズを有する1本の溶剤ピーク分離カラム(Shodex社製KF-800D)からなる
流量:1mL/min
注入体積:100μL
機器:オートサンプラー、ポンプおよびカラムオーブンからなるAgilent 1100シリーズ
検出装置:Agilent 1100シリーズからの屈折率検出器。
【0058】
本明細書において使用される用語「ヒドロキシル化された水素化ポリブタジエン」は、1個以上のヒドロキシル基を含む水素化ポリブタジエンをいう。前記のヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンは、さらに、付加的な構造単位、例えばアルキレンオキシドのポリブタジエンへの付加に由来するポリエーテル基または無水マレイン酸のポリブタジエンへの付加に由来する無水マレイン酸基を含んでいてよい。これらの付加的な構造単位は、前記ポリブタジエンがヒドロキシル基で官能化される際に前記ポリブタジエン中へ導入されてよい。
【0059】
好ましいのは、モノヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンである。より好ましくは、前記のヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンは、ヒドロキシエチルまたはヒドロキシプロピルを末端基とする水素化ポリブタジエンである。特に好ましいのは、ヒドロキシプロピルを末端基とするポリブタジエンである。
【0060】
これらのモノヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンは、最初にブタジエンモノマーをアニオン重合によりポリブタジエンに変換することにより、製造することができる。引き続き、前記ポリブタジエンモノマーとアルキレンオキシド、例えばエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドとの反応により、ヒドロキシ官能化されたポリブタジエンを製造することができる。前記ポリブタジエンは、1個を超えるアルキレンオキシド単位と反応して、末端ヒドロキシル基を有するポリエーテル-ポリブタジエンブロックコポリマーを生じることもできる。前記のヒドロキシル化されたポリブタジエンは、適した遷移金属触媒の存在下で水素化することができる。
【0061】
これらのモノヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンは、末端二重結合を有する(コ)ポリマーのヒドロホウ素化により得られる生成物(例えば米国特許第4316973号明細書に記載される)、アミノアルコールとの、末端二重結合を有する(コ)ポリマーと無水マレイン酸とのエン反応により得られる無水マレイン酸-エン-アミノアルコール付加物、および末端二重結合を有する(コ)ポリマーのヒドロホルミル化、引き続き水素化により得られる生成物(例えば特開昭63-175096号公報に記載される)から選択することもできる。
【0062】
好ましくは、前記モノマー(c)の出発物質としてのヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンは、少なくとも99%の水素化レベルを有する。本発明のポリマーに関して決定することができる水素化レベルの代替的な尺度は、ヨウ素価である。前記ヨウ素価は、ポリマー100gへ付加することができるヨウ素のグラム数をいう。好ましくは、本発明のポリマーは、ポリマー100gあたりヨウ素5g以下のヨウ素価を有する。前記ヨウ素価は、ウイス法によりDIN 53241-1:1995-05に従って決定される。
【0063】
好ましいヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンは、英国特許出願公開第2270317号明細書(GB 2270317)に従って得ることができる。
【0064】
上記のように、本発明による使用のためのマクロモノマー(c)は、アルキル(メタ)アクリレートのエステル交換により製造することができる。前記アルキル(メタ)アクリレートと前記のヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンとの反応は、本発明のエステルを形成する。好ましいのは、メチル(メタ)アクリレートまたはエチル(メタ)アクリレートを反応物として使用することである。
【0065】
このエステル交換は広く知られている。例えば、このためには、不均一系触媒系、例えば水酸化リチウム/酸化カルシウム混合物(LiOH/CaO)、純粋な水酸化リチウム(LiOH)、リチウムメトキシド(LiOMe)またはナトリウムメトキシド(NaOMe)または均一系触媒系、例えばイソプロピルチタネート(Ti(OiPr))またはジオクチルスズオキシド(Sn(OCt)O)を使用することが可能である。前記反応は平衡反応である。したがって、放出される低分子量アルコールは典型的に、例えば蒸留により、除去される。
【0066】
そのうえ、前記マクロモノマー(c)は、直接エステル化手法により、例えば、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸無水物から、好ましくはp-トルエンスルホン酸またはメタンスルホン酸による酸触媒作用下で、または遊離メタクリル酸からDCC法(ジシクロヘキシルカルボジイミド)により、得ることができる。
【0067】
さらに、このヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンは、酸塩化物、例えば塩化(メタ)アクリロイルとの反応により、エステルに変換することができる。
【0068】
好ましくは、本発明のエステルの上記で詳述された製造において、重合防止剤、例えば4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシルラジカルおよび/またはヒドロキノンモノメチルエーテルが使用される。
【0069】
モノマー(d):
本発明によれば、前記モノマー組成物は、さらに、スチレンおよび炭素原子8~17個を有するスチレン誘導体、例えば側鎖中にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばα-メチルスチレンおよびα-エチルスチレン、環上にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばビニルトルエンおよびp-メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、例えばモノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレンおよびテトラブロモスチレン、ニトロスチレンからなる群から選択される、1種以上のモノマー(d)を含有していてよい。特に好ましいモノマー(d)は、スチレンである。
【0070】
本発明の好ましい実施態様において、前記モノマー組成物は、前記モノマー組成物の全重量を基準として、1種以上のモノマー(d) 0~20重量%、より好ましくは5~15重量%を含む。
【0071】
他のモノマー(e):
本発明の一態様によれば、前記モノマー組成物は、前記ポリアルキル(メタ)アクリレートの特性に不利な影響を及ぼさない限り、前記モノマー(a)、(b)、任意に(c)および任意に(d)以外に、さらなるモノマー(e)を含んでいてもよい。
【0072】
好ましくは、前記モノマー組成物におけるモノマー(a)、(b)、任意に(c)および/または任意に(d)の量は、前記モノマー組成物における前記モノマーの全量を基準として、合計して少なくとも80重量%、好ましくは合計して少なくとも90重量%、より好ましくは合計して少なくとも95重量%および最も好ましくは合計して98~100重量%になる。
【0073】
前記ポリマーの製造方法
本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートは、少なくとも以下の工程:
(i)上記に定義されたモノマー組成物を用意する工程、および
(ii)前記モノマー組成物においてラジカル重合を開始する工程
を含む方法により得られる。
【0074】
標準的なフリーラジカル重合は、とりわけ、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、第6版に詳細に記載されている。一般に、重合開始剤および任意に連鎖移動剤がこのために使用されてよい。
【0075】
原子移動ラジカル重合(ATRP)法自体は公知である。これは「リビング」フリーラジカル重合であることが推定されるが、しかしながら、前記機構の説明により限定することを意図するものではない。
【0076】
これらの方法において、遷移金属化合物は、移動可能な原子団を有する化合物と反応される。これは、前記の移動可能な原子団の、前記遷移金属化合物への移動を包含し、その結果として前記金属は酸化される。この反応は、フリーラジカルを形成し、これがエチレン基上へ付加する。しかしながら、前記原子団の、前記遷移金属化合物への移動は可逆的であり、こうして前記原子団は、前記の成長するポリマー鎖に移動して戻り、その結果として制御重合系が形成される。それに応じて、前記ポリマーの形成、その分子量および分子量分布を制御することが可能である。
【0077】
この反応様式は、例えば、J.-S. Wang, et al., J. Am. Chem. Soc, vol. 117, p. 5614-5615 (1995)、Matyjaszewski, Macromolecules, vol. 28, p. 7901-7910 (1995)に記載されている。そのうえ、国際公開第96/30421号(WO 96/30421)、国際公開第97/47661号(WO 97/47661)、国際公開第97/18247号(WO 97/18247)、国際公開第98/40415号(WO 98/40415)および国際公開第99/10387号(WO 99/10387)には、上記で説明されたATRPの変法が開示されている。そのうえ、本発明のポリマーは、例えば、RAFT重合法によって得ることもできる。この方法は、例えば、国際公開第98/01478号(WO 98/01478)および国際公開第2004/083169号(WO 2004/083169)に詳細に記載されている。
【0078】
前記重合は、標準圧力下、減圧下または高めた圧力下で実施することができる。その重合温度も決定的ではない。しかしながら、一般に、前記温度は、-20~200℃、好ましくは50~150℃およびより好ましくは80~130℃の範囲内である。
【0079】
好ましくは、工程(i)において用意されるモノマー組成物は、油、例えば従来の基油の添加により希釈されて、反応混合物を提供する。前記モノマー組成物の量、すなわち前記反応混合物の全重量に対するモノマーの全量は、好ましくは20~90重量%、より好ましくは40~80重量%、最も好ましくは50~70重量%である。
【0080】
好ましくは、前記モノマー組成物を希釈するのに使用される油は、APIグループI、II、III、IVもしくはV油、またはそれらの混合物である。好ましくは、グループIII油またはそれらの混合物が、前記モノマー組成物を希釈するのに使用される。
【0081】
好ましくは、工程(ii)は、ラジカル開始剤の添加を含む。
【0082】
適したラジカル開始剤は、例えば、アゾ開始剤、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2′-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(AMBN)および1,1-アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、およびペルオキシ化合物、例えばメチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ケトンペルオキシド、tert-ブチルペルオクトエート、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、ジクミルペルオキシド、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシドおよびビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートである。
【0083】
好ましくは、前記ラジカル開始剤は、2,2′-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、tert-ブチルペルオキシ2-エチルヘキサノエート、1,1-ジ-tert-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチルペルオキシベンゾエートおよびtert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエートからなる群から選択される。特に好ましい開始剤は、tert-ブチルペルオキシ2-エチルヘキサノエートおよび2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタンである。
【0084】
好ましくは、前記モノマー組成物の全重量に対するラジカル開始剤の全量は、0.01~7重量%、より好ましくは0.05~6重量%、最も好ましくは0.1~5.5重量%である。
【0085】
ラジカル開始剤の全量が、単一工程において添加されてよく、または前記重合反応の過程で幾つかの工程において添加されてよい。好ましくは、前記ラジカル開始剤は、幾つかの工程において添加される。例えば、前記ラジカル開始剤の一部分が、ラジカル重合を開始させるために添加されてよく、かつ前記ラジカル開始剤の第2の部分が、最初の配量の0.5~3.5時間後に添加されてもよい。
【0086】
好ましくは、工程(ii)は、連鎖移動剤の添加も含む。適した連鎖移動剤は、殊に油溶性メルカプタン、例えばn-ドデシルメルカプタンまたは2-メルカプトエタノール、またはテルペンの部類からの連鎖移動剤、例えばテルピノレンである。特に好ましいのは、n-ドデシルメルカプタンの添加である。
【0087】
好ましくは、前記ラジカル重合の全反応時間は、2~10時間、より好ましくは3~9時間である。
【0088】
前記ラジカル重合の完了後に、得られたポリマーは、好ましくは、上記の油で所望の粘度にさらに希釈される。好ましくは、前記ポリマーは、ポリマー5~60重量%、より好ましくは10~50重量%、最も好ましくは20~40重量%の濃度に希釈される。
【0089】
本発明によるポリマーの使用
本発明によれば、上記の本発明のポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、銅からなる金属または銅を含有する金属もしくは合金の銅腐食を抑制または低減させるために、130~240℃の範囲内、好ましくは130~200℃の範囲内、より好ましくは150~200℃の範囲内の高温で、電気装置または機械装置の金属部品と直接接触する流体、例えば潤滑剤、誘電流体、冷却剤または燃料またはギヤおよびアクスルフルード、電気自動車変速機油およびバッテリーまたは他の電気装備システム用の流体用の銅腐食抑制添加剤として使用することができる。
【0090】
銅腐食の抑制に加えて、本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートは、多様な基油への良好な溶解度および優れた粘度指数改善特性ならびに従来技術から公知のポリアルキル(メタ)アクリレートと同じ方法におけるせん断安定性改善特性を有する。
【0091】
それに応じて、本発明のポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、基油もしくは基油混合物中で合成されるか、または1種以上の基油と混合されるように、基油への高い溶解度および粘度指数改善効果およびせん断安定化効果を有する銅腐食抑制剤として使用することができる。
【0092】
そのうえ、本発明のポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーが、従来技術に記載されたものに比べて優れた分散能力および低い電気伝導度を有することが見出される。
【0093】
本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートを含む組成物
本発明による組成物は、以下:
(A)1種以上の基油、および
(B)1種以上の上記のポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー
を含み、かつ130~240℃の温度範囲、好ましくは30~200℃の範囲内、より好ましくは150~200℃の範囲内で、金属部品の銅腐食を抑制または低減または防止するために使用される。
【0094】
本発明によれば、用語「基油」は、基油または燃料をいう。
【0095】
前記基油中の本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートの濃度(処理率とも呼ばれる)は、前記組成物の全重量を基準として、好ましくは0.1~99.8重量%、より好ましくは0.5~99.5重量%の、幅広い範囲内にわたることができる。
【0096】
本発明によれば、前記組成物は、本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートと、希釈剤として1種以上の基油とを含む添加剤組成物であってよい。前記添加剤組成物は、例えば、銅腐食抑制剤として、潤滑剤、誘電流体、冷却剤、燃料または金属部品と直接接触する他のあらゆる炭化水素系流体に添加されてよい。
【0097】
本発明の組成物が、添加剤組成物として使用される場合には、前記の1種以上の基油(成分(A))の量は、それぞれ、前記添加剤組成物の全重量を基準として、好ましくは0.5~80重量%、より好ましくは20~80重量%であり、かつポリマー(成分(B))の量は、好ましくは20~99.5重量%、より好ましくは80~20重量%である。
【0098】
本発明の組成物は、以下に詳細に論じられるように、本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレート、1種以上の基油および任意にさらなる添加剤を含む、潤滑剤、誘電油、冷却剤または燃料であってもよい。前記潤滑剤組成物は、例えば、変速機油またはエンジン油、ギヤおよびアクスルフルード、電気自動車変速機油およびバッテリーまたは他の電気装備システム用の流体として使用されてよい。一般的に、上記の流体のうちの1種としての本発明の組成物は、上記の添加剤組成物に比べてより少ない量の本発明によるポリマーを含む。
【0099】
本発明の組成物が、そのような流体として使用される場合には、前記基油(成分(A))の量は、それぞれ、前記組成物の全重量を基準として、好ましくは80~99.9重量%、より好ましくは85~99.5重量%、最も好ましくは90~99重量%であり、かつポリマー(成分(B))の量は、好ましくは前記ポリマー0.1~20重量%、より好ましくは0.5~15重量%、最も好ましくは1~10重量%である。
【0100】
好ましくは、(A)および(B)の量は、前記組成物の全重量を基準として、合計して95~100重量%になる。
【0101】
本発明のポリアルキル(メタ)アクリレートおよび同ポリアルキル(メタ)アクリレートを含有する組成物は、駆動システムにおいて(例えば手動変速機油、ディファレンシャルギヤ油、自動変速機油およびベルト式無段変速機油、アクスルフルード配合物、デュアルクラッチ変速機油、およびハイブリッド専用変速機油)、E-ドライブを冷却および潤滑するため、作動油(例えば機械用の作動油、パワーステアリング油、緩衝器油)、エンジン油(ガソリンエンジン用およびディーゼルエンジン用)および工業用油配合物(例えば風力タービン用途の)、または冷却剤および燃料として、有利に使用することができる。
【0102】
動粘度は、ASTM D445に従って測定されてよい。好ましくは、前記動粘度は、100℃および40℃の温度で測定される。
【0103】
せん断抵抗は好ましくは、潤滑剤をJASO M347に従ってせん断にかける前およびかけた後に潤滑剤の特性を測定することにより、評価される。好ましくは、せん断は、JASO M347 - 4.5.1(1時間法)に従って超音波せん断安定性試験機を用いて測定される。
【0104】
前記組成物において使用されうる基油(A)は、天然油および合成油、水素化分解、水素化、および水素化仕上げに由来する油、未精製油、精製油、再生油またはそれらの混合物を含む。
【0105】
前記基油は、アメリカ石油協会(API)により指定されるように定義することもできる(“Appendix E-API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils”の2008年4月版、節1.3、副見出し1.3.“Base Stock Categories”参照)。
【0106】
APIは現在、潤滑剤ベースストックの5つのグループを定義する(API 1509, Annex E - API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils、2011年9月)。グループI、IIおよびIIIは、それらが含有する飽和分および硫黄の量と、それらの粘度指数とにより分類される鉱油であり、グループIVは、ポリアルファオレフィンであり、かつグループVは、例えばエステル油を含めた、その他全てのものを含む。以下の第1表は、これらのAPI分類を説明する。
【0107】
第1表
【表1】
【0108】
本発明による潤滑剤組成物を製造するのに使用される適当な基油の100℃での動粘度(KV100)は、ASTM D445に従って、好ましくは1mm/s~10mm/sの範囲内、より好ましくは1mm/s~8mm/s、よりいっそう好ましくは1mm/s~5mm/sの範囲内である。
【0109】
本発明により使用することができるさらなる基油は、グループII~IIIのフィッシャー-トロプシュ由来基油である。
フィッシャー-トロプシュ由来基油は、当該技術分野において公知である。用語「フィッシャー-トロプシュ由来」は、基油が、フィッシャー-トロプシュ法の合成生成物であるか、または合成生成物に由来することを意味する。フィッシャー-トロプシュ由来基油は、GTL(ガス液化)基油と呼ばれることもある。本発明の潤滑組成物における基油として好都合に使用することができる適したフィッシャー-トロプシュ由来基油は、例えば、欧州特許出願公開第0776959号明細書(EP0776959)、欧州特許出願公開第0668342号明細書(EP0668342)、国際公開第97/21788号(WO97/21788)、国際公開第00/15736号(WO00/15736)、国際公開第00/14188号(WO00/14188)、国際公開第00/14187号(WO00/14187)、国際公開第00/14183号(WO00/14183)、国際公開第00/14179号(WO00/14179)、国際公開第00/08115号(WO00/08115)、国際公開第99/41332号(WO99/41332)、欧州特許出願公開第1029029号明細書(EP1029029)、国際公開第01/18156号(WO01/18156)、国際公開第01/57166号(WO01/57166)および国際公開第2013/189951号(WO2013/189951)に開示されたものである。
【0110】
殊に変速機油配合物については、APIグループIIIの基油および異なるグループIII油の混合物が使用される。好ましい実施態様において、前記の1種以上の基油(A)は、APIグループIII基油またはAPIグループIII基油の混合物である。
【0111】
前記組成物は好ましくは、150を超える粘度指数、より好ましくは180を超える粘度指数を有する。前記粘度指数は、ASTM D2270に従って測定されてよい。
【0112】
添加剤
本発明による組成物は、摩擦調整剤、分散剤、消泡剤、清浄剤、酸化防止剤、流動点降下剤、耐摩耗性添加剤、極圧添加剤、銅腐食抑制剤以外の防食添加剤、染料およびそれらの混合物からなる群から選択される、さらなる添加剤を含有していてもよい。
【0113】
適当な分散剤は、ポリ(イソブチレン)誘導体、例えば、ホウ酸化PIBSIを含めたポリ(イソブチレン)スクシンイミド(PIBSI)、およびN/O官能基を有するエチレン-プロピレンオリゴマーを含む。
【0114】
分散剤(ホウ酸化分散剤を含む)は、前記潤滑剤組成物の全量を基準として、0~5重量%の量で好ましくは使用される。
【0115】
適している消泡剤は、シリコーン油、フルオロシリコーン油およびフルオロアルキルエーテルである。
【0116】
前記消泡剤は、前記組成物の全量を基準として、0.005~0.1重量%の量で好ましくは使用される。
【0117】
好ましい清浄剤は、金属含有化合物、例えばフェノキシド;サリチレート;チオホスホネート、殊にチオピロホスホネート、チオホスホネートおよびホスホネート;スルホネートおよびカーボネートを含む。金属として、これらの化合物は、殊にカルシウム、マグネシウムおよびバリウムを含有していてよい。これらの化合物は、好ましくは中性または過塩基性の形で使用されてよい。
【0118】
清浄剤は、前記組成物の全量を基準として、0.2~1重量%の量で好ましくは使用される。
【0119】
適した酸化防止剤は、例えば、フェノール系酸化防止剤およびアミン系酸化防止剤を含む。
【0120】
フェノール系酸化防止剤は、例えば、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4′-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4′-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4′-ビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2′-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2′-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4′-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4′-イソプロピリデンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2′-メチレンビス(4-メチル-6-ノニルフェノール)、2,2-イソブチリデンビス(4,6-ジメチルフェノール)、2,2′-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチル-フェノール、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-アミル-p-クレゾール、2,6-ジ-t-ブチル-4-(N,N′-ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4′-チオビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4′-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2′-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ビス(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルベンジル)スルフィド、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、n-オクチル-3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、n-オクタデシル-3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、2,2′-チオ[ジエチル-ビス-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を含む。これらのうち、殊に好ましいのは、ビスフェノール系酸化防止剤およびエステル基含有フェノール系酸化防止剤である。
【0121】
前記アミン系酸化防止剤は、例えば、モノアルキルジフェニルアミン、例えばモノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミン;ジアルキルジフェニルアミン、例えば4,4′-ジブチルジフェニルアミン、4,4′-ジペンチルジフェニルアミン、4,4′-ジヘキシルジフェニルアミン、4,4′-ジヘプチルジフェニルアミン、4,4′-ジオクチルジフェニルアミン、4,4′-ジノニルジフェニルアミン;ポリアルキルジフェニルアミン、例えばテトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミン;ナフチルアミン類、具体的にはα-ナフチルアミン、フェニル-α-ナフチルアミンおよびさらにアルキル置換フェニル-α-ナフチルアミン、例えばブチルフェニル-α-ナフチルアミン、ペンチルフェニル-α-ナフチルアミン、ヘキシルフェニル-α-ナフチルアミン、ヘプチルフェニル-α-ナフチルアミン、オクチルフェニル-α-ナフチルアミン、ノニルフェニル-α-ナフチルアミンを含む。これらのうち、ジフェニルアミン類は、その抗酸化効果の見地から、ナフチルアミン類よりも好ましい。
【0122】
適した酸化防止剤は、さらに、硫黄およびリンを含有する化合物、例えば金属ジチオホスフェート、例えば亜鉛ジチオホスフェート(ZnDTP)、「OOSトリエステル」=ジチオリン酸と、オレフィン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン、α-ピネン、ポリブテン、アクリル酸エステル、マレイン酸エステルからの活性化二重結合との反応生成物(燃焼時に無灰);有機硫黄化合物、例えばジアルキルスルフィド、ジアリールスルフィド、ポリスルフィド、変性チオール、チオフェン誘導体、キサンテート、チオグリコール、チオアルデヒド、硫黄含有カルボン酸;複素環式硫黄/窒素化合物、殊にジアルキルジメルカプトチアジアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール;亜鉛ビス(ジアルキルジチオカルバメート)およびメチレンビス(ジアルキルジチオカルバメート);有機リン化合物、例えばトリアリールおよびトリアルキルホスフィット;有機銅化合物および過塩基性カルシウムおよびマグネシウムをベースとするフェノキシドおよびサリチレートからなる群から選択されてよい。
【0123】
酸化防止剤は、前記組成物の全量を基準として、0~15重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~5重量%の量で使用される。
【0124】
前記流動点降下剤は、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、塩素化パラフィン-ナフタレン縮合物、塩素化パラフィン-フェノール縮合物、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキルスチレンを含む。好ましいのは、5000~200000g/molの重量平均分子量を有するポリアルキル(メタ)メタクリレートである。
【0125】
前記流動点降下剤の量は、前記組成物の全量を基準として、好ましくは0.1~5重量%である。
【0126】
好ましい耐摩耗添加剤および極圧添加剤は、硫黄含有化合物、例えば亜鉛ジチオホスフェート、亜鉛ジ-C3~12-アルキルジチオホスフェート(ZnDTP)、亜鉛ホスフェート、亜鉛ジチオカルバメート、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジチオホスフェート、ジスルフィド、硫化オレフィン、硫化油脂、硫化エステル、チオカーボネート、チオカルバメート、ポリスルフィド、リン含有化合物、例えばホスフィット、ホスフェート、例えばトリアルキルホスフェート、トリアリールホスフェート、例えばトリクレジルホスフェート、アミン中和モノアルキルおよびジアルキルホスフェート、エトキシル化モノアルキルおよびジアルキルホスフェート、ホスホネート、ホスフィン、それらの化合物のアミン塩または金属塩;硫黄およびリン含有耐摩耗剤、例えばチオホスフィット、チオホスフェート、チオホスホネート、それらの化合物のアミン塩または金属塩を含む。
【0127】
前記耐摩耗剤は、前記組成物の全量を基準として、0~3重量%、好ましくは0.1~1.5重量%、より好ましくは0.5~0.9重量%の量で存在していてよい。
【0128】
好ましい摩擦調整剤は、機械的に活性な化合物、例えば二硫化モリブデン、グラファイト(フッ化グラファイトを含む)、ポリ(トリフルオロエチレン)、ポリアミド、ポリイミド;吸着層を形成する化合物、例えば長鎖カルボン酸、脂肪酸エステル、エーテル、アルコール、アミン、アミド、イミド;摩擦化学反応による層を形成する化合物、例えば飽和脂肪酸、リン酸およびチオリン酸エステル、キサントゲネート、硫化脂肪酸;ポリマー様層を形成する化合物、例えばエトキシル化ジカルボン酸部分エステル、ジアルキルフタレート、メタクリレート、不飽和脂肪酸、硫化オレフィンおよび有機金属化合物、例えばモリブデン化合物(モリブデンジチオホスフェートおよびモリブデンジチオカルバメートMoDTC)およびそれらとZnDTPとの組合せ、銅含有有機化合物を含んでいてよい。
上記に列挙した化合物の一部は、複数の機能を満足しうる。例えば、ZnDTPは、主として耐摩耗性添加剤および極圧添加剤であるが、酸化防止剤および腐食抑制剤(ここでは:金属不動態化剤/不活性化剤)の特徴も有する。
【0129】
上記で詳述した添加剤は、とりわけ、T. Mang, W. Dresel (eds.):“Lubricants and Lubrication”, Wiley-VCH, Weinheim 2001;R. M. Mortier, S. T. Orszulik (eds.):“Chemistry and Technology of Lubricants”に詳細に記載されている。
【0130】
好ましくは、前記の1種以上の添加剤の全濃度は、前記組成物の全重量を基準として、20重量%まで、より好ましくは0.05重量%~15重量%、より好ましくは5重量%~15重量%である。
【0131】
好ましくは、本発明によるポリマー、前記の基油または燃料および任意に1種以上の添加剤の量は、前記組成物の全重量を基準として、合計して95~100重量%、好ましくは合計して100重量%になる。
【0132】
本発明による組成物を使用して銅腐食を抑制または低減させる方法
さらなる態様において、本発明は、130~240℃、好ましくは130~200℃、より好ましくは150~200℃の温度範囲内で銅からなるか、または銅を含有する少なくとも1つの金属部品の銅腐食を抑制または低減させる方法にも関するものであって、上記に詳細に定義された組成物が使用される。
【0133】
好ましくは、前記金属部品は、車両のパワートレインの部品、より好ましくはエンジン、電動機、バッテリー、変速機、シャフトまたはギヤである。
【0134】
この方法において、前記銅腐食は、以下に実験の部において詳細に記載されるようにASTM D130、銅腐食試験に従って測定される。
【実施例
【0135】
実験の部
本発明は、以下に、例および比較例を参照して詳細にさらに説明されるが、本発明の範囲を限定することを何ら意図するものではない。
【0136】
省略形
バイオディーゼル 1.8cStのKV100(ASTM D-445)を有するバイオディーゼル燃料(第8表参照)
AMA C-アルキルメタクリレート(メチルメタクリレート、MMA)
AMA C-アルキルメタクリレート(n-ブチルメタクリレート、BMA)
12~14 AMA 線状のC12~14-アルキルメタクリレート(ラウリルメタクリレート、LMA)
12~15 AMA 分岐状のC1215-アルキルメタクリレート(ラウリルイソペンタデシルメタクリレート、LIMA)
12~15 AMA 分岐状のC12~15-アルキルメタクリレート(ドデシルペンタデシルメタクリレート、DPMA)
16~20 AMA C16~20-アルキルメタクリレート(ステアリルメタクリレート、SMA)
CTA 連鎖移動剤
DEHF ジエチルヘキシルフマレート
DMAEMA ジメチルアミノエチルメタクリレート
DMAPMA N-3-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド
EHA エチルヘキシルアクリレート
分岐 分岐度[mol%]
GTL 4 ガス液化技術、Risella X 420、18.0cStのKV40(ISO 3104)を有するShellからのグループIII基油
KV40 ASTM D-445またはISO 3104に従って40℃で測定される動粘度
KV100 ASTM D-445またはISO 3104に従って100℃で測定される動粘度
MA-1 マクロアルコール(ヒドロキシル化された水素化ポリブタジエンM=4900g/mol)
MM-1 メタクリレート官能基を有するMA-1のマクロモノマー
数平均分子量
重量平均分子量
NB3043 Nexbase(登録商標) 3043、20cStのKV40(ASTM D-445)を有するNesteからのグループIII基油
NVP N-ビニルピロリドン
Oil I-12A 14cStのKV40(ASTM D-445)を有するGazprom Neftからの工業用グループI基油
PAO Chevron Phillips Oil Additives Synfluid PAO 4合成ポリアルファオレフィン、16.8cStのKV40(ASTM D-445)を有するグループIV基油
PDI 多分散指数、M/Mによって計算される分子量分布
Sty スチレン。
【0137】
ヒドロキシル化された水素化ポリブタジエン(マクロアルコール)MA-1の合成
前記マクロアルコールを、20~45℃でブチルリチウムを用いる1,3-ブタジエンのアニオン重合により合成した。所望の重合度に達した際に、この反応を、プロピレンオキシドを添加することにより停止させ、かつリチウムを、メタノールでの沈殿により除去した。引き続き、前記ポリマーを、水素雰囲気下で、貴金属触媒の存在下で、最大140℃および圧力200barで水素化した。前記水素化が終了した後に、前記貴金属触媒を除去し、かつ有機溶剤を減圧下で除去してマクロアルコールMA-1 100%を得た。第2表には、MA-1の特性データがまとめられている:
第2表:使用されたマクロアルコールの特性データ
【表2】
【0138】
マクロモノマーMM-1の合成
サーベル撹拌機、空気導入管、制御器を備えた熱電対、加熱マントル、3mmワイヤスパイラルの不規則充填物を有するカラム、蒸気分配器、頂部温度計、還流冷却器および冷却板を備えた2L撹拌装置中で、上記のマクロアルコール1000gを、60℃での撹拌によりメチルメタクリレート(MMA)中に溶解させる。前記溶液に添加されるのは、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル20ppmおよびヒドロキノンモノメチルエーテル200ppmである。安定化のために空気を通しながら、加熱してMMA還流にした後に(底部温度 約110℃)、MMA 約20mLを共沸乾燥のために留去する。95℃に冷却した後に、LiOCHを添加し、かつ前記混合物を加熱還流する。約1時間の反応時間後に、頂部温度は、メタノール形成のために、約64℃に低下した。形成されたメタノール/MMA共沸混合物を、約100℃の一定の頂部温度が再び確立されるまで、絶えず留去する。この温度で、前記混合物をさらに1時間反応させる。さらなる後処理のために、MMAの大半を減圧下で除去する。不溶性の触媒残留物を、圧力ろ過(Seitz T1000デプスフィルター)により除去する。第3表には、マクロモノマーMM-1の合成に使用されるMMAおよびLiOCH量がまとめられている。
【0139】
第3表:前記マクロモノマーのエステル交換のためのマクロアルコール、MMAおよび触媒量
【表3】
【0140】
ポリマーの製造
本発明によるポリブタジエン含有PAMA(P1)および一部のPAMAポリマー(P2~P5)、ならびに一部の比較ポリマー(P6~P8)を、下記に記載される製造手順に従って製造した。例P1、P2、P3、P4、P5、P6、P7およびP8については、前記モノマー成分は、合計して100%になる。開始剤および連鎖移動剤(CTA)の量は、モノマーの全量に対して与えられる。以下の第4および5表はそれぞれ、本発明のポリマーP1、P2、P3、P4、P5、および比較ポリマー、P6、P7およびP8を製造するためのモノマー組成および反応物、ならびにその最終的な特性を示す。
【0141】
上記のように、前記ポリマーの重量平均分子量および数平均分子量を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、PAMAポリマーについてポリメチルメタクリレート(PMMA)校正標準を用いて、ポリブタジエン含有PAMAポリマーについてポリスチレン(PS)校正標準を用いて測定した。双方の場合に、0.02M 2-ジエチルアミノエチルアミンを含むテトラヒドロフラン(THF)が、溶離液として使用される。
【0142】
本発明のポリマーP1~P5
実施例ポリマー1(P1):本発明によるアミンおよびマクロモノマー含有コポリマーの製造
Nexbase 3020 85g、Berylane 230SPP 85g、マクロモノマーMM-1 98g、ブチルメタクリレート107g、スチレン28g、ラウリルメタクリレート12.5g、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド8.6g、メチルメタクリレート0.5gおよびn-ドデシルメルカプタン0.1gを、2リットルの4つ口丸底フラスコ中へ装入した。この反応混合物を、C型撹拌棒を用いて撹拌し、窒素で不活性にし、115℃に加熱した。前記反応混合物が、設定値温度に達したら、tert-ブチル-2-エチルペルオキシヘキサノエート0.9gを、前記反応器中へ3時間にわたって供給した。2,2-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ブタン0.5gを、30分以内にかつ前のフィード3時間後に添加した。この反応混合物を1時間撹拌し、ついでNexbase 3020をさらに175g、前記反応器に添加し、1時間混合させた。得られたポリマーは、238000g/molの重量平均分子量(M)を有する(PS標準を用いて測定される)。
【0143】
実施例ポリマー2(P2):本発明によるアミン含有コポリマーの製造
ポリマー2を、ポリマー1と同じ方法において製造した。P2の出発物質は、第4表に示されている。重合設定値温度は、90および100℃の代わりに、この場合に80℃である。得られた最終的なポリマーは、30000g/molの重量平均分子量(M)を有する(PMMA標準を用いて測定される)。
【0144】
実施例ポリマー3(P3):本発明によるアミン含有コポリマーの製造
ポリマー3を、ポリマー1と同じ方法において製造した。P3の出発物質は、第4表に示されている。得られた最終的なポリマーは、15500g/molの重量平均分子量(M)を有する(PMMA標準を用いて測定される)。
【0145】
実施例ポリマー4(P4):本発明によるアミン含有コポリマーの製造
ポリマー4を、ポリマー1と同じ方法において製造した。P4の出発物質は、第4表に示されている。得られた最終的なポリマーは、47,000g/molの重量平均分子量(M)を有する(PMMA標準を用いて測定される)。
【0146】
実施例ポリマー5(P5):本発明によるアミン含有コポリマーの製造
ポリマー5を、ポリマー1と同じ方法において製造した。P5の出発物質は、第4表に示されている。得られた最終的なポリマーは、43000g/molの重量平均分子量(M)を有する(PMMA標準を用いて測定される)。
【0147】
比較ポリマー:
比較例ポリマー6(P6)
ポリマー6を、ポリマー1と同じ方法において製造した。P6の出発物質は、第5表に示されている。得られた最終的なポリマーは、182000g/molの重量平均分子量(M)を有する(上記のようなマクロモノマー(c)と同じGPC法を用いるが、しかしPMMA標準を用いて測定される)。
【0148】
比較例ポリマー7(P7)
ポリマー7を、ポリマー1と同じ方法において製造した。P7の出発物質は、第5表に示されている。得られた最終的なポリマーは、13900g/molの重量平均分子量(M)を有する(上記のようなマクロモノマー(c)と同じGPC法を用いるが、しかしPMMA標準を用いて測定される)。
【0149】
比較例ポリマー8(P8)
エチルヘキシルアクリレート(EHA)581.7gおよびジエチルヘキシルフマレート(DEHF)13.3g中に溶解されたDBPO 1.785g(フィード中のモノマーに対して0.3重量%)を、1-テトラデセン105.0gに窒素下で160℃で3時間、ゆっくりと供給した。もう1時間撹拌した後に、生じた無色透明なポリマーを、冷却し、さらに精製なしに使用した。得られた最終的なポリマーは、20300g/molの重量平均分子量(M)を有する(PMMA標準を用いて測定される)。
【0150】
前記例P1、P2、P3、P4、P5、P6、P7およびP8については、前記モノマー成分は、合計して100%になる。開始剤および連鎖移動剤(CTA)の量は、モノマーの全量に対して与えられる。以下の第4表および第5表は、前記ポリマーP1、P2、P3、P4、P5、P6、P7およびP8を製造するためのモノマー組成および反応物、ならびにその最終的な特性を示す。
【0151】
【表4】
【0152】
【表5】
【0153】
銅板試験:ASTM D130に従った実験の詳細
前記ポリマーP1、P2、P3、P4、P5、P6、P7およびP8を、ASTM D130に従った銅板試験(180℃で3h実施される銅板試験)を実施するために、基油中に溶解させた。
【0154】
磨きたての銅板を、通気性の栓をしたガラスビーカー中の本発明の試料油または比較用の試料油35mL中に浸漬し、以下の第7表、第9表および第10表に示される温度条件下と時間の長さにわたって加熱する。加熱期間の終了時に、前記銅板を取り出し、石油エーテルで洗浄し、かつその色および変色レベルを、ASTM銅板腐食標準に対して評価した。前記腐食の評価のためのASTM D130に従った分類は、第6表に定義されている。
【0155】
第6表:ASTM D130による銅板の分類
【表6】
ASTM D130銅板腐食標準は、前記の変色の状態に示す特徴を持つ板で作られている。
【0156】
第7表:APIグループIII基油における技術水準の腐食抑制剤および比較例P6、P7およびP8の性能
【表7】
【0157】
上記の第7表に示されるように、従来の腐食抑制剤、例えば米国特許第4012408号明細書(US4012408A1)に開示されたようなジチオチアゾール誘導体の使用は、おそらく、高温では役に立たない。なぜなら、前記銅腐食抑制剤は、高温で安定ではないからである(濃く変色となる着色)。
【0158】
窒素官能基が全くない比較ポリマーP6およびP7ならびに比較ポリマーP8は、高温で使用される場合に銅腐食抑制において全く改善をもたらさないか、それどころかより悪い結果をまねく。
【0159】
第8表:第9表の試験において使用されたバイオディーゼルの脂肪酸分布
【表8】
【0160】
第8表のバイオディーゼルは、1.8cStのKV100(ASTM D-445)を有する燃料である。
【0161】
第9表:バイオディーゼル燃料中の本発明による銅腐食抑制剤の性能
【表9】
【0162】
本発明によるポリマーP3を、バイオディーゼル燃料における腐食抑制剤添加剤として、180℃で3h実施されるASTM D130に従う銅板試験の結果と共に、試験した。第9表に示されたように、本発明のポリマーは、燃料中の銅腐食に対して大きな改善をもたらす。
【0163】
以下に示される第10表は、異なる処理率で180℃で3h実施されたASTM D130に従う銅板試験の結果と共に、基油中の腐食抑制剤添加剤としての本発明によるポリマーの性能を示す。
【0164】
第10表:基油中の腐食抑制剤添加剤としての本発明によるポリマーの性能
【表10】
【0165】
GTL 4、PAO、Oil I-12AおよびNB 3043は基油である。本発明のポリマーを全く含まない試料油から得られた結果(レイティング:2c)に比べて、本発明によるポリマーP1~P5で処理された試料油は、はるかに良好なレイティングを有する銅板試験についての試験結果で確認されたように、銅腐食の抑制または低減における顕著な効果を明らかに示す。それに応じて、本発明のポリマーが、金属部品の銅腐食を抑制または防止するのに有効な銅腐食抑制剤であることが示されている。
【要約】
【課題】銅からなるかまたは銅を含有する銅含有金属部品の銅腐食を抑制または低減させるための組成物、および自動車工業、特にE-モビリティ市場における銅腐食を抑制または低減させる方法。
【解決手段】前記組成物は、少なくとも1種の基油と、少なくとも1種の窒素官能化ポリアルキル(メタ)アクリレートとを含有する。
【選択図】なし