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特許7411743血液脳関門を通過する抗ヒトトランスフェリン受容体抗体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】血液脳関門を通過する抗ヒトトランスフェリン受容体抗体
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20231228BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231228BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20231228BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20231228BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20231228BHJP
   C07K 16/46 20060101ALN20231228BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20231228BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20231228BHJP
【FI】
A61K47/68
A61P43/00 111
A61K39/395 N
A61K9/08
C12N15/13
C12N15/55
C07K16/28
C07K16/46
C07K19/00 ZNA
C12N15/62 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022129602
(22)【出願日】2022-08-16
(62)【分割の表示】P 2020191070の分割
【原出願日】2016-06-24
(65)【公開番号】P2022163193
(43)【公開日】2022-10-25
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2015144379
(32)【優先日】2015-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000228545
【氏名又は名称】JCRファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(72)【発明者】
【氏名】薗田 啓之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 健一
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特表平05-500944(JP,A)
【文献】特表2014-514313(JP,A)
【文献】国際公開第2013/177062(WO,A1)
【文献】PLoS One. [online],2014年,Vol.9, No.4,e96340 特にFig.6のE-H,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4005765/pdf/pone.0096340.pdf,[retrieved on 2016-08-18]
【文献】J Pharmacol Exp Ther.,1996年,Vol.278, No.3,pp.1491-1498 特にアブストラクト部分
【文献】Expert Opin Drug Deliv.,2015年02月,Vol.12, No.2,pp.207-222 アブストラクト、p.208右欄
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00-47/69
A61K 39/00-39/44
C07K 14/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト化抗ヒトトランスフェリン受容体抗体と,該抗体の重鎖のN末端側にリンカーを介して結合した他の蛋白質Aのアミノ酸配列とを含んでなる,融合蛋白質を含んでなる血中に投与して中枢神経系(CNS)において薬効を発揮させるための薬剤であって,
該抗体の軽鎖の可変領域が,CDR1として配列番号16又は配列番号17のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号18若しくは配列番号19のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Lys-Val-Serを,及びCDR3として配列番号20のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1として配列番号88又は配列番号89のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号90又は配列番号91のアミノ酸配列を,及びCDR3として配列番号92又は配列番号93のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるものである,薬剤。
【請求項2】
該リンカーが,1~50個のアミノ酸残基からなるものである,請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
該リンカーが,1個のグリシン,1個のセリン,アミノ酸配列Gly-Ser,アミノ酸配列Gly-Gly-Ser,配列番号3のアミノ酸配列,配列番号4のアミノ酸配列,配列番号5のアミノ酸配列,及びこれらのアミノ酸配列が1~10個連続してなるアミノ酸配列からなる群より選ばれるアミノ酸配列を含んでなるものである,請求項1又は2に記載の薬剤。
【請求項4】
凍結乾燥品,又は水性液剤である,請求項1~3のいずれか一項に記載の薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,血中に投与して中枢神経系(CNS)において機能させるべき化合物(蛋白質,低分子化合物等)が血液脳関門を通過できるようにするために,それらの化合物と結合させて用いる抗ヒトトランスフェリン受容体抗体,その製造法及びその使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
脳室周囲器官(松果体,脳下垂体,最後野等)を含む幾つかの領域を除き脳の大半の組織に血液を供給する毛細血管は,筋肉等その他の組織に存在する毛細血管と異なり,その内皮を形成している内皮細胞同士が強固な細胞間接合によって密着し合っている。そのため,血液から脳への物質の受動輸送が妨げられ,例外はあるものの,脂溶性の高い物質,又は分子量が小さく(200~500ダルトン以下)且つ生理pH付近において電気的に中性な物質以外,毛細血管から脳へ移行しにくい。このような,脳内の毛細血管内皮を介した,血液と脳の組織液との間での物質交換を制限する機構は,血液脳関門(Blood-Brain Barrier,BBB)と呼ばれている。また,血液脳関門は,脳のみならず,脳及び脊髄を含む中枢神経系の組織液と血液との間の物質交換をも制限している。
【0003】
血液脳関門の存在により,中枢神経系の細胞の大半は,血中のホルモン,リンホカイン等の物質の濃度変動の影響を受けることなく,その生化学的な恒常性が保たれる。
【0004】
しかしながら,血液脳関門の存在は,薬剤開発の上で問題を提起する。例えば,α-L-イズロニダーゼの欠損に起因する遺伝性代謝疾患であるムコ多糖症I型(ハーラー症候群)に対しては,組換えα-L-イズロニダーゼを静脈内補充する酵素補充療法が,その治療法として行われているが,ハーラー症候群において認められる顕著な中枢神経系(CNS)の異常に対しては,酵素が血液脳関門を通過できないことから有効でない。
【0005】
中枢神経系において作用させるべきそのような蛋白質等の高分子物質に血液脳関門を通過させるための方法が,種々開発されている。例えば,神経成長因子の場合,これを内包させたリポソームを脳内毛細血管の内皮細胞の細胞膜と融合させることにより,血液脳関門を通過させる方法が試みられているが,実用化に至っていない(非特許文献1)。α-L-イズロニダーゼの場合,1回当たりに投与される酵素の量を増加させてその血中濃度を高めることにより,血液脳関門における酵素の受動輸送を高める試みが行われ,ハーラー症候群の動物モデルを用いて,この手法により中枢神経系(CNS)の異常が緩解することが示されている(非特許文献2)。
【0006】
また,血液脳関門を回避し,高分子物質を髄腔内又は脳内に直接投与する試みも行われている。例えば,ハーラー症候群(ムコ多糖症I型)の患者の髄腔内にヒトα-L-イズロニダーゼを投与する方法(特許文献1),ニーマン-ピック病の患者の脳室内にヒト酸スフィンゴミエリナーゼを投与する方法(特許文献2),ハンター症候群のモデル動物の脳室内にイズロン酸2-スルファターゼ(I2S)を投与する方法(特許文献3)が報告されている。このような手法によれば,確実に中枢神経系に薬剤を作用させることができると考えられる一方,侵襲性が極度に高いという問題がある。
【0007】
血液脳関門を通して高分子物質を脳内に到達させる方法として,脳内毛細血管の内皮細胞上に存在する膜蛋白質と親和性を持つように高分子物質を修飾する方法が種々報告されている。脳内毛細血管の内皮細胞上に存在する膜蛋白質としては,インスリン,トランスフェリン,インスリン様成長因子(IGF-I,IGF-II),LDL,レプチン等の化合物に対する受容体が挙げられる。
【0008】
例えば,神経成長因子(NGF)をインスリンとの融合蛋白質の形で合成し,インスリン受容体との結合を介してこの融合蛋白質に血液脳関門を通過させる技術が報告されている(特許文献4~6)。また,神経成長因子(NGF)を抗インスリン受容体抗体との融合蛋白質の形で合成し,インスリン受容体との結合を介してこの融合蛋白質に血液脳関門を通過させる技術が報告されている(特許文献4及び7)。また,神経成長因子(NGF)をトランスフェリンとの融合蛋白質の形で合成し,トランスフェリン受容体(TfR)との結合を介してこの融合蛋白質に血液脳関門を通過させる技術が報告されている(特許文献8)。また,神経成長因子(NGF)を抗トランスフェリン受容体抗体(抗TfR抗体)との融合蛋白質の形で合成し,TfRとの結合を介してこの融合蛋白質に血液脳関門を通過させる技術が報告されている(特許文献4及び9)。
【0009】
抗TfR抗体を用いた技術について更にみると,抗TfR抗体と結合させることにより薬剤に血液脳関門を通過させる技術において,一本鎖抗体を使用できることが報告されている(非特許文献3)。また,hTfRとの解離定数が比較的大きい抗hTfR抗体(低親和性抗hTfR抗体)が,薬剤をして血液脳関門を通過させる技術において,好適に利用できることが報告されている(特許文献10及び11,非特許文献4)。更には,hTfRとの親和性がpH依存的に変化する抗TfR抗体が,薬剤に血液脳関門を通過させるためキャリアとして使用できることが報告されている(特許文献12,非特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特表2007-504166号公報
【文献】特表2009-525963号公報
【文献】特開2012-62312号公報
【文献】米国特許5154924号公報
【文献】特開2011-144178号公報
【文献】米国特許2004/0101904号公報
【文献】特表2006-511516号公報
【文献】特開H06-228199号公報
【文献】米国特許5977307号公報
【文献】WO2012/075037
【文献】WO2013/177062
【文献】WO2012/143379
【非特許文献】
【0011】
【文献】Xie Y.,et al.,J Control Release,105,106-19(2005)
【文献】Ou L.,et al.,Mol Genet Metab.,111,116-22(2014)
【文献】Li JY.,Protein Engineering.,12,787-96(1999)
【文献】Bien-Ly N.,et al.,J Exp Med.,211,233-44(2014)
【文献】Sada H.,PLoS ONE.,9,E96340(2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記背景の下で,本発明の目的は,血中に投与して中枢神経系において機能させるべき化合物(蛋白質,低分子化合物等)が血液脳関門を通過できるようにするために,それらの化合物と結合させて用いることのできる抗TfR抗体,その製造法及び使用法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的に向けた研究において,本発明者らは,鋭意検討を重ねた結果,本明細書において詳述する抗体作製法により得た,hTfRの細胞外領域を認識する抗ヒトトランスフェリン受容体抗体(抗hTfR抗体)が,これを生体内に投与したとき効率よく血液脳関門を通過することを見出し,本発明を完成した。すなわち,本発明は以下を提供する。
【0014】
1.抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって,該抗体の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列が,以下の(1)~(14)からなる群より選ばれるものである,抗体:
(1)CDR1に配列番号6又は配列番号7のアミノ酸配列を含み,CDR2に配列番号8若しくは配列番号9のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Trp-Thr-Serを含み,且つCDR3に配列番号10のアミノ酸配列を含むものである,アミノ酸配列;
(2)CDR1に配列番号11又は配列番号12のアミノ酸配列を含み,CDR2に配列番号13若しくは配列番号14のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Tyr-Ala-Serを含み,且つCDR3に配列番号15のアミノ酸配列を含むものである,アミノ酸配列;
(3)CDR1に配列番号16又は配列番号17のアミノ酸配列を含み,CDR2に配列番号18若しくは配列番号19のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Lys-Val-Serを含み,且つCDR3に配列番号20のアミノ酸配列を含むものである,アミノ酸配列;
(4)CDR1に配列番号21又は配列番号22のアミノ酸配列を含み,CDR2に配列番号23若しくは配列番号24のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Asp-Thr-Serを含み,且つCDR3に配列番号25のアミノ酸配列を含むものである,アミノ酸配列;
(5)CDR1に配列番号26又は配列番号27のアミノ酸配列を含み,CDR2に配列番号28若しくは配列番号29のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Asp-Thr-Serを含み,且つCDR3に配列番号30のアミノ酸配列を含むものである,アミノ酸配列;
(6)CDR1に配列番号31又は配列番号32のアミノ酸配列を含み,CDR2に配列番号33若しくは配列番号34のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Ala-Ala-Serを含み,且つCDR3に配列番号35のアミノ酸配列を含むものである,アミノ酸配列;
(7)CDR1に配列番号36又は配列番号37のアミノ酸配列を含み,CDR2に配列番号38若しくは配列番号39のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Gln-Thr-Serを含み,且つCDR3に配列番号40のアミノ酸配列を含む,アミノ酸配列;
(8)CDR1に配列番号41又は配列番号42のアミノ酸配列を含み,CDR2に配列番号43若しくは配列番号44のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Gly-Thr-Serを含み,且つCDR3に配列番号45のアミノ酸配列を含むものである,アミノ酸配列;
(9)CDR1に配列番号46又は配列番号47のアミノ酸配列を含み,CDR2に配列番号48若しくは配列番号49のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Phe-Thr-Serを含み,且つCDR3に配列番号50のアミノ酸配列を含むものである,アミノ酸配列;
(10)CDR1に配列番号51又は配列番号52のアミノ酸配列を含み,CDR2に配列番号53若しくは配列番号54のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Ala-Ala-Serを含み,且つCDR3に配列番号55のアミノ酸配列を含むものである,アミノ酸配列;
(11)CDR1に配列番号56又は配列番号57のアミノ酸配列を含み,CDR2に配列番号58若しくは配列番号59のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Tyr-Ala-Serを含み,且つCDR3に配列番号60のアミノ酸配列を含むものである,アミノ酸配列;
(12)CDR1に配列番号61又は配列番号62のアミノ酸配列を含み,CDR2に配列番号63若しくは配列番号64のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Trp-Ser-Serを含み,且つCDR3に配列番号65のアミノ酸配列を含むものである,アミノ酸配列;
(13)CDR1に配列番号66又は配列番号67のアミノ酸配列を含み,CDR2に配列番号68若しくは配列番号69のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Tyr-Ala-Serを含み,且つCDR3に配列番号70のアミノ酸配列を含むものである,アミノ酸配列;
(14)CDR1に配列番号71又は配列番号72のアミノ酸配列を含み,CDR2に配列番号73若しくは配列番号74のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Asp-Thr-Serを含み,且つCDR3に配列番号75のアミノ酸配列を含むものである,アミノ酸配列;
2.上記1の抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって,該抗体の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列が,以下の(1)~(14)からなる群より選ばれるものである,抗体:
(1)CDR1に配列番号6のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号8のアミノ酸配列を,且つCDR3に配列番号10のアミノ酸配列を,それぞれ含むものである,アミノ酸配列;
(2)CDR1に配列番号11のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号13のアミノ酸配列を,且つCDR3に配列番号15のアミノ酸配列を,それぞれ含むものである,アミノ酸配列;
(3)CDR1に配列番号16のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号18のアミノ酸配列を,且つCDR3に配列番号20のアミノ酸配列を,それぞれ含むものである,アミノ酸配列;
(4)CDR1に配列番号21のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号23のアミノ酸配列を,且つCDR3に配列番号25のアミノ酸配列を,それぞれ含むものである,アミノ酸配列;
(5)CDR1に配列番号26のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号28のアミノ酸配列を,且つCDR3に配列番号30のアミノ酸配列を,それぞれ含むものである,アミノ酸配列;
(6)CDR1に配列番号31のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号33のアミノ酸配列を,且つCDR3に配列番号35のアミノ酸配列を,それぞれ含む,アミノ酸配列;
(7)CDR1に配列番号36のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号38のアミノ酸配列を,且つCDR3に配列番号40のアミノ酸配列を,それぞれ含むものである,アミノ酸配列;
(8)CDR1に配列番号41のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号43のアミノ酸配列を,且つCDR3に配列番号45のアミノ酸配列を,それぞれ含むものである,アミノ酸配列;
(9)CDR1に配列番号46のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号48のアミノ酸配列を,且つCDR3に配列番号50のアミノ酸配列を,それぞれ含むものである,アミノ酸配列;
(10)CDR1に配列番号51のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号53のアミノ酸配列を,且つCDR3に配列番号55のアミノ酸配列を,それぞれ含むものである,アミノ酸配列;
(11)CDR1に配列番号56のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号58のアミノ酸配列を,且つCDR3に配列番号60のアミノ酸配列を,それぞれ含むものである,アミノ酸配列;
(12)CDR1に配列番号61のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号63のアミノ酸配列を,且つCDR3に配列番号65のアミノ酸配列を,それぞれ含むものである,アミノ酸配列;
(13)CDR1に配列番号66のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号68のアミノ酸配列を,且つCDR3に配列番号70のアミノ酸配列を,それぞれ含むものである,アミノ酸配列;及び
(14)CDR1に配列番号71のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号73のアミノ酸配列を,且つCDR3に配列番号75のアミノ酸配列を,それぞれ含むものである,アミノ酸配列。
3.軽鎖の可変領域のCDR1,CDR2及びCDR3の各アミノ酸配列が,上記1又は2の何れかの軽鎖のCDR1,CDR2及びCDR3の各アミノ酸配列とそれぞれ80%以上の相同性を有するものである,抗ヒトトランスフェリン受容体抗体。
4.軽鎖の可変領域のCDR1,CDR2及びCDR3の各アミノ酸配列が,上記1又は2の何れかの軽鎖のCDR1,CDR2及びCDR3の各アミノ酸配列とそれぞれ90%以上の相同性を有するものである,抗ヒトトランスフェリン受容体抗体。
5.上記1又は2の何れかの軽鎖のCDRの少なくとも1つにおいて,これを構成するアミノ酸配列中1~5個のアミノ酸が置換,欠失又は付加したものである,抗ヒトトランスフェリン受容体抗体。
6.上記1又は2の何れかの軽鎖のCDR少なくとも1つにおいて,これを構成するアミノ酸配列中1~3個のアミノ酸が置換,欠失又は付加したものである,抗ヒトトランスフェリン受容体抗体。
7.抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって,該抗体の重鎖の可変領域のアミノ酸配列が,以下の(1)~(14)からなる群より選ばれるものである,抗体:
(1)CDR1に配列番号76又は配列番号77のアミノ酸配列を含み,CDR2に配列番号78又は配列番号79のアミノ酸配列を含み,且つCDR3に配列番号80又は配列番号81のアミノ酸配列を含むものである,アミノ酸配列;
(2)CDR1に配列番号82又は配列番号83のアミノ酸配列を含み,CDR2に配列番号84又は配列番号85のアミノ酸配列を含み,且つCDR3に配列番号86又は配列番号87のアミノ酸配列を含むものである,アミノ酸配列;
(3)CDR1に配列番号88又は配列番号89のアミノ酸配列を含み,CDR2に配列番号90又は配列番号91のアミノ酸配列を含み,且つCDR3に配列番号92又は配列番号93のアミノ酸配列を含むものである,アミノ酸配列;
(4)CDR1に配列番号94又は配列番号95のアミノ酸配列を含み,CDR2に配列番号96又は配列番号97のアミノ酸配列を含み,且つCDR3に配列番号98又は配列番号99のアミノ酸配列を含むものである,アミノ酸配列;
(5)CDR1に配列番号100又は配列番号101のアミノ酸配列を含み,CDR2に配列番号102又は配列番号103のアミノ酸配列を含み,且つCDR3に配列番号104又は配列番号105のアミノ酸配列を含むものである,アミノ酸配列;
(6)CDR1に配列番号106又は配列番号107のアミノ酸配列を含み,CDR2に配列番号108のアミノ酸配列又は配列番号278のアミノ酸配列を含み,且つCDR3に配列番号109又は配列番号110のアミノ酸配列を含むものであるアミノ酸配列;
(7)CDR1に配列番号111又は配列番号112のアミノ酸配列を含み,CDR2に配列番号113又は配列番号114のアミノ酸配列を含み,且つCDR3に配列番号115又は配列番号116のアミノ酸配列を含むものである,アミノ酸配列;
(8)CDR1に配列番号117又は配列番号118のアミノ酸配列を含み,CDR2に配列番号119のアミノ酸配列又は配列番号279のアミノ酸配列を含み,且つCDR3に配列番号120又は配列番号121のアミノ酸配列を含むものである,アミノ酸配列;
(9)CDR1に配列番号122又は配列番号123のアミノ酸配列を含み,CDR2に配列番号124又は配列番号125のアミノ酸配列を含み,且つCDR3に配列番号126又は配列番号127のアミノ酸配列を含むものである,アミノ酸配列;
(10)CDR1に配列番号128又は配列番号129のアミノ酸配列を含み,CDR2に配列番号130又は配列番号131のアミノ酸配列を含み,且つCDR3に配列番号132又は配列番号133のアミノ酸配列を含むものである,アミノ酸配列;
(11)CDR1に配列番号134又は配列番号135のアミノ酸配列を含み,CDR2に配列番号136又は配列番号137のアミノ酸配列を含み,且つCDR3に配列番号138又は配列番号139のアミノ酸配列を含むものである,アミノ酸配列;
(12)CDR1に配列番号140又は配列番号141のアミノ酸配列を含み,CDR2に配列番号142又は配列番号143のアミノ酸配列を含み,且つCDR3に配列番号144又は配列番号145のアミノ酸配列を含むものである,アミノ酸配列;
(13)CDR1に配列番号146又は配列番号147のアミノ酸配列を含み,CDR2に配列番号148又は配列番号149のアミノ酸配列を含み,且つCDR3に配列番号150又は配列番号151のアミノ酸配列を含むものである,アミノ酸配列;及び
(14)CDR1が配列番号152又は配列番号153のアミノ酸配列を含み,CDR2が配列番号154又は配列番号155のアミノ酸配列を含み,且つCDR3が配列番号156又は配列番号157のアミノ酸配列を含むものである,アミノ酸配列。
8.上記7の抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって,該抗体の重鎖の可変領域のアミノ酸配列が,以下の(1)~(14)からなる群より選ばれるものである,抗体:
(1)CDR1に配列番号76のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号78のアミノ酸配列を,及びCDR3に配列番号80のアミノ酸配列を,それぞれ含むものである,アミノ酸配列;
(2)CDR1に配列番号82のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号84のアミノ酸配列を,及びCDR3に配列番号86のアミノ酸配列,をそれぞれ含むものである,アミノ酸配列;
(3)CDR1に配列番号88のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号90のアミノ酸配列を,及びCDR3に配列番号92のアミノ酸配列を,それぞれ含むものである,アミノ酸配列;
(4)CDR1に配列番号94のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号96のアミノ酸配列を,及びCDR3に配列番号98のアミノ酸配列を,それぞれ含むものである,アミノ酸配列;
(5)CDR1に配列番号100のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号102のアミノ酸配列を,及びCDR3に配列番号104のアミノ酸配列を,それぞれ含むものである,アミノ酸配列;
(6)CDR1に配列番号106のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号108のアミノ酸配列を,及びCDR3に配列番号109のアミノ酸配列を,それぞれ含むものである,アミノ酸配列;
(7)CDR1に配列番号111のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号113のアミノ酸配列を,及びCDR3に配列番号115のアミノ酸配列を,それぞれ含むものである,アミノ酸配列;
(8)CDR1に配列番号117のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号119のアミノ酸配列を,及びCDR3に配列番号120のアミノ酸配列を,それぞれ含むものである,アミノ酸配列;
(9)CDR1に配列番号122のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号124のアミノ酸配列を,及びCDR3に配列番号126のアミノ酸配列を,それぞれ含むものである,アミノ酸配列;
(10)CDR1に配列番号128のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号130のアミノ酸配列を,及びCDR3に配列番号132のアミノ酸配列を,それぞれ含むものである,アミノ酸配列;
(11)CDR1に配列番号134のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号136のアミノ酸配列を,及びCDR3に配列番号138のアミノ酸配列を,それぞれ含むものである,アミノ酸配列;
(12)CDR1に配列番号140のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号142のアミノ酸配列を,及びCDR3に配列番号144のアミノ酸配列を,それぞれ含むものである,アミノ酸配列;
(13)CDR1に配列番号146のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号148のアミノ酸配列を,及びCDR3に配列番号150のアミノ酸配列を,それぞれ含むものであるアミノ酸配列;及び
(14)CDR1に配列番号152のアミノ酸配列を,CDR2に配列番号154のアミノ酸配列を,及びCDR3に配列番号156のアミノ酸配列を,それぞれ含むものである,アミノ酸配列。
9.重鎖の可変領域のCDR1,CDR2及びCDR3の各アミノ酸配列が,上記7又は8の何れかの重鎖のCDR1,CDR2及びCDR3の各アミノ酸配列とそれぞれ80%以上の相同性を有するものである,抗ヒトトランスフェリン受容体抗体。
10.重鎖の可変領域のCDR1,CDR2及びCDR3の各アミノ酸配列が,上記7又は8の何れかの重鎖のCDR1,CDR2及びCDR3の各アミノ酸配列とそれぞれ90%以上の相同性を有するものである,抗ヒトトランスフェリン受容体抗体。
11.上記7又は8の何れかの重鎖のCDRの少なくとも1つにおいて、これを構成するアミノ酸配列中,1~5個のアミノ酸が置換,欠失又は付加したものである,抗ヒトトランスフェリン受容体抗体。
12.上記7又は8の何れかの重鎖のCDRの少なくとも1つにおいて、これを構成するアミノ酸配列中,1~3個のアミノ酸が置換,欠失又は付加したものである,抗ヒトトランスフェリン受容体抗体。
13.抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって,該抗体の軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域が,以下の(1)~(14)からなる群より選ばれるものである,抗体:
(1)軽鎖の可変領域が,CDR1として配列番号6又は配列番号7のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号8若しくは配列番号9のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Trp-Thr-Serを,及びCDR3として配列番号10のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1として配列番号76又は配列番号77のアミノ酸配を,CDR2として配列番号78又は配列番号79のアミノ酸配列を,及びCDR3として配列番号80又は配列番号81のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの;
(2)軽鎖の可変領域が,CDR1として配列番号11又は配列番号12のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号13若しくは配列番号14のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Tyr-Ala-Serを,及びCDR3として配列番号15のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1として配列番号82又は配列番号83のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号84又は配列番号85のアミノ酸配列を,及びCDR3として配列番号86又は配列番号87のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの;
(3)軽鎖の可変領域が,CDR1として配列番号16又は配列番号17のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号18若しくは配列番号19のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Lys-Val-Serを,及びCDR3として配列番号20のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1として配列番号88又は配列番号89のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号90又は配列番号91のアミノ酸配列を,及びCDR3として配列番号92又は配列番号93のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの;
(4)軽鎖の可変領域が,CDR1として配列番号21又は配列番号22のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号23若しくは配列番号24のアミノ酸配列,又はAsp-Thr-Serを,及びCDR3として配列番号25のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1として配列番号94又は配列番号95のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号96又は配列番号97のアミノ酸配列を,及びCDR3として配列番号98又は配列番号99のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの;
(5)軽鎖の可変領域が,CDR1として配列番号26又は配列番号27のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号28若しくは配列番号29のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Asp-Thr-Serを,及びCDR3として配列番号30のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1として配列番号100又は配列番号101のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号102又は配列番号103のアミノ酸配列を,及びCDR3として配列番号104又は配列番号105のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの;
(6)軽鎖の可変領域が,CDR1として配列番号31又は配列番号32のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号33若しくは配列番号34のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Ala-Ala-Serを,及びCDR3として配列番号35のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1として配列番号106又は配列番号107のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号108のアミノ酸配列又は配列番号278のアミノ酸配列を,及びCDR3として配列番号109又は配列番号110のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの;
(7)軽鎖の可変領域が,CDR1として配列番号36又は配列番号37のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号38若しくは配列番号39のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Gln-Thr-Serを,及びCDR3として配列番号40のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1として配列番号111又は配列番号112のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号113又は配列番号114のアミノ酸配列を,及びCDR3として配列番号115又は配列番号116のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの;
(8)軽鎖の可変領域が,CDR1として配列番号41又は配列番号42のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号43若しくは配列番号44のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Gly-Thr-Serを,及びCDR3として配列番号45のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域がCDR1として配列番号117又は配列番号118のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号119のアミノ酸配列又は配列番号279のアミノ酸配列を,及びCDR3として配列番号120又は配列番号121のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの;
(9)軽鎖の可変領域が,CDR1として配列番号46又は配列番号47のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号48若しくは配列番号49のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Phe-Thr-Serを,及びCDR3として配列番号50のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1として配列番号122又は配列番号123のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号124又は配列番号125のアミノ酸配列を,及びCDR3として配列番号126又は配列番号127のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの;
(10)軽鎖の可変領域が,CDR1として配列番号51又は配列番号52のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号53若しくは配列番号54のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Ala-Ala-Serを,及びCDR3として配列番号55のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1として配列番号128又は配列番号129のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号130又は配列番号131のアミノ酸配列を,及びCDR3として配列番号132又は配列番号133のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの;
(11)軽鎖の可変領域が,CDR1として配列番号56又は配列番号57のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号58若しくは配列番号59のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Tyr-Ala-Serを,及びCDR3として配列番号60のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1として配列番号134又は配列番号135のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号136又は配列番号137のアミノ酸配列を,及びCDR3として配列番号138又は配列番号139のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの;
(12)軽鎖の可変領域が,CDR1として配列番号61又は配列番号62のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号63若しくは配列番号64のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Trp-Ser-Serを,及びCDR3として配列番号65のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1として配列番号140又は配列番号141のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号142又は配列番号143のアミノ酸配列を,及びCDR3として配列番号144又は配列番号145のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの;
(13)軽鎖の可変領域が,CDR1として配列番号66又は配列番号67のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号68若しくは配列番号69のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Tyr-Ala-Serを,及びCDR3として配列番号70のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1として配列番号146又は配列番号147のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号148又は配列番号149のアミノ酸配列を,及びCDR3として配列番号150又は配列番号151のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの;及び
(14)軽鎖の可変領域が,CDR1として配列番号71又は配列番号72のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号73若しくは配列番号74のアミノ酸配列を,又はアミノ酸配列Asp-Thr-Serを,及びCDR3として配列番号75のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1として配列番号152又は配列番号153のアミノ酸配列を,CDR2として配列番号154又は配列番号155のアミノ酸配列を,及びCDR3として配列番号156又は配列番号157のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの。
14.上記13の抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって,該抗体の軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域が,以下の(1)~(14)からなる群より選ばれるものである,抗体:
(1)軽鎖の可変領域が,CDR1に配列番号6,CDR2に配列番号8,及びCDR3に配列番号10のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1に配列番号76,CDR2に配列番号78,及びCDR3に配列番号80のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの;
(2)軽鎖の可変領域が,CDR1に配列番号11,CDR2に配列番号13,及びCDR3に配列番号15のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1に配列番号82,CDR2に配列番号84,及びCDR3に配列番号86のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの;
(3)軽鎖の可変領域が,CDR1に配列番号16,CDR2に配列番号18,及びCDR3に配列番号20のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1に配列番号88,CDR2に配列番号90,及びCDR3に配列番号92のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの;
(4)軽鎖の可変領域が,CDR1に配列番号21,CDR2に配列番号23,及びCDR3に配列番号25のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1に配列番号94,CDR2に配列番号96,及びCDR3に配列番号98のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの;
(5)軽鎖の可変領域が,CDR1に配列番号26,CDR2に配列番号28,及びCDR3に配列番号30のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1に配列番号100,CDR2に配列番号102,及びCDR3に配列番号104のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの;
(6)軽鎖の可変領域が,CDR1に配列番号31,CDR2に配列番号33,及びCDR3に配列番号35のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1に配列番号106,CDR2に配列番号108,及びCDR3に配列番号109のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの;
(7)軽鎖の可変領域が,CDR1に配列番号36,CDR2に配列番号38,及びCDR3に配列番号40のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1に配列番号111,CDR2に配列番号113,及びCDR3に配列番号115のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの;
(8)軽鎖の可変領域が,CDR1に配列番号41,CDR2に配列番号43,及びCDR3に配列番号45のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1に配列番号117,CDR2に配列番号119,及びCDR3に配列番号120のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの;
(9)軽鎖の可変領域が,CDR1に配列番号46,CDR2に配列番号48,及びCDR3に配列番号50のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1に配列番号122,CDR2に配列番号124,及びCDR3に配列番号126のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの;
(10)軽鎖の可変領域が,CDR1に配列番号51,CDR2に配列番号53,及びCDR3に配列番号55のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1に配列番号128,CDR2に配列番号130,及びCDR3に配列番号132のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの;
(11)軽鎖の可変領域が,CDR1に配列番号56,CDR2に配列番号58,及びCDR3に配列番号60のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1に配列番号134,CDR2に配列番号136,及びCDR3に配列番号138のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの;
(12)軽鎖の可変領域が,CDR1に配列番号61,CDR2に配列番号63,及びCDR3に配列番号65のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1に配列番号140,CDR2に配列番号142,及びCDR3に配列番号144のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの;
(13)軽鎖の可変領域が,CDR1に配列番号66,CDR2に配列番号68,及びCDR3に配列番号70のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1に配列番号146,CDR2に配列番号148,及びCDR3に配列番号150のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの;及び
(14)軽鎖の可変領域が,CDR1に配列番号71,CDR2に配列番号73,及びCDR3に配列番号75のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなり,且つ重鎖の可変領域が,CDR1に配列番号152,CDR2に配列番号154,及びCDR3に配列番号156のアミノ酸配列を,それぞれ含んでなるもの。
15.軽鎖及び重鎖のそれぞれにおけるCDR1,CDR2及びCDR3の各アミノ酸配列が,上記13又は14の軽鎖と重鎖の組合せの何れかにおける軽鎖及び重鎖のそれぞれのCDR1,CDR2及びCDR3の各アミノ酸配列と80%以上の相同性を有するものである,抗ヒトトランスフェリン受容体抗体。
16.軽鎖及び重鎖のそれぞれにおけるCDR1,CDR2及びCDR3の各アミノ酸配列が,上記13又は14の軽鎖と重鎖の組合せの何れかにおける軽鎖及び重鎖のそれぞれのCDR1,CDR2及びCDR3の各アミノ酸配列と90%以上の相同性を有するものである,抗ヒトトランスフェリン受容体抗体。
17.上記13又は14の軽鎖と重鎖の組合せの何れかにおける軽鎖及び重鎖のそれぞれにつき,CDRの少なくとも1つにおいて,これを構成するアミノ酸配列中1~5個が置換,欠失又は付加したものである,抗ヒトトランスフェリン受容体抗体。
18.上記13又は14の軽鎖と重鎖の組合せの何れかにおける軽鎖及び重鎖のそれぞれにつき,CDRの少なくとも1つにおいて,これを構成するアミノ酸配列中1~3個が置換,欠失又は付加したものである,抗ヒトトランスフェリン受容体抗体。
19.抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって,該抗体の軽鎖の可変領域が,配列番号158,配列番号159,配列番号160,配列番号161,配列番号162,及び配列番号163のアミノ酸配列からなる群より選ばれる何れかのアミノ酸配列を含んでなり,且つ該抗体の重鎖の可変領域が,配列番号166,配列番号167,配列番号168,配列番号169,配列番号170,及び配列番号171のアミノ酸配列からなる群より選ばれる何れかのアミノ酸配列を含んでなるものである,抗体。
20.抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって,該抗体の軽鎖の可変領域が,配列番号174,配列番号175,配列番号176,配列番号177,配列番号178,及び配列番号179のアミノ酸配列からなる群より選ばれる何れかのアミノ酸配列を含んでなり,且つ該抗体の重鎖の可変領域が,配列番号182,配列番号183,配列番号184,配列番号185,配列番号186,及び配列番号187のアミノ酸配列からなる群より選ばれる何れかのアミノ酸配列を含んでなるものである,抗体。
21.抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって,該抗体の軽鎖の可変領域が,配列番号190,配列番号191,配列番号192,配列番号193,配列番号194,及び配列番号195のアミノ酸配列からなる群より選ばれる何れかのアミノ酸配列を含んでなり,且つ該抗体の重鎖の可変領域が,配列番号204,配列番号205,配列番号206,配列番号207,配列番号208,及び配列番号209のアミノ酸配列からなる群より選ばれる何れかのアミノ酸配列を含んでなるものである,抗体。
22.抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって,次の(1)~(6)からなる群より選ばれるものである,抗体。
(1)該抗体の軽鎖の可変領域が配列番号163のアミノ酸配列を含んでなり,且つ該抗体の重鎖の可変領域が配列番号171のアミノ酸配列を含んでなるもの,
(2)該抗体の軽鎖の可変領域が配列番号179のアミノ酸配列を含んでなり,且つ該抗体の重鎖の可変領域が配列番号187のアミノ酸配列を含んでなるもの,
(3)該抗体の軽鎖の可変領域が配列番号191のアミノ酸配列を含んでなり,且つ該抗体の重鎖の可変領域が配列番号205のアミノ酸配列を含んでなるもの,
(4)該抗体の軽鎖の可変領域が配列番号193のアミノ酸配列を含んでなり,且つ該抗体の重鎖の可変領域が配列番号205のアミノ酸配列を含んでなるもの,
(5)該抗体の軽鎖の可変領域が配列番号194のアミノ酸配列を含んでなり,且つ該抗体の重鎖の可変領域が配列番号205のアミノ酸配列を含んでなるもの,及び
(6)該抗体の軽鎖の可変領域が配列番号195のアミノ酸配列を含んでなり,且つ該抗体の重鎖の可変領域が配列番号205のアミノ酸配列を含んでなるもの。
23.抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって,以下の(1)~(10)からなる群より選ばれるものである,抗体。
(1)該抗体の軽鎖が配列番号164のアミノ酸配列を含んでなり,且つ該抗体の重鎖が配列番号172のアミノ酸配列を含んでなるもの,
(2)該抗体の軽鎖が配列番号180のアミノ酸配列を含んでなり,且つ該抗体の重鎖が配列番号188のアミノ酸配列を含んでなるもの,
(3)該抗体の軽鎖が配列番号196のアミノ酸配列を含んでなり,且つ該抗体の重鎖が配列番号210のアミノ酸配列を含んでなるもの,
(4)該抗体の軽鎖が配列番号198のアミノ酸配列を含んでなり,且つ該抗体の重鎖が配列番号210のアミノ酸配列を含んでなるもの,
(5)該抗体の軽鎖が配列番号200のアミノ酸配列を含んでなり,且つ該抗体の重鎖が配列番号210のアミノ酸配列を含んでなるもの,
(6)該抗体の軽鎖が配列番号202のアミノ酸配列を含んでなり,且つ該抗体の重鎖が配列番号210のアミノ酸配列を含んでなるもの,
(7)該抗体の軽鎖が配列番号196のアミノ酸配列を含んでなり,且つ該抗体の重鎖が配列番号212のアミノ酸配列を含んでなるもの,
(8)該抗体の軽鎖が配列番号198のアミノ酸配列を含んでなり,且つ該抗体の重鎖が配列番号212のアミノ酸配列を含んでなるもの,
(9)該抗体の軽鎖が配列番号200のアミノ酸配列を含んでなり,且つ該抗体の重鎖が配列番号212のアミノ酸配列を含んでなるもの,及び
(10)該抗体の軽鎖が配列番号202のアミノ酸配列を含んでなり,且つ該抗体の重鎖が配列番号212のアミノ酸配列を含んでなるもの。
24.抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって,上記19~23の何れかの抗ヒトトランスフェリン受容体抗体との間に,軽鎖の可変領域のアミノ酸配列及び重鎖の可変領域のアミノ酸配列に関して,それぞれ80%以上の相同性を有するものである,抗体。
25.抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって,上記19~23の何れかの抗ヒトトランスフェリン受容体抗体との間に,軽鎖の可変領域のアミノ酸配列及び重鎖の可変領域のアミノ酸配列に関して,それぞれ90%以上の相同性を有するものである,抗体。
26.抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって,上記19~23の何れかの抗ヒトトランスフェリン受容体抗体の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を構成するアミノ酸配列中,1~10個のアミノ酸が置換,欠失又は付加したものである,抗体。
27.抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって,上記19~23の何れかの抗ヒトトランスフェリン受容体抗体の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を構成するアミノ酸配列中,1~3個のアミノ酸が置換,欠失又は付加したものである,抗ヒトトランスフェリン受容体抗体。
28.抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって,上記19~23の何れかの抗ヒトトランスフェリン受容体抗体の重鎖の可変領域のアミノ酸配列を構成するアミノ酸配列中,1~10個のアミノ酸が置換,欠失又は付加したものである,抗体。
29.抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって,上記19~23の何れかの抗ヒトトランスフェリン受容体抗体の重鎖の可変領域のアミノ酸配列を構成するアミノ酸配列中,1~3個のアミノ酸が置換,欠失又は付加したものである,抗体。
30.抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって,上記19~23の何れかの抗ヒトトランスフェリン受容体抗体の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列及び重鎖の可変領域のアミノ酸配列の各々を構成するアミノ酸配列中,それぞれ1~10個のアミノ酸が置換,欠失又は付加したものである,抗体。
31.抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって,上記19~23の何れかの抗ヒトトランスフェリン受容体抗体の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列及び重鎖の可変領域のアミノ酸配列の各々を構成するアミノ酸配列中,それぞれ1~3個のアミノ酸が置換,欠失又は付加したものである,抗体。
32.上記1~31の何れかの抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって,ヒトトランスフェリン受容体の細胞外領域及びサルトランスフェリン受容体の細胞外領域の双方に対して親和性を有するものである,抗体。
33.上記32の抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって,ヒトトランスフェリン受容体の細胞外領域との解離定数が1×10-8M以下であり,サルトランスフェリン受容体の細胞外領域との解離定数が5×10-8M以下のものである,抗体。
34.Fab抗体,F(ab’)抗体,又はF(ab’)抗体である,上記1~33の抗ヒトトランスフェリン受容体抗体。
35.scFab,scF(ab’),scF(ab’)及びscFvからなる群から選ばれる一本鎖抗体である,上記1~33の何れかの抗ヒトトランスフェリン受容体抗体。
36.上記35の抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって,その軽鎖と重鎖とがリンカー配列を介して結合しているものである,抗体。
37.上記35の抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって,その軽鎖と重鎖とが,軽鎖のC末端側において,リンカー配列を介して結合しているものである,抗体。
38.上記35の抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって,その重鎖と軽鎖とが,重鎖のC末端側において,リンカー配列を介して結合しているものである,抗体。
39.上記36~38の何れかの抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって,該リンカー配列が,8~50個のアミノ酸残基からなるものである,抗体。
40.上記39の抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であって,該リンカー配列が,アミノ酸配列Gly-Ser,アミノ酸配列Gly-Gly-Ser,アミノ酸配列Gly-Gly-Gly,配列番号3,配列番号4,及び配列番号5の各アミノ酸配列,及び,配列番号3のアミノ酸配列の3個が連続したものに相当するアミノ酸配列からなる群より選ばれるものである,抗体。
41.上記1~40の何れかの抗ヒトトランスフェリン受容体抗体と,その軽鎖のC末端側又はN末端側に結合した他の蛋白質Aのアミノ酸配列とを含んでなる,融合蛋白質。
42.抗ヒトトランスフェリン受容体抗体と他の蛋白質Aとの融合蛋白質であって,該抗ヒトトランスフェリン受容体抗体が,上記1~40の何れかの抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であり,該他の蛋白質Aが,該抗ヒトトランスフェリン受容体抗体の軽鎖のC末端側又はN末端側に結合しているものである,融合蛋白質。
43.該他の蛋白質Aが,該軽鎖のC末端側又はN末端側においてリンカー配列を介して結合しているものである,上記41又は42の融合蛋白質。
44.該リンカー配列が,1~50個のアミノ酸残基からなるものである,上記43の融合蛋白質。
45.該リンカー配列が,1個のグリシン、1個のセリン、アミノ酸配列Gly-Ser,アミノ酸配列Gly-Gly-Ser,配列番号3のアミノ酸配列,配列番号4のアミノ酸配列,配列番号5のアミノ酸配列、及びこれらのアミノ酸配列が1~10個連続してなるアミノ酸配列からなる群より選ばれるアミノ酸配列を含んでなるものである,上記44の融合蛋白質。
46.上記1~40の何れかの抗ヒトトランスフェリン受容体抗体と,その重鎖のC末端側又はN末端側に結合した他の蛋白質Aのアミノ酸配列とを含んでなる,融合蛋白質。
47.抗ヒトトランスフェリン受容体抗体と他の蛋白質Aとの融合蛋白質であって,該抗ヒトトランスフェリン受容体抗体が、上記1~40の何れかの抗ヒトトランスフェリン受容体抗体であり,該他の蛋白質Aが,該抗ヒトトランスフェリン受容体抗体の重鎖のC末端側又はN末端側に結合しているものである,融合蛋白質。
48.該他の蛋白質Aが,該重鎖のC末端側又はN末端側においてリンカー配列を介して結合しているものである,上記46又は47の融合蛋白質。
49.該リンカー配列が,1~50個のアミノ酸残基からなるものである,上記48の融合蛋白質。
50.該リンカー配列が,該リンカー配列が,1個のグリシン、1個のセリン、アミノ酸配列Gly-Ser,アミノ酸配列Gly-Gly-Ser,配列番号3のアミノ酸配列,配列番号4のアミノ酸配列,配列番号5のアミノ酸配列、及びこれらのアミノ酸配列が1~10個連続してなるアミノ酸配列からなる群より選ばれるアミノ酸配列を含んでなるものである,,上記48の融合蛋白質。
51.該他の蛋白質Aが,ヒト由来の蛋白質である,上記41~50の何れかの融合蛋白質。
52.該他の蛋白質Aが,神経成長因子(NGF),リソソーム酵素,毛様体神経栄養因子(CNTF),グリア細胞株神経栄養因子(GDNF),ニューロトロフィン3,ニューロトロフィン4/5,ニューロトロフィン6,ニューレグリン1,エリスロポエチン,ダルベポエチン,アクチビン,塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF),線維芽細胞成長因子2(FGF2),上皮細胞増殖因子(EGF),血管内皮増殖因子(VEGF),インターフェロンα,インターフェロンβ,インターフェロンγ,インターロイキン6,顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF),顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF),マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF),各種サイトカイン,腫瘍壊死因子α受容体(TNF-α受容体),PD-1リガンド,ベータアミロイドを分解する活性を有する酵素,抗ベータアミロイド抗体,抗BACE抗体,抗EGFR抗体,抗PD-1抗体,抗PD-L1抗体,抗HER2抗体,抗TNF-α抗体,及びその他の抗体医薬からなる群から選択されるものである,上記41~51の何れかの融合蛋白質。
53.該他の蛋白質Aがリソソーム酵素であり,該リソソーム酵素が,α-L-イズロニダーゼ,イズロン酸-2-スルファターゼ,グルコセレブロシダーゼ,β-ガラクトシダーゼ,GM2活性化蛋白質,β-ヘキソサミニダーゼA,β-ヘキソサミニダーゼB,N-アセチルグルコサミン-1-フォスフォトランスフェラーゼ,α-マンノシダーゼ,β-マンノシダーゼ,ガラクトシルセラミダーゼ,サポシンC,アリルスルファターゼA,α-L-フコシダーゼ,アスパルチルグルコサミニダーゼ,α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ,酸性スフィンゴミエリナーゼ,α-ガラクトシダーゼA,β-グルクロニダーゼ,ヘパランN-スルファターゼ,α-N-アセチルグルコサミニダーゼ,アセチルCoAα-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ,N-アセチルグルコサミン-6-硫酸スルファターゼ,酸性セラミダーゼ,アミロ-1,6-グルコシダーゼ,シアリダーゼ,パルミトイル蛋白質チオエステラーゼ-1,トリペプチジルペプチダーゼ-1,ヒアルロニダーゼ-1,CLN1及びCLN2からなる群から選択されるものである,上記41~51の何れかの融合蛋白質。
54.該他の蛋白質Aが,イズロン酸-2-スルファターゼである,上記41~51の何れかの融合蛋白質。
55.該他の蛋白質Aが,ヒトイズロン酸-2-スルファターゼである上記50の融合蛋白質であって,以下の(1)~(3)から選択されるものである融合蛋白質:
(1)該ヒト化抗hTfR抗体の軽鎖が配列番号164のアミノ酸配列を有するものであり,該ヒト化抗hTfR抗体の重鎖がそのC末端側で,リンカー配列Gly-Serを介して,ヒトイズロン酸-2-スルファターゼと結合しており,全体として配列番号247で示されるアミノ酸配列を有するものである,融合蛋白質;
(2)該ヒト化抗hTfR抗体の軽鎖が配列番号180のアミノ酸配列を有するものであり,該ヒト化抗hTfR抗体の重鎖がそのC末端側で,リンカー配列Gly-Serを介して,ヒトイズロン酸-2-スルファターゼと結合しており,全体として配列番号249で示されるアミノ酸配列を有するものである,融合蛋白質;及び
(3)該ヒト化抗hTfR抗体の軽鎖が,配列番号196のアミノ酸配列を有するものであり,該ヒト化抗hTfR抗体の重鎖が,そのC末端側で,リンカー配列Gly-Serを介して,ヒトイズロン酸-2-スルファターゼと結合しており,全体として配列番号251で示されるアミノ酸配列を有するものである,融合蛋白質。
56.該他の蛋白質Aが,ヒトイズロン酸-2-スルファターゼである上記50の融合蛋白質であって,以下の(1)~(3)から選択されるものである融合蛋白質:
(1)配列番号164のアミノ酸配列を有するヒト化抗hTfR抗体の軽鎖と,配列番号172のアミノ酸配列を有するヒト化抗hTfR抗体の重鎖のC末端側に,リンカー配列Gly-Serを介して,配列番号246で示されるヒトイズロン酸-2-スルファターゼが結合したものとを含む,融合蛋白質;
(2)配列番号180のアミノ酸配列を有するヒト化抗hTfR抗体の軽鎖と,配列番号188のアミノ酸配列を有するヒト化抗hTfR抗体の重鎖のC末端側に,リンカー配列Gly-Serを介して,配列番号246で示されるヒトイズロン酸-2-スルファターゼが結合したものとを含む,融合蛋白質;及び
(3)配列番号196のアミノ酸配列を有するヒト化抗hTfR抗体の軽鎖と,配列番号210のアミノ酸配列を有するヒト化抗hTfR抗体の重鎖のC末端側に,リンカー配列Gly-Serを介して,配列番号246で示されるヒトイズロン酸-2-スルファターゼが結合したものとを含む,融合蛋白質。
57.該他の蛋白質Aが,ヒトイズロン酸-2-スルファターゼである上記50の融合蛋白質であって,以下の(1)~(3)から選択されるものである融合蛋白質:
(1)該ヒトイズロン酸-2-スルファターゼがリンカー配列Gly-Serを介して重鎖のC末端側で結合してなるものと,軽鎖とからなり,前者のアミノ酸配列が配列番号247で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号164で示されるもの,
(2)該ヒトイズロン酸-2-スルファターゼがリンカー配列Gly-Serを介して重鎖のC末端側で結合してなるものと,軽鎖とからなり,前者のアミノ酸配列が配列番号249で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号180で示されるもの,及び
(3)該ヒトイズロン酸-2-スルファターゼがリンカー配列Gly-Serを介して重鎖のC末端側で結合してなるものと,軽鎖とからなり,前者のアミノ酸配列が配列番号251で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号196で示されるもの。
58.上記1~40の何れかの抗ヒトトランスフェリン受容体抗体のアミノ酸配列をコードする,DNA断片。
59.上記41~57の何れかの融合蛋白質のアミノ酸配列をコードする,DNA断片。
60.上記58又は59のDNA断片を組み込んでなる,発現ベクター。
61.上記60の発現ベクターで形質転換された哺乳動物細胞。
62.上記1~40の何れかの抗ヒトトランスフェリン受容体抗体該の軽鎖及び/又は重鎖の何れかに血液脳関門を通過させて脳内で機能を発揮させるべき低分子量の薬理活性物質を結合させたものである,抗ヒトトランスフェリン受容体抗体-薬理活性物質複合体。
63.該薬理活性物質が,抗ガン剤,アルツハイマー病治療剤,パーキンソン病治療剤,ハンチントン病治療剤,統合失調症治療剤,うつ症治療剤,多発性硬化症治療剤,筋委縮性側索硬化症治療剤,脳腫瘍を含む中枢神経系の腫瘍の治療剤,脳障害を伴うリソソーム病の治療剤,糖原病治療剤,筋ジストロフィー治療剤,脳虚血治療剤,プリオン病治療剤,外傷性の中枢神経系障害の治療剤,ウィルス性及び細菌性の中枢神経系疾患に対する治療剤,脳外科手術後の回復に用いる薬剤,脊椎外科手術後の回復に用いる薬剤,siRNA,アンチセンスDNA,及びペプチドからなる群から選択される何れかのものである,上記62の抗ヒトトランスフェリン受容体抗体。
64.他の蛋白質A又は低分子量の薬理活性物質に血液脳関門を通過させて脳内で機能を発揮させるための,上記1~40の何れかの抗ヒトトランスフェリン受容体抗体の使用。
65.中枢神経系の疾患状態の治療のための血中投与用薬剤の製造のための,該疾患状態に対する生理活性蛋白質又は薬理活性低分子化合物の分子と結合させることによる上記1~40の何れかの抗ヒトトランスフェリン受容体抗体の使用。
66.中枢神経系の疾患の治療方法であって,該疾患に対する生理活性蛋白質又は薬理活性低分子化合物の治療上有効量を,上記1~40の何れかの抗ヒトトランスフェリン受容体抗体分子との結合体の形態で当該疾患を有する患者に血中投与することを含む,治療方法。
67.ヒトイズロン酸-2-スルファターゼに血液脳関門を通過させて脳内で機能を発揮させるための,上記54~57の何れかの抗ヒトトランスフェリン受容体抗体の使用。
68.ハンター症候群に伴う中枢神経系の疾患状態の治療のための血中投与用薬剤の製造のための,上記54~57の何れかの融合蛋白質の使用。
69.ハンター症候群に伴う中枢神経系の疾患の治療方法であって,上記54~57の何れかの融合蛋白質の治療上有効量を,当該疾患を有する患者に血中投与することを含む,治療方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明は,生理活性や薬理活性を有する蛋白質や低分子量の物質でありながら,血液脳関門を殆ど又は全く通過できないため,従来は血中投与では利用できなかった諸々の物質について,それらを血液脳関門通過可能な形態にすることができ,従って,中枢神経系の疾患状態の治療のための,血中投与用の新たな薬剤とすることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】抗hTfR抗体を単回静脈内投与した後の,カニクイザルの大脳皮質の,抗hTfR抗体に対する免疫組織化学染色の結果を示す図面代用写真。(a)抗hTfR抗体を非投与,(b)は抗hTfR抗体番号1を投与,(c)抗hTfR抗体番号2を投与,(d)抗hTfR抗体番号3を投与。各写真の右下のバーは50μmを表すゲージである。
図2】抗hTfR抗体を単回静脈内投与した後の,カニクイザルの海馬の,抗hTfR抗体に対する免疫組織化学染色の結果を示す図。(a)抗hTfR抗体を非投与,(b)抗hTfR抗体番号1を投与,(c)抗hTfR抗体番号2を投与,(d)抗hTfR抗体番号3を投与。各写真の右下のバーは50μmを表すゲージである。
図3】抗hTfR抗体を単回静脈内投与した後の,カニクイザルの小脳の,抗hTfR抗体に対する免疫組織化学染色の結果を示す図面代用写真。(a)抗hTfR抗体を非投与,(b)抗hTfR抗体番号1を投与,(c)抗hTfR抗体番号2を投与,(d)抗hTfR抗体番号3を投与。各写真の右下のバーは50μmを表すゲージである。
図4】単回静脈内投与した後の,カニクイザルの脳以外の各種臓器へのヒト化抗hTfR抗体の蓄積量を示す図。縦軸は,各臓器の湿重量当たりのヒト化抗hTfR抗体の量(μg/g湿重量)を示す。白バーは左から順に,ヒト化抗hTfR抗体番号3,ヒト化抗hTfR抗体番号3-2,ヒト化抗hTfR抗体番号3(IgG4),及びヒト化抗hTfR抗体番号3-2(IgG4)を,それぞれ投与、黒バーは,トラスツズマブ(ハーセプチンTM)を投与したサルの各臓器での蓄積量を示す。NDは未測定を意味する。
図5】単回静脈内投与した後の,カニクイザルの大脳皮質の,ヒト化抗hTfR抗体に対する免疫組織化学染色の結果を示す図面代用写真。(a)ハーセプチンを投与,(b)ヒト化抗hTfR抗体番号3を投与,(c)ヒト化抗hTfR抗体番号3-2を投与,(d)ヒト化抗hTfR抗体番号3(IgG4)を投与,(e)ヒト化抗hTfR抗体番号3-2(IgG4)を投与。各写真の右下のバーは20μmを表すゲージである。
図6】単回静脈内投与した後の,カニクイザルの海馬の,ヒト化抗hTfR抗体に対する免疫組織化学染色の結果を示す図。(a)ハーセプチンを投与,(b)ヒト化抗hTfR抗体番号3を投与,(c)ヒト化抗hTfR抗体番号3-2を投与,(d)ヒト化抗hTfR抗体番号3(IgG4)を投与,(e)ヒト化抗hTfR抗体番号3-2(IgG4)を投与。各写真の右下のバーは20μmを表すゲージである。
図7】単回静脈内投与した後の,カニクイザルの小脳のヒト化抗hTfR抗体に対する免疫組織化学染色の結果を示す図。(a)ハーセプチンを投与,(b)ヒト化抗hTfR抗体番号3を投与,(c)ヒト化抗hTfR抗体番号3-2を投与,(d)ヒト化抗hTfR抗体番号3(IgG4)を投与,(e)ヒト化抗hTfR抗体番号3-2(IgG4)を投与。各写真の右下のバーは20μmを表すゲージである。
図8】単回静脈内投与した後の,カニクイザルの延髄の,ヒト化抗hTfR抗体に対する免疫組織化学染色の結果を示す図。(a)ハーセプチンを投与,(b)ヒト化抗hTfR抗体番号3を投与,(c)ヒト化抗hTfR抗体番号3-2を投与,(d)ヒト化抗hTfR抗体番号3(IgG4)を投与,(e)ヒト化抗hTfR抗体番号3-2(IgG4)を投与。各写真の右下のバーは20μmを表すゲージである。
図9】カニクイザルに単回静脈内投与した後の,脳組織へのI2S-抗hTfR抗体及びrhI2S蓄積量を示す図。縦軸は,脳組織の湿重量当たりのI2S-抗hTfR抗体及びrhI2Sの量(μg/g湿重量)を示す。網掛けバーはカニクイザルの脳組織におけるrhI2Sの蓄積量を示す。横線バーはカニクイザルの脳組織におけるI2S-抗hTfR抗体の蓄積量を示す。縦線分は標準偏差を示す。
図10】ヒト化抗hTfR抗体又はrhI2Sを静注したI2S遺伝子ノックアウトマウス(I2S-KOマウス)における各種臓器中のグリコサミノグリカン(GAG)の量を示すグラフ。(a)脳,(b)肝臓,(c)肺,(d)心臓。各グラフとも,バーは左から順に,野生型マウス(WT),コントロール群(非投与群),0.5mg/kg投与群,1.0mg/kg投与群,及び2.0mg/kg投与群。縦軸は,各臓器の乾燥重量当たりのGAG量(μg/g乾燥重量)を示す。また,縦線分は標準偏差を,**はコントロール群を対照としたDunnet検定でP<0.01であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明において,「抗体」の語は,主としてヒト抗体,マウス抗体,ヒト化抗体,ヒト抗体と他の哺乳動物の抗体とのキメラ抗体,及びマウス抗体と他の哺乳動物の抗体とのキメラ抗体のことをいうが,特定の抗原に特異的に結合する性質を有するものである限り,これらに限定されるものではなく,また,抗体の動物種にも特に制限はない。
【0018】
本発明において,「ヒト抗体」の語は,その蛋白質全体がヒト由来の遺伝子にコードされている抗体のことをいう。遺伝子の発現効率を上昇させる等の目的で,元のヒトの遺伝子に,元のアミノ酸配列に変化を与えることなく変異を加えた遺伝子にコードされる抗体も,「ヒト抗体」に含まれる。また,ヒト抗体をコードする2つ以上の遺伝子を組み合わせて,あるヒト抗体の一部を,他のヒト抗体の一部に置き換えた抗体も,「ヒト抗体」に含まれる。ヒト抗体は,免疫グロブリン軽鎖の3箇所の相補性決定領域(CDR:complementary determining regionの略称)と免疫グロブリン重鎖の3箇所の相補性決定領域(CDR)を有する。免疫グロブリン軽鎖の3箇所のCDRは,N末端側にあるものから順にCDR1,CDR2及びCDR3という。免疫グロブリン重鎖の3箇所のCDRも,N末端側にあるものから順にCDR1,CDR2及びCDR3という。あるヒト抗体のCDRを,他のヒト抗体のCDRに置き換えることにより,ヒト抗体の抗原特異性,親和性等を改変した抗体も,ヒト抗体に含まれる。
【0019】
本発明において,元のヒト抗体の遺伝子を改変することにより,元の抗体のアミノ酸配列に置換,欠失,付加等の変異を加えた抗体も,「ヒト抗体」に含まれる。元の抗体のアミノ酸配列中のアミノ酸を他のアミノ酸で置換する場合,置換するアミノ酸の個数は,好ましくは1~20個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個である。元の抗体のアミノ酸配列中のアミノ酸を欠失させる場合,欠失させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~20個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個である。また,これらアミノ酸の置換と欠失を組み合わせた変異を加えた抗体も,ヒト抗体である。アミノ酸を付加させる場合,元の抗体のアミノ酸配列中若しくはN末端側又はC末端側に,好ましくは1~20個,より好ましくは1~5個,更に好ましくは1~3個のアミノ酸を付加する。これらアミノ酸の付加,置換及び欠失を組み合わせた変異を加えた抗体も,ヒト抗体である。変異を加えた抗体のアミノ酸配列は,元の抗体のアミノ酸配列と,好ましくは80%以上の相同性を示し,より好ましくは90%以上の相同性を示し,更に好ましくは95%以上の相同性を示し,更により好ましくは98%以上の相同性を示すものである。従って,本発明において「ヒト由来の遺伝子」というときは,ヒト由来の元の遺伝子に加えて,これに改変を加えることにより得られる遺伝子も含まれる。
【0020】
元の抗体のアミノ酸配列と変異を加えた抗体のアミノ酸配列との相同性は,周知の相同性計算アルゴリズムを用いて容易に算出することができる。例えば,そのようなアルゴリズムとして,BLAST(Altschul SF.,J Mol.Biol.,215,403-10,(1990)),PearsonおよびLipmanの類似性検索法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA.,85,2444,(1988)),SmithおよびWatermanの局所相同性アルゴリズム(Adv. Appl. Math.,2,482-9,(1981))等がある。
【0021】
「マウス抗体」というときは,その蛋白質全体がマウス由来の遺伝子にコードされる抗体と同一のアミノ酸配列からなる抗体のことをいう。従って,遺伝子の発現効率を上昇させる等の目的で,元のマウスの遺伝子に,元のアミノ酸配列に変化を与えることなく変異を加えた遺伝子にコードされる抗体も,「マウス抗体」に含まれる。また,マウス抗体をコードする2つ以上の遺伝子を組み合わせて,あるマウス抗体の一部を,他のマウス抗体の一部に置き換えた抗体も,マウス抗体に含まれる。マウス抗体は,免疫グロブリン軽鎖の3箇所の相補性決定領域(CDR)と免疫グロブリン重鎖の3箇所の相補性決定領域(CDR)有する。免疫グロブリン軽鎖の3箇所のCDRは,N末端側にあるものから順にCDR1,CDR2及びCDR3という。免疫グロブリン重鎖の3箇所のCDRは,N末端側にあるものから順にCDR1,CDR2及びCDR3という。例えば,あるマウス抗体のCDRを,他のマウス抗体のCDRに置き換えることにより,マウス抗体の抗原特異性,親和性等を改変した抗体も,マウス抗体に含まれる。
【0022】
本発明において,元のマウス抗体の遺伝子を改変することにより,元の抗体のアミノ酸配列に置換,欠失,付加等の変異を加えた抗体も,「マウス抗体」に含まれる。元の抗体のアミノ酸配列中のアミノ酸を他のアミノ酸へ置換する場合,置換するアミノ酸の個数は,好ましくは1~20個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個である。元の抗体のアミノ酸配列中のアミノ酸を欠失させる場合,欠失させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~20個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個である。また,これらアミノ酸の置換と欠失を組み合わせた変異を加えた抗体も,マウス抗体である。アミノ酸を付加する場合,元の抗体のアミノ酸配列中若しくはN末端側又はC末端側に,好ましくは1~20個,より好ましくは1~5個,更に好ましくは1~3個のアミノ酸を付加する。これらアミノ酸の付加,置換及び欠失を組み合わせた変異を加えた抗体も,マウス抗体である。変異を加えた抗体のアミノ酸配列は,元の抗体のアミノ酸配列と,好ましくは80%以上の相同性を有し,より好ましくは90%以上の相同性を示し,更に好ましくは95%以上の相同性を示し,更により好ましくは98%以上の相同性を示すものである。従って,本発明において「マウス由来の遺伝子」というときは,マウス由来の元の遺伝子に加えて,これに改変を加えることにより得られる遺伝子も含まれる。
【0023】
本発明において,「ヒト化抗体」の語は,可変領域の一部(例えば,特にCDRの全部又は一部)のアミノ酸配列がヒト以外の哺乳動物由来であり,それ以外の領域がヒト由来である抗体のことをいう。例えば,ヒト化抗体として,ヒト抗体を構成する免疫グロブリン軽鎖の3箇所の相補性決定領域(CDR)と免疫グロブリン重鎖の3箇所の相補性決定領域(CDR)を,他の哺乳動物のCDRによって置き換えることにより作製された抗体が挙げられる。ヒト抗体の適切な位置に移植されるCDRの由来となる他の哺乳動物の生物種は,ヒト以外の哺乳動物である限り特に限定はないが,好ましくは,マウス,ラット,ウサギ,ウマ,又はヒト以外の霊長類であり,より好ましくはマウス及びラットであり,例えばマウスである。
【0024】
本発明において,「キメラ抗体」の語は,2つ以上の異なる種に由来する,2つ以上の異なる抗体の断片が連結されてなる抗体のことをいう。
【0025】
ヒト抗体と他の哺乳動物の抗体とのキメラ抗体とは,ヒト抗体の一部がヒト以外の哺乳動物の抗体の一部によって置き換えられた抗体である。抗体は,以下に説明するFc領域,Fab領域及びヒンジ部とからなる。このようなキメラ抗体の具体例として,Fc領域がヒト抗体に由来する一方でFab領域が他の哺乳動物の抗体に由来するキメラ抗体が挙げられる。ヒンジ部は,ヒト抗体又は他の哺乳動物の抗体のいずれかに由来する。逆に,Fc領域が他の哺乳動物に由来する一方でFab領域がヒト抗体に由来するキメラ抗体が挙げられる。ヒンジ部は,ヒト抗体又は他の哺乳動物の抗体のいずれに由来してもよい。逆に,Fc領域が他の哺乳動物に由来する一方でFab領域がヒト抗体に由来するキメラ抗体が挙げられる。この場合もヒンジ部は,ヒト抗体又は他の哺乳動物の抗体のいずれに由来してもよい。
【0026】
また,抗体は,可変領域と定常領域とからなるということもできる。キメラ抗体の他の具体例として,重鎖の定常領域(C)と軽鎖の定常領域(C)がヒト抗体に由来する一方で,重鎖の可変領域(V)及び軽鎖の可変領域(V)が他の哺乳動物の抗体に由来するもの,逆に,重鎖の定常領域(C)と軽鎖の定常領域(C)が他の哺乳動物の抗体に由来する一方で,重鎖の可変領域(V)及び軽鎖の可変領域(V)がヒト抗体に由来するものも挙げられる。ここで,他の哺乳動物の生物種は,ヒト以外の哺乳動物である限り特に限定はないが,好ましくは,マウス,ラット,ウサギ,ウマ,又はヒト以外の霊長類であり,より好ましくはマウスである。
【0027】
マウス抗体と他の哺乳動物の抗体とのキメラ抗体とは,マウス抗体の一部がマウス以外の哺乳動物の抗体の一部に置き換えられた抗体である。このようなキメラ抗体の具体例として,Fc領域がマウス抗体に由来する一方でFab領域が他の哺乳動物の抗体に由来するキメラ抗体や,逆に,Fc領域が他の哺乳動物に由来する一方でFab領域がマウス抗体に由来するキメラ抗体が挙げられる。ここで,他の哺乳動物の生物種は,マウス以外の哺乳動物である限り特に限定はないが,好ましくは,ラット,ウサギ,ウマ,ヒト以外の霊長類であり,より好ましくはヒトである。
【0028】
ヒト抗体とマウス抗体のキメラ抗体は,特に,「ヒト/マウスキメラ抗体」という。ヒト/マウスキメラ抗体には,Fc領域がヒト抗体に由来する一方でFab領域がマウス抗体に由来するキメラ抗体や,逆に,Fc領域がマウス抗体に由来する一方でFab領域がヒト抗体に由来するキメラ抗体が挙げられる。ヒンジ部は,ヒト抗体又はマウス抗体のいずれかに由来する。ヒト/マウスキメラ抗体の他の具体例として,重鎖の定常領域(C)と軽鎖の定常領域(C)がヒト抗体に由来する一方で,重鎖の可変領域(V)及び軽鎖の可変領域(V)がマウス抗体に由来するもの,逆に,重鎖の定常領域(C)と軽鎖の定常領域(C)がマウス抗体に由来する一方で,重鎖の可変領域(V)及び軽鎖の可変領域(V)がヒト抗体に由来するものも挙げられる。
【0029】
抗体は,本来,2本の免疫グロブリン軽鎖と2本の免疫グロブリン重鎖の計4本のポリペプチド鎖からなる基本構造を有する。但し,本発明において,「抗体」というときは,この基本構造を有するものに加え,
(1)1本の免疫グロブリン軽鎖と1本の免疫グロブリン重鎖の計2本のポリペプチド鎖からなるものや,以下に詳述するように,
(2)免疫グロブリン軽鎖のC末端側にリンカー配列を,そして更にそのC末端側に免疫グロブリン重鎖を結合させてなるものである一本鎖抗体,及び
(3)免疫グロブリン重鎖のC末端側にリンカー配列を,そして更にそのC末端側に免疫グロブリン軽鎖を結合させてなるものである一本鎖抗体も含まれる。また,
(4)本来の意味での抗体の基本構造からFc領域が欠失したものであるFab領域からなるもの及びFab領域とヒンジ部の全部若しくは一部とからなるもの(Fab、F(ab’)及びF(ab’)を含む)も,本発明における「抗体」に含まれる。
【0030】
ここでFabとは,可変領域とC領域(軽鎖の定常領域)を含む1本の軽鎖と,可変領域とC1領域(重鎖の定常領域の部分1)を含む1本の重鎖が,それぞれに存在するシステイン残基同士でジスルフィド結合により結合した分子のことをいう。Fabにおいて、重鎖は、可変領域とC1領域(重鎖の定常領域の部分1)に加えて、更にヒンジ部の一部を含んでもよいが、この場合のヒンジ部は、ヒンジ部に存在して抗体の重鎖どうしを結合するシステイン残基を欠くものである。Fabにおいて、軽鎖と重鎖とは、軽鎖の定常領域(C領域)に存在するシステイン残基と、重鎖の定常領域(C1領域)又はヒンジ部に存在するシステイン残基との間で形成されるジスルフィド結合により結合する。Fabは,ヒンジ部に存在して抗体の重鎖どうしを結合するシステイン残基を欠いているので,1本の軽鎖と1本の重鎖とからなる。Fabを構成する軽鎖は,可変領域とC領域を含む。Fabを構成する重鎖は,可変領域とC1領域からなるものであってもよく,可変領域,C1領域に加えてヒンジ部の一部を含むものであってもよい。但しこの場合,ヒンジ部で2本の重鎖の間でジスルフィド結合が形成されないように,ヒンジ部は重鎖間を結合するシステイン残基を含まないように選択される。F(ab’)においては,その重鎖は可変領域とC1領域に加えて、重鎖どうしを結合するシステイン残基を含むヒンジ部の全部または一部を含む。F(ab’)は2つのF(ab’)が互いのヒンジ部に存在するシステイン残基どうしでジスルフィド結合により結合した分子のことをいう。また,複数の抗体が直接又はリンカーを介して結合してなるニ量体,三量体等の重合体も,抗体である。更に,これらに限らず,免疫グロブリン分子の一部を含み,且つ,抗原に特異的に結合する性質を有するものは何れも,本発明でいう「抗体」に含まれる。即ち,本発明において免疫グロブリン軽鎖というときは,免疫グロブリン軽鎖に由来し,その可変領域の全て又は一部のアミノ酸配列を有するものが含まれる。また,免疫グロブリン重鎖というときは,免疫グロブリン重鎖に由来し,その可変領域の全て又は一部のアミノ酸配列を有するものが含まれる。従って,可変領域の全て又は一部のアミノ酸配列を有する限り,例えば,Fc領域が欠失したものも,免疫グロブリン重鎖である。
【0031】
また、ここでFc又はFc領域とは、抗体分子中の、C2領域(重鎖の定常領域の部分2)、及びC3領域(重鎖の定常領域の部分3)からなる断片を含む領域のことをいう。
【0032】
更には,本発明において,「抗体」というときは,
(5)上記(4)で示したFab,F(ab’)又はF(ab’)を構成する軽鎖と重鎖を,リンカー配列を介して結合させて,それぞれ一本鎖抗体としたscFab,scF(ab’),及びscF(ab’)も含まれる。ここで,scFab,scF(ab’),及びscF(ab’)にあっては,軽鎖のC末端側にリンカー配列を,そして更にそのC末端側に重鎖を結合させてなるものでもよく,また,重鎖のC末端側にリンカー配列を,そして更にそのC末端側に軽鎖を結合させてなるものでもよい。更には,軽鎖の可変領域と重鎖の可変領域をリンカー配列を介して結合させて一本鎖抗体としたscFvも,本発明における抗体に含まれる。scFvにあっては,軽鎖の可変領域のC末端側にリンカー配列を,そして更にそのC末端側に重鎖の可変領域を結合させてなるものでもよく,また,重鎖の可変領域のC末端側にリンカー配列を,そして更にそのC末端側に軽鎖の可変領域を結合させてなるものでもよい。
【0033】
更には,本明細書でいう「抗体」には,完全長抗体,上記(1)~(5)に示されるものに加えて,上記(4)及び(5)を含むより広い概念である、完全長抗体の一部が欠損したものである抗原結合性断片(抗体フラグメント)のいずれの形態も含まれる。
【0034】
「抗原結合性断片」の語は,抗原との特異的結合活性の少なくとも一部を保持している抗体の断片のことをいう。結合性断片の例としては,例えば上記(4)及び(5)に示されるものに加えて,Fab,Fab’,F(ab’),可変領域(Fv),重鎖可変領域(V)と軽鎖可変領域(V)とを適当なリンカーで連結させた一本鎖抗体(scFv),重鎖可変領域(V)と軽鎖可変領域(V)を含むポリペプチドの二量体であるダイアボディ,scFvの重鎖(H鎖)に定常領域の一部(C3)が結合したものの二量体であるミニボディ,その他の低分子化抗体等を包含する。但し,抗原との結合能を有している限りこれらの分子に限定されない。また,これらの結合性断片には,抗体蛋白質の全長分子を適当な酵素で処理したもののみならず,遺伝子工学的に改変された抗体遺伝子を用いて適当な宿主細胞において産生された蛋白質も含まれる。
【0035】
本発明において,「一本鎖抗体」というときは,免疫グロブリン軽鎖の可変領域の全て又は一部を含むアミノ酸配列のC末端側にリンカー配列が結合し,更にそのC末端側に免疫グロブリン重鎖の可変領域の全て又は一部を含むアミノ酸配列が結合してなり,特定の抗原に特異的に結合することのできる蛋白質をいう。例えば、上記(2)、(3)及び(5)に示されるものは一本鎖抗体に含まれる。また,免疫グロブリン重鎖の可変領域の全て又は一部を含むアミノ酸配列のC末端側にリンカー配列が結合し,更にそのC末端側に免疫グロブリン軽鎖の可変領域の全て又は一部を含むアミノ酸配列が結合してなり,特定の抗原に特異的に結合することのできる蛋白質も,本発明における「一本鎖抗体」である。免疫グロブリン重鎖のC末端側にリンカー配列を介して免疫グロブリン軽鎖が結合した一本鎖抗体にあっては,通常,免疫グロブリン重鎖は,Fc領域が欠失している。免疫グロブリン軽鎖の可変領域は,抗体の抗原特異性に関与する相補性決定領域(CDR)を3つ有している。同様に,免疫グロブリン重鎖の可変領域も,CDRを3つ有している。これらのCDRは,抗体の抗原特異性を決定する主たる領域である。従って,一本鎖抗体には,免疫グロブリン重鎖の3つのCDRが全てと,免疫グロブリン軽鎖の3つのCDRの全てとが含まれることが好ましい。但し,抗体の抗原特異的な親和性が維持される限り,CDRの1個又は複数個を欠失させた一本鎖抗体とすることもできる。
【0036】
一本鎖抗体において,免疫グロブリンの軽鎖と重鎖の間に配置されるリンカー配列は,好ましくは2~50個,より好ましくは8~50個,更に好ましくは10~30個,更により好ましくは12~18個又は15~25個,例えば15個若しくは25個のアミノ酸残基から構成されるペプチド鎖である。そのようなリンカー配列は,これにより両鎖が連結されてなる抗hTfR抗体がhTfRに対する親和性を保持する限り,そのアミノ酸配列に限定はないが,好ましくは,グリシンのみ又はグリシンとセリンから構成されるものであり,例えば,アミノ酸配列Gly-Ser,アミノ酸配列Gly-Gly-Ser,アミノ酸配列Gly-Gly-Gly,アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号3),アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号4),アミノ酸配列Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly(配列番号5),又はこれらのアミノ酸配列が2~10回,あるいは2~5回繰り返された配列を含むものである。例えば,免疫グロブリン重鎖の可変領域の全領域からなるアミノ酸配列のC末端側に,リンカー配列を介して免疫グロブリン軽鎖の可変領域を結合させる場合,アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号3)の3個が連続したものに相当する計15個のアミノ酸を含むリンカー配列が好適である。
【0037】
本発明において,「ヒトトランスフェリン受容体」又は「hTfR」の語は,配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する膜蛋白質をいう。本発明の抗hTfR抗体は,その一実施態様において,配列番号1で示されるアミノ酸配列中N末端側から89番目のシステイン残基からC末端のフェニルアラニンまでの部分(hTfRの細胞外領域)に対して特異的に結合するものであるが,これに限定されない。また,本発明において「サルトランスフェリン受容体」又は「サルTfR」の語は,特に,カニクイザル(Macaca fascicularis)由来の配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する膜蛋白質である。本発明の抗hTfR抗体は,その一実施態様において,配列番号2で示されるアミノ酸配列の中N末端側から89番目のシステイン残基からC末端のフェニルアラニンまでの部分(サルTfRの細胞外領域)に対しても結合するものであるが,これに限定されない。
【0038】
hTfRに対する抗体の作製方法としては,hTfR遺伝子を組み込んだ発現ベクターを導入した細胞を用いて,組換えヒトトランスフェリン受容体(rhTfR)を作製し,このrhTfRを用いてマウス等の動物を免疫して得る方法が一般的である。免疫後の動物からhTfRに対する抗体産生細胞を取り出し,これとミエローマ細胞とを融合させることにより,抗体産生能を有するハイブリドーマ細胞を作製することができる。
【0039】
また,マウス等の動物より得た免疫系細胞を体外免疫法によりrhTfRで免疫することによっても,hTfRに対する抗体を産生する細胞を取得できる。体外免疫法を用いる場合,その免疫系細胞が由来する動物種に特に限定はないが,好ましくは,マウス,ラット,ウサギ,モルモット,イヌ,ネコ,ウマ,及びヒトを含む霊長類であり,より好ましくは,マウス,ラット及びヒトであり,更に好ましくはマウス及びヒトである。マウスの免疫系細胞としては,例えば,マウスの脾臓から調製した脾細胞を用いることができる。ヒトの免疫系細胞としては,ヒトの末梢血,骨髄,脾臓等から調製した細胞を用いることができる。ヒトの免疫系細胞を体外免疫法により免疫した場合,hTfRに対するヒト抗体を得ることができる。
【0040】
体外免疫法により免疫系細胞を免疫した後,細胞をミエローマ細胞と融合させることにより,抗体産生能を有するハイブリドーマ細胞を作製することができる。また,免疫後の細胞からmRNAを抽出してcDNAを合成し,このcDNAを鋳型としてPCR反応により免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖をコードする遺伝子を含むDNA断片を増幅し,これらを用いて人工的に抗体遺伝子を再構築することもできる。
【0041】
上記方法により得られたままのハイブリドーマ細胞には,hTfR以外の蛋白質を抗原として認識する抗体を産生する細胞も含まれる。また,抗hTfR抗体を産生するハイブリドーマ細胞の全てが,hTfRに対して高親和性示す抗hTfR抗体を産生するとも限らない。
【0042】
同様に,人工的に再構築した抗体遺伝子には,hTfR以外の蛋白質を抗原として認識する抗体をコードする遺伝子も含まれる。また,抗hTfR抗体をコードする遺伝子の全てが,hTfRに対して高親和性を示す抗hTfR抗体をコードする等の所望の特性を備えるとも限らない。
【0043】
従って,上記で得られたままのハイブリドーマ細胞から,所望の特性(hTfRに対する高親和性等)を有する抗体を産生するハイブリドーマ細胞を選択するステップが必要となる。また,人工的に再構築した抗体遺伝子にあっては,当該抗体遺伝子から,所望の特性(hTfRに対する高親和性等)を有する抗体をコードする遺伝子を選択するステップが必要となる。hTfRに対して高親和性を示す抗体(高親和性抗体)を産生するハイブリドーマ細胞,又は高親和性抗体をコードする遺伝子を選択する方法として,以下に詳述する方法が有効である。なお,hTfRに対して高親和性を示す抗体とは,実施例7に記載の方法により測定されるhTfRとの解離定数(K)が,好ましくは1×10-8M以下のものであり,より好ましくは1×10-9M以下のものであり,更に好ましくは1×10-10以下のものであり,尚も更に好ましくは1×10-11以下のものである。例えば好適なもとして,解離定数が1×10-13M~1×10-9Mであるもの,1×10-13M~1×10-10であるものを挙げることができる。
【0044】
例えば,抗hTfR抗体に対して高親和性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞を選択する場合,組換えhTfRをプレートに添加してこれに保持させた後,ハイブリドーマ細胞の培養上清を添加し,次いで組換えhTfRと結合していない抗体をプレートから除去し,プレートに保持された抗体の量を測定する方法が用いられる。この方法によれば,プレートに添加したハイブリドーマ細胞の培養上清に含まれる抗体のhTfRに対する親和性が高いほど,プレートに保持される抗体の量が多くなる。従って,プレートに保持された抗体の量を測定し,より多くの抗体が保持されたプレートに対応するハイブリドーマ細胞を,hTfRに対して相対的に高い親和性を有する抗hTfR抗体を産生する細胞株として選択することができる。この様にして選択された細胞株から,mRNAを抽出してcDNAを合成し,このcDNAを鋳型として,抗hTfR抗体をコードする遺伝子を含むDNA断片をPCR法を用いて増幅することにより,高親和性抗体をコードする遺伝子を単離することもできる。
【0045】
上記の人工的に再構築した抗体遺伝子から,高親和性を有する抗hTfR抗体をコードする遺伝子を選択する場合は,一旦,人工的に再構築した抗体遺伝子を発現ベクターに組み込み,この発現ベクターをホスト細胞に導入する。このとき,ホスト細胞として用いる細胞としては,人工的に再構築した抗体遺伝子を組み込んだ発現ベクターを導入することにより抗体遺伝子を発現させることのできる細胞であれば原核細胞,真核細胞を問わず特に限定はないが,ヒト,マウス,チャイニーズハムスター等の哺乳動物由来の細胞が好ましく,特にチャイニーズハムスター卵巣由来のCHO細胞,又はマウス骨髄腫に由来するNS/0細胞が好ましい。また,抗体遺伝子をコードする遺伝子を組み込んで発現させるために用いる発現ベクターは,哺乳動物細胞内に導入させたときに,該遺伝子を発現させるものであれば特に限定なく用いることができる。発現ベクターに組み込まれた該遺伝子は,哺乳動物細胞内で遺伝子の転写の頻度を調節することができるDNA配列(遺伝子発現制御部位)の下流に配置される。本発明において用いることのできる遺伝子発現制御部位としては,例えば,サイトメガロウイルス由来のプロモーター,SV40初期プロモーター,ヒト伸長因子-1アルファ(EF-1α)プロモーター,ヒトユビキチンCプロモーター等が挙げられる。
【0046】
このような発現ベクターが導入された哺乳動物細胞は,発現ベクターに組み込まれた上述の人工的に再構築した抗体を発現するようになる。このようにして得た,人工的に再構築した抗体を発現する細胞から,抗hTfR抗体に対して高親和性を有する抗体を産生する細胞を選択する場合,組換えhTfRをプレートに添加してこれに保持させた後,組換えhTfRに細胞の培養上清を接触させ,次いで,組換えhTfRと結合していない抗体をプレートから除去し,プレートに保持された抗体の量を測定する方法が用いられる。この方法によれば,細胞の培養上清に含まれる抗体のhTfRに対する親和性が高いほど,プレートに保持された抗体の量が多くなる。従って,プレートに保持された抗体の量を測定し,より多くの抗体が保持されたプレートに対応する細胞を,hTfRに対して相対的に高い親和性を有する抗hTfR抗体を産生する細胞株として選択することができ,ひいては,hTfRに対して高親和性を有する抗hTfR抗体をコードする遺伝子を選択できる。このようにして選択された細胞株から,抗hTfR抗体をコードする遺伝子を含むDNA断片を,PCR法を用いて増幅することにより,高親和性抗体をコードする遺伝子を単離することができる。
【0047】
上記の人工的に再構築した抗体遺伝子からの,高親和性を有する抗hTfR抗体をコードする遺伝子の選択は,人工的に再構築した抗体遺伝子を発現ベクターに組み込み,この発現ベクターを大腸菌に導入し,この大腸菌を培養して得た培養上清又は大腸菌を溶解させて得た抗体を含む溶液を用いて,上述のハイブリドーマ細胞を選択する場合と同様の方法で,所望の遺伝子を有する大腸菌を選択することによってもできる。選択された大腸菌株は,hTfRに対して相対的に高い親和性を有する抗hTfR抗体をコードする遺伝子を発現するものである。この細胞株から,hTfRに対して相対的に高い親和性を有する抗hTfR抗体をコードする遺伝子を選択できる。大腸菌の培養上清中に抗体を分泌させる場合には,N末端側に分泌シグナル配列が結合するように抗体遺伝子を発現ベクターに組み込めばよい。
【0048】
高親和性を有する抗hTfR抗体をコードする遺伝子を選択する他の方法として,上述の人工的に再構築した抗体遺伝子にコードされた抗体をファージ粒子上に保持させて発現させる方法がある。このとき,抗体遺伝子は,一本鎖抗体をコードする遺伝子として再構築される。抗体をファージ粒子上に保持する方法は,国際公開公報(WO1997/09436,WO1995/11317)等に記載されており,周知である。人工的に再構築した抗体遺伝子にコードされた抗体を保持するファージから,抗hTfR抗体に対して高親和性を有する抗体を保持するファージを選択する場合,組換えhTfRを,プレートに添加して保持させた後,ファージを接触させ,次いでプレートから組換えhTfRと結合していないファージを除去し,プレートに保持されたファージの量を測定する方法が用いられる。この方法によれば,ファージ粒子上に保持された抗体のhTfRに対する親和性が高いほど,プレートに保持されたファージの量が多くなる。従って,プレートに保持されたファージの量を測定し,より多くのファージが保持されたプレートに対応するファージ粒子を,hTfRに対して相対的に高い親和性を有する抗hTfR抗体を産生するファージ粒子として選択することができ,ひいては,hTfRに対して高親和性を有する抗hTfR抗体をコードする遺伝子を選択できる。このようにして選択されたファージ粒子から,抗hTfR抗体をコードする遺伝子を含むDNA断片を,PCR法を用いて増幅することにより,高親和性抗体をコードする遺伝子を単離することができる。
【0049】
上記の抗hTfR抗体に対して高親和性を有する抗体を産生するハイブリドーマ細胞等の細胞,又は,抗hTfR抗体に対して高親和性を有する抗体を有するファージ粒子からcDNA又はファージDNAを調製し,これを鋳型として,抗hTfR抗体の軽鎖,抗hTfR抗体の重鎖,又は抗hTfR抗体である一本鎖抗体の,全て又はその一部をコードする遺伝子を含むDNA断片を,PCR法等により増幅して単離することができる。同様にして,抗hTfR抗体の軽鎖の可変領域の全て又はその一部をコードする遺伝子を含むDNA断片,抗hTfR抗体の重鎖の可変領域の全て又はその一部をコードする遺伝子を含むDNA断片を,PCR法等により増幅して単離することもできる。
【0050】
この高親和性を有する抗hTfR抗体の軽鎖及び重鎖をコードする遺伝子の全てまたはその一部を発現ベクターに組み込み,この発現ベクターを用いて哺乳動物細胞等のホスト細胞を形質転換し,得られた形質転換細胞を培養することにより,高親和性を有する抗hTfR抗体を産生させることができる。単離された抗hTfR抗体をコードする遺伝子の塩基配列から抗hTfR抗体のアミノ酸配列を翻訳し,このアミノ酸配列をコードするDNA断片を人工的に合成することもできる。DNA断片を人工的に合成する場合,適切なコドンを選択することにより,ホスト細胞における抗hTfR抗体の発現量を増加させることができる。
【0051】
元の抗hTfR抗体にアミノ酸配列に置換,欠失,付加等の変異を加えるために,単離されたDNA断片に含まれる抗hTfR抗体をコードする遺伝子に,適宜変異を加えることもできる。変異を加えた後の抗hTfR抗体をコードする遺伝子は,元の遺伝子と,好ましくは80%以上の相同性を有するものであり,より好ましくは90%以上の相同性を有するものであるが,相同性に特に制限はない。アミノ酸配列に変異を加えることにより,抗hTfR抗体と結合する糖鎖の数,糖鎖の種類を改変し,生体内における抗hTfR抗体の安定性を増加させること等もできる。
【0052】
抗hTfR抗体の軽鎖の可変領域の全て又はその一部をコードする遺伝子に変異を加える場合にあっては、変異を加えた後の遺伝子は,元の遺伝子と,好ましくは80%以上の相同性を有するものであり,より好ましくは90%以上の相同性を有するものであるが,相同性に特に制限はない。軽鎖の可変領域のアミノ酸配列のアミノ酸を他のアミノ酸へ置換させる場合,置換させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~10個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個であり,更により好ましくは1~2個である。軽鎖の可変領域のアミノ酸配列中のアミノ酸を欠失させる場合,欠失させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~10個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個であり,更により好ましくは1~2個である。また,これらアミノ酸の置換と欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。軽鎖の可変領域にアミノ酸を付加させる場合,軽鎖の可変領域のアミノ酸配列中若しくはN末端側又はC末端側に,好ましくは1~10個,より好ましくは1~5個,更に好ましくは1~3個,更により好ましくは1~2個アミノ酸が付加される。これらアミノ酸の付加,置換及び欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。変異を加えた軽鎖の可変領域のアミノ酸配列は,元の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列と,好ましくは80%以上の相同性を有し,より好ましくは90%以上の相同性を示し,更に好ましくは,95%以上の相同性を示す。特に,CDRのアミノ酸配列のアミノ酸を他のアミノ酸へ置換させる場合,置換させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~5個であり,より好ましくは1~3個であり,更に好ましくは1~2個である。CDRのアミノ酸配列中のアミノ酸を欠失させる場合,欠失させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~5個であり,より好ましくは1~3個であり,更に好ましくは1~2個である。また,これらアミノ酸の置換と欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。アミノ酸を付加させる場合,当該アミノ酸配列中若しくはN末端側又はC末端側に,好ましくは1~5個,より好ましくは1~3個,更に好ましくは1~2個のアミノ酸が付加される。これらアミノ酸の付加,置換及び欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。変異を加えた各CDRのそれぞれのアミノ酸配列は,元の各CDRのアミノ酸配列と,好ましくは80%以上の相同性を有し,より好ましくは90%以上の相同性を示し,更に好ましくは,95%以上の相同性を示す。
【0053】
抗hTfR抗体の重鎖の可変領域の全て又はその一部をコードする遺伝子に変異を加える場合にあっては,変異を加えた後の遺伝子は,元の遺伝子と,好ましくは80%以上の相同性を有するものであり,より好ましくは90%以上の相同性を有するものであるが,相同性に特に制限はない。重鎖の可変領域のアミノ酸配列のアミノ酸を他のアミノ酸へ置換させる場合,置換させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~10個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個であり,更により好ましくは1~2個である。重鎖の可変領域のアミノ酸配列中のアミノ酸を欠失させる場合,欠失させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~10個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個であり,更により好ましくは1~2個である。また,これらアミノ酸の置換と欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。重鎖の可変領域にアミノ酸を付加させる場合,重鎖の可変領域のアミノ酸配列中若しくはN末端側又はC末端側に,好ましくは1~10個,より好ましくは1~5個,更に好ましくは1~3個,更により好ましくは1~2個アミノ酸が付加される。これらアミノ酸の付加,置換及び欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。変異を加えた重鎖の可変領域のアミノ酸配列は,元の重鎖の可変領域のアミノ酸配列と,好ましくは80%以上の相同性を有し,より好ましくは90%以上の相同性を示し,更に好ましくは,95%以上の相同性を示す。特に,CDRのアミノ酸配列のアミノ酸を他のアミノ酸へ置換させる場合,置換させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~5個であり,より好ましくは1~3個であり,更に好ましくは1~2個である。CDRのアミノ酸配列中のアミノ酸を欠失させる場合,欠失させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~5個であり,より好ましくは1~3個であり,更に好ましくは1~2個である。また,これらアミノ酸の置換と欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。アミノ酸を付加させる場合,当該アミノ酸配列中若しくはN末端側又はC末端側に,好ましくは1~5個,より好ましくは1~3個,更に好ましくは1~2個のアミノ酸が付加される。これらアミノ酸の付加,置換及び欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。変異を加えた各CDRのそれぞれのアミノ酸配列は,元の各CDRのアミノ酸配列と,好ましくは80%以上の相同性を有し,より好ましくは90%以上の相同性を示し,更に好ましくは,95%以上の相同性を示す。
【0054】
上記の抗hTfR抗体の軽鎖の可変領域への変異と,上記の抗hTfR抗体の重鎖の可変領域への変異とを組み合わせて,抗hTfR抗体の軽鎖と重鎖の可変領域の両方に変異を加えることもできる。
【0055】
上記の抗hTfR抗体の軽鎖及び重鎖のアミノ酸配列中のアミノ酸の他のアミノ酸への置換としては,例えば,酸性アミノ酸であるアスパラギン酸とグルタミン酸との相互の置換,アミド型アミノ酸であるアスパラギンとグルタミンとの相互の置換,塩基性アミノ酸であるリシンとアルギニンとの相互の置換,分枝アミノ酸であるバリン,ロイシン及びイソロイシンとの相互の置換,脂肪族アミノ酸であるグリシンとアラニンとの相互の置換,ヒドロキシアミノ酸であるセリンとトレオニンとの相互の置換,芳香族アミン酸であるフェニルアラニンとチロシンとの相互の置換等が挙げられる。
【0056】
なお,抗hTfR抗体に変異を加えてC末端又はN末端にアミノ酸を付加した場合において,当該アミノ酸を介して抗hTfR抗体と他の蛋白質Aとを融合させたときは,当該アミノ酸はリンカーの一部を構成する。抗hTfR抗体を他の蛋白質Aと融合させたときに,抗hTfR抗体と他の蛋白質Aとの間に配置されるリンカーについては後に詳述する。
【0057】
上記の方法等によって選択されたhTfRに対して比較的高い親和性を有する抗hTfR抗体を産生する細胞を培養して得られる抗hTfR抗体,及び,高親和性を有する抗hTfR抗体をコードする遺伝子を発現させて得られる抗hTfR抗体は,そのアミノ酸配列に置換,欠失,付加等の変異を導入することにより所望の特性を有する抗体に改変させることもできる。抗hTfR抗体のアミノ酸配列への変異の導入は,そのアミノ酸配列に対応する遺伝子に変異を加えることによって行われる。
【0058】
抗hTfR抗体は,その抗体の可変領域のアミノ酸配列に置換,欠失,付加等の変異を加えることにより,抗体のhTfRに対する親和性を適宜調整することができる。例えば,抗体と抗原との親和性が高く,水性液中での解離定数が著しく低い場合,これを生体内に投与したときに,抗体が抗原と解離せず,その結果,機能上の不都合が生じる可能性がある。このような場合に,抗体の可変領域に変異を導入することにより,解離定数を,元の抗体の2~5倍,5~10倍,10~100倍等と段階的に調整し,目的に合致した最も好ましい抗体を獲得し得る。逆に,当該変異の導入により,解離定数を,元の抗体の1/2~1/5倍,1/5~1/10倍,1/10~1/100倍等と段階的に調整することもできる。
【0059】
抗hTfR抗体のアミノ酸配列への置換,欠失,付加等の変異の導入は,例えば,抗hTfR抗体をコードする遺伝子を鋳型にして,PCR等の方法により,遺伝子の塩基配列の特定の部位に変異を導入するか,又はランダムに変異を導入することにより行うことができる。
【0060】
抗体とhTfRとの親和性の調整を目的とした,抗hTfR抗体のアミノ酸配列への変異の導入は,例えば,一本鎖抗体である抗hTfR抗体をコードする遺伝子をファージミドに組み込み,このファージミドを用いてカプシド表面上に一本鎖抗体を発現させたファージを作製し,変異原等を作用させることにより一本鎖抗体をコードする遺伝子上に変異を導入させながらファージを増殖させ,増殖させたファージから,所望の解離定数を有する一本鎖抗体を発現するファージを,上述の方法により選択するか,又は一定条件下で抗原カラムを用いて精製することにより,得ることができる。
【0061】
上記の高親和性抗体を産生する細胞を選択する方法により得られる,hTfRに対して相対的に高い親和性を有する抗体は,好ましくは,実施例7に記載の方法により測定されるhTfRとの解離定数(K)が,好ましくは1×10-8M以下であるものであり,より好ましくは1×10-9M以下であるものであり,更に好ましくは1×10-10以下のものであり,尚も更に好ましくは1×10-11以下のものである。例えば好適なもとして,解離定数が1×10-13M~1×10-9Mであるもの,1×10-13M~1×10-10であるものを挙げることができる。抗体が一本鎖抗体であっても同様である。一旦得られた抗体は,変異を導入する等して,所望の特性を有するように適宜改変することができる。
【0062】
上記の高親和性抗体を産生する細胞を選択する方法により得られる,相対的に高い親和性を有する抗体から,サルTfRに対する親和性を有する抗体を選択することにより,ヒト及びサルのTfRのいずれにも親和性を有する抗体を得ることができる。サルTfRに対する親和性を有する抗体は,例えば,遺伝子組換え技術を用いて作製した組換えサルTfRを用いたELISA法により選択することができる。このELISA法では,組換えサルTfRをプレートに添加してこれに保持させた後,抗hTfR抗体を接触させ,次いで組換えサルTfRと結合していない抗体をプレートから除去し,プレートに保持された抗体の量を測定する。組換えサルTfRに対する親和性が高いほどプレートに保持される抗体の量が多くなるので,より多くの抗体が保持されたプレートに対応する抗体を,サルTfRに親和性を有する抗体として選択することができる。なお,ここでいう「サル」とは,好ましくはヒトを除く真猿類に分類されるものであり,より好ましくはオナガザル科に分類されるものであり,更に好ましくはマカク属に分類されるものであり,例えば,カニクイザル又はアカゲザルであり,特にカニクイザルは,評価に用いる上で都合が良い。
【0063】
ヒト及びサルのhTfRのいずれにも親和性を有する抗体は,この抗体を投与したときの生体内での動態を,サルを用いて観察できるという有利な効果を有する。例えば,本発明の抗hTfR抗体を利用して医薬を開発する場合,当該医薬の薬物動態試験をサルを用いて実施できるため,当該医薬の開発を著しく促進することができる。
【0064】
hTfRに対して相対的に高い親和性を有する抗体であって,ヒト及びサルのTfRのいずれにも親和性を有する抗体は,実施例7に記載の方法により測定されるサルTfRとの解離定数が,好ましくは5×10-8M以下のものであり,より好ましくは2×10-8M以下のものであり,更に好ましくは1×10-8M以下のものである。例えば好適なものとして,解離定数が1×10-13M~2×10-8Mのもの,1×10-13M~2×10-8Mのものを挙げることができる。抗体が一本鎖抗体であっても同様である。
【0065】
上記の高親和性抗体を産生する細胞を選択する方法により得られた,hTfRに対して相対的に高い親和性を有する抗体は,ヒト以外の動物の抗体である場合,ヒト化抗体とすることができる。ヒト化抗体とは,抗原に対する特異性を維持しつつ,ヒト以外の動物の抗体の可変領域の一部(例えば,特にCDRの全部又は一部)のアミノ酸配列によってヒト抗体の適切な領域を置き換えて(移植して)得られる抗体である。例えば,ヒト化抗体として,ヒト抗体を構成する免疫グロブリン軽鎖の3箇所の相補性決定領域(CDR)と免疫グロブリン重鎖の3箇所の相補性決定領域(CDR)を,他の哺乳動物のCDRで置き換えた抗体が挙げられる。ヒト抗体に組み込まれるCDRが由来する生物種は,ヒト以外の哺乳動物である限り特に限定はないが,好ましくは,マウス,ラット,ウサギ,ウマ,ヒト以外の霊長類であり,より好ましくはマウス及びラットであり,更に好ましくはマウスである。
【0066】
ヒト化抗体の作製法は,当該技術分野で周知であり,ウインター(Winter)らが考案した,ヒト抗体の可変領域にある相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を,非ヒト哺乳動物の抗体のCDRで置き換える方法(VerhoeyenM.,Science.,239,1534-1536,(1988))に基づくものが,最も一般的である。ここで,非ヒト哺乳動物の抗体のCDRのみならず,CDRの構造保持あるいは抗原との結合に関与しているCDR外の領域のアミノ酸配列により,アクセプターとなるヒト抗体の対応する箇所を置き換えることが,ドナー抗体の持つ本来の活性を再現するために必要である場合があることも周知である(Queen C.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA.,86,10029-10033,(1989)。ここで,CDR外の領域は,フレームワーク領域(FR)ともいう。
【0067】
つまり,ヒト化抗体の作製は,ヒト抗体の可変領域のCDR(と場合によりその周辺のFR)に代えて,非ヒト哺乳動物の抗体のCDR(と場合によりその周辺のFR)を移植する作業を含む。この作業において,元となるヒト抗体の可変領域のフレームワーク領域は,生殖細胞系列抗体遺伝子配列を含む公共のDNAデータベース等から得ることができる。例えば,ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列及びアミノ酸配列は,「VBase」ヒト生殖細胞系配列データベース(インターネットにおいてwww.mrccpe.cam.ac.uk/vbaseで入手可能)から選択することができる。この他,公表された文献,例えば「Kabat EA.,Sequences of Proteins of ImmunologicalInterest,第5版,米国保健福祉省,NIH Publication No.91-3242,(1991)」,「Tomlinson IM.,J. fol. Biol.,227,776-98,(1992)」,「Cox JPL.,Eur.J Immunol.,24:827-836,(1994)」等に記載されたDNA配列及びアミノ酸配列から選択することもできる。
【0068】
以上のように,ヒト化抗体において,元のヒト抗体の可変領域に移植される非ヒト哺乳動物の抗体の領域は,一般に,CDRそれ自体,又はCDRとの周辺のFRを含む。但し,CDRとともに移植されるFRも,CDRの構造保持あるいは抗原との結合に関与しており,実質的に抗体の相補性を決定する機能を有すると考えられることから,本発明において「CDR」の語は,ヒト化抗体を作製する場合に,非ヒト哺乳動物の抗体からヒト化抗体に移植される,又は移植され得る領域をいう。即ち,一般にFRとされる領域であっても,それがCDRの構造保持あるいは抗原との結合に関与しており,実質的に抗体の相補性を決定する機能を有していると考えられるものである限り,本発明においてはCDRに含める。
【0069】
本発明の抗hTfR抗体は,これを静脈注射等により生体内に投与した場合,脳内の毛細血管の内皮細胞上に存在するhTfRに効率良く結合することができる。hTfRと結合した抗体は,エンドサイトーシス,トランスサイトーシス等の機構により血液脳関門を通過して脳内に取り込まれる。従って,脳内で機能させるべき蛋白質,低分子化合物等を,本発明の抗hTfR抗体と結合させることにより,これらの物質に効率良く血液脳関門を通過させて脳内に到達させることができる。また,本発明の抗hTfR抗体は,血液脳関門を通過した後に,大脳の脳実質,海馬の神経様細胞,小脳のプルキンエ細胞等に,または少なくともこれらのいずれかに到達できる。そして,大脳の線条体の神経様細胞及び中脳の黒質の神経様細胞へ到達することも予想される。従って,これら組織又は細胞に作用する蛋白質,低分子化合物等を,本発明の抗hTfR抗体と結合させることにより,これら組織又は細胞に到達させることができる。
【0070】
通常であれば血液脳関門を通過することができず,そのため静脈内投与では脳内で生理的,薬理的な作用を殆ど又は全く発揮できない物質(蛋白質,低分子化合物等)を,血中から脳内に到達させそこで作用を発揮させる上で,本発明の抗hTfR抗体は,有効な手段となり得る。特に,本発明の抗hTfR抗体は血液脳関門を通過した後に,大脳の脳実質,海馬の神経様細胞,小脳のプルキンエ細胞等に,または少なくともこれらのいずれかに到達する。そして,大脳の線条体の神経様細胞及び中脳の黒質の神経様細胞へ到達することも予想される。従って,それらの物質を本発明の抗hTfR抗体分子と結合した形として静脈内投与等により血中投与することにより,これら脳の組織又は細胞においてそれらの作用を発揮させ又は強化することが可能となる。
【0071】
抗hTfR抗体とそのような物質(蛋白質,低分子化合物等)とを結合させる方法としては,非ペプチドリンカー又はペプチドリンカーを介して結合させる方法がある。非ペプチドリンカーとしては,ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体,ポリオキシエチル化ポリオール,ポリビニルアルコール,多糖類,デキストラン,ポリビニルエーテル,生分解性高分子,脂質重合体,キチン類,及びヒアルロン酸,又はこれらの誘導体,若しくはこれらを組み合わせたものを用いることができる。ペプチドリンカーは,ペプチド結合した1~50個のアミノ酸から構成されるペプチド鎖若しくはその誘導体であって,そのN末端とC末端が,それぞれ抗hTfR抗体又は蛋白質,低分子化合物等のいずれかと共有結合を形成することにより,抗hTfR抗体と蛋白質,低分子化合物等とを結合させるものである。
【0072】
非ペプチドリンカーとしてPEGを用いて本発明の抗hTfR抗体と所望の他の蛋白質Aとを結合させたものは,特に,抗hTfR抗体-PEG-蛋白質という。抗hTfR抗体-PEG-蛋白質は,抗hTfR抗体とPEGを結合させて抗hTfR抗体-PEGを作製し,次いで抗hTfR抗体-PEGと他の蛋白質Aとを結合させることにより製造することができる。又は,抗hTfR抗体-PEG-蛋白質は,他の蛋白質AとPEGとを結合させて蛋白質-PEGを作製し,次いで蛋白質-PEGと抗hTfR抗体を結合させることによっても製造することができる。PEGを抗hTfR抗体及び他の蛋白質Aと結合させる際には,カーボネート,カルボニルイミダゾール,カルボン酸の活性エステル,アズラクトン,環状イミドチオン,イソシアネート,イソチオシアネート,イミデート,又はアルデヒド等の官能基で修飾されたPEGが用いられる。これらPEGに導入された官能基が,主に抗hTfR抗体及び他の蛋白質A分子内のアミノ基と反応することにより,PEGとhTfR抗体及び他の蛋白質Aが共有結合する。このとき用いられるPEGの分子量及び形状に特に限定はないが,その平均分子量(MW)は,好ましくはMW=500~60000であり,より好ましくはMW=500~20000である。例えば,平均分子量が約300,約500,約1000,約2000,約4000,約10000,約20000等であるPEGは,非ペプチドリンカーとして好適に使用することができる。抗hTfR抗体と所望の低分子化合物を結合させる場合も同様である。
【0073】
例えば,抗hTfR抗体-PEGは,抗hTfR抗体とアルデヒド基を官能基として有するポリエチレングリコール(ALD-PEG-ALD)とを,該抗体に対するALD-PEG-ALDのモル比が11,12.5,15,110,120等になるように混合し,これにNaCNBH3等の還元剤を添加して反応させることにより得られる。次いで,抗hTfR抗体-PEGを,NaCNBH等の還元剤の存在下で,他の蛋白質Aと反応させることにより,抗hTfR抗体-PEG-蛋白質が得られる。逆に,先に他の蛋白質AとALD-PEG-ALDとを結合させて蛋白質-PEGを作製し,次いで蛋白質-PEGと抗hTfR抗体を結合させることによっても,抗hTfR抗体-PEG-蛋白質を得ることができる。
【0074】
抗hTfR抗体と他の蛋白質Aとは,抗hTfR抗体の重鎖又は軽鎖のC末端側又はN末端側に,リンカー配列を介して又は直接に,それぞれ他の蛋白質AのN末端又はC末端をペプチド結合により結合させることもできる。このように抗hTfR抗体と他の蛋白質Aとを結合させてなる融合蛋白質は,抗hTfR抗体の重鎖又は軽鎖をコードするcDNAの3’末端側又は5’末端側に,直接又はリンカー配列をコードするDNA断片を挟んで,他の蛋白質AをコードするcDNAがインフレームで配置されたDNA断片を,哺乳動物細胞用の発現ベクターに組み込み,この発現ベクターを導入した哺乳動物細胞を培養することにより,得ることができる。この哺乳動物細胞には,他の蛋白質AをコードするDNA断片を重鎖と結合させる場合にあっては,抗hTfR抗体の軽鎖をコードするcDNA断片を組み込んだ哺乳動物細胞用の発現ベクターも,同じホスト細胞に導入され,また,他の蛋白質AをコードするDNA断片を軽鎖と結合させる場合にあっては,抗hTfR抗体の重鎖をコードするcDNA断片を組み込んだ哺乳動物細胞用の発現ベクターも,同じホスト細胞に導入される。抗hTfR抗体が一本鎖抗体である場合,抗hTfR抗体と他の蛋白質Aとを結合させた融合蛋白質は,他の蛋白質AをコードするcDNAの5’末端側又は3’末端側に,直接,又はリンカー配列をコードするDNA断片を挟んで,1本鎖抗hTfR抗体をコードするcDNAを連結したDNA断片を,(哺乳動物細胞,酵母等の真核生物又は大腸菌等の原核生物細胞用の)発現ベクターに組み込み,この発現ベクターを導入したこれらの細胞中で発現させることにより,得ることができる。
【0075】
抗hTfR抗体の軽鎖のC末端側に他の蛋白質Aを結合させたタイプの融合蛋白質は,抗ヒトトランスフェリン受容体抗体が,軽鎖の可変領域の全て又は一部を含むアミノ酸配列と,重鎖の可変領域の全て又は一部を含むアミノ酸配列とを含むものであり,他の蛋白質Aが,この抗ヒトトランスフェリン受容体抗体の軽鎖のC末端側に結合したものである。ここで抗hTfR抗体の軽鎖と他の蛋白質Aとは,直接結合してもよく,リンカーを介して結合してもよい。
【0076】
抗hTfR抗体の重鎖のC末端側に他の蛋白質Aを結合させたタイプの融合蛋白質は,抗ヒトトランスフェリン受容体抗体が,軽鎖の可変領域の全て又は一部を含むアミノ酸配列と,重鎖の可変領域の全て又は一部を含むアミノ酸配列とを含むものであり,他の蛋白質Aが,この抗ヒトトランスフェリン受容体抗体の重鎖のC末端側に結合したものである。ここで抗hTfR抗体の重鎖と他の蛋白質Aとは,直接結合してもよく,リンカーを介して結合してもよい。
【0077】
抗hTfR抗体の軽鎖のN末端側に他の蛋白質Aを結合させたタイプの融合蛋白質は,抗ヒトトランスフェリン受容体抗体が,軽鎖の可変領域の全て又は一部を含むアミノ酸配列と,重鎖の可変領域の全て又は一部を含むアミノ酸配列とを含むものであり,他の蛋白質Aが,この抗ヒトトランスフェリン受容体抗体の軽鎖のN末端側に結合したものである。ここで抗hTfR抗体の軽鎖と他の蛋白質Aとは,直接結合してもよく,リンカーを介して結合してもよい。
【0078】
抗hTfR抗体の重鎖のN末端側に他の蛋白質Aを結合させたタイプの融合蛋白質は,抗ヒトトランスフェリン受容体抗体が,軽鎖の可変領域の全て又は一部を含むアミノ酸配列と,重鎖の可変領域の全て又は一部を含むアミノ酸配列とを含むものであり,他の蛋白質Aが,この抗ヒトトランスフェリン受容体抗体の重鎖のN末端側に結合したものである。ここで抗hTfR抗体の重鎖と他の蛋白質Aとは,直接結合してもよく,リンカーを介して結合してもよい。
【0079】
このとき抗hTfR抗体と他の蛋白質Aとの間に配置されるリンカー配列は,好ましくは1~50個,より好ましくは1~17個,更に好ましくは1~10個,更により好ましくは1~5個のアミノ酸から構成されるペプチド鎖であるが,抗hTfR抗体に結合させるべき他の蛋白質Aによって,リンカー配列を構成するアミノ酸の個数は,1個,2個,3個,1~17個,1~10個,10~40個,20~34個,23~31個,25~29個,27個等と適宜調整できる。そのようなリンカー配列は,これにより連結された抗hTfR抗体がhTfRとの親和性を保持し,且つ当該リンカー配列により連結された他の蛋白質Aが,生理的条件下で当該蛋白質の生理活性を発揮できる限り,そのアミノ酸配列に限定はないが,好ましくは,グリシンとセリンから構成されるものである。例えば,グリシン又はセリンのいずれか1個のアミノ酸からなるもの,アミノ酸配列Gly-Ser,アミノ酸配列Gly-Gly-Ser,アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号3),アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号4),アミノ酸配列Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly(配列番号5),又はこれらのアミノ酸配列が1~10個,あるいは2~5個連続してなる配列を含むものが挙げらられる。1~50個のアミノ酸からなる配列,2~17個,2~10個,10~40個,20~34個,23~31個,25~29個,又は27個のアミノ酸からなる配列等を有するものである。例えば,アミノ酸配列Gly-Serを含むものはリンカー配列として好適に用いることができる。また,アミノ酸配列Gly-Serに続いてアミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号3)が5個連続してなる計27個のアミノ酸配列をを含むものはリンカー配列として好適に用いることができる。
【0080】
抗hTfR抗体と他の蛋白質Aとの融合蛋白質において,抗hTfR抗体が一本鎖抗体である場合,免疫グロブリン軽鎖の可変領域の全て又は一部を含むアミノ酸配列と免疫グロブリン重鎖の可変領域の全て又は一部を含むアミノ酸配列とは,一般にリンカー配列を介して,結合される。このとき,hTfRに対する抗hTfR抗体の親和性が保持される限り,軽鎖由来のアミノ酸配列のC末端側にリンカー配列が結合し,更にそのC末端側に重鎖由来のアミノ酸配列が結合してもよく,またこれとは逆に,重鎖由来のアミノ酸配列のC末端側にリンカー配列が結合し,更にそのC末端側に軽鎖由来のアミノ酸配列が結合してもよい。
【0081】
免疫グロブリンの軽鎖と重鎖の間に配置されるリンカー配列は,好ましくは2~50個,より好ましくは8~50個,更に好ましくは10~30個,更により好ましくは12~18個又は15~25個,例えば15個若しくは25個のアミノ酸から構成されるペプチド鎖である。そのようなリンカー配列は,これにより両鎖が連結されてなる抗hTfR抗体がhTfRと親和性を保持し且つ当該抗体に結合した他の蛋白質Aが,生理的条件下でその生理活性を発揮できる限り,そのアミノ酸配列に限定はないが,好ましくは,グリシンから又はグリシンとセリンから構成されるものであり,例えば,アミノ酸配列Gly-Ser,アミノ酸配列Gly-Gly-Ser,アミノ酸配列Gly-Gly-Gly,アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号3),アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号4),アミノ酸配列Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly)(配列番号5),又はこれらのアミノ酸配列が2~10個,あるいは2~5個連続してなる配列をを含むものである。リンカー配列の好ましい一態様として,アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号3)が3個連続してなる15個のアミノ酸からなる配列を含むものが挙げられる。
【0082】
抗hTfR抗体が一本鎖抗体である場合における,本発明のヒト化抗hTfR抗体と他の蛋白質Aとの融合蛋白質の具体的な態様の一例として,他の蛋白質AのC末端側に,アミノ酸配列Gly-Serに続いてアミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号3)が5個連続してなる計27個のアミノ酸からなる第1のリンカー配列を介して,一本鎖抗体が結合したものが例示できる。ここで用いられる,一本鎖抗体の好ましい一態様として,配列番号205に記載のアミノ酸配列を有する抗hTfR抗体重鎖の可変領域のC末端に,アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号3)が3個連続してなる計15個のアミノ酸からなる第1のリンカー配列を介して,配列番号191に記載のアミノ酸配列を有する抗hTfR抗体軽鎖の可変領域が結合したものである,配列番号277に記載のアミノ酸配列を有するものが挙げられる。
【0083】
抗hTfR抗体が一本鎖抗体である場合におけるこのような融合蛋白質は,例えば,融合蛋白質をコードする塩基配列を有するDNA断片を組み込んだ発現ベクターで哺乳動物細胞等のホスト細胞を形質転換させ,このホスト細胞を培養することにより製造することができる。
【0084】
なお,本発明において,1つのペプチド鎖に複数のリンカー配列が含まれる場合,便宜上,各リンカー配列はN末端側から順に,第1のリンカー配列,第2のリンカー配列というように命名する。
【0085】
抗hTfR抗体がFabである場合における,本発明のヒト化抗hTfR抗体と他の蛋白質Aとの融合蛋白質の具体的な態様の一例として,他の蛋白質AのC末端側に,Gly-Serに続いてアミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号3)が5個連続してなる計27個のアミノ酸からなるリンカー配列を介して,抗hTfR抗体重鎖の可変領域とC1領域を含む領域を融合させたものが挙げられる。このときC1領域に加えてヒンジ部の一部が含まれてもよいが,当該ヒンジ部は重鎖間のジスフィルド結合を形成するシステイン残基を含まない。
【0086】
抗hTfR抗体と結合させるべき他の蛋白質Aに特に限定はないが,生体内において生理活性を発揮し得るものであり,特に,脳内に到達させてその機能を発揮させるべきものであるにも拘らず,そのままでは血液脳関門を通過することができないため,静脈内投与では脳内で機能させることが期待できない蛋白質である。そのような蛋白質としては,例えば,神経成長因子(NGF)や,α-L-イズロニダーゼ,イズロン酸-2-スルファターゼ,グルコセレブロシダーゼ,β-ガラクトシダーゼ,GM2活性化蛋白質,β-ヘキソサミニダーゼA,β-ヘキソサミニダーゼB,N-アセチルグルコサミン-1-フォスフォトランスフェラーゼ,α-マンノシダーゼ,β-マンノシダーゼ,ガラクトシルセラミダーゼ,サポシンC,アリルスルファターゼA,α-L-フコシダーゼ,アスパルチルグルコサミニダーゼ,α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ,酸性スフィンゴミエリナーゼ,α-ガラクトシダーゼA,β-グルクロニダーゼ,ヘパランN-スルファターゼ,α-N-アセチルグルコサミニダーゼ,アセチルCoAα-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ,N-アセチルグルコサミン-6-硫酸スルファターゼ,酸性セラミダーゼ,アミロ-1,6-グルコシダーゼ,シアリダーゼ,アスパルチルグルコサミニダーゼ(PPT1),トリペプチジルペプチダーゼ-1,ヒアルロニダーゼ-1,CLN1,CLN2等のリソソーム酵素が挙げられる。
【0087】
抗hTfR抗体と結合させた神経成長因子(NGF)は,アルツハイマー病の痴ほう症治療薬として,抗hTfR抗体と融合させたα-L-イズロニダーゼはハーラー症候群又はハーラー・シャイエ症候群における中枢神経障害治療剤として,抗hTfR抗体と融合させたイズロン酸-2-スルファターゼはハンター症候群における中枢神経障害治療剤として,グルコセレブロシダーゼはゴーシェ病における中枢神経障害治療剤として,βガラクトシダーゼはGM1-ガングリオシドーシス1~3型における中枢神経障害治療剤として,GM2活性化蛋白質はGM2-ガングリオシドーシスAB異型における中枢神経障害治療剤として,β-ヘキソサミニダーゼAはサンドホフ病及びティサックス病における中枢神経障害治療剤として,β-ヘキソサミニダーゼBはサンドホフ病における中枢神経障害治療剤として,N-アセチルグルコサミン-1-フォスフォトランスフェラーゼはI-細胞病における中枢神経障害治療剤として,α-マンノシダーゼはα-マンノシドーシスにおける中枢神経障害治療剤として,β-マンノシダーゼはβ-マンノシドーシスにおける中枢神経障害治療剤として,ガラクトシルセラミダーゼはクラッベ病における中枢神経障害治療剤として,サポシンCはゴーシェ病様蓄積症における中枢神経障害治療剤として,アリルスルファターゼAは異染性白質変性症(異染性白質ジストロフィー)における中枢神経障害治療剤として,α-L-フコシダーゼはフコシドーシスにおける中枢神経障害治療剤として,アスパルチルグルコサミニダーゼはアスパルチルグルコサミン尿症における中枢神経障害治療剤として,α-N-アセチルガラクトサミニダーゼはシンドラー病及び川崎病における中枢神経障害治療剤として,酸性スフィンゴミエリナーゼはニーマン・ピック病における中枢神経障害治療剤として,α-ガラクトシダーゼAはファブリー病における中枢神経障害治療剤として,β-グルクロニダーゼはスライ症候群における中枢神経障害治療剤として,ヘパランN-スルファターゼ,α-N-アセチルグルコサミニダーゼ,アセチルCoAα-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ及びN-アセチルグルコサミン-6-硫酸スルファターゼはサンフィリッポ症候群における中枢神経障害治療剤として,酸性セラミダーゼはファーバー病における中枢神経障害治療剤として,アミロ-1,6-グルコシダーゼはコリ病(フォーブス・コリ病)における中枢神経障害治療剤として,シアリダーゼはシアリダーゼ欠損症における中枢神経障害治療剤として,アスパルチルグルコサミニダーゼはアスパルチルグルコサミン尿症における中枢神経障害治療剤として,パルミトイル蛋白質チオエステラーゼ-1(PPT-1)は,神経セロイドリポフスチン症又はSantavuori-Haltia病における中枢神経障害治療剤として,トリペプチジルペプチダーゼ-1(TPP-1)は,神経セロイドリポフスチン症又はJansky-Bielschowsky病における中枢神経障害治療剤として,ヒアルロニダーゼ-1はヒアルロニダーゼ欠損症における中枢神経障害治療剤として,CLN1及び2はバッテン病における中枢神経障害治療剤として使用できる。特に,本発明の抗hTfR抗体は,血液脳関門を通過した後に,大脳の脳実質,海馬の神経様細胞,小脳のプルキンエ細胞等に到達し、又大脳の線条体の神経様細胞及び中脳の黒質の神経様細胞にも到達すると予想されるので,これら組織又は細胞において薬効を機能させるべき蛋白質と融合させることにより,その蛋白質の薬効を強化し得る。但し,医薬用途はこれらの疾患に限られるものではない。
【0088】
その他,抗hTfR抗体と結合させて薬効を発揮できる蛋白質としては,リソソーム酵素,毛様体神経栄養因子(CNTF),グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF),ニューロトロフィン3,ニューロトロフィン4/5,ニューロトロフィン6,ニューレグリン1,エリスロポエチン,ダルベポエチン,アクチビン,塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF),線維芽細胞成長因子2(FGF2),上皮細胞増殖因子(EGF),血管内皮増殖因子(VEGF),インターフェロンα,インターフェロンβ,インターフェロンγ,インターロイキン6,顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF),顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF),マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF),各種サイトカイン,腫瘍壊死因子α受容体(TNF-α受容体),PD-1リガンド,ベータアミロイドを分解する活性を有する酵素,抗ベータアミロイド抗体,抗BACE抗体,抗EGFR抗体,抗PD-1抗体,抗PD-L1抗体,抗HER2抗体,抗TNF-α抗体,及びその他の抗体医薬等が挙げられる。
【0089】
抗hTfR抗体と結合させたリソソーム酵素はリソソーム病における中枢神経障害治療剤として,CNTFは筋委縮性側索硬化症の治療剤として,GDNF,ニューロトロフィン3及びニューロトロフィン4/5は脳虚血の治療剤として,GDNFはパーキンソン病の治療剤として,ニューレグリン1は統合失調症の治療剤として,エリスロポエチン及びダルベポエチンは脳虚血の治療剤として,bFGF及びFGF2は外傷性の中枢神経系障害の治療剤,脳外科手術,脊椎外科手術後の回復に,ベータアミロイドを分解する活性を有する酵素,抗ベータアミロイド抗体及び抗BACE抗体はアルツハイマー病の治療剤として,抗EGFR抗体,抗PD-1抗体,抗PD-L1抗体,及び抗HER2抗体は脳腫瘍を含む中枢神経系の腫瘍の治療剤として,TNFαR-抗hTfR抗体は脳虚血及び脳炎症性疾患の治療剤として使用できる。
【0090】
アルツハイマー病,パーキンソン病,ハンチントン病等の神経変性疾患,統合失調症,うつ症等の精神障害,多発性硬化症,筋委縮性側索硬化症,脳腫瘍を含む中枢神経系の腫瘍,脳障害を伴うリソソーム病,糖原病,筋ジストロフィー,脳虚血,脳炎症性疾患,プリオン病,外傷性の中枢神経系障害等の疾患に対する治療剤は,概ね抗hTfR抗体と融合させるべき他の蛋白質Aとなり得る。また,ウィルス性及び細菌性の中枢神経系疾患に対する治療剤も,概ね抗hTfR抗体と融合させるべき他の蛋白質Aとなり得る。更には,脳外科手術,脊椎外科手術後の回復にも用いることができる薬剤も,概ね抗hTfR抗体と融合させるべき他の蛋白質Aとなり得る。
【0091】
抗hTfR抗体と結合させるべき他の蛋白質Aとして,上記の蛋白質の天然型(野生型)のものに加えて,天然型(野生型)のこれら蛋白質の1個又は複数個のアミノ酸が,他のアミノ酸へ置換,欠失等された類似物も,これら蛋白質としての機能を完全に又は部分的に有する限り,これら蛋白質に含まれる。アミノ酸を他のアミノ酸へ置換させる場合,置換させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~10個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個である。アミノ酸を欠失させる場合,欠失させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~10個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個である。また,これらアミノ酸の置換と欠失を組み合わせて,所望の類似物とすることもできる。更には,天然型(野生型)の蛋白質又はその類似物のアミノ酸配列中若しくはN末端側又はC末端側に,1個又は複数個のアミノ酸が付加されたものも,これら蛋白質としての機能を完全に又は部分的に有する限り,これら蛋白質に含まれる。このとき付加されるアミノ酸の個数は,好ましくは1~10個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個である。これらアミノ酸の付加,置換及び欠失を組み合わせて,所望のこれら蛋白質の類似物とすることもできる。
【0092】
なお,これら他の蛋白質Aに変異を加えてC末端又はN末端にアミノ酸を付加した場合,その付加したアミノ酸が,これら蛋白質を抗hTfR抗体と融合させたときに,これら蛋白質と抗hTfR抗体との間に位置することとなった場合,当該付加したアミノ酸はリンカーの一部を構成する。
【0093】
天然型のヒトI2S(hI2S)は,配列番号246で示される525個のアミノ酸から構成されるリソソーム酵素の一種である。本発明における,抗hTfR抗体と他の蛋白質Aとの融合蛋白質の具体的な態様の一例として,抗hTfR抗体重鎖のC末端にリンカー配列としてアミノ酸配列Gly-Serを介して天然型のヒトI2Sを融合させたタイプのものが挙げられる。このような融合蛋白質として,
(1)軽鎖が配列番号164に記載のアミノ酸配列からなり且つC末端側にペプチド結合によりリンカー配列Gly-Serを介してヒトI2Sが結合した重鎖が配列番号247に記載のアミノ酸配列からなるもの,
(2)軽鎖が配列番号180に記載のアミノ酸配列からなり且つC末端側にペプチド結合によりリンカー配列Gly-Serを介してヒトI2Sが結合した重鎖が配列番号249に記載のアミノ酸配列からなるもの,及び
(3)軽鎖が配列番号196に記載のアミノ酸配列からなり且つC末端側にペプチド結合によりリンカー配列Gly-Serを介してヒトI2Sが結合した重鎖が配列番号251に記載のアミノ酸配列からなるものが例示できる。
【0094】
本発明において,「ヒトI2S」又は「hI2S」の語は,特に天然型のhI2Sと同一のアミノ酸配列を有するhI2Sをいうが,これに限らず,I2S活性を有するものである限り,天然型のhI2Sのアミノ酸配列に置換,欠失,付加等の変異を加えたものもhI2Sに含まれる。hI2Sのアミノ酸配列のアミノ酸を他のアミノ酸へ置換させる場合,置換させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~10個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個であり,更により好ましくは1~2個である。hI2Sのアミノ酸配列中のアミノ酸を欠失させる場合,欠失させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~10個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個であり,更により好ましくは1~2個である。また,これらアミノ酸の置換と欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。hI2Sにアミノ酸を付加させる場合,hI2Sのアミノ酸配列中若しくはN末端側又はC末端側に,好ましくは1~10個,より好ましくは1~5個,更に好ましくは1~3個,更により好ましくは1~2個アミノ酸が付加される。これらアミノ酸の付加,置換及び欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。変異を加えたhI2Sのアミノ酸配列は,元のhI2Sのアミノ酸配列と,好ましくは80%以上の相同性を有し,より好ましくは90%以上の相同性を示し,更に好ましくは,95%以上の相同性を示す。
【0095】
なおここで,hI2SがI2S活性を有するというときは,抗hTfR抗体と融合させたときに,天然型のhI2Sが本来有する活性に対して,3%以上の活性を有していることをいう。但し,その活性は,天然型のhI2Sが本来有する活性に対して,10%以上であることが好ましく,20%以上であることがより好ましく,50%以上であることが更に好ましく,80%以上であることが更により好ましい。抗hTfR抗体と融合させたhI2Sが変異を加えたものである場合も同様である。
【0096】
抗hTfR抗体とヒトI2Sの融合蛋白質は,例えば,配列番号249で示されるアミノ酸配列をコードする配列番号250で示される塩基配列を有するDNA断片を組み込んだ発現ベクターと,配列番号180で示されるアミノ酸配列を有する,抗hTfR抗体軽鎖をコードする配列番号181で示される塩基配列を有するDNA断片を組み込んだ発現ベクターとにより哺乳動物細胞等のホスト細胞を形質転換させ,このホスト細胞を培養することにより製造することができる。製造された融合蛋白質はハンター病の治療剤,特にハンター病における中枢神経障害治療剤として使用し得る。
【0097】
なお,抗hTfR抗体又はヒトI2Sに変異を加えてC末端又はN末端にアミノ酸を付加した場合,その付加したアミノ酸が,抗hTfR抗体とヒトI2Sとの間に配置された場合,当該付加したアミノ酸はリンカーの一部を構成する。
【0098】
上記のごとく抗hTfR抗体とヒトI2Sの融合蛋白質を例示したが,抗hTfR抗体とヒトI2Sの融合蛋白質の好ましい実施形態において,抗hTfR抗体の重鎖及び軽鎖のCDRのアミノ酸配列は,抗体がhTfRに対する特異的な親和性を有するものである限り,特に制限はない。但し,本発明の抗hTfR抗体は,好ましくは,実施例7に記載の方法により測定されるhTfRとの解離定数(K)が,好ましくは1×10-8M以下であるものであり,より好ましくは1×10-9M以下であるものであり,更に好ましくは1×10-10以下である。例えば,好適なものとして,解離定数が1×10-13M~1×10-9Mであるもの,1×10-13M~1×10-10Mであるものを挙げることができる。抗体が一本鎖抗体であっても同様である。また,本発明の抗hTfR抗体がサルTfRに対しても親和性を有するものである場合,実施例7に記載の方法により測定される抗hTfR抗体のサルTfRとの解離定数は,好ましくは5×10-8M以下であるものであり,より好ましくは2×10-8M以下であるものであり,更に好ましくは1×10-8M以下のものである。例えば好適なものとして,解離定数が1×10-13M~2×10-8Mのもの,1×10-13M~2×10-8Mのものを挙げることができる。抗体が一本鎖抗体であっても同様である。
【0099】
抗hTfR抗体には,抗hTfR抗体に他の蛋白質Aを結合させるのと同じ手法により,比較的短いペプチド鎖を結合させることもできる。抗hTfR抗体に結合させるべきペプチド鎖は,そのペプチド鎖が所望の生理活性を有するものである限り限定はなく,例えば,各種蛋白質の生理活性を発揮する領域のアミノ酸配列を有するペプチド鎖が挙げられる。ペプチド鎖の鎖長は特に限定はないが,好ましくは2~200個のアミノ酸から構成されるものであり,例えば5~50個のアミノ酸から構成されるものである。
【0100】
抗hTfR抗体に低分子物質を結合させる場合,候補となる低分子物質に特に限定はないが,脳内に到達させてその機能を発揮させるべきものであるにも拘わらず,そのままでは血液脳関門を通過できないため,静脈内投与では脳内で機能させることが期待できない低分子物質である。例えば,係る低分子物質として,シクロフォスファミド,イホスファミド,メルファラン,ブスルファン,チオテバ,ニムスチン,ラニムスチン,ダカルバシン,プロカルバシン,テモゾロマイド,カルムスチン,ストレプトゾトシン,ペンダムスチン,シスプラチン,カルボプラチン,オキサリプラチン,ネダプラチン,5-フルオロウラシル,スルファジアジン,スルファメトキサゾール,メトトレキセート,トリメトプリム,ピリメタミン,フルオロウラシル,フルシトシン,アザチオプリン,ペントスタチン,ヒドロキシウレア,フルダラビン,シタラビン,ゲムシタビン,イリノテカン,ドキソルビシン,エトポシド,レポフロキサシン,シプロフロキサシン,ビンブラスチン,ビンクリスチン,パクリタキセル,ドデタキセル,マイトマイシンC,ドキソルビシン,エピルビシン等の抗ガン剤を挙げることができる。その他,抗hTfR抗体と結合させるべき低分子物質としてsiRNA,アンチセンスDNA,短いペプチドが挙げられる。
【0101】
抗hTfR抗体と低分子物質を結合させる場合,低分子物質は軽鎖又は重鎖の何れか一方のみに結合させてもよく,また,軽鎖と重鎖の各々に結合させてもよい。また,抗hTfR抗体は,hTfRに対する親和性を有するものである限り,軽鎖の可変領域の全て又は一部を含むアミノ酸配列,及び/又は重鎖の可変領域の全て又は一部を含むアミノ酸配列を含むものであってよい。
【0102】
アルツハイマー病,パーキンソン病,ハンチントン病等の神経変性疾患,統合失調症,うつ症等の精神障害,多発性硬化症,筋委縮性側索硬化症,脳腫瘍を含む中枢神経系の腫瘍,脳障害を伴うリソソーム病,糖原病,筋ジストロフィー,脳虚血,脳炎症性疾患,プリオン病,外傷性の中枢神経系障害等の疾患に対する治療剤は,一般に抗hTfR抗体と融合させるべき低分子物質候補たり得る。また,ウィルス性及び細菌性の中枢神経系疾患に対する治療剤も,一般に抗hTfR抗体と融合させるべき低分子物質候補たり得る。更には,脳外科手術,脊椎外科手術後の回復にも用いることができる薬剤も,一般に抗hTfR抗体と融合させるべき低分子物質候補たり得る。
【0103】
抗hTfR抗体が,ヒト以外の動物のものである場合,これをヒトに投与したときに,当該抗体に対する抗原抗体反応を惹起し,好ましくない副作用が生じるおそれが高い。ヒト以外の動物の抗体は,ヒト化抗体とすることでそのような抗原性を減少でき,ヒトに投与したときの抗原抗体反応に起因する副作用の発生を抑制できる。また,サルを用いた実験によれば,ヒト化抗体は,マウス抗体と比較して,血中でより安定であることが報告されており,治療効果をそれだけ長期間持続させることができると考えられる。抗原抗体反応に起因する副作用の発生は,抗hTfR抗体としてヒト抗体を用いることによっても抑制することができる。
【0104】
抗hTfR抗体が,ヒト化抗体又はヒト抗体である場合について,以下に更に詳しく説明する。ヒト抗体の軽鎖には,λ鎖とκ鎖がある。抗hTfR抗体を構成する軽鎖は,λ鎖とκ鎖のいずれであってもよい。また,ヒトの重鎖には,γ鎖,μ鎖,α鎖,σ鎖及びε鎖があり,それぞれ,IgG,IgM,IgA,IgD及びIgEに対応している。抗hTfR抗体を構成する重鎖は,γ鎖,μ鎖,α鎖,σ鎖及びε鎖のいずれであってもよいが,好ましくはγ鎖である。更に,ヒトの重鎖のγ鎖には,γ1鎖,γ2鎖,γ3鎖及びγ4鎖があり,それぞれ,IgG1,IgG2,IgG3及びIgG4に対応している。抗hTfR抗体を構成する重鎖がγ鎖である場合,そのγ鎖は,γ1鎖,γ2鎖,γ3鎖及びγ4鎖のいずれであってもよいが,好ましくは,γ1鎖又はγ4鎖である。抗hTfR抗体が,ヒト化抗体又はヒト抗体であり,且つIgGである場合,ヒト抗体の軽鎖はλ鎖とκ鎖のいずれでもあってもよく,ヒト抗体の重鎖は,γ1鎖,γ2鎖,γ3鎖及びγ4鎖のいずれであってもよいが,好ましくは,γ1鎖又はγ4鎖である。例えば,好ましい抗hTfR抗体の一つの態様として,軽鎖がλ鎖であり重鎖がγ1鎖であるものが挙げられる。
【0105】
抗hTfR抗体がヒト化抗体又はヒト抗体である場合,抗hTfR抗体と他の蛋白質Aとは,抗hTfR抗体の重鎖又は軽鎖のN末端(又はC末端)に,リンカー配列を介して又は直接に,他の蛋白質AのC末端(又はN末端)を,それぞれペプチド結合により結合させることができる。他の蛋白質Aを抗hTfR抗体の重鎖のN末端側(又はC末端側)に結合させる場合,抗hTfR抗体のγ鎖,μ鎖,α鎖,σ鎖又はε鎖のN末端(又はC末端)に,リンカー配列を介し又は直接に,他の蛋白質AのC末端(又はN末端)が,ペプチド結合によりそれぞれ結合される。抗hTfR抗体の軽鎖のN末端側(又はC末端側)に他の蛋白質Aを結合させる場合,抗hTfR抗体のλ鎖とκ鎖のN末端(又はC末端)に,リンカー配列を介し又は直接に,他の蛋白質AのC末端(又はN末端)が,ペプチド結合によりそれぞれ結合される。但し,抗hTfR抗体が,Fab領域からなるもの又はFab領域とヒンジ部の全部若しくは一部とからなるもの(Fab、F(ab’)及びF(ab’))の場合,他の蛋白質Aは,Fab,F(ab’)及びF(ab’)を構成する重鎖又は軽鎖のN末端(又はC末端)に,リンカー配列を介して又は直接に,そのC末端(又はN末端)をペプチド結合によりそれぞれ結合させることができる。
【0106】
ヒト化抗体又はヒト抗体である抗hTfR抗体の軽鎖のC末端側に他の蛋白質Aを結合させた融合蛋白質において,抗ヒトトランスフェリン受容体抗体は,軽鎖の可変領域の全て又は一部を含むアミノ酸配列と,重鎖の可変領域の全て又は一部を含むアミノ酸配列とを含むものである。ここで抗hTfR抗体の軽鎖と他の蛋白質Aとは,直接結合してもよく,リンカーを介して結合してもよい。
【0107】
ヒト化抗体又はヒト抗体である抗hTfR抗体の重鎖のC末端側に他の蛋白質Aを結合させた融合蛋白質において,抗ヒトトランスフェリン受容体抗体は,軽鎖の可変領域の全て又は一部を含むアミノ酸配列と,重鎖の可変領域の全て又は一部を含むアミノ酸配列とを含むものである。ここで抗hTfR抗体の重鎖と他の蛋白質Aとは,直接結合してもよく,リンカーを介して結合してもよい。
【0108】
ヒト化抗体又はヒト抗体である抗hTfR抗体の軽鎖のN末端側に他の蛋白質Aを結合させた融合蛋白質において,抗ヒトトランスフェリン受容体抗体は,軽鎖の可変領域の全て又は一部を含むアミノ酸配列と,重鎖の可変領域の全て又は一部を含むアミノ酸配列とを含むものである。ここで抗hTfR抗体の軽鎖と他の蛋白質Aとは,直接結合してもよく,リンカーを介して結合してもよい。
【0109】
ヒト化抗体又はヒト抗体である抗hTfR抗体の重鎖のN末端側に他の蛋白質Aを結合させた融合蛋白質において,抗ヒトトランスフェリン受容体抗体は,軽鎖の可変領域の全て又は一部を含むアミノ酸配列と,重鎖の可変領域の全て又は一部を含むアミノ酸配列とを含むものである。ここで抗hTfR抗体の重鎖と他の蛋白質Aとは,直接結合してもよく,リンカーを介して結合してもよい。
【0110】
抗hTfR抗体と他の蛋白質Aとの間にリンカー配列を配置する場合,抗hTfR抗体と他の蛋白質Aとの間に配置されるリンカー配列は,好ましくは1~50個のアミノ酸から構成されるペプチド鎖であるが,抗hTfR抗体に結合させるべき他の蛋白質Aによって,リンカー配列を構成するアミノ酸の個数は,1~17個,1~10個,10~40個,20~34個,23~31個,25~29個等と適宜調整される。そのようなリンカー配列は,当該リンカー配列により連結された抗hTfR抗体と他の蛋白質Aとが,それぞれの機能(hTfRに対する親和性,及び生理的条件下での活性又は機能)を保持している限り,そのアミノ酸配列に限定はないが,好ましくは,グリシンとセリンから構成されるものであり,例えば,グリシン又はセリンのいずれか1個のアミノ酸からなるもの,アミノ酸配列Gly-Ser,アミノ酸配列Gly-Gly-Ser,アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号3),アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号4),アミノ酸配列Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly(配列番号5),又はこれらのアミノ酸配列が1~10個,あるいは2~5個連続してなる配列を含むものである。例えば,アミノ酸配列Gly-Serに続いてアミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号3)が5個連続してなる計27個のアミノ酸配列を含むるものが,リンカー配列として好適に用いることができる。
【0111】
なおここで,抗hTfR抗体と融合させた他の蛋白質Aが,当該他の蛋白質Aの生理的条件下での活性又は機能を保持しているというとき又は単に活性を有するというときは,天然型である他の蛋白質Aが本来有する活性に対して,3%以上の活性又は機能を保持していることをいう。但し,その活性又は機能は,天然型の他の蛋白質Aが本来有する活性に対して,10%以上であることが好ましく,20%以上であることがより好ましく,50%以上であることが更に好ましく,80%以上であることが更により好ましい。抗hTfR抗体と融合させた他の蛋白質Aが変異を加えたものである場合も同様である。
【0112】
本発明における,ヒト化抗hTfR抗体と他の蛋白質Aとの融合蛋白質の更なる具体的な態様の一例として,抗hTfR抗体重鎖のC末端側に,Gly-Serに続いてアミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号3)が5個連続してなる計27個のアミノ酸からなるリンカー配列を介して,他の蛋白質Aを融合させたものが挙げられる。
【0113】
抗hTfR抗体がFabである場合における,本発明のヒト化抗hTfR抗体と他の蛋白質Aとの融合蛋白質の具体的な態様の一例として,他の蛋白質AのC末端側に,Gly-Serに続いてアミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号3)が5個連続してなる計27個のアミノ酸からなるリンカー配列を介して,抗hTfR抗体重鎖の可変領域とC1領域を含む領域を融合させたものが挙げられる。このときC1領域に加えてヒンジ部の一部が含まれてもよいが,当該ヒンジ部は,重鎖間のジスフィルド結合を形成するシステイン残基を含まない。
【0114】
抗hTfR抗体のhTfRに対する特異的親和性は,主に抗hTfR抗体の重鎖及び軽鎖のCDRのアミノ酸配列に依存する。それらCDRのアミノ酸配列は,抗hTfR抗体がhTfRに対する特異的な親和性を有するものである限り,特に制限はない。但し,本発明の抗hTfR抗体は,好ましくは,実施例7に記載の方法により測定されるhTfRとの解離定数(K)が,好ましくは1×10-8M以下のものであり,より好ましくは1×10-9M以下のものであり,更に好ましくは1×10-10以下のものであり,尚も更に好ましくは1×10-11以下のものである。例えば好適なものとして,解離定数が1×10-13M~1×10-9Mであるもの,1×10-13M~1×10-10であるものを挙げることができる。抗体が一本鎖抗体であっても同様である。また,本発明の抗hTfR抗体がサルTfRに対しても親和性を有するものである場合,実施例7に記載の方法により測定される抗hTfR抗体のサルTfRとの解離定数は,好ましくは5×10-8M以下のものであり,より好ましくは2×10-8M以下のものであり,更に好ましくは1×10-8M以下のものである。例えば好適なものとして,解離定数が1×10-13M~2×10-8Mのもの,1×10-13M~2×10-8Mのものを挙げることができる。抗体が一本鎖抗体であっても同様である。
【0115】
hTfRに親和性を有する抗体の好ましい実施形態として,抗体の軽鎖のCDRが以下に示す(1)~(14)に記載のアミノ酸配列を有するものが例示できる。すなわち:
(1)CDR1として配列番号6又は配列番号7のアミノ酸配列,CDR2として配列番号8若しくは配列番号9のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Trp-Thr-Ser,及びCDR3として配列番号10のアミノ酸配列,
(2)CDR1として配列番号11又は配列番号12のアミノ酸配列,CDR2として配列番号13若しくは配列番号14のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Tyr-Ala-Ser,及びCDR3として配列番号15のアミノ酸配列,
(3)CDR1として配列番号16又は配列番号17のアミノ酸配列,CDR2として配列番号18若しくは配列番号19のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Lys-Val-Ser,及びCDR3として配列番号20のアミノ酸配列,
(4)CDR1として配列番号21又は配列番号22のアミノ酸配列,CDR2として配列番号23若しくは配列番号24のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Asp-Thr-Ser,及びCDR3として配列番号25のアミノ酸配列,
(5)CDR1として配列番号26又は配列番号27のアミノ酸配列,CDR2として配列番号28若しくは配列番号29のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Asp-Thr-Ser,及びCDR3として配列番号30のアミノ酸配列,
(6)CDR1として配列番号31又は配列番号32のアミノ酸配列,CDR2として配列番号33若しくは配列番号34のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Ala-Ala-Ser,及びCDR3として配列番号35のアミノ酸配列,
(7)CDR1として配列番号36又は配列番号37のアミノ酸配列,CDR2として配列番号38若しくは配列番号39のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Gln-Th-Ser,及びCDR3として配列番号40のアミノ酸配列,
(8)CDR1として配列番号41又は配列番号42のアミノ酸配列,CDR2として配列番号43若しくは配列番号44のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Gly-Thr-Ser,及びCDR3として配列番号45のアミノ酸配列,
(9)CDR1として配列番号46又は配列番号47のアミノ酸配列,CDR2として配列番号48若しくは配列番号49のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Phe-Thr-Ser,及びCDR3として配列番号50のアミノ酸配列を有する軽鎖,
(10)CDR1として配列番号51又は配列番号52のアミノ酸配列,CDR2として配列番号53若しくは配列番号54のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Ala-Ala-Ser,及びCDR3として配列番号55のアミノ酸配列,
(11)CDR1として配列番号56又は配列番号57のアミノ酸配列,CDR2として配列番号58若しくは配列番号59のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Tyr-Ala-Ser,及びCDR3として配列番号60のアミノ酸配列,
(12)CDR1として配列番号61又は配列番号62のアミノ酸配列,CDR2として配列番号63若しくは配列番号64のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Trp-Ser-Ser,及びCDR3として配列番号65のアミノ酸配列,
(13)CDR1として配列番号66又は配列番号67のアミノ酸配列,CDR2として配列番号68若しくは配列番号69のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Tyr-Ala-Ser,及びCDR3として配列番号70のアミノ酸配列,
(14)CDR1として配列番号71又は配列番号72のアミノ酸配列,CDR2として配列番号73若しくは配列番号74のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Asp-Thr-Ser,及びCDR3として配列番号75のアミノ酸配列。
【0116】
hTfRに親和性を有する抗体のより具体的な実施形態として,抗体の軽鎖のCDRが以下に示す(1)~(14)に記載のアミノ酸配列を有するものが例示できる。すなわち:
(1)CDR1として配列番号6,CDR2として配列番号8,及びCDR3として配列番号10に記載のアミノ酸配列,
(2)CDR1として配列番号11,CDR2として配列番号13,及びCDR3として配列番号15に記載のアミノ酸配列,
(3)CDR1として配列番号16,CDR2として配列番号18,及びCDR3として配列番号20に記載のアミノ酸配列,
(4)CDR1として配列番号21,CDR2として配列番号23,及びCDR3として配列番号25に記載のアミノ酸配列,
(5)CDR1として配列番号26,CDR2として配列番号28,及びCDR3として配列番号30に記載のアミノ酸配列,
(6)CDR1として配列番号31,CDR2として配列番号33,及びCDR3として配列番号35に記載のアミノ酸配列,
(7)CDR1として配列番号36,CDR2として配列番号38,及びCDR3として配列番号40に記載のアミノ酸配列,
(8)CDR1として配列番号41,CDR2として配列番号43,及びCDR3として配列番号45に記載のアミノ酸配列,
(9)CDR1として配列番号46,CDR2として配列番号48,及びCDR3として配列番号50に記載のアミノ酸配列,
(10)CDR1として配列番号51,CDR2として配列番号53,及びCDR3として配列番号55に記載のアミノ酸配列,
(11)CDR1として配列番号56,CDR2として配列番号58,及びCDR3として配列番号60に記載のアミノ酸配列,
(12)CDR1として配列番号61,CDR2として配列番号63,及びCDR3として配列番号65に記載のアミノ酸配列,
(13)CDR1として配列番号66,CDR2として配列番号68,及びCDR3として配列番号70に記載のアミノ酸配列,
(14)CDR1として配列番号71,CDR2として配列番号73,及びCDR3として配列番号75に記載のアミノ酸配列。
【0117】
hTfRに親和性を有する抗体の好ましい実施形態として,抗体の重鎖のCDRが以下に示す(1)~(14)に記載のアミノ酸配列を有するものが例示できる。すなわち:
(1)CDR1として配列番号76又は配列番号77のアミノ酸配列,CDR2として配列番号78又は配列番号79のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号80又は配列番号81のアミノ酸配列,
(2)CDR1として配列番号82又は配列番号83のアミノ酸配列,CDR2として配列番号84又は配列番号85のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号86又は配列番号87のアミノ酸配列,
(3)CDR1として配列番号88又は配列番号89のアミノ酸配列,CDR2として配列番号90又は配列番号91のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号92又は配列番号93のアミノ酸配列,
(4)CDR1として配列番号94又は配列番号95のアミノ酸配列,CDR2として配列番号96又は配列番号97のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号98又は配列番号99のアミノ酸配列,
(5)CDR1として配列番号100又は配列番号101のアミノ酸配列,CDR2として配列番号102又は配列番号103のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号104又は配列番号105のアミノ酸配列,
(6)CDR1として配列番号106又は配列番号107のアミノ酸配列,CDR2として配列番号108のアミノ酸配列又は配列番号278のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号109又は配列番号110のアミノ酸配列,
(7)CDR1として配列番号111又は配列番号112のアミノ酸配列,CDR2として配列番号113又は配列番号114のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号115又は配列番号116のアミノ酸配列,
(8)CDR1として配列番号117又は配列番号118のアミノ酸配列,CDR2として配列番号119のアミノ酸配列又は配列番号279のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号120又は配列番号121のアミノ酸配列,
(9)CDR1として配列番号122又は配列番号123のアミノ酸配列,CDR2として配列番号124又は配列番号125のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号126又は配列番号127のアミノ酸配列,
(10)CDR1として配列番号128又は配列番号129のアミノ酸配列,CDR2として配列番号130又は配列番号131のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号132又は配列番号133のアミノ酸配列,
(11)CDR1として配列番号134又は配列番号135のアミノ酸配列,CDR2として配列番号136又は配列番号137のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号138又は配列番号139のアミノ酸配列,
(12)CDR1として配列番号140又は配列番号141のアミノ酸配列,CDR2として配列番号142又は配列番号143のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号144又は配列番号145のアミノ酸配列,
(13)CDR1として配列番号146又は配列番号147のアミノ酸配列,CDR2として配列番号148又は配列番号149のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号150又は配列番号151のアミノ酸配列,及び
(14)CDR1として配列番号152又は配列番号153のアミノ酸配列,CDR2として配列番号154又は配列番号155のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号156又は配列番号157のアミノ酸配列。
【0118】
hTfRに親和性を有する抗体のより具体的な実施形態として,抗体の重鎖のCDRが以下に示す(1)~(14)に記載のアミノ酸配列を有するものが例示できる。すなわち:
(1)CDR1として配列番号76,CDR2として配列番号78,及びCDR3として配列番号80に記載のアミノ酸配列,
(2)CDR1として配列番号82,CDR2として配列番号84,及びCDR3として配列番号86に記載のアミノ酸配列,
(3)CDR1として配列番号88,CDR2として配列番号90,及びCDR3として配列番号92に記載のアミノ酸配列,
(4)CDR1として配列番号94,CDR2として配列番号96,及びCDR3として配列番号98に記載のアミノ酸配列,
(5)CDR1として配列番号100,CDR2として配列番号102,及びCDR3として配列番号104に記載のアミノ酸配列,
(6)CDR1として配列番号106,CDR2として配列番号108,及びCDR3として配列番号109に記載のアミノ酸配列,
(7)CDR1として配列番号111,CDR2として配列番号113,及びCDR3として配列番号115に記載のアミノ酸配列,
(8)CDR1として配列番号117,CDR2として配列番号119,及びCDR3として配列番号120に記載のアミノ酸配列,
(9)CDR1として配列番号122,CDR2として配列番号124,及びCDR3として配列番号126に記載のアミノ酸配列,
(10)CDR1として配列番号128,CDR2として配列番号130,及びCDR3として配列番号132に記載のアミノ酸配列,
(11)CDR1として配列番号134,CDR2として配列番号136,及びCDR3として配列番号138記載のアミノ酸配列,
(12)CDR1として配列番号140,CDR2として配列番号142,及びCDR3として配列番号144に記載のアミノ酸配列,
(13)CDR1として配列番号146,CDR2として配列番号148,及びCDR3として配列番号150に記載のアミノ酸配列,及び
(14)CDR1として配列番号152,CDR2として配列番号154,及びCDR3として配列番号156に記載のアミノ酸配列。
【0119】
hTfRに親和性を有する抗体の好ましい軽鎖と重鎖の組み合わせとしては,CDRが以下に示す(1)~(14)に記載のアミノ酸配列を有するものが例示できる。すなわち:
(1)CDR1として配列番号6又は配列番号7のアミノ酸配列,CDR2として配列番号8又は配列番号9のアミノ酸配列,又は酸配列Trp-Thr-Ser,及びCDR3として配列番号10のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号76若しくは配列番号77のアミノ酸配列,CDR2として配列番号78又は配列番号79のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号80又は配列番号81のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ,
(2)CDR1として配列番号11又は配列番号12のアミノ酸配列,CDR2として配列番号13又は配列番号14のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列(Tyr Ala Ser),及びCDR3として配列番号15のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号82又は配列番号83のアミノ酸配列,CDR2として配列番号84又は配列番号85のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号86又は配列番号87のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ,
(3)CDR1として配列番号16又は配列番号17のアミノ酸配列,CDR2として配列番号18若しくは配列番号19のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Lys-Val-Ser,及びCDR3として配列番号20のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号88又は配列番号89のアミノ酸配列,CDR2として配列番号90又は配列番号91のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号92又は配列番号93のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ,
(4)CDR1として配列番号21又は配列番号22のアミノ酸配列,CDR2として配列番号23若しくは配列番号24のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Asp-Thr-Ser,及びCDR3として配列番号25のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号94又は配列番号95のアミノ酸配列,CDR2として配列番号96又は配列番号97のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号98又は配列番号99のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ,
(5)CDR1として配列番号26又は配列番号27のアミノ酸配列,CDR2として配列番号28若しくは配列番号29のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Asp-Thr-Ser,及びCDR3として配列番号30のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号100又は配列番号101のアミノ酸配列,CDR2として配列番号102又は配列番号103のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号104又は配列番号105のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ,
(6)CDR1として配列番号31又は配列番号32のアミノ酸配列,CDR2として配列番号33若しくは配列番号34のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Ala-Ala-Ser,及びCDR3として配列番号35のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号106又は配列番号107のアミノ酸配列,CDR2として配列番号108又は配列番号278のアミノ酸配列のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号109又は配列番号110のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ,
(7)CDR1として配列番号36又は配列番号37のアミノ酸配列,CDR2として配列番号38若しくは配列番号39のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Gln-Thr-Ser,及びCDR3として配列番号40のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号111又は配列番号112のアミノ酸配列,CDR2として配列番号113又は配列番号114のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号115又は配列番号116のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ,
(8)CDR1として配列番号41又は配列番号42のアミノ酸配列,CDR2として配列番号43若しくは配列番号44のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Gly-Thr-Ser,及びCDR3として配列番号45のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号117又は配列番号118のアミノ酸配列,CDR2として配列番号119のアミノ酸配列又は配列番号279のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号120又は配列番号121のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ,
(9)CDR1として配列番号46又は配列番号47のアミノ酸配列,CDR2として配列番号48若しくは配列番号49のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Phe-Thr-Ser,及びCDR3として配列番号50のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号122又は配列番号123のアミノ酸配列,CDR2として配列番号124又は配列番号125のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号126又は配列番号127のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ,
(10)CDR1として配列番号51又は配列番号52のアミノ酸配列,CDR2として配列番号53若しくは配列番号54のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Ala-Ala-Ser,及びCDR3として配列番号55のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号128又は配列番号129のアミノ酸配列,CDR2として配列番号130又は配列番号131のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号132又は配列番号133のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ,
(11)CDR1として配列番号56又は配列番号57のアミノ酸配列,CDR2として配列番号58若しくは配列番号59のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Tyr-Ala-Ser,及びCDR3として配列番号60のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号134又は配列番号135のアミノ酸配列,CDR2として配列番号136又は配列番号137のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号138又は配列番号139のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ,
(12)CDR1として配列番号61又は配列番号62のアミノ酸配列,CDR2として配列番号63若しくは配列番号64のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Trp-Ser-Ser,及びCDR3として配列番号65のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号140又は配列番号141のアミノ酸配列,CDR2として配列番号142又は配列番号143のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号144又は配列番号145のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ,
(13)CDR1として配列番号66又は配列番号67のアミノ酸配列,CDR2として配列番号68若しくは配列番号69のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Tyr-Ala-Ser,及びCDR3として配列番号70のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号146又は配列番号147のアミノ酸配列,CDR2として配列番号148又は配列番号149のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号150又は配列番号151のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ,及び
(14)CDR1として配列番号71又は配列番号72のアミノ酸配列,CDR2として配列番号73若しくは配列番号74のアミノ酸配列,又はアミノ酸配列Asp-Thr-Ser,及びCDR3として配列番号75のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号152又は配列番号153のアミノ酸配列,CDR2として配列番号154又は配列番号155のアミノ酸配列,及びCDR3として配列番号156又は配列番号157のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ。
【0120】
hTfRに親和性を有する抗体の軽鎖と重鎖の組み合わせの具体的態様としては,CDRが以下に示す(1)~(14)に記載のアミノ酸配列を有するものが例示できる。すなわち:
(1)CDR1として配列番号6,CDR2として配列番号8,及びCDR3として配列番号10に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号76,CDR2として配列番号78,及びCDR3として配列番号80に記載のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ,
(2)CDR1として配列番号11,CDR2として配列番号13,及びCDR3として配列番号15に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号82,CDR2として配列番号84,及びCDR3として配列番号86に記載のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ,
(3)CDR1として配列番号16,CDR2として配列番号18,及びCDR3として配列番号20に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号88,CDR2として配列番号90,及びCDR3として配列番号92に記載のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ,
(4)CDR1として配列番号21,CDR2として配列番号23,及びCDR3として配列番号25に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号94,CDR2として配列番号96,及びCDR3として配列番号98に記載のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ,
(5)CDR1として配列番号26,CDR2として配列番号28,及びCDR3として配列番号30に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号100,CDR2として配列番号102,及びCDR3として配列番号104に記載のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ,
(6)CDR1として配列番号31,CDR2として配列番号33,及びCDR3として配列番号35に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号106,CDR2として配列番号108,及びCDR3として配列番号109に記載のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ,
(7)CDR1として配列番号36,CDR2として配列番号38,及びCDR3として配列番号40に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号111,CDR2として配列番号113,及びCDR3として配列番号115に記載のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ,
(8)CDR1として配列番号41,CDR2として配列番号43,及びCDR3として配列番号45に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号117,CDR2として配列番号119,及びCDR3として配列番号120に記載のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ,
(9)CDR1として配列番号46,CDR2として配列番号48,及びCDR3として配列番号50に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号122,CDR2として配列番号124,及びCDR3として配列番号126に記載のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ,
(10)CDR1として配列番号51,CDR2として配列番号53,及びCDR3として配列番号55に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号128,CDR2として配列番号130,及びCDR3として配列番号132に記載のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ,
(11)CDR1として配列番号56,CDR2として配列番号58,及びCDR3として配列番号60に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号134,CDR2として配列番号136,及びCDR3として配列番号138記載のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ,
(12)CDR1として配列番号61,CDR2として配列番号63,及びCDR3として配列番号65に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号140,CDR2として配列番号142,及びCDR3として配列番号144に記載のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ,
(13)CDR1として配列番号66,CDR2として配列番号68,及びCDR3として配列番号70に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号146,CDR2として配列番号148,及びCDR3として配列番号150に記載のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ,及び
(14)CDR1として配列番号71,CDR2として配列番号73,及びCDR3として配列番号75に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖と,CDR1として配列番号152,CDR2として配列番号154,及びCDR3として配列番号156に記載のアミノ酸配列を有する重鎖の組み合わせ。
【0121】
hTfRに親和性を有するヒト化抗体の好ましい実施形態として,配列番号218~配列番号245で示されるマウス抗ヒトTfR抗体の軽鎖及び重鎖の可変領域のアミノ酸配列をCDRとして用いて作製されたヒト化抗体を挙げることができる。ヒト化抗体は,これらマウス抗ヒトTfR抗体の軽鎖及び重鎖の可変領域のCDRのアミノ酸配列を,ヒト抗体の適切な位置に置き換えることにより作製される。
【0122】
例えば,配列番号218に記載のアミノ酸配列において,CDR1として24番目~34番目の任意の連続した3個以上又は6個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として50番目~56番目の任意の連続した3個以上又は6個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として89番目~97番目の任意の連続した3個以上又は8個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の軽鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の軽鎖とすることができ,配列番号219に記載のアミノ酸配列において,CDR1として26番目~35番目の任意の連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として50番目~66番目の任意の連続した3個以上又は8個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として97番目~105番目の任意の連続した3個以上又は7個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の重鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の重鎖とすることができる。こうして得られたヒト化抗体の軽鎖と重鎖を組み合わせてヒト化抗体を作製することができる。
【0123】
また例えば,配列番号220に記載のアミノ酸配列において,CDR1として24番目~34番目の任意の連続した3個以上又は6個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として50番目~56番目の任意の連続した3個以上又は6個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として89番目~97番目の任意の連続した3個以上又は8個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の軽鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の軽鎖とすることができ,配列番号221に記載のアミノ酸配列において,CDR1として26番目~35番目の任意の連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として50番目~66番目の任意の連続した3個以上又は8個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として97番目~112番目の任意の連続した3個以上又は14個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の重鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の重鎖とすることができる。こうして得られたヒト化抗体の軽鎖と重鎖を組み合わせてヒト化抗体を作製することができる。
【0124】
更に,例えば,配列番号222に記載のアミノ酸配列において,CDR1として24番目~39番目の任意の連続した3個以上又は11個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として55番目~61番目の任意の連続した3個以上又は6個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として94番目~102番目の任意の連続した3個以上又は8個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の軽鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の軽鎖とすることができ,配列番号223に記載のアミノ酸配列において,CDR1として26番目~35番目の任意の連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として50番目~66番目の任意の連続した3個以上又は8個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として97番目~107番目の任意の連続した3個以上又は9個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の重鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の重鎖とすることができる。こうして得られたヒト化抗体の軽鎖と重鎖を組み合わせてヒト化抗体を作製することができる。
【0125】
更に,例えば,配列番号224に記載のアミノ酸配列において,CDR1として24番目~33番目の任意の連続した3個以上又は5個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として49番目~55番目の任意の連続した3個以上又は6個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として88番目~96番目の任意の連続した3個以上又は8個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の軽鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の軽鎖とすることができ,配列番号225に記載のアミノ酸配列において,CDR1として26番目~35番目の任意の連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として51番目~66番目の任意の連続した3個以上又は8個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として97番目~111番目の任意の連続した3個以上又は13個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の重鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の重鎖とすることができる。こうして得られたヒト化抗体の軽鎖と重鎖を組み合わせてヒト化抗体を作製することができる。
【0126】
更に,例えば,配列番号226に記載のアミノ酸配列において,CDR1として24番目~33番目の任意の連続した3個以上又は5個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として49番目~55番目の任意の連続した3個以上又は6個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として88番目~95番目の任意の連続した3個以上又は7個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の軽鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の軽鎖とすることができ,配列番号227に記載のアミノ酸配列において,CDR1として26番目~35番目の任意の連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として51番目~66番目の任意の連続した3個以上又は8個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として97番目~107番目の任意の連続した3個以上又は9個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の重鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の重鎖とすることができる。こうして得られたヒト化抗体の軽鎖と重鎖を組み合わせてヒト化抗体を作製することができる。
【0127】
更に,例えば,配列番号228に記載のアミノ酸配列において,CDR1として24番目~34番目の任意の連続した3個以上又は6個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として50番目~56番目の任意の連続した3個以上又は6個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として89番目~97番目の任意の連続した3個以上又は8個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の軽鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の軽鎖とすることができ,配列番号229に記載のアミノ酸配列において,CDR1として26番目~35番目の任意の連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として50番目~65番目の任意の連続した3個以上又は7個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として96番目~101番目の任意の連続した3個以上又は4個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の重鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の重鎖とすることができる。こうして得られたヒト化抗体の軽鎖と重鎖を組み合わせてヒト化抗体を作製することができる。
【0128】
更に,例えば,配列番号230に記載のアミノ酸配列において,CDR1として24番目~33番目の任意の連続した3個以上又は5個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として49番目~55番目の任意の連続した3個以上又は6個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として88番目~96番目の任意の連続した3個以上又は8個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の軽鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の軽鎖とすることができ,配列番号231に記載のアミノ酸配列において,CDR1として26番目~35番目の任意の連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として51番目~66番目の任意の連続した3個以上又は8個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として97番目~109番目の任意の連続した3個以上又は11個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の重鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の重鎖とすることができる。こうして得られたヒト化抗体の軽鎖と重鎖を組み合わせてヒト化抗体を作製することができる。
【0129】
更に,例えば,配列番号232に記載のアミノ酸配列において,CDR1として24番目~33番目の任意の連続した3個以上又は5個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として49番目~55番目の任意の連続した3個以上又は6個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として88番目~96番目の任意の連続した3個以上又は8個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の軽鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の軽鎖とすることができ,配列番号233に記載のアミノ酸配列において,CDR1として26番目~35番目の任意の連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として50番目~65番目の任意の連続した3個以上又は7個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として96番目~101番目の任意の連続した3個以上又は4個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の重鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の重鎖とすることができる。こうして得られたヒト化抗体の軽鎖と重鎖を組み合わせてヒト化抗体を作製することができる。
【0130】
更に,例えば,配列番号234に記載のアミノ酸配列において,CDR1として24番目~33番目の任意の連続した3個以上又は5個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として49番目~55番目の任意の連続した3個以上又は6個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として88番目~96番目の任意の連続した3個以上又は8個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の軽鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の軽鎖とすることができ,配列番号235に記載のアミノ酸配列において,CDR1として26番目~35番目の任意の連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として51番目~66番目の任意の連続した3個以上又は8個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として97番目~106番目の任意の連続した3個以上又は8個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の重鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の重鎖とすることができる。こうして得られたヒト化抗体の軽鎖と重鎖を組み合わせてヒト化抗体を作製することができる。
【0131】
更に,例えば,配列番号236に記載のアミノ酸配列において,CDR1として24番目~34番目の任意の連続した3個以上又は6個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として50番目~56番目の任意の連続した3個以上又は6個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として89番目~97番目の任意の連続した3個以上又は8個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の軽鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の軽鎖とすることができ,配列番号237に記載のアミノ酸配列において,CDR1として26番目~35番目の任意の連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として51番目~66番目の任意の連続した3個以上又は8個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として97番目~109番目の任意の連続した3個以上又は11個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の重鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の重鎖とすることができる。こうして得られたヒト化抗体の軽鎖と重鎖を組み合わせてヒト化抗体を作製することができる。
【0132】
更に,例えば,配列番号238に記載のアミノ酸配列において,CDR1として24番目~34番目の任意の連続した3個以上又は6個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として50番目~56番目の任意の連続した3個以上又は6個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として89番目~97番目の任意の連続した3個以上又は8個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の軽鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の軽鎖とすることができ,配列番号239に記載のアミノ酸配列において,CDR1として26番目~35番目の任意の連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として51番目~66番目の任意の連続した3個以上又は8個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として97番目~107番目の任意の連続した3個以上又は9個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の重鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の重鎖とすることができる。こうして得られたヒト化抗体の軽鎖と重鎖を組み合わせてヒト化抗体を作製することができる。
【0133】
更に,例えば,配列番号240に記載のアミノ酸配列において,CDR1として24番目~34番目の任意の連続した3個以上又は6個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として50番目~56番目の任意の連続した3個以上又は6個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として89番目~97番目の任意の連続した3個以上又は8個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の軽鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の軽鎖とすることができ,配列番号241に記載のアミノ酸配列において,CDR1として26番目~35番目の任意の連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として51番目~66番目の任意の連続した3個以上又は8個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として97番目~108番目の任意の連続した3個以上又は10個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の重鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の重鎖とすることができる。こうして得られたヒト化抗体の軽鎖と重鎖を組み合わせてヒト化抗体を作製することができる。
【0134】
更に,例えば,配列番号242に記載のアミノ酸配列において,CDR1として24番目~34番目の任意の連続した3個以上又は6個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として50番目~56番目の任意の連続した3個以上又は6個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として89番目~97番目の任意の連続した3個以上又は8個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の軽鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の軽鎖とすることができ,配列番号243に記載のアミノ酸配列において,CDR1として26番目~35番目の任意の連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として51番目~66番目の任意の連続した3個以上又は8個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として97番目~107番目の任意の連続した3個以上又は9個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の重鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の重鎖とすることができる。こうして得られたヒト化抗体の軽鎖と重鎖を組み合わせてヒト化抗体を作製することができる。
【0135】
更に,例えば,配列番号244に記載のアミノ酸配列において,CDR1として24番目~33番目の任意の連続した3個以上又は5個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として49番目~55番目の任意の連続した3個以上又は6個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として88番目~96番目の任意の連続した3個以上又は9個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の軽鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の軽鎖とすることができ,配列番号245に記載のアミノ酸配列において,CDR1として26番目~35番目の任意の連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,CDR2として51番目~66番目の任意の連続した3個以上又は8個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列,及びCDR3として97番目~107番目の任意の連続した3個以上又は9個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列により,ヒト抗体の重鎖の対応するCDRのアミノ酸配列を置き換えたものを,ヒト化抗体の重鎖とすることができる。こうして得られたヒト化抗体の軽鎖と重鎖を組み合わせてヒト化抗体を作製することができる。
【0136】
hTfRに親和性を有するヒト化抗体の好ましい実施形態としては,以下に示す(1)~(3)に記載のアミノ酸配列を有するものが例示できる。すなわち:
(1)抗hTfR抗体であって,軽鎖の可変領域が,配列番号158,配列番号159,配列番号160,配列番号161,配列番号162,及び配列番号163で示されるアミノ酸配列からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含んでなり,重鎖の可変領域が,配列番号166,配列番号167,配列番号168,配列番号169,配列番号170,及び配列番号171で示されるアミノ酸配列からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含んでなる,抗hTfR抗体,
(2)抗hTfR抗体であって,軽鎖の可変領域が,配列番号174,配列番号175,配列番号176,配列番号177,配列番号178,及び配列番号179の何れかのアミノ酸配列を含んでなり,重鎖の可変領域が,配列番号182,配列番号183,配列番号184,配列番号185,配列番号186,及び配列番号187の何れかのアミノ酸配列を含んでなる,抗hTfR抗体,
(3)抗hTfR抗体であって,軽鎖の可変領域が,配列番号190,配列番号191,配列番号192,配列番号193,配列番号194,及び配列番号195で示されるアミノ酸配列からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含んでなり,重鎖の可変領域が,配列番号204,配列番号205,配列番号206,配列番号207,配列番号208及び配列番号209で示されるアミノ酸配列からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含んでなる,抗hTfR抗体。
【0137】
配列番号158,配列番号159,配列番号160,配列番号161,配列番号162,及び配列番号163に記載の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列は,CDR1に配列番号6又は7,CDR2に配列番号8又は9,及びCDR3に配列番号10のアミノ酸配列を含むものである。但し,配列番号158~162に記載の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列において,CDRというときは,CDRの配列はこれらに限定されるものではなく,これらCDRのアミノ酸配列を含む領域,これらCDRのアミノ酸配列の任意の連続した3個以上のアミノ酸を含むアミノ酸配列もCDRとし得る。
【0138】
配列番号166,配列番号167,配列番号168,配列番号169,配列番号170,及び配列番号171に記載の重鎖の可変領域のアミノ酸配列は,CDR1に配列番号76又は77,CDR2に配列番号78又は79,及びCDR3に配列番号80又は81のアミノ酸配列を含むものである。但し,配列番号166~171に記載の重鎖の可変領域のアミノ酸配列において,CDRというときは,CDRの配列はこれらに限定されるものではなく,これらCDRのアミノ酸配列を含む領域,これらCDRのアミノ酸配列の任意の連続した3個以上のアミノ酸を含むアミノ酸配列もCDRとし得る。
【0139】
配列番号174,配列番号175,配列番号176,配列番号177,配列番号178,及び配列番号179に記載の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列は,CDR1に配列番号11又は12,CDR2に配列番号13又は14,及びCDR3に配列番号15のアミノ酸配列を含むものである。但し,配列番号174~179に記載の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列において,CDRというときは,CDRの配列はこれらに限定されるものではなく,これらCDRのアミノ酸配列を含む領域,これらCDRのアミノ酸配列の任意の連続した3個以上のアミノ酸を含むアミノ酸配列もCDRとし得る。
【0140】
配列番号182,配列番号183,配列番号184,配列番号185,配列番号186,及び配列番号187に記載の重鎖の可変領域のアミノ酸配列は,CDR1に配列番号82又は83,CDR2に配列番号84又は85,及びCDR3に配列番号86又は87のアミノ酸配列を含むものである。但し,配列番号182~187に記載の重鎖の可変領域のアミノ酸配列において,CDRというときは,CDRの配列はこれらに限定されるものではなく,これらCDRのアミノ酸配列を含む領域,これらCDRのアミノ酸配列の任意の連続した3個以上のアミノ酸を含むアミノ酸配列もCDRとし得る。
【0141】
配列番号190,配列番号191,配列番号192,配列番号193,配列番号194,及び配列番号195に記載の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列は,CDR1に配列番号16又は17,CDR2に配列番号18又は19,及びCDR3に配列番号20のアミノ酸配列を含むものである。但し,配列番号190~195に記載の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列において,CDRというときは,CDRの配列はこれらに限定されるものではなく,これらCDRのアミノ酸配列を含む領域,これらCDRのアミノ酸配列の任意の連続した3個以上のアミノ酸を含むアミノ酸配列もCDRとし得る。
【0142】
配列番号204,配列番号205,配列番号206,配列番号207,配列番号208及び配列番号209に記載の重鎖の可変領域のアミノ酸配列は,CDR1に配列番号88又は89,CDR2に配列番号90又は91,及びCDR3に配列番号92又は93のアミノ酸配列を含むものである。但し,配列番号204~209に記載の重鎖の可変領域のアミノ酸配列において,CDRというときは,CDRの配列はこれらに限定されるものではなく,これらCDRのアミノ酸配列を含む領域,これらCDRのアミノ酸配列の任意の連続した3個以上のアミノ酸を含むアミノ酸配列もCDRとし得る。
【0143】
hTfRに親和性を有するヒト化抗体のより具体的な実施形態としては,
軽鎖の可変領域が配列番号163のアミノ酸配列を含み且つ重鎖の可変領域が配列番号171のアミノ酸配列を含むもの,
軽鎖の可変領域が配列番号179のアミノ酸配列を含み且つ重鎖の可変領域が配列番号187のアミノ酸配列を含むもの,
軽鎖の可変領域が配列番号191のアミノ酸配列を含み且つ重鎖の可変領域が配列番号205のアミノ酸配列を含むもの,
軽鎖の可変領域が配列番号193のアミノ酸配列を含み且つ重鎖の可変領域が配列番号205のアミノ酸配列を含むもの,
軽鎖の可変領域が配列番号194のアミノ酸配列を含み且つ重鎖の可変領域が配列番号205のアミノ酸配列を含むもの,及び
軽鎖の可変領域が配列番号195のアミノ酸配列を含み且つ重鎖の可変領域が配列番号205のアミノ酸配列を含むもの
が挙げられる。
【0144】
hTfRに親和性を有するヒト化抗体のより具体的な実施形態としては,
軽鎖が配列番号164のアミノ酸配列を含み且つ重鎖が配列番号172のアミノ酸配列を含むもの,
軽鎖が配列番号180のアミノ酸配列を含み且つ重鎖が配列番号188のアミノ酸配列を含むもの,
軽鎖が配列番号196のアミノ酸配列を含み且つ重鎖が配列番号210のアミノ酸配列を含むもの,
軽鎖が配列番号198のアミノ酸配列を含み且つ重鎖が配列番号210のアミノ酸配列を含むもの,
軽鎖が配列番号200のアミノ酸配列を含み且つ重鎖が配列番号210のアミノ酸配列を含むもの,
軽鎖が配列番号202のアミノ酸配列を含み且つ重鎖が配列番号210のアミノ酸配列を含むもの,
軽鎖が配列番号196のアミノ酸配列を含み且つ重鎖が配列番号212のアミノ酸配列を含むもの,
軽鎖が配列番号198のアミノ酸配列を含み且つ重鎖が配列番号212のアミノ酸配列を含むもの,
軽鎖が配列番号200のアミノ酸配列を含み且つ重鎖が配列番号212のアミノ酸配列を含むもの,及び
軽鎖が配列番号202のアミノ酸配列を含み且つ重鎖が配列番号212のアミノ酸配列を含むもの
が挙げられる。
【0145】
hTfRに親和性を有する抗体の好ましい実施形態を上記のごとく例示した。これらの抗hTfR抗体の軽鎖及び重鎖は,その可変領域のアミノ酸配列に,抗hTfR抗体とhTfRの親和性を所望なものに調整等する目的で,適宜,置換,欠失,付加等の変異を加えることができる。
【0146】
軽鎖の可変領域のアミノ酸配列のアミノ酸を他のアミノ酸へ置換させる場合,置換させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~10個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個,更により好ましくは1~2個である。軽鎖の可変領域のアミノ酸配列中のアミノ酸を欠失させる場合,欠失させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~10個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個であり,更により好ましくは1~2個である。また,これらアミノ酸の置換と欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。
【0147】
軽鎖の可変領域にアミノ酸を付加する場合,軽鎖の可変領域のアミノ酸配列中若しくはN末端側又はC末端側に,好ましくは1~10個,より好ましくは1~5個,更に好ましくは1~3個,更により好ましくは1~2個アミノ酸が付加される。これらアミノ酸の付加,置換及び欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。変異を加えた軽鎖の可変領域のアミノ酸配列は,元の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列と,好ましくは80%以上の相同性を有し,より好ましくは90%以上の相同性を示し,更に好ましくは,95%以上の相同性を示す。
【0148】
特に,軽鎖の各CDRのそれぞれのアミノ酸配列中のアミノ酸を他のアミノ酸へ置換させる場合,置換させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~5個であり,より好ましくは1~3個であり,更に好ましくは1~2個であり,更により好ましくは1個である。各CDRのそれぞれのアミノ酸配列中のアミノ酸を欠失させる場合,欠失させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~5個であり,より好ましくは1~3個であり,更に好ましくは1~2個であり,更により好ましくは1個である。また,これらアミノ酸の置換と欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。
【0149】
軽鎖の各CDRのそれぞれのアミノ酸配列中にアミノ酸を付加させる場合,当該アミノ酸配列中若しくはN末端側又はC末端側に,好ましくは1~5個,より好ましくは1~3個,更に好ましくは1~2個,更により好ましくはのアミノ酸が付加される。これらアミノ酸の付加,置換及び欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。変異を加えた各CDRのそれぞれのアミノ酸配列は,元の各CDRのアミノ酸配列と,好ましくは80%以上の相同性を有し,より好ましくは90%以上の相同性を示し,更に好ましくは,95%以上の相同性を示す。
【0150】
重鎖の可変領域のアミノ酸配列のアミノ酸を他のアミノ酸へ置換させる場合,置換させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~10個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個,更により好ましくは1~2個である。重鎖の可変領域のアミノ酸配列中のアミノ酸を欠失させる場合,欠失させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~10個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個であり,更により好ましくは1~2個である。また,これらアミノ酸の置換と欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。
【0151】
重鎖の可変領域にアミノ酸を付加させる場合,重鎖の可変領域のアミノ酸配列中若しくはN末端側又はC末端側に,好ましくは1~10個,より好ましくは1~5個,更に好ましくは1~3個,更により好ましくは1~2個アミノ酸が付加される。これらアミノ酸の付加,置換及び欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。変異を加えた重鎖の可変領域のアミノ酸配列は,元の重鎖の可変領域のアミノ酸配列と,好ましくは80%以上の相同性を有し,より好ましくは90%以上の相同性を示し,更に好ましくは,95%以上の相同性を示す。
【0152】
特に,重鎖の各CDRのそれぞれのアミノ酸配列中のアミノ酸を他のアミノ酸へ置換させる場合,置換させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~5個であり,より好ましくは1~3個であり,更に好ましくは1~2個であり,更により好ましくは1個である。各CDRのそれぞれのアミノ酸配列中のアミノ酸を欠失させる場合,欠失させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~5個であり,より好ましくは1~3個であり,更に好ましくは1~2個であり,更により好ましくは1個である。また,これらアミノ酸の置換と欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。
【0153】
重鎖の各CDRのそれぞれのアミノ酸配列中にアミノ酸を付加させる場合,当該アミノ酸配列中若しくはN末端側又はC末端側に,好ましくは1~5個,より好ましくは1~3個,更に好ましくは1~2個,更により好ましくは1個のアミノ酸が付加される。これらアミノ酸の付加,置換及び欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。変異を加えた各CDRのそれぞれのアミノ酸配列は,元の各CDRのアミノ酸配列と,好ましくは80%以上の相同性を有し,より好ましくは90%以上の相同性を示し,更に好ましくは,95%以上の相同性を示す。
【0154】
上記の抗hTfR抗体の可変領域のアミノ酸配列中のアミノ酸の他のアミノ酸への置換としては,例えば,酸性アミノ酸であるアスパラギン酸とグルタミン酸との相互の置換,アミド型アミノ酸であるアスパラギンとグルタミンとの相互の置換,塩基性アミノ酸であるリシンとアルギニンとの相互の置換,分枝アミノ酸であるバリン,ロイシン及びイソロイシンとの相互の置換,脂肪族アミノ酸であるグリシンとアラニンとの相互の置換,ヒドロキシアミノ酸であるセリンとトレオニンとの相互の置換,芳香族アミン酸であるフェニルアラニンとチロシンとの相互の置換等が挙げられる。
【0155】
なお,抗hTfR抗体に変異を加えてC末端又はN末端にアミノ酸を付加した場合,その付加したアミノ酸が,抗hTfR抗体を他の蛋白質Aと融合させたときに,抗hTfR抗体と他の蛋白質Aとの間に位置することとなった場合,当該付加したアミノ酸はリンカーの一部を構成する。
【0156】
上記に例示したhTfRに親和性を有するヒト化抗体を含む抗体の好ましい実施形態において,抗hTfR抗体の重鎖及び軽鎖のCDRのアミノ酸配列は,抗体がhTfRに対する特異的な親和性を有するものである限り,特に制限はない。但し,本発明の抗hTfR抗体は,好ましくは,実施例7に記載の方法により測定されるhTfRとの解離定数(K)が,好ましくは1×10-8M以下であるものであり,より好ましくは1×10-9M以下であるものであり,更に好ましくは1×10-9M以下であるものであり,尚も更に好ましくは1×10-9M以下のものである。例えば好適なものとして,解離定数が1×10-13M~1×10-9Mであるもの,1×10-13M~1×10-10Mであるものを挙げることができる。抗体が一本鎖抗体であっても同様である。また,本発明の抗hTfR抗体がサルTfRに対しても親和性を有するものである場合,実施例7に記載の方法により測定される抗hTfR抗体のサルTfRとの解離定数は,好ましくは5×10-8M以下であるものであり,より好ましくは2×10-8M以下であるものであり,更に好ましくは1×10-8M以下のものである。例えば好適なものとして,解離定数が1×10-13M~2×10-8Mのもの,1×10-13M~2×10-8Mのものを挙げることができる。抗体が一本鎖抗体であっても同様である。
【0157】
上記の具体的な実施形態として示したhTfRに親和性を有するヒト化抗体と,他の蛋白質Aとの融合蛋白質の具体的な実施形態としては,他の蛋白質Aが,ヒトイズロン酸-2-スルファターゼ(hI2S),ヒトエリスロポエチン(hEPO),ヒトアリルスルファターゼA(hARSA),ヒトPPT-1(hPPT-1),ヒトTPP-1(hTPP-1),ヒトα-L-イズロニダーゼ(hIDUA),ヒトTNFα受容体(hTNFαR),及びヒトヘパランN-スルファターゼ(hSGSH)であるものが挙げられる。
他の蛋白質AがhI2Sである融合蛋白質の具体的な実施例としては,
(1)hI2Sがリンカー配列Gly-Serを介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者のアミノ酸配列が配列番号247で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号164で示されるもの,
(2)hI2Sがリンカー配列Gly-Serを介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者のアミノ酸配列が配列番号249で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号180で示されるもの,及び
(3)hI2Sがリンカー配列Gly-Serを介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者のアミノ酸配列が配列番号251で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号196で示されるもの,が例示できる。
【0158】
ここで,上記(1)において配列番号247に含まれるhTfRの重鎖のアミノ酸配列は配列番号172で示されるものである。つまり,上記(1)の融合蛋白質は,ヒト化抗体として,軽鎖が配列番号164のアミノ酸配列を含み且つ重鎖が配列番号172のアミノ酸配列を含むものである。上記(2)において配列番号249に含まれるhTfRの重鎖のアミノ酸配列は配列番号188で示されるものである。つまり,上記(2)の融合蛋白質は,ヒト化抗体として,軽鎖が配列番号180のアミノ酸配列を含み且つ重鎖が配列番号188のアミノ酸配列を含むものである。上記(3)において配列番号251に含まれるhTfRの重鎖のアミノ酸配列は配列番号210で示されるものである。つまり,上記(3)の融合蛋白質は,ヒト化抗体として,軽鎖が配列番号196のアミノ酸配列を含み且つ重鎖が配列番号210のアミノ酸配列を含むものである。
【0159】
他の蛋白質Aがヒトエリスロポエチン(hEPO)である融合蛋白質の具体的な実施例としては,
(1)hEPOがペプチド結合を介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者におけるhTfRの重鎖のアミノ酸配列が配列番号172で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号164で示されるもの,
(2)hEPOがペプチド結合を介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者におけるhTfRの重鎖のアミノ酸配列が配列番号188で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号180で示されるもの,及び
(3)hEPOがペプチド結合を介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者におけるhTfRの重鎖のアミノ酸配列が配列番号210で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号196で示されるもの,が例示できる。
【0160】
ここで,上記(1)~(3)のいずれにおいても,hEPOとhTfRの重鎖とは,直接又はリンカー配列を介してペプチド結合することができる。つまり,上記(1)~(3)のいずれにおいても,「ペプチド結合を介して」の語は,「直接又はリンカー配列を介して」と同義である。ここで用いられるリンカー配列は,1~50個のアミノ酸残基からなるものである。そのアミノ酸配列に限定はないが,好ましくは,グリシンとセリンから構成されるものであり,例えば,グリシン又はセリンのいずれか1個のアミノ酸からなるもの,アミノ酸配列Gly-Ser,アミノ酸配列Gly-Gly-Ser,アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号3),アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号4),アミノ酸配列Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly(配列番号5),又はこれらのアミノ酸配列が1~10個,あるいは2~5個連続してなる1~50個のアミノ酸からなる配列,2~17個,2~10個,10~40個,20~34個,23~31個,25~29個,又は27個のアミノ酸からなる配列等を含むものである。例えば,アミノ酸配列Gly-Serを含むものはリンカー配列として好適に用いることができる。また,アミノ酸配列Gly-Serに続いてアミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号3)が5個連続してなる計27個のアミノ酸配列を含むものはリンカー配列として好適に用いることができる。
【0161】
ヒト化抗体とhEPOのより具体的な実施形態としては,hEPOがリンカー配列Gly-Serを介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者のアミノ酸配列が配列番号257で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号196で示されるもの,が例示できる。
【0162】
なお,本発明において,「ヒトEPO」又は「hEPO」の語は,特に配列番号256で示される天然型のhEPOと同一のアミノ酸配列を有するhEPOのことをいうが,これに限らず,EPO活性を有するものである限り,天然型のhEPOのアミノ酸配列に置換,欠失,付加等の変異を加えたものもhEPOに含まれる。hEPOのアミノ酸配列のアミノ酸を他のアミノ酸へ置換させる場合,置換させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~10個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個であり,更により好ましくは1~2個である。hEPOのアミノ酸配列中のアミノ酸を欠失させる場合,欠失させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~10個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個であり,更により好ましくは1~2個である。また,これらアミノ酸の置換と欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。hEPOにアミノ酸を付加させる場合,hEPOのアミノ酸配列中若しくはN末端側又はC末端側に,好ましくは1~10個,より好ましくは1~5個,更に好ましくは1~3個,更により好ましくは1~2個アミノ酸が付加される。これらアミノ酸の付加,置換及び欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。変異を加えたhEPOのアミノ酸配列は,元のhEPOのアミノ酸配列と,好ましくは80%以上の相同性を有し,より好ましくは90%以上の相同性を示し,更に好ましくは,95%以上の相同性を示す。天然型のhEPOに変異を加えたものとしてはダルベポエチンが挙げられる。
【0163】
他の蛋白質AがヒトアリルスルファターゼA(hARSA)である融合蛋白質の具体的な実施例としては,
(1)hARSAがペプチド結合を介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者におけるhTfRの重鎖のアミノ酸配列が配列番号172で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号164で示されるもの,
(2)hARSAがペプチド結合を介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者におけるhTfRの重鎖のアミノ酸配列が配列番号188で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号180で示されるもの,及び
(3)hARSAがペプチド結合を介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者におけるhTfRの重鎖のアミノ酸配列が配列番号210で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号196で示されるもの,が例示できる。
【0164】
上記(1)~(3)のいずれにおいても,hARSAとhTfRの重鎖とは,直接又はリンカー配列を介してペプチド結合することができる。つまり,上記(1)~(3)のいずれにおいても,「ペプチド結合を介して」の語は,「直接又はリンカー配列を介して」と同義である。ここで用いられるリンカー配列は,1~50個のアミノ酸残基からなるものである。そのアミノ酸配列に限定はないが,好ましくは,グリシンとセリンから構成されるものであり,例えば,グリシン又はセリンのいずれか1個のアミノ酸からなるもの,アミノ酸配列Gly-Ser,アミノ酸配列Gly-Gly-Ser,アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号3),アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号4),アミノ酸配列Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly(配列番号5),又はこれらのアミノ酸配列が1~10個,あるいは2~5個連続してなる1~50個のアミノ酸からなる配列,2~17個,2~10個,10~40個,20~34個,23~31個,25~29個,又は27個のアミノ酸からなる配列等を含むものである。例えば,アミノ酸配列Gly-Serを含むものはリンカー配列として好適に用いることができる。また,アミノ酸配列Gly-Serに続いてアミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号3)が5個連続してなる計27個のアミノ酸配列を含むものはリンカー配列として好適に用いることができる。
【0165】
ヒト化抗体とhARSAのより具体的な実施形態としては,hARSAがリンカー配列Gly-Serを介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者のアミノ酸配列が配列番号260で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号196で示されるもの,が例示できる。
【0166】
なお,本発明において,「ヒトARSA」又は「hARSA」の語は,特に配列番号259で示される天然型のhARSAと同一のアミノ酸配列を有するhARSAのことをいうが,これに限らず,ARSA活性を有するものである限り,天然型のhARSAのアミノ酸配列に置換,欠失,付加等の変異を加えたものもhARSAに含まれる。hARSAのアミノ酸配列のアミノ酸を他のアミノ酸へ置換させる場合,置換させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~10個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個であり,更により好ましくは1~2個である。hARSAのアミノ酸配列中のアミノ酸を欠失させる場合,欠失させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~10個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個であり,更により好ましくは1~2個である。また,これらアミノ酸の置換と欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。hARSAにアミノ酸を付加させる場合,hARSAのアミノ酸配列中若しくはN末端側又はC末端側に,好ましくは1~10個,より好ましくは1~5個,更に好ましくは1~3個,更により好ましくは1~2個アミノ酸が付加される。これらアミノ酸の付加,置換及び欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。変異を加えたhARSAのアミノ酸配列は,元のhARSAのアミノ酸配列と,好ましくは80%以上の相同性を有し,より好ましくは90%以上の相同性を示し,更に好ましくは,95%以上の相同性を示す。
【0167】
他の蛋白質AがヒトPPT-1(hPPT-1)である融合蛋白質の具体的な実施例としては,
(1)hPPT-1がペプチド結合を介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者におけるhTfRの重鎖のアミノ酸配列が配列番号172で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号164で示されるもの,
(2)hPPT-1がペプチド結合を介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者におけるhTfRの重鎖のアミノ酸配列が配列番号188で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号180で示されるもの,及び
(3)hPPT-1がペプチド結合を介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者におけるhTfRの重鎖のアミノ酸配列が配列番号210で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号196で示されるもの,が例示できる。
【0168】
上記(1)~(3)のいずれにおいても,hPPT-1とhTfRの重鎖とは,直接又はリンカー配列を介してペプチド結合することができる。つまり,上記(1)~(3)のいずれにおいても,「ペプチド結合を介して」の語は,「直接又はリンカー配列を介して」と同義である。ここで用いられるリンカー配列は,1~50個のアミノ酸残基からなるものである。そのアミノ酸配列に限定はないが,好ましくは,グリシンとセリンから構成されるものであり,例えば,グリシン又はセリンのいずれか1個のアミノ酸からなるもの,アミノ酸配列Gly-Ser,アミノ酸配列Gly-Gly-Ser,アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号3),アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号4),アミノ酸配列Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly(配列番号5),又はこれらのアミノ酸配列が1~10個,あるいは2~5個連続してなる1~50個のアミノ酸からなる配列,2~17個,2~10個,10~40個,20~34個,23~31個,25~29個,又は27個のアミノ酸からなる配列等を含むものである。例えば,アミノ酸配列Gly-Serを含むものはリンカー配列として好適に用いることができる。また,アミノ酸配列Gly-Serに続いてアミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号3)が5個連続してなる計27個のアミノ酸配列を含むものはリンカー配列として好適に用いることができる。
【0169】
ヒト化抗体とhPPT-1のより具体的な実施形態としては,hPPT-1がリンカー配列Gly-Serを介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者のアミノ酸配列が配列番号263で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号196で示されるもの,が例示できる。
【0170】
なお,本発明において,「ヒトPPT-1」又は「hPPT-1」の語は,特に配列番号262で示される天然型のhPPT-1と同一のアミノ酸配列を有するhPPT-1のことをいうが,これに限らず,PPT-1活性を有するものである限り,天然型のhPPT-1のアミノ酸配列に置換,欠失,付加等の変異を加えたものもhPPT-1に含まれる。hPPT-1のアミノ酸配列のアミノ酸を他のアミノ酸へ置換させる場合,置換させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~10個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個であり,更により好ましくは1~2個である。hPPT-1のアミノ酸配列中のアミノ酸を欠失させる場合,欠失させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~10個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個であり,更により好ましくは1~2個である。また,これらアミノ酸の置換と欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。hPPT-1にアミノ酸を付加させる場合,hPPT-1のアミノ酸配列中若しくはN末端側又はC末端側に,好ましくは1~10個,より好ましくは1~5個,更に好ましくは1~3個,更により好ましくは1~2個アミノ酸が付加される。これらアミノ酸の付加,置換及び欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。変異を加えたhPPT-1のアミノ酸配列は,元のhPPT-1のアミノ酸配列と,好ましくは80%以上の相同性を有し,より好ましくは90%以上の相同性を示し,更に好ましくは,95%以上の相同性を示す。
【0171】
他の蛋白質AがヒトTPP-1(hTPP-1)である融合蛋白質の具体的な実施例としては,
(1)hTPP-1がペプチド結合を介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者におけるhTfRの重鎖のアミノ酸配列が配列番号172で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号164で示されるもの,
(2)hTPP-1がペプチド結合を介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者におけるhTfRの重鎖のアミノ酸配列が配列番号188で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号180で示されるもの,及び
(3)hTPP-1がペプチド結合を介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者におけるhTfRの重鎖のアミノ酸配列が配列番号210で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号196で示されるもの,が例示できる。
【0172】
上記(1)~(3)のいずれにおいても,hTPP-1とhTfRの重鎖とは,直接又はリンカー配列を介してペプチド結合することができる。つまり,上記(1)~(3)のいずれにおいても,「ペプチド結合を介して」の語は,「直接又はリンカー配列を介して」と同義である。ここで用いられるリンカー配列は,1~50個のアミノ酸残基からなるものである。そのアミノ酸配列に限定はないが,好ましくは,グリシンとセリンから構成されるものであり,例えば,グリシン又はセリンのいずれか1個のアミノ酸からなるもの,アミノ酸配列Gly-Ser,アミノ酸配列Gly-Gly-Ser,アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号3),アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号4),アミノ酸配列Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly(配列番号5),又はこれらのアミノ酸配列が1~10個,あるいは2~5個連続してなる1~50個のアミノ酸からなる配列,2~17個,2~10個,10~40個,20~34個,23~31個,25~29個,又は27個のアミノ酸からなる配列等を含むものである。例えば,アミノ酸配列Gly-Serを含むものはリンカー配列として好適に用いることができる。また,アミノ酸配列Gly-Serに続いてアミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号3)が5個連続してなる計27個のアミノ酸配列を含むものはリンカー配列として好適に用いることができる。
【0173】
ヒト化抗体とhTPP-1のより具体的な実施形態としては,hTPP-1がリンカー配列Gly-Serを介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者のアミノ酸配列が配列番号266で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号196で示されるもの,が例示できる。
【0174】
なお,本発明において,「ヒトTPP-1」又は「hTPP-1」の語は,特に配列番号265で示される天然型のhTPP-1と同一のアミノ酸配列を有するhTPP-1のことをいうが,これに限らず,TPP-1活性を有するものである限り,天然型のhTPP-1のアミノ酸配列に置換,欠失,付加等の変異を加えたものもhTPP-1に含まれる。hTPP-1のアミノ酸配列のアミノ酸を他のアミノ酸へ置換させる場合,置換させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~10個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個であり,更により好ましくは1~2個である。hTPP-1のアミノ酸配列中のアミノ酸を欠失させる場合,欠失させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~10個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個であり,更により好ましくは1~2個である。また,これらアミノ酸の置換と欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。hTPP-1にアミノ酸を付加させる場合,hTPP-1のアミノ酸配列中若しくはN末端側又はC末端側に,好ましくは1~10個,より好ましくは1~5個,更に好ましくは1~3個,更により好ましくは1~2個アミノ酸が付加される。これらアミノ酸の付加,置換及び欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。変異を加えたhTPP-1のアミノ酸配列は,元のhTPP-1のアミノ酸配列と,好ましくは80%以上の相同性を有し,より好ましくは90%以上の相同性を示し,更に好ましくは,95%以上の相同性を示す。
【0175】
他の蛋白質Aがヒトα-L-イズロニダーゼ(hIDUA)である融合蛋白質の具体的な実施例としては,
(1)hIDUAがペプチド結合を介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者におけるhTfRの重鎖のアミノ酸配列が配列番号172で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号164で示されるもの,
(2)hIDUAがペプチド結合を介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者におけるhTfRの重鎖のアミノ酸配列が配列番号188で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号180で示されるもの,及び
(3)hIDUAがペプチド結合を介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者におけるhTfRの重鎖のアミノ酸配列が配列番号210で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号196で示されるもの,が例示できる。
【0176】
上記(1)~(3)のいずれにおいても,hIDUAとhTfRの重鎖とは,直接又はリンカー配列を介してペプチド結合することができる。つまり,上記(1)~(3)のいずれにおいても,「ペプチド結合を介して」の語は,「直接又はリンカー配列を介して」と同義である。ここで用いられるリンカー配列は,1~50個のアミノ酸残基からなるものである。そのアミノ酸配列に限定はないが,好ましくは,グリシンとセリンから構成されるものであり,例えば,グリシン又はセリンのいずれか1個のアミノ酸からなるもの,アミノ酸配列Gly-Ser,アミノ酸配列Gly-Gly-Ser,アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号3),アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号4),アミノ酸配列Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly(配列番号5),又はこれらのアミノ酸配列が1~10個,あるいは2~5個連続してなる1~50個のアミノ酸からなる配列,2~17個,2~10個,10~40個,20~34個,23~31個,25~29個,又は27個のアミノ酸からなる配列等を含むものである。例えば,アミノ酸配列Gly-Serを含むものはリンカー配列として好適に用いることができる。また,アミノ酸配列Gly-Serに続いてアミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号3)が5個連続してなる計27個のアミノ酸配列を含むものはリンカー配列として好適に用いることができる。
【0177】
ヒト化抗体とhIDUAのより具体的な実施形態としては,hIDUAがリンカー配列Gly-Serを介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者のアミノ酸配列が配列番号269で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号196で示されるもの,が例示できる。
【0178】
なお,本発明において,「ヒトIDUA」又は「hIDUA」の語は,特に配列番号268で示される天然型のhIDUAと同一のアミノ酸配列を有するhIDUAのことをいうが,これに限らず,IDUA活性を有するものである限り,天然型のhIDUAのアミノ酸配列に置換,欠失,付加等の変異を加えたものもhIDUAに含まれる。hIDUAのアミノ酸配列のアミノ酸を他のアミノ酸へ置換させる場合,置換させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~10個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個であり,更により好ましくは1~2個である。hIDUAのアミノ酸配列中のアミノ酸を欠失させる場合,欠失させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~10個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個であり,更により好ましくは1~2個である。また,これらアミノ酸の置換と欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。hIDUAにアミノ酸を付加させる場合,hIDUAのアミノ酸配列中若しくはN末端側又はC末端側に,好ましくは1~10個,より好ましくは1~5個,更に好ましくは1~3個,更により好ましくは1~2個アミノ酸が付加される。これらアミノ酸の付加,置換及び欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。変異を加えたhIDUAのアミノ酸配列は,元のhIDUAのアミノ酸配列と,好ましくは80%以上の相同性を有し,より好ましくは90%以上の相同性を示し,更に好ましくは,95%以上の相同性を示す。
【0179】
他の蛋白質AがヒトTNFα受容体(hTNFαR)である融合蛋白質の具体的な実施例としては,
【0180】
(1)hTNFαRがペプチド結合を介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者におけるhTfRの重鎖のアミノ酸配列が配列番号172で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号164で示されるもの,
(2)hTNFαRがペプチド結合を介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者におけるhTfRの重鎖のアミノ酸配列が配列番号188で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号180で示されるもの,及び
(3)hTNFαRがペプチド結合を介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者におけるhTfRの重鎖のアミノ酸配列が配列番号210で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号196で示されるもの,が例示できる。
【0181】
上記(1)~(3)のいずれにおいても,hTNFαRとhTfRの重鎖とは,直接又はリンカー配列を介してペプチド結合することができる。つまり,上記(1)~(3)のいずれにおいても,「ペプチド結合を介して」の語は,「直接又はリンカー配列を介して」と同義である。ここで用いられるリンカー配列は,1~50個のアミノ酸残基からなるものである。そのアミノ酸配列に限定はないが,好ましくは,グリシンとセリンから構成されるものであり,例えば,グリシン又はセリンのいずれか1個のアミノ酸からなるもの,アミノ酸配列Gly-Ser,アミノ酸配列Gly-Gly-Ser,アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号3),アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号4),アミノ酸配列Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly(配列番号5),又はこれらのアミノ酸配列が1~10個,あるいは2~5個連続してなる1~50個のアミノ酸からなる配列,2~17個,2~10個,10~40個,20~34個,23~31個,25~29個,又は27個のアミノ酸からなる配列等を含むものである。例えば,アミノ酸配列Gly-Serを含むものはリンカー配列として好適に用いることができる。また,アミノ酸配列Gly-Serに続いてアミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号3)が5個連続してなる計27個のアミノ酸配列を含むものはリンカー配列として好適に用いることができる。
【0182】
ヒト化抗体とhTNFαRのより具体的な実施形態としては,hTNFαRがリンカー配列Gly-Serを介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者のアミノ酸配列が配列番号272で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号196で示されるもの,が例示できる。
【0183】
なお,本発明において,「ヒトTNFαR」又は「hTNFαR」の語は,特に配列番号271で示される天然型のhTNFαRと同一のアミノ酸配列を有するhTNFαRのことをいうが,これに限らず,hTNFαRとしての活性又は機能を有するものである限り,天然型のhTNFαRのアミノ酸配列に置換,欠失,付加等の変異を加えたものもhTNFαRに含まれる。hTNFαRのアミノ酸配列のアミノ酸を他のアミノ酸へ置換させる場合,置換させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~10個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個であり,更により好ましくは1~2個である。hTNFαRのアミノ酸配列中のアミノ酸を欠失させる場合,欠失させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~10個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個であり,更により好ましくは1~2個である。また,これらアミノ酸の置換と欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。hTNFαRにアミノ酸を付加させる場合,hTNFαRのアミノ酸配列中若しくはN末端側又はC末端側に,好ましくは1~10個,より好ましくは1~5個,更に好ましくは1~3個,更により好ましくは1~2個アミノ酸が付加される。これらアミノ酸の付加,置換及び欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。変異を加えたhTNFαRのアミノ酸配列は,元のhTNFαRのアミノ酸配列と,好ましくは80%以上の相同性を有し,より好ましくは90%以上の相同性を示し,更に好ましくは,95%以上の相同性を示す。
【0184】
他の蛋白質AがヒトヘパランN-スルファターゼ(hSGSH)である融合蛋白質の具体的な実施例としては,
(1)hSGSHがペプチド結合を介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者におけるhTfRの重鎖のアミノ酸配列が配列番号172で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号164で示されるもの,
(2)hSGSHがペプチド結合を介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者におけるhTfRの重鎖のアミノ酸配列が配列番号188で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号180で示されるもの,及び
(3)hSGSHがペプチド結合を介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者におけるhTfRの重鎖のアミノ酸配列が配列番号210で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号196で示されるもの,が例示できる。
【0185】
上記(1)~(3)のいずれにおいても,hSGSHとhTfRの重鎖とは,直接又はリンカー配列を介してペプチド結合することができる。つまり,上記(1)~(3)のいずれにおいても,「ペプチド結合を介して」の語は,「直接又はリンカー配列を介して」と同義である。ここで用いられるリンカー配列は,1~50個のアミノ酸残基からなるものである。そのアミノ酸配列に限定はないが,好ましくは,グリシンとセリンから構成されるものであり,例えば,グリシン又はセリンのいずれか1個のアミノ酸からなるもの,アミノ酸配列Gly-Ser,アミノ酸配列Gly-Gly-Ser,アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号3),アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号4),アミノ酸配列Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly(配列番号5),又はこれらのアミノ酸配列が1~10個,あるいは2~5個連続してなる1~50個のアミノ酸からなる配列,2~17個,2~10個,10~40個,20~34個,23~31個,25~29個,又は27個のアミノ酸からなる配列等を含むものである。例えば,アミノ酸配列Gly-Serを含むものはリンカー配列として好適に用いることができる。また,アミノ酸配列Gly-Serに続いてアミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号3)が5個連続してなる計27個のアミノ酸配列を含むものはリンカー配列として好適に用いることができる。
【0186】
ヒト化抗体とhSGSHのより具体的な実施形態としては,hSGSHがリンカー配列Gly-Serを介してhTfRの重鎖のC末端側で結合してなるものと,hTfRの軽鎖とからなり,前者のアミノ酸配列が配列番号275で示されるものであり,後者のアミノ酸配列が配列番号196で示されるもの,が例示できる。
【0187】
なお,本発明において,「ヒトSGSH」又は「hSGSH」の語は,特に配列番号274で示される天然型のhSGSHと同一のアミノ酸配列を有するhSGSHのことをいうが,これに限らず,SGSH活性を有するものである限り,天然型のhSGSHのアミノ酸配列に置換,欠失,付加等の変異を加えたものもhSGSHに含まれる。hSGSHのアミノ酸配列のアミノ酸を他のアミノ酸へ置換させる場合,置換させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~10個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個であり,更により好ましくは1~2個である。hSGSHのアミノ酸配列中のアミノ酸を欠失させる場合,欠失させるアミノ酸の個数は,好ましくは1~10個であり,より好ましくは1~5個であり,更に好ましくは1~3個であり,更により好ましくは1~2個である。また,これらアミノ酸の置換と欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。hSGSHにアミノ酸を付加させる場合,hSGSHのアミノ酸配列中若しくはN末端側又はC末端側に,好ましくは1~10個,より好ましくは1~5個,更に好ましくは1~3個,更により好ましくは1~2個アミノ酸が付加される。これらアミノ酸の付加,置換及び欠失を組み合わせた変異を加えることもできる。変異を加えたhSGSHのアミノ酸配列は,元のhSGSHのアミノ酸配列と,好ましくは80%以上の相同性を有し,より好ましくは90%以上の相同性を示し,更に好ましくは,95%以上の相同性を示す。
【0188】
なおここで,抗hTfR抗体と融合させた他の蛋白質Aが,ヒトイズロン酸-2-スルファターゼ(hI2S),ヒトエリスロポエチン(hEPO),ヒトアリルスルファターゼA(hARSA),ヒトPPT-1(hPPT-1),ヒトTPP-1(hTPP-1),ヒトα-L-イズロニダーゼ(hIDUA),ヒトTNFα受容体(hTNFαR),及びヒトヘパランN-スルファターゼ(hSGSH)のいずれかである場合において,抗hTfR抗体と融合させた他の蛋白質Aが,当該他の蛋白質Aの生理的条件下での活性又は機能を保持しているというとき又は単に活性又は機能を有するというときは,対応する天然型のこれら蛋白質が本来有する活性又は機能に対して,3%以上の活性又は機能を保持していることをいう。但し,その活性又は機能は,対応する天然型のこれら他の蛋白質Aが本来有する活性又は機能に対して,10%以上であることが好ましく,20%以上であることがより好ましく,50%以上であることが更に好ましく,80%以上であることが更により好ましい。抗hTfR抗体と融合させたこれらの他の蛋白質Aが変異を加えたものである場合も同様である。
【0189】
本発明の抗hTfR抗体は,生理活性蛋白質又は薬理活性低分子化合物の分子と結合させることにより,中枢神経系の疾患状態の治療のための血中投与用薬剤の製造のために使用することができる。また,生理活性蛋白質又は薬理活性低分子化合物の分子と結合させた抗hTfR抗体は,生理活性蛋白質又は薬理活性低分子化合物の治療上有効量を,中枢神経系の疾患の患者に血中投与(点滴静注等の静脈注射を含む)することを含む,治療方法において使用することができる。血中投与された生理活性蛋白質又は薬理活性低分子化合物の分子と結合させた抗hTfR抗体は,脳内に到達する他,hTfRを発現する他の臓器・器官にも到達することができる。
【0190】
特に,本発明の抗hTfR抗体は,ヒトイズロン酸-2-スルファターゼ(hI2S)と結合させることにより,hI2Sに血液脳関門を通過させて脳内で機能を発揮させることができるので,ハンター症候群に伴う中枢神経系の疾患状態の治療のための血中投与用薬剤の製造のために使用することができる。また,hI2Sと結合させた抗hTfR抗体は,ハンター症候群に伴う中枢神経系の疾患状態の治療上有効量を,ハンター症候群の患者に血中投与(点滴静注等の静脈注射を含む)することを含む,治療方法において使用することができる。血中投与されたhI2Sと結合させた抗hTfR抗体は,脳内に到達する他,hTfRを発現する他の臓器・器官にも到達することができる。
【0191】
また,本発明の抗hTfR抗体は,ヒトエリスロポエチン(hEPO)と結合させることにより,hEPOに血液脳関門を通過させて脳内で機能を発揮させることができるので,脳虚血に伴う中枢神経系の治療のための血中投与用薬剤の製造のために使用することができる。また,hEPOと結合させた抗hTfR抗体は,脳虚血に伴う中枢神経系の疾患状態の治療上有効量を,脳虚血の患者に血中投与(点滴静注等の静脈注射を含む)することを含む,治療方法において使用することができる。血中投与されたhEPOと結合させた抗hTfR抗体は,脳内に到達する他,hTfRを発現する他の臓器・器官にも到達することができる。ヒトエリスロポエチンをヒトダルベポエチンに代えても同様のことがいえる。
【0192】
また,本発明の抗hTfR抗体は,ヒトアリルスルファターゼA(hARSA)と結合させることにより,hARSAに血液脳関門を通過させて脳内で機能を発揮させることができるので,異染性白質変性症(異染性白質ジストロフィー)に伴う中枢神経系の疾患状態の治療のための血中投与用薬剤の製造のために使用することができる。また,hARSAと結合させた抗hTfR抗体は,異染性白質変性症(異染性白質ジストロフィー)に伴う中枢神経系の疾患状態の治療上有効量を,該疾患の患者に血中投与(点滴静注等の静脈注射を含む)することを含む,治療方法において使用することができる。血中投与されたhARSAと結合させた抗hTfR抗体は,脳内に到達する他,hTfRを発現する他の臓器・器官にも到達することができる。
【0193】
また,本発明の抗hTfR抗体は,ヒトPPT-1(hPPT-1)と結合させることにより,hPPT-1に血液脳関門を通過させて脳内で機能を発揮させることができるので,神経セロイドリポフスチン症又はSantavuori-Haltia病に伴う中枢神経系の疾患状態の治療のための血中投与用薬剤の製造のために使用することができる。また,hPPT-1と結合させた抗hTfR抗体は,神経セロイドリポフスチン症又はSantavuori-Haltia病に伴う中枢神経系の疾患状態の治療上有効量を,これらの疾患の患者に血中投与(点滴静注等の静脈注射を含む)することを含む,治療方法において使用することができる。血中投与されたhPPT-1と結合させた抗hTfR抗体は,脳内に到達する他,hTfRを発現する他の臓器・器官にも到達することができる。
【0194】
また,本発明の抗hTfR抗体は,ヒトTPP-1(hTPP-1)と結合させることにより,hTPP-1に血液脳関門を通過させて脳内で機能を発揮させることができるので,神経セロイドリポフスチン症又はJansky-Bielschowsky病に伴う中枢神経系の疾患状態の治療のための血中投与用薬剤の製造のために使用することができる。また,hPPT-1と結合させた抗hTfR抗体は,神経セロイドリポフスチン症又はJansky-Bielschowsky病に伴う中枢神経系の疾患状態の治療上有効量を,これらの疾患の患者に血中投与(点滴静注等の静脈注射を含む)することを含む,治療方法において使用することができる。血中投与されたhTPP-1と結合させた抗hTfR抗体は,脳内に到達する他,hTfRを発現する他の臓器・器官にも到達することができる。
【0195】
また,本発明の抗hTfR抗体は,ヒトα-L-イズロニダーゼ(hIDUA)と結合させることにより,hIDUAに血液脳関門を通過させて脳内で機能を発揮させることができるので,ハーラー症候群又はハーラー・シャイエ症候群に伴う中枢神経系の疾患状態の治療のための血中投与用薬剤の製造のために使用することができる。また,hIDUAと結合させた抗hTfR抗体は,ハーラー症候群又はハーラー・シャイエ症候群に伴う中枢神経系の疾患状態の治療上有効量を,これらの疾患の患者に血中投与(点滴静注等の静脈注射を含む)することを含む,治療方法において使用することができる。血中投与されたhIDUAと結合させた抗hTfR抗体は,脳内に到達する他,hTfRを発現する他の臓器・器官にも到達することができる。
【0196】
また,本発明の抗hTfR抗体は,ヒトTNFα受容体(hTNFαR)と結合させることにより,hTNFαRに血液脳関門を通過させて脳内で機能を発揮させることができるので,脳虚血又は脳炎症性疾患に伴う中枢神経系の疾患状態の治療のための血中投与用薬剤の製造のために使用することができる。また,hTNFαRと結合させた抗hTfR抗体は,脳虚血又は脳炎症性疾患に伴う中枢神経系の疾患状態の治療上有効量を,これら疾患の患者に血中投与(点滴静注等の静脈注射を含む)することを含む,治療方法において使用することができる。血中投与されたhTNFαRと結合させた抗hTfR抗体は,脳内に到達する他,hTfRを発現する他の臓器・器官にも到達することができる。
【0197】
また,本発明の抗hTfR抗体は,ヒトヘパランN-スルファターゼ(hSGSH)と結合させることにより,hSGSHに血液脳関門を通過させて脳内で機能を発揮させることができるので,サンフィリッポ症候群に伴う中枢神経系の疾患状態の治療のための血中投与用薬剤の製造のために使用することができる。また,hSGSHと結合させた抗hTfR抗体は,サンフィリッポ症候群に伴う中枢神経系の疾患状態の治療上有効量を,これら疾患の患者に血中投与(点滴静注等の静脈注射を含む)することを含む,治療方法において使用することができる。血中投与されたhSGSHと結合させた抗hTfR抗体は,脳内に到達する他,hTfRを発現する他の臓器・器官にも到達することができる。
【0198】
本発明の抗hTfR抗体と結合させた蛋白質,低分子化合物等は,血中に投与して中枢神経系(CNS)において薬効を発揮させるべき薬剤として使用することができる。かかる薬剤は,一般に点滴静脈注射等による静脈注射,皮下注射,筋肉注射により患者に投与されるが,投与経路には特に限定はない。
【0199】
本発明の抗hTfR抗体と結合させた蛋白質,低分子化合物等は,薬剤として,凍結乾燥品,又は水性液剤等の形態で医療機関に供給することができる。水性液剤の場合,薬剤を,安定化剤,緩衝剤,等張化剤を含有する溶液に予め溶解したものを,バイアル又は注射器に封入した製剤として供給できる。注射器に封入された製剤は,一般にプレフィルドシリンジ製剤と呼称される。プレフィルドシリンジ製剤とすることにより,患者自身による薬剤の投与を簡易にすることができる。
【0200】
水性液剤として供給される場合,水性液剤に含有される抗hTfR抗体と結合させた蛋白質,低分子化合物等の濃度は,用法用量によって適宜調整されるべきものであるが,例えば1~4mg/mLである。また,水性液剤に含有される安定化剤は,薬剤学的に許容し得るものである限り特に限定はないが,非イオン性界面活性剤が好適に使用できる。このような非イオン性界面活性剤としては,ポリソルベート,ポロキサマー等を単独で又はこれらを組合せて使用できる。ポリソルベートとしてはポリソルベート20,ポリソルベート80が,ポロキサマーとしてはポロキサマー188(ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール)が特に好適である。また,水性液剤に含有される非イオン性界面活性剤の濃度は,0.01~1mg/mLであることが好ましく,0.01~0.5mg/mLであることがより好ましく,0.1~0.5mg/mLであることが更に好ましい。安定化剤として,ヒスチジン,アルギニン,メチオニン,グリシン等のアミノ酸を使用することもできる。安定化剤として使用する場合の,水性液剤に含有されるアミノ酸の濃度は,0.1~40mg/mLであることが好ましく,0.2~5mg/mLであることがより好ましく,0.5~4mg/mLであることが更に好ましい。水性液剤に含有される緩衝剤は,薬剤学的に許容し得るものである限り特に限定はないが,リン酸塩緩衝剤が好ましく,特にリン酸ナトリウム緩衝剤が好ましい。緩衝剤としてリン酸ナトリウム緩衝剤を使用する場合の,リン酸ナトリウムの濃度は,好ましくは0.01~0.04Mである。また,緩衝剤によって調整される水性液剤のpHは,好ましくは5.5~7.2である。水性液剤に含有される等張化剤は,薬剤学的に許容し得るものである限り特に限定はないが,塩化ナトリウム,マンニトールを単独で又は組み合わせて等張化剤として好適に使用できる。
【実施例
【0201】
以下,実施例を参照して本発明を更に詳細に説明するが,本発明が実施例に限定されることは意図しない。
【0202】
〔実施例1〕hTfR発現用ベクターの構築
ヒト脾臓Quick Clone cDNA(Clontech社)を鋳型として,プライマーhTfR5’(配列番号214)及びプライマーhTfR3’(配列番号215)を用いて,PCRによりヒトトランスフェリン受容体(hTfR)をコードする遺伝子断片を増幅させた。増幅させたhTfRをコードする遺伝子断片を,MluIとNotIで消化し,pCI-neoベクター(Promega社)のMluIとNotI間に挿入した。得られたベクターを,pCI-neo(hTfR)と名付けた。次いで,このベクターを,MluIとNotIで消化して,hTfRをコードする遺伝子断片を切り出し,国際公開公報(WO2012/063799)に記載された発現ベクターであるpE-mIRES-GS-puroのMluIとNotIの間に組み込むことにより,hTfR発現用ベクターであるpE-mIRES-GS-puro(hTfR)を構築した。
【0203】
〔実施例2〕組換えhTfRの作製
エレクトロポレーション法により,CHO-K1細胞にpE-mIRES-GS-puro(hTfR)を導入した後,メチオニンスルホキシミン(MSX)及びピューロマイシンを含むCD OptiCHOTM培地(Invitrogen社)を用いて細胞の選択培養を行い,組換えhTfR発現細胞を得た。この組換えhTfR発現細胞を培養して,組換えhTfRを調製した。
【0204】
〔実施例3〕組換えhTfRを用いたマウスの免疫
実施例2で調製した組換えhTfRを抗原として用いてマウスを免疫した。免疫は,マウスに抗原を静脈内投与又は腹腔投与内して行った。
【0205】
〔実施例4〕ハイブリドーマの作製
最後に細胞を投与した日の約1週間後にマウスの脾臓を摘出してホモジナイズし,脾細胞を分離した。得られた脾細胞をマウスミエローマ細胞株(P3.X63.Ag8.653)とポリエチレングリコール法を用いて細胞融合させた。細胞融合終了後,(1X)HATサプリメント(Life Technologies社)及び10% Ultra low IgGウシ胎児血清(Life Technologies社)を含むRPMI1640培地に細胞を懸濁させ,細胞懸濁液を96ウェルプレート20枚に200μL/ウェルずつ分注した。炭酸ガス培養器(37℃,5%CO)で細胞を10日間培養した後,各ウェルを顕微鏡下で観察し,単一のコロニーが存在するウェルを選択した。
【0206】
各ウェルの細胞がほぼコンフルエントになった時点で培養上清を回収し,これをハイブリドーマの培養上清として,以下のスクリーニングに供した。
【0207】
〔実施例5〕高親和性抗体産生細胞株のスクリーニング
組換えhTfR溶液(Sino Biologics社)を50mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5~9.6)で希釈して5μg/mLの濃度に調整し,これを固相溶液とした。固相溶液を,Nunc MaxiSorpTM flat-bottom 96ウェルプレート(基材:ポリスチレン, Nunc社製)の各ウェルに50μLずつ添加した後,プレートを室温で1時間静置し,組換えhTfRをプレートに吸着させて固定した。固相溶液を捨て,各ウェルを250μLの洗浄液(0.05% Tween20を含有するPBS)で3回洗浄した後,各ウェルにブロッキング液(1% BSAを含有するPBS)を200μLずつ添加し,プレートを室温で1時間静置した。
【0208】
ブロッキング液を捨て,各ウェルを250μLの洗浄液(0.05% Tween20を含有するPBS)で3回洗浄した後,各ウェルにハイブリドーマの培養上清を50μLずつ添加し,プレートを室温で1時間静置し,培養上清に含まれるマウス抗hTfR抗体を組換えhTfRに結合させた。このとき,コントロールとして,マウス抗hTfR抗体を産生しないハイブリドーマの培養上清をウェルに50μL添加したものを置いた。また,各培養上清を加えたウェルの横のウェルに,ハイブリドーマの培養用培地を50μL添加したものを置き,これをモックウェルとした。測定はn=2で実施した。次いで,溶液を捨て,各ウェルを250μLの洗浄液(0.05% Tween20を含有するPBS)で3回洗浄した。
【0209】
上記の各ウェルに100μLのHRP標識ヤギ抗マウスイムノグロブリン抗体溶液(プロメガ社)を添加し,プレートを室温で1分間静置した。次いで,溶液を捨て,各ウェルを250μLの洗浄液(0.05% Tween20を含有するPBS)で3回洗浄した。次いで,各ウェルに50μLの発色用基質液TMB Stabilized Substrate for Horseradish Peroxidase(プロメガ社)を添加し,室温で10~20分間静置した。次いで,各ウェルに100μLの停止液(2N硫酸)を添加した後,プレートリーダーを用いて各ウェルの450nmにおける吸光度を測定した。各培養上清及びコントロールの2つのウェルの平均値をとり,これらの平均値から,各培養上清及びコントロール毎に置いた2つのモックウェルの平均値をそれぞれ減じたものを測定値とした。
【0210】
高い測定値を示したウェルに添加した培養上清に対応する14種類のハイブリドーマ細胞を,hTfRに対して高親和性を示す抗体(高親和性抗hTfR抗体)を産生する細胞株(高親和性抗体産生細胞株)として選択した。これら14種の細胞株を,クローン1株~クローン14株と番号付けた。また,クローン1株~クローン14株が産生する抗hTfR抗体を,それぞれ抗hTfR抗体番号1~抗hTfR抗体番号14とした。
【0211】
〔実施例6〕高親和性抗hTfR抗体の可変領域のアミノ酸配列の解析
実施例5で選択したクローン1株~クローン14株からcDNAを調製し,これらのcDNAを鋳型として抗体の軽鎖及び重鎖をコードする遺伝子を増幅させた。増幅させた遺伝子の塩基配列を翻訳し,各細胞株の産生する抗hTfR抗体番号1~抗hTfR抗体番号14の抗体のそれぞれについて,軽鎖及び重鎖の可変領域のアミノ酸配列を決定した。
【0212】
抗hTfR抗体番号1は,軽鎖の可変領域に配列番号218に記載のアミノ酸配列と,重鎖の可変領域に配列番号219に記載のアミノ酸配列とを含むものであった。また,軽鎖の可変領域は,CDR1に配列番号6又は7,CDR2に配列番号8又は9,及びCDR3に配列番号10に記載のアミノ酸配列を含んでなり,その重鎖の可変領域は,CDR1に配列番号76又は77,CDR2に配列番号78又は79,及びCDR3に配列番号80又は81に記載のアミノ酸配列を含んでなるものであった。但し,CDRは上記のアミノ酸配列に限られず,これらのアミノ酸配列を含む領域,これらのアミノ酸配列の一部を含む連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列もCDRとすることができると考えられた。
【0213】
抗hTfR抗体番号2は,軽鎖の可変領域に配列番号220に記載のアミノ酸配列と,重鎖の可変領域に配列番号221に記載のアミノ酸配列とを含むものであった。また,その軽鎖の可変領域は,CDR1に配列番号11又は12,CDR2に配列番号13又は14,及びCDR3に配列番号15に記載のアミノ酸配列を含んでなり,その重鎖の可変領域は,CDR1に配列番号82又は83,CDR2に配列番号84又は85,及びCDR3に配列番号86又は87に記載のアミノ酸配列を含んでなるものであった。但し,CDRは上記のアミノ酸配列に限られず,これらのアミノ酸配列を含む領域,これらのアミノ酸配列の一部を含む連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列もCDRとすることができると考えられた。
【0214】
抗hTfR抗体番号3は,軽鎖の可変領域に配列番号222に記載のアミノ酸配列と,重鎖の可変領域に配列番号223に記載のアミノ酸配列とを含むものであった。また,その軽鎖の可変領域は,CDR1に配列番号16又は17,CDR2に配列番号18又は19,及びCDR3に配列番号20に記載のアミノ酸配列を含んでなり,その重鎖の可変領域は,CDR1に配列番号88又は89,CDR2に配列番号90又は91,及びCDR3に配列番号92又は93に記載のアミノ酸配列を含んでなるものであった。但し,CDRは上記のアミノ酸配列に限られず,これらのアミノ酸配列を含む領域,これらのアミノ酸配列の一部を含む連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列もCDRとすることができると考えられた。
【0215】
抗hTfR抗体番号4は,軽鎖の可変領域に配列番号224に記載のアミノ酸配列と,重鎖の可変領域に配列番号225に記載のアミノ酸配列とを含むものであった。また,その軽鎖の可変領域は,CDR1に配列番号21又は22,CDR2に配列番号23又は24,及びCDR3に配列番号25に記載のアミノ酸配列を含んでなり,その重鎖の可変領域は,CDR1に配列番号94又は95,CDR2に配列番号96又は97,及びCDR3に配列番号98又は99に記載のアミノ酸配列を含んでなるものであった。但し,CDRは上記のアミノ酸配列に限られず,これらのアミノ酸配列を含む領域,これらのアミノ酸配列の一部を含む連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列もCDRとすることができると考えられた。
【0216】
抗hTfR抗体番号5は,軽鎖の可変領域に配列番号226に記載のアミノ酸配列と,重鎖の可変領域に配列番号227に記載のアミノ酸配列とを含むものであった。また,その軽鎖の可変領域は,CDR1に配列番号26又は27,CDR2に配列番号28又は29,及びCDR3に配列番号30に記載のアミノ酸配列を含んでなり,その重鎖の可変領域は,CDR1に配列番号100又は101,CDR2に配列番号102又は103,及びCDR3に配列番号104又は105に記載のアミノ酸配列を含んでなるものであった。但し,CDRは上記のアミノ酸配列に限られず,これらのアミノ酸配列を含む領域,これらのアミノ酸配列の一部を含む連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列もCDRとすることができると考えられた。
【0217】
抗hTfR抗体番号6は,軽鎖の可変領域に配列番号228に記載のアミノ酸配列と,重鎖の可変領域に配列番号229に記載のアミノ酸配列とを含むものであった。また,その軽鎖の可変領域は,CDR1に配列番号31又は32,CDR2に配列番号33又は34,及びCDR3に配列番号35に記載のアミノ酸配列を含んでなり,その重鎖の可変領域は,CDR1に配列番号106又は107,CDR2に配列番号108又は278,及びCDR3に配列番号109又は110に記載のアミノ酸配列を含んでなるものであった。但し,CDRは上記のアミノ酸配列に限られず,これらのアミノ酸配列を含む領域,これらのアミノ酸配列の一部を含む連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列もCDRとすることができると考えられた。
【0218】
抗hTfR抗体番号7は,軽鎖の可変領域に配列番号230に記載のアミノ酸配列と,重鎖の可変領域に配列番号231に記載のアミノ酸配列とを含むものであった。また,その軽鎖の可変領域は,CDR1に配列番号36又は37,CDR2に配列番号38又は39,及びCDR3に配列番号40に記載のアミノ酸配列を含んでなり,その重鎖の可変領域は,CDR1に配列番号111又は112,CDR2に配列番号113又は114,及びCDR3に配列番号115又は116に記載のアミノ酸配列を含んでなるものであった。但し,CDRは上記のアミノ酸配列に限られず,これらのアミノ酸配列を含む領域,これらのアミノ酸配列の一部を含む連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列もCDRとすることができると考えられた。
【0219】
抗hTfR抗体番号8は,軽鎖の可変領域に配列番号232に記載のアミノ酸配列と,重鎖の可変領域に配列番号233に記載のアミノ酸配列とを含むものであった。また,その軽鎖の可変領域は,CDR1に配列番号41又は42,CDR2に配列番号43又は44,及びCDR3に配列番号45に記載のアミノ酸配列を含んでなり,その重鎖の可変領域は,CDR1に配列番号117又は118,CDR2に配列番号119又は279,及びCDR3に配列番号120又は121に記載のアミノ酸配列を含んでなるものであった。但し,CDRは上記のアミノ酸配列に限られず,これらのアミノ酸配列を含む領域,これらのアミノ酸配列の一部を含む連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列もCDRとすることができると考えられた。
【0220】
抗hTfR抗体番号9は,軽鎖の可変領域に配列番号234に記載のアミノ酸配列と,重鎖の可変領域に配列番号235に記載のアミノ酸配列とを含むものであった。また,その軽鎖の可変領域は,CDR1に配列番号46又は47,CDR2に配列番号48又は49,及びCDR3に配列番号50に記載のアミノ酸配列を含んでなり,その重鎖の可変領域は,CDR1に配列番号122又は123,CDR2に配列番号124又は125,及びCDR3に配列番号126又は127に記載のアミノ酸配列を含んでなるものであった。但し,CDRは上記のアミノ酸配列に限られず,これらのアミノ酸配列を含む領域,これらのアミノ酸配列の一部を含む連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列もCDRとすることができると考えられた。
【0221】
抗hTfR抗体番号10は,軽鎖の可変領域に配列番号236に記載のアミノ酸配列と,重鎖の可変領域に配列番号237に記載のアミノ酸配列とを含むものであった。また,その軽鎖の可変領域は,CDR1に配列番号51又は52,CDR2に配列番号53又は54,及びCDR3に配列番号55に記載のアミノ酸配列を含んでなり,その重鎖の可変領域は,CDR1に配列番号128又は129,CDR2に配列番号130又は131,及びCDR3に配列番号132又は133に記載のアミノ酸配列を含んでなるものであった。但し,CDRは上記のアミノ酸配列に限られず,これらのアミノ酸配列を含む領域,これらのアミノ酸配列の一部を含む連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列もCDRとすることができると考えられた。
【0222】
抗hTfR抗体番号11は,軽鎖の可変領域に配列番号238に記載のアミノ酸配列と,重鎖の可変領域に配列番号239に記載のアミノ酸配列とを含むものであった。また,その軽鎖の可変領域は,CDR1に配列番号56又は57,CDR2に配列番号58又は59,及びCDR3に配列番号60に記載のアミノ酸配列を含んでなり,その重鎖の可変領域は,CDR1に配列番号134又は135,CDR2に配列番号136又は137,及びCDR3に配列番号138又は139に記載のアミノ酸配列を含んでなるものであった。但し,CDRは上記のアミノ酸配列に限られず,これらのアミノ酸配列を含む領域,これらのアミノ酸配列の一部を含む連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列もCDRとすることができると考えられた。
【0223】
抗hTfR抗体番号12は,軽鎖の可変領域に配列番号240に記載のアミノ酸配列と,重鎖の可変領域に配列番号241に記載のアミノ酸配列とを含むものであった。また,その軽鎖の可変領域は,CDR1に配列番号61又は62,CDR2に配列番号63又は64,及びCDR3に配列番号65に記載のアミノ酸配列を含んでなり,その重鎖の可変領域は,CDR1に配列番号140又は141,CDR2に配列番号142又は143,及びCDR3に配列番号144又は145に記載のアミノ酸配列を含んでなるものであった。但し,CDRは上記のアミノ酸配列に限られず,これらのアミノ酸配列を含む領域,これらのアミノ酸配列の一部を含む連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列もCDRとすることができると考えられた。
【0224】
抗hTfR抗体番号13は,軽鎖の可変領域に配列番号242に記載のアミノ酸配列と,重鎖の可変領域に配列番号243に記載のアミノ酸配列とを含むものであった。また,その軽鎖の可変領域は,CDR1に配列番号66又は67,CDR2に配列番号68又は69,及びCDR3に配列番号70に記載のアミノ酸配列を含んでなり,その重鎖の可変領域は,CDR1に配列番号146又は147,CDR2に配列番号148又は149,及びCDR3に配列番号150又は151に記載のアミノ酸配列を含んでなるものであった。但し,CDRは上記のアミノ酸配列に限られず,これらのアミノ酸配列を含む領域,これらのアミノ酸配列の一部を含む連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列もCDRとすることができると考えられた。
【0225】
抗hTfR抗体番号14は,軽鎖の可変領域に配列番号244に記載のアミノ酸配列と,重鎖の可変領域に配列番号245に記載のアミノ酸配列とを含むものであった。また,その軽鎖の可変領域は,CDR1に配列番号71又は72,CDR2に配列番号73又は74,及びCDR3に配列番号75に記載のアミノ酸配列を含んでなり,その重鎖の可変領域は,CDR1に配列番号152又は153,CDR2に配列番号154又は155,及びCDR3に配列番号156又は157に記載のアミノ酸配列を含んでなるものであった。但し,CDRは上記のアミノ酸配列に限られず,これらのアミノ酸配列を含む領域,これらのアミノ酸配列の一部を含む連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列もCDRとすることができると考えられた。
【0226】
抗hTfR抗体番号1~抗hTfR抗体番号14の,軽鎖及び重鎖の可変領域に含まれるアミノ酸配列の配列番号を,表1にまとめて示す。
【0227】
【表1】
【0228】
抗hTfR抗体番号1~抗hTfR抗体番号14の,軽鎖の可変領域のCDR1~3と重鎖の可変領域のCDR1~3に含まれるアミノ酸配列の配列番号を,表2にまとめて示す。但し,表2は各CDRのアミノ酸配列を例示するものであり,各CDRのアミノ酸配列は表2に記載のアミノ酸配列に限られるものではなく,これらのアミノ酸配列を含む領域のアミノ酸配列,これらのアミノ酸配列の一部を含む連続した3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列もCDRとし得ると考えられる。
【0229】
【表2】
【0230】
〔実施例7〕抗hTfR抗体のヒトTfR及びサルTfRへの親和性の測定
抗hTfR抗体とヒトTfR及びサルTfRへの親和性の測定は,バイオレイヤー干渉法(BioLayer Interferometry:BLI)を用いた生体分子相互作用解析システムであるOctetRED96(ForteBio社,a division of Pall Corporation)を用いて実施した。バイオレイヤー干渉法の基本原理について,簡単に説明する。センサーチップ表面に固定された生体分子の層(レイヤー)に特定波長の光を投射したとき,生体分子のレイヤーと内部の参照となるレイヤーの二つの表面から光が反射され,光の干渉波が生じる。測定試料中の分子がセンサーチップ表面の生体分子に結合することにより,センサー先端のレイヤーの厚みが増加し,干渉波に波長シフトが生じる。この波長シフトの変化を測定することにより,センサーチップ表面に固定された生体分子に結合する分子数の定量及び速度論的解析をリアルタイムで行うことができる。測定は,概ねOctetRED96に添付の操作マニュアルに従って実施した。ヒトTfRとしては,N末端にヒスチジンタグが付加した,配列番号1に示されるアミノ酸配列の中でN末端側から89番目のシステイン残基からC末端のフェニルアラニンまでの,hTfRの細胞外領域のアミノ酸配列を有する組換えヒトTfR(rヒトTfR:Sino Biological社)を用いた。サルTfRとしては,N末端にヒスチジンタグが付加した,配列番号2に示されるアミノ酸配列の中でN末端側から89番目のシステイン残基からC末端のフェニルアラニンまでの,カニクイザルのTfRの細胞外領域のアミノ酸配列を有する組換えサルTfR(rサルTfR:Sino Biological社)を用いた。
【0231】
実施例5で選択したクローン1株~クローン14株を,それぞれ細胞濃度が約2×10個/mLとなるように,(1X)HATサプリメント(Life Technologies社)及び10% Ultra low IgGウシ胎児血清(Life Technologies社)を含むRPMI1640培地で希釈し,1Lの三角フラスコに200mLの細胞懸濁液を加え,37℃で,5%COと95%空気からなる湿潤環境で約70rpmの撹拌速度で6~7日間培養した。培養上清を遠心操作により回収し,0.22μmフィルター(Millipore社)でろ過して,培養上清とした。回収した培養上清を,予め150mM NaClを含むカラム体積3倍容の20mM Tris緩衝液(pH8.0)で平衡化しておいたProteinGカラム(カラム体積:1mL,GEヘルスケア社)に負荷した。次いで,カラム体積の5倍容の同緩衝液によりカラムを洗浄した後,150mM NaClを含むカラム体積の4倍容の50mMグリシン緩衝液(pH2.8)で,吸着した抗体を溶出させ,溶出画分を採取した。溶出画分を1MTris緩衝液(pH8.0)を添加してpH7.0に調整した。これを抗hTfR抗体番号1~抗hTfR抗体番号14の精製品としてとして以下の実験に用いた。
【0232】
精製した各抗体(抗hTfR抗体番号1~抗hTfR抗体番号14)を,それぞれHBS-P+(150mM NaCl,50μM EDTA及び0.05% Surfactant P20を含む10mM HEPES)で2段階希釈し,0.78125~50nM(0.117~7.5μg/mL)の7段階の濃度の抗体溶液を調製した。この抗体溶液をサンプル溶液とした。rヒトTfRとrサルTfRとを,それぞれHBS-P+で希釈し,25μg/mLの溶液を調製し,それぞれrヒトTfR-ECD(Histag)溶液及びrサルTfR-ECD(Histag)溶液とした。
【0233】
上記2段階希釈して調製したサンプル溶液を,96 well plate, black(greiner bio-one社)に200μL/ウェルずつ添加した。また,上記調製したrヒトTfR-ECD(Histag)溶液及びrサルTfR-ECD(Histag)溶液を,所定のウェルにそれぞれ200μL/ウェルずつ添加した。ベースライン,解離用及び洗浄用のウェルには,HBS-P+を200μL/ウェルずつ添加した。再生用のウェルには,10mM Glycine-HCl, pH1.7を200μL/ウェルずつ添加した。活性化用のウェルには,0.5mM NiCl2溶液を200μL/ウェルずつ添加した。このプレートと,バイオセンサー(Biosensor/Ni-NTA:ForteBio社,a division ofPall Corporation)を,OctetRED96の所定の位置に設置した。
【0234】
OctetRED96を下記の表3に示す条件で作動させてデータを取得後,OctetRED96付属の解析ソフトウェアを用いて,結合反応曲線を1:1結合モデルあるいは2:1結合モデルにフィッティングし,抗hTfR抗体と,rヒトTfR及びrサルTfRに対する会合速度定数(kon)及び解離速度定数(koff)を測定し,解離定数(Kd)算出した。なお,測定は25~30℃の温度下で実施した。
【0235】
【表3】
【0236】
表4に抗hTfR抗体番号1~14(表中,抗体番号1~14にそれぞれ対応)のヒトTfRに対する会合速度定数(kon)及び解離速度定数(koff)の測定結果,及び解離定数(k)を示す。
【0237】
【表4】
【0238】
表5に抗hTfR抗体番号1~14(表中,抗体番号1~14にそれぞれ対応)のサルTfRに対する会合速度定数(kon)及び解離速度定数(koff)の測定結果,及び解離定数(k)を示す。
【0239】
【表5】
【0240】
抗hTfR抗体のヒトTfRへの親和性の測定の結果,全ての抗体で,ヒトTfRとの解離定数は1×10-8M以下であり,抗体番号10を除く13種類の抗体ではヒトTfRとの解離定数は1×10-9M以下であり,特に抗体番号3,8,13及び14では,ヒトTfRとの解離定数が1×10-12M以下であった(表4)。これらの結果は,14種類の抗体が全てヒトTfRと高い親和性を有する抗体であることを示す。次いで,抗hTfR抗体のサルTfRへの親和性の測定の結果をみると,全ての抗体で,サルTfRとの解離定数は5×10-8M以下であり,特に,抗体番号1及び3では,サルTfRとの解離定数が1×10-12M以下であった(表5)。これらの結果は,14種類の抗体が全てヒトTfRのみならずサルTfRとも高い親和性を有する抗体であることを示す。
【0241】
〔実施例7-2〕抗hTfR抗体のマウスを用いた脳移行評価
次いで,抗hTfR抗体番号1~9及び11~14の13種類の抗体について,各抗体がBBBを通過して脳内に移行することを,マウストランスフェリン受容体の細胞外領域をコードする遺伝子をヒトトランスフェリン受容体遺伝子の細胞外領域をコードする遺伝子に置換したhTfRノックインマウス(hTfR-KIマウス)を用いて評価した。hTfR-KIマウスは,概ね下記の方法で作製した。また,抗hTfR抗体としては,実施例7に記載の抗体の精製品を用いた。
【0242】
細胞内領域がマウスhTfRのアミノ酸配列であり,細胞外領域がヒトhTfRのアミノ酸配列であるキメラhTfRをコードするcDNAの3’側に,loxP配列で挟み込んだネオマイシン耐性遺伝子を配置した,配列番号253で示される塩基配列を有するDNA断片を化学的に合成した。このDNA断片を,5’アーム配列として配列番号254で示される塩基配列,3’アーム配列として配列番号255で示される塩基配列を有するターゲッティングベクターに,常法により組み込み,これをマウスES細胞にエレクトロポレーション法により導入した。遺伝子導入後のマウスES細胞を,ネオマイシン存在下で選択培養し,ターゲッティングベクターが相同組換えにより染色体に組み込まれたマウスES細胞を選択した。得られた遺伝子組換えマウスES細胞を,ICRマウスの8細胞期胚(宿主胚)へ注入し,精管結紮を行ったマウスとの交配によって得られた偽妊娠マウス(レシピエントマウス)に移植した。得られた産仔(キメラマウス)について毛色判定を行い,ES細胞が生体の形成に高効率で寄与した個体,すなわち全体毛に対する白色毛の占める比率の高い個体を選別した。このキメラマウス個体をICRマウスと掛け合わせてF1マウスを得た。白色のF1マウスを選別し,尻尾の組織より抽出したDNAを解析し,染色体上でマウストランスフェリン受容体遺伝子がキメラhTfRに置き換わっているマウスをhTfR-KIマウスとした。
【0243】
上記13種類の抗hTfR抗体を,Fluorescein Labeling Kit-NH(同仁化学研究所)を用いて,添付の操作マニュアルに従ってフルオレセインイソチオシアネート(FITC)により蛍光標識した。このFITC蛍光標識した13種類の抗hTfR抗体を含むPBS溶液をそれぞれ調製した。この抗体溶液を,投与される抗hTfR抗体の用量が3mg/kgとなるように,それぞれ1匹のhTfR-KIマウス(雄,10~12週齢)に静脈注射した。また,コントロールとして,同様にして調製したFITC蛍光標識したマウスIgG1(シグマ社)を含むPBS溶液を,3mg/kgの用量で1匹のhTfR-KIマウス(雄,10~12週齢)に静脈注射した。静脈注射してから約8時間後に生理食塩液で全身灌流し,脳(大脳と小脳を含む部分)を採取した。摘出した脳の重量(湿重量)を測定した後,Protease Inhibitor Cocktail(シグマ社)を含むT-PER(Thermo Fisher Scientific社)を添加して脳組織をホモジネートした。ホモジネートを遠心して上清を回収し,上清中に含まれるFITC蛍光標識した抗体の量を以下の方法で測定した。まず,抗FITC Antibody(Bethyl社)をHigh Bind Plate(Meso Scale Diagnostics社)の各ウェルに10μLずつ添加し,1時間静置してプレートに固定させた。次いで,各ウェルにSuperBlock Blocking buffer in PBS(Thermo Fisher Scientific社)を150μLずつ添加し,1時間振盪してプレートをブロッキングした。次いで,各ウェルに脳組織のホモジネートの上清を25μLずつ添加し,1時間振盪した。次いで,各ウェルにSULFO-TAG Anti-Mouse Antibody(Goat) (Meso Scale Diagnostics社)を25μLずつ添加し,1時間振盪した。次いで,各ウェルにRead buffer T(Meso Scale Diagnostics社)を150μLずつ添加し,SectorTM Imager 6000 readerを用いて各ウェルからの発光量を測定した。濃度既知のFITC蛍光標識した抗hTfR抗体の標準試料の測定値から検量線を作成し,これに各検体の測定値を内挿することにより,脳のグラム重量(湿重量)当たりに含まれる抗体の量(脳組織中の抗hTfR抗体の濃度)を算出した。その結果を表5-2に示す。
【0244】
コントロールと比較して,抗hTfR抗体番号1~9及び11~14の抗体の脳組織中の濃度は,いずれも25倍以上であった。抗hTfR抗体番号5及び6では,その濃度がコントロールと比較して100倍以上であり,特に抗hTfR抗体番号6では約160倍にまで達した。これらの結果は,抗hTfR抗体番号1~9及び11~14の抗体が,BBBを積極的に通過して脳内に移行する性質を有することを示すものである。
【0245】
【表5-2】
【0246】
〔実施例8〕抗hTfR抗体のサルを用いた薬物動態解析
抗hTfR抗体番号1~3の抗体を,それぞれ,5.0mg/kgの用量でそれぞれ雄性カニクイザルに単回静脈内投与し,投与8時間後に生理食塩液で全身潅流を実施した。また,陰性対照として,抗hTfR抗体を非投与の1匹の個体を同様に全身潅流した。潅流後,延髄を含む脳組織を摘出した。この脳組織を用いて,以下の抗hTfR抗体の濃度測定及び免疫組織化学染色を行った。また,抗hTfR抗体としては,実施例7に記載の抗体の精製品を用いた。
【0247】
脳組織中の抗hTfR抗体の濃度測定は,概ね以下の手順で行った。採取した組織を,脳組織を大脳,小脳,海馬及び延髄に分けてから,それぞれProtease Inhibitor Cocktail(Sigma-Aldrich社)を含むRIPA Buffer(和光純薬工業株式会社)でホモジネートし遠心して上清を回収した。Affinipure Goat Anti mouse IgG Fcγ pAb(Jackson ImmunoResearch社)をHigh Bind Plate(Meso Scale Diagnostics社)の各ウェルに10μLずつ添加し,1時間静置してプレートに固定した。次いで,各ウェルにSuperBlock blocking buffer in PBS(Thermo Fisher Scientific社)を150μLずつ添加し,1時間振盪し,プレートをブロッキングした。次いで,各ウェルに脳組織のホモジネートの上清を25μLずつ添加し,1時間振盪した。次いで,各ウェルにAffinipure Goat Anti mouse IgG Fab-Biotin(Jackson ImmunoResearch社)を25μLずつ添加し,1時間振盪した。次いで,各ウェルにSULFO-Tag-Streptavidin(Meso Scale Diagnostics社)を25μLずつ添加し,0.5時間振盪した。各ウェルにRead buffer T(Meso Scale Diagnostics社)を150μLずつ添加し,SectorTM Imager 6000 reader(Meso Scale Diagnostics社)を用いて各ウェルからの発光量を測定した。濃度既知の抗hTfR抗体の標準試料の測定値から検量線を作成し,これに各検体の測定値を内挿することにより,各脳組織のグラム重量(湿重量)当たりに含まれる抗体の量(脳組織中の抗hTfR抗体の濃度)を算出した。
【0248】
脳組織中の抗hTfR抗体の濃度測定の結果を表6に示す。抗hTfR抗体番号1~抗hTfR抗体番号3の抗体ともに,大脳,小脳,海馬及び延髄での蓄積が認められたが,その量は,抗hTfR抗体番号1<抗hTfR抗体番号3<抗hTfR抗体番号2と,抗hTfR抗体番号1で最も少なく,抗hTfR抗体番号2で最も多かった。hTfR抗体番号2では,抗hTfR抗体番号1と比較して,大脳で約4.3倍,小脳で約6.6倍,海馬で約4.6倍,及び延髄で約2倍の,抗体の蓄積が認められた。これらの結果は,これら3種類の抗体が血液脳関門を通過して脳組織に蓄積する性質を有することを示すものであり,脳組織内で機能させるべき薬剤をこれらの抗体と結合させることにより,その薬剤を効率良く脳組織に蓄積させることができること示すものである。
【0249】
【表6】
【0250】
脳組織中の抗hTfR抗体の免疫組織化学染色は,概ね以下の手順で行った。ティシューテッククライオ3DM(サクラファインテック株式会社)を用いて,採取した組織を-80℃にまで急速冷凍し,組織の凍結ブロックを作製した。この凍結ブロックを4μmに薄切後,MASコートスライドガラス(松浪ガラス株式会社)に貼り付けた。組織薄片に4%パラホルムアルデヒド(和光純薬工業株式会社)を4℃で5分間反応させ,組織薄片をスライドガラス上に固定した。続いて,組織薄片に0.3%過酸化水素水を含むメタノール溶液(和光純薬工業株式会社)を30分間反応させ,内因性ペルオキシダーゼを失活させた。次いでスライドガラスをSuperBlock blocking buffer in PBSに30分間室温で反応させてブロッキングした。次いで,組織薄片にMouse IgG-heavy and light chain Antibody(Bethyl Laboratories社)を1時間室温で反応させた。組織薄片を,DAB基質(3,3’-diaminobenzidine,Vector Laboratories社)で発色させ,マイヤー・ヘマトキシリン(Merck社)で対比染色を行い,脱水,透徹した後に封入し,光学顕微鏡で観察した。
【0251】
図1に大脳皮質の抗hTfR抗体の免疫組織化学染色の結果を示す。抗hTfR抗体番号1~抗hTfR抗体番号3を投与したサルの大脳皮質では,血管の特異的な染色が確認された(それぞれ図1b~d)。特に,抗hTfR抗体番号2を投与したサルと抗hTfR抗体番号3を投与したサルの大脳皮質(それぞれ図1c及び図1d)では,脳血管外の脳実質領域にも広範に特異的な染色が確認された。なお,コントロールとしておいた抗hTfR抗体を非投与のサルの大脳皮質では染色は認められず,バックグラウンドの染色は殆どないことが示された(図1a)。
【0252】
図2に海馬の抗hTfR抗体の免疫組織化学染色の結果を示す。抗hTfR抗体番号1~抗hTfR抗体番号3を投与したサルの大脳では,血管の特異的な染色が確認された(それぞれ図2b~d)。特に,抗hTfR抗体番号2を投与したサルと抗hTfR抗体番号3を投与したサルの海馬(それぞれ図2c及び図2d)では,神経様細胞にも特異的な染色が確認され,更に,脳血管外の脳実質領域にも広範に特異的な染色が確認された。なお,コントロールとしておいた抗hTfR抗体を非投与のサルの海馬では染色は認められず,バックグラウンドの染色は殆どないことが示された(図2a)。
【0253】
図3に小脳の抗hTfR抗体の免疫組織化学染色の結果を示す。抗hTfR抗体番号1~抗hTfR抗体番号3を投与したサルの小脳では,血管の特異的な染色が確認された(それぞれ図3b~d)。特に,抗hTfR抗体番号2を投与したサルと抗hTfR抗体番号3を投与したサルの小脳(それぞれ図3c及び図3d)では,プルキンエ細胞にも特異的な染色が確認された。なお,コントロールとしておいた抗hTfR抗体を非投与のサルの小脳では染色は認められず,バックグラウンドの染色は殆どないことが示された(図3a)。
【0254】
以上の大脳,海馬及び小脳の免疫組織化学染色の結果から,抗hTfR抗体番号1は脳血管内皮表面に存在するhTfRへは結合することができるが,抗hTfR抗体番号2及び3と比較して脳実質への移行する量は比較的少ないと考えられた。一方で,抗hTfR抗体番号2及び3は,脳血管内皮表面に存在するhTfRへ結合することができ,且つ,hTfRへの結合後,血液脳関門を通過して脳実質内へ移行し,さらに海馬においては脳実質内から神経様細胞にまで,小脳においてはプルキンエ細胞にまで取り込まれることがわかった。
【0255】
〔実施例9〕ヒト化抗hTfR抗体の作製
表1に示す抗hTfR抗体番号1~3の軽鎖及び重鎖の可変領域に含まれるアミノ酸配列のヒト化を試みた。抗hTfR抗体番号1については,配列番号158~配列番号163に示されるアミノ酸配列を有するヒト化された軽鎖の可変領域と,配列番号166~配列番号171に示されるアミノ酸配列を有するヒト化された重鎖の可変領域を得た。抗hTfR抗体番号2については,配列番号174~配列番号179に示されるアミノ酸配列を有するヒト化された軽鎖の可変領域と,配列番号182~配列番号187に示されるアミノ酸配列を有するヒト化された重鎖の可変領域を得た。抗hTfR抗体番号3については,配列番号190~配列番号195に示されるアミノ酸配列を有するヒト化された軽鎖の可変領域と,配列番号204~配列番号209に示されるアミノ酸配列を有するヒト化された重鎖の可変領域を得た。
【0256】
〔実施例10〕ヒト化抗hTfR抗体をコードする遺伝子の構築
上記の抗hTfR抗体番号1~3について,それぞれヒト化抗hTfR抗体の軽鎖及び重鎖の可変領域を含む,軽鎖及び重鎖の全長をコードする遺伝子を含むDNA断片を人工的に合成した。このとき,軽鎖の全長をコードする遺伝子の5’側には,5’端から順にMluI配列とリーダーペプチドをコードする配列とを,3’側にはNotI配列を導入した。また,重鎖の全長をコードする遺伝子の5’側には,5’端から順にMluI配列とリーダーペプチドをコードする配列とを,3’側にはNotI配列を導入した。なお,ここで導入したリーダーペプチドは,ヒト化抗体の軽鎖及び重鎖をホスト細胞である哺乳動物細胞で発現させたときに,軽鎖及び重鎖が細胞外に分泌されるように,分泌シグナルとして機能するものである。
【0257】
抗hTfR抗体番号1の軽鎖については,可変領域に配列番号163で示されるアミノ酸配列を有する,配列番号164で示されるアミノ酸配列の軽鎖(ヒト化抗hTfR抗体番号1の軽鎖)の全長をコードする遺伝子を含むDNA断片(配列番号165)を合成した。抗hTfR抗体番号1の重鎖については,可変領域に配列番号171で示されるアミノ酸配列を有する,配列番号172で示されるアミノ酸配列の重鎖(ヒト化抗hTfR抗体番号1の重鎖)の全長をコードする遺伝子を含むDNA断片(配列番号173)を合成した。配列番号173で示されるDNA断片にコードされるヒト化抗hTfR抗体の重鎖はIgG1である。
【0258】
抗hTfR抗体番号2の軽鎖については,可変領域に配列番号179で示されるアミノ酸配列を有する,配列番号180で示されるアミノ酸配列の軽鎖(ヒト化抗hTfR抗体番号2の軽鎖)の全長をコードする遺伝子を含むDNA断片(配列番号181)を合成した。抗hTfR抗体番号2の重鎖については,可変領域に配列番号187で示されるアミノ酸配列を有する,配列番号188で示されるアミノ酸配列の重鎖(ヒト化抗hTfR抗体番号2の重鎖)の全長をコードする遺伝子を含むDNA断片(配列番号189)を合成した。配列番号189で示されるDNA断片にコードされるヒト化抗hTfR抗体の重鎖はIgG1である。
【0259】
抗hTfR抗体番号3の軽鎖については,可変領域に配列番号191で示されるアミノ酸配列を有する,配列番号196で示されるアミノ酸配列の軽鎖(ヒト化抗hTfR抗体番号3の軽鎖)の全長をコードするDNA断片(配列番号197)を合成した。抗hTfR抗体番号3の重鎖については,可変領域に配列番号205で示されるアミノ酸配列を有する,配列番号210で示されるアミノ酸配列の重鎖(ヒト化抗hTfR抗体番号3の重鎖)の全長をコードするDNA断片(配列番号211)を合成した。配列番号211で示されるDNA断片にコードされるヒト化抗hTfR抗体の重鎖はIgG1である。
【0260】
抗hTfR抗体番号3の軽鎖については,可変領域に配列番号193で示されるアミノ酸配列を有する,配列番号198で示されるアミノ酸配列の軽鎖(ヒト化抗hTfR抗体番号3-2の軽鎖)の全長をコードするDNA断片(配列番号199)と,可変領域に配列番号194で示されるアミノ酸配列を有する,配列番号200で示されるアミノ酸配列の軽鎖(ヒト化抗hTfR抗体番号3-3の軽鎖)の全長をコードするDNA断片(配列番号201)と,可変領域に配列番号195で示されるアミノ酸配列を有する,配列番号202で示されるアミノ酸配列の軽鎖(ヒト化抗hTfR抗体番号3-4の軽鎖)の全長をコードするDNA断片(配列番号203)も合成した。
【0261】
更に,抗hTfR抗体番号3の重鎖については,可変領域に配列番号205で示されるアミノ酸配列を有する,配列番号212で示されるアミノ酸配列の重鎖(ヒト化抗hTfR抗体番号3の重鎖IgG4)の全長をコードするDNA断片(配列番号213)を合成した。この配列番号213で示されるDNA断片にコードされるヒト化抗hTfR抗体の重鎖はIgG4である。
【0262】
〔実施例11〕ヒト化抗hTfR抗体発現ベクターの構築
pEF/myc/nucベクター(インビトロジェン社)を,KpnIとNcoIで消化し,EF-1αプロモーターおよびその第一イントロンを含む領域を切り出し,これをT4 DNAポリメラーゼで平滑末端化処理した。pCI-neo(インビトロジェン社)を,BglIIおよびEcoRIで消化して,CMVのエンハンサー/プロモーターおよびイントロンを含む領域を切除した後に,T4 DNAポリメラーゼで平滑末端化処理した。これに,上記のEF-1αプロモーターおよびその第一イントロンを含む領域を挿入して,pE-neoベクターを構築した。pE-neoベクターを,SfiIおよびBstXIで消化し,ネオマイシン耐性遺伝子を含む約1kbpの領域を切除した。pcDNA3.1/Hygro(+)(インビトロジェン社)を鋳型にしてプライマーHyg-Sfi5’(配列番号216)およびプライマーHyg-BstX3’(配列番号217)を用いて,PCR反応によりハイグロマイシン遺伝子を増幅した。増幅したハイグロマイシン遺伝子を,SfiIおよびBstXIで消化し,上記のネオマイシン耐性遺伝子を切除したpE-neoベクターに挿入して,pE-hygrベクターを構築した。
【0263】
pE-hygrベクター及びpE-neoベクターをそれぞれMluIとNotIで消化した。実施例10で合成したヒト化抗hTfR抗体番号1の軽鎖をコードするDNA断片(配列番号165)と重鎖をコードするDNA断片(配列番号173)をMluIとNotIで消化し,それぞれpE-hygrベクターとpE-neoベクターのMluI-NotI間に挿入した。得られたベクターを,それぞれヒト化抗hTfR抗体番号1の軽鎖発現用ベクターのpE-hygr(LC1)とヒト化抗hTfR抗体番号1の重鎖発現用ベクターのpE-neo(HC1)として以下の実験に用いた。
【0264】
同様に,実施例10で合成したヒト化抗hTfR抗体番号2の軽鎖をコードするDNA断片(配列番号181)と重鎖をコードするDNA断片(配列番号189)をMluIとNotIで消化し,それぞれpE-hygrベクターとpE-neoベクターのMluI-NotI間に挿入した。得られたベクターを,それぞれヒト化抗hTfR抗体番号2の軽鎖発現用ベクターのpE-hygr(LC2),ヒト化抗hTfR抗体番号2の重鎖発現用ベクターのpE-neo(HC2)として以下の実験に用いた。
【0265】
更に同様に,実施例10で合成したヒト化抗hTfR抗体番号3の軽鎖コードするDNA断片(配列番号197)と重鎖をコードするDNA断片(配列番号211)をMluIとNotIで消化し,それぞれpE-hygrベクターとpE-neoベクターのMluI-NotI間に挿入した。得られたベクターを,それぞれヒト化抗hTfR抗体番号3の軽鎖発現用ベクターのpE-hygr(LC3),ヒト化抗hTfR抗体番号3の重鎖発現用ベクターのpE-neo(HC3)として以下の実験に用いた。
【0266】
更に,抗hTfR抗体番号3の軽鎖については,実施例10で合成したヒト化抗hTfR抗体番号3-2の軽鎖をコードするDNA断片(配列番号199),ヒト化抗hTfR抗体番号3-3の軽鎖をコードするDNA断片(配列番号201),及びヒト化抗hTfR抗体番号3-4の軽鎖をコードするDNA断片(配列番号203)をMluIとNotIで消化し,pE-hygrベクターのMluI-NotI間に挿入し,それぞれヒト化抗hTfR抗体番号3-2の軽鎖発現用ベクターのpE-hygr(LC3-2),ヒト化抗hTfR抗体番号3-3の軽鎖発現用ベクターのpE-hygr(LC3-3),及びヒト化抗hTfR抗体番号3-4の軽鎖発現用ベクターのpE-hygr(LC3-4)を構築した。
【0267】
更に同様に,抗hTfR抗体番号3の重鎖については,実施例10で合成したヒト化抗hTfR抗体番号3の重鎖IgG4をコードするDNA断片(配列番号213)をMluIとNotIで消化し,pE-neoベクターのMluI-NotI間に挿入し,ヒト化抗hTfR抗体番号3の重鎖IgG4発現用ベクターのpE-neo(HC3-IgG4)を構築した。
【0268】
〔実施例12〕ヒト化抗hTfR抗体発現用細胞の構築
CHO細胞(CHO-K1:American Type Culture Collectionから入手)を,下記の方法により,GenePulser(Bio-Rad社)を用いて,実施例11で構築した軽鎖発現用ベクターpE-hygr(LC1)及び重鎖発現用ベクターpE-neo(HC1)で形質転換した。細胞の形質転換は概ね以下の方法で行った。5×10個のCHO-K1細胞をCD OptiCHOTM培地(ライフテクノロジー社)を添加した3.5cm培養ディッシュに播種し,37℃,5%COの条件下で一晩培養した。培地をOpti-MEMTM I培地(ライフテクノロジー社)に交換し,細胞を5×10細胞/mLの密度となるように懸濁した。細胞懸濁液100μLを採取し,これにOpti-MEMTM I培地で100μg/mLに希釈したpE-hygr(LC1)及びpE-neo(HC1)プラスミドDNA溶液を5μLずつ添加した。GenePulser(Bio-Rad社)を用いて,エレクトロポレーションを実施し,細胞にプラスミドを導入した。細胞を,37℃,5%COの条件下で一晩培養した後,0.5mg/mLのハイグロマイシン及び0.8mg/mLのG418を添加したCD OptiCHOTM培地で選択培養した。
【0269】
次いで,限界希釈法により,1ウェルあたり1個以下の細胞が播種されるように,96ウェルプレート上に選択培養で選択された細胞を播種し,各細胞が単クローンコロニーを形成するように約10日間培養した。単クローンコロニーが形成されたウェルの培養上清を採取し,培養上清中のヒト化抗体含量をELISA法にて調べ,ヒト化抗体高発現細胞株を選択した。
【0270】
このときのELISA法は概ね以下の方法で実施した。96ウェルマイクロタイタープレート(Nunc社)の各ウェルに,ヤギ抗ヒトIgGポリクローナル抗体溶液を0.05M炭酸水素塩緩衝液(pH9.6)で4μg/mLに希釈したしたものを100μLずつ加え,室温で少なくとも1時間静置して抗体をプレートに吸着させた。次いで,リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)に0.05% Tween20を添加したもの(PBS-T)で各ウェルを3回洗浄後,Starting Block (PBS) Blocking Buffer(Thermo Fisher Scientific社)を各ウェルに200μLずつ加えてプレートを室温で30分静置した。各ウェルをPBS-Tで3回洗浄した後,PBSに0.5%BSA及び0.05%Tween20を添加したもの(PBS-BT)で適当な濃度に希釈した培養上清又はヒトIgG標準品を,各ウェルに100μLずつ加え,プレートを室温で少なくとも1時間静置した。プレートをPBS-Tで3回洗浄した後,PBS-BTで希釈したHRP標識抗ヒトIgGポリクロ-ナル抗体溶液を,各ウェルに100μLずつ加え,プレートを室温で少なくとも1時間静置した。PBS-Tで各ウェルを3回洗浄後,リン酸-クエン酸緩衝液(pH5.0)を含む0.4mg/mL o-フェニレンジアミンを100μLずつ各ウェルに加え,室温で8~20分間静置した。次いで,1mol/L硫酸を100μLずつ各ウェルに加えて反応を停止させ,96ウェルプレートリーダーを用いて,各ウェルの490nmにおける吸光度を測定した。高い測定値を示したウェルに対応する細胞を,ヒト化抗hTfR抗体番号1の高発現細胞株とした。これを抗体番号1発現株とした。
【0271】
同様にして,実施例11で構築した軽鎖発現用ベクターpE-hygr(LC2)及び重鎖発現用ベクターpE-neo(HC2)を用いてCHO細胞を形質転換させて,ヒト化抗hTfR抗体番号2の高発現細胞株を得た。これを抗体番号2発現株とした。
【0272】
更に同様にして,実施例11で構築した軽鎖発現用ベクターpE-hygr(LC3)及び重鎖発現用ベクターpE-neo(HC3)を用いてCHO細胞を形質転換させて,ヒト化抗hTfR抗体番号3の高発現細胞株を得た。これを抗体番号3発現株とした。
【0273】
更に同様にして,実施例11で構築した軽鎖発現用ベクターpE-hygr(LC3-2)及び重鎖発現用ベクターpE-neo(HC3)を用いてCHO細胞を形質転換させて,ヒト化抗hTfR抗体番号3-2の高発現細胞株を得た。これを抗体番号3-2発現株とした。
【0274】
更に同様にして,実施例11で構築した軽鎖発現用ベクターpE-hygr(LC3-3)及び重鎖発現用ベクターpE-neo(HC3)を用いてCHO細胞を形質転換させて,ヒト化抗hTfR抗体番号3-3の高発現細胞株を得た。これを抗体番号3-3発現株とした。
【0275】
更に同様にして,実施例11で構築した軽鎖発現用ベクターpE-hygr(LC3-4)及び重鎖発現用ベクターpE-neo(HC3)を用いてCHO細胞を形質転換させて,ヒト化抗hTfR抗体番号3-4の高発現細胞株を得た。これを抗体番号3-4発現株とした。
【0276】
更に同様にして,実施例11で構築した軽鎖発現用ベクターpE-hygr(LC3)及び重鎖発現用ベクターpE-neo(HC3-IgG4)を用いてCHO細胞を形質転換させて,ヒト化抗hTfR抗体番号3(IgG4)の高発現細胞株を得た。これを抗体番号3(IgG4)発現株とした。
【0277】
更に同様にして,実施例11で構築した軽鎖発現用ベクターpE-hygr(LC3-2)及び重鎖発現用ベクターpE-neo(HC3-IgG4)を用いてCHO細胞を形質転換させて,ヒト化抗hTfR抗体番号3-2(IgG4)の高発現細胞株を得た。これを抗体番号3-2(IgG4)発現株とした。
【0278】
〔実施例13〕ヒト化抗hTfR抗体の精製
実施例12で得られた抗体番号1発現株,抗体番号2発現株,抗体番号3発現株,抗体番号3-2発現株,抗体番号3-3発現株及び抗体番号3-4発現株を,それぞれ細胞濃度が約2×10個/mLとなるように,CD OptiCHOTM培地で希釈し,1Lの三角フラスコに200mLの細胞懸濁液を加え,37℃で,5%COと95%空気からなる湿潤環境で約70rpmの撹拌速度で6~7日間培養した。培養上清を遠心操作により回収し,0.22μmフィルター(Millipore社)でろ過して,培養上清とした。回収した培養上清に,150mM NaClを含む5倍容の20mM Tris緩衝液(pH8.0)を添加し,予め150mM NaClを含むカラム体積3倍容の20mM Tris緩衝液(pH8.0)で平衡化しておいたProteinAカラム(カラム体積:1mL,Bio-Rad社)に負荷した。次いで,カラム体積の5倍容の同緩衝液によりカラムを洗浄した後,150mM NaClを含むカラム体積の4倍容の50mMグリシン緩衝液(pH2.8)で,吸着したヒト化抗体を溶出させ,溶出画分を採取した。溶出画分に1M Tris緩衝液(pH8.0)を添加して中和して,これを抗体の精製品とした。
【0279】
ここで,抗体番号1発現株の培養上清から精製された抗体を,ヒト化抗hTfR抗体番号1とした。抗体番号2発現株の培養上清から精製された抗体は,ヒト化抗hTfR抗体番号2とした。抗体番号3発現株の培養上清から精製された抗体は,ヒト化抗hTfR抗体番号3とした。抗体番号3-2発現株の培養上清から精製された抗体は,ヒト化抗hTfR抗体番号3-2とした。抗体番号3-3発現株の培養上清から精製された抗体は,ヒト化抗hTfR抗体番号3-3とした。また,抗体番号3-4発現株の培養上清から精製された抗体は,ヒト化抗hTfR抗体番号3-4とした。
【0280】
また,実施例12で得られた抗体番号3(IgG4)発現株,及び抗体番号3-2(IgG4)発現株についても上記と同様に培養して,その培養上清から,それぞれ精製されたヒト化抗hTfR抗体番号3(IgG4)及びヒト化抗hTfR抗体番号3-2(IgG4)を得た。これら2種の抗体は,実施例15に記載されたサルを用いた薬物動態解析に用いた。
【0281】
〔実施例14〕ヒト化抗hTfR抗体のヒトTfR及びサルTfRへの親和性の測定
実施例13で得たヒト化抗hTfR抗体のヒトTfR及びサルTfRへの親和性を,実施例7に記載の方法で測定した。表7にヒト化抗hTfR抗体番号1~3-4(表中,No.1~3-4にそれぞれ対応)のヒトTfRに対する会合速度定数(kon)及び解離速度定数(koff)の測定結果,及び解離定数(k)を示す。
【0282】
【表7】
【0283】
表8にヒト化抗hTfR抗体番号1~3-4(表中,抗体番号1~3-4にそれぞれ対応)のサルTfRに対する会合速度定数(kon)及び解離速度定数(koff)の測定結果,及び解離定数(k)を示す。
【0284】
【表8】
【0285】
ヒト化抗hTfR抗体番号1~3-4のヒトTfRへの親和性の測定の結果,ヒト化抗hTfR抗体番号1,2,3,及び3-4抗体で,ヒトTfRとの解離定数は1×10-12M未満であった(表7)。また,ヒト化抗hTfR抗体番号3-2及び3-3のヒトTfRとの解離定数は,それぞれ2.39×10-11Mと2.09×10-11Mであった。一方,これら抗体に対応するヒト化前の抗hTfR抗体のヒトTfRとの解離定数は,抗体番号1については5.09×10-12Mであり,抗体番号2については1.12×10-11Mであり,抗体番号3については1×10-12M未満であった(表4)。これらの結果は,抗hTfR抗体のヒトTfRへの高い親和性が,抗体をヒト化する前後で維持されることを示すものであり,抗hTfR抗体番号4~14についても,抗体をヒト化した後も,ヒトTfRへの親和性が維持され得ることを示すものである。
【0286】
次いで,ヒト化抗hTfR抗体のサルTfRへの親和性の測定の結果をみると,ヒト化抗hTfR抗体番号1は,抗体をヒト化する前後で解離定数は1×10-12M未満と親和性が維持され,ヒト化抗hTfR抗体番号2も,ヒト化前の解離定数が4.18×10-11Mであったものが,ヒト化後の解離定数は7.55×10-11Mと親和性が維持された(表5,表8)。一方,ヒト化抗hTfR抗体番号3~3-4は,ヒト化前のこれら抗体に対応する抗hTfR抗体番号3のサルTfRとの解離定数が1×10-12M未満であったものが,ヒト化後は2.60×10-10M~1.91×10-9Mと,サルTfRへの親和性の低下が観察された。ヒト化抗hTfR抗体番号3では,サルTfRへの親和性の低下が観察されたものの,これらの結果は,抗hTfR抗体のサルTfRへの高い親和性は,抗体をヒト化する前後で喪失することなく概ね維持されることを示すものであり,抗hTfR抗体番号4~14についても,抗体をヒト化した後も,サルTfRへの親和性が維持され得ることを示すものである。
【0287】
〔実施例15〕ヒト化抗hTfR抗体のサルを用いた薬物動態解析
ヒト化抗hTfR抗体番号3,ヒト化抗hTfR抗体番号3-2,ヒト化抗hTfR抗体番号3(IgG4)及びヒト化抗hTfR抗体番号3-2(IgG4)の4種の抗体を用いて,サルを用いた薬物動態解析を行った。なお,ヒト化抗hTfR抗体番号3は重鎖がIgG1であり,ヒト化抗hTfR抗体番号3(IgG4)はヒト化抗hTfR抗体番号3の重鎖を可変領域はそのままにしてIgG4としたものである。また,ヒト化抗hTfR抗体番号3-2は重鎖がIgG1であり,ヒト化抗hTfR抗体番号3-2(IgG4)はヒト化抗hTfR抗体番号3-2の重鎖を可変領域はそのままにしてIgG4としたものである。これら4種の抗体を,それぞれ,5.0mg/kgの用量でそれぞれ雄性カニクイザルに単回静脈内投与し,投与前,投与後2分,30分,2時間,4時間及び8時間後に末梢血を採取し,採血後に全身潅流を実施した。また,陰性対照として,HER2蛋白に対するヒト化抗体であるトラスツズマブ(ハーセプチンTM,中外製薬)を,同様にして一匹の個体に投与し,投与前,投与後2分,30分,2時間,4時間及び8時間後に末梢血を採取し,採血後に全身潅流を実施した。潅流後,延髄を含む脳組織,脊髄組織及びその他の組織(肝臓,心臓,脾臓及び骨髄を含む)を摘出した。この脳組織,脊髄組織及びその他の組織を用いて,以下のヒト化抗hTfR抗体の濃度測定及び免疫組織化学染色を行った。
【0288】
組織中及び末梢血中のヒト化抗hTfR抗体の濃度測定は,概ね以下の手順で行った。なお,脳については採取した組織を,大脳皮質,小脳,海馬及び延髄に分けてからヒト化抗hTfR抗体の濃度測定を行った。採取した組織を,それぞれProtease Inhibitor Cocktail(Sigma-Aldrich社)を含むRIPA Buffer(和光純薬工業株式会社)でホモジネートし遠心して上清を回収した。末梢血については血清を分離した。Affinipure Goat Anti mouse IgG Fcγ pAb(Jackson ImmunoResearch社)をHigh Bind Plate(Meso Scale Diagnostics社)の各ウェルに10μLずつ添加し,1時間静置して固相化した。次いで,各ウェルにSuperBlock blocking buffer in PBS(Thermo Fisher Scientific社)を150μLずつ添加し,1時間振盪し,プレートをブロッキングした。次いで,各ウェルにホモジネートの上清又は血清を25μLずつ添加し,1時間振盪した。次いで,各ウェルにAffinipure Goat Anti mouseIgG Fab-Biotin(Jackson ImmunoResearch社)を25μLずつ添加し,1時間振盪した。次いで,各ウェルにSULFO-Tag-Streptavidin(Meso Scale Diagnostics社)を25μLずつ添加し,0.5時間振盪した。各ウェルにRead buffer T(Meso Scale Diagnostics社)を150μLずつ添加し,SectorTM Imager 6000 readerを用いて各ウェルからの発光量を測定した。濃度既知の抗hTfR抗体の標準試料の測定値から検量線を作成し,これに各検体の測定値を内挿することにより,各組織中及び末梢血中に含まれる抗体の量を算出した。濃度の測定は各サンプルにつき3回繰り返し行った。
【0289】
脳組織及び脊髄組織中のヒト化抗hTfR抗体の濃度測定の結果を表9に示す。
【0290】
【表9】
【0291】
ヒト化抗hTfR抗体番号3,ヒト化抗hTfR抗体番号3-2,ヒト化抗hTfR抗体番号3(IgG4)及びヒト化抗hTfR抗体番号3-2(IgG4)の抗体ともに,大脳皮質,小脳,海馬,延髄及び脊髄での蓄積が認められた(表9)。その量は,ヒト化抗hTfR抗体番号3では,陰性対照のトラスツズマブ(ハーセプチンTM)と比較して,大脳皮質で約82倍,小脳で約68倍,海馬で約92倍,延髄で約54倍,脊髄で約3.1倍であり,ヒト化抗hTfR抗体番号3-2では,陰性対照のトラスツズマブと比較して,大脳皮質で約128倍,小脳で約80倍,海馬で約136倍,延髄で約63倍,脊髄で約3.1倍であり,ヒト化抗hTfR抗体番号3(IgG4)では,陰性対照のトラスツズマブと比較して,大脳皮質で約79倍,小脳で約66倍,海馬で約106倍,延髄で約54倍,脊髄で約3.1倍であり,ヒト化抗hTfR抗体番号3-2(IgG4)では,陰性対照のトラスツズマブと比較して,大脳皮質で約93倍,小脳で約63倍,海馬で約117倍,延髄で約66倍,脊髄で約3.2倍であった(表10)。これらの結果は,これら4種のヒト化抗hTfR抗体が,血液脳関門を通過して脳組織に蓄積する性質を有することを示すものであり,脳組織内で機能させるべき薬剤をこれらの抗体と結合させることにより,その薬剤を効率良く脳組織に蓄積させることができること示すものである。
【0292】
【表10】
【0293】
次いで,肝臓,心臓,脾臓及び骨髄の各組織中のヒト化抗hTfR抗体の濃度測定の結果を図4に示す。肝臓,及び脾臓では,4種類のヒト化抗hTfR抗体及び陰性対照のトラスツズマブのいずれにおいても蓄積が認められたが,その量はヒト化抗hTfR抗体とトラスツズマブで同等であった。心臓では,ヒト化抗hTfR抗体が陰性対照のトラスツズマブと比較して,蓄積量が多い傾向にあったが,その量は陰性対照の1.5倍~2.8倍程度に留まった。骨髄では,ヒト化抗hTfR抗体が,陰性対照のトラスツズマブと比較して,顕著に蓄積量が多い傾向にあり,その量は陰性対照の3.5~16倍であった。骨髄へのヒト化抗hTfR抗体の蓄積は,造血器官である骨髄ではTfRの発現量が多く,TfRと結合することにより多くのヒト化抗hTfR抗体が陰性対照と比較して蓄積したためと考えられる。これらのデータは,これら4種のヒト化抗hTfR抗体が,中枢神経系である大脳,小脳,海馬及び延髄に特異的に蓄積する性質を有することを示すものであり,脳組織内で機能させるべき薬剤をこれらの抗体と結合させることにより,その薬剤を効率良く脳組織に蓄積させることができること示すものである。
【0294】
次いで,ヒト化抗hTfR抗体の血中動態の測定結果を表11に示す。4種類のヒト化抗hTfR抗体は,陰性対照のトラスツズマブと同様に,投与後8時間においても血中濃度が60μg/mL以上の高値を示し,血中で安定であることが示された。
【0295】
【表11】
【0296】
脳組織中のヒト化抗hTfR抗体の免疫組織化学染色は,概ね以下の手順で行った。ティシューテッククライオ3DM(サクラファインテック株式会社)を用いて,採取した組織を-80℃にまで急速冷凍し,凍結ブロックを4μmに薄切後,MASコートスライドガラス(松浪ガラス株式会社)に貼り付けた。組織薄片に4%パラホルムアルデヒド(和光純薬工業株式会社)を4℃で5分間反応させ,組織薄片をスライドガラス上に固定した。続いて,組織薄片に0.3%過酸化水素水を含むメタノール溶液(和光純薬工業株式会社)を30分間反応させ,内因性ペルオキシダーゼを失活させた。次いでスライドガラスをSuperBlock blocking buffer in PBSに30分間室温で反応させブロッキングした。次いで,組織薄片にMouse IgG-heavy and light chain Antibody(Bethyl Laboratories)を1時間室温で反応させた。組織薄片を,DAB基質(3,3’-diaminobenzidine,Vector Laboratories社)で発色させ,マイヤー・ヘマトキシリン(Merck社)で対比染色を行い,脱水,透徹した後に封入し,光学顕微鏡で観察した。
【0297】
図5に大脳皮質のヒト化抗hTfR抗体の免疫組織化学染色の結果を示す。ヒト化抗hTfR抗体番号3,ヒト化抗hTfR抗体番号3-2,ヒト化抗hTfR抗体番号3(IgG4)及びヒト化抗hTfR抗体番号3-2(IgG4)を投与したサルの大脳皮質では,血管及び神経様細胞の特異的な染色が確認された(それぞれ図5b~e)。特に,ヒト化抗hTfR抗体番号3-2を投与したサルの大脳皮質(図5c)では,脳血管外の脳実質領域にも広範に特異的な染色が確認された。なお,コントロールとしておいたハーセプチンを投与したサルの大脳皮質では染色は認められず,図5b~eで観察された組織染色が,ヒト化抗hTfR抗体に特異的なものであることが示された(図5a)。
【0298】
図6に海馬のヒト化抗hTfR抗体の免疫組織化学染色の結果を示す。ヒト化抗hTfR抗体番号3,ヒト化抗hTfR抗体番号3-2,ヒト化抗hTfR抗体番号3(IgG4)及びヒト化抗hTfR抗体番号3-2(IgG4)を投与したサルの海馬では,血管及び神経様細胞の特異的な染色が確認された(それぞれ図6b~e)。なお,コントロールとしておいたハーセプチンを投与したサルの海馬では染色は認められず,図6b~eで観察された組織染色が,ヒト化抗hTfR抗体に特異的なものであることが示された(図6a)。
【0299】
図7に小脳のヒト化抗hTfR抗体の免疫組織化学染色の結果を示す。ヒト化抗hTfR抗体番号3,ヒト化抗hTfR抗体番号3-2,ヒト化抗hTfR抗体番号3(IgG4)及びヒト化抗hTfR抗体番号3-2(IgG4)を投与したサルの小脳では,血管及びプルキンエ細胞の特異的な染色が確認された(それぞれ図7b~e)。なお,コントロールとしておいたハーセプチンを投与したサルの小脳では染色は認められず,図7b~eで観察された組織染色が,ヒト化抗hTfR抗体に特異的なものであることが示された(図7a)。
【0300】
図8に延髄のヒト化抗hTfR抗体の免疫組織化学染色の結果を示す。ヒト化抗hTfR抗体番号3,ヒト化抗hTfR抗体番号3-2,ヒト化抗hTfR抗体番号3(IgG4)及びヒト化抗hTfR抗体番号3-2(IgG4)を投与したサルの延髄では,血管及び神経様細胞の特異的な染色が確認された(それぞれ図8b~e)。なお,コントロールとしておいたハーセプチンを投与したサルの延髄では染色は認められず,図8b~eで観察された組織染色が,ヒト化抗hTfR抗体に特異的なものであることが示された(図8a)。
【0301】
実施例8の大脳及び小脳の免疫組織化学染色の結果からは,ヒト化前のマウス抗体である抗hTfR抗体番号1は脳血管内皮表面に存在するhTfRへは結合することができるが,脳実質への移行する量は少ないと考えられた。一方で,ヒト化前のマウス抗体である抗hTfR抗体番号2及び3は,脳血管内皮表面に存在するhTfRへは結合することができ,且つ,hTfRへの結合後,血液脳関門を通過して脳実質内へ移行し,さらに海馬においては脳実質内から神経様細胞にまで,小脳においてはプルキンエ細胞にまで,取り込まれることを示すものであった。
【0302】
この実施例15の大脳,海馬,小脳及び延髄の免疫組織化学染色の結果からは,実験に供した抗hTfR抗体番号3をヒト化して得られた4種類のヒト化抗hTfR抗体は,脳血管内皮表面に存在するhTfRへ結合し,且つ,hTfRへの結合後,血液脳関門を通過して脳実質内へ移行し,さらに大脳皮質においては神経様細胞にまで,海馬においては脳実質内から神経様細胞にまで,小脳においてはプルキンエ細胞にまで,延髄においては神経様細胞に取り込まれることがわかった。
【0303】
〔実施例16〕hI2S-ヒト化抗hTfR抗体融合蛋白質発現用細胞の作製
pEF/myc/nucベクター(インビトロジェン社)を,KpnIとNcoIで消化し,EF-1αプロモーターおよびその第一イントロンを含む領域を切り出し,これをT4 DNAポリメラーゼで平滑末端化処理した。pCI-neo(インビトロジェン社)を,BglIIおよびEcoRIで消化して,CMVのエンハンサー/プロモーターおよびイントロンを含む領域を切除した後に,T4 DNA ポリメラーゼで平滑末端化処理した。これに,上記のEF-1αプロモーターおよびその第一イントロンを含む領域を挿入して,pE-neoベクターを構築した。pE-neoベクターを,SfiIおよびBstXIで消化し,ネオマイシン耐性遺伝子を含む約1kbpの領域を切除した。pcDNA3.1/Hygro(+)(インビトロジェン社)を鋳型にしてプライマーHyg-Sfi5’(配列番号216)およびプライマーHyg-BstX3’(配列番号217)を用いて,PCR反応によりハイグロマイシン遺伝子を増幅した。増幅したハイグロマイシン遺伝子を,SfiIおよびBstXIで消化し,上記のネオマイシン耐性遺伝子を切除したpE-neoベクターに挿入して,pE-hygrベクターを構築した。
【0304】
配列番号172で示されるアミノ酸配列を有するヒト化抗hTfR抗体の重鎖のC末端側にリンカー配列(Gly Ser)を介して配列番号246で示されるアミノ酸配列を有するhI2Sを結合させた蛋白質をコードする遺伝子を含む,配列番号248で示される塩基配列を有するDNA断片を人工的に合成した。このDNA断片は,配列番号247で示されるアミノ酸配列を有するヒト化抗hTfR抗体の重鎖にリンカー配列(Gly Ser)を介してhI2Sが結合した蛋白質をコードする。また,このDNA断片は,5’側には,5’端から順にMluI配列と,分泌シグナルとして機能するリーダーペプチドをコードする配列とを有し,3’側にはNotI配列を有する。このDNA断片をMluIとNotIで消化し,pE-neoベクターのMluIとNotIの間に組み込み,pE-neo(HC-I2S-1)を構築した。
【0305】
配列番号188で示されるアミノ酸配列を有するヒト化抗hTfR抗体の重鎖のC末端側にリンカー配列(Gly Ser)を介して配列番号246で示されるアミノ酸配列を有するhI2Sを結合させた蛋白質をコードする遺伝子を含む,配列番号250で示される塩基配列を有するDNA断片を人工的に合成した。このDNA断片は,配列番号249で示されるアミノ酸配列を有するヒト化抗hTfR抗体の重鎖にリンカー配列(Gly Ser)を介してhI2Sが結合した蛋白質をコードする。また,このDNA断片は,5’側には,5’端から順にMluI配列と,分泌シグナルとして機能するリーダーペプチドをコードする配列とを有し,3’側にはNotI配列を有する。このDNA断片をMluIとNotIで消化し,pE-neoベクターのMluIとNotIの間に組み込み,pE-neo(HC-I2S-2)を構築した。
【0306】
配列番号210で示されるアミノ酸配列を有するヒト化抗hTfR抗体の重鎖のC末端側にリンカー配列(Gly Ser)を介して配列番号246で示されるアミノ酸配列を有するhI2Sを結合させた蛋白質をコードする遺伝子を含む,配列番号252で示される塩基配列を有するDNA断片を人工的に合成した。このDNA断片は,配列番号251で示されるアミノ酸配列を有するヒト化抗hTfR抗体の重鎖にリンカー配列(Gly Ser)を介してhI2Sが結合した蛋白質をコードする。また,このDNA断片は,5’側には,5’端から順にMluI配列と,分泌シグナルとして機能するリーダーペプチドをコードする配列とを有し,3’側にはNotI配列を有する。このDNA断片をMluIとNotIで消化し,pE-neoベクターのMluIとNotIの間に組み込み,pE-neo(HC-I2S-3)を構築した。
【0307】
CHO細胞(CHO-K1:American Type Culture Collectionから入手)を,実施例12に記載方法により,pE-neo(HC-I2S-1)と実施例11で構築したpE-hygr(LC1)で形質転換し,hI2Sとヒト化抗hTfR抗体との融合蛋白質を発現する細胞株を得た。この細胞株を,hI2S-抗hTfR抗体発現株1とした。この細胞株が発現するhI2Sとヒト化抗hTfR抗体との融合蛋白質をI2S-抗hTfR抗体1とした。
【0308】
同様に,CHO細胞を,pE-neo(HC-I2S-2)と実施例11で構築したpE-hygr(LC2)で形質転換し,hI2Sとヒト化抗hTfR抗体との融合蛋白質を発現する細胞株を得た。この細胞株を,hI2S-抗hTfR抗体発現株2とした。この細胞株が発現するhI2Sとヒト化抗hTfR抗体との融合蛋白質をI2S-抗hTfR抗体2とした。
【0309】
更に同様に,CHO細胞を,pE-neo(HC-I2S-3)と実施例11で構築したpE-hygr(LC3)で形質転換し,hI2Sとヒト化抗hTfR抗体との融合蛋白質を発現する細胞株を得た。この細胞株を,hI2S-抗hTfR抗体発現株3とした。この細胞株が発現するhI2Sとヒト化抗hTfR抗体との融合蛋白質をI2S-抗hTfR抗体3とした。
【0310】
〔実施例17〕I2S-抗hTfR抗体の製造
I2S-抗hTfR抗体を,以下の方法で製造した。実施例16で得たhI2S-抗hTfR抗体発現株1,2,及び3を,それぞれ細胞濃度が約2×10個/mLとなるように,CD OptiCHOTM培地で希釈し,1Lの三角フラスコに200mLの細胞懸濁液を加え,37℃で,5%COと95%空気からなる湿潤環境で約70rpmの撹拌速度で6~7日間培養した。培養上清を遠心操作により回収し,0.22μmフィルター(Millipore社)でろ過して,培養上清とした。回収した培養上清に,カラム体積の5倍容の150mL NaClを含む20mM Tris緩衝液(pH8.0)を添加し,カラム体積の3倍容の150mM NaClを含む20mM Tris緩衝液(pH8.0)で予め平衡化しておいたProteinAカラム(カラム体積:1mL,Bio-Rad社)に負荷した。次いで,カラム体積の5倍容の同緩衝液を供給してカラムを洗浄した後,150mM NaClを含むカラム体積の4倍容の50mM グリシン緩衝液(pH2.8)で,吸着したI2S-抗hTfR抗体を溶出させた。このI2S-抗hTfR抗体を含む溶出液のpHを1M Tris緩衝液(pH8.0)を添加してpH7.0に調整し,次いでアミコンウルトラ30kDa膜(Millipore社)を用いてPBSにバッファー交換した。これをI2S-抗hTfR抗体の精製品とした。
【0311】
このようにして製造したI2S-抗hTfR抗体のヒトTfR及びサルTfRへの親和性は,例えば実施例7に記載の方法により測定することができる。また,静脈内投与したときのI2S-抗hTfR抗体の薬物動態解析は,例えば実施例8に記載の方法により測定することができる。また,I2S-抗hTfR抗体の薬効は,例えばハンター症候群のモデルマウスであるイズロン酸2-スルファターゼ遺伝子ノックアウトマウス(I2S-KOマウス)に,実施例7-2に記載のhTfR-KIマウスを掛け合わせて得られるI2S-KO/hTfR KIマウスに,I2S-抗hTfR抗体を静脈注射し,脳内に蓄積したグリコサミノグリカンの減少量を測定することにより評価できる。
【0312】
〔実施例18〕I2S-抗hTfR抗体の脳移行評価1
実施例17で製造したI2S-抗hTfR抗体3の精製品を,1mg/kgの用量で,実施例7-2に記載の方法で作製したhTfR-KIマウスに静脈注射した(I2S-抗hTfR抗体投与群)。コントロールとして組換えhI2S(rhI2S)を,1mg/kgの用量でhTfR-KIマウスに静脈注射した(コントロール群)。I2S-抗hTfR抗体投与群ついては15匹,コントロール群については3匹のhTfR-KIマウス(雄性,15~18週齢)に投与を行った。ここで用いたrhI2Sは,公知の手法である国際特許公報(WO2012/102998)に記載の方法に準じて製造した。なお,rhI2Sとして,医療用医薬品として販売されているエラプレース(登録商標)を用いることもできる。
【0313】
I2S-抗hTfR抗体投与群については,I2S-抗hTfR抗体3投与後,15分後,1時間後,4時間後,8時間後,及び24時間後に,それぞれ3匹のマウスを生理食塩液で全身灌流処理し,脳(大脳及び小脳)を採取した。コントロール群については,rhI2S投与1時間後に,生理食塩液で全身灌流処理してから脳(大脳及び小脳)を採取した。摘出した大脳及び小脳の重量(湿重量)を測定した後,大脳及び小脳を,Protease Inhibitor Cocktail(シグマ社)を含むT-PER(Thermo Fisher Scientific社)でホモジネートし,遠心後の上清を回収した。I2S-抗hTfR抗体投与群については,ホモジネート上清中に含まれるI2S-抗hTfR抗体の量を,コントロール群については,ホモジネート上清中に含まれるrhI2Sの量をそれぞれ実施例20及び実施例21に記載のECL法により測定し,脳のグラム重量(g湿重量)当たりに含まれる,I2S-抗hTfR抗体の量(脳組織中のI2S-抗hTfR抗体の濃度)及びrhI2Sの量(脳組織中のrhI2Sの濃度)を算出した。その結果を表12に示す。
【0314】
投与1時間後の脳組織中のI2S-抗hTfR抗体とrhI2Sの濃度は,それぞれ0.368±0.019μg/g湿重量及び0.00134±0.00232μg/g湿重量であり,I2S-抗hTfR抗体の濃度はrhI2Sの濃度の約270倍に達した。この結果は,通常は血液脳関門をほとんど通過せず脳組織中に移行することのないrhI2Sを,抗hTfR抗体と結合させることにより,血液脳関門を通過させて脳組織中に移行させることができることを示すものである。また,I2S-抗hTfR抗体の脳組織中の濃度は,投与後わずか15分で0.263±0.038μg/g湿重量と,投与1時間後のrhI2Sの脳組織中の濃度の約200倍に達した。この結果は,抗hTfR抗体と結合させることにより,hI2Sを速やかに脳組織中に移行させることができることを示すものである。
【0315】
【表12】
【0316】
〔実施例19〕I2S-抗hTfR抗体の脳移行評価2
実施例17で製造したI2S-抗hTfR抗体3の精製品を5mg/kgの用量で雄性カニクイザルに単回静脈内投与した(I2S-抗hTfR抗体投与群)。同様にして,rhI2Sを5mg/kgの用量で雄性カニクイザルに単回静脈内投与した(rhI2S群)。ここで用いたrhI2Sは,公知の手法である国際特許公報(WO2012/102998)に記載の方法に準じて製造した。なお,rhI2Sとして,医療用医薬品として販売されているエラプレース(登録商標)を用いることもできる。各群とも2匹のサルに投与を行った。投与8時間後に各群とも全身潅流を実施した。潅流後,頸髄を含む脳組織を摘出した。摘出した脳組織を,大脳皮質,小脳,海馬,及び頸髄に分けてから,各脳組織をProtease Inhibitor Cocktail(シグマ社)を含むT-PER (Thermo Fisher Scientific社)でホモジネートし,遠心後の上清を回収した。I2S-抗hTfR抗体投与群については,ホモジネートの上清中に含まれるI2S-抗hTfR抗体の量を,コントロール群については,ホモジネートの上清中に含まれるrhI2Sの量をそれぞれ実施例20及び21に記載のECL法により測定した。測定値から,大脳皮質,小脳,海馬,及び頸髄のグラム重量(g湿重量)当たりに含まれる,I2S-抗hTfR抗体の量(これら脳組織中のI2S-抗hTfR抗体の濃度)及びrhI2Sの量(これら脳組織中のrhI2Sの濃度)を算出した。その結果を図9に示す。
【0317】
大脳皮質におけるI2S-抗hTfR抗体の濃度は約0.22μg/gであるのに対し,rhI2Sでは0.035μg/gであった。小脳におけるI2S-抗hTfR抗体の濃度は約0.18μg/gであるのに対し,rhI2Sでは0.02μg/gであった。海馬におけるI2S-抗hTfR抗体の濃度は約0.25μg/gであるのに対し,rhI2Sでは0.017μg/gであった。また,頸髄におけるI2S-抗hTfR抗体の濃度は約0.15μg/gであるのに対し,rhI2Sでは0.039μg/gであった。すなわち,大脳皮質,小脳,海馬,及び頸髄において,I2S-抗hTfR抗体の濃度は,rhI2Sの濃度の,それぞれ,約6.3倍,約9.0倍,約14.7倍,及び約3.8倍の値を示した。これらの結果は,hI2Sを抗hTfR抗体と結合させることにより,積極的に血液脳関門を通過させて効率良く脳内にhI2Sを到達させることができること示すものである。特に,海馬におけるI2S-抗hTfR抗体の濃度がrhI2Sと比較して約12.5倍に及ぶことは,I2S-抗hTfR抗体を投与することによって,特に海馬においてI2S活性を発揮させ得ることを示すものである。ハンター症候群の患者の脳障害は,通常のrhI2Sを用いた酵素補充療法では,rhI2Sがほとんど血液脳関門を通過できないことから改善されない。一方,I2S-抗hTfR抗体は血液脳関門を通過することから,I2S-抗hTfR抗体を投与することにより大脳皮質,海馬,小脳等の脳組織中にI2S活性を補充することができる。従って,I2S-抗hTfR抗体(特に,I2S-抗hTfR抗体3)は,ハンター症候群の患者の脳内にI2S活性を補充するための治療薬として使用することができる。従って,I2S-抗hTfR抗体(特に,I2S-抗hTfR抗体3)を投与することにより,通常のrhI2Sを用いた酵素補充療法では困難な,ハンター症候群の患者の脳障害の予防及び治療が可能である。特に,海馬に障害を有するハンター症候群の患者への治療薬として有望である。
【0318】
〔実施例20〕ECL法によるI2S-抗hTfR抗体の定量
ストレプトアビジンでコートされたプレートであるStreptavidin Gold Plate 96well(Meso Scale Diagnostics社)の各ウェルに,150μLのSuperBlock blocking buffer in PBS(Thermo Fisher Scientific社)を添加して1時間静置し,プレートをブロッキングした。ビオチン標識抗体であるAnti-Human Kappa Light Chain Goat IgG Biotin(Monkey Absorbed)(IBL社)を,SuperBlock blocking buffer in PBSにより0.5μg/mLの濃度に希釈した。SULFO標識抗ヒトI2S抗体をSuperBlock blocking buffer in PBSにより1.0μg/mLの濃度に希釈した。ビオチン標識抗体及びSULFO標識抗体の希釈溶液を各25μLと,25μLの各検体とを混合し,1時間インキュベートし,これを抗体反応試料とした。
【0319】
ブロッキング後のプレートの各ウェルを,200μLのPBS-T(シグマ社)で洗浄した後,各ウェルに抗体反応試料を25μLずつ添加し,1時間インキュベートした。インキュベート後,プレートの各ウェルを200μLのPBS-Tで洗浄し,次いで,Read buffer T(Meso scale Diagnostics社)を添加し,SectorTM Imager 6000(Meso scale Diagnostics社)を用いて各ウェルからの発光量を測定した。濃度既知のI2S-抗hTfR抗体の標準試料の測定値から検量線を作成し,これに各試料の測定値を内挿することによりI2S-抗hTfR抗体を定量した。
【0320】
なお,ここで用いた抗ヒトI2S抗体は,公知の手法である国際特許公報(WO2012/102998)に記載の方法に準じて製造したrhI2Sを抗原としてマウスを免疫して得たモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は複数のものを得た。SULFO標識抗ヒトI2S抗体として,抗ヒトI2S抗体を,MSD SULFO-TAG NHS-Ester(Meso scale Diagnostics社)を用いて,添付の操作マニュアルに従ってSULFO標識して作製したものを使用した。
【0321】
〔実施例21〕ECL法によるhI2Sの定量
ストレプトアビジンでコートされたプレートであるStreptavidin Gold Plate 96well(Meso scale Diagnostics社)の各ウェルに,150μLのSuperBlock blocking buffer in PBS(Thermo Fisher Scientific社)を添加して1時間静置し,プレートをブロッキングした。ビオチン標識抗ヒトI2S抗体を,SuperBlock blocking buffer in PBSにより0.5μg/mLの濃度に希釈した。SULFO標識抗ヒトI2S抗体をSuperBlock blocking buffer in PBSにより1.0μg/mLの濃度に希釈した。ビオチン標識抗体及びSULFO標識抗体の希釈溶液を各25μLと,25μLの検体とを混合し,1時間インキュベートし,これを抗体反応試料とした。
【0322】
ブロッキング後のプレートの各ウェルを,200μLのPBS-T(シグマ社)で洗浄した後,各ウェルに抗体反応試料を25μLずつ添加し,1時間インキュベートした。インキュベート後,プレートの各ウェルを200μLのPBS-Tで洗浄し,次いで,Read buffer T(Meso scale Diagnostics社)を添加し,SectorTM Imager 6000(Meso scale Diagnostics社)を用いて各ウェルからの発光量を測定した。濃度既知のhI2Sの標準試料の測定値から検量線を作成し,これに各試料の測定値を内挿することによりrhI2Sを定量した。
【0323】
なお,ここで用いた抗ヒトI2S抗体は,公知の手法である国際特許公報(WO2012/102998)に記載の方法に準じて製造したrhI2Sを抗原としてマウスを免疫して得たモノクローナル抗体である。SULFO標識抗ヒトI2S抗体として,抗ヒトI2S抗体を,MSD SULFO-TAG NHS-Ester(Meso scale Diagnostics社)を用いて,添付の操作マニュアルに従ってSULFO標識して作製したものを使用した。また,ビオチン標識抗ヒトI2S抗体として,SULFO標識に用いたものとは別の抗ヒトI2S抗体を,Biotin Labelling Kit-NH(同仁化学研究所)を用いて,添付の操作マニュアルに従ってビオチン標識して作製したものを使用した。
【0324】
〔実施例22〕I2S-抗hTfR抗体の薬効評価
hI2S活性を遺伝的に欠失しているハンター症候群の患者の臓器に蓄積することが知られているグリコサミノグリカン(GAG)の濃度を測定することにより,I2S-抗hTfR抗体の薬効を評価した。実施例17で製造したI2S-抗hTfR抗体3の精製品を,0.5mg/kg,1.0mg/kg,及び2.0mg/kgの用量でI2S-KO/hTfR-KIマウスに静脈注射した(0.5mg/kg投与群,1.0mg/kg投与群,及び2.0mg/kg投与群)。投与は週1回の頻度で4週間行い,初回の投与から4週目にマウスを麻酔下放血により安楽死させ,脳,肝臓,肺及び心臓を摘出した。摘出した各臓器を凍結乾燥機(EYELA社)で凍結乾燥して破砕後,乾燥重量を測定した。各臓器の乾燥品に,乾燥重量100mgに対し1mLの0.5M Tris緩衝液(pH7.5)を添加して約100℃で10分間加熱した。次いで,50mg/mLのアクチナーゼE溶液(科研製薬社)を乾燥重量50mgに対し1mgのアクチナーゼE添加量となるように添加して,約60℃で16時間インキュベートして蛋白質を分解させた後,約100℃で10分加熱した。15,000rpmで10分遠心分離を実施し,上清を回収した。上清中に含まれるGAGの量をWieslabTM sGAG quantitative kit(EURO-DIAGNOSTICA社)を用いて測定し,各臓器のグラム重量(g乾燥重量)当たりに含まれる,GAGの量を算出した。なお,コントロール群としてI2S-抗hTfR抗体を非投与のI2S-KO/hTfR-KIマウスを置いた。また同時に,野生型マウスの各臓器におけるGAGの濃度を測定した。また,この実験は,各測定群につきI2S-KO/hTfR-KIマウス(雄雌,19-25週齢)を3匹ずつ用いて行った。また,野生型マウスについては,雄雌,19-25週齢のもの3匹を用いた。
【0325】
その結果を図10に示す。脳,肝臓,肺及び心臓ともに,投与したI2S-抗hTfR抗体の用量依存的に,GAGの濃度が有意に低下することが観察された(図10a~d)。
【0326】
脳についてみると,コントロール群では脳組織中のGAGの濃度は約2.66μg/gであったが,脳組織中のGAGの濃度は,0.5mg/kg,1.0mg/kg,及び2.0mg/kg投与群で,それぞれ約2.23μg/g,約2.15μg/g,約2.10μggと用量依存的に低下した(図10a)。I2S-KO/hTfR-KIマウスの脳組織内における異常なGAG量は,コントロール群の脳組織中のGAGの濃度(約2.66μg/g)から野生型マウスの脳組織中のGAGの濃度(約1.76μg/g)を差し引いた約0.90μg/gとすることができる。従って,I2S-抗hTfR抗体を0.5mg/kg,1.0mg/kg,及び2.0mg/kgの用量で投与することにより,I2S-KO/hTfR-KIマウスの脳組織中で異常に蓄積したGAGのそれぞれ約48%,約57%,及び約62%が,I2S-抗hTfR抗体により分解されたということができる。この結果は,ハンター症候群の患者にI2S-抗hTfR抗体を投与することにより,患者の脳組織中に異常に蓄積したGAGを分解,除去でき得ることを示すものであり,I2S-抗hTfR抗体(特に,I2S-抗hTfR抗体3)が,GAG若しくはその断片の蓄積等を原因とするハンター症候群の患者でみられる脳の病変を予防及び治療する効果を発揮し得ることを示すものである。
【0327】
肝臓ついてみると,コントロール群では肝臓組織中のGAGの濃度は約10.3μg/gであったが,肝臓組織中のGAGの濃度は,0.5mg/kg,1.0mg/kg,及び2.0mg/kg投与群で,それぞれ約2.2μg/g,約2.0μg/g,約1.9μg/gと用量依存的に低下した(図10b)。I2S-KO/hTfR-KIマウスの肝臓組織内における異常なGAG量は,コントロール群の肝臓組織中のGAGの濃度(約10.3μg/g)から野生型マウスの肝臓組織中のGAGの濃度(約0.3μg/g)を差し引いた約10μg/gとすることができる。従って,I2S-抗hTfR抗体を0.5~2.0mg/kgの用量で投与することにより,I2S-KO/hTfR-KIマウスの肝臓組織中で異常に蓄積したGAGの80%以上が,I2S-抗hTfR抗体により分解されたということができる。
【0328】
肺についてみると,コントロール群では肺組織中のGAGの濃度は約10.5μg/gであったが,肺組織中のGAGの濃度は,0.5mg/kg,1.0mg/kg,及び2.0mg/kg投与群で,それぞれ約7.8μg/g,約6.7μg/g,約5.7μg/gと用量依存的に低下した(図10c)。I2S-KO/hTfR-KIマウスの肺組織内における異常なGAG量は,コントロール群の肺組織中のGAGの濃度(約10.5μg/g)から野生型マウスの肺組織中のGAGの濃度(約1.5μg/g)を差し引いた約9.0μg/gとすることができる。従って,I2S-抗hTfR抗体を0.5mg/kg,1.0mg/kg,及び2.0mg/kgの用量で投与することにより,I2S-KO/hTfR-KIマウスの肺組織中で異常に蓄積したGAGのそれぞれ約30%,約42%,及び約53%が,I2S-抗hTfR抗体により分解されたということができる。
【0329】
心臓についてみると,コントロール群では心臓組織中のGAGの濃度は約4.6μg/gであったが,心臓組織中のGAGの濃度は,0.5mg/kg,1.0mg/kg,及び2.0mg/kg投与群で,それぞれ約2.2μg/g,約2.0μg/g,約1.5μg/gと用量依存的に低下した(図10d)。I2S-KO/hTfR-KIマウスの心臓組織中における異常なGAG量は,コントロール群の心臓組織中のGAGの濃度(約4.6μg/g)から野生型マウスの心臓組織中のGAGの濃度(約0.8μg/g)を差し引いた約3.8μg/gとすることができる。従って,I2S-抗hTfR抗体を0.5mg/kg,1.0mg/kg,及び2.0mg/kgの用量で投与することにより,I2S-KO/hTfR-KIマウスの心臓組織中で異常に蓄積したGAGのそれぞれ約63%,約70%,及び約81%が,I2S-抗hTfR抗体により分解されたということができる。
【0330】
上記の肝臓,肺及び心臓についての結果は,I2S-抗hTfR抗体が脳組織内のGAGに加えて,その他の臓器・器官に蓄積したGAGをも分解することを示すものである。すなわち,I2S-抗hTfR抗体(特に,I2S-抗hTfR抗体3)をハンター症患者に対する酵素補充療法の薬剤として投与したときに,患者の脳を含めた全身の臓器・器官に酵素を補充できることを示すものである。I2S-抗hTfR抗体は,静脈内投与によって,脳を含めた全身の臓器・器官に酵素を補充できること示すものである。
【0331】
〔実施例23〕GAGの測定法
GAGの測定は,WieslabTM sGAG quantitative kit(EURO-DIAGNOSTICA社)を用いて,添付の操作マニュアルに従って,概ね以下の方法で実施した。検体,または標準液(ブランクは水)を各50μLずつ1.5mLチューブに採取した。GuHCl溶液を50μLずつ各チューブに加え,室温で15分間反応させた。SAT溶液を50μLずつ各チューブに加え,室温で15分間反応させた。水:SAT溶液:Alcian Blue stock solution=9:5:1の混合液を調製し,調製した混合液を各チューブに750μLずつ加え,室温で15分間反応させた。この反応液を12500gで15分遠心して,上清を取り除いた。DMSOを各チューブに500μLずつ加え,室温で15分間,振とうして混和させた後に,12500gで15分遠心分離し上清を取り除いた。Gu-Prop溶液を各チューブに500μLずつ加え,室温で15分間,振とうして混和した。この混和後の溶液を,96穴プレートの各ウェルへ200μLずつ分注し,プレートリーダーで各ウェルの600nmにおける吸光度を測定した。既知濃度のGAG溶液の測定値から検量線を作成し,これに各試料の測定値を内挿してGAG濃度を定量した。
【0332】
〔実施例24〕ヒト化抗hTfR抗体と各種生理活性ペプチドとの融合蛋白質の製造
以上の実施例22までの実験により,ヒト化抗hTfR抗体と結合させたヒトI2Sが血液脳関門を通過して脳組織中に到達し,I2S活性を脳内で発揮することが示された。そこで,ヒト化抗hTfR抗体と各種生理活性ペプチドとの融合蛋白質を作製し,これらの融合蛋白質がBBBを通過して脳組織内に到達するか否かを検討した。ここで,生理活性ペプチドとしては,ヒトエリスロポエチン,ヒトアリルスルファターゼA,ヒトPPT-1,ヒトTPP-1,ヒトα-L-イズロニダーゼ,ヒトTNFα受容体,及びヒトN-sulphoglucosamine sulphohydrolase(ヘパランN-スルファターゼ)をヒト化抗hTfR抗体と結合させる生理活性ペプチドとして選択した。ヒト化抗hTfR抗体とそれぞれの生理活性ペプチドとの融合蛋白質を発現させるための発現ベクター,及びこれら融合蛋白質は,以下の実施例25~31に記載の方法で調製した。
【0333】
〔実施例25〕ヒト化抗hTfR抗体とヒトエリスロポエチンとの融合蛋白質の製造法
配列番号210で示されるアミノ酸配列を有するヒト化抗hTfR抗体の重鎖のC末端側にリンカー配列Gly-Serを介して,配列番号256で示されるアミノ酸配列を有するヒトエリスロポエチン(hEPO)を結合させた蛋白質をコードするcDNAを含む,配列番号258で示される塩基配列を有するDNA断片を人工的に合成した。このDNA断片は,配列番号257で示されるアミノ酸配列を有するヒト化抗hTfR抗体の重鎖のC末端側にリンカー配列Gly-Serを介してhEPOが結合した蛋白質をコードする。また,このDNA断片は,5’側には,5’端から順にMluI配列と,分泌シグナルとして機能するリーダーペプチドをコードする配列とを有し,3’側にはNotI配列を有する。このDNA断片をMluIとNotIで消化し,pE-neoベクターのMluIとNotIの間に組み込み,pE-neo(HC-hEPO)を構築した。
【0334】
CHO細胞を,実施例12に記載の方法により,pE-neo(HC-hEPO)及び実施例11で構築したpE-hygr(LC3)で形質転換し,hEPOとヒト化抗hTfR抗体との融合蛋白質を発現する細胞株を得た。この細胞株を,hEPO-抗hTfR抗体発現株とした。この細胞株が発現するhEPOとヒト化抗hTfR抗体との融合蛋白質をEPO-抗hTfR抗体とした。
【0335】
hEPO-抗hTfR抗体発現株を,細胞濃度が約2×10個/mLとなるように,CD OptiCHOTM培地で希釈し,1Lの三角フラスコに200mLの細胞懸濁液を加え,37℃で,5%COと95%空気からなる湿潤環境で約70rpmの撹拌速度で6~7日間培養した。培養液を遠心操作により回収し,0.22μmフィルター(Millipore社)でろ過して,培養上清とした。回収した培養上清に,カラム体積の5倍容の150mL NaClを含む20mM Tris緩衝液(pH8.0)を添加し,カラム体積の3倍容の150mM NaClを含む20mM Tris緩衝液(pH8.0)で予め平衡化しておいたProteinAカラム(カラム体積1mL:Bio-Rad社)に負荷した。次いで,カラム体積の5倍容の同緩衝液を供給してカラムを洗浄した後,150mM NaClを含むカラム体積の4倍容の50mM グリシン緩衝液(pH2.8)で,吸着したEPO-抗hTfRを溶出させた。このEPO-抗hTfR抗体を含む溶出液のpHを,1M Tris緩衝液(pH8.0)を添加してpH7.0に調整し,次いで,アミコンウルトラ30kDa膜(Millipore社)を用いてPBSにバッファー交換した。これをEPO-抗hTfR抗体の精製品とした。
【0336】
〔実施例26〕ヒト化抗hTfR抗体とヒトアリルスルファターゼAとの融合蛋白質の製造法
配列番号210で示されるアミノ酸配列を有するヒト化抗hTfR抗体の重鎖のC末端側にリンカー配列Gly-Serを介して,配列番号259で示されるアミノ酸配列を有するヒトアリルスルファターゼA(hARSA)を結合させた蛋白質をコードするcDNAを含む,配列番号261で示される塩基配列を有するDNA断片を人工的に合成した。このDNA断片は,配列番号260で示されるアミノ酸配列を有するヒト化抗hTfR抗体の重鎖のC末端側にリンカー配列Gly-Serを介してhARSAが結合した蛋白質をコードする。また,このDNA断片は,5’側には,5’端から順にMluI配列と,分泌シグナルとして機能するリーダーペプチドをコードする配列とを有し,3’側にはNotI配列を有する。このDNA断片をMluIとNotIで消化し,pE-neoベクターのMluIとNotIの間に組み込み,pEneo(HC-hARSA)を構築した。
【0337】
CHO細胞を,実施例12に記載の方法により,pE-neo(HC-hARSA)及び実施例11で構築したpE-hygr(LC3)で形質転換し,hARSAとヒト化抗hTfR抗体との融合蛋白質を発現する細胞株を得た。この細胞株を,hARSA-抗hTfR抗体発現株とした。この細胞株が発現するhARSAとヒト化抗hTfR抗体との融合蛋白質をARSA-抗hTfR抗体とした。
【0338】
hARSA-抗hTfR抗体発現株を,細胞濃度が約2×10個/mLとなるように,CD OptiCHOTM培地で希釈し,1Lの三角フラスコに200mLの細胞懸濁液を加え,37℃で,5%COと95%空気からなる湿潤環境で約70rpmの撹拌速度で6~7日間培養した。培養液を遠心操作により回収し,0.22μmフィルター(Millipore社)でろ過して,培養上清とした。回収した培養上清に,カラム体積の5倍容の150mL NaClを含む20mM Tris緩衝液(pH8.0)を添加し,カラム体積の3倍容の150mM NaClを含む20mM Tris緩衝液(pH8.0)で予め平衡化しておいたProteinAカラム(カラム体積1mL:Bio-Rad社)に負荷した。次いで,カラム体積の5倍容の同緩衝液を供給してカラムを洗浄した後,150mM NaClを含むカラム体積の4倍容の50mM グリシン緩衝液(pH2.8)で,吸着したARSA-抗hTfRを溶出させた。このARSA-抗hTfR抗体を含む溶出液のpHを,1M Tris緩衝液(pH8.0)を添加してpH7.0に調整し,次いで,アミコンウルトラ30kDa膜(Millipore社)を用いてPBSにバッファー交換した。これをARSA-抗hTfR抗体の精製品とした。
【0339】
〔実施例27〕ヒト化抗hTfR抗体とヒトPPT-1との融合蛋白質の製造法
配列番号210で示されるアミノ酸配列を有するヒト化抗hTfR抗体の重鎖のC末端側にリンカー配列Gly-Serを介して,配列番号262で示されるアミノ酸配列を有するヒトPPT-1(hPPT-1)を結合させた蛋白質をコードするcDNAを含む,配列番号264で示される塩基配列を有するDNA断片を人工的に合成した。このDNA断片は,配列番号263で示されるアミノ酸配列を有するヒト化抗hTfR抗体の重鎖のC末端側にリンカー配列Gly-Serを介してhPPT-1が結合した蛋白質をコードする。また,このDNA断片は,5’側には,5’端から順にMluI配列と,分泌シグナルとして機能するリーダーペプチドをコードする配列とを有し,3’側にはNotI配列を有する。このDNA断片をMluIとNotIで消化し,pE-neoベクターのMluIとNotIの間に組み込み,pE-neo(HC-hPPT-1)を構築した。
【0340】
CHO細胞を,実施例12に記載の方法により,pE-neo(HC-hPPT-1)及び実施例11で構築したpE-hygr(LC3)で形質転換し,hPPT-1ヒト化抗hTfR抗体との融合蛋白質を発現する細胞株を得た。この細胞株を,hPPT-1-抗hTfR抗体発現株とした。この細胞株が発現するhPPT-1とヒト化抗hTfR抗体との融合蛋白質をPPT-1-抗hTfR抗体とした。
【0341】
hPPT-1-抗hTfR抗体発現株を,細胞濃度が約2×10個/mLとなるように,CD OptiCHOTM培地で希釈し,1Lの三角フラスコに200mLの細胞懸濁液を加え,37℃で,5%COと95%空気からなる湿潤環境で約70rpmの撹拌速度で6~7日間培養した。培養上清を遠心操作により回収し,0.22μmフィルター(Millipore社)でろ過して,培養上清とした。回収した培養上清に,カラム体積の5倍容の150mL NaClを含む20mM Tris緩衝液(pH8.0)を添加し,カラム体積の3倍容の150mM NaClを含む20mM Tris緩衝液(pH8.0)で予め平衡化しておいたProteinAカラム(カラム体積1mL:Bio-Rad社)に負荷した。次いで,カラム体積の5倍容の同緩衝液を供給してカラムを洗浄した後,150mM NaClを含むカラム体積の4倍容の50mM グリシン緩衝液(pH2.8)で,吸着したPPT-1-抗hTfRを溶出させた。このPPT-1-抗hTfR抗体を含む溶出液のpHを,1M Tris緩衝液(pH8.0)を添加してpH7.0に調整し,次いで,アミコンウルトラ30kDa膜(Millipore社)を用いてPBSにバッファー交換した。これをPPT-1-抗hTfR抗体の精製品とした。
【0342】
〔実施例28〕ヒト化抗hTfR抗体とヒトTPP-1との融合蛋白質の製造法
配列番号210で示されるアミノ酸配列を有するヒト化抗hTfR抗体の重鎖のC末端側にリンカー配列Gly-Serを介して,配列番号265で示されるアミノ酸配列を有するヒトTPP-1(hTPP-1)を結合させた蛋白質をコードするcDNAを含む,配列番号267で示される塩基配列を有するDNA断片を人工的に合成した。このDNA断片は,配列番号266で示されるアミノ酸配列を有するヒト化抗hTfR抗体の重鎖のC末端側にリンカー配列Gly-Serを介してhTPP-1が結合した融合蛋白質をコードする。また,このDNA断片は,5’側には,5’端から順にMluI配列と,分泌シグナルとして機能するリーダーペプチドをコードする配列とを有し,3’側にはNotI配列を有する。このDNA断片をMluIとNotIで消化し,pE-neoベクターのMluIとNotIの間に組み込み,pE-neo(HC-hTPP-1)を構築した。
【0343】
CHO細胞を,実施例12に記載の方法により,pE-neo(HC-hTPP-1)及び実施例11で構築したpE-hygr(LC3)で形質転換し,hTPP-1とヒト化抗hTfR抗体との融合蛋白質を発現する細胞株を得た。この細胞株を,hTPP-1-抗hTfR抗体発現株とした。この細胞株が発現するhTPP-1とヒト化抗hTfR抗体との融合蛋白質をTPP-1-抗hTfR抗体とした。
【0344】
hTPP-1-抗hTfR抗体発現株を,細胞濃度が約2×10個/mLとなるように,CD OptiCHOTM培地で希釈し,1Lの三角フラスコに200mLの細胞懸濁液を加え,37℃で,5%COと95%空気からなる湿潤環境で約70rpmの撹拌速度で6~7日間培養した。培養液を遠心操作により回収し,0.22μmフィルター(Millipore社)でろ過して,培養上清とした。回収した培養上清に,カラム体積の5倍容の150mL NaClを含む20mM Tris緩衝液(pH8.0)を添加し,カラム体積の3倍容の150mM NaClを含む20mM Tris緩衝液(pH8.0)で予め平衡化しておいたProteinAカラム(カラム体積1mL:Bio-Rad社)に負荷した。次いで,カラム体積の5倍容の同緩衝液を供給してカラムを洗浄した後,150mM NaClを含むカラム体積の4倍容の50mM グリシン緩衝液(pH2.8)で,吸着したTPP-1-抗hTfRを溶出させた。このTPP-1-抗hTfR抗体を含む溶出液のpHを,1M Tris緩衝液(pH8.0)を添加してpH7.0に調整し,次いで,アミコンウルトラ30kDa膜(Millipore社)を用いてPBSにバッファー交換した。これをTPP-1-抗hTfR抗体の精製品とした。
【0345】
〔実施例29〕ヒト化抗hTfR抗体とヒトα-L-イズロニダーゼとの融合蛋白質の製造法
配列番号210で示されるアミノ酸配列を有するヒト化抗hTfR抗体の重鎖のC末端側にリンカー配列Gly-Serを介して,配列番号268で示されるアミノ酸配列を有するヒトα-L-イズロニダーゼ(hIDUA)を結合させた蛋白質をコードするcDNAを含む,配列番号270で示される塩基配列を有するDNA断片を人工的に合成した。このDNA断片は,配列番号269で示されるアミノ酸配列を有するヒト化抗hTfR抗体の重鎖のC末端側にリンカー配列Gly-Serを介してhIDUAが結合した融合蛋白質をコードする。また,このDNA断片は,5’側には,5’端から順にMluI配列と,分泌シグナルとして機能するリーダーペプチドをコードする配列とを有し,3’側にはNotI配列を有する。このDNA断片をMluIとNotIで消化し,pE-neoベクターのMluIとNotIの間に組み込み,pE-neo(HC-hIDUA)を構築した。
【0346】
CHO細胞を,実施例12に記載の方法により,pE-neo(HC-hIDUA)及び実施例11で構築したpE-hygr(LC3)で形質転換し,hIDUAとヒト化抗hTfR抗体との融合蛋白質を発現する細胞株を得た。この細胞株を,hIDUA-抗hTfR抗体発現株とした。この細胞株が発現するhIDUAとヒト化抗hTfR抗体との融合蛋白質をIDUA-抗hTfR抗体とした。
【0347】
hIDUA-抗hTfR抗体発現株を,細胞濃度が約2×10個/mLとなるように,CD OptiCHOTM培地で希釈し,1Lの三角フラスコに200mLの細胞懸濁液を加え,37℃で,5%COと95%空気からなる湿潤環境で約70rpmの撹拌速度で6~7日間培養した。培養液を遠心操作により回収し,0.22μmフィルター(Millipore社)でろ過して,培養上清とした。回収した培養上清に,カラム体積の5倍容の150mL NaClを含む20mM Tris緩衝液(pH8.0)を添加し,カラム体積の3倍容の150mM NaClを含む20mM Tris緩衝液(pH8.0)で予め平衡化しておいたProteinAカラム(カラム体積1mL:Bio-Rad社)に負荷した。次いで,カラム体積の5倍容の同緩衝液を供給してカラムを洗浄した後,150mM NaClを含むカラム体積の4倍容の50mM グリシン緩衝液(pH2.8)で,吸着したIDUA-抗hTfRを溶出させた。このIDUA-抗hTfR抗体を含む溶出液のpHを,1M Tris緩衝液(pH8.0)を添加してpH7.0に調整し,次いで,アミコンウルトラ30kDa膜(Millipore社)を用いてPBSにバッファー交換した。これをIDUA-抗hTfR抗体の精製品とした。
【0348】
〔実施例30〕ヒト化抗hTfR抗体とヒトTNFα受容体との融合蛋白質の製造法
配列番号210で示されるアミノ酸配列を有するヒト化抗hTfR抗体の重鎖のC末端側にリンカー配列Gly-Serを介して,配列番号271で示されるアミノ酸配列を有するヒトTNFα受容体(hTNFαR)を結合させた蛋白質をコードするcDNAを含む,配列番号273で示される塩基配列を有するDNA断片を人工的に合成した。このDNA断片は,配列番号272で示されるアミノ酸配列を有するヒト化抗hTfR抗体の重鎖のC末端側にリンカー配列Gly-Serを介してhTNFαRが結合した蛋白質をコードする。また,このDNA断片は,5’側には,5’端から順にMluI配列と,分泌シグナルとして機能するリーダーペプチドをコードする配列とを有し,3’側にはNotI配列を有する。このDNA断片をMluIとNotIで消化し,pE-neoベクターのMluIとNotIの間に組み込み,pE-neo(HC-hTNFαR)を構築した。
【0349】
CHO細胞を,実施例12に記載の方法により,pE-neo(HC-hTNFαR)及び実施例11で構築したpE-hygr(LC3)で形質転換し,hTNFαRとヒト化抗hTfR抗体との融合蛋白質を発現する細胞株を得た。この細胞株を,hTNFαR-抗hTfR抗体発現株とした。この細胞株が発現するhTNFαRとヒト化抗hTfR抗体との融合蛋白質をTNFαR-抗hTfR抗体とした。
【0350】
hTNFαR-抗hTfR抗体発現株を,細胞濃度が約2×10個/mLとなるように,CD OptiCHOTM培地で希釈し,1Lの三角フラスコに200mLの細胞懸濁液を加え,37℃で,5%COと95%空気からなる湿潤環境で約70rpmの撹拌速度で6~7日間培養した。培養液を遠心操作により回収し,0.22μmフィルター(Millipore社)でろ過して,培養上清とした。回収した培養上清に,カラム体積の5倍容の150mL NaClを含む20mM Tris緩衝液(pH8.0)を添加し,カラム体積の3倍容の150mM NaClを含む20mM Tris緩衝液(pH8.0)で予め平衡化しておいたProteinAカラム(カラム体積1mL:Bio-Rad社)に負荷した。次いで,カラム体積の5倍容の同緩衝液を供給してカラムを洗浄した後,150mM NaClを含むカラム体積の4倍容の50mM グリシン緩衝液(pH2.8)で,吸着したhTNFαR-抗hTfRを溶出させた。このTNFαR-抗hTfR抗体を含む溶出液のpHを,1M Tris緩衝液(pH8.0)を添加してpH7.0に調整し,次いで,アミコンウルトラ30kDa膜(Millipore社)を用いてPBSにバッファー交換した。これをTNFαR-抗hTfR抗体の精製品とした。
【0351】
〔実施例31〕ヒト化抗hTfR抗体とヒトヘパランN-スルファターゼとの融合蛋白質の製造法
配列番号210で示されるアミノ酸配列を有するヒト化抗hTfR抗体の重鎖のC末端側にリンカー配列Gly-Serを介して,配列番号274で示されるアミノ酸配列を有するヒトヘパランN-スルファターゼ(hSGSH)を結合させた蛋白質をコードするcDNAを含む,配列番号276で示される塩基配列を有するDNA断片を人工的に合成した。このDNA断片は,配列番号275で示されるアミノ酸配列を有するヒト化抗hTfR抗体の重鎖のC末端側にリンカー配列Gly-Serを介してhSGSHが結合した融合蛋白質をコードする。また,このDNA断片は,5’側には,5’端から順にMluI配列と,分泌シグナルとして機能するリーダーペプチドをコードする配列とを有し,3’側にはNotI配列を有する。このDNA断片をMluIとNotIで消化し,pE-neoベクターのMluIとNotIの間に組み込み,pE-neo(HC-hSGSH)を構築した。
【0352】
CHO細胞を,実施例12に記載の方法により,pE-neo(HC-hSGSH)及び実施例11で構築したpE-hygr(LC3)で形質転換し,hSGSHとヒト化抗hTfR抗体との融合蛋白質を発現する細胞株を得た。この細胞株を,hSGSH-抗hTfR抗体発現株とした。この細胞株が発現するhSGSHとヒト化抗hTfR抗体との融合蛋白質をSGSH-抗hTfR抗体とした。
【0353】
hSGSH-抗hTfR抗体発現株を,細胞濃度が約2×10個/mLとなるように,CD OptiCHOTM培地で希釈し,1Lの三角フラスコに200mLの細胞懸濁液を加え,37℃で,5%COと95%空気からなる湿潤環境で約70rpmの撹拌速度で6~7日間培養した。培養液を遠心操作により回収し,0.22μmフィルター(Millipore社)でろ過して,培養上清とした。回収した培養上清に,カラム体積の5倍容の150mL NaClを含む20mM Tris緩衝液(pH8.0)を添加し,カラム体積の3倍容の150mM NaClを含む20mM Tris緩衝液(pH8.0)で予め平衡化しておいたProteinAカラム(カラム体積1mL:Bio-Rad社)に負荷した。次いで,カラム体積の5倍容の同緩衝液を供給してカラムを洗浄した後,150mM NaClを含むカラム体積の4倍容の50mM グリシン緩衝液(pH2.8)で,吸着したSGSH-抗hTfRを溶出させた。このSGSH-抗hTfRを含む溶出液のpHを,1M Tris緩衝液(pH8.0)を添加してpH7.0に調整し,次いで,アミコンウルトラ30kDa膜(Millipore社)を用いてPBSにバッファー交換した。これをSGSH-抗hTfR抗体の精製品とした。
【0354】
〔実施例32〕ヒト化抗hTfR抗体と各種生理活性ペプチドとの融合蛋白質の脳移行評価
実施例25~実施例31で得た,EPO-抗hTfR抗体,ARSA-抗hTfR抗体,PPT-1-抗hTfR抗体,TPP-1-抗hTfR抗体,IDUA-抗hTfR抗体,TNFαR-抗hTfR抗体及びSGSH-抗hTfR抗体の精製品を,それぞれ3mg/kgの用量でhTfR-KIマウスに単回静脈内投与した。また,コントロールとして,ヒトイムノグロブリン製剤(人免疫グロブリングロブリン筋注「ベネシス」,田辺三菱製薬株式会社)を3mg/kgの用量でhTfR-KIマウス(17-28週齢)に単回静脈注射した。それぞれの融合蛋白質及びコントロールの投与につき,hTfR-KIマウス(雄雌,17-28週齢)を1匹ずつ用いた。
【0355】
静脈注射してから投与8時間後に生理食塩水で全身潅流を実施し,潅流後,各マウスの脳組織を摘出した。次いで摘出した脳組織をProtease Inhibitor Cocktail(シグマ社)を含むT-PER(Thermo Fisher Scientific社)でホモジネートし,遠心後の上清を回収した。回収したホモジネートの上清に含まれる融合蛋白質の濃度を,以下に示す方法で測定した。なお,ビオチン標識化ヤギ抗ヒトIgG Fcポリクローナル抗体は,ヤギ抗ヒトIgG Fcポリクローナル抗体(Bethyl社)を,Biotin Labelling Kit-NH(同仁化学研究所)を用いて,添付の操作マニュアルに従ってビオチン標識して作製したものを使用した。また,SULFO標識化ヤギ抗ヒトIgG Fcポリクローナル抗体は,ヤギ抗ヒトIgG Fcポリクローナル抗体(Bethyl社)を,MSD SULFO-TAG NHS-Ester(Meso scale Diagnostics社)を用いて,添付の操作マニュアルに従ってSULFO標識して作製したものを使用した。
【0356】
Streptavidin Gold Plate 96 well(Meso scale Diagnostics社)の各ウェルに,150μLのSuperBlock blocking buffer in PBS(Thermo Fisher Scientific社)を添加して1時間静置し,プレートをブロッキングした。ビオチン標識化ヤギ抗ヒトIgG Fcポリクローナル抗体を,SuperBlock blocking buffer in PBSにより0.5μg/mLの濃度に希釈した。SULFO標識化ヤギ抗ヒトIgG Fcポリクローナル抗体を,SuperBlock blocking buffer in PBSにより1.0μg/mLの濃度に希釈した。ビオチン標識抗体及びSULFO標識抗体の希釈溶液を各25μLと,25μLの各検体とを混合し,1時間インキュベートし,これを抗体反応試料とした。
【0357】
ブロッキング後のプレートの各ウェルを,200μLのPBS-T(シグマ社)で洗浄した後,各ウェルに抗体反応試料を25μLずつ添加し,1時間インキュベートした。インキュベート後,プレートの各ウェルを200μLのPBS-Tで洗浄し,次いで,Read buffer T(Meso scale Diagnostics社)を添加し,SectorTM Imager 6000(Meso scale Diagnostics社)を用いて各ウェルからの発光量を測定した。濃度既知の標準試料の測定値から検量線を作成し,これに各試料の測定値を内挿することにより,脳組織のグラム重量(g湿重量)当たりに含まれる,それぞれの融合蛋白質の量(脳組織中のそれぞれの融合蛋白質についての濃度)を算出した。その結果を表13に示す。
【0358】
コントロールとしておいたヒトイムノグロブリンの脳組織中の濃度を1としたときの,脳組織中におけるEPO-抗hTfR抗体,ARSA-抗hTfR抗体,PPT-1-抗hTfR抗体,TPP-1-抗hTfR抗体,IDUA-抗hTfR抗体,TNFαR-抗hTfR抗体及びSGSH-抗hTfR抗体の濃度の相対値は,それぞれ,4.33,3.39,4.87,6.48,5.62,7.44,及び2.24であり,抗hTfR抗体と結合させたこれらの生理活性ペプチドが,積極的に脳組織中に移行することが示された。すなわち,これらの結果は,抗hTfR抗体と融合させることにより,通常では血液脳関門を通過することのないこれらの生理活性蛋白質を,血液脳関門を通過させて脳組織中に到達させることができることを示すものである。
【0359】
つまり,EPO-抗hTfR抗体は脳虚血の治療剤として,ARSA-抗hTfR抗体はアリルスルファターゼAは異染性白質変性症(異染性白質ジストロフィー)における中枢神経障害治療剤として,PPT-1-抗hTfR抗体は神経セロイドリポフスチン症又はSantavuori-Haltia病における中枢神経障害治療剤として,TPP-1-抗hTfR抗体は神経セロイドリポフスチン症又はJansky-Bielschowsky病における中枢神経障害治療剤として,IDUA-抗hTfR抗体はハーラー症候群又はハーラー・シャイエ症候群における中枢神経障害治療剤として,SGSH-抗hTfR抗体はサンフィリッポ症候群における中枢神経障害治療剤として,IDUA-抗hTfR抗体はハーラー症候群又はハーラー・シャイエ症候群における中枢神経障害治療剤として,TNFαR-抗hTfR抗体は脳虚血及び脳炎症性疾患の治療剤として,それぞれ使用できることを示すものである。またこれらに限らず,抗hTfR抗体と融合させることにより,通常では血液脳関門を通過することのない所望の生理活性蛋白質を,血液脳関門を通過させて脳組織中に到達させることができることを示すものである。
【0360】
【表13】
【産業上の利用可能性】
【0361】
本発明の抗hTfR抗体は,これと融合させることにより,所望の生理活性蛋白質,低分子物質等を血液脳関門を通過させることができるので,中枢神経系において作用させるべき生理活性蛋白質,低分子物質等を脳内に送達する手段を提供するものとして有用性が高い。
【符号の説明】
【0362】
1 血管
2 脳実質
3 神経様細胞
4 プルキンエ細胞
【配列表フリーテキスト】
【0363】
配列番号3:リンカー例1のアミノ酸配列
配列番号4:リンカー例2のアミノ酸配列
配列番号5:リンカー例3のアミノ酸配列
配列番号6:マウス抗hTfR抗体番号1の軽鎖CDR1のアミノ酸配列1
配列番号7:マウス抗hTfR抗体番号1の軽鎖CDR1のアミノ酸配列2
配列番号8:マウス抗hTfR抗体番号1の軽鎖CDR2のアミノ酸配列1
配列番号9:マウス抗hTfR抗体番号1の軽鎖CDR2のアミノ酸配列2
配列番号10:マウス抗hTfR抗体番号1の軽鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号11:マウス抗hTfR抗体番号2の軽鎖CDR1のアミノ酸配列1
配列番号12:マウス抗hTfR抗体番号2の軽鎖CDR1のアミノ酸配列2
配列番号13:マウス抗hTfR抗体番号2の軽鎖CDR2のアミノ酸配列1
配列番号14:マウス抗hTfR抗体番号2の軽鎖CDR2のアミノ酸配列2
配列番号15:マウス抗hTfR抗体番号2の軽鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号16:マウス抗hTfR抗体番号3の軽鎖CDR1のアミノ酸配列1
配列番号17:マウス抗hTfR抗体番号3の軽鎖CDR1のアミノ酸配列2
配列番号18:マウス抗hTfR抗体番号3の軽鎖CDR2のアミノ酸配列1
配列番号19:マウス抗hTfR抗体番号3の軽鎖CDR2のアミノ酸配列2
配列番号20:マウス抗hTfR抗体番号3の軽鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号21:マウス抗hTfR抗体番号4の軽鎖CDR1のアミノ酸配列1
配列番号22:マウス抗hTfR抗体番号4の軽鎖CDR1のアミノ酸配列2
配列番号23:マウス抗hTfR抗体番号4の軽鎖CDR2のアミノ酸配列1
配列番号24:マウス抗hTfR抗体番号4の軽鎖CDR2のアミノ酸配列2
配列番号25:マウス抗hTfR抗体番号4の軽鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号26:マウス抗hTfR抗体番号5の軽鎖CDR1のアミノ酸配列1
配列番号27:マウス抗hTfR抗体番号5の軽鎖CDR1のアミノ酸配列2
配列番号28:マウス抗hTfR抗体番号5の軽鎖CDR2のアミノ酸配列1
配列番号29:マウス抗hTfR抗体番号5の軽鎖CDR2のアミノ酸配列2
配列番号30:マウス抗hTfR抗体番号5の軽鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号31:マウス抗hTfR抗体番号6の軽鎖CDR1のアミノ酸配列1
配列番号32:マウス抗hTfR抗体番号6の軽鎖CDR1のアミノ酸配列2
配列番号33:マウス抗hTfR抗体番号6の軽鎖CDR2のアミノ酸配列1
配列番号34:マウス抗hTfR抗体番号6の軽鎖CDR2のアミノ酸配列2
配列番号35:マウス抗hTfR抗体番号6の軽鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号36:マウス抗hTfR抗体番号7の軽鎖CDR1のアミノ酸配列1
配列番号37:マウス抗hTfR抗体番号7の軽鎖CDR1のアミノ酸配列2
配列番号38:マウス抗hTfR抗体番号7の軽鎖CDR2のアミノ酸配列1
配列番号39:マウス抗hTfR抗体番号7の軽鎖CDR2のアミノ酸配列2
配列番号40:マウス抗hTfR抗体番号7の軽鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号41:マウス抗hTfR抗体番号8の軽鎖CDR1のアミノ酸配列1
配列番号42:マウス抗hTfR抗体番号8の軽鎖CDR1のアミノ酸配列2
配列番号43:マウス抗hTfR抗体番号8の軽鎖CDR2のアミノ酸配列1
配列番号44:マウス抗hTfR抗体番号8の軽鎖CDR2のアミノ酸配列2
配列番号45:マウス抗hTfR抗体番号8の軽鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号46:マウス抗hTfR抗体番号9の軽鎖CDR1のアミノ酸配列1
配列番号47:マウス抗hTfR抗体番号9の軽鎖CDR1のアミノ酸配列2
配列番号48:マウス抗hTfR抗体番号9の軽鎖CDR2のアミノ酸配列1
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配列番号50:マウス抗hTfR抗体番号9の軽鎖CDR3のアミノ酸配列
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配列番号56:マウス抗hTfR抗体番号11の軽鎖CDR1のアミノ酸配列1
配列番号57:マウス抗hTfR抗体番号11の軽鎖CDR1のアミノ酸配列2
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配列番号60:マウス抗hTfR抗体番号11の軽鎖CDR3のアミノ酸配列
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配列番号62:マウス抗hTfR抗体番号12の軽鎖CDR1のアミノ酸配列2
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配列番号66:マウス抗hTfR抗体番号13の軽鎖CDR1のアミノ酸配列1
配列番号67:マウス抗hTfR抗体番号13の軽鎖CDR1のアミノ酸配列2
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配列番号70:マウス抗hTfR抗体番号13の軽鎖CDR3のアミノ酸配列
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配列番号72:マウス抗hTfR抗体番号14の軽鎖CDR1のアミノ酸配列2
配列番号73:マウス抗hTfR抗体番号14の軽鎖CDR2のアミノ酸配列1
配列番号74:マウス抗hTfR抗体番号14の軽鎖CDR2のアミノ酸配列2
配列番号75:マウス抗hTfR抗体番号14の軽鎖CDR3のアミノ酸配列
配列番号76:マウス抗hTfR抗体番号1の重鎖CDR1のアミノ酸配列1
配列番号77:マウス抗hTfR抗体番号1の重鎖CDR1のアミノ酸配列2
配列番号78:マウス抗hTfR抗体番号1の重鎖CDR2のアミノ酸配列1
配列番号79:マウス抗hTfR抗体番号1の重鎖CDR2のアミノ酸配列2
配列番号80:マウス抗hTfR抗体番号1の重鎖CDR3のアミノ酸配列1
配列番号81:マウス抗hTfR抗体番号1の重鎖CDR3のアミノ酸配列2
配列番号82:マウス抗hTfR抗体番号2の重鎖CDR1のアミノ酸配列1
配列番号83:マウス抗hTfR抗体番号2の重鎖CDR1のアミノ酸配列2
配列番号84:マウス抗hTfR抗体番号2の重鎖CDR2のアミノ酸配列1
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配列番号86:マウス抗hTfR抗体番号2の重鎖CDR3のアミノ酸配列1
配列番号87:マウス抗hTfR抗体番号2の重鎖CDR3のアミノ酸配列2
配列番号88:マウス抗hTfR抗体番号3の重鎖CDR1のアミノ酸配列1
配列番号89:マウス抗hTfR抗体番号3の重鎖CDR1のアミノ酸配列2
配列番号90:マウス抗hTfR抗体番号3の重鎖CDR2のアミノ酸配列1
配列番号91:マウス抗hTfR抗体番号3の重鎖CDR2のアミノ酸配列2
配列番号92:マウス抗hTfR抗体番号3の重鎖CDR3のアミノ酸配列1
配列番号93:マウス抗hTfR抗体番号3の重鎖CDR3のアミノ酸配列2
配列番号94:マウス抗hTfR抗体番号4の重鎖CDR1のアミノ酸配列1
配列番号95:マウス抗hTfR抗体番号4の重鎖CDR1のアミノ酸配列2
配列番号96:マウス抗hTfR抗体番号4の重鎖CDR2のアミノ酸配列1
配列番号97:マウス抗hTfR抗体番号4の重鎖CDR2のアミノ酸配列2
配列番号98:マウス抗hTfR抗体番号4の重鎖CDR3のアミノ酸配列1
配列番号99:マウス抗hTfR抗体番号4の重鎖CDR3のアミノ酸配列2
配列番号100:マウス抗hTfR抗体番号5の重鎖CDR1のアミノ酸配列1
配列番号101:マウス抗hTfR抗体番号5の重鎖CDR1のアミノ酸配列2
配列番号102:マウス抗hTfR抗体番号5の重鎖CDR2のアミノ酸配列1
配列番号103:マウス抗hTfR抗体番号5の重鎖CDR2のアミノ酸配列2
配列番号104:マウス抗hTfR抗体番号5の重鎖CDR3のアミノ酸配列1
配列番号105:マウス抗hTfR抗体番号5の重鎖CDR3のアミノ酸配列2
配列番号106:マウス抗hTfR抗体番号6の重鎖CDR1のアミノ酸配列1
配列番号107:マウス抗hTfR抗体番号6の重鎖CDR1のアミノ酸配列2
配列番号108:マウス抗hTfR抗体番号6の重鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号109:マウス抗hTfR抗体番号6の重鎖CDR3のアミノ酸配列1
配列番号110:マウス抗hTfR抗体番号6の重鎖CDR3のアミノ酸配列2
配列番号111:マウス抗hTfR抗体番号7の重鎖CDR1のアミノ酸配列1
配列番号112:マウス抗hTfR抗体番号7の重鎖CDR1のアミノ酸配列2
配列番号113:マウス抗hTfR抗体番号7の重鎖CDR2のアミノ酸配列1
配列番号114:マウス抗hTfR抗体番号7の重鎖CDR2のアミノ酸配列2
配列番号115:マウス抗hTfR抗体番号7の重鎖CDR3のアミノ酸配列1
配列番号116:マウス抗hTfR抗体番号7の重鎖CDR3のアミノ酸配列2
配列番号117:マウス抗hTfR抗体番号8の重鎖CDR1のアミノ酸配列1
配列番号118:マウス抗hTfR抗体番号8の重鎖CDR1のアミノ酸配列2
配列番号119:マウス抗hTfR抗体番号8の重鎖CDR2のアミノ酸配列
配列番号120:マウス抗hTfR抗体番号8の重鎖CDR3のアミノ酸配列1
配列番号121:マウス抗hTfR抗体番号8の重鎖CDR3のアミノ酸配列2
配列番号122:マウス抗hTfR抗体番号9の重鎖CDR1のアミノ酸配列1
配列番号123:マウス抗hTfR抗体番号9の重鎖CDR1のアミノ酸配列2
配列番号124:マウス抗hTfR抗体番号9の重鎖CDR2のアミノ酸配列1
配列番号125:マウス抗hTfR抗体番号9の重鎖CDR2のアミノ酸配列2
配列番号126:マウス抗hTfR抗体番号9の重鎖CDR3のアミノ酸配列1
配列番号127:マウス抗hTfR抗体番号9の重鎖CDR3のアミノ酸配列2
配列番号128:マウス抗hTfR抗体番号10の重鎖CDR1のアミノ酸配列1
配列番号129:マウス抗hTfR抗体番号10の重鎖CDR1のアミノ酸配列2
配列番号130:マウス抗hTfR抗体番号10の重鎖CDR2のアミノ酸配列1
配列番号131:マウス抗hTfR抗体番号10の重鎖CDR2のアミノ酸配列2
配列番号132:マウス抗hTfR抗体番号10の重鎖CDR3のアミノ酸配列1
配列番号133:マウス抗hTfR抗体番号10の重鎖CDR3のアミノ酸配列2
配列番号134:マウス抗hTfR抗体番号11の重鎖CDR1のアミノ酸配列1
配列番号135:マウス抗hTfR抗体番号11の重鎖CDR1のアミノ酸配列2
配列番号136:マウス抗hTfR抗体番号11の重鎖CDR2のアミノ酸配列1
配列番号137:マウス抗hTfR抗体番号11の重鎖CDR2のアミノ酸配列2
配列番号138:マウス抗hTfR抗体番号11の重鎖CDR3のアミノ酸配列1
配列番号139:マウス抗hTfR抗体番号11の重鎖CDR3のアミノ酸配列2
配列番号140:マウス抗hTfR抗体番号12の重鎖CDR1のアミノ酸配列1
配列番号141:マウス抗hTfR抗体番号12の重鎖CDR1のアミノ酸配列2
配列番号142:マウス抗hTfR抗体番号12の重鎖CDR2のアミノ酸配列1
配列番号143:マウス抗hTfR抗体番号12の重鎖CDR2のアミノ酸配列2
配列番号144:マウス抗hTfR抗体番号12の重鎖CDR3のアミノ酸配列1
配列番号145:マウス抗hTfR抗体番号12の重鎖CDR3のアミノ酸配列2
配列番号146:マウス抗hTfR抗体番号13の重鎖CDR1のアミノ酸配列1
配列番号147:マウス抗hTfR抗体番号13の重鎖CDR1のアミノ酸配列2
配列番号148:マウス抗hTfR抗体番号13の重鎖CDR2のアミノ酸配列1
配列番号149:マウス抗hTfR抗体番号13の重鎖CDR2のアミノ酸配列2
配列番号150:マウス抗hTfR抗体番号13の重鎖CDR3のアミノ酸配列1
配列番号151:マウス抗hTfR抗体番号13の重鎖CDR3のアミノ酸配列2
配列番号152:マウス抗hTfR抗体番号14の重鎖CDR1のアミノ酸配列1
配列番号153:マウス抗hTfR抗体番号14の重鎖CDR1のアミノ酸配列2
配列番号154:マウス抗hTfR抗体番号14の重鎖CDR2のアミノ酸配列1
配列番号155:マウス抗hTfR抗体番号14の重鎖CDR2のアミノ酸配列2
配列番号156:マウス抗hTfR抗体番号14の重鎖CDR3のアミノ酸配列1
配列番号157:マウス抗hTfR抗体番号14の重鎖CDR3のアミノ酸配列2
配列番号158:ヒト化抗hTfR抗体番号1の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列1
配列番号159:ヒト化抗hTfR抗体番号1の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列2
配列番号160:ヒト化抗hTfR抗体番号1の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列3
配列番号161:ヒト化抗hTfR抗体番号1の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列4
配列番号162:ヒト化抗hTfR抗体番号1の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列5
配列番号163:ヒト化抗hTfR抗体番号1の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列6
配列番号164:ヒト化抗hTfR抗体番号1の,可変領域としてアミノ酸配列6を含む軽鎖のアミノ酸配列,合成配列
配列番号165:ヒト化抗hTfR抗体番号1の,可変領域としてアミノ酸配列6を含む軽鎖のアミノ酸配列をコードする塩基配列,合成配列
配列番号166:ヒト化抗hTfR抗体番号1の重鎖の可変領域のアミノ酸配列1
配列番号167:ヒト化抗hTfR抗体番号1の重鎖の可変領域のアミノ酸配列2
配列番号168:ヒト化抗hTfR抗体番号1の重鎖の可変領域のアミノ酸配列3
配列番号169:ヒト化抗hTfR抗体番号1の重鎖の可変領域のアミノ酸配列4
配列番号170:ヒト化抗hTfR抗体番号1の重鎖の可変領域のアミノ酸配列5
配列番号171:ヒト化抗hTfR抗体番号1の重鎖の可変領域のアミノ酸配列6
配列番号172:ヒト化抗hTfR抗体番号1の,可変領域としてアミノ酸配列6を含む重鎖のアミノ酸配列
配列番号173:ヒト化抗hTfR抗体番号1の重鎖の可変領域のアミノ酸配列6を含む重鎖のアミノ酸配列をコードする塩基配列,合成配列
配列番号174:ヒト化抗hTfR抗体番号2の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列1
配列番号175:ヒト化抗hTfR抗体番号2の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列2
配列番号176:ヒト化抗hTfR抗体番号2の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列3
配列番号177:ヒト化抗hTfR抗体番号2の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列4
配列番号178:ヒト化抗hTfR抗体番号2の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列5
配列番号179:ヒト化抗hTfR抗体番号2の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列6
配列番号180:ヒト化抗hTfR抗体番号2の,可変領域としてアミノ酸配列6を含む軽鎖のアミノ酸配列
配列番号181:ヒト化抗hTfR抗体番号2の,可変領域としてアミノ酸配列6を含む軽鎖のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む塩基配列,合成配列
配列番号182:ヒト化抗hTfR抗体番号2の重鎖の可変領域のアミノ酸配列1
配列番号183:ヒト化抗hTfR抗体番号2の重鎖の可変領域のアミノ酸配列2
配列番号184:ヒト化抗hTfR抗体番号2の重鎖の可変領域のアミノ酸配列3
配列番号185:ヒト化抗hTfR抗体番号2の重鎖の可変領域のアミノ酸配列4
配列番号186:ヒト化抗hTfR抗体番号2の重鎖の可変領域のアミノ酸配列5
配列番号187:ヒト化抗hTfR抗体番号2の重鎖の可変領域のアミノ酸配列6
配列番号188:ヒト化抗hTfR抗体番号2の,可変領域としてアミノ酸配列6を含む重鎖のアミノ酸配列
配列番号189:ヒト化抗hTfR抗体番号2の,可変領域としてアミノ酸配列6を含む重鎖のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む塩基配列,合成配列
配列番号190:ヒト化抗hTfR抗体番号3の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列1
配列番号191:ヒト化抗hTfR抗体番号3の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列2
配列番号192:ヒト化抗hTfR抗体番号3の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列3
配列番号193:ヒト化抗hTfR抗体番号3の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列4
配列番号194:ヒト化抗hTfR抗体番号3の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列5
配列番号195:ヒト化抗hTfR抗体番号3の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列6
配列番号196:ヒト化抗hTfR抗体番号3の,可変領域としてアミノ酸配列2を含む軽鎖のアミノ酸配列
配列番号197:ヒト化抗hTfR抗体番号3の,可変領域としてアミノ酸配列2を含む軽鎖のアミノ酸配列をコードする塩基配列,合成配列
配列番号198:ヒト化抗hTfR抗体番号3の,可変領域としてアミノ酸配列4を含む軽鎖のアミノ酸配列
配列番号199:ヒト化抗hTfR抗体番号3の,可変領域としてアミノ酸配列4を含む軽鎖のアミノ酸配列をコードする塩基配列,合成配列
配列番号200:ヒト化抗hTfR抗体番号3の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列5を含む軽鎖のアミノ酸配列
配列番号201:ヒト化抗hTfR抗体番号3の,可変領域としてアミノ酸配列5を含む軽鎖のアミノ酸配列をコードする塩基配列,合成配列
配列番号202:ヒト化抗hTfR抗体番号3の,可変領域としてアミノ酸配列6を含む,可変領域として
配列番号203:ヒト化抗hTfR抗体番号3の,可変領域としてアミノ酸配列6を含む軽鎖のアミノ酸配列をコードする塩基配列,合成配列
配列番号204:ヒト化抗hTfR抗体番号3の重鎖の可変領域のアミノ酸配列1
配列番号205:ヒト化抗hTfR抗体番号3の重鎖の可変領域のアミノ酸配列2
配列番号206:ヒト化抗hTfR抗体番号3の重鎖の可変領域のアミノ酸配列3
配列番号207:ヒト化抗hTfR抗体番号3の重鎖の可変領域のアミノ酸配列4
配列番号208:ヒト化抗hTfR抗体番号3の重鎖の可変領域のアミノ酸配列5
配列番号209:ヒト化抗hTfR抗体番号3の重鎖の可変領域のアミノ酸配列6
配列番号210:ヒト化抗hTfR抗体番号3の,可変領域としてアミノ酸配列2を含む重鎖のアミノ酸配列
配列番号211:ヒト化抗hTfR抗体番号3の,可変領域としてアミノ酸配列2を含む重鎖のアミノ酸配列コードする塩基配列,合成配列
配列番号212:ヒト化抗hTfR抗体番号3の,可変領域としてアミノ酸配列2を含む重鎖(IgG4)のアミノ酸配列
配列番号213:ヒト化抗hTfR抗体番号3の,可変領域としてアミノ酸配列2を含む重鎖(IgG4)のアミノ酸配列をコードする塩基配列,合成配列
配列番号214:プライマーhTfR5’,合成配列
配列番号215:プライマーhTfR3’,合成配列
配列番号216:プライマーHyg-Sfi5’,合成配列
配列番号217:プライマーHyg-BstX3’,合成配列
配列番号218:マウス抗hTfR抗体番号1の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号219:マウス抗hTfR抗体番号1の重鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号220:マウス抗hTfR抗体番号2の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号221:マウス抗hTfR抗体番号2の重鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号222:マウス抗hTfR抗体番号3の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号223:マウス抗hTfR抗体番号3の重鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号224:マウス抗hTfR抗体番号4の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号225:マウス抗hTfR抗体番号4の重鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号226:マウス抗hTfR抗体番号5の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号227:マウス抗hTfR抗体番号5の重鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号228:マウス抗hTfR抗体番号6の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号229:マウス抗hTfR抗体番号6の重鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号230:マウス抗hTfR抗体番号7の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号231:マウス抗hTfR抗体番号7の重鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号232:マウス抗hTfR抗体番号8の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号233:マウス抗hTfR抗体番号8の重鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号234:マウス抗hTfR抗体番号9の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号235:マウス抗hTfR抗体番号9の重鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号236:マウス抗hTfR抗体番号10の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号237:マウス抗hTfR抗体番号10の重鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号238:マウス抗hTfR抗体番号11の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号239:マウス抗hTfR抗体番号11の重鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号240:マウス抗hTfR抗体番号12の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号241:マウス抗hTfR抗体番号12の重鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号242:マウス抗hTfR抗体番号13の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号243:マウス抗hTfR抗体番号13の重鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号244:マウス抗hTfR抗体番号14の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号245:マウス抗hTfR抗体番号14の重鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号247:抗hTfR抗体番号1の重鎖(ヒト化6)とhI2Sの融合蛋白質のアミノ酸配列
配列番号248:抗hTfR抗体番号1の重鎖(ヒト化6)とhI2Sの融合蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列,合成配列
配列番号249:抗hTfR抗体番号2の重鎖(ヒト化6)とhI2Sの融合蛋白質のアミノ酸配列
配列番号250:抗hTfR抗体番号2の重鎖(ヒト化6)とhI2Sの融合蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列,合成配列
配列番号251:抗hTfR抗体番号3の重鎖(ヒト化2)とhI2Sの融合蛋白質のアミノ酸配列
配列番号252:抗hTfR抗体番号3の重鎖(ヒト化2)とhI2Sの融合蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列,合成配列
配列番号253:キメラhTfRをコードするcDNAの3’側にloxP配列で挟み込んだネオマイシン耐性遺伝子を配置したDNAの塩基配列,合成配列
配列番号254:ターゲッティングベクターの5’アームの塩基配列,合成配列
配列番号255:ターゲッティングベクターの3’アームの塩基配列,合成配列
配列番号257:抗hTfR抗体番号3の重鎖(ヒト化2)とhEPOとの融合蛋白質のアミノ酸配列
配列番号258:抗hTfR抗体番号3の重鎖(ヒト化2)とhEPOとの融合蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列,合成配列
配列番号260:抗hTfR抗体番号3の重鎖(ヒト化2)とhARSAとの融合蛋白質のアミノ酸配列
配列番号261:抗hTfR抗体番号3の重鎖(ヒト化2)とhARSAとの融合蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列,合成配列
配列番号263:抗hTfR抗体番号3の重鎖(ヒト化2)とhPPT-1との融合蛋白質のアミノ酸配列
配列番号264:抗hTfR抗体番号3の重鎖(ヒト化2)とhPPT-1との融合蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列,合成配列
配列番号266:抗hTfR抗体番号3の重鎖(ヒト化2)とhTPP-1との融合蛋白質のアミノ酸配列
配列番号267:抗hTfR抗体番号3の重鎖(ヒト化2)とhTPP-1との融合蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列,合成配列
配列番号269:抗hTfR抗体番号3の重鎖(ヒト化2)とhIDUAとの融合蛋白質のアミノ酸配列
配列番号270:抗hTfR抗体番号3の重鎖(ヒト化2)とhIDUAとの融合蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列,合成配列
配列番号272:抗hTfR抗体番号3の重鎖(ヒト化2)とhTNFαRとの融合蛋白質のアミノ酸配列
配列番号273:抗hTfRα抗体番号3の重鎖(ヒト化2)とhTNFαRとの融合蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列,合成配列
配列番号275:抗hTfR抗体番号3の重鎖(ヒト化2)とhSGSHとの融合蛋白質のアミノ酸配列
配列番号276:抗hTfR抗体番号3の重鎖(ヒト化2)とhSGSHとの融合蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列,合成配列
配列番号277:一本鎖抗hTfR抗体のアミノ酸配列
配列番号278:マウス抗hTfR抗体番号6の重鎖CDR2のアミノ酸配列2
配列番号279:マウス抗hTfR抗体番号8の重鎖CDR2のアミノ酸配列2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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