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特許7411758残基固有の分子構造特徴を用いた分子変異体の分子特性の予測
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】残基固有の分子構造特徴を用いた分子変異体の分子特性の予測
(51)【国際特許分類】
   G16B 40/00 20190101AFI20231228BHJP
【FI】
G16B40/00
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022164671
(22)【出願日】2022-10-13
(62)【分割の表示】P 2019568247の分割
【原出願日】2018-06-08
(65)【公開番号】P2023001132
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】62/517,048
(32)【優先日】2017-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519434248
【氏名又は名称】ジャスト-エヴォテック バイオロジクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】シェイヴァー,ジェレミー,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ケチェム,ランダル,ロバート
【審査官】岡北 有平
(56)【参考文献】
【文献】Olga Obrezanova, et al.,Aggregation risk prediction for antibodies and its application to biotherapeutic development,mAbs[online],Vol.7, Issue 2,2015年03月04日,p.352-363,[検索日:2022年5月2日], <URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4622581/pdf/kmab-07-02-1007828.pdf>
【文献】Yang Yang, et al.,PON-Sol: prediction of effects of amino acid substitutions on protein solubility,Bioinformatics [online],Vol.32, Issue 13,2016年02月09日,p.2032-2034,[検索日:2022年5月2日], <URL:https://academic.oup.com/bioinformatics/article/32/13/2032/1742792>
【文献】Hao Lin, et al.,Prediction of thermophilic proteins using feature selection technique,Journal of Microbiological Methods [online],2010年10月31日,Vol.84,p.67-70,[検索日:2022年5月2日], <URL:http://chenweilab.cn/static/pdf/201101.pdf>
【文献】Hao Lin, et al.,AcalPred: A Sequence-Based Tool for Discriminating between Acidic and Alkaine Enzymes,PLOS ONE[online],2013年10月09日,Vol.8, Issue 10,p.1-6,[検索日:2022年5月2日], <URL:https://jounals.plos.org/plosone/article/file?id=10.1371/journal.pone.00757268&type=printable>
【文献】Vikas Pejaver, et al.,Missense variant pathogenicity predictors generalize well across a range of function-specific prediction challenges,Human Mutation [online],2017年03月26日,Vol.38,p.1092-1108,[検索日:2022年5月2日], <URL:htttps://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/humu.23258>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16B 5/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の処理ユニット及び1つ以上の非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含むコンピューティングシステムによって、第1の変異体分子のための構造マトリクスを生成するステップであって、ここで、前記第1の変異体分子は、親分子の初期配列の対応する第1の位置の第1の初期残基とは異なる第1の配列の第1の修飾された残基あり、前記構造マトリクスは、前記第1の変異体分子の残基に対する個々の構造的特徴について各々第1の値を示し;
前記コンピューティングシステムにより、前記構造マトリクスを修飾して、前記第1の変異体分子の修飾された構造マトリクスを生成するステップであって、ここで、前記修飾された構造マトリクスは、前記個々の構造的特徴についての前記第1の値のサブセットを示し、ここで、前記第1の値のサブセットは、前記第1の修飾された残基に対応、;
前記コンピューティングシステムにより、前記第1の変異体分子の分子特性の値を、前記修飾された構造マトリクスに含まれる前記第1の値のサブセットに割り当てるステップ;
前記コンピューティングシステムにより、前記個々の構造的特徴についての前記第1の値のサブセット及び前記第1の変異体分子についての分子特性の値を含むトレーニングデータを生成するステップ;
前記コンピューティングシステムにより、前記トレーニングデータを用いて、前記親分子に対応する新しい変異体分子に対する分子特性の値を予測するモデルを生成するステップ;
前記コンピューティングシステムにより、前記新しい変異体分子の新しい配列の第2の修飾された残基についての前記個々の構造的特徴に対する第2の値を示す第2の修飾された構造マトリクスを生成するステップであって、前記第2の修飾された残基は、親分子の初期配列の対応する第2の位置の第2の初期残基とは異な;かつ、
前記コンピューティングシステムにより、前記第2の修飾された構造マトリクスに前記モデルを適用して、前記新しい変異体分子の分子特性のさらなる値を決定するステップ;
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の変異体分子の表面への前記第1の修飾された残基の近接性に基づいて、前記第1の修飾された残基の溶媒へのアクセシビリティを決定することにより、前記第1の変異体分子の前記第1の修飾された残基の第1の構造的特徴の前記第1の値を決定すること;かつ、
前記親分子のpKa値に対する前記第1の変異体分子のpKa値を決定することにより、前記第1の修飾された残基の第2の構造的特徴の前記第2の値を決定すること、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記個々の構造的特徴のための前記第1の値のサブセットに関して1つ以上の統計操作を実行して、前記1つ以上の統計操作のための1つ以上のさらなる値を生成するステップ;
前記第1の変異体分子に関する前記1つ以上の統計操作のための1つ以上の前記さらなる値を含み、複数のさらなる変異体分子に関する1つ以上の統計操作のための複数のさらなる値を含む構造的特徴要約マトリクスを生成するステップ;かつ、
前記構造的特徴要約マトリクスに基づいて、前記構造マトリクスに含まれる個々の構造的特徴のサブセットを決定するステップ、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記モデルが、前記個々の構造的特徴のサブセットに対応する1つ以上のパラメータを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の統計操作は、前記第1の値のサブセットについて、合計、平均、標準偏差、スキュー、クルトシス、最小、最大、積、絶対値の対数の合計、及び絶対値の対数の平均からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記構造的特徴要約マトリクスを用いて、隠れ層ノードを低減する人工ニューラルネットワークを用いた、前記新しい変異体分子の分子特性のさらなる値を決定する、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記分子特性は、抗体融解温度、化学的非折り畳み挙動、溶解度、粘度、凝集挙動及び高分子量の比率からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記親分子の残基の変化を示す入力を取得し、前記新しい変異体分子に対する修飾された残基の数を生成するステップ;かつ
前記修飾された残基の数の各修飾された残基について、構造的特徴各々の個々の値を決定することにより特徴ベクトルを生成ステップ;
を含む、請求項1に記載の方法であって、ここで、
前記新しい変異体分子に対する前記分子特性のさらなる値は、前記特徴ベクトルに基づいて決定される、方法。
【請求項9】
前記新しい変異体分子の各残基について、前記新しい変異体における各残基が前記親分子の対応する位置の残基に対して修飾されているかどうかを示す配列を含む新しい変異体情報を生成するステップを含む、請求項1に記載の方法であって、ここで、
前記新しい変異体分子に対する前記分子特性のさらなる値は、前記新しい変異体情報に基づいて生成される、方法。
【請求項10】
前記第1の変異体分子の変異残基に隣接する残基の多様性に関する構造的特徴の値を、以下の:
前記変異残基の第1の距離内にある疎水性残基の数を決定すること;
前記変異残基の第2の距離内にある酸性残基の数を決定すること;
前記変異残基の第3の距離内にある塩基性残基の数を決定すること;及び
前記変異残基の第4の距離内にある中性残基の数を決定すること;
により決定する、さらなるコンピュータ実行可能命令を格納する、請求項1に記載の方法であって、ここで、第1の距離、第2の距離、第3の距離、および第4の距離は、前記第1の変異体分子の3次構造に基づく、方法。
【請求項11】
前記第1の変異体分子の変異残基の構造的特徴の値を以下の:
前記変異残基が前記第1の変異体分子の正に帯電した領域に位置することを決定すること;又は
前記変異残基が前記第1の変異体分子の負に帯電した領域に位置することを決定すること;
により決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の変異体分子の、対応する前記親分子の初期残基とは異なる各修飾された残基の構造的特徴の値を、各々対応する位置で集計することにより、特徴ベクトルを生成するステップ;
前記特徴ベクトルに前記第1の変異体分子の分子特性の値を割り当てて、トレーニングデータを作成するステップ;及び
前記トレーニングデータを用いて前記モデルを生成するステップ;
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記親分子の残基に対する修飾を示す入力を取得して、前記新しい変異体分子に対する修飾された残基の数を生成するステップ;及び
前記修飾された残基の数の各修飾された残基について、構造的特徴各々の個々の値を決定することにより、特徴ベクトルを生成するステップ;
を含む、請求項1に記載の方法であって、ここで、
前記新しい変異体分子に対する前記分子特性のさらなる値は、前記特徴ベクトルに基づいて決定される、方法。
【請求項14】
1つ以上の処理ユニット;及び
1つ以上の非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含む、コンピューティングシステムであって、
前記1つ以上の非一時的コンピュータ可読記憶媒体は、前記1つ以上の処理ユニットによって実行されると、前記コンピューティングシステムに、以下の:
第1の変異体分子のための構造マトリクスを生成することであって、ここで、前記第1の変異体分子は、親分子の対応する第1の位置の第1の初期残基とは異なる第1の配列の第1の修飾された残基あり、前記構造マトリクスは、前記第1の変異体分子の残基に対する個々の構造的特徴について各々第1の値を示し;
前記構造マトリクスを修飾して、前記第1の変異体分子の修飾された構造マトリクスを生成することであって、ここで、前記修飾された構造マトリクスは、前記個々の構造的特徴についての前記第1の値のサブセットを示し、ここで、前記第1の値のサブセットは、前記第1の修飾された残基に対応
前記第1の変異体分子の分子特性の値を、前記修飾された構造マトリクスに含まれる前記第1の値のサブセットに割り当てること;
前記個々の構造的特徴についての前記第1の値のサブセット及び前記第1の変異体分子についての分子特性の値を含むトレーニングデータを生成すること;
前記トレーニングデータを用いて、前記親分子に対応する新しい変異体分子に対する分子特性の値を予測するモデルを生成すること;
前記新しい変異体分子の新しい配列の第2の修飾された残基についての前記個々の構造的特徴に対する第2の値を示す第2の修飾された構造マトリクスを生成することであって、前記第2の修飾された残基は、親分子の初期配列の対応する第2の位置の第2の初期残基とは異な;かつ、
前記第2の修飾された構造マトリクスに前記モデルを適用して、前記新しい変異体分子の分子特性のさらなる値を決定すること;
を行わせるためのコンピュータ実行可能命令を記憶する、コンピューティングシステム。
【請求項15】
前記モデルは、複数の隠れ層がある人工ニューラルネットワークを用いて生成され、前記モデルの次元数は、遺伝的アルゴリズム又は相関ベースの選択アルゴリズムの少なくとも1つを用いて低減される、請求項14に記載のコンピューティングシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
現代のバイオテクノロジーに基づき画期的な治療法を開発するコストは非常に高いため、このような治療法はほとんどの人々には利用できない。高コストの一因は、抗体のような分子の新たな変異体の分子特性を同定することが困難なことにある。分子の分子特性を決定するのに役立つ様々なツールが利用可能であるが、それらは、その変異体を合成できることに大部分を依存しており、それ自体が高価であり、時間がかかる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0002】
図1】いくつかの実施形態におけるMPPシステムのコンポーネントを示すブロック図である。
【0003】
図2】いくつかの実施形態におけるMPPシステムのモデル生成コンポーネントの処理を示すフロー図である。
【0004】
図3】いくつかの実施形態におけるMPPシステムの構造的特徴情報収集コンポーネントの処理を示すフロー図である。
【0005】
図4】いくつかの実施形態におけるMPPシステムの変異体情報収集コンポーネントの処理を示すフロー図である。
【0006】
図5】いくつかの実施形態におけるMPPシステムの特徴ベクトル生成コンポーネントの処理を示すフロー図である。
【0007】
図6】いくつかの実施形態におけるMPPシステムの特徴生成コンポーネントの処理を示すフロー図である。
【0008】
図7】いくつかの実施形態におけるMPPシステムの分子特性予測コンポーネントの処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
親分子(例えば抗体分子)の新たな変異体の分子特性を、その新たな変異体の合成前に推定するための方法及びシステムが提供される。いくつかの実施形態において、分子特性予測(「MPP」:molecular property prediction)システムは、分子の一組の変異体について測定された分子特性と併せて、親分子(分子と称する)中の残基(synthesis)の様々な構造的特徴を使用する。MPPシステムは、変異体の各々について構造モデルを計算する必要なく、新たな変異体の分子特性を予測することをサポートする。MPPシステムはまた、一般的な抗体の分子特性を予測することを試みる、はるかに複雑な「全分子」モデルの作成を回避する。MPPシステムは、「全分子」モデルよりも、所与の分子により固有かつよりロバストな予測モデルを提供する。いくつかの実施形態において、MPPシステムは、これらに限定されないが、抗体融解温度(「Tm」)、変異体の発現及び精製中に予測される高分子量のパーセンテージ(「HMW」)、化学的展開挙動(chemical unfolding behavior,)、溶解性(solubility)、粘性及び凝集挙動(例えば自己相互作用ナノ粒子分光法「SINS」(nanoparticle spectroscopy))等を含む分子特性を予測する。
【0010】
いくつかの実施形態において、MPPシステムは、分子の変異体の分子特性を予測するためのモデルを生成する。MPPシステムは、分子の残基の構造的特徴の値にアクセスする。例えば分子の構造的特徴は、電荷パッチ又は疎水性パッチにおける残基の関与(participation)及び隣接する残基の基多様性(group diversity)を含み得る。分子の各変異体について、MPPシステムは、分子の残基配列内のどの残基が変異体を形成するように修飾(modify)されたか及び変異体の分子特性の値を示す、変異体情報(variant information)にアクセスする。各構造的特徴について、MPPシステムは、変異体を形成するために修飾された分子の残基の構造的特徴の値を集計し、変異体の特徴ベクトルを生成する。MPPシステムは、変異体の分子特性の値を特徴ベクトルに割り当てる。各変異体の特徴ベクトル及び割り当てられた値はトレーニングデータを形成する。次に、MPPシステムは、トレーニングデータを使用して、分子特性の値を予測するための予測モデルを生成する。例えばMPPシステムは、線形回帰技術、ニューラルネットワーク、ランダムフォレスト技術、Lasso回帰技術及び部分最小二乗回帰技術を用いて予測モデルを生成することができる。MPPシステムは、各分子特性について別個の予測モデルを生成することができる。
【0011】
予測モデルが作成された後、MPPシステムは、新たな変異体を合成する必要なく、予測モデルを使用して分子の新たな変異体の分子特性の値を予測し、将来の変異体の作成及び実験を案内するのを助ける情報を提供することができる。MPPシステムは、(例えばあるアミノ酸を別のアミノ酸に置き換えることによって)変化することになる分子の残基の指示(indication)を入力する。MPPシステムは、トレーニングデータの特徴ベクト
ルが生成される方法と同様の方法で、変異体のための新しい特徴ベクトルを生成する。次に、MPPシステムは、分子特性の予測モデルを新しい特徴ベクトルに適用して分子特性の値を予測する。
【0012】
図1は、いくつかの実施形態におけるMPPシステムのコンポーネントを示すブロック図である。MPPシステム100は、生成コンポーネント110、予測コンポーネント120、生成データ130、モデルデータ140及び予測データ150を含む。生成コンポーネントは、モデル生成コンポーネント111、構造的特徴情報収集コンポーネント112、変異体情報収集コンポーネント113、特徴ベクトル生成コンポーネント114及び特徴生成コンポーネント115を含む。モデル生成コンポーネント111は、構造的特徴情報収集コンポーネント112、変異体情報収集コンポーネント113及び特徴ベクトル生成コンポーネント114を呼び出し、次いでモデルをトレーニングすることによって、モデルの全体的な生成を制御する。構造的特徴情報収集コンポーネント112は、分子の残基についての構造的特徴の値を収集する。構造的特徴情報は、各残基の行と、分子の残基の特徴の値を示すエントリを有する各特徴の列とを含む、構造マトリクス133に格納される。変異体情報収集コンポーネント113は、分子のどの残基が修飾されたか及び変異体の各分子特性の値を含む、分子の変異体に関する情報を収集する。修飾された変異体に関連する情報は、各変異体の行と、残基がその変異体において修飾されているか否かを示すエントリを有する、各残基の列とを含む、残基マトリクス132に格納される。分子特性の値に関連する情報は、各変異体の行と、各変異体の各分子特性の値を示すエントリを有する各分子特性の列とを含む、分子特性マトリクス131に格納される。特徴ベクトル生成コンポーネント114は、各変異体について特徴の特徴ベクトルを生成する。変異体の特徴ベクトルは、各構造的特徴について、修飾されたその変異体の残基のその構造的特徴の値から生成される1つ以上の統計値(statistics)を含む。変異体の特徴ベクトルを生成するために、特徴ベクトル生成コンポーネント114は、その変異体についての修飾残基構造マトリクス134を生成する。変異体についての修飾残基構造マトリクス134は、その変異体の各々の修飾された残基の列と、分子のその残基におけるその構造的特徴の値を示すエントリを有する各特徴の行とを含む。次に、特徴生成コンポーネント115は、ある変異体について、修飾残基構造マトリクス134からの値を集計する。特徴生成コンポーネント115は、各変異体の行と、特徴の値を示すエントリを有する各特徴の列とを含む、構造的特徴要約(structural feature summary)マトリクス135を生成することができる。特徴の値は、例えばその変異体の合計、平均及び標準偏差といった統計値であってよい。構造的特徴要約マトリクス135の各行は、変異体の特徴ベクトルを表す。次に、モデル生成コンポーネントは、変異体の各特徴ベクトルに、分子特性マトリクス131からのその変異体の分子特性の値を割り当てる。
【0013】
次に、モデル生成コンポーネント111は、割り当てられた値を有する特徴ベクトルを使用して予測モデルをトレーニングする。モデル生成コンポーネント111は、トレーニング中に学習されたパラメータをモデルパラメータストア141に格納する。予測モデルが生成されると、分子特性予測コンポーネント121を使用して、新たな変異体についての分子特性の値を予測することができる。分子特性予測コンポーネントは、分子の各残基について、新たな変異体内の対応する残基が修飾されているか否かを示す、残基アレイ151を入力する。分子特性予測コンポーネント121は、特徴ベクトル生成コンポーネントを呼び出して、新たな変異体のための新たな特徴ベクトルを生成する。次に、分子特性予測コンポーネント121は、モデルを新たな特徴ベクトルに適用して新たな変異体の分子特性の値を予測する。
【0014】
以下のマトリクスは、MPPシステムの様々なマトリクスの例示的な値を提供する。構造マトリクスは、変異体2について作成される。修飾残基構造マトリクスは、残基マトリクスの「真」の値を有するエントリに対応する構造マトリクスの3つの行を含む。構造的特徴要約マトリクスは、各変異体の行を含み、各統計値のついての列、すなわち、疎水性領域、正領域(positive area)及び溶媒アクセシビリティ(「SA」:solvent accessibility)構造的特徴の各々についての最大、平均及び標準偏差の列を有する。例えば変異体2の正領域の最大、平均及び標準偏差(「SD」(standard deviation))は、それぞれ180、60及び84.853である。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0015】
MPPシステムが実装され得るコンピューティングシステムは、中央処理ユニット、入力デバイス、出力デバイス(例えばディスプレイデバイス及びスピーカ)、ストレージ(例えばメモリ及びディスクドライブ)、ネットワークインタフェース、グラフィックス処理ユニット等を含んでよい。入力デバイスは、キーボード、ポインティングデバイス、タッチスクリーン、ジェスチャ認識デバイス(例えばエアジェスチャ用)、ヘッド及びアイトラッキングデバイス、音声認識用マイクロホン等を含んでよい。コンピューティングシステムは、デスクトップコンピュータ、ラップトップ、タブレット、サーバ等を含んでよい。コンピューティングシステムは、コンピュータ読取可能記憶媒体及びデータ伝送媒体を含むコンピュータ読取可能媒体にアクセスすることができる。コンピュータ読取可能記憶媒体は、一時的な伝搬信号を含まない有形の記憶手段である。コンピュータ可能な記憶媒体の例には、プライマリメモリ、キャッシュメモリ、セカンダリメモリ(例えばDVD)及び他のストレージ等のメモリが含まれる。コンピュータ読取可能記憶媒体は、その上に記録されていてもよく、あるいはMPPシステムを実装するコンピュータ実行可能命令又はロジックで符号化されていてもよい。データ伝送媒体は、有線又は無線接続を介して、一時的な伝搬信号又は搬送波(例えば電磁気)によりデータを伝送するために使用される。
【0016】
MPPシステムは、1つ以上のコンピュータ、プロセッサ又は他のデバイスによって実行されるプログラムモジュール及びコンポーネントのような、コンピュータ実行可能命令の一般的な文脈で説明されてもよい。一般に、プログラムモジュール又はコンポーネント
は、特定のタスクを実行する又は特定のデータタイプを実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、データ構造等を含む。典型的には、プログラムモジュールの機能性は、様々な実施例において所望のとおりに組み合わされるか又は分散されてもよい。MPPシステムの側面は、例えば特定用途向け集積回路又はフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(「FPGA」)を使用して、ハードウェアで実装されてよい。
【0017】
いくつかの実施形態において、実際の分子特性は、各々の以前に合成された変異体について測定され(すなわち、トレーニングに使用される)、「Y値」と呼ばれる。分子特性マトリクス131において、各変異体(行)及び各分子特性(列として-例えばTm、HMW、SINS)について別個の値が収集される。
【0018】
いくつかの態様において、残基マトリクス132は、所与の変異体を作るために親分子内のどの残基が修飾されたかを記述するブール(Boolean)マトリクスである。このマトリクスの各行は、1つの変異体を表し、各列は、所与の残基が突然変異したかどうかを示すブールベクトルを表す。
【0019】
いくつかの態様において、分子の修飾に利用可能な各残基についての分子の構造的特徴は、構造マトリクス133に格納される。構造マトリクス133は、個々の構造的特徴を表す列と、残基としての行を含む。構造マトリクス133は、各残基について以下のような構造的特徴の値を抽出することによって、分子の構造モデルから導き出すことができる:
・正又は負の荷電パッチ(charge patches)又は疎水性パッチにおける残基の関与
・隣接する残基の基の多様性(例えば所与の距離内の疎水性、酸性、塩基性又は中性の残基の数-距離は三次構造に基づく)
・残基の溶媒アクセシビリティ(分子の表面で高い)
・領域/チェーン・インタフェース(chain interface)への近さ(例えばFv及び定常ドメイン・インタフェース(constant domain interface)への距離)
・二次構造環境
・元の残基(分子内)と新たな残基(変異体内)の長さ又はサイズ
・元の残基と新たな残基のpKa(すなわち、酸性度)
【0020】
MPPシステムの目標は、以前に合成された変異体のセット(較正セットとして知られている)の両方について所与の分子特性を推定し、新たな変異体の分子特性を(これらの分子特性の合成及び測定なしに)推定するために使用することができる、構造的特徴のサブセットを同定できることである。MPPシステムは、残基マトリクス132を使用して、所与の変異体について修飾された残基について構造マトリクス133の列を抽出することによって始まる。修飾残基構造マトリクス134は、その修飾された残基の数と同じ数の行を有する。修飾残基構造マトリクス134は、必ずしもこれらに限定されないが、合計、平均、標準偏差、歪み(skew)、尖度、最小、最大、積及び絶対値の対数の合計及び平均(例えば合計又は平均される元の値の符号で事後乗算された(post-multiplied)対数)を含む一組の統計メトリックを各列に適用することによって、単一の行に圧縮される。これらの演算の各々をそれぞれの元の構造的特徴の列に適用した結果、統計値は新しい列に向けられる。したがって、それぞれの元の構造的特徴に対して、(例えば上記の10個の統計メトリックのセットが与えられると)10個の新しい列がある。したがって、MPPシステムは、残基を特別に列挙する必要なく、修飾された残基のセットの分子変異体を捕捉する。すべての変異体にわたって反復した後、MPPシステムは、各行が変異体であり、列が、修飾された構造的特徴の各セットの統計的要約である、構造的特徴要約マトリクス135を生成する。次に、構造的特徴要約マトリクス135は、Y値(例えば分子特性)を予測するために、次元低減回帰又は分類モデル(例えば部分最小二乗法又は隠れ層ノードを低減するニューラルネットワーク)で使用されるか、あるいは変数の数を低減
するために変数選択方法(variable selection method)(例えば遺伝的アルゴリズム又は相関ベースの選択)で使用される。後者の場合、回帰モデル又は分類モデルでは、選択された変数のみが使用される。
【0021】
いくつかの実施形態において、MPPシステムは、分子一般化モデルをサポートすることができる。各分子は、所与の分子特性に対して異なる開始値を有し、かつ各分子は修飾された残基の特性に対して異なる感度を有する可能性があるため、上記のモデルは、固有の親分子にのみ適用可能であることが予想される。しかしながら、いくつかの特性予測は、分子エンコーディング変数を加えることによって、あるいは先天的補正(a priori corrections)を行うこと、例えばY値を親分子に対して相対的にすることによって、分子固有性をより低くすることができる。そのような場合、異なる分子についての複数の構造的特徴要約マトリクスを、それらの対応するY値と一緒に組み合わせて、単一モデルで処理することができる。例えば組み合された構造的特徴要約マトリクスは、変異体の親分子を同定するための列を含んでもよい。このような場合、MPPシステムは、複数の隠れ層を有するニューラルネットワークのような深層学習スタイルのモデルを使用してもよい。
【0022】
図2は、いくつかの実施形態におけるMPPシステムのモデル生成コンポーネントの処理を示すフロー図である。モデル生成コンポーネント200は、予測で使用するために分子についてのモデルを生成するために呼び出される。ブロック201において、コンポーネントは、構造的特徴情報収集コンポーネントを呼び出して分子の構造的特徴を収集する。ブロック202において、コンポーネントは、変異体情報収集コンポーネントを呼び出して、モデルを生成するために使用される、各変異体についての変異体情報を収集する。ブロック203~ブロック206において、コンポーネントは、各変異体について特徴ベクトルの生成をループする。ブロック203において、コンポーネントは次の変異体を選択する。決定ブロック204において、すべての変異体がすでに選択されている場合、コンポーネントはブロック207に続き、そうでなければ、コンポーネントはブロック205に続く。ブロック205において、コンポーネントは、特徴ベクトル生成コンポーネントを呼び出して変異体の指示を渡す。ブロック206において、コンポーネントは、変異体の分子特性の値を特徴ベクトルに割り当てて、特徴ベクトルと割り当てられた値とのトレーニングデータを形成する。次いで、コンポーネントは、ブロック203にループして次の変異体を選択する。ブロック207において、コンポーネントは、トレーニングデータを使用して予測モデルをトレーニングして完了する。
【0023】
図3は、いくつかの実施形態におけるMPPシステムの構造的特徴情報収集コンポーネントの処理を示すフロー図である。構造的特徴情報収集コンポーネント300は、分子の構造的特徴を収集するために呼び出される。ブロック301において、コンポーネントは分子の次の残基を選択する。決定ブロック302において、すべての残差がすでに選択されている場合、コンポーネントは完了し、そうでなければ、コンポーネントはブロック303に続く。ブロック303において、コンポーネントは残基の次の構造的特徴を選択する。決定ブロック304において、選択された残基のすべての構造的特徴がすでに選択されている場合、コンポーネントはブロック301にループして次の残基を選択し、そうでなければ、コンポーネントはブロック305に続く。ブロック305において、コンポーネントは、選択された残基の構造的特徴の値にアクセスする。ブロック306において、コンポーネントは、その値を構造マトリクス133に格納し、次いで、ブロック303にループして次の構造的特徴を選択する。
【0024】
図4は、いくつかの実施形態におけるMPPシステムの変異体情報収集コンポーネントの処理を示すフロー図である。変異体情報収集コンポーネント400は、どの残基が修飾されたかの指示とともに、変異体の分子特性を収集するために呼び出される。ブロック401において、コンポーネントは次の変異体を選択する。決定ブロック402において、
すべての変異体がすでに選択されている場合、コンポーネントは完了し、そうでなければ、コンポーネントはブロック403に続く。ブロック403において、コンポーネントは、分子の次の残基を選択する。決定ブロック404において、すべての残基がすでに選択されている場合、コンポーネントはブロック401にループして次の変形を選択し、そうでなければ、コンポーネントはブロック405に続く。決定ブロック405において、変異体で残差が修飾されている場合、コンポーネントはブロック406に続き、そうでなければ、コンポーネントはブロック407に続く。ブロック406において、コンポーネントは、選択された変異体で残基が修飾されたことを示すように、選択された変異体及び選択された残基についてのエントリを残基マトリクス132に設定する。ブロック407において、コンポーネントは次の分子特性を選択する。決定ブロック408において、すべての分子特性がすでに選択されている場合、コンポーネントは、ブロック403にループして分子内の次の残基を選択し、そうでなければ、コンポーネントはブロック409に続く。ブロック409において、コンポーネントは、分子特性の値にアクセスする。ブロック410において、コンポーネントは、その値を分子特性マトリクス131に格納し、次いでブロック407にループして次の分子特性を選択する。
【0025】
図5は、いくつかの実施形態におけるMPPシステムの特徴ベクトル生成コンポーネントの処理を示すフロー図である。特徴ベクトル生成コンポーネント500は、渡された変異体の特徴ベクトルを生成するために呼び出される。ブロック501において、コンポーネントは次の構造的特徴を選択する。決定ブロック502において、すべての構造的特徴がすでに選択されている場合、コンポーネントは完了し、そうでなければ、コンポーネントはブロック503に続く。ブロック503において、コンポーネントは、渡された変異体のために次の修飾残基を選択する。決定ブロック504において、すべての修飾残基がすでに選択されている場合、コンポーネントはブロック507に続き、そうでなければ、コンポーネントはブロック505に続く。ブロック505において、コンポーネントは、選択された構造的特徴の値にアクセスする。ブロック506において、コンポーネントは、その値を、その変異体についての修飾残基構造マトリクス134に格納し、次いで、ブロック503にループして次の修飾残基を選択する。ブロック507において、コンポーネントは、特徴生成コンポーネントを呼び出して、修飾残基構造マトリクス134に格納された選択された構造的特徴の値から変異体の特徴を生成し、次いでブロック501にループして次の構造的特徴を選択する。
【0026】
図6は、いくつかの実施形態におけるMPPシステムの特徴生成コンポーネントの処理を示すフロー図である。特徴生成コンポーネント600は、変異体及び構造的特徴の指示を渡され、その構造的特徴に基づいて、統計値ごとに、変異体の特徴ベクトルについて特徴を生成する。ブロック601において、コンポーネントは次の統計値を選択する。決定ブロック602において、すべての統計値がすでに選択されている場合、コンポーネントは完了し、そうでなければ、コンポーネントはブロック603に続く。ブロック603において、コンポーネントは、渡された変異体の修飾残基構造マトリクス134内の値に基づいて、変異体の構造的特徴について、選択された統計値を生成する。ブロック604において、コンポーネントは、構造的特徴要約マトリクス135内に統計値を格納し、次いでブロック601にループして次の統計値を選択する。
【0027】
図7は、いくつかの実施形態におけるMPPシステムの分子特性予測コンポーネントの処理を示すフロー図である。特性予測コンポーネント700は、新たな変異体の分子特性を予測するために呼び出される。新たな変異体は、修飾された残基によって示される。ブロック701において、コンポーネントは、特徴ベクトル生成コンポーネントを呼び出して、残基アレイ151によって示されるように、修飾残基に基づいて、新たな変異体の特徴ベクトルを生成する。ブロック702では、コンポーネントは、予測モデルを特徴ベクトルに適用して、新たな変異体の分子特性の値を生成する。ブロック703において、分子特性の値のコンポーネントを出力し、次いで完了する。
【0028】
以下の段落では、MPPシステムの側面の様々な実施形態について説明する。MPPシステムの実装は、実施形態の任意の組合せを採用してよい。以下で説明される処理は、MPPシステムを実装するコンピュータ実行可能記憶媒体に記憶されたコンピュータ実行可能命令を実行するプロセッサを有するコンピューティングデバイスによって実行されてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態において、分子の変異体の分子特性を予測するためのモデルを生成するためにコンピューティングシステムによって実行される方法が提供される。この方法では、分子の残基の構造的特徴の値にアクセスする。分子の複数の変異体の各々について、本方法は、分子の残基配列内のどの残基が変異体を形成するように修飾されたか及びその変異体の分子特性の値を示す変異体情報にアクセスする。分子の複数の変異体の各々について、本方法はまた、構造的特徴ごとに、変異体を形成するように修飾された分子の残基の構造的特徴の値を集計し、変異体の特徴ベクトルを形成する。分子の複数の変異体の各々について、方法は、その変異体の分子特性の値を特徴ベクトルに割り当て、ここで、特徴ベクトル及び割り当てられた値はトレーニングデータを形成する。次いで、この方法は、複数の変異体に対するトレーニングデータを用いて分子特性の値を予測するためのモデルを生成する。いくつかの実施形態では、本方法は更に、分子の残基配列内のどの残基が変異体を形成するよう修飾されたかを示す新たな変異体情報にアクセスすることによって、新たな修飾体の分子特性の値を予測し;各構造的特徴について、新たな変異体を形成するよう修飾された分子の残基の構造的特徴の値を集計して、新たな変異体の新たな特徴ベクトルを形成し;新たな特徴ベクトルにモデルを適用して、新たな変異体の分子特性の値を予測する。いくつかの実施形態では、モデルは、入力としてトレーニングデータを用いて線形回帰技術を使用して生成される。いくつかの実施形態では、モデルは、トレーニングデータを入力として用いてニューラルネットワークを学習することによって生成される。いくつかの実施形態では、モデルの生成は、トレーニングデータの次元を低減することを含む。いくつかの実施形態では、分子はタンパク質である。いくつかの実施形態において、変異体は、分子のアミノ酸を異なるアミノ酸で置換することによって形成される。いくつかの実施形態において、分子特性は、抗体融解温度、高分子量のパーセンテージ、化学的展開挙動、溶解性、粘性及び凝集挙動からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、構造的特徴は、荷電パッチ又は疎水性パッチにおける残基の関与、隣接する残基の基多様性、残基の溶媒アクセシビリティ、領域/チェーン・インタフェースへの近さ、二次構造環境、分子及び変異体における残基のサイズ、並びに分子及び変異体における残基の酸性度からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、構造的特徴の値の集計は、和、平均、標準偏差、歪み、尖度、最小、最大、積、絶対値の対数の和、絶対値の対数の平均からなる群から選択される統計を生成する。
【0030】
いくつかの実施形態において、分子の新たな変異体の分子特性の値を予測するためのコンピューティングシステムが提供される。コンピューティングシステムは、コンピュータ実行可能命令を記憶する1つ以上のコンピュータ読取可能記憶媒体と、1つ以上のコンピュータ読取可能媒体に記憶されたコンピュータ実行可能命令を実行するための1つ以上のプロセッサとを含む。コンピュータ実行可能命令は、分子の残基配列内のどの残基が変異体を形成するように修飾されたかを示す変異体情報にアクセスするようにコンピューティングシステムを制御する。分子の残基の複数の構造的特徴の各々について、コンピュータ実行可能命令は、変異体を形成するように修飾された分子の残基の構造的特徴の値を集計し、新たな変異体の新たな特徴ベクトルを形成するように、コンピューティングシステムを制御する。コンピュータ実行可能命令は、モデルを新たな特徴ベクトルに適用して、新たな変異体の分子特性の値を予測するように、コンピューティングシステムを制御する。モデルは、分子の変異体の構造的特徴の値から導出される特徴ベクトルと、これらの変異体の分子特性の値とを備えるトレーニングデータを用いて生成される。いくつかの実施形態では、コンピュータ実行可能命令は、分子の残基の構造的特徴の値にアクセスするように、コンピューティングシステムを更に制御する。分子の複数の変異体の各々について、コンピュータ実行可能命令は、分子の残基配列内のどの残基が変異体を形成するよう修飾されたか及び変異体の分子特性の値を示す、変異体情報にアクセスし;各構造的特徴について、変異体を形成するよう修飾された分子の残基の構造的特徴の値を集計して、変異体の特徴ベクトルを形成し;変異体の分子特性の値を特徴ベクトルに割り当て、ここで、特徴ベクトル及び割り当てられた値がトレーニングデータを形成するように、コンピューティングシステムを制御する。コンピュータ実行可能命令は、複数の変異体についてのトレーニングデータを使用して、分子特性の値を予測するモデルを生成するように、コンピューティングシステムを制御する。いくつかの実施形態において、モデルは、入力としてトレーニングデータを用いて線形回帰技術を使用して生成される。いくつかの実施形態では、モデルは、トレーニングデータを入力として用いてニューラルネットワークを学習することによって生成される。いくつかの実施形態では、コンピュータ実行可能命令は、トレーニングデータの次元を低減するよういコンピューティングシステムを更に制御する。いくつかの実施形態では、分子はタンパク質である。いくつかの実施形態では、変異体は、分子のアミノ酸を異なるアミノ酸で置換することによって形成される。いくつかの実施形態において、分子特性は、抗体融解温度、高分子量のパーセンテージ、化学的展開挙動、溶解性、粘性及び凝集挙動からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、構造的特徴は、荷電パッチ又は疎水性パッチにおける残基の関与、隣接する残基の基多様性、残基の溶媒アクセシビリティ、領域/チェーン・インタフェースへの近さ、二次構造環境、分子及び変異体における残基のサイズ、並びに分子及び変異体における残基の酸性度からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、コンピュータ実行可能命令は、構造的特徴の値を集計し、和、平均、標準偏差、歪み、尖度、最小、最大、積、絶対値の対数の和、絶対値の対数の平均からなる群から選択される統計値を更に生成するように、コンピューティングシステムを制御する。
【0031】
本主題は、構造的特徴及び/又は動作に特有の言語で記載されているが、添付の請求の範囲において定義された主題は、必ずしも上述の特有の特徴又は動作に限定されないことを理解されたい。むしろ、上述の特定の特徴及び動作は、請求項を実装する例示的な形態として開示されている。したがって、本発明は、添付の請求項によるもの以外は限定されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7