(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】引出しガイド用の走行キャリッジ
(51)【国際特許分類】
A47B 88/493 20170101AFI20231228BHJP
F16C 29/04 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A47B88/493
F16C29/04
(21)【出願番号】P 2022504613
(86)(22)【出願日】2020-06-29
(86)【国際出願番号】 AT2020060256
(87)【国際公開番号】W WO2021011974
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-03-18
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルーム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Julius Blum GmbH
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1, 6973 Hoechst, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】パスカル ベアヒトルト
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ボッホ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス イェーガー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファニー シュッツ
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル ペーターマイアー
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/040954(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013111076(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102017119909(DE,A1)
【文献】特表2013-533002(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2016-0002733(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 88/493
F16C 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引出しガイド(4)であって、第1のガイドレール(9)と、該第1のガイドレール(9)に対して相対的に移動可能に支持された少なくとも1つの別のガイドレール(10,11)と、少なくとも1つの走行キャリッジ(14)とを備え、該少なくとも1つの走行キャリッジ(14)は、前記第1のガイドレール(9)と前記別のガイドレール(10,11)との間で移動可能に支持されている、引出しガイド(4)において、
前記走行キャリッジ(14)
は、基体(18)と、該基体(18)内にまたは該基体(18)に配置された、荷重を伝達する複数の転動体(15a,15b,15c,15d)であって、第1の方向に向けられた回転軸線(X)を中心として回転可能に前記基体(18)に支承された転動体(15a,15b,15c,15d)と、第2の方向に向けられた回転軸線(Y)を中心として回転可能に前記基体(18)に支承された第1のローラ(16a)および少なくとも1つの第2のローラ(16b)とを備え、前記第2の方向に向けられた前記回転軸線(Y)は、前記第1の方向に向けられた前記回転軸線(X)に対して横方向に延びて
おり、
前記第1の方向に向けられた前記回転軸線(X)は、前記走行キャリッジ(14)の組付け位置で水平方向に延びており、かつ/または前記第2の方向に向けられた前記回転軸線(Y)は、前記走行キャリッジ(14)の前記組付け位置で鉛直方向に延びており、
前記第1のローラ(16a)および前記第2のローラ(16b)は、前記走行キャリッジ(14)の走行方向において整列して配置されて
おり、
前記第1のガイドレール(9)は、少なくとも1つの第1の軌道ウェブ(17a)を有し、該第1の軌道ウェブ(17a)に沿って前記走行キャリッジ(14)は移動可能に支持されており、前記走行キャリッジ(14)の前記第1のローラ(16a)は、前記走行キャリッジ(14)の前記第2のローラ(16b)よりも大きな直径を有し、前記第1のローラ(16a)は、前記第1のガイドレール(9)の前記第1の軌道ウェブ(17a)に遊びなしに接触しており、前記第2のローラ(16b)は、前記第1のガイドレール(9)の前記第1の軌道ウェブ(17a)に対して遊びを伴って案内されていることを特徴とする、
引出しガイド(4)。
【請求項2】
前記第1のローラ(16a)と前記第2のローラ(16b)とは、互いに異なる材料から製造されていることを特徴とする、請求項1記載の
引出しガイド(4)。
【請求項3】
前記第1のローラ(16a)は、前記第2のローラ(16b)よりも軟質の材料から形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載の
引出しガイド(4)。
【請求項4】
前記第1のローラ(16a)は、2つの構成要素から成るローラとして構成されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の
引出しガイド(4)。
【請求項5】
前記第1のローラ(16a)は、内側に位置するコア(20)と、該コア(20)と別体の外側のスリーブ(21)とを有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の
引出しガイド(4)。
【請求項6】
前記コア(20)と前記スリーブ(21)とは、互いに異なる材料または互いに異種のプラスチックから形成されていることを特徴とする、請求項5記載の
引出しガイド(4)。
【請求項7】
前記第1のローラ(16a)はシリコーン材料を含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の
引出しガイド(4)。
【請求項8】
前記転動体(15a,15b,15c,15d)および/または前記ローラ(16a,16b)は、凹部(23a,23b)と、該凹部(23a,23b)内に係合する少なくとも1つの凸部(22a,22b)とを介して、前記走行キャリッジ(14)の前記基体(18)に回転可能に支承されていると共に保持されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の
引出しガイド(4)。
【請求項9】
前記凹部は、前記転動体(15a,15b,15c,15d)および/または前記ローラ(16a,16b)に配設されており、前記少なくとも1つの凸部(22a,22b)は、前記走行キャリッジ(14)の前記基体(18)に配設されていることが特定されていることを特徴とする、請求項8記載の
引出しガイド(4)。
【請求項10】
前記転動体(15a,15b,15c,15d)および/または前記第1のローラ(16a)および/または前記第2のローラ(16b)は円筒形状を有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の
引出しガイド(4)。
【請求項11】
前記第1のガイドレール(9)は、家具本体(2)に取り付けることができることを特徴とする、請求項
1から10までのいずれか1項記載の引出しガイド(4)。
【請求項12】
前記第1のローラ(16a)は、前記第1のガイドレール(9)の前記第1の軌道ウェブ(17a)にも、前記別のガイドレール(10,11)の第2の軌道ウェブ(17b)にも遊びなしに接触しており、かつ/または前記第2のローラ(16b)は、前記第1のガイドレール(9)の前記第1の軌道ウェブ(17a)に対しても、前記別のガイドレール(10,11)の前記第2の軌道ウェブ(17b)に対しても遊びを伴って案内されていることを特徴とする、請求項
1から11までのいずれか1項記載の引出しガイド(4)。
【請求項13】
前記第1のガイドレール(9)の前記第1の軌道ウェブ(17a)と、前記別のガイドレール(10,11)の前記第2の軌道ウェブ(17b)とは、互いに平行に延在していることを特徴とする、請求項
12記載の引出しガイド(4)。
【請求項14】
アセンブリであって、第1の、請求項
1から
13までのいずれか1項記載の引出しガイド(4)と、第2の、請求項
1から
13までのいずれか1項記載の引出しガイド(4)とを備え、前記第1の引出しガイド(4)は、引出し(3)の第1の側に配置可能であり、前記第2の引出しガイド(4)は、前記引出し(3)の第2の側に配置可能であり、前記第1の引出しガイド(4)は、第1の走行キャリッジ(14)を有し、前記第2の引出しガイド(4)は、第2の走行キャリッジ(14)を有し、前記第1の走行キャリッジ(14)および前記第2の走行キャリッジ(14)は、互いに異なる直径を有する少なくとも2つのローラ(16a,16b)をそれぞれ有し、前記第1の走行キャリッジ(14)の大きい方の直径を有する前記ローラ(16a)は、前記第1の走行キャリッジ(14)の後方の端領域に配置されており、前記第2の走行キャリッジ(14)の大きい方の直径を有する前記ローラ(16a)は、前記第2の走行キャリッジ(14)の前方の端領域に配置されている、アセンブリ。
【請求項15】
請求項
1から
13までのいずれか1項記載の少なくとも1つの引出しガイド(4)または請求項
14記載のアセンブリを備える引出し(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引出しガイド用の走行キャリッジであって、基体と、この基体内にまたは基体に配置された、荷重を伝達する複数の転動体であって、第1の方向に向けられた回転軸線を中心として回転可能に基体に支承された転動体と、第2の方向に向けられた回転軸線を中心として回転可能に基体に支承された第1のローラおよび少なくとも1つの第2のローラとを備え、第2の方向に向けられた回転軸線は、第1の方向に向けられた回転軸線に対して横方向に延びている、走行キャリッジに関する。
【0002】
さらに、本発明は、引出しガイドであって、本明細書に記載のような少なくとも1つの走行キャリッジを備える引出しガイドに関する。
【0003】
さらに、本発明は、アセンブリであって、第1の、本明細書に記載のような引出しガイドと、第2の、本明細書に記載のような引出しガイドとを備え、第1の引出しガイドは、引出しの第1の側に配置可能であり、第2の引出しガイドは、引出しの第2の側に配置可能である、アセンブリに関する。
【0004】
最後に、本発明は、このような少なくとも1つの引出しガイドまたは前述したようなアセンブリを備える引出しに関する。
【0005】
冒頭に記載した走行キャリッジは、例えば国際公開第2017/106889号の
図3に示されている。走行キャリッジ24は、転動体25,26,27を有している。荷重を伝達する転動体26は、水平方向に延びる回転軸線を中心として回転可能であり、ローラの形態の転動体25,27は、鉛直方向に延びる回転軸線を中心として回転可能である。
【0006】
引出しガイドには、引出しが通常の使用中に開いたままになる走行キャリッジの欠陥状態が生じることがある。走行キャリッジ欠陥とは、開放運動または閉鎖運動により累積されて、適正な出発位置に対する累積された誤差により規定された走行キャリッジの欠陥位置のことを指す。走行キャリッジ欠陥は、特に引出しガイドの一連の運動中にスリップによって生じてしまうかまたはローラシステムもしくは走行システムにおける弾性に基づき生じてしまう。規定の回数の運動を超えると、走行キャリッジは、引出しが、主として、家具本体に対して相対的に完全に閉鎖された終端位置および/または完全に開放された終端位置に達する前にレールシステムにおける終端ストッパに衝突してしまうほど、最終的に目標位置から遠ざかってしまう。
【0007】
走行キャリッジのローラは、通常、引出しガイドのガイドレールの側方の軌道ウェブに対して僅かな遊びを伴って案内される。こうして、ガイドレールの製造誤差を補償することができ、これによって、ガイドレールの側方の軌道ウェブとのローラの引っ掛かりが阻止される。走行キャリッジのローラと、ガイドレールの対応する軌道ウェブとの間の既存の遊びは、引出しに大きな荷重がかかっている場合には、走行キャリッジ欠陥をほとんど感じさせない。なぜならば、引出しに荷重がかかっていることによって、走行キャリッジのローラがガイドレールに向かって押圧されるからである。ローラとガイドレールとの間の接触によって、走行キャリッジも一緒に移動させられるため、走行キャリッジ欠陥は全く存在していないかまたは僅かしか存在していない。
【0008】
しかしながら、引出しに荷重が全くかかっていないかまたは僅かしかかかっていない場合には、ローラが、ガイドレールの対応する軌道ウェブから少なくとも一時的に離間させられることが起きてしまう。走行キャリッジのローラと引出しガイドのガイドレールとの間に接触がないことによって、走行キャリッジは、引出しガイドの移動時にもはや引き続き移動させられず、これによって、走行キャリッジがその目標位置から逸脱してしまう。引出しが何回も連続して半分または2/3までしか開放されないと、引出しが完全に開放される前に走行キャリッジが引出しガイドの終端ストッパに接触してしまう。引出しを完全に開放するためには、引出し可能なガイドレールを、手による引張り運動によって走行キャリッジを越えて引っ張らなければならない。これによって、引出しガイドの摩擦も開放力も増大してしまう。
【0009】
本発明の課題は、冒頭で述べたカテゴリーの走行キャリッジを、上述した欠点を回避して提供することである。
【0010】
このことは、本発明によれば、請求項1の特徴によって解決される。本発明の別の有利な実施例は、従属請求項に記載してある。
【0011】
本発明によれば、第1のローラが、第2のローラよりも大きな直径を有することが特定されている。
【0012】
対象の本発明の意味での「荷重を伝達する転動体」とは、事実上、引出しの重量を受け止め、引出しガイドが規定通りに組み付けられている場合に、好ましくは水平方向に延びる回転軸線を中心として回転可能である転動体のことを指す。
【0013】
これに対して、対象の本発明の意味での「ローラ」とは、引出しガイドが規定通りに組み付けられている場合に、水平な位置と異なる回転軸線を有する、走行キャリッジのローラのことを指す。好ましくは、走行キャリッジのローラは、鉛直方向に延びる回転軸線を中心として回転可能である。
【0014】
言い換えると、引出しガイドが規定通りに組み付けられている場合に、水平な位置と異なる回転軸線を有する、走行キャリッジの少なくとも1つの第1のローラが、走行キャリッジの第2のローラよりも大きな直径を有している。大きい方の直径を有する第1のローラは、走行キャリッジの組付け状態で、引出しガイドの少なくとも1つの軌道ウェブに遊びなしに接触している。これによって、走行キャリッジが、引出しガイドの相対運動時に、引出し可能なガイドレールの運動に常に連動可能となる。こうして、走行キャリッジの第1のローラが、引出し可能なガイドレールの軌道ウェブに常に遊びなしに当付け可能となる。これによって、走行キャリッジは、引出しガイドのガイドレールに対して常に適正な位置を占めている。
【0015】
好ましくは、走行キャリッジは、大きい方の直径を有する正確に1つの第1のローラを有することが規定されている。こうして、引出しガイドの摩擦抵抗を低いレベルに保つことができる。
【0016】
走行キャリッジの少なくとも1つの第2のローラは、走行キャリッジの第1のローラに比べて小さな直径を有している。第2のローラは、引出しガイドの相対運動時に、この引出しガイドの軌道ウェブに対して間隔を置いて案内されている。当然ながら、走行キャリッジは、第1のローラを基準により小さな直径を有する2つまたはそれ以上の第2のローラを有していてもよい。
【0017】
好ましくは、第1の方向に向けられた回転軸線は、走行キャリッジの組付け位置で実質的に水平方向に延びており、かつ/または第2の方向に向けられた回転軸線は、走行キャリッジの組付け位置で実質的に鉛直方向に延びていることが規定されている。
【0018】
一実施例によれば、第1のローラと第2のローラとは、互いに異なる材料から製造されている。この場合、第1のローラはプラスチック材料から成っており、第2のローラは金属から成っていることが規定されていてよい。代替的には、走行キャリッジの少なくとも2つのローラが、それぞれ異種のプラスチックから成っていることが可能である。
【0019】
第2のローラを基準により大きな直径を有する第1のローラは、第2のローラよりも軟質の、特に弾性的な材料から形成されていてよい。
【0020】
一実施例によれば、第1のローラは、2つの構成要素から成るローラとして構成されていることが規定されていてよい。2つの構成要素から成るローラは、内側に位置するコアと、このコアと別体の外側のスリーブとを有し、好ましくは、スリーブとコアとは、互いに異なる材料または互いに異種のプラスチックから形成されていることが規定されていてよい。
【0021】
第1のローラと第2のローラとは、互いに異なる弾性率および/または互いに異なる摩擦係数を有していてよい。
【0022】
一実施例によれば、走行キャリッジの少なくとも2つのローラは、それぞれ回転対称的に形成されている。この場合、第1のローラと第2のローラとは、互いに異なる直径であることを除いて、互いに等しい幾何学形状を有していてもよいし、互いに異なる幾何学形状を有していてもよい。
【0023】
走行キャリッジの少なくとも1つのローラ、好ましくは第1のローラは、弾性的な材料、好ましくはシリコーン材料を含んでよい。第1のローラの弾性的な特性によって、第1のローラは、引出し可能なガイドレールの少なくとも1つの軌道ウェブに十分な保持力でもって遊びなしに接触することができ、ガイドレールの運動を走行キャリッジに伝達することができる。
【0024】
一実施例によれば、転動体および/または第1のローラおよび/または第2のローラは円筒形状を有することが規定されていてよい。円筒形の転動体およびローラの構成は、両者が引出しガイドのガイドレールに線接触でもって接触しているという利点を有している。これによって、1つには、引出しガイドの支持機能が高められ、もう1つには、走行キャリッジおよびガイドレール相互の側方の安定性が改善される。
【0025】
一実施例によれば、第1のローラは、3mm~5mmの直径を有し、かつ/または第2のローラは、2mm~4mmの直径を有することが規定されていてよい。
【0026】
本発明の更なる詳細および利点は、以下の図面の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1a】引出しと、この引出しを移動可能に支持するための引出しガイドとを備えた家具の斜視図である。
【
図1b】引出しと、この引出しを移動可能に支持するための引出しガイドとを備えた家具の斜視図である。
【
図3b】
図3aの斜視図に対する拡大詳細図である。
【
図4b】
図4aの横断面図に対する拡大詳細図である。
【0028】
図1aには、家具本体2と、この家具本体2に対して相対的に移動可能な引出し3とを備えた家具1の斜視図が示してある。引出し3は、引出しガイド4を介して家具本体2に対して相対的に移動可能に支持されていて、前板5と、中空形材の形態の側壁6a,6bと、引出し底板7と、背壁8とを有している。
【0029】
図1bには、引出しガイド4が斜視図で示してある。この引出しガイド4は第1のガイドレール9を有している。この第1のガイドレール9は、前方の取付け区分12aと後方の取付け区分12bとを介して家具本体2に取り付けることができる。さらに、引出しガイド4は、第1のガイドレール9に対して相対的に移動可能に支持された別のガイドレール10,11を有している。引出しガイド4の第2のガイドレール10は、引出し3に結合されているかまたは解離可能に結合可能である。引出し3を家具本体2に対して相対的に完全に引き出すことを実現するために、任意選択的には、第1のガイドレール9と第2のガイドレール10との間で移動可能に支持された第3のガイドレール11が設けられていてよい。第2のガイドレール10の後方の端部には、フック13が配置されている。このフック13は、第2のガイドレール10の上面から離間させられていて、引出しガイド4の長手方向(L)に延在している。フック13は、引出しガイド4への引出し3の組付け状態で、引出し3に設けられた対応する開口内に係合している。これによって、引出し3の後方の端領域を長手方向(L)に対して横方向で安定させることができる。
【0030】
図2aには、引出しガイド4が第1の鉛直断面図で示してある。引出しガイド4は、家具本体2に取り付けることができる第1のガイドレール9と、引出し3に取り付けることができる第2のガイドレール10と、第1のガイドレール9と第2のガイドレール10との間で移動可能に支持された第3のガイドレール11とを有している。第1のガイドレール9は、一実施例によればC字形の横断面を有していてよい。第2のガイドレール10は、図面ではU字形の横断面を有しており、他方、第3のガイドレール11は、好ましくは鉛直方向に延在する1つのサイドウェブ11aと、高さ方向で互いに離間させられた、好ましくは水平方向に延在する2つの横方向ウェブ11b,11cとを有している。
【0031】
第1のガイドレール9と第3のガイドレール11との間には、少なくとも1つの走行キャリッジ14が移動可能に支持されている。この走行キャリッジ14は、荷重を伝達する複数の転動体15a,15b,15c,15dを有している。これらの転動体15a,15b,15c,15dは、第1の方向に向けられた、好ましくは水平方向に延びる回転軸線(X)を中心として回転可能に支承されている。さらに、走行キャリッジ14は、転動体15a,15b,15c,15dと別体の少なくとも2つのローラ16a,16bを有している。これらのローラ16a,16bは、第2の方向に向けられた、好ましくは鉛直方向に延びる回転軸線(Y)を中心として支承されている。第2の方向は、第1の方向に対して横方向、好ましくは実質的に直交方向に延びている。走行キャリッジ14のローラ16a,16bは、第1のガイドレール9の第1の軌道ウェブ17aと、第3のガイドレール11の第2の軌道ウェブ17bとに沿って可動に支持されている。好ましくは、第1のガイドレール9の第1の軌道ウェブ17aと、第3のガイドレール11の第2の軌道ウェブ17bとは、互いに実質的に平行に延在していることが特定されている。第1のローラ16aの直径は、第1のローラ16aが、第1のガイドレール9の第1の軌道ウェブ17aにも、第3のガイドレール11の第2の軌道ウェブ17bにも遊びなしに接触しているように選択されている。こうして、走行キャリッジ14が、ガイドレール9,10,11相互の相対運動時に、引出し可能なガイドレール10,11の運動に常に連結されていて、これによって、ガイドレール9,10,11に対して予め設定された目標位置を常に占めている。
【0032】
図2bには、
図2aに示した引出しガイド4が第2の鉛直断面図で示してある。
【0033】
図3aには、走行キャリッジ14の一実施例が示してある。この走行キャリッジ14は、基体18と、この基体18内にまたは基体18に支持されていて、第1の方向に向けられた回転軸線(X)を中心として回転可能に支承された、荷重を伝達する複数の転動体15a,15b,15c,15dとを有している。図面では、走行キャリッジ14の長手方向において互いに離間させられたそれぞれ複数の転動体15a,15b,15c,15dが設けられている。転動体15b,15dは、同一の(第1の)走行平面内に位置していて、走行キャリッジ14の長手方向に対して垂直に上方から見た平面において、互いに側方にずらされて配置されている。転動体15aは、第2の走行平面内に、水平方向に延びる回転軸線を中心として回転可能に支承されており、転動体15cは、第3の走行平面内に、水平方向に延びる回転軸線を中心として回転可能に支承されている。第1、第2および第3の走行平面は、高さ方向で互いに離間させられていてよい。これによって、走行キャリッジ14の側方の安定性が高められる。
【0034】
走行キャリッジ14の走行方向における両方の端領域には、好ましくは弾性的に可撓性のばね舌片の形態のそれぞれ1つの緩衝要素19a,19bが設けられている。この緩衝要素19a,19bによって、走行キャリッジ14が、この走行キャリッジ14の走行ストロークを制限するための引出しガイド4の前方の終端ストッパと後方の終端ストッパとに衝突したときに、走行キャリッジ14の運動が緩衝されることになる。
【0035】
走行キャリッジ14は、荷重を伝達する転動体15a,15b,15c,15dのほかに、少なくとも2つのローラ16a,16bを有している。これらのローラ16a,16bは、第2の方向に向けられた回転軸線(Y)、好ましくは実質的に鉛直方向に延びる回転軸線(Y)を中心として回転可能に支持されている。第1のローラ16aは、第2のローラ16bよりも大きな直径を有している。第1のローラ16aは、第1のガイドレール9の第1の軌道ウェブ17aにも、第2のガイドレール11の第2の軌道ウェブ17bにも遊びなしに接触している。これに対して、第2のローラ16bは、第1のガイドレール9の第1の軌道ウェブ17aに対して、および/または第2のガイドレール11の第2の軌道ウェブ17bに対して遊びを介して案内されている。
【0036】
図3aに示した走行キャリッジ14は、この走行キャリッジ14が、構造的な変更なしに、引出し3の第1の側(右側)に配置すべき第1の引出しガイド4にも、引出し3の第2の側(左側)に配置すべき第2の引出しガイド4にも使用可能であるという利点を有している。なお、その際、走行キャリッジ14を鏡像対称的に形成する必要はない。つまり、第2の引出しガイド4では、走行キャリッジ14が単純に180°だけ回転させられている。これによって、第1の引出しガイド4の大きい方の直径を有する第1のローラ16aが、走行キャリッジ4の後方の端領域に配置されており、第2の引出しガイド4の大きい方の直径を有する別の第1のローラ16aが、走行キャリッジ4の前方の端領域に配置されている。
【0037】
図3bには、
図3aにおいて円で囲んだ領域が拡大図で示してある。第1のローラ16aは、図示の実施例では、2つの構成要素から成るローラとして形成されていて、内側に位置するコア20と、このコア20と別体のスリーブ21とを有している。内側のコア20と外側のスリーブ21とは、互いに異なる材料または互いに異種のプラスチックから形成されていてよい。好ましくは、第1のローラ16aと第2のローラ16bとは、それぞれ異なる材料から製造されており、かつ/または第1のローラ16aは、第2のローラ16bよりも軟質の材料から形成されている。さらに、第1のローラ16aは、弾性的な材料、好ましくはシリコーン材料から形成されていることが特定されていてよい。これによって、第1のローラ16aが、ガイドレール9,11の軌道ウェブ17a,17bに遊びなしに当付け可能であり、ひいては、ガイドレール9,11に対する走行キャリッジ14の適正な位置を規定する。
【0038】
図4aには、ガイドレール9,10,11を備えた引出しガイド4が横断面図で示してある。第3のガイドレール11の下側の横方向ウェブ11cが、少なくとも部分的に、好ましくは実質的に完全に第1のガイドレール9のC字形の形材内に収容されていることを認めることができる。
【0039】
図4bには、
図4aにおいて円で囲んだ領域が拡大図で示してある。走行キャリッジ14の第1のローラ16aが、第1のガイドレール9の軌道ウェブ17aにも、第3のガイドレール11の軌道ウェブ17bにも遊びなしに接触していることを認めることができる。図示の実施例では、第1のローラ16aが、コア20とスリーブ21とによって形成されており、このスリーブ21が、軌道ウェブ17a,17bに遊びなしに接触している。
【0040】
転動体15a,15b,15c,15dおよび/またはローラ16a,16bは、凹部23a,23bと、この凹部23a,23b内に係合する少なくとも1つの凸部22a,22bとを介して、走行キャリッジ14の基体18に回転可能に支承されていると共に保持されている。好ましくは、凹部23a,23bが、転動体15a,15b,15c,15dおよび/またはローラ16a,16bに配設されており、凸部22a,22bが、走行キャリッジ14の基体18に配設されている。当然ながら、機構的に逆転させて、凹部23a,23bが、走行キャリッジ14の基体18に配設されていて、凸部22a,22bが、転動体15a,15b,15c,15dおよび/またはローラ16a,16bに配設されている形態も可能である。
【0041】
図面に示した形態と異なり、より大きな第1のローラ16aを備えた走行キャリッジ14が、第1のガイドレール9と第3のガイドレール11との間だけでなく、第3のガイドレール11と第2のガイドレール10との間でも移動可能に支持されていてよい。