(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
H02M7/12 G
H02M7/12 H
H02M7/12 N
(21)【出願番号】P 2022505192
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2021007547
(87)【国際公開番号】W WO2021177193
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2020035127
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恒雅
(72)【発明者】
【氏名】山本 敏彦
【審査官】井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-055571(JP,A)
【文献】特開2006-352965(JP,A)
【文献】特開2014-195375(JP,A)
【文献】特開平07-059359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主電源に接続される主遮断器および主電磁接触器と、
スイッチング素子を有するコンバータ本体と、
前記主電磁接触器と接続する電源側リアクトルおよび装置本体側リアクトルと、
電流検出器と、
平滑コンデンサと、
前記平滑コンデンサの電圧を検出する直流電圧検出器と、
制御部と、
付属部とを有し、
前記付属部は、
電源電圧の位相と振幅を検出する電源位相検出用変圧器と、
前記主電源の投入初期段階で前記平滑コンデンサへの突入電流を抑制する限流抵抗器と、
前記限流抵抗器と前記主電源を接続する限流動作投入用電磁接触器と、
前記スイッチング素子のスイッチングにより発生する電流リップルを除去するフィルタ回路とを有し、
前記制御部は、
前記主電磁接触器を投入する投入時刻に従って、前記主電磁接触器を投入するように制御し、
前記電源位相検出用変圧器、前記電流検出器、および前記直流電圧検出器からの検出情報に基づいて、前記投入時刻を決め、前記投入時刻に従って、前記主電磁接触器を投入するように制御
し、
前記主遮断器と前記主電磁接触器と前記付属部の電源位相検出用変圧器入力端子とが接続され、
前記電源側リアクトルと前記装置本体側リアクトルと前記付属部のフィルタ端子とが接続された電力変換装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の電力変換装置において、
あらかじめ前記投入時刻を見つけておき、マニュアル設定値として前記制御部に与えておく電力変換装置。
【請求項3】
主電源に接続される主遮断器および主電磁接触器と、
スイッチング素子を有するコンバータ本体と、
前記主電磁接触器と接続する電源側リアクトルおよび装置本体側リアクトルと、
電流検出器と、
平滑コンデンサと、
前記平滑コンデンサの電圧を検出する直流電圧検出器と、
制御部と、
付属部とを有し、
前記付属部は、
電源電圧の位相と振幅を検出する電源位相検出用変圧器と、
前記主電源の投入初期段階で前記平滑コンデンサへの突入電流を抑制する限流抵抗器と、
前記限流抵抗器と前記主電源を接続する限流動作投入用電磁接触器と、
前記スイッチング素子のスイッチングにより発生する電流リップルを除去するフィルタ回路とを有し、
前記主遮断器と前記主電磁接触器と前記付属部の電源位相検出用変圧器入力端子とが接続され、
前記電源側リアクトルと前記装置本体側リアクトルと前記付属部のフィルタ端子とが接続され、
前記電源位相検出用変圧器への引き込み配線と前記限流動作投入用電磁接触器の一次側配線を共通とし、
前記限流動作投入用電磁接触器の二次側配線と前記限流抵抗器の入力側配線を共通とし、
前記限流抵抗器の出力側配線とフィルタ回路への引き込み線を共通とする電力変換装置。
【請求項4】
主電源に接続される主遮断器および主電磁接触器と、
スイッチング素子を有するコンバータ本体と、
前記主電磁接触器と接続する電源側リアクトルおよび装置本体側リアクトルと、
電流検出器と、
平滑コンデンサと、
前記平滑コンデンサの電圧を検出する直流電圧検出器と、
制御部と、
付属部とを有し、
前記付属部は、
電源電圧の位相と振幅を検出する電源位相検出用変圧器と、
前記主電源の投入初期段階で前記平滑コンデンサへの突入電流を抑制する限流抵抗器と、
前記限流抵抗器と前記主電源を接続する限流動作投入用電磁接触器と、
前記スイッチング素子のスイッチングにより発生する電流リップルを除去するフィルタ回路とを有し、
前記主遮断器と前記主電磁接触器と前記付属部の電源位相検出用変圧器入力端子とが接続され、
前記電源側リアクトルと前記装置本体側リアクトルと前記付属部のフィルタ端子とが接続され、
前記電源位相検出用変圧器への引き込み配線と前記限流抵抗器の入力側配線を共通とし、
前記限流動作投入用電磁接触器の一次側配線と前記限流抵抗器の出力側配線を共通とし、
前記限流動作投入用電磁接触器の二次側配線とフィルタ回路への引き込み線を共通とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記限流抵抗器の回路は、3相もしくは2相である電力変換装置。
【請求項6】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記限流抵抗器が加熱する場合に、前記限流動作投入用電磁接触器の主接点を開とする接点を有する電力変換装置。
【請求項7】
主電源に接続される主遮断器および主電磁接触器と、
スイッチング素子を有するコンバータ本体と、
前記主電磁接触器と接続する電源側リアクトルおよび装置本体側リアクトルと、
電流検出器と、
平滑コンデンサと、
前記平滑コンデンサの電圧を検出する直流電圧検出器と、
制御部と、
付属部とを有し、
前記付属部は、
電源電圧の位相と振幅を検出する電源位相検出用変圧器と、
前記主電源の投入初期段階で前記平滑コンデンサへの突入電流を抑制する限流抵抗器と、
前記限流抵抗器と前記主電源を接続する限流動作投入用電磁接触器と、
前記スイッチング素子のスイッチングにより発生する電流リップルを除去するフィルタ回路とを有し、
前記主遮断器と前記主電磁接触器と前記付属部の電源位相検出用変圧器入力端子とが接続され、
前記電源側リアクトルと前記装置本体側リアクトルと前記付属部のフィルタ端子とが接続され、
前記限流抵抗器もしくは前記限流動作投入用電磁接触器と前記フィルタ回路とを、前記主電磁接触器を投入する為の補助電磁接触器の主接点を介して接続してあり、
前記補助電磁接触器の前記フィルタ回路と接続しない側の主端子部もしくは前記主端子部と電気的に同電位となる点を、前記電源側リアクトルと前記装置本体側リアクトルとの共通接続点より引き出された点との共通接続点とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記限流抵抗器の回路は単相整流充電回路であり、
初期充電電流が流れる経路に交流電流検出器を備え、
前記主電磁接触器が投入された際に、
交流電源とコンバータ本体までの動力線相の箇所と、前記電源位相検出用変圧器への引きみ配線相の箇所と、前記電源側リアクトルと前記装置本体側リアクトルの共通接続点からの引き込み配線相の箇所の何れかに、異なる相同士が短絡してしまう交差配線があった場合に、
前記制御部は、
前記交差配線によって生じる初期充電電流経路に流れる電流に基づいて、前記限流抵抗器へエネルギーが与え続けられないよう前記主電磁接触器の投入オン指令を取り消し、誤配線であることの警報を出力する電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関するものであって、特に電力変換装置の初期充電に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ装置の直流部へ電力を供給またはインバータの直流からの帰還電力を電源へ回生する装置として、電源回生、高力率化、高調波抑制目的の正弦波PWMコンバータがある。また、停電時の電力を保証する無停電電源装置などがある。これらの電力変換装置において、PWM運転動作に入る前の初期段階の過程で、直流部を初期充電するPWMコンバータの例としては、特許文献1がある。
【0003】
特許文献1はインバータ装置の直流部平滑コンデンサ増設時における直流部の初期充電技術に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、正弦波PWMコンバータは、主スイッチング素子部と制御部を備えるコンバータ本体部分、コンバータ本体の直流部の初期充電を行う初充電回路部分、2種のリアクトルとダンピング抵抗器よびフィルタコンデンサから成るフィルタ回路部分から構成される。
【0006】
これらの構成において、コンバータ本体と2種のリアクトルを除く部分は一般に付属部分として扱われ、付属部分を構成する部品をばらばらに提供するものや、付属部分をひとまとめにして、コンバータ本体とは別ユニットとして提供されるものが存在する。しかし、いずれの製品においても、この付属部分に要する省スペース化や、省配線化・高信頼性化に応えられていないなどの課題があった。
【0007】
省スペースが図られていない要因を挙げるなら、特許文献1の
図9に示されるように、初充電電流の最大値を抑え込んで流し込む目的の限流抵抗と初充電後、限流抵抗器の両端を短絡する為の電磁接触器MC2が主電源ラインに直列に挿入されていることである。このような構成の為、電磁接触器MC2には運転中の動力電流を流さなければならず、結果として、電磁接触器MC2の定格電流は装置本体の定格容量に比例したものにしなければならない。
特許文献1に示される構成では、省スペース化が図られない課題があった。
【0008】
本発明の目的は、省スペース化が可能な電力変換装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の好ましい一例としては、主電源に接続される主遮断器および主電磁接触器と、スイッチング素子を有するコンバータ本体と、前記主電磁接触器と接続する電源側リアクトルおよび装置本体側リアクトルと、電流検出器と、平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサの電圧を検出する直流電圧検出器と、制御部と、付属部とを有し、前記制御部は、
前記主電磁接触器を投入する投入時刻に従って、前記主電磁接触器を投入するように制御し、前記電源位相検出用変圧器、前記電流検出器、および前記直流電圧検出器からの検出情報に基づいて、前記投入時刻を決め、前記投入時刻に従って、前記主電磁接触器を投入するように制御し、前記付属部は、電源電圧の位相と振幅を検出する電源位相検出用変圧器と、前記主電源の投入初期段階で前記平滑コンデンサへの突入電流を抑制する限流抵抗器と、前記限流抵抗器と前記主電源を接続する限流動作投入用電磁接触器と、前記スイッチング素子のスイッチングにより発生する電流リップルを除去するフィルタ回路とを有し、前記主遮断器と前記主電磁接触器と前記付属部の電源位相検出用変圧器入力端子とが接続され、前記電源側リアクトルと前記装置本体側リアクトルと前記付属部のフィルタ端子とが接続された電力変換装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、省スペース化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1の電力変換装置の回路構成を示す図。
【
図6】実施例2の電力変換装置の回路構成を示す図。
【
図7】実施例3の電力変換装置の回路構成を示す図。
【
図8】実施例4の電力変換装置の回路構成を示す図。
【
図10】実施例5の電力変換装置の回路構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施例を説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、実施例1における電力変換装置の回路構成を示す。
図1の電力変換装置は、交流の主電源1に接続された主遮断器2と、主遮断器2に接続された主電磁接触器3と、主電磁接触器3に接続された電源側リアクトル4と、交流を直流に直流を交流に双方向に変換可能なコンバータ本体である装置本体(正弦波PWMコンバータ)6と、装置本体6と接続された装置本体側リアクトル5と、付属部7とを有する。電力変換装置は、インバータ27および電動機28への電力を供給する。また、負荷であるインバータ27からの帰還エネルギーを電力変換装置によって主電源1側へ電源回生する。
【0014】
コンバータ本体である装置本体6は、IGBT素子24とフライホイールダイオード25が並列接続された主スイッチング素子の6組分と、主回路直流電圧部の平滑コンデンサ22と、交流電流Iacを検出するための電流検出器21と、平滑コンデンサ22の直流電圧である直流電圧Vdcを検出する為の直流電圧検出器23と、制御部26を有する。直流電圧検出器23は充電電圧レベルを知りえる手段である。
【0015】
付属部7は、主遮断器2と主電磁接触器3と電源位相検出用変圧器8などを接続する電源位相検出用変圧器入力端子16と、電源電圧の振幅と位相を検出するための電源位相検出用変圧器8と、初期充電を動作開始する為の限流動作投入用電磁接触器10と、限流抵抗器11a~11cと、ダンピング抵抗器14a~14cと、フィルタコンデンサ15a~15cで組まれるフィルタ回路13と、主電磁接触器3をONさせる為の補助インターロック信号を出力させる目的の主電磁接触器投入用補助電磁接触器9、電源側リアクトル4と装置本体側リアクトル5とフィルタ回路13とを接続するフィルタ端子17とを有する。フィルタ回路13は、電源側リアクトル4と装置本体側リアクトル5の共通接続点に接続されてコンバータ本体のスイッチング素子がスイッチングした際に発生した電流リップルを除去する。
【0016】
以上の構成において、IBGT素子がスイッチングを開始してPWM運転動作に入る前の過程として、先ず直流部の平滑コンデンサ22の初期充電を行う必要があるが、この過程で平滑コンデンサ22への突入電流が生じないようにする必要がある。以降にその理由を記す。
【0017】
例えば
図1に示す付属部7の回路を介さず主電磁接触器3が限流動作投入用電磁接触器10より先に主電源1に接続されるとするなら、主電源1より、主電磁接触器3を介し、2種のリアクトルである電源側リアクトル4、装置本体側リアクトル5、主スイッチング素子のフライホイールダイオード25を通過して、過大な電流が平滑コンデンサ22へと流れ込む。この場合、フライホイールダイオード25の過電流耐量超過および平滑コンデンサ22の劣化を生じさせることになる。そこで必要になるのが付属部7の役割である。以降に、この付属部7の動作役割について説明する。
【0018】
本実施例によれば、初期充電電流の流入経路は、主電源1、主遮断器2から主電磁接触器3を通過せず付属部7に入って、電源位相検出用変圧器8の入力端子16、限流動作投入用電磁接触器10、限流抵抗器11a~11c、フィルタ端子17、装置本体側リアクトル5、主スイッチング素子のフライホイールダイオード25、平滑コンデンサ22となる。
【0019】
また、この時の動作過程をタイムチャートにて示すと
図2に示す通りとなる。以降に
図2を用いて初期充電動作について示す。
【0020】
先ず、タイムチャートのt=0時刻で制御部26に運転準備信号RDYが与えられると、制御部26は、電源位相検出用変圧器8からの検出情報から、電源電圧Vacの入力レベルを確認し、限流動作投入用電磁接触器10の動作オン指令S1が出力されるように制御する。このS1により付属部の限流動作投入用電磁接触器10の主接点が閉じられると、前記した初期充電電流の流入経路を通って初期充電電流が平滑コンデンサ22へ流れ込む。この充電電流により直流部の平滑コンデンサ22の直流電圧Vdcが上昇する。
【0021】
ここで、平滑コンデンサ22の静電容量をCB、フィルタコンデンサ15(15a、15b、15c)の静電容量をCfとするならCB値がCf値に比べ圧倒的に大きいので初期充電動作にとって、Cf分の影響は無視出来る程小さい。従って、電源電圧をVac、限流抵抗器1相分の抵抗値をRSとし、限流動作投入用電磁接触器10が動作オンとなった時刻を0時刻とすると、直流電圧の上昇過程Vdc(t)は以下の近似式[式1]の通り指数関数的に上昇する。
【0022】
Vdc
(t)≒ √2×V
ac{1-e
-(t/τ)} [V] [式1]
[式1]で電気的時定数τは以下の[式2]で表される。
τ ≒ C
B×√3×R
S [s] [式2]
また、
図2のタイムチャート上において、直流電圧Vdcが満充電の収束値に達したとみなされる直流部の充電電圧値V
DC2となる時刻t
2は満充電に近似できるため、以下みなし満充電時刻と表現する。みなし満充電時刻は、電気的時定数τの3倍の3τ程度となり、t
2時刻における直流部の充電電圧値V
DC2は[式1]のt部にt
2を代入して得られる値となる。
【0023】
また、同タイムチャート上において、初充電開始時の充電電流ISの最大値は以下の[式3]で近似され、限流抵抗器を通過する電流IR(t)の減衰過程は電源電圧Vacの時間変化はないものとして[式4]のようになる。
【0024】
Is(max) ≒ √2×Vac /(√3×RS) [A] [式3]
IR(t1)≒ Ismaxe(t1/τ)≒√2×Vac/(√3×RS)e(t1/τ) [A] [式4]
[式4]の意味するところは、限流抵抗器を通過する電流IR(t)の最大値はIs(max)であり、その減衰過程に流れる期間は主電磁接触器3が投入される時刻t1までとなり、その後の初期充電電流は主電磁接触器3の主接点通過電流に切り替わる。
【0025】
ここで、もし主電磁接触器3の投入を時刻t2で投入とするなら、電力変換装置の始動時間を長くしてしまい実用性を欠くことになる。特に限流動作投入用電磁接触器10に流れる電流を小さく抑えるには、限流抵抗器11a~11cの抵抗値を大きくしたいところであるが、PWM運転開始時刻t3に遅延を生じさせてしまい実用性を損なう。そこで、VdcがVDC2となるみなし満充電時刻t2ではなく充電確立途中時刻のt1で主電磁接触器3を投入することとする。
【0026】
主電磁接触器3を投入する仕掛けとしては、主電磁接触器3の操作回路電源20とインターロック信号19は既に確立していることを条件として、制御部26より信号S2を付属部7の主電磁接触器投入用補助電磁接触器9に与えてこれをオンさせ、この主電磁接触器投入用補助電磁接触器9の主接点により主電磁接触器3を投入する。
【0027】
ここで課題となるのが主電磁接触器3を投入する時刻t1すなわち制御部26より信号S2を出力するタイミングをどのように実施するかである。ここで、t1をt2時刻より前倒しで短く出来るなら、限流抵抗器11a~11cの電力負担を低減出来き、直流電圧の確立時間を早めることが出来る為、時刻t3への遅延に影響を及ぼし難くなる。さらには限流動作投入用電磁接触器10の主接点通過電流負担を軽減できる。しかしながらt1を短くするということは以下なる問題も発生する。
【0028】
すなわち、t1を短くすればするほど、直流電圧の途中過程の電圧VDC1と満充電電圧VDC3(=√2×Vac)との差電圧ΔVはますます大きくなり、t1時刻で主電磁接触器3を投入した際、過度電流IFDMAXが主電磁接触器3、電源側リアクトル4、装置本体側リアクトル5と主スイッチング素子のフライホイールダイオード25を通過し、平滑コンデンサ22へ流れ込む。この電流のピーク値は2種の電源側リアクトル4、装置本体側リアクトル5である程度抑制されるが、差電圧ΔVの大きさによっては、[式3]で示したIs(max)よりは大きくなる。
【0029】
したがって、t1を短くすることにより、過度電流IFDMAXがフライホイールダイオード25の許容通過電流値IFDaを超過していないか、その健全性の確認が重要である。
【0030】
なお、主電磁接触器3の通過許容電流および平滑コンデンサ22への流れ込む許容電流は、一般的にIFDaよりも大きな耐量値を持つことから、IFDMAXが許容通過電流値IFDa以内に守られるよう、限流抵抗値RSを大きくしても、t1を短くした初期充電を行えば、限流抵抗器11a~11cに掛かる電力負担を小さく出来、充電時間大への影響を防ぐことが出来る。このことこそが、本実施例の狙いである。
【0031】
ここで、限流抵抗器11a~11cの抵抗値の定格電力の選定値をどこまで小さく出来るかであるが、[式5]に示す通り限流動作投入用電磁接触器10が投入される零時刻からt1時刻までに限流抵抗値に発生する損失WR(t1)が限流抵抗値の許容損失WRaを超えていないかの確認がなされれば良い。
WR(t1)≒ ―(1/2)×CB×(√2Vac)2×{(e-(2t1/(√3×C
B
×R
S
))-(ε-(0/(√3×C
B
×R
S
) )} [J] [式5]
WRa> WR(t1) [J] [式6]
以上の観点から、初期充電時に発生する限流抵抗器11a~11cの積算損失の最小化と主スイッチング素子のフライホイールダイオード25を通過する電流値IFD(max)の健全化がトレードオフ的に最適化となるように主電磁接触器3の投入時刻t1の最適化制御を行う。
【0032】
具体的には
図3、
図4、
図5に示す制御フローを実施して、求まった最小t1により主電磁接触器3への投入指令の信号S
2を出力させる方法をとる。あるいは、あらかじめ実験により最適なt1を見つけておき、これをt1のマニュアル設定値として与え、このt1時刻にて信号S
2を出力させる方法をとる。もしくはあらかじめ実験により最適なt1時刻おけるV
DC1を見つけておき、実験時の電源電圧V
acの√2倍とV
DC1の比率を最適比率差kpとし、これをマニュアル設定値として与え、以下式なる条件が成立したら信号S
2を出力させる方法をとっても良い。
V
dc(t1)=V
DC1 > Vac×√2×kp [V] [式7]
次に
図3、
図4、
図5を用いて、最適なt
1を見つけ出すためのt
1最適化自動処理の処理フローを説明する。
図3、
図4、
図5は、制御部26が実行するフローチャートである。制御部は、マイコンなどで構成され、CPU(Central Processing Unit)が
図3、
図4、
図5のフローチャートに対応するプログラムを実行する。
図3、
図4、
図5のフローチャートのうち少なくともいずれかまたは全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0033】
制御部26が、電源位相検出用変圧器8で検出した電源電圧Vac、電流検出器21で検出した交流電流Iac、および直流電圧検出器23で検出した直流電圧Vdcといった検出情報に基づいて、主電磁接触器3の投入時刻t1を決め、そのt1に従って、主電磁接触器3を投入するように制御をする。
【0034】
または、予め投入時刻t1を求めておき、求めておいたt1をマニュアル設定値として制御部26に与えておき、その設定値に従って、主電磁接触器3を投入するように制御をする場合がある。
図3、
図4、
図5は、制御部26における処理を示すフローチャートである。
【0035】
t
1最適化自動処理はまず、
図3の高速制御周期処理IRQ_INT_SUB中で、初期化処理(S35からS38)後、サブルーチンt1_FIT_SUBを呼びだしt1最適化処理を行い(S40)、最適化処理が完了したなら、終了フラグをONさせ(S38)、その後は周期処理からは抜け出る。
【0036】
また、この自動化処理を行う条件としては、先ず、自動化処理をするのかマニュアル設定をするのかを判断し、自動化処理指令のフラグがONであれば(S32でYES)、自動化処理を開始させる。マニュアル設定選択であれば(S32でNO)、前記にあるようにあらかじめ実験にて見つけておいた最適なt1を手動設定する(S33)。
【0037】
自動処理開始時はt1_FIT_SUBでの処理の事前準備をして初期化処理を行う(S35からS38)。ここでは、t1最適化処理に必要な各種変数の初期設定、各種フラグの初期設定を行い一度初期化設定がなされたなら、次回周期からは処理がパスされ未実施となる。
【0038】
サブルーチンであるIRQ_INT_SUBは、t1の最適値が見つかり最適化処理終了フラグがONとなるまでは、制御周期毎に呼び出され、
図4、
図5に示す処理を行う。
【0039】
図4の処理ではまず、運転準備信号RDYが有るかを判断する(S41)。運転準備信号RDYがあるときのみ処理に入る。基本的にこの信号がない場合、初期充電を開始させない為である。すなわちRDYが無いときは(S41でNo)、すぐさまルーチンを抜け出し、次の回の呼び出しを待つ(リターンサブルーティン(RTS))。
【0040】
次に運転準備信号RDYのONが確認されると(S41のYES)、フライホイールダイオード25に流れる最大値電流を記憶する処理のサブルーチンを呼び出して概略以下の処理を行う(S42)。
【0041】
ここでの処理は、電流検出器21で検出した交流電流Iacを初回の電流値IFD(max)に格納しておき、今回の周期回でとらえられたIac(t)が前回記憶したIFD(max)を超過したなら、今回のIac(t)をIFD(max)に書き換える。もしIac(t)が超過していないならIFD(max)の書き込み変更は行わない。このようにすることで運転準備信号RDYがONの状態でt1_FIT_SUBの呼び出しが繰り返される間の期間に発生したフライホイールダイオード25の最大通過電流値が記憶保存される。
【0042】
以上のサブルーチン処理を通過すると先ず初めにt1カウンタのカウント値t1の値を更新すべきかのフラグt1カウンタ更新命令フラグがON=1であるかの判定を制御部26が実行する(S43)。
【0043】
初回通過時はt1最適化初期化処理にてt1カウンタ更新命令フラグON=1とした為、直流電圧V
dcは未充電値V
DCMIN以下であるかを判断する(S44)。直流電圧V
dcは未充電値V
DCMIN未満である場合(S44でYES)、
図3の初期t1の前回値記憶保存の為のt1‘がセットされる(S45)。カウントアップ(UP)開始処理(S46)、限流動作投入用電磁接触器への投入指令S1のON処理(S47)、t1カウンタ更新命令フラグOFF処理がなされ(S48)、ルーチンを抜け出る(RTS)。
【0044】
次周期はt1カウンタ更新命令フラグOFFとなっている為(S43でNO)、主電磁接触器3がONしているか、すなわち信号S2のONフラグ=1の判定が行われる(S49)。t1時刻には未経過の為に信号S2はONしていないので(S49のNO)、t1カウント値を更新する為のカウントUP処理に入る(S411)。またここでは、初充電電流が限流抵抗器を通過している期間にあたるので、カウントUPするまでの周期期間、Iac(t)はIR(t)の値として格納される(S412)。IR(t)と限流抵抗器の抵抗値RSから以下の[式8]にて一相分の限流抵抗器の損失積算処理が行われる(S413)。
WR(t)=WR(t)‘ +RS×IR(t)
2 [式8]
[式8]でWR(t)‘ はWR(t)の前回値でt1カウンタがカウントUPされる周期回までは損失が積算される。また、この式は[式5]に示されたWR(t1)の積算過程をデジタル的に近似する処理でもある。
【0045】
t1カウンタのカウントUPがカウントUP判定値に達したなら(S410のYES)t1カウンタのクリア処理が行われる(S415)。主電磁接触器3の投入処理すなわち信号S2のON処理が行われる(S416)。この信号S2のONフラグの設定(S417)と、限流動作投入用電磁接触器10の遮断処理すなわちS1のOFF処理が行われる(S418)。
【0046】
以上の処理が行われると次周期では信号S
2がONであることが確認(S49のYES)される為、
図4の(1)から
図5の(1)のt1最適値のリサーチの処理に移行する。ここでは先ず、V
dc(t)>V
DC2の判定をする(S51)。S51のステップによりV
DCがみなし満充電電圧値V
DC2になるまで周期ルーチンを抜ける(S51のNO)。みなし満充電が確認されたなら(S51のYES)、I
FDmaxを呼び出し、先ずI
FDmaxがI
FDa未満であるかの確認を行う(S52)。
【0047】
初期設定でt
s1はI
FDmaxがI
FDaを超過しないような値を選択するが万が一t
s1が不適切でI
FDa以上になったなら各種変数のクリア(S64、S65)および主電磁接触器3のOFF処理(S66)、
図3で設定した初期化完了フラグのON=1をOFF=0として(S68)、最適化の再処理を促す(S69)。
【0048】
基本的にts1の適切な処理によりIFDmax<0.8×IFDaを判断(S53)し、S52でNoであれば、最適化終了にはならない(S64からS69)。
【0049】
ここで、Rsとts1を大きくして、I
FDmax<0.8×I
FDaを判断(S53)する。S53でYesであれば、I
FDmax<<I
FDaであるので、
図4で処理した限流抵抗器に発生した積算損失W
R(t1)が許容値W
Ra以上となる場合が生じる(S54でNO)。そしてt1の設定時間を-Δt分補正して設定する(S55)。また各種変数のクリア(S56、S57、S59)および主電磁接触器3のOFF処理を行い(S58)、t1カウンタ更新命令フラグON=1とし(S60)、ルーチンを抜け出る。
【0050】
このような状態では、
図4のt1カウンタ更新命令フラグ判定ON=1に掛かる(S43のYES)が、主電磁接触器3 OFF後の経過時間が間もないなら直流部の電圧は十分下がってない為、直流電圧判定V
dc<V
DCMIN(S44)により直流部の放電を待ってから初期充電のやり直しが行われる。
【0051】
初期充電のやり直しは、更新されたt1の値をもって行われるが、一連の動作過程は前記に示したのと同じものになる。
【0052】
もし、この過程定を繰り返すとするとt1を短い方向へ更新するのであるので、IFDmaxは-Δt更新の度に増加し、やがてはIFDmax<0.8×IFDa判定に掛かる。
【0053】
IFDmax<0.8×IFDa判定でIFDmaxが0.8×IFDa以上の場合(S53でNo)にt1の適正リサーチは終了(S61からS63)となる。以上が実施制御フローの1例である。
【0054】
以上の実施により初期充電電流の最小化が行われる。この効果として、従来は電源位相検出変圧器に取り込む電流は微弱なものである為、電源位相検出変圧器の信号線と初期充電用の配線は別々の配線としており、共有化は行ってこなかった。本実施例による電流の最小化の実現に伴って共通が可能なる。
【0055】
また、従来において初期充電経路とフィルタ回路13の配線においても別経路であった。フィルタ回路13に流れる電流値は主回路に流れる定格電流の1/10以下程度と小さく、初期充電線経路とフィルタ回路13への引き込み線の経路を共有しても、主電磁接触器3を投入後は初期充電用電磁接触器を電源から開放する為、初期充電電流の最小化には何ら影響を与えず、フィルタ機能にも影響を与えない。よって、本実施例によれば、フィルタ回路13への引き込み線と初期充電経路の共有化が可能となる。
図1によれば、電源位相検出用変圧器8への引き込み配線と限流動作投入用電磁接触器10の一次側配線を共通とし、限流動作投入用電磁接触器10の二次側配線と限流抵抗器11a、11b、11cの入力側配線を共通とし、限流抵抗器11a、11b、11cの出力側配線とフィルタ回路13への引き込み線を共通とする配線となっている。
【0056】
実施例1によれば、主遮断器と主電磁接触器と付属部の電源位相検出用変圧器入力端子とが接続され、電源側リアクトルと前記装置本体側リアクトルと前記付属部のフィルタ端子とが接続されたことで、電力変換装置の直流部の初期充電に必要な構成要素である限流抵抗器の定格電力の選定値および電磁接触器の定格電流の選定値を積極的に小さくすることが可能となる。また、電源位相検出用変圧器、初期充電回路、フィルタ回路に関わる配線の共有化が行える為、付属部7に関する省スペース化および省配線を実現した電力変換装置を、実施例1では提供できる。
【実施例2】
【0057】
図6は、実施例2を示す図である。
図6は
図1に対し、初期充電経路として限流動作投入用電磁接触器10と限流抵抗器11a~11cが前後入れ替わっただけである。
図6では、電源位相検出用変圧器8への引き込み配線と限流抵抗器11a、11b、11cへの入力側配線を共通とし、限流動作投入用電磁接触器10の一次側配線と限流抵抗器11a、11b、11cへの出力側配線を共通とし、限流動作投入用電磁接触器10の二次側配線とフィルタ回路13への引き込み線を共通とする配線となっている。実施例2によれば、
図2に示したタイムチャートが適用出来、実施例1と同様の効果を得られる。
【実施例3】
【0058】
図7は、実施例3を示す図である。
図1の実施例では限流抵抗器は3相分11a、11b、11cから成るが、
図7では限流抵抗器11a~11cは3相の中何れか2相分に用いて行われる。この場合、1相の限流抵抗器に流れる電流は電源電圧の相電圧が抵抗値RSに印加された電流と線間電圧が印加された電流が混在することになるが、実施例1と取り扱われるデータが異なるのみで、制御処理方法は同じであり、実施例1と同様の効果を得られる。
【実施例4】
【0059】
図8は、実施例4を示す図である。実施例1に対し限流抵抗器の過熱保護の為、各限流抵抗器に、それぞれサーマル接点12a、12b、12cを用いた例である。
【0060】
サーマル接点12a、12b、12cは通常は閉じており、限流抵抗器11a、11b、11cの許容温度を超えると、サーマル接点12a、12b、12cが開く。サーマル接点12a、12b、12cを、限流動作投入用電磁接触器10を投入させる為に制御部26からの投入指令S1を限流動作投入用電磁接触器10に送る線に直列に接続する。そのようにすることで、限流抵抗器が過熱した時、制御部26からの判断操作に関係なく限流動作投入用電磁接触器10をオフさせ(限流動作投入用電磁接触器10の主接点を開とさせる)、限流抵抗器11a~11cに掛かり続けるエネルギー源を断つことが可能となる。
【0061】
この実施により、実施例1で主電磁接触器投入時刻t1の不適切設定があっても、限流抵抗器の過熱保護が可能となる為、抵抗器の故障取り換えをなくすことが出来る。
【0062】
また、本実施例によれば、サーマル接点の接点状態を制御部26へ知らせる必要がなく、限流抵抗器のエネルギー源を断つための操作回路も不要となり、限流抵抗器の過熱保護の信頼性向上が図れる。
【0063】
図7に示したように、実施例3においては、2相の限流抵抗器11a、11bに対応してサーマル接点12a、12bを2つ配置するようにできる。
【0064】
上記の実施例では、装置本体6と付属部7は、別構成として説明をしたが、装置本体6と付属部7を一体化した方が良い場合には、
図9の変形例に示すように、装置本体6に付属部7を含める構成としてもよい。
【実施例5】
【0065】
図10は、本発明の実施例5を示す図である。本実施例は、実施例1に対し、限流抵抗器11bを廃止し、また、三相整流による初期充電方式に替わり単相整流による初期充電方式としている。また、本実施例では、初期充電電流が流れる経路のうち少なくとも一か所、つまり、
図10のG1~G3部に示すように何れか1箇所に交流電流検出器29を配置する。また、フィルタ回路13が主電磁接触器投入用補助電磁接触器9の主接点を介して接続されている点に違いがある。
【0066】
本実施例はこのように他実施例とは異なるが、限流抵抗器11および限流動作投入用電磁接触器10の最小化処理の実施例によって得られる効果においては他の実施例と得られる効果は同じである。
【0067】
本実施例の効果において他実施例と唯一異なるのは、限流抵抗の焼損防止、並びに初充電経路の配線保護に対する信頼性をさらに向上させている点である。
【0068】
図10において、A~D箇所に誤配線があった場合、つまり、交流電源1と装置本体(コンバータ)6までの動力線相の箇所と、電源位相検出用変圧器8への引きみ配線相の箇所と、電源側リアクトル4と装置本体側リアクトル5の共通接続点からの引き込み配線相の箇所の何れかに、異なる相同士が短絡してしまう交差配線があった場合、主電磁接触器3が投入された瞬間に限流抵抗器11a、11cと限流動作投入用電磁接触器10を通過して電源短絡電流が流れる。この場合、同抵抗器には瞬時に過大なエネルギーが印加され、同抵抗器内部のエレメントは短時間で焼損危険温度に達しようとするが、同時刻には、抵抗表面にはこの危険温度は現れない為サーマル接点等による温度検出保護は困難となる。
【0069】
また、主電磁接触器3のOFF中に限流動作投入用電磁接触器10が連続ONとなると、限流抵抗器11にフィルタ電流が流れ続ける。これらの不具合が発生した場合、限流抵抗器11の焼損となる。本実施例では、これらの問題を解決する為の実施例である。以下にその形態の詳細をしめす。
【0070】
A~D部の誤配線の組合せとしてはV相とU相、V相とW相、W相とU相の交差配線があり、V相とU相の交差配線の場合は抵抗11aにV-U間の線間電圧が掛かり、V相とW相の交差配線の場合は抵抗11cにV-W間の線間電圧が掛かり、交流電流検出器29にはそれぞれ貫通する片側のみの配線に短絡電流を生じる。W相とU相の交差配線の場合、限流抵抗器11a、11cそれぞれにW-U間の線間電圧が掛かり、貫通する2線に短絡電流が流れる。
【0071】
この場合、どちらか1線の貫通方向を、磁束を打ち消さない方向に貫通させ、磁束飽和による交流電流検出器29の2次電流信号S3の出力低下があったとしても、交流電流検出器29は少なからずともこの信号S3を得て、信号S3を制御部26へ送り短絡情報を得る。この情報と主電磁接触器3の投入のフィードバック信号S4が有ったときのみ、制御部26は、限流抵抗器へエネルギーが与え続けられないように、主電磁接触器投入用補助電磁接触器9の投入指令を即時取り消すとともに誤配線の警報を出力する。
【0072】
本実施例によれば、電流による検出の為、抵抗器が異常温度に達し無い時刻で、異常を察知することが可能となる。また、交流電流検出器29は比較的安価なものを用いることが出来る。よって、信頼性の面でも、費用の面でも他実施例よりも有利である。
【0073】
次に、E,F部の誤配線であるがV相とU相の交差配線の場合、装置本体(コンバータ)6の平滑コンデンサ22に流れ込む初期充電電流はW相の電流検出器21-Wのみにしか通過しない。また、V相とW相の交差配線の場合はU相の電流検出器21-Uのみにしか通過しない。また、UとW相の交差配線の場合は電流検出器21-U、21-Wどちらも電流は通過するが、電源位相検出用変圧器(PT)で得られる信号VSの位相と電流検出器21-Uまたは21-Wで得られる電流情報の位相関係が誤配線時は正常配線時とは異なる。これらのことを制御部26で判断し、誤配線の警報を出力するとともに主電磁接触器3の投入指令が出ないように阻止する。
【0074】
次に、限流抵抗器にフィルタ電流を連続的に流さないようにする手段としては、限流抵抗器11a、11cもしくは初期充電用電磁接触器(限流動作投入用電磁接触器10)とフィルタ回路13とを主電磁接触器を投入する為の補助電磁接触器9の主接点を介して接続していること。さらに、主電磁接触器投入用補助電磁接触器9の主接点もしくは当該主接点と電気的に同電位になる点を、電源側リアクトル4と装置本体(コンバータ)側リアクトル5との共通接続点より引き出された点との共通接続点とすることで解決される。
【0075】
すなわち、主電磁接触器投入用補助電磁接触器9がONしていれば、主電磁接触器3が投入されることになり、フィルタ電流は主電磁接触器3の主接点を通過することになり、限流抵抗器11a、11cを通過しない。また、主電磁接触器が投入されていない時、つまり主電磁接触器投入用補助電磁接触器9がOFFしていれば、フィルタ回路13は電源および限流抵抗器11a、11cと切り離される為、限流抵抗器11a、11cにはフィルタ電流は流れず、限流抵抗器11a、11cの過熱、焼損は無い。
【0076】
実施例5により、限流抵抗器焼損防止に対するさらなる信頼性向上を図ることが可能であり、C部への配線保護用ヒューズフリーブレーカや配線保護用ヒューズの設置が不要となる。
【符号の説明】
【0077】
1…主電源
2…主遮断器
3…主電磁接触器
4…電源側リアクトル
5…装置本体側リアクトル
6…装置本体
7…付属部
8…電源位相検出用変圧器
9…主電磁接触器投入用補助電磁接触器
10…限流動作投入用電磁接触器
13…フィルタ回路
16…電源位相検出用変圧器入力端子
17…フィルタ端子
18…主電磁接触器投入用増幅接点出力端子
21…電流検出器
22…平滑コンデンサ
23…直流電圧検出器
24…IGBT素子
25…フライホイールダイオード
26…制御部
29…交流電流検出器