(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】窒素とリンで修飾された顆粒状炭素担持二元金属触媒、その作製方法およびその応用
(51)【国際特許分類】
B01J 27/24 20060101AFI20231228BHJP
B01J 37/34 20060101ALI20231228BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20231228BHJP
B01J 37/18 20060101ALI20231228BHJP
C07C 17/23 20060101ALI20231228BHJP
C07C 21/18 20060101ALI20231228BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231228BHJP
【FI】
B01J27/24 Z
B01J37/34
B01J37/02 101D
B01J37/18
C07C17/23
C07C21/18
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2022510151
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(86)【国際出願番号】 CN2020132180
(87)【国際公開番号】W WO2021104437
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-02-15
(31)【優先権主張番号】201911197347.9
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911197353.4
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911197635.4
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520217618
【氏名又は名称】浙江▲藍▼天▲環▼保高科技股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】520217629
【氏名又は名称】浙江省化工研究院有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】513016127
【氏名又は名称】中化藍天集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】SINOCHEM LANTIAN CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.96, Jiangnan Avenue, Binjiang District, Hangzhou 310051, Zhejiang, China
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ウカン
(72)【発明者】
【氏名】リ リン
(72)【発明者】
【氏名】マ チャオフェン
(72)【発明者】
【氏名】シー ネンフー
(72)【発明者】
【氏名】ジン ジャミン
(72)【発明者】
【氏名】リ シャオニェン
(72)【発明者】
【氏名】ル チュンシャン
(72)【発明者】
【氏名】ニエ ジュアンジュアン
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-515789(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109824473(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108283933(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105457651(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105771149(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 27/00-27/32
B01J 37/00-37/36
C07C 17/00-17/42
C07C 21/00-21/22
C07B 61/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素およびリンで修飾された炭素キャリアと、前記炭素キャリア上に担持される金属粒子とを含み、前記金属粒子は、第一金属単体粒子、第二金属単体粒子、および二元金属合金相粒子を含み、前記二元金属合金相粒子が前記金属粒子中に占める百分比は80%以上であり、少なくとも90%の前記合金相粒子の寸法は1nm~20nmであり、
前記第一金属はパラジウムであって、その担持量は0.5~1.5重量%であり、前記第二金属は、銅、亜鉛、および錫からなる群より選択される少なくとも一種であって、その担持量は1.0~4.0重量%であり、且つ前記第一金属と前記第二金属との質量比は0.01~5:1であり、
前記炭素キャリア中の、窒素含有量が1.0~8.0重量%であり、リン含有量が0.5~4.0重量%であり、
前記炭素キャリアは、ヤシ殻活性炭および木質系活性炭から選択され、前記炭素キャリアの比表面積は950~1500m
2/gであり、金属灰分は2.5重量%以下であり、メソ細孔比率は80%以上であり、
トリクロロトリフルオロエタン、2,3-ジクロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、および四塩化炭素を原料とした水素化脱塩素反応に使用される、
ことを特徴とする、窒素およびリンで修飾された顆粒状炭素担持二元金属触媒。
【請求項2】
前記二元金属合金相粒子が前記金属粒子中に占める百分比が85~95%であり、少なくとも95%の前記合金相粒子の寸法は2nm~10nmであることを特徴とする、請求項1に記載の顆粒状炭素担持二元金属触媒。
【請求項3】
前記炭素キャリアは円柱形の顆粒であり、顆粒の直径は0.1~0.5cmであり、長さは0.1~5cmである、ことを特徴とする請求項1に記載の顆粒状炭素担持二元金属触媒。
【請求項4】
A1.窒素・リン共ドープ炭素微粒子の作製工程、
A2.前記窒素・リン共ドープ炭素微粒子を炭素キャリア上に担持させる工程、
A3.紫外線ランプの照射の下で、前記窒素・リン共ドープ炭素微粒子を第一アンカーポイントとし、第二金属を前記炭素キャリア上に担持させる工程、および
A4.第一金属を前記炭素キャリア上に担持させる工程、
によって作製されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の顆粒状炭素担持二元金属触媒の作製方法。
【請求項5】
前記工程A3において、200~500Wの紫外線ランプで1~3回照射し、当該照射は1回あたり3~10分間である、ことを特徴とする請求項4に記載の顆粒状炭素担持二元金属触媒の作製方法。
【請求項6】
前記炭素微粒子の寸法は1~20nmである、ことを特徴とする請求項4に記載の顆粒状炭素担持二元金属触媒の作製方法。
【請求項7】
前記工程A3はさらに、
前記第二金属を前記炭素キャリア上に担持させた後、水素雰囲気中にて、120~300℃の温度下で、前記炭素微粒子に対して熱分解を行い、前記炭素微粒子を熱分解した後、窒素およびリン元素、前記炭素キャリアおよび前記第二金属の結合部位に第二アンカーポイントを形成させて、前記第一金属を前記炭素キャリア上に担持させるのに使用する工程を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の顆粒状炭素担持二元金属触媒の作製方法。
【請求項8】
前記顆粒状炭素担持二元金属触媒は、固定床における、前記原料のトリクロロトリフルオロエタン、2,3-ジクロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、および四塩化炭素から、クロロトリフルオロエチレン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、およびトリクロロメタンを産物としてそれぞれ作製する水素化脱塩素反応に使用され、前記原料の転化率は少なくとも98%であり、前記産物の選択性は少なくとも95%である、ことを特徴とする請求項1~3に記載の顆粒状炭素担持二元金属触媒の
使用方法。
【請求項9】
トリクロロトリフルオロエタンを前記原料として、請求項1~3のいずれかに記載の顆粒状炭素担持二元金属触媒が存在する条件下で反応が行われ、前記トリクロロトリフルオロエタンの転化率は少なくとも98%であり、クロロトリフルオロエチレンの選択性は少なくとも95%であり、且
つ産物には少なくとも1%未満のクロロトリフルオロエタンが含まれる、ことを特徴とするクロロトリフルオロエチレンの作製方法。
【請求項10】
B1.前記顆粒状炭素担持二元金属触媒を固定床反応器に入れて、アンモニアガスとクロロフルオロエタンとの混合ガスを通し、アンモニアガス:クロロフルオロエタンのモル比を50~100:1とし、空間速度を10000~50000時間
-1とし、0.5~3.5℃/分の速度で温度を300~400℃に上げて、1~5時間保温してから反応温度まで下げる工程、および
B2.水素とトリクロロトリフルオロエタンで構成される混合ガスを通し、H
2:トリクロロトリフルオロエタンとのモル比を1.5~4.0:1とし、空間速度を120~500時間
-1とし、反応温度を150~300℃とする工程、
を含む、ことを特徴とする請求項9に記載のクロロトリフルオロエチレンの作製方法。
【請求項11】
2,3-ジクロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを前記原料とし、請求項1~3のいずれかに記載の顆粒状炭素担持二元金属触媒が存在する条件下で反応が行われ、前記2,3-ジクロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの転化率は少なくとも98%であり、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの選択性は少なくとも95%であり、且
つ産物には少なくとも1%未満の2-ジクロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンが含まれる、ことを特徴とする1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの作製方法。
【請求項12】
C1.前記顆粒状炭素担持二元金属触媒を固定床反応器に入れて、水素とジクロロジフルオロエタンとの混合ガスを通し、H
2:ジクロロジフルオロエタンのモル比を50~100:1とし、空間速度を10000~50000時間
-1とし、0.5~3.5℃/分の速度で温度を300~400℃に上げて、1~5時間保温してから反応温度まで下げる工程、および
C2.水素と2,3-ジクロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンで構成される混合ガスを通し、H
2:2,3-ジクロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンのモル比を1.5~4.0:1とし、空間速度を120~600時間
-1とし、反応温度を150~350℃とする工程、
を含む、ことを特徴とする請求項11に記載の1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は触媒分野に関し、特に、窒素とリンで修飾された顆粒状炭素担持二元金属触媒、その作製方法、およびクロロフルオロアルカン類の選択的水素化脱塩素触媒反応における顆粒状炭素担持二元金属触媒の応用に関し、より詳細には、トリクロロトリフルオロエタンの水素化脱塩素によるクロロトリフルオロエチレンの製造と、2,3-ジクロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの水素化脱塩素による1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
高性能触媒は水素化脱塩素反応の鍵であり、前世紀から、Pd-W/ZrO2,Pd-Au/AC,Pd-Mg/AC,Pd-Ir/SiO2,Pt-Ir/SiO2,Au-Ir/SiO2,Pt-Co/SiO2,Pd-Bi/SiO2,Pd-Cu/C,Pd/Al2O3,Pt/ACなど水素化脱塩素触媒に関する研究が多く報告されている。しかし、これらの触媒は、概して触媒活性が低く、選択性が高くなく、金属活性の組成を失い易く、炭素堆積や金属粒子焼結などによって触媒の安定性が悪くなって耐久性が低く、そのため工業的応用の要件を満たすことが難しい。
【0003】
水素化脱塩素触媒反応プロセスは、主に、1)水素分子の解離によって吸着状態の活性水素に転化させる段階、2)C-Cl活性化段階、3)活性水素でC-Cl結合を攻撃してHClを生成して、脱塩素を達成する段階を含む。これから見れば、水素化脱塩素触媒には、解離した水素と活性化炭素-塩素結合の両活性中心が必要であり、水素を解離させる触媒活性を有する活性中心は、主に貴金属である。しかし、水素を解離させる貴金属活性中心のみの場合、選択性が低い(過剰な水素化)、金属粒子の安定性が低い(高温とHClおよびHFなど腐蝕性雰囲気中で金属粒子のマイグレーション、焼結などが発生する)、活性の消失などの問題が発生し易く、C-Cl結合を活性化する活性金属添加剤の添加が必要となる。
【0004】
中国特許出願公開第110302801号明細書には、ナノ銅/パラジウム合金触媒の作製方法が開示されている。この方法では、先ず硝酸銅エタノール溶液、有機修飾剤ポリビニルピロリドンと水酸化ナトリウムエタノール溶液でコロイドを作製し、ヒドラジン水和物で還元して、ナノ銅溶液を形成し、その後、水酸化ナトリウムエタノール溶液でアルカリ性環境を調整し、塩化パラジウムエタノール溶液を添加し、最後にヒドラジン水和物で還元して、ナノ銅/パラジウム合金触媒を得ている。
【0005】
中国特許出願公開第107482234号明細書には、燃料電池用の、硫黄・窒素・コバルト共ドープ炭素材料担持パラジウム/銅合金触媒の作製方法が開示されている。この方法では、2-アミノ-1,3,5-トリアジン-4,6-ジチオール、ホルムアルデヒドおよびCo(CH3COO)4・H2Oを用いて水熱合成を経て、乾燥、焙焼することによって、中空二層球状シェル構造の硫黄・窒素・コバルト共ドープ炭素材料を得る。その後、この炭素材料を塩化パラジウム酸と硫酸銅の溶液中に浸漬して、水熱合成を経て、燃料電池用の、硫黄・窒素・コバルト共ドープ炭素材料担持中空球状シェル構造パラジウム/銅合金触媒を得ている。
【0006】
孫麗美ら(材料研究学報、CuのPd/Cエタノール電気触媒酸化性能に対する影響、2018,32(9),669-674)は、活性炭素(Vulcan XC-72)をキャリアとして、改良した化学還元法で異なるPd:Cu比のPdx-Cu/C触媒を作製する方法を開示している。Pd:Cuが8:1である場合、Pd8-Cu/C触媒粒子は炭素キャリア表面に均一に分散され、その直径は約2.8nmであり、触媒中に転化される少量のCu元素の一部がPd結晶格子に入って合金を形成する。このような触媒は混合水溶液中で最も優れた触媒活性と安定性を発現し、C2H5OH酸化に対する触媒ピーク電流密度は114mA/cm2にも達し、Pd/Cの2.5倍である。
【0007】
上記従来技術に開示された二元金属合金触媒では、二元金属合金粒子が総金属粒子中に占める割合が考慮されておらず、用いられる作製方法においても、パラジウム/銅合金粒子を制御可能に作製することが難しく、特に顆粒状炭素担持二元金属合金粒子に対して、秩序立った制御が困難である。
【0008】
炭素微粒子はナノスケールの炭素材料であり、世に現れて以来、人々の注目を受けていた。ヘテロ原子をドーピングすることによって、炭素微粒子により優れた蛍光特性、電子特性などを持たせることができるため、ヘテロ原子をドーピングした炭素微粒子は、光学材料や触媒材料などの分野に使用することができる。
【0009】
中国特許出願公開第109999877号明細書には、窒素・硫黄共ドーピングの炭素量子ドットによって修飾された炭素担持貴金属顆粒触媒が開示されており、この触媒は、窒素・硫黄共ドーピングの炭素量子ドット水溶液とM/C触媒によって作製されている。この作製方法によって得られる触媒中の貴金属は、単体と酸化物の状態で存在し、後に担持される炭素量子ドットと金属粒子との相互作用が生じるため、フッ素および塩素を含まない有機物の水素化の選択的触媒反応に最適である。しかし、この特許は、炭素量子ドットの単一金属粒子に対する電子作用だけに触れており、炭素量子ドットと多金属成分間および触媒作製方法の活性部位構造や電子特性などにおける相互影響は考慮されていない。
【0010】
クロロトリフルオロエチレン(CTFE)は重要なフッ素含有モノマーであり、水素化脱塩素触媒反応法は、現在最も将来性のある環境に優しい合成方法である。
【0011】
欧州特許出願公開第416615号明細書には、Fe、Ni、Cu、Sn、Zn、Crまたはその酸化物を触媒活性成分とし、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、Y型沸石、二酸化ケイ素-酸化アルミニウム、炭化ケイ素、珪藻土などをキャリアとして、CFC-113水素化脱塩素触媒反応を反応温度300℃~550℃で行い、浸漬後の触媒前駆体(活性成分は硝酸塩)に対しアルゴン雰囲気中にて450℃で前処理を2時間行うことが記載されている。反応温度が高いため、熱分解反応が起こり易く、触媒表面に炭素が堆積されて活性を失って、触媒の耐久性が悪い。
【0012】
中国特許出願公開第1065261号明細書、欧州特許第0747337号明細書には、CFC-113とH2を用いた二元金属複合炭素担持触媒の触媒作用によるクロロトリフルオロエチレンの気相合成によって、トリフルオロエチレンまたはテトラフルオロエチレンを製造することが開示されているが、触媒(少なくとも一種)はVIII族金属と銅であり、そのうち、銅が占める割合は、触媒の総質量の12%~22%である。VIII族金属を活性成分とするため、トリフルオロトリクロロエチレンの転化率が高いが、銅の含有量が高いため、触媒の安定性をさらに高める余地がある。
【0013】
中国特許出願公開第1351903号明細書には、四元触媒が開示されており、貴金属ルテニウム(またはパラジウムとプラチナ)および金属銅を主な活性成分とし、ランタンリッチな希土類混合物(または金属ランタン)およびアルカリ金属リチウムを改良添加剤とし、ヤシ殻活性炭をキャリアとした場合、触媒の耐用時間は約600時間にも達している。
【0014】
中国特許出願公開第1460547号明細書には非貴金属触媒が開示されており、金属レ二ウムおよび金属銅を主な活性成分とし、金属ランタンを改良添加剤とし、ヤシ殻活性炭をキャリアとした場合、触媒の耐用時間は約500時間にも達している。
【0015】
中国特許出願公開第105457651号明細書にはCFC-113の水素化脱塩素触媒反応によるクロロトリフルオロエチレンの作製方法が開示されており、この方法に使用される触媒は、メイン触媒、添加剤およびキャリアで構成されるが、前記メイン触媒はPdとCuであり、添加剤はMg、CaおよびBaのうちの少なくとも一つと、Smおよび/またはCeとを組み合わせたものであり、この方法は、選択性が高く、触媒の耐用時間が長いが、触媒が四種の金属成分で構成されるため、触媒の作製および貴金属の回収コストが高い。
【0016】
1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンは、優れた応用前途と広い市場前途のある冷却剤の代替品であり、2,3-ジクロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの気相水素化脱塩素触媒反応法による合成は、ルートが短く、最も工業的応用価値がある。しかしながら、現在、これについての研究は少なく、触媒の活性が低い、目標産物の選択性が低い、または反応温度が高い、触媒の安定性が不明確であるなどを主な問題としており、この方法の更なる工業的応用が制限されている。
【0017】
米国ヌムールデュポン社の特許:国際公開第2009/006358号には、CFC-1316の水素化脱塩素反応によるHFC-1336の作製方法が開示されており、触媒はキャリア上に堆積した金属銅であり、且つフッ化カルシウム上に堆積された鉛被毒パラジウムを含み、1%Cu-1%Ni/C触媒作用の下で、反応温度を375℃とし、n(H2):n(R1316)の比を7.5:1とし、接触時間を30秒にした場合、それに応じたCFC-1316の転化率は100%、HFO-1336の選択性は82%、その他の副産物はHCFC-1326であると報告されている。しかし、触媒の安定性には触れていない。
【0018】
その後、2010年のデュポン社の特許:米国特許出願公開第2010/0160696号明細書には、非貴金属触媒が開示されており、当該触媒はクロムと、ニッケルと、カリウムまたはセシウムとを含み、市販のK-Cr-Ni(Kの比率20%)触媒の作用の下で、反応温度を399℃とし、n(H2):n(R1316)の比を3.9:1とし、接触時間を20秒にした場合、それに応じたCFC-1316の転化率は40%、HFO-1316の選択性は77%、その他の副産物はHCFC-1326とヘキサフルオロ-2-ブチンであると報告されている。しかし、触媒の安定性には触れていない。
【0019】
Stepanovら(Russian Journal of Organic Chemistry, 2010, Vol. 46, No. 9, pp. 1290-1295)は、フルオロクロロアルカン類をより良くフッ素含有オレフィンに転化させることができるNi-Cr触媒を提案しており、反応温度が200℃である場合、CFC-1316の転化率は20%、HFO-1336とHCHF-1326の選択性はそれぞれ50%であり、反応温度が240℃である場合、CFC-1316の転化率は75%、HFO-1336の選択性は65%にアップされ、その他の産物はHCFC-1326とHCFC-356であると報告している。
【0020】
周知のとおり、触媒の活性成分や触媒キャリア表面の性質、添加剤修飾および触媒の作製方法の条件などはいずれも触媒の性能に影響をもたらす重要な要素であり、貴金属活性金属と第二添加剤金属にどのように特定の構造形態と電子特性を形成して、選択的に水素と塩素含有有機物を吸着・活性化するのか、どのように解離水素と活性化C-Cl結合とをマッチングして、選択的に目標のフッ素化合物を生成させるのかは、依然として現在、水素化脱塩素触媒反応に用いる触媒の開発における難題の一つである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上記技術課題を解決するために、本発明は、合金相粒子が占める比率が高く、安定性が高く、耐用時間が長い、窒素・リンで修飾された顆粒状炭素担持の二元金属触媒を提供する。前記窒素・リンで修飾された顆粒状炭素担持二元金属触媒をクロロフルオロアルカン類の水素化脱塩素反応に使用する場合、原料の転化率が高く、産物の選択性が高いなどの長所がある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
窒素およびリンで修飾された顆粒状炭素担持二元金属触媒であって、前記触媒は窒素およびリンで修飾された炭素キャリアと、前記炭素キャリア上に担持される金属粒子とを含み、前記金属粒子は、第一金属単体粒子、第二金属単体粒子、および二元金属合金相粒子を含み、前記二元金属合金相粒子が前記金属粒子中に占める百分比は80%以上であり、少なくとも90%の前記合金相粒子の寸法は、1nm~20nmである。好ましくは、前記二元金属相粒子が前記金属粒子中に占める百分比は85~95%であり、少なくとも95%の合金相粒子の寸法は2nm~10nmである。
【0023】
窒素およびリンのヘテロ原子をドーピングすることによって、金属粒子の分散と二元金属合金相粒子の制御可能な合成を促進することができる。窒素、リン、合金相金属粒子およびそれらと相互作用する炭素キャリアのミクロドメインは触媒活性中心を構成し、窒素とリンのヘテロ原子外殻の孤立電子対の相互カップリングによって、二元金属合金相粒子に対する適切な電子供与特性を発現し、二元金属合金相粒子の水素解離とC-Cl結合活性化との二機能活性中心を促進且つ強化し、過剰な水素化と炭素の堆積を効果的に回避するだけでなく、水素とC-Cl結合に対する適切かつ高効率の活性化を実現することができ、クロロフルオロクロロアルカン類の水素化脱ハロゲン触媒反応による高効率且つ安定した合成を実現することができる。
【0024】
上記顆粒状炭素担持の二元金属触媒において、前記炭素キャリア中の、窒素含有量は0.5~10質量%、リン含有量は0.1~5.0重量%であり、好ましくは、炭素キャリア中の、窒素含有量は1.0~8.0重量%、リン含有量は0.5~4.0重量%である。
【0025】
上記顆粒状炭素担持二元金属触媒において、前記炭素キャリアは、ヤシ殻活性炭または木質系活性炭から選択され、前記炭素キャリアの比表面積は800m2/g以上、金属灰分は3.0重量%以下、メソ細孔比率は50%以上、ミクロ細孔比率は50%以下である。好ましくは、前記炭素キャリアは、ヤシ殻活性炭または木質系活性炭から選択され、前記炭素キャリアの比表面積は900~2000m2/g、金属灰分は2.5重量%以下、メソ細孔比率は70%以上、ミクロ細孔比率は30%以下である。さらに好ましくは、前記炭素キャリアはヤシ殻活性炭または木質系活性炭から選択され、前記炭素キャリアの比表面積は1000~1500m2/g、金属灰分は2.5重量%以下、メソ細孔比率は80%以上、ミクロ細孔比率は20%以下である。
【0026】
炭素キャリアの形状と寸法の大きさは、水素化脱塩素反応中の中間体の脱着に対して大きな影響があるため、本発明の炭素キャリアは円柱形の顆粒であり、顆粒の直径は0.1~0.5cm、長さは0.1~0.5cmであり、好ましくは、炭素キャリアの顆粒の直径は0.2~0.4cm、長さは0.1~3cmである。上記顆粒の寸法は、クロロフルオロアルカン類の固定床反応器おける反応での中間体種の脱着に有利であり、炭素堆積を減らし、触媒の耐久性を向上させる。
【0027】
上記顆粒状炭素担持二元金属触媒において、第一金属は、パラジウム、プラチナ、およびルテニウムのうちの少なくとも一つから選択されて、担持量は0.01~4.0%であり、第二金属は、銅、亜鉛および/または錫から選択されて、担持量は0.01~10.0%であり、且つ前記第一金属と第二金属との質量比は0.01~5:1である。好ましくは、第一金属の担持量は0.1~3.0%、第二金属の担持量は0.1~7.5%であり、且つ前記第一金属と第二金属との質量比は0.05~4:1である。
【0028】
本発明はまた、上記いずれかに記載の顆粒状炭素担持二元金属触媒の作製方法を提供し、前記顆粒状炭素担持二元金属触媒は以下の工程によって作製される。
A1.窒素・リン共ドープ炭素微粒子の作製工程
A2.前記窒素・リン共ドープ炭素微粒子を炭素キャリア上に担持させる工程、前記窒素・リン共ドープ炭素微粒子は前記炭素キャリア上に均一に分布され、粒径分布は20nm以内において均一であり、好ましくは、前記炭素微粒子の寸法は1.1~15nmであり、具体的に、1.1~15nmの前記炭素微粒子が占める比率は80%以上、1.1nm未満の前記炭素微粒子が占める比率は5%未満であり、15~20nmの前記炭素微粒子が占める比率は15%未満である。
A3.紫外線ランプの照射の下で、前記窒素・リン共ドープ炭素微粒子を第一アンカーポイントとし、第二金属を前記炭素キャリア上に担持させる工程、および
A4.第一金属を前記炭素キャリア上に担持させる工程。
【0029】
第二金属の指向性堆積および窒素・リン元素と第二金属の相互作用を促進するために、紫外線ランプで照射する。具体的に、200~500Wの紫外線ランプで1~3回照射し、照射は1回あたり2~10分間である。好ましくは、波長がそれぞれ280~320nmと200~280nmである紫外線ランプでそれぞれ2回照射し、照射は1回あたり2~8分間である。
【0030】
第一金属の指向性堆積を実現するために、好ましくは、前記工程A3はさらに、
前記第二金属を前記炭素キャリア上に担持させた後、水素雰囲気中にて、120~300℃の温度下で、前記炭素微粒子に対して熱分解を行い、前記炭素微粒子を熱分解した後、窒素・リン元素、炭素キャリアおよび第二金属の結合部位に第二アンカーポイントを形成させて、第一金属を炭素キャリア上に担持させるのに使用する工程を含む。
【0031】
本発明の顆粒状炭素担持の二元金属触媒の作製方法は、特に、以下の工程を含む。
S1.窒素・リン共ドーピングの炭素微粒子を作製する。
クエン酸、脱イオン水または有機溶媒、および窒素・リン含有物質を、1~4:8~20:1~8の質量比で水熱反応器中に入れて、当該水熱反応器の中にて150~200℃下で、7~14時間水熱反応を行い、水熱反応後のサンプルを取り出して、遠心分離によって大きな顆粒を除去し、上清液を分画分子量1000~500KDの透析袋で袋外に明らかな色が見えないまで透析し、二層の透析袋間の溶液を収集し、遮光低温(20℃以下)の下で、濃縮することによって、窒素・リン共ドープ炭素微粒子水溶液を得るが、前記窒素・リン共ドープ炭素微粒子の水溶液濃度を10~40重量%に制御し、前記窒素・リン共ドープ炭素微粒子は365nmの紫外線の下で、蛍光を発する。
前記窒素・リン含有物質は、リン含有化合物と窒素含有化合物との混合物または窒素・リン含有化合物である。前記リン含有化合物と窒素含有化合物との物質量の比は3:1以下である。前記リン含有化合物は有機ホスフィンであり、トリフェニルホスフィン、フェニルホスホン酸、メチルホスホン酸、およびO,O-ジエチル亜ホスホン酸エステルから選択される少なくとも一つであり、前記窒素含有化合物は、アンモニア、エチレンジアミン、グルタミン酸、セリン、グリシン、アラニン、リジン、アスパラギン酸、およびロイシンから選択される少なくとも一つであり、前記窒素・リン含有化合物は、窒素とリンを両方とも含有する有機物であり、トリフェニルホスフィンアンモニウム、ホスファミドン、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラフェニルホスフィンイミドから選択される少なくとも一つであり、且つ窒素・リン含有化合物を使用する場合には、水熱反応中クエン酸を添加しなくてもよい。
【0032】
S2.窒素・リン共ドープ炭素微粒子を担持させる。
顆粒状炭素を粉塵がなくなるまで水で洗ってから、炭素微粒子溶液中に注ぎ入れて、10~30℃温度の下で、2~8時間浸漬し、その後、脱イオン水で3回洗浄し、ろ過して、真空密封して保存し、窒素・リン共ドープ炭素キャリアを得る。
前記炭素微粒子溶液には、直接上記窒素・リン共ドープ炭素微粒子水溶液を使用することができ、上記調製した窒素・リン共ドープ炭素微粒子水溶液を浸漬液として使用することもでき、その調製条件として、炭素微粒子と顆粒状炭素との質量比は1:1~8であり、且つ浸漬液の総体積と顆粒状炭素との体積比は1~4:1である。
【0033】
S3.第二金属を担持させる。
担持量に応じて第二金属浸漬液を調製し、工程S2で得た窒素・リン共ドープ炭素キャリアを第二金属浸漬液中に注ぎ入れて、加熱して温度を10~25℃から85~95℃まで上げるが、昇温速度を0.5~4℃/分とし、85~95℃の温度にて2~6時間保持する。昇温中に200~500Wの紫外線ランプで1~3回照射し、照射1回あたり2~8分間とする。ろ過・洗浄後、水素雰囲気中にて120~280℃の定温にて3~6時間処理し、炭素微粒子を熱分解させ、その後、第二金属が担持された炭素キャリアを不活性雰囲気中にて保存する。
前記第二金属浸漬液と工程S2で得た窒素・リン共ドープ炭素キャリアとの体積比は1~4:1である。
前記第二金属は、第二金属の硝酸塩またはハロゲン化物であり、好ましくは塩化物である。
【0034】
S4.第一金属を担持させる。
担持量に応じて第一金属浸漬液を調製し、工程S3で得た第二金属が担持された炭素キャリアを第一金属浸漬液中に注ぎ入れ、25~85℃にて2~4時間浸漬し、ろ過洗浄後、窒素・リンで修飾された顆粒状炭素担持の二元金属触媒を得る。
前記第一金属液の総体積と工程S3で得た第二金属が担持された炭素キャリアとの体積比は2~5:1である。
前記第一金属浸漬液は第一金属の硝酸塩または塩化物であり、好ましくは、[PdCl4]2-、[PtCl4]2-、[RuCl4]2-などの塩素と貴金属で形成された錯化合物である。
【0035】
本発明はまた、上記いずれかに記載の顆粒状炭素担持二元金属触媒の応用を提供するが、本発明の顆粒状炭素担持二元金属触媒はC1~C5クロロフルオロアルカン類の固定床における水素化脱塩素反応に特に適している。本発明の顆粒状炭素担持二元金属触媒を使用することによって、C1~C5クロロフルオロアルカン類の転化率は少なくとも約98%であり、産物の選択性は少なくとも約95%である。特に、ジクロロジフルオロメタンからジフルオロメタンを作製、トリクロロトリフルオロエタンからクロロトリフルオロエチレンを作製、2,3-ジクロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンから1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを作製、クロロペンタフルオロエタンからペンタフルオロエタンを作製、または四塩化炭素からトリクロロメタンを作製することに適している。
【0036】
本発明はまた、クロロトリフルオロエチレンの作製方法を提供するが、当該作製方法はトリクロロトリフルオロエタンを原料として、上記いずれかに記載の顆粒状炭素担持二元金属触媒が存在する条件下で反応が行われる。当該トリクロロトリフルオロエタンの転化率は少なくとも約98%であり、トリフルオロトリクロロエチレンの選択性は少なくとも約95%であり、且つ前記産物中には少なくとも約1%未満のクロロトリフルオロエタンが含まれる。
【0037】
前記クロロトリフルオロエチレンの作製方法は、具体的に以下の工程を含む。
B1.顆粒状炭素担持二元金属触媒を固定床反応器に入れて、アンモニアガスとクロロフルオロエタンとの混合ガスを通し、アンモニア:クロロフルオロエタンのモル比を50~100:1とし、空間速度を10000~50000時間-1とし、0.5~3.5℃/分の速度で温度を300~400℃に上げて、1~5時間保温してから反応温度まで下げる工程。
前記アンモニアガスは、水素またはアンモニアガスと水素との任意比率の混合物を使用することができ、前記クロロフルオロエタンは、ジクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、ジクロロトリフルオロエタン、クロロトリフルオロエタンのうちの一つ、または任意比率のこれらの混合物を使用することができる。
B2.水素とトリクロロトリフルオロエタンで構成される混合ガスを通し、H2:トリクロロトリフルオロエタンのモル比を1.5~4.0:1とし、空間速度を120~500時間-1とし、反応温度を150~300℃とする工程。
【0038】
好ましくは、トリフルオロエチレンの作製に用いる顆粒状炭素担持二元金属触媒の作製において、寸法が10nm以下の炭素微粒子を使用し、さらに好ましくは、寸法が3.5~8.5nmの炭素微粒子を使用する。具体的に、3.5~8.5nmの炭素微粒子が占める比率は80%以上であり、3.5nm未満の炭素微粒子が占める比率は15%未満であり、8.5~10nmの炭素微粒子が占める比率は5%未満である。
【0039】
好ましくは、上記反応器内径の寸法は、触媒顆粒寸法の10~20倍である。
【0040】
本発明は、また1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの作製方法を提供するが、当該作製方法は、2,3-ジクロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを原料として、上記いずれかに記載の顆粒状炭素担持二元金属触媒が存在する条件下で反応が行われる。当該2,3-ジクロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの転化率は少なくとも約98%であり、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの選択性は少なくとも約95%であり、且つ当該産物中には少なくとも1%未満の2-クロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンが含まれている。
【0041】
上記1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの作製方法は、具体的に以下の工程を含む。
C1.顆粒状炭素担持二元金属触媒を固定床反応器に入れて、水素とジクロロジフルオロエタンとの混合ガスを通し、H2:ジクロロジフルオロエタンのモル比を50~100:1とし、空間速度を10000~50000時間-1とし、0.5~3.5℃/分の速度で温度を300~400℃に上げて、1~5時間保温してから反応温度まで下げる工程。
C2.水素と2,3-ジクロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンで構成される混合ガスを通し、H2:2,3-ジクロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンのモル比を1.5~4.0:1とし、空間速度を120~600時間-1とし、反応温度を150~350℃とする工程。
【0042】
好ましくは、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの作製に用いる顆粒状炭素担持二元金属触媒の作製において、寸法が15nm以下の炭素微粒子を使用し、さらに好ましくは、寸法が8.5~12.5nmの炭素微粒子を使用する。具体的に、8.5~12.5nmの炭素微粒子が占める比率は80%以上であり、8.5nm未満の炭素微粒子が占める比率は5%未満であり、12.5~15nmの炭素微粒子が占める比率は15%未満である。
【0043】
好ましくは、上記反応器内径の寸法は、触媒顆粒寸法の10~20倍である。
【発明の効果】
【0044】
1.本発明は、表面官能基を豊富に有する炭素微粒子を窒素とリン元素の「キャリア」とするため、環境に優しくて、汚染がない。
2.本発明の炭素微粒子は先ず導入されてから熱分解を行い、導入した窒素・リン共ドープ炭素微粒子を炭素キャリア表面に均一に担持させ、第一アンカーポイントとなる炭素微粒子は第二金属の指向性堆積と均一な分布を誘導する。熱分解された炭素微粒子は、窒素・リン元素、炭素キャリア、および第二金属を安定に結合させて第二アンカーポイントを形成させ、第一金属粒子と第二金属粒子の対応する結合を促進し、孤立の第二金属粒子と第一金属粒子とを減らし、合金相粒子の比率を大きく増大させ、最高95%にも達することができ、クロロフルオロアルカン類の選択的水素化脱塩素触媒反応の理想的な活性構造が得られ、触媒の活性部位の安定性が増強され、金属の利用率が向上し、触媒のコストを著しく低減する。
3.本発明は第二金属の担持中に紫外線照射を使用して、第二金属の指向性堆積を促進し、窒素・リン元素と第二金属との結合の安定性を強化し、後続の二元金属合金相粒子の形成に有利である。
4.本発明の触媒を、水素化脱塩素触媒反応に使用することによって、原料の転化率と製品の選択性を向上することができ、また触媒効率が高く、触媒の安定性が良く、耐用期間が長い。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、具体的な実施例と共に本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに具体的な実施例に限定されるものではない。本分野の技術者なら、本発明は特許請求の範囲で請求される保護範囲は、可能性のあるすべての予備技術手段や改良手段および等価手段を含むことを理解すべきである。
【0046】
本発明の実施例において、窒素含有化合物はグルタミン酸であり、リン含有化合物はフェニルホスフィン酸であり、窒素・リン含有化合物はトリフェニルホスフィンアンモニウムである。
【0047】
実施例1
窒素・リン共ドープ炭素微粒子の作製: 4:15:5の質量比で、クエン酸、脱イオン水、および窒素・リン含有物質(モル比が1:2であるフェニルホスフィン酸とグルタミン酸の混合物)を水熱反応器に入れて、水熱反応器中にて185~190℃下で、10時間水熱反応を行い、水熱反応後のサンプルを取り出して、遠心分離によって大きな顆粒を除去し、上清液をさらに分画分子量1000~25000の透析袋で袋外に明らかな色が見えないまで透析し、二層の透析袋間の溶液を収集し、遮光5~10℃下で、濃縮することによって、窒素・リン共ドープ炭素微粒子水溶液を得、その水溶液の濃度を35重量%に制御した。
【0048】
窒素・リン共ドーピング炭素キャリアの作製: 顆粒状炭素を粉塵がなくなるまで水で洗浄してから、炭素微粒子溶液中に注ぎ入れて、18~20℃の温度下で6時間浸漬し、その後、脱イオン水で3回洗浄し、ろ過して、真空密封して保存し、窒素・リン共ドープ炭素キャリアを得た。炭素微粒子と顆粒状炭素の質量比を1:3.5とし、且つ浸漬液の総体積と顆粒状炭素との体積比を3.5:1とした。顆粒状炭素の直径は0.2cm、長さは2cm、比表面積は950m2/g、灰分は2.2重量%、メソ細孔比率は89%であった。
【0049】
第二金属を担持: 2.5重量%の担持量で塩化銅浸漬液(塩化銅浸漬液と窒素・リン共ドープ炭素キャリアとの体積比は3.5:1)を調製し、上記得られた窒素・リン共ドープ炭素キャリアを速やかに塩化銅浸漬液中に注ぎ入れて、加熱し、2℃/分の速度で15℃から90℃に温度を上げて、定温にて3時間保持し、この期間300Wの紫外線ランプで2回照射し、照射は1回あたり3分間とし、波長はそれぞれ280nmと300nmとし、濾過して洗浄後、水素雰囲気下で200℃の定温にて6時間処理し、その後、窒素ガスで密封して保存した。
【0050】
第一金属を担持: 1.5重量%の担持量でクロロパラジウム酸浸漬液(クロロパラジウム酸浸漬液の総体積と上記得られた第二金属が担持された炭素キャリアとの体積比は4:1)を調製し、その後、第二金属が担持された炭素キャリアを速やかにクロロパラジウム酸浸漬液中に注ぎ入れて、30℃下で2時間浸漬し、ろ過し洗浄して、窒素・リンで修飾された顆粒状炭素担持二元金属触媒を、触媒1として得た。当該触媒1の合金相粒子が占める比率は95%であり、粒子の寸法は5nm、窒素含有量は5.68重量%、リン含有量は3.78重量%であった。
【0051】
実施例2
本実施例中の触媒の作製工程は、第二金属の担持に4.0重量%担持量の塩化銅浸漬液を使用し、第一金属の担持に0.5重量%担持量のクロロパラジウム酸浸漬液を使用した点以外は、実施例1と同じである。得られた触媒を触媒2とし、前記触媒2の合金相粒子が占める比率は92%であり、粒子の寸法は10nm、窒素含有量は6.18重量%、リン含有量は3.48重量%であった。
【0052】
実施例3
本実施例中の触媒の作製工程は、第二金属の担持に1.5重量%担持量の塩化錫浸漬液を使用し、第一金属の担持に1.0重量%担持量のクロロパラジウム酸浸漬液を使用したこと以外は、実施例1と同じである。得られた触媒を触媒3とし、前記触媒3の合金相粒子が占める比率は89%であり、粒子の寸法は5nm、窒素含有量は3.78重量%、リン含有量は2.28重量%であった。
【0053】
実施例4
本実施例中の触媒の作製工程は、第二金属の担持に1.0重量%担持量の塩化亜鉛浸漬液を使用し、第一金属の担持に0.5重量%担持量のクロロパラジウム酸浸漬液を使用したこと以外は、実施例1と同じである。得られた触媒を触媒4とし、前記触媒4の合金相粒子が占める比率は93%であり、粒子の寸法は6nm、窒素含有量は4.78重量%、リン含有量は3.26重量%であった。
【0054】
実施例5
本実施例中の触媒の作製工程は、第二金属の担持中、250Wの紫外線ランプで2回照射し、照射は1回あたり3分間とし、波長をそれぞれ260nmと310nmとしたこと以外は、実施例1と同じである。得られた触媒を触媒5とし、前記触媒5の合金相粒子が占める比率は93%であり、粒子の寸法は5nm、窒素含有量は2.78重量%、リン含有量は2.28重量%であった。
【0055】
実施例6
本実施例中の触媒の作製工程は、第二金属の担持中、水素雰囲気下で、280℃の定温にて4時間処理したこと以外は、実施例1と同じである。得られた触媒を触媒6とし、前記触媒6の合金相粒子が占める比率は95%であり、粒子の寸法は8nm、窒素含有量は3.98重量%、リン含有量は1.28重量%であった。
【0056】
実施例7
本実施例中の触媒の作製工程は、窒素・リン共ドープ炭素微粒子の作製中、10:5の質量比で、脱イオン水とトリフェニルホスフィンアンモニウムを取って水熱反応を行ったこと以外は、実施例1と同じである。得られた触媒を触媒7とし、前記触媒7の合金相粒子が占める比率は91%であり、粒子の寸法は7nm、窒素含有量は3.88重量%、リン含有量は3.58重量%であった。
【0057】
実施例8
本実施例中の触媒の作製工程は、窒素・リン共ドープ炭素キャリアの作製中、顆粒状炭素の直径を0.2cm、長さを0.5cm、比表面積を1200m2/g、灰分を2.0重量%、メソ細孔比率を80%としたこと以外は、実施例1と同じである。得られた触媒を触媒4とし、前記触媒4の合金相粒子が占める比率は95%であり、粒子の寸法は8nm、窒素含有量は4.68重量%、リン含有量は3.08重量%であった。
【0058】
実施例9
本実施例中の触媒の作製工程は、炭素微粒子の合成中、上清液をさらに分画分子量25KD-50KDの透析袋で透析したこと以外は、実施例1と同じである。得られた触媒を触媒9とし、前記触媒9の合金相粒子が占める比率85は%であり、粒子の寸法は8nm、窒素含有量は3.58重量%、リン含有量は2.98重量%であった。
【0059】
実施例10
本実施例中の触媒の作製工程は、第二金属が担持された炭素キャリアを第一金属浸漬液中に注ぎ入れて、65℃下で2時間浸漬したこと以外は、実施例1と同じである。得られた触媒を触媒10とし、前記触媒10の合金相粒子が占める比率85は%であり、粒子の寸法は12nm、窒素含有量は7.78重量%、リン含有量は3.38重量%であった。
【0060】
実施例11
本実施例中の触媒の作製工程は、第二金属の浸漬中、1.0℃/分の昇温速度で10℃から95℃まで温度を上げて、定温にて6時間保持したこと以外は、実施例1と同じである。得られた触媒を触媒11とし、前記触媒11の合金相粒子が占める比率88は%であり、粒子の寸法は6nm、窒素含有量は6.18重量%、リン含有量は3.78重量%であった。
【0061】
比較例1
本比較例中の触媒の作製工程は、第二金属の担持に15重量%担持量の塩化銅浸漬液を使用し、第一金属の担持に5.5重量%担持量のクロロパラジウム酸浸漬液を使用したこと以外は、実施例1と同じである。得られた触媒を触媒B1とし、前記触媒B1の合金相粒子が占める比率は50%であり、粒子の寸法は28nm、窒素含有量は5.28重量%、リン含有量は2.28重量%であった。
【0062】
比較例2
本比較例中の触媒の作製工程は、窒素・リン共ドープ炭素キャリアの作製中、顆粒状炭素の直径を1.0cm、長さを8cm、比表面積を900m2/g、灰分を4.5重量%、メソ細孔比率を30%としたこと以外は、実施例1と同じである。得られた触媒を触媒B2とし、前記触媒B2の合金相粒子が占める比率は55%であり、粒子の寸法は18nm、窒素含有量は4.79重量%、リン含有量は2.38重量%であった。
【0063】
比較例3
本比較例中の触媒の作製工程は、第二金属の担持中、紫外線照射をしなかったこと以外は、実施例1と同じである。得られた触媒を触媒B3とし、前記触媒B3の合金相粒子が占める比率は40%であり、粒子の寸法は10nm、窒素含有量は7.75重量%、リン含有量は4.21重量%であった。
【0064】
比較例4
本比較例中の触媒の作製工程は、第二金属の担持中、300W紫外線ランプで5回照射し、照射は1回あたり12分間とし、波長を220nmとしたこと以外は、実施例1と同じである。得られた触媒を触媒B4とし、前記触媒B4の合金相粒子が占める比率は70%であり、粒子の寸法は30nm、窒素含有量は6.08重量%、リン含有量は3.88重量%であった。
【0065】
比較例5
本比較例中の触媒の作製工程は、第二金属の担持中、炭素微粒子に対する熱分解を行なわなかったこと以外は、実施例1と同じである。得られた触媒を触媒B5とし、前記触媒B5の合金相粒子が占める比率は55%であり、粒子の寸法は12nm、窒素含有量は10.88重量%、リン含有量は4.98重量%であった。
【0066】
比較例6
本比較例中の触媒の作製工程は、炭素微粒子の作製中、リン元素をドーピングせず、4:10:5の質量比で、クエン酸、脱イオン水および窒素含有物質(グルタミン酸混合物)を取って、水熱反応を行なったこと以外は、実施例1と同じである。得られた触媒を触媒B6とし、前記触媒B6の合金相粒子が占める比率は65%であり、粒子の寸法は10nm、窒素含有量は4.78重量%であった。
【0067】
比較例7
本比較例中の触媒の作製工程は、炭素微粒子の作製中、窒素元素をドーピングせず、4:12:3の質量比で、クエン酸、脱イオン水およびリン含有物質(フェニルホスホン酸)を取って、水熱反応を行なったこと以外は実施例1と同じである。得られた触媒を触媒B7とし、前記触媒B7の合金相粒子が占める比率は60%であり、粒子の寸法は12nm、リン含有量は3.28重量%であった。
【0068】
比較例8
本比較例中の触媒の作製工程は、炭素微粒子の作製中、ヘテロ原子をドーピングしなかったこと以外は実施例1と同じである。得られた触媒を触媒B8とし、前記触媒B8の合金相粒子が占める比率は35%であり、粒子の寸法は11nmであった。
【0069】
比較例9
本比較例中の触媒の作製工程は、炭素微粒子の作製中、窒素元素と硫黄元素をドーピングし、4:10:6の質量比で、クエン酸、脱イオン水および窒素・硫黄含有物質(システイン)(窒素と硫黄元素を同時に含有)を取って、水熱反応を行なったこと以外は実施例1と同じである。得られた触媒を触媒B9とし、前記触媒B9の合金相粒子が占める比率は75%であり、粒子の寸法は10nm、窒素含有量は8.79重量%、硫黄含有量は3.78重量%であった。
【0070】
比較例10
本比較例中の触媒の作製工程は、炭素微粒子の作製中、硫黄元素と窒素元素をドーピングし、4:14:6の質量比で、クエン酸、脱イオン水および硫黄・リン含有物質(モル比1:2のジフェニルスルホンおよびフェニルホスホン酸)を取って、水熱反応を行なったこと以外は実施例1と同じである。得られた触媒を触媒B10とし、前記触媒B10の合金相粒子が占める比率は60%であり、粒子の寸法は10nm、硫黄含有量は6.18重量%、リン含有量は3.98重量%であった。
【0071】
比較例11
本発明の背景技術の特許:中国特許出願公開第109999877号明細書に記載の触媒作製工程を使用し、つまり、炭素微粒子水溶液を調製し、M/C触媒(Mは第二金属)を調製した後、実施例1の方法によって、第一金属成分を含浸させて、得られた触媒を触媒B11とした。前記触媒B11の合金相粒子が占める比率は65%であり、粒子の寸法は12nm、硫黄含有量は4.78重量%、リン含有量は3.58重量%であった。
【0072】
比較例12
本実施例中の触媒の作製工程は、炭素微粒子の合成中、上清液をさらに分画分子量600KDの透析袋で透析して、袋内の溶液を収集したこと以外は実施例1と同じである。得られた触媒を触媒B12とし、前記触媒B12の合金相粒子が占める比率45は%であり、粒子の寸法は25nm、窒素含有量は4.68重量%、リン含有量は2.98重量%であった。
【0073】
実施例12
本実施例は、トリクロロトリフルオロエタンの水素化脱塩化水素の触媒反応によるクロロトリフルオロエチレン作製における窒素・リンで修飾された顆粒状炭素担持二元金属触媒の応用である。
【0074】
5gの触媒1(直径0.1cm、長さ0.4cm)を、内径100nmの固定床反応器中に入れた。その後、0.5℃/分の昇温速度で室温から300℃まで温度を上げて、定温にて5時間保持し、ガスはアンモニア/水素とクロロフルオロエタン(例えば、ジクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン)の混合ガスとし、そのモル比は100:1とし、空間速度は25000時間-1とした。最後に、温度を220℃まで下げた。モル比が1.5:1の水素とトリクロロトリフルオロエタンで構成された混合ガスを通し、、空間速度を280時間-1とし、反応温度を220℃とした。水素化産物について、Agilent 7890Aを用いてガスクロマトグラフ分析を行った結果、転化率は100%、クロロトリフルオロエチレンの選択性は98.74%であった。
【0075】
実施例2~11と比較例1~12の触媒をそれぞれ、トリクロロトリフルオロエタンからクロロトリフルオロエチレンを作製する反応に使用し、触媒の前処理条件と反応条件を調整して、合金相粒子が占める割合が異なる触媒の反応転化率と選択性に対する影響を調べた。その詳細を、以下の表1に示す。
【0076】
【0077】
実施例13
本実施例でのクロロトリフルオロエタンの作製は、触媒反応を行なう前に触媒の前処理をしなかったこと以外は、実施例12の触媒1に対応する作製プロセスと同じである。その結果、転化率は78.67%、選択性は83.25%であった。
【0078】
実施例14
実施例12の触媒1の応用について耐久性実験を行った。その結果、1000時間後、転化率は99.67%、選択性は96.25%であった。
【0079】
実施例15
触媒5を使用して、中国特許出願公開第105457651号明細書に記載の触媒安定性試験条件下(触媒の添加量を10g、反応温度を210℃、常圧、空間速度を200時間-1、水素とトリクロロトリフルオロエタンの体積比を2:1とする)で、本実施例の触媒安定性実験を行った。その結果、2000時間における本実施例の転化率は依然として99.48%、選択性は98.14%であって、中国特許出願公開第CN105457651号明細書に開示された結果に比べて高かった。3000時間の時に、本実施例は中国特許出願公開第許CN105457651号明細書に比べて、転化率が約2.3%高く、選択性が約1.4%高かった。
【0080】
実施例16
実施例12の触媒D8の応用について耐久性実験を行った。その結果、1000時間後の転化率は59.35%、選択性は76.65%であった。
【0081】
実施例17
本実施例は、2,3-ジクロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの水素化脱塩化水素触媒反応による1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン作製における窒素・リンで修飾された顆粒状炭素担持二元金属触媒の応用である。
【0082】
5gの触媒1(直径0.1cm、長さ0.5cm)を、内径80mmの固定床反応器中に入れた。その後、0.5℃/分の昇温速度で室温から300℃まで温度を上げて、定温にて5時間保持した。ガスは水素とジクロロジフルオロエタンの混合ガスとし、そのモル比は100:1とし、空間速度は30000時間-1とした。最後に、温度を220℃まで下げた。
【0083】
モル比が1.5:1で水素と2,3-ジクロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンで構成された混合ガスを通し、、空間速度を250時間-1とし、反応温度を250℃とした。水素化産物についてAgilent 7890Aを用いてガスクロマトグラフ分析を行った結果、転化率は98.54%、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの選択性は96.64%であった。
【0084】
実施例2~11と比較例1~12の触媒をそれぞれ、2,3-ジクロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンから1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを作製する反応に使用し、触媒の前処理条件と反応条件を調整して、合金相粒子が占める割合が異なる触媒の反応転化率と選択性に対する影響を調べた。その詳細を、以下の表2に示す。
【0085】
【0086】
実施例18
本実施例中の1,1,14,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの作製は、本実施例の触媒反応を行う前に触媒の前処理を行わなかったこと以外は、実施例17中の触媒3の応用と同じである。その結果、転化率は75.68%、選択異性は70.05%であった。
【0087】
実施例19
実施例17の触媒4の応用についての耐久性実験を行った。その結果、800時間後、転化率は98.22%、選択性は95.35%であった。
【0088】
実施例20
実施例17の触媒B10の応用についての耐久性実験を行った。その結果、800時間後、転化率は55.75%、選択性は60.25%であった。
【0089】
実施例21
本実施例は四塩化炭素の水素化脱塩化水素触媒反応によるトリクロロメタン作製における窒素・リンで修飾された顆粒状炭素担持二元金属触媒の応用である。
【0090】
5gの触媒1(直径0.1cm、長さ0.2cm)を、内径35nmの固定床反応器中に入れた。その後、2℃/分の昇温速度で室温から280℃まで温度を上げて、定温にて3時間保持した。ガスは水素とクロロフルオロエタン(例えば、ジクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン)の混合ガスとし、そのモル比は70:1とし、空間速度は25000時間-1とした。最後に、温度を150℃まで下げた。モル比が1:2.1:3の水素と四塩化炭素と窒素とで構成された混合ガスを通し、空間速度を1500時間-1とし、反応温度を150℃とした。水素化産物についてAgilent 7890Aを用いてガスクロマトグラフ分析を行った結果、転化率は99.85%、トリクロロメタンの選択性は95.58%であった。
【0091】
実施例2~11と比較例1~12の触媒をそれぞれ、四塩化炭素からトリクロロメタンを作製する反応に使用し、触媒の前処理条件と反応条件を調整して、合金相粒子が占める割合が異なる触媒の反応転化率と選択性に対する影響を調べた。その詳細を、以下の表3に示す。
【0092】
【0093】
実施例22
本実施例中のトリオクロロメタンの作製は、本実施例の触媒反応を行う前に触媒の前処理を行わなかったこと以外は、実施例21中の触媒3の応用と同じである。その結果、転化率は72.78%、選択性は78.35%であった。
【0094】
実施例23
実施例21の触媒8の応用についての耐久性実験を行った。その結果、1000時間後、転化率は98.57%、選択性は95.75%であった。
【0095】
実施例24
実施例21の触媒B5の応用についての耐久性実験を行った。その結果、800時間後、転化率は55.15%、選択性は69.65%であった。