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特許7411788第一スズイオン源、中性アミノ酸、及びポリホスフェートを含む口腔ケア組成物
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  • 特許-第一スズイオン源、中性アミノ酸、及びポリホスフェートを含む口腔ケア組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】第一スズイオン源、中性アミノ酸、及びポリホスフェートを含む口腔ケア組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20231228BHJP
   A61K 8/21 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20231228BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/21
A61K8/24
A61K8/25
A61K8/27
A61K8/34
A61K8/44
A61K8/55
A61Q11/00
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022518828
(86)(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(86)【国際出願番号】 CN2019109425
(87)【国際公開番号】W WO2021062621
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】シ、ユンミン
(72)【発明者】
【氏名】ロス、ストランド
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05281410(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0136432(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔ケア組成物であって、
a)前記組成物の0.01重量%~5重量%の第一スズイオン源と、
b)前記組成物の0.01重量%~10重量%の中性アミノ酸としてグリシンまたはその塩と、
c)ポリホスフェートと、
を含み、リン酸イオンの濃度が、10mMol~200mMolである、口腔ケア組成物。
【請求項2】
前記口腔ケア組成物が、5~10のpHを有する、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項3】
リン酸イオンの濃度が、10mMol~150mMolである、請求項1または2に記載の口腔ケア組成物。
【請求項4】
記中性アミノ酸が、前記組成物の0.05重量%~5重量%の量で存在する、請求項1~のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項5】
前記第一スズイオン源が、前記組成物の0.05重量%~4量の量で存在する、請求項1~のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項6】
前記第一スズイオン源が、塩化第一スズ、フッ化第一スズ、酢酸第一スズ、グルコン酸第一スズ、シュウ酸第一スズ、硫酸第一スズ、乳酸第一スズ、酒石酸第一スズ、ヨウ化第一スズ、クロロフッ化第一スズ、ヘキサフルオロジルコン酸第一スズ、クエン酸第一スズ、リンゴ酸第一スズ、グリシン酸第一スズ、炭酸第一スズ、リン酸第一スズ、ピロリン酸第一スズ、メタリン酸第一スズ、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項7】
前記ポリホスフェートが、ピロホスフェート、トリポリホスフェート、ヘキサメタホスフェート、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項8】
前記口腔ケア組成物が、前記組成物の0.1重量%~25重量%のポリホスフェートを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項9】
前記口腔ケア組成物が、前記組成物の12.75重量%未満のポリホスフェートを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項10】
前記口腔ケア組成物が、前記組成物の13.25重量%超のポリホスフェートを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項11】
前記口腔ケア組成物が、前記組成物の0.1重量%~5重量%の亜鉛イオン源を更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項12】
前記亜鉛イオン源が、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、リン酸亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の口腔ケア組成物。
【請求項13】
前記口腔ケア組成物が、前記組成物の0.0025重量%~10重量%のフッ化物イオン源を更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項14】
前記フッ化物イオン源が、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化インジウム、フッ化アミン、フッ化亜鉛、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項13項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項15】
前記口腔ケア組成物が、前記組成物の0.01重量%~10重量%の増粘剤を更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項16】
前記増粘剤が、増粘ポリマー、増粘シリカ、又はこれらの混合物から選択される、請求項15に記載の口腔ケア組成物。
【請求項17】
前記口腔ケア組成物が、前記組成物の1重量%~35重量%の研磨剤を更に含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項18】
前記研磨剤が、カルシウム含有研磨剤、ナトリウム含有研磨剤、シリカ研磨剤、又はこれらの混合物から選択される、請求項17に記載の口腔ケア組成物。
【請求項19】
前記口腔ケア組成物が、前記組成物の1重量%~60重量%の保湿剤を更に含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項20】
前記保湿剤が、ポリオールである、請求項19に記載の口腔ケア組成物。
【請求項21】
前記組成物が、4.5~1のpHを有する、請求項1~20のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一スズイオン源、中性アミノ酸、及びポリホスフェートを含み、リン酸イオンの濃度が少なくとも約10mMolである口腔ケア組成物に関するものである。このような口腔ケア組成物は、処理された表面への第一スズイオンの送達とバイオフィルムへの浸透を改善するために有用であり、同時に、渋みや金属味を伴わない快適な感覚を維持することで、製品のコンプライアンスと使用習慣が確保され、口腔の健康の利益が得られる。
【背景技術】
【0002】
歯垢(デンタルバイオフィルムとも呼ばれる)は、歯の表面に常に形成されている細菌の粘着性のある無色の堆積物である。歯垢は、概ね細菌と細胞外のポリマー物質(いわゆる「EPS」)で構成されている。EPSは、バイオフィルムの微生物が埋め込まれた微生物由来のバイオポリマーである。J.Bacteriol.2007,189(22):7945。唾液、食べ物、及び体液が混ざり合い、歯と歯肉の境目にこれらの堆積物が生じる。歯垢の蓄積は、虫歯や歯肉炎などの歯周(歯肉)病につながる可能性のある口腔衛生不良の主な要因である。歯磨剤組成物が歯垢を予防及び抑制するのに役立つ方法の1つは、抗菌剤を活用することによる。しかし、欠点及び製剤の課題は、抗菌剤と製剤成分との意図しない反応性である。これには、酸化分解、加水分解、オキシ水酸化物種の吸着又は沈殿が含まれる場合があり、これらはいずれも抗菌剤のバイオアベイラビリティに影響を与える場合がある。歯垢の形成を防ぎ、及び/又は抗菌剤の使用を最小限に抑えるのに役立つような製剤を提供することが引き続き求められている。
【0003】
フッ化第一スズなどの第一スズ塩を含む第一スズイオン源は、例えば、歯のバイオフィルムを防止又は除去する抗菌効果を提供するために、口腔ケア組成物に使用されてきた。しかしながら、従来の第一スズ含有口腔ケア組成物には欠点がある。有効なフッ化第一スズ製剤の使用中に通常生じる欠点としては、第1に、当該製剤のもつ許容できないほどの渋みがある。また、スズ(II)イオンは、スズ(IV)に酸化しやすく、水酸化第一スズとして水溶液から沈殿しやすいので、第一スズイオンを安定して製剤化することには別の欠点もある。このような第一スズ含有口腔ケア組成物は、消費者にとって望ましくない金属味を呈することもある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】J.Bacteriol.2007,89(22):7945
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、従来の第一スズ含有口腔ケア組成物に関連する典型的な欠点なしに、消費者に快適な感覚を維持しながら、抗菌効果とバイオフィルム浸透性を提供するために、第一スズ含有口腔ケア組成物を改善することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも部分的に、中性アミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、又はこれらの組み合わせ)、第一スズイオン源、及びポリホスフェートを口腔ケア組成物に組み合わせることで、バイオフィルムの形成を阻害したり、バイオフィルムの破壊を助けたりする改善効果が得られるという驚くべき発見に基づいて、この必要性に対処しようとするものである。具体的に言えば、口腔ケア組成物は、歯肉創傷治癒のための中性アミノ酸と、口腔内の細菌活性による望ましくない効果に対抗するための抗菌剤としての第一スズイオン源と、を含む。
【0007】
本発明の1つの利点は、「バイオフィルムへのより深い浸透及び/又は細菌の死滅」である。この目的に関し、更に驚くべきことに、第一スズイオンのバイオフィルム内への浸透深さ及び/又は浸透速度は、中性アミノ酸とポリホスフェートを組み合わせて使用した場合に増加させることができることが見出された。要するに、口腔ケア組成物における中性アミノ酸、第一スズイオン源、及びポリホスフェートの組み合わせは、歯肉の健康上の効果が改善するようなものであり得る。更に、第一スズの浸透性が高まることで、到達しにくい嫌気性菌やリポリサッカライド(LPS)などの内毒素を処理、抑制、中和することができる。
【0008】
本発明の利点は、バイオフィルム内への抗菌剤(複数可)の浸透深さが改善された口腔ケア組成物を提供するというものである。本発明のなおも更なる利点は、バイオフィルム内への抗菌剤(複数可)の浸透速度が改善された口腔ケア組成物を提供することである。更に、驚くべきことに、本発明において中性アミノ酸を使用することで、バイオフィルム内への抗菌剤の浸透深さ及び/又は浸透速度の改善達成を促進することが見出された。
【0009】
本発明のなおも更なる利点は、高費用効率と、歯肉健康を促進するのに有効な口腔ケア組成物とを提供することである。なおも更なる利点は、口腔ケア組成物が歯磨剤であり、好ましくは心地よい味及び口当たりの体験を提供するというものである。なおも更なる利点は、口腔ケア組成物が、広範な製造条件、取り扱い条件、及び保管条件にわたって物理的安定性及び化学的安定性を有するというものである。なおも更なる利点は、40℃で3ヶ月保管した後であっても、口腔ケア組成物が安定した品質の最終製品(例えば、一貫した視覚的外観及び変色なし、歯肉創傷治癒性能など)を有することである。この目的に関し、驚くべきことに、中性アミノ酸を使用することで、最終製品において、塩基性アミノ酸(例えば、リジン)の場合よりも良好な安定した品質を達成するのに役立つことが見出された。またなおも更なる利点は、本発明の口腔ケア組成物が、抗菌剤の使用を最小限に抑えるというものである。またなおも更なる利点は、本発明の口腔用組成物が、上述の不安定性及び/又は変色の問題を低減及び/又は排除するための中性アミノ酸の量を最小限に抑えるというものである。
【0010】
一態様では、本発明は、第一スズイオン源、中性アミノ酸、及びポリホスフェートを含む組成物に関する。好ましくは、組成物は、口腔ケア組成物である。より好ましくは、組成物は、a)当該組成物の約0.01重量%~約5重量%、好ましくは約0.05重量%~約4重量%の第一スズイオン源と、b)当該組成物の約0.01重量%~約10重量%、好ましくは約0.05重量%~約5重量%の中性アミノ酸と、を含む。好ましくは、中性アミノ酸は、アラニン、アミノ酪酸、アスパラギン、システイン、シスチン、グルタミン、グリシン、ヒドロキシプロリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、タウリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、これらの塩、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、中性アミノ酸は、グリシン、アスパラギン、グルタミン、これらの塩、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0011】
本発明の別の態様では、対象における歯肉健康を促進するための方法であって、本発明の口腔ケア組成物を対象の口腔に投与することを含む、方法が提供される。
【0012】
本発明の更に別の態様では、対象における歯肉健康を促進するための、口腔ケア組成物を作製するための中性アミノ酸の使用が提供される。
【0013】
本発明のこれらの特徴及びその他の特徴は、以下の詳細な説明を添付の特許請求の範囲と併せて検討することで当業者には明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite、「HA」)ディスクが取り付けられた口腔スプリントの斜視図である。
図2】内部に溝を有するHAディスクの斜視図である。
図3】内部にバイオフィルムを有する溝の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
本明細書で使用するとき、「a」及び「an」などの冠詞は、特許請求の範囲で使用する場合、請求又は記載されているもののうちの1つ以上を意味するものと理解される。
【0016】
「緩和する(alleviate)」及び「緩和する(alleviating)」という用語は、互換的に使用され、歯肉疾患の少なくとも1つの症状を予防、遅延、治療、及び/又は最小限に抑え、ユーザーに好ましい変化(すなわち、利益)をもたらすことを意味する。
【0017】
本明細書で使用するとき、「バイオフィルム」という用語は、マトリックスに封入された細菌集団の、互いに対する及び/又は口腔内の表面若しくは界面に対する付着を意味する。
【0018】
本明細書で使用するとき、用語「含む」とは、特に言及したもの以外の工程、及び成分を付加できることを意味する。この用語は、「~からなる(consisting of)」及び「~から本質的になる(consisting essentially of)」という用語を包含する。本発明の組成物は、本明細書に記載される本発明の必須要素及び制限事項、並びに本明細書に記載されるあらゆる追加成分若しくは任意成分、構成要素、工程、又は制限事項を含み、これらからなり、あるいは、これらから本質的になることができる。
【0019】
本明細書で使用するとき、「歯磨剤」という用語は、特に指定されない限り、口腔表面をクリーニングするために使用されるペースト、ゲル、粉剤、錠剤、又は液体製剤を意味する。
【0020】
本明細書で使用するとき、「歯肉ケア」という用語は、主に、早期段階の歯肉疾患(すなわち、歯肉炎)に関連する1つ以上の症状を緩和することを対象とする、口腔ケア組成物が備え持つ又は促進された利益を指す。かかる症状には、例えば、歯肉の出血、及び歯肉の発赤、腫脹又は柔らかくなってしまっている状態を含み得る。
【0021】
本明細書で使用するとき、用語「歯肉健康」とは、歯肉創傷治癒を少なくとも改善することを含む「歯肉ケア」上の利益を提供する、並びに歯肉炎、歯周炎又はこれらの両方を含む歯肉疾患に関し細菌の有害な影響を軽減するように細菌活性の低減の更なる改善を提供する、口腔ケア組成物の固有の又は促進された利益を指す。
【0022】
本明細書で使用するとき、「口腔ケア組成物(「oral care composition」又は「oral care compositions」)という用語は、通常の使用過程で、口腔作用の目的のために、一部又は全ての歯科表面及び/又は口腔組織に接触するのに十分な時間にわたって、口腔内で保持される製品を意味する。一態様では、組成物は、口腔内で使用されたときに歯肉ケア上の利益を提供する。本発明の口腔用組成物は、練り歯磨き、歯磨剤、歯科用ゲル、歯磨き粉、錠剤、すすぎ剤、マウスウォッシュ、歯肉下用ゲル、発泡体、ムース、チューインガム、リップスティック、スポンジ、フロス、予防ペースト、ワセリンゲル、義歯用接着剤、又は義歯用製品を含む各種形態であってもよい。一態様では、口腔用組成物は、ペースト又はゲルの形態である。別の態様では、口腔用組成物は、歯磨剤の形態である。また、口腔用組成物は、口腔表面に直接適用するか若しくは装着するために、又はフロス内に組み込むために、ストリップ片若しくはフィルム上に組み込まれてもよい。
【0023】
本明細書で使用される用語「アミノ酸」、「中性アミノ酸」は、本発明において遊離形態及び塩形態の両方を含むアミノ酸を指す。
【0024】
本明細書で使用するとき、「部分的に水溶性」という用語は、化合物が25℃で1g/1000mL以上の溶解度を有することを意味する。
【0025】
本明細書で使用するとき、「有効量」という用語は、当業者の妥当な判断の範囲内で、化合物又は組成物の好ましい利益、つまり口腔の健康の利益、を誘導するのに十分な量であり、かつ/又は重篤な副作用を回避するのに十分低い量である量、すなわち妥当な利益対リスク比を提供する量を意味する。一態様では、「有効量」は、組成物の少なくとも0.01重量%、あるいは少なくとも0.1重量%の材料を意味する。
【0026】
本明細書で使用するとき、単語「好ましい」、「好ましくは」、及びその変形は、一定の条件下において一定の利益をもたらす本発明の実施形態に関する。しかしながら、同じ、又は他の状況下においては、他の実施形態が好ましい場合もある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の詳細説明は、他の実施形態が有用でないことを示すものではなく、本発明の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものでもない。
【0027】
本明細書で使用するとき、用語「促進する」とは、口腔内で本発明の口腔ケア組成物を使用することに関連する歯肉健康上の利益を促進及び/又は増強することを意味する。
【0028】
本明細書で使用するとき、「実質的に含まない」という用語は、意図的な量のその材料が組成物に添加されないか、又は材料の量が組成物の0.05%、0.01%、若しくは0.001%未満であることを指す。本明細書で使用するとき、「本質的に含まない」という用語は、記載の材料が組成物に意図的に添加されたものでないこと、又は好ましくは分析によって検出可能な濃度では存在しないことを意味する。すなわち、指示された材料が、意図的に添加されたその他の材料のうちのいずれかの不純物としてのみ存在する、組成物を包含することを意味する。本明細書で使用するとき、「含まない」という用語は、合理的に検出可能な量の材料が組成物中に存在しないことを指す。
【0029】
本明細書で使用するとき、「相乗的な歯肉健康上の利益」という用語は、添加剤によるものを上回る、少なくとも歯肉創傷治癒の改善と口腔内の細菌活性の低減の改善とを含む、任意の2つの歯肉健康上の利益における、分析により測定可能な増加を意味する。
【0030】
本明細書で使用するとき、「歯」という用語は、天然歯並びに人工歯、又は歯科補綴物を意味する。
【0031】
本明細書で使用するとき、用語「総含水量」とは、遊離水、及び口腔ケア組成物中の他の成分によって結合される水、の両方を意味する。
【0032】
全ての百分率、部及び比率は、別途指定されない限り、本発明の組成物の総重量に基づく。列挙されている成分に関するとき、こうした重量は全て、活性レベルに基づき、このため、別途指定されない限り、市販の材料に含まれている可能性のある溶媒又は副生成物を含まない。
【0033】
別途指定されない限り、本明細書で言及される全ての測定は、25℃(すなわち、室温)で行われる。
【0034】
口腔ケア組成物
驚くべきことに、口腔ケア組成物における第一スズイオン(すなわち、抗菌剤)、中性アミノ酸(例えば、グルタミン、アスパラギン、若しくはグリシン、又はこれらの塩)、及びポリホスフェートの組み合わせが、ユーザーに対する歯肉健康上の利益を促進するのに特に有用であることが発見された。具体的に言えば、驚くべき発見は、中性アミノ酸と組み合わせたときに、第一スズイオンのバイオフィルム内への浸透が著しく改善されるというものであった。理論に束縛されるものではないが、中性アミノ酸は、カルボン酸基及びアミン基の両方を含有する。第一スズイオンは、アミノ酸上のこれらの化学的部分に強く結合して、第一スズイオンのバイオフィルム内への浸透に好ましい影響を及ぼし得ると考えられる。
【0035】
驚くべきことに、中性アミノ酸と共に配合された場合に、第一スズイオンのバイオフィルム内への浸透深さ及び/若しくは浸透速度が増加し得ること、又は著しく増加し得ることも見出された。要するに、口腔ケア組成物において中性アミノ酸を第一スズイオン源と組み合わせて存在させると、歯肉上のバイオフィルム内の細菌による有害な作用の媒介に対する、当該組成物の有効性が支援される。
【0036】
一態様では、本発明は、a)組成物の約0.01重量%~約5重量%、好ましくは約0.05重量%~約4重量%、より好ましくは約0.1重量%~約2重量%の第一スズイオン源と、b)組成物の約0.01重量%~約10重量%、好ましくは約0.05重量%~約5重量%、より好ましくは約0.1重量%~約2重量%の中性アミノ酸と、c)ポリホスフェートと、を含み、リン酸イオンの濃度が約10mMol超である、口腔ケア組成物に関する。
【0037】
第一スズイオン源
本発明は、組成物の約0.01重量%~約5重量%、好ましくは約0.05重量%~約4重量%、より好ましくは約0.1重量%~約2重量%の量で存在する第一スズイオン源を含む、抗菌効果をもたらす上記の口腔ケア組成物に関するものである。本明細書で使用される第一スズイオン源は、任意の安全かつ有効な第一スズ塩を含み得る。第一スズイオン源の好適な例は、塩化第一スズ、フッ化第一スズ、酢酸第一スズ、グルコン酸第一スズ、シュウ酸第一スズ、硫酸第一スズ、乳酸第一スズ、酒石酸第一スズ、ヨウ化第一スズ、クロロフッ化第一スズ、ヘキサフルオロジルコン酸第一スズ、クエン酸第一スズ、リンゴ酸第一スズ、グリシン酸第一スズ、炭酸第一スズ、リン酸第一スズ、ピロリン酸第一スズ、メタリン酸第一スズ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、第一スズイオン源は、フッ化第一スズ、塩化第一スズ及びこれらの組み合わせから選択される。好ましい一態様では、第一スズイオン源は、塩化第一スズを含む。別の好ましい態様では、第一スズイオン源は、フッ化第一スズを含む。
【0038】
中性アミノ酸
本発明の口腔ケア組成物は、中性アミノ酸を含む。
【0039】
本明細書で使用するとき、用語「中性アミノ酸」には、アラニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンだけでなく、pH5.0~7.0の範囲の等電点を有する生物学的に許容可能なアミノ酸も含む。生物学的に好ましい許容可能な中性アミノ酸は、分子中に単一のアミノ基及びカルボキシル基を有するか、又は物理化学的特性は類似又は実質的に類似しているが変更された側鎖を有する官能性誘導体などといった、これらの官能性誘導体を有する。更なる実施形態では、アミノ酸は、少なくとも部分的に水溶性であり、25℃で1g/1000mLの水溶液中で7未満のpHを提供する。
【0040】
したがって、本発明での使用に好適な中性アミノ酸としては、アラニン、アミノ酪酸、アスパラギン、システイン、シスチン、グルタミン、グリシン、ヒドロキシプロリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、タウリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、これらの塩、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明の組成物において使用される中性アミノ酸としては、アスパラギン、グルタミン、グリシン、これらの塩、又はこれらの混合物を挙げることができる。中性アミノ酸は、25℃の水溶液中で、5.0、又は5.1、又は5.2、又は5.3、又は5.4、又は5.5、又は5.6、又は5.7、又は5.8、又は5.9、又は6.0、又は6.1、又は6.2、又は6.3、又は6.4、又は6.5、又は6.6、又は6.7、又は6.8、又は6.9、又は7.0の等電点を有し得る。好ましくは、中性アミノ酸は、アスパラギン、グルタミン、又はグリシンから選択され、より好ましくはその遊離形態である。中性アミノ酸がその塩形態である場合、好適な塩としては、提供される量及び濃度において生理学的に許容可能であると考えられる薬剤として許容される塩であることが当該技術分野において既知である、塩が挙げられる。好ましくは、中性アミノ酸は、組成物の約0.01重量%~約10重量%、好ましくは約0.05重量%~約5重量%、好ましくは約0.1重量%~約3重量%、好ましくは約0.5重量%~約3重量%、好ましくは約1重量%~約3重量%の量で存在する。一態様では、中性アミノ酸はグルタミン(又はその塩)である。別の態様では、中性アミノ酸はアスパラギン(又はその塩)である。更に別の態様では、中性アミノ酸はグリシン(又はその塩)である。
【0041】
上述の安定性及び変色の問題は、組成物中の中性アミノ酸の濃度を調整することによって解決され得ることが発見された。驚くべきことに、中性アミノ酸濃度の低減(例えば、2%と8%とを比較)は、本発明の好ましい口腔ケア組成物において、当該中性アミノ酸を第一スズイオンと組み合わせることの効果、潜在的には相乗効果に起因して、当該中性アミノ酸の活性及び/又は歯肉創傷治癒についての有効性に負の影響を及ぼさない。理論に束縛されることを望むものではないが、第一スズイオンは、アミノ酸上の複数の部分に強く結合して、浸透を促進するのに好ましく影響することで、低濃度でも十分な有効性を維持できるものと考えられる。
【0042】
驚くべきことに、第一スズと共に中性アミノ酸を使用すると、塩基性アミノ酸(例えば、リジン)を使用した場合と比較して、安定した品質(例えば、外観が一貫しておりかつ変色しない)が最終口腔ケア製品に提供されることが発見された。理論に束縛されるものではないが、中性アミノ酸は、概して、塩基性アミノ酸よりも分子中のアミノ基が少なく、したがって、経時的に口腔ケア組成物(例えば、歯磨剤)の望ましくない褐変を引き起こす理由であると考えられる、アミノ基の糖(例えば、ソルビトール)との反応活性を低減する。
【0043】
更に、アミノ酸の導入は、歯肉創傷治癒上の利益をもたらし、したがって、他の抗出血剤、例えば、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、及びp-アミノメチル安息香酸の使用を最小限に抑えることができる。いくつかの好ましい態様では、本発明の口腔ケア組成物は、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、及びp-アミノメチル安息香酸を実質的に含まず、好ましくは本質的に含まず、より好ましくは含まない。
【0044】
一態様では、中性アミノ酸は複合体を形成していない。一態様では、中性アミノ酸は亜鉛と複合体を形成していない。
【0045】
ポリホスフェート
本発明の口腔ケア組成物は、ポリホスフェートを更に含む。ポリホスフェートは、1つ以上のポリホスフェート分子を含み得る。ポリホスフェートは、オルトホスフェートの脱水及び縮合によって様々な鎖長の直鎖及び環状ポリホスフェートをもたらすことにより、得られる物質の部類である。したがって、ポリホスフェート分子は、概ね、以下に記載されるように、ポリホスフェート分子の平均数(n)で同定される。ポリホスフェートは概ね、主に直鎖構造に配置された2つ以上のホスフェート分子からなると理解されているが、いくつかの環状誘導体が存在する場合もある。そのため、ポリホスフェートは、直鎖状又は環状(例えば、フィチン酸)であり得る。
【0046】
好ましいポリホスフェートは、有効濃度での表面吸着により十分な非結合のホスフェート官能基を生成し、これがアニオン性表面電荷並びに表面の親水性特徴を強化するように、平均して2つ以上のホスフェート基を有するものである。本発明において好ましいものは、式:XO(XPOX(式中、Xはナトリウム、カリウム、アンモニウム、又は任意の他のアルカリ金属カチオンであり、nは平均約2~約21である)を有する直鎖状ポリホスフェートである。カルシウムなどのアルカリ土類金属カチオンは、フッ化物イオン及びアルカリ土類金属カチオンを含む水溶液から不溶性フッ化物塩を形成する傾向があるため、好ましくない。したがって、本明細書に開示される口腔ケア組成物は、ピロリン酸カルシウムを含まなくてもよく、又は実質的に含まなくてもよい。
【0047】
好適なポリホスフェート分子のいくつかの例としては、例えば、ピロホスフェート(n=2)、トリポリホスフェート(n=3)、テトラポリホスフェート(n=4)、ソーダフォス(sodaphos)ポリホスフェート(n=6)、ヘキサフォス(hexaphos)ポリホスフェート(n=13)、ベネフォス(benephos)ポリホスフェート(n=14)、又はヘキサメタホスフェート(n=21)(Glass Hとしても知られる)が挙げられる。ポリホスフェートとしては、FMC Corporation,ICL Performance Products 及び/又はAstarisによって製造されたポリホスフェート化合物を挙げることができる。他の好適なポリホスフェートは、フィチン酸などの環状ポリホスフェートである。
【0048】
好ましくは、本発明の口腔ケア組成物に組み込まれるポリホスフェートの種類及び濃度は、リン酸イオンの濃度が10mMol超、好ましくは約10mMol~約200mMol、より好ましくは約10mMol~約150mMolとなるように、選択される。
【0049】
口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の約0.01重量%~約25重量%、約0.1重量%~約20重量%、約0.5重量%~約15重量%、約1重量%~約15重量%、又は約10%未満のポリホスフェートを含み得る。
【0050】
一態様では、口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の12.75重量%未満のポリホスフェートを含む。
【0051】
一態様では、口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の13.25重量%超のポリホスフェートを含む。
【0052】
一態様では、ポリホスフェートは、ピロホスフェート、トリポリホスフェート、ヘキサメタホスフェート、及びこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、ポリホスフェートは、ピロホスフェート、トリポリホスフェート、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0053】
亜鉛イオン源
任意に、しかし、好ましくは、口腔ケア組成物は、組成物の約0.1重量%~約5重量%、好ましくは約0.2重量%~約2重量%の亜鉛イオン源を更に含み得る。好ましくは、亜鉛イオン源は、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、リン酸亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。より好ましくは、亜鉛イオン源は、クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0054】
あるいは、口腔ケア組成物は、組成物の約0.1重量%~約1.5重量%、好ましくは約0.15重量%~約1重量%、より好ましくは約0.2重量%~約0.55重量%を提供するのに十分な亜鉛イオン源を含み得る。酸化亜鉛又は炭酸亜鉛などの不溶性又は微溶性の亜鉛化合物をこの亜鉛源として使用することができる。ただし、好ましい亜鉛源は、塩化亜鉛又は硫酸亜鉛などの可溶性亜鉛源である。より好ましい亜鉛源は、クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛及びグリシン酸亜鉛など、亜鉛がすでに塩又はその他の錯体の形態で好適なキレート化剤と結合しているものである。特に好ましい亜鉛イオン源は、クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、及びこれらの組み合わせである。
【0055】
本発明の口腔ケア組成物は、任意に、他の抗菌剤も含み得、好ましくは、組成物の約0.035重量%以上、約0.05重量%~約2重量%、約0.1重量%~約1重量%の量で存在する。これらの他の抗菌剤の例としては、例えば、ハロゲン化ジフェニルエーテル、フェノール及びその同族体を含むフェノール化合物、モノアルキル及びポリアルキル並びに芳香族ハロフェノール、レゾルシノール及びその誘導体、キシリトール、ビスフェノール化合物及びハロゲン化サルチルアニリド、安息香酸エステル並びにハロゲン化カルバニリドなどの非カチオン性抗菌剤を挙げることができる。他の有用な抗菌剤は、エンドグリコシダーゼ、パパイン、デキストラナーゼ、ミュータナーゼ、及びこれらの組み合わせを含む酵素である。別の態様では、他の抗菌剤は、トリクロサン(5-クロロ-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)フェノール)を含み得る。
【0056】
増粘剤
本発明の口腔ケア組成物は、任意に増粘剤を含み得る。好ましくは、口腔ケア組成物は、組成物の約0.01重量%~約10重量%、好ましくは約0.5重量%~約8重量%、好ましくは約1重量%~約5重量%、好ましくは約1重量%~約3重量%の増粘剤を含む。
【0057】
好ましくは、増粘剤は、増粘ポリマー、増粘シリカ、又はこれらの組み合わせを含む。更により好ましくは、増粘剤が増粘ポリマーを含む場合、増粘ポリマーは、荷電カルボキシメチルセルロース、非イオン性セルロース誘導体、直鎖硫酸化多糖類、天然ガム、少なくともポリカルボキシル化エチレン骨格を含むポリマー、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0058】
一態様では、増粘シリカは、超微粒子を得るために酸で不安定化することによって、ケイ酸ナトリウム溶液から得られる。市販されている一例は、Huber Engineered Materials製のZEODENT(登録商標)ブランドのシリカ(例えば、ZEODENT(登録商標)103、124、113、115、163、165、167)である。
【0059】
好ましくは、直鎖硫酸化多糖類は、カラギーナン(カラギーニンとしても知られている)である。カラギーナンの例としては、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0060】
一態様では、CMCは、アルカリ及びモノクロロ酢酸又はそのナトリウム塩で処理することによって、セルロースから調製される。異なる種は、商業上、粘度によって特徴付けられる。市販されている一例は、Ashland Special Ingredients製のAqualon(商標)ブランドのCMC(例えば、Aqualon(商標)7H3SF;Aqualon(商標)9M3SF Aqualon(商標)TM9A;Aqualon(商標)TM12A)である。
【0061】
好ましくは、天然ガムは、カラヤガム、アラビアガム(アカシアガムとしても知られている)、トラガカントガム、キサンタンガム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。より好ましくは、天然ガムは、キサンタンガムである。キサンタンガムは、細菌キサントモナス・カメストリス(Xanthomonas camestris)によって分泌される多糖類である。概して、キサンタンガムは、それぞれ2:2:1のモル比でグルコース、マンノース、及びグルクロン酸を含む、五糖繰り返し単位から構成される。(モノマーの)化学式は、C354929である。一態様では、キサンタンガムは、CP Kelco Inc(Okmulge,US)製である。
【0062】
好ましくは、非イオン性セルロース又はその誘導体は、約50,000~約1,300,000ダルトンの平均分子量範囲、及び好ましくは約300~約4,800の平均重合度を有する。より好ましくは、非イオン性セルロース又はその誘導体は、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethyl cellulose、「HEC」)である。
【0063】
好ましくは、少なくともポリカルボキシル化エチレン骨格を含むポリマーは、約30,000~約1,000,000ダルトンの分子量を有する無水マレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー、アクリル酸のホモポリマー、及びマレイン酸とアクリル酸又はメタクリルとのコポリマーからなる群から選択される。
【0064】
無水マレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマーは、Gantrez AN139(M.W.500,000ダルトン)、Gantrez AN119(M.W.250,000ダルトン)又はS-97医薬品グレード(M.W.70,000ダルトン)のうちの少なくとも1つであり、アクリル酸のホモポリマー、及びマレイン酸とアクリル酸又はメタクリル酸とのコポリマーは、Acusol 445、Acusol 445N、Accusol 531、Acusol 463、Acusol 448、Acusol 460、Acusol 465、Acusol 490、Sokalan CP5、Sokalan CP7、Sokalan CP45、又はSokalan CP12Sのうちの少なくとも1つ、並びに(v)これらの組み合わせである。
【0065】
一態様では、GANTREZ(商標)シリーズのポリマーは、30,000ダルトン~1,000,000ダルトンの分子量(M.W.)を有する無水マレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマーである。これらのコポリマーは、例えば、GANTREZ(商標)AN139(M.W.500,000ダルトン)、AN119(M.W.250,000ダルトン)及びS-97医薬品グレード(M.W.70,000ダルトン)として、Ashland Chemicals(Kentucky,USA)から入手可能である。
【0066】
別の態様では、ACUSOL(商標)及びSOKALANシリーズのポリマーには、アクリル酸のホモポリマー、及びマレイン酸とアクリル酸又はメタクリル酸とのコポリマーが含まれる。その例は、約2,000~約1,000,000の分子量(M.W.)を有するマレイン酸とアクリル酸との0:1000~1000:0コポリマーである。これらのコポリマーは、Dow Chemicals(Michigan,USA)からACUSOL(商標)445及び445N、ACUSOL(商標)531、ACUSOL(商標)463、ACUSOL(商標)448、ACUSOL(商標)460、ACUSOL(商標)465、ACUSOL(商標)497、ACUSOL(商標)490として、またBASF(New Jersey,USA)からSokalan(登録商標)CP5、Sokalan(登録商標)CP7、Sokalan(登録商標)CP45、及びSokalan(登録商標)CP12 Sとして市販されている。
【0067】
別の態様では、架橋ポリアクリル酸(polyacrylic acid、PAA)ポリマーは、アクリル酸の合成高分子量ポリマーの総称である。これらは、アリルエーテルペンタエリスリトール、スクロースのアリルエーテル、又はプロピレンのアリルエーテルで架橋された、アクリル酸のホモポリマーであってもよい。また、中性pHの水溶液では、PAAはアニオン性ポリマーであり、すなわちPAAの側鎖の多くがそのプロトンを失い、負電荷を獲得する。Carbopol(登録商標)、Pemulen(登録商標)及びNoveon(登録商標)などのCarbopol(登録商標)型ポリマーは、ポリアルケニルエーテル又はジビニルグリコールで架橋されたアクリル酸のポリマーである。Carbomerのコマーシャルコード、例えば940(商標)は、ポリマーの分子量及び特定の成分を示す。
【0068】
抗齲蝕剤
任意に、しかし、好ましくは、口腔ケア組成物は、有効量の抗齲蝕剤を含んでいてもよい。一態様では、抗齲蝕剤は、フッ化物イオン源である。フッ化物イオンの好適な例は、フッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸(monofluorophosphate、「MFP」)ナトリウム、フッ化インジウム、フッ化アミン、フッ化亜鉛、及びこれらの混合物を含む供給源から選択され得る。好ましくは、フッ化物イオン源は、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、MFP、及びこれらの組み合わせから選択される。フッ化物イオン源は、抗齲蝕効果を提供するために、組成物の約0.0025重量%~約10重量%、又は約0.05重量%~約4重量%、又は約0.1重量%~約2重量%、又は好ましくは約0.2重量%~約1.5重量%の量で存在していてよい。特定の態様では、フッ化物イオン源は、約25ppm~約25,000ppm、概して少なくとも約500ppm~約1600ppm、例えば1100ppm又は1450ppmの濃度の組成物中フッ化物イオン濃度を提供するのに十分な量で存在し得る。フッ化物の適切な濃度は、具体的な用途によって異なる。ユーザー全般用練り歯磨きは、典型的には、約1000~約1500ppmを有し、小児用練り歯磨きは幾分少ない。
【0069】
いくつかの態様では、フッ化物イオン源(例えば、抗齲蝕剤)及び第一スズイオン源は、同じ材料、例えば、フッ化第一スズである。
【0070】
pH
本発明の口腔ケア組成物のpHは、約4.5~約11、好ましくは約5~約10であり得る。いくつかの好ましい態様では、口腔ケア組成物のpHは、約5~約7.2であり得る。あるいは、口腔ケア組成物は、約5~約9、又は約5.5~約8.5のpHを有していてよい。いくつかの態様では、pHは、5.0~7.0、あるいはpH5.5~pH7.0未満、例えば、pH6.9、又はpH6.8、又はpH6.7、又はpH6.6、又はpH6.5、又はpH6.4、又はpH6.3、又はpH6.2、又はpH6.2、又はpH6.1、又はpH6.0、又はpH5.9、又はpH5.8、又はpH5.7、又はpH5.6、又はpH5.5である。
【0071】
pHは、典型的には、1グラムの口腔ケア組成物(例えば、練り歯磨き)を3グラムの脱イオン水に混合し、次いで、周囲条件下で較正した、業界で受け入れられているpHプローブでpHを測定するという段取りで、1:3比のペースト:水を使用して測定する。pHは、自動温度補償(Automatic Temperature Compensating、ATC)プローブを用いてpHメータによって測定する。明確化のために、分析方法は、本発明を請求する目的で、新たに調製されたときの口腔ケア組成物の試験について説明しているが、pHは、製品の妥当なライフサイクル(製品が店舗から購入され、ユーザーの自宅に運ばれる時間を含むが、これらに限定されない)中の任意の時点で測定してよい。
【0072】
各使用後には、水で電極から試料溶液を洗い流す必要がある。余分な水は、キムワイプ又は同等物などのティッシュで拭き取って除去する。電極を使用していないときには、pH7の緩衝液又は電極保管液に電極の先端を浸漬させた状態を維持する。機器の詳細は以下のとおりである。
pHメータ:pH0.01又は0.001単位で読み取りが可能なメータ。
電極:Orion Ross Sure-Flowコンビネーション:ガラス体-VWR#34104-834/Orion#8172BN又はVWR#10010-772/Orion#8172BNWP。
エポキシ体-VWR#34104-830/Orion#8165BN又はVWR#10010-770/Orion#8165BNWP。
セミミクロエポキシ体-VWR#34104-837/Orion#8175BN又はVWR#10010-774/Orion#3175BNWP。
Orion PerpHectコンビネーション:VWR#34104-843/Orion#8203BNセミミクロガラス体。
ATCプローブ:Fisher Scientific,Cat.#13-620-16。
【0073】
pH調整剤
本明細書における口腔ケア組成物は、任意に有効量のpH調整剤を含んでいてもよく、例えば、pH調整剤はpH緩衝剤である。本明細書で使用するとき、pH調整剤は、口腔ケア組成物のpHを上記のpH範囲に調整するために使用することができる剤を指す。pH調整剤としては、塩酸、アルカリ金属水酸化物、水酸化アンモニウム、有機アンモニウム化合物、炭酸塩、セスキ炭酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、イミダゾール、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0074】
特定のpH調整剤としては、リン酸一ナトリウム(リン酸一塩基性ナトリウム)、リン酸三ナトリウム(リン酸三塩基性ナトリウム十二水和物又はTSP)、安息香酸ナトリウム、安息香酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属炭酸塩、炭酸ナトリウム、イミダゾール、グルコン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0075】
一態様では、口腔ケア組成物は、組成物の約0.01重量%~約3重量%、好ましくは約0.1重量%~約1重量%のTSPと、組成物の約0.001重量%~約2重量%、好ましくは約0.01重量%~約0.3重量%のリン酸一ナトリウムとを含む。理論に束縛されることを望むものではないが、TSP及びリン酸一ナトリウムは、カルシウムイオンキレート活性を有してもよく、このため、(モノフルロリン酸塩を含有するこれらの製剤中に)若干のモノフルオロリン酸塩の安定化をもたらす。
【0076】

水は、その多くの利点により、口腔ケア組成物中の担体材料として一般的に使用される。例えば、水は加工助剤として有用であり、口腔に対して害がなく、練り歯磨きの迅速な発泡を助ける。水は、そのものが成分として添加されてもよく、又は例えば、ソルビトール及びラウリル硫酸ナトリウムなどの他の一般的な原料中に担体として存在してもよい。
【0077】
いくつかの態様では、本明細書の口腔ケア組成物は、組成物の約3重量%~約70重量%、好ましくは約5重量%~約30重量%、好ましくは約5重量%~約30重量%の総含水量を含み得る。本明細書で使用するとき、「総含水量」という用語は、別個に添加された、又は、他の原材料のための溶媒若しくは担体として、口腔ケア組成物中に存在する水の総量を意味するが、特定の無機塩の結晶化に伴う水として存在し得るものを除く。好ましくは、水は、USP水である。
【0078】
あるいは、他の態様では、本明細書の口腔ケア組成物は、組成物の0重量%~約5重量%の総含水量を含み得る。例えば、口腔ケア組成物は、水を実質的に含んでいなくてもよく、好ましくは水を含んでいなくてよい。
【0079】
界面活性剤
口腔ケア組成物は、任意に、しかし好ましくは界面活性剤を含む。界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、両性、双性イオン性、カチオン性の界面活性剤、又はこれらの組み合わせから選択してよく、好ましくは、界面活性剤はアニオン性であり、より好ましくは、アニオン性界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate、SLS)である。双性イオン性界面活性剤の例は、コカミドプロピルベタインである。口腔ケア組成物は、1つ、2つ、又はそれ以上の界面活性剤を含有していてよい。一態様では、界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、コカミドプロピルベタイン、及びこれらの混合物からなる群から選択される。組成物は、全組成物の約0.1重量%~約20重量%、好ましくは約1重量%~約10重量%の濃度で界面活性剤を含み得る。
【0080】
保湿剤
本明細書の口腔ケア組成物は、組成物の0重量%~約70重量%、又は約15重量%~約55重量%の量で存在する保湿剤を含み得る。保湿剤は、空気への曝露時に口腔ケア組成物が硬化するのを防ぎ、また特定の保湿剤は、口腔ケア組成物に望ましい甘味風味を付与することもできる。保湿剤の好適な例としては、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、キシリトール、トリメチルグリシン、及びこれらの混合物を挙げることができる。他の例としては、他の食用多価アルコールを挙げることができる。いくつかの態様では、保湿剤は、ソルビトール、グリセリン、及びこれらの組み合わせから選択される。好ましくは、保湿剤はソルビトールである。一態様では、組成物は、組成物の約1重量%~約60重量%、あるいは約30重量%~約55重量%の保湿剤を含む。
【0081】
研磨剤
口腔ケア組成物は、有効量の研磨剤を含む。研磨剤の例としては、カルシウム含有研磨剤、ナトリウム含有研磨剤、シリカ、又はこれらの組み合わせが挙げられる。カルシウム含有研磨剤を含む場合、カルシウム含有研磨剤は、好ましくは、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、オルトリン酸カルシウム、メタリン酸カルシウム、ポリリン酸カルシウム、オキシアパタイト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。ナトリウム含有研磨剤を含む場合、ナトリウム含有研磨剤は、好ましくは、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。シリカの場合、好ましくは、シリカは、例えば、Huber Engineered Materials製のZEODENT(登録商標)シリーズのもの(例えば、ZEODENT(登録商標)103、124、113、115、163、165、167)などの沈殿シリカ(例えば、超微粒子を得るために酸で不安定化することによるケイ酸ナトリウム溶液)である。これらのシリカ(例えば、合成非晶質シリカ)の一部は、研磨及び増粘の機能の両方を発揮することができるが、本明細書では、本発明の目的のために「研磨剤」という用語に含まれることが認められる。好ましくは、口腔ケア組成物は、組成物の約1重量%~約35重量%、より好ましくは約5重量%~約25重量%の研磨剤を含む。
【0082】
着香剤
本明細書の口腔ケア組成物は、組成物の約0.01重量%~約5重量%、好ましくは約0.1重量%~約2重量%の着香剤を含み得る。口腔ケア組成物で使用することができる好適な着香剤の例としては、米国特許第8,691,190号(Haught,J.C.)の第7欄第61行~第8欄第21行に記載されているものが挙げられる。いくつかの態様では、着香剤は、サリチル酸メチル、メントール、オイゲノール、シネオール、又はこれらの混合物を含み得る。いくつかの態様では、口腔ケア組成物は、サリチル酸メチル、メントール、オイゲノール、及び/又はシネオールを含まない、又は実質的に含まない着香剤を含み得る。
【0083】
甘味剤
本明細書の口腔ケア組成物は、甘味剤を含んでもよい。甘味剤は、概ね口腔ケア組成物中に、組成物の約0.005重量%~約5重量%の濃度で存在する。甘味剤の好適な例としては、サッカリン、デキストロース、スクロース、ラクトース、キシリトール、麦芽糖、レブロース、アスパルテーム、シクラミン酸ナトリウム、D-トリプトファン、ジヒドロカルコン、アセスルファム、スクラロース、ネオテーム、及びこれらの混合物が挙げられる。甘味剤の他の好適な例は、米国特許第8,691,190号(Haught,J.C)の第9欄第18行~第10欄第18行に記載されている。
【0084】
着色剤
本明細書の口腔ケア組成物は、組成物の約0.001重量%~約5重量%、好ましくは約0.1重量%~約1重量%の量で存在する着色剤を含み得る。着色剤は、水溶液、好ましくは1%着色剤水溶液の形態であってよい。着色剤の好適な例としては、顔料、ピール剤(pealing agent)、充填剤粉末、タルク、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、オキシ塩化ビスマス、酸化亜鉛、及び口腔ケア組成物に視覚的変化を生みだすことができる他の物質を挙げることができる。他の好適な例としては、二酸化チタン(TiO)を挙げることができる。二酸化チタンは、組成物に不透明度を加える、概ね7組成物の約0.25重量%~約5重量%の濃度で口腔ケア組成物中に存在する白色粉末である。
【0085】
他の成分
本発明の口腔ケア組成物は、当業者に既知の通常及び従来の補助成分を含むことができる。任意成分としては、例えば、抗歯垢剤、抗知覚過敏剤、ホワイトニング及び酸化剤、抗炎症剤、抗歯石剤、キレート剤、歯質剤(tooth substantive agent)、鎮痛剤、及び麻酔剤が挙げられるが、これらに限定されない。口腔ケア組成物のために選択された成分は、互いに、化学的及び物理的に適合するものである必要があることが理解されよう。
【0086】
使用方法
一態様では、本発明は、対象の歯をクリーニング又は研磨するための方法に関する。本明細書のクリーニング又は研磨方法は、対象の歯を、本発明による口腔ケア組成物と接触させることを含む。
【0087】
別の態様では、本発明は、口腔(例えば歯)におけるバイオフィルム形成を阻害する、又はバイオフィルムを破壊する方法であって、本発明による口腔ケア組成物を口腔(例えば歯)に投与することを含み、好ましくは、当該投与が、少なくとも1日1回、より好ましくは少なくとも1日2回行われる、方法に関する。
【0088】
別の態様では、本発明はまた、対象における歯肉健康を促進する方法であって、本発明による口腔ケア組成物を対象の口腔に投与することを含み、好ましくは、当該投与が、少なくとも1日1回、より好ましくは少なくとも1日2回行われる、方法に関する。
【0089】
更に別の態様では、本発明はまた、歯肉健康を促進する方法であって、
(i)口腔内の歯肉創傷治癒を改善することと、
(ii)口腔内の細菌活性の低減を改善することと、
を含む、方法に関する。
【0090】
上記の方法は、口腔ケア組成物(例えば、歯磨き)を用いてブラッシング(例えば、歯磨き)すること、又は口腔ケア組成物(例えば、歯磨きスラリー又は口内洗浄剤)ですすぐことによるものであってよい。口腔ケア組成物は、未希釈で、又は例えば歯ブラシなどの送達器具を介して適用されてもよい。他の方法としては、局所口腔用ゲル、口中スプレー、練り歯磨き、歯磨き、歯磨きゲル、歯磨き粉、タブレット、歯肉下用ゲル、フォーム、ムース、チューインガム、リップスティック、スポンジ、フロス、ペトロラタムゲル、若しくは義歯製品、又は他の形態を、対象の歯及び口腔粘膜と接触させることを含む。実施形態に応じて、口腔ケア組成物は、練り歯磨きと同じ程度の頻度で使用されてもよく、又はより少ない頻度、例えば週単位で使用されてもよく、又は歯面研磨ペースト若しくは他の集中治療の形態で、医療従事者により使用されてもよい。
【0091】
試験方法:バイオフィルムにおけるバイオフィルム構造、抗菌剤の浸透性、及び内毒素中和を測定するアッセイ
以下のアッセイは、以下を測定するために、本発明の口腔ケア組成物のin situ歯垢バイオフィルムを使用する:
1-共局在百分率の測定による第一スズイオンの細菌への浸透効率。
2-LPSのリピドAに結合した蛍光色素の測定による、第一スズイオンのLPS結合効率を介したバイオフィルム内の抗菌剤の内毒素中和の改善。
【0092】
アッセイの詳細を以下に説明する。
【0093】
(a)バイオフィルム増殖のための基質
in situでのバイオフィルムの増殖にはヒドロキシアパタイト(HA)ディスクを使用する。HAディスクは、各ディスクに3つの平行な溝(すなわち、2つの側方溝の幅200μm、深さ200μm、中央溝の幅500μm及び深さ500μm)を有するように設計される。対象の口にディスクを取り付けるとき、概して歯垢が蓄積する傾向がありクリーニングが困難な領域である、歯間の隣接歯間間隙を再現するように、これらの溝を垂直に維持する。このモデルは、溝からのそのままの状態での歯垢の収集を可能にする。HAディスクは、Shanghai Bei’erkang biomedicine limited company(Shanghai,China)によって製造されている。
【0094】
(b)スプリントを着用する
ヒト対象は、スプリントを着用する。各対象は、48時間後に少なくとも9枚のHAディスクを確実に利用可能にするために、スプリント上に最大12枚のHAディスクを着用する。このようなスプリント及びHAディスクの非限定例を図1に示す。図1を参照すると、デバイス(1)は、複数のHAディスク(2a~2d)を保持する。特定の例では、図2を参照すると、HAディスク(201)は、3本の平行な溝(203)を有する(2本の側方溝(203a及び203c)は、幅300μm及び深さ300μmであるが、中間溝(203b)(2つの側面溝の間にある)は、幅500μm及び深さ500μmである)。中間溝は、HAディスクがヘッド対ヘッドの比較目的のため、2つの同一の半ディスクに、より容易に分離することができるように、2つの側方溝よりも広くかつ深く設計されている。図3は、内部にバイオフィルム(2005)を有する溝(2003)の断面概略図である。HAディスクの更なる詳細は、米国特許出願公開第2017/0056531号(例えば、段落[0019]~[0020])に記載されている。
【0095】
図3には示されていないが、すりへりが歯の間の歯間スペース(この場所にはプラークがつきやすいため(クリーニングの困難さなどを考慮して)にあるように、ディスクを位置決めすることができる。対象は、食事の際にのみスプリント(湿度の高い状態で不透明な容器に保管されたスプリント)を外し、口腔衛生処置を行う。その後すぐに、スプリントを再び着用する。対象に、飲用時にはストローを使用するように依頼する。
【0096】
(c)HAディスクからのin situでのバイオフィルムの剥離
全てのHAディスクは、48時間でピンセットによってスプリントから除去される。ピンセットを使用して、HAチップの縁部を保持し、HAディスクをPBS(リン酸緩衝生理食塩水)溶液を含有する2mL遠心管に移す。ディスクを移す前には、毎回ピンセットを十分に洗浄する(水、75%アルコール、次いで脱イオン水)。
【0097】
(d)練り歯磨き上清の調製
15グラムの脱イオン水を5グラムの練り歯磨き(実施例1~5のいずれか1つを使用)に添加する。完全に撹拌した後、混合物を12,000RPMで20分間遠心分離する。上清を使用の1日前に調製し、4℃で保管する。
【0098】
(e)共焦点レーザー走査顕微鏡検査
HAディスクをスプリントから除去した後。様々な本発明の組成物及び比較組成物によるエクスビボ処置に、HAディスクを使用する。対象の上清で処置し、微生物蛍光プローブ及び第一スズ蛍光プローブ(例えば、米国特許出願公開第2018/0072944(A1)号、Shi et al.に記載されている)で標識した後、溝内のバイオフィルムを、共焦点レーザー走査顕微鏡(confocal laser scanning microscopy、CLSM)(以下に記載される)によって測定する。
【0099】
(f)ディスクの調製
HAディスクをPBS溶液ですすぎ、各HAディスクをピンセットで半分に分割し2つにする。その後、半分のディスクのそれぞれを500~1000μLのPBS溶液に1分間静置する。各ディスクを、PBS溶液又は練り歯磨き上清のいずれかによって2分間処理する。各ディスクをピンセットで保持し、1mLのPBS溶液中で前後に10回振盪して洗浄し、次いでこの洗浄サイクルを繰り返す。次いで、各ディスクを500~1000μLのPBS溶液に5分間静置する。
【0100】
PBS及び/又は口腔ケア組成物(例えば、練り歯磨き)の上清で処理し、特定の蛍光プローブで標識した後、共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)で溝内のバイオフィルムを測定する。
【0101】
(g)蛍光プローブ染色及び顕微鏡検査
「イオン蛍光プローブ」とは、1種類のイオンと特異的に結合し、特定の波長の蛍光を発する蛍光プローブを意味する。近年、生化学及び環境研究における用途の可能性から、イオンの新しい、高度に選択的な蛍光プローブの開発が重要視されている。イオンの光検出には、光誘起電子/エネルギー移動(PET)、分子内電荷移動(ICT)、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)など、多くの種類のシグナル伝達機構が提案され、利用されている。また、これらの蛍光プローブの一部は、蛍光バイオイメージングにも適用することができ、これは、細胞損傷をほとんど引き起こさず、生きている細胞の高速空間分析で高感度である。具体的には、分析物の存在下と非存在下で異なる波長の2つの発光強度を同時に記録するFRETイメージングは、複雑な生物学的プロセスを分子レベルで可視化する簡便な方法である。この技術は、バイオフィルム及び人体におけるイオンの生理的機能や病因の研究に適していると思われる。
【0102】
共局在百分率の測定による第一スズイオンの細菌での浸透効率。バイオフィルムを標識するのに適した第一スズ蛍光プローブの非限定的な例としては、以下の化合物のいずれか1つ:(a)tert-ブチル(3’,6’-ジアミノ-3-オキソスピロ[イソインドリン-1,9’-キサンテン]-2-イル)カルバメート;(b)tert-ブチル(3’,6’-ビス(ジメチルアミノ)-3-オキソスピロ[イソインドリン-1,9’-キサンテン]-2-イル)カルバメート;(c)tert-ブチル(3’,6’-ビス(ジエチルアミノ)-3-オキソスピロ[イソインドリン-1,9’-キサンテン]-2-イル)カルバメート;(d)tert-ブチル(3’,6’-ビス(エチルアミノ)-2’,7’-ジメチル-3-オキソスピロ[イソインドリン-1,9’-キサンテン]-2-イル)カルバメート;(e)tert-ブチル(3’,6’-ジアミノ-2’,7’-ジメチル-3-オキソスピロ[イソインドリン-1,9’-キサンテン]-2-イル)カルバメート;(f)tert-ブチル(3-オキソ-3’,6’-ジ(ピロリジン-1-イル)スピロ[イソインドリン-1,9’-キサンテン]-2-イル)カルバメート;(g)tert-ブチル(3-オキソ-3’,6’-ビス(フェニルアミノ)スピロ[イソインドリン-1,9’-キサンテン]-2-イル)カルバメート;(h)tert-ブチル(3-オキソ-3’,6’-ジ(ピペリジン-1-イル)スピロ[イソインドリン-1,9’-キサンテン]-2-イル)カルバメート;(i)tert-ブチル(3’,6’-ジモルホリノ-3-オキソスピロ[イソインドリン-1,9’-キサンテン]-2-イル)カルバメート;(j)tert-ブチル(2’,7’-ジブチル-3’,6’-ビス(ジエチルアミノ)-3-オキソスピロ[イソインドリン-1,9’-キサンテン]-2-イル)カルバメート;(k)tert-ブチル(2’,7’-ジメチル-3-オキソ-3’,6’-ジ(ピペリジン-1-イル)スピロ[イソインドリン-1,9’-キサンテン]-2-イル)カルバメート;(l)tert-ブチル(3-オキソ-1’,2’,3’,4’,10’,11’,12’,13’-オクタヒドロスピロ[イソインドリン-1,7’-ピラノ[2,3-f:6,5-f’]ジキノリン]-2-イル)カルバメート;(m)tert-ブチル(3-オキソ-1’,2’,3’,4’,8’,9’,10’,11’-オクタヒドロスピロ[イソインドリン-1,6’-ピラノ[3,2-g:5,6-g’]ジキノリン]-2-イル)カルバメート;(n)N-(3’,6’-ビス(ジエチルアミノ)-3-オキソスピロ[イソインドリン-1,9’-キサンテン]-2-イル)プロピオンアミド;(p)N-(3’,6’-ビス(ジエチルアミノ)-3-オキソスピロ[イソインドリン-1,9’-キサンテン]-2-イル)ブチルアミド;及び(q)N-(3’,6’-ビス(ジエチルアミノ)-3-オキソスピロ[イソインドリン-1,9’-キサンテン]-2-イル)ペンタンアミドを挙げることができる。好ましくは、第一スズプローブは、N-(3’,6’-ビス(ジエチルアミノ)-3-オキソスピロ[イソインドリン-1,9’-キサンテン]-2-イル)プロピオンアミド;N-(3’,6’-ビス(ジエチルアミノ)-3-オキソスピロ[イソインドリン-1,9’-キサンテン]-2-イル)ブチルアミド;及びN-(3’,6’-ビス(ジエチルアミノ)-3-オキソスピロ[イソインドリン-1,9’-キサンテン]-2-イル)ペンタンアミドから選択され得る。
【0103】
概ね、これらの第一スズ蛍光プローブは、フルオロフォアとしてローダミンB誘導体部分を含み、アミド部分を介してカルバゼート(carbazate)基に結合している。更なる詳細は、国際公開第2015/139577(A1)号(2015年9月24日)又はそれに相当する米国公報に記載されている。好ましくは、第一スズ蛍光プローブは、tert-ブトキシ-カルボキサミド,N-[3’,6’-ビス(ジエチルアミノ)-3-オキソスピロ[1H-イソインドール-1,9’-[9H]キサンテン]-H)-イル]である。
【0104】
「微生物蛍光プローブ」とは、バイオフィルムの微生物に結合し、特定の波長の蛍光を発する蛍光プローブを意味する。このようなプローブの1つのクラスには、蛍光標識オリゴヌクレオチド、好ましくはrRNA指向性オリゴヌクレオチドが含まれる。非限定的な例としては、SYTO(商標)ブランドの色素がある。具体的な一例としては、SYTO(登録商標)9 Green Fluorescent Nucleic Acid Stainがあり、励起は485(DNA)と486(RNA)であり、発光は498(DNA)と501(RNA)で検出される。
【0105】
処理及び浸漬後、各半分のディスクを、暗所で30分間、Syto-9プローブと共にSnプローブで(5μMのSyto-9及び5μMのSNプローブを含有する)染色する。SYTO-9/Sn色素で染色した試料について、以下のパラメータを使用する:λex=488nm/543nm、λem=500/580nm、20倍対物レンズ、及び表面細菌の底部から60μmにわたってステップサイズ=3μmで走査する。
【0106】
リピドAに結合する蛍光色素BODIPY-TR-カダベリン(BC)を用いることで、その蛍光を抑制する、LPS中和効果を評価した。BCは、このリピドに対して親和性を有する剤によって置換される。LPSが他のイオン、例えば、第一スズに結合したとき、BCがLPSから放出され、その蛍光は、存在する遊離(非結合)BCの量に比例する。したがって、蛍光強度は、中和された(結合している)LPS量対遊離(非結合)LPSの量、及びバイオフィルムの毒性の低減における抗菌剤の有効性を示す。結合しているLPSの量が多いほど、毒性が低い。
【0107】
処理及び浸漬後、各半分のディスクを、暗所で30分間、Syto-9プローブと共にBODIPY-TR-カダベリン(BC)プローブで(5μMのSyto-9BCプローブ及び5μMのBCプローブを含有する)染色する。染色後、各ディスクを、500~1000μLのPBS溶液に浸漬して、2分間静置する。各ディスクをピンセットで保持し、1mLのPBS溶液中で前後に5回振盪して再度洗浄し、この作業を繰り返す。SYTO-9/BC色素で染色した試料について、以下のパラメータを使用する:λex=488nm/588nm、λem=500/616nm、20倍対物レンズ、及び表面細菌の底部から60μmにわたってステップサイズ=3μmで走査する。
【0108】
(h)共焦点レーザー走査顕微鏡検査
Leica(商標)TCS SP8 AOBS分光共焦点顕微鏡を使用する。共焦点システムは、Leica(商標)DM6000B正立顕微鏡及びLeica(商標)DMIRE2倒立顕微鏡からなる。正立スタンドは、スライド載置した標本を伴う用途に使用されるが、37℃のインキュベーションチャンバ及びCO富化付属品を有する倒立スタンドには、生細胞向けの用途がある。この顕微鏡は、交換可能なレーザー走査ヘッド、及びそれ自体の電気モータ駆動ステージに加えて、焦点(Z)平面における急速撮像を容易にする、ガルバノメータ駆動型高精度Zステージを共有する。当該顕微鏡は、落射蛍光に加えて、明視野、偏光光及び差動干渉コントラストを含む様々な透過光コントラスト法に対応しており、5倍、20倍、40倍、63倍(油浸及び乾燥)並びに100倍(油浸)Leica(商標)対物レンズを装備している。
【0109】
レーザー走査及び検出システムについて説明する。TCS SP8 AOBS共焦点システムには、4とおりのレーザー(1つのダイオード、1つのアルゴン及び2つのヘリウムネオンレーザー)が供給され、これにより電磁スペクトルのUV、可視及び近赤外範囲内の広範な蛍光色素を励起させることが可能である。レーザー走査ヘッドに音響光学的調整可能フィルタ(acousto-optical tunable filter、AOTF)、音響光学ビームスプリッタ(acousto-optical beam splitter、AOBS)及び4つのプリズム分光光度計検出器を組み込むという設計により、3とおりの蛍光色素の同時励起及び検出が可能である。正立顕微鏡も、透過光検出器を有しており、透過光画像を蛍光記録上に重ね合わせることが可能である。
【0110】
Leica(商標) Confocal software LAS AF3.3.0を使用している。共焦点は、デュアルモニターを接続した標準Pentium PC及びLeica(商標)共焦点ソフトウェアを介して制御する。Leica共焦点ソフトウェアLAS AF3.3.0(Leica Lasertechnik GmbH,Heidelberg,Germanyから入手可能)は、3Dの再構成及び測定、生理学的記録及び解析、タイムラプス、蛍光色素の共局在、FRAP及びFRETなどの光退色技術、スペクトル混合及び多色回復(multicolour restoration)を含む、多次元での一連の画像の取得、処理及び解析のためのインターフェースを提供する。
【0111】
(i)画像解析
Sn解析;SYTO-9/Sn色素で染色した試料を選択して、赤色及び緑色の画素の重なり効率(overlap efficiency)を定量する。ソフトウェアを使用して、「緑色」の細菌プローブと「赤色」の第一スズプローブとの画素重複を特定し、次いでこの値を、黒色以外の全ての画素(重複していない第一スズプローブを含む)で除算して、細菌中の第一スズの共局在百分率を算出する。概して、この共局在百分率が高くなるほど、当該口腔ケア製品は、より効率的に第一スズを細菌に送達する。(Xiang J,Li H,Pan B,Chang J,He Y,He T,Strand R,Shi Y,Dong W.(2018) Penetration and Bactericidal Efficacy of Two Oral Care Products in an Oral Biofilm Model.Am J Dent,Vol.31,Issue 1:53-60を参照)。
【0112】
LPS解析;SYTO-9/BCプローブで染色した試料を選択して、赤色及び緑色の画素の蛍光強度を定量する。ソフトウェアを使用して、結合しているLPS/細菌細胞の、蛍光強度比(FIR)を計算した。この蛍光強度の比は、細菌単位当たりの結合している(中和された)LPSの相対量と、バイオフィルムの毒性の低減における剤の有効性とを示す。蛍光強度比が大きいほど、LPSの内毒素中和の有効性が高い。
【実施例
【0113】
以下は、本発明の口腔ケア組成物の非限定的な実施例、及び比較例である。
【0114】
【表1】
【0115】
以下の表は、特定の口腔ケア組成物の第一スズ浸透及びLPS中和(上述の試験方法による)に関するデータを示している。
【0116】
【表2】
【0117】
データは、グリシンなどの好適な中性アミノ酸を第一スズ塩及びポリホスフェート塩と一緒に添加することで、バイオフィルム内での第一スズの浸透及び結果としての細菌のLPS中和を高めることができるという利点を示している。実施例1(表1に示される)は、フッ化第一スズ及びヘキサメタリン酸ナトリウムを含む比較組成物である。実施例1の使用により、最終的なSnの浸透率は76.49%となり、LPS中和比(BODIPY TR:細胞)は1.38になった。実施例2は、表1に示すように、フッ化第一スズ、ポリホスフェート、及びグリシンを2重量%で含む練り歯磨き組成物である。実施例2の使用により、最終的なSnの浸透率は91.41%となり、LPS中和比(BODIPY TR:細胞)は1.62となった。予期せぬことに、実施例1及び実施例2の間に2%のグリシンを加えることにより、Snの浸透率は20%改善され、LPS中和は17%改善された。実施例4(表1に示される)は、フッ化第一スズとピロリン酸四ナトリウムを含む比較組成物である。実施例4を使用すると、最終的なSnの透過率は69.28%になり、LPS中和比(BODIPY TR:細胞)は1.15になった。実施例5は、表1に示すように、フッ化第一スズ、ピロリン酸四ナトリウム及びグリシンを2重量%で含む練り歯磨き組成物である。実施例5の使用により、最終的なSnの浸透率は88.60%となり、LPS中和比(BODIPY TR:細胞)は1.50になった。予期せぬことに、実施例4及び実施例5の間に2%のグリシンを加えることにより、Snの浸透率は28%改善され、LPS中和は30%改善された。
【0118】
一元配置ANOVA(分散分析)及びStudent-Neuman-Keuls検定を用いてペアごとに比較を行い、第一スズ及びポリホスフェート組成物にグリシンを添加することの利点を示す上で、P<0.05を統計的に有意と見なした。
【0119】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、そのような寸法は各々、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」と開示された寸法は、「約40mm」を意味するものとする。
【0120】
相互参照される又は関連する任意の特許又は特許出願、及び本願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本明細書に引用される全ての文書は、除外又は限定することを明言しない限りにおいて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求される任意の発明に対する先行技術であるとは見なされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのようないかなる発明も教示、示唆又は開示するとは見なされない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照により組み込まれた文書内の同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0121】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な他の変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にある全てのそのような変更及び修正を添付の特許請求の範囲に網羅することが意図される。
図1
図2
図3