(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】窒化ガリウムデバイス及びその駆動回路
(51)【国際特許分類】
H01L 21/337 20060101AFI20231228BHJP
H01L 21/338 20060101ALI20231228BHJP
H01L 29/808 20060101ALI20231228BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20231228BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20231228BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20231228BHJP
H01L 29/423 20060101ALI20231228BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
H01L29/80 W
H01L29/80 H
H01L29/80 C
H01L29/80 L
H01L29/80 E
H01L21/28 301B
H01L29/58 Z
H01L29/44 P
H01L29/44 L
(21)【出願番号】P 2022521051
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(86)【国際出願番号】 CN2020085612
(87)【国際公開番号】W WO2021212268
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ホワーン,ボーニーン
(72)【発明者】
【氏名】ホウ,ジャオジュヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジアーン,チイムオン
【審査官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-017071(JP,A)
【文献】特開2013-191868(JP,A)
【文献】特開2015-026629(JP,A)
【文献】国際公開第2017/051530(WO,A1)
【文献】Kenji Shojima et al,Large Schottky barriers for Ni/p-GaN contacts,Appl. Phys. Lett.,米国,1999年04月05日,VOLUME 74, NUMBER 14,p1936-p1938
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/28
H01L 21/337
H01L 21/338
H01L 29/41
H01L 29/423
H01L 29/778
H01L 29/808
H01L 29/812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された窒化ガリウム(GaN)バッファ層と、
前記GaNバッファ層上に形成された窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)バリア層と、
前記AlGaNバリア層上に形成されたソース、ドレイン、及びゲートと、
を有し、
前記ゲートは、前記AlGaNバリア層上に形成された
1つのPドープト窒化ガリウム(P-GaN)キャップ層と、該P-GaNキャップ層上に形成された第1ゲートメタル及び第2ゲートメタルとを有し、前記第1ゲートメタルと前記P-GaNキャップ層との間にショットキーコンタクトが形成され、前記第2ゲートメタルと前記P-GaNキャップ層との間にオーミックコンタクトが形成され
、前記第1ゲートメタルと前記第2ゲートメタルは互いに接触していない、
窒化ガリウムデバイス。
【請求項2】
前記第1ゲートメタル及び前記第2ゲートメタルは、前記ゲートのゲート幅方向に対して垂直な方向に沿って間隔を置いて、平行に配置されている、請求項1に記載の窒化ガリウムデバイス。
【請求項3】
前記ゲートは、複数の第1ゲートメタル及び複数の第2ゲートメタルを有する、請求項1に記載の窒化ガリウムデバイス。
【請求項4】
前記複数の第1ゲートメタル及び前記複数の第2ゲートメタルは、前記ゲートのゲート幅方向に沿って、間隔を置いて交互に分散されている、請求項3に記載の窒化ガリウムデバイス。
【請求項5】
前記複数の第2ゲートメタルは、前記ゲートのゲート幅方向に平行な前記P-GaNキャップ層のエッジの近くにあって前記ゲート幅方向に沿って延在した1つの縦方向ゲートメタルと、前記ゲート幅方向に沿って分散されて配置された複数の横方向ゲートメタルとを有し、各横方向ゲートメタルの一端が前記縦方向ゲートメタルに接続されている、請求項3に記載の窒化ガリウムデバイス。
【請求項6】
前記複数の第1ゲートメタルと、前記複数の横方向ゲートメタルとが、前記ゲート幅方向に沿って交互に分散されている、請求項5に記載の窒化ガリウムデバイス。
【請求項7】
当該窒化ガリウムデバイスは更に、ディプレッション型高電子移動度トランジスタ(HEMT)を有し、
前記ディプレッション型HEMTのソースが、前記第1ゲートメタルに結合され、
前記ディプレッション型HEMTのゲートが、当該窒化ガリウムデバイスの前記ソースに結合され、
前記ディプレッション型HEMTのドレインが、前記第2ゲートメタルに結合されている、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の窒化ガリウムデバイス。
【請求項8】
ゲートドライバと、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の窒化ガリウムデバイスとを有し、
前記窒化ガリウムデバイスの前記第1ゲートメタル及び前記第2ゲートメタルが、前記ゲートドライバの信号出力端に結合され、前記第2ゲートメタルと前記ゲートドライバの前記信号出力端との間にゲート駆動抵抗及びスイッチが直列に接続される、
駆動回路。
【請求項9】
前記スイッチは、前記ゲートドライバの駆動信号の立ち上がりエッジが到着したとき、予め定められた時間の遅延後に開くように構成される、
請求項8に記載の駆動回路。
【請求項10】
前記スイッチは、前記ゲートドライバの駆動信号の立ち下がりエッジが到着したときに閉じるように構成される、請求項8に記載の駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、半導体技術の分野に関し、特に、窒化ガリウムデバイス及びその駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電源プロダクトが高効率及び小型化のトレンドに向かって発展するにつれて、例えば窒化ガリウムなどの広い禁制帯の半導体材料に基づいて製造される電力スイッチなどの窒化ガリウムデバイスがますます注目を集めている。現在、窒化ガリウムデバイスは主に、窒化アルミニウムガリウム/窒化ガリウム(AlGaN/GaN)の横型ヘテロ構造に基づくデバイスを含んでおり、該ヘテロ構造の界面に、高い電子移動度の二次元電子ガス(two-dimensional electron gas,2DEG)チャネルを自然形成することができる。一般に、ヘテロ構造の界面における2DEGは空乏化されることが困難であり、従って、AlGaN/GaNヘテロ構造に基づく現在の窒化ガリウムデバイスは通常、ノーマリーオンデバイスである。
【0003】
ノーマリーオン窒化ガリウムデバイスの導通を維持するためには安定な導通電流が必要とされ、デバイスをオフにするためには逆電圧をゲートに印加する必要がある。この特徴は、駆動回路の設計をしにくくするものであるとともに、デバイスの電力消費が比較的高くするものである。さらに、ノーマリーオン窒化ガリウムデバイスは、回路システム(例えば、電力変換回路システム)のフェイルセーフを殆ど保証することができない。一部の改良された窒化ガリウムデバイスはノーマリーオフの特徴を実現するものの、デバイス性能を改善することが望まれる。
【発明の概要】
【0004】
この出願は、窒化ガリウムデバイス及びその駆動回路を提供する。当該窒化ガリウムデバイスは、ノーマリーオフデバイスであるとともに、駆動回路の設計をしやすくする。さらに、当該窒化ガリウムデバイスは、ゲートリーク電流が小さく且つ駆動損失が低く、従って、導通プロセスにおいて改善された電子正孔注入能力を持つ。
【0005】
第1の態様によれば、この出願は、窒化ガリウムデバイスを提供し、当該窒化ガリウムデバイスは、基板と、該基板上に形成された窒化ガリウム(GaN)バッファ層と、該GaNバッファ層上に形成された窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)バリア層と、該AlGaNバリア層上に形成されたソース、ドレイン、及びゲートと、を含む。該ゲートは、AlGaNバリア層上に形成されたPドープト窒化ガリウム(P-GaN)キャップ層と、該P-GaNキャップ層上に形成された第1ゲートメタル及び第2ゲートメタルとを含む。第1ゲートメタルとP-GaNキャップ層との間にショットキーコンタクトが形成され、第2ゲートメタルとP-GaNキャップ層との間にオーミックコンタクトが形成される。
【0006】
この出願で提供される窒化ガリウムデバイスは、ショットキーゲートとオーミックゲートとを有するハイブリッドゲート構造を持ち、導通プロセスにおけるゲートリーク電流を低減して駆動電力消費を低減させることができるだけでなく、導通中に大量の電子正孔をAlGaNバリア層に注入して動的抵抗を最適化することもでき、それによりデバイス信頼性を向上させる。
【0007】
一実装において、第1ゲートメタル及び第2ゲートメタルは、ゲートのゲート幅方向に対して垂直な方向に沿って間隔を置いて、平行に配置される。
【0008】
一実装において、ゲートは、複数の第1ゲートメタル及び複数の第2ゲートメタルを含む。
【0009】
一実装において、複数の第1ゲートメタル及び複数の第2ゲートメタルは、ゲートのゲート幅方向に沿って、間隔を置いて交互に分散されて、デバイス駆動損失を低減させながら、ゲート幅方向に沿って窒化ガリウムデバイスの動的抵抗を均等に最適化し、それにより窒化ガリウムデバイスの信頼性を向上させる。
【0010】
一実装において、複数の第2ゲートメタルは、ゲートのゲート幅方向に平行なP-GaNキャップ層のエッジの近くにあってゲート幅方向に沿って延在した1つの縦方向ゲートメタルと、ゲート幅方向に沿って分散されて配置された複数の横方向ゲートメタルとを含む。各横方向ゲートメタルの一端が縦方向ゲートメタルに接続される。複数の第2ゲートメタルと、複数の横方向ゲートメタルとが、ゲート幅方向に沿って交互に分散される。
【0011】
一実装において、窒化ガリウムデバイスは更に、ディプレッション型高電子移動度トランジスタ(HEMT)を含む。ディプレッション型HEMTのソースが、第1ゲートメタルに結合され、ディプレッション型HEMTのゲートが、当該窒化ガリウムデバイスのソースに結合され、ディプレッション型HEMTのドレインが、第2ゲートメタルに結合される。ディプレッション型HEMTは、窒化ガリウム駆動回路内の例えばゲート駆動抵抗及びスイッチなどのコンポーネントの機能を実装することができ、その結果、駆動回路内のコンポーネントを節減することができ、駆動回路を単純化する助けとなる。
【0012】
第2の態様によれば、この出願は、ゲートドライバと、この出願の第1の態様及び第1の態様のいずれかの実装にて提供される窒化ガリウムデバイスと、を含む駆動回路を提供する。窒化ガリウムデバイスの第1ゲートメタル及び第2ゲートメタルが、ゲートドライバの信号出力端に結合され、第2ゲートメタルとゲートドライバの信号出力端との間にゲート駆動抵抗及びスイッチが直列に接続される。
【0013】
一実装において、スイッチは、ゲートドライバの駆動信号の立ち上がりエッジが到着したとき、予め定められた時間の遅延後に開くように構成される。
【0014】
一実装において、スイッチは、ゲートドライバの駆動信号の立ち下がりエッジが到着したときに閉じるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】、現在の窒化ガリウムデバイスの概略構造図である。
【
図2】この出願の一実施形態に従った窒化ガリウムデバイスの概略構造図である。
【
図3】ショットキーゲートを有する窒化ガリウムデバイスの概略構造図及び等価回路図である。
【
図4】オーミックゲートを有する窒化ガリウムデバイスの概略構造図及び等価回路図である。
【
図5】
図2に示した窒化ガリウムデバイスの等価回路図である。
【
図6】この出願の一実施形態に従った窒化ガリウムデバイスのゲートメタルのレイアウト方式の概略図である。
【
図7】この出願の一実施形態に従った窒化ガリウムデバイスのゲートメタルの他のレイアウト方式の概略図である。
【
図8】この出願の一実施形態に従った窒化ガリウムデバイスのゲートメタルの更なる他のレイアウト方式の概略図である。
【
図9】この出願の一実施形態に従った駆動回路の概略図である。
【
図10】この出願の一実施形態に従った駆動回路の駆動タイミングシーケンスの図である。
【
図11】この出願の一実施形態に従った他の窒化ガリウムデバイスの概略構造図である。
【
図12】この出願の一実施形態に従った窒化ガリウムデバイスの駆動ロジックの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
窒化ガリウム(GaN,gallium nitride)は、窒素とガリウムとの化合物であり、III族(ホウ素族元素)とV族(窒素族元素)との直接バンドギャップ半導体である。現在最も一般的に使用されている半導体材料であるシリコンが1.12eV(エレクトロンボルト)のバンドギャップを持つのに対し、窒化ガリウムは3.4eVという広いバンドギャップを持つ。従って、窒化ガリウムは、ハイパワーの高速デバイスにおいてシリコンデバイスよりも良好な性能を持つ。
【0017】
バンドギャップ(band gap又はenergy gap)は、エネルギーバンドギャップ(energy band gap)又は禁制帯の幅(width of forbidden band)とも呼ばれ、一般に、半導体又は絶縁体における価電子帯の頂部と伝導帯の底との間のエネルギー差を指す。直接バンドギャップ(direct band gaps)は、半導体材料における伝導帯の底での最小値と価電子帯の頂部での最大値がk空間において同じk値に対応するエネルギーバンド構造である。この構造を持つ半導体は直接遷移半導体(又は直接バンドギャップ半導体)と呼ばれる。
【0018】
電源プロダクトが高効率及び小型化のトレンドに向かって発展するにつれて、例えば窒化ガリウムなどの広い禁制帯の半導体材料に基づいて製造される電力スイッチなどの窒化ガリウムデバイスがますます注目を集めている。
図1に示すように、現在、窒化ガリウムデバイスは主に、例えば高電子移動度トランジスタ(high electron mobility transistor,HEMT)など、窒化アルミニウムガリウム/窒化ガリウム(AlGaN/GaN)の横型ヘテロ構造に基づくデバイスを含んでいる。AlGaN/GaNヘテロ構造の界面に、比較的高い電子移動度の二次元電子ガス 2DEGが存在する。従って、AlGaN/GaNヘテロ構造の界面に、高い電子移動度を持つ2DEGチャネルを自然形成することができ、その結果、窒化ガリウムデバイスは、これら2つのデバイスが同じ導通抵抗を持つとき、半導体シリコンデバイスよりも小さいチップ面積を持つ。窒化ガリウムは広禁制帯半導体である。また、窒化ガリウムの動作温度は非常に高く、通常500℃より上に達することができ、その結果、窒化ガリウムデバイスは高温条件で動作する能力を持つ。また、窒化ガリウムは、比較的高い破壊電界を持ち、その結果、窒化ガリウムデバイスは、比較的高いゲート-ドレイン破壊電圧を有し、高電圧条件で動作する能力を持つ。
【0019】
窒化ガリウムは高極性半導体材料であるため、通常、AlGaN/GaNの横型ヘテロ構造の界面に自然形成される高濃度の2DEGを空乏化させることは困難である。結果として、AlGaN/GaNヘテロ構造に基づく窒化ガリウムデバイスは通常、ノーマリーオンデバイスである。ノーマリーオン窒化ガリウムデバイスの導通を維持するためには安定な導通電流が必要とされ、デバイスをオフにするためには逆電圧をゲートに印加する必要がある。この特徴は、駆動回路の設計をしにくくするものであるとともに、デバイスの電力消費が比較的高くするものである。さらに、ノーマリーオン窒化ガリウムデバイスは、回路システム(例えば、電力変換回路システム)のフェイルセーフを殆ど保証することができない。
【0020】
この出願の一実施形態は窒化ガリウムデバイスを提供する。当該窒化ガリウムデバイスは、ノーマリーオフデバイスであるとともに、駆動回路の設計をしやすくする。さらに、当該窒化ガリウムデバイスは、ゲートリーク電流が小さく且つ駆動損失が低く、従って、導通プロセスにおいて高い電子正孔注入能力を持つ。
【0021】
図2は、この出願の一実施形態に従った窒化ガリウムデバイスの概略構造図である。
図2に示すように、窒化ガリウムデバイスは、基板(substrate)100と、基板100上に形成された窒化ガリウムGaNバッファ層(GaN buffer layer)200と、GaNバッファ層200上に形成された窒化アルミニウムガリウムAlGaNバリア(AlGaN barrier)層300と、AlGaNバリア層300上に形成されたソース(G)、ドレイン(D)、及びゲート(G)とを含む。ゲートGは、AlGaNバリア層300上に形成されたPドープト窒化ガリウムP-GaNキャップ(P-GaN cap)層400と、P-GaNキャップ層400上に形成された第1ゲートメタルM1及び第2ゲートメタルM2とを含む。第1ゲートメタルM1とP-GaNキャップ層400との間にショットキーコンタクトが形成され、第2ゲートメタルM2とP-GaNキャップ層400との間にオーミックコンタクトが形成される。
【0022】
基板100は、窒化ガリウムデバイスのベースボードとして使用され、例えばシリコンSi、炭化シリコンSiC、又はサファイアAl2O3などの材料で作製され得る。
【0023】
オプションで、窒化ガリウムと基板100の材料とは異なるため、通常、異なる格子定数及び熱膨張係数を持つ。基板100上にGaNバッファ層200を直接成長させると、例えばGaNバッファ層200と基板100との間の格子不整合及び熱的不整合などの問題に起因してエピタキシャル層クラックが発生することがあり、その結果、結晶品質が低下する。従って、エピタキシャル層クラックの発生を回避するために、基板100上に先ず、専用の遷移層500成長させ、次いで、遷移層500上にGaNバッファ層200を成長させることができる。
【0024】
遷移層500は、異なる材料の基板100に基づいて異なる材料を用いて生成され得る。例えば、Si基板が使用される場合、遷移層500は、窒化アルミニウムガリウムAlGaNを用いて生成され得る。Al2O3基板が使用される場合、遷移層500は、アンモニアNH3によりAl2O3を窒化させることによって生成される窒化アルミニウムAlN層を用いて生成され得る。
【0025】
ショットキーコンタクトは、ゲートメタル(例えば、第1ゲートメタルM1)及び半導体材料(例えば、P-GaNキャップ層400)が互いに接触するときに境界面における半導体のエネルギーバンドの曲げを介して形成されるショットキーバリアである。
【0026】
ショットキーコンタクトをしたゲートメタル及び半導体材料は、窒化ガリウムデバイスのショットキーゲートを構成し得る。
図3は、ショットキーゲートを有する窒化ガリウムデバイスの概略構造図及び等価回路図である。
図3に示すように、AlGaNバリア層及びGaNバッファ層を含むAlGaN/GaNヘテロ構造の界面に2DEGチャネルが形成され、P-GaNキャップ層が、P-GaNキャップ層の下の2DEGチャネルを空乏化させることができ、その結果、当該デバイスはノーマリーオフである。しかしながら、当該デバイスのアクセス領域は依然として2DEGチャネルを維持する。アクセス領域とは、ショットキーゲートとソースとの間及びショットキーゲートとドレインとの間の2DEGチャネルが位置する領域である。従って、ショットキーゲートに特定の電圧が印加されると、ショットキーゲートの下の2DEGチャネルが再構築されてデバイスを導通させることができる。ショットキーゲートに印加される電圧の値は、窒化ガリウムデバイスの導通電圧(すなわち、閾値電圧)よりも大きい必要がある。
【0027】
さらに、
図3に示すように、ショットキーゲートは、背中合わせに置かれた一対のダイオードと等価であり、具体的には、ショットキー接合に相当する順方向に置かれたダイオードD1と、P-GaNキャップ層に相当する逆方向に置かれたダイオードD2とを含み得る。この等価構造に基づいて、ショットキーゲートは窒化ガリウムデバイスのゲートリーク電流を低減させる助けとなり、それにより、デバイスの駆動電力消費を低減させる。しかしながら、ショットキーゲート構造を持つ窒化ガリウムデバイスが導通されるとき、電子正孔注入能力は標準的なものであり、良好な動的抵抗特性を得ることはできない。
【0028】
オーミックコンタクトをしたゲートメタル及び半導体材料は、窒化ガリウムデバイスのオーミックゲートを構成し得る。
図4は、オーミックゲートを有する窒化ガリウムデバイスの概略構造図及び等価回路図である。
図4に示すように、オーミックゲートは順方向に置かれたダイオードD3と等価であり、その結果、オーミックゲートを有する窒化ガリウムデバイスは、導通中にP-GaNキャップ層からAlGaNバリア層に大量の電子正孔を注入することができ、窒化ガリウムデバイスがオフにされるときに、電子トラップによって捕捉された電子を窒化ガリウムデバイスが解き放つ助けとなり、それにより窒化ガリウムデバイスの動的抵抗を最適化し、窒化ガリウムデバイスの信頼性を向上させる。しかしながら、オーミックコンタクトゲート構造を有する窒化ガリウムデバイスは、導通プロセスにおいて電流を連続的に維持する必要があり、駆動電力消費が比較的高い。
【0029】
さらに、
図2に示すように、この出願のこの実施形態で提供される窒化ガリウムデバイスによれば、第1ゲートメタルM1とP-GaNキャップ層400との間にショットキーコンタクトが形成され、且つ第2ゲートメタルM2とP-GaNキャップ層400との間にオーミックコンタクトが形成されて、ショットキーゲート(以下ではM1で表され得る)とオーミックゲート(以下ではM2で表され得る)とを含むハイブリッドゲート構造を形成する。ハイブリッドゲート構造は、ショットキーゲートのみを用いる窒化ガリウムデバイスでは導通中に大量の電子正孔をAlGaNバリア層300に注入することができないという欠点を克服するとともに、オーミックゲートのみを用いる窒化ガリウムデバイスでは導通プロセスにおいて電流を連続的に維持する必要があって比較的高い駆動電力消費を生じさせるという欠点も克服する。分かることには、この出願で提供される窒化ガリウムデバイスは、導通プロセスにおけるゲートリーク電流を低減して駆動電力消費を低減させることができるだけでなく、導通中に大量の電子正孔をAlGaNバリア層300に注入して動的抵抗を最適化することもでき、それによりデバイス信頼性を向上させる。
【0030】
図5は、
図2に示した窒化ガリウムデバイスの等価回路図である。
図5に示すように、ハイブリッドゲート構造におけるショットキーゲートは、背中合わせに置かれた一対のダイオードと等価であり、具体的には、ショットキー接合に相当する順方向に置かれたダイオードD1と、P-GaNキャップ層に相当する逆方向に置かれたダイオードD2とを含み得る。第1ゲートメタルM1がダイオードD2のカソードに結合され、ダイオードD2のアノードがダイオードD1のアノードに結合され、ダイオードD1のカソードが窒化ガリウムデバイスのソースSに結合される。第2ゲートメタルM2は、等価的に、pGaNキャップ層400の電位点G’に結合される。第2ゲートメタルM2及び電位点G’は更に、ダイオードD2のアノード及びダイオードD1のアノードに結合される。
【0031】
この出願のこの実施形態において、1つ以上の第1ゲートメタルM1及び1つ以上の第2ゲートメタルM2がP-GaNキャップ層400上に配置され得る。当該窒化ガリウムデバイスは、第1ゲートメタルM1及び第2ゲートメタルM2の数量及びレイアウト方式、並びにP-GaNキャップ層400と第1ゲートメタルM1及び第2ゲートメタルM2の各々の間のコンタクト面積を変えることによって異なる特徴を持ち得る。
【0032】
図6は、この出願の一実施形態に従った窒化ガリウムデバイスのゲートメタルのレイアウト方式の概略図である。
図6に示すように、当該窒化ガリウムデバイスは、1つの第1ゲートメタルM1と1つの第2ゲートメタルM2とを含んでおり、第1ゲートメタルM1及び第2ゲートメタルM2は、ゲートのゲート幅方向に対して垂直な方向に沿って間隔を置いて、平行に配置されている。
【0033】
ゲート幅方向に対して垂直な方向において、第1ゲートメタルM1は、ソースSに近い側に配置されることができ、第2ゲートメタルM2は、ドレインDに近い側に配置されることができ、あるいは、第1ゲートメタルM1がドレインDに近い側に配置され、第2ゲートメタルM2がソースSに近い側に配置されてもよい。
【0034】
さらに、ゲート幅方向において、第1ゲートメタルM1及び第2ゲートメタルM2は、P-GaNキャップ層400の一端から他端まで延在し得る。従って、P-GaNキャップ層400は、ゲート幅方向の全体で第1ゲートメタルM1とショットキーコンタクトを形成することができ、その結果、ゲートがゲート幅方向全体で比較的低いリーク電流を持つことができ、それにより駆動損失を低減させる助けとなる。P-GaNキャップ層400は更に、ゲート幅方向の全体で第2ゲートメタルM2とのオーミックコンタクトを形成することができ、その結果、窒化ガリウムデバイスが導通されるときに、ゲート幅方向の全体でAlGaNバリア層300に電子正孔を注入することができ、それにより窒化ガリウムデバイス全体としての動的抵抗を最適化し、窒化ガリウムデバイスの信頼性を向上させる。
【0035】
図7は、この出願の一実施形態に従った窒化ガリウムデバイスのゲートメタルのレイアウト方式の概略図である。
図7に示すように、当該窒化ガリウムデバイスは、複数の第1ゲートメタルM1及び複数の第2ゲートメタルM2を含み、複数の第1ゲートメタルM1及び複数の第2ゲートメタルM2は、ゲート幅方向に沿って一列に配列され、間隔を置いて交互に配置されている。斯くして、ゲート幅方向に沿って、ゲートの下に、低リーク電流領域(すなわち、第1ゲートメタルM1の下の領域)と電子正孔注入領域(すなわち、第2ゲートメタルM2の下の領域)とが交互に分散されて、デバイス駆動損失を低減させながら、ゲート幅方向に沿って窒化ガリウムデバイスの動的抵抗を均等に最適化し、それにより窒化ガリウムデバイスの信頼性を向上させる。
【0036】
P-GaNキャップ層400と第1ゲートメタルM1を含むメタルゲートとの間のコンタクト面積、及びP-GaNキャップ層400と複数の第2ゲートメタルM2を含むメタルゲートとの間のコンタクト面積は同じであってもよいし、異なっていてもよい。当該窒化ガリウムデバイスは、メタルゲートとP-GaNキャップ層400との間のコンタクト面積を変えることによって異なる特徴を持ち得る。
【0037】
例えば、限られたサイズのP-GaNキャップ層400の下で、第1ゲートメタルM1とP-GaNキャップ層400との間のコンタクト面積を大きくし、第2ゲートメタルM2とP-GaNキャップ層400との間のコンタクト面積を小さくすると、当該窒化ガリウムデバイスのゲートリーク電流が減じられ、これは、窒化ガリウムデバイスの駆動損失及び導通電圧を更に低減させることには資するが、窒化ガリウムデバイスが導通されるときにAlGaNバリア層300に電子正孔を注入する能力を低下させる。
【0038】
他の一例で、限られたサイズのP-GaNキャップ層の下で、第1ゲートメタルM1とP-GaNキャップ層400との間のコンタクト面積を小さくし、第2ゲートメタルM2とP-GaNキャップ層400との間のコンタクト面積を大きくすると、当該窒化ガリウムデバイスは、導通中に、より多くの電子正孔をAlGaNバリア層300に注入することができ、それにより窒化ガリウムデバイスの動的抵抗を更に最適化して窒化ガリウムデバイスの信頼性を改善するが、窒化ガリウムデバイスの駆動電力消費の更なる低減を制限する。
【0039】
従って、この出願のこの実施形態に示すハイブリッドゲートを有する窒化ガリウムデバイスの構造に基づいて、当業者は、回路設計の実際の要求に基づいて、第1ゲートメタルM1及び第2の金属ゲートM2の数量及びレイアウト、並びにP-GaNキャップ層400と第1ゲートメタルM1及び第2ゲートメタルM2の各々との間のコンタクト面積を適切に設計し得る。これは、この出願のこの実施形態において特に限定されることではない。
【0040】
例えば、当該窒化ガリウムデバイスが複数の第1ゲートメタルM1及び複数の第2ゲートメタルM2を含むとき、それら複数の第1ゲートメタルM1及び複数の第2ゲートメタルM2は更に、
図8に示すレイアウトにあってもよい。複数の第2ゲートメタルM2は、1つの縦方向ゲートメタルM21と、少なくとも1つの横方向ゲートメタルM22とを含んでいる。縦方向ゲートメタルM21は、ゲート幅方向に平行なP-GaNキャップ層400のエッジに近く、且つゲート幅方向に沿って延在している。上記少なくとも1つの横方向ゲートメタルM22は、縦方向ゲートメタルM21の同じ側に配置されるとともに、ゲート幅方向に沿って間隔を置いて分散されて配置されている。各横方向ゲートメタルM22の一端が、縦方向ゲートメタルM21に接続されている。ゲート幅方向に沿って第1ゲートメタルM1と複数の横方向ゲートメタルM22とが交互に分散される形態を形成するように、横方向ゲートメタルM22同士の間に複数の第1ゲートメタルM1が分散されている。
【0041】
この出願の一実施形態は更に、ハイブリッドゲート構造を有する上述の窒化ガリウムデバイスのいずれかを駆動するように構成された駆動回路を提供する。
図9は、駆動回路の概略図を示している。
図9に示すように、当該駆動回路はゲートドライバ600を含む。ゲートドライバ600の出力端が、窒化ガリウムデバイスの第1ゲートメタルM1及び第2ゲートメタルM2に結合され、第2ゲートメタルM2とゲートドライバ600の信号出力端との間に、ゲート駆動抵抗RG’及びスイッチSG’が直列に接続される。
【0042】
ゲートドライバ600は、駆動信号VGを生成するように構成される。駆動信号VGは電圧信号とし得る。窒化ガリウムデバイスの導通及び遮断は、窒化ガリウムデバイスのゲートに異なる電圧の駆動信号VGを出力することによって制御され得る。
【0043】
この出願のこの実施形態において、ゲート駆動抵抗RG’は、駆動回路におけるゲート駆動リンギングを除去する機能を有する。具体的には、窒化ガリウムデバイスのゲートとドレインDとの間及び窒化ガリウムデバイスのゲートとソースSとの間には容量構造が存在し、窒化ガリウムデバイスのゲートループ内には不可避的に寄生インダクタンスが生成される。結果として、ゲートループは、ゲートドライバ600の駆動信号VGの励起の下で駆動リンギングを発生する。ゲートループにゲート駆動抵抗RG’が付加すると、駆動リンギングを除去することができる。
【0044】
この出願のこの実施形態において、ゲート駆動抵抗RG’は更に、窒化ガリウムデバイスの導通/遮断速度を調整する機能を有する。具体的には、より小さいゲート駆動抵抗RG’は、窒化ガリウムデバイスのより高い導通/遮断速度を示し、より大きいゲート駆動抵抗RG’は、窒化ガリウムデバイスのより低い導通/遮断速度を示す。窒化ガリウムデバイスの高い/低い導通/遮断速度は、当該デバイスの損失及び干渉に関係する。当業者は、回路設計の実際の要求に基づいてゲート駆動抵抗RG’の大きさを高い確実性で選択し得る。これは、この出願のこの実施形態において特に限定されることではない。
【0045】
図10は、この出願の一実施形態に従った駆動回路の駆動タイミングシーケンスの図である。
図10に示すように、時点T0の前、駆動信号VGが低電位にあるとき、スイッチSG’が閉状態に設定され、窒化ガリウムデバイスが遮断され、ショットキーゲートM1及びオーミックゲートM2の電位は両方とも低電位である。時点T0にて、駆動信号VGの立ち上がりエッジが到着したとき、スイッチSG’はなおも閉状態に設定され、ショットキーゲートM1及びオーミックゲートM2の電位は高電位に反転され、その結果、窒化ガリウムデバイスが導通される。駆動タイミングシーケンスが、時点T0から予め設定された時間dtだけ遅延して時点T1に到達すると、スイッチSG’が開かれて駆動電流を減少させる。この場合、ショットキーゲートM1の電位は依然として高電位に維持され、オーミックゲートM2の下のpGaNキャップ層の電位点G’も、ショットキーゲートM1の高電位によって高電位に維持されることができ、ゲートの下の2DEGの構築を維持し、それにより窒化ガリウムデバイスの導通状態を維持することができる。時点T2にて、駆動信号VGの立ち下がりエッジが到着したとき、スイッチSG’は再び閉じられ、ショットキーゲートM1及びオーミックゲートM2の電位は低電位に反転され戻し、その結果、窒化ガリウムデバイスは遮断される。
【0046】
他の一実施形態では、
図10に示す駆動回路内のスイッチSG’及びゲート駆動抵抗RG’の機能を窒化ガリウムデバイスに集積して、駆動回路内のスイッチSG’及びゲート駆動抵抗RG’を節減し得る。
【0047】
図11は、スイッチSG’とゲート駆動抵抗RG’の機能を集積した窒化ガリウムデバイスの概略構造図である。
図11に示すように、ディプレッション型高電子移動度トランジスタHEMTが窒化ガリウムデバイスに集積され、ディプレッション型HEMTを用いることによってスイッチSG’及びゲート駆動抵抗RG’の機能が実装される。具体的な集積方式は以下の通りである:第1ゲートメタルM1が、ディプレッション型HEMTのソースに結合された後に、窒化ガリウムデバイスのゲートGとして使用され、駆動信号に結合されるように構成される。ディプレッション型HEMTのゲートgが窒化ガリウムデバイスのソースSに結合される。ディプレッション型HEMTのドレインdが、窒化ガリウムデバイスの第2ゲートメタルM2に結合される。
【0048】
ディプレッション型HEMTのソースsに対するゲートgの電圧VgsがVgs=0を満足するとき、2DEGチャネルを形成することができ、ディプレッション型HEMTが導通される。Vgs>0であるとき、比較的大きいゲート電流を生成することができる。Vgs<0であるとき、チャネルが狭くなり、ゲート電流が減少する。Vgsが特定の閾値電圧Vp(ピンチオフ電圧とも呼ばれる)まで更に低下すると、チャネルが消滅し、その結果、ディプレッション型HEMTが遮断される。
【0049】
この出願のこの実施形態において、窒化ガリウムデバイスを駆動することの難しさを低減させるためには、好ましくは、例えばVp=-2Vといった、比較的小さい絶対値の閾値電圧Vpを持つ低電圧ディプレッション型HEMTが使用される。
図11に示す窒化ガリウムデバイスの駆動ロジックを、以下にて具体的に説明する。
【0050】
図12に示すように、窒化ガリウムデバイスをオンにするプロセスにおいて、駆動信号VG<|Vp|(Vpの絶対値)であるとき、Vgs>Vpであり、ディプレッション型HEMTは導通状態にあり、オーミックゲートM2の電位は駆動信号VGの電位と同じである。駆動信号VG≧|Vp|であるとき(VG=6Vのとき)、Vgs≦Vpであり、ディプレッション型HEMTは遮断状態にある。この場合、オーミックゲートM2の電位は、ディプレッション型HEMTによって|Vp|にクランプされ、ショットキーゲートM1も、駆動信号VGによって高電位に維持され、その結果、窒化ガリウムデバイスの2DEGの構築が維持され、それにより窒化ガリウムデバイスの導通状態が維持される。例えば駆動信号VG=0Vのときなど、窒化ガリウムデバイスがオフにされた状態では、オーミックゲートM2の電位はゼロ電位に引き下げられる。
【0051】
更に言及しておくべきことには、この出願のこの実施形態では、ディプレッション型HEMTのサイズを変えることによって、ディプレッション型HEMTのゲートgのリーク電流特性及び閾値電圧Vpを変化させて、オーミックゲートM2のクランプ電位を|Vp|を変えることができる。異なる|Vp|は、窒化ガリウムデバイスが異なるリーク電流レベル及び異なる電子正孔注入能力を持つことを可能にし得る。当業者は、回路設計の実際の要求に基づいてディプレッション型HEMTのサイズを高い確実性で選択し得る。これは、この出願のこの実施形態において特に限定されることではない。
【0052】
本発明の目的、技術的ソリューション、及び利益は、以上の特定の実施形態において更に詳細に説明されている。理解されるべきことには、以上の説明は、単に本発明の特定の実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲を限定することを意図したものではない。本発明の精神及び原理の範囲内でなされる如何なる変更、均等置換、又は改良も、本発明の保護範囲に入るものである。