(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】タイヤのゴム補強材、その製造方法およびこれを含むタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/00 20060101AFI20231228BHJP
D02G 3/48 20060101ALI20231228BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20231228BHJP
D03D 15/225 20210101ALI20231228BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20231228BHJP
D06M 15/41 20060101ALI20231228BHJP
D06M 15/693 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B60C9/00 A
D02G3/48
D03D1/00 A
D03D15/225
D03D15/283
D06M15/41
D06M15/693
(21)【出願番号】P 2022527098
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(86)【国際出願番号】 KR2020018740
(87)【国際公開番号】W WO2021133005
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】10-2019-0175655
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0176538
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】イ,ソン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,オク ファ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ミン ホ
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/004666(WO,A1)
【文献】特開2020-525344(JP,A)
【文献】国際公開第2013/048384(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2005184(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-1327704(KR,B1)
【文献】国際公開第2015/159795(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
D02G 3/48
D03D 1/00
D03D 15/225
D03D 15/283
D06M 15/41
D06M 15/693
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナイロン、レーヨン、アラミド、および、PETを含むポリエステルのうちの少なくとも1つを含む経糸を用いて、経糸間密度が65%以上に、
かつ、単位長さあたりの経糸本数(n/inch)が
58本以上に製織された繊維基材と、
前記繊維基材上に形成された接着層と、
前記接着層上に形成されたゴムコーティング層と、を含み、
前記ゴムコーティング層は、合成ゴムまたは天然ゴムを含み、
前記接着層に対するゴムコーティング層の単位面積あたりの塗布量は、75~300g/m
2であ
り、
前記ゴムコーティング層の単位面積あたりの塗布量は、弾性重合組成物及び溶媒を含むゴムコーティング液の塗布量であり、
ASTM D885の標準試験法による10~15.0g/dの切断強度を有し、
ASTM D885の標準試験法による23.55~30%の破断伸び率を有する、
タイヤ
のゴム補強材。
【請求項2】
前記繊維基材は、0.10~0.60mmの厚さを有する、請求項1に記載のタイヤ
のゴム補強材。
【請求項3】
前記ゴムコーティング層は、0.01~0.20mmの厚さを有する、請求項1に記載のタイヤ
のゴム補強材。
【請求項4】
前記接着層は、レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス(RFL)を含む、請求項1に記載のタイヤ
のゴム補強材。
【請求項5】
ASTM D4393標準試験法による接着力評価の際に10kgf以上の接着力を有する、請求項1に記載のタイヤ
のゴム補強材。
【請求項6】
ナイロン、レーヨン、アラミド、および、PETを含むポリエステルのうちの少なくとも1つを含む経糸を用いて、経糸間密度が65%以上に、
かつ、単位長さあたりの経糸本数(n/inch)が
58本以上に製織された繊維基材を用意する段階;
前記繊維基材上に接着層を形成する段階;および
前記接着層上にゴムコーティング液を塗布し熱処理して、ゴムコーティング層を形成する段階;を含み、
前記ゴムコーティング層は、合成ゴムまたは天然ゴムを含み、
前記接着層に対するゴムコーティング層の単位面積あたりの塗布量は、75~300g/m
2であ
り、
前記ゴムコーティング層の単位面積あたりの塗布量は、弾性重合組成物及び溶媒を含むゴムコーティング液の塗布量であり、
ASTM D885の標準試験法による10~15.0g/dの切断強度を有し、
ASTM D885の標準試験法による23.55~30%の破断伸び率を有する、
タイヤ
のゴム補強材の製造方法。
【請求項7】
前記繊維基材は、0.10~0.60mmの厚さを有する、請求項
6に記載のタイヤ
のゴム補強材の製造方法。
【請求項8】
前記ゴムコーティング層は、0.01~0.20mmの厚さを有する、請求項
6に記載のタイヤ
のゴム補強材の製造方法。
【請求項9】
前記ゴムコーティング液は、合成ゴムまたは天然ゴムを含む弾性重合組成物10~30重量%と、溶媒70~90重量%とを含む、
請求項
6に記載のタイヤ
のゴム補強材の製造方法。
【請求項10】
前記接着層は、レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス(RFL)を含む、請求項
6に記載のタイヤ
のゴム補強材の製造方法。
【請求項11】
ナイロン、レーヨン、アラミド、および、PETを含むポリエステルのうちの少なくとも1つを含む経糸に撚りを与える段階をさらに含む、請求項
6に記載のタイヤ
のゴム補強材の製造方法。
【請求項12】
請求項1~
5のいずれか1項に記載のタイヤ
のゴム補強材を含むタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2019年12月26日付の韓国特許出願第10-2019-0175655号、および2020年12月16日付の韓国特許出願第10-2020-0176538号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、タイヤコード、その製造方法およびこれを含むタイヤに関する。
【背景技術】
【0003】
最近、自動車の性能が向上し、道路の状況が改善されるにつれ、自動車の走行速度が次第に増加していて、高速走行の際にもタイヤの安定性および耐久性を維持できるようにすることが必要である。このために、タイヤのゴム補強材として使用されるタイヤコードに関する研究が活発に進められている。
【0004】
タイヤコードは、使用される部位および役割によって、カーカス、ベルト、キャッププライに大きく区分されうるのであり、これに使用される素材には、ナイロン、レーヨン、アラミド、および、PETを含むポリエステルなどがある。
【0005】
この時、前記素材からなるタイヤコードは、一般に、ゴムとの接着のために、ゴム成分と共に圧延される。つまり、タイヤの製造過程にて圧延工程が伴うが、タイヤの製造過程にてタイヤコードとゴムとの接着のための圧延工程が適用される場合、工程費用が増加し、圧延によってタイヤの密度が必要以上に増加して、タイヤの重量が不必要に増加しうる。
【0006】
また、タイヤコードにゴムを圧延する工程では、一般に固体状態のゴムが使用されるが、このような固体状態のゴムの圧延によって形成された製品は、200μm以下、特に5μm~30μm程度の薄い薄膜形態に作られにくく、このような製品が補強材として使用される場合、タイヤの厚さおよび重量が増加する。
【0007】
一方、最近、タイヤ製造業者では、タイヤの超軽量化および補強材の軽量化のためにゴム層の厚さを減少させようとする。転がり抵抗(Rolling Resistance、R/R)はタイヤの重量に関連があり、自動車の燃料消費と二酸化炭素の排出に大きな影響を及ぼす。例えば、転がり抵抗(R/R)が大きいほど、自動車の走行時に必要なエネルギーが増加する。また、自動車の回転、傾斜、加速に対する抵抗は、自動車の重量と密接な関係がある。したがって、タイヤの軽量化により自動車を軽量化し、その結果、エネルギー消費を減少させる研究も進められている。
【0008】
このため、厚さが薄いながらもゴムとの接着力に優れた新たなタイヤコードの開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、薄い厚さを有しながらも優れた耐久性を有するタイヤコードを提供する。
【0010】
また、本発明は、薄い厚さを有しながらも優れた耐久性を有するタイヤコードの製造方法を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、前記タイヤコードを含むタイヤを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書では、ナイロン、レーヨン、アラミド、および、PETを含むポリエステル、のうちの少なくとも1つを含む経糸を用いて、経糸間密度が65%以上、または単位長さあたりの経糸本数(n/inch)が35本以上に製織された繊維基材と、前記繊維基材上に形成された接着層と、前記接着層上に形成されたゴムコーティング層と、を含み、前記ゴムコーティング層は、合成ゴムまたは天然ゴムを含み、前記接着層に対するゴムコーティング層の単位面積あたりの塗布量は、75~300g/m2である、タイヤコードが提供される。
【0013】
また、本明細書では、(1)ナイロン、レーヨン、アラミド、および、PETを含むポリエステルのうちの少なくとも1つを含む経糸を用いて、経糸間密度が65%以上に、または単位長さあたりの経糸本数(n/inch)が35本以上に製織された繊維基材を用意する段階;(2)前記繊維基材上に接着層を形成する段階;および、(3)前記接着層上にゴムコーティング液を塗布し熱処理して、ゴムコーティング層を形成する段階;を含み、前記ゴムコーティング層は、合成ゴムまたは天然ゴムを含み、前記接着層に対するゴムコーティング層の単位面積あたりの塗布量は、75~300g/m2である、タイヤコードの製造方法が提供される。
【0014】
さらに、本明細書では、前記タイヤコードを含むタイヤが提供される。
【0015】
以下、発明の具体的な実施形態によるタイヤコード、その製造方法およびこれを含むタイヤについてより詳細に説明する。
【0016】
本明細書で使用される用語「経糸」および「緯糸」は、互いに交差してタイヤコードの一構成である繊維基材を織り込むのに用いられる構成を意味する。交差に関連する各糸の方向は相対的であり、したがって、緯糸と経糸も相対的な呼称でありうる。
【0017】
本明細書で使用される用語は、単に例示的な実施例を説明するために用いられたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上、明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものについての存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。
【0018】
本発明は、多様な変更が加えられて様々な形態を有し得るが、特定の実施例を例示して下記に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、前記思想および技術範囲に含まれるあらゆる変更、均等物乃至代替物を含むことが理解されなければならない。
【0019】
本出願に係る一例において、本出願は、タイヤコードに関する。
【0020】
具体的には、発明の一実施形態によれば、ナイロン、レーヨン、アラミド、および、PETを含むポリエステルのうちの少なくとも1つを含む経糸を用いて、経糸間密度が65%以上、または単位長さあたりの経糸本数(n/inch)が35本以上に製織された繊維基材;および前記繊維基材上に形成された接着層;および前記接着層上に形成されたゴムコーティング層;を含み、前記ゴムコーティング層は、合成ゴムまたは天然ゴムを含み、前記接着層に対するゴムコーティング層の単位面積あたりの塗布量は、75~300g/m2である、タイヤコードが提供されうる。
【0021】
本発明者らは、タイヤコードに関する研究を進行させて、上述した成分を含むタイヤコードが薄い厚さを有しながらも優れた耐久性を有するという点につき、実験を通して確認して、発明を完成した。
【0022】
また、前記実施形態のタイヤコードは、ゴムに対して優れた接着力を有するため、タイヤの製造過程で圧延工程を経なくても、ゴムと強力に接着可能であり、圧延工程を経ていないため、タイヤの製造費用が減少し、圧延によってタイヤの密度が必要以上に増加すること、およびタイヤの重量が不必要に増加することを防止することができる。
【0023】
前記実施形態のタイヤコードがタイヤのキャッププライ、ベルトまたはカーカスなどに用いられる場合、圧延工程が省略可能でタイヤの製造工程が単純化され、タイヤの厚さおよび全体の重量が減少できる。また、タイヤコードの粘着性が大きく増大して、グリーンタイヤの製造時、エアポケット(Air pocket)が減少してタイヤの不良率が減少しうる。
【0024】
また、前記実施形態のタイヤコードがタイヤに使用される場合、薄い厚さを有しながらも優れたゴム補強性能を有するタイヤコードによってタイヤの重量が減少して転がり抵抗(R/R)が低くなり、これによって、自動車の燃費が改善されるだけでなく、二酸化炭素の排出量も低くなりうる。
【0025】
前記実施形態のタイヤコードは、繊維基材を含み、前記繊維基材は、ナイロン、レーヨン、アラミド、および、PETを含むポリエステルのうちの少なくとも1つを含むフィラメントを経糸として用いることができる。ここで、前記経糸を用いて製織を進行させるが、製織時に経糸間密度65%以上、または単位長さあたりの経糸本数(n/inch)35本以上として進行させることができる。
【0026】
前記経糸間密度は、インチ(inch)あたり経糸の占める面積を示し、具体的には、{(経糸1本の幅(inch)*inchあたりの経糸本数(n))/inch}*100(%)で表すことができる。前記幅は、幅と同じ意味で使用され、タイヤコードの場合、その断面が事実上円形であるため、前記幅は、厚さと混用されうる。
【0027】
一つの例において、前記経糸間密度の下限は、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、または95%以上であってもよい。そして、前記経糸間密度の上限は特に制限されないが、例えば、100%未満、具体的には99%以下、98%以下、97%以下、96%以下、または95%以下であってもよい。経糸間密度の範囲が前記範囲を満足する場合、安定した接着層を形成し疲労性能を確保することができ、ゴムコーティング層との結合力を向上させる役割を有することができる。特に、前記経糸間密度が65%未満の場合には、接着力が不安定であり、ゴムコーティング層が流れ落ちるという問題がある。
【0028】
一つの例において、前記単位長さあたりの経糸本数(n/inch)は、35本以上、40本以上、45本以上、50本以上、55本以上、60本以上、または65本以上であってもよい。そして、前記単位面積あたりの経糸本数の上限は特に制限されないが、例えば、90本以下、85本以下、80本以下、75本以下、70本以下、65本以下、または60本以下であってもよい。単位面積あたりの経糸本数が前記範囲を満足する場合、安定した接着層を形成し疲労性能を確保することができ、ゴムコーティング層との結合力を向上させる役割を有することができる。特に、前記単位長さあたりの経糸本数が35本未満の場合、接着力が不安定であり、ゴムコーティング層が流れ落ちるという問題がある。
【0029】
一つの例において、前記繊維基材は、経糸間密度が65%以上であり、同時に単位長さあたりの経糸本数(n/inch)が35本以上で製織された繊維基材であってもよい。このように前記経糸間密度と経糸本数を同時に満たす場合、先に言及した接着力、結合力、耐疲労性能をより安定的に確保することができる。具体的な経糸間密度と経糸本数は、上述した通りである。
【0030】
一つの例において、前記繊維基材は、前記経糸間密度より低い緯糸間密度を有することができる。上述した経糸間密度と同様に、前記緯糸間密度は、inchあたりの緯糸の占める面積を示し、具体的には{(緯糸1本の幅(inch)*inchあたりの緯糸本数(n))/inch}*100(%)で確認される。
【0031】
一つの例において、前記繊維基材は、3~25%範囲の緯糸密度を有することができる。具体的には、前記繊維基材の緯糸密度の下限は、例えば、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、または15%以上であってもよい。そして、前記繊維基材の緯糸密度の上限は、例えば、24%以下、23%以下、22%以下、21%以下、20%以下、19%以下、18%以下、17%以下、16%以下、15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、または10%以下であってもよい。緯糸密度が前記範囲未満の場合、熱処理またはゴムコーティング工程の際、経糸を安定的に固定できずに製織物が捩れることで、不良が発生しうる。そして、前記緯糸密度が前記範囲を超える場合、熱処理の際、製品の幅の調節が難しくなり、接着力が相対的に低くなりうる。接着力が低くなる理由は、タイヤの製造の際、緯糸は経糸を固定する役割を果たすと同時に、ゴム内のガスが抜け出る通路として機能するが、過剰の緯糸が用いられる場合、その分だけ、タイヤの内部で異物として作用し、経糸がゴムに当たる面積が減少するからである。
【0032】
一つの例において、前記繊維基材は、前記単位長さあたりの緯糸本数よりも低い、単位長さあたりの緯糸本数(n/inch)を有することができる。
【0033】
一つの例において、前記繊維基材は、5~30本の範囲の緯糸本数(単位長さあたりの緯糸本数:n/inch)を有することができる。具体的には、前記繊維基材が有する緯糸本数の下限は、例えば、6本以上、7本以上、8本以上、9本以上、10本以上、11本以上、12本以上、13本以上、14本以上、15本以上、16本以上、17本以上、18本以上、19本以上、または20本以上であってもよい。そして、前記繊維基材緯糸本数の上限は、例えば、29本以下、28本以下、27本以下、26本以下、25本以下、24本以下、23本以下、22本以下、21本以下、20本以下、19本以下、18本以下、17本以下、16本以下、または15本以下であってもよい。緯糸本数が前記範囲未満の場合、熱処理またはゴムコーティング工程時、経糸を安定的に固定できず製織物が捩れながら不良が発生しうる。そして、緯糸本数が前記範囲を超える場合には、熱処理時、製品の幅の調節が難しくなり、接着力が相対的に低くなりうる。接着力が低くなる理由は、タイヤの製造時、緯糸は経糸を固定する役割を果たすと同時に、ゴム内のガスが抜け出る通路として機能するが、過剰の緯糸が用いられる場合、その分タイヤの内部で異物として作用し、経糸がゴムに当たる面積が減少するからである。
【0034】
一方、前記経糸には、撚りが与えられうる。
【0035】
ここで、撚りの単位はTPMで、Twist per meterと定義し、撚りの程度は、1mあたりの撚り数を基準として、0から最大250TPMまでの撚りが与えられる。
【0036】
前記経糸に撚りが与えられる場合、タイヤコードの集束性が向上し疲労性能が良くなるという役割を有することができる。
【0037】
一つの例において、前記ナイロン、レーヨン、アラミドおよびPETを含むポリエステルのうちの少なくとも1つを含む繊維(経糸および/または緯糸)は、300~1500deの繊度を有することができる。具体的には、前記繊度は、その下限が350de以上、400de以上、450de以上、500de以上、550de以上、600de以上、650de以上、700de以上、750de以上、800de以上、850de以上、900de以上、950de以上、1000de以上、1050de以上、1100de以上、1150de以上、または1200de以上であってもよい。そして、前記繊度の下限は、例えば、1450de以下、1400de以下、1350de以下、1300de以下、1250de以下、1200de以下、1150de以下、1100de以下、1050de以下、1000de以下、950de以下、900de以下、850de以下、800de以下、750de以下、または700de以下であってもよい。
【0038】
例えば、繊度300~1500deの、レーヨン、アラミド、および、PETを含むポリエステルのうちの少なくとも1つを含むフィラメントに0~250TPMの撚りを与えた経糸を使用することができる。
【0039】
一方、前記実施形態の繊維基材は、例えば、0.10mm以上、0.15mm以上、0.20mm以上、0.25mm以上、0.30mm以上、0.35mm以上、または0.40mm以上の厚さを有することができる。そして、前記厚さの上限は、例えば、0.60mm以下、0.55mm以下、0.50mm以下、0.45mm以下、または0.40mm以下であってもよい。前記繊維基材が上述した範囲の厚さを有する場合、一定の強力、破断伸び率を有し、安定した接着層を形成することができる。
【0040】
一方、前記実施形態のタイヤコードは、上述した繊維基材上に形成された接着層を含むことができる。
【0041】
前記接着層は、レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス(RFL)を含むことができ、例えば、前記接着層は、レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス(RFL)および溶剤を含む接着コーティング液によって形成される。
【0042】
前記レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックスは「RFL」ともいい、接着成分として作用することができる。レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックスは、特に、繊維基材とゴム成分との間の親和度および接着力を向上させて、タイヤコード内の繊維基材とゴムコーティング層との接着力を向上させることができる。
【0043】
これによって、タイヤコード内の繊維基材とゴムコーティング層とが互いに分離されず安定的に付着可能であり、前記タイヤコードがタイヤに適用される場合、タイヤの製造過程にて不良発生を防止することができる。また、加硫後に完成したタイヤにおいてタイヤコードとゴム(例えば、トレッドなど)が1つに接着されて優れた接着力を維持することができる。
【0044】
一方、前記実施形態のタイヤコードは、前記接着層上に形成されたゴムコーティング層を含むことができる。
【0045】
この時、前記ゴムコーティング層は、ゴムコーティング液を前記接着層に塗布して形成されるが、固体状態のゴムを使用する圧延工程によっては達成しにくい薄い厚さのゴムコーティング層を有することができ、ゴムコーティング層の厚さが薄くなるにつれて、これを含むタイヤコードおよび前記タイヤコードを含むタイヤの軽量化にも寄与することができる。
【0046】
具体的には、前記ゴムコーティング層は、合成ゴムまたは天然ゴムを含む弾性重合組成物および溶媒を含むゴムコーティング液によって形成され、前記弾性重合組成物は、弾性重合体および添加剤を含むことができる。
【0047】
弾性重合組成物は、例えば、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)およびイソブチレンゴム(IBR)、イソプレンゴム(IR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴムおよびネオプレンゴムの中から選択された少なくとも1つの弾性重合体を含むことができる。
【0048】
また、添加剤として、例えば、カーボンブラック、パラフィンオイル、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、硫黄、加硫促進剤、活性剤、粘着剤、接着剤などを含むことができる。
【0049】
前記溶媒は、弾性重合体を溶解できる物質であれば、その種類に特別な制限があるわけではなく、例えば、トルエン、ナフサ、メタノール、キシレンおよびテトラヒドロフランの中から選択された少なくとも1つを含むことができる。
【0050】
一方、前記ゴムコーティング液は、前記ゴムコーティング液の全体の重量に対して、10~30重量%の弾性重合組成物;および70~90重量%の溶媒;を含むことができる。
【0051】
前記ゴムコーティング液において弾性重合組成物の濃度が10重量%未満であれば、ゴムコーティング層の厚さが薄くなって粘着性および接着力が満足に発現され得ない可能性があり、それによって、タイヤの製造特性の低下および走行時のタイヤ不良の問題が発生しうる。
【0052】
一方、前記ゴムコーティング液において弾性重合組成物の濃度が30重量%を超えると、粘度の上昇によって接着液の撹拌性が低下してゴムコーティング液の分散性が低くなり、これによってコーティング性の低下、コーティング厚さの不均一などの問題がもたらされうる。
【0053】
一方、前記接着層に対するゴムコーティング層の単位面積あたりの塗布量は、75~300g/m2であってもよいが、前記接着層に対するゴムコーティング層の単位面積あたりの塗布量を前記範囲に調節する場合、厚さが薄いながらも、ゴムに対して優れた接着性を有し、耐久性に優れたタイヤコードを提供することができる。具体的には、前記接着層に対するゴムコーティング層の単位面積あたりの塗布量の下限は、例えば、80g/m2以上、85g/m2以上、90g/m2以上、95g/m2以上、100g/m2以上、105g/m2以上、110g/m2以上、115g/m2以上、120g/m2以上、125g/m2以上、130g/m2以上、135g/m2以上、140g/m2以上、145g/m2以上、150g/m2以上、155g/m2以上、160g/m2以上、165g/m2以上、170g/m2以上、175g/m2以上、180g/m2以上、185g/m2以上、190g/m2以上、195g/m2以上、または200g/m2以上であってもよい。そして、前記ゴムコーティング層の塗布量の上限は、例えば、290g/m2以下、280g/m2以下、270g/m2以下、260g/m2以下、250g/m2以下、240g/m2以下、230g/m2以下、220g/m2以下、210g/m2以下、200g/m2以下、190g/m2以下、180g/m2以下、170g/m2以下、または160g/m2以下であってもよい。
【0054】
前記接着層に対する前記ゴムコーティング層の面積あたりのゴムの塗布量が前記範囲未満の場合、ゴム表面に空隙が発生するか、前記タイヤコードを用いてタイヤを製造する際、タイヤの品質低下などの問題点が発生しうる。そして、塗布量が前記範囲を超える場合、タイヤの重量が増加して転がり抵抗(R/R)が高くなり、これによって、自動車の燃費が低下するだけでなく、二酸化炭素の排出量も高くなりうる。
【0055】
一方、前記ゴムコーティング層は、0.01~0.20mm、または0.02~0.20mm、または0.04~0.10mmの厚さを有することができる。
【0056】
従来のタイヤコードは、繊維基材上にゴム基材が圧延されてゴム層が形成されるので、一般に1mm以上の厚さ、少なくとも0.8mm以上の厚さを有する。
【0057】
これに対し、前記実施形態のゴムコーティング層は、ゴムコーティング液によって形成されるため、0.2mm以下の薄い厚さを有することができる。これによって、タイヤコードの全体の厚さが薄くなり、ひいては、前記タイヤコードを含むタイヤの厚さが薄くなる。
【0058】
前記ゴムコーティング層の厚さが0.01mm未満の場合、ゴムコーティング層が十分な粘着性および接着力を有することができず、前記タイヤコードがタイヤに適用される場合、タイヤの製造特性が低下し、タイヤの耐久性の発現が難しくなり、ひいては、タイヤに不良が発生しうる。
【0059】
また、前記ゴムコーティング層の厚さが0.20mmを超えると、タイヤコードの厚さが増加してタイヤの厚さが増加しうる。特に、溶媒が揮発する過程でゴムコーティング層内に気泡が発生してタイヤコードが均一な厚さを有しにくく、これをタイヤに適用した際、タイヤ内にエアポケット(Air Pocket)が発生してタイヤの品質が低下し、および不良率が高くなりうる。さらに、厚いゴムコーティング層形成のためにコーティング作業を数回行わなければならないというデメリットがあることから工程上非効率的であり、タイヤの品質低下および不良率がもたらされうる。
【0060】
一方、前記タイヤコードは、ASTM D885の規格の試験法による2.0~15.0g/d、または8.0~13.0g/dの切断強度を有することができる。
【0061】
また、前記タイヤコードは、ASTM D885の規格の試験法による10~30%、または20~25%の破断伸び率を有することができる。
【0062】
そして、前記タイヤコードは、ASTM D4393規格の試験法による接着力評価時、10kgf以上、または15kgf以上の接着力を有することができる。
【0063】
一つの例において、前記タイヤコードは、1プライ(ply)構造であってもよい。つまり、前記タイヤコードは、上述した原糸1本に撚りを与えて製造されたタイヤコードであってもよい。1プライ構造を有する場合、タイヤコードの薄い厚さを確保し軽量化するのに有利である。また、上述した経糸および緯糸関連の密度と本数を満足するのに有利である。
【0064】
本出願に係る他の一例において、本出願は、タイヤコードの製造方法に関する。
【0065】
具体的には、発明の他の実施形態によれば、ナイロン、レーヨン、アラミドおよびPETを含むポリエステル、のうちの少なくとも1つを含む経糸を用いて、経糸間密度が65%以上に、または単位長さあたりの経糸本数(n/inch)が35本以上に製織された繊維基材を用意する段階;前記繊維基材上に接着層を形成する段階;および前記接着層上にゴムコーティング液を塗布し熱処理して、ゴムコーティング層を形成する段階;を含み、前記ゴムコーティング層は、合成ゴムまたは天然ゴムを含み、前記接着層に対するゴムコーティング層の単位面積あたりの塗布量は、75~300g/m2である、タイヤコードの製造方法が提供される。
【0066】
前記繊維基材に関する内容は、前記一実施形態に関して上述した内容を含む。
【0067】
一方、前記経糸を用いて繊維基材を用意する段階の前に、ナイロン、レーヨン、アラミド、および、PETを含むポリエステル、のうちの少なくとも1つを含む経糸に撚りを与える段階をさらに含むことができる。
【0068】
撚りの程度は、1mあたりの撚り数を基準として、0から最大250TPMまで撚りを与えることができる。
【0069】
上述のように、繊維の撚りに関連して、本出願の製造方法は、原糸1本に撚りを与えて1プライ構造を製造するものであってもよい。
【0070】
一方、接着層は、前記繊維基材上に形成され、前記接着層は、レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス(RFL)および溶剤を含む接着コーティング液によって形成される。この時、接着層を形成する段階は、繊維基材上に接着コーティング液を塗布し熱処理する段階を含むことができる。
【0071】
繊維基材上に接着コーティング液を塗布する方法には特別な制限があるわけではなく、例えば、繊維基材を接着コーティング液に浸漬(dipping)することによって、繊維基材上に接着コーティング液が塗布されるようにする。あるいは、繊維基材が接着コーティング液を通過することによって、浸漬工程が行われてもよい。このような浸漬工程は、張力、浸漬時間および温度が調節可能な浸漬装置(Dipping Machine)で行われうる。
【0072】
また、浸漬工程だけでなく、ブレードまたはコーターを用いたコーティングまたは噴射機を用いた噴射によって繊維基材上に接着コーティング液が塗布されてもよい。
【0073】
一方、前記接着層を形成する段階は、繊維基材上に接着コーティング液を塗布し、130~250℃で80~120秒間熱処理する工程をさらに含むことができる。ここで、熱処理は、熱処理装置で行われ、熱処理によってレゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス(RFL)が硬化および固定されて接着層が完成されうる。このような熱処理によって接着層がより安定的に形成されうる。
【0074】
一方、前記接着層の形成後、前記接着層上にゴムコーティング液を塗布し熱処理して、ゴムコーティング層を形成することができる。
【0075】
前記ゴムコーティング液は、弾性重合組成物および溶媒を含むことができ、前記弾性重合組成物は、弾性重合体および添加剤を含むことができる。
【0076】
弾性重合組成物は、例えば、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)およびイソブチレンゴム(IBR)、イソプレンゴム(IR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴムおよびネオプレンゴムの中から選択された少なくとも1つの弾性重合体を含むことができる。
【0077】
また、添加剤として、例えば、カーボンブラック、パラオイル、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、硫黄、加硫促進剤、活性剤、粘着剤、接着剤などを含むことができる。
【0078】
前記溶媒は、弾性重合体を溶解できる物質であれば、その種類に特別な制限があるわけではなく、例えば、トルエン、ナフサ、メタノール、キシレンおよびテトラヒドロフランの中から選択された少なくとも1つを含むことができる。
【0079】
一方、前記ゴムコーティング液は、前記ゴムコーティング液の全体の重量に対して、10~30重量%の弾性重合組成物;および70~90重量%の溶媒;を含むことができる。
【0080】
前記ゴムコーティング液における弾性重合組成物の濃度が10重量%未満であれば、ゴムコーティング層の厚さが薄くなって粘着性および接着力がまともに発現され得ないことがありうるのであり、それによって、タイヤの製造特性の低下および走行時のタイヤ不良の問題が発生しうる。
【0081】
一方、前記ゴムコーティング液において弾性重合組成物の濃度が30重量%を超えると、粘度の上昇によって接着液の撹拌性が低下してゴムコーティング液の分散性が低くなり、これによってコーティング性の低下、コーティング厚さの不均一などの問題がもたらされる。
【0082】
一方、前記ゴムコーティング液を接着層上に塗布する方法には、特別な制限があるわけではなく、公知のコーティング方法が適用可能である。
【0083】
例えば、ゴムコーティング層形成のために、接着層でコーティングされた繊維基材をゴムコーティング液に浸漬することができる。このような浸漬によって接着層上にゴムコーティング液が塗布されうる。
【0084】
コーティング方法としては、グラビア(Gravure)コーティング方法、マイクログラビア(Micro gravure)コーティング方法、コンマコーティング(comma coating)などがあり、例えば、コンマコーター(comma coater)を用いたコンマコーティング(comma coating)によってゴムコーティング液が接着層上に塗布される。ここで、コーティングは、65~100℃の温度条件で行われ、このような温度は、溶媒が揮発できる最低温度に相当する。
【0085】
一方、前記接着層上にゴムコーティング液を塗布後、熱処理する過程をさらに含むことができる。
【0086】
この時、熱処理は、熱処理装置で行われ、熱処理のために、50~160℃の温度で30~150秒間熱が印加される。
【0087】
一方、ゴムコーティング層の単位面積あたりの塗布量は、75~300g/m2であってもよいし、前記接着層に対するゴムコーティング層の単位面積あたりの塗布量を前記範囲に調節して、厚さが薄いながらもゴムに対して優れた接着性を有して耐久性に優れたタイヤコードを製造することができる。具体的な塗布量は、上述した通りである。
【0088】
一方、前記ゴムコーティング層は、0.01~0.20mm、または0.02~0.20mm、または0.04~0.10mmの厚さを有することができる。前記ゴムコーティング層の厚さが0.01mm未満の場合、ゴムコーティング層が十分な粘着性および接着力を有することができずタイヤの製造特性が低下し、ひいては、タイヤに不良が発生しうる。また、ゴムコーティング層の厚さが0.20mmを超える場合、タイヤコードの厚さが増加してタイヤの厚さが増加しうる。
【0089】
一方、前記ゴムコーティング層の形成後、任意選択的にスリッティング(slitting)段階が実施されうる。
【0090】
必要に応じて、または使用目的に適合するように、板状に製作されたタイヤコードを裁断する段階をさらに含むことができるが、このような裁断をスリッティング(slitting)という。スリッティング段階は省略されてもよいし、裁断、またはスリッティング方法に特別な制限があるわけではない。
【0091】
例えば、通常のカッターナイフ(Cutter Knife)またはヒーティングナイフ(Heating Knife)を用いてタイヤコードを裁断することによってスリッティングが行われる。
【0092】
一方、前記製造方法を経て製造されたタイヤコードは、ワインダに巻き取られうる。
【0093】
本出願に係るさらに他の一例において、本出願は、タイヤに関する。
【0094】
具体的には、発明のさらに他の実施形態によれば、前記タイヤコードを含むタイヤが提供されうる。
【0095】
前記タイヤコードは、例えば、タイヤのキャッププライ、ベルトおよびカーカスなどに適用可能であり、前記タイヤコードは、ゴムに対して優れた接着力を有し、既存の圧延工程なしでも、ゴムと容易にくっ付きうる。
【0096】
前記タイヤコードがキャッププライに用いられる場合、圧延工程が省略可能でタイヤの製造工程が単純化され、また、キャッププライの粘着性が大きく増大して、グリーンタイヤの製造時、エアポケット(Air pocket)が減少してタイヤの不良率が減少されうる。これとともに、圧延工程を経ていないため、薄くて軽いタイヤが作られうる。
【発明の効果】
【0097】
本発明によれば、薄い厚さを有しながらも優れた耐久性を有するタイヤコードが提供されうる。
【0098】
また、本発明によれば、薄い厚さを有しながらも優れた耐久性を有するタイヤコードの製造方法が提供されうる。
【0099】
さらに、本発明によれば、前記タイヤコードを含むタイヤが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0100】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるのではない。
【0101】
実施例および比較例
実施例1
630de(デニール)の総繊度を有するナイロンに200TPMの撚りを与え、経糸本数(n/inch)が58本、経糸密度は90%とする繊維基材(厚さ:約0.40mm)を製織した。この際、緯糸本数(n/inch)は8本、緯糸密度は4.8%とした。
【0102】
以後、前記繊維基材を15重量%のレゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス(RFL)および85重量%の溶剤(水、H2O)を含む接着コーティング液に浸漬した後、150℃で100秒間熱処理して接着層を形成した。
【0103】
この後、コンマコーター(comma coater)を用いて、前記接着層上にゴムコーティング層を単位面積あたりの塗布量120~130g/m2で塗布し、70℃の温度で溶媒を揮発させて、0.04~0.05mmの厚さのゴムコーティング層が形成されたタイヤコードを製造した。
【0104】
この際、前記ゴムコーティング層は、ゴムコーティング液を前記接着層に塗布して形成し、前記ゴムコーティング液は、トルエン100の重量比の溶媒に、スチレンブタジエンゴム(SBR)と、天然ゴム100重量部に対して、カーボンブラック20~50重量部、 パラオイル5~10重量部、酸化亜鉛2~8重量部、ステアリン酸2~8重量部、老化防止剤(RUBBER ANTIOXIDANTS、BHT)1~5重量部、硫黄2~8重量部、および加硫促進剤(vulcanization accelerators、ZnBX)1~3重量部を含む弾性重合組成物を20~40%の濃度で分散させて製造した。
【0105】
実施例2
1260deの総繊度を有するナイロンに150TPMの撚りを与え、経糸本数(n/inch)が42本、経糸密度は84%とする繊維基材を製織した。
【0106】
この後、前記繊維基材を15重量%のレゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス(RFL)および85重量%の溶剤(水、H2O)を含む接着コーティング液に浸漬した後、150℃で100秒間熱処理して接着層を形成した。
【0107】
この後、コンマコーター(comma coater)を用いて、前記接着層上にゴムコーティング層を単位面積あたりの塗布量130~140g/m2で塗布し、70℃の温度で溶媒を揮発させて、0.06~0.07mmの厚さのゴムコーティング層が形成されたタイヤコードを製造した。
【0108】
この際、前記ゴムコーティング層は、実施例1と同一のゴムコーティング液を使用した。
【0109】
実施例3
800deの総繊度を有するPETに150TPMの撚りを与え、経糸本数(n/inch)50本、経糸密度は71%とする繊維基材を製織した。
【0110】
以後、前記繊維基材を15重量%のレゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス(RFL)および85重量%の溶剤(水、H2O)を含む接着コーティング液に浸漬した後、150℃で100秒間熱処理して接着層を形成した。
【0111】
この後、コンマコーター(comma coater)を用いて、前記接着層上にゴムコーティング層を単位面積あたりの塗布量150~160g/m2で塗布し、70℃の温度で溶媒を揮発させて、0.07~0.08mmの厚さのゴムコーティング層が形成されたタイヤコードを製造した。
【0112】
この際、前記ゴムコーティング層は、ゴムコーティング液を前記接着層に塗布して形成し、実施例1と同様の方法でタイヤコードを製造した。
【0113】
比較例1
630deの総繊度を有するナイロンに200TPMの撚りを与え、経糸本数(n/inch)が34本、経糸密度は53%とする繊維基材を用いることを除けば、前記実施例1と同様の方法でタイヤコードおよびタイヤを製造した。
【0114】
比較例2
1260deの総繊度を有するナイロンに150TPMの撚りを与え、経糸本数(n/inch)が30本、経糸密度は60%とする繊維基材を用いることを除けば、前記実施例1と同様の方法でタイヤコードおよびタイヤを製造した。
【0115】
比較例3
800deの総繊度を有するPETに150TPMの撚りを与え、経糸本数(n/inch)が34本、経糸密度は47%とする繊維基材を用いることを除けば、前記実施例1と同様の方法でタイヤコードおよびタイヤを製造した。
【0116】
比較例4
コンマコーター(comma coater)を用いて、前記接着層上にゴムコーティング層を単位面積あたりの塗布量45~50g/m2で塗布し、70℃の温度で溶媒を揮発させて、0.01~0.02mmの厚さのゴムコーティング層を形成したことを除けば、前記実施例1と同様の方法でタイヤコードを製造した。
【0117】
比較例5
コンマコーター(comma coater)を用いて、前記接着層上にゴムコーティング層を単位面積あたりの塗布量65~70g/m2で塗布し、70℃の温度で溶媒を揮発させて、0.02mmの厚さのゴムコーティング層を形成したことを除けば、前記実施例2と同様の方法でタイヤコードを製造した。
【0118】
比較例6
コンマコーター(comma coater)を用いて、前記接着層上にゴムコーティング層を単位面積あたりの塗布量65~70g/m2で塗布し、70℃の温度で溶媒を揮発させて、0.02mmの厚さのゴムコーティング層を形成したことを除けば、前記実施例3と同様の方法でタイヤコードを製造した。
【0119】
実験例
<実験例1:切断強度および破断伸び率の測定>
ASTM D885試験方法により、インストロン試験機(Instron Engineering Corp.、Canton、Mass)を用いて、250mm(横10mmx縦250mm)のサンプル10個に対して300m/minの引張速度を加えることによって、タイヤコードの切断強力(Strength at Break)および破断伸び率をそれぞれ測定した。
【0120】
次に、各サンプルの切断強力をタイヤコードの全体の繊度で割ることによって、各サンプルの切断強度(g/d)を求めた。次に、10個のサンプルについての切断強度および破断伸び率の平均値をそれぞれ算出することによって、ゴムコーティング層を有するタイヤコードの切断強度および破断伸び率を得た。また、4.5kgfの荷重での伸び率、および6.8kgfの荷重での伸び率をそれぞれ測定した。
【0121】
【0122】
前記表1によれば、本発明の実施例によるタイヤコードを用いる場合、強力、切断強度および破断伸び率において、比較例に比べて優れた特性を示すことを確認することができた。
【0123】
<実験例2:接着力の測定>
ASTM D4393の試験方法により、タイヤのカーカス層に対する実施例および比較例で製造されたタイヤコードの接着剥離強度を測定した。
【0124】
具体的には、0.6mmの厚さのゴムシート、コード地、0.6mmの厚さのゴムシート、コード地、0.6mmの厚さのゴムシートを順に積層して試料を製造した後、60kg/cm2の圧力にて170℃で15分間加硫した。次に、加硫された試料を裁断して1インチの幅を有する試験片を製造した。このように製造された試験片に対して、万能材料試験機(Instron社)を用いて、25℃で125mm/minの速度にて剥離試験を行って、カーカス層に対するタイヤコードの接着力を測定した。この際、剥離時に発生する荷重の平均値を接着力として算定した。
【0125】
【0126】
前記表2によれば、本発明の実施例によるタイヤコードを用いる場合、比較例のタイヤコードに比べて、ゴムに対して優れた接着力を有することを確認することができた。