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特許7411797ジェランガムとデンプンを含むフィルム形成用組成物、およびソフトカプセルへの適用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】ジェランガムとデンプンを含むフィルム形成用組成物、およびソフトカプセルへの適用
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20231228BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20231228BHJP
   A61K 8/11 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231228BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20231228BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20231228BHJP
   A23L 29/238 20160101ALI20231228BHJP
   A23L 29/244 20160101ALI20231228BHJP
   A23L 29/231 20160101ALI20231228BHJP
   A23L 29/30 20160101ALI20231228BHJP
【FI】
A23L5/00 C
A61K9/48
A61K47/36
A61K47/10
A61K8/11
A61K8/73
A61K8/34
A23L29/269
A23L29/256
A23L29/238
A23L29/244
A23L29/231
A23L29/30
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022527903
(86)(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 CN2020140148
(87)【国際公開番号】W WO2021136169
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】201911394755.3
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522072334
【氏名又は名称】仙楽健康科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】李緒発
(72)【発明者】
【氏名】陳瓊
(72)【発明者】
【氏名】方素瓊
(72)【発明者】
【氏名】楊旭騰
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-040716(JP,A)
【文献】国際公開第2018/177343(WO,A1)
【文献】特表2013-537902(JP,A)
【文献】特開2005-281687(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0136101(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A第1のゲル化剤;Bデンプン;C可塑剤;D水を含むデンプンフィルム形成用組成物であって、
前記の第1のゲル化剤は、2つのゲル化温度を有する単一のジェランガムであり、ここで、第1のゲル化温度は51~75℃であり、第2のゲル化温度は40℃~50℃であり、前記の第1のゲル化剤と前記のデンプンとの重量比が、0.01~0.6であり、前記のデンプンが、加工デンプンまたは天然デンプンであり、前記の加工デンプンが、酸処理デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、酸化デンプン、酢酸デンプン、酸化ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート、リン酸化デンプン、アセチル化酸化デンプン、およびアセチル化ジスターチホスフェートからなる群から選択され、かつ、前記の天然デンプンが、モチトウモロコシデンプン、エンドウ豆デンプン、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、およびタピオカデンプンからなる群から選択される、デンプンフィルム形成用組成物。
【請求項2】
前記の第1のゲル化剤の含有量が0.5~6wt%であり、前記のデンプンの含有量が10~50wt%であり、前記の可塑剤の含有量が10~30wt%であり、前記の水の含有量は33~70wt%である、請求項1に記載のデンプンフィルム形成用組成物。
【請求項3】
前記の第1のゲル化剤と前記のデンプンとの重量比が0.02~0.6である、請求項2に記載のデンプンフィルム形成用組成物。
【請求項4】
前記の第1のゲル化剤と前記のデンプンとの重量比が0.02~0.5であり、前記の第1のゲル化剤の含有量が1~5wt%である、請求項3に記載のデンプンフィルム形成用組成物。
【請求項5】
前記の第1のゲル化剤と前記のデンプンとの重量比が0.1~0.6であり、前記のフィルム形成用組成物が、5~35wt%の水溶性多糖をさらに含む、請求項3に記載のデンプンフィルム形成用組成物。
【請求項6】
前記の水溶性多糖が、プルラン、デキストリン、およびマルトデキストリンからなる群から選択される1つまたは組み合わせである、請求項5に記載のデンプンフィルム形成用組成物。
【請求項7】
前記の可塑剤が、グリセロール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、結晶性フルクトース、およびトレハロースからなる群から選択される1つまたは組み合わせである、請求項1~6のいずれか1項に記載のデンプンフィルム形成用組成物。
【請求項8】
重量パーセントが0.1~5wt%である第2のゲル化剤をさらに含み、
前記の第2のゲル化剤が、カラギーナン、寒天、アルギン酸ナトリウム、低メトキシペクチン、高メトキシペクチン、アミド化ペクチン、高アシルジェランガム、低アシルジェランガム、こんにゃくグルコマンナン、キサンタンガム、およびローカストビーンガムからなる群から選択される1つまたは組み合わせである、請求項に記載のデンプンフィルム形成用組成物。
【請求項9】
a)前記の第1のゲル化剤を前記の可塑剤に加え、均一に撹拌し、さらに水を添加し、80~98℃で加熱しながら、前記の第1のゲル化剤が溶解するまで撹拌すること;b)前記のデンプンを加え、80~98℃で加熱しながら、前記のデンプンが溶解するまで撹拌すること;およびc)気泡を除去して前記のフィルム形成用組成物を得ることを含む、請求項2に記載のデンプンフィルム形成用組成物の調製方法。
【請求項10】
前記の第1のゲル化剤と前記のデンプンとの重量比が0.1~0.6であり、前記のb)が、重量パーセントが5~35wt%である水溶性多糖を添加することをさらに含み;前記のb)が、前記のデンプンおよび水溶性多糖を加え、80~98℃で加熱しながら、前記のデンプンおよび前記の水溶性多糖が溶解するまで撹拌する工程である、請求項に記載の調製方法。
【請求項11】
前記のa)が、重量パーセントが0.1~5wt%である第2のゲル化剤を添加することをさらに含み;前記のa)が、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤を、前記の可塑剤に加え、均一に撹拌し、さらに水を添加し、80~98℃で加熱しながら、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤が溶解するまで撹拌する工程である、請求項または10に記載の調製方法。
【請求項12】
請求項1~のいずれか1項に記載のデンプンフィルム形成用組成物を含むカプセルシェル。
【請求項13】
食品、栄養補助食品、医薬品および化粧品における請求項1~のいずれか1項に記載のデンプンフィルム形成用組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2019年12月30日に出願された発明の名称が「ジェランガムとデンプンを含むフィルム形成用組成物、およびソフトカプセルへの適用」である中国特許出願201911394755.3の優先権を主張するものであり、その全体を参照により本出願の一部をなすものとして引用する。
【0002】
本発明は、食品または医薬品原料の分野に関し、具体的に、デンプンフィルム形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ソフトカプセルは、医薬品、食品、化粧品などの分野で広く使用されている。ゼラチンは、優れた皮膜形成性および機械的強度を備えているため、ソフトカプセルの伝統的な材料として広く使用されている。しかしながら、ゼラチンは、その自体の特性のため、使用中の品質に関して多くの欠点を示す。例えば、ゼラチン分子は、自己酸化されるか、またはアルデヒド基などの官能基と架橋反応を起こすことで、ゼラチンソフトカプセルの表面に強靱で弾性のある水不溶性フィルムを形成し、薬物の放出を遮断し、ソフトカプセルの崩壊不良になる。さらに、宗教や菜食主義者に加えて、世界中で狂牛病や口蹄疫などの事件が相次いでいるため、ゼラチンの代替品とその製造に関する研究が試みられている。
【0004】
本分野では、ソフトカプセルに使用されるデンプンフィルム形成用組成物がさらに必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、本発明者らの長期研究で得られた以下の知見に部分的に基づくものである。中国特許第CN100528950C号では、a.高アシルジェランガム、b.低アシルジェランガム、c.デンプン、およびd.可塑剤を含む異なるアシルジェランガムとデンプンとの混合物が提案されている。このような混合物で製造されたフィルムは、高い弾性率および優れた強度と伸びを有し、また、作成されたソフトカプセルは、良好な密封性を有する。複合ゲル化剤としての高アシルジェランガムおよび低アシルジェランガムは、皮膜の強度および靭性をある程度改善することができるが、作成されたソフトカプセルは透明性が低く、しかもシームの密封が強固ではなく、油漏れしやすい。さらに、日本特許第JP2007153851A号では、水、デンプン、および天然ジェランガムを混合することによって得られる非動物由来のソフトカプセルのフィルムの組成物が提案されている。欧州特許第EP2815745A1号では、高アシルジェランガム、少なくとも1種のデンプンおよび少なくとも1種の可塑剤を含むソフトカプセルおよびその製造方法が提案されている。高アシルジェランガムからなるゲルは、軟らかくて弾力性のある質感があり、デンプンとともに低強度かつ適度な靭性を有する皮膜を形成することができる。しかし、対照例に示すように、カプセルに成形され場合、シームは薄く、低い破壊力で油漏れしやすくなった。現在、高アシルジェランガムと低アシルジェランガムを主なカプセル材料とするソフトカプセルの製造において、溶液の粘度が高く、高温保存の時にゲル化しやすく、形成された皮膜の強度が低く、靭性が悪く、カプセルに成形され場合、シームが薄く、油漏れしやいなどの欠点があり、ソフトカプセルの工業生産に適していない。
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の2つのゲル化温度を有するジェランガム(第1のゲル化温度51~75℃、第2のゲル温度40~50℃の2つのゲル化温度を有する)を使用することで、上記の技術的問題を解決できることを見出した。
【0007】
本発明の目的は、特定の2つのゲル化温度を有するジェランガムとデンプンからなる組成物、およびそれらにより製造されたソフトカプセルを提供することである。従来技術で開示された2つのゲル化温度を有するジェランガムは、第1のゲル化温度が30℃~40℃であり、第2のゲル化温度が40℃~65℃であり、形成されたゲルは優れたゲル特性および質感を有し、食品分野で広く応用することができる。従来のジェランガムには、高アシルジェランガム(天然ジェランガム、単一のゲル化温度70~80℃)、低アシルジェランガム(単一のゲル化温度25~50℃)の2種類がある。本発明者らは、研究において、2つのゲル化温度(第1のゲル化温度51℃~75℃、第2のゲル化温度40℃~50℃)を有する新規ジェランガムとデンプンからなる組成物を使用して製造されたフィルムが、適度なフィルム形成強度と靭性を有し、作成されたソフトカプセルの性能が優れ、成形接着性がよく、ソフトカプセルの工業生産の要求を満たすことができることを発見した。単一のゲル化温度を有する高アシルジェランガム(単一のゲル化温度70~80℃)および低アシルジェランガム(単一のゲル化温度25~50℃)と比較して、本発明では、特定の2つのゲル化温度を有するジェランガム(第1のゲル化温度51~75℃、第2のゲル化温度40~50℃)を採用しており、ソフトカプセルの製造における成形接着效果は、単一のゲル化温度を有する高アシルジェランガムまたは低アシルジェランガムとデンプンからなる組成物によりも明らかに優れている。
【0008】
本発明では、特定の2つのゲル化温度を有するジェランガムとデンプンからなる組成物を使用することで、適度な皮膜形成強度と靭性を有する。さらに、フィルム形成強度と靭性の両方は、所定の範囲内でジェランガムの割合が増加するにつれて向上するが、成形接着性は、ジェランガムの割合が増加するにつれて低下する。本発明者らは、ソフトカプセルの皮膜の強度、靭性および成形接着性の指標を評価することにより、ソフトカプセルの製造に適するジェランガムおよびデンプンの含有量を決定した。
【0009】
本発明の組成物は、ソフトカプセルの製造における皮膜強度、靭性および成形接着の面で従来技術よりも明らかに優れており、ソフトカプセルの工業生産の要求を満たし、ソフトカプセル技術の代替として使用することができる。
【0010】
本発明は、
A第1のゲル化剤:0.5~6wt%、
Bデンプン:10~50wt%、
C可塑剤:10~30wt%、
D水:33~70wt%
を含む、デンプンフィルム形成用組成物であって、
前記の第1のゲル化剤は、2つのゲル化温度を有することを特徴とするジェランガムであり、ここで、第1のゲル化温度は51~75℃であり、第2のゲル化温度は40~50℃である、デンプンフィルム形成用組成物を提供する。
【0011】
さらに、前記のデンプンフィルム形成用組成物は、デンプンの合計重量部に対する第1のゲル化剤の重量部の比[(A)/(B)]が0.01~0.6であり、好ましくは0.02~0.5、0.02~0.1であることを特徴とする。
【0012】
さらに、前記の第1のゲル化剤はジェランガムであり、2つのゲル化温度の好ましい範囲が、第1のゲル化温度51~55℃、第2のゲル化温度40~50℃であり、または第1のゲル化温度56~60℃、第2のゲル化温度40~50℃であり、または第1のゲル化温度61~65℃、第2のゲル化温度40~50℃であり、または第1のゲル化温度66~70℃、第2のゲル化温度40~50℃であり、または第1のゲル化温度71~75℃、第2のゲル化温度40~50℃である。
【0013】
前記のデンプンは、例えば、タピオカ、トウモロコシ、ジャガイモ、小麦、モチトウモロコシデンプンなどの天然由来のもの、あるいは物理的、化学的または酵素的処理などによって製造されたものから選択される1つまたは組み合わせであってもよい。天然デンプンは、モチトウモロコシデンプン、エンドウ豆デンプン、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、タピオカデンプンからなる群から選択される。加工デンプンは、酸処理デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、酸化デンプン、酢酸デンプン、酸化ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート、リン酸化デンプン(starch phosphate)、アセチル化酸化デンプンおよびアセチル化ジスターチホスフェートからなる群から選択される。
【0014】
前記の可塑剤とは、グリセロール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、結晶性フルクトース、トレハロースからなる群から選択される1つまたは複数の組み合わせを含むポリオールを指す。
【0015】
前記のデンプンフィルム形成用組成物は、第2のゲル化剤をさらに含んでもよい。この第2のゲル化剤は、カラギーナン、寒天、アルギン酸ナトリウム、低メトキシペクチン、高メトキシペクチン、アミド化ペクチン、高アシルジェランガム、低アシルジェランガム、プルラン、こんにゃくグルコマンナン、キサンタンガム、ローカストビーンガムからなる群から選択される1つまたは複数の組み合わせである。
【0016】
また、本発明は、a)前記の第1のゲル化剤を前記の可塑剤に加え、均一に撹拌し、さらに水を添加し、80~98℃で加熱しながら、前記の第1のゲル化剤が溶解するまで撹拌すること;b)前記のデンプンを加え、80~98℃で加熱しながら、前記のデンプンが溶解するまで撹拌すること;およびc)気泡を除去して前記のフィルム形成用組成物を得ることを含む、デンプンフィルム形成用組成物の調製方法を提供する。
【0017】
さらに、前記の調製方法において、前記の第1のゲル化剤と前記のデンプンとの重量比は0.1~0.6であり、前記のb)は、重量パーセントが5~35%である水溶性多糖を添加することをさらに含み;前記のb)は、前記のデンプンおよび水溶性多糖を加え、80~98℃で加熱しながら、前記のデンプンおよび前記の水溶性多糖が溶解するまで撹拌する工程である。
【0018】
さらに、前記の調製方法において、前記のa)は、重量パーセントが0.1~5%である第2のゲル化剤を添加することをさらに含み;前記のa)は、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤を、前記の可塑剤に加え、均一に撹拌し、さらに水を添加し、80~98℃で加熱しながら、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤が溶解するまで撹拌する工程である。
【0019】
本発明は、上記のデンプンフィルム形成用組成物により製造されたソフトカプセルであって、
ソフトカプセルのシェルが、
A第1のゲル化剤:0.5~6wt%、好ましくは1~5wt%、
Bデンプン:10~50wt%、好ましくは10~40wt%、
C可塑剤:10~30wt%、好ましくは15~25wt%、
D水:33~70wt%、好ましくは35~50%、
からなり、
前記の第1のゲル化剤が、2つのゲル化温度を有するジェランガムであり、ここで、第1のゲル化温度が51~75℃であり、第2のゲル化温度が40℃~50℃である、
ソフトカプセルを提供する。
【0020】
さらに、本発明は、デンプンフィルム形成用組成物により製造されたソフトカプセルであって、第1のゲル化剤とデンプンとの重量パーセントの比[(A)/(B)]が0.02~0.6であり、好ましくは0.02~0.5、0.02~0.1である、ソフトカプセルを提供する。
【0021】
前記のデンプンは、天然デンプンおよび加工デンプンから選択され、好ましくは、ヒドロキシプロピルデンプン、酸化デンプン、酸化ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート、アセチル化酸化デンプン、アセチル化ジスターチホスフェートからなる群から選択される1つまたは組み合わせである。
【0022】
前記の可塑剤とは、グリセロール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、結晶性フルクトース、トレハロースからなる群から選択される1つまたは複数の組み合わせを含むポリオールを指す。
【0023】
前記のデンプンフィルム形成用組成物は、第2のゲル化剤をさらに含んでもよい。この第2のゲル化剤は、カラギーナン、寒天、アルギン酸ナトリウム、低メトキシペクチン、高メトキシペクチン、アミド化ペクチン、高アシルジェランガム、低アシルジェランガム、プルラン、こんにゃくグルコマンナン、キサンタンガム、ローカストビーンガムからなる群から選択される1つまたは複数の組み合わせである。
【0024】
前記のデンプンフィルム形成用組成物により製造されたソフトカプセルにおいて、その充填物は、様々な動植物油脂類;または様々な固体の機能性成分とソフトカプセルに適した補助材料で調製された懸濁液、エマルジョン、半固体;または固体の機能性成分と適切な補助材料で調製された固体製剤(例えば、顆粒、マイクロカプセル、粉末、素錠、カプセル)からなる群から選択される1つまたは組み合わせを含んでもよい。
【0025】
さらに、本発明は、以下の工程を含む、デンプンフィルム形成用組成物によりソフトカプセルを製造する方法を提供する。
1)ゾル:a)前記の第1のゲル化剤を前記の可塑剤に加え、均一に撹拌し、さらに水を添加し、80~98℃で加熱しながら、前記の第1のゲル化剤が溶解するまで撹拌し;b)前記のデンプンを加え、80~98℃で加熱しながら、前記のデンプンが溶解するまで撹拌し;c)気泡を除去して前記のフィルム形成用組成物を得る。
【0026】
さらに、前記の調製方法において、前記の第1のゲル化剤と前記のデンプンとの重量比は0.1~0.6であり、前記のb)は、重量パーセントが5~35%である水溶性多糖を添加することをさらに含み;前記のb)は、前記のデンプンおよび水溶性多糖を加え、80~98℃で加熱しながら、前記のデンプンおよび前記の水溶性多糖が溶解するまで撹拌する工程である。
【0027】
さらに、前記の調製方法において、前記のa)は、重量パーセントが0.1~5%である第2のゲル化剤を添加することをさらに含み;前記のa)は、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤を、前記の可塑剤に加え、均一に撹拌し、さらに水を添加し、80~98℃で加熱しながら、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤が溶解するまで撹拌する工程である。
【0028】
2)カプセル化および乾燥:ソフトカプセル製造ラインを使用し、工程1)で調製された混合液をカプセル充填機のスプレッダーボックスに移送し、ドラムの表面で冷却させ、皮膜を形成し、充填物を密封し、圧着して成形し、乾燥させる。
【0029】
本発明は、良好なフィルム形成強度および靭性を有するデンプンフィルム形成用組成物を提供する。この組成物は、ソフトカプセルの製造に使用される場合、成形接着性、密封性に優れたソフトカプセルが得られ、しかも動物由来成分を含まず、世界中のあらゆる民族に適し、全世界に広げることが可能である。
【0030】
本発明は、以下の旨を提供する。
【0031】
一局面では、本発明は、
A第1のゲル化剤;
Bデンプン;
C可塑剤;および
D水
を含むデンプンフィルム形成用組成物であって、
前記の第1のゲル化剤は、2つのゲル化温度を有するジェランガムであり、ここで、第1のゲル化温度は51~75℃であり、第2のゲル化温度は40℃~50℃である、デンプンフィルム形成用組成物を提供する。
【0032】
一実施形態では、前記の第1のゲル化剤の含有量は0.5~6wt%であり、前記のデンプンの含有量は10~50wt%であり、前記の可塑剤の含有量は10~30wt%であり、前記の水の含有量は33~70wt%である。
【0033】
一実施形態では、前記の第1のゲル化剤と前記のデンプンとの重量比は0.02~0.6である。
【0034】
一実施形態では、第1のゲル化剤と前記のデンプンとの重量比は0.02~0.5であり、前記の第1のゲル化剤の含有量は1~5wt%。
【0035】
一実施形態では、前記の第1のゲル化剤と前記のデンプンとの重量比は0.1~0.6であり、前記のフィルム形成用組成物は、5~35wt%の水溶性多糖をさらに含む。
【0036】
一実施形態では、前記の水溶性多糖は、プルラン、デキストリン、およびマルトデキストリンからなる群から選択される1つまたは組み合わせである。
【0037】
一実施形態では、前記のデンプンは、加工デンプンであり;前記の加工デンプンは、酸処理デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、酸化デンプン、酢酸デンプン、酸化ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート、リン酸化デンプン、アセチル化酸化デンプン、およびアセチル化ジスターチホスフェートからなる群から選択される1つまたは組み合わせである。
【0038】
一実施形態では、前記のデンプンは、天然デンプンであり、前記の天然デンプンは、モチトウモロコシデンプン、エンドウ豆デンプン、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、タピオカデンプンからなる群から選択される1つまたは組み合わせである。
【0039】
一実施形態では、前記の可塑剤は、グリセロール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、結晶性フルクトース、およびトレハロースからなる群から選択される1つまたは組み合わせである。
【0040】
一実施形態では、デンプンフィルム形成用組成物は、第2のゲル化剤をさらに含み、前記の第2のゲル化剤の含有量は、重量%として0.1~5%であり、前記の第2のゲル化剤は、カラギーナン、寒天、アルギン酸ナトリウム、低メトキシペクチン、高メトキシペクチン、アミド化ペクチン、高アシルジェランガム、低アシルジェランガム、こんにゃくグルコマンナン、キサンタンガム、およびローカストビーンガムからなる群から選択される1つまたは組み合わせである。
【0041】
別の一局面では、本発明は、a)前記の第1のゲル化剤を前記の可塑剤に加え、均一に撹拌し、さらに水を添加し、80~98℃で加熱しながら、前記の第1のゲル化剤が溶解するまで撹拌すること;b)前記のデンプンを加え、80~98℃で加熱しながら、前記のデンプンが溶解するまで撹拌すること;および、c)気泡を除去して前記のフィルム形成用組成物を得ることを含む、前記のデンプンフィルム形成用組成物の調製方法を提供する。
【0042】
一実施形態では、前記の第1のゲル化剤と前記のデンプンとの重量比は0.1~0.6であり、前記のb)は、重量パーセントが5~35%である水溶性多糖を添加することをさらに含み;前記のb)は、前記のデンプンおよび水溶性多糖を加え、80~98℃で加熱しながら、前記のデンプンおよび前記の水溶性多糖が溶解するまで撹拌する工程である。
【0043】
一実施形態では、前記のa)は、重量パーセントが0.1~5%である第2のゲル化剤を添加することをさらに含み;前記のa)は、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤を、前記の可塑剤に加え、均一に撹拌し、さらに水を添加し、80~98℃で加熱しながら、前記の第1のゲル化剤および第2のゲル化剤が溶解するまで撹拌する工程である。
【0044】
別の一局面では、本発明は、前記のデンプンフィルム形成用組成物を含むカプセルシェルを提供する。
【0045】
別の一局面では、本発明は、食品、栄養補助食品、医薬品および化粧品における前記のデンプンフィルム形成用組成物の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明をさらに説明するために、以下の内容を提供する。
【0047】
本明細書で使用される場合、「%」または「wt%」は、特に明記しない限り、重量パーセントを指す。
【0048】
本発明は、第1のゲル化剤、デンプン、可塑剤および水を含むデンプンフィルム形成用組成物であって;第1のゲル化剤は、2つのゲル化温度を有するジェランガムであり、ここで、第1のゲル化温度は51~75℃であり、第2のゲル化温度は40℃~50℃である、デンプンフィルム形成用組成物を提供する。
【0049】
本明細書で使用される場合、第1のゲル化剤は、第1のゲル化温度が51~55℃、且つ第2のゲル化温度が40~50℃であり、または第1のゲル化温度が56~60℃、且つ第2のゲル化温度40~50℃であり、または第1のゲル化温度が61~65℃、且つ第2のゲル化温度が40~50℃であり、または第1のゲル化温度が66~70℃、且つ第2のゲル化温度が40~50℃であり、または第1のゲル化温度が71~75℃、且つ第2のゲル化温度が40~50℃である。一実施形態では、第1のゲル化剤は、Gellaneer(商標) HSジェランガムである。一実施形態では、ジェランガムは、Gellaneer(商標) HSジェランガムである。本発明者らは、複数のバッチのGellaneer(商標) HSジェランガムのゲル化温度を測定した結果、第1のゲル化温度が55~65℃且つ第2のゲル化温度が40~50℃であり、または第1のゲル化温度が66~75℃且つ第2のゲル化温度が40~50℃であることを見出した。0.5%ジェランガムのゲル強度は100~1000g/cm2であり、好ましくは200~800g/cm2、200~700g/cm2、200~600g/cm2、200~500g/cm2または200~400g/cm2である。
【0050】
本明細書で使用される場合、第1のゲル化剤の含有量は、0.5~6wt%、1~5wt%、1.5~3.5wt%または1.5~3wt%であってもよい。第1のゲル化剤の含有量は、1.0wt%、1.5wt%、2.0wt%、2.5wt%、3.0wt%、3.5wt%、4.0wt%、4.5wt%または5wt%、或いはこれらの値の間の範囲であってもよい。
【0051】
本明細書で使用される場合、デンプンの含有量は、2~50wt%、5~50wt%、10~50wt%、10~40wt%であってもよい。デンプンの含有量は、10wt%、15wt%、20wt%、25wt%、30wt%、35wt%、40wt%、45wt%または50wt%、或いはこれらの値の間の範囲であってもよい。
【0052】
本明細書で使用される場合、水の含有量は、33~70wt%であってもよい。例えば、水の含有量は、33wt%、36wt%、40wt%、41wt%、44wt%、48wt%、51wt%、52wt%、53wt%、57wt%、60wt%、65wt%または70wt%、或いはこれらの値の間の範囲であってもよい。
【0053】
本明細書で使用される場合、可塑剤の含有量は、5~30wt%、10~30wt%、15~25wt%または15~20wt%であってもよい。例えば、可塑剤の含有量は、10wt%、15wt%、18wt%、20wt%、25wt%または30%、或いはこれらの値の間の範囲であってもよい。
【0054】
本明細書で使用される場合、可塑剤は、グリセロール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、結晶性フルクトース、およびトレハロースからなる群から選択される1つまたは組み合わせである。
【0055】
本明細書で使用される場合、第1のゲル化剤とデンプンとの重量比は、0.01~0.6、0.02~0.5、0.02~0.2、0.02~0.1または0.02~0.08であってもよい。一実施形態では、第1のゲル化剤とデンプンとの重量比は0.1~0.6であり、好ましくは0.1~0.5である。
【0056】
本明細書で使用される場合、デンプンは、加工デンプンであってもよい。加工デンプンは、酸処理デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、酸化デンプン、酢酸デンプン、酸化ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート、リン酸化デンプン、アセチル化酸化デンプン、およびアセチル化ジスターチホスフェートからなる群から選択される1つまたは組み合わせであってもよい。デンプンは、天然デンプンであってもよい。天然デンプンは、モチトウモロコシデンプン、エンドウ豆デンプン、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、タピオカデンプンからなる群から選択される1つまたは組み合わせであってもよい。
【0057】
本明細書で使用される場合、デンプンフィルム形成用組成物は、第2のゲル化剤をさらに含む。第2のゲル化剤の含有量は、重量%として0.1~5%であってもよい。第2のゲル化剤は、カラギーナン、寒天、アルギン酸ナトリウム、低メトキシペクチン、高メトキシペクチン、アミド化ペクチン、高アシルジェランガム、低アシルジェランガム、こんにゃくグルコマンナン、キサンタンガム、およびローカストビーンガムからなる群から選択される1つまたは組み合わせであってもよい。
【0058】
一実施形態では、ヒドロキシプロピルデンプンと酸化ヒドロキシプロピルデンプンとの重量比は1:9~9:1、1:4~4:1または1:2~2:1である。一実施形態では、ヒドロキシプロピルデンプンと酸化デンプンとの重量比は1:9~9:1、1:4~4:1または1:2~2:1である。一実施形態では、ヒドロキシプロピルジスターチホスフェートと酸化ヒドロキシプロピルデンプンとの重量比は1:9~9:1、1:4~4:1または1:2~2:1である。一実施形態では、ヒドロキシプロピルデンプンとヒドロキシプロピルジスターチホスフェートの重量比は1:9~9:1、1:4~4:1または1:2~2:1である。
【0059】
一実施形態では、デンプンフィルム形成用組成物は、プルラン、デキストリン、およびマルトデキストリンからなる群から選択される成分を含む。含有量は、重量で5~35%、15~30%または20-30%であってもよく、例えば5%、15%、25%、30%、35%であってもよい。
【0060】
実施例
本発明の効果をさらに説明するために、以下のソフトカプセルの性能指標を採用して評価、説明を行う。
【0061】
1)皮膜の強度および靭性の指標:テクスチャーアナライザーを使用し、球形プローブ、パンクモードを選択した。試験速度は1.0mm/sであり、皮膜が破裂した時の力の値(g)および対応する距離(mm)を記録した。皮膜が破裂した時の力は皮膜の強度を表し、この力は大きいほど、皮膜の強度は高くなる。皮膜が破裂した時にプローブが移動した距離は、皮膜の靭性を表し、この距離は長いほど、皮膜の靭性は高くなる。
【0062】
2)成形シーム接着特性の指標:本発明の実施例のサンプルを採取した。シーム以外の位置からカプセルをカットし、内容物を押し出した。次に、シームに対して垂直になるようにカプセルの中央から2つのシームがあるリングを切り取った。2つのシームをスライドガラスに垂直して、リングをスライドガラス上に載置した。顕微鏡で2つのシームおよびシェルの厚さを測定し、シェルの厚さに対する最も薄いシームの厚さの比率P(%)を算出した。
【0063】
表1 ソフトカプセルの皮膜の強度、靭性および成形接着性の指標の評価基準
【表1】
【0064】
皮膜の強度、靭性、接着性を指標として、満点5点で総合評価を実施し、点数(X)は以下の意味を示す。
0点:ソフトカプセルを作成できない。
0<X≦1点:ソフトカプセルの成形は非常に悪く、油漏れしやい。
1<X≦2点:ソフトカプセルの成形は悪く、油漏れしやい。
2<X≦3点:ソフトカプセルの成形は良好である。
3<X≦4点:ソフトカプセルの成形は優れている。
4<X≦5点:ソフトカプセルの成形は非常に優れている。
【0065】
本発明、以下の材料を例として説明されるが、これらの材料に限定されない。その詳細は以下のとおりである。
【0066】
ジェランガム:型番Gellaneer(商標) HS、DSM ZhongKen Biotechnology社、ジェランガム1:2つのゲル化温度はそれぞれ60℃および45℃であり、ゲル強度は696g/cm2であり;ジェランガム2:2つのゲル化温度はそれぞれ70℃および42℃であり、ゲル強度は297g/cm2であり;ジェランガム3:2つのゲル化温度はそれぞれ50℃および35℃であり、ゲル強度は700g/cm2である。
【0067】
ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート:CAS番号:53124-00-8、Ingredion China社
ヒドロキシプロピルデンプン:CAS番号:9049-76-7、Ingredion China社
酸化デンプン:CAS番号:65996-62-5、Ingredion China社
アセチル化酸化デンプン:CAS番号:68187-08-6、SMS Group (SMS)社
アセチル化ジスターチホスフェート:CAS番号:68130-14-3、SMS Group (SMS)社
グリセロール:CAS番号:56-81-5、Wilmar(China) Oleo社
カラギーナン:CAS番号:9062-07-1、Cargill社
寒天:CAS番号:9002-18-0、Luxin Food社
アミド化ペクチン:CAS番号:9000-69-5、Azelis International Trade (Shanghai)社
低アシルジェランガム:CAS番号:71010-52-1、Azelis International Trade (Shanghai)社
高アシルジェランガム:CAS番号:74-79-3、Azelis International Trade (Shanghai)社
プルラン:CAS番号:9057-02-7、Higrand Biotech社
クエン酸ナトリウム:CAS番号:6132-04-3、Guangzhou Honsea Sunshine Biotech社
【0068】
デンプン組成物によりソフトカプセルを製造する方法は、以下の工程を含む。
1)ゾル:a)第1のゲル化剤(ジェランガム1~3、カラギーナン、寒天、アミド化ペクチン、高アシルジェランガム、または低アシルジェランガム)をグリセロールに加え、均一に撹拌し、さらに水を添加し、80~98℃で加熱しながら、前記の第1のゲル化剤が溶解するまで撹拌し;b)デンプンを加え、80~98℃で加熱しながら、デンプンが溶解するまで撹拌し;c)気泡を除去してフィルム形成用組成物を得た。
【0069】
前記の調製方法において、前記の第1のゲル化剤と前記のデンプンとの重量比は0.1~0.6であり、前記のb)は、重量パーセントが5~35%である水溶性多糖を添加することをさらに含み;前記のb)は、前記のデンプンおよび水溶性多糖を加え、80~98℃で加熱しながら、前記のデンプンおよび前記の水溶性多糖が溶解するまで撹拌した工程である。
【0070】
2)カプセル化および乾燥:ソフトカプセル製造ラインを使用し、工程1)で調製されたフィルム形成用組成物をカプセル充填機のスプレッダーボックスに移送し、ドラムの表面でフィルム形成用組成物を冷却させ、皮膜を形成し、充填物を密封し、圧着して成形し、乾燥させた。
【0071】
実施例1~6
実施例1~6で使用されたフィルム形成用組成物の配合を表2に示す。表2に従って、上記のようにソフトカプセルを製造し、測定した。結果を表2に示す。
【0072】
表2 実施例1~6のフィルム形成用組成物および測定結果
【表2】
【0073】
実施例1では、ジェランガムとデンプンとの比率が0.01未満である場合、形成された皮膜の強度および靭性は低いことが明らかとなった。実施例2~6では、ジェランガムとデンプンとの比率が0.02~0.6の範囲内である場合、ジェランガムの比率が3%未満であると、皮膜の強度および靭性は適度であり、成形接着性はよく;3%を超えると、皮膜の強度および靭性は良好であるが、成形接着性は低下することが明らかとなった。
【0074】
実施例7~15
実施例7~15で使用されたフィルム形成用組成物の配合を表3に示す。表3に従って、上記のようにソフトカプセルを製造し、測定した。結果を表3に示す。
【0075】
表3 実施例7~15のフィルム形成用組成物および測定結果
【表3】
【0076】
実施例7~9では、ジェランガムとデンプンの配合比が0.06である場合、皮膜の強度および靭性は適度であるが、酸化ヒドロキシプロピルデンプンの成形接着性は、ヒドロキシプロピルデンプンおよび酸化デンプンよりも優れていることが明らかとなった。実施例9~11では、ジェランガムとデンプンの配合比が0.06である場合、ジェランガム1およびジェランガム2は、酸化ヒドロキシプロピルデンプンとともにソフトカプセルを製造することができるが、ジェランガム3はソフトカプセルを製造できないことから、2つのゲル化温度を有するジェランガムによって成形接着性に対して大きな影響を与え、簡単に推論できないことが明らかとなった。実施例12~15では、ジェランガムとデンプンの配合比が0.08である場合、皮膜の強度および靭性は適度であるが、酸化ヒドロキシプロピルデンプンおよびヒドロキシプロピルジスターチホスフェートの成形接着は、アセチル化酸化デンプンおよびアセチル化ジスターチホスフェートよりも優れていることが明らかとなった。
【0077】
実施例16~23
実施例16~23で使用されたフィルム形成用組成物の配合を表4に示す。表4に従って、上記のようにソフトカプセルを製造し、測定した。結果を表4に示す。
【0078】
表4 実施例16~23のフィルム形成用組成物および測定結果
【表4】
【0079】
実施例16~17では、ジェランガムとデンプンの比率が0.06である場合、成形接着性は、ヒドロキシプロピルデンプンおよび酸化ヒドロキシプロピルデンプンを含む組成物における酸化ヒドロキシプロピルデンプンの比率の増加とともに改善されることが明らかとなった。実施例18~19では、ジェランガムとデンプンの比率が0.06である場合、成形接着性は、ヒドロキシプロピルデンプンおよび酸化デンプンを含む組成物における酸化デンプンの比率の増加とともに改善されることが明らかとなった。実施例20~21では、ジェランガムとデンプンの比率が0.06である場合、成形接着性は、酸化ヒドロキシプロピルデンプンおよびヒドロキシプロピルジスターチホスフェートを含む組成物における酸化ヒドロキシプロピルデンプンの比率の増加とともに改善されることが明らかとなった。実施例22~23では、ジェランガムとデンプンの比率が0.08である場合、成形接着性は、ヒドロキシプロピルデンプンおよびヒドロキシプロピルジスターチホスフェートを含む組成物におけるヒドロキシプロピルジスターチホスフェートの比率の増加とともに改善されることが明らかとなった。
【0080】
実施例24~27
実施例24~27で使用されたフィルム形成用組成物の配合を表5に示す。表5に従って、上記のようにソフトカプセルを製造し、測定した。結果を表5に示す。
【0081】
表5 実施例24~27のフィルム形成用組成物および測定結果
【表5】
【0082】
実施例24~27では、ジェランガムとデンプンの比率が0.1超である場合、例えばプルランなどの低粘度成分、または高粘度成分(例えばデキストリン、マルトデキストリン)と組み合わせると、皮膜の強度および靭性を高めるだけでなく、成形接着性も向上することが明らかとなった。本発明におけるジェランガムおよびデンプンを特定の範囲内に有する組成物の技術的効果は、簡単に推論できないことが実証された。
【0083】
実施例28~30
実施例28~30で使用されたフィルム形成用組成物の配合を表6に示す。表6に従って、上記のようにソフトカプセルを製造し、測定した。結果を表6に示す。
【0084】
表6 実施例28~30のフィルム形成用組成物および測定結果
【表6】
【0085】
実施例28~30では、第2のゲル化剤は、ジェランガムおよびデンプンを含むフィルム形成用組成物からなる皮膜の強度の向上に寄与し、中でもカラギーナンは、皮膜の靭性の向上にも寄与する。
【0086】
対照例1~4
対照例1~4で使用されたフィルム形成用組成物の配合を表7に示す。表6に従って、上記のようにソフトカプセルを製造し、測定した。結果を表6に示す。
【0087】
表7 対照例1~4のフィルム形成用組成物および測定結果
【表7】
【0088】
対照実施例1および対照実施例2では、それぞれ実施例7と同様の配合比で高アシルジェランガム、低アシルジェランガムを使用した。高アシルジェランガムを使用した対照実施例1では、皮膜の強度は低く、成形接着性は悪く、油漏れしやい。低アシルジェランガムを使用した対照実施例2では、皮膜の強度は高いが、靭性および接着性は低く、成形接着性は悪く、ソフトカプセルを作成することができない。対照実施例3、対照実施例4は、高アシルジェランガムと低アシルジェランガムを組み合わせた実施例(欧州特許第EP2815745A1号は、参照により本明細書に組み込まれる。例えば、第6頁におけるExample 2 Table 2 Batch No.1、Batch No.5)であり、本発明で採用されたジェランガムとデンプンの組み合わせの技術的効果は、従来技術よりも優れていることを示す。
【0089】
本発明では、2つのゲル化温度を有するジェランガムおよびデンプンを含む組成物を使用することで、良好なフィルム形成強度および靭性を達成し、且つこれらの両方は、一定範囲内でジェランガムの比率の増加に伴って増加するが、成形接着性は、ジェランガムの比率の増加に伴って低下する。本発明における2つのゲル化温度を有するジェランガムおよびデンプンを含む組成物は、ソフトカプセルの製造に使用される場合、皮膜の強度、靭性および成形接着の点で従来技術のものより明らかに優れており、ソフトカプセルの工業生産の要求を満たし、ソフトカプセル技術の代替として使用することができる。
【0090】
上記の実施例は本発明の好ましい実施形態であるが、本発明は上記の実施例に限定されず、本発明の精神および原理から逸脱することなく行われたその他のいかなる変更、修正、置換、組み合わせ、簡略化、本願と同等であるとみなされるべきであり、それらのすべては本発明の特許請求の範囲に含まれる。