(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】2床液相異性化プロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 6/12 20060101AFI20231228BHJP
C07C 15/08 20060101ALI20231228BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231228BHJP
【FI】
C07C6/12
C07C15/08
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2022540883
(86)(22)【出願日】2020-12-29
(86)【国際出願番号】 US2020067304
(87)【国際公開番号】W WO2021141801
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-07-21
(32)【優先日】2020-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598055242
【氏名又は名称】ユーオーピー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】クズマニッヒ、グレゴリー、ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ディーク、ヴェロニカ、ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、デンヤン
【審査官】中村 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特表平10-509720(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0131261(US,A1)
【文献】米国特許第09890094(US,B2)
【文献】特表平08-509907(JP,A)
【文献】特表2008-531464(JP,A)
【文献】特開2004-115515(JP,A)
【文献】特開平05-132310(JP,A)
【文献】KUBOTA, Y. et al.,“Recent Developments in Zeolite Science and Technology”,SHINKU,2006年,Vol. 49, No. 4,pp. 205-212,DOI: 10.3131/jvsj.49.205
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 6/00
C07C 15/00
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル芳香族供給混合物のエチルベンゼン転化及びキシレン異性化のためのプロセスであって、
前記アルキル芳香族供給混合物を、10員環チャネルを含む不動態化ゼオライトを含む第1の触媒を含む第1の触媒床と接触させて、液相においてエチルベンゼン転化反応条件でエチルベンゼンをジエチルベンゼンに選択的に転化し、前記アルキル芳香族供給混合物のエチルベンゼン含有量より少ないエチルベンゼン含有量を有するエチルベンゼン転化反応混合物を生成することと、
前記エチルベンゼン転化反応混合物を、加熱又は冷却を介さずに、UZM-54ゼオライトを含む第2の触媒を含む第2の触媒床に直接通過させて、液相において異性化条件でキシレンを選択的に異性化し、異性化反応溶出液を生成することと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記異性化反応溶出液が、20~24%のパラキシレン対全キシレン比を有するか、又は前記異性化反応溶出液が、1重量%未満のキシレン損失で少なくとも20%のエチルベンゼン転化率を有するか、又はその両方である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記エチルベンゼン転化反応条件が、前記エチルベンゼン転化反応混合物を前記液相に維持するのに十分な圧力を含み、前記異性化反応条件が、前記異性化反応混合物を前記液相に維持するのに十分な圧力を含む、請求項1又は2に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
優先権の記載
本出願は、その全体が本明細書に組み込まれる、2020年1月6日に出願された、米国特許出願第16/734,474号からの優先権を主張する。
【0002】
パラキシレン、メタキシレン、及びオルトキシレンなどのキシレンは、化学合成において広範かつ多様な用途を見出す重要な中間体であり得る。パラキシレンは、酸化により、合成織物繊維及び樹脂の製造に使用されるテレフタル酸を生じる。メタキシレンは、可塑剤、アゾ染料、木材保存剤などの製造に使用することができる。オルトキシレンは、無水フタル酸製造用の原料である。
【0003】
接触改質又は他の供給源から得られるキシレン異性体の比率は、概して、化学中間体としてのそれらの需要に一致しない。更に、混合物はエチルベンゼンも含み、これは分離又は転化が困難なことがある。典型的には、パラキシレンは、かなりの需要がある主要な化学中間体であるが、典型的なC8芳香族流の20~25%にしか達しない。需要に対する異性体比の調整は、パラキシレン回収のための吸着などのキシレン異性体の回収と、所望の異性体の追加の量を得るための異性化とを組み合わせることによって行うことができる。典型的には、異性化は、所望のキシレン異性体が欠乏したキシレン異性体の非平衡混合物を、平衡濃度に近い混合物に転化する。
【0004】
キシレン異性化を達成するために、様々な触媒及びプロセスが開発されている。適切な技術の選択において、パラキシレン収率を最大化するために、できる限り平衡に近い異性化プロセスを行うことが望ましい。しかしながら、そのような操作に関連する副反応のために、環状C8化合物の損失はより大きくなる。多くの場合、使用される平衡へのアプローチは、高い転化率での高いC8環状化合物の損失(すなわち、平衡に非常に近いアプローチ)と、未転化C8芳香族のリサイクル率が大きいことによる高い光熱費との間で最適化された折衷策である。したがって、触媒は、活性、選択性、安定性、及び光熱費の好ましいバランスに基づいて評価され得る。
【0005】
高いエチルベンゼン転化率は、C8化合物を含有するリサイクル流でその蓄積を防止するために望ましい。高いエチルベンゼン転化率を達成するために、現在の商業用途は、典型的には気相中で操作しており、これは、機器を加熱するための高い資本支出と、プロセス流を加熱及び冷却するための実質的な公共料金負担とを生じる。これらの問題に対する1つの解決策は、液相中で操作することである。液相反応は、実質的により低い温度を伴い、結果としてより低い公共料金及び資本需要を伴う。しかしながら、現在の液相ベースのキシレン異性化ユニットは、エチルベンゼン転化率が低いという欠点があり、システム内のエチルベンゼンのリサイクル率が大きいために光熱費が増加する。
【0006】
したがって、液相でのキシレンの損失を最小限に抑えながら、改善されたエチルベンゼン転化率と、高キシレンの平衡へのアプローチとを有するプロセスの必要性が依然として存在する。
定義
【0007】
本明細書で使用するとき、用語「ゾーン」は、1つ以上の設備機器及び/又は1つ以上のサブゾーンを含む領域を指すことができる。設備機器としては、1つ以上の反応器又は反応容器、加熱器、分離器、交換器、パイプ、ポンプ、圧縮機、及びコントローラが挙げられ得る。加えて、反応器又は容器などの設備機器は、1つ以上のゾーン又はサブゾーンを更に含むことができる。
【0008】
本明細書で使用するとき、用語「流」は、直鎖、分岐鎖、又は環状アルカン、アルケン、アルカジエン、及びアルキンなどの様々な炭化水素分子、並びに任意に他の物質、例えば、水素などの気体、又は重金属などの不純物を含む流れであってもよい。流は、芳香族及び非芳香族炭化水素も含むことができる。更に、炭化水素分子は、C1、C2、C3...Cnと略されることがあり、「n」は炭化水素分子中の炭素原子の数を表す。
【0009】
本明細書で使用するとき、用語「芳香族」は、1つ以上の炭素ラジカルが1つ以上の非炭素ラジカルで置換され得る不飽和環状炭素ラジカルの1つ以上の環を含む基を意味し得る。例示的な芳香族化合物は、3つの二重結合を含むC6環を有するベンゼンである。他の例示的な芳香族化合物としては、パラキシレン、オルトキシレン、メタキシレン、及びエチルベンゼンが挙げられ得る。更に、流又はゾーンを「芳香族」として特徴づけることは、1つ以上の異なる芳香族化合物を意図し得る。流は、少量の非芳香族成分も同様に有していてもよい(例えば、10%未満、又は5%未満)。
【0010】
本明細書で使用するとき、用語「担体」は、全般的に、金属などの1つ以上の追加の触媒活性成分の添加前、又は還元、硫化、焼成、若しくは乾燥などの後続プロセスの適用前に、ゼオライト系触媒に強度を与えるために使用される不活性材料を意味する。しかしながら、場合によっては、担体は触媒特性を有することがあり、「触媒」として使用され得る。
【0011】
本明細書で使用するとき、用語「非平衡」は、全般的に、少なくとも1つのC8芳香族異性体が、異性化条件での平衡濃度とは実質的に異なる(全C8芳香族の少なくとも5質量%の差と定義される)濃度で存在し得ることを意味する。異性化は、所望のキシレン異性体が欠乏したキシレン異性体の非平衡混合物を、平衡濃度に近づく混合物に転化する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、アルキル芳香族供給混合物のエチルベンゼン転化及びキシレン異性化のためのプロセスを提供する。C8アルキル芳香族供給混合物は、C8芳香族炭化水素異性化ゾーンにおいて液相中で2つの触媒床に連続して接触され得る。第1の触媒は、エチルベンゼンを転化するための、MFI、MEL、MFI/MEL連晶、TUN、IMF、UZM-39、UZM-44、MTT、TON骨格、又はそれらの組み合わせなどの10員環チャネルを含有する不動態化ゼオライトを含む。第2の触媒は、キシレンを選択的に異性化するためのUZM-54ゼオライトを含む。両方の床は、同様の液相プロセス条件下で実行され、2つの床の間で加熱又は冷却を行わない。これにより、操作コストが低下し、資本コストが低下する。
【0013】
概して、精油所又は石油化学製造設備は、芳香族製造設備又は芳香族複合施設を含み得る。芳香族複合施設は、パラキシレン分離ゾーンなどのキシレン異性体分離ゾーンと、C8芳香族異性化ゾーンとを含み得る。C8芳香族異性化ゾーンは、パラキシレン及び/又はメタキシレンなどの少なくとも1つのキシレン異性体が減少した流を受容することができる。C8芳香族異性化ゾーンは、キシレン異性体の平衡濃度を再確立し、エチルベンゼンなどの他の化合物を、分別によって容易に分離される分子に転化することができる。典型的には、このようなゾーンは、パラキシレンなどのキシレン異性体の量を増加させることができ、C8芳香族異性化ゾーンから得られた生成物は、キシレン異性体分離ゾーンにリサイクルされて、より多くの所望の異性体を回収することができる。
【0014】
パラキシレン又はメタキシレンなどのキシレン異性体の分離ゾーンは、アルキル芳香族供給混合物をラインで受容することができる。典型的には、供給混合物は、様々な元の供給源、例えば、精製所若しくは石油化学製造設備における、例えば、石油精製、遅延コーキング若しくは接触改質などの熱分解、炭化水素の接触分解、石炭のコーキング、又は石油化学転化のいずれかに由来してもよい。好ましくは、供給混合物は、様々な石油精製流からの適切な画分中に、例えば、個々の成分として、又は接触分解若しくは改質された炭化水素の選択的分別及び蒸留によって得られた特定の沸点範囲画分として見出される。
【0015】
キシレン異性体分離ゾーンは、パラキシレンなどの所望の異性体の抽出物及びラフィネートを生成するために、吸着、精製、及び抽出の複数のゾーンを含むことができる。キシレン異性体分離ゾーンは、分別結晶プロセス又は吸着分離プロセスに基づいていてもよい。吸着分離プロセスは、1回通過あたり高回収でパラキシレンを99重量%超の純度で回収することができる。例示的なキシレン異性体分離ゾーンは、米国特許第6,740,788(B1)号に開示されている。ゾーンからの溶出液であるラフィネートは、C8異性化ゾーンに送られ得る。
【0016】
典型的には、ラフィネートは、アルキル芳香族供給混合物を実質的に含む。アルキル芳香族供給混合物は、一般式C6H(6-n)Rnの異性化可能なアルキル芳香族炭化水素を含むことができ、式中、nは、1~5の整数であり、Rは、CH3、C2H5、C3H7、又はC4H9であり、異性化生成物中にパラキシレン又はメタキシレンなどの少なくとも1つのより価値のあるアルキル芳香族異性体を得るための異性化に好適な任意の組み合わせである。供給混合物は、少なくとも1つのエチル基を含有する1つ以上のエチル芳香族炭化水素を含むことができ、すなわち、少なくとも1つのアルキル芳香族炭化水素の少なくとも1つのRは、C2H5である。供給混合物の好適な成分としては、全般的に、例えば、エチルベンゼン、メタキシレン、オルトキシレン、パラキシレン、エチルトルエン、トリメチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼン、メチルプロピルベンゼン、エチルプロピルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、又はそれらの混合物が挙げられる。典型的には、1つ以上のエチル芳香族炭化水素は、2重量%~100重量%の濃度で供給混合物中に存在する。
【0017】
通常、供給混合物は、1つ以上の芳香族製造又は芳香族転化プロセスから得られた新しいC8芳香族混合物からパラ、オルト、及び/又はメタキシレンを除去して、少なくとも1つのキシレン異性体が減少した流を生成することによって調製される。パラキシレンを生成するために反応されるキシレン及びエチルベンゼンを含む非平衡C8芳香族供給混合物が、特に好ましい適用例である。典型的には、このような混合物は、0重量%~50重量%の範囲のエチルベンゼン含有量、10~90重量%の範囲のオルトキシレン含有量、0~95重量%の範囲のメタキシレン含有量、及び0~10重量%の範囲のパラキシレン含有量を有し得る。いくつかの実施形態では、芳香族供給混合物は、いくらかの濃度のA9~A11+芳香族、並びにいくらかの量のベンゼン及びトルエンも含み得る。
【0018】
その後の芳香族抽出の有無にかかわらず、接触改質油などのアルキル芳香族含有流を反応させて、特定のキシレン異性体を生成し、特にパラキシレンを生成することができる。C8芳香族供給物は、非芳香族炭化水素、すなわちナフテン及びパラフィンを最大30重量%の量で含有してもよい。いくつかの実施形態では、異性化可能な炭化水素は、本質的に芳香族からなるが、純粋な生成物を下流の回収プロセスから確保する。典型的には、非平衡アルキル芳香族供給混合物は、キシレン異性体分離ゾーンからの溶出液である。
【0019】
本発明のC8芳香族異性化ゾーンは、異なる触媒を含有する、液相中で操作する、2つの触媒床を含む。
【0020】
1つの例示的な用途は、エチルベンゼン及びキシレンを含有するC8芳香族混合物の異性化である。概して、アルキル芳香族供給混合物は、0~50重量%のエチルベンゼン含有量、最大55重量%のオルトキシレン含有量、20~95重量%のメタキシレン含有量、及び最大10重量%のパラキシレン含有量を有する。典型的なアルキル芳香族供給混合物の一例は、0~15重量%、又は0~10重量%のエチルベンゼン、10~35重量%のオルトキシレン、50~80重量%のメタキシレン、及び0~5重量%のパラキシレンを含む。
【0021】
記載したように、C8芳香族は、非平衡混合物であり、すなわち、少なくとも1つのC8芳香族異性体は、異性化条件での平衡濃度とは実質的に異なる濃度で存在する。通常、非平衡混合物は、芳香族製造プロセスから得られた新しいC8芳香族混合物からパラ、オルト、及び/又はメタキシレンを除去することによって調製される。好ましくは、非平衡混合物は、5質量%未満のパラキシレンを含有する。
【0022】
したがって、C8アルキル芳香族供給混合物は、C8芳香族炭化水素異性化ゾーンにおいて2つの触媒床に連続して接触され得る。接触は、固定床方式で触媒を使用して行ってもよい。
【0023】
アルキル芳香族供給混合物は、任意の好適な加熱手段によって所望の反応温度に予熱され、次いで2つの触媒床を含むC8芳香族異性化ゾーンに通され得る。2つの触媒床は、単一の反応器又は別個の反応器に収容されていてもよい。反応物は、上方、下方、又は径方向のいずれかの流動様式で触媒床と接触してもよい。両方の触媒床で触媒と接触するとき、反応物は液相中に存在する。
【0024】
アルキル芳香族供給混合物、好ましくはC8芳香族の非平衡混合物は、好適なエチルベンゼン転化反応条件において第1の触媒床で第1の触媒と接触してもよい。エチルベンゼンの少なくとも一部は、ジエチルベンゼンに転化され、その結果、得られたエチルベンゼン転化反応混合物は、アルキル芳香族供給混合物のエチルベンゼン含有量より少ないエチルベンゼン含有量を有する。
【0025】
第1の触媒は、MFI骨格などの10員環ゼオライト構造を含む不動態化ゼオライトを含み、他の10員環ゼオライト骨格との連晶を含む。任意の好適なMFIゼオライトを使用することができる。1つの好適なMFIゼオライトは、150以下のSi/Alモル比及び250nm以上の結晶サイズを有する。第1の触媒は、典型的には、1~99重量%、又は10~99重量%、又は20~99重量%、又は30~99重量%、又は40~99重量%、又は50~99重量%、又は60~99重量%、又は70~99重量%、又は80~99重量%、又は90~99重量%、又は1~95重量%、又は1~90重量%、又は1~80重量%、又は1~70重量%、又は1~60重量%、又は1~50重量%、又は1~40重量%、又は1~30重量%、又は1~20重量%、又は1~10重量%の不動態化MFIゼオライトを含有する。
【0026】
MFIゼオライトは、ゼオライトの大部分の外面酸性度を除去することによって不動態化することができる。ゼオライトを不動態化するための典型的な手段は、当該技術分野において周知であり、概して、プロセス条件で非反応性であるゼオライトの外面に化学物質の層を堆積させることを伴う。この層の材料は、シリカ、チタニア、リン、ホウ素、ジルコニア、又はそれらの組み合わせであり得る。不動態化剤は、ゼオライトとの接触条件下で、溶液、エマルジョン、液体、又は気体の形態であってもよい。この材料は、単一又は複数の段階で、熱処理を介して又は介さずに添加され得る。これらの熱処理は、蒸気を含んでも含まなくてもよい。不動態化は、(バインダが存在する場合)バインダの添加前又は添加後のいずれかで行うことができる。ゼオライトは、焼成又は未焼成であり得る。ゼオライトは、アンモニウム型ゼオライト、水素型ゼオライト、又はナトリウム型ゼオライトから構成される。この方法は、ゼオライト及び溶媒を含むゼオライト懸濁液を、液相中で不動態化剤と接触させて、ゼオライトの外面に薬剤を堆積させることを含む。次いで、液相を除去する。外面に堆積された不動態化剤を有するゼオライトは、乾燥され、蒸気の有無にかかわらず焼成され得る。この不動態化プロセスを、所望の不動態化レベルが達成されるまで繰り返す。
【0027】
いくつかの実施形態では、第1の触媒は、任意選択的にバインダを含み得る。バインダは、耐火性無機酸化物バインダ又は粘土であってもよい。好適なバインダとしては、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、粘土、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。シリカ又はチタンのような非酸性バインダが好ましい。バインダは、概して、10~90重量%、又は10~80重量%、又は10~70重量%、又は10~60重量%、又は10~50重量%、又は10~40重量%、又は10~30重量%、又は10~20重量%、又は20~90重量%、又は30~90重量%、又は40~90重量%、又は50~90重量%、又は60~90重量%、又は70~90重量%、又は80~90重量%の量で存在する。
【0028】
いくつかの実施形態では、第1の触媒は、任意選択的に、キシレン損失を減少させることができる水素化を促進するための金属を含み得る。この成分は、触媒的に有効な任意の量で最終触媒中に存在してもよい。概して、第1の触媒は、触媒の0~5重量%、又は0.25~3重量%、又は0.25~2重量%の金属を含む。金属成分は、任意の好適な方法で触媒中に組み込まれてもよい。好適な金属としては、周期表のVI、VII、又はX族の金属、例えば、Re、Pt、Pt-Sn、Pd、Ni、Co、Ru、又はMoが挙げられるが、これらに限定されない。金属は、任意選択的に硫黄によって改質されている。
【0029】
好適な第1の触媒の一例は、10~90重量%の不動態化MFI触媒、10~90重量%のバインダ、0~5重量%の金属を含む。
【0030】
第1の触媒床でのエチルベンゼン転化反応条件は、エチルベンゼン転化反応混合物を液相に維持するのに十分な圧力を含む。概して、このような条件は、190℃~350℃、又は250℃~300℃の範囲の温度を含む。概して、圧力は、2MPa超、又は2MPa~7MPa、又は2.5~4.25MPaである。十分な触媒を異性化ゾーンに含有させて、アルキル芳香族供給混合物に対して1~15時間-1、又は1~4時間-1の重量時空間速度を提供してもよい。任意選択的に、アルキル芳香族混合物と共にH2が供給される。H2の量は、モル基準でエチルベンゼンの0.1%超の濃度である。
【0031】
エチルベンゼン転化反応混合物は、キシレンを選択的に異性化するためのUZM-54ゼオライトを含む第2の触媒を含有する第2の触媒床に通される。UZM-54ゼオライトは、米国特許第9,890,094号及び同第10,155,532号並びに米国特許出願公開第2017/0297977号に記載されており、それらの各々は参照により組み込まれる。好適な第2の触媒は、30重量%~90重量%、又は40重量%~90重量%、50重量%~90重量%、又は60重量%~90重量%のゼオライトを含む。
【0032】
第2の触媒はまた、任意選択的にバインダ及び/又は金属を含んでもよい。好適なバインダ及び金属は、第1の触媒について上述したものと同じである。
【0033】
第1及び第2の触媒は、同じバインダ及び金属を含有してもよく、又は異なるバインダ及び/若しくは金属を有していてもよい。バインダ及び/又は金属の量もまた、同じでも異なっていてもよい。
【0034】
反応条件は、第1の触媒床に関して上述したものと同様である。エチルベンゼン反応混合物は、加熱又は冷却をいずれも介さずに第2の触媒床に直接送られる。同じ条件下の液相中で両方の触媒床を操作できることから、エネルギーが節約される。
【0035】
異性化反応混合物は、異性化条件での平衡濃度よりも高い、少なくとも1つのアルキル芳香族異性体の濃度を含み得る。望ましくは、異性化反応混合物は、パラキシレンの濃度が異性化条件での平衡濃度付近の濃度である、1つ以上のC8芳香族の混合物である。いくつかの実施形態では、異性化反応混合物は、20~24%のパラキシレン対全キシレン比を有する。
【0036】
任意の有効な回収スキームを使用して、反応器の溶出液から異性化生成物を回収することができる。異性化反応器を出た異性化反応混合物は、パラキシレンを含み、パラキシレン分離ユニットに通されて、パラキシレンプロセス流と、メタキシレン、オルトキシレン、及びエチルベンゼンを含む第2の流とを生成する。パラキシレン分離ユニットは、吸着分離ユニットを含むことができ、ここで、パラキシレンプロセス流は抽出物流であり、第2の流はラフィネート流である。抽出物流及びラフィネート流は、脱着剤を含むことができる。抽出物流を分別ユニットに通過させて、パラキシレンを沸点に基づいて脱着剤から分離する。プロセスは、ラフィネート流を異性化反応器に通過させることを更に含み得る。ラフィネート流も第2の分別カラムに通過させて、ラフィネート流を第1の触媒床に通過させる前にラフィネート流から脱着剤を分離することができる。
【0037】
典型的には、2つの触媒床での反応によるキシレンの損失は低く、概して、供給物中のキシレンの反応器への1回通過あたり2モル%未満、又は1モル%以下である。
【0038】
「キシレン損失」は、「[((供給物のパラ、メタ、オルトキシレン)-(生成物のパラ、メタ、オルトキシレン))/(供給物のパラ、メタ、オルトキシレン)*100%]」として定義され、芳香族複合施設の別のユニットに循環させる必要がある材料を表す。このような循環には費用がかかり、少量のキシレン損失が好ましい。A11+は、より重い、全般的に回収不可能な材料を表す。
【実施例】
【0039】
触媒Aは、アルミナを有する1/16インチの三裂状押出物に処方されたUZM-54含有触媒であった。この触媒に金属は存在しなかった。
【0040】
触媒Bは、ゼオライトに不動態化を行い、次いでアルミナバインダを使用して不動態化MFIを1/16インチの円筒状押出物に処方することによって調製された不動態化MFI触媒であった。押出中に金属を添加した。
【0041】
触媒Cは、ゼオライト及びシリカバインダを含有する円筒状押出物に不動態化を行うことによって調製された、異なる不動態化MFI触媒であった。この触媒に金属は存在しなかった。
【0042】
単一床の異性化ゾーンと本発明の2床配置との比較を行った。供給物は、7.3重量%のエチルベンゼン(EB)、0.7重量%のパラキシレン(PX)、70重量%のメタキシレン、及び22重量%のオルトキシレンを含有した。
【0043】
表1は、異性化の操作条件及び結果を示す。
【0044】
【0045】
実施例1では、触媒Aを使用して、パラキシレン欠乏蒸気を異性化した。供給物を、18のWHSV及び280℃で触媒Aの床に通過させた。触媒Aは、低いキシレン損失で平衡を確立したが、最小のエチルベンゼン転化率を有した。実施例2では、単一の反応器内に連続的な構成で積み重ねた2つの触媒を試験し、最初の床に触媒B、その直後に触媒Aを用いた。触媒Bを含有する床のWHSVは2.25であり、触媒Aを含有する床のWHSVは18であった。組み合わせたWHSVは2であった。実施例2では、25%を超えるエチルベンゼン転化率でキシレン平衡を再確立した。実施例3では、単一の反応器内に連続的な構成で積み重ねた2つの触媒を試験し、最初の床に触媒C、その直後に触媒Aを用いた。触媒Cを含有する床のWHSVは2.25であり、触媒Aを含有する床のWHSVは18であった。合計WHSVは2であった。実施例3では、30%を超えるエチルベンゼン転化率でキシレン平衡を再確立した。
【0046】
特定の実施形態
以下を特定の実施形態と併せて説明するが、本明細書は、前述の説明及び添付の特許請求の範囲の範囲を例解するものであり、限定することを意図するものではないことが理解されよう。
【0047】
本発明の第1の実施形態は、アルキル芳香族供給混合物のエチルベンゼン転化及びキシレン異性化のためのプロセスであって、アルキル芳香族供給混合物を、10員環チャネルを含む不動態化ゼオライトを含む第1の触媒を含む第1の触媒床と接触させて、液相においてエチルベンゼン転化反応条件でエチルベンゼンをジエチルベンゼンに選択的に転化して、アルキル芳香族供給混合物のエチルベンゼン含有量より少ないエチルベンゼン含有量を有するエチルベンゼン転化反応混合物を生成することと、エチルベンゼン転化反応混合物を、加熱又は冷却を介さずに、UZM-54ゼオライトを含む第2の触媒を含む第2の触媒床に直接通過させて、液相において異性化条件でキシレンを選択的に異性化して、異性化反応溶出液を生成することと、含む。本発明の実施形態は、本段落の第1の実施形態から本段落の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、異性化反応溶出液は、20~24%のパラキシレン対全キシレン比を有する。本発明の実施形態は、本段落の第1の実施形態から本段落の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、第1の触媒又は第2の触媒のうちの少なくとも1つは、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、粘土、又はそれらの組み合わせを含むバインダを更に含む。本発明の実施形態は、本段落の第1の実施形態から本段落の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、第1の触媒は、バインダの添加後に不動態化されている。本発明の実施形態は、本段落の第1の実施形態から本段落の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、第1の触媒は、MFI、MEL、TUN、IMF、UZM-39、UZM-44、UZM-54、MTT、TON、又はこれらの組み合わせを含むゼオライトを含む。本発明の実施形態は、本段落の第1の実施形態から本段落の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、第1の触媒又は第2の触媒のうちの少なくとも1つは、金属を更に含む。本発明の実施形態は、本段落の第1の実施形態から本段落の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、金属は、触媒の0~5重量%の量で存在する。本発明の実施形態は、本段落の第1の実施形態から本段落の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、第1の触媒は、30重量%~90重量%のゼオライトを含有する。本発明の実施形態は、本段落の第1の実施形態から本段落の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、第2の触媒は、30重量%~90重量%のゼオライトを含有する。本発明の実施形態は、本段落の第1の実施形態から本段落の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、エチルベンゼン転化反応条件は、エチルベンゼン転化反応混合物を液相に維持するのに十分な圧力を含み、異性化反応条件は、異性化反応混合物を液相に維持するのに十分な圧力を含む。本発明の実施形態は、本段落の第1の実施形態から本段落の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、エチルベンゼン転化反応条件は、190℃~350℃の温度、2.4MPa超の圧力(a)、又は1時間-1~15時間-1の重量時空間速度、のうちの1つ以上を含む。本発明の実施形態は、本段落の第1の実施形態から本段落の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、異性化反応条件は、190℃~350℃の温度、2.4MPa超の圧力、又は10時間-1~50時間-1の重量時空間速度、のうちの1つ以上を含む。本発明の実施形態は、本段落の第1の実施形態から本段落の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、異性化反応溶出液は、1重量%未満のキシレン損失で少なくとも20%のエチルベンゼン転化率を有する。本発明の実施形態は、本段落の第1の実施形態から本段落の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、異性化反応溶出液をパラキシレン分離ユニットに通過させて、パラキシレン富化プロセス流と、メタキシレン、オルトキシレン、及びエチルベンゼンを含む第2の流とを生成することを更に含む。本発明の実施形態は、本段落の第1の実施形態から本段落の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、パラキシレン分離プロセスは、吸着分離ユニットを含み、パラキシレン及び脱着剤を含む抽出物流とメタキシレン及びオルトキシレンを含むラフィネート流とを生成し、このプロセスは、抽出物流を分別ユニットに通過させて、パラキシレンを含む第1の流と脱着剤を含む第2の流とを生成することと、ラフィネート流を第1の触媒床に通過させることとを更に含む。
【0048】
本発明の第2の実施形態は、アルキル芳香族供給混合物のエチルベンゼン転化及びキシレン異性化のためのプロセスであって、アルキル芳香族供給混合物を第1の触媒床に通過させて、液相においてエチルベンゼン転化反応条件でエチルベンゼンを選択的に転化して、アルキル芳香族供給混合物のエチルベンゼン含有量より少ないエチルベンゼン含有量を有するエチルベンゼン転化反応混合物を生成することであって、第1の触媒床は、MFIゼオライトを含む第1の触媒を含み、第1の触媒は、30~90重量%のゼオライトを含有する、ことと、エチルベンゼン転化反応混合物を、加熱又は冷却を介さずに第2の触媒床に直接通過させて、液相において異性化条件でキシレンを選択的に異性化して、20~24重量%のパラキシレン対キシレン比を有する異性化反応溶出液を生成することであって、第2の触媒床は、UZM-54ゼオライトを含む第2の触媒を含む、ことと、を含み、異性化反応溶出液は、1重量%未満のキシレン損失で少なくとも20%のエチルベンゼン転化率を有する。本発明の実施形態は、本段落の第2の実施形態から本段落の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、第1の触媒又は第2の触媒のうちの少なくとも1つは、アルミナ、シリカ、粘土、若しくはそれらの組み合わせを含むバインダ、又は金属、のうちの1つ以上を更に含む。本発明の実施形態は、本段落の第2の実施形態から本段落の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、エチルベンゼン転化反応条件は、エチルベンゼン転化反応混合物を液相に維持するのに十分な圧力を含み、異性化反応条件は、異性化反応混合物を液相に維持するのに十分な圧力を含む。本発明の実施形態は、本段落の第2の実施形態から本段落の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、エチルベンゼン転化反応条件のうちの少なくとも1つは、190℃~350℃の温度、2.4MPa超の圧力、若しくは1時間-1~15時間-1の重量時空間速度、のうちの1つ以上を含み、又は異性化反応条件は、190℃~350℃の温度、2.4MPa超の圧力、若しくは10時間-1~50時間-1の重量時空間速度、のうちの1つ以上を含む。本発明の実施形態は、本段落の第2の実施形態から本段落の先の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、異性化反応溶出液を吸着分離ユニットに通過させることと、パラキシレン及び脱着剤を含む抽出物流とメタキシレン及びオルトキシレンを含むラフィネート流とを生成することとを更に含み、このプロセスは、抽出物流を分別ユニットに通過させて、パラキシレンを含む第1の流と脱着剤を含む第2の流とを生成することと、ラフィネート流を第1の触媒床に通過させることとを更に含む。
【0049】
更に詳述することなく、前述の説明を使用して、当業者が、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明を最大限まで利用し、かつ本発明の本質的な特性を容易に確認することができ、本発明の様々な変更及び修正を行い、様々な使用及び条件に適合させることができると考えられる。したがって、先行する好ましい特定の実施形態は、単なる例示として解釈されるべきであり、いかなるようにも本開示の残りを限定するものではなく、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれる様々な修正及び同等の構成を網羅することを意図するものである。
【0050】
上記では、全ての温度は摂氏度で記載され、全ての部及び百分率は、別途記載のないかぎり、重量基準である。