(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】美容処理装置
(51)【国際特許分類】
A61N 1/06 20060101AFI20231228BHJP
A61N 1/36 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A61N1/06
A61N1/36
(21)【出願番号】P 2023001958
(22)【出願日】2023-01-10
(62)【分割の表示】P 2021185155の分割
【原出願日】2017-09-21
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000114628
【氏名又は名称】ヤーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 岩男
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0189668(US,A1)
【文献】国際公開第2016/162234(WO,A1)
【文献】特開2010-284459(JP,A)
【文献】特開2016-032516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/06
1/36
A61B 5/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と第2電極とを備える電極部と、
前記第1及び第2電極の間に交流電圧である第1電圧を印加する第1電源部と、
前記第1及び第2電極の間の抵抗値を測定する測定部と、
測定された前記抵抗値
が大きいほど前記第1電圧の周波数を高くする制御部と
を備える美容処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、測定された前記抵抗値が大きいほど前記第1電圧を高くする
請求項1に記載の美容処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、測定された前記抵抗値が大きいほど前記第1電圧の印加期間を長くする
請求項1または2に記載の美容処理装置。
【請求項4】
ユーザが握るグリップ部と、
前記グリップ部に設けられた第3電極と、
前記電極部及び前記第3電極の間に、直流電圧、パルス電圧、又は前記第1電圧に対して極性を反転させた交流電圧を、第2電圧として印加する第2電源部とを備え、
前記制御部は、測定された前記抵抗値に応じて、さらに前記第2電圧を制御する
請求項1または2に記載の美容処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、測定された前記抵抗値が大きいほど前記第2電圧を高くする
請求項4に記載の美容処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、測定された前記抵抗値が大きいほど前記第2電圧の印加期間を長くする
請求項4または5に記載の美容処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1電圧を印加する第1期間及び前記第2電圧を印加する第2期間が交互に来るように制御する
請求項4ないし6のいずれか一項に記載の美容処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ユーザの顔や手足などに電極を接触させて電極間の肌(皮膚)に高周波電流を流すことで肌を奥から温める美容処理を施す技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
肌に電流を流すことで得られる美容処理の効果は、個人差や体調により変化するし、化粧水を用いる場合は化粧水の種類によっても変化する。特許文献1の技術では、それらの状況の変化に対応することは考慮されていない。
そこで、本発明は、状況が変化したときの美容処理の効果の変動を小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、第1電極と第2電極とを備える電極部と、前記第1及び第2電極の間に交流電圧である第1電圧を印加する第1電源部と、前記第1及び第2電極の間の抵抗値を測定する測定部と、 測定された前記抵抗値に応じて前記第1電圧を制御する制御部とを備える美容処理装置を提供する。
【0006】
また、前記制御部は、測定された前記抵抗値が大きいほど前記第1電圧を高くしてもよい。
【0007】
また、前記制御部は、測定された前記抵抗値が大きいほど前記第1電圧の周波数を高くしてもよい。
【0008】
また、ユーザが握るグリップ部と、前記グリップ部に設けられた第3電極と、前記電極部及び前記第3電極の間に直流電圧、パルス電圧又は極性を反転させた交流電圧を第2電圧として印加する第2電源部とを備え、前記制御部は、測定された前記抵抗値に応じて前記第1電圧及び前記第2電圧を制御してもよい。
【0009】
また、前記制御部は、測定された前記抵抗値が大きいほど前記第2電圧を高くしてもよい。
【0010】
また、前記制御部は、前記第1電圧を印加する第1期間及び前記第2電圧を印加する第2期間が交互に来るように制御し、測定された前記抵抗値が大きいほど前記第1期間及び前記第2期間の少なくとも一方を長くしてもよい。
【0011】
また、前記電極部が取り付けられた取付け面を有し且つ断面が円形の柱の形をした柱状部と、前記柱状部の外周より内径が大きい円環形状の磁性体が前記柱状部に嵌め込まれた場合に当該磁性体を停止させるストッパであって、当該磁性体を吸引する磁石が設けられたストッパとを備え、前記取付け面を覆う多孔質被覆体を前記磁石に吸引された前記磁性体と前記柱状部が挟み込んで固定してもよい。
【0012】
また、前記ストッパは、前記柱状部に嵌め込まれた状態の前記磁性体の円形の外周よりも当該円形の径方向の寸法が小さい部分を有していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、状況が変化したときの美容処理の効果の変動を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図9】電圧制御処理における美顔器1の動作手順の一例を表す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
[1]実施例
図1は実施例の美顔器1の外観を表す。
図1(a)では、美顔器1の外観だけが表され、
図1(b)では、美顔器1にコットン70を被せた状態が表されている。
図2は美顔器1の正面、側面、背面を表す。
図2(a)では正面、
図2(b)では側面、
図2(c)では背面が表されている。
【0016】
美顔器1は、主としてユーザの顔に美容処理を施す器具であり、本発明の「美容処理装置」の一例である。美顔器1は、ヘッド部10と、本体50とを備える。ヘッド部10は、ユーザの肌に押し付けられる部分である。本体50は、いずれも細長い面である第1面51、2つの第2面52及び第3面53を有する棒状の部分であり、ユーザによって握られる部分である。本体50は本発明の「グリップ部」の一例である。ヘッド部10は、第1面51のうち、本体50の長手方向A1の一方の端に設けられている。
【0017】
美顔器1においては、第1面51が向いている方、すなわちヘッド部10が設けられている方を正面とし、第2面52が向いている方を側面、第3面53が向いている方を背面とする。第1面51には、ユーザによって操作される操作ボタン54が設けられている。
操作ボタン54は、液晶パネルに表示されたタッチ式のスイッチであってもよいし機械的なスイッチでもよい。操作ボタン54は、美顔器1の動作モードを選択する操作と、選択された動作モードでの動作を開始させる操作とを受け付ける。
【0018】
本実施例では、肌の深層を温める深層温熱を行いながら肌の汚れを除去するクレンジングモードでの動作に関する構成について説明する。ヘッド部10は、電極部20と、柱状部30と、ストッパ40とを備える。前述した深層温熱及び汚れ除去は、いずれも肌に電流を流すことで行われる。電極部20は、深層温熱及び汚れ除去において肌に電流を流すための電圧が印加される電極を備える部分である。以下では、深層温熱のための電圧を「第1電圧」といい、汚れ除去のための電圧を「第2電圧」という。電極部20は、第1電極21と、第2電極22とを備える。
【0019】
第1電極21は、外周が円形の電極であり、本実施例では、中央が開口する円環形状の電極である。第2電極22は、中央が開口する円環形状の電極であり、第1電極21と同心で且つ第1電極21の外周の外側に配置される。これらの形及び配置により、第1電極21及び第2電極22の間の距離は円周上のどこであっても一定になっている。第1電極21及び第2電極22の間には、高周波電圧(高周波を示す電圧。RF(Radio Frequency)電圧ともいう)が前述した第1電圧として印加される。
【0020】
柱状部30は、断面が円形の柱状の部分であり、本実施例では円柱の形をしている。柱状部30は、底面31と、側面32とを有し、底面31に電極部20が取り付けられている。底面31は本発明の「取付け面」の一例である。柱状部30は、配線等を配置する内部空間を形成する筐体を有し、その筐体は、プラスチック、非金属又はセラミック等の電気絶縁材料を用いて形成されている。これにより、電極部20に電圧が印加されても、柱状部30の筐体には電流が流れずユーザの肌に電流が流れるようになっている。
【0021】
柱状部30には、リング60が嵌め込まれる。リング60は、柱状部の外周より内径が大きい円環形状の磁性体である。リング60は、例えば鉄、コバルト、ニッケル、それらの合金又はフェライト等の強磁性を示す素材で形成されている。ストッパ40は、柱状部30のうちの底面31の反対側に接続されており、リング60が柱状部30に嵌め込まれた場合にそのリング60を停止させる部分である。
【0022】
ストッパ40は、磁石部41と、切欠き部42とを有する。磁石部41は、本実施例ではそれぞれがストッパ40の中に埋め込まれた4つの磁石を有する。柱状部30の底面31には、
図1(b)に表すように綿繊維をシート状に成形したコットン70が被せられる。コットン70は本発明の「多孔質被覆体」の一例である。このように底面31を覆うコットン70を磁石部41に吸引されたリング60と柱状部30(詳細にはその側面32)が挟み込んで固定している。
【0023】
ストッパ40は、円環形状をしているが、その外周側の一部を切り取って切欠き部42が形成されている。
図3はストッパ40等を拡大して表す。
図3では、見分けやすいように第1電極21、第2電極22及びリング60をハッチングして示している。第1電極21、第2電極22、柱状部30及びストッパ40(の円形の外周部分)は、いずれも中心点P1を中心として同心になるように配置されている。
【0024】
また、柱状部30に嵌め込まれたリング60も、これらとほぼ同心の状態になる。この中心点P1から外周に向かう方向を径方向A2とすると、切欠き部42は、ストッパ40のうち、柱状部30に嵌め込まれた状態のリング60の円形の外周よりも径方向の寸法が小さい部分となっている。つまり、リング60の外周の径方向A2の寸法B1>ストッパ40の切欠き部42における径方向A2の寸法B2、となっている。
【0025】
切欠き部42を設けたことで、コットン70を固定した状態のリング60を裏側から押すことができるので、切欠き部42を設けない場合に比べて、リング60が外しやすくなっている。なお、柱状部30、ストッパ40及びリング60は、こうしてコットン70を固定することができる形状になっていればよい。例えば柱状部は底面31に近いほど断面が小さくなる円錐台の形をしていてもよい。また、ストッパは多角形の板状の形をしていてもよいし、リング60の外周よりも半径が小さく切欠きのない円板の形をしていてもよい(それでもリング60を停止させることができてリング60を裏側から押すことができるから)。
【0026】
固定されたコットン70のうち柱状部30の底面31を覆っている部分はユーザの肌に接触する接触部71となっている。接触部71は、クレンジングモードで動作する美顔器1のヘッド部10をユーザの肌に押し当てたときに、その肌の汚れが付着する部分である。クレンジングモードでは、接触部71にクレンジング用の化粧水を染み込ませて汚れを落ちやすくする。
【0027】
本体50の第3面53には、第3電極55が設けられている。第3電極55は、第3面53の長手方向A1の端から端まで延伸する長円字型の電極である。第3電極55は、このように広い範囲に設けられていることで、本体50を握ったユーザの手が必ず接触するようになっている。第3面53と電極部20との間には前述した第2電圧(汚れ除去のための電圧)が印加される。
【0028】
第2電圧としては、直流電圧又はパルス電圧が用いられる。直流電圧とは、大きさ及び方向が一定であり、印加されると直流電流が流れる電圧のことである。なお、大きさが一定ではなく多少変動しても方向が一定であれば直流電圧とみなしてもよい。また、パルス電圧とは、直流電圧を印加する期間と印加しない期間とを交互に繰り返した場合の電圧をいう。以下では、パルス電圧が第2電圧として用いられる場合を説明するが、パルス電圧の代わりに直流電圧が用いられてもよい。
【0029】
図4は美顔器1の電子回路の構成を表す。美顔器1は、第1電極21及び第2電極22を有する電極部20と第3電極55とに加え、第1電源部81と、第2電源部82と、電圧制御部83と、抵抗測定部84とを有する制御回路基板80を備える。制御回路基板80は、電圧を制御する回路が設けられた基板であり、電子素子(例えば、コンデンサ、コイル、ICチップ、メモリなど)によって構成されている。
【0030】
第1電源部81は、第1電極21及び第2電極22の間に高周波電圧を第1電圧として印加する。第1電源部81は、高周波電圧を生成する発振回路及び発振された電圧を昇圧する昇圧回路等を有し、例えば1[MHz]~4[MHz]程度の高周波電圧を印加する。第1電源部81により高周波電圧が印加された状態のヘッド部10をユーザの肌に押し当てると、コットン70に染み込んだ化粧水を介して肌に高周波電流が流れる。
【0031】
第1電極21及び第2電極22の間の距離は、上述したように円周上のどこであっても一定になっているため、第1電極21及び第2電極22の間には一様に高周波電流が流れる。そのため、第1電極21及び第2電極22の間に位置するユーザの肌に対して、広範囲に且つ均等に高周波電流を流すことが可能となり、ユーザの肌の発熱面積が広く且つ通電による刺激が均等になる。その結果、例えば球状電極間に高周波電流を流す場合に比べて、肌の単位面積当たりの発熱量が小さくなり、従来問題とされていた高周波電流により肌が局所的に熱を持ちやすくなったり、ユーザが不快感を覚えたりすることが防止されるようになっている。
【0032】
第2電源部82は、パルス電圧を生成する発振回路及び発振された電圧を昇圧する昇圧回路等を有し、電極部20(第1電極21及び第2電極22の一方又は両方)及び第3電極55の間にパルス電圧を印加する。ユーザが美顔器1の本体50を握ってヘッド部10を肌に押し当てると、第3電極55に触れた手とコットン70に染み込んだ化粧水とを介してユーザの身体の中に微弱な直流電流が流れる。
【0033】
クレンジングモードの場合、第2電源部82は、電極部20に対して第3電極55側がマイナスの電位を有するようにパルス電圧を印加する。これにより、ヘッド部10に対して肌側がマイナスの電位を有するようになり、マイナスに帯電して肌に付着していた老廃物及び汚れ等がコットン70に吸着されるいわゆるイオン導出が行われる。美顔器1では、高周波電圧による深層温熱とパルス電圧による汚れ除去とが交互に行われる。
【0034】
電圧制御部83は、第1電源部81を制御することで第1電源部81が印加する高周波電圧を制御し、第2電源部82を制御することで第2電源部82が印加するパルス電圧を制御する。電圧制御部83は本発明の「制御部」の一例である。電圧制御部83は、高周波電圧を印加する第1期間及びパルス電圧を印加する第2期間が交互に来るように制御する。電圧制御部83は、例えば、第1期間及び第2期間をどちらも同じ長さ(例えば5~15秒程度)にする制御を行う。
【0035】
また、電圧制御部83は、両電圧の制御に、抵抗測定部84による測定結果を用いる。
抵抗測定部84は、第1電極21及び第2電極22の間の抵抗値を測定する。抵抗測定部84は、本実施例では、電気抵抗(レジスタンス)を抵抗値として測定する。抵抗測定部84は、
図1(b)に表すようにコットン70を固定して化粧水を染み込ませた状態(ヘッド部10をユーザの肌に押し当てる前の状態)では、第1電極21及び第2電極22の間に印加される高周波電圧により化粧水に電流が流れるので、化粧水の抵抗値を測定する。そして、ヘッド部10をユーザの肌に押し当てた状態では、化粧水を介してユーザの肌に電流が流れるので、抵抗測定部84は、化粧水及びユーザの肌の合成抵抗を示す抵抗値を測定する。
【0036】
この抵抗値(電気抵抗)は、ユーザの肌の状態及び化粧水の種類等によって変化する。
例えば、人体の肌に高周波電流を流した場合、肌が発熱し、肌の温度上昇に伴って肌内部のインピーダンスが徐々に減少することが知られている。従って、肌の温度上昇に伴って、第1電極21及び第2電極22の間に流れる電流量が増加し、測定される抵抗値が小さくなる。抵抗測定部84は、抵抗値の測定を決められた時間間隔(例えば0.5秒毎など)で行い、その度に測定した抵抗値を電圧制御部83に供給する。
【0037】
電圧制御部83は、こうして抵抗測定部84により測定された抵抗値に応じて高周波電圧及びパルス電圧を制御する。電圧制御部83は、例えば、測定された抵抗値が大きいほど高周波電圧を高くする(高周波電圧の振幅を大きくする)。電圧制御部83は、この制御を行うため、例えば、抵抗値の範囲と高周波電圧とを対応付けた第1制御テーブルを記憶しておく。
【0038】
図5は第1制御テーブルの一例を表す。
図5の例では、「R11未満」、「R11以上R12未満」及び「R12以上」という抵抗値の範囲に、「Vrf1」、「Vrf2」及び「Vrf3」という高周波電圧(Vrf1<Vrf2<Vrf3)が対応付けられている。電圧制御部83は、抵抗測定部84から測定結果が供給されると、その測定結果を含む抵抗値の範囲に第1制御テーブルで対応付けられている高周波電圧を印加する。これにより、電圧制御部83は、前述のとおり測定された抵抗値が大きいほど高周波電圧を高くする。
【0039】
第1電極21及び第2電極22の間の抵抗値が大きいほど、高周波電圧を印加したときに肌に流れる電流が小さくなり、肌の内部が温まりにくくなる。例えば化粧水αを用いると抵抗値がR11未満になり、化粧水βを用いる抵抗値がR12以上になる場合、高周波電圧が同じだと後者の方が前者に比べて肌の内部が温まりにくい。このような肌の内部の温まりやすさの違いは、ユーザ毎の肌の個人差でも生じるし、同じユーザでも肌の状態の違いによっても生じる。
【0040】
そこで、上記制御(電圧制御部83による電圧の制御)を行うことで、この制御を行わない場合に比べて、肌の個人差、肌の状態及び化粧水の種類等の状況の違いに起因する肌に流れる電流の大きさの差を小さくして、肌の内部の温度差(すなわち深層温熱効果の差)を小さくすることができる。また、肌の温度が上昇すると前述したように抵抗値が小さくなるので、高周波電圧も小さくなる。これにより、肌の内部を過度に加熱することを防ぐこともできる。また、上述したようにヘッド部10をユーザの肌に押し当てる前の状態でも抵抗測定部84が化粧水の抵抗値を測定するので、上記制御が行われない場合に比べて、ヘッド部10をユーザの肌に押し当てる前から、肌に流れる電流の大きさの差(特に化粧水の種類の違いにより生じる差)を小さくすることができる。
【0041】
また、電圧制御部83は、測定された抵抗値が大きいほどパルス電圧を高くする(パルス電圧に含まれる直流電圧を高くする)。電圧制御部83は、この制御を行うため、例えば、抵抗値の範囲とパルス電圧とを対応付けた第2制御テーブルを記憶しておく。
図6は第2制御テーブルの一例を表す。
図6の例では、「R21未満」、「R21以上R22未満」及び「R22以上」という抵抗値の範囲に、「Vp1」、「Vp2」及び「Vp3」というパルス電圧(Vp1<Vp2<Vp3)が対応付けられている。
【0042】
電圧制御部83は、抵抗測定部84から測定結果が供給されると、その測定結果を含む抵抗値の範囲に第2制御テーブルで対応付けられているパルス電圧を印加する。これにより、電圧制御部83は、前述のとおり測定された抵抗値が大きいほどパルス電圧を高くする。
【0043】
第1電極21及び第2電極22の間の抵抗値が大きいほど、パルス電圧を印加したときに肌に流れる電流が小さくなり、コットン70に吸着する汚れ等が少なくなる(イオン導出の効果が小さくなる)。そこで、上記制御を行うことで、肌の個人差、状態及び化粧水の種類等の状況の違いに起因する肌に流れる電流の大きさの差を小さくして、コットン70に吸着する汚れ等の差(すなわちイオン導出の効果の差)を小さくすることができる。
【0044】
また、電圧制御部83は、測定された抵抗値が大きいほど高周波電圧を印加する第1期間を長くする。電圧制御部83は、この制御を行うため、例えば、抵抗値の範囲と第1期間とを対応付けた第3制御テーブルを記憶しておく。
図7は第3制御テーブルの一例を表す。
図7の例では、「R31未満」、「R31以上R32未満」及び「R32以上」という抵抗値の範囲に、「Trf1」、「Trf2」及び「Trf3」という第1期間(Trf1<Trf2<Trf3)が対応付けられている。
【0045】
電圧制御部83は、抵抗測定部84から測定結果が供給されると、その測定結果を含む抵抗値の範囲に第3制御テーブルで対応付けられている第1期間の間、高周波電圧を印加する。これにより、電圧制御部83は、前述のとおり測定された抵抗値が大きいほど第1期間(高周波電圧を印加する期間)を長くする。この場合は、肌の内部が温まりにくい状況では第1期間を長くすることで深層温熱効果を高めるようにしている。
【0046】
例えば高周波電圧を最大で印加しても肌の内部が温まりにくい場合、第1期間を長くすることで深層温熱効果を高めることができる。反対に、高周波電圧を最小で印加しても肌の内部が温まりすぎる場合、第1期間を短くすることで深層温熱効果を抑えることができる。また、第1期間を変化させる場合でも、高周波電圧を変化させる場合と同様に、肌の個人差、肌の状態及び化粧水の種類等の状況の違いに起因する肌に流れる電流の大きさの差を小さくして、肌の内部の温度差(すなわち深層温熱効果の差)を小さくすることができる。
【0047】
また、電圧制御部83は、測定された抵抗値が大きいほどパルス電圧を印加する第2期間を長くする。電圧制御部83は、この制御を行うため、例えば、抵抗値の範囲と第2期間とを対応付けた第4制御テーブルを記憶しておく。
図8は第4制御テーブルの一例を表す。
図8の例では、「R41未満」、「R41以上R42未満」及び「R42以上」という抵抗値の範囲に、「Tp1」、「Tp2」及び「Tp3」という第1期間(Tp1<Tp2<Tp3)が対応付けられている。
【0048】
電圧制御部83は、抵抗測定部84から測定結果が供給されると、その測定結果を含む抵抗値の範囲に第4制御テーブルで対応付けられている第2期間の間、パルス電圧を印加する。これにより、電圧制御部83は、前述のとおり測定された抵抗値が大きいほど第2期間(パルス電圧を印加する期間)を長くする。この場合は、汚れ等がコットン70に吸着しにくい状況では第2期間を長くすることでイオン導出の効果を高めるようにしている。
【0049】
例えばパルス電圧を最大で印加しても汚れ等がコットン70に十分吸着しない場合、第2期間を長くすることでイオン導出の効果を高めることができる。また、第2期間を変化させる場合でも、パルス電圧を変化させる場合と同様に、肌の個人差、肌の状態及び化粧水の種類等の状況の違いに起因する肌に流れる電流の大きさの差を小さくして、コットン70に吸着する汚れ等の差(すなわちイオン導出の効果の差)を小さくすることができる。
【0050】
なお、第1~第4制御テーブルは、
図5~
図8に表すものに限らない。例えば抵抗値の範囲を2つにしてもよいし、4以上にしてもよい。また、抵抗値と高周波電圧、パルス電圧、第1期間又は第2期間との関係式を用いて上記の各制御を行ってもよい。要するに、抵抗値が大きいほど、高周波電圧を高くし、パルス電圧を高くし、第1期間を長くし又は第2期間を長くすることができれば、どのような方法が用いられてもよい。
【0051】
美顔器1は、上記の構成に基づいて、高周波電圧及びパルス電圧を制御する電圧制御処理を行う。
図9は電圧制御処理における美顔器1の動作手順の一例を表す。この動作手順は、美顔器1の動作モードをクレンジングモードにして動作を開始させる操作が行われることを契機に開始される。まず、美顔器1(第1電源部81又は第2電源部82)は、高周波電圧又はパルス電圧のいずれかの印加を開始する(ステップS10)。どちらの電圧から開始されるかは、予めどちらかに決められていてもよいし、前回終了時に印加されていた方としてもよい。
【0052】
次に、美顔器1(抵抗測定部84)は、第1電極21及び第2電極22の間の抵抗値を測定する(ステップS11)。続いて、美顔器1(電圧制御部83)は、測定された抵抗値に基づいて印加する高周波電圧を決定する(ステップS12)。次に、美顔器1(電圧制御部83)は、測定された抵抗値に基づいて印加するパルス電圧を決定する(ステップS13)。続いて、美顔器1(電圧制御部83)は、測定された抵抗値に基づいて第1期間及び第2期間を決定する(ステップS14)。なお、ステップS12~S14の動作は順番を変えてもよいし並行して行われてもよい。
【0053】
次に、美顔器1(電圧制御部83)は、測定間隔が経過したか否かを判断し(ステップS21)、経過した(YES)と判断した場合はステップS11(抵抗値の測定)に戻って動作を行う。美顔器1(電圧制御部83)は、経過していない(NO)と判断した場合は、印加期間(現在高周波電圧を印加している場合は第1期間、パルス電圧を印加している場合は第2期間)が経過したか否かを判断する(ステップS22)。
【0054】
美顔器1(電圧制御部83)は、ステップS22で経過していない(NO)と判断した場合はステップS21(測定間隔経過の判断)に戻って動作を行い、経過した(YES)と判断した場合は、印加する電圧の種類を変更する(現在高周波電圧を印加している場合はパルス電圧に変更し、パルス電圧を印加している場合は高周波電圧に変更する)(ステップS23)。美顔器1(電圧制御部83)は、ステップS23の後はステップS21(測定間隔経過の判断)に戻って動作を行う。
【0055】
本実施例では、上記のとおり高周波電圧及びパルス電圧を制御することで、肌の個人差、肌の状態及び化粧水の種類等の状況の違いに起因する肌に流れる電流の大きさの差を小さくして、深層温熱効果の差及びイオン導出の効果を小さくしている。このように、本実施例によれば、状況が変化したときの美容処理の効果(深層温熱効果及びイオン導出の効果)の変動を小さくすることができる。
【0056】
また、本実施例では、高周波電圧及びパルス電圧を交互に印加することで、肌の内部を温めながら、イオン導出によるクレンジングを行っている。上述したように肌の内部を温めるほど電流が流れやすくなるので、本実施例では深層温熱を同時に行うことで、パルス電圧だけを印加する場合に比べてイオン導出の効果を高めることができる。
【0057】
また、本実施例では、磁性体であるリング60がストッパ40に設けられた磁石部41によって吸引されることでコットン70を固定している。ヘッド部10をユーザの肌に押し当てている状態では、この磁石部41が発生させる磁力がリング60を通り抜けて肌まで到達する。その結果、血液成分中のイオンに力が加わってイオンの動きを活発にし、血行を促進される。美顔器1においては、コットン70を固定する仕組み(磁石部41及びリング60)を血行促進にも活用することで、それらを別の仕組みにする場合に比べて、
装置を小型化することもできる。
【0058】
[2]変形例
上述した実施例は本発明の実施の一例に過ぎず以下のように変形させてもよい。また、上述した実施例及び各変形例は必要に応じてそれぞれ組み合わせて実施してもよい。
【0059】
[2-1]周波数の制御
上記実施例では、電圧制御部83が高周波電圧を制御したが、高周波電圧の周波数を制御してもよい。この場合、電圧制御部83は、測定された抵抗値が大きいほど高周波電圧の周波数を高くする。電圧制御部83は、
図5で説明したような制御テーブルを用いてこの制御を行ってもよいし、抵抗値と高周波電圧の周波数との関係式を用いてこの制御を行ってもよい。
【0060】
高周波電圧の周波数を高くするほど肌の内部の温度も早く上昇することが知られている。よって、高周波電圧の周波数を本変形例のように制御することでも、
図5の例で高周波電圧を制御した場合と同様に、肌の個人差、肌の状態及び化粧水の種類等の状況の違いに起因する肌に流れる電流の大きさの差を小さくして、肌の内部の温度差(すなわち深層温熱効果の差)を小さくすることができるし、肌の内部を過度に加熱することを防ぐこともできる。
【0061】
[2-2]電圧制御の対象
上記実施例では、電圧制御部83が、高周波電圧の制御、パルス電圧の制御、第1期間の制御及び第2期間の制御を全て行ったが、これらのうち少なくとも1つ以上の制御を行えばよい。また、第2電源部82が、パルス電圧に代えて上述した直流電圧を印加し、又は、極性を反転させた交流電圧を印加して、電圧制御部83が、それらの電圧の制御を行ってもよい。また、上記変形例で述べた高周波電圧の周波数の制御を組み合わせてもよい。少なくとも高周波電圧、高周波電圧の周波数又は第1期間のいずれかを制御すれば、深層温熱効果の変動を小さくすることができるし、同じく少なくともパルス電圧、直流電圧、極性を反転させた交流電圧又は第2期間のいずれかを制御すれば、イオン導出の効果の変動を小さくすることができる。
【0062】
[2-3]美容処理の対象
上記実施例では、主としてユーザの顔に美容処理を施す器具である美顔器を説明したが、本発明は、それに限らず、例えばユーザの腕、胴体又は脚等の他の部分に美容処理を施す美容処理装置に適用してもよい。
【0063】
[2-4]多孔質被覆体
上記実施例では、綿繊維をシート状に成形したコットン70が多孔質被覆体として用いられて柱状部30の底面31に被せられたが、これに限らず、例えば麻及び絹等の他の種類の繊維をシート状に成形したものが多孔質被覆体として用いられてもよい。要するに、
柱状部30の底面31に被せることができる柔らかさを有し、化粧水を浸透させ、肌に押し当てられると汚れ等を吸着する性質を有するものであれば、どのような素材の多孔質被覆体が用いられてもよい。
【0064】
[2-5]イオン導入
上記実施例では、第2電源部82がイオン導出をするようにパルス電圧を印加したが、電圧の正負を反対にして、イオン導入をするようにパルス電圧を印加してもよい。この場合、マイナスイオンに帯電した化粧水が肌に吸着して浸透しやすくなる。また、深層温熱により肌が内部まで温まっていて細胞が活性化されているので、さらに化粧水が浸透しやすくなる。
【0065】
[2-6]動作モード
上記実施例では、美顔器1はクレンジングモードで動作したが、これに限らず、例えば、深層温熱を行いながら前述したイオン導入を行うモードで動作してもよいし、深層温熱のみを行うモード、汚れ除去のみを行うモード、イオン導入のみを行うモードで動作してもよい。
【0066】
[2-7]肌への直接接触
上記実施例では、柱状部30の底面31にコットン70が被せられた状態で美顔器1が使用されたが、コットン70が被せられていない状態で使用されてもよい。その場合、美顔器1を例えば前述した深層温熱のみを行うモードで動作させることで、第1電極及び第2電極が直接ユーザの肌に接触した状態で抵抗値が測定され、測定された抵抗値に応じた高周波電圧が印加されるので、実施例と同様に、肌の状態等の状況が変化したときの深層温熱効果の変動を小さくすることができる。
【0067】
[2-8]第1電極
上記実施例では、第1電極は中央が開口する円環形状であったが、中央が開口していない円板形状であってもよい。その場合でも、第1電極及び第2電極の間の距離は円周上のどこであっても一定になるから、ユーザの肌の発熱面積を広く且つ通電による刺激を均等にすることができる。
【0068】
[2-9]電極部
上記実施例では、電極部が共に円環形状の第1電極及び第2電極を備えていたが、これに限らない。電極部は、例えば多角形で且つ環状の第1電極及び第2電極を備えていてもよいし、平行に配置された棒状の第1電極及び第2電極を備えていてもよい。いずれの形状にする場合も、第1電極及び第2電極の間の距離が最短距離となる部分が多いほど広範囲に且つ均等に高周波電流を流すことが可能となるので望ましい。
【0069】
[2-10]抵抗値
上記実施例では、抵抗測定部84が第1電極21及び第2電極22の間の抵抗値として電気抵抗(レジスタンス)を測定したが、これに限らず、例えば第1電極21及び第2電極22の間のリアクタンスを抵抗値として測定してもよい。要するに、第1電極21及び第2電極22の間の電流の流れにくさを表す値が抵抗値として測定されればよい。なお、
コンダクタンスのような電流の流れやすさを表す値も、逆数にすれば電流の流れにくさを表すことになるので、抵抗値として扱ってもよい。
【0070】
[2-11]抵抗値の測定方法
上記実施例では、抵抗測定部84が第1電極21及び第2電極22の間に高周波電圧が印加されたときに流れる電流により第1電極21及び第2電極22の間の抵抗値を測定したが、抵抗値の測定方法はこれに限らない。抵抗測定部84は、例えば、第1電極21及び第2電極22の間に抵抗値を測定するための測定用電圧(例えば直流電圧)が印加されたときに流れる電流により第1電極21及び第2電極22の間の抵抗値を測定してもよい。
【0071】
この場合、例えば第1電源部81が深層加熱のための高周波電圧を印加する前にまず測定用電圧を印加して抵抗測定部84が抵抗値を測定し、測定された抵抗値に応じた高さの高周波電圧及びパルス電圧が印加されるように電圧制御部83が制御を行うことで、この制御が行われない場合に比べて、肌に流れる電流の大きさの差を美容処理の開始時から小さくすることができる。また、抵抗測定部84は、柱状部30の底面31に別の対になる電極を設けてそれらの間の抵抗値を測定してもよいし、底面31に電気抵抗を示す値を出力するセンサを設けてその出力値を用いて抵抗値を測定してもよい。
【0072】
要するに、ユーザの肌のうちヘッド部10が押し当てられる部分における電流の流れやすさの指標になるのであれば、どのような方法で抵抗値が測定されてもよい。なお、実施例のように抵抗測定部84が第1電極21及び第2電極22の間の抵抗値を測定する場合は、他の電極又はセンサを設ける必要がないので、それらを設ける場合に比べて装置を小型化することができる。
【符号の説明】
【0073】
1…美顔器、10…ヘッド部、20…電極部、21…第1電極、22…第2電極、30…柱状部、31…底面、40…ストッパ、41…磁石部、42…切欠き部、50…本体、55…第3電極、60…リング、70…コットン。