(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】生成装置及び生成方法
(51)【国際特許分類】
B01J 19/26 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
B01J19/26
(21)【出願番号】P 2023115077
(22)【出願日】2023-07-13
【審査請求日】2023-07-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000223034
【氏名又は名称】株式会社ROKI
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】石川 丈晴
(72)【発明者】
【氏名】藤島 聖剛
(72)【発明者】
【氏名】松本 優雅
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-315946(JP,A)
【文献】特開2008-194637(JP,A)
【文献】国際公開第2012/173262(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00 - 12/02
B01J 14/00 - 19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体材料を噴射する複数のノズルと、
それぞれの前記ノズルに液体材料を送り出す複数のポンプと、
それぞれの前記ノズルから噴射された液体材料同士の反応により生じた反応生成物を回収する回収部と、を備え、
それぞれの前記ノズルは、その外側の空間にある1つの反応空間に向けて液体材料を噴射するように構成され、
前記反応空間に向けて空気を噴射することで、前記反応空間で生じた前記反応生成物を前記回収部に向けて吹き飛ばす空気噴射部を備えていることを特徴とする生成装置。
【請求項2】
前記空気噴射部は、鉛直方向下向きに空気を噴射する、請求項
1に記載の生成装置。
【請求項3】
複数の前記ノズルは、金属塩を含む第1液体材料を噴射する第1ノズルと、有機化合物を含む第2液体材料を噴射する第2ノズルと、を含み、
前記反応生成物は、前記金属塩と、前記有機化合物との反応により生じる有機金属錯体を含む、請求項1に記載の生成装置。
【請求項4】
それぞれの前記ノズルは、前記液体材料を一定の流速で噴射する、請求項1に記載の生成装置。
【請求項5】
複数の前記ノズルは、第1ノズルと、第2ノズルとを含み、
前記第1ノズルの噴射開口部と、前記第2ノズルの噴射開口部とは、間に0.05mm以上1.0mm以下の距離を空けて互いに離間する、請求項1に記載の生成装置。
【請求項6】
前記液体材料は、加熱された後に前記反応空間に向けて噴射される、請求項1に記載の生成装置。
【請求項7】
液体材料を噴射する複数のノズルと、
それぞれの前記ノズルに液体材料を送り出す複数のポンプと、
それぞれの前記ノズルから噴射された液体材料同士の反応により生じた反応生成物を回収する回収部と、を備え、
それぞれの前記ノズルは、その外側の空間にある1つの反応空間に向けて液体材料を噴射するように構成され、
前記液体材料は、加熱された後に前記反応空間に向けて噴射される、ことを特徴とする生成装置。
【請求項8】
複数の液体材料のそれぞれを噴射するノズルの外側の空間にある1つの反応空間に向けて、それぞれの前記液体材料を噴射することと、
噴射されたそれぞれの前記液体材料同士の反応により反応生成物を生成することと、
前記反応空間に向けて空気を噴射することで、前記反応空間で生じた前記反応生成物を吹き飛ばすことと、
前記反応生成物を回収することと、
を含む、反応生成物の生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生成装置及び生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物質吸着材の一つとして、有機金属錯体(Metal-Organic Framework(MOF))が注目されてきている。有機金属錯体は、有機金属構造体や、金属有機構造体、多孔性配位高分子(Porous Coordination Polymer(PCP))とも呼ばれ、金属塩と有機化合物とを原材料として生成することができる多孔質材料である。有機金属錯体は、金属イオンと有機配位子によって形成される規則性の高いナノメートルオーダーの格子間隔を有する格子構造を有しており、物質の貯蔵、分離、触媒反応等の機能を有することが知られている。有機金属錯体は、例えば、グラファイト系の炭素材料である活性炭や、ケイ素とアルミニウムを主体とするゼオライト等の従来から知られている他の多孔質材料に比べ、表面積が非常に大きく、細孔内の化学的環境を設計できる特異的な物質吸着性能を有する。
【0003】
有機金属錯体の生成方法として、ソルボサーマル法やオートクレーブ法のほか、マイクロリアクター法が検討されてきた。マイクロリアクター法は、例えば、ガラス、セラミックス基板上に数十nm~数mm程度の内径を有するマイクロチャネルを形成し、そこに二つの反応流体を流して、二つの反応流体が接する界面領域で化学反応を起こすことにより、反応生成物を生成する方法である。特許文献1には、複数の反応流体流路のための複数のマイクロチャネルを多段に設け、それぞれのマイクロチャネルの中間に、それぞれのマイクロチャネルが上下に合体する合体チャネルを形成し、この合体チャネルの上下方向の中間に、それぞれのマイクロチャネルからの反応流体が接する連続反応界面域が形成されたマイクロチャネル構造を有するマイクロリアクターが開示されている。特許文献1に記載のマイクロリアクターにより、反応生成物や反応に使用した触媒の分離と抽出を同時に行うことができ、反応効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のようなマイクロリアクターにおいては、反応経路が比較的小径であるので、反応経路内において反応生成物の詰まりが発生する可能性があると考えられる。反応経路において詰まりが発生すると、反応生成物の生産性が低下することがあると考えられる。このような課題は、有機金属錯体を生成する場合のみならず、液体材料同士の反応により反応生成物を生成する場合において一般的に生じるものであると考えられる。
【0006】
そこで、本発明は、詰まりの発生を抑制し、生産性を向上させることができる反応生成物の生成装置及び生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る生成装置は、液体材料を噴射する複数のノズルと、それぞれのノズルに液体材料を送り出す複数のポンプと、それぞれのノズルから噴射された液体材料同士の反応により生じた反応生成物を回収する回収部と、を備え、それぞれのノズルは、その外側の空間にある1つの反応空間に向けて液体材料を噴射するように構成されている。
【0008】
本開示の一態様に係る反応生成物の生成方法は、複数の液体材料のそれぞれを噴射するノズルの外側の空間にある1つの反応空間に向けて、それぞれの液体材料を噴射することと、噴射されたそれぞれの液体材料同士の反応により反応生成物を生成することと、反応生成物を回収することと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、詰まりの発生を抑制し、生産性を向上させることができる反応生成物の生成装置及び生成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態に係る生成装置100の概略構成を示す正面図である。
【
図2】本実施形態に係る生成装置100の材料供給部110及び空気噴射部140が設けられる支持部材170の斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る生成装置100の材料供給部110及び空気噴射部140が設けられる支持部材170の正面図である。
【
図4】それぞれ、本実施形態に係る生成装置100の材料供給部110及び空気噴射部140が設けられる支持部材170の下面図である。
【
図5】空気噴射部140、第1材料供給部110a、及び第2材料供給部110b近傍の模式的な断面図である。
【
図6】空気噴射部140、第1材料供給部110a、及び第2材料供給部110b近傍の模式的な断面図である。
【
図7】変形例の材料供給部110Aの一部を拡大して示す上面図である。
【
図8】変形例の材料供給部110Bの一部を拡大して示す上面図である。
【
図9】変形例の材料供給部110Cの一部を拡大して示す上面図である。
【
図10】他の実施形態に係る生成装置の支持部材170Gの上面図である。
【
図11】他の実施形態に係る生成装置の支持部材170Gの断面図である。
【
図12】本開示の実施形態に係る反応生成物の生成方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。なお、各図面には、X軸、Y軸及びZ軸を示すことがある。X軸、Y軸及びZ軸は、右手系の3次元の直交座標を形成する。以下、X軸の矢印方向を+X方向、矢印とは逆方向を-X方向と呼ぶ。その他の軸についても同様である。なお、+Z方向を「上側」乃至「上方」と呼ぶこともあり、-Z方向を「下側」乃至「下方」と呼ぶこともある。また、X軸、Y軸又はZ軸にそれぞれ直交する面を、YZ面、ZX面又はXY面と呼ぶことがある。ただしこれら方向等は相対的位置関係を説明するために便宜的に用いられているものである。従ってこれら方向等は絶対的位置関係を規定するものではない。
【0012】
(反応生成物の生成装置)
以下、本開示の実施形態に係る反応生成物の生成装置100について説明する。なお、以下では、反応生成物の生成装置100を用いて、金属塩と、有機化合物とを反応させることにより、反応生成物として、有機金属錯体(Metal-Organic Framework(MOF))を生成する場合を例に説明する。
【0013】
図1は、本開示の一実施形態に係る生成装置100の概略構成を示す正面図である。
図1に示されるように、生成装置100は、複数のノズル112と、複数のポンプ120と、回収部130と、を備える。
【0014】
それぞれの複数のノズル112は、後述の液体材料152を噴射するように構成されている。複数のノズル112は、第1ノズル112aと、第2ノズル112bとを含む。第1ノズル112aは、第1液体材料152aを噴射する。第2ノズル112bは、第2液体材料152bを噴射する。第1ノズル112a及び第2ノズル112bは、その外側の空間(第1ノズル112aの外側且つ第2ノズル112bの外側)にある1つの反応空間M1に向けて、それぞれ、液体材料152a及び液体材料152bを噴射するように構成されている。本実施形態に係る生成装置100においては、複数のノズル112は、材料供給部110の一部である。材料供給部110は、第1材料供給部110aと、第2材料供給部110bとを含み、第1ノズル112aは第1材料供給部110aの一部であり、第2ノズル112bは第2材料供給部110bの一部である。なお、本実施形態において、反応空間M1は、第1ノズル112aから供給される第1液体材料152aと、第2ノズル112bから供給される第2液体材料152bとが合流する箇所である合流箇所を含む空間であり、後述の、第1ノズル112a内の流路の中心軸と第2ノズル112b内の流路の中心軸との交点を含む領域である。
【0015】
複数のポンプ120は、第1ポンプ120aと、第2ポンプ120bとを含む。第1ポンプ120aは、第1液体材料貯留部150aに第1供給管160aを介して接続されている。第1ポンプ120aは、第1液体材料貯留部150aに貯留される第1液体材料152aを第1材料供給部110aに送り出す。第2ポンプ120bは、第2液体材料貯留部150bに第2供給管160bを介して接続されている。第2ポンプ120bは、第2液体材料貯留部150bに貯留される第2液体材料152bを第2材料供給部110bに送り出す。これにより、第1ポンプ120aは、第1ノズル112aに第1液体材料152aを送り出し、第2ポンプ120bは、第2ノズル112bに第2液体材料152bを送り出す。
【0016】
第1ポンプ120a及び第2ポンプ120bとしては、無脈動(無脈流)のポンプが用いられてもよい。第1ポンプ120a及び第2ポンプ120bとして無脈動のポンプを用いることにより、第1液体材料152aと、第2液体材料152bとを一定の流速で供給することができるので、第1液体材料152aと、第2液体材料152bとを互いに過不足なく反応させることが可能となる。無脈動ポンプとしては、例えば、モーノポンプが用いられてもよい。あるいは、無脈動ポンプとして、脈流のあるポンプが無脈流に改良されたポンプを用いることもできる。また、第1ポンプ120a及び第2ポンプ120bとしては、脈動(脈流)のあるポンプを用いることも可能であり、例えば、脈流のあるプランジャーポンプやギヤポンプを用いることもできる。
【0017】
回収部130は、それぞれのノズル112(第1ノズル112a及び第2ノズル112b)から供給された液体材料(第1液体材料152a及び第2液体材料152b)同士の反応により生じた反応生成物190を回収する。
【0018】
本実施形態に係る生成装置100は、空気噴射部140を備えていてもよい。空気噴射部140は、反応空間M1に向けて空気を噴射することで、反応空間M1で生じた反応生成物190を回収部130に向けて吹き飛ばす。本実施形態に係る生成装置100においては、空気噴射部140は、鉛直方向下方(すなわち、-Z方向)に空気を噴射するように構成されている空気噴射ノズル142を含む。また、
図1に示されるように、反応空間M1は、第1材料供給部110aの第1ノズル112aの噴射開口部118a及び第2材料供給部110bの第2ノズル112bの噴射開口部118bの外側であって、空気噴射部140である空気噴射ノズル142が空気を噴射する方向(-Z方向)において空気噴射ノズル142の下流に存在する。
【0019】
本実施形態に係る生成装置100においては、第1ノズル112aを含む第1材料供給部110a、第2ノズル112bを含む第2材料供給部110b、及び空気噴射部140は、支持部材170に設けられている。本実施形態に係る生成装置100は、その他、加熱部180(
図3参照)等を備える。加熱部180については後述する。
【0020】
以下
図2乃至
図4を参照して、生成装置100のノズル112及び空気噴射部140近傍の構成について説明する。
図2、
図3、及び
図4は、それぞれ、支持部材170の斜視図、+Y方向から見た正面図、及び-Z方向から見た下面図である。
【0021】
支持部材170は、第1材料供給部110a、第2材料供給部110b、及び空気噴射部140を支持し、
図2に示されるように、外形が直方体の形状を有する。
図2、
図3、及び
図4に示されるように、支持部材170には、+X方向の側面(YZ面)、-X方向の側面(YZ面)、及び+Z方向の上面(XY面)に第1材料供給部110a、第2材料供給部110b、及び空気噴射部140を設置する設置部172a、172b、及び172cがそれぞれ設けられている。設置部172aと、設置部172bとは、Z方向で見て同じ高さにおいて、X方向に互いに対向するように設けられている。第1材料供給部110aは、設置部172aに対し、第1ノズル112aの噴射開口部118aが-X方向を向くように配置される。また、第2材料供給部110bは、設置部172bに対し、第2ノズル112bの噴射開口部118bが+X方向を向くように配置される。従って、第1材料供給部110aの第1ノズル112aと、第2材料供給部110bの第2ノズル112bとは、X方向に互いに対向するように配置される。さらに具体的には、第1材料供給部110aの第1ノズル112aと、第2材料供給部110bの第2ノズル112bとは、開口部118aの中心(X方向に垂直な断面における中心)と開口部118bの中心とを結ぶ直線がX方向に平行となるように配置される。なお、ここでは、開口部118aの中心と開口部118bの中心とを結ぶ直線がX方向に平行となるように配置される場合を例に説明したが、これに限られず、例えば、第1材料供給部110aの流路の中心軸(開口部118aに垂直な軸)や、第2材料供給部110bの流路の中心軸(開口部118aに垂直な軸)は、X方向に対して傾くように配置されていてもよい。例えば、第1材料供給部110aの中心軸や第2材料供給部110bの中心軸は、X軸(X方向に延びる軸)に対して±10°傾いていてもよい。
【0022】
また、支持部材170の-Z方向の下面側には、混合間174が設けられている。混合空間174は、第1材料供給部110aから供給される第1材料152aと、第2材料供給部110bから供給される第2材料152bとが反応する空間である。混合空間174は支持部材170の下方(-Z方向)に開口するように設けられている。
図3に示されるように、混合空間174の上側の面(+Z方向の面)は断面視(Y方向に垂直な断面(XZ面))で上側に凸となる略半円形である。従って、混合空間174の上側(+Z方向)の内面は、上側に凸となるように設けられた半球面を有する。
図4に示されるように、混合空間174の開口部174aは、円形である。
【0023】
図5に、支持部材170の内部において進行する反応を模式的に示す。
図5に示されるように、第1材料供給部110aの第1ノズル112aより-X方向に送り出される第1液体材料152aと、第2材料供給部110bの第2ノズル112bより+X方向に送り出される第2液体材料152bとが、支持部材170の混合空間174内の第1液体材料152aと第2液体材料152bとが合流する合流箇所を含む反応空間M1において衝突する。本実施形態においては、第1液体材料152aは金属塩を含み、第2液体材料152bは有機化合物を含み、第1液体材152aと第2液体材料152bとが衝突することにより、第1液体材料152a中の金属塩と、第2液体材料152b中の有機化合物とが反応し、反応生成物として有機金属錯体の核となる物質が生成される。本実施形態に係る生成装置100においては、このとき、空気噴射部140により、混合空間174内の反応空間M1に対し、-Z方向に空気が噴射されている。従って、第1液体材料152aと第2液体材料152bとの衝突により生成される有機金属錯体の核となる物質は、-Z方向に吹き飛ばされる。有機金属錯体の核となる物質は、混合空間174の開口部174aから、支持部材170の外部へと、-Z方向に排出される。排出された反応生成物である有機金属錯体の核となる物質は、支持部材170の-Z方向に設けられている回収部130により回収される。
【0024】
以下、本実施形態に係る生成装置100の作用効果について説明する。
【0025】
従来より、反応生成物の生成方法として、様々な方法が用いられてきた。例えば、反応生成物として、金属塩と有機化合物とを反応させて有機金属錯体を生成する場合においては、例えば、ソルボサーマル法や、オートクレーブ法等が用いられてきた。ソルボサーマル法やオートクレーブ法を用いて、金属塩を含む液体材料と、有機化合物を含む液体材料とを所定の温度、圧力に加熱、加圧された容器内で反応させるバッチ式の合成方法により有機金属錯体を生成することができる。
【0026】
また、有機金属錯体の生成方法としては、ソルボサーマル法やオートクレーブ法のほか、マイクロリアクター法が検討されてきた。マイクロリアクター法は、例えば、ガラス、セラミックス基板上に数十nm~数mm程度の内径を有するマイクロチャネルを形成し、そこに二つの反応流体を流して、二つの反応流体が接する界面領域で化学反応を起こすことにより、反応生成物を生成する方法であり、マイクロリアクター法によれば、比較的粒子径の整ったナノレベルの有機金属錯体を生成することができる。しかしながら、断面が小径であること(例えば60μm)を特徴とするリアクター構造に起因して、反応経路内において詰まりが発生することがある。
【0027】
本実施形態に係る生成装置100においては、複数のノズル112a及び112bのそれぞれが、その外側の空間にある1つの反応空間M1に向けて液体材料を噴射するように構成されている。このような構成においては、液体材料同士の衝突に伴う反応生成物が、各ノズルの内部ではなく外側の広い空間において生成されるので、目詰まりを生じさせることが無い。
【0028】
また、マイクロリアクター法においては、例えば、反応経路において詰まりが発生すると、反応生成物の生産性が低下することがあると考えられる。本実施形態に係る生成装置100においては、目詰まりの発生を抑制することができる結果、反応生成物の生産性を向上させることもできる。
【0029】
また、本実施形態に係る生成装置100においては、第1ポンプ120a及び第2ポンプ120bにより、それぞれ、第1液体材料152a及び第2液体材料152bを連続的に供給することができるので、反応生成物の連続生成も可能となる。例えば、上述のソルボサーマル法やオートクレーブ法においては、一度に比較的多量の反応生成物の生成が可能であるものの、バッチ式であるので、連続的な生成はできない。本実施形態に係る生成装置100は、上述の構成により、従来の方法に比べ、生産性を向上しつつ連続的な生成が可能となる。
【0030】
さらに、本実施形態に係る生成装置100においては、空気噴射部140が設けられていてもよい。本実施形態に係る生成装置100においては、空気噴射部140により反応空間M1に向けて空気を噴射させるので、より均一な大きさの反応生成物を生成することができる。ソルボサーマル法や、オートクレーブ法等、バッチ式の方法により反応を行う場合には、液体材料152aと液体材料152bとの衝突により生成された反応生成物である有機金属錯体の核となる物質同士は、さらに互いに固着して大きくなる可能性があるが、本実施形態に係る生成装置100においては、反応生成物が生成する反応が行われる反応空間M1に対し空気を噴射させることにより、反応生成物同士の固着を抑制することができるので、より均一な大きさの反応生成物を得ることができる。これにより、生成される反応生成物の大きさのバラつきの抑制も可能となる。
【0031】
本実施形態に係る生成装置100においては、第1材料供給部110aの第1ノズル112aは、第1液体材料152aを一定の流速である第1流速で噴射するように、第1ポンプ150aが構成されてもよい。同様に、第2材料供給部110bの第2ノズル112bは、第2液体材料152bを一定の流速である第2流速で噴射するように第2ポンプ150bが構成されもよい。第1流速及び第2流速は、例えば、所定の流速であってもよい。このとき、第1液体材料152a及び第2液体材料152bは、一定の流速で供給されるので、互いに過不足なく反応させることが可能となる。第1流速及び第2流速は、例えば、いずれも200ml/5min(1分あたり40ml)である。他の実施形態においては、流速は一定でなくてもよい。例えば、流速を動的に変化させる構成であってもよい。
【0032】
本実施形態においては、第1ノズル112aから第1液体材料152aが噴射される噴射圧及び第2ノズル112bから第2液体材料152bが噴射される噴射圧は、いずれも、空気噴射部140より空気を噴射する噴射圧に比べ、大きくなるように設定される。これにより、第1液体材料152aと第2液体材料152bとが、互いに衝突して反応する前に空気噴射部140により噴射される空気により吹き飛ばされるのを抑制することができる。なお、第1液体材料152aが噴射される噴射圧及び第2液体材料152bが噴射される噴射圧は、それぞれ、第1ポンプ150a及び第2ポンプ152bにより制御されてもよい。
【0033】
本実施形態に係る生成装置100においては、第1材料供給部110aの第1ノズル112aの噴射開口部118aと、第2材料供給部110bの第2ノズル112bの噴射開口部118bとは、間に0.05mm以上1.0mm以下の距離(
図6に示す距離D1)を空けて互いに離間する。なお、
図6は、空気噴射部140と第1材料供給部110a及び第2材料供給部110bとの関係を説明するための模式的な断面図である。距離D1は、ノズル112a内の流路の中心軸とノズル112b内の流路の中心軸とを結ぶ直線上における噴射開口部118aと噴射開口部118bとの距離である。すなわち、
図6に示されるように、距離D1は、噴射開口部118aの中心と噴射開口部118bの中心との距離である。噴射開口部118a及び噴射開口部118bは、例えば円形である。従って、噴射開口部118aの中心は、噴射開口部118aのX方向に垂直な断面の円の中心であり、噴射開口部118bの中心は、噴射開口部118bのX方向に垂直な断面の円の中心である。
【0034】
噴射開口部118aと噴射開口部118bとの距離D1が0.05mm未満である場合、噴射される液体材料152a及び/または液体材料152bや、液体材料152aと液体材料152bとの反応により生成された反応生成物が飛散し、噴射開口部118a及び/または噴射開口部118bに付着し、第1ノズル112a及び/または第2ノズル112bの詰まりが発生することがある。噴射開口部118aと噴射開口部118bとの距離を0.05mm以上とすることにより、飛散した液体材料152a、152bや、反応生成物等に起因するノズル(第1ノズル112aや第2ノズル112b)の詰まりの発生を抑制することができる。また、第1材料供給部110aと第2材料供給部110bとの距離を1.0mm以下とすることにより、第1液体材料152aと第2液体材料152bとをより確実に反応させることができる。従って、反応生成物の生成の生産性を向上することができる。
【0035】
また、本実施形態に係る生成装置100においては、空気噴射部140の空気噴射ノズル142の噴射開口部148は、第1材料供給部110aの第1ノズル112aの噴射開口部118aと、第2材料供給部110bの第2ノズル112bの噴射開口部118bとを接続する直線(
図6に示す直線L1)からの距離(
図6に示す距離D2)が0.1mm以上10.0mm以下となるように離間していてもよい。
【0036】
本実施形態においては、このように、比較的微細な空間で液体材料152同士(第1液体材料152a及び第2液体材料152b)を合流させることで、発生する反応生成物(例えば有機金属錯体)の核の数を絞りつつ、さらに上述のように空気の噴射で吹き飛ばすように構成されることにより、更なる結晶成長や互いの固着を抑制することができる。これにより比較的均一な大きさの反応生成物を生成することができる。なお、例えば、核の数を絞る必要性が比較的小さい場合には、液体材料152同士を合流させる空間は微細な空間でなくてもよい。
【0037】
また、本実施形態に係る生成装置100においては、空気噴射部140は、第1材料供給部110aの第1ノズル112aの噴射開口部118aと、第2材料供給部110bの第2ノズル112bの噴射開口部118bとを接続する直線(
図6に示す直線L1)に対して垂直な方向(+Z方向)に配置され、空気噴射部140の噴射方向は-Z方向である。従って、
図6において、噴射開口部148の噴射方向と直線L1とがなす角θaは90°であるが、空気噴射部140の配置はこれに限られない。空気噴射部140は、例えば、第1材料供給部110aの第1ノズル112aの噴射開口部118aと、第2材料供給部110bの第2ノズル112bの噴射開口部118bとを接続する直線L1に対する空気の噴射方向の角度θaが、45°以上135°以下であってもよい。
【0038】
さらに、本実施形態に係る生成装置100においては、第1材料供給部110aの第1ノズル112aの噴射開口部118a及び第2材料供給部110bの第2ノズル112bの噴射開口部118bの口径は例えば、0.1mm以上1.0mm以下であってもよい。また、第1材料供給部110aの第1ノズル112a及び第2材料供給部110bの第2ノズル112bの第1液体材料152aの吐出圧及び第2液体材料152bの吐出圧は、例えば、0.05MPa以上1.00MPaであってもよい。
【0039】
なお、上述してきた構成間の距離や配置角度等は、例示であり、他の大きさであってもよい。また、使用される液体材料や使用される環境、生成する反応生成物の粒子径の大きさ等に応じて適宜変更することができる。例えば、空気噴射部140の噴射圧は、反応生成物の粒子径の目標とする大きさや、粒子径の目標とするバラつきに応じて変更されてもよい。
【0040】
本実施形態に係る生成装置100においては、上述のように、さらに加熱部180が設けられていてもよい。
図3に示されるように、加熱部180は、電熱線コイルが用いられてもよく、例えば、第1材料供給部110aの周囲に設けられたコイル状の加熱部180aと、第2材料供給部110bの周囲に設けられたコイル状の加熱部180bと、空気噴射部140の周囲に設けられたコイル状の加熱部180cとを含む。
【0041】
例えば、第1材料供給部110aの第1ノズル112aから噴射される第1液体材料152a及び第2材料供給部110bの第2ノズル112bから噴射される第2液体材料152bは、それぞれ、加熱部180a及び加熱部180bにより加熱された後に反応空間M1に向けて噴射されてもよい。また、空気噴射部140より噴射される空気は、加熱部180cにより加熱された後に反応空間M1に向けて噴射されてもよい。
【0042】
図3に例示するように、加熱部180は、第1材料供給部110a、第2材料供給部110b、及び空気噴射部140のそれぞれについて個別に設けられてもよいが、これに限られない。あるいは、加熱部180は、空気噴射部140、第1材料供給部110a、及び第2材料供給部110bのうちの2つまたは全てについて設けられてもよい。加熱部180は、例えば、支持部材170全体を加熱するように設けられてもよいし、各流体が支持部材170に供給される前の、例えば第1供給管160aや第2供給管160bを加熱するように設けられてもよい。加熱部180としては、例えば、電熱線等を用いて構成されてもよい。材料供給部110により噴射される液体材料152や空気噴射部140により噴射される空気をどの程度加熱するかについては、例えば、反応させる材料や生産量等に応じて適宜設定されてもよい。
【0043】
空気噴射部140、第1材料供給部110a、第1ノズル112a、及び第2ノズル112b)は、特に限定されるものではなく、従来公知のノズルを使用することができる。空気噴射部140、第1ノズル112a、及び第2ノズル112bにおいて用いられるノズルとしては、例えば、直進ノズルや円錐ノズルを使用することができる。
【0044】
空気噴射部140の噴射口ノズル142は、噴射される空気の形状(噴射方向に垂直な断面における形状(
図1において、XY平面に平行な断面における形状))が、長方形となるノズルであってもよい。このようなノズルはスリット型エアーノズル等とも呼ばれる。また、空気噴射部140の噴射口ノズル142は、噴射される空気の形状(XY平面に平行な断面における形状)が、円形となるノズルであってもよい。このとき、噴射されるエアーは円筒状または円錐状の直進エアーとなる。いずれのノズルにおいても、噴射口の大きさや噴射圧は、生成される反応生成物や反応速度等に基づき適宜設定することができる。
【0045】
(変形例)
図7乃至
図9を参照して、本実施形態の反応生成物の生成装置の変形例を説明する。上述してきた反応生成物の生成装置100は、2つのノズル112(第1ノズル112a及び第2ノズル112b(すなわち、2つの材料供給部110(第1材料供給部110a及び第2材料供給部110b))を備える場合を例に説明したが、ノズル112の数はこれに限られない。例えば、3液以上の液体材料を用いて反応生成物を生成する場合には、3つ以上のノズル112が設けられてもよく、3つ以上の材料供給部110が設けられてもよい。
【0046】
図7は、変形例の材料供給部110Aの反応空間M1付近を拡大して模式的に示す上面図である。すなわち、
図7には、変形例の材料供給部110Aを+Z方向から見た上面図が示されている。
図7に示されるように、材料供給部110Aは、3つの材料供給部110a1、材料供給部110a2、及び材料供給部110a3を備える。材料供給部110Aは、3種類の液体材料152を反応させる場合に用いられる。
図7に示されるように、材料供給部110Aの材料供給部110a1と、材料供給部110a2と、材料供給部110a3とは、例えば、互いに120°の角度をなすように配置されている。従って、材料供給部110a1と、材料供給部110a2と、材料供給部110a3とは、反応空間M1付近を中心とする円の周方向に見て互いに等間隔となるように配置されている。材料供給部110a1と、材料供給部110a2と、材料供給部110a3とが、このように等配されることにより、材料供給部110Aを備える指示部材170においては、3種類の液体材料を互いに同一の条件で衝突させて反応させることができる。
【0047】
3種類の液体材料を反応させる場合、例えば、
図1を参照して説明した2つの材料供給部110a及び110bを備える本実施形態に係る生成装置100と同一の構成において、2種の液体材料を合成した溶液を第1ノズル112aから噴射し、残り1種の溶液を第2ノズル112bから噴射して反応させることも考えられる。しかしその場合には、2種の液体材料を合成した溶液と、残り1種の溶液とを衝突させる前に、第1ノズル内において2種の溶液同士の反応により生じた固形の生成物が、第1ノズル112aの内部で成長して結晶となり、第1ノズル112a内の溶液が懸濁して詰まりを発生させるという問題が生じ得る。これに対し、変形例の材料供給部110Aのように、3種の液体材料を反応させる場合に3つの材料供給部110a1、110a2、及び110a3を用いることにより、予め2種の溶液を合成する必要がなく、材料供給部110内部での詰まりの発生を抑制することができる。従って、3種の溶液を用いた反応生成物の生産性を向上することができる。
【0048】
図7に示す材料供給部110Aと同様に、4種類以上の液体材料を用いて反応させる場合においても、材料供給部110の数に応じて、材料供給部110同士のなす角度が調整されてもよく、例えば、360°/ノズルの本数(材料供給部110の個数)で算出される角度をなすように、複数の材料供給部110が等配されてもよい。
【0049】
図8は、他の変形例の材料供給部110Bを模式的に示す+Z方向から見た上面図である。材料供給部110Bは、4種類の液体材料152を反応させる場合に用いられる。
図8に示されるように、材料供給部110Bは、4つの材料供給部110b1、材料供給部110b2、材料供給部110b3、及び材料供給部110b4を備え、材料供給部110b1、材料供給部110b2、材料供給部110b3、及び材料供給部110b4は、例えば、互いに90°の角度をなすように等配されている。
【0050】
図9は、さらに他の変形例の材料供給部110Cを模式的に示す。材料供給部110Cは、6種類の液体材料152を反応させる場合に用いられる。
図9に示されるように、材料供給部110Cは、6つの材料供給部110c1、材料供給部110c2、材料供給部110c3、材料供給部110c4、材料供給部110c5、及び材料供給部110c6を備え、材料供給部110c1、材料供給部110c2、材料供給部110c3、材料供給部110c4、材料供給部110c5及び材料供給部110c6は、例えば、互いに60°の角度をなすように等配されている。
【0051】
その他の変形例として、例えば5種類の液体材料152を反応させる場合にも、360°/ノズルの本数(5本)で算出される角度である72°をなすように、5つの材料供給部110が等配されてもよい。
【0052】
3種類以上の液体材料を用いて反応させる場合においても、空気噴射部140により、反応空間M1に向けて-Z方向に空気を噴射させることにより、2種類の液体材料を用いる場合と同様に、反応生成物の粒子径の制御や生産性の向上等が可能となる。2種類の液体材料を用いる場合には、上述したように、噴射される空気流の断面形状が長方形または円形となる空気噴射部140が用いられてもよい。また、3以上の材料供給部110が用いられる場合には、断面形状が円形となる空気噴射部140(すなわち、噴射されるエアーの形状が円筒形(あるいは円錐形)となる空気噴射部140)を用いることが好ましい。断面形状が円形となる空気噴射部140を用いて、例えば噴射される空気流の断面形状である円の中心が反応空間M1の中心付近となるように、反応空間M1に対して供給される液体材料152に対して空気を噴射させることにより、各材料供給部110から供給される液体材料152に対して、比較的均等な噴射圧の空気を噴射することができる。従って、液体材料152同士の反応を比較的均一に進行させることができる。
【0053】
図10及び
図11を参照して、複数通りの数のノズル112や材料供給部110に対応可能な生成装置の例を説明する。
図10は、この場合の他の実施形態に係る生成装置の支持部材170Gの+Z方向から見た模式的な上面図(XY平面に平行な上面図)であり、
図11は支持部材170Gの+Y方向から見た断面図(XZ平面に平行な断面図)である。
【0054】
図10に示されるように、支持部材170Gは、6つのノズル設置部172g1、172g2、172g3、172g4、172g5、及び172g6を備える(以下、6つのノズル設置部を総称してノズル設置部172gとも称する。)。ノズル設置部172g1、172g2、172g3、172g4、172g5、及び172g6には、それぞれ、材料供給部110g1、110g2、110g3、110g4、110g5、及び110g6のノズルが配置されている。支持部材170Gの外形は、円筒形である。従って、
図10に示されるように、支持部材170Gの外形は上面図において円形であり、
図11に示されるように、支持部材170Gの外形はXZ面に平行な断面において矩形(例えば長方形)である。
【0055】
支持部材170Gにおいては、材料供給部110g1、110g2、110g3、110g4、110g5、及び110g6が着脱可能に構成されている。
図10に示される場合においては、6つ全てのノズル設置部172g1、172g2、172g3、172g4、172g5、及び172g6に6つの材料供給部110g1、110g2、110g3、110g4、110g5、及び110g6のそれぞれが配置されており、6種類の液体材料152による反応を進行させる。支持部材170Gにおいては、ノズル設置部172g1、172g2、172g3、172g4、172g5、及び172g6は、いずれも同一の大きさ及び形状であり、材料供給部110g1、110g2、110g3、110g4、110g5、及び110g6も同一の大きさ及び形状である。
【0056】
例えば、
図1等を参照して説明した2種類の液体材料152により反応を進行させる場合には、6つのノズル設置部172g1、172g2、172g3、172g4、172g5、及び172g6のうち、ノズル設置部172g1及び172g4のみに対し2つの材料供給部110g1及び110g4をそれぞれ設置して用いることができる。このとき、使われていないノズル設置部172g2、172g3、172g5、及び172g6については、塞いでおくことにより、飛散する液体材料や生成された反応生成物の付着等を抑制することができるので好ましい。
【0057】
また、
図7を参照して説明した3種類の液体材料152により反応させる場合には、3つのノズル設置部172g1、172g3、及び172g5に対し3つの材料供給部110g1、110g3、及び110g5をそれぞれ設置することにより3種類の液体材料を反応させて反応生成物を生成する生成装置として用いることができる。この場合にも、使われていないノズル設置部172g2、172g4、及び172g6については、塞いでおくことが好ましい。
【0058】
図7乃至
図9を参照して説明したように、3種類以上の液体材料を衝突させて反応させる場合、材料供給部110のノズル112の数が多くなり、例えば、ノズル112の数に合わせて支持部材170を加工することになる。
図10及び
図11に示される支持部材170Gのように、ノズル設置部172gを同一の大きさ及び形状とし、材料供給部110の大きさ及び形状も同一とすることにより、材料供給部110をユニット化することができ、反応させる液体材料152の種類に応じて必要な材料供給部110のノズル112をノズル設置部172gに挿入して使用することができ、これにより汎用性のある支持部材170Gとすることができる。このとき支持部材170Gのように、全体の外形の形状を円筒形とすることにより、反応空間M1内において、液体材料152同士が合流する合流箇所に相当する中心点について各ノズル設置部172gや材料供給部110gの各ノズル112を対称に配置することができる。
【0059】
図10及び
図11を参照して説明した支持部材170Gは、6つのノズル設置部172gを有するので、2種類、3種類、及び6種類の液体材料152を反応させる場合において特に好ましいが、さらに他の変形例として、例えば、反応空間M1付近の中心点を中心に互いに45°ずつの角度をなすように離間して8つのノズル設置部を設けることにより、2種類、4種類、及び8種類の液体材料152を混合して反応させる場合に用いることができる。ノズル設置部172を6つや8つとする場合に限らず、指示部材170に対し、ノズル設置部172を、同時に噴射させる可能性のある液体材料の数に応じて適宜設けてもよい。そして、設けられたノズル設置部172のうち、反応させる液体材料の数に応じて材料供給部110のノズル112をノズル設置部172に配置し、反応生成物の生成に用いられてもよい。
【0060】
(反応生成物の生成方法)
図12を参照して、本開示の実施形態に係る反応生成物の生成方法について説明する。
図12は本開示の実施形態に係る反応生成物の生成方法のフローチャートである。
【0061】
まず、複数の液体材料のそれぞれを噴射するノズルの外側の空間にある1つの反応空間に向けて、それぞれの液体材料を噴射する(S1202)。
【0062】
次に、噴射されたそれぞれの液体材料同士の反応により反応生成物を生成する(S1204)。
【0063】
続いて、生成された反応生成物を回収する(S1206)。
【0064】
以上により反応生成物が生成される。
【0065】
本実施形態に係る反応生成物の生成装置及び反応生成物の生成方法により有機金属錯体を生成する場合には、例えば、回収部130において回収された有機金属錯体の核となる物質を含む懸濁液から、遠心分離機等を用いて有機金属錯体の核となる物質を回収し、乾燥、活性化させ、有機金属錯体の結晶を得ることができる。
本実施形態に係る反応生成物の生成装置及び反応生成物の生成方法は、複数の液体材料を反応させることにより生成される多様な反応生成物の生成に用いることができる。特に、有機化合物と金属塩との反応により生成される有機金属錯体の生成においても用いることができる。本実施形態に係る反応生成物の生成装置及び反応生成物の生成方法を用いて生成することができる有機金属錯体としてはZIF類、HKUST類、ELM類、SIFSIX類、JAST類、及びCPL類が挙げられる。また、本実施形態に係る反応生成物の生成装置及び反応生成物の生成方法により生成される有機金属錯体は、例えば不織布に付着させて対象とする物質を選択的に分離するフィルタとして用いることができる。
【0066】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0067】
100…生成装置、110…材料供給部、112…ノズル、118a、118b…噴射開口部、120…ポンプ、130…回収部、140…空気噴射部、150a…第1液体材料貯留部、150b…第2液体材料貯留部、152…液体材料、170…支持部材、174…混合空間、174a…開口部、180…加熱機構、190…反応生成物、M1…反応空間
【要約】
【課題】詰まりの発生を抑制し、生産性を向上させることができる反応生成物の生成装置及び生成方法を提供する。
【解決手段】生成装置は、液体材料を噴射する複数のノズルと、それぞれの前記ノズルに液体材料を送り出す複数のポンプと、それぞれの前記ノズルから噴射された液体材料同士の反応により生じた反応生成物を回収する回収部と、を備え、それぞれの前記ノズルは、その外側の空間にある1つの反応空間に向けて液体材料を噴射するように構成されている。
【選択図】
図1