(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】ワイヤレス電力測定精度の評価のための二次基準を提供する方法及びシステム並びに試験中のワイヤレス電力測定装置の電力測定精度を評価する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/60 20160101AFI20231228BHJP
G01R 31/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
H02J50/60
G01R31/00
(21)【出願番号】P 2023529065
(86)(22)【出願日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 EP2022062818
(87)【国際公開番号】W WO2022238498
(87)【国際公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-05-16
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】319004364
【氏名又は名称】エレクトディス アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ラウレンス スバーンズ
(72)【発明者】
【氏名】マックス アンデション
(72)【発明者】
【氏名】アリアンナ アマヤ
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-503063(JP,A)
【文献】特開2018-078794(JP,A)
【文献】国際公開第2020/074433(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00 - 50/90
G01R 31/00 - 31/01
G01R 31/24 - 31/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験中のワイヤレス電力測定装置(60,DUT)の電力測定精度を評価する際に後に使用する二次基準を提供する方法(100)であって、
基準ワイヤレス電力伝送機器(30)の動作点を制御することによって、無生物の較正オブジェクト(50)を電磁界変動(38)にさらすこと(110)と、
前記電磁界変動(38)によって、前記較正オブジェクト(50)の主要電力吸収パラメータ(58)を生成すること(120)と、
生成された前記主要電力吸収パラメータ(58)を、動作点を画定するデータ(57)と共に、前記較正オブジェクト(50)に関連付けられた(54)データストレージ(52)に格納すること(130)と、
を備える方法。
【請求項2】
無生物の前記較正オブジェクト(50)は、電磁波吸収特性が時間と共に不変のままである物理的な物体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
無生物の前記較正オブジェクト(50)は、電磁波吸収特性が時間と共に確定的に変化する物理的な物体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
無生物の前記較正オブジェクト(50)は、
固体金属体と、
液体金属と、
複合材料から作られた物体からなる群から選択されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記動作点は、
電磁場の周波数と、
電磁場の大きさと、
電磁場の形状と、
電磁場の向きと、
表面温度とのうちの一つ以上によって直接的又は間接的に確定される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記主要電力吸収パラメータは、
ワイヤレス伝送機のコイルの電流と、
ワイヤレス伝送機のコイルの電圧と、
伝送されたワイヤレス電力と、
電気インピーダンスと、
ワイヤレス伝送機のコイルのQ値とのうちの一つ以上によって直接的又は間接的に確定される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
試験中のワイヤレス電力測定装置(60,DUT)の電力測定精度を評価する方法(200)であって、
無生物の較正オブジェクト(50)を設けること(210)と、
前記較正オブジェクト(50)について記憶された主要電力吸収パラメータ(58)を、動作点を画定するデータ(57)と共に、前記較正オブジェクト(50)に関連付けられた(54)データストレージ(52)から検索すること(220)と、
前記ワイヤレス電力測定装置(60,DUT)を、検索した前記データ(57)によって画定された動作点で動作させることによって、前記較正オブジェクト(50)を電磁界変動(68)にさらすこと(230)と、
前記電磁界変動(68)によって、前記較正オブジェクト(50)の主要電力吸収パラメータを取得すること(240)と、
前記ワイヤレス電力測定装置(60,DUT)の電力測定精度を表す測定結果を取得するために、取得した主要電力吸収パラメータと、検索した前記主要電力吸収パラメータ(58)とを比較すること(250)と、
を備える方法。
【請求項8】
設けられた無生物の前記較正オブジェクト(50)は、請求項1に記載された方法を経た較正オブジェクトである、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
較正オブジェクトについて取得した(240)主要電力吸収パラメータと前記較正オブジェクト(50)に関連付けられたデータストレージ(52)から取得した前記主要電力吸収パラメータ(58)との差を最小化するように操作される動作点を反復的に適合させることによって、前記ワイヤレス電力測定装置(60,DUT)を調整する(260)ことを更に備える、請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
前記ワイヤレス電力測定装置(60,DUT)は、ワイヤレス電力伝送適合試験の対象となるワイヤレス電力伝送機器である、請求項
7に記載の方法。
【請求項11】
無生物の前記較正オブジェクト(50)は、電磁波吸収特性が時間と共に不変のままである物理的な物体である、請求項
7に記載の方法。
【請求項12】
無生物の前記較正オブジェクト(50)は、電磁波吸収特性が時間と共に確定的に変化する物理的な物体である、請求項
7に記載の方法。
【請求項13】
無生物の前記較正オブジェクト(50)は、
固体金属体と、
液体金属と、
複合材料から作られた物体からなる群から選択される、請求項
7に記載の方法。
【請求項14】
前記動作点は、
電磁場の周波数と、
電磁場の大きさと、
電磁場の形状と、
電磁場の向きと、
表面温度とのうちの一つ以上によって直接的又は間接的に確定される、請求項
7に記載の方法。
【請求項15】
前記主要電力吸収パラメータは、
ワイヤレス伝送機のコイルの電流と、
ワイヤレス伝送機のコイルの電圧と、
送信されたワイヤレス電力と、
電気インピーダンスと、
ワイヤレス伝送機のコイルのQ値とのうちの一つ以上によって直接的又は間接的に確定される、請求項
7に記載の方法。
【請求項16】
試験中のワイヤレス電力測定装置(60,DUT)の電力測定精度を評価する際に後に使用する二次基準を提供するシステムであって、基準ワイヤレス電力伝送機器(30)と、ホスト装置(40)と、データストレージ(52)と、を備え、
前記基準ワイヤレス電力伝送機器(30)及び前記ホスト装置(40)は、
基準ワイヤレス電力伝送機器(30)の動作点を制御することによって、無生物の較正オブジェクト(50)を電磁界変動(38)にさらし、
前記電磁界変動(38)によって、前記較正オブジェクト(50)の主要電力吸収パラメータ(58)を生成するように構成され、
前記データストレージ(52)は、
生成された前記主要電力吸収パラメータ(58)を、動作点を画定するデータ(57)と共に、前記較正オブジェクト(50)に関連付けられた(54)データストレージ(52)に格納するように構成された、システム。
【請求項17】
試験中のワイヤレス電力測定装置(60,DUT)の電力測定精度を評価するシステムであって、
無生物の較正オブジェクト(50)に関連付けられた(54)データストレージ(52)と、
ホスト装置(70)であって、
前記較正オブジェクト(50)について記憶された主要電力吸収パラメータ(58)を、動作点を画定するデータ(57)と共に、前記データストレージ(52)から検索し、
前記ワイヤレス電力測定装置(60,DUT)を、検索した前記データ(57)によって画定された動作点で動作させることによって、前記較正オブジェクト(50)を電磁界変動(68)にさらし(230)、
前記電磁界変動(68)によって、前記較正オブジェクト(50)の主要電力吸収パラメータを取得し、
前記ワイヤレス電力測定装置(60,DUT)の電力測定精度を表す測定結果を取得するために、取得した主要電力吸収パラメータと、検索した前記主要電力吸収パラメータ(58)とを比較するように構成された、ホスト装置(70)と、
を更に備えるシステム。
【請求項18】
前記主要電力吸収パラメータ(58)及び前記動作点を画定する前記データ(57)は、請求項
16に記載の二次基準を提供するシステムの前記データストレージ(52)を操作することにより、前記データストレージ(52)に予め記憶されている、請求項
17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ワイヤレス給電の分野に関し、更に具体的には、ワイヤレス給電装置の試験に関する。更に具体的には、本発明は、試験中のワイヤレス電力測定装置の電力測定精度を評価する際に後に使用する二次基準を提供する方法及び関連システムに関する。また、本発明は、試験中のワイヤレス電力測定装置の電力測定精度を評価する方法及び関連システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレス給電は、例えば、携帯端末、タブレット端末、ノートパソコン、カメラ、オーディオプレーヤ、電動歯ブラシ、ワイヤレスヘッドセット、スマートウォッチのようなモバイル機器並びに他の様々な消費者向け製品及び家電製品のワイヤレス充電のためにますます普及している。
【0003】
ワイヤレスパワーコンソーシアムは、Qiと呼ばれるワイヤレス給電規格を策定している。他の既知のワイヤレス給電の構想は、アライアンスフォーワイヤレスパワー及びパワーマターズアライアンスを含む。
【0004】
ワイヤレスパワーコンソーシアムによってQiとして知られているワイヤレス給電規格を、本発明に適用される現在好適なワイヤレス給電態様として、本書を通じて制限なく言及する。しかしながら、本発明は、一般に、上述のものを含むが上述のものに限定されない他のワイヤレス給電規格又は構想に適用することもできる。
【0005】
Qiに準拠した機器の動作は、平面コイル間の磁気誘導に依存する。すなわち、(基地局又は電力伝送製品と呼ばれる)ワイヤレス電力を供給する機器すなわちワイヤレス電力伝送機器と、(モバイル機器又は電力受信機器と呼ばれる)ワイヤレス電力を消費する機器すなわちワイヤレス電力受信機器との2種類の機器が関係している。給電は、基地局からモバイル機器に行われる。このために、基地局は、1次コイルを備えるサブシステム(電力伝送機)を有し、一方、モバイル機器は、2次コイルを備えるサブシステム(電力受信機)を有する。動作中、一次コイル及び二次コイルは、コアレス共振トランスの二つの半部分を構成する。典型的には、基地局は、平坦面を有し、ユーザは、基地局に置かれた(一つ以上の)モバイル機器のワイヤレス充電及び操作可能な電力供給を享受するために、平坦面の上に一つ以上のモバイル機器を置くことができる。
【0006】
これを、モバイル機器10(又は電力受信製品)すなわちワイヤレス電力受信機器へのワイヤレス給電のためのワイヤレス電力伝送機器20を示す
図1において見ることができる。モバイル機器10は、例えば、モバイル端末(例えば、スマートフォン)10a、タブレットコンピュータ10b(例えば、サーフパッド)、ラップトップコンピュータ10c、スマートウォッチ10d、カメラ、オーディオプレーヤ、充電式歯ブラシ、無線ヘッドセット又は他の種類の消費者向け製品若しくは家電製品であってもよい。
【0007】
ワイヤレス給電が、ワイヤレスパワーコンソーシアムによるQi規格に準拠するものとして本書で例示されているので、ワイヤレス電力伝送機器20は、Qi用語では基地局又は電力伝送製品である。しかしながら、本発明は、上述したように、他のワイヤレス給電規格又はアプローチにも一般的に適用可能である。
【0008】
ワイヤレス電力伝送機器20は、ワイヤレス電力伝送コイル24を有するとともに電力制御装置26によって制御されるワイヤレス電力伝送機22を備える。これに対応して、モバイル機器10は、ワイヤレス電力受信コイル14を有するワイヤレス電力受信機12を備える。動作中、ワイヤレス電力伝送機器20は、ワイヤレス電力伝送コイル24及びワイヤレス電力受信コイル14を介して磁気誘導18によりモバイル機器10にワイヤレスで給電する。
【0009】
ワイヤレス電力受信コイル14によって受信した電力は、モバイル機器10の負荷16を駆動する。典型的には、負荷16は、リチウムイオン電池のような充電式バッテリであってもよく、したがって、ワイヤレス電力伝送機器20は、モバイル機器10のためのワイヤレス充電器として機能する。別のシナリオでは、負荷16は、モバイル機器内の電子回路であってもよく、したがって、ワイヤレス電力伝送機器20は、モバイル機器10のためのワイヤレス電力供給器として機能する。
【0010】
本書では、ワイヤレス充電を、ワイヤレス電力伝送の一例として、すなわち、属の種類として使用するが、それに限定されるものではない。
【0011】
ワイヤレス電力伝送の重要な側面は、安全性である。(
図1の機器20のような)ワイヤレス電力伝送機器が電磁場を使用することによって(
図1の機器10のような)ワイヤレス電力受信機器にエネルギーを移動することができる方法がQi仕様によって説明していることが想起される。電磁場を使用することの既知の欠点は、電磁場にさらされる金属体の加熱が電磁場によって引き起こし得ることである。このために、Qi仕様を利用する機器は、異物のそのような望ましくない加熱に対する保護を本来備えている。そのような保護は、一般に異物検出(FOD)と呼ばれ、電磁界の両側(すなわち、送信側及び受信側、
図1の機器20及び機器10を参照)の電力及び/又はエネルギーの測定に基づいている。ワイヤレス電力伝送セッションの間、ワイヤレス電力受信機器10は、ワイヤレス電力受信機器10が消費する電力量をワイヤレス電力伝送機器20に定期的に伝送する。ワイヤレス電力伝送機器20は、ワイヤレス電力伝送機器20が伝送する電力を測定することができるので、これらの二つの間の差(伝送電力から受信電力を引いたもの)を計算することができ、計算された差は、加熱を引き起こし得る他の物体によって意図せずに吸収されていると仮定される。
【0012】
したがって、ワイヤレス電力伝送の分野では、正確な電力測定が不可欠であることは、当業者にとって明らかである。異物検出に関連する安全面とは別に、ワイヤレス電力システムの効率を測定するとともに決定する場合にも、正確な電力測定が必要である。エネルギースターのようなプログラムでは、機器の性能に関する信頼性の高い評価は、ワイヤレス電力伝送を提供する製品にとって競争力のある側面となる。これらのニーズは、モバイル機器の開発者、製造者又は供給者、ワイヤレス電力伝送機器の開発者、製造者又は供給者、ワイヤレス電力伝送分野の試験機関又はコンプライアンス機関及び消費者製品安全分野の試験機関又はコンプライアンス機関のような様々な利益団体に存在する可能性がある。
【0013】
ワイヤレス電力伝送機器における正確な電力測定は、一般的に利用可能な交流電力測定装置と比較していくつかの側面で課題を抱えている。信号の周波数は、100Hzと比較して100kHzのオーダーであり、すなわち、1000倍と非常に高い。さらに、正弦波に対して矩形波であるので、高調波歪みも大きくなる。さらに、ワイヤレス電力伝送システムの性質上、必然的に、皮相電力に対する有効電力の割合が低くなる(代替的には、充電されるものが理想的な抵抗負荷からかけ離れているので、相当量の無効電力が存在する)。
【0014】
これらの応用のための信頼できる電力基準を見つけることは困難であり、極めて正確な測定装置を構築する必要がある。ワイヤレス電力伝送装置に特に適している電力測定のための高精度システム、デバイス及び方法に対する先行技術の手法は、欧州特許公開第3035490号明細書及び国際公開第2018/197553号に記載されている。
【0015】
関連技術は、米国特許公開第2017/317536号明細書、米国特許公開第2019/011523号明細書及びCHU SUNG YUL ET AL: "Electromagnetic Model-Based Foreign Object Detection for Wireless Power Transfer", 2019 20TH WORKSHOP ON CONTROL AND MODELING FOR POWER ELECTRONICS (COMPEL), IEEE, 17 June 2019に開示されている。
【0016】
本発明者は、電力測定装置が正確に測定を行っているか否かを示すことができる簡易な測定検証が必要であることを認識した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の目的は、ワイヤレス電力伝送装置の電力測定における改善を提供するとともに上記で特定された問題の一つ以上を解消又は軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の背景にある発明的理解は、無生物のオブジェクトを電磁界にさらしたときの無生物のオブジェクトの電力損失の特性化である。異なる材料は、異なる周波数において異なる特性を有することがあり、それによって、そのような無生物のオブジェクトを、例えば、較正目的のための測定値の検証に非常に適したものにする。したがって、特定の無生物のオブジェクトは、例えば、特定の無生物のオブジェクトが特定の電磁界条件にさらされたときの電力損失又は電磁インピーダンスの観点から特性化されると、これらの特性は、時間と共に変化しない。したがって、同一の特定の電磁界条件にさらされた同一の無生物のオブジェクトは、同一の電力吸収を受ける。これにより、そのような無生物のオブジェクトを、様々な測定、特に、ワイヤレス電力伝送システムにおける電力測定のための較正基準として使用することができる。
【0019】
較正オブジェクトの特性を、典型的には、非常に正確(かつ比較的高価)である高度な測定ツールを使用して取得する必要がある。しかしながら、そのような高度な測定ツールによる測定が行われると、較正オブジェクトは、高度な測定ツールによって評価された範囲において、それ自体で二次標準となる。そして、較正オブジェクトを、電力測定の検証を目的とした高度な測定ツールの二次基準として廉価な方法で使用することができる。
【0020】
上記を考慮して、第1の発明の態様は、試験中のワイヤレス電力測定装置の電力測定精度を評価する際に後に使用する二次基準を提供する方法である。方法は、基準ワイヤレス電力伝送機器の動作点を制御することによって、無生物の較正オブジェクトを電磁界変動にさらすことと、電磁界変動によって、較正オブジェクトの主要電力吸収パラメータを生成すことと、を備える。方法は、生成された主要電力吸収パラメータを、動作点を画定するデータと共に、較正オブジェクトに関連付けられたデータストレージに格納することを更に備える。
【0021】
このように、第1の発明の態様による方法は、較正オブジェクトをワイヤレス電力伝送測定のための二次基準に変える。
【0022】
第2の発明の態様は、試験中のワイヤレス電力測定装置の電力測定精度を評価する方法である。第2の発明の態様による方法は、無生物の較正オブジェクトを設けることを備え、無生物の較正オブジェクトは、典型的には、第1の発明の態様による方法を経た較正オブジェクトである。第2の発明の態様による方法は、較正オブジェクトについて記憶された主要電力吸収パラメータを、動作点を画定するデータと共に、較正オブジェクトに関連付けられたデータストレージから検索することを更に備える。ワイヤレス電力測定装置を、検索したデータによって画定された動作点で動作させることによって、較正オブジェクトは、電磁界変動にさらされる。電磁界変動によって、較正オブジェクトの主要電力吸収パラメータを取得する。次に、第2の発明の態様による方法は、ワイヤレス電力測定装置の電力測定精度を表す測定結果を取得するために、取得した主要電力吸収パラメータと、検索した主要電力吸収パラメータとを比較することを備える。
【0023】
第2の発明の態様による方法におけるワイヤレス電力測定装置は、例えば、Qiコンプライアンス試験のようなワイヤレス給電コンプライアンス試験の対象となるワイヤレス電力伝送機器であってよい。
【0024】
第3の発明の態様は、試験中のワイヤレス電力測定装置の電力測定精度を評価する際に後に使用する二次基準を提供するシステムである。システムは、基準ワイヤレス電力伝送機器と、ホスト装置と、データストレージと、を備える。
【0025】
基準ワイヤレス電力伝送機器及びホスト装置は、
基準ワイヤレス電力伝送機器の動作点を制御することによって、無生物の較正オブジェクトを電磁界変動にさらし、
電磁界変動によって、較正オブジェクトの主要電力吸収パラメータを生成するように構成される。
【0026】
データストレージは、
生成された主要電力吸収パラメータを、動作点を画定するデータと共に、較正オブジェクトに関連付けられたデータストレージに格納するように構成される。
【0027】
第4の発明の態様は、試験中のワイヤレス電力測定装置の電力測定精度を評価するシステムである。システムは、無生物の較正オブジェクトに関連付けられたデータストレージを更に備える。システムは、ホスト装置であって、
較正オブジェクトについて記憶された主要電力吸収パラメータを、動作点を画定するデータと共に、データストレージから検索し、
ワイヤレス電力測定装置を、検索したデータによって画定された動作点で動作させることによって、較正オブジェクトを電磁界変動にさらし、
電磁界変動によって、較正オブジェクトの主要電力吸収パラメータを取得し、
ワイヤレス電力測定装置の電力測定精度を表す測定結果を取得するために、取得した主要電力吸収パラメータと、検索した主要電力吸収パラメータとを比較するように構成された、ホスト装置(70)を更に備える。
【0028】
第4の本発明の態様によるシステムにおいて、主要電力吸収パラメータ及び動作点を画定するデータは、第3の本発明の態様による二次基準を提供するシステムのデータストレージを操作することにより、データストレージに予め記憶されてもよい。
【0029】
開示された実施形態の他の態様、目的、特徴及び利点は、以下の詳細な開示、添付の従属請求項及び図面から明らかになる。一般に、特許請求の範囲で使用される全ての用語は、本明細書で明示的に別様に定義されない限り、技術分野における通常の意味に従って解釈されるものとする。
【0030】
明示的に別段の記載がない限り、“a/an/the”[要素、デバイス、構成要素、手段、ステップ等]への言及は全て、要素、デバイス、構成要素、手段、ステップ等の少なくとも一つの例を指すものとしてオープンに解釈されるものとする。明示的に記載されない限り、本明細書に開示された任意の方法のステップを、開示された正確な順序で実行する必要はない。
【0031】
本発明の実施形態の目的、特徴及び利点は、添付の図面を参照することによって、以下の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】ワイヤレス電力受信装置にワイヤレス電力伝送を行うワイヤレス電力伝送機器の概略ブロック図である。
【
図2A】無生物の較正オブジェクトに基づいて試験中のワイヤレス電力測定装置の電力測定精度を評価する際に後に使用する二次基準を提供するシステムの概略図である。
【
図2B】無生物の較正オブジェクトを使用して試験中のワイヤレス電力測定装置の電力測定精度を評価するシステムの概略図である。
【
図2C】無生物の較正オブジェクトに関連するデータストレージを示す模式図である。
【
図3】試験中のワイヤレス電力測定装置の電力測定精度を評価する際に後に使用する二次基準を提供する方法を説明する概略フローチャートである。
【
図4】試験中のワイヤレス電力測定装置の電力測定精度を評価する方法を示す概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。しかしながら、本発明を、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載された実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、この開示が徹底的かつ完全であり、当業者に本発明の範囲を完全に伝えるように提供される。添付図面に例示された特定の実施形態の詳細な説明で使用される用語は、本発明を限定することを意図していない。図面において、同様な番号は同様な要素を指す。ハッチングされたボックスとして図示した要素は、一般に、それらが現れる特定の図面においてオプションとして見られるべきである。
【0034】
図2Aは、試験中のワイヤレス電力測定装置の電力測定精度を評価する際に無生物の較正オブジェクト50の形で二次基準を提供するためのシステムを示す。無生物の較正オブジェクト50は、電磁波吸収特性が時間と共に不変のままである又は電磁波吸収特性が時間と共に確定的に変化する物理的な物体である。このために、無生物の較正オブジェクト50は、有利には、ブロック又はシリンダのような固体金属体、水銀のような液体金属又は、バインダと混合した金属粉末、金属強化ガラス若しくは金属強化プラスチックのような複合材料から作られた物体であってもよい。しかしながら、無生物の較正オブジェクト50は、当業者が本開示によって一旦教示されれば理解するように、他の代替形態を取ることができる。
【0035】
図2Aのシステムは、基準ワイヤレス電力伝送機器30と、ホスト装置40と、データストレージ52と、を備える。基準ワイヤレス電力伝送機器30は、ワイヤレス電力伝送コイル34を有するとともに電力制御装置36によって駆動されるワイヤレス電力伝送機32を備える。ワイヤレス電力伝送機32は、電力コントローラ36の制御の下で電磁界変動38を生成することができる。無生物の較正オブジェクト50がワイヤレス電力伝送機器30のハウジングに置かれるとき又は他の方法でワイヤレス電力伝送機32に近接するとき、無生物の較正オブジェクト50は、電磁場38にさらされる。
【0036】
基準ワイヤレス電力伝送機器30は、一つ以上のセンサ37を更に備え、そのうちの少なくとも一つは、好適には、基準ワイヤレス電力伝送機器30のハウジングのうちの無生物の較正オブジェクト50が置かれる部分の表面温度を測定するための温度センサである。
【0037】
基準ワイヤレス電力伝送機器30は、ワイヤレス電力伝送コイル34に動作可能に結合されるとともにワイヤレス電力伝送コイル34を流れる電気信号の電流、電圧又はインピーダンスのうちの一つ以上のような様々な測定データを測定又は決定するように構成された測定回路又は機能39を更に備える。当業者が理解するように、これらの電気信号は、電力コントローラ36から供給される駆動信号によって影響が及ぼされるだけでなく無生物の較正オブジェクト50との電磁(又は誘導)相互作用によっても影響が及ぼされる。
【0038】
本発明の実施形態では、基準ワイヤレス電力伝送機器30は、スウェーデン国、マルメ、ストーラ、トレードゴールスガータン30,211 28に所在のノク9から市販されているCATS II Mobile Device Testerである。本発明のこれらの実施形態又は他の実施形態において、基準ワイヤレス電力伝送機器30は、“The Qi Wireless Power Transfer System”, Power Class 0 Specification, Part 3: Compliance Testing, version 1.2.4, February 2018の第4章又はこの仕様の任意の互換性のある後続バージョンに記載された試験電力伝送機に準拠している。
【0039】
ホスト装置40は、基準ワイヤレス電力伝送機器30の動作点を制御する回路又は機能42を備える。動作点を、例えば、ワイヤレス電力伝送コイル34によって生成される電磁場38の周波数、電磁場38の大きさ、電磁場38の形状、電磁場38の向き、センサ37の一つ以上によって測定される表面温度又はその任意の組合せ若しくは派生によって直接的又は間接的に画定することができる。当業者が理解するように、「直接又は間接的に」という概念は、基準ワイヤレス電力伝送機器30の動作点を制御するときにホスト装置40が電磁界38を直接測定する必要がないことを意味する。むしろ、回路又は機能42は、(振幅及び周波数のような)ワイヤレス電力伝送コイル34を流れる電流に関する測定値を準備又は取得し、その測定値から、ワイヤレス電力伝送コイル34の電流によって生成された電磁界38の周波数、大きさ、形状及び向きのうちの一つ以上を判断してもよい。
【0040】
基準ワイヤレス電力伝送機器30の動作点の制御は、電磁場38の制御された変動を引き起こす。本発明によれば、電磁場変動38によって、主要電力吸収パラメータ58が、較正オブジェクト50について生成される。ホスト装置40は、これらの主要電力吸収パラメータ58を取得する回路又は機能44を有する。主要電力吸収パラメータ58を、生成する測定データに基づいて、基準ワイヤレス電力伝送機器30の測定回路又は機能39によって直接生成してもよい。代替的には、主要電力吸収パラメータ58を、基準ワイヤレス電力伝送機器30の測定回路又は機能39によって生成された測定データに基づいて、ホスト装置40の回路又は機能44によって生成してもよい。別の代替として、主要電力吸収パラメータ58を、ホスト装置40の回路又は機能44と共に基準ワイヤレス電力伝送機器30の測定回路又は機能39によって協調的に生成してもよい。
【0041】
このようにして生成された主要電力吸収パラメータ58を、例えば、ワイヤレス電力伝送コイル34のワイヤレス伝送コイル電流、ワイヤレス電力伝送コイル34のワイヤレス伝送コイル電圧、基準ワイヤレス電力伝送機器30が伝送したワイヤレス電力、ワイヤレス電力伝送コイル34の電気インピーダンス及びワイヤレス電力伝送コイル34のQ値のうちの一つ以上によって画定してもよい。
【0042】
ホスト装置40は、生成された主要電力吸収パラメータ58を記録するための回路又は機能46を更に備える。これは、54で見られるように、データストレージ52が較正オブジェクト50に関連付けられた際に動作点を画定するデータ57と共に生成された主要電力吸収パラメータ58を記憶することを伴う。
図2Cに見られるように、データストレージ52と較正オブジェクト50との間の関連付け54を、較正オブジェクト識別子56を含むデータセット55を、動作点及び生成された主要電力吸収パラメータ58を画定するデータ57と共にデータストレージ52に記憶することによって確立してもよい。当業者が理解するように、データセット55は、(較正オブジェクト識別子56によって識別されるような)一つだけの較正オブジェクト50を表してもよい、又は、代替的に、それぞれの較正オブジェクト識別子56によって区別される複数の異なる較正オブジェクト50を表してもよい。
【0043】
データストレージ52を、例えばROM、RAM、SRAM、DRAM、FLASH(登録商標)、DDR又はSDRAMのようなコンピュータ可読メモリ技術によって又はソリッドステートドライブ又はハードドライブなどの二次記憶技術によって実装される任意の種類の適切なデータストレージであってもよい。ソフトウェアの観点から、データストレージ52を、例えば、ホストコンピュータ又はサーバコンピュータによってホストされるデータベースにおいて又はそのようなデータベースとして具現化してもよい。データストレージ52を、いくつの例として挙げるBluetooth(登録商標)、WiFi(登録商標)、W-CDMA、GSM(登録商標)、UTRAN、HSPA、LTE、LTE Advanced若しくは5Gのようなワイヤレス通信のようなローカル通信手段若しくは広域通信手段、又は、簡単な電気配線、USB若しくはイーサネット(登録商標)のようなシリアル通信のような有線通信によってアクセスしてもよい。そのような通信は、インターネット又はその一部を含んでもよい。
【0044】
上記のようなホスト装置40と基準ワイヤレス電力伝送機器30との間のやり取りを、任意の適切な通信手段、例えば、上記のローカル通信手段又は広域通信手段のいずれかによって行ってもよい。
【0045】
図2Aについて上述したシステムの機能は、
図3に示す方法100を参照しながら以下のように要約することができる。
図3に見られるように、試験中のワイヤレス電力測定装置の電力測定精度を評価する際に後に使用する二次基準を提供する方法100が提供される。方法100は、基準ワイヤレス電力伝送機器30の動作点を制御することによって、無生物の較正オブジェクト50を電磁場変動38にさらすこと(110)を備える。方法100は、電磁場変動38によって、較正オブジェクト50の主要電力吸収パラメータ58を生成すること(120)を更に備える。次に、方法100は、生成された主要電力吸収パラメータ58を、動作点を画定するデータ57と共に、較正オブジェクト50に関連付けられたデータストレージ52に格納すること(130)を備える。
【0046】
図2Bは、
図2Aについて上述したシステム及び
図3について上述した方法100の対象となった無生物の較正オブジェクト50を二次基準として使用することによって試験中のワイヤレス電力測定装置60の電力測定精度を評価するシステムを示す図である。
【0047】
ワイヤレス電力測定装置60は、試験中の装置DUTであり、ワイヤレス電力伝送コイル64を有するとともに電力制御装置66によって駆動されるワイヤレス電力伝送機62を備える。ワイヤレス電力伝送機62は、電力制御装置66の制御の下で変動電磁界68を生成することができる。無生物の較正オブジェクト50がワイヤレス電力測定装置60のハウジングに置かれるとき又は他の方法でワイヤレス電力伝送機62に近接するとき、無生物の較正オブジェクト50は、電磁界68にさらされる。
【0048】
ワイヤレス電力測定装置60は、一つ以上のセンサ67を更に備え、そのうちの少なくとも一つは、好適には、ワイヤレス電力測定装置60のハウジングのうちの無生物の較正オブジェクト50が置かれる部分の表面温度を測定するための温度センサである。
【0049】
ワイヤレス電力測定装置60は、ワイヤレス電力伝送コイル64に動作可能に結合されるとともにワイヤレス電力伝送コイル64を流れる電気信号の電流、電圧又はインピーダンスのうちの一つ以上のような様々な測定データを測定又は決定するように構成された測定回路又は機能69を更に備える。上記の
図2Aについて述べたことと同様に、ワイヤレス電力伝送コイル64の電気信号は、電力コントローラ66から供給される駆動信号によって影響が及ぼされるだけでなく無生物の較正オブジェクト50との電磁(誘導)的相互作用によっても影響が及ぼされる。
【0050】
試験中のワイヤレス電力測定装置60は、有利には、ワイヤレス給電コンプライアンス試験の対象となるQi仕様で定義されるようなワイヤレス電力伝送機器、例えば、基地局、電力伝送機、電力伝送製品又は電力伝送製品ユニットであってもよい。Qi 仕様は、https://www.wirelesspowerconsortium.com/ で得られる。したがって、ワイヤレス給電コンプライアンス試験は、例えば、Qi仕様への準拠を試験するためにワイヤレス電力測定装置60に対して実行される任意の試験であってもよい。
【0051】
試験中のワイヤレス電力測定装置60がワイヤレス電力受信装置、例えば、Qi仕様で定義されるようなモバイル機器、電力受信装置、電力受信製品又は電力受信製品ユニットである代替実施形態を想定することができる、又は、ワイヤレス電力測定装置60それ自体が実際にワイヤレス電力コンプライアンス試験装置であってもよい。
【0052】
図2Bのシステムは、ホスト装置70と、上記データストレージ52と、を備える。ホスト装置70は、ワイヤレス電力測定装置60の動作点を制御する回路又は機能72を備える。上述の
図2Aについて述べたことと同様に、動作点を、例えば、ワイヤレス電力伝送コイル64によって生成される電磁場68の周波数、電磁場68の大きさ、電磁場68の形状、電磁場68の向き、センサ67の一つ以上によって測定される表面温度又はその任意の組合せ若しくは派生によって直接的又は間接的に画定することができる。しかしながら、
図2Aとは異なり、
図2Bにおける動作点のソースは、
図2Aのシステム及び
図3の方法100によって生成された主要電力吸収パラメータ58とともに、較正オブジェクト50に関連付けられたデータストレージ52に予め格納された上記データ57となる。
【0053】
したがって、
図2Bのホスト装置70は、較正オブジェクト50に関連付けられたデータストレージ52から上記データセット55を読み出し、較正オブジェクト50について記憶された主要電力吸収パラメータ58を、動作点を画定するデータ57と共に、データセット55から検索する。
【0054】
したがって、ホスト装置70の回路又は機能72は、較正オブジェクト50に関連付けられたデータストレージ52から検索したデータ57に従って、ワイヤレス電力測定装置60の動作点を制御する。当業者が理解するように、ホスト装置70は、動作点を制御するときに、電磁界68を直接測定する必要がない。むしろ、回路又は機能72は、(振幅及び周波数のような)ワイヤレス電力伝送コイル64を流れる電流に関する測定値を準備又は取得し、その測定値から、ワイヤレス電力伝送コイル64の電流によって生成された電磁場68の周波数、大きさ、形状及び向きのうちの一つ以上を判断してもよい。したがって、上記の「直接的又は間接的に」という概念がある。
【0055】
ワイヤレス電力測定装置60の動作点の制御は、電磁場68の制御された変動を引き起こす。
図2Aと同様に、電磁場変動68から生じる主要電力吸収パラメータは、較正オブジェクト50について生成される。ホスト装置70は、これらの主要電力吸収パラメータを取得する回路又は機能74を有する。
【0056】
主要電力吸収パラメータを、生成する測定データに基づいて、ワイヤレス電力測定装置60の測定回路又は機能69によって直接生成してもよい。代替的には、主要電力吸収パラメータを、ワイヤレス電力測定装置60の測定回路又は機能69が生成する測定データに基づいてホスト装置70の回路又は機能74によって取得してもよい、又は、ホスト装置70の回路又は機能74と協同するワイヤレス電力測定装置60の測定回路又は機能69によって協同して取得してもよい。
【0057】
したがって、
図2Bのシステムで取得された主要電力吸収パラメータを、
図2Aのシステムで生成された主要電力吸収パラメータ58と同様に、ワイヤレス電力伝送コイル64のワイヤレス伝送コイル電流、ワイヤレス電力伝送コイル64のワイヤレス伝送コイル電圧、ワイヤレス電力測定装置60が伝送したワイヤレス電力、ワイヤレス電力伝送コイル64の電気インピーダンス、ワイヤレス電力伝送コイル64のQ値のうちの一つ以上によって画定してよい。
【0058】
ホスト装置70は、測定結果を取得するために、取得した主要電力吸収パラメータと検索した主要電力吸収パラメータ58とを比較する回路又は機能76を更に備える。したがって、測定結果は、ワイヤレス電力測定装置60がデータストレージ52から読み出したデータ57によって画定される動作点に制御されたときに較正オブジェクト50について
図2Bのシステムによって取得した主要電力吸収パラメータと、基準ワイヤレス電力伝送機器30がデータ57によって表される同一の動作点に制御されたときに同一の較正オブジェクト50について
図2Aのシステムによって以前に生成された主要電力吸収パラメータ58との比較に基づく。
【0059】
取得した測定結果は、ワイヤレス電力測定装置60すなわちDUTの電力測定精度を表す。これは、上述したように、ワイヤレス電力測定装置60が受けるワイヤレス給電コンプライアンス試験の一部であってもよい。
【0060】
ホスト装置70の回路又は機能76は、較正オブジェクト50について
図2Bのシステムによって取得したような主要電力吸収パラメータと較正オブジェクト50に関連付けられたデータストレージ52から取得した主要電力吸収パラメータ58すなわち較正オブジェクト50について
図2Aのシステムによって生成された主要電力吸収パラメータ58との差を最小化するように操作される動作点を反復的に適合させることによって、ワイヤレス電力測定装置60を調整するように更に構成されてもよい。
【0061】
図2Bについて上述したシステムの機能は、
図4に示す方法200を参照しながら以下のように要約することができる。
図4に見られるように、試験中のワイヤレス電力測定器60(DUT)の電力測定精度を評価する方法200が提供される。方法200は、典型的には、
図3の方法100を経た無生物の較正オブジェクト50を提供すること(210)を備える。方法200は、較正オブジェクト50について記憶された主要電力吸収パラメータ58を、動作点を画定するデータ57と共に、較正オブジェクト50に関連付けられたデータストレージ52から検索すること(220)を更に備える。検索されたデータ57によって画定された動作点でワイヤレス電力測定装置60を動作させることによって、較正オブジェクト50を電磁場変動68にさらす(230)。方法200は、電磁界変動68によって、較正オブジェクト50の主要電力吸収パラメータを取得すること(240)と、試験中のワイヤレス電力測定装置60の電力測定精度を表す測定結果を取得するために、取得した主要電力吸収パラメータと、検索した主要電力吸収パラメータ58とを比較すること(250)と、を更に備える。
【0062】
上記の開示から十分に明らかなように、
図2A、
図2B、
図3及び
図4の方法及びシステムの機能は、(コンプライアンス試験のような)試験状況におけるワイヤレス電力測定装置の電力測定精度の評価を可能にするという目的を果たす。これは、互いの間でワイヤレス電力伝送を行う一対のワイヤレス電力伝送機器及びワイヤレス電力受信装置の通常の(エンドユーザの)動作中の異物検出(FOD)のための従来の機能と混同されるものではない。
【0063】
当業者が理解するように、
図3及び
図4の方法は、代替的に、試験中のワイヤレス電力測定装置60の電力測定精度を評価する一つの共通方法の第1の部分及び第2の部分と考えることができる。そのような共通の方法の第1の部分は、基準ワイヤレス電力伝送機器30の動作点を制御することによって無生物の較正オブジェクト50を電磁界変動38にさらすこと(110)と、電磁界変動38によって、較正オブジェクト50の主要電力吸収パラメータ58を生成すること(120)と、生成された主要電力吸収パラメータ58を、動作点を画定するデータ57と共に、較正オブジェクト50に関連付けられた(54)データストレージ52に格納すること(130)と、を備える。
【0064】
共通の方法の第2の部分は、典型的には、その後のときと場所で、較正オブジェクト50について記憶された主要電力吸収パラメータ58を、動作点を画定するデータ57と共に、較正オブジェクト50に関連付けられたデータストレージ52から検索すること(220)と、ワイヤレス電力測定装置60を、検索したデータ57によって画定された動作点で動作させることによって、較正オブジェクト50を電磁界変動68にさらすこと(230)と、を有する。共通の方法の第2の部分は、電磁界変動68によって、較正オブジェクト50の主要電力吸収パラメータを取得すること(240)と、ワイヤレス電力測定装置60の電力測定精度を表す測定結果を取得するために、取得した主要電力吸収パラメータと、検索した主要電力吸収パラメータ58とを比較すること(250)と、を更に有する。
【0065】
本発明を、主にいくつかの実施形態を参照しながら上述した。しかしながら、当業者によって容易に理解されるように、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内で、上記に開示されたもの以外の実施形態も同様に可能である。
本明細書に開示される発明は以下を含む。
[態様1]
試験中のワイヤレス電力測定装置(60,DUT)の電力測定精度を評価する際に後に使用する二次基準を提供する方法(100)であって、
基準ワイヤレス電力伝送機器(30)の動作点を制御することによって、無生物の較正オブジェクト(50)を電磁界変動(38)にさらすこと(110)と、
前記電磁界変動(38)によって、前記較正オブジェクト(50)の主要電力吸収パラメータ(58)を生成すること(120)と、
生成された前記主要電力吸収パラメータ(58)を、動作点を画定するデータ(57)と共に、前記較正オブジェクト(50)に関連付けられた(54)データストレージ(52)に格納すること(130)と、
を備える方法。
[態様2]
試験中のワイヤレス電力測定装置(60,DUT)の電力測定精度を評価する方法(200)であって、
無生物の較正オブジェクト(50)を設けること(210)と、
前記較正オブジェクト(50)について記憶された主要電力吸収パラメータ(58)を、動作点を画定するデータ(57)と共に、前記較正オブジェクト(50)に関連付けられた(54)データストレージ(52)から検索すること(220)と、
前記ワイヤレス電力測定装置(60,DUT)を、検索した前記データ(57)によって画定された動作点で動作させることによって、前記較正オブジェクト(50)を電磁界変動(68)にさらすこと(230)と、
前記電磁界変動(68)によって、前記較正オブジェクト(50)の主要電力吸収パラメータを取得すること(240)と、
前記ワイヤレス電力測定装置(60,DUT)の電力測定精度を表す測定結果を取得するために、取得した主要電力吸収パラメータと、検索した前記主要電力吸収パラメータ(58)とを比較すること(250)と、
を備える方法。
[態様3]
設けられた無生物の前記較正オブジェクト(50)は、態様1に記載された方法を経た較正オブジェクトである、態様2に記載の方法。
[態様4]
較正オブジェクトについて取得した(240)主要電力吸収パラメータと前記較正オブジェクト(50)に関連付けられたデータストレージ(52)から取得した前記主要電力吸収パラメータ(58)との差を最小化するように操作される動作点を反復的に適合させることによって、前記ワイヤレス電力測定装置(60,DUT)を調整する(260)ことを更に備える、態様2~3のいずれか一つに記載の方法。
[態様5]
前記ワイヤレス電力測定装置(60,DUT)は、ワイヤレス電力伝送適合試験の対象となるワイヤレス電力伝送機器である、態様2~4のいずれか一つに記載の方法。
[態様6]
無生物の前記較正オブジェクト(50)は、電磁波吸収特性が時間と共に不変のままである物理的な物体である、態様1~5のいずれか一つに記載の方法。
[態様7]
無生物の前記較正オブジェクト(50)は、電磁波吸収特性が時間と共に確定的に変化する物理的な物体である、態様1~5のいずれか一つに記載の方法。
[態様8]
無生物の前記較正オブジェクト(50)は、
固体金属体と、
液体金属と、
複合材料から作られた物体からなる群から選択されている、態様1~7のいずれか一つに記載の方法。
[態様9]
前記動作点は、
電磁場の周波数と、
電磁場の大きさと、
電磁場の形状と、
電磁場の向きと、
表面温度とのうちの一つ以上によって直接的又は間接的に確定される、態様1~8のいずれか一つに記載の方法。
[態様10]
前記主要電力吸収パラメータは、
ワイヤレス伝送機のコイルの電流と、
ワイヤレス伝送機のコイルの電圧と、
伝送されたワイヤレス電力と、
電気インピーダンスと、
ワイヤレス伝送機のコイルのQ値とのうちの一つ以上によって直接的又は間接的に確定される、態様1~8のいずれかに記載の方法。
[態様11]
試験中のワイヤレス電力測定装置(60,DUT)の電力測定精度を評価する際に後に使用する二次基準を提供するシステムであって、基準ワイヤレス電力伝送機器(30)と、ホスト装置(40)と、データストレージ(52)と、を備え、
前記基準ワイヤレス電力伝送機器(30)及び前記ホスト装置(40)は、
基準ワイヤレス電力伝送機器(30)の動作点を制御することによって、無生物の較正オブジェクト(50)を電磁界変動(38)にさらし、
前記電磁界変動(38)によって、前記較正オブジェクト(50)の主要電力吸収パラメータ(58)を生成するように構成され、
前記データストレージ(52)は、
生成された前記主要電力吸収パラメータ(58)を、動作点を画定するデータ(57)と共に、前記較正オブジェクト(50)に関連付けられた(54)データストレージ(52)に格納するように構成された、システム。
[態様12]
試験中のワイヤレス電力測定装置(60,DUT)の電力測定精度を評価するシステムであって、
無生物の較正オブジェクト(50)に関連付けられた(54)データストレージ(52)と、
ホスト装置(70)であって、
前記較正オブジェクト(50)について記憶された主要電力吸収パラメータ(58)を、動作点を画定するデータ(57)と共に、前記データストレージ(52)から検索し、
前記ワイヤレス電力測定装置(60,DUT)を、検索した前記データ(57)によって画定された動作点で動作させることによって、前記較正オブジェクト(50)を電磁界変動(68)にさらし(230)、
前記電磁界変動(68)によって、前記較正オブジェクト(50)の主要電力吸収パラメータを取得し、
前記ワイヤレス電力測定装置(60,DUT)の電力測定精度を表す測定結果を取得するために、取得した主要電力吸収パラメータと、検索した前記主要電力吸収パラメータ(58)とを比較するように構成された、ホスト装置(70)と、
を更に備えるシステム。
[態様13]
前記主要電力吸収パラメータ(58)及び前記動作点を画定する前記データ(57)は、態様11に記載の二次基準を提供するシステムの前記データストレージ(52)を操作することにより、前記データストレージ(52)に予め記憶されている、態様12に記載のシステム。