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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】バリスタ集合体
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/10 20060101AFI20240104BHJP
   H01C 13/02 20060101ALI20240104BHJP
   H01C 7/18 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
H01C7/10
H01C13/02 Z
H01C7/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020566137
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(86)【国際出願番号】 JP2019047077
(87)【国際公開番号】W WO2020149034
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2019004888
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】東 佳子
(72)【発明者】
【氏名】古賀 英一
(72)【発明者】
【氏名】高岸 将之
【審査官】清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-086274(JP,A)
【文献】特開昭64-020601(JP,A)
【文献】実開昭50-149845(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第1953109(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/10
H01C 13/02
H01C 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に接続された複数のバリスタ素子を備えたバリスタ集合体であって、
前記複数のバリスタ素子の各々は焼結体と一対の外部電極とを備え、
前記焼結体は複数のバリスタ層と複数の内部電極とを有しかつ前記バリスタ層と前記内部電極とが交互に積層された積層体を焼結させたものであり、
前記焼結体は前記バリスタ層と前記内部電極とが接する面に沿う方向に位置する一対の端面を有し、
前記一対の外部電極はそれぞれ前記一対の端面の上に設けられ、
前記複数のバリスタ素子は第1グループバリスタ素子を複数個含み、
前記第1グループバリスタ素子は、前記焼結体の表面積をS、前記焼結体の体積をVとしたとき、S/V≧1.9mm-1以上である、バリスタ集合体。
【請求項2】
前記第1グループバリスタ素子の個数をn1としたとき、2≦n1≦200である請求項1に記載のバリスタ集合体。
【請求項3】
前記n1は、5≦n1≦200である請求項2に記載のバリスタ集合体。
【請求項4】
複数のバリスタ素子は、第2グループバリスタ素子をさらに含み、
前記第2グループバリスタ素子は、前記焼結体の表面積をS、前記焼結体の体積をVとしたとき、S/V<1.9mm-1であり、前記第2グループバリスタ素子の個数をn2としたとき、1≦n2≦5である請求項2に記載のバリスタ集合体。
【請求項5】
前記複数の第1グループバリスタ素子の各素子のうち同じ大きさである複数の前記第1グループバリスタ素子について1mA印加時の電圧の変動係数が0.035以下である請求項1に記載のバリスタ集合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サージや静電気から半導体素子等を保護するバリスタ集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器が有する回路を構成する素子、例えば半導体集積回路(IC)にサージや静電気等の異常電圧が印加されると、電子機器に誤作動または破壊されてしまうことがある。このような異常電圧から電子機器を保護する電子部品としてバリスタがあげられる。従来のバリスタに関する技術としては特許文献1および特許文献2があげられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008―218749号公報
【文献】特開2006-86274号公報
【発明の概要】
【0004】
酸化亜鉛バリスタは酸化亜鉛にビスマス元素、プラセオジウム元素などの添加物を添加し、焼結させたセラミックス多結晶体である。エネルギー量の大きなサージからの保護を目的とする場合、素子を大型化し内部電極の面積を拡大して対応を行ってきたが、静電容量が大きくなりすぎ、また十分なサージ耐性が得られなかった。従来のバリスタでは実現できない、大電流領域での良好なサージ耐性を有するバリスタが望まれている。
【0005】
上記問題を解決するために本開示のバリスタ集合体は、並列に接続された複数のバリスタ素子を備えたものであって、以下の構成を有する。すなわち、複数のバリスタ素子の各々は焼結体と一対の外部電極とを備える。焼結体は複数のバリスタ層と複数の内部電極とを有しかつバリスタ層と内部電極とが交互に積層された積層体を焼結させたものである。焼結体はバリスタ層と内部電極とが接する面に沿う方向に位置する一対の端面を有する。一対の外部電極はそれぞれ一対の端面の上に設けられる。複数のバリスタ素子は第1グループバリスタ素子を複数個含む。第1グループバリスタ素子は、焼結体の表面積をS、焼結体の体積をVとしたとき、S/V≧1.9mm-1以上である。
【0006】
以上のように構成することにより、静電容量を抑えながら、良好なサージ耐性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の実施の形態におけるバリスタ素子の断面図である。
図2図2は、図1のバリスタ素子における電圧非直線性抵抗体組成物の一部を拡大した断面図である。
図3図3は、本開示の実施の形態におけるバリスタ素子の製造方法を示すフロー図である。
図4図4は、同実施の形態にかかる複数のグリーンシートを得るステップにおける装置の断面図である。
図5図5は、本開示の実施例1における、バリスタ素子の表面積と体積の比と、ロードダンプサージ試験における素子破壊時の波形のトップの電圧との関係を示すグラフである。
図6図6は、本開示の実施例1における、バリスタ素子の表面積と体積の比と、DC印加試験における素子破壊時の電流との関係を示すグラフである。
図7図7は、本開示の実施例2における、L×W×T=3.2×2.5×1.6mmのバリスタ素子4個とL×W×T=3.2×2.5×1.6mmのバリスタ素子4個の連結構成の例を示す斜視図である。
図8図8は、本開示の実施例3における、連結素子を構成する10個の1.6×0.8×0.8mmバリスタ素子のV1mAの変動係数σ/xと耐電流の関係を示すグラフである。
図9図9は、本開示の実施例3における、連結素子を構成する5個の4.5×3.2×2.3mmバリスタ素子のV1mAの変動係数σ/xと耐電流の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下で説明する実施の形態は、いずれも一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態などは、一例であり、本開示にかかる発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。なお、以下では、全ての図を通じて同一または相当する要素には同じ符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0009】
(実施例1)
本開示のバリスタは、素子を複数個連結した構成により、耐性を向上させるものである。すなわち、連結構成をとることにより、従来よりも静電容量(電極面積)を小さくしても、耐性を維持することが可能になる。
【0010】
本開示のバリスタの用途は車載用途など、高エネルギーのサージに対するものである。高エネルギーサージ対策には、例えばサイズとして縦(L)5.7mm、横(W)5.0mm、高さ(T)3.2mm(5.7×5.0×3.0mm)に示す大型の積層バリスタがよく用いられるが、耐性が不十分であることが問題である。例えば、バッテリーラインの断線時に生じるロードダンプサージからエンジン電子制御ユニット(ECU〉を保護するような用途では、保護効果の向上(ISO規格の波形を印加した時の制限電圧の低圧化)に加え、直流(DC)電圧印加時の耐性も要求される。保護効果向上には、バリスタ電圧(V1mA、1mA印加時の電圧)の低下が一般的な施策だが、ロードダンプサージ印加時の電流が増えるため、素子への負荷が増大する。また、DC電圧を印加したときも、電流量が増える。このように、保護効果向上と、ロードダンプサージ・DC耐性はトレードオフの関係になり、両立には課題がある。これまでは、素子を大型化し、積層数や対向する電極の面積を増加させ、電流密度を下げることで耐性の向上を図っていたが、見込まれる効果が得られなかった。この原因として考えられるのが、素子大型化に伴う、放熱性の低下である。そこで、高放熱性を維持し、電極面積を増加させる手法として、小型素子を連結する構成を用いた。なお、以下、縦Lmm、横Wmm、高さTmmのサイズをL×W×Tmmサイズまたは単にL×W×Tと表記する。
【0011】
図1は、実施の形態における積層バリスタの断面図である。
【0012】
バリスタ素子100は、バリスタ層10aと、バリスタ層10aに当接している内部電極11(第1電極)と、バリスタ層10aに当接しバリスタ層10aを介して内部電極11と対向している内部電極12(第2電極)を有する。さらに、バリスタ層10aと同じ材料からなる無効層10bが内部電極11および内部電極12のそれぞれに当接して配置されている。バリスタ層10aと無効層10bとは一体に構成されて素体10を形成する。内部電極11は、素体10に埋設され、一端が素体10の一端面SAに露出し一端面SAで外部電極13と電気的に接続している。内部電極12は、内部電極11に対向し素体10に埋設され、一端が素体10の一端面SAとは反対側の他端面SBに露出して他端面SBで外部電極14と電気的に接続している。
【0013】
なお、本開示のバリスタは、一実施の形態として積層バリスタを例に説明するが、これに限定されるものではなく、異常電圧から電子機器を保護するために用いられる各種バリスタに適用することができる。
【0014】
図2は、図1のバリスタ素子100における素体10の一部を拡大した断面図である。素体10は、主成分として複数の酸化亜鉛粒子10cと、ビスマス元素、コバルト元素、マンガン元素、アンチモン元素、ニッケル元素およびゲルマニウム元素を含む酸化物層10dとからなる。複数の酸化亜鉛粒子10cは、六方晶系からなる結晶構造を有する。酸化物層10dは、複数の酸化亜鉛粒子10c間に介在している。
【0015】
素体10は、複数の酸化亜鉛粒子10cと、複数の酸化亜鉛粒子10c間に介在する酸化物層10dとからなる電圧非直線抵抗体組成物である。
【0016】
バリスタの電圧非直線性について説明する。バリスタは、ある印加電圧値を境に抵抗値が急激に減少する。これによりバリスタは、電圧と電流との間に非直線的な特性を有する。すなわち、印加電圧が低電圧値の領域においてはより高い抵抗値を示し、高電圧値の領域においてはより低い抵抗値を示すバリスタが好ましい。本開示においては、この非直線性を電圧非直線抵抗体組成物に1mAの電流を印加したときの電圧値V1mA(バリスタ電圧)とする。
【0017】
次に、バリスタ素子100の製造方法について説明する。
【0018】
図3は、バリスタ素子100における製造工程を示す製造フロー図である。
【0019】
まず、素体10の出発原料として、酸化亜鉛粉末、酸化ビスマス粉末、酸化コバルト粉末、酸化マンガン粉末、酸化アンチモン粉末、酸化ニッケル粉末および酸化ゲルマニウム粉末を準備する。ここで、酸化亜鉛粉末は、扁平形状を有する。
【0020】
出発原料の配合比は、酸化亜鉛粉末を96.54mol%、酸化ビスマス粉末を1.00mol%、酸化コバルト粉末を1.06mol%、酸化マンガン粉末を0.30mol%、酸化アンチモン粉末を0.50mol%、酸化ニッケル粉末を0.50mol%および酸化ゲルマニウム粉末を0.10mol%である。これらの粉末と、有機バインダとを含むスラリーを準備する。なお、ここでmol%とはモル百分率のことをいう。
【0021】
次に、複数のグリーンシートを得るステップについて詳細に説明する。
【0022】
図4は、複数のグリーンシートを得るステップを模式的に示す装置の断面図である。
【0023】
上述のスラリー20を幅LAとして180μmの隙間からポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルム21上に塗布して乾燥させることで複数のグリーンシートを得る。
【0024】
次に、複数のグリーンシートの所定枚数に銀とパラジウムの合金粉末を含む電極ペーストを所定の形状に印刷し、これら複数のグリーンシートを所定数積層して積層体を得る。
【0025】
次に、この積層体を、複数のグリーンシートの面方向と垂直方向に55MPaで加圧する。この加圧力は、30MPa以上100MPa以下の範囲が好ましい。積層体を30MPa以上の圧力で加圧することで、グリーンシートの密着性が高まり、構造欠陥の無い素子が得られる。積層体を100MPa以下で加圧することで、積層体の内部における電極ペーストの形状を保持し続けることができる。そして、得られた積層体を各素子サイズに切断し、積層体チップを作製する。
【0026】
次に、この積層体チップを850℃で焼成することで、素体10(電圧非直線性抵抗体組成物)と、内部電極11および内部電極12とからなる焼結体を得る。この焼成により、出発原料である複数の酸化亜鉛粉末が、図2に示す複数の酸化亜鉛粒子10cとなり、複数の酸化亜鉛粒子10cの間に酸化物層10dが介在する電圧非直線性抵抗体を得ることができる。
【0027】
次に、素体10の一端面SAと他端面SBとに、銀とパラジウムの合金粉末を含む電極ペーストを塗布し、800℃で熱処理することで、外部電極13および外部電極14を形成する。なお、外部電極13および外部電極14は、めっき法により形成しても良い。また、外部電極13および外部電極14として、電極ペーストを焼成して形成される外部電極と、めっき法により形成される外部電極とを組み合わせても良い。
【0028】
素子サイズの影響のみ検討するため、同一組成の材料を使用し、素子のV1mAが22V(±2V)となるように素体10の厚みを設計、焼成後の材料定数が同じになるよう、焼成条件を決定した。
【0029】
本開示のバリスタ集合体について詳細に説明する。
【0030】
上述した製造方法によって得られたバリスタ素子100を実施例1とし、従来のロードダンプサージ対策用の積層バリスタを比較例1としてそれぞれの耐性を評価した。同等の電流密度での評価を行うため、電極面積が等しくなるよう、各サイズの素子の静電容量から比較例1と同等の静電容量が得られる数量を求め、並列で連結した場合の耐性を評価し比較を行った。表1および表2に実施例1(素子No.1~6)および比較例1(素子No.1、2)の素子のサイズ、連結構成を示す。表1は実施例1における連結素子に使用したバリスタ素子の仕様と連結構成を示す表である。表2は、実施例1における連結素子に使用したバリスタ素子の連結時の静電容量とロードダンプサージ耐性及び耐電流の関係を示す表である。各素子サイズとその6面の表面積を合算した値をS、体積Vとする。S、Vとも、外部電極を含まない。S/Vは各素子サイズにおける体積と素子表面積の比を表現するものである。サージ耐量はISO7637-2で規格されるロードダンプサージ波形を用い、制限電圧と耐電流を測定することにより評価した。また、DC電圧の耐性についても耐電流(熱暴走が開始する電流)を測定した。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
図5はS/Vとロードダンプサージ耐性の関係である。Usはサージ波形のトップの電圧であり、各素子の破壊時の電圧値を用いた。ロードダンプサージ耐性は、ISO7637-2で定められる条件において、DC=14V、Ri=0.5Ω、td=0.2秒(sec)、インターバル1分(min)で行い、10回印加し破壊されなかった場合、耐久と判断した。表1に示すように、素子の小型化に伴い、S/Vは増加することがわかる。図5からも明らかなように、S/Vが増加すると、破壊電圧が大きくなり、耐性が向上する。S/V≧1.9の素子を2個以上連結した場合、連結時の比較例1-1および1-2よりも静電容量(電極面積)が小さい構成でも、ロードダンプサージ耐性の向上効果が得られる。以下、S/V≧1.9mm-1の素子を第1グループバリスタ素子という。なお、素子No.1~4は耐性が非常に強く、Us=100Vを10回印加しても破壊されなかった(図5中に白抜きで示す)。比較例1と同等の電極面積で、40%以上の耐量向上が実現可能である。これは、セラミック素体に対する表面積の比率が増加したことにより、サージが印加されたときのジュール熱を放熱しやすくなった効果と考えられる。このように、放熱性が高い構成をとることにより、サージ耐性が大幅に向上する。また、実用途において、Us=87V印加でも破壊されなければ、8Wツェナーダイオードと同等の耐量が実現できる。すなわち、4.5×3.2×2.3mmサイズの素子を5個並列接続させたバリスタ集合体の構成の破壊電圧はUs=90Vであり、実用途に適用可能であることがわかる。また、小型素子連結により同等の電極面積で28.5%の耐性向上が確認されている。つまり、現行のものよりも電極面積を減少させても、同等の耐性を得ることが可能である。これは、素子の低静電容量化につながる効果であり、高周波回路などへも応用可能な手法である。連結構造により、単一素子では困難な耐性を達成できることがわかる。なお、L×W×Tmmサイズの素子をn個並列接続させたバリスタ集合体を、L×M×Tmmサイズ×n個と表記する。なお、以下、並列接続を単に連結と呼ぶことがある。
【0034】
また本実施例の結果から、各素子に形成可能な電極面積と、印加させる異常電圧(ロードダンプサージ)のエネルギーとを考慮すると、連結素子数は5個以上(4.5×3.2×2.3mmサイズの結果から)、実用的な実装面積を考慮し、200個以下(1.6×0.8×0.8mmサイズの結果から)が好ましい。
【0035】
次に表1および表2に記載のDC電圧試験における、比較例1と実施例1(素子No.1~6、比較例1の容量相当になるよう素子を連結)、の耐電流の結果について述べる。図6がDC電圧試験時の耐電流への素子表面積の影響を示したものである。ロードダンプサージ耐性と同様に、DC耐性もS/Vが増加により改善することが確認された。DC電圧による破壊も熱損傷によるものであり、放熱性の高い構成をとることが、耐性向上に高い効果を示すことがわかる。例えば、比較例1-1(5.7×5.0×3.0mmサイズ×1個)に対し、実施例1-5(4.5×3.2×2.3mmサイズ×5個)は耐電流が0.1Aから0.72Aまで、実施例1-6(5.7×5.0×2.0mmサイズ×2個)は0.1Aから0.65Aまで向上する。以上のようにS/V≧1.9mm-1の素子を2個連結させることによりロードダンプサージ耐性を向上させる効果が得られるが、制限電圧をさらに下げるためには5個以上の連結を行う方がより好ましい。すなわち、第1グループバリスタ素子の連結数をn1とすると、2≦n1が好ましく、5≦n1がさらに好ましい。なお、第1グループバリスタ素子の連結数の上限は、実用的な実装面積を考慮した場合200個である。すなわち、第1グループバリスタ素子の好ましい連結数n1は、実用的な実装面積を考慮した場合、n1≦200である。
【0036】
また、S/Vが2.7mm-1以上の素子を用いると、ロードダンプサージおよびDC耐性がともに著しく向上しており、放熱性による耐性向上において急激に効果が得られる構成であるといえる。
【0037】
(実施例2)
S/Vの値が異なる素子を複数連結させることにより、さらに耐性を向上させることができる。この構成により電極面積を縮小させることができ、連結素子の低静電容量化、小型化の効果が得られる。表3、表4に実施例1、実施例および比較例の試験素子の構成と連結素子の静電容量と電極面積、およびDC試験の結果(耐電流と耐電流密度)を示す。表3は実施例1および実施例2における連結素子に使用したバリスタ素子の仕様と、連結時の静電容量、電極面積、耐電流、耐電流密度、ロードダンプサージ耐性を示す表である。表4は比較例における連結素子に使用したバリスタ素子の仕様と、連結時の静電容量、電極面積、耐電流、耐電流密度、ロードダンプサージ耐性を示す表である。比較例において、比較例1-1はL×W×T=5.7×5.0×3.0の単一素子、比較例1-2はL×W×T=5.7×5.0×2.0の素子を二つ連結した結果である。それに対し、実施例1においては実施例1-5(実施例1の番号No.5にかかる素子、L×W×T=4.5×3.2×2.3の素子を5個連結)を採用した。実施例2においては、実施例2-1としてL×W×T=4.5×3.2×2.3の素子4個とL×W×T=3.2×2.5×1.6の素子4個を連結した素子を採用した。実施例2-2として、L×W×T=5.7×5.0×2.0の素子1個にL×W×T=3.2×2.5×1.6の素子8個連結した素子を採用した。実施例2-3として、L×W×T=4.5×3.2×2.3の素子3個とL×W×T=3.2×2.5×1.6の素子を4個連結した素子を採用した。これら実施例の素子と比較例の素子との結果を記載する。
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
実施例2-1、実施例2-2の結果から、静電容量が同等(ただし、比較例1-1の静電容量以下)、すなわち、電極面積が同等でも、S/V<1.9mm-1の小型の素子を構成に組み込むと、耐電流密度が約50%向上することがわかる。以下、S/V<1.9mm-1の素子を第2グループバリスタ素子という。また、実施例2-3の結果から、素子数を減らし、静電容量が18%減少しても、比較例1-1、比較例1-2よりも耐電流密度とロードダンプサージ耐性が向上することがわかった。サイズの異なる素子を組み合わせることにより、耐性の向上および、連結素子数を少なくすることが可能になる。これは、放熱性のよい小型の素子を組み込んだことで、連結素子全体の放熱性が向上した効果が得られたためと考えられる。このように、小型の素子との連結により、大型素子の耐性は向上するが、5.7×5.0×3.0mmサイズのように大きく、1素子あたりの静電容量が40nF前後の大きな素子を連結については、連結時の静電容量を考慮すると、小型の素子の連結数は1個以上5個以下が好ましい。すなわち、第2グループバリスタ素子の連結数をn2とすると、1≦n2≦5であることが好ましい。
【0041】
さらに、階段状に素子を積み上げた形状の実装が可能になるため、スタック構造や、密着させた位置での実装形式においても、同サイズ素子を組み合わせるよりも放熱性が高く、耐性向上が可能になる。また、実装時は素子をスタックするだけでなく、図7のように、電極形成面をL×W×T=4.5×3.2×2.3の素子はL×T面、L×W×T=3.2×2.5×1.6の素子はW×T面にして、連結素子の幅を合わせて連結電極15で連結しても良い。このようにすることにより、形状が異なっても1個のスタック構造とすることができる。なお、スタック構造のみならず、用途に合わせ、単一素子をそれぞれ並列に連結させることも可能である。
【0042】
(実施例3)
連結する場合の各素子の特性の範囲について述べる。連結時の素子の特性分布については、連結する素子のV1mAの標準偏差σとV1mAの平均値xの比である変動係数σ/xを用いた。1.6×0.8×0.8mmの素子について、V1mAのσ/x=0.006~0.058の範囲になるよう、10個ずつ選別を行い、連結した場合について、V1mAの変動係数σ/xを算出し、連結時の耐電流を評価した。その結果を図8に示す。σ/x>0.035で耐電流が40%低下していることがわかる。それに対し、σ/x≦0.035では耐電流の変化はほぼない。また図9は4.5×3.2×2.3mmの素子を5個連結したときの結果である(σ/x=0.005~0.075)。こちらもσ/x>0.07で約30%の耐電流低下が認められた。他サイズの素子でも、V1mAの改善による耐電流の向上は飽和し、同様の結果が得られており、バリスタ電圧の分布を0.035以下にすれば、耐性への影響はないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本開示のバリスタ集合体は、静電容量を抑えながら、良好なサージ耐性を実現することができ有用である。
【符号の説明】
【0044】
100 バリスタ素子
10 素体
10a バリスタ層
10b 無効層
11 内部電極
12 内部電極
13 外部電極
14 外部電極
15 連結電極
10c 酸化亜鉛粒子
10d 酸化物層
20 スラリー
21 フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9