(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】半導体レーザ装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/022 20210101AFI20240104BHJP
【FI】
H01S5/022
(21)【出願番号】P 2022505098
(86)(22)【出願日】2021-02-16
(86)【国際出願番号】 JP2021005592
(87)【国際公開番号】W WO2021177017
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2023-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2020038415
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】菱田 光起
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/063436(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0364901(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に挟持される半導体レーザダイオードと、
前記半導体レーザダイオードからのレーザ光の出射方向側に配置される光学部品と、
前記光学部品を固定する固定部品と、
前記固定部品と前記第1の電極との間に介在する接着部と、を備え、
前記固定部品は、前記第1の電極の前記レーザ光が出射する側面において、前記第1の電極と接着されており、
前記固定部品は前記側面を露出させる貫通孔を有する、半導体レーザ装置。
【請求項2】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に挟持される半導体レーザダイオードと、
前記半導体レーザダイオードからのレーザ光の出射方向側に配置される光学部品と、
前記光学部品を固定する固定部品と、
前記固定部品と前記第1の電極との間に介在する接着部と、を備え、
前記固定部品は、前記第1の電極の前記レーザ光が出射する側面において、前記第1の電極と接着されており、
前記固定部品は、前記第1の電極の前記側面に対向する前記固定部品の主面と連接する側面に、前記第1の電極の前記側面を露出させるように前記出射方向に延びるスリットを有する、半導体レーザ装置。
【請求項3】
前記貫通孔の少なくとも一部に前記接着部が充填されている、請求項
1に記載の半導体レーザ装置。
【請求項4】
前記スリットの少なくとも一部に前記接着部が充填されている、請求項
2に記載の半導体レーザ装置。
【請求項5】
前記第1の電極の前記側面に対向する前記固定部品の主面に、
前記貫通孔に連通する溝を有し、
前記溝に、前記接着部が充填されている、請求項
1または3に記載の半導体レーザ装置。
【請求項6】
前記第1の電極の前記側面に対向する前記固定部品の主面に、
前記スリットに連通する溝を有し、
前記溝に、前記接着部が充填されている、請求項
2または4に記載の半導体レーザ装置。
【請求項7】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に挟持される半導体レーザダイオードと、
前記半導体レーザダイオードからのレーザ光の出射方向側に配置される光学部品と、
前記光学部品を固定する固定部品と、
前記固定部品と前記第1の電極との間に介在する接着部と、を備え、
前記固定部品は、前記第1の電極の前記レーザ光が出射する側面において、前記第1の電極と接着されており、
前記第1の電極の前記側面に平行であって、且つ、前記半導体レーザダイオードの厚み方向に垂直な幅方向において、前記固定部品の前記幅方向の長さは、前記光学部品の前記幅方向の長さよりも短く、
前記接着部は、前記第1の電極の前記側面に対向する前記固定部品の主面に連接する前記固定部品の側面を覆っている、半導体レーザ装置。
【請求項8】
前記接着部は、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂の硬化物を含む、
請求項1~
7のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項9】
第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に挟持される半導体レーザダイオードと、前記半導体レーザダイオードからのレーザ光の出射方向側に配置される光学部品と、を備える半導体レーザ装置の製造方法であって、
第1の主面から前記第1の主面に対向する第2の主面まで貫通する貫通孔、または、前記第1の主面と前記第2の主面とを連接する側面に設けられ、前記第1の主面から前記第2の主面まで延びるスリットを有し、且つ前記光学部品が固定されている固定部品を準備する工程と、
前記光学部品が前記半導体レーザダイオードに対向するように、前記固定部品の前記第1の主面を前記第1の電極の前記レーザ光が出射する側面と対向させる工程と、
前記半導体レーザダイオードに前記レーザ光を出射させながら、前記光学部品の前記半導体レーザダイオードに対する相対位置を位置決めする工程と、
前記位置決め後に、前記貫通孔または前記スリットを介して前記第1の主面と前記第1の電極の前記側面との間に接着剤を流し入れる工程と、
前記接着剤を硬化させ、接着部を形成する工程と、を有する、半導体レーザ装置の製造方法。
【請求項10】
第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に挟持される半導体レーザダイオードと、前記半導体レーザダイオードからのレーザ光の出射方向側に配置される光学部品と、を備える半導体レーザ装置の製造方法であって、
前記光学部品が固定されている固定部品を準備する工程と、
前記光学部品が前記半導体レーザダイオードに対向するように、前記固定部品の第1の主面を前記第1の電極の前記レーザ光が出射する側面と対向させる工程と、
前記半導体レーザダイオードに前記レーザ光を出射させながら、前記光学部品の前記半導体レーザダイオードに対する相対位置を位置決めする工程と、
前記位置決め後に、前記固定部品の前記第1の主面と前記第1の電極の前記側面との間に接着剤を流し入れるとともに、前記固定部品の前記第1の主面に連接する前記固定部品の側面に前記接着剤を付着させる工程と、
前記接着剤を硬化させ、接着部を形成する工程と、を有し、
前記第1の電極の前記側面に平行であって、且つ、前記半導体レーザダイオードの厚み方向に垂直な幅方向において、前記固定部品の前記幅方向の長さは、前記光学部品の前記幅方向の長さよりも短い、半導体レーザ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体レーザ装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザ装置は、通常、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に挟持される半導体レーザダイオードと、を備え、レーザ光を所定の方向に向けて出射する。半導体レーザダイオードから出射されるレーザ光は、一般にビーム幅の広がりが大きいため、レーザ光の出射位置に近接してコリメートレンズが設けられる(例えば、特許文献1参照)。コリメートレンズは、例えば固定部品に取り付けられ、例えば固定部品を第1の電極に接着固定することによって、レーザ光の出射位置に対するコリメートレンズの相対的な位置が固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/063436号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体レーザダイオードは、通常、第1の電極または第2の電極とはんだにより固定される。これにより、半導体レーザダイオードが第1の電極と第2の電極との間に挟持されるように固定され得る。このとき、半導体レーザダイオードが第1の電極または第2の電極に対して僅かに傾いた状態で固定される場合がある。結果として、レーザ光の出射位置にずれが生じたり、出射方向が想定される所定の方向から傾いたりする場合がある。また、半導体レーザダイオードのチップの反りにより、レーザ光の出射方向が所定の方向から僅かに傾く場合もある。
【0005】
レーザ光の出射方向に応じて、コリメートレンズの第1の電極に対する相対的な取り付け位置が調整され得る。調整された取り付け位置に基づいて、固定部品が第1の電極と接着される。接着には、紫外線硬化樹脂が一般的に用いられている。接着剤は、通常、光学部品の幅方向(半導体レーザダイオードのチップ面に平行な方向)からみて中央付近に位置する固定部品の主面に、複数設けられ得る。
【0006】
取り付け位置の調整は、レーザ光を出射させながら行われる。通常、接着による固定の前に、レーザ光を出射させながら第1の電極に対する固定部品の相対位置を大まかに決定する。その後、固定部品に接着樹脂を付着して、同様にレーザ光を出射させながら第1の電極に対する固定部品の相対位置を確定させ、確定位置に接着固定する。
【0007】
この場合、固定部品の相対位置を確定させるときに、硬化処理前の接着樹脂にレーザ光が照射される場合がある。硬化処理前の接着樹脂にレーザ光が照射されることで、接着樹脂が劣化し、接着強度が低下し得る。さらに、青色発光の半導体レーザダイオードを用いた半導体レーザ装置では、接着剤として紫外線硬化樹脂を用いる場合であっても、青色レーザ光の照射により接着樹脂が反応して硬化が進行する場合があり、接着固定が困難になる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記に鑑み、本開示の一側面は、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に挟持される半導体レーザダイオードと、前記半導体レーザダイオードからのレーザ光の出射方向側に配置される光学部品と、前記光学部品を固定する固定部品と、前記固定部品と前記第1の電極との間に介在する接着部と、を備え、前記固定部品は、前記第1の電極の前記レーザ光が出射する側面において、前記第1の電極と接着されており、前記固定部品は前記側面を露出させる貫通孔を有する、半導体レーザ装置に関する。
【0009】
本開示の他の側面は、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に挟持される半導体レーザダイオードと、前記半導体レーザダイオードからのレーザ光の出射方向側に配置される光学部品と、前記光学部品を固定する固定部品と、前記固定部品と前記第1の電極との間に介在する接着部と、を備え、前記固定部品は、前記第1の電極の前記レーザ光が出射する側面において、前記第1の電極と接着されており、前記固定部品は、前記第1の電極の前記側面に対向する前記固定部品の主面と連接する側面に、前記第1の電極の前記側面を露出させるように前記出射方向に延びるスリットを有する、半導体レーザ装置に関する。
【0010】
本開示のさらに他の側面は、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に挟持される半導体レーザダイオードと、前記半導体レーザダイオードからのレーザ光の出射方向側に配置される光学部品と、前記光学部品を固定する固定部品と、前記固定部品と前記第1の電極との間に介在する接着部と、を備え、前記固定部品は、前記第1の電極の前記レーザ光が出射する側面において、前記第1の電極と接着されており、前記第1の電極の前記側面に平行であって、且つ、前記半導体レーザダイオードの厚み方向に垂直な幅方向において、前記固定部品の前記幅方向の長さは、前記光学部品の前記幅方向の長さよりも短く、前記接着部は、前記第1の電極の前記側面に対向する前記固定部品の主面に連接する前記固定部品の側面を覆っている、半導体レーザ装置に関する。
【0011】
本開示のさらに他の側面は、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に挟持される半導体レーザダイオードと、前記半導体レーザダイオードからのレーザ光の出射方向側に配置される光学部品と、を備える半導体レーザ装置の製造方法であって、第1の主面から前記第1の主面に対向する第2の主面まで貫通する貫通孔、または、前記第1の主面と前記第2の主面とを連接する側面に設けられ、前記第1の主面から前記第2の主面まで延びるスリットを有し、且つ前記光学部品が固定されている固定部品を準備する工程と、前記光学部品が前記半導体レーザダイオードに対向するように、前記固定部品の前記第1の主面を前記第1の電極の前記レーザ光が出射する側面と対向させる工程と、前記半導体レーザダイオードに前記レーザ光を出射させながら、前記光学部品の前記半導体レーザダイオードに対する相対位置を位置決めする工程と、前記位置決め後に、前記貫通孔または前記スリットを介して前記第1の主面と前記第1の電極の前記側面との間に接着剤を流し入れる工程と、前記接着剤を硬化させ、接着部を形成する工程と、を有する、半導体レーザ装置の製造方法に関する。
【0012】
本開示のさらに他の側面は、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に挟持される半導体レーザダイオードと、前記半導体レーザダイオードからのレーザ光の出射方向側に配置される光学部品と、を備える半導体レーザ装置の製造方法であって、前記光学部品が固定されている固定部品を準備する工程と、前記光学部品が前記半導体レーザダイオードに対向するように、前記固定部品の第1の主面を前記第1の電極の前記レーザ光が出射する側面と対向させる工程と、前記半導体レーザダイオードに前記レーザ光を出射させながら、前記光学部品の前記半導体レーザダイオードに対する相対位置を位置決めする工程と、前記位置決め後に、前記固定部品の前記第1の主面と前記第1の電極の前記側面との間に接着剤を流し入れるとともに、前記固定部品の前記第1の主面に連接する前記固定部品の側面に前記接着剤を付着させる工程と、前記接着剤を硬化させ、接着部を形成する工程と、を有し、前記第1の電極の前記側面に平行であって、且つ、前記半導体レーザダイオードの厚み方向に垂直な幅方向において、前記固定部品の前記幅方向の長さは、前記光学部品の前記幅方向の長さよりも短い、半導体レーザ装置の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、半導体レーザ装置への光学部品の接着強度の低下が抑制され、信頼性の高い半導体レーザ装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る半導体レーザ装置の概略構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係る半導体レーザ装置の概略構成を模式的に示す側面図である。
【
図3】
図3は、本開示の他の実施形態に係る半導体レーザ装置の概略構成を模式的に示す斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、固定部品を第1の電極に接着固定する方法を説明する図である。
【
図4B】
図4Bは、固定部品を第1の電極に接着固定する方法を説明する図である。
【
図4C】
図4Cは、固定部品を第1の電極に接着固定する方法を説明する図である。
【
図5】
図5は、本開示の他の実施形態に係る半導体レーザ装置の概略構成を模式的に示す、要部を拡大した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態に係る半導体レーザ装置は、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に挟持される半導体レーザダイオード(以下において、単に「LD」とも称する)と、LDからのレーザ光の出射方向側に配置される光学部品と、光学部品を固定する固定部品と、固定部品と第1の電極との間に介在する接着部と、を備える。固定部品は、第1の電極のレーザ光が出射する側面において、接着部により第1の電極と接着されている。
【0016】
第1の態様において、固定部品は第1の電極の上記側面を露出させる貫通孔を有する。貫通孔を介して、接着剤を第1の電極の側面と上記側面に対向する固定部品の主面との間の隙間に流し入れ、および/または、第1の電極の露出した側面と貫通孔の内壁との間に接着剤を介在させることによって、接着部により固定部品を第1の電極に固定することができる。
【0017】
よって、貫通孔の少なくとも一部には、接着部が充填され得る。これにより、固定部品と第1の電極とが接着され得る。接着剤は、例えば紫外線硬化樹脂などの接着樹脂を用いることができる。接着剤は、熱硬化樹脂であってもよい。接着樹脂を硬化させ、接着部が形成される。
【0018】
第2の態様において、固定部品は、第1の電極の側面を露出させるように、レーザ光の出射方向に延びるスリットを有してもよい。スリットは、第1の電極の上記側面に対向する固定部品の主面と連接する側面に設けられる。これにより、スリットを介して、接着剤を第1の電極の側面と固定部品の主面との間の隙間に流し入れ、および/または、第1の電極の露出した側面とスリットの側壁との間に接着剤を介在させることによって、接着剤を硬化させて接着部を形成し、接着部により固定部品を第1の電極に固定することができる。スリットの少なくとも一部には、接着部が充填され得る。貫通孔およびスリットは、少なくとのいずれか一方を固定部品に設ければよく、両方設けてもよい。
【0019】
第1の電極の側面に対向する固定部品の主面に、貫通孔および/またはスリットに連通する溝を有してもよい。貫通孔および/またはスリットを介して溝に接着剤を流し込んで、第1の電極の側面と固定部品の主面との間を接着することができ、接着による固定を強固にできる。
【0020】
貫通孔および/またはスリットを介して接着固定を行うことにより、固定部品の取り付け位置を仮決めした後、接着樹脂を付着させた状態で取り付け位置を確定させるといった二段階の位置決め工程を経ることなく、取り付け位置の決定を一回で行うことができる。この場合、接着固定に先立って接着樹脂にレーザ光が照射されることがないため、接着樹脂が劣化するのを抑制できる。また、接着に先立って接着樹脂が硬化してしまうのを抑制できる。
【0021】
また、貫通孔またはスリットを設ける代わりに、固定部品の第1の電極の上記側面に平行で且つ半導体レーザダイオードの厚み方向(すなわち、半導体レーザダイオードのチップ面に平行な方向)に垂直な幅方向のサイズを小さくしてもよい。これにより、第1の電極の側面と固定部品の主面との間の隙間に接着剤を流し込み、接着を行うことができる。このとき、接着部は固定部品の主面に連接する側面を覆うように形成され得る。これにより、接着固定を強固にできる。
【0022】
図1及び
図2は、本実施形態に係る半導体レーザ装置100の概略の構成を模式的に示す図である。なお、
図1は固定部品および光学部品が取り付けられていない状態の斜視図であり、
図2は固定部品および光学部品が取り付けられた状態の側面図である。
【0023】
半導体レーザ装置100は、第1の電極(上部電極)11、第2の電極(下部電極)12、固定部品13、LD15、および、光学部品16を備える。光学部品16は、固定部品13の下方にあって、固定部品13に固定されている。
【0024】
第1の電極11は、LD15からのレーザ光が出射される側面S1を有する。側面S1は、固定部品13の主面S2と対向している。側面S1と主面S2とが接着されることによって、固定部品13が第1の電極11に固定され、LD15に対する光学部品16の相対位置が固定される。
【0025】
固定部品13には、貫通孔17が形成されている。貫通孔17は、固定部品13の主面S2から、主面S2と反対側の主面S3まで、を貫通している。貫通孔17により、固定部品13が接着されない状態では、側面S1の一部が露出している。接着された状態では、
図2に示すように、側面S1の露出部分は接着部14で覆われ、貫通孔17の少なくとも一部が、接着部14で充填され得る。接着部14は、本実施形態において、貫通孔17を介して接着剤(例えば、接着樹脂)を流し入れ、接着剤を硬化させることにより形成され得る。
【0026】
第1の電極11の側面S1と固定部品13の主面S2との間には、通常、僅かな隙間があり、接着剤は、毛細管現象により隙間に侵入し得る。しかしながら、隙間の離間距離のばらつきが大きいことから、隙間への侵入量のばらつきも大きくなる。また、固定部品13の周囲からしか接着できないため、固定部品13のサイズが大きい場合、接着される場所が制限される。このため、単に隙間に接着剤を介在させるだけでは、高い接着強度が得られない場合がある。これに対し、本実施形態では、貫通孔17を埋めるように接着剤を流し入れ、接着部14を形成することで、側面S1の露出部分の面積、および、貫通孔17の内壁の面積により接着力が担保され、安定的に高い接着強度を維持できる。
【0027】
主面S2には、貫通孔17に連通する溝18が設けられていてもよい。貫通孔17を介して、接着剤がキャピラリー効果などによって溝18に流れ込む。結果、溝18は、貫通孔17と同様、接着部14で充填され得る。これにより、より高い接着強度が得られる。
【0028】
溝18は、鉛直方向(第2の電極12から第1の電極11に向かう方向)に延びるように形成されていてもよく、水平方向に延びるように形成されていてもよい。溝18は、貫通孔17を中心として放射形状に形成されていてもよい。
【0029】
貫通孔17は、接着剤を流し入れ易くする観点から、主面S2側よりも主面S3側において孔の面積を大きくしてもよい。貫通孔17の断面形状は、テーパ形状であってもよい。
【0030】
貫通孔17は、主面S2上に1つ設けられていてもよく、複数設けられていてもよい。しかしながら、貫通孔17が複数(好ましくは、3個以上)設けられていると、半導体レーザ装置100に外力が加えられた場合においても固定部品13の移動を接着部14により制限し易く、固定部品13の位置を一定に維持することが容易である。
【0031】
図3は、本実施形態に係る半導体レーザ装置101の概略の構成を模式的に示す図であり、固定部品および光学部品が取り付けられていない状態の斜視図である。
図3に示す半導体レーザ装置101は、
図1に示す半導体レーザ装置100において、貫通孔17に代えて固定部品13の側面にスリット19を設けている。
【0032】
スリット19は、固定部品13の主面S2と、主面S2と反対側の主面S3と、を連接する側面S4に設けられ、主面S2から主面S3まで延びている。スリット19により、固定部品13が接着されない状態では、側面S1の一部が露出する。
図1に示す半導体レーザ装置100と同様、露出部分を介して、第1の電極11の側面S1と固定部品13の主面S2との間に接着樹脂を流し入れ硬化させることで、接着部14を形成することができる。接着部14は、第1の電極11の側面S1の露出部分、および、スリット19の側壁を構成する固定部品13の側面S4を覆うように形成され得る。これにより、側面S1の露出部分の面積、および、スリット19の側壁の面積により接着力が担保され、安定的に高い接着強度を維持できる。
【0033】
本実施形態に係る半導体レーザ装置の製造方法は、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に挟持される半導体レーザダイオードと、半導体レーザダイオードからのレーザ光の出射方向側に配置される光学部品と、を備える半導体レーザ装置の製造方法であって、下記の工程を有する:
(i)第1の主面から第1の主面に対向する第2の主面まで貫通する貫通孔、または、第1の主面と第2の主面とを連接する側面に設けられ、第1の主面から第2の主面まで延びるスリットを有し、且つ光学部品が固定されている固定部品を準備する工程、
(ii)光学部品が半導体レーザダイオードに対向するように、固定部品の第1の主面を第1の電極のレーザ光が出射する側面と対向させる工程と、
(iii)半導体レーザダイオードにレーザ光を出射させながら、光学部品の半導体レーザダイオードに対する相対位置を位置決めする工程と、
(iv)位置決め後に、貫通孔またはスリットを介して第1の主面と第1の電極の上記側面との間に接着剤を流し入れる工程と、
(v)接着剤を硬化させ、接着部を形成する工程。
【0034】
以下に、
図4A~
図4Cを参照して、本実施形態において、光学部品を備えた半導体レーザ装置を製造する方法を説明する。
図4A~
図4Cは、製造方法のうち、特に、光学部品が固定された固定部品を第1の電極に接着固定する工程(工程(ii)~工程(v))を示す図である。なお、
図4A~
図4Cでは、固定部品13、光学部品16、および第1の電極11の固定部品13側の一部分を拡大して示し、第1の電極11の下方に存在するLD15、および、LD15の下方に存在する第2の電極12の表示を省略している。
【0035】
図4Aに示すように、光学部品16が固定された固定部品13を、固定部品13の主面S2が第1の電極11の側面S1と対向するように配置する。固定部品13は、主面S2と、主面S2に対向する主面S3との間を貫通する貫通孔17が設けられている。光学部品16は、主面S2およびS3と交差する別の主面に取り付けられ、固定部品13に固定され得る。
【0036】
次に、LD15からレーザ光を出射させた状態で、固定部品13(および、光学部品16)を移動させながら、光学部品16を通過したレーザ光が所定の方向を向くように、光学部品16のLD15に対する相対位置を位置決めする。位置決めにより、固定部品13の側面S1における位置、側面S1と主面S2との離間距離、側面S1と主面S2とのなす角が決まる。
【0037】
次に、
図4Bに示すように、主面S3の側から、貫通孔17を介して接着剤20を側面S1と主面S2との間に流し入れる。このとき、接着剤20は、貫通孔17を介して露出する第1の電極11の側面S1を覆うように側面S1に付着し、貫通孔17の少なくとも一部が接着剤で埋められ得る。接着剤20は、例えば、接着樹脂である。接着剤20の一部は、貫通孔17よりも外周に位置する側面S1と主面S2との隙間にも侵入し得る。
【0038】
その後、接着剤20を硬化させ、接着部14を形成することで、
図4Cに示すように、光学部品16が第1の電極11に固定される。なお、上記方法は固定部品13に貫通孔17を設けた場合の一例であるが、固定部品13にスリット19を設けた場合についても、同様の方法で固定部品の接着固定を行うことができる。
【0039】
上記実施形態において、貫通孔17またはスリット19を設ける代わりに、光学部品のサイズを小さくしてもよい。
図5は、本開示の他の実施形態に係る半導体レーザ装置102の概略の構成を模式的に示す図であり、固定部品13および光学部品16が取り付けられた状態で、第1の電極11の側面S1の周辺を拡大して示す斜視図である。
【0040】
図5の例では、第1の電極11の側面S1に平行であって、且つ、LD15(不図示)の厚み方向に垂直な幅方向において、固定部品13の長さを光学部品16よりも短くしている。これにより、接着部14を、幅方向(LD15のチップ面に平行な方向)からみて光学部品16の中央付近となる位置に形成することができる。接着部14は、第1の電極11の側面S1に付着するほか、側面S1に対向する固定部品13の主面に連接する側面S4の一部を覆うように付着し得る。この場合、側面S1を覆う接着部14の面積、および、側面S4を覆う接着部14の面積により接着力が担保され、安定的に高い接着強度を維持できる。
【0041】
図5に示す半導体レーザ装置102は、例えば、
図4A~
図4Cに示す製造方法において、上記幅方向における長さが光学部品16よりも短い固定部品13を用いて、側面S4の側から、接着剤20を側面S1と主面S2との間に流し入れる、または側面S1と主面S2の側面S4とを跨ぐように接着させる(
図4B)ことで製造できる。このとき、接着剤20は側面S4の一部を覆うように連続して付着し得る。その後、接着剤を硬化させ、接着部14を形成する(
図4C)ことで、
図5に示す半導体レーザ装置102が得られる。
【0042】
以下、本実施形態に係る半導体レーザ装置の構成要素について、詳細に説明する。しかしながら、本開示は下記の構成に限定されるものではない。
【0043】
(半導体レーザダイオード(LD))
LD15は、レーザ光を生成する。LD15は、例えば、チップ形状をしたLDチップである。LDチップとしては、端面発光型(EEL:Edge Emitting Laser)のLDチップが好ましく用いられる。端面発光型のLDチップでは、例えば、長尺のバー形状の光共振器が、チップ内において基板面と平行に形成されている。共振器の長手方向の一方の端面は光が殆ど反射するように高反射率の膜で覆われている。一方、共振器の長手方向の他方の端面も高反射率の膜で覆われているが、反射率は一方の端面に設けられた反射膜よりも小さい。よって、両端面からの反射により増幅され位相の揃ったレーザビームが他方の端面から出射される。
【0044】
LDチップ内に共振器が複数設けられる場合、レーザビームは、他方の端面の複数の箇所から出射され得る。この場合、LDは複数の発光点を有し得る。発光点は、共振器の他方の端面であるチップの端面に沿って、一次元的に整列し得る。しかしながら、本開示は発光点の数に限定されるものではない。
【0045】
(固定部品)
固定部品13は、ホルダーブロックとも呼ばれ、光学部品16を固定している。例えば、光学部品16は、UV硬化樹脂などの接着材を用いて、固定部品13に接着により取り付けられ得る。固定部品13の材質は、例えば、石英ガラスである。
【0046】
(接着部)
接着部14は、例えばUV硬化樹脂等の樹脂材料である。接着部14の厚みは、例えば5μm~200μmであってもよい。接着部14の厚みが5μm以上であれば、接着部14を介して、光学部品16が固定された固定部品13を十分な強度で第1の電極11に取り付けることができる。また、接着部14の厚みを200μm以下とすることで、固定部品13の第1の電極11に対する位置決めを精度よく行うことができる。接着部14の厚みは、70μm~120μmであってもよい。
【0047】
なお、接着部14の厚みは、平均の厚みを意味する。
【0048】
(光学部品)
光学部品16は、例えば、コリメートレンズ16aを含む。
【0049】
LD15から出射されるレーザ光は、伝播に伴い拡散し、ビーム幅が広がる。コリメートレンズ16aは、LD15から出射されたレーザ光を所定の第1方向に平行光化する。すなわち、コリメートレンズ16aは、LD15から出射されたレーザ光の第1方向におけるビーム幅の拡大を抑制し、第1方向におけるビーム幅が略一定になるようにレーザ光を平行光化する。第1方向は、ビーム幅の広がりが最も大きくなる方向であってもよい。
【0050】
第1方向は、例えば、LDチップの基板面に垂直な方向である。LDチップの基板面に垂直な方向は、一般に、LDチップから発するレーザ光の速軸の方向であり得る。これに対し、LDチップの基板面に平行で且つ光が出射される端面に沿う方向は、一般に、LDチップから発するレーザ光の遅軸の方向であり得る。
【0051】
光学部品16は、コリメートレンズ16aを透過したレーザ光を回転させる回転素子16bを含んでいてもよい。なお、上記において、「光を回転させる」とは、光(ビーム)の伝播方向に垂直な面における断面形状を回転させることを意味する。
【0052】
LD15が複数の発光点を有するLDチップである場合、発光点に対応する複数のレーザ光が生成および出射され、伝播に伴い拡散し、ビーム幅が広がる。コリメートレンズ16aが、例えばレーザ光をLDチップの基板面に垂直な方向(第1方向)において平行光化するものである場合、コリメートレンズ16aを介したレーザ光は、基板面に垂直な方向のビーム幅は略一定となっているが、基板面に平行で且つ端面に沿う方向(すなわち、複数の発光点の整列方向)のビーム幅は広がったままである。すなわち、コリメートレンズ16aを通過後のレーザ光のビーム形状は、第1方向を短軸とする扁平な形状(例えば、楕円または方形)であり得る。
【0053】
回転素子16bは、例えば、楕円形状のビームの長軸方向と基板面とのなす角が直角に近づくように(短軸方向と基板面とのなす角が0°に近づくように)、発光点の異なるレーザ光のそれぞれについて、楕円形状のビームを回転させる。例えば、第1方向がLDチップの基板面に垂直な方向である場合、レーザ光は回転素子16bによって90°回転され得る。これにより、発光点の異なるレーザ光のビーム同士の重なりが低減されるように、それぞれのレーザビームの断面形状が回転する。これにより、高出力のレーザビームが得られる。
【0054】
さらに、半導体レーザ装置100に近接して、光学部品16から離間した位置に、光学部品16を介したレーザ光を第2方向に平行光化する別のコリメートレンズを配してもよい。これにより、第2方向におけるビーム幅が略一定となるように、レーザ光が平行光化され得る。光学部品16が回転素子16bを設けない場合、第2方向は、第1方向と異なり、例えば第1方向に垂直な方向である。光学部品16が回転素子16bを含む場合、第2方向は、回転素子16bにより回転後の第1方向と異なり、例えば回転後の第1方向に垂直な方向である。回転素子16bがレーザ光を90°回転させる場合、第1方向と第2方向とは平行であり得る。第2方向は、LDチップから発するレーザ光の遅軸の方向であり得る。
【0055】
コリメートレンズ16aは、例えばUV硬化樹脂などの接着剤を用いて、回転素子16bに接着固定され、コリメートレンズ16aと回転素子16bが一体化した光学部品16が構成され得る。この場合、例えば、回転素子16bが、固定部品13に固定されることで、光学部品16の全体が固定部品13に固定され得る。コリメートレンズ16aおよび回転素子16bの材質は、例えば、石英ガラスであり得る。
【0056】
(第1および第2の電極)
第1の電極11および第2の電極12は、LD15に電流を供給するとともに、LD15の作動により生じる熱を外部に逃がす役割を有している。第1の電極11および第2の電極12は、例えば、銅板である。
【0057】
上記実施形態では、LD15を挟持する第1の電極11および第2の電極12のうち、上部電極に相当する第1の電極11の側面S1を固定部品13の取り付け面としている。しかしながら、下部電極に相当する第2の電極12に、固定部品13を固定してもよい。その場合、上述の説明において、第1の電極11と第2の電極12とが入れ替わる。
【0058】
上述した実施形態は本開示の一例に過ぎず、各部の具体的な構成は上述した具体例に限定されるものではなく、本開示の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本開示の半導体レーザ装置は、半導体レーザ装置への光学部品の固定を、熱によらず安定して行うことができることから、高出力が容易であり、レーザ加工に有用である。
【符号の説明】
【0060】
100、101、102:半導体レーザ装置
11:第1の電極
12:第2の電極
13:固定部品
17:貫通孔
18:溝
19:スリット
14:接着部
15:半導体レーザダイオード(LD)
16:光学部品
16a:コリメートレンズ
16b:回転素子
20:接着剤