(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】高圧ホースおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 11/08 20060101AFI20240104BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20240104BHJP
B32B 25/10 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
F16L11/08 A
B32B1/08 B
B32B25/10
(21)【出願番号】P 2019082698
(22)【出願日】2019-04-24
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】517027686
【氏名又は名称】住友理工ホーステックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川井 皓一朗
(72)【発明者】
【氏名】千田 諭
(72)【発明者】
【氏名】臼井 裕久
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-083000(JP,A)
【文献】特開2013-151994(JP,A)
【文献】特開昭48-010618(JP,A)
【文献】特開昭56-147982(JP,A)
【文献】特開2015-101055(JP,A)
【文献】特開昭51-025823(JP,A)
【文献】実開昭61-166286(JP,U)
【文献】特開2006-105357(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0100390(KR,A)
【文献】特開平07-068659(JP,A)
【文献】特開2004-286143(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0290362(US,A1)
【文献】特開昭59-001891(JP,A)
【文献】特開2004-082413(JP,A)
【文献】特開2019-100481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側ゴム層と、
外側ゴム層と、
前記内側ゴム層の外周面に帯状の繊維シートが巻き付けられて構成された筒状の繊維層と、
前記繊維層と前記外側ゴム層との間に2層以上の偶数層設けられ、複数本の補強線をスパイラル状に巻き付けられ、前記補強線の巻付方向を交互にした偶数層の補強層と、
前記偶数層の補強層のそれぞれの間に配置された中間ゴム層と、
を備え、
前記偶数層の補強層において、全ての階層における前記補強線の巻付角度αは、同一に設定されており、
前記偶数層の補強層において、前記補強線の巻付ピッチPは、前記内側ゴム層側から前記外側ゴム層側に順に大きく設定されて
おり、
さらに、前記繊維層の外周側に配置された第二中間ゴム層を備え、
前記偶数層の補強層は、前記第二中間ゴム層と前記外側ゴム層との間に設けられる、
高圧ホース。
【請求項2】
前記繊維層は、前記内側ゴム層の外周面に帯状の前記繊維シートがスパイラル状に巻き付けられて構成された、請求項
1に記載の高圧ホース。
【請求項3】
全ての階層における前記補強線の前記巻付角度αは、静止角度54.7°と同一角度に設定されている、請求項
1または2に記載の高圧ホース。
【請求項4】
全ての階層における前記補強線の前記巻付角度αは、静止角度54.7°より大きな角度に設定されている、請求項
1または2に記載の高圧ホース。
【請求項5】
前記補強層は、4層以上の偶数層設けられ、
前記中間ゴム層は、3層以上設けられる、請求項
1-4の何れか1項に記載の高圧ホース。
【請求項6】
請求項
1-5の何れか1項に記載の高圧ホースの製造方法であって、
前記内側ゴム層を軸方向に一定速度で送りながら、各層の前記補強線を前記内側ゴム層に対して回転させることによって前記補強線をスパイラル状に巻き付け、
前記補強線の回転速度を、前記内側ゴム層側よりも前記外側ゴム層側を遅くする、高圧ホースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧ホースおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2には、内側ゴム層、外側ゴム層、複数の補強層と、複数の補強層のそれぞれの間に介装された中間ゴム層とを備える高圧ホースが記載されている。特許文献1に記載の高圧ホースの補強層は、補強線をスパイラル状に巻き付けられた偶数層の内側補強層(内圧力負担層)および偶数層の外側補強層(引張り荷重負担層)を備える。偶数層の内側補強層において、補強線の巻付角度は、内側から外側に向かって大きくなるように構成されている。偶数層の外側補強層において、補強線の巻付角度は、内側補強層の最小巻付角度より小さい49.7°~51.4°に設定されている。特許文献2に記載の高圧ホースの補強層において、補強線の巻付角度は、内側から外側に向かって小さくなるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4383586号公報
【文献】特許第6049264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、高圧ホースにとって、高い耐圧性能を有することに加えて、高い柔軟性を有することが求められる。高い耐圧性能を確保するために、高圧ホースは補強層を有するのが一般的である。しかし、補強層を有することによって、高圧ホースを曲げる際において、曲げ角度を大きくするほど反発力が大きくなる。高圧ホースの高い柔軟性を有するためには、曲げ時の反発力の変化を小さくすることが求められる。
【0005】
本発明は、耐圧性能に優れ、高い柔軟性を有する高圧ホースおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1.高圧ホース)
本発明に係る高圧ホースは、内側ゴム層と、外側ゴム層と、前記内側ゴム層の外周面に帯状の繊維シートが巻き付けられて構成された筒状の繊維層と、前記繊維層と前記外側ゴム層との間に2層以上の偶数層設けられ、複数本の補強線をスパイラル状に巻き付けられ、前記補強線の巻付方向を交互にした偶数層の補強層と、前記偶数層の補強層のそれぞれの間に配置された中間ゴム層とを備える。前記偶数層の補強層において、全ての階層における前記補強線の巻付角度αは、同一に設定されており、前記偶数層の補強層において、前記補強線の巻付ピッチPは、前記内側ゴム層側から前記外側ゴム層側に順に大きく設定されており、さらに、前記繊維層の外周側に配置された第二中間ゴム層を備え、前記偶数層の補強層は、前記第二中間ゴム層と前記外側ゴム層との間に設けられる。
【0007】
各層の補強層において、補強線は、スパイラル状に巻き付けられており、格子状に編み込まれる構成ではない。そして、高圧ホースを曲げた時に、曲げ凸側では伸張変形するのに対して、曲げ凹側では収縮変形する。つまり、曲げ凸側において、補強線は、巻付角度が小さくなるように変形する。一方、曲げ凹側においては、補強線は、巻付角度が大きくなるように変形する。
【0008】
ここで、本発明に係る高圧ホースにおいては、各層の補強層の補強線は、初期状態において、巻付角度が同一に設定されている。ただし、巻付角度が同一であることとは、巻付角度が設計値として同一であることを意味し、製造によるバラツキを含む意味である。例えば、製造によるバラツキは、±1°以内である。
【0009】
そして、巻付角度が同一に設定されているため、高圧ホースを曲げた時に、曲げ凸側における巻付角度の変化、および、曲げ凹側における巻付角度の変化を小さくすることができる。従って、高圧ホースを曲げる際の反発力の変化を小さくすることができる。その結果、高圧ホースは、耐圧性能に優れ、高い柔軟性を有することができる。
【0010】
(2.高圧ホースの製造方法)
本発明に係る高圧ホースの製造方法は、前記内側ゴム層を軸方向に一定速度で送りながら、各層の前記補強線を前記内側ゴム層に対して回転させることによって前記補強線をスパイラル状に巻き付け、前記補強線の回転速度を、前記内側ゴム層側よりも前記外側ゴム層側を遅くする。これにより、上述した高圧ホースを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】高圧ホースの製造過程における斜視図である。
【
図2】高圧ホースを構成する補強層における1本の補強線を示す斜視図である。
【
図4】高圧ホースの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1.高圧ホース1の適用対象)
高圧ホース1は、建設機械、土木機械、産業機械、車両・船舶等にて、高圧の流体を流通させるために使用されるホースである。高圧ホース1は、ゴムを主成分として、高い耐圧性能を発揮するために複数の補強層を備える。
【0013】
高圧ホース1は、無負荷状態においては、直線状に形成されており、相手部材に取り付けられた状態においては、屈曲した状態とされる。ただし、高圧ホース1は、直線状で使用されることを妨げない。そして、取付作業において、直線状の高圧ホース1を曲げながら、相手部材に取り付けられる。ここで、高圧ホース1は、直線状に限られず、加硫時に屈曲した形状としてもよい。この場合であっても、取付作業において、高圧ホース1をさらに曲げながら、または直線状に延ばしながら、相手部材に取り付けられる。
【0014】
従って、高圧ホース1は、高い耐圧性能を有すると共に、柔軟性を有することが求められる。そして、本例における高圧ホース1は、これらの機能を発揮することができるホースである。
【0015】
(2.高圧ホース1の構成)
高圧ホース1の構成について、
図1および
図2を参照して説明する。
図1に示すように、高圧ホース1は、最内面に、内側ゴム層10を備える。内側ゴム層10は、ゴム材料により筒状に形成されている。内側ゴム層10は、押出装置によって筒状に形成してもよいし、ゴムシートを巻くことによって筒状に形成してもよい。例えば、内側ゴム層10は、ゴムシートをスパイラル状に巻き付けることによって筒状に形成されるようにしてもよいし、巻き寿司の海苔のように、ゴムシートの一端と他端とを突き合わせるようにして筒状に形成されるようにしてもよい。
【0016】
内側ゴム層10に適用されるゴム材料は、例えば、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合ゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl-IIR)、臭素化ブチルゴム(Br-IIR)、ヒドリンゴム(CHR、CHC)、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)等である。
【0017】
高圧ホース1は、最外面に、外側ゴム層20を備える。外側ゴム層20は、ゴム材料により筒状に形成されている。外側ゴム層20は、後述するが、押出装置により筒状に形成される。ただし、外側ゴム層20は、ゴムシートを巻き付けることによって筒状に形成されるようにしてもよい。例えば、外側ゴム層20は、ゴムシートをスパイラル状に巻き付けることによって筒状に形成されるようにしてもよいし、巻き寿司の海苔のように、ゴムシートの一端と他端とを突き合わせるようにして筒状に形成されるようにしてもよい。外側ゴム層20に適用されるゴム材料は、内側ゴム層10にて記載したゴム材料を適用できる。なお、内側ゴム層10と外側ゴム層20は、同種の材料を適用してもよいし、異種材料を適用してもよい。
【0018】
高圧ホース1は、さらに、内側ゴム層10の外周面に、繊維層30を備える。繊維層30は、内側ゴム層10の径方向外方への変形を規制する機能を有する。繊維層30は、例えば、樹脂により格子状に編み込まれた繊維シートによって筒状に形成されている。繊維層30は、帯状の繊維シートを内側ゴム層10の外周面に巻き付けることにより筒状に形成される。繊維層30に適用される樹脂材料は、例えば、ビニロン(ポリビニルアルコール)、ポリアミド(ナイロン)、アラミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)等である。なお、本例においては、高圧ホース1は、繊維層30を有するが、繊維層30を有しない構成としてもよい。
【0019】
高圧ホース1は、さらに、偶数層の補強層40を備える。本例においては、高圧ホース1は、4層の補強層41,42,43,44を有する。ただし、高圧ホース1は、2層の補強層40のみを有するようにしてもよいし、6層以上の偶数層の補強層40を有するようにしてもよい。
【0020】
偶数層の補強層40は、内側ゴム層10と外側ゴム層20との間に設けられている。偶数層の補強層41,42,43,44のそれぞれは、複数本の補強線41a,42a,43a,44aをスパイラル状に巻き付けられている。以下において、各補強層40の階層番号は、最内層の補強層41を階層1とし、内側ゴム層10側から外側ゴム層20側に順に昇順とする。つまり、補強層42は階層2であり、補強層43は階層3であり、補強層44は階層4である。なお、以下において、適宜、一般化した補強層40の階層nを用いる。
【0021】
さらに、偶数層の補強層41,42,43,44において、補強線41a,42a,43a,44aの巻付方向は、内側ゴム層10側から外側ゴム層20側に向かって交互にされている。
図1においては、階層1,3の補強層41,43の補強線41a,43aは、右ネジ方向であり、階層2,4の補強層42,44の補強線42a,44aは、左ネジ方向である。高圧ホース1は、偶数層の補強層40を有するため、右ネジ方向の補強層41,43と左ネジ方向の補強層42,44とが同数となる。補強線41a,42a,43a,44aには、高い耐引張性能を有する材料であって、例えば、金属が適用される。金属としては、例えば、銅線等が適用される。
【0022】
高圧ホース1は、さらに、中間ゴム層50を備える。中間ゴム層50は、偶数層の補強層40のそれぞれの間に配置されると共に、繊維層30と最内層の補強層41との間に配置される。従って、隣接する2つの補強層40の間には、必ず中間ゴム層50が介在している。
【0023】
本例において、中間ゴム層51が、繊維層30と階層1の補強層41との間に配置されている。中間ゴム層52が、階層1,2の補強層41,42との間に配置されている。中間ゴム層53が、階層2,3の補強層42,43との間に配置されている。中間ゴム層54が、階層3,4の補強層43,44との間に配置されている。
【0024】
中間ゴム層50は、ゴム材料により筒状に形成されている。中間ゴム層50は、ゴムシートを巻き付けることによって筒状に形成される。例えば、中間ゴム層50は、ゴムシートをスパイラル状に巻き付けることによって筒状に形成されるようにしてもよいし、巻き寿司の海苔のように、ゴムシートの一端と他端とを突き合わせるようにして筒状に形成されるようにしてもよい。また、中間ゴム層50は、押出装置によって筒状に形成することもできる。中間ゴム層50に適用されるゴム材料は、内側ゴム層10にて記載したゴム材料を適用できる。なお、中間ゴム層50は、内側ゴム層10と同種の材料を適用してもよいし、異種材料を適用してもよい。
【0025】
(3.補強線41a-44aの詳細構成)
補強線41a-44aは、上述したように、スパイラル状に巻き付けられている。補強線41a-44aの詳細構成について、
図1および
図2を参照して説明する。特に、補強線41a-44aについての巻付角度αおよび巻付ピッチPについて説明する。
【0026】
図2に示すように、補強線41a-44aの巻付角度αは、高圧ホース1の中心線に平行な線と補強線41a-44aとのなす角のうち鋭角のものである。階層1の補強線41aの巻付角度αをα(1)、階層2の補強線42aの巻付角度αをα(2)、階層3の補強線43aの巻付角度αをα(3)、階層4の補強線44aの巻付角度αをα(4)とする。ここで、階層nの補強線の巻付角度αはα(n)とする。
【0027】
本例においては、高圧ホース1が無負荷状態の時に、偶数層の補強層41-44において、全ての階層1-4における補強線41a-44aの巻付角度α(1),α(2),α(3),α(4)は、同一に設定されている。つまり、式(1)を満たす。
α(1)=α(2)=α(3)=α(4) ・・・ (1)
【0028】
全ての巻付角度α(n)が同一であることとは、巻付角度α(n)が設計値として同一であることを意味し、製造によるバラツキを含む意味である。例えば、製造によるバラツキは、±1°以内である。
【0029】
また、
図2に示すように、補強線41a-44aの巻付ピッチPとは、スパイラル状の補強線41a-44aの軸方向の間隔である。階層1の補強線41aの巻付ピッチPをP(1)、階層2の補強線42aの巻付ピッチPをP(2)、階層3の補強線43aの巻付ピッチPをP(3)、階層4の補強線44aの巻付ピッチPをP(4)とする。ここで、階層nの補強線の巻付ピッチPはP(n)とする。
【0030】
そして、本例においては、補強線41a-44aの巻付ピッチP(1),P(2),P(3),P(4)は、式(2)を満たす。
P(1)<P(2)<P(3)<P(4) ・・・ (2)
【0031】
つまり、偶数層の補強層41-44において、補強線41a-44aの巻付ピッチP(1),P(2),P(3),P(4)は、内側ゴム層10側から外側ゴム層20側に順に大きく設定されている。一般化した場合には、巻付ピッチ(n)は、P(n-1)<P(n)を満たす。
【0032】
ここで、各階層nの巻付ピッチP(n)の関係は、巻付角度α(n)が同一となるように設定されている。つまり、各階層nの巻付ピッチP(n)は、各階層nの補強層40の巻付径に依存する。換言すると、各階層nの巻付ピッチP(n)は、一定の巻付角度α(n)、および、各階層nの補強層40の巻付径に基づいて、幾何学的に得られる。
【0033】
巻付角度αは、以下の2つの例のようにすることができる。第一例としての巻付角度αは、静止角度54.7°と同一角度に設定されている。静止角度とは、高圧ホース1に内圧が生じる時に補強層40が高圧ホース1の軸方向と径方向に均等に圧力を分担する角度である。そして、巻付角度αが静止角度54.7°よりも大きい場合にも小さい場合にも、高圧ホース1全体としてはそれぞれの補強層40の巻付角度αが静止角度に近づく方向に変形するように作用する。つまり、全ての巻付角度α(n)を静止角度54.7°と同一角度に設定することで、変形量が小さくなる。
【0034】
第二例としての巻付角度αは、静止角度54.7°より大きな角度に設定されている。例えば、全ての巻付角度α(n)は、54.7°より大きく、57°以下の範囲とする。この場合、高圧ホース1は、軸方向に収縮しにくくなる。従って、高圧ホース1を相手部材に取り付けた状態において、高圧ホース1が相手部材から外れにくくすることができる。
【0035】
(4.高圧ホース1の製造装置100)
高圧ホース1の製造装置100について、
図3を参照して説明する。製造装置100は、内側ゴム層押出装置101、巻付装置102、外側ゴム層押出装置103、および、加硫装置104を備える。内側ゴム層押出装置101は、図示しないマンドレルを供給することにより、マンドレルの外周側に未加硫の内側ゴム層10を形成する装置である。
【0036】
巻付装置102は、送り装置102a、繊維層巻付装置110、中間ゴム層巻付装置120、補強線巻付装置130、中間ゴム層巻付装置140、補強線巻付装置150、中間ゴム層巻付装置160、補強線巻付装置170、中間ゴム層巻付装置180、補強線巻付装置190を備える。
【0037】
送り装置102aは、マンドレルの外周に配置された内側ゴム層10を軸方向に一定速度で送る装置である。繊維層巻付装置110は、繊維層30の帯状素材シートをラッピング法により巻き付ける装置である。繊維層巻付装置110は、回転ドラム111と、回転ドラム111に取り付けられ繊維層30の帯状素材シートを保持するボビン112とを備える。
【0038】
中間ゴム層巻付装置120,140,160,180は、中間ゴム層50の帯状素材シートをラッピング法により巻き付ける装置である。中間ゴム層巻付装置120,140,160,180は、回転ドラム121,141,161,181と、回転ドラム121,141,161,181に取り付けられ中間ゴム層50の帯状素材シートを保持するボビン122,142,162,182を備える。回転ドラム121,141,161,181は、軸方向に一定速度で送られる内側ゴム層10を中心として回転可能に設けられている。
【0039】
補強線巻付装置130,150,170,190は、補強層41-44の複数本の補強線41a-44aをスパイラル状に巻き付ける装置である。補強線巻付装置130,150,170,190は、回転ドラム131,151,171,191と、回転ドラム131,151,171,191に取り付けられ複数本の補強線41a-44aを保持する複数のボビン132,152,172,192を備える。回転ドラム131,151,171,191は、軸方向に一定速度で送られる内側ゴム層10を中心として回転可能に設けられている。複数のボビン132,152,172,192は、対応する回転ドラム131,151,171,191に、周方向に間隔を隔てて配列されている。
【0040】
外側ゴム層押出装置103は、補強層44の外周面に外側ゴム層20を配置する装置である。ただし、外側ゴム層押出装置103に代えて、外側ゴム層20の帯状素材シートをスパイラル状に巻き付けたり両端部を突き合わせるようにして巻き付けたりする装置を用いてもよい。加硫装置104は、外側ゴム層20を巻き付けられた後に、内側ゴム層10、外側ゴム層20および中間ゴム層50を加硫する装置である。なお、加硫装置104の前後において、外側ゴム層20の外周面に樹脂シートをスパイラル状に巻き付け、加硫時の外型の役割を担うようにしてもよい。
【0041】
(5.高圧ホース1の製造方法)
高圧ホース1の製造方法について、
図3および
図4を参照して説明する。内側ゴム層押出装置101によって、マンドレルの外周に未加硫の内側ゴム層10を配置する(S1)。続いて、送り装置102aによって、内側ゴム層10が外周側に配置されたマンドレルが軸方向に一定速度で送られながら、繊維層巻付装置110によって、繊維層30の帯状素材シートが巻き付けられる。帯状素材シートをスパイラル状に巻き付けてもよいし、帯状素材シートの一端と他端とを突き合わせるように巻き付けてもよい。このようにして、繊維層30が形成される(S2)。
【0042】
続いて、送り装置102aによって、マンドレルが軸方向に一定速度で送られながら、中間ゴム層巻付装置120によって、階層1の中間ゴム層51の帯状素材シートが巻き付けられる。帯状素材シートをスパイラル状に巻き付けてもよいし、帯状素材シートの一端と他端とを突き合わせるように巻き付けてもよい。また、中間ゴム巻付装置120は、押出装置を適用してもよい。このようにして、階層1の中間ゴム層51が形成される(S3)。続いて、送り装置102aによって、マンドレルが軸方向に一定速度で送られながら、補強線巻付装置130によって、複数本の補強線41aがスパイラル状に巻き付けられる。ここで、回転ドラム131の回転速度は、巻付角度α(1)および巻付ピッチP(1)となるように設定されている。このようにして、階層1の補強層41が形成される(S4)。
【0043】
続いて、送り装置102aによって、マンドレルが軸方向に一定速度で送られながら、中間ゴム層巻付装置140によって、階層2の中間ゴム層52の帯状素材シートが巻き付けられる。帯状素材シートをスパイラル状に巻き付けてもよいし、帯状素材シートの一端と他端とを突き合わせるように巻き付けてもよい。また、中間ゴム巻付装置140は、押出装置を適用してもよい。このようにして、階層2の中間ゴム層52が形成される(S5)。
【0044】
続いて、送り装置102aによって、マンドレルが軸方向に一定速度で送られながら、補強線巻付装置150によって、複数本の補強線42aがスパイラル状に巻き付けられる。ここで、回転ドラム151の回転速度は、巻付角度α(2)および巻付ピッチP(2)となるように設定されている。つまり、補強線巻付装置150の回転ドラム151の回転速度は、内側ゴム層10側に位置する補強線巻付装置130の回転ドラム131の回転速度よりも遅い。このようにして、階層2の補強層42が形成される(S6)。
【0045】
続いて、送り装置102aによって、マンドレルが軸方向に一定速度で送られながら、中間ゴム層巻付装置160によって、階層3の中間ゴム層53の帯状素材シートが巻き付けられる。帯状素材シートをスパイラル状に巻き付けてもよいし、帯状素材シートの一端と他端とを突き合わせるように巻き付けてもよい。また、中間ゴム巻付装置160は、押出装置を適用してもよい。このようにして、階層3の中間ゴム層53が形成される(S7)。
【0046】
続いて、送り装置102aによって、マンドレルが軸方向に一定速度で送られながら、補強線巻付装置170によって、複数本の補強線43aがスパイラル状に巻き付けられる。ここで、回転ドラム171の回転速度は、巻付角度α(3)および巻付ピッチP(3)となるように設定されている。つまり、補強線巻付装置170の回転ドラム171の回転速度は、内側ゴム層10側に位置する補強線巻付装置150の回転ドラム151の回転速度よりも遅い。このようにして、階層3の補強層43が形成される(S8)。
【0047】
続いて、送り装置102aによって、マンドレルが軸方向に一定速度で送られながら、中間ゴム層巻付装置180によって、階層4の中間ゴム層54の帯状素材シートが巻き付けられる。帯状素材シートをスパイラル状に巻き付けてもよいし、帯状素材シートの一端と他端とを突き合わせるように巻き付けてもよい。また、中間ゴム巻付装置180は、押出装置を適用してもよい。このようにして、階層4の中間ゴム層54が形成される(S9)。
【0048】
続いて、送り装置102aによって、マンドレルが軸方向に一定速度で送られながら、補強線巻付装置190によって、複数本の補強線44aがスパイラル状に巻き付けられる。ここで、回転ドラム191の回転速度は、巻付角度α(4)および巻付ピッチP(4)となるように設定されている。つまり、補強線巻付装置190の回転ドラム191の回転速度は、内側ゴム層10側に位置する補強線巻付装置170の回転ドラム171の回転速度よりも遅い。このようにして、階層4の補強層44が形成される(S10)。
【0049】
ここで、補強線巻付装置130,150,170,190における回転ドラム131,151,171,191の回転速度V(1),V(2),V(3),V(4)は、式(3)の関係を有する。つまり、内側ゴム層10が軸方向に一定速度で送られている状態において、補強線41a-44aの回転速度が、内側ゴム層10側よりも外側ゴム層20側を遅くされている。
V(1)>V(2)>V(3)>V(4) ・・・ (3)
【0050】
続いて、外側ゴム層押出装置103によって、外側ゴム層20を、補強層44の外周面を被覆するように配置する。このようにして、外側ゴム層20が形成される(S11)。なお、外側ゴム層押出装置103に代えて、中間ゴム層巻付装置120と同様の装置によって、外側ゴム層20の帯状素材シートを巻き付けるようにしてもよい。この場合、帯状素材シートをスパイラル状に巻き付けてもよいし、帯状素材シートの一端と他端とを突き合わせるように巻き付けてもよい。続いて、加硫装置104にて、各ゴム層10,20,51-54が加硫される。(S12)。
【0051】
(6.高圧ホース1の特性)
次に、高圧ホース1の特性について説明する。まず、高圧ホース1は、偶数層の補強層41-44を備えることにより、高い耐圧性能を有する。特に、高圧ホース1は、4層以上の補強層41-44を備えることによって、より高い耐圧性能を有することができる。さらに、各補強線41a-44aの巻付角度α(1)-α(4)が、同一に設定されている。これにより、高圧ホース1は、高い柔軟性を有することが確認できた。
【0052】
ここで、柔軟性について、本例の高圧ホース1と、比較例1,2の高圧ホースとについて、以下に示す評価方法にて評価を行った。比較例1の高圧ホースは、補強線41a-44aの巻付角度αが、α(1)<α(2)<α(3)<α(4)の関係を有するものとする。比較例2の高圧ホースは、補強線41a-44aの巻付角度αが、α(1)>α(2)>α(3)>α(4)の関係を有するものとする。
【0053】
また、評価方法は、高圧ホース1をU字状に曲げ、高圧ホース1の両端の離間距離を所定値にした時に生じる反発力を計測することにより行った。そして、本例の高圧ホース1の反発力が、比較例1,2の高圧ホースの反発力よりも小さくなった。
【0054】
このような結果となった理由について検討する。高圧ホース1を曲げた時に、曲げ凸側では伸張変形するのに対して、曲げ凹側では収縮変形する。つまり、曲げ凸側において、補強線41a-44aは、巻付角度αが小さくなるように変形する。一方、曲げ凹側においては、補強線41a-44aは、巻付角度αが大きくなるように変形する。
【0055】
ここで、本例の高圧ホース1においては、各層の補強層41-44の補強線41a-44aは、初期状態において、巻付角度αが同一に設定されている。そして、巻付角度αが同一に設定されているため、高圧ホース1を曲げた時に、曲げ凸側における巻付角度αの変化、および、曲げ凹側における巻付角度αの変化を小さくすることができる。従って、高圧ホース1を曲げる際の反発力の変化を小さくすることができる。
【0056】
これに対して、比較例1,2の高圧ホースは、曲げ凸側と曲げ凹側の一方における巻付角度αの変化が大きくなる。従って、比較例1,2の高圧ホースを曲げる際の反発力の変化は大きくなってしまう。つまり、本例の高圧ホース1は、比較例1,2の高圧ホースに比べて、高い柔軟性を有すると考えられる。
【0057】
なお、補強層40の階層数が多くなるほど、柔軟性への影響が大きくなる。つまり、高圧ホース1が、4層以上、さらに6層以上の補強層40を備える構成とする場合には、補強線41a-44aを同一に設定することで、より高い柔軟性を確保することができる。
【符号の説明】
【0058】
1:高圧ホース、10:内側ゴム層、20:外側ゴム層、30:繊維層、40,41,42,43,44:補強層、41a,42a,43a,44a:補強線、50,51,52,53,54:中間ゴム層、100:製造装置、101:内側ゴム層押出装置、102:巻付装置、102a:送り装置、103:外側ゴム層押出装置、104:加硫装置、110:繊維層巻付装置、120,140,160,180:中間ゴム層巻付装置、130,150,170,190:補強線巻付装置、n:階層、P:巻付ピッチ、V:回転速度、α:巻付角度