(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】冷却構造、充電装置、及び車両
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20240104BHJP
【FI】
H05K7/20 B
H05K7/20 F
H05K7/20 A
(21)【出願番号】P 2020047729
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 真也
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-139288(JP,A)
【文献】特開2017-152441(JP,A)
【文献】特開2016-134956(JP,A)
【文献】特開2012-244040(JP,A)
【文献】特開2002-374075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H01L 23/36-23/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハーネスと、
前記ハーネスと電気的に接続される基板と、
一端が前記ハーネスと前記基板との間に接続され前記ハーネスの熱が伝わる伝熱部材と、
前記伝熱部材の他端に接続され、前記伝熱部材に伝わった熱を放射する放熱部材と、
を備え
、
前記伝熱部材の材料は導電性材料である冷却構造。
【請求項2】
前記伝熱部材の熱抵抗は、前記基板の熱抵抗よりも低い請求項1に記載の冷却構造。
【請求項3】
前記ハーネスを前記基板と電気的に接続する接続部材をさらに備え、
前記伝熱部材の一端は前記接続部材に接続され、
前記伝熱部材の他端は前記放熱部材に接続される請求項1又は2に記載の冷却構造。
【請求項4】
前記伝熱部材の一部は、前記接続部材の一部と前記基板の一部との間に配置される請求項3に記載の冷却構造。
【請求項5】
前記接続部材の一部と前記伝熱部材の一部と前記基板の一部は、螺子止めにより固定される、請求項4に記載の冷却構造。
【請求項6】
前記伝熱部材の形状はC字形状である、請求項5に記載の冷却構造。
【請求項7】
前記放熱部材は前記伝熱部材からポッティング材を介して前記放熱部材に伝わった熱を放射する、請求項1に記載の冷却構造。
【請求項8】
請求項1から
7の何れか一項に記載の前記冷却構造を備えた充電装置。
【請求項9】
請求項
8に記載の前記充電装置を備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷却構造、充電装置、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板間に大電流が流れることによりコネクタで発生する熱を放射する技術が開示される。当該コネクタは、プラグに接する接点と当該接点が固定される板状の導電性部材とを備え、プラグと接点との接触点から導電性部材へ伝わる熱を、導電性部材で放射する構成を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
充電装置などに設けられる一般的な基板の定格温度は、当該基板に接続されるハーネスの定格温度よりも低い傾向がある。従って、例えば数十[A]から数百[A]の電流がハーネスに流れると、ハーネスで発生した熱が基板へ伝わることにより、ハーネスの温度がハーネスの定格温度以下であっても、基板の温度が基板の定格温度を超える可能性がある。この熱対策のために定格温度が高い特殊な仕様の基板を利用すると、当該基板を搭載した装置が専用設計品となり、製造コストが高くなる傾向があるため好ましくない。従って、従来技術では、基板の温度上昇を抑制する上での改善の余地がある。
【0005】
本開示の非限定的な実施例は、ハーネスに接続される基板の温度上昇を抑制できる冷却構造、充電装置、及び車両の提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施例に係る冷却構造は、ハーネスと、前記ハーネスと電気的に接続される基板と、一端が前記ハーネスと前記基板との間に接続され前記ハーネスの熱が伝わる伝熱部材と、前記伝熱部材の他端に接続され、前記伝熱部材に伝わった熱を放射する放熱部材と、を備え、前記伝熱部材の材料は導電性材料である。
【0007】
本開示の一実施例に係る充電装置は、冷却構造を備える。
【0008】
本開示の一実施例に係る車両は、充電装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施例によれば、ハーネスに接続される基板の温度上昇を抑制できる冷却構造、充電装置、及び車両を構築できる。
【0010】
本開示の一実施例における更なる利点及び効果は、明細書及び図面から明らかにされる。かかる利点及び/又は効果は、いくつかの実施形態並びに明細書及び図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つ又はそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施の形態に係る車両の構成を示す図
【
図3】本開示の実施の形態に係る充電装置の外観を示す図
【
図4】本開示の実施の形態に係る充電装置の内部構造を示す図
【
図5】伝熱部材を有さない充電装置の熱伝達経路における熱抵抗モデルを示す図
【
図6】本実施の形態に係る充電装置内のハーネスの熱が伝わる経路上の熱抵抗モデルを模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
(実施の形態)
図1は本開示の実施の形態に係る車両の構成を示す図である。車両100は、充電装置1、車載電池2、電装品3、及びインバータ4を備える。車両100は、例えば、電気自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車などの電動車両である。
【0014】
充電装置1は、交流電源200又は急速充電設備300から供給される電力を利用して車載電池2を充電する装置である。充電装置1は、ACDC(Alternating Current to Direct Current)コンバータ10、及びDCDC(Direct Current to Direct Current)コンバータ11を備える。
【0015】
ACDCコンバータ10は、交流電圧を全波整流するブリッジ回路20と、絶縁型のトランス30とを備える。なおACDCコンバータ10は、全波整流された電圧を所望の値の直流電圧に変換するための不図示のスイッチング素子、基板なども備える。当該基板は、ブリッジ回路20、スイッチング素子などの回路部品を搭載するプリント基板である。基板の詳細については後述する。このように構成されるACDCコンバータ10は、交流電源200から供給される交流電圧を所望の値の直流電圧に変換して車載電池2へ供給することで、車載電池2を充電する。
【0016】
車載電池2は、車両100に搭載される走行用モータ(主電動機)、電装品3などを駆動するための電力を蓄電する手段であり、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池などである。電装品3は、例えば、ナビゲーション、オーディオ装置、エアコン、パワーウィンドウ、デフォッガ、ECU(Electronic Control Unit)、GPS(Global Positioning System)モジュール、車載カメラなどである。インバータ4は、直流電力を交流電力に変換して主電動機へ供給する電力変換装置である。
【0017】
このように構成される車両100では、車載電池2の蓄電容量の増加に伴い、車載電池2の充電時間を短くするニーズが高まっている。車載電池2を短時間に充電するためにACDCコンバータ10の出力電流が増加すると、ACDCコンバータ10に接続される配線、すなわち電力供給用のハーネスで発生する熱が急激に増加する。この熱は、導体に流れる電流の2乗に比例して増加する。このようにハーネスで発生した熱は、ハーネスに接続されるACDCコンバータ10内の基板に伝わるため、ハーネスに流れる電流が増加するほど、当該基板の温度が増加する傾向がある。
【0018】
ところが、IGBTなどのパワーモジュールを搭載することを前提とする定格温度が高い特殊な仕様の基板を除き、一般的な基板の定格温度は、当該基板に接続されるハーネスの定格温度よりも低い傾向がある。一般的な基板の定格温度は例えば120℃、ハーネスの定格温度は例えば200℃である。これは、例えば電装品3を駆動するための電流の値は充電電流に比べて小さい値であるため、DCDCコンバータ11などに利用される一般的な仕様の基板の温度は定格温度を超えることが想定されてないためである。従って、数十[A]から数百[A]の電流がハーネスに流れると、ハーネスで発生した熱が、ハーネスに接続される基板へ伝わることにより、ハーネスの温度がハーネスの定格温度以下であっても、基板の温度が基板の定格温度を超えて、基板が破損する虞がある。この熱対策のためには、定格温度が高い特殊な仕様の基板を利用するなどの措置が必要になるが、ACDCコンバータ10が専用設計品となり、製造コストが高くなる傾向があるため、好ましくない。
【0019】
このようなことに鑑みて、本実施の形態に係る充電装置1は、ハーネスで発生した熱の一部を放熱部材へ逃がす経路を設けることにより、ハーネスで発生した熱が基板に伝わり難くして、基板の温度上昇を抑制する冷却構造を採用する。以下に、
図2などを参考して冷却構造について説明する。
【0020】
図2はACDCコンバータの拡大図である。
図3は端子及びハーネスの拡大図である。
図2に示すようにACDCコンバータ10は、基板50を備える。基板50には、端子41が接続される。具体的には、基板50に搭載されるトランス30の二次側巻き線側に端子41が接続される。端子41は、ハーネス42の一端にカシメ加工、溶接などにより接続される導電性の丸形端子である。
【0021】
ハーネス42の端子41側とは反対側にはコネクタ43が接続される。コネクタ43は、例えばACDCコンバータ10の筐体側に配置されるコネクタである。
【0022】
次に
図3及び
図4を参照して冷却構造を詳細に説明する。
図3などにおいて、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向は、互いに直交する。X軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。Y軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。XY平面は、X軸方向及びY軸方向に平行な仮想平面を表す。XZ平面は、X軸方向及びZ軸方向に平行な仮想平面を表す。YZ平面は、Y軸方向及びZ軸方向に平行な仮想平面を表す。また、X軸方向のうち、矢印で示す方向はプラスX軸方向とし、当該方向とは逆の方向はマイナスX軸方向とする。Y軸方向のうち、矢印で示す方向はプラスY軸方向とし、当該方向とは逆の方向はマイナスY軸方向とする。Z軸方向のうち、矢印で示す方向はプラスZ軸方向とし、当該方向とは逆の方向はマイナスZ軸方向とする。
【0023】
図3は本開示の実施の形態に係る充電装置の外観を示す図であり、
図4は本開示の実施の形態に係る充電装置の内部構造を示す図である。充電装置1は、
図1に示すACDCコンバータ10、DCDCコンバータ11などを構成する回路部品などを収容する筐体5と、筐体5に接続される車両側配線ユニット6とを備える。
図4に示すように車両側配線ユニット6にはバスバー45が設けられる。
【0024】
冷却構造300は、ハーネス42と、ハーネス42と電気的に接続される基板50と、一端がハーネス42と基板50との間に接続されハーネス42の熱が伝わる伝熱部材46とを備える。また冷却構造300は、伝熱部材46の他端に接続され伝熱部材46に伝わった熱を放射する放熱部材であるヒートシンク48を備える。
【0025】
バスバー45は、ハーネス42を基板50と電気的に接続する接続部材である。バスバー45は、基板50に設けられるACDCコンバータ10を構成する回路部品から出力される電流を、ハーネス42へ中継する機能、ハーネス42で発生した熱をバスバー45と機械的及び熱的に接続される伝熱部材46へ中継する機能などを有する。伝熱部材46の詳細については後述する。
【0026】
バスバー45は、棒形状の導電性部材である。バスバー45は、例えば、基板50のマイナスY軸方向の端面側に配置される。バスバー45の材料は、例えば銅である。なお、バスバー45の材料は、銅に限定されず、金、銀、アルミニウム、白金、クロムなどの導電性材料でもよい。また、バスバー45の材料は、黄銅等の銅合金、アルミニウム合金などでもよいし、酸化防止や接触抵抗低減のための金、銀、ニッケル、スズなどの表面メッキ処理がされたものでもよい。また、バスバー45の形状は棒形状に限定されず、例えば、折り曲げ部と、折り曲げ部からプラスY軸方向に伸びる第1延伸部と、折り曲げ部からプラスX軸方向に伸びる第2延伸部とを備えるL字形状の導電性部材でもよい。
【0027】
バスバー45のマイナスX軸方向の端部寄りの位置には端子41が配置され、端子の穴と、バスバー45のマイナスX軸方向の端部寄りの位置に形成される不図示の貫通孔とに、ネジ51が挿入される。その後、ネジ51の雄ネジ部に例えばナットなどが締結される。これにより、ネジ51の雄ネジ部が端子41と機械的に接続されて、バスバー45のマイナスX軸方向の端部に、端子41が密着するようにして固定される。従って、端子41がバスバー45へ強固に接続されるため、例えば車両100の走行によって充電装置1が振動した場合でも、端子41とバスバー45の電気的接続状態が維持されて、信頼性の高い接合が可能となる。
【0028】
バスバー45のプラスX軸方向の端部寄りの位置には、不図示の雌ネジ部が形成される。バスバー45の雌ネジ部には、バスバー45のプラスY軸方向の端面側からマイナスY軸方向の端面側に向けて、ネジ49が挿入される。ネジ49の雄ネジ部が、バスバー45の雌ネジ部にねじ込まれることにより、基板50のマイナスY軸方向の端面側に配置されたバスバー45のマイナスY軸方向の端面と、基板50との間の隙間が狭くなる。これにより、当該隙間に挿入された伝熱部材46の端部が、バスバー45と基板50とに挟まれる形となる。従って、伝熱部材46がバスバー45へ強固に接続され、例えば車両100の走行によって充電装置1が振動した場合でも、伝熱部材46とバスバー45との機械的接続状態が維持されて、信頼性の高い接合が可能となる。
【0029】
また、伝熱部材46が挟まれることにより、伝熱部材46のプラスY方向の端面が、例えば基板50の設けられる端子と接触する。この接触とは、基板50上の導体に伝熱部材46が機械的に接続された状態を意味する。基板50上の導体は、例えば、伝熱部材46を接続するための専用の導電性部材でもよいし、基板50上の銅箔(配線パターン)でもよい。伝熱部材46が基板50と接触することにより、バスバー45は、伝熱部材46を介して、基板50上の回路部品(例えば
図1に示すトランス30など)と電気的に接続される。
【0030】
また、伝熱部材46が挟まれることにより、伝熱部材46は、バスバー45のプラスX軸方向の端部と熱的に接続される。従って、ハーネス42からバスバー45に伝わった熱は、基板50に伝わる前に伝熱部材46に伝わる。伝熱部材46に伝わった熱の大部分は、伝熱部材46と熱的に接続されるヒートシンク48に伝わり、ヒートシンク48の表面から放射される。
【0031】
次に伝熱部材46の構成について説明する。伝熱部材46は、例えば、YZ断面がC字形状の導電性部材である。伝熱部材46の材料は、例えばバスバー45の材料と同様である。伝熱部材46は、例えば、XY平面と平行な導電性部材である底部46aと、底部46aのプラスY軸方向の端部からマイナスZ軸方向に起立する起立部46bと、底部46aのマイナスY軸方向の端部からマイナスZ軸方向に起立する起立部46cとを備える。
【0032】
起立部46bは、バスバー45と平行な板状に形成される。具体的には、起立部46bは、バスバー45と基板50とに挟まれたときに、バスバー45との接触面積が大きくなるように、バスバー45のプラスX軸方向の端部領域と平行な板状に形成される。起立部46bは、導電性部材であるため、バスバー45と基板50とに挟まれることにより、バスバー45と電気的及び熱的に接続され、基板50と電気的に接続される。従って、バスバー45と基板50との間に、起立部46bが介在していても、バスバー45から基板50へ電流が流れ、また、バスバー45の熱が起立部46bに伝わる。
【0033】
起立部46bには、ネジ49を挿入する不図示の貫通孔が形成される。当該貫通孔は、前述したバスバー45の雌ネジ部と同軸に配置される。
【0034】
起立部46cは、ヒートシンク48と面接触する部分であり、ヒートシンク48との熱的な接触面積が大きくなるように、例えばヒートシンク48のプラスY軸方向の端面48aと平行な板状に形成される。ヒートシンク48の端面48aは、ヒートシンク48の溝部48bを形作る壁面の一部である。溝部48bは、例えばヒートシンク48の基板50と向き合う面に形成され、マイナスY軸方向に窪む形状の空間である。溝部48bは、Z軸方向に伸びている。起立部46cのマイナスY軸方向の端面は、例えば、ポッティング47を介して、ヒートシンク48と熱的に接続される。ポッティング47は、例えばシリコン系の材料で構成され、起立部46cをヒートシンク48から電気的に絶縁した状態で、起立部46cをヒートシンク48に密着させる機能を有する。これにより、ハーネス42からの電流がヒートシンク48に流れることを防ぎながら、起立部46cとヒートシンク48との間の隙間を減らして、接触面積を増やすことで、放熱性を高めることができる。従って、締結部材などを用いることなく、起立部46cの熱を効率良くヒートシンク48へ伝えることができる。なお、伝熱部材46は、C字形状に形成した場合、アンテナとして機能し得る。ヒートシンク48の溝部48bを形作る壁面で伝熱部材46の周囲を囲む構造とすることにより、伝熱部材46へのノイズの影響を低減できる。
【0035】
なお、伝熱部材46の形状は、C字形状に限定されず、少なくとも一端がバスバー45と熱的に接する構造のものであればよく、例えばYZ断面がU字、I字、L字などの形状のものでもよい。ただし、C字形状の伝熱部材46を用いた場合、板状の導電性部材をプレス加工することで容易に伝熱部材46を製造できる。従って、I字などの伝熱部材46に比べて、伝熱部材46の生産効率を高めることができる。さらに、I字、L字などの伝熱部材46に比べて、ヒートシンク48及びバスバー45のそれぞれとの接触面積を大きくできるため、ハーネス42から伝わった熱をヒートシンク48へ効率的に伝えることができ、基板50の温度上昇を抑制し得る。なお、伝熱部材46は、起立部46bの熱伝導性を有する材料で構成し、熱伝導性を有しない底部46a及び起立部46cで構成してもよい。
【0036】
次に
図5及び
図6を参照して冷却構造300の熱抵抗モデルについて説明する。
【0037】
図5は伝熱部材を有さない一般的な充電装置内のハーネスの熱が伝わる経路上の熱抵抗モデルを模式的に示す図である。P
Hはハーネス42で発生する電力損失に相当する熱を表す。R
Hはハーネス42の熱抵抗[K/W]である。R
Hには、ハーネス42の導体の熱抵抗とハーネス42に接続される端子41の熱抵抗とを含む。なお、端子41を利用せずにハーネス42をバスバー45に直接接続する場合、R
Hには、ハーネス42の導体の熱抵抗を含む。
【0038】
Tx1はハーネス42とバスバー45の接続箇所の温度を表す。RBはバスバー45の熱抵抗を表す。具体的には、RBは、バスバー45のハーネス42との接続箇所から、バスバー45の基板50上の導体(配線パターン、端子など)との接続箇所までの熱抵抗を表す。
【0039】
Tpはバスバー45と基板50の接続箇所の温度を表す。RPは基板50の熱抵抗であり、RPには、例えば、基板50上の配線パターン、端子などの熱抵抗などが含まれる。TA1は基板50とヒートシンクの接続部の温度である。RIは基板50と接続されるヒートシンク自身の熱伝導による熱抵抗と、ヒートシンクと冷却媒体の間の熱伝達による熱抵抗との合成熱抵抗を表す。TWは冷却水、空気などの放熱冷媒の温度である。
【0040】
Ppは、基板50に伝わる熱を表す。ハーネス42からバスバー45に伝わった熱が全て基板50に伝わると仮定した場合、Ppは、PHとほぼ等しい値となる。従って、大電流がハーネス42に流れることによりハーネス42で発生した熱が基板50に伝わると、ハーネス42の温度がハーネス42の定格温度以下であっても、基板50の温度が基板50の定格温度を超えて、基板50が破損する虞がある。
【0041】
図6は本実施の形態に係る充電装置内のハーネスの熱が伝わる経路上の熱抵抗モデルを模式的に示す図である。以下では、
図5に示される符号と同一の符号については説明を省略し、異なる符号について説明する。
【0042】
Rxは伝熱部材46の熱抵抗を表す。TFは伝熱部材46とヒートシンク48の接続部の温度を表す。RHは放熱冷媒とヒートシンクの間の熱伝達率による熱抵抗であり、放熱冷媒の物性、流速、ヒートシンクの形状に依存する。TA2はヒートシンク表面の温度を表す。PFは、Rp及びRIの合計値(Rp+RI)に対する、Rx、RA、RF、及びRHの合計値(Rx+RA+RF+RH)の比率に依存する。
【0043】
R
Fは、伝熱部材46とヒートシンク48の間に設けられる絶縁材(ポッティング47など)による熱抵抗を表す。伝熱部材46、ヒートシンク48及びR
Hにより形成される放熱経路の中ではR
Aが支配的である。R
Fを下げるには、例えば、伝熱部材46とヒートシンク48との対向面積を広くし、起立部46cからポッティング47までの距離を短くすることが有効である。R
Aはヒートシンク48の熱抵抗を表す。ハーネス42から伝熱部材46に伝わった熱が全てヒートシンク48に伝わると仮定した場合、P
pは、P
p=P
H-P
Fで算出されるため、
図6に示すP
pの値は、
図5に示すP
pの値よりも小さくなる。
【0044】
本実施の形態に係る冷却構造300によれば、熱抵抗の並列回路が形成されるため、伝熱部材46を経由する合成熱抵抗(Rx+RA+RF+RH)が、例えば基板50を経由する合成熱抵抗(Rp+RI)よりも高い場合でも、ハーネス42で発生した熱が基板50に伝わり難くなる。ただし、伝熱部材46の熱抵抗が、基板50の導体の熱抵抗よりも低い場合、ハーネス42で発生した熱が伝熱部材46に伝わりやすくなり、基板50の温度上昇を一層抑制できるため、より好ましい。
【0045】
なお、伝熱部材46は、導電性の部材に限定されず、例えば伝熱部材46の熱抵抗が、基板50の導体の熱抵抗よりも低い、非導電性の部材で構成してもよい。熱抵抗が低い(熱伝導率が高い)非導電性の部材は、例えば、アルミナ、シリコン、ゲルマニウムなどである。この場合、バスバー45と基板50との電気的な接続を確保するため、ネジ49だけでなく、バスバー45から基板50に伸びる導電性部材を追加することが好ましい。この構成により、ポッティング47を用いることなく、非導電性の伝熱部材46をヒートシンク48に直接固定できるため、充電装置1の組み立ての際、非導電性の伝熱部材46の位置決めなどの作業が不要になり、組み立て作業性が向上する。
【0046】
次に充電装置1の組み立て方法について説明する。
図4に示す車両側配線ユニット6を筐体5に組み付ける場合、バスバー45のプラスX軸方向の先端が伝熱部材46のマイナスY軸方向の端面と向き合う位置まで、車両側配線ユニット6をプラスX軸方向に移動させる。そして、バスバー45の先端が伝熱部材46のマイナスY軸方向の端面と向き合う位置で、
図4に示すネジ49が、バスバー45にねじ込まれる。これにより、バスバー45が伝熱部材46と熱的に接続され、さらにバスバー45が基板50と電気的に接続される。車両側配線ユニット6が筐体5に組み付けられることにより、大電流が流れる導電性部材(ハーネス42、バスバー45など)の長さを短くできるため、当該導電性部材のロスが小さくなり、また、当該導電性部材の利用量を低減できる。従って、例えば充電装置1の充電効率を向上させながら、車両100の軽量化を図ることができる。なお、バスバー45は、その一端が車両側配線ユニット6に固定されていてもよい。
【0047】
また、本実施の形態に係る充電装置1は、基板50にハーネス42の熱が伝わりに難くなるため、基板50に搭載せれる電解質コンデンサ、半導体スイッチング素子などの回路部品の寿命を延ばすことができると共に、回路部品の品質低下が抑制されて充電装置1の信頼性が向上する。また、基板50、回路部品などを冷却するための冷却ファンが用いられている場合、冷却ファンの稼働時間を低減でき、冷却ファンの寿命を延ばすことができる。また、基板50にハーネス42の熱が伝わりに難くなることにより、基板50に搭載される半導体素子のジャンクション温度が定格温度以上になることを抑制でき、動作の信頼性が高い充電装置1を得ることができる。
【0048】
また、伝熱部材46が接続される位置は、ハーネス42と基板50の間であればよく、バスバー45と基板50との間(バスバー45の先端と基板50が向き合う位置)に限定されない。例えば、伝熱部材46が接続される位置は、ハーネス42がバスバー45に接続される箇所でもよい。この場合、例えば、伝熱部材46の一端が例えばハーネス42の端子とバスバー45との間に挟み込みように接続されることで、伝熱部材46がハーネス42と熱的に接続され、バスバー45が基板50に直接接続される。また、伝熱部材46が接続される位置は、ハーネス42の中間部分でもよい。この場合、バスバー45に伝熱部材46の一端を溶接、ネジ止め(螺子止め)などで固定することで、伝熱部材46がバスバー45と熱的に接続される。
【0049】
なお、本実施の形態に係る冷却構造300は、ACDCコンバータ10以外の装置、例えばDCDCコンバータ11、インバータ4などにも適用可能である。ただし、急速充電を必要とする車載電池2の充電に利用されるACDCコンバータ10に冷却構造300を適用することにより、充電時の大電流で発熱するハーネス42からの熱を、基板50へ伝わり難くできるため、ACDCコンバータ10に却構造300を用いることがより好ましい。
【0050】
なお、本実施の形態に係る車両100は、自動車に限定されず、鉄道車両、バイクなどの自動車以外の乗り物でもよい。
【0051】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0052】
以上、本開示の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本開示の一実施例は、冷却構造、充電装置、及び車両に好適である。
【符号の説明】
【0054】
1 充電装置
2 車載電池
42 ハーネス
45 バスバー
46 伝熱部材
48 ヒートシンク
50 基板
100 車両
300 冷却構造