(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】回路遮断器
(51)【国際特許分類】
H01H 83/02 20060101AFI20240104BHJP
H01H 73/06 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
H01H83/02 D
H01H83/02 E
H01H83/02 H
H01H73/06 A
(21)【出願番号】P 2019068214
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中道 義也
(72)【発明者】
【氏名】宮川 紘平
(72)【発明者】
【氏名】山添 宏一
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-004399(JP,A)
【文献】実開昭54-121257(JP,U)
【文献】特開2005-044734(JP,A)
【文献】特開2014-130760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 83/02
H01H 73/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と、
少なくとも前記回路基板を収容する器体と、
水分を検知する水分検知部と、
を備え、
前記回路基板は、前記器体内で傾けて配置されていて、
前記水分検知部は、前記器体に収容され、かつ傾けて配置された前記回路基板上において低い側に配置されている、
回路遮断器。
【請求項2】
前記器体に収容され、かつ前記器体の差込口を介して電源側又は負荷側の導電部が接続される端子部を、更に備える、
請求項1に記載の回路遮断器。
【請求項3】
回路基板と、
少なくとも前記回路基板を収容する器体と、
前記器体に収容され、かつ前記器体の差込口を介して電源側又は負荷側の導電部が接続される端子部と、
を備え、
前記回路基板は、前記器体内で傾けて配置されていて、
前記回路基板は、その厚み方向と交差する方向における両端のうちの一端の側に、前記端子部の一面と対向する端子対向部を有し、
前記回路基板は、前記両端のうちの他端から前記端子対向部に向かうほど前記端子部の前記一面から離れるように、傾けて配置されている、
回路遮断器。
【請求項4】
水分を検知する水分検知部を更に備え、前記水分検知部は、前記器体に収容され、かつ傾けて配置された前記回路基板上において低い側に配置されている、
請求項3に記載の回路遮断器。
【請求項5】
前記器体は、前記回路基板と前記端子部との間に、配線の引き回しスペースを有する、
請求項2~4のいずれか1項に記載の回路遮断器。
【請求項6】
前記器体は、
前記回路基板が収容される第1収容部と、
前記第1収容部の隣にあり、前記端子部が収容される第2収容部と、
前記第1収容部と前記第2収容部とを隔てる隔壁と、
を有する、
請求項2~5のいずれか1項に記載の回路遮断器。
【請求項7】
前記隔壁は、前記回路基板から離れる方向に凹んだ凹みを有する、
請求項6に記載の回路遮断器。
【請求項8】
前記回路基板は、前記隔壁における前記回路基板と対向する一面に対して傾いている、
請求項6又は7に記載の回路遮断器。
【請求項9】
主回路を通電状態から遮断状態に切り替える接点部と、
前記接点部に生じるアークを消弧する消弧装置と、
を更に備え、
前記接点部及び前記消弧装置は、前記器体に収容され、
前記回路基板は、前記器体内において、前記端子部と前記消弧装置との間に配置されている、
請求項2~8のいずれか1項に記載の回路遮断器。
【請求項10】
主回路を通電状態から遮断状態に切り替える接点部と、
前記主回路に設けられた主回路コイルを有し、短絡電流が前記主回路コイルに流れると、前記接点部を開極させるトリップ機構と、
を更に備え、
前記接点部及び前記トリップ機構は、前記器体に収容され、
前記回路基板は、その厚み方向と交差する方向における両端のうちの一端の側に、前記主回路コイルと対向するコイル対向部を有し、
前記回路基板は、前記両端のうちの他端から前記コイル対向部に向かうほど前記主回路コイルから離れるように、傾けて配置されている、
請求項2~9のいずれか1項に記載の回路遮断器。
【請求項11】
前記主回路の一部を構成し、かつ前記端子部と前記主回路コイルとを接続する接続線と、
前記器体に収容され、かつ所定の高さ以上の高さを有した背高部品と、
を更に備え、
前記回路基板は、前記接続線と前記主回路コイルとのつなぎ目と対向する一実装面を有し、
前記背高部品は、前記一実装面の側にある、
請求項10に記載の回路遮断器。
【請求項12】
前記回路基板は、前記器体内において、前記主回路コイルと前記端子部との間に配置されている、
請求項10又は11に記載の回路遮断器。
【請求項13】
漏洩電流を検知する零相変流器を、更に備え、
前記零相変流器は、前記回路基板に実装されている、
請求項2~12のいずれか1項に記載の回路遮断器。
【請求項14】
前記回路基板は、その厚み方向と交差する方向における一端の側に、前記端子部の一面と対向する端子対向部を有し、
前記零相変流器は、前記端子対向部にある、
請求項13に記載の回路遮断器。
【請求項15】
前記器体は、前記回路基板を傾けて保持する保持構造を有する、
請求項1~14のいずれか1項に記載の回路遮断器。
【請求項16】
前記器体に収容され、かつ主回路を通電状態から遮断状態に切り替える接点部と、
少なくとも一部が前記器体の前壁から露出し、手動操作により前記接点部を開極又は閉極させる操作ハンドルと、
を更に備え、
前記回路基板は、前記器体における前記前壁とは反対側の底壁に対して起立した状態で、前記器体内で傾けて配置されている、
請求項1~15のいずれか1項に記載の回路遮断器。
【請求項17】
前記回路基板は、当該回路遮断器が取付の対象物に取り付けられた状態において、水平面に対して傾いている、
請求項1~16のいずれか1項に記載の回路遮断器。
【請求項18】
前記回路基板は、当該回路遮断器が取付の対象物に取り付けられた状態において、前記対象物における取付面に対して傾いている、
請求項1~17のいずれか1項に記載の回路遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、回路遮断器に関し、より詳細には、回路基板を備えた回路遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、開閉機構部と、零相電流検出回路部と、漏電引き外しコイル部とを備えた漏電遮断器が記載されている。開閉機構部は、可動接触子の可動接点と固定接触子の固定接点とを開閉動作させ、電源側電路と負荷側電路とを開閉する。零相電流検出回路部は、回路基板と、回路基板に装着された零相変流器とから構成される。漏電引き外しコイル部は、回路基板に装着され、開閉機構部と連結される。
【0003】
特許文献1に記載の漏電遮断器によれば、零相変流器と漏電引き外しコイル部とが、同じ回路基板に装着されているため、部品の組み立ての作業性が容易となり、接続作業も簡略化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、回路遮断器(漏電遮断器)がその器体(筐体)内に回路基板を備える場合、回路基板を収容するスペースを考慮すると、回路遮断器の小型化を図りにくい可能性がある。
【0006】
本開示は上記事由に鑑みてなされ、回路基板を備えつつ、回路遮断器の小型化を図ることができる、回路遮断器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る回路遮断器は、回路基板と、器体と、水分を検知する水分検知部と、を備える。前記器体は、少なくとも前記回路基板を収容する。前記回路基板は、前記器体内で傾けて配置されている。前記水分検知部は、前記器体に収容され、かつ傾けて配置された前記回路基板上において低い側に配置されている。
本開示の別の一態様に係る回路遮断器は、回路基板と、器体と、端子部と、を備える。前記器体は、少なくとも前記回路基板を収容する。前記端子部は、前記器体に収容され、かつ前記器体の差込口を介して電源側又は負荷側の導電部が接続される。前記回路基板は、前記器体内で傾けて配置されている。前記回路基板は、その厚み方向と交差する方向における両端のうちの一端の側に、前記端子部の一面と対向する端子対向部を有する。前記回路基板は、前記両端のうちの他端から前記端子対向部に向かうほど前記端子部の前記一面から離れるように、傾けて配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、回路基板を備えつつ、回路遮断器の小型化を図ることができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る回路遮断器において第1ブロックを取り外した状態の平面図であり、第1接点部が閉極している図である。
【
図2】
図2は、同上の回路遮断器において第1ブロックを取り外した状態の平面図であり、第1接点部が開極している図である。
【
図4】
図4は、同上の回路遮断器の分解斜視図である。
【
図5】
図5は、同上の回路遮断器における概略の回路図である。
【
図6】
図6は、同上の回路遮断器における回路基板及びその周辺を含む要部平面図である。
【
図7】
図7は、同上の回路基板を保持する器体の保持構造を含む要部平面図である。
【
図8】
図8は、同上の回路遮断器に対する水の浸入に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)概要
以下の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0011】
本実施形態に係る回路遮断器1は、
図1及び
図2に示すように、回路基板6と、器体5と、を備えている。器体5は、少なくとも回路基板6を収容する。また回路遮断器1は、
図1、
図2及び
図5に示すように、第1接点部11と、第2接点部12と、を更に備えている。
【0012】
第1接点部11は、異常電流の発生に応じて開極し、主回路C1(
図5参照)を通電状態から遮断状態に切り替える。ここで言う異常電流は、例えば、漏洩電流を含む。すなわち、本開示では一例として、回路遮断器1は、漏電遮断器であることを想定する。第1接点部11は、漏洩電流の発生に応じて、閉極(オン)から開極(オフ)に切り替わり、主回路C1を遮断する。また、異常電流は、例えば、過電流(短絡電流、及び過負荷電流)も含む。回路遮断器1は、過電流の発生に応じて、閉極(オン)から開極(オフ)に切り替わり、主回路C1を遮断する。
【0013】
回路遮断器1は、
図5に示すように、第1接点部11を一対備えており、主回路C1を構成する第1電路C11及び第2電路C12の各々に、第1接点部11がそれぞれ挿入されている。以下、回路遮断器1の一対の第1端子71(
図5参照)が電源側の一対の電線103(
図8参照)と接続され、回路遮断器1の一対の第2端子72(
図5参照)が負荷側の一対の電線104(
図8参照)と接続された状態を「正接続状態」と呼ぶこともある。第1電路C11は、例えば、L極(LINE)側の電線103Aが接続されるL相となり、第2電路C12は、N極(NEUTRAL LINE)側の電線103Bが接続されるN相となり得る。
【0014】
ただし、回路遮断器1は、これとは逆に、一対の第1端子71が負荷側の一対の電線104と接続され、一対の第2端子72が電源側の一対の電線103と接続されることも可能であり、この接続状態を「逆接続状態」と呼ぶこともある。以下、回路遮断器1が、正接続状態又は逆接続状態にあることを、単に「回路遮断器1の使用中」と呼ぶことがある。
【0015】
第2接点部12は、第1接点部11の開極に連動して開極し、主回路C1から分岐した電源回路C2(
図5参照)を通電状態から遮断状態に切り替える。つまり、第2接点部12は、第1接点部11が閉極(オン)から開極(オフ)に切り替わることに連動して、閉極(オン)から開極(オフ)に切り替わり、電源回路C2の通電を遮断する。
【0016】
ここで本実施形態では、回路基板6は、器体5内で傾けて配置されている。そのため、回路遮断器1の小型化を図る上で、器体5内において回路基板6を収容するためのスペースに限りがある場合であっても、当該スペースに回路基板6を収容できる可能性が高くなる。したがって、回路基板6を備えつつ、回路遮断器1の小型化を図ることができる。
【0017】
(2)詳細
次に、本実施形態に係る回路遮断器1について、
図1~
図8を参照して、より詳細に説明する。
【0018】
(2.1)全体構造
回路遮断器1は、上述の通り、回路基板6、器体5、一対の第1接点部11、及び第2接点部12を備えている。また回路遮断器1は、
図5に示すように、擬似漏電発生部C4、及び漏洩検知部2(センサ)を更に備えている。また回路遮断器1は、
図1及び
図2に示すように、トリップ機構4、一対の端子部7を2組(合計4つ)、消弧装置8、及びリンク機構15(操作ハンドル16等)を更に備えている。また回路遮断器1は、一対の編組線D1(接続線)、サージ吸収素子Z1(水分検知部)、保持構造体H1、及び(試験用の)操作部B1等を、更に備えている。
【0019】
回路遮断器1は、上述の通り、一例として、漏洩電流を検知し、主回路C1の通電を遮断する機能(漏電検知機能)を有した漏電遮断器であり、例えば住宅(非住宅でもよい)内に設置される分電盤等に使用され得る。回路遮断器1は、
図8に示すように、取付の対象物100における取付面102に取り付けられる。対象物100は、分電盤内の構造材(例えばDINレール)等であることを想定する。取付面102は、例えば、DINレールにおける、回路遮断器1と対向する一面である。
【0020】
また回路遮断器1は、漏電検知機能に加えて、短絡電流や過負荷電流等の過電流を検知し、主回路C1の通電を遮断する機能(過電流検知機能)も有している。さらに回路遮断器1は、トリップ機構4による接点部(11、12)の開極が正常に作動するか否かの試験を行うために、漏洩電流を擬似的に発生させる機能(試験機能)を有している。
【0021】
また回路遮断器1は、操作ハンドル16への手動操作に応じて、接点部(11、12)を閉極から開極へ、及び開極から閉極へ切り替え可能に構成されている。例えば、ユーザは、異常電流の検知によって接点部(11、12)が開極された後、安全を確認した場合に、操作ハンドル16を操作することで接点部(11、12)を閉極に復帰させることができる。
【0022】
なお、
図1、
図2及び
図4では、器体5内における電線の図示を適宜に省略している(電気的な接続関係は、
図5を参照)。
【0023】
(2.2)器体
器体5は、
図3及び
図4に示すように、全体として扁平な略矩形の箱形状である。以下では、器体5の厚み方向に沿った方向を、回路遮断器1における「左右方向」と呼ぶこともある。また以下では、
図8に示すように、取付の対象物100における取付面102に回路遮断器1が取り付けられた状態での、水平面に対して垂直な(直交する)方向を「上下方向」とし、回路遮断器1を正面から見て下方(鉛直方向)を「下方」として説明する。また回路遮断器1を正面から見て右方を「右方」、左方を「左方」として説明する。さらに、上下方向と左右方向との両方に直交する方向、つまり取付面102に直交する方向を「前後方向」とし、取付面102の裏側を「後方」として説明する。ただし、これらの方向は回路遮断器1の使用方向を限定する趣旨ではない。
【0024】
器体5は、
図4に示すように、第1ブロック5A(右側ブロック)、第2ブロック5B(左側ブロック)、及び第3ブロック(中子)5Cを有している。なお、
図4では、第1ブロック5A及び第2ブロック5Bをドットハッチングで示す。第1ブロック5A、第2ブロック5B、及び第3ブロック5Cは、電気絶縁性を有した合成樹脂材料により形成されている。
【0025】
器体5は、一対の第1接点部11、第2接点部12、漏洩検知部2、トリップ機構4、回路基板6、4つの端子部7、消弧装置8、リンク機構15、擬似漏電発生部C4、一対の編組線D1、サージ吸収素子Z1、及び保持構造体H1等をその内部に収容する。また器体5は、
図1及び
図2に示すように、操作ハンドル16の一部(レバー160)及び操作部B1の一部(突起部B10)を、その前壁55から外部に露出するように支持する。前壁55は、その上下方向における中央部が凸となるように前方に突き出ており、レバー160及び突起部B10は、その突き出た中央部から外部に露出する。
【0026】
第1ブロック5A及び第2ブロック5Bは、互いに向き合う側の面が開放された、略矩形の箱状に形成されている。第3ブロック5Cは、略板状に形成されている。第3ブロック5Cは、器体5内に収容される複数の構成要素を、第1ブロック5A及び第2ブロック5Bと共に安定的に保持するように、複数の凹部や、リブ、突起、溝等を有している。器体5は、第1ブロック5Aと第2ブロック5Bとで、左右からそれぞれ第3ブロック5Cを間に挟むように、互いに突き合せて結合することで構成される。なお、
図1及び
図2は、第1ブロック5Aが取り外された状態における回路遮断器1を右側から見た平面図である。
【0027】
以下では、器体5における、回路基板6が収容されている空間を、第1収容部S1(
図1、
図2、
図6及び
図7参照)と呼ぶこともある。言い換えると、器体5は、第1収容部S1を有している。
【0028】
(2.3)端子部
4つの端子部7は、一対の第1端子部7Aと、一対の第2端子部7Bとを含む(
図1及び
図2参照)。ただし、
図1及び
図2では、一対の第1端子部7Aのうち右側の第1端子部7Aのみが図示され、同様に、一対の第2端子部7Bのうち右側の第2端子部7Bのみが図示される。各第1端子部7Aは、
図5における第1端子71に相当する。各第2端子部7Bは、
図5における第2端子72に相当する。
【0029】
一対の第1端子部7Aは、器体5内の上端部において、左右方向に並んで収容されている。回路遮断器1が正接続状態にある場合、一対の第1端子部7Aには、外部電源(例えば商用の交流電源)の側となる一対の電線103がそれぞれ接続されている。
【0030】
一対の第2端子部7Bは、器体5内の下端部において、左右方向に並んで収容されている。回路遮断器1が正接続状態にある場合、一対の第2端子部7Bには、負荷の側となる一対の電線104がそれぞれ接続されている。以下では、器体5における、第2端子部7Bが収容されている空間を、第2収容部S2(
図1及び
図2参照)と呼ぶこともある。言い換えると、器体5は、第2収容部S2を有している。器体5は、一対の第2端子部7Bを個別に収容するために、第2収容部S2を一対有している。一対の第2収容部S2は、第1収容部S1の隣(下側)にある。ただし、器体5は、第1収容部S1と一対の第2収容部S2とを隔てる隔壁53Aを有している。詳細な説明は省略するが、器体5は、一対の第1端子部7Aについても、それらを個別に収容する一対の収容部を有している。
【0031】
ここでは、一対の第1端子部7Aから一対の第2端子部7Bまでの電気的経路が、主回路C1に相当する。主回路C1は、上述の通り、第1電路C11(L相)と第2電路C12(N相)と、から構成されている。
【0032】
各端子部7は、例えば、ねじによって結線可能な、いわゆるピラー端子(ねじ式端子)である。各端子部7は、
図1、
図2及び
図4に示すように、端子板73と、端子金具74と、端子ねじ75とを有している。
【0033】
端子板73は、導電性を有する金属板によって、略L字の板状に形成されている。端子板73は、器体5内で固定されている。
【0034】
端子金具74は、導電性を有する金属板によって、角筒状に形成されている。端子金具74は、上下方向を軸とし、上下方向の両端が開放されている。端子金具74は、器体5の中で、端子板73の一部(突片730:
図4参照)が挿入された状態で、前後方向における所定の範囲内で移動可能である。また端子金具74は、端子ねじ75がねじ込まれているねじ孔を有している。器体5は、突片730及び端子金具74の底壁の間における空隙SP1(
図4参照)と対向する領域に、電線(103又は104)が挿通されるための差込口51(合計4つ)を有している。
【0035】
端子ねじ75は、そのねじ先が端子金具74のねじ孔にねじ込まれた状態で、器体5内に収容されている。器体5は、その前壁55における各端子ねじ75の頭部と対向する領域に、端子ねじ75が脱落することなく当該頭部を露出する孔部57(合計4つ)を有している。
【0036】
電線(103又は104)を差込口51から空隙SP1に挿入した状態で、ドライバー等の工具の先端を孔部57から挿入して、端子ねじ75を締め付けることで、端子金具74が前方に移動し、突片730と端子金具74の底壁との距離が縮まる。その結果、空隙SP1に挿入されていた電線(103又は104)の、端子部7に対する結線が、達成され得る。
【0037】
電線103及び104(導電部)は、導体からなる心線が絶縁被覆で覆われた絶縁電線である場合、絶縁被覆が剥かれた電線の先端部、つまり心線のみが、差込口51から挿入される。電線103及び104は、心線が1本の導体からなる単線と、心線が複数本の導線からなる撚り線とのいずれであってもよい。あるいは、電線103及び104の少なくとも一方が、絶縁被覆で覆われていない角状の導電バー(導電部)でもよい。
【0038】
ところで、第1電路C11の始端及び終端に相当する上下2つの端子部7の空隙SP1及び差込口51は、第2電路C12の始端及び終端に相当する上下2つの端子部7の空隙SP1及び差込口51と比べて、やや前方にずれて配置される(
図3の差込口51参照)。そのため、導電部(電線103、104又は導電バー等)の誤結線等が抑制され得る。
【0039】
(2.4)第1接点部
一対の第1接点部11は、異常電流(ここでは一例として、漏洩電流、短絡電流及び過負荷電流)の発生に応じて開極し、主回路C1を通電状態から遮断状態に切り替えるように構成されている。一対の第1接点部11は、主回路C1における第1電路C11及び第2電路C12に、それぞれ設けられている。各第1接点部11は、
図1及び
図2に示すように、固定接点11Aと、固定接点11Aに対して接触又は離間する可動接点11Bと、を有している。
図1は、一対の第1接点部11が閉極した状態を示し、
図2は、一対の第1接点部が開極した状態を示す。ただし、
図1及び
図2では、右側の第1接点部11のみが図示される。
【0040】
固定接点11Aは、例えば、固定接点板110に固着されている。言い換えると、固定接点11Aは、固定接点板110と別部材である。しかし、固定接点11Aは、固定接点板110の一部として一体となっていてもよい。固定接点板110は、鉄又は銅等の低抵抗の材料から形成されている。固定接点板110は、主回路C1の一部を構成する。
【0041】
可動接点11Bは、金属板に抜き加工及び曲げ加工を施して形成されたアーム111(可動接触子)の一端にある。可動接点11Bは、アーム111の一部として一体となっている。ただし、可動接点11Bは、アーム111と別部材となっていて、アーム111の一端に固着されてもよい。アーム111は、主回路C1の一部を構成する。
【0042】
アーム111は、その他端の側に設けられた軸112を支点として、可動接点11Bが固定接点11Aと接触する位置と、固定接点11Aから離れる位置との間で回転可能となっている。アーム111の中間部には、編組線113の一端が固着されている。編組線113は、主回路C1の一部を構成する。
【0043】
第1電路C11及び第2電路C12における2つの編組線113のうち、第1電路C11の編組線113については、その他端が、後述するトリップ機構4のバイメタル板17の中間部に固着されている。バイメタル板17の端部は、編組線114の一端に固着されており、さらに編組線114の他端は、対応する(右側の)第1端子部7Aの端子板73に固着されている。バイメタル板17及び編組線114は、主回路C1の一部を構成する。
【0044】
一方、第2電路C12における編組線113の他端は、対応する(左側の)第1端子部7Aの端子板73に、直接固着されている。
【0045】
(2.5)リンク機構
リンク機構15は、開操作(オフ操作)又は閉操作(オン操作)に応じて、一対の第1接点部11の両方を一緒に、開極又は閉極させるように構成される。リンク機構15は、
図1及び
図2に示すように、操作ハンドル16と、複数のリンク部材150とを有している。操作ハンドル16は、器体5の前壁55に設けた窓孔58(
図3参照)からレバー(操作摘み)160を器体5の外部に突出させた状態で、器体5に回転可能に支持される。各リンク部材150は、操作ハンドル16とアーム111とを連結し、操作ハンドル16の回転動作に伴ってアーム111を連動させる。操作ハンドル16は、一対の第1接点部11を閉極させるオン位置と、一対の第1接点部11を開極させるオフ位置との間で回転可能となっている。
【0046】
図1では、第1接点部11が閉極状態であり、操作ハンドル16のレバー160は、上方に傾いた状態にある。一方、
図2では、第1接点部11が開極状態であり、操作ハンドル16のレバー160は、下方に傾いた状態にある。
【0047】
操作ハンドル16は、後述する第2接点部12も、一対の第1接点部11と共に、開極又は閉極させるように構成される。具体的には、リンク機構15は、複数のリンク部材150の1つとして、押圧部14を有している。押圧部14(スラストバー)は、略矩形の板状の部位と、当該部位の後端から棒状に突出する部位とが一体となって形成されている。押圧部14は、その一端がアーム111を保持するリンク部材150の軸孔内に回転可能に挿入され、その他端が第2接点部12の(後述する)第1トーションばねT1の腕部の端部と対向している。押圧部14は、その他端の側において厚み方向に貫通する逃がし孔を有している。例えば、操作ハンドル16がオフ位置からオン位置に回転することで、押圧部14の一端側が、アーム111を保持するリンク部材150の軸孔内で回転しながら前方に持ち上がる。一方、押圧部14の他端は、第1トーションばねT1の腕部の端部が上記逃がし孔に挿入されつつ、当該端部に押圧を与えることになる。逆に、操作ハンドル16がオン位置からオフ位置に回転することで、押圧部14は元の位置に復帰し、第1トーションばねT1への押圧は解除される。
【0048】
図1では、第1接点部11が閉極状態であり、第2接点部12も閉極状態である。
図2では、第1接点部11が開極状態であり、第2接点部12も開極状態である。
【0049】
(2.6)トリップ機構
トリップ機構4は、異常電流が検知されると、上述したリンク機構15を駆動して、一対の第1接点部11、及び第2接点部12を、強制的に開極させる(すなわち、トリップさせる)ように構成される。
【0050】
トリップ機構4は、
図1及び
図2に示すように、主回路コイル41と、漏電引き外しコイル42(
図5参照)と、ヨーク43と、固定鉄心と、可動鉄心44と、プッシングピン45と、復帰ばねと、バイメタル板17と、を有している。主回路コイル41、漏電引き外しコイル42、ヨーク43、プッシングピン45、及び復帰ばねが、電磁式引き外し装置4Aを構成する。バイメタル板17が、熱動式引き外し装置4Bを構成する。
【0051】
まず電磁式引き外し装置4Aについて説明する。
【0052】
主回路コイル41は、その軸方向を上下方向に向けて器体5内に収容されている。主回路コイル41は、
図5に示すように、主回路C1の第1電路C11に挿入されている。具体的には、主回路コイル41は、第1端411と第2端412とを有しており、第1端411は、第1接点部11(の固定接点板110)と電気的に接続され、第2端412は、主回路C1から電源回路C2に分岐する分岐点P1と電気的に接続される。主回路コイル41は、主回路C1(の第1電路C11)の一部を構成する。
【0053】
漏電引き外しコイル42は、その軸方向を上下方向に向けて、主回路コイル41の内部に配置されるように器体5内に収容されている。漏電引き外しコイル42の周面は、テープ等で外装されている。漏電引き外しコイル42は、電線W2(
図5参照)に挿入されて、漏洩検知部2の制御部22と電気的に接続されている。
【0054】
固定鉄心は、磁性材料から形成されていて、漏電引き外しコイル42のコイルボビン内に収容されている。可動鉄心44は、磁性材料から形成されていて、上記コイルボビン内において、固定鉄心と接触する位置と、固定鉄心から離れる位置との間でスライド可能に配置される。復帰ばねは、例えばコイルばねから構成され、上記コイルボビン内において可動鉄心44と固定鉄心との間に収容されている。復帰ばねは、可動鉄心44が固定鉄心に接触する向きに移動すると撓み、可動鉄心44を固定鉄心から離れる向きに移動させる弾性力を発生する。プッシングピン45は、可動鉄心44に結合しており、その先端がコイルボビンの外側に突出する。そして、プッシングピン45は、可動鉄心44が固定鉄心に吸引されると、その先端がリンク部材150の一部と協働するように構成されている。
【0055】
ヨーク43は、磁性材料から形成されており、主回路コイル41の周囲を覆うように湾曲して形成されている。ただし、本実施形態のヨーク43は、一対の固定接点板110のうちの一方(右方)における一部によって構成されている。
【0056】
短絡電流が、主回路コイル41に、すなわち第1電路C11に流れると、ヨーク43や可動鉄心44等によって形成される磁路の磁気抵抗を小さくするように、復帰ばねのばね力に抗して可動鉄心44が上方に変位する。これに連動してプッシングピン45が上方に突出する。この時プッシングピン45の押力がリンク機構15を介して、アーム111に伝達されることで、可動接点11Bを固定接点11Aから引き離すようにアーム111が駆動される。すなわち、一対の第1接点部11がトリップされる。これと同時に、操作ハンドル16を介して押圧部14も駆動されて、第1トーションばねT1への押圧は解除され、第2接点部12もトリップされる。短絡電流が停止すると、復帰ばねのばね力により、可動鉄心44が下方に変位して、プッシングピン45も元の位置に復帰する。
【0057】
あるいは漏洩検知部2にて漏洩電流が検知されると、漏洩検知部2が、第1電源線C21上を流れている電流の電流値を変動(例えば増加)させて駆動電流として漏電引き外しコイル42に流す。その結果、主回路コイル41の場合と同様に、プッシングピン45が上方に突出して、一対の第1接点部11がトリップされ、これと同時に第2接点部12もトリップされる。第2接点部がトリップされることで、漏洩検知部2への動作電源の供給が断たれるため、漏電引き外しコイル42を流れる駆動電流も止まり、復帰ばねのばね力により、可動鉄心44が下方に変位して、プッシングピン45も元の位置に復帰する。
【0058】
次に熱動式引き外し装置4Bについて説明する。
【0059】
バイメタル板17としては、自己発熱によって湾曲する形式の直熱型や、ヒータによる加熱で湾曲する傍熱型のものを用いることができる。バイメタル板17の一端は、バイメタル板17が湾曲すると、リンク部材150の一部と協働するように構成されている。バイメタル板17の他端には、編組線114の一端が固着されている。編組線114の他端は、対応する(右側の)第1端子部7Aの端子板73に固着されている。
【0060】
バイメタル板17は、例えば過負荷による過電流が流れると、バイメタル板17の温度が上昇し、その一端が上側へ変位させる方向に曲がるように変形する。バイメタル板17の一端が変形すると、バイメタル板17の押力が、リンク機構15を介してアーム111に伝達されることで、可動接点11Bを固定接点11Aから引き離すようにアーム111が駆動される。すなわち、一対の第1接点部11がトリップされる。これと同時に、操作ハンドル16を介して押圧部14も駆動されて、第1トーションばねT1への押圧は解除され、第2接点部12もトリップされる。過負荷による過電流が停止すると、バイメタル板17の温度が低下して元の形状に復帰する。
【0061】
(2.7)消弧装置
消弧装置8は、第1接点部11の開極時に発生するアークを速やかに消弧するように構成される。消弧装置8は、
図1及び
図2に示すように、アーク走行板81と、消弧グリッド82とを有している。
【0062】
アーク走行板81は、帯板状の金属板を折り曲げることによって形成され、その一端は、バイメタル板17の一端(後端)と結合されている。アーク走行板81は、器体5の底壁56に沿って延設されている。消弧グリッド82は、複数枚の消弧板と、支持部とを有している。複数枚の消弧板は、導電性材料によって形成されており、前後方向に沿って間隔をおいて平行配置される。支持部は、電気絶縁性材料によって形成されており、複数枚の消弧板を支持する。
【0063】
消弧装置8は、可動接点11Bが固定接点11Aから引き離されたときに発生したアークを引き伸ばすと共に分断して消弧する。さらに器体5において、消弧装置8の下側における底壁56付近には、上記のアークにより発生したガスを排出する経路83が設けられており、底壁56には、経路83の出口となる排気口84が設けられている。
【0064】
(2.8)第2接点部
第2接点部12は、第1接点部11の開極に連動して開極し、主回路C1から分岐点P1で分岐した電源回路C2を通電状態から遮断状態に切り替える。
【0065】
電源回路C2は、
図5に示すよう、第1電源線C21と、第2電源線C22とを含み、後述する漏洩検知部2の制御部22の動作電源を供給するための回路である。第1電源線C21は、その一端が、第1電路C11における主回路コイル41の第2端412と電気的に接続される。また第1電源線C21は、その他端が、制御部22と電気的に接続される。第2接点部12は、第1電源線C21の途中に挿入されている。第2電源線C22は、その一端が、第2電路C12における第1端子71と第1接点部11との間の接続点P3と電気的に接続される。また第2電源線C22は、その他端が、制御部22と電気的に接続される。
【0066】
第2接点部12は、電源回路C2における通電状態を複数点の接触により維持する接触機構3(
図1及び
図2参照)を有している。接触機構3は、導体31と、導電性の第1トーションばねT1と、を有している。第1トーションばねT1は、例えばステンレス鋼(SUS)により形成されている。第1トーションばねT1は、例えば、2つのコイル部と、先端同士が繋がっている2つの腕部とを有したダブルトーションばねである。第1トーションばねT1は、導体31に対して複数点で接触する。
【0067】
第2接点部12は、可動接点と、当該可動接点が接触することで閉極し当該可動接点が離れることで開極する固定接点と、を有している。ただし、第1トーションばねT1の2つの腕部が、可動接点を構成する部材であり、導体31が、固定接点を構成する部材である。
【0068】
導体31は、金属(例えば銅合金)の線材によって、長軸部位を有した略L字の線状に形成されている。導体31は、その長軸部位が器体5の厚み方向(左右方向)に沿うように固定されている。導体31は、器体5内において、ブロック状の樹脂成形品である保持構造体H1によって保持されている。導体31の一端部は、電線W2(
図5参照:第1電源線C21の一部)の一端と半田接続されて、当該電線W2の他端は、主回路コイル41の第2端412と半田接合、又は溶接により接続されている。
【0069】
第1トーションばねT1は、導体31の後ろで、2つの腕部が導体31と対向するように配置される。回路遮断器1は、支持部13を更に備えており、支持部13が、第1トーションばねT1を支持する。支持部13は、例えば、導電性の板材(例えば金属板)に抜き加工等を施すことで、全体として略U字の板状に形成されている。
【0070】
支持部13は、第1トーションばねT1の2つのコイル部に嵌入される第1突起131(
図4参照)と、後述する第2トーションばねT2のコイル部に嵌入される第2突起132(
図4参照)と、を有している。要するに、支持部13は、第1トーションばねT1及び第2トーションばねT2を支持すると共に、これら2つのトーションばね(T1、T2)は、支持部13を介して互いに電気的に接続される。支持部13は、電線W3(
図5参照:第1電源線C21の他部)の一端と半田接続されて、当該電線W3の他端は、回路基板6の導体パターンに半田接続されて制御部22と電気的に接続される。
【0071】
そして、支持部13によって支持された第1トーションばねT1の各腕部の端部は、リンク機構15の押圧部14から押圧を受けるように配置される。また第1トーションばねT1では、コイル部に対して上記腕部とは反対側の、短めの腕部が、器体5の壁に接触している。第2接点部12が開極状態にある時、第1トーションばねT1の各腕部の端部は、押圧部14と僅かに接触していてもよいし離れていてもよい。ただし、第2接点部12が閉極状態にある時には、第1トーションばねT1の各腕部の端部は、腕部が弾性変形して湾曲するほど十分な押圧を押圧部14から受けて、腕部は、導体31と接触する。
【0072】
(2.9)漏洩検知機能
以下、回路遮断器1における漏電検知機能について説明する。漏洩検知部2(センサ)は、漏洩電流を検知した場合に、トリップ機構4の電磁式引き外し装置4Aに、第1接点部11を第2接点部12と共に強制的に開極させる機能を有している。
【0073】
具体的には、漏洩検知部2は、物理量として漏洩電流を検知する零相変流器21(ZCT:Zero-phase-sequence Current Transformer)と、漏洩電流に応じて電気信号を出力する制御部22と、を有している。
【0074】
零相変流器21は、
図1及び
図2に示すように、回路基板6の第1実装面601(一実装面:上面)に実装されている。回路基板6は、器体5の底壁56に対して起立した状態でやや傾いて器体5に収容されている。回路基板6には、零相変流器21の中央の孔と略同形及び略同寸法の貫通孔が形成されており、一対の編組線D1(接続線)が、零相変流器21の孔と回路基板6の貫通孔に挿通されている。一対の編組線D1は、主回路C1の一部を構成する。
【0075】
一対の編組線D1のうちの一方については、その一端が、第1電路C11における主回路コイル41の第2端412に固着され、その他端が、第1電路C11における第2端子部7Bの端子板73に固着されている。一対の編組線D1のうち他方については、その一端が、第2電路C12における第1接点部11の固定接点板110に固着され、その他端が、第2電路C12における第2端子部7Bの端子板73に固着されている。
【0076】
制御部22は、例えば、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを有している。そして、プロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが制御部22として機能する。プロセッサが実行するプログラムは、ここではコンピュータシステムのメモリに予め記録されているが、メモリカード等の記録媒体に記録されて提供されてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて提供されてもよい。また制御部22は、プロセッサ等のデジタルICによる構成に限定されず、アナログICにより構成されてもよい。
【0077】
制御部22は、主回路C1から電源回路C2を介して、動作電源を受け取る。具体的には、回路基板6にある電源ブロックが、電源回路C2から受け取った交流電源を所定電圧値の直流電圧に変換して、制御部22に供給する。
【0078】
ここで、回路遮断器1の使用中で、漏電が発生していない場合、負荷に対する往復電流(第1電路C11と第2電路C12とに流れる電流)によって発生する磁束が相殺されて、零相変流器21の出力線23(
図5参照)からの出力がゼロになる。一方、漏電が発生した場合、第1電路C11と第2電路C12とに流れる電流が不平衡になり、零相変流器21の出力線23には不平衡度合いに応じた電流が流れる。したがって、制御部22は、零相変流器21の出力に基づいて漏電(漏洩電流)が発生しているか否かを検知できる。制御部22は、漏電を検知すると、励磁ブロックに駆動電流(励磁電流)を生成させて漏電引き外しコイル42に流し、トリップ機構4にトリップ動作を行わせる。言い換えると、制御部22は、電気信号として漏電引き外しコイル42に駆動信号を出力し、トリップ機構4は、駆動信号を受けて漏電引き外しコイル42に駆動電流が流れると、第1接点部11及び第2接点部12を強制的に開極させる。
【0079】
なお、制御部22は、サージ吸収素子Z1に流れる電流を検知した場合にも、第1接点部11及び第2接点部12を強制的に開極させるように、漏電引き外しコイル42に駆動電流を流す。
【0080】
(2.10)試験機能
以下、回路遮断器1における試験機能について説明する。擬似漏電発生部C4は、主回路C1から分岐する通電路L1を通る電流の発生に応じて、零相変流器21を貫通する電線W1に擬似漏洩電流を流し、第1接点部11を開極させるように構成されている。
【0081】
ここでは、通電路L1は、
図5に示すように、分岐点P1から第2接点部12を含む接続点P4までの第1路L11と、接続点P4から第3接点部18を含む回路基板6までの第2路L12とから構成される。ただし、第1路L11は、電源回路C2の一部を兼ねている。「通電路L1を通る電流」は、全ての接点部(11、12、18)が閉極にある場合に発生する。擬似漏電発生部C4は、抵抗器R1(
図1、
図2及び
図5参照)と、第2トーションばねT2(
図1及び
図2参照)と、を有している。抵抗器R1は、通電路L1に挿入されている。抵抗器R1は、保持構造体H1によって保持されている。
【0082】
抵抗器R1における一対のリード端子のうちの左側のリード端子は、通電路L1における第2路L12の一部を構成する電線W1(
図5参照)の一端と半田接続され、当該電線W1の他端は、回路基板6上の導電パターンと電気的に接続されている。ただし、電線W1は、一対の編組線D1と同様に、零相変流器21の中央の孔及び回路基板6の貫通孔に挿通されている。
【0083】
一方、抵抗器R1における一対のリード端子のうちの右側のリード端子R32(
図1参照)は、抵抗器R1の本体から折り返された状態で保持構造体H1に保持される。このリード端子R32が、第3接点部18の固定接点を構成する部材である。
【0084】
第2トーションばねT2は、例えばステンレス鋼(SUS)により形成されている。第2トーションばねT2は、1つの腕部と、1つのコイル部とを有している。そして上述の通り、第2トーションばねT2は、略U形状の支持部13の第2突起132がコイル部に嵌入されることで、支持部13によって保持されている。支持部13は、
図5における接続点P4に相当する。
【0085】
第2トーションばねT2の腕部が、第3接点部18の可動接点を構成する部材である。要するに、第3接点部18の可動接点(腕部)が、固定接点(リード端子R32)に接触することで、第3接点部18が閉極し、可動接点が固定接点から離れると、第3接点部18が開極する。第2トーションばねT2の腕部は、その後ろ側にある、リード端子R32における露出する中央部と対向するように配置される。なお、第2トーションばねT2の、コイル部に対して腕部とは反対側にある短めの腕部は、第2ブロック5Bから突出するリブに接触して保持されている。
【0086】
ここで第2トーションばねT2は、回路遮断器1の動作試験を行う試験者からの操作部B1への操作に応じて、リード端子R32において保持構造体H1から露出する一部(中央部)に接触し、通電路L1を遮断状態から通電状態に切り替える。
【0087】
操作部B1は、外部からの操作を受け付けるように構成されている。操作部B1は、電気絶縁性を有した合成樹脂材料によって、ブロック状に形成されている。操作部B1は、その突起部B10が器体5の前壁55に設けられている露出窓550(
図3参照)から器体5の外部に突出するように、器体5に支持されている。
【0088】
第2トーションばねT2の腕部は、自然長の状態において、リード端子R32から離れた位置にあり、操作部B1の突起部B10が試験者の指先等で後方へ押し込まれることで操作部B1から押圧を受ける。その結果、第2トーションばねT2の腕部は、弾性変形によって湾曲するように撓みながら、腕部の先端部がリード端子R32に接触する。
【0089】
したがって、回路遮断器1の使用中で、接点部(11、12)が閉極状態にある時に、試験者が、トリップ機構4による接点部(11、12)の開極が正常に作動するか否かの試験を行うために、操作部B1を押すと、第3接点部18が閉極する。その結果、通電路L1が、遮断状態から通電状態に切り替わる。すると、零相変流器21に挿通されている電線W1を流れる電流の発生によって、零相変流器21の出力線23には不平衡度合いに応じた電流が流れる。制御部22は、零相変流器21の出力に基づいて漏電(漏洩電流)が発生していると判断して(疑似漏洩電流の検知)、接点部(11、12)を強制的に開極させるように、励磁ブロックを介して駆動電流を漏電引き外しコイル42に流す。よって、回路遮断器1が正常であれば、接点部(11、12)がトリップする。
【0090】
本実施形態では、上述の通り、抵抗器R1のリード端子R32が、第3接点部18の固定接点としての機能も兼ねているため、部品の共通化を図ることができる。
【0091】
(2.11)回路基板の傾き配置構造
以下、回路基板6の傾き配置構造について説明する。本実施形態の回路基板6は、
図1、
図2及び
図6に示すように、器体5内で傾けて配置されている。
【0092】
回路基板6は、例えば両面実装型(片面実装型でもよい)のプリント配線板であり、銅箔等により形成された導体パターンを有している。制御部22を含む制御ブロック、励磁ブロック、及び電源ブロック等の各種の回路ブロックを構成する複数の回路部品J1(
図6参照)は、回路基板6の第1実装面601(上面)又は第2実装面602(下面)に実装されている。また回路基板6には、複数の回路部品J1の1つであり、制御部22等の回路ブロックを雷サージ等から保護するバリスタとして、サージ吸収素子Z1(
図6参照)が実装されている。サージ吸収素子Z1は、例えば、ZNR(Zinc oxide NonlinearResistor)である。なお、
図6及び
図7では、器体5の第2ブロック5Bをドットハッチングで示す。
【0093】
零相変流器21及びサージ吸収素子Z1は、回路基板6の第1実装面601に実装されている。零相変流器21は、第1実装面601上で後ろ寄りに、サージ吸収素子Z1は、第1実装面601上で前寄りに、それぞれ配置されている。
【0094】
回路基板6は、器体5における前壁55とは反対側の底壁56に対して起立した状態で、器体5内で傾けて配置されている。言い換えると、回路基板6は、器体5の底壁56に対して縦置きで配置されている。なお、回路基板6は、底壁56に対して伏せた状態で(横置きで)、器体5内で傾けて配置されてもよい。
【0095】
回路基板6は、器体5内において、一対の第2端子部7Bと消弧装置8との間に配置されている。言い換えると、器体5は、回路基板6を収容する第1収容部S1を、一対の第2端子部7Bと消弧装置8との間に有している。消弧装置8、回路基板6、及び一対の第2端子部7Bは、上下方向において、上からこの順に並んでいる。
【0096】
また回路基板6は、器体5内において、主回路コイル41と一対の第2端子部7Bとの間に配置されている。言い換えると、器体5は、回路基板6を収容する第1収容部S1を、主回路コイル41と一対の第2端子部7Bとの間に有している。主回路コイル41、回路基板6、及び一対の第2端子部7Bは、上下方向において、上からこの順に並んでいる。主回路コイル41と消弧装置8とは、前後方向に並んでいる。
【0097】
回路基板6を収容する第1収容部S1は、器体5の厚み方向に沿って見て、略U字状となっている周壁53(
図6参照)によって囲まれた空間である。周壁53は、上述した隔壁53Aと、隔壁53Aに対向する対向壁53Bと、隔壁53A及び対向壁53Bの後端同士を連結する連結壁53Cと、から構成される。対向壁53B及び連結壁53Cは、アークにより発生したガスを排出する経路83の一部を形成する。特に、経路83の空間を十分に確保するために、対向壁53Bは、その後ろ側が後方に行くほど消弧装置8から離れるように傾斜した壁となっている。零相変流器21は、この対向壁53Bと対向するように、傾いた回路基板6の第1実装面601上に実装されている。零相変流器21の外郭(樹脂ケース)の後ろ側の角部は、対向壁53Bの傾斜に対応して、傾斜するように加工が施されている。対向壁53Bの前端と、前壁55との間には、主回路コイル41の第2端412等を第1収容部S1内に導入するための隙間が形成されている。
【0098】
回路基板6は、その厚み方向と交差する長さ方向D11(
図6参照)における両端(6A、6B)のうちの一端(第1端6A)の側に、端子部7の一面と対向する端子対向部61を有している。ここでは「回路基板6の長さ方向D11」は、例えば、器体5の厚み方向から見たときの、回路基板6の厚み方向と直交する方向であり、器体5の前後方向に対してやや傾いた方向である。器体5の前後方向に対する傾斜の角度は、一例として、数度~30度の範囲内であるが、特に限定されない。また「端子部7の一面」は、例えば、端子板73における、器体5の前後方向に沿ったストッパー731の一面732であることを想定する。ストッパー731は、差込口51から差し込まれた導電部(電線103、104又は導電バー)が端子金具74よりも更に奥に進入することを抑制する。
【0099】
そして回路基板6は、上記両端(6A、6B)のうちの他端(第2端6B)から端子対向部61に向かうほど第2端子部7Bの一面732から離れるように、傾けて配置されている(傾き配置構造)。言い換えると、ここでは一例として、回路基板6の傾きの基準は、端子部7の一面(ストッパー731の一面732)である。また零相変流器21は、端子対向部61にあり、そのため、例えば、零相変流器21を通る一対の編組線D1を、一対の第2端子部7Bに、それぞれ接続する作業を容易に行える。
【0100】
一方、器体5は、
図6に示すように、回路基板6と第2端子部7Bとの間に、配線の引き回しスペース52を有している。引き回しスペース52は、回路基板6の傾き配置構造によって、端子対向部61に向かうほど、広くなるように形成される。器体5は、回路基板6を収容する第1収容部S1と、第2端子部7Bを収容する一対の第2収容部S2とを隔てる隔壁53Aを有しているため、引き回しスペース52は、一例として、隔壁53Aと回路基板6との間にある。
【0101】
隔壁53Aは、その厚み方向が上下方向に沿っている板状の部位であり、第3ブロック5Cから、第1ブロック5A及び第2ブロック5Bそれぞれに向かって突出している。隔壁53Aは、前後方向に沿って延びている。ただし、隔壁53Aは、その前後方向における略中央より前半分が、後ろ半分に対して、回路基板6から離れる方向に凹んだ凹み531を有している。さらに隔壁53Aは、その後ろ側に、編組線D1が通るための窓部532を有している。
【0102】
本実施形態の回路基板6は、器体5内で傾けて配置されているため、回路基板6の実装面積の大きさを維持しつつ、器体5内における回路基板6を収容する第1収容部S1の小型化を図ることができる。つまり、第1収容部S1の前後方向における寸法が、回路基板6の長さ方向D11における寸法よりも小さくても、回路基板6は収容され得る。したがって、回路基板6を備えつつ、回路遮断器1の小型化を図ることができる。
【0103】
回路基板6の傾き配置構造は、例えば、第2端子部7Bの端子板73に対して一定の距離を空けて回路基板6を配置することを目的の1つとしている。その理由として、配線の引き回しスペース52において、第2端子部7Bにつながる接続部位(編組線D1)の配置空間の確保にある。言い換えると、編組線D1の癖付け用の空間の確保にある。編組線D1は、他の電線に比べて比較的径寸法が大きい上に、編組線D1の先端付近を屈曲させながら端子板73に向かわせるための癖を付ける必要があり、そのような屈曲部位は、かさばり易い。要するに、零相変流器21の中央の孔及び回路基板6の貫通孔を貫通する一対の編組線D1の先端を、一対の第2端子部7Bの端子板73に、それぞれ固着させる際に、比較的太い編組線D1の癖付けのための空間が必要となる。
【0104】
対して、回路基板6が、上述のように傾けて配置されているため、配線の引き回しスペース52を確保しつつ、回路遮断器1の小型化を図ることができる。特に、引き回しスペース52において、端子対向部61と第2端子部7Bの一面732との間に隙間が形成され易くなり、その隙間を第2端子部7Bにつながる接続部位の配置空間として容易に確保できる。
【0105】
また回路基板6は、その厚み方向と交差する長さ方向D11における両端(6A、6B)のうちの第2端6Bの側に、主回路コイル41と対向するコイル対向部62を有している。回路基板6は、上記両端(6A、6B)のうちの第1端6Aからコイル対向部62に向かうほど主回路コイル41から離れるように、傾けて配置されている。
【0106】
回路基板6の傾き配置構造は、例えば、主回路コイル41に対して一定の距離を空けて回路基板6を配置することを目的の1つとしている。その理由として、主回路コイル41の第2端412と編組線D1との接続部位(
図6参照:つなぎ目P2)の配置空間の確保にある。零相変流器21は、その中央の孔及び回路基板6の貫通孔を貫通する編組線D1の先端が、可能な限り端子板73の近傍に位置するように、回路基板6の第1実装面601上で後ろ側に配置されている。そのため、主回路コイル41の第2端412から零相変流器21の中央の孔までの距離は、比較的長く、第1実装面601上に配線される編組線D1の部位も長くなり易い。また主回路コイル41及び編組線D1の径寸法は、他の電線に比べて大きく、主回路コイル41の第2端412と編組線D1との接続部位は、かさばり易い。要するに、主回路コイル41と編組線D1とのつなぎ目P2及びその周囲の部位に関して、回路基板6に対する電気的絶縁性を確保するための空間が必要となる。
【0107】
対して、回路基板6が、上述のように傾けて配置されているため、例えば、コイル対向部62と主回路コイル41との間に隙間が形成され易くなる。そして、その隙間を、主回路コイル41につながる接続部位(つなぎ目P2)等の配置場所として容易に確保できる。
【0108】
ところで、回路基板6に実装されている複数の回路部品J1には、1又は複数の背高部品E1が含まれる。言い換えると、回路遮断器1は、1又は複数の背高部品E1を更に備える。背高部品E1は、器体5に収容され、かつ所定の高さ以上の高さを有する回路部品である。ここで言う「所定の高さ」とは、例えば、回路基板6の厚みの3倍程度を想定するが、特に限定されない。ここでは、背高部品E1は、サージ吸収素子Z1に相当する。そして、背高部品E1は、第2実装面602の側ではなく、編組線D1(接続線)と主回路コイル41とのつなぎ目P2と対向する第1実装面601の側にある。その結果、つなぎ目P2を収容する空間と背高部品E1を収容する空間との共通化を図ることができ、回路遮断器1の小型化を図ることができる。なお、本実施形態では、複数の回路部品J1のうち比較的背の低い部品(背低部品:例えば上記の「所定の高さ」未満)は、出来るだけ第2実装面602の側に実装されている。
【0109】
(2.12)回路基板の保持構造
器体5は、
図7に示すように、回路基板6を傾けて保持する保持構造54を有している。保持構造54は、器体5の第1ブロック5A及び第2ブロック5Bの各々の内面に設けられている。保持構造54は、保持溝54Aと、一対の保持リブ54Bとを有している。
図7では、第2ブロック5Bの保持構造54を図示するが、第1ブロック5Aの保持構造54と第2ブロック5Bの保持構造54とは、例えば、左右方向において互いに面対称となっている。
【0110】
保持溝54Aは、第1ブロック5A及び第2ブロック5Bの各々の内面において、回路基板6の左右方向における対応する縁部から突出する一対の凸部がそれぞれ嵌入可能な一対の細長い溝541を含む。また保持溝54Aは、後ろ側の溝541と一体となっていて形成されていて零相変流器21を逃がす凹所542も含む。
【0111】
一対の保持リブ54Bは、保持溝54Aの前端の両側において、保持溝54Aを間に挟むように各ブロック(5A又は5B)の内面から突出している。一対の保持リブ54Bの先端における互いに対向する面は、回路基板6の縁部が保持溝54Aに嵌入し易いように、先端に向かうほど互いに離れるように傾斜したガイド面543を有している。一対の保持リブ54Bは、回路基板6が保持溝54Aに嵌入した状態において、回路基板6の縁部を挟持する。
【0112】
保持溝54Aの一対の溝541の長手方向が、
図7に示すように、例えば端子板73の一面732に対して傾いているため、保持構造54によって保持される回路基板6の傾き配置を実現できる。
【0113】
このように器体5が保持構造54を有しているため、器体5に対する回路基板6の位置決めが容易となり、また回路基板6が傾いた状態で安定的に配置され得る。
【0114】
(2.13)水の浸入
ところで、回路遮断器1の使用中において、回路遮断器1の器体5内に水が浸入する可能性がある。例えば地震等の災害によって水漏れが発生し、水(例えば水滴)が、電線103等の導電部を伝って上側の差込口51等から器体5内に浸入する可能性がある。そして、水が器体5内において自重により落下又は器体5の内壁や器体5内の収容物等を伝って滴り落ちていく可能性がある。
【0115】
これに対して、回路基板6は、
図8に示すように、浸入した水が、回路基板6における前側(低い側)、すなわちコイル対向部62の側に集まり易い、傾き配置構造を有している。特に、コイル対向部62の上面(第1実装面601)には、制御部22等の回路ブロックを雷サージ等から保護するサージ吸収素子Z1(水分検知部)が配置されている。言い換えると、サージ吸収素子Z1(水分検知部)は、傾けて配置された回路基板6上において低い側に配置されている。そのため、サージ吸収素子Z1が濡れることで、サージ吸収素子Z1の両端で短絡が起きる可能性が高くなる。そして、この短絡により、制御部22は、サージ吸収素子Z1に流れる電流を検知した場合と同様に、第1接点部11及び第2接点部12を強制的に開極させるように、漏電引き外しコイル42に駆動電流を流す。要するに、サージ吸収素子Z1が、サージの吸収機能だけでなく、水分を検知する水分検知部の機能を兼ね備えている。
【0116】
このように回路遮断器1は、水分検知部を備えることで、器体5内に水が浸入した場合に、自重により下に向かう水が、傾いた回路基板6を伝って水分検知部に到達する可能性を高めることができる。そして、水の浸入検知に応じて接点部(11、12)がトリップするため、回路遮断器1の信頼性が向上される。
【0117】
一方、零相変流器21は、サージ吸収素子Z1の位置とは逆に、傾けて配置された回路基板6上において高い側に配置されているため、零相変流器21が濡れてしまって異常を起こす可能性を低減できる。
【0118】
なお、サージ吸収素子Z1は、コイル対向部62の下面(第2実装面602)に配置されてもよいが、コイル対向部62の上面(第1実装面601)に配置される方が水分を捕捉できる可能性を高めることができる。
【0119】
(2.14)器体の隔壁
本実施形態では、器体5が、第1収容部S1と一対の第2収容部S2とを隔てる隔壁53Aを有しているため、隔壁53Aによって、隣り合う回路基板6及び第2端子部7Bの収容部(S1、S2)を容易に隔てることができる。例えば、回路基板6と第2端子部7Bとの電気絶縁性を確保できる。特に、隔壁53Aが凹み531を有しているため、凹み531によって、回路基板6に実装されている回路部品J1等が隔壁53Aに接触する可能性を低減する逃がし構造を実現できる。
【0120】
ところで、隔壁53Aの凹み531は、第2収容部S2において、端子ねじ75のある空間が、端子金具74及び端子板73のある空間に比べて狭く設定可能である点を利用して、形成されている。そして、凹み531は、回路基板6の傾き配置構造にとって必須の構成要素ではない。言い換えると、仮に回路基板6が傾いていない場合であっても、凹み531によって、回路基板6に実装されている回路部品J1等が隔壁53Aに接触する可能性を低減できる。
【0121】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、上記実施形態に係る回路遮断器1と同様の機能は、回路遮断器1の制御方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。
【0122】
以下、上記実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。以下では、上記実施形態を「基本例」と呼ぶこともある。
【0123】
本開示における回路遮断器1の制御部22は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における回路遮断器1の制御部22としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0124】
また、回路遮断器1における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは回路遮断器1に必須の構成ではなく、回路遮断器1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、回路遮断器1の少なくとも一部の機能、例えば、回路遮断器1の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。反対に、基本例のように、回路遮断器1の複数の機能が1つの筐体内に集約されていてもよい。
【0125】
基本例では、4つの端子部7は、全てねじ式端子であるが、特に限定されない。4つの端子部7のうちの少なくとも1つが、ねじによらずに結線可能な、いわゆる速結構造の端子部でもよい。
【0126】
基本例では、回路基板6の傾きの基準は、端子部7の一面(端子板73のストッパー731の一面732)である。しかし、例えば、回路基板6の傾きの基準は、水平面101(
図8参照)でもよい。すなわち、回路基板6は、回路遮断器1が取付の対象物100に取り付けられた状態において、水平面101に対して傾いていてもよい。
【0127】
また回路基板6の傾きの基準は、対象物100の取付面102でもよい。すなわち、回路基板6は、回路遮断器1が取付の対象物100に取り付けられた状態において、対象物100における取付面102に対して傾いていてもよい。
【0128】
また回路基板6の傾きの基準は、器体5の隔壁53Aでもよい。すなわち、回路基板6は、隔壁53Aにおける回路基板6と対向する一面530(
図6参照)に対して傾いていてもよい。
【0129】
基本例では、サージ吸収素子Z1が、水分検知部の機能を兼ね備えていて、部品の共通化が図られている。しかし、水分検知部は、サージ吸収素子Z1とは別に設けられてもよい。回路遮断器1は、例えば、水分検知部として、サージ吸収素子Z1とは別体に、ICチップ化された水分検知センサを備え、当該水分検知センサが、傾けて配置された回路基板6上において低い側に配置されてもよい。
【0130】
(4)まとめ
以上説明したように、第1の態様に係る回路遮断器(1)は、回路基板(6)と、器体(5)と、を備える。器体(5)は、少なくとも回路基板(6)を収容する。回路基板(6)は、器体(5)内で傾けて配置されている。第1の態様によれば、例えば、回路基板(6)の実装面積の大きさを維持しつつ、器体(5)内における回路基板(6)を収容するスペース(第1収容部S1)の小型化を図ることができる。したがって、回路基板(6)を備えつつ、回路遮断器(1)の小型化を図ることができる。
【0131】
第2の態様に係る回路遮断器(1)は、第1の態様において、水分を検知する水分検知部(サージ吸収素子Z1)を、更に備えることが好ましい。水分検知部(サージ吸収素子Z1)は、器体(5)に収容され、かつ傾けて配置された回路基板(6)上において低い側に配置されていることが好ましい。第2の態様によれば、例えば、器体(5)内に水が浸入した場合に、自重により下に向かう水が、回路基板(6)を伝って水分検知部(サージ吸収素子Z1)に到達する可能性を高めることができる。
【0132】
第3の態様に係る回路遮断器(1)に関して、第1の態様又は第2の態様において、回路基板(6)は、回路遮断器(1)が取付の対象物(100)に取り付けられた状態において、水平面(101)に対して傾いていることが好ましい。第3の態様によれば、水平面(101)を基準として傾く回路基板(6)を備えた回路遮断器(1)を提供できる。
【0133】
第4の態様に係る回路遮断器(1)に関して、第1の態様~第3の態様のいずれか1つにおいて、回路基板(6)は、次の通りであることが好ましい。すなわち、回路基板(6)は、回路遮断器(1)が取付の対象物(100)に取り付けられた状態において、対象物(100)における取付面(102)に対して傾いていることが好ましい。第4の態様によれば、取付面(102)を基準として傾く回路基板(6)を備えた回路遮断器(1)を提供できる。
【0134】
第5の態様に係る回路遮断器(1)は、第1の態様~第4の態様のいずれか1つにおいて、器体(5)に収容され、かつ器体(5)の差込口(51)を介して電源側又は負荷側の導電部(103又は104)が接続される端子部(7)を、更に備えることが好ましい。第5の態様によれば、端子部(7)と回路基板(6)とを備えつつ、回路遮断器(1)の小型化を図ることができる。
【0135】
第6の態様に係る回路遮断器(1)に関して、第5の態様において、回路基板(6)は、その厚み方向と交差する方向(長さ方向D11)における両端のうちの一端(第1端6A)の側に、端子部(7)の一面と対向する端子対向部(61)を有することが好ましい。回路基板(6)は、上記両端のうちの他端から端子対向部(61)に向かうほど端子部(7)の一面から離れるように、傾けて配置されていることが好ましい。第6の態様によれば、例えば、端子対向部(61)と端子部(7)の一面との間に隙間が形成され易くなり、その隙間を端子部(7)につながる接続部位の配置空間に利用できる。
【0136】
第7の態様に係る回路遮断器(1)に関して、第5の態様又は第6の態様において、器体(5)は、回路基板(6)と端子部(7)との間に、配線の引き回しスペース(52)を有することが好ましい。第7の態様によれば、引き回しスペース(52)を確保しつつ、回路遮断器(1)の小型化を図ることができる。
【0137】
第8の態様に係る回路遮断器(1)に関して、第5の態様~第7の態様のいずれか1つにおいて、器体(5)は、第1収容部(S1)と、第2収容部(S2)と、隔壁(53A)と、有することが好ましい。第1収容部(S1)は、回路基板(6)が収容される。第2収容部(S2)は、第1収容部(S1)の隣にあり、端子部(7)が収容される。隔壁(53A)は、第1収容部(S1)と第2収容部(S2)とを隔てる。第8の態様によれば、隔壁(53A)によって、隣り合う回路基板(6)及び端子部(7)の収容部(S1、S2)を容易に隔てることができる。例えば、回路基板(6)と端子部(7)との電気絶縁性を確保できる。
【0138】
第9の態様に係る回路遮断器(1)に関して、第8の態様において、隔壁(53A)は、回路基板(6)から離れる方向に凹んだ凹み(531)を有することが好ましい。第9の態様によれば、凹み(531)によって、例えば回路基板(6)に実装されている回路部品(J1)等が隔壁(53A)に接触する可能性を低減する逃がし構造を実現できる。
【0139】
第10の態様に係る回路遮断器(1)に関して、第8の態様又は第9の態様において、回路基板(6)は、隔壁(53A)における回路基板(6)と対向する一面(530)に対して傾いていることが好ましい。第10の態様によれば、隔壁(53A)を基準として傾く回路基板(6)を備えた回路遮断器(1)を提供できる。
【0140】
第11の態様に係る回路遮断器(1)は、第5の態様~第10の態様のいずれか1つにおいて、接点部(第1接点部11)と、消弧装置(8)と、を更に備えることが好ましい。接点部(第1接点部11)は、主回路(C1)を通電状態から遮断状態に切り替える。消弧装置(8)は、接点部(第1接点部11)に生じるアークを消弧する。接点部(第1接点部11)及び消弧装置(8)は、器体(5)に収容される。回路基板(6)は、器体(5)内において、端子部(7)と消弧装置(8)との間に配置されている。第11の態様によれば、回路基板(6)が端子部(7)と消弧装置(8)との間にある場合において、回路遮断器(1)の小型化を図ることができる。
【0141】
第12の態様に係る回路遮断器(1)は、第5の態様~第11の態様のいずれか1つにおいて、接点部(第1接点部11)と、トリップ機構(4)と、を更に備えることが好ましい。接点部(第1接点部11)は、主回路(C1)を通電状態から遮断状態に切り替える。トリップ機構(4)は、主回路(C1)に設けられた主回路コイル(41)を有し、短絡電流が主回路コイル(41)に流れると、接点部(第1接点部11)を開極させる。接点部(第1接点部11)及びトリップ機構(4)は、器体(5)に収容される。回路基板(6)は、その厚み方向と交差する方向(長さ方向D11)における両端のうちの一端(第2端6B)の側に、主回路コイル(41)と対向するコイル対向部(62)を有する。回路基板(6)は、上記両端のうちの他端からコイル対向部(62)に向かうほど主回路コイル(41)から離れるように、傾けて配置されている。第12の態様によれば、例えば、コイル対向部(62)と主回路コイル(41)との間に隙間が形成され易くなり、その隙間を、主回路コイル(41)につながる接続部位等の配置場所として容易に確保できる。
【0142】
第13の態様に係る回路遮断器(1)は、第12の態様において、接続線(編組線D1)と、背高部品(E1)と、を更に備えることが好ましい。接続線(編組線D1)は、主回路(C1)の一部を構成し、かつ端子部(7)と主回路コイル(41)とを接続する。背高部品(E1)は、器体(5)に収容され、かつ所定の高さ以上の高さを有する。回路基板(6)は、接続線(編組線D1)と主回路コイル(41)とのつなぎ目(P2)と対向する一実装面(第1実装面601)を有する。背高部品(E1)は、一実装面(第1実装面601)の側にある。第13の態様によれば、背高部品(E1)が一実装面(第1実装面601)の側にあるため、つなぎ目(P2)を収容するスペースと背高部品(E1)を収容するスペースとの共通化を図ることができる。したがって、回路遮断器(1)の小型化を図ることができる。
【0143】
第14の態様に係る回路遮断器(1)に関して、第12の態様又は第13の態様において、回路基板(6)は、器体(5)内において、主回路コイル(41)と端子部(7)との間に配置されていることが好ましい。第14の態様によれば、回路基板(6)が主回路コイル(41)と端子部(7)との間にある場合において、回路遮断器(1)の小型化を図ることができる。
【0144】
第15の態様に係る回路遮断器(1)は、第5の態様~第14の態様のいずれか1つにおいて、漏洩電流を検知する零相変流器(21)を、更に備えることが好ましい。零相変流器(21)は、回路基板(6)に実装されている。第15の態様によれば、零相変流器(21)が実装された回路基板(6)を備えつつ、回路遮断器(1)の小型化を図ることができる。
【0145】
第16の態様に係る回路遮断器(1)に関して、第15の態様において、回路基板(6)は、その厚み方向と交差する方向における一端の側に、端子部(7)の一面と対向する端子対向部(61)を有することが好ましい。零相変流器(21)は、端子対向部(61)にある。第16の態様によれば、例えば、零相変流器(21)を通る編組線(D1)を端子部(7)に接続する作業を容易に行える。
【0146】
第17の態様に係る回路遮断器(1)に関して、第1の態様~第16の態様のいずれか1つにおいて、器体(5)は、回路基板(6)を傾けて保持する保持構造(54)を有することが好ましい。第17の態様によれば、器体(5)に対する回路基板(6)の位置決めが容易となる。
【0147】
第18の態様に係る回路遮断器(1)は、第1の態様~第17の態様のいずれか1つにおいて、接点部(第1接点部11)と、操作ハンドル(16)と、を更に備えることが好ましい。接点部(第1接点部11)は、器体(5)に収容され、かつ主回路(C1)を通電状態から遮断状態に切り替える。操作ハンドル(16)は、少なくとも一部が器体(5)の前壁(55)から露出し、手動操作により接点部(第1接点部11)を開極又は閉極させる。回路基板(6)は、器体(5)における前壁(55)とは反対側の底壁(56)に対して起立した状態で、器体(5)内で傾けて配置されている。第18の態様によれば、例えば、前壁(55)と底壁(56)とが並ぶ並び方向と交差する方向に対して、回路遮断器(1)の小型化を図り易くできる。
【0148】
第2~18の態様に係る構成については、回路遮断器(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0149】
1 回路遮断器
11 第1接点部(接点部)
16 操作ハンドル
21 零相変流器
4 トリップ機構
41 主回路コイル
5 器体
51 差込口
52 引き回しスペース
53A 隔壁
530 一面
531 凹み
54 保持構造
55 前壁
56 底壁
6 回路基板
601 第1実装面(一実装面)
61 端子対向部
62 コイル対向部
7 端子部
8 消弧装置
C1 主回路
D1 編組線(接続線)
E1 背高部品
P2 つなぎ目
S1 第1収容部
S2 第2収容部
Z1 サージ吸収素子(水分検知部)
100 対象物
101 水平面
102 取付面
103 電線(導電部)
104 電線(導電部)