(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】器具の洗浄方法、原液処理装置および原液処理装置の操作方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/00 20060101AFI20240104BHJP
【FI】
A61M1/00 190
(21)【出願番号】P 2019149495
(22)【出願日】2019-08-16
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000132954
【氏名又は名称】株式会社タカトリ
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】岡久 稔也
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 正弘
(72)【発明者】
【氏名】村島 徹
(72)【発明者】
【氏名】駒井 啓子
(72)【発明者】
【氏名】立木 弥生
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-126763(JP,A)
【文献】国際公開第2016/060209(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液を濃縮して濃縮液を形成する装置の操作方法であって、
装置が、
前記原液を濾過する濾過部材を有する濾過器と、
該濾過器によって濾過された濾過液が供給され、該濾過液を濃縮して前記濃縮液を形成する濃縮器と、
前記濾過器に前記原液を供給する原液供給部と、
該原液供給部と前記濾過器の原液供給口とを連通する給液流路と、
前記濾過器の濾過液排出口と前記濃縮器の濾過液供給口とを連通する濾過液供給流路と、
前記濃縮器の濃縮液排出口に接続された濃縮液流路と、
前記濃縮器において前記濃縮液と分離された廃液を排出する廃液排出口に接続された廃液流路と、
各流路の送液を行う送液部と、
該送液部の作動を制御する制御部と、を備えており、
前記濃縮器の濃縮器膜間差圧に基づいて前記濾過器から前記濃縮器への送液量および/または濃縮液の濃縮倍率を調整
し、
前記濃縮器の濃縮器膜間差圧が設定差圧よりも小さい場合には、前記濾過器から前記濃縮器への送液量を増加させ、
前記濃縮器の濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内にある場合には、前記濾過器から前記濃縮器への送液量を維持し、
前記濃縮器の濃縮器膜間差圧が設定差圧より大きい場合には、前記濾過器から前記濃縮器への送液量を減少させる
ことを特徴とする原液処理装置の操作方法。
【請求項2】
原液を濃縮して濃縮液を形成する装置の操作方法であって、
装置が、
前記原液を濾過する濾過部材を有する濾過器と、
該濾過器によって濾過された濾過液が供給され、該濾過液を濃縮して前記濃縮液を形成する濃縮器と、
前記濾過器に前記原液を供給する原液供給部と、
該原液供給部と前記濾過器の原液供給口とを連通する給液流路と、
前記濾過器の濾過液排出口と前記濃縮器の濾過液供給口とを連通する濾過液供給流路と、
前記濃縮器の濃縮液排出口に接続された濃縮液流路と、
前記濃縮器において前記濃縮液と分離された廃液を排出する廃液排出口に接続された廃液流路と、
各流路の送液を行う送液部と、
該送液部の作動を制御する制御部と、を備えており、
前記濃縮器の濃縮器膜間差圧に基づいて前記濾過器から前記濃縮器への送液量および/または濃縮液の濃縮倍率を調整し、
前記濃縮器の濃縮器膜間差圧が設定差圧より小さい場合には、前記濃縮液流路の流量を減少させ、および/または、前記廃液流路の流量を増加させ、
前記濃縮器の濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内にある場合には、前記濃縮液流路および前記廃液流路の流量を維持し、
前記濃縮器の濃縮器膜間差圧が設定差圧よりも大きい場合には、前記濃縮液流路の流量を増加させ、および/または、前記廃液流路の流量を減少させる
ことを特徴とす
る原液処理装置の操作方法
。
【請求項3】
原液を濃縮して濃縮液を形成する装置であって、
装置が、
前記原液を濾過する濾過部材を有する濾過器と、
該濾過器によって濾過された濾過液が供給され、該濾過液を濃縮して前記濃縮液を形成する濃縮器と、
前記濾過器に前記原液を供給する原液供給部と、
該原液供給部と前記濾過器の原液供給口とを連通する給液流路と、
前記濾過器の濾過液排出口と前記濃縮器の濾過液供給口とを連通する濾過液供給流路と、
前記濃縮器の濃縮液排出口に接続された濃縮液流路と、
前記濃縮器において前記濃縮液と分離された廃液を排出する廃液排出口に接続された廃液流路と、
各流路の送液を行う送液部と、
該送液部の作動を制御する制御部と、を備えており、
該制御部が、
前記濃縮器の濃縮器膜間差圧に基づいて前記送液部の作動を制御して前記濾過器から前記濃縮器への送液量および/または濃縮液の濃縮倍率を調整
し、
前記制御部は、
前記濃縮器の濃縮器膜間差圧が設定差圧よりも小さい場合には、前記濾過器から前記濃縮器への送液量を増加させ、
前記濃縮器の濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内にある場合には、前記濾過器から前記濃縮器への送液量を維持し、
前記濃縮器の濃縮器膜間差圧が設定差圧より大きい場合には、前記濾過器から前記濃縮器への送液量を減少させるように、前記送液部の作動を制御する
ことを特徴とする原液処理装置。
【請求項4】
原液を濃縮して濃縮液を形成する装置であって、
装置が、
前記原液を濾過する濾過部材を有する濾過器と、
該濾過器によって濾過された濾過液が供給され、該濾過液を濃縮して前記濃縮液を形成する濃縮器と、
前記濾過器に前記原液を供給する原液供給部と、
該原液供給部と前記濾過器の原液供給口とを連通する給液流路と、
前記濾過器の濾過液排出口と前記濃縮器の濾過液供給口とを連通する濾過液供給流路と、
前記濃縮器の濃縮液排出口に接続された濃縮液流路と、
前記濃縮器において前記濃縮液と分離された廃液を排出する廃液排出口に接続された廃液流路と、
各流路の送液を行う送液部と、
該送液部の作動を制御する制御部と、を備えており、
該制御部が、
前記濃縮器の濃縮器膜間差圧に基づいて前記送液部の作動を制御して前記濾過器から前記濃縮器への送液量および/または濃縮液の濃縮倍率を調整し、
前記制御部は、
前記濃縮器の濃縮器膜間差圧が設定差圧より小さい場合には、前記濃縮液流路の流量を減少させ、および/または、前記廃液流路の流量を増加させ、
前記濃縮器の濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内にある場合には、前記濃縮液流路および前記廃液流路の流量を維持し、
前記濃縮器の濃縮器膜間差圧が設定差圧よりも大きい場合には、前記濃縮液流路の流量を増加させ、および/または、前記廃液流路の流量を減少させる
ことを特徴とす
る原液処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、器具の洗浄方法、原液処理装置および原液処理装置の操作方法に関する。さらに詳しくは、癌性胸腹膜炎、肝硬変などにおいて胸部や腹部に溜まる胸腹水や血漿交換療法の廃液血漿などの原液を濾過したり濃縮したりして点滴静注する処理液を得る原液処理装置および原液処理装置の操作方法、また、かかる原液処理装置および原液処理装置に使用される器具の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌性胸腹膜炎、肝硬変などでは、胸腔や腹腔に胸水や腹水が溜まる場合があり、このような胸腹水が溜まった状態では、胸腹水が周囲の臓器を圧迫するなどの問題が生じる。かかる問題を改善するために、穿刺により胸腹水を抜く処理が行われる場合がある。
【0003】
一方、胸腹水には、血液から漏出した血漿成分の一部または全てが含まれており、この血漿中には主要な蛋白質(例えば、アルブミンやグロブリンなど)が含まれている。胸腹水を抜くことによって上記症状は改善されるものの、水分とともに蛋白質などの人体に有用な成分などが失われてしまう。このため、アルブミン製剤やグロブリン製剤などを静脈から投与するなどして失われた成分を補給することが必要になる。
【0004】
しかし、アルブミン製剤やグロブリン製剤などを静脈から投与することによって、特定の成分を補給することはできるものの、製剤が高価であり、治療費が高くなる。
しかも、失われた成分のうち特定の成分を限られた量しか供給できないので、低栄養や易感染性などの問題が生じる可能性もある。
【0005】
そこで、胸腔や腹腔から抜いた胸水または腹水(以下原液という場合がある)を処理した処理液を静脈内へ投与する治療方法、いわゆる胸腹水濾過濃縮再静注法(Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy;CART)が開発されている。かかるCARTの場合、胸水や腹水に含まれる細胞成分以外の有効な成分の大部分を患者の体内に戻すことができるので、特定の成分に限定することなく、血液から失われた成分を効果的に患者に供給できる。しかも、濃縮液を投与しても不足する成分を不足する量だけ製剤によって補えばよいので、アルブミン製剤などの使用量を極力少なくすることができ、治療費を抑えることができる。
【0006】
CARTにおいて、患者の体内に戻す処理液は胸水や腹水を濾過濃縮することによって生成される。このような処理液を生成する処理装置では、胸水や腹水等の原液を中空糸膜や板状の透過膜などの濾過部材を有する濾過器に供給して液体成分(以下濾過液という場合がある)を分離する。分離された濾過液を濃縮器に通すことによって濾過液から水分を除去すれば濾過液を濃縮した濃縮液、つまり、上述した処理液を得ることができる(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許5062631号公報
【文献】特開2015-126763号公報
【文献】特開2019-13487号公報
【文献】特開2019-13488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、CARTでは、患者の体内から抜いた原液を処理した処理液を患者の体内に戻しているが、濾過器や濃縮器に詰りが発生すれば原液の処理が適切に行えなくなる。したがって、濾過器や濃縮器の詰りを除くために、濾過器や濃縮器を適切に洗浄することが求められる。
【0009】
また、濾過濃縮の途中で濾過器や濃縮器の洗浄が行われるが、洗浄の際に回路内の濾過液や濃縮液のロスが生じないように、洗浄の前に濾過液や濃縮液が回収される場合がある(例えば、特許文献3、4参照)。この場合、濃縮器を通過させて濾過液や濃縮液が回収されるが、濃縮器の詰りが生じているような場合には、濾過液や濃縮液を適切に回収できない可能性がある。
【0010】
本発明はかかる事情に鑑み、濾過器や濃縮器を適切に洗浄することができる器具の洗浄方法、原液処理装置の操作方法および原液処理装置を提供することを目的とする。
また、濾過液や濃縮液を適切に回収できる原液処理装置の操作方法および原液処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
<原液処理装置の操作方法>
第1発明の原液処理装置の操作方法は、原液を濃縮して濃縮液を形成する装置の操作方法であって、装置が、前記原液を濾過する濾過部材を有する濾過器と、該濾過器によって濾過された濾過液が供給され、該濾過液を濃縮して前記濃縮液を形成する濃縮器と、前記濾過器に前記原液を供給する原液供給部と、該原液供給部と前記濾過器の原液供給口とを連通する給液流路と、前記濾過器の濾過液排出口と前記濃縮器の濾過液供給口とを連通する濾過液供給流路と、前記濃縮器の濃縮液排出口に接続された濃縮液流路と、前記濃縮器において前記濃縮液と分離された廃液を排出する廃液排出口に接続された廃液流路と、流路の送液を行う送液部と、該送液部の作動を制御する制御部と、を備えており、前記濃縮器の濃縮器膜間差圧に基づいて前記濾過器から前記濃縮器への送液量および/または濃縮液の濃縮倍率を調整し、前記濾過器内の濾過液を回収する作業の際に、前記濃縮器の濃縮器膜間差圧が設定差圧よりも小さい場合には、前記濾過器から前記濃縮器への送液量を増加させ、前記濃縮器の濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内にある場合には、前記濾過器から前記濃縮器への送液量を維持し、前記濃縮器の濃縮器膜間差圧が設定差圧より大きい場合には、前記濾過器から前記濃縮器への送液量を減少させることを特徴とする。
第2発明の原液処理装置の操作方法は、原液を濃縮して濃縮液を形成する装置の操作方法であって、装置が、前記原液を濾過する濾過部材を有する濾過器と、該濾過器によって濾過された濾過液が供給され、該濾過液を濃縮して前記濃縮液を形成する濃縮器と、前記濾過器に前記原液を供給する原液供給部と、該原液供給部と前記濾過器の原液供給口とを連通する給液流路と、前記濾過器の濾過液排出口と前記濃縮器の濾過液供給口とを連通する濾過液供給流路と、前記濃縮器の濃縮液排出口に接続された濃縮液流路と、前記濃縮器において前記濃縮液と分離された廃液を排出する廃液排出口に接続された廃液流路と、流路の送液を行う送液部と、該送液部の作動を制御する制御部と、を備えており、前記濃縮器の濃縮器膜間差圧に基づいて前記濾過器から前記濃縮器への送液量および/または濃縮液の濃縮倍率を調整し、前記濾過器内の濾過液を回収する作業の際に、前記濃縮器の濃縮器膜間差圧が設定差圧より小さい場合には、前記濃縮液流路の流量を減少させ、および/または、前記廃液流路の流量を増加させ、前記濃縮器の濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内にある場合には、前記濃縮液流路および前記廃液流路の流量を維持し、前記濃縮器の濃縮器膜間差圧が設定差圧よりも大きい場合には、前記濃縮液流路の流量を増加させ、および/または、前記廃液流路の流量を減少させることを特徴とする。
<原液処理装置>
第3発明の原液処理装置は、原液を濃縮して濃縮液を形成する装置であって、装置が、前記原液を濾過する濾過部材を有する濾過器と、該濾過器によって濾過された濾過液が供給され、該濾過液を濃縮して前記濃縮液を形成する濃縮器と、前記濾過器に前記原液を供給する原液供給部と、該原液供給部と前記濾過器の原液供給口とを連通する給液流路と、前記濾過器の濾過液排出口と前記濃縮器の濾過液供給口とを連通する濾過液供給流路と、前記濃縮器の濃縮液排出口に接続された濃縮液流路と、前記濃縮器において前記濃縮液と分離された廃液を排出する廃液排出口に接続された廃液流路と、各流路の送液を行う送液部と、該送液部の作動を制御する制御部と、を備えており、該制御部が、前記濃縮器の濃縮器膜間差圧に基づいて前記送液部の作動を制御して前記濾過器から前記濃縮器への送液量および/または濃縮液の濃縮倍率を調整し、前記制御部は、前記濃縮器の濃縮器膜間差圧が設定差圧よりも小さい場合には、前記濾過器から前記濃縮器への送液量を増加させ、前記濃縮器の濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内にある場合には、前記濾過器から前記濃縮器への送液量を維持し、前記濃縮器の濃縮器膜間差圧が設定差圧より大きい場合には、前記濾過器から前記濃縮器への送液量を減少させるように、前記送液部の作動を制御することを特徴とする。
第4発明の原液処理装置は、原液を濃縮して濃縮液を形成する装置であって、装置が、前記原液を濾過する濾過部材を有する濾過器と、該濾過器によって濾過された濾過液が供給され、該濾過液を濃縮して前記濃縮液を形成する濃縮器と、前記濾過器に前記原液を供給する原液供給部と、該原液供給部と前記濾過器の原液供給口とを連通する給液流路と、前記濾過器の濾過液排出口と前記濃縮器の濾過液供給口とを連通する濾過液供給流路と、前記濃縮器の濃縮液排出口に接続された濃縮液流路と、前記濃縮器において前記濃縮液と分離された廃液を排出する廃液排出口に接続された廃液流路と、各流路の送液を行う送液部と、該送液部の作動を制御する制御部と、を備えており、該制御部が、前記濃縮器の濃縮器膜間差圧に基づいて前記送液部の作動を制御して前記濾過器から前記濃縮器への送液量および/または濃縮液の濃縮倍率を調整し、前記制御部は、前記濃縮器の濃縮器膜間差圧が設定差圧より小さい場合には、前記濃縮液流路の流量を減少させ、および/または、前記廃液流路の流量を増加させ、前記濃縮器の濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内にある場合には、前記濃縮液流路および前記廃液流路の流量を維持し、前記濃縮器の濃縮器膜間差圧が設定差圧よりも大きい場合には、前記濃縮液流路の流量を増加させ、および/または、前記廃液流路の流量を減少させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
<原液処理装置の操作方法>
第1発明によれば、濃縮器膜間差圧に基づいて送液部を制御するので、濾過器や濃縮器の能力を効果的に活用でき、さらに原液から濃縮液を生成する時間を短くでき、濃縮効率を向上させることができる。しかも、濃縮器内の圧力が上昇して作業を実施することが不可能になったり、濃度が薄い濃縮液が生成されたりする等の問題が生じることを防止できる。
第2発明によれば、濃縮器膜間差圧に基づいて送液部を制御するので、濾過器や濃縮器の能力を効果的に活用でき、さらに原液から濃縮液を生成する時間を短くでき、濃縮効率を向上させることができる。しかも、濃縮器内の圧力が上昇して作業を実施することが不可能になったり、濃度が薄い濃縮液が生成されたりする等の問題が生じることを防止できる。
<原液処理装置>
第3発明によれば、濃縮器膜間差圧に基づいて送液部を制御するので、濾過器や濃縮器の能力を効果的に活用でき、さらに原液から濃縮液を生成する時間を短くでき、濃縮効率を向上させることができる。しかも、濃縮器内の圧力が上昇して作業を実施することが不可能になったり、濃度が薄い濃縮液が生成されたりする等の問題が生じることを防止できる。
第4発明によれば、濃縮器膜間差圧に基づいて送液部を制御するので、濾過器や濃縮器の能力を効果的に活用でき、さらに原液から濃縮液を生成する時間を短くでき、濃縮効率を向上させることができる。しかも、濃縮器内の圧力が上昇して作業を実施することが不可能になったり、濃度が薄い濃縮液が生成されたりする等の問題が生じることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態の原液処理装置1の回路図であって濾過濃縮作業の概略説明図である。
【
図2】第1実施形態の原液処理装置1の回路図であって準備洗浄作業の概略説明図である。
【
図3】第1実施形態の原液処理装置1の回路図であって再濃縮作業の概略説明図である。
【
図4】第1実施形態の原液処理装置1の回路図であって廃液チューブ5に廃液チューブ送液部5pを設けた例である。
【
図6】第2実施形態の原液処理装置1Bの回路図であって準備洗浄作業の概略説明図である。
【
図7】第2実施形態の原液処理装置1Bの回路図であって濾過濃縮作業の概略説明図である。
【
図8】第2実施形態の原液処理装置1Bの回路図であって再濃縮作業の概略説明図である。
【
図9】第2実施形態の原液処理装置1Bの回路図であって廃液チューブ5に廃液チューブ送液部5pを設けた例である。
【
図10】第3実施形態の原液処理装置1Cの回路図であって準備洗浄作業の概略説明図である。
【
図11】第3実施形態の原液処理装置1Cの回路図であって濾過濃縮作業の概略説明図である。
【
図12】第3実施形態の原液処理装置1Cの回路図であって再濃縮作業の概略説明図である。
【
図13】第1実施形態の原液処理装置1の概略説明図であって、ローラーポンプ110,120の蓋部112を閉じた状態の概略説明図である。
【
図14】第1実施形態の原液処理装置1の概略説明図であって、ローラーポンプ110,120の蓋部112を開いた状態の概略説明図である。
【
図15】ローラーポンプ110の概略説明図であって、(A)は蓋部112を開いた状態の概略斜視図であり、(B)は蓋部112を開いた状態の概略側面図である。
【
図16】チューブTを取り付けた状態のチューブ位置決め部材160の概略説明図であって、(A)は曲げた状態の概略斜視図であり、(B)は曲げた状態の概略平面図であり、(C)は曲げた状態の概略背面図である。
【
図17】(A)はチューブ位置決め部材160を分解した概略説明図であり、(B)はチューブTを取り付けた状態のチューブ位置決め部材160の概略説明図である。
【
図18】(A)はチューブホルダー150の概略斜視図であり、(B)はチューブホルダー150をバケツに取り付けた状態の概略説明図である。
【
図19】第1実施形態の原液処理装置1の概略説明図である。
【
図20】洗浄作業時における濾過器10の概略説明図である。
【
図21】第1実施形態の原液処理装置1の回路図であって洗浄作業の概略説明図である。
【
図22】第2実施形態の原液処理装置1Bの回路図であって洗浄作業の概略説明図である。
【
図23】第3実施形態の原液処理装置1Cの回路図であって洗浄作業の概略説明図である。
【
図24】(A)は濾過器10に供給する原液の流量を調整する際における濾過器膜間差圧を示した図であり、(B)は濾過器10に供給する原液の流量を調整する際における給液チューブ2内の流量変動を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の原液処理装置は、胸腹水などの原液を濾過濃縮して点滴静注や腹腔内投与などの方法によって患者に投与できる処理液を得るための装置である。
【0015】
本発明の原液処理装置によって処理される対象となる原液はとくに限定されないが、例えば、胸腹水や血漿、血液などを挙げることができる。胸腹水とは、癌性胸腹膜炎、肝硬変などにおいて胸腔や腹腔に溜まる胸水や腹水のことである。この胸腹水には、血管や臓器から漏出した血漿成分(蛋白質、ホルモン、糖、脂質、電解質、ビタミン、ビリルビン、アミノ酸など)、ヘモグロビン、癌細胞、マクロファージ、組織球、白血球、赤血球、血小板、細菌などが含まれている。本発明の原液処理装置では、この胸腹水から、癌細胞、マクロファージ、組織球、白血球、赤血球、血小板、細菌などの固形分を除去して、胸腹水中に含まれる水分や有用成分を含む濃縮液を生成することができる。
【0016】
血漿とは、血漿交換療法の廃液血漿などを、血液とは、手術中に回収した血液などを挙げることができる。つまり、廃液血漿や手術中に回収した血液などを本発明の原液処理装置を利用して浄化すれば、再利用可能な再生血漿を製造することができる。なお、本発明の原液処理装置において、血漿交換療法の廃液血漿を処理する場合には、濾過器に代えて血漿成分分離器を、手術中に回収した血液を処理する場合には、濾過器に代えて血漿分離器を使用すればよい。
【0017】
また、本発明の原液処理装置の濾過器に使用する濾過部材はとくに限定されない。また、濃縮器における濾過液の濃縮にも同様の濾過部材を使用する場合がある。かかる濾過や濃縮に使用する濾過部材は、胸腹水中に含まれる血漿、水分および上述したような有用な成分は透過するが、癌細胞、マクロファージ、組織球、白血球、赤血球、血小板、細菌などの細胞成分(つまり固形分)は透過しないものであって、気体を透過しないものであればよく、その素材やサイズ、形状はとくに限定されない。例えば、濾過部材の形状は、中空糸膜、平膜、積層型膜などを使用することができる。また、濾過部材は、液体で濡らした際に気体を透過しない機能を発揮する素材によって形成されたものを使用することができる。もちろん、液体で濡らさない状態でも気体を透過しない機能を発揮する素材で形成されたものを使用してもよい。なお、本明細書において、濾過部材を透過しない気体とは、窒素などの不活性気体や、空気、酸素等であるが、一般的なリークチェックなどに使用される気体を意味している。
【0018】
一例としては、CARTの腹水濾過器や血漿交換用血漿分離器、血漿交換用血漿成分分離器などに使用されている中空糸膜を、本発明の原液処理装置の濾過器や濃縮器に使用することができる。
【0019】
<第1実施形態の原液処理装置1>
図13~
図19に基づいて、第1実施形態の原液処理装置1を説明する。
なお、第1実施形態の原液処理装置1の外観や各器具等の配置や相対的な大きさ、数量などは、
図13~
図19に記載されているものに限定されず、第1実施形態の原液処理装置1を使用する環境や目的等に応じて適宜変更されるのはいうまでもない。
【0020】
図13、
図14、
図19に示すように、第1実施形態の原液処理装置1は、本体部100と、この本体部100に設けられた一対のローラーポンプ110,120と、濾過器10を保持する濾過器保持部101と、濃縮器20を保持する濃縮器保持部102と、チューブホルダー150や各バッグBが吊り下げられる一対の吊り下げ部103,103と、を備えている。
【0021】
そして、第1実施形態の原液処理装置1では、原液を処理する場合には、一対の吊り下げ部103,103に各バッグBを吊り下げて、濾過器保持部101および濃縮器保持部102に濾過器10および濃縮器20を保持させる。そして、各バッグB、濾過器10、濃縮器20を複数のチューブTによって適切に接続し、適切なチューブTを一対のローラーポンプ110,120にセットする。その状態で、一対のローラーポンプ110,120を作動させれば、原液バッグUBの原液を濾過濃縮して、濃縮液を得ることができる。
【0022】
また、一対のローラーポンプ110,120の作動状態の変更や、各チューブTに接続する各バッグBの変更、液を流すチューブTの変更等をすれば、濃縮液を得るだけでなく、濃縮液の再濃縮、濾過器10や濃縮器20の洗浄、濾過器10や濃縮器20等に存在する液の回収等を実施することができる。
【0023】
<第1実施形態の原液処理装置1の各構成の説明>
以下では、第1実施形態の原液処理装置1の装置各部について説明する。
【0024】
<本体部100>
図13、
図14、
図19に示すように、本体部100は、その中央部に制御部106を備えている。この制御部106は、一対のローラーポンプ110,120や装置全体の作動を制御する機能を有している。また、制御部106には、装置を操作する操作用パネルと、各種表示が表示される表示パネルと、を兼ねるパネル部106pが設けられている。つまり、パネル部106pから制御部106に指示を与えることによって、作業者が第1実施形態の原液処理装置1に対して実施する処理を指示することができるようになっている。また、制御部106からの指示によってパネル部106pに表示される数値や警告などを確認することによって、作業者が第1実施形態の原液処理装置1の状況を把握できるようになっている。
【0025】
なお、制御部106は、パネル部106pに加えて、各種操作を行うためのボタンを備えていてもよい。
【0026】
<ローラーポンプ110,120>
図13、
図14、
図19に示すように、本体部100の制御部106の両側には、一対のローラーポンプ110,120が設けられている。一対のローラーポンプ110,120は、実質的に同じ構造を有しているので、以下では、ローラーポンプ110について説明する。
【0027】
なお、
図15には、ローラーポンプ110を分かりやすくするために、本体部100からローラーポンプ110として機能する部分を取り出した状態を示している。以下、
図15に基づいて、ローラーポンプ110について説明する。
【0028】
図15に示すように、ローラーポンプ110は、フレーム111と、このフレーム111に開閉可能に取り付けられた蓋部112と、を備えている。具体的には、蓋部112を開くと後述するローラー部115が露出し、蓋部112を閉じるとローラー部115を蓋部112で覆うことができるように、蓋部112が設けられている。そして、蓋部112を閉じた状態では、蓋部112の内面とフレーム111の上面との間にローラー部115を収容する空間が形成されるように、蓋部112が設けられている。
【0029】
フレーム111の上面には、2つのローラー116を備えたローラー部115が設けられている(
図16参照)。このローラー部115は、一つの軸117に2つのローラー116が取り付けられており、この軸117はモータ等の駆動源114によって回転されるようになっている。つまり、駆動源114によって軸117が回転すると、2つのローラー116が回転するようになっている。なお、ローラー部115に設けられるローラー116は2つに限られず、1つでもよいし3つ以上でもよい。処理作業に適した数のローラー116が設けられていればよい。
【0030】
また、フレーム111の上面には、ローラー部115と対向する位置にホルダー113が設けられている。このホルダー113は、ローラー部115の2つのローラー116と対向する面に、2つのローラー116との間にチューブTを挟む凹み面113aが設けられている。そして、このホルダー113は、スライダー機構等によって、蓋部112の開閉に連動してローラー部115に接近離間できるようになっている。具体的には、蓋部112を開くと、ホルダー113はローラー部115から離間して、ホルダー113の凹み面113aと2つのローラー116との間の空間がチューブTの直径よりも広くなるように移動するようになっている。また、蓋部112を閉じると、ホルダー113はローラー部115に接近し、ホルダー113の凹み面113aと2つのローラー116との間の隙間がチューブTの直径よりも狭くなるように移動するようになっている。つまり、蓋部112を開くとローラー部115との間にチューブTを配置したり取り外したりでき、蓋部112を閉じるとホルダー113の凹み面113aと2つのローラー116との間にチューブTを挟むことができるようになっている。
【0031】
したがって、蓋部112を開いてローラー部115とホルダー113の凹み面113aとの間にチューブTを配置し蓋部112を閉じれば、チューブTをローラー部115とホルダー113によってクランプできるようになっている。また、チューブTをローラー部115とホルダー113によってクランプした状態で駆動源114を作動させれば、チューブT内の液体を送液できるようになっている。
【0032】
なお、ローラー116は、一般的なローラーポンプに使用されるローラーと同じ構造を有していればよい。例えば、
図16(C)に示すように、ローラー116は、一対のカバープレート116a間に複数のローラー116b(例えば3つのローラー116b)が設けられたものを使用することができる。かかるローラー116を使用した場合には、複数のローラー116bとホルダー113の凹み面113aとの間にチューブTを挟むことができ、ローラー116が回転するとローラー116bがチューブTを扱くように移動してチューブT内の液体を送液することができる。
【0033】
なお、蓋部112を閉じた際にホルダー113の凹み面113aと2つのローラー116との間に形成される隙間の大きさはローラー116に配置されるチューブTに合わせて適切な隙間となるようにすればよい。適切な隙間とは、ローラー116が回転していないときには、チューブT内を液体がながれないようにクランプでき、ローラー116が回転したときにローラー116の回転抵抗がそれほど大きくならない隙間を意味している。
また、複数のチューブTをローラー116に配置する場合であって、配置するチューブTの径が異なる場合には、各チューブTが配置される位置に応じて、隙間が異なるようになっていてもよい。例えば、ホルダー113の凹み面113aに段差を設けてホルダー113の凹み面113aからローラー116までの距離が異なるようにすれば、各チューブTが配置される位置(つまり配置されるローラー116)に応じて隙間を変更することができる。一方、複数のローラー116を設けており各ローラー116で配置するチューブTの径が異なる場合であれば、ローラー116の直径を変更することによってチューブTに合わせた隙間に変更することができる。
【0034】
<ローラーポンプ110の制御>
ここで、ローラー部115とホルダー113の凹み面113aとの間にチューブTを配置した際に、チューブTが適切な位置に配置されない場合がある。このような状態で駆動源114を作動させた際に、チューブTがローラー116におけるローラー部115以外と干渉してしまう可能性がある。チューブTがローラー116におけるローラー部115以外と干渉した場合、送液ができなかったり、チューブTやローラー116が損傷したりする恐れがある。
【0035】
そこで、制御部106は、蓋部112が閉じられたことを検出すると、駆動源114を操作して、ローラー116を正転逆転させる機能を有していてもよい。ローラー116を正転逆転させれば(例えば±180~360度程度)、チューブTの配置が適正な位置から若干ずれていても、適正な位置にチューブTを移動させることができる。すると、チューブTの配置をやり直さなくてもよいので、作業時間を短くすることができる。
【0036】
また、ローラー116を正転逆転させてもチューブTが適正な位置に配置されない場合がある。そこで、制御部106は、チューブTを適正な位置に配置できなかったことを検出すると、駆動源114が作動できないようにする安全機能と、チューブTの配置が適正でないことを作業者に知らせる警報機能と、を有していることが望ましい。すると、チューブTの配置が適正でない状態となったことによる装置の損傷を防止できるし、作業者がチューブTの配置の異常に迅速に気が付くことができる。
【0037】
例えば、警報機能としては、チューブTが適正な位置に配置されなかったことを制御部106が検出すると、制御部106が、パネル部106pに異常警報の表示をさせたり、異常警報音を発したりする機能等を挙げることができる。
【0038】
また、チューブTが適正な位置に配置されなかったことを検出する方法としては、例えば、駆動部114の駆動力を検出する方法を採用できる。この場合、駆動部114の駆動力が一定以上になった場合には、チューブTの配置に異常が生じていると制御部106が判断するようにすればよい。駆動部114がモータであれば、その主軸に加わる回転抵抗が所定の値以上になった場合にチューブTの配置に異常が生じていると制御部106が判断するようにすることができる。主軸に加わる回転抵抗は、例えば、モータに供給する電流値等を検出することによって判断することができる。
【0039】
<チューブ位置決め部材160>
チューブTを適正な位置に配置する方法として、以下のようなチューブ位置決め部材160を使用することができる。以下のようなチューブ位置決め部材160を使用すれば、ローラー116にチューブTを巻き掛けた際に、チューブTとローラー116とを密着させやすくなるし、2つのローラー116に2本のチューブTをそれぞれ適切に巻き掛け易くなる。
【0040】
以下に、チューブ位置決め部材160の構成を説明する。
図16および
図17に示すように、チューブ位置決め部材160は、一対の保持部材161,161と、連結部材165と、を備えている。
【0041】
<一対の保持部材161,161>
図16および
図17に示すように、一対の保持部材161,161は、2本のチューブTを保持するものであり、2本のチューブTの軸方向に沿って互いに間隔を空けた状態(距離を離した状態)で配置されるものである。この一対の保持部材161,161は同じ構造を有するものであり、ベース部材162とガイド部材163とを組み合わせて形成されている。
【0042】
ベース部材162は短冊状の板状の部材であるベース部162bを備えている。ベース部材162は、このベース部162bの長軸方向とチューブTの軸方向とが直交するようにチューブTを保持する構造を有している。具体的には、ベース部材162の短軸方向の側方には、ベース部162bから延設されたチューブ配置部162cが設けられている。このチューブ配置部162cには、チューブ配置部162cの表面から立設された一対の外方保持部d,dと、一対の外方保持部d,dとベース部162bとの間に位置する一対の内方保持部c,cと、が設けられている。この一対の内方保持部c,cは、一対の外方保持部d,dよりもベース部162bの長軸方向の内方に配置されている。そして、一対の内方保持部c,cは、チューブ配置部162cの表面から立設した立設部と立設部に対してベース部162bの長軸方向外方に向かって屈曲した屈曲部と有している。しかも、一対の内方保持部c,cは、ベース部162bの長軸方向において、立設部の外面と一対の外方保持部d,dの内面との間の距離がチューブTの直径とほぼ同じに形成されている。また、一対の内方保持部c,cは、屈曲部の下面とベース部162bの表面との距離もチューブTの直径とほぼ同じに形成されている。
【0043】
すると、ベース部162bを短軸方向から見た際に、一対の外方保持部d,dの内面、一対の内方保持部c,cの立設部の外面およびの屈曲部の下面、ベース部162bの表面、によって2つの孔(以下仮想孔という)が形成されるようになる。
【0044】
一方、ガイド部材163は、ベース部材162のベース部162bの表面に重ねるように配設されるものである。このガイド部材163において、ベース部162bの表面に重ねた際にベース部162bの表面側に位置する面には、チューブTを収容する一対の溝163g,163gが設けられている。この一対の溝163g,163gは、その軸方向が互いに平行となるように設けられている。しかも、この一対の溝163g,163gは、ガイド部材163をベース部162bの表面に重ねた際に、ベース部162bの短軸方向から見ると、一対の溝163g,163gと2つの仮想孔とが重なる(好ましくは一致する)ように形成されている。
【0045】
したがって、ベース部材162の2つの仮想孔に2本のチューブTをそれぞれ配置すれば、2本のチューブTが互いに平行になるようにベース部材162に配置することができる。その状態で、ガイド部材163をベース部162bの表面に重ねれば、2本のチューブTを一対の溝163g,163gに配置でき、2本のチューブTが外れないように2本のチューブTを保持部材161に保持させることができる。
【0046】
上述したベース部材162のチューブ配置部162cとガイド部材163の一対の溝163g,163gは「複数のチューブ保持部」ということもできる。また、ベース部162bの長軸方向は「複数のチューブ保持部が並ぶ方向」ということもできる。さらに、ベース部162bの短軸方向は「複数のチューブ保持部に保持された複数のチューブの軸方向」ということもできる。
【0047】
<連結部材165>
図16および
図17に示すように、連結部材165は、上述した一対のチューブ保持部161,161を連結するものである。より具体的には、連結部材165は、一対のチューブ保持部161,161をチューブTの軸方向に沿って所定の距離だけ離した状態に維持するために、一対のチューブ保持部161,161間に設けられている。
【0048】
この連結部材165は、その両端に一対のチューブ保持部161,161に連結する連結構造を有しており、上述したチューブ保持部161のガイド部材163と着脱可能に連結できるようになっている。具体的には、ガイド部材163において、一対の溝163g,163g間の部分に連結部材165の端部が連結されるように設けられている。つまり、連結部材165を伸ばした状態において、ベース部162bの長軸方向および短軸方向と交差する方向から見た際に、チューブ保持部161に保持されている隣接するチューブT間に位置するように、連結部材165はガイド部材163に連結されている。
【0049】
しかも、連結部材165を伸ばした状態において、チューブ保持部161に保持されたチューブTの中心軸よりもベース部162bと反対側に偏った位置に連結部材165が位置するように、連結部材165はガイド部材163に連結されている。
【0050】
そして、連結部材165は、一対のチューブ保持部161,161に両端が連結された状態において、一対のチューブ保持部161,161間で曲げることができる構造を有している。より詳しくいえば、連結部材165は、一対のチューブ保持部161,161間において、ベース部162bの長軸方向および短軸方向と交差する方向に曲げることができる構造を有している。
【0051】
例えば、連結部材165をプラスチック製の板状の部材で形成する。そして、連結部材165の幅方向がベース部162bの長軸方向と平行になるように連結部材165の両端を一対のチューブ保持部161,161のガイド部材163に連結するようにする。すると、連結部材165は、一対のチューブ保持部161,161間でベース部162bの長軸方向および短軸方向と交差する方向に曲げることができる(
図16)。
【0052】
かかるチューブ位置決め部材160を2本のチューブTに取り付けると、この2本のチューブTをローラーポンプ110に配置した際に、以下のような利点が得られる。
【0053】
まず、ローラーポンプ110のローラー部115の2つの116,116にチューブTを巻き掛けた際に、適切な長さだけ離れた位置に配置されるようにストッパー部材T1,T2を設けておく(
図16、
図17(B)参照)。一方、ストッパー部材T1,T2間に一対のチューブ保持部161,161を配置して、一対のチューブ保持部161,161の外面がそれぞれストッパー部材T1,T2と接触する状態となるように配置する。そして、チューブTを伸ばした状態かつ一対のチューブ保持部161,161の外面がそれぞれストッパー部材T1,T2と接触した状態(以下では適正配置状態という)において、伸びた状態となるように連結部材165を一対のチューブ保持部161,161間に配置する(
図17(B)参照)。
一方、ローラーポンプ110には、一対のチューブ保持部161,161を収容する一対の収容部を設けておく。具体的には、ローラー部115の回転軸117を含む面を挟む位置に、一対のチューブ保持部161,161を収容する一対の収容部を設けておく。しかも、一対の収容部は、一対のチューブ保持部161,161をそれぞれ一対の収容部に収容すると、チューブTが適正な状態でローラー部115の2つの116,116に巻き掛けられる状態となるように設けておく。
すると、一対の収容部に一対のチューブ保持部161,161を配置するだけで、2本のチューブTをローラー部115の2つの116,116に適正に巻き掛けることができる(
図15参照)。
【0054】
しかも、連結部材165は、連結部材165がチューブ保持部161に保持されたチューブTの中心軸よりもベース部162bと反対側に位置するようにガイド部材163に連結されている。すると、ガイド部材163がローラー116側に位置するようにチューブTをローラー部115のローラー116に巻き掛ければ、連結部材165は、その両端間の中央部が若干撓んで2つのチューブT間に位置するようになる(
図16(A)、(B)参照)。すると、2本のチューブTが上下方向に並ぶように配設しても、連結部材165によって上方のチューブTが下方のチューブTと接触することを防止できる。
【0055】
なお、連結部材165は、必ずしもチューブTの中心軸よりもベース部162bと反対側に位置するようになっていなくてもよい。しかし、かかる構造とすれば、上述したような効果が得られる。
【0056】
また、チューブ保持部161は、ベース部162bの長軸方向の中間に対して対称でなくてもよい。言い換えれば、ベース部162bの長軸方向において、チューブ保持部161に保持された2本のチューブTの中間に対して、チューブ保持部161は非対称となるように形成してもよい。例えば、
図17に示すように、ガイド部材163は、一対の溝163g,163gよりも外方に位置する部分の長さが異なるようにしてもよい。この様にすれば、一対のチューブ保持部161,161を一対の収容部に配置する際に、一対のチューブ保持部161,161の入れ間違いを防止できる。つまり、間違った方向から一対のチューブ保持部161,161を一対の収容部に配置しようとしても、一対のチューブ保持部161,161を一対の収容部に収容できない状態とすることができる。すると、チューブTをローラーポンプ110にセットする際の作業ミスを防止できる。例えば、ローラーポンプにチューブTをセットする際に、チューブTが捩じれたり2本のチューブが逆のローラー116にセットされたりすることを防止することができる。
【0057】
なお、複数のローラーポンプを有している場合には、チューブ保持部161は、セットするローラーポンプによってサイズや形状を変更してもよい。すると、チューブをセットするローラーポンプを間違えることを防止できる。
【0058】
また、チューブ保持部161が一対の収容部に適切にセットされなかった場合に、ローラーポンプ装置を作動できないような機能を設けてもよい。この場合、チューブTが適正にセットされなかった場合に、誤ってローラー116が回転してもチューブTやローラー116が損傷することを防止できる。例えば、適切なチューブ保持部161が配置された場合に押されるボタン式のセンサ等を一対の収容部に設けておけば、上記機能を発揮させることができる。
【0059】
また、上記例では、チューブ位置決め部材160が2本のチューブTを保持する場合を説明した。しかし、チューブ位置決め部材160が保持するチューブTは、3本以上でもよく、とくに限定されない。なお、チューブ位置決め部材160が3本以上のチューブTを保持する場合には、隣接するチューブT間にそれぞれ連結部材165が設けられていることが望ましい。
【0060】
また、保持部材161や複数のチューブ保持部の構造は上記構造に限られない。保持部材161および複数のチューブ保持部は、複数本のチューブを互いに平行かつ一列に並んで保持できるようになっていればよい。例えば、板状の保持部材に、単に貫通孔を一列に並ぶように形成して複数のチューブ保持部としてもよい。ここでいう一列とは、複数のチューブ保持部に複数のチューブを配置すると複数のチューブの中心軸がほぼ同一平面上に並ぶ場合と、複数のチューブ保持部に保持されたチューブTをその軸方向からみたときに、ベース部材162の表面の法線方向においてチューブTの中心軸の位置がズレている場合も含んでいる。例えば、複数のチューブ保持部に保持されたチューブTをその軸方向からみたときに、チューブTの中心軸の位置が千鳥配置のように並んでいる場合も、上述した複数本のチューブが一列に並んで保持されている状態に含まれている。
【0061】
<濾過器保持部101および濃縮器保持部102>
図13、
図14および
図19に示すように、一対のローラーポンプ110,120の外方には、それぞれ濾過器保持部101や濃縮器保持部102が設けられている。
図13および
図14であれば、制御部106の左側に設けられているローラーポンプ110が濾過器保持部101を備えており、制御部106の右側に設けられているローラーポンプ120が濃縮器保持部102を備えている。
【0062】
濾過器保持部101および濃縮器保持部102は、その表面にクランプ部101c,102cが設けられており、そのクランプ部101c,102cによって濾過器10および濃縮器20を着脱可能に保持できるようになっている。
【0063】
また、濾過器保持部101および濃縮器保持部102は、その基端が一対のローラーポンプ110,120のフレームに揺動可能に連結されている。具体的には、濾過器保持部101および濃縮器保持部102を外方に揺動させればクランプ部101c,102cが露出した状態となるように、濾過器保持部101および濃縮器保持部102は一対のローラーポンプ110,120のフレームに連結されている。逆に、濾過器保持部101および濃縮器保持部102を内方に揺動させれば、クランプ部101c,102cが一対のローラーポンプ110,120の一対のローラー116,116と対向した状態となるように、濾過器保持部101および濃縮器保持部102は一対のローラーポンプ110,120のフレームに連結されている。つまり、原液を処理する作業を行わない場合には、濾過器保持部101および濃縮器保持部102が、ローラーポンプ110,120内に収納できるようになっている。なお、濾過器保持部101および濃縮器保持部102は、必ずしも一対のローラーポンプ110,120のフレームに揺動可能に連結されていなくてもよく、常時ローラーポンプ110,120の外方に露出していてもよい。しかし、上記のごとき構成とすれば、第1実施形態の原液処理装置1を使用しないときに、第1実施形態の原液処理装置1をコンパクトに収納できるという利点が得られる。
【0064】
なお、
図13、
図14および
図19では、濾過器保持部101および濃縮器保持部102によって濾過器10および濃縮器20をその軸方向(例えば、
図5に示すように内部に中空糸膜16が設けられている場合には中空糸膜16の軸方向が対応する)が上下方向を向いた状態で保持している場合を示している。しかし、濾過器保持部101および濃縮器保持部102は、濾過器10および濃縮器20をその軸方向が水平方向を向いた状態で保持できるようになっていてもよい。ここでいう濾過器10および濃縮器20の軸方向が上下方向を向いた状態とは、濾過器10および濃縮器20の軸方向が鉛直方向に対して0~45度程度傾いている場合も含む概念である。また、ここでいう濾過器10および濃縮器20の軸方向が水平方向を向いた状態とは、濾過器10および濃縮器20の軸方向が水平方向に対して0~45度程度傾いている場合も含む概念である。
また、第1実施形態の原液処理装置1は、必ずしも濾過器保持部101や濃縮器保持部102を有していなくてもよい。しかし、本体部100が濾過器保持部101や濃縮器保持部102を有していれば、濾過器10や濃縮器20を保持するホルダーなどを別に準備しなくてもよいという利点が得られる。
【0065】
<一対の吊り下げ部103,103>
図13、
図14および
図19に示すように、本体部100の背面には、一対の吊り下げ部103,103が設けられている。この一対の吊り下げ部103,103は軸状の部材で形成されており、その軸の基端が本体部100の背面に設けられた一対の取付部100h,100hに着脱可能に取り付けられている。より具体的には、この一対の吊り下げ部103,103の基端を一対の取付部100h,100hに取り付けると一対の吊り下げ部103,103の軸方向がほぼ鉛直になるように、一対の取付部100h,100hが設けられている。
【0066】
この一対の吊り下げ部103,103には、一般的な点滴ホルダーと同様に、引っ掛け部103bが設けられている。そして、一対の吊り下げ部103,103は、この引っ掛け部103bに各バッグBを吊り下げることができるようになっている。
【0067】
また、一対の吊り下げ部103,103にはフック部103fが設けられており、このフック部103fにチューブホルダー150を吊り下げることができるようになっている。
【0068】
なお、一対の吊り下げ部103,103は必ずしも本体部100に着脱可能としなくてもよい。しかし、一対の吊り下げ部103,103を着脱可能とすれば、第1実施形態の原液処理装置1を使用しないときに一対の吊り下げ部103,103を外すことによって、第1実施形態の原液処理装置1をコンパクトに収納できるという利点が得られる。
【0069】
また、第1実施形態の原液処理装置1に設ける吊り下げ部103の数は2本に限られず、1本でもよいし、3本以上でもよい。第1実施形態の原液処理装置1で実施する処理に使用するバッグBの数やチューブTの本数などに合わせて適切な数の吊り下げ部103を設ければよい。
【0070】
また、第1実施形態の原液処理装置1は、必ずしも一対の吊り下げ部103,103を有していなくてもよい。この場合、点滴を吊り下げる一般的な点滴ホルダーを使用すればよい。しかし、本体部100が一対の吊り下げ部103,103を有していれば、点滴ホルダーなどを別に準備しなくてもよいという利点が得られる。
【0071】
<チューブホルダー150>
図18に示すように、チューブホルダー150は複数本のチューブTを保持するための部材である。このチューブホルダー150に複数本のチューブTを保持させておけば、
図18に示すように、複数本のチューブTを一対の吊り下げ部103,103に吊り下げておくことができる(
図19参照)。すると、複数本のチューブTを、本体部100の制御部106や、濾過器10、濃縮器20、一対のローラーポンプ110,120にセットする際に、必要なチューブTだけをチューブホルダー150から外して作業することができる。つまり、複数本のチューブTを装置にセットする際に、すぐに使用しないチューブTを作業者が保持しておく必要がないので、作業者の作業が行いやすくなる。
【0072】
<本体部151>
図18に示すように、チューブホルダー150は、板状の本体部151を備えている。本体部151には、その上端縁151aに連結部152が設けられている。この連結部152は、表裏を貫通する貫通孔152hが形成されており、この貫通孔152hに一対の吊り下げ部103,103のフック部103fを通せば、チューブホルダー150をその上端縁151aが上方を向いた状態で吊り下げ部103に吊り下げることができる。
【0073】
なお、チューブホルダー150の上端縁151aが上方を向いた状態で安定して一対の吊り下げ部103,103に吊り下げるには、貫通孔152hおよび一対の吊り下げ部103,103のフック部103fは横長の形状になっていることが望ましい。つまり、連結部152の貫通孔152hは上端縁151aに沿った方向に長い横長の孔となっていることが望ましい。また、一対の吊り下げ部103,103のフック部103fも、一対の吊り下げ部103,103の軸方向と直交する方向に長い横長の形状となっていることが望ましい。
【0074】
<保持部155>
本体部151の表面151c(第一面)には、チューブTを着脱可能に保持する保持部155が複数設けられている。この保持部155は、上下方向を貫通する貫通孔155hを有する筒状構造を有しており、その前面にスリット状の開口155sが形成されたものである。この保持部155は、その貫通孔155hの開口155sの幅は、チューブTの直径よりも小さくなっている。つまり、開口155sからチューブTを貫通孔155hに押し込めばチューブTを保持部155の貫通孔155hに配置して保持させることができ、チューブTを引っ張ればチューブTを保持部155から取り外すことができるようになっている。
【0075】
複数の保持部155は、本体部151の上端縁151aに沿って一列に並ぶように配設されている。しかも、複数の保持部155は、貫通孔155hの中心軸が互いに平行となるように設けられている。したがって、複数の保持部155に複数のチューブTを保持させると、複数のチューブTはその軸方向が互いに平行かつ本体部155の表面151cに沿って一列に並ぶように配設することができる。すると、複数の保持部155に決められた順番で複数のチューブTを取り付けておけば、作業者が複数のチューブTの取違いなどのミスをすることを防止できる。例えば、複数の保持部155の左から右に向かって、装置に連結する順番に複数のチューブTが並ぶように、複数のチューブTを複数の保持部155に取り付けておく。すると、作業者は左から順番にチューブTを取り外せば、接続するチューブTを間違えることが無いので、作業ミスを防止できるし作業者の作業負担も軽減できる。
【0076】
なお、「複数の保持部155は、本体部151の上端縁151aに沿って一列に並ぶ」とは、複数の保持部155が千鳥配置になっている場合や、本体部151の上端縁151aと交差する方向において若干のずれがある場合も含んでいる。
【0077】
<係合部材153>
また、連結部152は、本体部151の裏面151d(つまり表面151cと反対側の第二面)側に係合部材153を備えている。この係合部材153は、本体部151の裏面151dに突出した状態となるように設けられており、その一端(上端)に開口153sを有しており、この開口153sと連続する隙間153hを備えている。
【0078】
かかる係合部材153を設けておけば、本体部151の複数の保持部155に保持されたチューブTを一度に下向きにしたり、チューブTを下向きにした状態に維持したりしておくことができる。例えば、開口153sを通してバケツ等の縁を隙間153hに挿入すれば、本体部151の上端縁115aが下を向いた状態となるように、チューブホルダー150をバケツ等に取り付けることができる。すると、複数のチューブTをその先端が本体部151の上端縁115a側(吊り下げ部103に本体部151を吊り下げた状態で上方)を向くように複数の保持部155に取り付けておけば、複数のチューブTの先端を一度に下方を向くように配置できる。つまり、複数のチューブTからバケツ等に排液する場合には、係合部材153をバケツ等の縁に取り付けるだけで、簡単に複数のチューブTから排液できる状態にすることができる。
【0079】
なお、連結部152の形状等は上記の形状等に限定されない。本体部151を一対の吊り下げ部103,103等に連結しておくことができる形状であればよい。
また、係合部材153の形状等も上記の形状等に限定されず、上述したような機能を有するような形状であればよい。そして、係合部材153は必ずしも設けなくてもよい。
さらに、上記例では、係合部材153を本体部151の裏面151dに設けた場合を説明したが、係合部材153は本体部151の表面151cに設けてもよいし、本体部151の表面151cと裏面151dの両方に設けてもよい。
【0080】
<濾過器10および濃縮器20>
第1実施形態の原液処理装置1の回路を説明する前に、第1実施形態の原液処理装置1で使用する濾過器および濃縮器の一例を説明する。なお、以下では、濾過部材として中空糸膜を使用した濾過器および濃縮器を説明するが、第1実施形態の原液処理装置1で使用する濾過器および濃縮器は濾過部材として中空糸膜を使用したものに限定されず、中空糸膜以外の公知の濾過部材を使用した濾過器および濃縮器も使用できる。
【0081】
<濾過器10>
濾過器10は、例えば、CARTに使用されている腹水濾過器や、血漿交換に使用される血漿分離器、血漿成分分離器などである。この濾過器10は、濾過部材が内部に収容されたものであり、濾過部材によって胸腹水等の原液を濾過して、濾過液と細胞等を含む分離液とに分離することができるものである。
【0082】
図5に示すように、この濾過器10は、本体部11と、この本体部11内に配置された中空糸膜束15と、を有している。
【0083】
<中空糸膜束15>
図5に示すように、中空糸膜束15は、複数本の中空糸膜16を束ねて構成されたものである。
【0084】
中空糸膜16は、断面環状の壁16wを有しその壁16wの内部に中空糸膜16の軸方向を貫通する貫通流路16hが形成された管状の部材である。この中空糸膜16の壁16wは、細胞などの固形分や気体は透過しないが液体は透過する機能を有している。
なお、中空糸膜16の壁16wの厚さは45~275μm程度であり、貫通流路16hの直径は50~500μm程度であるが、中空糸膜16の壁16wの厚さや貫通流路16hの直径等はとくに限定されない。
【0085】
中空糸膜束15は、複数の中空糸膜16の一端部同士、および、他端部同士が束ねられている。つまり、各中空糸膜16の貫通流路16hが中空糸膜束15の一端部と他端部との間を貫通するように複数の中空糸膜16を束ねて中空糸膜束15が形成されている。
【0086】
なお、複数本の中空糸膜16はその両端部同士が必ずしも束ねられていなくてもよい。その場合には、複数本の中空糸膜16の貫通流路16hの両端がそれぞれ本体部11の一対のヘッダ部13,14に連通されるように配置される。
また、中空糸膜束15を構成する中空糸膜16の数はとくに限定されない。例えば、中空糸膜16を1000~20000本程度束ねて中空糸膜束15としてもよい。また、中空糸膜束15は、本数を限定せずにその断面積が所望の断面積になるように複数本の中空糸膜16を束ねてもよい。例えば、中空糸膜束15の断面が円形の場合であればその直径が20~75mm程度となるように複数本の中空糸膜16を束ねてもよい。
【0087】
<本体部11>
図5に示すように、本体部11には、外部と気密かつ液密に隔離された空間である内部空間12hを有する胴部12を備えている。この胴部12の内部空間12は、後述するポートのみで外部と連通されるように形成されており、上述した中空糸膜束15を内部に収容している。この内部空間12は、上述した中空糸膜束15を内部に収容した状態において、複数本の中空糸膜16の貫通流路16hと気密に分離されているが、壁16wを通して両者間を液体が通過できるようになっている。つまり、内部空間12内の液体を貫通流路16hに供給できるし、貫通流路16h内の液体を内部空間12に供給できるようになっている。
【0088】
なお、内部空間12の大きさや形状はとくに限定されない。中空糸膜束15を収容した状態において、ポートを介して内部空間12に流入した液体が、中空糸膜束15と胴部12の内面(つまり内部空間12の内面)との間および複数本の中空糸膜16同士の間を流れて、中空糸膜16の壁16wを通して貫通流路16h内に流入できる程度の大きさがあればよい。加えて、中空糸膜16の壁16wを通して貫通流路16hから内部空間12に流出した液体(濾過液)が、複数本の中空糸膜16同士の間および中空糸膜束15と内部空間12の内面との間を流れて、ポートから流出できる程度の大きさがあればよい。
【0089】
図5に示すように、本体部11には、胴部12を挟むように、つまり、内部空間12hを挟むように一対のヘッダ部13,14が設けられている。この一対のヘッダ部13,14は、上述した胴部12の内部空間12hおよび外部と気密かつ液密に隔離された空間であって外部とは後述するポートのみで連通される空間を有するように形成されている。また、一対のヘッダ部13,14には、上述した中空糸膜束15の各端部がそれぞれ連結されている。具体的には、中空糸膜束15を構成する複数本の中空糸膜16の貫通流路16hの両端の開口が一対のヘッダ部13,14の内部の空間と連通されるように、中空糸膜束15の両端部がそれぞれ一対のヘッダ部13,14に連結されている。したがって、一対のヘッダ部13,14の内部の空間同士が中空糸膜束15を構成する複数本の中空糸膜16の貫通流路16hによって連通された状態となっている。
【0090】
<各ポート11a~11c>
また、本体部11には、上述したように、本体部11に形成されている胴部12の内部空間12hと外部との間を連通するポート11cが設けられている。また、一対のヘッダ部13,14には、内部の空間と外部との間を連通するポート11a,11bがそれぞれ設けられている。
【0091】
図5に示すように、本体部11の一端部に設けられたヘッダ部13には、その内部の空間と外部との間を連通する原液供給ポート11aが設けられている。この原液供給ポート11aは、チューブ等の一端が連結されるポートである。例えば、
図1であれば、原液供給ポート11aには、他端が原液バッグUBの液体排出口に連結された給液チューブ2の一端が連結されている。
【0092】
また、
図1であれば、原液供給ポート11aには、給液チューブ2を介して、または、原液供給ポート11aに直接、洗浄液回収バッグFBが連通されている。具体的には、洗浄液回収バッグFBに他端が連結された洗浄液回収チューブ7の一端が給液チューブ2または原液供給ポート11aに連結されている。
【0093】
本体部11の胴部12の側面には、内部空間12hと外部との間を連通する2つのポート11cが設けられている。この2つのポート11cは、チューブ等の一端が連結されるポートである。例えば、
図1であれば、下方のポート11cには、他端が濃縮器20の濾過液供給口20aに連結された濾過液供給チューブ3の一端が連結されている。つまり、下方のポート11cは、濾過液を外部に排出する濾過液排出ポート11cとして機能する。一方、上方のポート11cは、下方のポート11cと同様に濾過液を外部に排出する濾過液排出ポート11cとして機能させてもよいが、液体(洗浄液等)や気体(空気等)などの流体を外部から本体部11の胴部12に供給したり、液体(濾過液や洗浄液等)や気体(空気等)などの流体を本体部11の胴部12から排出したりするポートとして機能させることができる。なお、
図5では、ポート11cが2つ設けられているが、ポート11cは1つでもよいし、3つ以上設けてもよい。
【0094】
本体部11の他端部に設けられたヘッダ部14には、その内部の空間と外部との間を連通する洗浄液供給ポート11bが設けられている。この洗浄液供給ポート11bは、チューブ等の一端が連結されるポートである。例えば、
図1であれば、洗浄液供給ポート11bには、他端が洗浄液バッグSBに連結された洗浄液供給チューブ6の一端が連結されている。
【0095】
なお、上述した一対のヘッダ部13,14が、特許請求の範囲にいう第一液体供給部および第二液体供給部に相当する。一対のヘッダ部13,14は、ヘッダ部13が第一液体供給部、ヘッダ部14が第二液体供給部となってもよいし、ヘッダ部13が第二液体供給部、ヘッダ部14が第一液体供給部となってもよい。
【0096】
<濾過器10の機能>
濾過器10は以上のごとき構成を有しているので、各ポート11a~11cにチューブ等を介して、液体や気体等の流体の供給や排出を行うことができる。
【0097】
例えば、
図1に示すように、各ポート11a~11cに各チューブを介して原液バッグUBや洗浄液バッグSBを連通すれば、原液を濾過した濾過液を得ることができる。つまり、給液チューブ送液部2pを作動させて原液バッグUBから給液チューブ2と原液供給ポート11aを介して本体部11のヘッダ部13に原液を供給することができる。すると、中空糸膜束15の中空糸膜16の貫通流路16h内に原液が供給されるので、中空糸膜16によって原液が濾過される。つまり、原液に含まれる固形分は中空糸膜16を通過できないので貫通流路16h内に残り、液体分、つまり、濾過液のみが中空糸膜16の壁16wを通過するので、原液を濾過した濾過液を得ることができる。
【0098】
なお、
図1に示すように濾過器10の各ポート11a~11cチューブを連結すれば、濾過液は中空糸膜16から本体部11の胴部12の内部空間12hに排出されたのち、濾過液排出ポート11c、濾過液供給チューブ3および濃縮器20の濾過液供給口20aを通って、内部空間12hから濃縮器20に供給される。
【0099】
一方、
図1に示すような回路とすれば、洗浄液回収チューブ送液部7p(または給液チューブ送液部2p)を濾過器10から液体を吸い出すように作動させれば、濾過器10を洗浄することができる。つまり、洗浄液バッグSBから洗浄液供給チューブ6と洗浄液供給ポート11bを介して本体部11のヘッダ部14に洗浄液を供給することができるので、ヘッダ部14から中空糸膜16の貫通流路16h内に洗浄液を供給できる(
図5参照)。すると、洗浄液回収チューブ送液部7pによる流体を吸い出す力によって、ヘッダ部14からヘッダ部13に向かって洗浄液が流れるので、中空糸膜16の貫通流路16h内部、とくに、貫通流路16の内面(壁16wの内面)を、貫通流路16の内面に沿って流れる洗浄液によって洗浄することができる。すると、中空糸膜16の貫通流路16hの内壁に付着している固形分などを効果的に流すことができる。
【0100】
<濾過器10の洗浄>
とくに、以下のようにすれば、中空糸膜16の洗浄を効果的に実施することができる。
なお、以下の洗浄作業は、原液供給ポート11aが洗浄液供給ポート11bよりも上方に位置した状態で濾過作業が実施され、同じ状態で洗浄作業を実施する場合を説明している。
【0101】
図21に示すように、濾過液供給チューブ3に設けられた流量調整手段3cおよび連結チューブ9に設けられた連結チューブ送液部9pによって、濾過液供給チューブ3および連結チューブ9を閉塞する。一方、流量調整手段6cによって洗浄液供給チューブ6を開放する。その状態で、洗浄液回収チューブ7の洗浄液回収チューブ送液部7pを作動させる。
【0102】
すると、洗浄液回収チューブ7において洗浄液回収チューブ送液部7pよりも上流側、つまり、濾過器10側の部分には負圧が発生することになる。かかる負圧が発生すれば、この負圧によって、洗浄液供給チューブ6に接続された洗浄液バッグSBから洗浄液が、洗浄液供給チューブ6、洗浄液供給ポート11b、ヘッダ部14、中空糸膜16の貫通流路16h、ヘッダ部13、原液供給ポート11aを通って、洗浄液回収チューブ7に流入することになる。
【0103】
このとき、濾過液供給チューブ3および連結チューブ9が閉塞されているので、洗浄液は、中空糸膜16から内部空間12hには流れず、中空糸膜16の貫通流路16h内だけを流れる。すると、洗浄液によって一対のヘッダ部13,14と中空糸膜16の貫通流路16h内だけを洗浄することができるので、濾過器10の洗浄に使用する洗浄液を少なくできる。
【0104】
しかも、内部空間12hを洗浄しないので、濾過濃縮を実施した後で濾過器10を洗浄した場合でも、内部空間12h内には濾過液が残った状態とすることができる。すると、内部空間12h内の濾過液が洗浄液とともに排出されることを防ぐことができるから、濾過液の回収率の低下を防ぐことができる。
【0105】
なお、濾過器10の洗浄の際には、給液チューブ2の給液チューブ送液部2pと洗浄液回収チューブ7の洗浄液回収チューブ送液部7pの両方を作動させてもよい。
また、濾過器10の洗浄の際に、洗浄液回収チューブ送液部7pに代えて給液チューブ送液部2pを作動してもよい。この場合、洗浄液とともに中空糸膜16の貫通流路16h内の原液も原液バッグUBに回収できるので、回収された原液を含む洗浄液を再度濾過器10に供給するようにすれば、濾過濃縮に使用する原液の量が少なくなることを防ぐことができる。
【0106】
また、上記のように、給液チューブ送液部2pおよび洗浄液回収チューブ送液部7pの両方または一方を作動させた場合には、中空糸膜16の貫通流路16h内にも負圧が発生する。すると、中空糸膜16の壁16wの内部に固形分が詰まっていても、この固形分を吸い出すことができるので、中空糸膜16の壁16wの詰りも解消することができる。
【0107】
なお、中空糸膜16の壁16wの詰りも解消することを主目的とする場合には、連結チューブ9に洗浄液バッグSBを連結しておき(
図21参照)、この洗浄液バッグSBから濾過器10に向かって洗浄液が流れるように連結チューブ送液部9pを作動させてもよい。この場合、実質的に内部空間12hの洗浄も実施することになるので、使用する洗浄液の量は多くなるが、中空糸膜16の壁16wの詰りをより一層解消しやすくなる。つまり、上述した負圧による吸い出し効果に加えて、連結チューブ送液部9pによる洗浄液の押し込み効果も生じるので、中空糸膜16の壁16wの詰りをより一層解消しやすくなる。なお、給液チューブ送液部2pや洗浄液回収チューブ送液部7pによる吸い出し効果が十分に大きい場合には、連結チューブ9は、その内部を洗浄液バッグSBから供給される洗浄液が流れるように維持しているだけでもよい。例えば、連結チューブ送液部9pに代えてクランプなどを連結チューブ9に設けて、連結チューブ9を開放しておくだけでも、内部空間12hの洗浄と中空糸膜16の壁16wの詰りの解消を効果的に実施することができる。
【0108】
さらに、上記のように洗浄操作を実施すれば、原液が供給されるヘッダ部13の詰りを解消しやすくなる。
【0109】
原液が供給されるヘッダ部13では、原液に含まれる固形分がそのまま給液チューブ2に供給されるので、固形分が大きい場合には、中空糸膜16の貫通流路16hの開口が固形分で塞がれてしまう可能性がある。しかし、上記のように、洗浄液回収チューブ7において洗浄液回収チューブ送液部7pよりも濾過器10側に負圧が発生するようになっていれば、この負圧によって固形分をヘッダ部13から洗浄液回収チューブ7に吸い出すことができるので、ヘッダ部13の詰りを解消することができる。この場合も、連結チューブ9に洗浄液バッグSBを連結しておき、洗浄液バッグSBから濾過器10に向かって洗浄液が流れるように連結チューブ送液部9pを作動させてもよい。すると、上述した負圧による吸い出し効果に加えて、連結チューブ送液部9pによる洗浄液の押し込み効果も生じるので、ヘッダ部13の詰りをより一層解消しやすくなる。
【0110】
なお、上記例では、原液が流れる方向と逆方向に洗浄液を流す場合を説明したが、原液が流れる方向と同じ方向(つまり濾過濃縮の際に原液が流れる方向)に洗浄液を流してもよい。この場合でも、中空糸膜16の壁16wの詰りを解消できる可能性はある。例えば、
図21において、洗浄液バッグSBに代えて洗浄液回収バッグFBを連結チューブ9に接続し、連結チューブ送液部9pを濾過器10から洗浄液回収バッグFBに液体が流れるように作動させる。そのとき、給液チューブ送液部2pおよび洗浄液回収チューブ送液部7pの作動を停止しておけば、洗浄液供給チューブ6に接続された洗浄液バッグSBから供給される洗浄液を、中空糸膜16の壁16wを透過するように流すことができるので、中空糸膜16の壁16wに詰まった固形分を押し出すことができる可能性がある。この場合も、給液チューブ送液部2pまたは洗浄液回収チューブ送液部7pを作動させてもよい。すると、中空糸膜16の壁16wの詰りの解消と中空糸膜16の貫通流路16h内の洗浄を同時に実施することができる。
また、上記方法の場合(濾過濃縮の際に原液が流れる方向に洗浄液を流す場合)には、中空糸膜16の貫通流路16h内の洗浄を実施した後、中空糸膜16の壁16wを透過するように洗浄液を流してもよい。つまり、最初は、連結チューブ送液部9pの作動を停止した状態で給液チューブ送液部2pまたは洗浄液回収チューブ送液部7pを作動させる。すると、中空糸膜16の貫通流路16h内に洗浄液を流すことができるので、貫通流路16h内を洗浄して、貫通流路16h内の堆積物を除去できる。その後、給液チューブ送液部2pおよび洗浄液回収チューブ送液部7pの作動を停止して、連結チューブ送液部9pを作動する。すると、中空糸膜16の壁16wを透過するように洗浄液を、流すことができるので、中空糸膜16の壁16wの詰りを解消することができる。しかも、この方法の場合には、中空糸膜16の貫通流路16h内の堆積物が事前に除去されているので、堆積物によって中空糸膜16の壁16wが詰まることを防ぐことができる。
【0111】
<濾過器10の洗浄の他の例>
図1、
図7、
図11に示すような回路において濾過濃縮作業を実施している途中、または、濾過濃縮作業の終了後に、濾過器10の洗浄を実施する場合、濾過器10の中空糸膜16の貫通流路16h内や一対のヘッダ13,14の空間内は原液で満たされており、胴部12の内部空間12h内は濾過液が満たされている。この状態であれば、洗浄液供給ポート11bや濾過液排出ポート11cから洗浄液を供給すれば、中空糸膜16の所定の領域における詰りを除去することが可能になる。つまり、胴部の内部空間12hにおいて濾過液が満たされている位置(例えば、
図20のH1の位置)までは、中空糸膜16の詰りを除去することができる。
【0112】
しかし、濾過濃縮作業を実施している途中で濾過器10の洗浄を実施する場合には、一旦、中空糸膜16の貫通流路16h内や一対のヘッダ13,14の空間内の原液を排出する作業と、胴部の内部空間12h内の濾過液を排出する作業(後述する回収作業)と、の両方または一方を実施してから濾過器10の洗浄を実施する場合がある。つまり、中空糸膜16の貫通流路16h内や一対のヘッダ13,14の空間内の原液はそのままで、胴部の内部空間12h内の濾過液を排出してから濾過器10の洗浄を実施する場合がある。逆に、胴部の内部空間12h内の濾過液はそのままで、中空糸膜16の貫通流路16h内や一対のヘッダ13,14の空間内の原液を排出してから濾過器10の洗浄を実施する場合がある。この場合、中空糸膜16の貫通流路16h内や胴部12の内部空間12h内に洗浄液等の液体(充填液)を供給しても、胴部12の内部空間12hや中空糸膜16の貫通流路16h内において充填液が存在している領域までしか中空糸膜16の詰りを除去することができない。
【0113】
したがって、中空糸膜16の貫通流路16h内や一対のヘッダ13,14の空間内の原液を排出する作業と、胴部の内部空間12h内の濾過液を排出する作業(後述する回収作業)と、の両方または一方を実施する場合には、中空糸膜16において洗浄を行う領域まで胴部12の中空な空間12h内および/または中空糸膜16の貫通流路16h内を充填液によって満たした状態で、洗浄液が中空糸膜16を透過するように洗浄液を濾過器10に供給することが望ましい。つまり、中空糸膜16の全体または一部が充填液によって満たされた状態で、洗浄液が中空糸膜16を透過するように洗浄液を濾過器10に供給することが望ましい。
なお、中空糸膜16の外側から、つまり、胴部の内部空間12h内から中空糸膜16の貫通流路16h内に洗浄液を流す場合には、中空糸膜16の貫通流路16h内は、必ずしも洗浄する領域まで充填液で満たされていなくてもよい。しかし、胴部12の内部空間12h内は、洗浄する領域まで充填液で満たされている必要がある。また、中空糸膜16の内側から、つまり、中空糸膜16の貫通流路16h内から胴部の内部空間12h内に洗浄液を流して洗浄する場合(上述した濾過濃縮の際に原液が流れる方向に洗浄液を流す場合)には、中空糸膜16の貫通流路16h内は、洗浄する領域まで充填液で満たされている必要がある。
【0114】
なお、胴部12の中空な空間12h内および/または中空糸膜16の貫通流路16h内を満たす充填液は、洗浄に使用する洗浄液(例えば、生理食塩水や輸液(細胞外液)等)に限られない。例えば、廃液や洗浄効果を高める物質(例えば、界面活性剤など)を含む液体などを充填液として使用することもできる。
また、洗浄に使用する洗浄液も、洗浄に使用できる液体であればよく、とくに限定されない。例えば、廃液や洗浄効果を高める物質(例えば、界面活性剤など)を含む液体などを洗浄液として使用することもできる。
以下の説明では、充填液および洗浄液として、一般的に洗浄に使用される洗浄液を使用する場合を説明する。
【0115】
例えば、
図21であれば、まず、流量調整手段3cによって濾過液供給チューブ3を閉塞し、給液チューブ送液部2pおよび洗浄液回収チューブ送液部7pの両方の作動を停止しておく。また、流量調整手段6cによって洗浄液供給チューブ6も閉塞しておく。そして、胴部12の中空な空間12h内を洗浄液で満たす場合には、上方のポート11cを大気開放する。また、中空糸膜16の貫通流路16h内を洗浄液で満たす場合には、給液チューブ2および/または洗浄液回収チューブ7において給液チューブ送液部2pおよび/または洗浄液回収チューブ送液部7pよりも中空糸膜16の貫通流路16h側の部分(例えば、
図21であれば圧力計P2の位置等)を大気開放する。この状態で、連結チューブ送液部9pを作動させて胴部12の中空な空間12h内に洗浄液バッグSBから洗浄液を供給する。そして、胴部12の中空な空間12h内および/または中空糸膜16の貫通流路16h内において、洗浄を行う領域、例えば、濾過濃縮作業で濾過液が存在していた領域(例えば、
図20のH1の高さ)まで洗浄液を充填する。
【0116】
上記領域まで洗浄液が充填された後、連結チューブ送液部9pの作動をさせたまま、流量調整手段6cによって洗浄液供給チューブ6を開放し、洗浄液回収チューブ送液部7pを作動する。すると、洗浄液供給チューブ6および連結チューブ9に接続された洗浄液バッグSBから供給される洗浄液によって中空糸膜16や胴部12の中空な空間12hを洗浄でき、洗浄を行う領域における中空糸膜16の詰りを解消することができる。
【0117】
なお、洗浄を実施している間は、制御部106によって、連結チューブ9から供給される洗浄液の流量よりも洗浄液回収チューブ送液部7pが吸い出す流量が若干多くなるように制御される。つまり、濾過濃縮作業で濾過液が存在していた領域まで洗浄液が存在する状態を維持しつつ、洗浄液供給チューブ6から供給される洗浄液が中空糸膜16の貫通流路16h内を流れるように洗浄が実施される。
【0118】
また、洗浄を行う前に、洗浄を行う領域まで洗浄液を充填する作業を別途実施せずに、流量調整手段6cによって洗浄液供給チューブ6を開放した状態で、洗浄液回収チューブ送液部7pを作動させながら、連結チューブ送液部9pを作動させて洗浄液バッグSBから胴部12の中空な空間12h内に洗浄液を供給するようにしてもよい。この場合でも、制御部106によって、連結チューブ送液部9pおよび洗浄液回収チューブ送液部7pの作動を制御すれば、胴部12の中空な空間12h内において、洗浄を行う領域まで洗浄液を充填することができる。
例えば、流量調整手段6cによって洗浄液供給チューブ6を閉塞しておき、上方のポート11cを大気開放の状態として、連結チューブ送液部9pおよび洗浄液回収チューブ送液部7pを作動する。このとき、連結チューブ9から供給される洗浄液の流量を洗浄液回収チューブ送液部7pが吸い出す流量よりも多くしておく。すると、時間の経過により、洗浄を行う領域まで胴部12の中空な空間12h内に洗浄液が充填させることができる。その後、流量調整手段6cによって洗浄液供給チューブ6を開放し、上方のポート11cを閉塞して、連結チューブ9から供給される洗浄液の流量を、洗浄液回収チューブ送液部7pが吸い出す流量よりも少なくすれば、安定した状態で洗浄を実施できる。つまり、洗浄を行う領域まで胴部12の中空な空間12h内に洗浄液が充填された状態を維持しつつ、中空糸膜16の洗浄を実施することができる。
また、胴部12の中空な空間12h内に洗浄を行う領域まで洗浄液が充填されるまでの間、上方のポート11cに接続されたチューブに設けられたポンプによって胴部12の中空な空間12h内の洗浄液を吸い出すようにしてもよい。この場合には、連結チューブ9から供給される洗浄液の流量を洗浄液回収チューブ送液部7pが吸い出す流量よりも多くしつつ、流量調整手段6cによって洗浄液供給チューブ6を開放しておいてもよい。この場合でも、洗浄を行う領域まで胴部12の中空な空間12h内に洗浄液が充填すれば、上方のポート11cを閉塞して、連結チューブ9から供給される洗浄液の流量を、洗浄液回収チューブ送液部7pが吸い出す流量よりも少なくすれば、安定した状態で洗浄を実施できる。つまり、洗浄を行う領域まで胴部12の中空な空間12h内に洗浄液が充填された状態を維持しつつ、中空糸膜16の洗浄を実施することができる。
また、連結チューブ9から供給される洗浄液の流量と洗浄液回収チューブ送液部7pが吸い出す流量を同じ流量にした場合でも、洗浄を行う領域まで中空糸膜16の貫通流路16h内を洗浄液で充填し、かつ、洗浄を行う領域まで中空糸膜16の貫通流路16h内が洗浄液によって充填された状態で洗浄を行うことは可能である。
【0119】
また、洗浄液は洗浄を行う領域まで充填されるが、洗浄を行う領域は、必ずしも濾過濃縮作業で濾過液が存在していた領域に限られず、この領域よりも少ない領域であってもよいし(例えば、
図20のH3の高さまで)、この領域よりも多い領域であってもよい(例えば、
図20のH2の高さまで)。また、胴部12の中空な空間12h内全体を洗浄液によって満たしてもよい。さらに、
図20に示すように一対のポート11c,11cのうち下方のポート11c(濾過液排出ポート11c)だけに濾過液供給チューブ3が接続されているような場合には、上方のポート11cから洗浄液が漏れない位置(
図20のH2の高さまで)まで中空な空間12h内全体を洗浄液によって満たしてもよい。
【0120】
上記例では、濾過器10の中空糸膜16の軸方向が上下方向を向いている場合を説明したが、濾過器10は、中空糸膜16の軸方向が略水平方向を向いた状態になるように配設される場合がある。この場合には、中空糸膜16全体が洗浄液に浸漬された状態で(または、中空糸膜16全体が洗浄液に浸漬状態となるように胴部12の中空な空間12h内に洗浄液を充填した後)、その状態を維持するように洗浄作業が行われることが望ましい。もちろん、ポート11cの位置によっては、中空糸膜16の一部だけが洗浄液に浸漬された状態で(または、中空糸膜16の一部が洗浄液に浸漬した状態となるように胴部12の中空な空間12h内に洗浄液を充填した後)、その状態を維持するように洗浄作業が行ってもよい。中空糸膜16の一部だけが洗浄液に浸漬された状態としては、例えば、中空糸膜16全体は洗浄液に浸漬できないが、濾過液供給チューブ3が接続されていないポート11cから洗浄液が漏れない状態が相当する。
【0121】
また、上記例では、胴部12の中空な空間12h内に、濾過液供給チューブ3に接続された連結チューブ9から洗浄液を供給する場合を説明したが、洗浄液は濾過液供給チューブ3を通して供給しなくてもよい。例えば、
図20に示すように、一対のポート11c,11cのうち下方のポート11c(濾過液排出ポート11c)だけに濾過液供給チューブ3が接続されているような場合には、上方の排出ポート11cだけから洗浄液を供給するようにしてもよい。また、濾過液供給チューブ3を通して胴部12の中空な空間12h内に洗浄液を供給する場合には、濾過液供給チューブ3と連通された濃縮器20に洗浄液を供給して、濃縮器20を通過した洗浄液を胴部12の中空な空間12h内に供給するようにしてもよい。この場合には、濾過器10の洗浄の際に、濃縮器20の洗浄(例えば、濾過器20の中空糸膜内の洗浄)も実施できる。
【0122】
例えば、
図22に示すように、濃縮器20の濃縮液排出口20bに直接、または、濃縮液排出口20bに連通された濃縮液チューブ4を介して、洗浄液バッグSBから濃縮器20に洗浄液を供給する。すると、供給された洗浄液は、濃縮器20を通過した後、濾過液供給口20aから濾過液供給チューブ3に流入し、濾過液供給チューブ3から濾過液排出ポート11cを通って濾過器10の胴部12の中空な空間12h内に供給される。つまり、濃縮器20に供給した洗浄液を、濃縮器20だけでなく、濾過器10の洗浄にも利用することができる。
【0123】
なお、この場合には、濃縮器20内の物質が胴部12の中空な空間12h内に流れることになるが、この物質は、濾過器10から排出された濾過液や濾過液に含まれていた物質であり、胴部12の中空な空間12h内に流れ込んでも問題はなく、洗浄液で薄まった濾過液は濃縮を再度行えばよい。
また、洗浄液は、濃縮器20に対して濃縮液排出口20bではなく、廃液排出口20cを通して濃縮器20に供給してもよい。廃液排出口20cから洗浄液を濃縮器20に供給すれば、中空糸膜16の壁16wに対して直角方向に洗浄液を流すことができる。つまり、中空糸膜16の壁16wを洗浄液が透過する方向に洗浄液を供給できるので、濃縮器20に堆積している詰まり成分を効率よく押し流して洗浄できるという利点が得られる。
【0124】
<濃縮器20の詳細な説明>
第1実施形態の原液処理装置1では、濃縮器20に対する各チューブが以下のように接続されていることが望ましい。以下、濃縮器20の構成と濃縮器20に対する各チューブの接続について説明する。
【0125】
濃縮器20は、濾過器10から濾過液が供給され、この濾過液を濃縮するものである。この濃縮器20は、前述した濾過器10と実質的に同様の構造を有しており、濾過液から水分を分離して濃縮液とする機能を有している。つまり、濃縮器20は、濾過器10の分離部材に代えて、濾過液から水分を分離する機能を有する水分分離部材が内部に収容された構造を有している。例えば、濃縮器20には、CARTに使用されている腹水濃縮器や、透析に使用される透析用フィルター、二重濾過血漿交換療法に用いられる膜型血漿成分分画器などを使用することができる。
【0126】
この濃縮器20を具体的に説明すると、濃縮器20は、濾過器10の濾過液排出ポート11cと濾過液供給チューブ3によって連通された濾過液供給口20aを備えている。つまり、この濾過液供給口20aから、濃縮すべき液体である濾過液が濃縮器20に供給されるようになっている。
【0127】
また、濃縮器20は、濾過液から分離された液体(分離液、廃液)、つまり、水分などを排出するための廃液排出口20cを備えている。この廃液排出口20cは、廃液チューブ5を介して廃液バッグDBと連通されている。また、濃縮器20は、濃縮液が排出される濃縮液排出口20bを備えている。この濃縮液排出口20bは、濃縮液チューブ4を介して濃縮液バッグCBと連通されている。
【0128】
そして、濃縮器20は、水分分離部材を備えている。この水分分離部材は、水分は透過するが、血漿中に含まれる有用な蛋白質などの有用成分は透過しない機能を有している。濃縮器20が
図5のような構造を有していれば、
図5の中空糸膜束15が水分分離部材となる。
【0129】
このため、濾過液供給口20aから濃縮器20内に濾過液を供給すれば、水分分離部材によって濾過液から水分が分離され、分離された水分は、廃液排出口20cから排出され廃液チューブ5を通して廃液バッグDBに供給される。一方、水分の一部が除去されて濃縮された濃縮液は、濃縮液排出口20bから排出され、排出された濃縮液は、濃縮液チューブ4を通して濃縮液バッグCBに供給される(
図1参照)。
【0130】
なお、濃縮器20が、水分分離部材として中空糸膜を有している場合には、実質的に濾過器10と同じような構造となる(
図5参照)。つまり、水分分離部材である複数本の中空糸膜(または複数本の中空糸膜を束ねた中空糸膜束)を収容する中空な空間を有する胴部と、複数本の中空糸膜の両端が連通された一対のヘッダ部を有する構造となる。そして、一対のヘッダ部が濾過液供給口20aや濃縮液排出口20bとなるポートを有し、胴部が廃液排出口20cとなるポートを有する構造となる。例えば、
図5のヘッダ部13に設けられているポート11aが濾過液供給口20aとなり、
図5のヘッダ部14に設けられているポート11bが濃縮液排出口20bとなる。また、
図5の胴部12に設けられているポート11cが廃液排出口20cとなる。(
図5参照)。
そして、かかる構造を有する濃縮器20の場合、上述した一対のヘッダ部(
図5であれば一対のヘッダ部13,14)が、特許請求の範囲にいう第一液体供給部および第二液体供給部に相当するものとなる。
【0131】
また、濃縮器20が、実質的に濾過器10と同じような構造となる場合には、上述した濾過器10と同様の洗浄方法で洗浄すれば、中空糸膜の詰りの除去や中空糸膜内の流路の洗浄を効果的に実施することができる。
【0132】
例えば、
図21であれば、まず、流量調整手段3cによって濾過液供給チューブ3を閉塞しておく。また、濃縮液チューブ送液部4pの作動を停止して濃縮液チューブ4も閉塞しておく。そして、濃縮器20の胴部の中空な空間内を洗浄液で満たす場合には、2つのポート20cのうち上方に位置するポート20cを大気開放する。また、中空糸膜の貫通流路内を洗浄液で満たす場合には、濾過液供給チューブ3において流量調整手段3cよりも胴部の中空な空間側の部分を大気開放する。この状態で、下方に位置するポート20cに接続されている廃液チューブ5の他端に、廃液バッグDBに代えて洗浄液バッグSBを接続し、洗浄液バッグSBから洗浄液を濃縮器20の胴部の中空な空間内に供給する。そして、胴部の中空な空間内において、洗浄を行う領域、例えば、濾過濃縮作業で廃液が存在していた領域まで洗浄液を充填する。
【0133】
上記領域まで洗浄液が充填された後、流量調整手段3cによって濾過液供給チューブ3を開放し、連結チューブ送液部9pを作動して連結チューブ9に接続されている洗浄液バッグSBから洗浄液を濃縮器に供給し、濃縮液チューブ送液部4pも作動する。すると、濃縮器20における中空糸膜や胴部の中空な空間を洗浄でき、洗浄を行う領域における中空糸膜16の詰りを解消することができる。
【0134】
なお、洗浄を実施している間は、制御部106によって、連結チューブ送液部9pから供給される洗浄液の流量よりも濃縮液チューブ送液部4pが吸い出す流量が若干多くなるように制御される。つまり、濾過濃縮作業で濃縮液が存在していた領域まで洗浄液が存在する状態を維持しつつ、廃液チューブ5から供給される洗浄液が中空糸膜16を透過するように洗浄が実施される。
【0135】
また、廃液排出口20cとなるポートから濃縮器20の胴部12の中空な空間12h内に洗浄液を供給している状態で、濃縮液チューブ送液部4pを作動させながら、連結チューブ送液部9pを作動させて洗浄液バッグSBから胴部12の中空な空間12h内に洗浄液を供給するようにしてもよい。この場合でも、制御部106によって、連結チューブ送液部9pおよび濃縮液チューブ送液部4pの作動を制御すれば、胴部12の中空な空間12h内において、洗浄を行う領域まで洗浄液を充填することができる。この場合には、洗浄液が洗浄を行う領域まで充填されるまでは、連結チューブ送液部9pから供給される洗浄液の流量を、濃縮液チューブ送液部4pが吸い出す流量よりも多くしておく。そして、洗浄を行う領域まで洗浄液が充填されれば、制御部106によって、連結チューブ送液部9pから供給される洗浄液の流量よりも濃縮液チューブ送液部4pが吸い出す流量が若干多くなるように制御すればよい。
【0136】
また、洗浄液は洗浄を行う領域まで充填されるが、洗浄を行う領域は、必ずしも濾過濃縮作業で濃縮液が存在していた領域に限られず、この領域よりも少ない領域であってもよいし(例えば、
図20のH3の高さまで)、この領域よりも多い領域であってもよい。また、胴部の中空な空間12h内全体を洗浄液によって満たしてもよい。さらに、一対のポート20c,20cのうち下方のポート20cだけに廃液チューブ5が接続されているような場合には、上方のポート20cから洗浄液が漏れない位置(
図20のH2の高さまで)まで中空な空間内全体を洗浄液によって満たしてもよい。
【0137】
上記例では、濃縮器20の中空糸膜の軸方向が上下方向を向いており、しかも、濾過液供給口20aが濃縮液排出口20bよりも上方に位置した状態で濃縮作業が実施され、同じ状態で洗浄作業を実施する場合を説明している。濃縮器20は、中空糸膜の軸方向が略水平方向を向いた状態になるように配設される場合がある。この場合には、中空糸膜全体が洗浄液に浸漬された状態で(または、中空糸膜全体が洗浄液に浸漬状態となるように胴部の中空な空間内に洗浄液を充填した後)、その状態を維持するように洗浄作業が行われることが望ましい。もちろん、ポート20cの位置によっては、中空糸膜の一部だけが洗浄液に浸漬された状態で(または、中空糸膜の一部が洗浄液に浸漬した状態となるように胴部の中空な空間内に洗浄液を充填した後)、その状態を維持するように洗浄作業が行ってもよい。中空糸膜の一部だけが洗浄液に浸漬された状態としては、例えば、中空糸膜全体は洗浄液に浸漬できないが、廃液チューブ5が接続されていないポート20cから洗浄液が漏れない状態が相当する。
【0138】
<第1実施形態の原液処理装置1の回路構成>
つぎに、
図1に基づいて、第1実施形態の原液処理装置1の回路構成を説明する。
【0139】
なお、以下では、処理対象となる原液が胸腹水である場合を代表として説明する。
【0140】
また、以下の説明では、特許請求の範囲にいう各流路(給液流路、濾過液供給流路、濃縮液流路、廃液流路、洗浄液供給流路、洗浄液回収流路、連結流路)が可撓性や柔軟性を有するチューブ(給液チューブ2、濾過液供給チューブ3、濃縮液チューブ4、廃液チューブ5、洗浄液供給チューブ6、洗浄液回収チューブ7、連結チューブ9)で形成されている場合を説明する。しかし、各流路は可撓性や柔軟性を有しない管(例えば、硬質プラスチック製の管や鋼管、塩ビ管等)や、全ての流路または一部の流路が樹脂成型等によって一体形成型された一体型回路等で構成されていてもよい。
【0141】
さらに、第1実施形態の原液処理装置1が一対のローラーポンプ110,120を有しているので、以下の説明では、各流路を可撓性や柔軟性を有するチューブで形成し、各流路の送液部としてローラーポンプを使用することを前提に説明する。しかし、第1実施形態の原液処理装置1では、送液部はローラーポンプに限られず、各流路内の液体を送液できる種々の装置を採用することができる。送液部は、各流路を構成する管の素材や流路内を流れる液体に合わせて適宜選択すればよい。例えば、送液部として、輸液ポンプやダイヤフラムポンプ等を使用することもできる。また、ローラーポンプは、作動を停止すればクランプ機能(流路を閉塞して液体が流れないようにする機能)を発揮するため、下記説明では送液部を設けた流路にはクランプ機能を有する器具は設けていない。しかし、送液部として、作動を停止してもクランプ機能を発揮しない装置やクランプ機能を有しない装置を使用する場合には、送液部を設けた流路に、別途、クランプ機能を有する器具(例えばクレンメやクリップ、電磁弁等)を設けて、送液部の作動を停止した際にクランプ機能を有する器具にクランプ機能を発揮させてもよい。電磁弁を使用した場合には、制御部106によって送液部の作動を停止すると同時や所望のタイミングでクランプ機能を発揮させることが可能になる。
また、各送液部は、上述した制御部106によってその作動が制御されているので、以下では、各送液部が制御部106によって制御されていることを前提に説明する。
【0142】
<第1実施形態の原液処理装置1の概略構成>
まず、第1実施形態の原液処理装置1の概略構成を説明する。
【0143】
図1において、符号UBは、原液、つまり、胸部や腹部から抜いた胸腹水等の原液を収容する原液バッグを示している。また、符号CBは、原液を濾過濃縮した濃縮液を収容する濃縮液バッグを示している。さらに、符号DBは、濃縮液から分離された廃液(つまり水分)を収容する廃液バッグを示している。さらに、符号SBは生理食塩水や輸液(細胞外液)等の洗浄液が収容された洗浄液バッグ、符号FBは洗浄液を回収するための洗浄液回収バッグを示している。
【0144】
図1に示すように、第1実施形態の原液処理装置1では、原液バッグUBは濾過器10に給液チューブ2を介して接続されている。給液チューブ2は、原液バッグUB内の原液を濾過器10に供給するチューブである。この給液チューブ2には、給液チューブ2内の液体を送液する給液チューブ送液部2pが設けられている。
【0145】
濾過器10は、原液を濾過して濾過液を生成するものである。この濾過器10は、濾過液供給チューブ3を介して濃縮器20に接続されている。濾過液供給チューブ3は、濾過器10で生成された濾過液を濃縮器20に供給するチューブである。この濾過液供給チューブ3には、濾過液供給チューブ3内における液体の流れを停止開放する、例えば、クレンメやクリップ、電磁弁等の流量調整手段3cが設けられている。
【0146】
この濾過液供給チューブ3には、濾過器10と流量調整手段3cの間の部分に連結チューブ9の一端が連結されている。この連結チューブ9には、連結チューブ9内の液体を送液する連結チューブ送液部9pが設けられている。
【0147】
また、濾過器10には、洗浄液供給チューブ6を介して洗浄液バッグSBが接続されている。洗浄液供給チューブ6は、洗浄液バッグSBから洗浄液を濾過器10に供給するチューブである。この洗浄液供給チューブ6には、洗浄液供給チューブ6内における液体の流れを停止開放する、例えば、クレンメやクリップ、電磁弁等の流量調整手段6cが設けられている。
【0148】
さらに、濾過器10には、洗浄液回収チューブ7を介して濾過器10を洗浄した洗浄液を回収する洗浄液回収バッグFBが接続されている。この洗浄液回収チューブ7には、洗浄液回収チューブ7内の液体を送液する洗浄液回収チューブ送液部7pが設けられている。
【0149】
なお、洗浄液回収チューブ7は、給液チューブ2を介して濾過器10に接続されてもよいし、直接濾過器10に接続されてもよい。
【0150】
濃縮器20は、濾過液を濃縮した濃縮液を生成するものである。この濃縮器20には、濃縮液チューブ4を介して濃縮液バッグCBが接続されている。濃縮液チューブ4は、濃縮器20で濃縮された濃縮液を濃縮液バッグCBに供給するチューブである。この濃縮液チューブ4には、濃縮液チューブ4内の液体を送液する濃縮液チューブ送液部4pが設けられている。なお、濃縮液チューブ送液部4pに代えて、廃液チューブ5に廃液チューブ送液部5pを設けてもよい(
図4参照)。この場合でも、濃縮液チューブ送液部4pが濃縮液の送液量を増加させる条件では廃液チューブ送液部5pが廃液の送液量を減少させ、濃縮液チューブ送液部4pが濃縮液の送液量を減少させる条件では廃液チューブ送液部5pが廃液の送液量を増加させれば、濃縮液チューブ4に濃縮液チューブ送液部4pを設けた場合と同様に機能させることができる。以下では、濃縮液チューブ4に濃縮液チューブ送液部4pを設けた場合を説明する。
【0151】
また、濃縮器20には、廃液チューブ5を介して廃液バッグDBが接続されている。廃液チューブ5は、濃縮器20で濃縮液から分離された廃液(水分)を廃液バッグDBに供給するチューブである。
【0152】
以上のごとき構成であるので、第1実施形態の原液処理装置1では、原液バッグUBから給液チューブ2を介して原液を濾過器10に供給すれば、濾過器10で原液を濾過して濾過液を生成することができる。そして、濾過液供給チューブ3を介して生成された濾過液を濃縮器20に供給すれば、濃縮器20によって濃縮液を生成することができ、濃縮液チューブ4を介してこの濃縮液を濃縮液バッグCBに回収することができる。
【0153】
一方、洗浄液供給チューブ6に接続された洗浄液バッグSBから洗浄液を濾過器10に供給すれば、洗浄液によって濾過器10を洗浄することができる。また、濃縮液バッグCBに代えて洗浄液バッグSBを濃縮液チューブ4に接続すれば、洗浄液によって濃縮器20を洗浄することができる(
図2参照)。
【0154】
なお、濃縮液バッグCBに代えて洗浄液バッグSBを濃縮液チューブ4に接続した場合には、濾過液供給チューブ3を通して濃縮器20を洗浄した洗浄液を濾過器10に供給することができる。つまり、濃縮器20と濾過器10の洗浄を同時に実施することも可能になる。
【0155】
以下、第1実施形態の原液処理装置1による作業を説明する。
【0156】
<準備洗浄作業>
図2に示すように、第1実施形態の原液処理装置1の準備洗浄作業では、濃縮液チューブ4の他端に濃縮液バッグCBに代えて洗浄液バッグSBを接続して、廃液チューブ5の他端には廃液バッグDBに代えて洗浄液回収バッグFBを接続する。なお、廃液チューブ5の他端は廃液バッグDBを接続したままでもよいし、廃液チューブ5の他端を単なるバケツなどに配置してもよい。
また、給液チューブ2の他端にも原液バッグUBに代えて洗浄液回収バッグFBを接続する。なお、給液チューブ2の他端には廃液バッグDBを接続してもよいし、給液チューブ2の他端を単なるバケツなどに配置してもよい。
そして、連結チューブ9の他端にも洗浄液回収バッグFBを接続する。なお、連結チューブ9の他端には廃液バッグDBを接続してもよいし、連結チューブ9の他端を単なるバケツなどに配置してもよい。
【0157】
ついで、流量調整手段3cおよび流量調整手段6cを開放して、濾過液供給チューブ3および洗浄液供給チューブ6内を洗浄液が流れるようにする。
【0158】
上記状態で、濃縮液チューブ4に接続された洗浄液バッグSBから濃縮器20に洗浄液を流すように濃縮液チューブ送液部4pを作動させ、濃縮器20(つまり濾過液供給チューブ3)から連結チューブ9に接続された洗浄液回収バッグFBに洗浄液を流すように連結チューブ送液部9pを作動させる。すると、濃縮液チューブ4に接続された洗浄液バッグSBから濃縮液チューブ4を通して濃縮器20に洗浄液が供給される。供給された洗浄液は、濃縮器20を通過した後、濾過液供給チューブ3、連結チューブ9を通過して連結チューブ9に接続された洗浄液回収バッグFBに回収される。なお、一部の洗浄液は廃液チューブ5を通って、廃液チューブ5の他端に接続された洗浄液回収バッグFBに回収される。
【0159】
また、濃縮器20から連結チューブ9に接続された洗浄液回収バッグFBに洗浄液を流すように連結チューブ送液部9pを作動させるとともに、濾過器10から給液チューブ2に接続された洗浄液回収バッグFBに洗浄液を流すように給液チューブ送液部2pを作動させる。すると、洗浄液供給チューブ6に接続された洗浄液バッグSBから洗浄液供給チューブ6を通して濾過器10に洗浄液が供給される。供給された洗浄液は、濾過器10を通過した後、一部は濾過液供給チューブ3、連結チューブ9を通過して連結チューブ9に接続された洗浄液回収バッグFBに回収され、一部は給液チューブ2を通過して給液チューブ2に接続された洗浄液回収バッグFBに回収される。また、洗浄液回収チューブ送液部7pも作動させることによって、洗浄液回収チューブ7にも濾過器10に供給された洗浄液の一部を流すことができる。
【0160】
すると、濾過器10と濃縮器20および全てのチューブに洗浄液を流すことができるので、第1実施形態の原液処理装置1全体を洗浄することができる。
【0161】
なお、
図2では、給液チューブ送液部2pおよび洗浄液回収チューブ送液部7pを作動させて、濾過器10から洗浄液を吸い出して、濾過器10内に洗浄液の流れを発生させることによって濾過器10内を洗浄している。しかし、濾過器10に洗浄液を押し込んで濾過器10内に洗浄液の流れを発生させて濾過器10内を洗浄してもよい。
【0162】
例えば、
図2において、流量調整手段6cに代えて洗浄液供給チューブ6に洗浄液供給チューブ送液部6pを設け、洗浄液回収チューブ送液部7pに代えて洗浄液回収チューブ7に流量調整手段7cを設ける。そして、流量調整手段7cによって洗浄液回収チューブ7を開放し、洗浄液バッグSBから濾過器10に向かって洗浄液供給チューブ6内を洗浄液が流れるように洗浄液供給チューブ送液部6pを作動させる。すると、濾過器10に洗浄液を押し込んで、濾過器10内に洗浄液の流れを発生させることができるから、洗浄液によって濾過器10内を洗浄することもできる。この場合、濾過器10から洗浄液を吸い出すように給液チューブ2の給液チューブ送液部2pを作動させて、給液チューブ2に洗浄液を流すようにしてもよい。また、給液チューブ送液部2pは作動させず、洗浄液回収チューブ7にのみ洗浄液を流すようにしてもよい。
【0163】
<濾過濃縮作業>
準備洗浄作業が終了すると、濾過濃縮作業が実施される。
【0164】
図1に示すように、第1実施形態の原液処理装置1の濾過濃縮作業では、準備洗浄作業の状態から(
図2参照)、洗浄液バッグSBに代えて濃縮液バッグCBが濃縮液チューブ4に接続され、洗浄液回収バッグFBに代えて廃液バッグDBが廃液チューブ5に接続される。
一方、給液チューブ2には、洗浄液回収バッグFBに代えて原液バッグUBが接続される。
また、流量調整手段3cによって濾過液供給チューブ3内を液体が流れることができる状態を維持する一方、流量調整手段6cによって洗浄液供給チューブ6内は液体が流れないように閉塞する。加えて、洗浄液回収チューブ送液部7pおよび連結チューブ送液部9pを作動させず、クランプとして機能させる。
【0165】
上記状態で、給液チューブ2に接続された原液バッグUBから濾過器10に原液を流すように給液チューブ送液部2pを作動させ、かつ、濃縮器20から濃縮液チューブ4に接続された濃縮液バッグCBに濃縮液を流すように濃縮液チューブ送液部4pを作動させる。
【0166】
すると、原液バッグUBから給液チューブ2を通して濾過器10に原液が供給される。供給された原液は濾過器10によって濾過され、生成された濾過液が濾過液供給チューブ3を通して濃縮器20に供給される。そして、濃縮器20に供給された濾過液は、濃縮器20によって濃縮されて、生成された濃縮液が濃縮液チューブ4を通して濃縮液バッグCBに回収される。一方、濃縮液から分離された水分は、廃液チューブ5を通して廃液バッグDBに回収される。
【0167】
<濾過濃縮操作について>
ここで、濾過濃縮作業では、濃縮割合が所定の範囲になるように、給液チューブ送液部2pおよび濃縮液チューブ送液部4pの作動が制御されている。しかし、以下のように、濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧を利用して、給液チューブ送液部2pおよび濃縮液チューブ送液部4pの作動、つまり、給液チューブ送液部2pおよび濃縮液チューブ送液部4p内を流れる流量を制御してもよい。すると、濾過器10や濃縮器20の能力を有効に活用して、濾過濃縮を行うことができるので、濃縮液を生成するまでの時間を短縮でき、濃縮作業の効率を高くできる。
以下では、濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧を利用して、給液チューブ送液部2pおよび濃縮液チューブ送液部4pの作動を制御して濾過濃縮する作業を説明する。
【0168】
なお、濾過器膜間差圧とは、濾過器10の濾過部材(中空糸膜等)等の給液側と排液側との間の差圧を意味している。例えば、濾過器10の濾過部材が中空糸膜16であれば、中空糸膜16の貫通流路16h内の圧力と胴部12の中空な空間12h内の圧力の差が濾過器膜間差圧に相当する。
また、濃縮器膜間差圧とは、濃縮器20の水分分離部材(中空糸膜等)等の給液側と排液側との間の差圧を意味している。例えば、濃縮器20の濾過部材が中空糸膜であれば、中空糸膜の貫通流路内の圧力と胴部の中空な空間内の圧力の差が濃縮器膜間差圧に相当する。
【0169】
なお、濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧は、濾過器10や濃縮器20に接続されているチューブ内圧を測定することによって算出することができる。例えば、給液チューブ2と濾過液供給チューブ3に圧力計を設けておき、その信号が制御部106に供給されるようになっていれば、制御部106が濾過器膜間差圧を算出できる。なお、
図1に示すように、濾過液供給チューブ3が接続されていないポート11c(またはこのポート11cに接続されているチューブ)に圧力計を設けても、制御部106が濾過器膜間差圧を算出できる。また、濾過液供給チューブ3と廃液チューブ5に圧力計を設けておき、その信号が制御部106に供給されるようになっていれば、制御部106が濃縮器膜間差圧を算出できる。なお、廃液チューブ5が接続されていないポート20cがある場合には、このポート20c(またはこのポート20cに接続されているチューブ)に圧力計を設けても、制御部106が濃縮器膜間差圧を算出できる。
【0170】
なお、濾過器10や濃縮器20において、給液側と排液側のいずれか一方が大気開放に近い状態であれば、給液側と排液側のうち大気開放となっていない側と連通されたチューブ内圧を測定するだけでも、制御部106が濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧を算出できる。言い換えれば、濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧に代えて、制御部106は、大気開放となっていない側と連通されたチューブ内圧だけを利用して、送液部の作動を制御することもできる。例えば、濾過器10や濃縮器20に接続されているチューブが、バッグにつながっておりかつそのチューブが送液部や流量調整手段によって閉塞されていない状態であれば、そのチューブは大気開放に近い状態と考えることができる。
図1の状態であれば、濾過器10に接続されているチューブ2,3のうち原液バッグUBに接続されている給液チューブ2は大気開放と見做すこともできる。また、濃縮器20に接続されているチューブ3,5のうち、廃液バッグDBに接続されている排液チューブ5は大気開放と見做すこともできる。すると、
図1の状態であれば、濾過器供給チューブ3のチューブ内圧だけを利用して、制御部106は送液部の作動を制御することもできる。
【0171】
また、給液チューブ2や濾過液供給チューブ3内を流れる液体の流量は、給液チューブ送液部2pおよび濃縮液チューブ送液部4pの作動から推定してもよいし、給液チューブ2や給液チューブ送液部2p、濃縮液チューブ4や濃縮液チューブ送液部4pに流量計を設けて直接流量を測定してもよい。
【0172】
<濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧を利用した濾過濃縮作業の説明>
濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧を利用した濾過濃縮作業を行う場合、予め許容差圧を設定する。つまり、濾過器10や濃縮器20に応じて、濾過器10や濃縮器20が許容できる差圧(許容差圧)をそれぞれ設定する。この許容差圧は、所定の幅を有していてもよいし、特定の値に設定してもよい。なお、以下では、許容差圧が所定の幅を有する場合を代表として説明する。
【0173】
なお、濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧を利用した濾過濃縮作業を行う場合、予め許容流量を設定することが望ましい。つまり、給液チューブ2内の原液の許容できる流量(許容流量)を設定することが望ましい。この許容流量は、所定の幅を有していてもよいし、特定の値に設定してもよい。かかる許容流量は必ずしも設定しなくてもよい。しかし、給液チューブ2内の原液の流量が少なくなりすぎると、濾過濃縮にかかる時間が長くなりすぎる。したがって、原液の処理時間が長くなることを防止する上では、許容流量を設定しておくことが望ましい。
さらに、濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧を利用した濾過濃縮作業を行う場合、予め許容濃縮倍率を設定することが望ましい。つまり、濃縮液チューブ4を流れる濃縮液の流量に対する給液チューブ2内の原液の流量の比率(許容濃縮倍率)を設定することが望ましい。この許容濃縮倍率は、所定の幅を有していてもよいし、特定の値に設定してもよい。かかる許容濃縮倍率は必ずしも設定しなくてもよい。しかし、濃縮液チューブ4を流れる濃縮液の流量に対する給液チューブ2内の原液の流量の比率である濃縮倍率が低下しすぎると(つまり濃縮液の流量が大きくなりすぎると)、濃縮効率が悪くなる。しかも、濃縮液量が多くなり、多量の濾過濃縮液が点滴再静注されることによって、血圧の上昇、心不全や呼吸不全の増悪などをきたす危険性がある。このため濃縮液量が多くなりすぎた場合には、再濃縮処理を追加する必要があり、再濃縮処理に時間を要する。濃縮液を再濃縮する場合には、再濃縮処理に時間を要するので、原液を処理するためのトータルの時間が長くなってしまう。したがって、濃縮倍率が低下しすぎることを防止する上では、許容濃縮倍率を設定しておくことが望ましい。
【0174】
濾過濃縮の開始時は、濾過器10への原液の送液量を増加させるように給液チューブ送液部2pが作動される。このとき、濃縮液チューブ送液部4pは、給液チューブ2内の原液の流量に合わせて、濃縮液が所定の濃縮倍率となるように作動される。例えば、濃縮倍率が10倍の濃縮液を生成する場合には、濃縮液チューブ送液部4pは、濃縮液チューブ4を流れる濃縮液の流量が給液チューブ2内を流れる原液の流量の1/10となるようにその作動が調整される。また、濃縮液チューブ送液部4pは、濃縮液の濃縮倍率に代えてまたは濃縮液を所定の濃縮倍率に維持しつつ、濃縮器膜間差圧が許容差圧内の設定値となるように(または許容差圧内を維持するように)その作動が調整される場合もある。なお、濾過器10への原液の送液量を増加している間は、上記いずれかの状態となるように、濃縮液チューブ送液部4pはその作動が制御される。
【0175】
濾過濃縮が進行すると、徐々に濾過器10や濃縮器20の詰りが発生してくる。すると、濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧が上昇する。しかし、濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧が許容差圧内になるまでは、濾過器10への原液の送液量を増加させるように給液チューブ送液部2pは作動する。
【0176】
<第一方法>
濾過器10への原液の送液量の増加は、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内になるまで継続される。そして、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内になると、給液チューブ2内の原液の流量を濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内となった状態の流量に維持するように給液チューブ送液部2pが制御される。一方、濃縮液チューブ送液部4pが操作され、濃縮液チューブ4を流れる濃縮液の流量が調整される。
【0177】
ここで、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内にある場合には、濃縮器20への濾過液の送液量、言い換えれば、濾過器10への原液の送液量が維持されるように給液チューブ送液部2pの作動が制御される。すると、濾過器10による濾過や濃縮器20による濃縮状態を所定の状態に維持できる。なお、濾過器膜間差圧の値に応じて、濾過器10への原液の送液量を増減させれば、濾過器膜間差圧を濾過器10の許容差圧内に維持しつつ、濾過器10への原液の送液量を多くできる。つまり、濾過濃縮作業の効率を高くすることができる可能性が有る。とくに、濾過器膜間差圧を濾過器10の最大許容差圧PMになるように維持すれば、濾過器10への原液の送液量も最大限に増加できるので、濾過作業の時間を短くする効果をより高めることができる。
【0178】
一方、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧(最大許容差圧PM)よりも大きくなると、濾過器10への原液の送液量が減少するように給液チューブ送液部2pの作動が制御される。濾過器10への原液の送液量が一定でも中空糸膜16等の詰りが発生した場合には、濾過器膜間差圧が大きくなり濾過の継続ができなくなる可能性がある。しかし、濾過器10への原液の送液量が減少すれば、濾過器膜間差圧を低下させることができるので、濾過器10の詰りが発生していても、濾過作業を継続することができる。しかも、濾過器10への原液の送液量が減少することによって、中空糸膜16等の詰りを若干低減できる可能性もあるので、濾過作業を継続しやすくなり、濾過作業の時間を短くできる可能性がある。とくに、濾過器膜間差圧が濾過器10の最大許容差圧PMより大きくなった場合に、一旦、濾過器10への原液の送液を停止して、一定期間後に供給を再開するようにすれば、中空糸膜等の詰りを低減できる効果を高くできる可能性がある。
【0179】
また、濾過器10への原液の送液量を減少させる等することによって、濾過器膜間差圧が濾過器10の最小許容差圧PLより小さくなった場合には、濾過器10への原液の送液量が増加するように給液チューブ送液部2pの作動が制御される。すると、濾過器10による濾過量を多くできるので、濾過作業の時間を短くできる可能性がある。そして、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内、とくに、最大許容差圧PMになるまで濾過器10への原液の送液量を増加させれば、濾過器10の濾過能力を効果的に使用することができるので、濾過作業の時間を短くする効果をより高めることができる。
【0180】
なお、濾過器膜間差圧が濾過器10の最大許容差圧PMより大きくなった場合に濾過器10への原液の送液量を減少させる場合には、徐々に原液の送液量を減少させてもよいし、ステップ状に原液の送液量を減少させてもよい。また、濾過器膜間差圧が濾過器10の最大許容差圧PM(
図24のPM)より大きくなった場合、濾過器10への原液の送液を一定期間停止してから、濾過器10への原液の送液を開始するようにしてもよい(
図24参照)。この場合、濾過器10への原液の送液量は、濾過器膜間差圧を確認しながら調整するようになっていればよい。例えば、
図24のパターン1のように、濾過器10への原液の送液を一定期間停止してから濾過器10への原液の送液を開始する場合、まず、最大許容流量LMの1/2程度の流量で送液を開始し、その時の濾過器膜間差圧を確認する。この状態において濾過器膜間差圧が最小許容差圧PL(
図24のPL)よりも小さくなっていれば、現状の流量と最大許容流量LMとの差の1/2程度流量を増加し、その時の濾過器膜間差圧を確認する。この状態において濾過器膜間差圧がまだ最小許容差圧PLよりも小さくなっていれば、さらに現状の流量と最大許容流量LMとの差の1/2程度流量を増加し、その時の濾過器膜間差圧を確認する。この作業を繰り返して、濾過器膜間差圧が濾過器10の最小許容差圧PL以上かつ最大許容差圧PM以下になれば(または最大許容差圧PMになれば)、流量の増加を停止する。また、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内であっても、最大許容流量LMに達していない場合には、濾過器膜間差圧を確認しながら、同様の方法で、最大許容流量LMになるまで濾過器10への原液の送液量を増加してもよい。
濾過器膜間差圧が濾過器10の最小許容差圧PLより小さくなった場合に濾過器10への原液の送液量を増加させる場合には、徐々に原液の送液量を増加させてもよい。例えば、上述した流量の増加方法、つまり、濾過器10への原液の送液を一定期間停止した状態から流量を増加する方法と同様の方法で、濾過器10への原液の送液量を増加してもよい。
【0181】
また、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内に維持されている状態では、濾過器10への原液の送液量を維持すればよいが、その流量が最大許容流量LMよりも小さい場合には、最大許容流量LMとなるまで濾過器10への原液の送液量を増加させてもよい。
【0182】
また、濾過器膜間差圧が濾過器10の最小許容差圧PL以上になっても、濾過器10への原液の送液量が最小許容流量LLに到達しない場合には(
図24のパターン3)、中空糸膜16等の詰りが発生していると判断して、濾過濃縮作業を中止して洗浄作業に移行するようにしてもよい。
【0183】
さて、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内であり、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内となった状態の流量に給液チューブ2内の原液の流量が維持されている状態において、濃縮器膜間差圧に基づいて、濃縮液チューブ送液部4pを以下のように制御することができる。
【0184】
<ステップ1>
まず、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最小許容差圧よりも小さい場合には、濃縮液チューブ送液部4pは、濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が減少するように作動される。つまり、濃縮液の濃度を高くするように濃縮液チューブ送液部4pの作動が制御される。
【0185】
<ステップ2>
そして、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内になるまで濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が減少される。濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内になると、濃縮液チューブ4内の濃縮液の流量を濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内となった状態の流量に維持するように濃縮液チューブ送液部4pが制御される。
【0186】
<ステップ3>
やがて、濃縮器20の詰り等によって、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最大許容差圧よりも大きくなると、濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が増加するように濃縮液チューブ送液部4pが制御される。なお、濃縮液の送液量が増加すると濃縮倍率が低下するが、許容濃縮倍率を満たしつつ濃縮倍率が低下するように(濃縮液の濃度が低くなるように)濃縮液チューブ送液部4pの作動が制御される。
なお、濃縮器膜間差圧を許容差圧内に維持するために濃縮液の送液量を増加させた際に、濃縮倍率が許容濃縮倍率より小さくなってしまう場合には、下記方法(第二方法)で対応することができる。
【0187】
濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が増加すると濃縮器膜間差圧は小さくなるので、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最小許容差圧よりも低くなると、再び濃縮液チューブ送液部4pは、濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が減少するように作動される。
【0188】
つまり、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内となっている間は、上記ステップ1~3が繰り返される。この方法を採用すれば、濾過器10や濃縮液バッグCBへの送液量が一定の場合では不可能な、濾過器10や濃縮器20の濾過膜の膜面積や詰りの状態に応じた、また、原液の状態(濾過器や濃縮器の詰りの原因物資の濃度、回収する有用物質の濃度、液体の粘度など)に応じた、最大の濾過流量(つまり、上述した最大許容流量LM)および最大の濃縮倍率を確保することが可能となる。つまり、濾過効率と濃縮効率とを向上させることによって、原液から濃縮液を生成する時間を短くでき、再濃縮作業を防ぐことや再濃縮作業にかかる時間を短縮することができる。
しかも、上記のように作動すれば、濾過濃縮開始時に、濾過器10、濃縮器20および回路内に充填された洗浄液や、濾過器10を洗浄した直後の濾過器10、および回路内の洗浄液を、濃縮器20の廃液として短時間に除去することが可能となる。つまり、上述したような、開始時および濾過器洗浄直後の洗浄液による濃縮液の希釈を効率的に防ぐことができる。
【0189】
なお、上記方法(第一方法)は、濾過器膜間差圧の最大許容差圧PMが濃縮器膜間差圧の最大許容差圧よりも大きい場合に採用することが望ましいが、この条件に限定されない。濾過器膜間差圧の最大許容差圧PMが濃縮器膜間差圧の最大許容差圧よりも小さい場合にも採用することができる。
また、濾過器膜間差圧が最大許容差圧PMよりも大きい場合や、濾過器膜間差圧が最小許容差圧PLよりも小さい場合、さらに、濾過器10への原液の送液量が濾過器膜間差圧に関係なく一定の場合にも、上記ステップ1~3を繰り返して、濃縮器20への濃縮液の送液量を調整してもよい。
【0190】
<第二方法>
第一方法では、濃縮器膜間差圧に基づいて濃縮液チューブ4内の濃縮液の流量を調整したが、以下のように、濃縮器膜間差圧に基づいて給液チューブ2内の原液の流量を調整することもできる。
【0191】
<ステップ1>
まず、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最小許容差圧よりも小さい場合には、給液チューブ送液部2pは、濾過器10への原液の送液量が増加するように作動される。つまり、濃縮器20に送られる濾過液の生成量が多くなるように給液チューブ送液部2pの作動が制御される。
【0192】
<ステップ2>
そして、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内(最小許容差圧以上かつ最大許容差圧以下)になるまで濃縮器20に送られる濾過液の生成量(言い換えれば濾過器10への原液の送液量)が増加される。そして、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内になると、給液チューブ2内の原液の流量を濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内となった状態の流量に維持するように給液チューブ送液部2pの作動が制御される。なお、この場合には、給液チューブ2内の原液の流量は濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内となった状態の流量からズレることになるが、原液の流量は許容流量内(最小許容流量以上かつ最大許容流量以下)の範囲内に維持されることが望ましい。
【0193】
<ステップ3>
やがて、濃縮器20の詰り等によって、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最大許容差圧よりも大きくなると、給液チューブ2内の原液の流量が減少するように給液チューブ送液部2pの作動が制御される。つまり、濃縮器20に送られる濾過液の生成量が少なくなるように給液チューブ送液部2pの作動が制御される。なお、この場合も、給液チューブ2内の原液の流量は濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内となった状態の流量からズレることになるが、原液の流量は許容流量の範囲内に維持されることが望ましい。
【0194】
給液チューブ2内の原液の流量が減少すると濃縮器膜間差圧は小さくなるので、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最小許容差圧よりも低くなると、再び給液チューブ送液部2pは、給液チューブ2内の原液の流量が増加するように作動される。
【0195】
つまり、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内となっている間は、上記ステップ1~3が繰り返される。この方法を採用すれば、濾過器10や濃縮液バッグCBへの送液量が一定の場合では不可能な、濾過器10や濃縮器20の濾過膜の膜面積や詰りの状態に応じた、また、原液の状態(濾過器や濃縮器の詰りの原因物資の濃度、回収する有用物質の濃度、液体の粘度など)に応じた、最大の濾過流量(つまり、上述した最大許容流量LM)および最大の濃縮倍率を確保することが可能となる。つまり、濾過効率と濃縮効率とを向上させることによって、原液から濃縮液を生成する時間を短くでき、再濃縮作業を防ぐことや再濃縮作業にかかる時間を短縮することができる。
しかも、上記のように作動すれば、濾過濃縮開始時に、濾過器10、濃縮器20および回路内に充填された洗浄液や、濾過器10を洗浄した直後の濾過器10、および回路内の洗浄液を、濃縮器20の廃液として短時間に除去することが可能となる。つまり、上述したような、開始時および濾過器洗浄直後の洗浄液による濃縮液の希釈を効率的に防ぐことができる。
【0196】
なお、上記方法(第二方法)は、濾過器膜間差圧の最大許容差圧PMよりも濃縮器膜間差圧の最大許容差圧が大きい場合に採用することが望ましいが、この条件に限定されない。濾過器膜間差圧の最大許容差圧PMよりも濃縮器膜間差圧の最大許容差圧が小さい場合にも採用することができる。
また、濾過器膜間差圧が最大許容差圧PMよりも大きい場合や、濾過器膜間差圧が最小許容差圧PLよりも小さい場合、さらに、濾過器10への原液の送液量が濾過器膜間差圧に関係なく一定の場合にも、上記ステップ1~3を繰り返して、濃縮器20への濃縮液の送液量を調整してもよい。
【0197】
<濾過器洗浄について>
上述したような濾過濃縮作業を実施していると、濾過器10の詰り等によって、濾過器膜間差圧が濾過器10の最大許容差圧PMよりも大きくなる。この場合、給液チューブ送液部2pの作動を制御して給液チューブ2内の原液の流量を減少させれば、濾過器膜間差圧を濾過器10の最大許容差圧PMよりも小さくでき、濾過器膜間差圧を許容差圧内(最小許容差圧PL以上最大許容差圧PM以下の範囲)に維持できる。しかし、濾過器10の詰り等がひどくなると、濾過器膜間差圧を濾過器10の許容差圧内に維持するために給液チューブ2内の原液の流量が減少し、給液チューブ2内の原液の流量が最小許容流量LLよりも小さくなる可能性がある。かかる状態になると、第1実施形態の原液処理装置1の濾過濃縮作業の途中に、濾過器10の洗浄作業が実施される。
【0198】
図21に示すように、濾過器10の洗浄作業では、流量調整手段3cによって濾過液供給チューブ3内を液体が流れないように閉塞する。加えて給液チューブ送液部2pの作動を停止し、クランプとして機能させる。一方、流量調整手段6cを開放して洗浄液供給チューブ6内に液体が流れることができるようにする。
【0199】
上記状態で、洗浄液供給チューブ6に接続された洗浄液バッグSBから濾過器10を通して洗浄液回収チューブ7に接続された洗浄液回収バッグFBに液体を流すように洗浄液回収チューブ送液部7pを作動させる。すると、濾過器10の原液が流れる流路に、濾過濃縮の際に原液が流れる方向と逆方向に洗浄液を流すことができるので、濾過器10の原液が流れる流路内部を洗浄することができる。
【0200】
また、上記状態に加えて、連結チューブ9に接続された洗浄液バッグSBから濾過器10に洗浄液が流れるように連結チューブ送液部9pを作動させれば、連結チューブ9に接続された洗浄液バッグSBからも濾過器10に洗浄液が供給される。すると、この洗浄液は、濾過部材を濾過液が透過する方向と逆方向に濾過部材を透過するので、濾過部材の詰りを解消できる。この場合、洗浄液供給チューブ6に接続された洗浄液バッグSBと連結チューブ9に接続された洗浄液バッグSBの両方から濾過器10に洗浄液が供給されるので、洗浄液回収チューブ送液部7pによって洗浄液回収チューブ7を流れる洗浄液の流量が、連結チューブ送液部9pによって連結チューブ9を流れる洗浄液の流量よりも大きくなるように、洗浄液回収チューブ送液部7pおよび連結チューブ送液部9pの作動が調整される。
【0201】
なお、流量調整手段6cを閉塞させた状態で洗浄液回収チューブ送液部7pと連結チューブ送液部9pとを作動させてもよい。この場合には、連結チューブ送液部9pに接続された洗浄液バッグSBからのみ濾過液10に洗浄液が供給される。この場合も、濾過部材を濾過液が透過する方向と逆方向に、洗浄液が濾過部材を透過するので、濾過部材の詰りを解消できる。
【0202】
また、
図5に示すような、中空糸膜16を有する濾過器を濾過器10として使用した場合には、上述した濾過器10や濃縮器20の洗浄を適切に実施できるように、制御部106が濾過器10に対する洗浄液の供給量や供給タイミングを調整することが望ましい。つまり、中空糸膜16において洗浄を行う領域まで胴部12の中空な空間12h内を洗浄液によって満たした状態で洗浄液が中空糸膜16を透過するように、濾過器10に供給する洗浄液の供給量や供給タイミングを調整することが望ましい。
【0203】
<濾過液回収>
一方、上記方法で濾過器洗浄を実施した場合、濾過器10の本体部11の内部空間12h内に残留していた濾過液は洗浄液と混合して排出されてしまう。すると、濾過濃縮によって回収される有効成分の量が減少することになる。
【0204】
そこで、濾過器洗浄を行う際には、予め濾過器10の本体部11の内部空間12h内に存在する濾過液を濃縮器20に送液して、その後、濾過器洗浄を行う方が望ましい。
【0205】
<洗浄液による回収(外方)>
図1に示すように、濾過器10の本体部11のポート11c(濾過液供給チューブ3が接続されていないポート11c、以下洗浄用ポート11cという)にチューブを介して洗浄液バッグSBを接続する。そして、流量調整手段3cによって濾過液供給チューブ3内は液体が流れる状態を維持し、かつ、濃縮液チューブ送液部4pの作動を継続したまま、給液チューブ送液部2pの作動を停止し、クランプとして機能させる。その状態で、洗浄用ポート11cに接続されているチューブに設けられているポンプによって洗浄液バッグSBから濾過器10に洗浄液を供給すれば、濾過器10の本体部11の内部空間12h内の濾過液は濃縮器20に供給され、代わりに洗浄液バッグSBから洗浄液が内部空間12hに供給される。やがて、内部空間12h内の濾過液が全て洗浄液に置換されると、流量調整手段3cによって濾過液供給チューブ3を閉塞し、濃縮液チューブ送液部4pの作動を停止する。その状態となったのち、上述したような濾過器10の洗浄方法によって濾過器10を洗浄すれば、洗浄液とともに排出される濾過液の再濃縮を抑制することができる。
【0206】
なお、上記例では、給液チューブ送液部2pの作動を停止して回収を実施したが、給液チューブ送液部2pの作動を継続したまま回収を実施してもよい。つまり、濾過濃縮を継続しつつ濾過器10内の濾過液を回収することも可能である。この場合には、給液チューブ送液部2pの作動の作動を調整して、濾過器10に供給される原液の量を少なくすることが望ましい。
【0207】
なお、内部空間12h内の濾過液が全て洗浄液に置換されたか否かは、洗浄用ポート11cに接続されているチューブに設けられているポンプの送り量をカウントして理論的に求めたり、濃縮液の濃度を測定したりする方法で把握すればよい。また、濾過液の色を見たり、吸光度を測定したり、比重計を使用して濾過液の比重を測定したりする等の方法でも把握することは可能である。
【0208】
また、濾過器10の本体部11の洗浄用ポート11cに接続されるチューブには必ずしもポンプを設けなくてもよい。この場合でも、濃縮液チューブ送液部4pを作動させれば、濾過器10の本体部11の内部空間12h内の濾過液を洗浄液と置換することができる。
【0209】
<空気等の気体による回収>
また、上記説明では、濾過器10の本体部11の洗浄用ポート11cにチューブを介して洗浄液バッグSBを接続した場合を説明したが、濾過器10の本体部11の洗浄用ポート11cにチューブを介して空気等の気体を供給してもよい。
【0210】
この場合も、流量調整手段3cによって濾過液供給チューブ3内は液体が流れる状態を維持し、かつ、濃縮液チューブ送液部4pの作動を継続したまま、給液チューブ送液部2pの作動を停止し、クランプとして機能させる。その状態で、洗浄用ポート11cに接続されたチューブから空気等の気体を濾過器10に供給すれば、濾過器10の本体部11の内部空間12h内の濾過液を濃縮器20に供給することができる。やがて、内部空間12h内の濾過液が全て排出されると、流量調整手段3cによって濾過液供給チューブ3を閉塞し、濃縮液チューブ送液部4pの作動を停止する。その状態となったのち、上述したような濾過器10の洗浄方法によって濾過器10を洗浄すれば、洗浄液とともに排出される濾過液の再濃縮を抑制することができる。
【0211】
なお、上記例では、給液チューブ送液部2pの作動を停止して回収を実施したが、給液チューブ送液部2pの作動を継続したまま回収を実施してもよい。つまり、濾過濃縮を継続しつつ濾過器10内の濾過液を回収することも可能である。この場合には、給液チューブ送液部2pの作動の作動を調整して、濾過器10に供給される原液の量を少なくすることが望ましい。
【0212】
なお、内部空間12h内の濾過液が全て排出されたか否かは、濾過液供給チューブ3に液検知器や気泡検知器を設けたり、濾過液供給チューブ3の圧力を測定したり、ポンプの送り量をカウントして理論的に求めたりする等の方法で把握すればよい。
【0213】
また、空気等の気体によって濾過器10の本体部11の内部空間12h内の濾過液を濃縮器20に供給した場合、濾過器10の本体部11の内部空間12h内は空気等の気体によって満たされる。したがって、濾過液の回収後に洗浄作業を実施する場合には、予め胴部12の中空な空間12h内を中空糸膜16において洗浄を行う領域まで(または胴部12の中空な空間12h内全体を)洗浄液によって満たした状態とした後、洗浄作業を実施することが望ましい。
【0214】
<バッグへの回収>
また、上記例では、濾過液を濃縮器20に送液して濃縮液の状態として回収する場合を説明したが、濾過液を濾過液のままで回収してもよい。例えば、濾過液供給チューブ3において、流量調整手段3cよりも上流側(つまり濾過器10側)に濾過液を回収するためのバッグを接続しておく。その状態で、流量調整手段3cによって濾過液供給チューブ3内を液体が流れない状態として、上述したように洗浄用ポート11cから洗浄液や空気等の気体を濾過器10に供給すれば、濾過器10の本体部11の内部空間12h内の濾過液をバッグに回収することができる。この場合、濾過液を濃縮器20に送液して濃縮液の状態で回収する場合に比べて、短時間で濾過液を回収することができるので、洗浄作業への移行を迅速に実施することができる。
【0215】
<洗浄液による回収(内方)>
上記説明では、原液が濾過器10の中空糸膜束15の複数本の中空糸膜16の貫通流路16h内に供給され、濾過液が濾過器10の本体部11の胴部12の内部空間12h内に排出される場合を説明している。しかし、原液が濾過液排出ポート11cから本体部11の胴部12の内部空間12h内に供給され、濾過された濾過液が中空糸膜束15の複数本の中空糸膜16の貫通流路16h内に排出され、原液供給ポート11aから外部に排出されるようになっていてもよい。
【0216】
この場合には、以下のように各チューブ等が接続される。
まず、濾過液供給チューブ3は原液供給ポート11aに接続され、給液チューブ2はポート11c(つまり、上述した洗浄用ポート11c)に接続される。また、洗浄液供給チューブ6は給液チューブ2が接続されていないポート11c(つまり、上述した濾過液排出ポート11c)に接続され、洗浄用ポート11cに接続されていた洗浄液バッグSBは洗浄液供給ポート11bに接続される。
【0217】
そして、流量調整手段3cによって濾過液供給チューブ3内は液体が流れる状態を維持し、かつ、濃縮液チューブ送液部4pの作動を継続したまま、給液チューブ送液部2pの作動を停止し、クランプとして機能させる。その状態で、洗浄液供給ポート11bに接続されているチューブに設けられているポンプによって洗浄液バッグSBから濾過器10に洗浄液を供給すれば、濾過器10の中空糸膜16の貫通流路16h内の濾過液は濃縮器20に供給され、代わりに洗浄液バッグSBから洗浄液が貫通流路16h内に供給される。やがて、貫通流路16h内の濾過液が全て洗浄液に置換されると、流量調整手段3cによって濾過液供給チューブ3を閉塞し、濃縮液チューブ送液部4pの作動を停止する。その状態となったのち、上述したような濾過器10の洗浄方法によって濾過器10を洗浄すれば、洗浄液とともに排出される濾過液の再濃縮を抑制することができる。
【0218】
なお、上記例では、給液チューブ送液部2pの作動を停止して回収を実施したが、給液チューブ送液部2pの作動を継続したまま回収を実施してもよい。つまり、濾過濃縮を継続しつつ濾過器10内の濾過液を回収することも可能である。この場合には、給液チューブ送液部2pの作動の作動を調整して、濾過器10に供給される原液の量を少なくすることが望ましい。
【0219】
なお、内部空間12h内の濾過液が全て洗浄液に置換されたか否かは、洗浄用ポート11cに接続されているチューブに設けられているポンプの送り量をカウントして理論的に求めたり、濃縮液の濃度を測定したりする方法で把握すればよい。また、濾過液の色を見たり、吸光度を測定したり、比重計を使用して濾過液の比重を測定したりする等の方法でも把握することは可能である。
【0220】
<空気等の気体による回収>
また、上記説明では、濾過器10の本体部11の洗浄液供給ポート11bにチューブを介して洗浄液バッグSBを接続した場合を説明したが、濾過器10の本体部11の洗浄液供給ポート11bにチューブを介して空気等の気体を供給してもよい。
【0221】
この場合も、流量調整手段3cによって濾過液供給チューブ3内は液体が流れる状態を維持し、かつ、濃縮液チューブ送液部4pの作動を継続したまま、給液チューブ送液部2pの作動を停止し、クランプとして機能させる。その状態で、チューブから空気等の気体を濾過器10に供給すれば、濾過器10の中空糸膜16の貫通流路16h内の濾過液を濃縮器20に供給することができる。やがて、中空糸膜16の貫通流路16h内の濾過液が全て排出されると、流量調整手段3cによって濾過液供給チューブ3を閉塞し、濃縮液チューブ送液部4pの作動を停止する。その状態となったのち、上述したような濾過器10の洗浄方法によって濾過器10を洗浄すれば、洗浄液とともに排出される濾過液の再濃縮を抑制することができる。
【0222】
なお、上記例では、給液チューブ送液部2pの作動を停止して回収を実施したが、給液チューブ送液部2pの作動を継続したまま回収を実施してもよい。つまり、濾過濃縮を継続しつつ濾過器10内の濾過液を回収することも可能である。この場合には、給液チューブ送液部2pの作動の作動を調整して、濾過器10に供給される原液の量を少なくすることが望ましい。
【0223】
なお、中空糸膜16の貫通流路16h内の濾過液が全て排出されか否かは、濾過液供給チューブ3に液検知器や気泡検知器を設けたり、濾過液供給チューブ3の圧力を測定したり、ポンプの送り量をカウントして理論的に求めたりする等の方法で把握すればよい。
【0224】
また、空気等の気体によって濾過器10の中空糸膜16の貫通流路16h内の濾過液を濃縮器20に供給した場合、濾過器10の中空糸膜16の貫通流路16h内は空気等の気体によって満たされる。したがって、濾過液の回収後に洗浄作業を実施する場合には、予め中空糸膜16において洗浄を行う領域まで(または中空糸膜16全体を)、貫通流路16h内を洗浄液によって満たした状態とした後、洗浄作業を実施することが望ましい。
【0225】
<バッグへの回収>
また、上記例では、濾過液を濃縮器20に送液して濃縮液の状態として回収する場合を説明したが、濾過液を濾過液のままで回収してもよい。例えば、濾過液供給チューブ3において、流量調整手段3cよりも上流側(つまり濾過器10側)に濾過液を回収するためのバッグを接続しておく。その状態で、流量調整手段3cによって濾過液供給チューブ3内を液体が流れない状態として、上述したように洗浄液供給ポート11bから洗浄液や空気等の気体を濾過器10に供給すれば、濾過器10の中空糸膜16の貫通流路16h内の濾過液をバッグに回収することができる。この場合、濾過液を濃縮器20に送液して濃縮液の状態で回収する場合に比べて、短時間で濾過液を回収することができるので、洗浄作業への移行を迅速に実施することができる。
【0226】
<濾過器10内の液体回収方法の他の例>
上述したように、濾過器10内の濾過液を濃縮器20に送液して、濾過液を濃縮液として回収する場合には、濃縮器20の濃縮器膜間差圧に基づいて濃縮器20に送液する際の流量を調整することが望ましい。かかる方法を採用すれば、万が一、濃縮器20が詰った場合でも、濃縮器膜間差圧の上昇を抑えられ、処理が停止することを防ぐことができるので、濾過器10内の濾過液を効果的に回収することができる。
【0227】
例えば、濃縮器20の濃縮器膜間差圧に基づいて濃縮器20に送液する際の流量を調整する場合、以下のように流量を調整することができる。まず、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内にある場合には、濾過器10から濃縮器20への送液量を維持するように、濃縮液チューブ送液部4pの作動および洗浄用ポート11cに接続されているチューブに設けられているポンプの作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内から大きく逸脱する等の問題が生じることを防止できる。
一方、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が最大設定差圧よりも大きい場合には、濾過器10から濃縮器20への送液量が減少するように、濃縮液チューブ送液部4pの作動および洗浄用ポート11cに接続されているチューブに設けられているポンプの作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が最大設定差圧よりも上昇し続け、処理が継続できなくなる等の問題が生じることを防止できる。
逆に、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が最小設定差圧よりも小さい場合には、濾過器10から濃縮器20への送液量が増加するように、濃縮液チューブ送液部4pの作動および洗浄用ポート11cに接続されているチューブに設けられているポンプの作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が最小設定差圧よりも減少し続け、濃縮液が薄まる等の問題が生じることを防止できる。
【0228】
<濾過器10内の液体回収方法のさらに他の例>
上述したように、濾過器10内の濾過液を濃縮器20に送液して、濾過液を濃縮液として回収する場合には、濃縮器20の濃縮器膜間差圧に基づいて、濃縮器20から濃縮液バッグCBへの流量および/または濃縮器20から廃液バッグDBへの流量、つまり、濃縮倍率を調整してもよい。この方法の場合、濃縮器膜間差圧の上昇を抑えると同時に、濾過器10から濃縮器20へと送液する流量を変更することなく濃縮液を回収する速度を一定に保つことができるので、濾過器10内の濾過液を効果的に回収することができる。
【0229】
例えば、濃縮器20の濃縮器膜間差圧に基づいて濃縮器20から濃縮液バッグCBへの流量および/または濃縮器20から廃液バッグDBへの流量を調整する場合、以下のように流量を調整することができる。
【0230】
まず、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内にある場合には、濃縮器20から濃縮液バッグCBへの流量および/または濃縮器20から廃液バッグDBへの流量を維持するように、濃縮液チューブ送液部4pの作動(廃液チューブ送液部5pが設けられている場合は廃液チューブ送液部5pの作動)または洗浄用ポート11cに接続されているチューブに設けられているポンプの作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内から大きく逸脱する等の問題が生じることを防止できる。
一方、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が最大設定差圧よりも大きい場合には、濃縮器20から濃縮液バッグCBへの流量が増加する、および/または、濃縮器20から廃液バッグDBへの流量が減少するように、濃縮液チューブ送液部4pの作動(廃液チューブ送液部5pが設けられている場合は廃液チューブ送液部5pの作動)または洗浄用ポート11cに接続されているチューブに設けられているポンプの作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が最大設定差圧よりも上昇し続け、処理が継続できなくなる等の問題が生じることを防止できる。
逆に、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が最小設定差圧よりも小さい場合には、濃縮器20から濃縮液バッグCBへの流量が減少する、および/または、濃縮器20から廃液バッグDBへの流量が増加するように、濃縮液チューブ送液部4pの作動(廃液チューブ送液部5pが設けられている場合は廃液チューブ送液部5pの作動)または洗浄用ポート11cに接続されているチューブに設けられているポンプの作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が最小設定差圧よりも減少し続け、濃縮液が薄まる等の問題が生じることを防止できる。
【0231】
なお、濾過器10の濾過液を回収する際における濃縮器膜間差圧の設定差圧は、濾過濃縮作業における許容差圧と同じにしてもよいし、設定差圧を許容差圧と異なる値(範囲)にしてもよい。例えば、許容差圧が有る程度の範囲を有する場合には、許容差圧の範囲よりも設定差圧の範囲を広くしてもよい。この場合には、濃縮液が薄まった状態であっても、可能な限り最後まで回収ができるという点で望ましい。また、許容差圧の範囲よりも設定差圧の範囲を狭くした場合には、時間がかかったとしても濃縮液を薄めずに、可能な限り最後まで回収ができるという点で望ましい。さらに、許容差圧の範囲と設定差圧の範囲にズレがあってもよい。
【0232】
<再濃縮作業>
濾過濃縮作業によって得られた濃縮液をさらに濃縮する場合には、再濃縮作業が実施される。
【0233】
図3に示すように、第1実施形態の原液処理装置1の再濃縮作業では、洗浄液バッグSBから連結チューブ9の他端が外されて、連結チューブ9の他端が濃縮液バッグCBに接続される。
また、流量調整手段3cによって濾過液供給チューブ3内を液体が流れることができる状態を維持する一方、給液チューブ送液部2pおよび洗浄液回収チューブ送液部7pを作動させず、クランプとして機能させる。加えて、流量調整手段6cによって洗浄液供給チューブ6内は液体が流れないように閉塞する。すると、濾過器10には液体が流れない状態となる。
【0234】
上記状態で、濃縮液バッグCBから連結チューブ9を通して濃縮器20に濃縮液が流れるように連結チューブ送液部9pを作動させ、かつ、濃縮器20から濃縮液チューブ4を通して濃縮液バッグCBに濃縮液が流れるように濃縮液チューブ送液部4pを作動させる。
【0235】
すると、連結チューブ9に接続された濃縮液バッグCBから連結チューブ9を通して濃縮器20に濃縮液が供給されるので、濃縮器20によってさらに濃縮された再濃縮液が濃縮液チューブ4を通して濃縮液バッグCBに回収される。一方、濃縮液から分離された水分は、廃液チューブ5を通して廃液バッグDBに回収される。つまり、濃縮割合を高めた濃縮液(再濃縮液)を得ることができる。
【0236】
<濃縮器膜間差圧を利用した再濃縮作業の説明>
再濃縮作業では、濃縮器20の濃縮器膜間差圧に基づいて、濃縮器20から濃縮液バッグCBへの流量および/または濃縮器20から廃液バッグDBへの流量、つまり、再濃縮倍率を調整してもよい。この方法の場合、濃縮器膜間差圧の上昇を抑えると同時に、高濃度の濃縮液を生成する時間を短くすることができるという効果を得ることができる。
【0237】
この場合、予め濃縮器膜間差圧を利用した再濃縮作業を行う場合、許容差圧を設定することが望ましい。つまり、濃縮器20に応じて、濃縮器20が許容できる差圧(許容差圧)を設定する。この許容差圧は、所定の幅を有していてもよいし、特定の値に設定してもよい。なお、以下では、許容差圧が所定の幅を有する場合を代表として説明する。
【0238】
なお、濃縮器膜間差圧を利用した再濃縮作業を行う場合、予め許容流量を設定することが望ましい。つまり、連結チューブ9内の濃縮液の許容できる流量(許容流量)を設定することが望ましい。この許容流量は、所定の幅を有していてもよいし、特定の値に設定してもよい。かかる許容流量は必ずしも設定しなくてもよい。しかし、連結チューブ9内の濃縮液の流量が少なくなりすぎると、再濃縮にかかる時間が長くなりすぎる。したがって、濃縮液の処理時間が長くなることを防止する上では、許容流量を設定しておくことが望ましい。また、再濃縮作業における許容流量は、濾過濃縮における許容流量と同じでもよいし、濾過濃縮における許容流量と異なっていてもよい。
【0239】
さらに、濃縮器膜間差圧を利用した再濃縮作業を行う場合、予め許容濃縮倍率を設定することが望ましい。つまり、連結チューブ9内の濃縮液の流量に対する濃縮液チューブ4を流れる濃縮液の流量の比率(許容濃縮倍率)を設定することが望ましい。この許容濃縮倍率は、所定の幅を有していてもよいし、特定の値に設定してもよい。かかる許容濃縮倍率は必ずしも設定しなくてもよい。しかし、連結チューブ9内の濃縮液の流量に対する濃縮液チューブ4を流れる濃縮液の流量の比率である濃縮倍率が低下しすぎると(つまり濃縮液の流量が大きくなりすぎると)、濃縮効率が悪くなるので、再濃縮処理に時間を要する。したがって、濃縮倍率が低下しすぎることを防止する上では、許容濃縮倍率を設定しておくことが望ましい。また、再濃縮作業における許容濃縮倍率は、濾過濃縮における許容流量と同じでもよいし、濾過濃縮における許容濃縮倍率と異なっていてもよい。
【0240】
再濃縮の開始時は、濃縮器20への濃縮液の送液量を増加させるように連結チューブ送液部9pが作動される。このとき、濃縮液チューブ送液部4pは、連結チューブ9内の濃縮液の流量に合わせて、濃縮液が所定の濃縮倍率となるように作動される。例えば、濃縮倍率が10倍の濃縮液を生成する場合には、濃縮液チューブ送液部4pは、濃縮液チューブ4を流れる濃縮液の流量が連結チューブ9内を流れる濃縮液の流量の1/10となるようにその作動が調整される。また、濃縮液チューブ送液部4pは、濃縮液の濃縮倍率に代えてまたは濃縮液を所定の濃縮倍率に維持しつつ、濃縮器膜間差圧が許容差圧内の設定値となるように(または許容差圧内を維持するように)その作動が調整される場合もある。なお、濃縮器20への濃縮液の送液量を増加している間は、上記いずれかの状態となるように、濃縮液チューブ送液部4pはその作動が制御される。
【0241】
再濃縮が進行すると、徐々に濃縮器20の詰りが発生してくる。すると、濃縮器膜間差圧が上昇する。しかし、濃縮器膜間差圧が許容差圧になるまでは濃縮器20への濃縮液の送液量を増加させるように連結チューブ送液部9pは作動する。
【0242】
<第一方法>
濃縮器20への濃縮液の送液量の増加は、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内になるまで継続される。そして、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内になると、連結チューブ9内の濃縮液の流量を濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内となった状態の流量に維持するように連結チューブ送液部9pが制御される。一方、濃縮器膜間差圧に基づいて、濃縮液チューブ送液部4pが以下のように操作され、濃縮液チューブ4を流れる濃縮液の流量が調整される。
【0243】
<ステップ1>
まず、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最小許容差圧よりも小さい場合には、濃縮液チューブ送液部4pは、濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が減少するように作動される。つまり、濃縮液の濃度を高くするように濃縮液チューブ送液部4pの作動が制御される。
【0244】
<ステップ2>
そして、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内になるまで濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が減少される。濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内になると、濃縮液チューブ4内の濃縮液の流量を濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内となった状態の流量に維持するように濃縮液チューブ送液部4pが制御される。
【0245】
<ステップ3>
やがて、濃縮器20の詰り等によって、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最大許容差圧よりも大きくなると、濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が増加するように濃縮液チューブ送液部4pが制御される。なお、濃縮液の送液量が増加すると濃縮倍率が低下するが、許容濃縮倍率を満たしつつ濃縮倍率が低下するように(濃縮液の濃度が低くなるように)濃縮液チューブ送液部4pの作動が制御される。
なお、濃縮器膜間差圧を許容差圧内に維持するために濃縮液の送液量を増加させた際に、濃縮倍率が許容濃縮倍率より小さくなってしまう場合には、下記方法(第二方法)で対応することができる。
【0246】
濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が増加すると濃縮器膜間差圧は小さくなるので、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最小許容差圧よりも低くなると、再び濃縮液チューブ送液部4pは、濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が減少するように作動される。
【0247】
つまり、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内となっている間は、上記ステップ1~3が繰り返される。この方法を採用すれば、濃縮液バッグCBへの送液量が一定の場合では不可能な、濃縮器20の濾過膜の膜面積や詰りの状態に応じた、また、濃縮液の状態(濃縮器の詰りの原因物資の濃度、回収する有用物質の濃度、液体の粘度など)に応じた、最大の濃縮倍率を確保することが可能となる。つまり、濃縮効率を向上させることによって、高濃度の濃縮液を生成する時間を短くでき、再濃縮作業にかかる時間を短縮することができる。
【0248】
<第二方法>
第一方法では、濃縮器膜間差圧に基づいて濃縮液チューブ4内の濃縮液の流量を調整したが、以下のように、濃縮器膜間差圧に基づいて連結チューブ9内の濃縮液の流量を調整することもできる。
【0249】
<ステップ1>
まず、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最小許容差圧よりも小さい場合には、連結チューブ送液部9pは、濃縮器20への濃縮液の送液量が増加するように作動される。
【0250】
<ステップ2>
そして、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内になるまで濃縮器20に送られる濃縮液の送液量が増加される。そして、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内になると、連結チューブ9内の濃縮液の流量を濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内となった状態の流量に維持するように連結チューブ送液部9pの作動が制御される。なお、この場合には、連結チューブ9内の濃縮液の流量は許容流量内(最小許容流量以上かつ最大許容流量以下)の範囲内に維持されることが望ましい。
【0251】
<ステップ3>
やがて、濃縮器20の詰り等によって、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最大許容差圧よりも大きくなると、連結チューブ9内の濃縮液の流量が減少するように連結チューブ送液部9pの作動が制御される。つまり、濃縮器20に送られる流量が少なくなるように連結チューブ送液部9pの作動が制御される。なお、この場合も、連結チューブ9内の濃縮液の流量は許容流量内に維持されることが望ましい。
【0252】
連結チューブ9内の濃縮液の流量が減少すると濃縮器膜間差圧は小さくなるので、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最小許容差圧よりも低くなると、再び連結チューブ送液部9pは、連結チューブ9内の濃縮液の流量が増加するように作動される。
【0253】
つまり、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内となっている間は、上記ステップ1~3が繰り返される。この方法を採用すれば、濃縮器20への送液量が一定の場合では不可能な、濃縮器20の濾過膜の膜面積や詰りの状態に応じた、また、濃縮液の状態(濃縮器の詰りの原因物資の濃度、回収する有用物質の濃度、液体の粘度など)に応じた、最大の再循環流量および最大の濃縮倍率を確保することが可能となる。つまり、再循環効率と濃縮効率とを向上させることによって、高濃度の濃縮液を生成する時間を短くでき、再濃縮作業にかかる時間を短縮することができる。
【0254】
なお、再濃縮する際における濃縮器膜間差圧の許容差圧は、濾過濃縮作業における許容差圧と同じにしてもよいし、濾過濃縮作業における許容差圧と異なる値(範囲)にしてもよい。例えば、濾過濃縮作業における許容差圧が有る程度の範囲を有する場合には、その範囲よりも再濃縮における許容差圧の範囲を広くしてもよい。この場合には、濾過器10が詰まりやすい性状の原液を処理する場合、濾過濃縮作業で濾過器10に圧力をかけないようにゆっくりと処理を行うが、その代わりに高濃度の濃縮液を生成することができ、再濃縮作業の時間を短くできるという点で望ましい。また、濾過濃縮作業における許容差圧の範囲よりも再濃縮における許容差圧の範囲を狭くした場合には、濃縮器20が詰まりやすい性状の原液を処理する場合、濾過濃縮作業では濃縮器20に圧力をかけずに短時間で処理を行い、その代わりに再濃縮作業にて高濃度の濃縮液を生成できるという点で望ましい。さらに、濾過濃縮作業における許容差圧の範囲と再濃縮における許容差圧の範囲にズレがあってもよい。
また、再濃縮する際における許容濃縮倍率も、濾過濃縮作業における許容濃縮倍率と同じにしてもよいし、濾過濃縮作業における許容濃縮倍率と異なる値(範囲)にしてもよい。例えば、濾過濃縮作業における許容濃縮倍率が有る程度の範囲を有する場合には、その範囲よりも再濃縮における許容濃縮倍率の範囲を広くしてもよい。この場合には、濾過濃縮作業で時間をかけて濃縮する代わりに、再濃縮作業の時間を短くできるという点で望ましい。また、濾過濃縮作業における許容濃縮倍率の範囲よりも再濃縮における許容濃縮倍率の範囲を狭くした場合には、再濃縮作業で時間をかけて濃縮する代わりに、濾過濃縮作業を早く終わらせることができるという点で望ましい。さらに、濾過濃縮作業における許容濃縮倍率の範囲と再濃縮における許容濃縮倍率の範囲にズレがあってもよい。
【0255】
<濾過器10内の液体回収方法の例>
上述した再濃縮作業を実施する前には、濾過器10内の濾過液を濃縮器20に送液して、濾過液を濃縮液として回収する。この場合には、濃縮器20の濃縮器膜間差圧に基づいて濃縮器20に送液する際の流量を調整することが望ましい。かかる方法を採用すれば、万が一、濃縮器20が詰った場合でも、濃縮器膜間差圧の上昇を抑えられ、処理が停止することを防ぐことができるので、濾過器10内の濾過液を効果的に回収することができる。
【0256】
例えば、濃縮器20の濃縮器膜間差圧に基づいて濃縮器20に送液する際の流量を調整する場合、以下のように流量を調整することができる。まず、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内にある場合には、濾過器10から濃縮器20への送液量を維持するように、濃縮液チューブ送液部4pの作動および洗浄用ポート11cに接続されているチューブに設けられているポンプの作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内から大きく逸脱する等の問題が生じることを防止できる。
一方、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が最大設定差圧よりも大きい場合には、濾過器10から濃縮器20への送液量が減少するように、濃縮液チューブ送液部4pの作動および洗浄用ポート11cに接続されているチューブに設けられているポンプの作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が最大設定差圧よりも上昇し続け、処理が継続できなくなる等の問題が生じることを防止できる。
逆に、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が最小設定差圧よりも小さい場合には、濾過器10から濃縮器20への送液量が増加するように、濃縮液チューブ送液部4pの作動および洗浄用ポート11cに接続されているチューブに設けられているポンプの作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が最小設定差圧よりも減少し続け、濃縮液が薄まる等の問題が生じることを防止できる。
【0257】
<濾過器10内の液体回収方法の他の例>
また、濾過器10内の濾過液を濃縮器20に送液して、濾過液を濃縮液として回収する場合には、濃縮器20の濃縮器膜間差圧に基づいて、濃縮器20から濃縮液バッグCBへの流量および/または濃縮器20から廃液バッグDBへの流量、つまり、濃縮倍率を調整してもよい。この方法の場合、濃縮器膜間差圧の上昇を抑えると同時に、濾過器10から濃縮器20へと送液する流量を変更することなく回収速度を一定に保つことができるので、濾過器10内の濾過液を効果的に回収することができる。
【0258】
例えば、濃縮器20の濃縮器膜間差圧に基づいて濃縮器20から濃縮液バッグCBへの流量および/または濃縮器20から廃液バッグDBへの流量を調整する場合、以下のように流量を調整することができる。
【0259】
まず、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内にある場合には、濃縮器20から濃縮液バッグCBへの流量および/または濃縮器20から廃液バッグDBへの流量を維持するように、濃縮液チューブ送液部4pの作動(廃液チューブ送液部5pが設けられている場合は廃液チューブ送液部5pの作動)または洗浄用ポート11cに接続されているチューブに設けられているポンプの作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内から大きく逸脱する等の問題が生じることを防止できる。
一方、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が最大設定差圧よりも大きい場合には、濃縮器20から濃縮液バッグCBへの流量が増加する、および/または、濃縮器20から廃液バッグDBへの流量が減少するように、濃縮液チューブ送液部4pの作動(廃液チューブ送液部5pが設けられている場合は廃液チューブ送液部5pの作動)または洗浄用ポート11cに接続されているチューブに設けられているポンプの作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が最大設定差圧よりも上昇し続け、処理が継続できなくなる等の問題が生じることを防止できる。
逆に、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が最小設定差圧よりも小さい場合には、濃縮器20から濃縮液バッグCBへの流量が減少する、および/または、濃縮器20から廃液バッグDBへの流量が増加するように、濃縮液チューブ送液部4pの作動(廃液チューブ送液部5pが設けられている場合は廃液チューブ送液部5pの作動)または洗浄用ポート11cに接続されているチューブに設けられているポンプの作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が最小設定差圧よりも減少し続け、濃縮液が薄まる等の問題が生じることを防止できる。
【0260】
なお、濾過器10の濾過液を回収する際における濃縮器膜間差圧の設定差圧は、濾過濃縮作業における許容差圧と同じにしてもよいし、設定差圧を許容差圧と異なる値(範囲)にしてもよい。例えば、許容差圧が有る程度の範囲を有する場合には、許容差圧の範囲よりも設定差圧の範囲を広くしてもよい。この場合には、濃縮液が薄まった状態であっても、可能な限り最後まで回収ができるという点で望ましい。また、許容差圧の範囲よりも設定差圧の範囲を狭くした場合には、時間がかかったとしても濃縮液を薄めずに、可能な限り最後まで回収ができるという点で望ましい。さらに、許容差圧の範囲と設定差圧の範囲にズレがあってもよい。
【0261】
<濃縮器20の回収作業>
濾過器10内の原液や濾過液を回収した後、濃縮器20内の濃縮液を回収する場合には、単に濃縮器20に洗浄液、あるいは気体といった流体(以下単に流体という)を流して濃縮液などの回収を実施してもよい。しかし、上述した場合と同様に、濃縮器膜間差圧を測定しながら、濃縮液20に供給される流体の流量等を調整してもよい。すると、濃縮器膜間差圧が大きくなり処理が継続できない等の問題が生じることを防止できる。そして、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が最大設定差圧よりも大きくなると、濾過器10から濃縮器20への送液(気体を流すことも含む)を停止するようにすれば、濃縮器膜間差圧が上昇し続ける等の問題が生じることを防止できる。
【0262】
なお、濃縮器20の濃縮液を回収する際における濃縮器膜間差圧の設定差圧(第二設定差圧)は、濾過濃縮作業における許容差圧または濾過器10の濾過液を回収する際における設定差圧(第一設定差圧)と同じにしてもよいし、これらと異なる値(範囲)にしてもよい。例えば、許容差圧や第一設定差圧が有る程度の範囲を有する場合には、許容差圧や第一設定差圧の範囲よりも第二設定差圧の範囲を広くしてもよい。この場合には、濃縮液が薄まった状態であっても、可能な限り最後まで回収ができるという点で望ましい。また、許容差圧や第一設定差圧の範囲よりも第二設定差圧の範囲を狭くした場合には、時間がかかったとしても濃縮液を薄めずに、可能な限り最後まで回収ができるという点で望ましい。さらに、許容差圧や第一設定差圧の範囲よりも第二設定差圧の範囲にズレがあってもよい。
【0263】
<濾過液供給チューブ3内の液体の回収作業>
なお、上述した濃縮器20内の濃縮液の回収を実施したのち、濃縮器膜間差圧が設定差圧に到達した、あるいは、規定の液量分を回収した等の場合には、濾過器10から濃縮器20への送液(気体を流すことも含む)を停止したのちに、濾過液供給チューブ3に対して空気等の気体を供給してもよい。すると、濃縮器20や濃縮液流路4内の濃縮液、濾過液供給チューブ3よりも下流側の流路内の液体の回収漏れを防止することができる。なお、濃縮器膜間差圧が設定差圧に到達していなければ、必ずしも濾過器10から濃縮器20への送液は停止しなくてもよい。
【0264】
<第2実施形態の原液処理装置1B>
上述した第1実施形態の原液処理装置1では、濾過濃縮の際に、原液を押し込むように濾過器10に供給する構成としているが、濾過器10から原液を吸い出すようにして濾過器10に原液を供給する構成としてもよい。
【0265】
つまり、
図7に示すように、第2実施形態の原液処理装置1Bでは、濾過器10から原液を吸い出すようにして濾過器10に原液を供給する構成としている。つまり、第2実施形態の原液処理装置1Bは、第1実施形態の原液処理装置1において、濾過液供給チューブ3には流量調整手段3cに代えて、濾過液供給チューブ送液部3pを設けており、給液チューブ2には給液チューブ送液部2pに代えて流量調整手段2cを設けている。
【0266】
この原液処理装置1Bでは、濾過濃縮時に、濾過器10から濃縮器20に液体(濾過液)が流れるように濾過液供給チューブ送液部3pを作動させる。濾過液供給チューブ送液部3pが作動すれば、濾過液供給チューブ3における濾過液供給チューブ送液部3pよりも上流側、つまり、濾過器10側が負圧になり、濾過器10内(例えば本体部11の胴部12の内部空間12h)も負圧になる。すると、流量調整手段2cによって給液チューブ2が送液できる状態としておけば、給液チューブ2を通して原液バッグUB内の原液を濾過器10内に吸引し、かつ、吸引した原液を濾過液供給チューブ3に吸引できる。
【0267】
この原液処理装置1Bでも、各チューブに接続するバッグを適切に変更し、各チューブに設けられた流量調整手段および送液部の作動を調整すれば、準備洗浄作業、濾過濃縮作業および再濃縮作業を行うことができる。なお、原液処理装置1Bにおいて、濃縮液チューブ送液部4pに代えて、廃液チューブ送液部5pを廃液チューブ5に設けてもよい(
図9参照)。この場合でも、濃縮液チューブ送液部4pが濃縮液の送液量を増加させる条件では廃液チューブ送液部5pが廃液の送液量を減少させ、濃縮液チューブ送液部4pが濃縮液の送液量を減少させる条件では廃液チューブ送液部5pが廃液の送液量を増加させれば、濃縮液チューブ4に濃縮液チューブ送液部4pを設けた場合と同様に機能させることができる。以下では、濃縮液チューブ4に濃縮液チューブ送液部4pを設けた場合を説明する。
【0268】
<準備洗浄作業>
図6に示すように、濃縮液チューブ4の他端に濃縮液バッグCBに代えて洗浄液バッグSBを接続して、廃液チューブ5の他端には廃液バッグDBに代えて洗浄液回収バッグFBを接続する。なお、廃液チューブ5の他端は、廃液バッグDBを接続したままでもよいし、単なるバケツなどに配置してもよい。
また、給液チューブ2の他端にも原液バッグUBに代えて洗浄液回収バッグFBを接続する。なお、給液チューブ2の他端には廃液バッグDBを接続してもよいし、給液チューブ2の他端を単なるバケツなどに配置してもよい。
そして、連結チューブ9の他端にも洗浄液回収バッグFBを接続する。なお、連結チューブ9の他端には廃液バッグDBを接続してもよいし、連結チューブ9の他端を単なるバケツなどに配置してもよい。
さらに、洗浄液供給チューブ6の他端には洗浄液バッグSBに代えて洗浄液回収バッグFBを接続し、洗浄液回収チューブ7の他端には洗浄液回収バッグFBに代えてを接続する。なお、洗浄液供給チューブ6の他端および洗浄液回収チューブ7の他端にも廃液バッグDBを接続してもよいし、洗浄液供給チューブ6の他端および洗浄液回収チューブ7の他端を単なるバケツなどに配置してもよい。
【0269】
ついで、流量調整手段2cおよび流量調整手段9cを開放して、給液チューブ2および連結チューブ9内を洗浄液が流れるようにする。
【0270】
上記状態で、濃縮液チューブ4に接続された洗浄液バッグSBから濃縮液20に洗浄液を流すように濃縮液チューブ送液部4pを作動させ、濃縮器20(つまり濾過液供給チューブ3)から連結チューブ9に接続された洗浄液回収バッグFBに洗浄液を流すように濾過液供給チューブ送液部3pを作動させる。すると、濃縮液チューブ4に接続された洗浄液バッグSBから濃縮液チューブ4を通して濃縮器20に洗浄液が供給される。供給された洗浄液は、濃縮器20を通過した後、濾過液供給チューブ3、連結チューブ9を通過して連結チューブ9に接続された洗浄液回収バッグFBに回収される。なお、一部の洗浄液は廃液チューブ5を通って、廃液チューブ5の他端に接続された洗浄液回収バッグFBに回収される。
【0271】
また、洗浄液回収チューブ7に接続された洗浄液バッグSBから濾過器10に洗浄液を流すように洗浄液回収チューブ送液部7pを作動させる。すると、洗浄液回収チューブ7に接続された洗浄液バッグSBから洗浄液回収チューブ7を通して濾過器10に一部の洗浄液が供給される。濾過器10に供給された洗浄液は、濾過器10を通過した後、濾過液供給チューブ3、連結チューブ9を通過して連結チューブ9に接続された洗浄液回収バッグFBに回収される。また、洗浄液供給チューブ送液部6pも作動させることによって、洗浄液供給チューブ6にも濾過器10に供給された洗浄液の一部を流すことができる。さらに、一部の洗浄液は、洗浄液回収チューブ7から給液チューブ2を通過して給液チューブ2に接続された洗浄液回収バッグFBに回収される。
【0272】
すると、濾過器10と濃縮器20および全てのチューブに洗浄液を流すことができるので、第2実施形態の原液処理装置1B全体を洗浄することができる。
【0273】
<濾過濃縮作業>
準備洗浄作業が終了すると、濾過濃縮作業が実施される。
【0274】
図7に示すように、第2実施形態の原液処理装置1Bの濾過濃縮作業では、準備洗浄作業の状態から(
図6参照)、洗浄液バッグSBに代えて濃縮液バッグCBが濃縮液チューブ4の他端に接続され、洗浄液回収バッグFBに代えて廃液バッグDBが廃液チューブ5の他端に接続される。
一方、給液チューブ2の他端には、洗浄液回収バッグFBに代えて原液バッグUBが接続される。
また、流量調整手段2cを開放して給液チューブ2内を液体が流れることができる状態を維持する一方、流量調整手段9cによって連結チューブ9内は液体が流れないように閉塞する。加えて、洗浄液回収チューブ送液部7pおよび洗浄液供給チューブ送液部6pを作動させず、クランプとして機能させる。
【0275】
上記状態で、濾過器10から濃縮器20に濾過液を流すように濾過液供給チューブ送液部3pを作動させ、かつ、濃縮器20から濃縮液バッグCBに濃縮液を流すように濃縮液チューブ送液部4pを作動させる。
【0276】
すると、原液バッグUBから給液チューブ2を通して濾過器10に原液が供給される。供給された原液は、濾過器10によって濾過され、生成された濾過液が濾過液供給チューブ3を通して濃縮器20に供給される。そして、濃縮器20に供給された濾過液は、濃縮器20によって濃縮されて、生成された濃縮液が濃縮液チューブ4を通して濃縮液バッグCBに回収される。一方、濃縮液から分離された水分は、廃液チューブ5を通して廃液バッグDBに回収される。
【0277】
<濾過濃縮操作について>
ここで、濾過濃縮作業では、濃縮割合が所定の範囲になるように、濾過液供給チューブ送液部3pおよび濃縮液チューブ送液部4pの作動が制御されている。しかし、以下のように、濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧を利用して、濾過液供給チューブ送液部3pおよび濃縮液チューブ送液部4pの作動、つまり、濾過液供給チューブ3および濃縮液チューブ4内を流れる液体の流量を制御してもよい。すると、濾過器10や濃縮器20の能力を有効に活用して、濾過濃縮を行うことができるので、濃縮液を生成するまでの時間を短縮でき、濃縮作業の効率を高くできる。
以下では、濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧を利用して、濾過液供給チューブ送液部3pおよび濃縮液チューブ送液部4pの作動を制御して濾過濃縮する作業を説明する。
【0278】
なお、濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧は、濾過器10や濃縮器20に接続されているチューブ内圧を測定することによって算出することができる。例えば、給液チューブ2と濾過液供給チューブ3に圧力計を設けておき、その信号が制御部106に供給されるようになっていれば、制御部106が濾過器膜間差圧を算出できる。なお、濾過液供給チューブ3が接続されていないポート11c(またはこのポート11cに接続されているチューブ)に圧力計を設けても、制御部106が濾過器膜間差圧を算出できる。また、濾過液供給チューブ3と廃液チューブ5に圧力計を設けておき、その信号が制御部106に供給されるようになっていれば、制御部106が濃縮器膜間差圧を算出できる。なお、廃液チューブ5が接続されていないポート20cがある場合には、このポート20c(またはこのポート20cに接続されているチューブ)に圧力計を設けても、制御部106が濃縮器膜間差圧を算出できる。
【0279】
なお、濾過器10や濃縮器20において、給液側と排液側のいずれか一方が大気開放に近い状態であれば、給液側と排液側のうち大気開放となっていない側と連通されたチューブ内圧を測定するだけでも、制御部106が濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧を算出できる。言い換えれば、濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧に代えて、制御部106は、大気開放となっていない側と連通されたチューブ内圧だけを利用して、送液部の作動を制御することもできる。例えば、濾過器10や濃縮器20に接続されているチューブが、バッグにつながっておりかつそのチューブが送液部や流量調整手段によって閉塞されていない状態であれば、そのチューブは大気開放に近い状態と考えることができる。
図7の状態であれば、濾過器10に接続されているチューブ2,3のうち原液バッグUBに接続されている給液チューブ2は大気開放と見做すこともできる。また、濃縮器20に接続されているチューブ3,5のうち、廃液バッグDBに接続されている排液チューブ5は大気開放と見做すこともできる。すると、
図7の状態であれば、濾過器供給チューブ3のチューブ内圧だけを利用して、制御部106は送液部の作動を制御することもできる。
【0280】
また、濾過液供給チューブ3および濃縮液チューブ4内を流れる液体の流量は、濾過液供給チューブ送液部3pおよび濃縮液チューブ送液部4pの作動から推定してもよいし、濾過液供給チューブ3や濾過液供給チューブ送液部3p、濃縮液チューブ4や濃縮液チューブ4pに流量計を設けて直接流量を測定してもよい。
【0281】
<濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧を利用した濾過濃縮作業の説明>
濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧を利用した濾過濃縮作業を行う場合、予め許容差圧を設定する。つまり、濾過器10や濃縮器20に応じて、濾過器10や濃縮器20が許容できる差圧(許容差圧)をそれぞれ設定する。この許容差圧は、所定の幅を有していてもよいし、特定の値に設定してもよい。なお、以下では、許容差圧が所定の幅を有する場合を代表として説明する。
【0282】
なお、濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧を利用した濾過濃縮作業を行う場合、予め許容流量を設定することが望ましい。つまり、給液チューブ2内の原液の許容できる流量(許容流量)を設定することが望ましい。この許容流量は、所定の幅を有していてもよいし、特定の値に設定してもよい。かかる許容流量は必ずしも設定しなくてもよい。しかし、給液チューブ2内の原液の流量が少なくなりすぎると、濾過濃縮にかかる時間が長くなりすぎる。したがって、原液の処理時間が長くなることを防止する上では、許容流量を設定しておくことが望ましい。
さらに、濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧を利用した濾過濃縮作業を行う場合、予め許容濃縮倍率を設定することが望ましい。つまり、濃縮液チューブ4を流れる濃縮液の流量に対する給液チューブ2内の原液の流量の比率(許容濃縮倍率)を設定することが望ましい。この許容濃縮倍率は、所定の幅を有していてもよいし、特定の値に設定してもよい。かかる許容濃縮倍率は必ずしも設定しなくてもよい。しかし、濃縮液チューブ4を流れる濃縮液の流量に対する給液チューブ2内の原液の流量の比率である濃縮倍率が低下しすぎると(つまり濃縮液の流量が大きくなりすぎると)、濃縮効率が悪くなる。しかも、濃縮液量が多くなり、多量の濾過濃縮液が点滴再静注されることによって、血圧の上昇、心不全や呼吸不全の増悪などをきたす危険性がある。このため濃縮液量が多くなりすぎた場合には、再濃縮処理を追加する必要があり、再濃縮処理に時間を要する。濃縮液を再濃縮する場合には、再濃縮処理に時間を要するので、原液を処理するためのトータルの時間が長くなってしまう。したがって、濃縮倍率が低下しすぎることを防止する上では、許容濃縮倍率を設定しておくことが望ましい。
【0283】
濾過濃縮の開始時は、濾過器10への原液の送液量を増加させるように濾過液供給チューブ送液部3pが作動される。このとき、濃縮液チューブ送液部4pは、濾過液供給チューブ3内の濾過液の流量に合わせて、濃縮液が所定の濃縮倍率となるように作動される。例えば、濃縮倍率が10倍の濃縮液を生成する場合には、濃縮液チューブ送液部4pは、濃縮液チューブ4を流れる濃縮液の流量が濾過液供給チューブ3内を流れる濾過液の流量の1/10となるようにその作動が調整される。また、濃縮液チューブ送液部4pは、濃縮液の濃縮倍率に代えてまたは濃縮液を所定の濃縮倍率に維持しつつ、濃縮器膜間差圧が許容差圧内の設定値となるように(または許容差圧内を維持するように)その作動が調整される場合もある。なお、濃縮器20への濾過液の送液量を増加している間は、上記いずれかの状態となるように、濃縮液チューブ送液部4pはその作動が制御される。
【0284】
濾過濃縮が進行すると、徐々に濾過器10や濃縮器20の詰りが発生してくる。すると、濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧が上昇する。しかし、濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧が許容差圧内になるまでは、濃縮器20への濾過液の送液量(言い換えれば濾過器10への原液の送液量)を増加させるように濾過液供給チューブ送液部3pは作動する。
【0285】
<第一方法>
濃縮器20への濾過液の送液量の増加は、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内になるまで継続される。そして、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内になると、濃縮器20への濾過液の送液量を濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内となった状態の流量に維持するように濾過液供給チューブ送液部3pが制御される。一方、濃縮液チューブ送液部4pが操作され、濃縮液チューブ4を流れる濃縮液の流量が調整される。
【0286】
ここで、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内にある場合には、濃縮器20への濾過液の送液量、言い換えれば、濾過器10への原液の送液量が維持されるように濾過液供給チューブ送液部3pの作動が制御される。すると、濾過器10による濾過や濃縮器20による濃縮状態を所定の状態に維持できる。なお、濾過器膜間差圧の値に応じて、濾過器10への原液の送液量を増減させれば、濾過器膜間差圧を濾過器10の許容差圧内に維持しつつ、濾過器10への原液の送液量を多くできる。つまり、濾過濃縮作業の効率を高くすることができる可能性が有る。とくに、濾過器膜間差圧を濾過器10の最大許容差圧PMになるように維持すれば、濾過器10への原液の送液量も最大限に増加できるので、濾過作業の時間を短くする効果をより高めることができる。
【0287】
一方、濾過器膜間差圧が濾過器10の最大許容差圧PMよりも大きくなると、濾過器10への原液の送液量が減少するように濾過液供給チューブ送液部3pの作動が制御される。濾過器10への原液の送液量が一定でも中空糸膜等の詰りが発生した場合には、濾過器膜間差圧が大きくなり濾過の継続ができなくなる可能性がある。しかし、濾過器10への原液の送液量が減少すれば、濾過器膜間差圧を低下させることができるので、濾過器10の詰りが発生していても、濾過作業を継続することができる。しかも、濾過器10への原液の送液量が減少することによって、中空糸膜16等の詰りを若干低減できる可能性もあるので、濾過作業を継続しやすくなり、濾過作業の時間を短くできる可能性がある。とくに、濾過器膜間差圧が濾過器10の最大許容差圧PMより大きくなった場合に、一旦、濾過器10への原液の送液を停止して、一定期間後に供給を再開するようにすれば、中空糸膜等の詰りを低減できる効果を高くできる可能性がある。
【0288】
また、濾過器10への原液の送液量を減少させる等することによって、濾過器膜間差圧が濾過器10の最小許容差圧PLより小さくなった場合には、濾過器10への原液の送液量が増加するように濾過液供給チューブ送液部3pの作動が制御される。すると、濾過器10による濾過量を多くできるので、濾過作業の時間を短くできる可能性がある。そして、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内になるまで濾過器10への原液の送液量を増加させれば、濾過器10の濾過能力を効果的に使用することができるので、濾過作業の時間を短くする効果をより高めることができる。
【0289】
なお、濾過器膜間差圧が濾過器10の最大許容差圧PMより大きくなった場合に濾過器10への原液の送液量を減少させる場合には、徐々に原液の送液量を減少させてもよいし、ステップ状に原液の送液量を減少させてもよい。また、濾過器膜間差圧が濾過器10の最大許容差圧PM(
図24のPM)より大きくなった場合、濾過器10への原液の送液を一定期間停止してから、濾過器10への原液の送液を開始するようにしてもよい(
図24参照)。この場合、濾過器10への原液の送液量は、濾過器膜間差圧を確認しながら調整するようになっていればよい。例えば、
図24のパターン1のように、濾過器10への原液の送液を一定期間停止してから濾過器10への原液の送液を開始する場合、まず、最大許容流量LMの1/2程度の流量で送液を開始し、その時の濾過器膜間差圧を確認する。この状態において濾過器膜間差圧が最小許容差圧PL(
図24のPL)よりも小さくなっていれば、現状の流量と最大許容流量LMとの差の1/2程度流量を増加し、その時の濾過器膜間差圧を確認する。この状態において濾過器膜間差圧がまだ最小許容差圧PLよりも小さくなっていれば、さらに現状の流量と最大許容流量LMとの差の1/2程度流量を増加し、その時の濾過器膜間差圧を確認する。この作業を繰り返して、濾過器膜間差圧が濾過器10の最小許容差圧PL以上かつ最大許容差圧PM以下になれば(または最大許容差圧PMになれば)、流量の増加を停止する。また、濾過器膜間差圧が濾過器10の最小許容差圧PL以上かつ最大許容差圧PM以下であっても、最大許容流量LMに達していない場合には、濾過器膜間差圧を確認しながら、同様の方法で、最大許容流量LMになるまで濾過器10への原液の送液量を増加してもよい。
濾過器膜間差圧が濾過器10の最小許容差圧PLより小さくなった場合に濾過器10への原液の送液量を増加させる場合には、徐々に原液の送液量を増加させてもよい。例えば、上述した流量の増加方法、つまり、濾過器10への原液の送液を一定期間停止した状態から流量を増加する方法と同様の方法で、濾過器10への原液の送液量を増加してもよい。
【0290】
また、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内に維持されている状態では、濾過器10への原液の送液量を維持すればよいが、その流量が最大許容流量LMよりも小さい場合には、最大許容流量LMとなるまで濾過器10への原液の送液量を増加させてもよい。
【0291】
また、濾過器膜間差圧が濾過器10の最小許容差圧PL以上になっても、濾過器10への原液の送液量が最小許容流量LLに到達しない場合には(
図24のパターン3)、中空糸膜16等の詰りが発生していると判断して、濾過濃縮作業を中止して洗浄作業に移行するようにしてもよい。
【0292】
さて、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内であり、給液チューブ2内の原液の流量が濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内となった状態の流量に維持されている状態において、濃縮器膜間差圧に基づいて、濃縮液チューブ送液部4pを以下のように制御することができる。
【0293】
<ステップ1>
まず、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最小許容差圧よりも小さい場合には、濃縮液チューブ送液部4pは、濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が減少するように作動される。つまり、濃縮液の濃度を高くするように濃縮液チューブ送液部4pの作動が制御される。
【0294】
<ステップ2>
そして、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内になるまで濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が減少される。濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内になると、濃縮液チューブ4内の濃縮液の流量を濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内となった状態の流量に維持するように濃縮液チューブ送液部4pが制御される。
【0295】
<ステップ3>
やがて、濃縮器20の詰り等によって、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最大許容差圧よりも大きくなると、濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が増加するように濃縮液チューブ送液部4pが制御される。なお、濃縮液の送液量が増加すると濃縮倍率が低下するが、許容濃縮倍率を満たしつつ濃縮倍率が低下するように(濃縮液の濃度が低くなるように)濃縮液チューブ送液部4pの作動が制御される。
なお、濃縮器膜間差圧を許容差圧内に維持するために濃縮液の送液量を増加させた際に、濃縮倍率が許容濃縮倍率より小さくなってしまう場合には、下記方法(第二方法)で対応することができる。
【0296】
濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が増加すると濃縮器膜間差圧は小さくなるので、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最小許容差圧よりも低くなると、再び濃縮液チューブ送液部4pは、濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が減少するように作動される。
【0297】
つまり、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内となっている間は、上記ステップ1~3が繰り返される。この方法を採用すれば、濾過器10や濃縮液バッグCBへの送液量が一定の場合では不可能な、濾過器10や濃縮器20の濾過膜の膜面積や詰りの状態に応じた、また、原液の状態(濾過器や濃縮器の詰りの原因物資の濃度、回収する有用物質の濃度、液体の粘度など)に応じた、最大の濾過流量(つまり、上述した最大許容流量LM)および最大の濃縮倍率を確保することが可能となる。つまり、濾過効率と濃縮効率とを向上させることによって、原液から濃縮液を生成する時間を短くでき、再濃縮作業を防ぐことや再濃縮作業にかかる時間を短縮することができる。
しかも、上記のように作動すれば、濾過濃縮開始時に、濾過器10、濃縮器20および回路内に充填された洗浄液や、濾過器10を洗浄した直後の濾過器10、および回路内の洗浄液を、濃縮器20の廃液として短時間に除去することが可能となる。つまり、上述したような、開始時および濾過器洗浄直後の洗浄液による濃縮液の希釈を効率的に防ぐことができる。
【0298】
なお、上記方法(第一方法)は、濾過器膜間差圧の最大許容差圧PMが濃縮器膜間差圧の最大許容差圧よりも大きい場合に採用することが望ましいが、この条件に限定されない。濾過器膜間差圧の最大許容差圧PMが濃縮器膜間差圧の最大許容差圧よりも小さい場合にも採用することができる。
また、濾過器膜間差圧が最大許容差圧PMよりも大きい場合や、濾過器膜間差圧が最小許容差圧PLよりも小さい場合、さらに、濾過器10への原液の送液量が濾過器膜間差圧に関係なく一定の場合にも、上記ステップ1~3を繰り返して、濃縮器20への濃縮液の送液量を調整してもよい。
【0299】
<第二方法>
第一方法では、濃縮器膜間差圧に基づいて濃縮液チューブ4内の濃縮液の流量を調整したが、以下のように、濃縮器膜間差圧に基づいて濃縮器20への濾過液の送液量を調整することもできる。
【0300】
<ステップ1>
まず、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最小許容差圧よりも小さい場合には、濾過液供給チューブ送液部3pは、濃縮器20への濾過液の送液量(言い換えれば濾過器10への原液の送液量)が増加するように作動される。つまり、濃縮器20に送られる濾過液の生成量が多くなるように濾過液供給チューブ送液部3pの作動が制御される。
【0301】
<ステップ2>
そして、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内(最小許容差圧以上かつ最大許容差圧以下)になるまで濃縮器20に送られる濾過液の生成量(言い換えれば濾過器10への原液の送液量)が増加される。そして、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内になると、濃縮器20への濾過液の送液量が濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内となった状態の流量に維持するように濾過液供給チューブ送液部3pの作動が制御される。なお、この場合には、濾過器10への原液の送液量が濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内となった状態の流量からズレることになるが、原液の流量は許容流量内(最小許容流量以上かつ最大許容流量以下)の範囲内に維持されることが望ましい。
【0302】
<ステップ3>
やがて、濃縮器20の詰り等によって、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最大許容差圧よりも大きくなると、濃縮器20への濾過液の送液量が減少するように濾過液供給チューブ送液部3pの作動が制御される。つまり、濃縮器20に送られる濾過液の生成量が少なくなるように濾過液供給チューブ送液部3pの作動が制御される。なお、この場合も、濾過器10への原液の送液量が濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内となった状態の流量からズレることになるが、原液の流量は許容流量の範囲内に維持されることが望ましい。
【0303】
濃縮器20への濾過液の送液量が減少すると濃縮器膜間差圧は小さくなるので、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最小許容差圧よりも低くなると、再び濾過液供給チューブ送液部3pは、給液チューブ2内の原液の流量が増加するように作動される。
【0304】
つまり、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内となっている間は、上記ステップ1~3が繰り返される。この方法を採用すれば、濾過器10や濃縮液バッグCBへの送液量が一定の場合では不可能な、濾過器10や濃縮器20の濾過膜の膜面積や詰りの状態に応じた、また、原液の状態(濾過器や濃縮器の詰りの原因物資の濃度、回収する有用物質の濃度、液体の粘度など)に応じた、最大の濾過流量(つまり、上述した最大許容流量LM)および最大の濃縮倍率を確保することが可能となる。つまり、濾過効率と濃縮効率とを向上させることによって、原液から濃縮液を生成する時間を短くでき、再濃縮作業を防ぐことや再濃縮作業にかかる時間を短縮することができる。
しかも、上記のように作動すれば、濾過濃縮開始時に濾過器10、濃縮器20および回路内に充填された洗浄液や濾過器10を洗浄した直後の濾過器10および回路内の洗浄液を、濃縮器20の廃液として短時間に除去することが可能となる。つまり、上述したような、開始時および濾過器洗浄直後の洗浄液による濃縮液の希釈を効率的に防ぐことができる。
【0305】
なお、上記方法(第二方法)は、濾過器膜間差圧の最大許容差圧PMよりも濃縮器膜間差圧の最大許容差圧が大きい場合に採用することが望ましいが、この条件に限定されない。濾過器膜間差圧の最大許容差圧PMよりも濃縮器膜間差圧の最大許容差圧が小さい場合にも採用することができる。
また、濾過器膜間差圧が最大許容差圧PMよりも大きい場合や、濾過器膜間差圧が最小許容差圧PLよりも小さい場合、さらに、濾過器10への原液の送液量が濾過器膜間差圧に関係なく一定の場合にも、上記ステップ1~3を繰り返して、濃縮器20への濃縮液の送液量を調整してもよい。
【0306】
<濾過器洗浄について>
第2実施形態の原液処理装置1Bでも、上述したような濾過濃縮作業を実施していると、濾過器10の詰り等によって、濾過器膜間差圧が濾過器10の最大許容差圧PMよりも大きくなる。この場合、給液チューブ2内の原液の流量を減少させれば、濾過器膜間差圧を濾過器10の最大許容差圧PMよりも小さくでき、濾過器膜間差圧を許容差圧内(最小許容差圧PL以上最大許容差圧PM以下の範囲)に維持できる。しかし、濾過器10の詰り等がひどくなると、濾過器膜間差圧を濾過器10の許容差圧内に維持するために給液チューブ2内の原液の流量が減少し、給液チューブ2内の原液の流量が最小許容流量LLよりも小さくなる可能性がある。かかる状態になると、第2実施形態の原液処理装置1Bの濾過濃縮作業の途中に、濾過器10の洗浄作業が実施される。
【0307】
図22に示すように、流量調整手段2cによって給液チューブ2内を液体が流れないように閉塞する。加えて濾過液供給チューブ送液部3pおよび濃縮液チューブ送液部4pの作動を停止し、クランプとして機能させる。また、濾過濃縮作業の途中に濾過器洗浄を実施する場合には、準備洗浄作業の終了後、洗浄液供給チューブ6の他端には洗浄液回収バッグFBに代えて洗浄液バッグSBを接続しておき、洗浄液回収チューブ7の他端には洗浄液バッグSBに代えて洗浄液回収バッグFBを接続しておく。
【0308】
上記状態で、洗浄液供給チューブ6に接続された洗浄液バッグSBから濾過器10に洗浄液を流すように洗浄液供給チューブ送液部6pを作動させ、濾過器10から洗浄液回収チューブ7に接続された洗浄液回収バッグFBに洗浄液を流すように洗浄液回収チューブ送液部7pを作動させる。すると、中空糸膜16の内部を、濾過濃縮の際に原液が流れる方向と逆方向に洗浄液を流すことができるので、中空糸膜16内部を洗浄液によって洗浄することができる。
【0309】
また、準備洗浄作業の終了後、連結チューブ9の他端には洗浄液回収バッグFBに代えて洗浄液バッグSBを接続しておく。すると、流量調整手段9cによって連結チューブ9内を液体が流れるようにすれば、上記状態に加えて、連結チューブ9に接続された洗浄液バッグSBからも濾過器10に洗浄液を供給することができる。すると、連結チューブ9を通して供給される洗浄液は、中空糸膜16を濾過液が透過する方向と逆方向に中空糸膜16を透過するので、中空糸膜16の詰りを解消できる。この場合、洗浄液供給チューブ6に接続された洗浄液バッグSBと連結チューブ9に接続された洗浄液バッグSBの両方から濾過器10に洗浄液が供給されるので、洗浄液回収チューブ送液部7pによって洗浄液回収チューブ7を流れる洗浄液の流量が、洗浄液供給チューブ送液部6pによって洗浄液供給チューブ6を流れる洗浄液の流量より大きくなるように調整される。
【0310】
なお、流量調整手段9cによって連結チューブ9内を液体が流れるようにした場合には、洗浄液供給チューブ送液部6pの作動を停止した状態で洗浄液回収チューブ送液部7pを作動させてもよい。この場合には、連結チューブ9に接続された洗浄液バッグSBからのみ濾過液10に洗浄液が供給される。この場合も、中空糸膜16を濾過液が透過する方向と逆方向に、洗浄液が中空糸膜16を透過するので、中空糸膜16の詰りを解消できる。
【0311】
また、
図5に示すような、中空糸膜16を有する濾過器を濾過器10として使用した場合には、上述した濾過器10や濃縮器20の洗浄を適切に実施できるように、制御部106が濾過器10に対する洗浄液の供給量や供給タイミングを調整することが望ましい。つまり、中空糸膜16において洗浄を行う領域まで胴部12の中空な空間12h内を洗浄液によって満たした状態で洗浄液が中空糸膜16を透過するように、濾過器10に供給する洗浄液の供給量や供給タイミングを調整することが望ましい。
【0312】
<濾過液回収>
一方、上記方法で濾過器洗浄を実施した場合、濾過器10の本体部11の内部空間12h内に残留していた濾過液は洗浄液と混合して排出されてしまう。すると、濾過濃縮によって回収される有効成分の量が減少することになる。
【0313】
そこで、濾過器洗浄を行う際には、予め濾過器10の本体部11の内部空間12h内に存在する濾過液を濃縮器20に送液して、その後、濾過器洗浄を行う方が望ましい。
【0314】
<洗浄液による回収(外方)>
【0315】
図7に示すように、濾過器10の本体部11のポート11c(濾過液供給チューブ3が接続されていないポート11c、以下洗浄用ポート11cという)にチューブを介して洗浄液バッグSBを接続する。そして、濾過液供給チューブ送液部3pによって濾過器10から濃縮器20に液体が流れる状態を維持し、かつ、濃縮液チューブ送液部4pの作動を継続したまま、流量調整手段2cによって給液チューブ2を閉塞する。その状態で、チューブに設けられているポンプによって洗浄液バッグSBから濾過器10に洗浄液を供給すれば、濾過器10の本体部11の内部空間12h内の濾過液が濃縮器20に供給され、代わりに洗浄液バッグSBから洗浄液が内部空間12hに供給される。やがて、内部空間12h内の濾過液が全て洗浄液に置換されると、濾過液供給チューブ送液部3pの作動を停止して濾過液供給チューブ3を閉塞し、濃縮液チューブ送液部4pの作動を停止する。その状態となったのち、上述したような濾過器10の洗浄方法によって濾過器10を洗浄すれば、洗浄液とともに排出される濾過液の再濃縮を抑制することができる。
【0316】
なお、上記例では、流量調整手段2cによって給液チューブ2を閉塞して回収を実施したが、給液チューブ2を開放したまま回収を実施してもよい。つまり、濾過濃縮を継続しつつ濾過器10内の濾過液を回収することも可能である。
【0317】
なお、内部空間12h内の濾過液が全て洗浄液に置換されたか否かは、洗浄用ポート11cに接続されているチューブに設けられているポンプの送り量をカウントして理論的に求めたり、濃縮液の濃度を測定したりする方法で把握すればよい。また、濾過液の色を見たり、吸光度を測定したり、比重計を使用して濾過液の比重を測定したりする等の方法でも把握することは可能である。
【0318】
また、濾過器10の本体部11の洗浄用ポート11cに接続されるチューブには必ずしもポンプを設けなくてもよい。この場合でも、濾過液供給チューブ送液部3pを作動させれば、濾過器10の本体部11の内部空間12h内の濾過液を洗浄液と置換することができる。なお、洗浄用ポート11cに接続されるチューブに設けられるポンプと濾過液供給チューブ送液部3pの両方を作動させる場合には、両方の流量が同じになるように作動させる。
【0319】
<空気等の気体による回収>
また、上記説明では、濾過器10の本体部11の洗浄用ポート11cにチューブを介して洗浄液バッグSBを接続した場合を説明したが、濾過器10の本体部11の洗浄用ポート11cにチューブを介して空気等の気体を供給してもよい。
【0320】
この場合も、濾過液供給チューブ送液部3pによって濾過器10から濃縮器20に液体が流れる状態を維持し、かつ、濃縮液チューブ送液部4pの作動を継続したまま、流量調整手段2cによって給液チューブ2を閉塞する。その状態で、洗浄用ポート11cに接続されたチューブから空気等の気体を濾過器10に供給すれば、濾過器10の本体部11の内部空間12h内の濾過液を濃縮器20に供給することができる。やがて、内部空間12h内の濾過液が全て排出されると、濾過液供給チューブ送液部3pの作動を停止してクランプとして機能させて濾過液供給チューブ3を閉塞し、濃縮液チューブ送液部4pの作動を停止する。その状態となったのち、上述したような濾過器10の洗浄方法によって濾過器10を洗浄すれば、洗浄液とともに排出される濾過液の再濃縮を抑制することができる。
【0321】
なお、上記例では、流量調整手段2cによって給液チューブ2を閉塞して回収を実施したが、給液チューブ2を開放したまま回収を実施してもよい。つまり、濾過濃縮を継続しつつ濾過器10内の濾過液を回収することも可能である。
【0322】
なお、内部空間12h内の濾過液が全て排出されたか否かは、濾過液供給チューブ3に液検知器や気泡検知器を設けたり、濾過液供給チューブ3の圧力を測定したり、ポンプの送り量をカウントして理論的に求めたりする等の方法で把握すればよい。
【0323】
また、空気等の気体によって濾過器10の本体部11の内部空間12h内の濾過液を濃縮器20に供給した場合、濾過器10の本体部11の内部空間12h内は空気等の気体によって満たされる。したがって、濾過液の回収後に洗浄作業を実施する場合には、予め胴部12の中空な空間12h内を中空糸膜16において洗浄を行う領域まで(または胴部12の中空な空間12h内全体を)洗浄液によって満たした状態とした後、洗浄作業を実施することが望ましい。
【0324】
<バッグへの回収>
また、上記例では、濾過液を濃縮器20に送液して濃縮液の状態として回収する場合を説明したが、濾過液を濾過液のままで回収してもよい。例えば、濾過液供給チューブ3において、濾過液供給チューブ送液部3pよりも上流側(つまり濾過器10側)に濾過液を回収するためのバッグを接続しておく。その状態で、濾過液供給チューブ送液部3pによって濾過液供給チューブ3内を液体が流れない状態として、上述したように洗浄用ポート11cから洗浄液や空気等の気体を濾過器10に供給すれば、濾過器10の本体部11の内部空間12h内の濾過液をバッグに回収することができる。この場合、濾過液を濃縮器20に送液して濃縮液の状態で回収する場合に比べて、短時間で濾過液を回収することができるので、洗浄作業への移行を迅速に実施することができる。
【0325】
また、濾過液を回収するためのバッグは濾過液供給チューブ送液部3pよりも上流側に配置したが、濃縮器20よりも手前であれば、濾過液供給チューブ送液部3pの下流側に配置してもよい。この場合、濾過液供給チューブ送液部3pを作動させれば、濾過液をバッグに向けて流すことができるので、洗浄用ポート11cに接続されたチューブ上にポンプは設けなくよい。その代わりに、バッグの上流側及び、洗浄用ポート11cに接続されたチューブにクランプ等のチューブを閉塞開放できる器具を設けることが必要になる。
【0326】
<洗浄液による回収(内方)>
上記説明では、原液が濾過器10の中空糸膜束15の複数本の中空糸膜16の貫通流路16h内に供給され、濾過液が濾過器10の本体部11の胴部12の内部空間12h内に排出される場合を説明している。しかし、原液が濾過液排出ポート11cから本体部11の胴部12の内部空間12h内に供給され、濾過された濾過液が中空糸膜束15の複数本の中空糸膜16の貫通流路16h内に排出され、原液供給ポート11aから外部に排出されるようになっていてもよい。
【0327】
この場合には、以下のように各チューブ等が接続される。
まず、濾過液供給チューブ3は原液供給ポート11aに接続され、給液チューブ2はポート11c(つまり、上述した洗浄用ポート11c)に接続される。また、洗浄液供給チューブ6は給液チューブ2が接続されていないポート11c(つまり、上述した濾過液排出ポート11c)に接続され、洗浄用ポート11cに接続されていた洗浄液バッグSBを洗浄液供給ポート11bに接続される。
【0328】
そして、濾過液供給チューブ送液部3pによって濾過器10から濃縮器20に液体が流れる状態を維持し、かつ、濃縮液チューブ送液部4pの作動を継続したまま、流量調整手段2cによって給液チューブ2を閉塞する。その状態で、洗浄液供給ポート11bに接続されているチューブに設けられているポンプによって洗浄液バッグSBから濾過器10に洗浄液を供給すれば、濾過器10の中空糸膜16の貫通流路16h内の濾過液は濃縮器20に供給され、代わりに洗浄液バッグSBから洗浄液が貫通流路16h内に供給される。やがて、貫通流路16h内の濾過液が全て洗浄液に置換されると、濾過液供給チューブ送液部3pの作動を停止して濾過液供給チューブ3を閉塞し、濃縮液チューブ送液部4pの作動を停止する。その状態となったのち、上述したような濾過器10の洗浄方法によって濾過器10を洗浄すれば、洗浄液とともに排出される濾過液の再濃縮を抑制することができる。
【0329】
なお、上記例では、流量調整手段2cによって給液チューブ2を閉塞して回収を実施したが、給液チューブ2を開放したまま回収を実施してもよい。つまり、濾過濃縮を継続しつつ濾過器10内の濾過液を回収することも可能である。
【0330】
なお、内部空間12h内の濾過液が全て洗浄液に置換されたか否かは、洗浄用ポート11cに接続されているチューブに設けられているポンプの送り量をカウントして理論的に求めたり、濃縮液の濃度を測定したりする方法で把握すればよい。また、濾過液の色を見たり、吸光度を測定したり、比重計を使用して濾過液の比重を測定したりする等の方法でも把握することは可能である。
【0331】
<空気等の気体による回収>
また、上記説明では、濾過器10の本体部11の洗浄液供給ポート11bにチューブを介して洗浄液バッグSBを接続した場合を説明したが、濾過器10の本体部11の洗浄液供給ポート11bにチューブを介して空気等の気体を供給してもよい。
【0332】
この場合も、濾過液供給チューブ送液部3pによって濾過器10から濃縮器20に液体が流れる状態を維持し、かつ、流量調整手段2cによって給液チューブ2を閉塞する。その状態で、チューブから空気等の気体を濾過器10に供給すれば、濾過器10の中空糸膜16の貫通流路16h内の濾過液を濃縮器20に供給することができる。やがて、中空糸膜16の貫通流路16h内の濾過液が全て排出されると、濾過液供給チューブ送液部3pの作動を停止してクランプとして機能させて濾過液供給チューブ3を閉塞し、濃縮液チューブ送液部4pの作動を停止する。その状態となったのち、上述したような濾過器10の洗浄方法によって濾過器10を洗浄すれば、洗浄液とともに排出される濾過液の再濃縮を抑制することができる。
【0333】
なお、上記例では、流量調整手段2cによって給液チューブ2を閉塞して回収を実施したが、給液チューブ2を開放したまま回収を実施してもよい。つまり、濾過濃縮を継続しつつ濾過器10内の濾過液を回収することも可能である。
【0334】
なお、中空糸膜16の貫通流路16h内の濾過液が全て排出されか否かは、濾過液供給チューブ3に液検知器や気泡検知器を設けたり、濾過液供給チューブ3の圧力を測定したり、ポンプの送り量をカウントして理論的に求めたりする等の方法で把握すればよい。
【0335】
また、空気等の気体によって濾過器10の中空糸膜16の貫通流路16h内の濾過液を濃縮器20に供給した場合、濾過器10の中空糸膜16の貫通流路16h内は空気等の気体によって満たされる。したがって、濾過液の回収後に洗浄作業を実施する場合には、予め中空糸膜16において洗浄を行う領域まで(または中空糸膜16全体を)、貫通流路16h内を洗浄液によって満たした状態とした後、洗浄作業を実施することが望ましい。
【0336】
<バッグへの回収>
また、上記例では、濾過液を濃縮器20に送液して濃縮液の状態として回収する場合を説明したが、濾過液を濾過液のままで回収してもよい。例えば、濾過液供給チューブ3において、濾過液供給チューブ送液部3pよりも上流側(つまり濾過器10側)に濾過液を回収するためのバッグを接続しておく。その状態で、濾過液供給チューブ送液部3pによって濾過液供給チューブ3内を液体が流れない状態として、上述したように洗浄液供給ポート11bから洗浄液や空気等の気体を濾過器10に供給すれば、濾過器10の中空糸膜16の貫通流路16h内の濾過液をバッグに回収することができる。この場合、濾過液を濃縮器20に送液して濃縮液の状態で回収する場合に比べて、短時間で濾過液を回収することができるので、洗浄作業への移行を迅速に実施することができる。
【0337】
また、濾過液を回収するためのバッグは濾過液供給チューブ送液部3pよりも上流側に配置したが、濃縮器20よりも手前であれば、濾過液供給チューブ送液部3pの下流側に配置してもよい。この場合、濾過液供給チューブ送液部3pを作動させれば、濾過液をバッグに向けて流すことができるので、洗浄用ポート11cに接続されたチューブ上にポンプは設けなくよい。その代わりに、バッグの上流側及び、洗浄用ポート11cに接続されたチューブにクランプ等のチューブを閉塞開放できる器具を設けることが必要になる。
【0338】
<濾過器10内の液体回収方法の他の例>
上述したように、濾過器10内の濾過液を濃縮器20に送液して、濾過液を濃縮液として回収する場合には、濃縮器20の濃縮器膜間差圧に基づいて濃縮器20に送液する際の流量を調整することが望ましい。かかる方法を採用すれば、万が一、濃縮器20が詰った場合でも、濃縮器膜間差圧の上昇を抑えられ、処理が停止することを防ぐことができるので、濾過器10内の濾過液を効果的に回収することができる。
【0339】
例えば、濃縮器20の濃縮器膜間差圧に基づいて濃縮器20に送液する際の流量を調整する場合、以下のように流量を調整することができる。まず、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内にある場合には、濾過器10から濃縮器20への送液量を維持するように、濾過液供給チューブ送液部3pの作動および濃縮液チューブ送液部4pの作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内から大きく逸脱する等の問題が生じることを防止できる。
一方、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が最大設定差圧よりも大きい場合には、濾過器10から濃縮器20への送液量が減少するように、濾過液供給チューブ送液部3pの作動および濃縮液チューブ送液部4pの作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が設定差圧よりも上昇し続け、処理が継続できなくなる等の問題が生じることを防止できる。
逆に、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が最小設定差圧よりも小さい場合には、濾過器10から濃縮器20への送液量が増加するように、濾過液供給チューブ送液部3pの作動および濃縮液チューブ送液部4pの作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が最小設定差圧よりも減少し続け、濃縮液が薄まる等の問題が生じることを防止できる。
【0340】
<濾過器10内の液体回収方法のさらに他の例>
上述したように、濾過器10内の濾過液を濃縮器20に送液して、濾過液を濃縮液として回収する場合には、濃縮器20の濃縮器膜間差圧に基づいて、濃縮器20から濃縮液バッグCBへの流量および/または濃縮器20から廃液バッグDBへの流量、つまり、濃縮倍率を調整してもよい。この方法の場合、濃縮器膜間差圧の上昇を抑えると同時に、濾過器10から濃縮器20へと送液する流量を変更することなく濃縮液を回収する速度を一定に保つことができるので、濾過器10内の濾過液を効果的に回収することができる。
【0341】
例えば、濃縮器20の濃縮器膜間差圧に基づいて濃縮器20から濃縮液バッグCBへの流量および/または濃縮器20から廃液バッグDBへの流量を調整する場合、以下のように流量を調整することができる。
【0342】
まず、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内にある場合には、濃縮器20から濃縮液バッグCBへの流量および/または濃縮器20から廃液バッグDBへの流量を維持するように、濃縮液チューブ送液部4pの作動(廃液チューブ送液部5pが設けられている場合は廃液チューブ送液部5pの作動)または濾過液供給チューブ送液部3pの作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内から大きく逸脱する等の問題が生じることを防止できる。
一方、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が最大設定差圧よりも大きい場合には、濃縮器20から濃縮液バッグCBへの流量が増加する、および/または、濃縮器20から廃液バッグDBへの流量が減少するように、濃縮液チューブ送液部4pの作動(廃液チューブ送液部5pが設けられている場合は廃液チューブ送液部5pの作動)または濾過液供給チューブ送液部3pの作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が最大設定差圧よりも上昇し続け、処理が継続できなくなる等の問題が生じることを防止できる。
逆に、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が最小設定差圧よりも小さい場合には、濃縮器20から濃縮液バッグCBへの流量が減少する、および/または、濃縮器20から廃液バッグDBへの流量が増加するように、濃縮液チューブ送液部4pの作動(廃液チューブ送液部5pが設けられている場合は廃液チューブ送液部5pの作動)または濾過液供給チューブ送液部3pの作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が最小設定差圧よりも減少し続け、濃縮液が薄まる等の問題が生じることを防止できる。
【0343】
なお、濾過器10の濾過液を回収する際における濃縮器膜間差圧の設定差圧は、濾過濃縮作業における許容差圧と同じにしてもよいし、設定差圧を許容差圧と異なる値にしてもよい。例えば、許容差圧が有る程度の範囲を有する場合には、許容差圧の範囲よりも設定差圧の範囲を広くしてもよい。この場合には、濃縮液が薄まった状態であっても、可能な限り最後まで回収ができるという点で望ましい。さらに、許容差圧の範囲と設定差圧の範囲にズレがあってもよい。
【0344】
<再濃縮作業>
濾過濃縮作業によって得られた濃縮液をさらに濃縮する場合には、再濃縮作業が実施される。
【0345】
図8に示すように、第2実施形態の原液処理装置1Bの再濃縮作業では、洗浄液バッグSBから連結チューブ9の他端が外されて、連結チューブ9の他端に濃縮液バッグCBが接続される。
また、流量調整手段9cによって連結チューブ9内を液体が流れることができる状態を維持する一方、洗浄液供給チューブ送液部6pおよび洗浄液回収チューブ送液部7pを作動させず、クランプとして機能させる。加えて、流量調整手段2cによって給液チューブ2内は液体が流れないように閉塞する。すると、濾過器10には液体が流れないような状態となる。
【0346】
上記状態で、濃縮液バッグCBから連結チューブ9を通って濃縮器20に濃縮液を流すように濾過液供給チューブ送液部3pを作動させ、かつ、濃縮器20から濃縮液チューブ4を通って濃縮液バッグCBに濃縮液が流れるように濃縮液チューブ送液部4pを作動させる。
【0347】
すると、連結チューブ9に接続された濃縮液バッグCBから連結チューブ9を通して濃縮器20に濃縮液が供給されるので、濃縮器20によってさらに濃縮された再濃縮液が濃縮液チューブ4を通して濃縮液バッグCBに回収される。一方、濃縮液から分離された水分は、廃液チューブ5を通して廃液バッグDBに回収される。つまり、濃縮割合を高めた濃縮液(再濃縮液)を得ることができる。
【0348】
<濃縮器膜間差圧を利用した再濃縮作業の説明>
再濃縮作業では、濃縮器20の濃縮器膜間差圧に基づいて、濃縮器20から濃縮液バッグCBへの流量および/または濃縮器20から廃液バッグDBへの流量、つまり、再濃縮倍率を調整してもよい。この方法の場合、濃縮器膜間差圧の上昇を抑えると同時に、高濃度の濃縮液を生成する時間を短くすることができるという効果を得ることができる。
【0349】
この場合、予め濃縮器膜間差圧を利用した再濃縮作業を行う場合、許容差圧を設定することが望ましい。つまり、濃縮器20に応じて、濃縮器20が許容できる差圧(許容差圧)を設定する。この許容差圧は、所定の幅を有していてもよいし、特定の値に設定してもよい。なお、以下では、許容差圧が所定の幅を有する場合を代表として説明する。
【0350】
なお、濃縮器膜間差圧を利用した再濃縮作業を行う場合、予め許容流量を設定することが望ましい。つまり、濾過液供給チューブ3内の濃縮液の許容できる流量(許容流量)を設定することが望ましい。この許容流量は、所定の幅を有していてもよいし、特定の値に設定してもよい。かかる許容流量は必ずしも設定しなくてもよい。しかし、濾過液供給チューブ3内の濃縮液の流量が少なくなりすぎると、再濃縮にかかる時間が長くなりすぎる。したがって、濃縮液の処理時間が長くなることを防止する上では、許容流量を設定しておくことが望ましい。
【0351】
さらに、濃縮器膜間差圧を利用した再濃縮作業を行う場合、予め許容濃縮倍率を設定することが望ましい。つまり、濾過液供給チューブ3内(言い換えれば連結チューブ9内)の濃縮液の流量に対する濃縮液チューブ4を流れる濃縮液の流量の比率(許容濃縮倍率)を設定することが望ましい。この許容濃縮倍率は、所定の幅を有していてもよいし、特定の値に設定してもよい。かかる許容濃縮倍率は必ずしも設定しなくてもよい。しかし、濾過液供給チューブ3内の濃縮液の流量に対する濃縮液チューブ4を流れる濃縮液の流量の比率である濃縮倍率が低下しすぎると(つまり濃縮液の流量が大きくなりすぎると)、濃縮効率が悪くなるので、再濃縮処理に時間を要する。したがって、濃縮倍率が低下しすぎることを防止する上では、許容濃縮倍率を設定しておくことが望ましい。また、再濃縮作業における許容濃縮倍率は、濾過濃縮における許容流量と同じでもよいし、濾過濃縮における許容濃縮倍率と異なっていてもよい。
【0352】
再濃縮の開始時は、濃縮器20への濃縮液の送液量を増加させるように濾過液供給チューブ送液部3pが作動される。このとき、濃縮液チューブ送液部4pは、濾過液供給チューブ3内の濾過液の流量に合わせて、濃縮液が所定の濃縮倍率となるように作動される。例えば、濃縮倍率が10倍の濃縮液を生成する場合には、濃縮液チューブ送液部4pは、濃縮液チューブ4を流れる濃縮液の流量が濾過液供給チューブ3内を流れる濾過液の流量の1/10となるようにその作動が調整される。また、濃縮液チューブ送液部4pは、濃縮液の濃縮倍率に代えてまたは濃縮液を所定の濃縮倍率に維持しつつ、濃縮器膜間差圧が許容差圧内の設定値となるように(または許容差圧内を維持するように)その作動が調整される場合もある。なお、濃縮器20への濃縮液の送液量を増加している間は、上記いずれかの状態となるように、濃縮液チューブ送液部4pはその作動が制御される。
【0353】
再濃縮が進行すると、徐々に濃縮器20の詰りが発生してくる。すると、濃縮器膜間差圧が上昇する。しかし、濃縮器膜間差圧が許容差圧になるまでは、濃縮器20への濃縮液の送液量を増加させるように濾過液供給チューブ送液部3pは作動する。
【0354】
<第一方法>
濃縮器20への濾過液の送液量の増加は、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧になるまで継続される。そして、濃縮器20への濃縮液の送液量を濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧となった状態の流量に維持するように濾過液供給チューブ送液部3pが制御される。一方、濃縮器膜間差圧に基づいて、濃縮液チューブ送液部4pが以下のように操作され、濃縮液チューブ4を流れる濃縮液の流量が調整される。
【0355】
<ステップ1>
まず、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧よりも小さい場合には、濃縮液チューブ送液部4pは、濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が減少するように作動される。つまり、濃縮液の濃度を高くするように濃縮液チューブ送液部4pの作動が制御される。
【0356】
<ステップ2>
そして、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧になるまで濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が減少される。濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧になると、濃縮液チューブ4内の濃縮液の流量を濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧となった状態の流量に維持するように濃縮液チューブ送液部4pが制御される。
【0357】
<ステップ3>
やがて、濃縮器20の詰り等によって、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最大許容差圧よりも大きくなると、濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が増加するように濃縮液チューブ送液部4pが制御される。なお、濃縮液の送液量が増加すると濃縮倍率が低下するが、許容濃縮倍率を満たしつつ濃縮倍率が低下するように(濃縮液の濃度が低くなるように)濃縮液チューブ送液部4pの作動が制御される。
なお、濃縮器膜間差圧を許容差圧内に維持するために濃縮液の送液量を増加させた際に、濃縮倍率が許容濃縮倍率より小さくなってしまう場合には、下記方法(第二方法)で対応することができる。
【0358】
濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が増加すると濃縮器膜間差圧は小さくなるので、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最小許容差圧よりも低くなると、再び濃縮液チューブ送液部4pは、濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が減少するように作動される。
【0359】
つまり、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内となっている間は、上記ステップ1~3が繰り返される。この方法を採用すれば、濃縮液バッグCBへの送液量が一定の場合では不可能な、濃縮器20の濾過膜の膜面積や詰りの状態に応じた、また、濃縮液の状態(濃縮器の詰りの原因物資の濃度、回収する有用物質の濃度、液体の粘度など)に応じた、最大の濃縮倍率を確保することが可能となる。つまり、濃縮効率を向上させることによって、高濃度の濃縮液を生成する時間を短くでき、再濃縮作業にかかる時間を短縮することができる。
【0360】
<第二方法>
第一方法では、濃縮器膜間差圧に基づいて濃縮液チューブ4内の濃縮液の流量を調整したが、以下のように、濃縮器膜間差圧に基づいて連結チューブ9内の濃縮液の送液量を調整することもできる。
【0361】
<ステップ1>
まず、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧(最小許容差圧)よりも小さい場合には、濾過液供給チューブ送液部3pは、濃縮器20への濃縮液の送液量が増加するように作動される。
【0362】
<ステップ2>
そして、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内になるまで濃縮器20に送られる濃縮液の送液量が増加される。そして、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内になると、濃縮器20への濃縮液の送液量を濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内となった状態の流量に維持するように濾過液供給チューブ送液部3pの作動が制御される。なお、この場合には、濃縮器20への濃縮液の送液量は許容流量(最小許容流量以上かつ最大許容流量以下)の範囲内に維持されることが望ましい。
【0363】
<ステップ3>
やがて、濃縮器20の詰り等によって、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧よりも大きくなると、濃縮器20への濃縮液の送液量が減少するように濾過液供給チューブ送液部3pの作動が制御される。つまり、濃縮器20に送られる流量が少なくなるように濾過液供給チューブ送液部3pの作動が制御される。なお、この場合も、濃縮器20への濃縮液の送液量は許容流量の範囲内に維持されることが望ましい。
【0364】
濃縮器20への濃縮液の送液量が減少すると濃縮器膜間差圧は小さくなるので、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最小許容差圧よりも低くなると、再び濾過液供給チューブ送液部3pは、濾過液供給チューブ3内の濃縮液の流量が増加するように作動される。
【0365】
つまり、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内となっている間は、上記ステップ1~3が繰り返される。この方法を採用すれば、濃縮器20への送液量が一定の場合では不可能な、濃縮器20の濾過膜の膜面積や詰りの状態に応じた、また、濃縮液の状態(濃縮器の詰りの原因物資の濃度、回収する有用物質の濃度、液体の粘度など)に応じた、最大の再循環流量および最大の濃縮倍率を確保することが可能となる。つまり、再循環効率と濃縮効率とを向上させることによって、高濃度の濃縮液を生成する時間を短くでき、再濃縮作業にかかる時間を短縮することができる。
しかも、上記のように作動すれば、濾過器10を洗浄した直後の濃縮器20および回路内の洗浄液を、濃縮器20の廃液として短時間に除去することが可能となる。つまり、上述したような、濾過器洗浄直後の洗浄液による濃縮液の希釈を効率的に防ぐことができる。
【0366】
なお、再濃縮する際における濃縮器膜間差圧の許容差圧は、濾過濃縮作業における許容差圧と同じにしてもよいし、濾過濃縮作業における許容差圧と異なる値(範囲)にしてもよい。例えば、濾過濃縮作業における許容差圧が有る程度の範囲を有する場合には、その範囲よりも再濃縮における許容差圧の範囲を広くしてもよい。この場合には、濾過器10が詰まりやすい性状の原液を処理する場合、濾過濃縮作業で濾過器10に圧力をかけないようにゆっくりと処理を行うが、その代わりに高濃度の濃縮液を生成することができ、再濃縮作業の時間を短くできるという点で望ましい。また、濾過濃縮作業における許容差圧の範囲よりも再濃縮における許容差圧の範囲を狭くした場合には、濃縮器20が詰まりやすい性状の原液を処理する場合、濾過濃縮作業では濃縮器20に圧力をかけずに短時間で処理を行い、その代わりに再濃縮作業にて高濃度の濃縮液を生成できるという点で望ましい。さらに、濾過濃縮作業における許容差圧の範囲と再濃縮における許容差圧の範囲にズレがあってもよい。
また、再濃縮する際における許容濃縮倍率も、濾過濃縮作業における許容濃縮倍率と同じにしてもよいし、濾過濃縮作業における許容濃縮倍率と異なる値(範囲)にしてもよい。例えば、濾過濃縮作業における許容濃縮倍率が有る程度の範囲を有する場合には、その範囲よりも再濃縮における許容濃縮倍率の範囲を広くしてもよい。この場合には、濾過濃縮作業で時間をかけて濃縮する代わりに、再濃縮作業の時間を短くできるという点で望ましい。また、濾過濃縮作業における許容濃縮倍率の範囲よりも再濃縮における許容濃縮倍率の範囲を狭くした場合には、再濃縮作業で時間をかけて濃縮する代わりに、濾過濃縮作業を早く終わらせることができるという点で望ましい。さらに、濾過濃縮作業における許容濃縮倍率の範囲と再濃縮における許容濃縮倍率の範囲にズレがあってもよい。
【0367】
<濾過器10内の液体回収方法の例>
上述した再濃縮作業を実施する前には、濾過器10内の濾過液を濃縮器20に送液して、濾過液を濃縮液として回収する。この場合には、濃縮器20の濃縮器膜間差圧に基づいて濃縮器20に送液する際の流量を調整することが望ましい。かかる方法を採用すれば、万が一、濃縮器20が詰った場合でも、濃縮器膜間差圧の上昇を抑えられ、処理が停止することを防ぐことができるので、濾過器10内の濾過液を効果的に回収することができる。
【0368】
例えば、濃縮器20の濃縮器膜間差圧に基づいて濃縮器20に送液する際の流量を調整する場合、以下のように流量を調整することができる。まず、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内にある場合には、濾過器10から濃縮器20への送液量を維持するように、濾過液供給チューブ送液部3pの作動および濃縮液チューブ送液部4pの作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内から大きく逸脱する等の問題が生じることを防止できる。
一方、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が最大設定差圧よりも大きい場合には、濾過器10から濃縮器20への送液量が減少するように、濾過液供給チューブ送液部3pの作動および濃縮液チューブ送液部4pの作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が最大設定差圧よりも上昇し続け、処理が継続できなくなる等の問題が生じることを防止できる。
逆に、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が最小設定差圧よりも小さい場合には、濾過器10から濃縮器20への送液量が増加するように、濾過液供給チューブ送液部3pの作動および濃縮液チューブ送液部4pの作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が最小設定差圧よりも減少し続け、濃縮液が薄まる等の問題が生じることを防止できる。
【0369】
<濾過器10内の液体回収方法の他の例>
また、濾過器10内の濾過液を濃縮器20に送液して、濾過液を濃縮液として回収する場合には、濃縮器20の濃縮器膜間差圧に基づいて、濃縮器20から濃縮液バッグCBへの流量および/または濃縮器20から廃液バッグDBへの流量、つまり、濃縮倍率を調整してもよい。この方法の場合、濃縮器膜間差圧の上昇を抑えると同時に、濾過器10から濃縮器20へと送液する流量を変更することなく回収速度を一定に保つことができるので、濾過器10内の濾過液を効果的に回収することができる。
【0370】
例えば、濃縮器20の濃縮器膜間差圧に基づいて濃縮器20から濃縮液バッグCBへの流量および/または濃縮器20から廃液バッグDBへの流量を調整する場合、以下のように流量を調整することができる。
【0371】
まず、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内にある場合には、濃縮器20から濃縮液バッグCBへの流量および/または濃縮器20から廃液バッグDBへの流量を維持するように、濃縮液チューブ送液部4pの作動(廃液チューブ送液部5pが設けられている場合は廃液チューブ送液部5pの作動)または濾過液供給チューブ送液部3pの作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内から大きく逸脱する等の問題が生じることを防止できる。
一方、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が最大設定差圧よりも大きい場合には、濃縮器20から濃縮液バッグCBへの流量が増加する、および/または、濃縮器20から廃液バッグDBへの流量が減少するように、濃縮液チューブ送液部4pの作動(廃液チューブ送液部5pが設けられている場合は廃液チューブ送液部5pの作動)または濾過液供給チューブ送液部3pの作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が最大設定差圧よりも上昇し続け、処理が継続できなくなる等の問題が生じることを防止できる。
逆に、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が最小設定差圧よりも小さい場合には、濃縮器20から濃縮液バッグCBへの流量が減少する、および/または、濃縮器20から廃液バッグDBへの流量が増加するように、濃縮液チューブ送液部4pの作動(廃液チューブ送液部5pが設けられている場合は廃液チューブ送液部5pの作動)または濾過液供給チューブ送液部3pの作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が最小設定差圧よりも減少し続け、濃縮液が薄まる等の問題が生じることを防止できる。
【0372】
なお、濾過器10の濾過液を回収する際における濃縮器膜間差圧の設定差圧は、濾過濃縮作業における許容差圧と同じにしてもよいし、設定差圧を許容差圧と異なる値(範囲)にしてもよい。例えば、許容差圧が有る程度の範囲を有する場合には、許容差圧の範囲よりも設定差圧の範囲を広くしてもよい。この場合には、濃縮液が薄まった状態であっても、可能な限り最後まで回収ができるという点で望ましい。また、許容差圧の範囲よりも設定差圧の範囲を狭くした場合には、時間がかかったとしても濃縮液を薄めずに、可能な限り最後まで回収ができるという点で望ましい。さらに、許容差圧の範囲と設定差圧の範囲にズレがあってもよい。
【0373】
<濃縮器20の回収作業>
濾過器10内の原液や濾過液を回収した後、濃縮器20内の濃縮液も回収する場合には、単に濃縮器20に洗浄液、あるいは気体といった流体(以下単に流体という)を流して濃縮液などの回収を実施してもよい。しかし、上述した場合と同様に、濃縮器膜間差圧を測定しながら、濃縮液20に供給される流体の流量等を調整してもよい。すると、濃縮器膜間差圧が大きくなり処理が継続できない等の問題が生じることを防止できる。そして、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が設定差圧よりも大きくなると、濾過器10から濃縮器20への送液(気体を流すことも含む)を停止するようにすれば、濃縮器膜間差圧が上昇し続ける等の問題が生じることを防止できる。
【0374】
なお、濃縮器20の濃縮液を回収する際における濃縮器膜間差圧の設定差圧(第二設定差圧)は、濾過濃縮作業における許容差圧または濾過器10の濾過液を回収する際における設定差圧(第一設定差圧)と同じにしてもよいし、これらと異なる値(範囲)にしてもよい。例えば、許容差圧や第一設定差圧が有る程度の範囲を有する場合には、許容差圧や第一設定差圧の範囲よりも第二設定差圧の範囲を広くしてもよい。この場合には、濃縮液が薄まった状態であっても、可能な限り最後まで回収ができるという点で望ましい。また、許容差圧や第一設定差圧の範囲よりも第二設定差圧の範囲を狭くした場合には、時間がかかったとしても濃縮液を薄めずに、可能な限り最後まで回収ができるという点で望ましい。さらに、許容差圧や第一設定差圧の範囲よりも第二設定差圧の範囲にズレがあってもよい。
【0375】
<濾過液供給チューブ3内の液体の回収作業>
なお、上述した濃縮器20内の濃縮液の回収を実施したのち、濃縮器膜間差圧が設定差圧に到達した、あるいは、規定の液量分を回収した等の場合には、濾過器10から濃縮器20への送液(気体を流すことも含む)を停止したのちに、濾過液供給チューブ3に対して空気等の気体を供給してもよい。すると、濃縮器20や濃縮液流路4内の濃縮液、濾過液供給チューブ3よりも下流側の流路内の液体の回収漏れを防止することができる。なお、濃縮器膜間差圧が設定差圧に到達していなければ、必ずしも濾過器10から濃縮器20への送液は停止しなくてもよい。
【0376】
<第3実施形態の原液処理装置1C>
上述した第2実施形態の原液処理装置1Bでは、濾過液供給チューブ3に濾過液供給チューブ送液部3pを設けて、濾過濃縮の際に、濾過器10から原液を吸い出すようにしている。かかる構成とする場合、濾過液供給チューブ3に濾過液供給チューブ送液部3pを設ける代わりに、廃液チューブ5に廃液チューブ送液部5pを設けることもできる(
図10~12参照)。
【0377】
この第3実施形態の原液処理装置1Cでは、濾過濃縮時に、濾過器10から濃縮器20に液体(濾過液)が流れるように濃縮液チューブ送液部4pおよび廃液チューブ送液部5pを作動させる。濃縮液チューブ送液部4pおよび廃液チューブ送液部5pが作動すれば、濾過液供給チューブ3が負圧になり、濾過器10内(例えば本体部11の胴部12の内部空間12h)も負圧になる。すると、流量調整手段2cによって給液チューブ2が送液できる状態としておけば、給液チューブ2を通して原液バッグUB内の原液を濾過器10内に吸引し、かつ、吸引した原液を濾過液供給チューブ3に吸引できる。
【0378】
この原液処理装置1Cでも、各チューブに接続するバッグを適切に変更し、各チューブに設けられた流量調整手段および送液部の作動を調整すれば、準備洗浄作業、濾過濃縮作業および再濃縮作業を行うことができる。
【0379】
<準備洗浄作業>
図10に示すように、第3実施形態の原液処理装置1Cの準備洗浄作業では、濃縮液チューブ4の他端に濃縮液バッグCBに代えて洗浄液バッグSBを接続して、廃液チューブ5の他端には廃液バッグDBに代えて洗浄液回収バッグFBを接続する。なお、廃液チューブ5の他端は、廃液バッグDBを接続したままでもよいし、単なるバケツなどに配置してもよい。
また、給液チューブ2の他端にも原液バッグUBに代えて洗浄液回収バッグFBを接続する。なお、給液チューブ2の他端には廃液バッグDBを接続してもよいし、給液チューブ2の他端を単なるバケツなどに配置してもよい。
そして、連結チューブ9の他端にも洗浄液回収バッグFBを接続する。なお、連結チューブ9の他端には廃液バッグDBを接続してもよいし、連結チューブ9の他端を単なるバケツなどに配置してもよい。
さらに、洗浄液供給チューブ6の他端には洗浄液バッグSBに代えて洗浄液回収バッグFBを接続し、洗浄液回収チューブ7の他端には洗浄液回収バッグFBに代えて洗浄液バッグSBを接続する。なお、洗浄液供給チューブ6の他端に廃液バッグDBを接続してもよいし、洗浄液供給チューブ6の他端を単なるバケツなどに配置してもよい。
【0380】
ついで、流量調整手段2cおよび流量調整手段9cによって、給液チューブ2および連結チューブ9内を洗浄液が流れるようにする。
【0381】
上記状態で、濃縮液チューブ4に接続された洗浄液バッグSBから濃縮液20に洗浄液を流すように濃縮液チューブ送液部4pを作動させる。すると、濃縮液チューブ4に接続された洗浄液バッグSBから濃縮液チューブ4を通して濃縮器20に洗浄液が供給される。供給された洗浄液は、濃縮器20を通過した後、濾過液供給チューブ3、連結チューブ9を通過して連結チューブ9に接続された洗浄液回収バッグFBに回収される。なお、濃縮器20から洗浄液回収バッグFBに液体が流れるように廃液チューブ送液部5pを作動させておけば、一部の洗浄液を廃液チューブ5を通って、廃液チューブ5の他端に接続された洗浄液回収バッグFBに回収させることができる。
【0382】
また、洗浄液回収チューブ7に接続された洗浄液バッグSBから濾過器10に洗浄液を流すように洗浄液回収チューブ送液部7pを作動させる。すると、洗浄液回収チューブ7に接続された洗浄液バッグSBから洗浄液回収チューブ7を通して濾過器10に一部の洗浄液が供給される。濾過器10に供給された洗浄液は、濾過器10を通過した後、濾過液供給チューブ3、連結チューブ9を通過して連結チューブ9に接続された洗浄液回収バッグFBに回収される。また、洗浄液供給チューブ送液部6pも作動させることによって、洗浄液供給チューブ6にも濾過器10に供給された洗浄液の一部を流すことができる。さらに、一部の洗浄液は、洗浄液回収チューブ7から給液チューブ2を通過して給液チューブ2に接続された洗浄液回収バッグFBに回収される。
【0383】
すると、濾過器10と濃縮器20および全てのチューブに洗浄液を流すことができるので、第3実施形態の原液処理装置1C全体を洗浄することができる。
【0384】
<濾過濃縮作業>
準備洗浄作業が終了すると、濾過濃縮作業が実施される。
【0385】
図11に示すように、第3実施形態の原液処理装置1Cの濾過濃縮作業では、準備洗浄作業の状態から、洗浄液バッグSBに代えて濃縮液バッグCBが濃縮液チューブ4の他端に接続され、洗浄液回収バッグFBに代えて廃液バッグDBが廃液チューブ5の他端に接続される。
一方、給液チューブ2の他端には、洗浄液回収バッグFBに代えて原液バッグUBが接続される。
また、流量調整手段2cを開放して給液チューブ2内を液体が流れることができる状態を維持する一方、流量調整手段9cによって連結チューブ9内は液体が流れないように閉塞する。加えて、洗浄液回収チューブ送液部7pおよび洗浄液供給チューブ送液部6pを作動させず、クランプとして機能させる。
【0386】
上記状態で、濃縮器20から濃縮液バッグCBに濃縮液を流すように濃縮液チューブ送液部4pを作動させ、かつ、濃縮器20から廃液バッグDBに廃液を流すように廃液チューブ送液部5pを作動させる。
【0387】
すると、原液バッグUBから給液チューブ2を通して濾過器10に原液が供給される。供給された原液は、濾過器10によって濾過され、生成された濾過液が濾過液供給チューブ3を通して濃縮器20に供給される。そして、濃縮器20に供給された濾過液は、濃縮器20によって濃縮されて、生成された濃縮液が濃縮液チューブ4を通して濃縮液バッグCBに回収される。一方、濃縮液から分離された水分は、廃液チューブ5を通して廃液バッグDBに回収される。
【0388】
<濾過濃縮操作について>
ここで、濾過濃縮作業では、濃縮割合が所定の範囲になるように、濃縮液チューブ送液部4pおよび廃液チューブ送液部5pの作動が制御されている。しかし、以下のように、濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧を利用して、濃縮液チューブ送液部4pおよび廃液チューブ送液部5pの作動、つまり、濃縮液チューブ4および廃液チューブ5内の液体の流量を制御してもよい。すると、濾過器10や濃縮器20の能力を有効に活用して、濾過濃縮を行うことができるので、濃縮液を生成するまでの時間を短縮でき、濃縮作業の効率を高くできる。
以下では、濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧を利用して、濃縮液チューブ送液部4pおよび廃液チューブ送液部5pの作動を制御して濾過濃縮する作業を説明する。
【0389】
なお、濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧は、濾過器10や濃縮器20に接続されているチューブ内圧を測定することによって算出することができる。例えば、給液チューブ2と濾過液供給チューブ3に圧力計を設けておき、その信号が制御部106に供給されるようになっていれば、制御部106が濾過器膜間差圧を算出できる。なお、
図10に示すように、濾過液供給チューブ3が接続されていないポート11c(またはこのポート11cに接続されているチューブ)に圧力計を設けても、制御部106が濾過器膜間差圧を算出できる。また、濾過液供給チューブ3と廃液チューブ5に圧力計を設けておき、その信号が制御部106に供給されるようになっていれば、制御部106が濃縮器膜間差圧を算出できる。なお、廃液チューブ5が接続されていないポート20cがある場合には、このポート20c(またはこのポート20cに接続されているチューブ)に圧力計を設けても、制御部106が濃縮器膜間差圧を算出できる。
【0390】
なお、濾過器10や濃縮器20において、給液側と排液側のいずれか一方が大気開放に近い状態であれば、給液側と排液側のうち大気開放となっていない側と連通されたチューブ内圧を測定するだけでも、制御部106が濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧を算出できる。言い換えれば、濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧に代えて、制御部106は、大気開放となっていない側と連通されたチューブ内圧だけを利用して、送液部の作動を制御することもできる。例えば、濾過器10や濃縮器20に接続されているチューブが、バッグにつながっておりかつそのチューブが送液部や流量調整手段によって閉塞されていない状態であれば、そのチューブは大気開放に近い状態と考えることができる。
図12の状態であれば、濾過器10に接続されているチューブ2,3のうち原液バッグUBに接続されている給液チューブ2は大気開放と見做すこともできる。また、濃縮器20に接続されているチューブ3,5のうち、廃液バッグDBに接続されている排液チューブ5は大気開放と見做すこともできる。すると、
図12の状態であれば、濾過器供給チューブ3のチューブ内圧だけを利用して、制御部106は送液部の作動を制御することもできる。
【0391】
また、濃縮液チューブ4および廃液チューブ5内を流れる液体の流量は、濃縮液チューブ送液部4pおよび廃液チューブ送液部5pの作動から推定してもよいし、濃縮液チューブ4や濃縮液チューブ送液部4p、廃液チューブ5や廃液チューブ送液部5pに流量計を設けて直接流量を測定してもよい。
【0392】
<濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧を利用した濾過濃縮作業の説明>
濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧を利用した濾過濃縮作業を行う場合、予め許容差圧を設定する。つまり、濾過器10や濃縮器20に応じて、濾過器10や濃縮器20が許容できる差圧(許容差圧)をそれぞれ設定する。この許容差圧は、所定の幅を有していてもよいし、特定の値に設定してもよい。なお、以下では、許容差圧が所定の幅を有する場合を代表として説明する。
【0393】
なお、濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧を利用した濾過濃縮作業を行う場合、予め許容流量を設定することが望ましい。つまり、給液チューブ2内の原液の許容できる流量(許容流量)を設定することが望ましい。この許容流量は、所定の幅を有していてもよいし、特定の値に設定してもよい。かかる許容流量は必ずしも設定しなくてもよい。しかし、給液チューブ2内の原液の流量が少なくなりすぎると、濾過濃縮にかかる時間が長くなりすぎる。したがって、原液の処理時間が長くなることを防止する上では、許容流量を設定しておくことが望ましい。
さらに、濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧を利用した濾過濃縮作業を行う場合、予め許容濃縮倍率を設定することが望ましい。つまり、濃縮液チューブ4を流れる濃縮液の流量に対する給液チューブ2内の原液の流量の比率(許容濃縮倍率)を設定することが望ましい。この許容濃縮倍率は、所定の幅を有していてもよいし、特定の値に設定してもよい。かかる許容濃縮倍率は必ずしも設定しなくてもよい。しかし、濃縮液チューブ4を流れる濃縮液の流量に対する給液チューブ2内の原液の流量の比率である濃縮倍率が低下しすぎると(つまり濃縮液の流量が大きくなりすぎると)、濃縮効率が悪くなる。しかも、濃縮液量が多くなり、多量の濾過濃縮液が点滴再静注されることによって、血圧の上昇、心不全や呼吸不全の増悪などをきたす危険性がある。このため濃縮液量が多くなりすぎた場合には、再濃縮処理を追加する必要があり、再濃縮処理に時間を要する。濃縮液を再濃縮する場合には、再濃縮処理に時間を要するので、原液を処理するためのトータルの時間が長くなってしまう。したがって、濃縮倍率が低下しすぎることを防止する上では、許容濃縮倍率を設定しておくことが望ましい。
【0394】
濾過濃縮の開始時は、濾過器10への原液の送液量を増加させるように濃縮液チューブ送液部4pおよび廃液チューブ送液部5pが作動される。このとき、濃縮液チューブ送液部4pおよび廃液チューブ送液部5pは、濃縮液が所定の濃縮倍率となるように作動される。例えば、濃縮倍率が10倍の濃縮液を生成する場合には、濃縮液チューブ4を流れる濃縮液の流量と廃液チューブ5を流れる廃液の流量が、1:9となるように調整される。また、濃縮液チューブ送液部4pおよび廃液チューブ送液部5pは、濃縮液の濃縮倍率に代えてまたは濃縮液を所定の濃縮倍率に維持しつつ、濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧が許容差圧内の設定値となるように(または許容差圧内を維持するように)その作動が調整される場合もある。なお、濾過器10への原液の送液量を増加している間は、上記いずれかの状態となるように、濃縮液チューブ送液部4pおよび廃液チューブ送液部5pはその作動が制御される。
【0395】
濾過濃縮が進行すると、徐々に濾過器10や濃縮器20の詰りが発生してくる。すると、濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧が上昇する。しかし、濾過器膜間差圧や濃縮器膜間差圧が許容差圧内になるまでは、濾過器10への原液の送液量を増加させるように濃縮液チューブ送液部4pおよび廃液チューブ送液部5pは作動する。
【0396】
<第一方法>
ここで、濾過器10への原液の送液量の増加は、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内になるまで継続される。そして、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内になると、給液チューブ2内の原液の流量が濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内となった状態の流量に維持するように濃縮液チューブ送液部4pおよび廃液チューブ送液部5pの作動が制御される。
【0397】
ここで、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内にある場合には、濃縮器20への濾過液の送液量、言い換えれば、濾過器10への原液の送液量が維持されるように濃縮液チューブ送液部4pおよび廃液チューブ送液部5pの作動が制御される。すると、濾過器10による濾過や濃縮器20による濃縮状態を所定の状態に維持できる。なお、濾過器膜間差圧の値に応じて、濾過器10への原液の送液量を増減させれば、濾過器膜間差圧を濾過器10の許容差圧内に維持しつつ、濾過器10への原液の送液量を多くできる。つまり、濾過濃縮作業の効率を高くすることができる可能性が有る。とくに、濾過器膜間差圧を濾過器10の最大許容差圧PMになるように維持すれば、濾過器10への原液の送液量も最大限に増加できるので、濾過作業の時間を短くする効果をより高めることができる。
【0398】
一方、濾過器膜間差圧が濾過器10の最大許容差圧PMよりも大きくなると、濾過器10への原液の送液量が減少するように濃縮液チューブ送液部4pおよび廃液チューブ送液部5pの作動が制御される。濾過器10への原液の送液量が一定でも中空糸膜等の詰りが発生した場合には、濾過器膜間差圧が大きくなり濾過の継続ができなくなる可能性がある。しかし、濾過器10への原液の送液量が減少すれば、濾過器膜間差圧を低下させることができるので、濾過器10の詰りが発生していても、濾過作業を継続することができる。しかも、濾過器10への原液の送液量が減少することによって、中空糸膜等の詰りを若干低減できる可能性もあるので、濾過作業を継続しやすくなり、濾過作業の時間を短くできる可能性がある。とくに、濾過器膜間差圧が濾過器10の最大許容差圧PMより大きくなった場合に、一旦、濾過器10への原液の送液を停止して、一定期間後に供給を再開するようにすれば、中空糸膜等の詰りを低減できる効果を高くできる可能性がある。
【0399】
また、濾過器10への原液の送液量を減少させる等することによって、濾過器膜間差圧が濾過器10の最小許容差圧PLより小さくなった場合には、濾過器10への原液の送液量が増加するように濃縮液チューブ送液部4pおよび廃液チューブ送液部5pの作動が制御される。すると、濾過器10による濾過量を多くできるので、濾過作業の時間を短くできる可能性がある。そして、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内、とくに、最大許容差圧PMになるまで濾過器10への原液の送液量を増加させれば、濾過器10の濾過能力を効果的に使用することができるので、濾過作業の時間を短くする効果をより高めることができる。
【0400】
なお、濾過器膜間差圧が濾過器10の最大許容差圧PMより大きくなった場合に濾過器10への原液の送液量を減少させる場合には、徐々に原液の送液量を減少させてもよいし、ステップ状に原液の送液量を減少させてもよい。また、濾過器膜間差圧が濾過器10の最大許容差圧PMより大きくなった場合、濾過器10への原液の送液を一定期間停止してから、濾過器10への原液の送液を開始するようにしてもよい(
図24参照)。この場合、濾過器10への原液の送液量は、濾過器膜間差圧を確認しながら調整するようになっていればよい。例えば、
図24のパターン1のように、濾過器10への原液の送液を一定期間停止してから濾過器10への原液の送液を開始する場合、まず、最大許容流量LMの1/2程度の流量で送液を開始し、その時の濾過器膜間差圧を確認する。この状態において濾過器膜間差圧が最小許容差圧PL(
図24のPL)よりも小さくなっていれば、現状の流量と最大許容流量LMとの差の1/2程度流量を増加し、その時の濾過器膜間差圧を確認する。この状態において濾過器膜間差圧がまだ最小許容差圧PLよりも小さくなっていれば、さらに現状の流量と最大許容流量LMとの差の1/2程度流量を増加し、その時の濾過器膜間差圧を確認する。この作業を繰り返して、濾過器膜間差圧が濾過器10の最小許容差圧PL以上かつ最大許容差圧PM以下になれば(または最大許容差圧PMになれば)、流量の増加を停止する。また、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内であっても、最大許容流量LMに達していない場合には、濾過器膜間差圧を確認しながら、同様の方法で、最大許容流量LMになるまで濾過器10への原液の送液量を増加してもよい。
濾過器膜間差圧が濾過器10の最小許容差圧PLより小さくなった場合に濾過器10への原液の送液量を増加させる場合には、徐々に原液の送液量を増加させてもよい。例えば、上述した流量の増加方法、つまり、濾過器10への原液の送液を一定期間停止した状態から流量を増加する方法と同様の方法で、濾過器10への原液の送液量を増加してもよい。
【0401】
また、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内に維持されている状態では、濾過器10への原液の送液量を維持すればよいが、その流量が最大許容流量LMよりも小さい場合には、最大許容流量LMとなるまで濾過器10への原液の送液量を増加させてもよい。
【0402】
また、濾過器膜間差圧が濾過器10の最小許容差圧PL以上になっても、濾過器10への原液の送液量が最小許容流量LLに到達しない場合には(
図24のパターン3)、中空糸膜16等の詰りが発生していると判断して、濾過濃縮作業を中止して洗浄作業に移行するようにしてもよい。
【0403】
さて、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内であり、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内となった状態の流量に給液チューブ2内の原液の流量が維持されている状態において、濃縮器膜間差圧に基づいて、濃縮液チューブ送液部4pを以下のように制御することができる。
【0404】
<ステップ1>
まず、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最小許容差圧よりも小さい場合には、濃縮液チューブ送液部4pは、濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が減少するように作動される。つまり、濃縮液の濃度を高くするように濃縮液チューブ送液部4pの作動が制御される。このとき、廃液チューブ送液部5pは廃液チューブ5内を流れる廃液の送液量が維持されるように作動状態を維持してもよい。
逆に、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最小許容差圧よりも小さい場合には、廃液チューブ5内を流れる廃液の送液量が増加するように廃液チューブ送液部5pの作動を制御して、濃縮器20への濃縮液の送液量を維持してもよい。
【0405】
<ステップ2>
そして、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内になるまで濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が減少される。そして、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内になると、濃縮液チューブ4内の濃縮液の流量を濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内となった状態の流量に維持するように濃縮液チューブ送液部4pが制御される。このとき、廃液チューブ送液部5pも、廃液チューブ5内を流れる廃液の送液量を維持するように作動を制御してもよい。
【0406】
<ステップ3>
やがて、濃縮器20の詰り等によって、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最大許容差圧よりも大きくなると、濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が増加するように濃縮液チューブ送液部4pが制御される。なお、濃縮液の送液量が増加すると濃縮倍率が低下するが、許容濃縮倍率を満たしつつ濃縮倍率が低下するように(濃縮液の濃度が低くなるように)濃縮液チューブ送液部4pの作動が制御される。このとき、廃液チューブ送液部5pは廃液チューブ5内を流れる廃液の送液量が維持されるように作動状態を維持してもよい。
逆に、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最大許容差圧よりも大きい場合には、廃液チューブ5内を流れる廃液の送液量が減少するように廃液チューブ送液部5pの作動が制御される。なお、廃液の送液量が減少すると濃縮倍率が低下するが、許容濃縮倍率を満たしつつ濃縮倍率が低下するように(濃縮液の濃度が低くなるように)廃液チューブ送液部5pの作動が制御される。
【0407】
濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が増加すると(または廃液チューブ5内を流れる廃液の送液量が減少すると)濃縮器膜間差圧は小さくなる。濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最小許容差圧よりも低くなると、再び濃縮液チューブ送液部4pは、濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が減少するように作動される(または廃液チューブ5内を流れる廃液の送液量が増加するように廃液チューブ送液部5pの作動が制御される)。
【0408】
つまり、濾過器膜間差圧が濾過器10の許容差圧内となっている間は、上記ステップ1~3が繰り返される。この方法を採用すれば、濾過器10や濃縮液バッグCBへの送液量が一定の場合では不可能な、濾過器10や濃縮器20の濾過膜の膜面積や詰りの状態に応じた、また、原液の状態(濾過器や濃縮器の詰りの原因物資の濃度、回収する有用物質の濃度、液体の粘度など)に応じた、最大の濾過流量(つまり、上述した最大許容流量LM)および最大の濃縮倍率を確保することが可能となる。つまり、濾過効率と濃縮効率とを向上させることによって、原液から濃縮液を生成する時間を短くでき、再濃縮作業を防ぐことや再濃縮作業にかかる時間を短縮することができる。
しかも、上記のように作動すれば、濾過濃縮開始時に濾過器10、濃縮器20および回路内に充填された洗浄液や濾過器10を洗浄した直後の濾過器10および回路内の洗浄液を、濃縮器20の廃液として短時間に除去することが可能となる。つまり、上述したような、開始時および濾過器洗浄直後の洗浄液による濃縮液の希釈を効率的に防ぐことができる。
【0409】
なお、上記方法(第一方法)では、濾過器膜間差圧が最大許容差圧PMよりも大きい場合や、濾過器膜間差圧が最小許容差圧PLよりも小さい場合、さらに、濾過器10への原液の送液量が濾過器膜間差圧に関係なく一定の場合にも、上記ステップ1~3を繰り返して、濃縮器20への濃縮液の送液量を調整してもよい。
さらに、上記方法(第一方法)は、濾過濃縮の全期間を通じて採用されてもよいが、濾過濃縮開始時や濾過器洗浄直後などの一定期間にのみ採用され、他の期間は設定された濃縮倍率で濃縮されてもよい。
【0410】
<濾過器洗浄について>
第3実施形態の原液処理装置1Cでも、上述したような濾過濃縮作業を実施していると、濾過器10の詰り等によって、濾過器膜間差圧が濾過器10の最大許容差圧PMよりも大きくなる。この場合、給液チューブ2内の原液の流量を減少させれば、濾過器膜間差圧を濾過器10の最大許容差圧PMよりも小さくでき、濾過器膜間差圧を許容差圧内(最小許容差圧PL以上最大許容差圧PM以下の範囲)に維持できる。しかし、濾過器10の詰り等がひどくなると、濾過器膜間差圧を濾過器10の許容差圧内に維持するために給液チューブ2内の原液の流量が減少し、給液チューブ2内の原液の流量が最小許容流量LLよりも小さくなる可能性がある。かかる状態になると、第3実施形態の原液処理装置1Cの濾過濃縮作業の途中に、濾過器10の洗浄作業が実施される。
【0411】
図23に示すように、流量調整手段2cによって給液チューブ2内を液体が流れないように閉塞する。加えて濃縮液チューブ送液部4pおよび廃液チューブ送液部5pの作動を停止し、クランプとして機能させる。また、濾過濃縮作業の途中に濾過器洗浄を実施する場合には、準備洗浄作業の終了後、洗浄液供給チューブ6の他端には洗浄液回収バッグFBに代えて洗浄液バッグSBを接続しておき、洗浄液回収チューブ7の他端には洗浄液バッグSBに代えて洗浄液回収バッグFBを接続しておく。
【0412】
上記状態で、洗浄液供給チューブ6に接続された洗浄液バッグSBから濾過器10に洗浄液を流すように洗浄液供給チューブ送液部6pを作動させ、濾過器10から洗浄液回収チューブ7に接続された洗浄液回収バッグFBに洗浄液を流すように洗浄液回収チューブ送液部7pを作動させる。すると、中空糸膜16の内部を、濾過濃縮の際に原液が流れる方向と逆方向に洗浄液を流すことができるので、中空糸膜16内部を洗浄液によって洗浄することができる。
【0413】
また、準備洗浄作業の終了後、連結チューブ9の他端には洗浄液回収バッグFBに代えて洗浄液バッグSBを接続しておく。すると、流量調整手段9cを開放して連結チューブ9内を液体が流れるようにすれば、上記状態に加えて、連結チューブ9に接続された洗浄液バッグSBからも濾過器10に洗浄液を供給することができる。すると、連結チューブ9を通して供給される洗浄液は、中空糸膜16を濾過液が透過する方向と逆方向に中空糸膜16を透過するので、中空糸膜16の詰りを解消できる。この場合、洗浄液供給チューブ6に接続された洗浄液バッグSBと連結チューブ9に接続された洗浄液バッグSBの両方から濾過器10に洗浄液が供給されるので、洗浄液回収チューブ送液部7pによって洗浄液回収チューブ7を流れる洗浄液の流量が、洗浄液供給チューブ送液部6pによって洗浄液供給チューブ6を流れる洗浄液の流量より大きくなるように調整される。
【0414】
なお、流量調整手段9cによって連結チューブ9内を液体が流れるようにした場合には、洗浄液供給チューブ送液部6pの作動を停止した状態で洗浄液回収チューブ送液部7pを作動させてもよい。この場合には、連結チューブ9に接続された洗浄液バッグSBからのみ濾過液10に洗浄液が供給される。この場合も、中空糸膜16を濾過液が透過する方向と逆方向に、洗浄液が中空糸膜16を透過するので、中空糸膜16の詰りを解消できる。
【0415】
また、
図5に示すような、中空糸膜16を有する濾過器を濾過器10として使用した場合には、上述したような濾過器10の洗浄を実施するように、制御部106が濾過器10に対する洗浄液の供給量や供給タイミングを調整することが望ましい。つまり、中空糸膜16において洗浄を行う領域まで胴部12の中空な空間12h内を洗浄液によって満たした状態で洗浄液が中空糸膜16を透過するように、濾過器10に供給する洗浄液の供給量や供給タイミングを調整することが望ましい。
【0416】
<濾過液回収>
一方、上記方法で濾過器洗浄を実施した場合、濾過器10の本体部11の内部空間12h内に残留していた濾過液は洗浄液と混合して排出されてしまう。すると、濾過濃縮によって回収される有効成分の量が減少することになる。
【0417】
そこで、濾過器洗浄を行う際には、予め濾過器10の本体部11の内部空間12h内に存在する濾過液を濃縮器20に送液して、その後、濾過器洗浄を行う方が望ましい。
【0418】
<洗浄液による回収(外方)>
図10に示すように、濾過器10の本体部11のポート11c(濾過液供給チューブ3が接続されていないポート11c、以下洗浄用ポート11cという)にチューブを介して洗浄液バッグSBを接続する。そして、流量調整手段3cによって濾過液供給チューブ3内は液体が流れる状態を維持し、かつ、濃縮液チューブ送液部4pおよび/または廃液チューブ送液部5の作動を継続したまま、流量調整手段2cによって給液チューブ2を閉塞する。その状態で、チューブに設けられているポンプによって洗浄液バッグSBから濾過器10に洗浄液を供給すれば、濾過器10の本体部11の内部空間12h内の濾過液は濃縮器20に供給され、代わりに洗浄液バッグSBから洗浄液が内部空間12hに供給される。やがて、内部空間12h内の濾過液が全て洗浄液に置換されると、流量調整手段3cによって濾過液供給チューブ3を閉塞し、濃縮液チューブ送液部4pおよび/または廃液チューブ送液部5の作動を停止する。その状態となったのち、上述したような濾過器10の洗浄方法によって濾過器10を洗浄すれば、洗浄液とともに排出される濾過液の再濃縮を抑制することができる。
【0419】
なお、上記例では、流量調整手段2cによって給液チューブ2を閉塞して回収を実施したが、給液チューブ2を開放したまま回収を実施してもよい。つまり、濾過濃縮を継続しつつ濾過器10内の濾過液を回収することも可能である。
【0420】
なお、内部空間12h内の濾過液が全て洗浄液に置換されたか否かは、洗浄用ポート11cに接続されているチューブに設けられているポンプの送り量をカウントして理論的に求めたり、濃縮液の濃度を測定したりする方法で把握すればよい。また、濾過液の色を見たり、吸光度を測定したり、比重計を使用して濾過液の比重を測定したりする等の方法でも把握することは可能である。
【0421】
また、濾過器10の本体部11の洗浄用ポート11cに接続されるチューブには必ずしもポンプを設けなくてもよい。この場合でも、濃縮液チューブ送液部4pまたは廃液チューブ送液部5pを作動させれば、濾過器10の本体部11の内部空間12h内の濾過液を洗浄液と置換することができる。
【0422】
<空気等の気体による回収>
また、上記説明では、濾過器10の本体部11の洗浄用ポート11cにチューブを介して洗浄液バッグSBを接続した場合を説明したが、濾過器10の本体部11の洗浄用ポート11cにチューブを介して空気等の気体を供給してもよい。
【0423】
この場合も、流量調整手段3cによって濾過液供給チューブ3内は液体が流れる状態を維持し、かつ、濃縮液チューブ送液部4pおよび/または廃液チューブ送液部5pの作動を継続したまま、流量調整手段2cによって給液チューブ2を閉塞する。その状態で、洗浄用ポート11cに接続されたチューブから空気等の気体を濾過器10に供給すれば、濾過器10の本体部11の内部空間12h内の濾過液を濃縮器20に供給することができる。やがて、内部空間12h内の濾過液が全て排出されると、流量調整手段3cによって濾過液供給チューブ3を閉塞し、濃縮液チューブ送液部4pの作動および/または廃液チューブ送液部5pの作動を停止する。その状態となったのち、上述したような濾過器10の洗浄方法によって濾過器10を洗浄すれば、洗浄液とともに排出される濾過液の再濃縮を抑制することができる。
【0424】
なお、上記例では、流量調整手段2cによって給液チューブ2を閉塞して回収を実施したが、給液チューブ2を開放したまま回収を実施してもよい。つまり、濾過濃縮を継続しつつ濾過器10内の濾過液を回収することも可能である。
【0425】
なお、内部空間12h内の濾過液が全て排出されたか否かは、濾過液供給チューブ3に液検知器や気泡検知器を設けたり、濾過液供給チューブ3の圧力を測定したり、ポンプの送り量をカウントして理論的に求めたりする等の方法で把握すればよい。
【0426】
また、空気等の気体によって濾過器10の本体部11の内部空間12h内の濾過液を濃縮器20に供給した場合、濾過器10の本体部11の内部空間12h内は空気等の気体によって満たされる。したがって、濾過液の回収後に洗浄作業を実施する場合には、予め胴部12の中空な空間12h内を中空糸膜16において洗浄を行う領域まで(または胴部12の中空な空間12h内全体を)洗浄液によって満たした状態とした後、洗浄作業を実施することが望ましい。
【0427】
<バッグへの回収>
また、上記例では、濾過液を濃縮器20に送液して濃縮液の状態として回収する場合を説明したが、濾過液を濾過液のままで回収してもよい。例えば、濾過液供給チューブ3において、流量調整手段3cよりも上流側(つまり濾過器10側)に濾過液を回収するためのバッグを接続しておく。その状態で、流量調整手段3cによって濾過液供給チューブ3内を液体が流れない状態として、上述したように洗浄用ポート11cから洗浄液や空気等の気体を濾過器10に供給すれば、濾過器10の本体部11の内部空間12h内の濾過液をバッグに回収することができる。この場合、濾過液を濃縮器20に送液して濃縮液の状態で回収する場合に比べて、短時間で濾過液を回収することができるので、洗浄作業への移行を迅速に実施することができる。
【0428】
<洗浄液による回収(内方)>
上記説明では、原液が濾過器10の中空糸膜束15の複数本の中空糸膜16の貫通流路16h内に供給され、濾過液が濾過器10の本体部11の胴部12の内部空間12h内に排出される場合を説明している。しかし、原液が濾過液排出ポート11cから本体部11の胴部12の内部空間12h内に供給され、濾過された濾過液が中空糸膜束15の複数本の中空糸膜16の貫通流路16h内に排出され、原液供給ポート11aから外部に排出されるようになっていてもよい。
【0429】
この場合には、以下のように各チューブ等が接続される。
まず、濾過液供給チューブ3は原液供給ポート11aに接続され、給液チューブ2はポート11c(つまり、上述した洗浄用ポート11c)に接続される。また、洗浄液供給チューブ6は給液チューブ2が接続されていないポート11c(つまり、上述した濾過液排出ポート11c)に接続され、洗浄用ポート11cに接続されていた洗浄液バッグSBを洗浄液供給ポート11bに接続される。
【0430】
そして、流量調整手段3cによって濾過液供給チューブ3内は液体が流れる状態を維持し、かつ、濃縮液チューブ送液部4pおよび/または廃液チューブ送液部5pの作動を継続したまま、流量調整手段2cによって給液チューブ2を閉塞する。その状態で、洗浄液供給ポート11bに接続されているチューブに設けられているポンプによって洗浄液バッグSBから濾過器10に洗浄液を供給すれば、濾過器10の中空糸膜16の貫通流路16h内の濾過液は濃縮器20に供給され、代わりに洗浄液バッグSBから洗浄液が貫通流路16h内に供給される。やがて、貫通流路16h内の濾過液が全て洗浄液に置換されると流量調整手段3cによって濾過液供給チューブ3を閉塞し、濃縮液チューブ送液部4pおよび/または廃液チューブ送液部5pの作動を停止する。その状態となったのち、上述したような濾過器10の洗浄方法によって濾過器10を洗浄すれば、洗浄液とともに排出される濾過液の再濃縮を抑制することができる。
【0431】
なお、上記例では、流量調整手段2cによって給液チューブ2を閉塞して回収を実施したが、給液チューブ2を開放したまま回収を実施してもよい。つまり、濾過濃縮を継続しつつ濾過器10内の濾過液を回収することも可能である。
【0432】
なお、内部空間12h内の濾過液が全て洗浄液に置換されたか否かは、洗浄用ポート11cに接続されているチューブに設けられているポンプの送り量をカウントして理論的に求めたり、濃縮液の濃度を測定したりする方法で把握すればよい。また、濾過液の色を見たり、吸光度を測定したり、比重計を使用して濾過液の比重を測定したりする等の方法でも把握することは可能である。
【0433】
<空気等の気体による回収>
また、上記説明では、濾過器10の本体部11の洗浄液供給ポート11bにチューブを介して洗浄液バッグSBを接続した場合を説明したが、濾過器10の本体部11の洗浄液供給ポート11bにチューブを介して空気等の気体を供給してもよい。
【0434】
この場合も、流量調整手段3cによって濾過液供給チューブ3内は液体が流れる状態を維持し、かつ、濃縮液チューブ送液部4pおよび/または廃液チューブ送液部5pの作動を継続したまま、流量調整手段2cによって給液チューブ2を閉塞する。その状態で、チューブから空気等の気体を濾過器10に供給すれば、濾過器10の中空糸膜16の貫通流路16h内の濾過液を濃縮器20に供給することができる。やがて、中空糸膜16の貫通流路16h内の濾過液が全て排出されると、流量調整手段3cによって濾過液供給チューブ3を閉塞し、濃縮液チューブ送液部4pの作動および/または廃液チューブ送液部5pの作動を停止する。その状態となったのち、上述したような濾過器10の洗浄方法によって濾過器10を洗浄すれば、洗浄液とともに排出される濾過液の再濃縮を抑制することができる。
【0435】
なお、上記例では、流量調整手段2cによって給液チューブ2を閉塞して回収を実施したが、給液チューブ2を開放したまま回収を実施してもよい。つまり、濾過濃縮を継続しつつ濾過器10内の濾過液を回収することも可能である。
【0436】
なお、中空糸膜16の貫通流路16h内の濾過液が全て排出されか否かは、濾過液供給チューブ3に液検知器や気泡検知器を設けたり、濾過液供給チューブ3の圧力を測定したり、ポンプの送り量をカウントして理論的に求めたりする等の方法で把握すればよい。
【0437】
また、空気等の気体によって濾過器10の中空糸膜16の貫通流路16h内の濾過液を濃縮器20に供給した場合、濾過器10の中空糸膜16の貫通流路16h内は空気等の気体によって満たされる。したがって、濾過液の回収後に洗浄作業を実施する場合には、予め中空糸膜16において洗浄を行う領域まで(または中空糸膜16全体を)、貫通流路16h内を洗浄液によって満たした状態とした後、洗浄作業を実施することが望ましい。
【0438】
<バッグへの回収>
また、上記例では、濾過液を濃縮器20に送液して濃縮液の状態として回収する場合を説明したが、濾過液を濾過液のままで回収してもよい。例えば、濾過液供給チューブ3において、流量調整手段3cよりも上流側(つまり濾過器10側)に濾過液を回収するためのバッグを接続しておく。その状態で、流量調整手段3cによって濾過液供給チューブ3内を液体が流れない状態として、上述したように洗浄液供給ポート11bから洗浄液や空気等の気体を濾過器10に供給すれば、濾過器10の中空糸膜16の貫通流路16h内の濾過液をバッグに回収することができる。この場合、濾過液を濃縮器20に送液して濃縮液の状態で回収する場合に比べて、短時間で濾過液を回収することができるので、洗浄作業への移行を迅速に実施することができる。
【0439】
<濾過器10内の液体回収方法の例>
上述したように、濾過器10内の濾過液を濃縮器20に送液して、濾過液を濃縮液として回収する場合には、濃縮器20の濃縮器膜間差圧に基づいて濃縮器20に送液する際の流量を調整することが望ましい。かかる方法を採用すれば、万が一、濃縮器20が詰った場合でも、濃縮器膜間差圧の上昇を抑えられ、処理が停止することを防ぐことができるので、濾過器10内の濾過液を効果的に回収することができる。
【0440】
例えば、濃縮器20の濃縮器膜間差圧に基づいて濃縮器20に送液する際の流量を調整する場合、以下のように流量を調整することができる。まず、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内にある場合には、濾過器10から濃縮器20への送液量を維持するように、濃縮液チューブ送液部4pの作動および/または廃液チューブ送液部5pの作動の作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内から大きく逸脱する等の問題が生じることを防止できる。
一方、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が最大設定差圧よりも大きい場合には、濾過器10から濃縮器20への送液量が減少するように、濃縮液チューブ送液部4pの作動および/または廃液チューブ送液部5pの作動の作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が最大設定差圧よりも上昇し続け、処理が継続できなくなる等の問題が生じることを防止できる。
逆に、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が最小設定差圧よりも小さい場合には、濾過器10から濃縮器20への送液量が増加するように、濃縮液チューブ送液部4pの作動および/または廃液チューブ送液部5pの作動の作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が最小設定差圧よりも減少し続け、濃縮液が薄まる等の問題が生じることを防止できる。
【0441】
なお、濾過器10の濾過液を回収する際における濃縮器膜間差圧の設定差圧は、濾過濃縮作業における許容差圧と同じにしてもよいし、設定差圧を許容差圧と異なる値にしてもよい。例えば、許容差圧が有る程度の範囲を有する場合には、許容差圧の範囲よりも設定差圧の範囲を広くしてもよい。この場合には、濃縮液が薄まった状態であっても、可能な限り最後まで回収ができるという点で望ましい。また、許容差圧の範囲よりも設定差圧の範囲を狭くした場合には、時間がかかったとしても濃縮液を薄めずに、可能な限り最後まで回収ができるという点で望ましい。さらに、許容差圧の範囲と設定差圧の範囲にズレがあってもよい。
【0442】
<再濃縮作業>
濾過濃縮作業によって得られた濃縮液をさらに濃縮する場合には、再濃縮作業が実施される。
【0443】
図12に示すように、第3実施形態の原液処理装置1Cの再濃縮作業では、洗浄液バッグSBから連結チューブ9の他端が外されて、連結チューブ9の他端に濃縮液バッグCBが接続される。
また、流量調整手段3cによって濾過液供給チューブを液体が流れることができる状態を維持し、かつ、流量調整手段9cによって連結チューブ9内を液体が流れることができる状態を維持する一方、洗浄液供給チューブ送液部6pおよび洗浄液回収チューブ送液部7pを作動させず、クランプとして機能させる。加えて、流量調整手段2cによって給液チューブ2内は液体が流れないように閉塞する。すると、濾過器10には液体が流れないような状態となる。
【0444】
上記状態で、濃縮器20から濃縮液チューブ4を通って濃縮液バッグCBに濃縮液が流れるように濃縮液チューブ送液部4pおよび廃液チューブ送液部5pを作動させる。
【0445】
すると、連結チューブ9に接続された濃縮液バッグCBから連結チューブ9を通して濃縮器20に濃縮液が供給されるので、濃縮器20によってさらに濃縮された再濃縮液が濃縮液チューブ4を通して濃縮液バッグCBに回収される。一方、濃縮液から分離された水分は、廃液チューブ5を通して廃液バッグDBに回収される。つまり、濃縮割合を高めた濃縮液(再濃縮液)を得ることができる。
【0446】
<濃縮器膜間差圧を利用した再濃縮作業の説明>
再濃縮作業では、濃縮器20の濃縮器膜間差圧に基づいて、濃縮器20から濃縮液バッグCBへの流量および/または濃縮器20から廃液バッグDBへの流量、つまり、再濃縮倍率を調整してもよい。この方法の場合、濃縮器膜間差圧の上昇を抑えると同時に、高濃度の濃縮液を生成する時間を短くすることができるという効果を得ることができる。
【0447】
この場合、予め濃縮器膜間差圧を利用した再濃縮作業を行う場合、許容差圧を設定することが望ましい。つまり、濃縮器20に応じて、濃縮器20が許容できる差圧(許容差圧)を設定する。この許容差圧は、所定の幅を有していてもよいし、特定の値に設定してもよい。なお、以下では、許容差圧が所定の幅を有する場合を代表として説明する。
【0448】
なお、濃縮器膜間差圧を利用した再濃縮作業を行う場合、予め許容流量を設定することが望ましい。つまり、連結チューブ9内の濃縮液の許容できる流量(許容流量)を設定することが望ましい。この許容流量は、所定の幅を有していてもよいし、特定の値に設定してもよい。かかる許容流量は必ずしも設定しなくてもよい。しかし、連結チューブ9内の濃縮液の流量が少なくなりすぎると、再濃縮にかかる時間が長くなりすぎる。したがって、再濃縮の処理時間が長くなることを防止する上では、許容流量を設定しておくことが望ましい。また、再濃縮作業における許容流量は、濾過濃縮における許容流量と同じでもよいし、濾過濃縮における許容流量と異なっていてもよい。
【0449】
さらに、濃縮器膜間差圧を利用した再濃縮作業を行う場合、予め許容濃縮倍率を設定することが望ましい。つまり、連結チューブ9内の濃縮液の流量に対する濃縮液チューブ4を流れる濃縮液の流量の比率(許容濃縮倍率)を設定することが望ましい。この許容濃縮倍率は、所定の幅を有していてもよいし、特定の値に設定してもよい。かかる許容濃縮倍率は必ずしも設定しなくてもよい。しかし、連結チューブ9内の濃縮液の流量に対する濃縮液チューブ4を流れる濃縮液の流量の比率である濃縮倍率が低下しすぎると(つまり濃縮液の流量が大きくなりすぎると)、濃縮効率が悪くなるので、再濃縮処理に時間を要する。したがって、濃縮倍率が低下しすぎることを防止する上では、許容濃縮倍率を設定しておくことが望ましい。また、再濃縮作業における許容濃縮倍率は、濾過濃縮における許容流量と同じでもよいし、濾過濃縮における許容濃縮倍率と異なっていてもよい。
【0450】
再濃縮の開始時は、濃縮器20への濃縮液の送液量(つまり、連結チューブ9内の濃縮液の流量)を増加させるように濃縮液チューブ送液部4pおよび廃液チューブ送液部5pが作動される。このとき、濃縮液チューブ送液部4pおよび廃液チューブ送液部5pは、濃縮液が所定の濃縮倍率となるように作動される。例えば、濃縮倍率が10倍の濃縮液を生成する場合には、濃縮液チューブ4を流れる濃縮液の流量と廃液チューブ5を流れる廃液の流量が、1:9となるように調整される。また、濃縮液チューブ送液部4pおよび廃液チューブ送液部5pは、濃縮器膜間差圧が設定値となるようにその作動が調整される場合もある。なお、濃縮器20の濃縮液の送液量を増加している間は、上記いずれかの状態となるように、濃縮液チューブ送液部4pおよび廃液チューブ送液部5pはその作動が制御される。
【0451】
再濃縮が進行すると、徐々に濃縮器20の詰りが発生してくる。すると、濃縮器膜間差圧が上昇する。しかし、濃縮器膜間差圧が許容差圧内になるまでは、濃縮器20への濃縮液の送液量を増加させるように濃縮液チューブ送液部4pおよび廃液チューブ送液部5pは作動する。
【0452】
<第一方法>
ここで、濃縮器20への濃縮液の送液量の増加は、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧になるまで継続される。そして、濃縮器膜間差圧が濃縮器20許容差圧内になると、連結チューブ9内の濃縮液の流量を濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内となった状態の流量に維持するように、濃縮器膜間差圧に基づいて、濃縮液チューブ送液部4pおよび廃液チューブ送液部5pの作動が以下のように制御される。
【0453】
<ステップ1>
まず、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最小許容差圧よりも小さい場合には、濃縮液チューブ送液部4pは、濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が減少するように作動される。つまり、濃縮液の濃度を高くするように濃縮液チューブ送液部4pの作動が制御される。このとき、廃液チューブ送液部5pは廃液チューブ5内を流れる廃液の送液量が維持されるように作動状態を維持してもよい。
逆に、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最小許容差圧よりも小さい場合には、廃液チューブ5内を流れる廃液の送液量が増加するように廃液チューブ送液部5pの作動を制御して、濃縮器20への濃縮液の送液量を維持してもよい。
【0454】
<ステップ2>
そして、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内になるまで濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が減少される。そして、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内になると、濃縮液チューブ4内の濃縮液の流量を濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内となった状態の流量に維持するように濃縮液チューブ送液部4pが制御される。このとき、廃液チューブ送液部5pも、廃液チューブ5内を流れる廃液の送液量を維持するように作動を制御してもよい。
【0455】
<ステップ3>
やがて、濃縮器20の詰り等によって、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最大許容差圧よりも大きくなると、濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が増加するように濃縮液チューブ送液部4pが制御される。なお、濃縮液の送液量が増加すると濃縮倍率が低下するが、許容濃縮倍率を満たしつつ濃縮倍率が低下するように(濃縮液の濃度が低くなるように)濃縮液チューブ送液部4pの作動が制御される。このとき、廃液チューブ送液部5pは廃液チューブ5内を流れる廃液の送液量が維持されるように作動状態を維持してもよい。
逆に、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最大許容差圧よりも大きい場合には、廃液チューブ5内を流れる廃液の送液量が減少するように廃液チューブ送液部5pの作動が制御される。なお、廃液の送液量が減少すると濃縮倍率が低下するが、許容濃縮倍率を満たしつつ濃縮倍率が低下するように(濃縮液の濃度が低くなるように)廃液チューブ送液部5pの作動が制御される。
【0456】
濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が増加すると(または廃液チューブ5内を流れる廃液の送液量が減少すると)濃縮器膜間差圧は小さくなるので、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の最小許容差圧よりも低くなると、再び濃縮液チューブ送液部4pは、濃縮液バッグCBへの濃縮液の送液量が減少するように作動される(または廃液チューブ5内を流れる廃液の送液量が増加するように廃液チューブ送液部5pの作動が制御される)。
【0457】
つまり、濃縮器膜間差圧が濃縮器20の許容差圧内となっている間は、上記ステップ1~3が繰り返される。この方法を採用すれば、濃縮液バッグCBへの送液量が一定の場合では不可能な、濃縮器20の濾過膜の膜面積や詰りの状態に応じた、また、濃縮液の状態(濃縮器の詰りの原因物資の濃度、回収する有用物質の濃度、液体の粘度など)に応じた、最大の循環流量および最大の濃縮倍率を確保することが可能となる。つまり、循環効率と濃縮効率とを向上させることによって、高濃度の濃縮液を生成する時間を短くでき、再濃縮作業にかかる時間を短縮することができる。
【0458】
なお、再濃縮する際における濃縮器膜間差圧の許容差圧は、濾過濃縮作業における許容差圧と同じにしてもよいし、濾過濃縮作業における許容差圧と異なる値(範囲)にしてもよい。例えば、濾過濃縮作業における許容差圧が有る程度の範囲を有する場合には、その範囲よりも再濃縮における許容差圧の範囲を広くしてもよい。この場合には、濾過器10が詰まりやすい性状の原液を処理する場合、濾過濃縮作業で濾過器10に圧力をかけないようにゆっくりと処理を行うが、その代わりに高濃度の濃縮液を生成することができ、再濃縮作業の時間を短くできるという点で望ましい。また、濾過濃縮作業における許容差圧の範囲よりも再濃縮における許容差圧の範囲を狭くした場合には、濃縮器20が詰まりやすい性状の原液を処理する場合、濾過濃縮作業では濃縮器20に圧力をかけずに短時間で処理を行い、その代わりに再濃縮作業にて高濃度の濃縮液を生成できるという点で望ましい。さらに、濾過濃縮作業における許容差圧の範囲と再濃縮における許容差圧の範囲にズレがあってもよい。
また、再濃縮する際における許容濃縮倍率も、濾過濃縮作業における許容濃縮倍率と同じにしてもよいし、濾過濃縮作業における許容濃縮倍率と異なる値(範囲)にしてもよい。例えば、濾過濃縮作業における許容濃縮倍率が有る程度の範囲を有する場合には、その範囲よりも再濃縮における許容濃縮倍率の範囲を広くしてもよい。この場合には、濾過濃縮作業で時間をかけて濃縮する代わりに、再濃縮作業の時間を短くできるという点で望ましい。また、濾過濃縮作業における許容濃縮倍率の範囲よりも再濃縮における許容濃縮倍率の範囲を狭くした場合には、再濃縮作業で時間をかけて濃縮する代わりに、濾過濃縮作業を早く終わらせることができるという点で望ましい。さらに、濾過濃縮作業における許容濃縮倍率の範囲と再濃縮における許容濃縮倍率の範囲にズレがあってもよい。
【0459】
<濾過器10内の液体回収方法の例>
上述した再濃縮作業を実施する前には、濾過器10内の濾過液を濃縮器20に送液して、濾過液を濃縮液として回収する。この場合には濃縮器20の濃縮器膜間差圧に基づいて濃縮器20に送液する際の流量を調整することが望ましい。かかる方法を採用すれば、万が一、濃縮器20が詰った場合でも、濃縮器膜間差圧の上昇を抑えられ、処理が停止することを防ぐことができるので、濾過器10内の濾過液を効果的に回収することができる。
【0460】
例えば、濃縮器20の濃縮器膜間差圧に基づいて濃縮器20に送液する際の流量を調整する場合、以下のように流量を調整することができる。まず、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内にある場合には、濾過器10から濃縮器20への送液量を維持するように、濃縮液チューブ送液部4pの作動および/または廃液チューブ送液部5pの作動の作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が設定差圧の範囲内から大きく逸脱する等の問題が生じることを防止できる。
一方、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が最大設定差圧よりも大きい場合には、濾過器10から濃縮器20への送液量が減少するように、濃縮液チューブ送液部4pの作動および/または廃液チューブ送液部5pの作動の作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が最大設定差圧よりも上昇し続け、処理が継続できなくなる等の問題が生じることを防止できる。
逆に、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が最小設定差圧よりも小さい場合には、濾過器10から濃縮器20への送液量が増加するように、濃縮液チューブ送液部4pの作動および/または廃液チューブ送液部5pの作動の作動を制御する。すると、濃縮器膜間差圧が最小設定差圧よりも減少し続け、濃縮液が薄まる等の問題が生じることを防止できる。
【0461】
なお、濾過器10の濾過液を回収する際における濃縮器膜間差圧の設定差圧は、濾過濃縮作業における許容差圧と同じにしてもよいし、設定差圧を許容差圧と異なる値(範囲)にしてもよい。例えば、許容差圧が有る程度の範囲を有する場合には、許容差圧の範囲よりも設定差圧の範囲を広くしてもよい。この場合には、濃縮液が薄まった状態であっても、可能な限り最後まで回収ができるという点で望ましい。また、許容差圧の範囲よりも設定差圧の範囲を狭くした場合には、時間がかかったとしても濃縮液を薄めずに、可能な限り最後まで回収ができるという点で望ましい。さらに、許容差圧の範囲と設定差圧の範囲にズレがあってもよい。
【0462】
<濃縮器20の回収作業>
濾過器10内の原液や濾過液を回収した後、濃縮器20内の濃縮液を回収する場合には、単に濃縮器20に洗浄液、あるいは気体といった流体(以下単に流体という)を流して濃縮液などの回収を実施してもよい。しかし、上述した場合と同様に、濃縮器膜間差圧を測定しながら、濃縮液20に供給される流体の流量等を調整してもよい。すると、濃縮器膜間差圧が大きくなり処理が継続できない等の問題が生じることを防止できる。そして、濃縮器20の濃縮器膜間差圧が最大設定差圧よりも大きくなると、濾過器10から濃縮器20への送液(気体を流すことも含む)を停止するようにすれば、濃縮器膜間差圧が上昇し続ける等の問題が生じることを防止できる。
【0463】
なお、濃縮器20の濃縮液を回収する際における濃縮器膜間差圧の設定差圧(第二設定差圧)は、濾過濃縮作業における許容差圧または濾過器10の濾過液を回収する際における設定差圧(第一設定差圧)と同じにしてもよいし、これらと異なる値にしてもよい。例えば、許容差圧や第一設定差圧が有る程度の範囲を有する場合には、許容差圧や第一設定差圧の範囲よりも第二設定差圧の範囲を広くしてもよい。この場合には、濃縮液が薄まった状態であっても、可能な限り最後まで回収ができるという点で望ましい。また、許容差圧や第一設定差圧の範囲よりも第二設定差圧の範囲を狭くした場合には、時間がかかったとしても濃縮液を薄めずに、可能な限り最後まで回収ができるという点で望ましい。さらに、許容差圧や第一設定差圧の範囲よりも第二設定差圧の範囲にズレがあってもよい。
【0464】
<濾過液供給チューブ3内の液体の回収作業>
なお、上述した濃縮器20内の濃縮液の回収を実施したのち、濃縮器膜間差圧が設定差圧に到達した、あるいは、規定の液量分を回収した等の場合には、濾過器10から濃縮器20への送液(気体を流すことも含む)を停止したのちに、濾過液供給チューブ3に対して空気等の気体を供給してもよい。すると、濃縮器20や濃縮液流路4内の濃縮液、濾過液供給チューブ3よりも下流側の流路内の液体の回収漏れを防止することができる。なお、濃縮器膜間差圧が設定差圧に到達していなければ、必ずしも濾過器10から濃縮器20への送液は停止しなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0465】
本発明の原液処理装置は、細胞などを含有する胸腹水や手術時や瀉血時の血液等を濾過濃縮して濃縮液を得る装置や、血漿交換の廃液血漿などの血漿を浄化して再利用する装置として適している。
【符号の説明】
【0466】
1 原液処理装置
2 給液チューブ
2c 流量調整手段
2p 給液チューブ送液部
3 濾過液供給チューブ
3c 流量調整手段
3p 濾過液供給チューブ送液部
4 濃縮液チューブ
4p 濃縮液チューブ送液部
5 廃液チューブ
5c 流量調整手段
6 洗浄液供給チューブ
6c 流量調整手段
6p 洗浄液供給チューブ送液部
7 洗浄液回収チューブ
7c 流量調整手段
7p 洗浄液回収チューブ送液部
9 連結チューブ
9c 流量調整手段
9f 流量調整手段
9p 連結チューブ送液部
10 濾過器
10B 濾過器
11 本体部
11a 原液供給ポート
11b 洗浄液供給ポート
11c 濾過液排出ポート
12 胴部
12h 内部空間
15 中空糸膜束
16 中空糸膜
16h 貫通流路
16w UB
17a 保持部材
17b 濾過膜
17h 空間
17f 空間
20 濃縮器
20a 濾過液供給口
20b 濃縮液排出口
20c 廃液排出口
100 本体部
103 吊り下げ部
106 制御部
110 ローラーポンプ
120 ローラーポンプ
150 チューブホルダー
155 保持部
152 連結部
153 係合部材
160 チューブ位置決め部材
161 保持部材
165 連結部材
UB 原液バッグ
CB 濃縮液バッグ
DB 廃液バッグ
SB 洗浄液バッグ
FB 洗浄液回収バッグ
GB 濃縮器洗浄液回収バッグ
P1 圧力計
P2 圧力計