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特許7411925端子付き密閉型電池の製造方法および端子付き密閉型電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】端子付き密閉型電池の製造方法および端子付き密閉型電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/559 20210101AFI20240104BHJP
   H01M 50/548 20210101ALI20240104BHJP
   H01M 50/567 20210101ALI20240104BHJP
   H01M 50/566 20210101ALI20240104BHJP
   H01M 50/152 20210101ALI20240104BHJP
   H01M 50/107 20210101ALI20240104BHJP
   H01M 50/179 20210101ALI20240104BHJP
   H01M 50/188 20210101ALI20240104BHJP
【FI】
H01M50/559
H01M50/548 201
H01M50/567
H01M50/566
H01M50/152
H01M50/107
H01M50/179
H01M50/188
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019180364
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021057234
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 正雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 忠義
(72)【発明者】
【氏名】大和 賢治
【審査官】森 透
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/090706(WO,A1)
【文献】特開2015-197974(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0221827(US,A1)
【文献】特開2009-087693(JP,A)
【文献】特開2019-121468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 50/10-50/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端部側に中空の筒状部を有する軸部と、前記軸部の前記第1端部とは反対側の第2端部に連設された前記軸部よりも径が大きい係止部と、を有するリベットを準備する第1工程と、
前記リベットが装着される貫通孔を有し、かつ前記リベットとの絶縁を確保するガスケットを備えた封口板を準備する第2工程と、
前記封口板の前記貫通孔に前記軸部を挿入し、前記リベットを前記軸部の軸方向に圧縮して変形させることにより、前記筒状部の中空の一部に由来するくぼみ部を有するリング状の拡径変形部を形成する第3工程と、
前記くぼみ部を覆うように前記拡径変形部に端子部材を配置し、前記端子部材と前記拡径変形部とを、前記くぼみ部の周囲の接合面において溶接法により接合する第4工程と、を含み、
前記軸部の直径D1mmと、前記接合面に開口する前記くぼみ部の開口径D2mmと、前記接合面における前記拡径変形部の前記端子部材との溶接箇所から前記軸部の中心までの距離D3mmとは、
前記くぼみ部の体積Vが0.31mm よりも大きい場合、D2<D3<D1の関係を満たし、
前記くぼみ部の体積Vが0.31mm 以下である場合、D2<D3≦(5/6)×D1の関係を満たす、端子付き密閉型電池の製造方法。
【請求項2】
前記リベットの前記軸部の軸心を含む断面において、前記くぼみ部は、先細り形状の底部を有する、請求項1に記載の端子付き密閉型電池の製造方法。
【請求項3】
前記第4工程では、前記リベットを前記軸部の軸方向からみて、前記接合面の、前記軸部の外周よりも内側、かつ、前記くぼみ部の開口よりも外側の領域において、複数個所をスポット溶接し、
前記軸部の直径D1mmと、前記くぼみ部の開口径D2mmとが、関係式:
0.3≦D2/D1<D3/D1
を満たす、請求項1または2に記載の端子付き密閉型電池の製造方法。
【請求項4】
前記端子部材は、密閉型電池を電子機器と電気的に接続するためのリード端子または密閉型電池の外部端子である、請求項1~3のいずれか1項に記載の端子付き密閉型電池の製造方法。
【請求項5】
発電要素と、
前記発電要素を収容するケースと、
前記ケースの開口を封口するとともに貫通孔を有する封口板と、
前記貫通孔に挿入された状態で前記封口板にガスケットを介して装着されたリベット端子と、
前記リベット端子に接続された端子部材と、を具備し、
前記リベット端子は、軸部と、前記軸部の第1端部に連設された拡径変形部と、前記軸部の前記第1端部とは反対側の第2端部に連設された前記軸部よりも径が大きい係止部と、を有し、
前記拡径変形部は、中央にくぼみ部を有するリング状であり、
前記端子部材は、前記くぼみ部を覆うように前記拡径変形部に配置され、前記端子部材と前記拡径変形部とが、前記くぼみ部の周囲の接合面において接合され
前記軸部の直径D1mmと、前記接合面に開口する前記くぼみ部の開口径D2mmと、前記接合面における前記拡径変形部の前記端子部材との溶接箇所から前記軸部の中心までの距離D3mmとは、
前記くぼみ部の体積Vが0.31mm よりも大きい場合、D2<D3<D1の関係を満たし、
前記くぼみ部の体積Vが0.31mm 以下である場合、D2<D3≦(5/6)×D1の関係を満たす、端子付き密閉型電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き密閉型電池の製造方法および端子付き密閉型電池に関する。
【背景技術】
【0002】
民生用のアルカリ乾電池や産業用のリチウム一次電池等の密閉型電池では、機器との電気的接触を図るため、端子部材(外部端子またはリード端子)が溶接法により取り付けられている場合が多い。例えば、アルカリ乾電池の内部集電体には、外部端子(外装キャップ)が取り付けられている。また、リチウム一次電池等には、機器の基板とハンダ付けにより接続するためのリード端子が取り付けられている。特許文献1では、端子付き電池の廃棄処理時の作業性の向上を目的として、リード端子に易破断部を設けることが提案されている。
【0003】
一方、今後の社会動向から、電池について、期待寿命の長期化(例えば10年から20年へ)および高容量化が要望されている。上記の要望に対しては、封口部においてリベット・ワッシャ構造を採用し、ガスケットの占有体積を小さくした電池(例えば特許文献2)が有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-115292号公報
【文献】特開2016-105374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電池の高容量化に対しては、電池の高エネルギー密度化または大サイズ化(高さアップや大径化)が検討され、この場合、電池の信頼性確保の観点から、端子の溶接強度が重要となる。溶接強度を上げるために、溶接条件を厳しくすると、溶接時の熱の影響によりガスケットが変形し、電池の封止性が低下してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、第1端部側に中空の筒状部を有する軸部と、前記軸部の前記第1端部とは反対側の第2端部に連設された前記軸部よりも径が大きい係止部と、を有するリベットを準備する第1工程と、前記リベットが装着される貫通孔を有し、かつ前記リベットとの絶縁を確保するガスケットを備えた封口板を準備する第2工程と、前記封口板の前記貫通孔に前記軸部を挿入し、前記リベットを前記軸部の軸方向に圧縮して変形させることにより、前記筒状部の中空の一部に由来するくぼみ部を有するリング状の拡径変形部を形成する第3工程と、前記くぼみ部を覆うように前記拡径変形部に端子部材を配置し、前記端子部材と前記拡径変形部とを、前記くぼみ部の周囲の接合面において溶接法により接合する第4工程と、を含む端子付き密閉型電池の製造方法に関する。
【0007】
本発明の別の一側面は、発電要素と、前記発電要素を収容するケースと、前記ケースの開口を封口するとともに貫通孔を有する封口板と、前記貫通孔に挿入された状態で前記封口板にガスケットを介して装着されたリベット端子と、前記リベット端子に接続された端子部材と、を具備し、前記リベット端子は、軸部と、前記軸部の第1端部に連設された拡径変形部と、前記軸部の前記第1端部とは反対側の第2端部に連設された前記軸部よりも径が大きい係止部と、を有し、前記拡径変形部は、中央にくぼみ部を有するリング状であり、前記端子部材は、前記くぼみ部を覆うように前記拡径変形部に配置され、前記端子部材と前記拡径変形部とが、前記くぼみ部の周囲の接合面において接合されている、端子付き密閉型電池に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、端子部材と密閉型電池との溶接において、必要な溶接強度を確保しつつ、溶接時の熱によるガスケットの劣化に伴う電池の封止性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の端子付き密閉型電池の製造方法の第4工程における、リベットの拡径変形部と、端子部材との溶接時の状態を模式的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る端子付き密閉型電池の製造方法の第3工程において、封口板の貫通孔にリベットの軸部が挿入された状態の一例を示す要部断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る端子付き密閉型電池の製造方法の第4工程において、リベットの拡径変形部と、端子部材とが接合された状態の一例を示す要部断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る端子付き密閉型電池の一部を概略的な縦断面で示した正面図である。
図5】従来の端子付き密閉型電池の製造方法における、リベットの拡径変形部と、端子部材との溶接時の状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[端子付き密閉型電池の製造方法]
本発明の実施形態に係る端子付き密閉型電池の製造方法は、リベットを準備する第1工程と、リベットが装着される貫通孔を有し、かつリベットとの絶縁を確保するガスケットを備える封口板を準備する第2工程と、を含む。リベットは、第1端部側に中空の筒状部を有する軸部と、軸部の第1端部とは反対側の第2端部に連設された軸部よりも径が大きい係止部と、を有する。
【0011】
また、上記の製造方法は、リベットを封口板に加締める第3工程と、加締め後のリベットと端子部材とを溶接する第4工程と、を含む。第3工程では、封口板の貫通孔に軸部を挿入し、リベットを軸部の軸方向に圧縮して変形させることにより、筒状部の中空の一部に由来するくぼみ部を有するリング状の拡径変形部を形成する。第3工程により、拡径変形部が形成されたリベット(以下、リベット端子とも称する。)を装着した封口板が得られる。拡径変形部は、筒状部の一部が押し潰されることで形成される。拡径変形部におけるくぼみ部の周囲の表面は、密閉型電池の端子面となるとともに、端子部材との接合に利用される。第4工程では、くぼみ部を覆うように拡径変形部に端子部材を配置し、端子部材と拡径変形部とを、くぼみ部の周囲の接合面において溶接法により接合する。
【0012】
以下、従来の端子付き密閉型電池の製造方法における、くぼみ部を有さない拡径変形部と、端子部材との溶接工程を、図5を参照しながら説明する。図5は、くぼみ部を有さない拡径変形部と、端子部材との溶接時の状態を模式的に示す図である。図5中の矢印は、熱の移動を示す。
【0013】
図5に示すように、金属製のリベット端子21は、封口板7にガスケット9を介して装着されている。リベット端子21は、軸部12と、軸部12の第1端部に連設された拡径変形部23と、軸部12の第1端部とは反対側の第2端部に連設された軸部12よりも径が大きい係止部4と、を有する。拡径変形部23は、中央にくぼみ部を有さない円盤状である。
【0014】
溶接工程では、端子部材17と拡径変形部23とを接合面28において溶接する。具体的には、図5に示すように、拡径変形部23の上に端子部材17を配置し、溶接箇所29に熱を供給する。このとき、拡径変形部23はくぼみ部を有さないため、溶接箇所29に供給された熱は、リベット端子21の中心部および周縁部に広く拡散し易い。このため、溶接箇所29への熱供給が効率的に行われにくく、必要な溶接強度を得るために溶接箇所29に供給される熱量が増大する。溶接箇所29に供給される熱量の増大によりリベット端子21の周縁部(ガスケット9側)に拡散する熱量が増大し、ガスケット9は溶接時の熱の影響を受け易くなり、ガスケット9が劣化する。
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る端子付き密閉型電池の製造方法の第4工程を、図1を参照しながら説明する。図1は、第3工程で形成されたくぼみ部を有する拡径変形部と、端子部材との溶接時の状態を模式的に示す図である。図1中の矢印は、熱の移動を示す。
【0016】
図1に示すように、金属製のリベット端子11は、封口板7にガスケット9を介して装着されている。リベット端子11は、中央にくぼみ部15を有するリング状の拡径変形部13を備える。上記以外、リベット端子11は、リベット端子21と同様の構造を有する。
【0017】
第4工程では、端子部材17と拡径変形部13とを、くぼみ15の周囲の接合面18において溶接する。具体的には、図1に示すように、端子部材17を、くぼみ部15を覆うように拡径変形部13に配置し、溶接箇所19に熱を供給する。このとき、第3工程で形成されるくぼみ部15により、溶接箇所19に供給される熱のリベット端子11の中心部への拡散(放熱)が抑制される。これにより、溶接箇所19への熱供給が効率的に行われ、必要な溶接強度を得るために溶接箇所19に供給する熱量を低減することができる。溶接箇所19に供給される熱量の低減によりリベット端子11の周縁部(ガスケット9側)に拡散する熱量が減少し、溶接時の熱によるガスケット9の劣化が抑制される。
【0018】
上記の製造方法は、更に、リベット端子を装着した封口板を、発電要素を収容したケースの開口に配置する封口工程を含んでもよい。第4工程は、通常、封口工程の後に行うが、端子部材が外部端子である場合、封口工程の前に行ってもよい。
【0019】
リベットの軸部の軸心を含む断面(以下、断面Sとも称する。)において、くぼみ部は、先細り形状の底部を有することが好ましい。この場合、リベットの機械的強度が確保され易く、第3工程のリベットの加締め加工に対する信頼性が向上する。上記の先細り形状としては、V字状、U字状等が挙げられる。くぼみ部の底部は、矩形状でもよい。
【0020】
第4工程では、リベットを軸部の軸方向からみて、接合面の、軸部の外周よりも内側、かつ、くぼみ部の開口よりも外側の領域(以下、領域Aとも称する。)において、複数個所をスポット溶接することが好ましい。複数個所を間隔空けて溶接してもよく、線状に連なるように溶接してもよい。第4工程では、接合面の領域Aにおいて、軸部の軸心を中心とする円周上に等間隔に複数の箇所をスポット溶接することがより好ましい。この場合、溶接時の熱によるガスケットの劣化が抑制され易く、端子部材と拡径変形部との接合に対する信頼性が更に向上する。
【0021】
軸部の直径D1(mm)に対する、くぼみ部の開口径D2(mm)の比:D2/D1は、好ましくは0.3以上、1未満であり、より好ましくは0.3以上、0.7以下である。D2/D1が1未満である場合、接合面においてリング状の領域Aが形成される。D2/D1が0.3以上である場合、溶接強度を確保しつつ、くぼみ部が十分に確保され、溶接時の熱によるガスケットの劣化が抑制され易い。D2/D1が0.7以下である場合、領域Aの溶接領域が十分に確保される。
【0022】
くぼみ部の開口の形状は、円形でもよく、三角形、四角形、五角形等の多角形でもよく、星型等の他の特殊な形状でもよい。くぼみ部の開口の形状が円形の場合、その中心は、軸部の軸心と一致していてもよく、当該軸心から少しずれていてもよい。なお、くぼみ部の開口の形状が円形でない場合、くぼみ部の開口径とは、くぼみ部の開口において軸部の軸心から最も遠い点を選択し、当該点を通るように軸部の軸心を中心とする円を描いた時の円の直径を指す。
【0023】
溶接法としては、例えば、レーザ溶接法または抵抗溶接法が用いられる。
端子部材は、例えば、密閉型電池と電子機器とを電気的に接続するためのリード端子または外部端子(外装キャップ)である。密閉型電池に溶接された外装キャップは、例えば、電子機器の端子に圧接される。密閉型電池に溶接された短冊状のリード端子は、例えば、ハンダ付けにより機器の回路基板に接続される。また、密閉型電池に溶接されたリード端子にリード線を接続し、リード線の先端に配されたコネクタによりリード線を機器の回路基板に接続してもよい。
【0024】
リベット端子の材質としては、例えば、ステンレス鋼、銅、真鍮、アルミニウムが挙げられる。ステンレス鋼としては、例えば、SUS304、SUS305、SUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼や、SUS430、SUS444等のフェライト系ステンレス鋼が挙げられる。外装キャップとしては、例えば、ニッケルめっき鋼板が用いられる。短冊状のリード端子には、例えば、先端にハンダを備えるステンレス鋼板が用いられる。
【0025】
以下、第3工程において、封口板の貫通孔にリベットの軸部が挿入された状態の一例を、図2を参照しながら説明する。図2は、封口板の貫通孔にリベットの軸部が挿入された状態の断面Sを示し、リベットの封口板への加締め加工前の状態を示す。
【0026】
リベット1は、第1端部側に中空の筒状部3を有する軸部2と、軸部2の第1端部とは反対側の第2端部に連設された軸部2よりも径が大きい係止部4と、を有する。
【0027】
筒状部3は、第1端部側の肉厚がほぼ一定の領域P1と、第2端部側の底部に向かって肉厚が大きくなる領域P2と、を有する。筒状部3の中空部5は、領域P2により形成されたV字状の底部6を有する。筒状部3の領域P1の肉厚は、例えば、0.2mm以上、1.0mm以下である。
【0028】
封口板7は、中央に貫通孔8を有し、貫通孔8に軸部2が挿入されている。係止部4によりリベット1は封口板7に係止されている。封口板7の厚さは、例えば、0.1mm以上、0.5mm以下である。封口板7とリベット1(軸部2および係止部4)との間に絶縁性のガスケット9が介在している。ガスケット9の一部9aは、軸部2を覆うように配置されている。
【0029】
以下、第4工程において、第3工程により形成されたリベットの拡径変形部と、端子部材とが接合された状態の一例を、図3を参照しながら説明する。図3は、拡径変形部と端子部材とが接合された状態の断面Sを示す。
【0030】
封口板7の貫通孔8に軸部2を挿入した状態でリベット1を軸部2の軸方向に圧縮して変形させることにより、リベット端子11が形成される。すなわち、リベット端子11は、図2の軸部2の一部に由来する軸部12と、軸部12の第1端部に連設されたリング状の拡径変形部13と、軸部12の第1端部とは反対側の第2端部に連設された軸部よりも径が大きい係止部4と、を有する。拡径変形部13は、図2の筒状部3の一部が押し潰されることにより形成され、その中央に、図2の筒状部3の中空部5の一部(底部6)に由来するくぼみ部15を有する。ガスケット9の一部9aは、拡径変形部13の形成に伴い封口板7側に折れ曲がり、拡径変形部13と封口板7とを絶縁している。
【0031】
くぼみ部15を覆うように拡径変形部13の上に端子部材17が配置されている。端子部材17と拡径変形部13とが、くぼみ部15の周囲の接合面18において、溶接法により接合されている。
【0032】
軸部12の直径D1(mm)に対する、くぼみ部15の開口径D2(mm)の比:D2/D1は、好ましくは0.3以上、1未満であり、より好ましくは0.3以上、0.7以下である。軸部12の直径D1が、例えば、4mm以上、6mm以下であるとき、くぼみ部15の開口径D2は、例えば、1.5mm以上、4.0mm以下である。
【0033】
断面Sにおいて、くぼみ部15の底部の先細り形状は、V字状である。リベットの加締め加工に対する信頼性の確保の観点から、V字状により形成される角度θは、120°以上であってもよく、120°以上、170°以下であってもよい。くぼみ部15の底部の先細り形状は、V字状に限定されず、U字状等の形状でもよい。
【0034】
くぼみ部15の深さTは、軸部12の軸方向における封口板7と接合面18との距離Lよりも小さいことが望ましい。これにより、くぼみ部の底部のV字状により形成される角度θが120°以上である場合でも、D2を適度に調整し易く、領域Aの溶接領域を確保し易い。くぼみ部15の深さTは、例えば0.05mm以上、1.25mm以下であり、好ましくは0.07mm以上、1.15mm以下である。なお、くぼみ部15の深さTとは、軸部12の軸方向におけるくぼみ部15の最大深さを意味する。また、くぼみ部15の体積は、例えば、0.04mm以上、4.80mm以下が好ましい。
【0035】
接合面18において、軸部12の軸心を中心とする直径D3(mm)の円周上に等間隔に4つの溶接箇所19を有する。溶接箇所19は4つ以外の複数でもよい。図3に示すように、D2<D3<D1を満たすことが好ましい。溶接時の熱によるガスケットの劣化抑制の観点から、D3に対するD2の比:D2/D3は、好ましくは0.65以上、1未満であり、より好ましくは0.75以上、1未満である。
【0036】
拡径変形部13は、ガスケット9と密着するリング状の領域を有する。溶接時の熱によるガスケットの劣化抑制の観点から、封口板7の貫通孔8の直径D4(mm)に対する、拡径変形部13とガスケット9とが密着するリング状領域の外径D5(mm)の比:D5/D4は、好ましくは1.5以下であり、より好ましくは1以下である。
【0037】
軸部12の直径D1(mm)に対する、拡径変形部13の外径D6(mm)の比:D6/D1は、1.25以上、2以下であることが好ましい。D6/D1が1.25以上である場合、拡径変形部とガスケットとの接触面積を適度に調整し易く、電池の封止性が向上し易い。D6/D1が2以下である場合、拡径変形部の厚みを適度に調整し易く、電池の封止性が向上し易い。また、D6/D1が上記範囲内である場合、溶接箇所からリベット端子の周縁部への熱の拡散が適度に行われ易く、ガスケットへの熱影響が低減され易い。
【0038】
[端子付き密閉型電池]
本発明の実施形態に係る端子付き密閉型電池は、発電要素と、発電要素を収容するケースと、ケースの開口を封口するとともに貫通孔を有する封口板と、貫通孔に挿入された状態で封口板にガスケットを介して装着されたリベット端子と、リベット端子に接続された端子部材と、を具備する。
【0039】
リベット端子は、軸部と、軸部の第1端部に連設された拡径変形部と、軸部の第1端部とは反対側の第2端部に連設された軸部よりも径が大きい係止部と、を有する。拡径変形部は、中央にくぼみ部を有するリング状であり、端子部材は、くぼみ部を覆うように拡径変形部に配置され、端子部材と拡径変形部とが、くぼみ部の周囲の接合面において接合されている。
【0040】
密閉型電池としては、リチウム一次電池、アルカリ乾電池、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池等が挙げられる。発電要素は、例えば、正極と負極と電解液とを備え、正極および負極の一方は、リベット端子と電気的に接続され、正極および負極の他方は、ケースと電気的に接続されていてもよい。発電要素は、シート状の正極とシート状の負極とをセパレータを介して積層した積層型電極体でもよく、シート状の正極とシート状の負極とをセパレータを介して巻回した巻回型電極体でもよい。また、発電要素は、筒状の正極と、正極の中空部内にセパレータを介して配されるゲル状負極と、を備えるインサイドアウト型の構造を有してもよい。ゲル状負極の代わりにロール状負極を配置してもよい。また、リベット端子のくぼみ部を有する拡径変形部と、端子部材との溶接は、電気二重層キャパシタやコンデンサ等の電気化学素子にも適用可能である。
【0041】
以下、端子付き密閉型電池の一例として、端子付きリチウム一次電池を、図4を参照しながら説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る端子付き密閉型電池の一部を概略的な縦断面で示した正面図である。
【0042】
リチウム一次電池30は、有底円筒形の電池缶100と、電池缶100に収容された巻回式電極体200と、電池缶100の開口を塞ぐ封口ユニットと、を具備する。封口ユニットは、封口板310と、リベット端子320と、封口板310とリベット端子320との間に配された絶縁性のガスケット330と、を具備する。リベット端子320にリード端子340が接続されている。また、リベット端子320とは逆の極性側(電池缶100の底部)に別のリード端子350が接続されている。
【0043】
封口板310の周縁は、溶接により電池缶100の開口近傍に固定されている。封口板310の中央には貫通孔が形成されており、リベット端子320は、貫通孔に挿入された状態で封口板310にガスケット330を介して装着されている。
【0044】
リベット端子320は、軸部321と、軸部321の第1端部に連設された拡径変形部322と、軸部321の第1端部とは反対側の第2端部に連設された軸部321よりも径が大きい係止部323と、を有する。拡径変形部322は、中央にくぼみ部324を有するリング状である。リード端子340は、くぼみ部324を覆うように拡径変形部322の上に配置され、リード端子340と拡径変形部322とが、くぼみ部324の周囲の接合面325において溶接により接合されている。
【0045】
電池缶100および封口板310は、それぞれ、例えば、鉄、鉄合金(SUS等)、アルミニウム、アルミニウム合金(マンガン、銅等の他の金属を微量含有するアルミニウム合金等)等で構成され、必要に応じて、メッキ処理されていてもよい。
【0046】
電極体200は、シート状の正極201とシート状の負極202とをシート状のセパレータ203を介してスパイラル状に巻回することにより構成されている。正極201および負極202の一方(図示例では、負極202)には第1集電ワイヤ210の一端が接続されている。第1集電ワイヤ210の他端は、リベット端子320の係止部323に溶接等により接続されている。正極201および負極202の他方(図示例では、正極201)には、第2集電ワイヤ220の一端が接続されている。第2集電ワイヤ220の他端は、電池缶100の内面に溶接等により接続されている。
【0047】
巻回式電極体200は、非水電解液(図示せず)とともに、電池缶100の内部に収納されている。内部短絡防止のために、電極体200の上部および下部には、それぞれ上部絶縁板230Aおよび下部絶縁板230Bが配置されている。
【0048】
図示例では、円筒形のリチウム一次電池について説明したが、この場合に限らず、本実施形態は、他の密閉型電池にも適用できる。また、電池缶の開口は、封口板の周縁部にかしめることにより封口されていてもよい。
【0049】
以下、リチウム一次電池の構成要素について更に説明する。
(負極)
負極は、金属リチウム、または金属リチウムとリチウム合金を含む。リチウム合金としては、例えば、Li-Al、Li-Sn、Li-Ni-Si、Li-Pb等が挙げられる。リチウム合金のうち、電位とリチウムとの合金化組成の観点から、Li-Al合金が好ましい。リチウム合金に含まれるリチウム以外の金属元素の含有量は、リチウムと合金化する金属元素に対して、0.05質量%以上、1.0質量%以下とすることが好ましい。なお、金属リチウムは0.05質量%未満のリチウム以外の元素を含んでもよい。
【0050】
シート状の負極としては、例えば、金属リチウム箔、または、金属リチウムとリチウム合金とを含む複合物のシートが利用される。複合物においてリチウム合金は金属リチウム中に粒子状で点在させてもよい。シート状の負極は、例えば、金属リチウム、または、金属リチウムとリチウム合金とを押出成形することにより形成できる。リチウム合金は、金属リチウム箔の表面にAl格子等を張り付けて金属リチウム箔の表層を合金化させて形成してもよい。
【0051】
(正極)
正極は、正極活物質を含む。正極活物質としては、一次電池および二次電池の正極に用いられる材料を任意に選択して用い得る。例えば、二酸化マンガン、フッ化黒鉛、硫化鉄、マンガン酸リチウム等を用い得る。正極は、例えば、正極集電体と、正極集電体に担持され、正極活物質を含む正極合剤層と、を具備する。
【0052】
正極集電体の材質としては、ステンレス鋼、Alおよび/またはTiを含む金属材料等を用いることができる。ステンレス鋼としては、SUS444、SUS316等の高耐食性のものが好ましい。Alおよび/またはTiを含む金属材料は、合金であってもよい。正極集電体としては、例えば、シートや多孔体が使用される。正極集電体として、金属箔等を用いてもよい。また、多孔質の正極集電体として、金属メッシュ(またはネット)、エキスパンドメタル、パンチングメタル等を用いてもよい。
【0053】
正極合剤層を構成する正極合剤は、正極活物質に加え、任意成分として結着剤および/または導電剤等を含んでもよい。結着剤としては、例えば、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ゴム状重合体等が挙げられる。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。結着剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
導電剤としては、炭素材料が好ましい。炭素材料としては、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック等)、カーボンナノチューブ、および黒鉛等が挙げられる。導電剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。導電剤は、正極集電体と正極合剤層との間に存在させてもよい。
【0055】
正極の製造方法は特に制限されない。正極は、例えば、正極合剤を正極集電体に付着させることにより得ることができる。例えば、正極合剤を、正極集電体に塗布してもよく、多孔質の正極集電体に充填してもよい。また、正極合剤をシート状に成形し、正極集電体に物理的に接触するように積層してもよい。正極を作製する際には、正極合剤は、必要に応じて、正極合剤の構成成分に加え、分散媒(例えば、水および/または有機媒体)を用いて、ペースト状や粘土状の形態で用いてもよい。正極を作製する適当な段階で、必要に応じて、乾燥を行ってもよく、正極の厚み方向への圧縮(圧延等)を行ってもよい。
【0056】
(セパレータ)
セパレータには、イオン透過性および絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートとしては、例えば、微多孔フィルム、織布、不織布が挙げられる。セパレータは、単層構造でも多層構造であってもよい。多層構造のセパレータとしては、例えば、材質および/または構造が異なる複数の層を含むセパレータが挙げられる。
【0057】
セパレータの材質としては、特に限定されないが、高分子材料であってもよい。高分子材料としては、オレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、およびエチレンとプロピレンとの共重合体等)、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂(ポリイミド、ポリアミドイミド等)、セルロース、ポリフェニレンサルファイト(PPS)、ポリテトラフロオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。セパレータは、必要に応じて、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、無機フィラー等が挙げられる。
【0058】
セパレータの厚みは、例えば、10μm以上、200μm以下の範囲から選択できる。セパレータを微多孔フィルムで構成する場合、セパレータの厚みは、例えば、10μm以上、80μm以下であり、20μm以上、70μm以下が好ましい。
【0059】
(非水電解液)
非水電解液としては、リチウムイオン伝導性を有するものが使用される。このような非水電解液は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質としてのリチウム塩とを含む。非水電解液は、リチウム塩を非水溶媒に溶解させることにより調製される。
【0060】
リチウム塩としては、リチウム一次電池の非水電解液に利用されるものでよいが、特に制限なく使用できる。リチウム塩としては、ホウフッ化リチウム、六フッ化リン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、過塩素酸リチウム等が挙げられる。リチウム塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
非水溶媒としては、例えば、エステル(例えば、炭酸エステル、γ-ブチロラクトン等のカルボン酸エステル等)、エーテル(1,2-ジメトキシエタン等)が挙げられるが、これらに限定されない。炭酸エステルとしては、環状カーボネート(プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等)、鎖状カーボネート(ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等)等が挙げられる。非水溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
非水電解液中のリチウム塩の濃度は、例えば、0.1mol/L以上、3.5mol/L以下である。
【0063】
非水電解液は、必要に応じて、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ビニルエチルカーボネート等が挙げられる。添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
[実施例]
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0065】
《実施例1》
(第1工程)
第1端部側に中空の筒状部を有する軸部と、軸部の第1端部とは反対側の第2端部に連設された軸部よりも径が大きい係止部と、を有する、ステンレス鋼製のリベットを準備した。
【0066】
リベットは、図2に示すリベット1と同様の構造を有していた。軸部の直径D1は、6mmとした。係止部の直径は、10mmとした。軸部の軸方向の長さは、4.0mmとした。筒状部の軸方向の長さは、2.5mmとした。筒状部は、第1端部側の肉厚が一定の領域P1と、第2端部側の底部に向かって肉厚が大きくなる領域P2と、を備えた。領域P1の肉厚は、0.5mmとした。領域P1の軸方向の長さは、2.0mmとした。領域P2の軸方向の長さは、0.5mmとした。領域P2により筒状部の中空部においてV字状の底部が形成され、V字形成角度θは150°とした。
【0067】
(第2工程)
リベットが装着される貫通孔を有し、かつ、リベットとの絶縁を確保するポリプロピレン製のガスケットを備えたステンレス製の封口板を準備した(第2工程)。封口板は、図2に示す封口板7と同様の構造を有していた。封口板の厚さは、0.4mmとした。封口板の貫通孔の直径D4は、7.0mmとした。
【0068】
(第3工程)
図2に示すように、封口板の貫通孔に軸部を挿入した。リベットを軸部の軸方向に圧縮して変形させることにより、筒状部の中空の一部に由来するくぼみ部を有するリング状の拡径変形部を形成した(第3工程)。このようにして、図3に示すような、リベット端子を装着した封口板を得た。
【0069】
軸部の軸方向における、拡径変形部の端子部材との接合面と、封口板との距離Lは、0.83mmとした。拡径変形部とガスケットとのリング状の密着領域の外径D5は、6.6mmとした。拡径変化部の外径D6は、9.0mmとした。D6/D1は、1.5であった。
【0070】
第3工程では、中空部の底部に由来するV字状の底部を有するくぼみ部が形成された。くぼみ部の開口径D2は、1.0mmとした。くぼみ部の深さTは、0.13mmとした。くぼみ部の底部のV字形成角度θは、150°とした。くぼみ部の体積Vは、0.03mmとした。
【0071】
(第4工程)
図3に示すように、くぼみ部を覆うように拡径変形部に端子部材を配置し、端子部材と拡径変形部とを、くぼみの周囲の接合面においてレーザ溶接法により接合した。
【0072】
端子部材には、ステンレス鋼製の短冊状のリード端子(長さ20mm、幅5mm、厚さ0.15mm)を用いた。第4工程では、接合面において、軸部の軸心を中心とする直径D3が4.5mmの円周上に等間隔に4箇所をスポット溶接した。第4工程では、後述の評価1により求められる溶接強度が300Nとなるように、接合面に照射するレーザの出力を調整し、レーザの照射時間は一定とした。レーザ照射は、1箇所ずつ順次行った。4箇所のレーザ照射は、同条件で行った。
【0073】
《実施例2~4》
第1工程で準備するリベットの筒状部(中空部)の形状および寸法を調整して、第3工程で形成されるくぼみ部の、開口径D2、深さT、底部のV字形成角度θおよび体積Vを、表1に示す値とした。開口径D2の調節は、筒状部の領域P1、領域P2の軸方向の長さおよびV字形成角度θは一定にして、軸部2の軸方向の長さを変えることにより行った。上記以外、実施例1と同様の方法により、リベット端子を装着した封口板を作製し、リベット端子の拡径変形部と端子部材とを接合した。
【0074】
《比較例1》
第1工程で、円柱状の軸部と、軸部の一端部に連設された軸部よりも径が大きい係止部と、を有するリベットを準備した。第3工程で、くぼみ部を有さない円盤状の拡径変形部を形成した。上記以外、実施例1と同様の方法により、リベット端子を装着した封口板を作製した。
【0075】
くぼみ部を有さない拡径変形部に端子部材を配置した以外、実施例1と同様の方法により、拡径変形部と端子部材とを接合した。
【0076】
実施例1~4および比較例1の製造方法(第4工程)について、以下の評価を行った。
[評価1:溶接強度]
リベット端子を装着した封口板を固定し、端子部材の拡張変形部との接合面以外の部分を当該接合面と垂直な方向に折り曲げた。溶接部の4箇所のうち折り曲げ部側の2箇所が破断するまで折り曲げ部を引っ張り、このときに要した力の最大値を溶接強度として求めた。
【0077】
[評価2:熱量]
接合面の1箇所に照射するレーザの出力および照射時間に基づいて、4箇所の溶接に要した熱量(4箇所の熱量を合計した値)を求めた。
【0078】
[評価3:ガスケット温度]
熱電対を用いて、溶接時のガスケットの温度の最高値を測定した。
【0079】
実施例1~4および比較例1の製造方法の評価結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
実施例1~4では、比較例1と比べて、小さい熱量で拡径変形部と端子部材とを強固に接合することができ、溶接時のガスケットの温度上昇が抑制された。中でも、D2/D1が0.3以上の実施例2~4では、より小さな熱量で拡径変形部と端子部材とを強固に接合することができ、溶接時のガスケットの温度上昇が更に抑制された。
【0082】
《実施例5~9》
リベットの軸部の直径D1は、4.4mmとした。封口板の貫通孔の直径D4は、5.4mmとした。リベットの筒状部(中空部)の形状および寸法を調整して、第3工程で形成されるくぼみ部の、開口径D2、深さT、底部のV字形成角度θおよび体積Vを、表2に示す値とした。第4工程では、接合面において、軸部の軸心を中心とする直径D3が表2に示す値の円周上に等間隔に4箇所をスポット溶接した。拡径変形部とガスケットとのリング状の密着領域の外径D5は、5.0mmとした。軸部の軸方向における、拡径変形部の端子部材との接合面と、封口板との距離Lは、0.83mm(実施例5、6、8)または1.3mm(実施例7、9)とした。拡径変化部の外径D6は、6.6mmとした。D6/D1は、1.5であった。
【0083】
上記以外、実施例1と同様の方法により、リベット端子を装着した封口板を作製し、リベット端子の拡径変形部と端子部材とを接合した。
【0084】
《比較例2》
第1工程で、円柱状の軸部と、軸部の一端部に連設された軸部よりも径が大きい係止部と、を有するリベットを準備した。第3工程で、くぼみ部を有さない円盤状の拡径変形部を形成した。上記以外、実施例5と同様の方法により、リベット端子を装着した封口板を作製した。
【0085】
くぼみ部を有さない拡径変形部に端子部材を配置した以外、実施例5と同様の方法により、拡径変形部と端子部材とを接合した。
【0086】
実施例5~9および比較例2の製造方法(第4工程)について、上記の評価1~3を行った。実施例5~9および比較例2の製造方法の評価結果を表2に示す。
【0087】
【表2】
【0088】
実施例5~9では、比較例2と比べて、小さい熱量で拡径変形部と端子部材とを強固に接合することができ、溶接時のガスケットの温度上昇が抑制された。中でも、実施例5~7では、溶接時のガスケットの温度上昇が更に抑制された。実施例5~7では、開口径D2は、1.5mm以上、4.0mm以下であり、くぼみ部の底部のV字形成角度θは、120°以上、170°以下であり、くぼみ部の体積Vは、0.04mm以上、4.82mm以下であった。
【0089】
《実施例10~12、参考例13》
第4工程で、接合面において、軸部の軸心を中心とする直径D3が表3に示す値の円周上に等間隔に4箇所をスポット溶接した以外、実施例3と同様の方法により、リベット端子を装着した封口板を作製し、リベット端子の拡径変形部と端子部材とを接合した。
【0090】
実施例10~12、参考例13の製造方法(第4工程)について、上記の評価1~3を行った。実施例10~12、参考例13の製造方法の評価結果を表3に示す。表3では、実施例3の製造方法の評価結果も示す。
【0091】
【表3】
【0092】
実施例10~12では、実施例3の場合と同様に、小さい熱量で拡径変形部と端子部材とを強固に接合することができ、溶接時のガスケットの温度上昇が抑制された。中でも、D2/D3が0.65以上の実施例3、10~11では、より小さな熱量で拡径変形部と端子部材とを強固に接合することができ、溶接時のガスケットの温度上昇が更に抑制された。
【0093】
《実施例14~18》
リベットの軸部の直径D1は、5mmとした。封口板の貫通孔の直径D4は、6mmとした。第3工程で形成されるくぼみ部の開口径D2は、2mmとした。くぼみ部の深さTは、0.27mmとした。くぼみ部の底部のV字形成角度θは、150°とした。くぼみ部の体積Vは、0.14mmとした。第4工程では、接合面において、軸部の軸心を中心とする直径D3が3mmの円周上に等間隔に4箇所をスポット溶接した。
【0094】
拡径変形部とガスケットとのリング状の密着領域の外径D5は、表4に示す値とした。上記の外径D5の調節は、第3工程において、封口板の貫通孔に軸部を挿入し、リベットを軸部の軸方向に圧縮して変形させる際の圧縮力を変えることにより行った。実施例14~18において、軸部の軸方向における、拡径変形部の端子部材との接合面と、封口板との距離Lは、0.75mm~0.9mmの範囲であった。拡径変化部の外径D6は、8.2mm~9.5mmの範囲であった。D6/D1は、1.64~1.9の範囲であった。
【0095】
上記以外、実施例1と同様の方法により、リベット端子を装着した封口板を作製し、リベット端子の拡径変形部と端子部材とを接合した。
【0096】
実施例14~18の製造方法(第4工程)について、上記の評価1~3を行った。実施例14~18の製造方法の評価結果を表4に示す。
【0097】
【表4】
【0098】
実施例14~18では、小さい熱量で拡径変形部と端子部材とを強固に接合することができ、溶接時のガスケットの温度上昇が抑制された。中でも、D5/D4が1以下の実施例14~15では、より小さな熱量で拡径変形部と端子部材とを強固に接合することができ、溶接時のガスケットの温度上昇が更に抑制された。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明に係る端子付き密閉型電池は、産業用および民生用の各種機器の電源として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0100】
1:リベット、2:軸部、3:筒状部、4:係止部、5:中空部、6:底部、7:封口板、8:貫通孔、9:ガスケット、9a:ガスケットの一部、11,21:リベット端子、12:軸部、13,23:拡径変形部、15:くぼみ部、17:端子部材、18,28:接合面、19,29:溶接箇所、30:リチウム一次電池、100:電池缶、200:電極体、201:正極、202:負極、203:セパレータ、210:第1集電ワイヤ、220:第2集電ワイヤ、230A:上部絶縁板、230B:下部絶縁板、310:封口板、320:リベット端子、321:軸部、322:拡径変形部、323:係止部、324:くぼみ部、325:接合面、330:ガスケット、340,350:リード端子
図1
図2
図3
図4
図5