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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】判定システム、判定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 21/00 20060101AFI20240104BHJP
   G01R 31/55 20200101ALI20240104BHJP
   H02B 1/42 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
G01R21/00 Q
G01R31/55
H02B1/42
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019206581
(22)【出願日】2019-11-14
(65)【公開番号】P2021081219
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-07-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大垣 史迅
(72)【発明者】
【氏名】村上 憲一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 晋治
(72)【発明者】
【氏名】岩見 英司
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-286769(JP,A)
【文献】特開2011-21986(JP,A)
【文献】特開2011-160562(JP,A)
【文献】特開2002-286785(JP,A)
【文献】特開2006-266243(JP,A)
【文献】特開昭62-144076(JP,A)
【文献】特開2010-66055(JP,A)
【文献】特開2016-9384(JP,A)
【文献】米国特許第7660776(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 21/00
G01R 31/50
H02B 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線間の電圧を計測する電圧計測部及び前記電線に流れる電流を計測する電流計測部から、消費電力を算出するための電圧電流情報を取得する取得部と、
前記取得部で取得された前記電圧電流情報に基づいて前記電流計測部の設置状況を判定する判定部と、
を備え、
前記判定部は、
前記電圧電流情報から得られる情報であって前記電流の値に関する電流値情報に基づいて、前記電流の値が所定の値以上であることを条件として前記設置状況を判定し、
前記設置状況が異常である場合、前記設置状況を、前記電圧電流情報に基づいて、前記消費電力を算出する際の設定を変更することで前記電流計測部の誤設置への対処が可能な第1状況と、前記対処が不可能な第2状況とに区別して判定する、
判定システム。
【請求項2】
前記判定部にて前記設置状況が前記第1状況であると判定された場合、前記設定を変更する変更部を更に備える、
請求項1に記載の判定システム。
【請求項3】
前記判定部にて前記設置状況が異常であると判定された場合に、前記設定を変更可能な変更部を更に備え、
前記判定部は、前記変更部によって前記設定が変更された後、前記設置状況を再判定する、
請求項1に記載の判定システム。
【請求項4】
前記判定部にて前記設置状況が異常であると再判定された場合、前記変更部は前記設定を更に変更する、
請求項3に記載の判定システム。
【請求項5】
前記判定部による判定結果を通知する通知部を更に備える、
請求項1から4のいずれか1項に記載の判定システム。
【請求項6】
前記通知部は、少なくとも前記判定部にて前記設置状況が前記第2状況であると判定された場合に、判定結果を通知する、
請求項5に記載の判定システム。
【請求項7】
前記設定の変更は、前記電流計測部の取付向きに関する変更を含む、
請求項1から6のいずれか1項に記載の判定システム。
【請求項8】
前記設定の変更は、前記電線が3本以上ある場合に、前記電圧と前記電流との組合せに関する変更を含む、
請求項1から7のいずれか1項に記載の判定システム。
【請求項9】
前記判定部は、前記電圧電流情報から得られる情報であって前記電圧及び前記電流の位相に関する位相情報と、前記電圧電流情報から得られる情報であって交流電力の力率に関する力率情報と、のうちの少なくとも1つに基づいて、前記設置状況を判定する、
請求項1から8のいずれか1項に記載の判定システム。
【請求項10】
前記位相情報は、前記電圧と前記電流との間の位相差に関する位相差情報を含み、
前記判定部は、前記位相差情報と、前記電圧電流情報から得られる情報であって前記電流の値に関する電流値情報とに基づいて、前記設置状況を判定する、
請求項9に記載の判定システム。
【請求項11】
前記位相情報は、前記電圧に対する前記電流の進み又は遅れに関する進み遅れ情報を含み、
前記判定部は、前記進み遅れ情報と、前記力率情報と、前記電圧電流情報から得られる情報であって前記電流の値に関する電流値情報とに基づいて、前記設置状況を判定する、
請求項9に記載の判定システム。
【請求項12】
電線間の電圧を計測する電圧計測部及び前記電線に流れる電流を計測する電流計測部から、消費電力を算出するための電圧電流情報を取得する取得ステップと、
前記電圧電流情報に基づいて、前記電流計測部の設置状況を、前記消費電力を算出する際の設定を変更することで前記電流計測部の誤設置への対処が可能な第1状況と、前記対処が不可能な第2状況とに区別して判定する判定ステップと、
を有し、
前記判定ステップでは、前記電圧電流情報から得られる情報であって前記電流の値に関する電流値情報に基づいて、前記電流の値が所定の値以上であることを条件として前記設置状況を判定する、
判定方法。
【請求項13】
請求項12に記載の判定方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に判定システム、判定方法及びプログラムに関し、より詳細には、電流計測部の設置状況を判定する判定システム、判定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主幹回路、及び電力線を介して主幹回路に電気的に接続された分岐回路における消費電力などを計測する電力計測システムが提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の電力計測システムは、電流発生部と、第1検出部と、第2検出部と、判定システムとを備えている。
【0003】
電流発生部は、判定用信号を出力することによって電力線に判定用電流を発生させる。第1検出部は、第1電流センサを有する。第1電流センサは、貫通孔を有する第1コア及び第1コアに装着された第1コイルを含み、第1コアの貫通孔を貫通する電力線に流れる電流によって第1コイルに誘導電流が発生する。第2検出部は、第2電流センサ(電流計測部)を有する。第2電流センサは、貫通孔を有する第2コア及び第2コアに装着された第2コイルを含み、第2コアの貫通孔を貫通する電力線に流れる電流によって第2コイルに誘導電流が発生する。判定システムは、判定用電流によって第1コイルを含む第1回路に発生する第1電流と、判定用電流によって第2コイルを含む第2回路に発生する第2電流とを比較することにより、第2回路の状態を判定する。
【0004】
この構成により、特許文献1に記載の電力計測システムは、第1電流センサの設置状況が正常であることを前提として、第2電流センサの設置状況を判定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-31672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の電力計測システムでは、第2電流センサ(電流計測部)が誤設置されている場合に、ユーザ側でどのように対応すればいいのか分からないという問題があった。
【0007】
本開示は上記事由に鑑みてなされており、電流計測部の設置状況をより詳細に判定することができる判定システム、判定方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る判定システムは、取得部と、判定部と、を備える。前記取得部は、電線間の電圧を計測する電圧計測部及び前記電線に流れる電流を計測する電流計測部から、消費電力を算出するための電圧電流情報を取得する。前記判定部は、前記取得部で取得された前記電圧電流情報に基づいて前記電流計測部の設置状況を判定する。前記判定部は、前記設置状況が異常である場合、前記設置状況を、前記電圧電流情報に基づいて、第1状況と第2状況とに区別して判定する。前記第1状況は、前記消費電力を算出する際の設定を変更することで前記電流計測部の誤設置への対処が可能な設置状況である。前記第2状況は、前記対処が不可能な設置状況である。
【0009】
本開示の一態様に係る判定方法は、取得ステップと、判定ステップと、を有する。前記取得ステップでは、電線間の電圧を計測する電圧計測部及び前記電線に流れる電流を計測する電流計測部から、消費電力を算出するための電圧電流情報を取得する。前記判定ステップでは、前記電圧電流情報に基づいて、前記電流計測部の設置状況を、前記消費電力を算出する際の設定を変更することで前記電流計測部の誤設置への対処が可能な第1状況と、前記対処が不可能な第2状況とに区別して判定する。
【0010】
本開示の一態様に係るプログラムは、前記判定方法を、1以上のプロセッサに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、電流計測部の設置状況をより詳細に判定することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態における判定システムの全体構成を示す概略図である。
図2図2は、本実施形態における判定部で行われる判定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、取付向き確認処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、組合せ確認処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、通知部に表示される通知画面の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態において互いに共通する要素には同一符号を付しており、共通する要素についての重複する説明は省略する。
【0014】
(1)概要
まず、本実施形態に係る判定システム、判定方法及びプログラムの概要について、図1を参照して説明する。本実施形態の判定システム1は、需要家施設における種々の消費電力などを算出し、算出結果を表示するシステムである。本実施形態では、三相四線式の配電方式において判定システム1が適用される場合について説明する。なお、ここでいう「需要家施設」は、電力の需要家の施設を意味している。「需要家施設」は、電力会社などの電気事業者から電力の供給を受ける施設だけでなく、太陽光発電設備などの自家発電設備から電力の供給を受ける施設、電気事業者及び自家発電設備の両方から電力の供給を受ける施設も含む。本実施形態では、戸建住宅を需要家施設の一例として説明する。
【0015】
図1に示すように、三相四線式の交流電源2からの4本の電線3が分電盤4に接続されている。4本の電線3は、R相の電線3Rと、S相の電線3Sと、T相の電線3Tと、N相の電線(中性線)3Nとを含む1組の電力線である。以下の説明において、特定の電線3について説明する場合は、電線3R,3S,3T,3Nを区別して記載する。また、電線3R,3S,3T,3Nを区別せずに説明する場合は、単に電線3と記載する。
【0016】
分電盤4は、この電線3から交流電力を複数(図1の例では3つ)の分岐回路6に分配する。
【0017】
本実施形態の判定システム1は、分電盤4内の電線3間の電圧及び電線3に流れる電流に関する情報である電圧電流情報21を取得して、各分岐回路6での消費電力を演算により求める。ここで、「消費電力」とは、瞬時電力を表す消費電力であってもよいし、あるいは一定時間における電力の消費量(使用量)を表す消費電力量であってもよい。また、判定システム1によって算出された消費電力が判定システム1の通知部14に表示されることで、ユーザは各分岐回路6での消費電力を視認することができる。
【0018】
判定システム1は、各分岐回路6の消費電力を算出するための電圧電流情報21を、電圧計測部7及び複数の電流計測部(電流センサ)8を介して取得している。ここで、電流計測部8には例えば、CT(Current Transformer)センサ、ホール素子、GMR(Giant Magnetic Resistances)素子などの磁気抵抗素子、シャント抵抗などが用いられる。本実施形態では、電流計測部8の各々がCTセンサである場合を例示する。
【0019】
ここで、電流計測部8が分電盤4内に施工業者などによって設置される際に、誤った取付位置に設置されたり、誤った取付向きで設置されたりすることがある。このように電流計測部8が誤って設置されると、判定システム1によって算出される消費電力の値が誤った値となる。
【0020】
本実施形態の判定システム1は、電圧電流情報21に基づいて各電流計測部8の設置状況を詳細に判定する。具体的には、判定システム1は、消費電力を算出する際の設定を変更することで電流計測部8の誤設置への対処が可能な第1状況と、電流計測部8の誤設置へ対処が不可能な第2状況とを区別して判定する。
【0021】
(2)詳細
以下、本実施形態に係る判定システム1の詳細について説明する。
【0022】
(2.1)交流電源
交流電源2は、例えば、電力事業者が電線3を介して電力を需要者に供給するための商用電源であり、本実施形態では三相四線式の配電方式に対応する商用電源である。
【0023】
(2.2)分電盤
分電盤4は、三相四線式の分電盤であり、主幹ブレーカ5と、複数の分岐回路6と、電圧計測部7と、複数の電流計測部8とを備えている。
【0024】
主幹ブレーカ5は、4つの一次側端子51と、4つの二次側端子52とを備えている。主幹ブレーカ5の一次側端子51には、交流電源2からの三相四線式の各電線3が電気的に接続される。また、主幹ブレーカ5の二次側端子52には、複数の分岐回路6が電気的に接続される。
【0025】
複数の分岐回路6は、第1分岐回路6aと、第2分岐回路6bと、第3分岐回路6cとを含む。第1分岐回路6aは、電線3R及び電線3Nに電気的に接続される。第2分岐回路6bは、電線3S及び電線3Nに電気的に接続される。第3分岐回路6cは、電線3T及び電線3Nに電気的に接続される。以下の説明において、特定の分岐回路6について説明する場合は、第1分岐回路6aと第2分岐回路6bと第3分岐回路6cとを区別して記載する。また、第1分岐回路6aと第2分岐回路6bと第3分岐回路6cとを区別せずに説明する場合は、単に分岐回路6と記載する。なお、分岐回路6は、分岐ブレーカ、並びに分岐ブレーカの二次側に接続される配線路、配線器具(アウトレット、壁スイッチなど)、及び各種の機器(エアコン、テレビ、照明器具、調理家電など)を含んでいる。また、図1とは異なり、第1分岐回路6a、第2分岐回路6b及び第3分岐回路6cは、複数であっても構わない。
【0026】
電圧計測部7は、電線3R及び電線3N間の電圧V1と、電線3S及び電線3N間の電圧V2と、電線3T及び電線3N間の電圧V3とを計測している。ここで、電圧V1と電圧V2と電圧V3とは、それぞれの位相角が120度異なる三相交流電圧である。電圧計測部7は、計測した電圧V1~V3に関する電圧情報を後述する取得部11に出力する。電圧情報は、電圧V1、電圧V2及び電圧V3の電圧値、位相に関する情報と、計測時刻に関する情報とを含んでいる。
【0027】
電流計測部8は、上述したようにCTセンサなどの電流センサで構成される。電流計測部8は、電線3Rに流れる電流I1を計測する電流計測部8aと、電線3Sに流れる電流I2を計測する電流計測部8bと、電線3Tに流れる電流I3を計測する電流計測部8cとを含む。以下の説明において、特定の電流計測部8について説明する場合は、電流計測部8a,8b,8cを区別して記載する。また、電流計測部8a,8b,8cを区別せずに説明する場合は、単に電流計測部8と記載する。電流計測部8は、計測した電流I1~I3に関する電流情報を後述する取得部11に出力する。電流情報は、電流I1、電流I2及び電流I3の電流値、位相に関する情報と計測時刻に関する情報とを含んでいる。なお、図1とは異なり、例えば、電線3R及び電線3Nに電気的に接続される回路として第1分岐回路6aが並列的に複数接続される場合、それぞれの第1分岐回路6aに流れる分岐電流を計測できる箇所に電流計測部8を設置することが好ましい。電線3S及び電線3Nに電気的に接続される回路として第2分岐回路6bが並列的に複数接続される場合、電線3T及び電線3Nに電気的に接続される回路として第3分岐回路6cが並列的に複数接続される場合も同様である。
【0028】
(2.3)判定システム
判定システム1は、取得部11と、記憶部12と、演算部13と、通知部14と、判定部15と、変更部16とを備えている。取得部11、記憶部12、演算部13、通知部14、判定部15、及び変更部16は、実体のある構成を示しているわけではなく、判定システム1によって実現される機能を示している。なお、本実施形態の判定システム1は、分電盤4とは異なる位置に設けられる場合を例示している。しかし、本実施形態とは異なり、判定システム1は分電盤4内に収納されても構わない。
【0029】
取得部11は、電線3間の電圧V1~V3を計測する電圧計測部7及び電線3に流れる電流I1~I3を計測する電流計測部8から、各分岐回路6の消費電力を算出するための電圧電流情報21を取得する処理部である。取得部11は、電圧計測部7からは電圧情報を取得し、電流計測部8からは電流情報を取得することで、電圧電流情報21を取得する。取得部11は、取得した電圧電流情報21を記憶部12に保存する。電圧電流情報21は、判定システム1が各分岐回路6の消費電力を算出する際や、電流計測部8の設置状況を判定する際に使用される情報である。
【0030】
記憶部12は、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)やROM(Read Only Memory)などによって構成される不揮発性の記憶装置である。この記憶部12は、プログラムやデータなどを記憶する。例えば記憶部12には、図1に示すように電圧電流情報21、設定情報22、及び算出値情報23などが記憶されている。ここで設定情報22は、後述する演算部13が、電圧電流情報21に基づいて各分岐回路6での消費電力を算出する際の演算設定に関する情報である。例えば設定情報22は、各分岐回路6での消費電力を算出するための電圧V1~V3と電流I1~I3との組合せを決定する情報である。算出値情報23は、後述する演算部13によって算出される各分岐回路6での消費電力に関する情報である。
【0031】
演算部13は、記憶部12に記憶される電圧電流情報21及び設定情報22に基づいて、各分岐回路6での消費電力算出する処理部である。なお、設定情報22は、後述する変更部16によって内容が変更されることにより、各分岐回路6での消費電力を算出する際の電圧V1~V3と電流I1~I3との組合せが変わることがある。設定情報22がデフォルトの状態である場合、演算部13は、電圧V1と電流I1とを乗算することで第1分岐回路6aでの消費電力を算出する。また、演算部13は、電圧V2と電流I2とを乗算することで第2分岐回路6bでの消費電力を算出し、電圧V3と電流I3とを乗算することで第3分岐回路6cでの消費電力を算出する。
【0032】
また、演算部13は、演算結果である算出値(消費電力)に関する情報を記憶部12に記憶する。記憶部12には、各分岐回路6の算出値と、識別符号(回路番号)と、時刻情報(時刻に加えて、年月日も含む)と、がそれぞれ対応付けられた算出値情報23が記憶される。
【0033】
判定部15は、電圧電流情報21に基づいて、電流計測部8の設置状況を判定する処理部である。まず判定部15は、電流計測部8の設置状況が異常であるか否か、すなわち電流計測部8が誤って設置されているか否かを判定する。電流計測部8の設置状況が異常であるか否かの判定方法の詳細については、「(3)判定処理」の欄で説明する。
【0034】
判定部15は、電流計測部8の設置状況が異常であると判定した場合、電流計測部8の設置状況を、第1状況と第2状況とに区別して判定する。第1状況とは、設定情報22を変更することで電流計測部8の誤設置への対処が可能な電流計測部8の設置状況である。また、第2状況とは、設定情報22を変更することで電流計測部8の誤設置への対処が不可能な電流計測部8の設置状況である。例えば電流計測部8の取付向きが誤っている誤設置の場合、その電流計測部8に対応する電流の計測値に-1を掛ける演算を行うことで、演算部13は正しい消費電力を算出することができる。すなわち、設定情報22に対して、電流計測部8の取付向きに関する変更を行うことで、電流計測部8の誤設置に対処することが可能である。そのため、電流計測部8の取付向きに関する誤設置の場合、判定部15は、電流計測部8の設置状況が第1状況であると判定する。
【0035】
また、三相四線式のように電線3が3本以上ある場合、電圧計測部7で計測する電圧V1~V3及び電流計測部8で計測する電流I1~I3が複数となる。このような場合、電流I1を計測するための電流計測部8aと、電流I2を計測するための電流計測部8bとの取付位置が逆になっているような、取付位置の組合せに関する誤設置が発生し得る。このような誤設置の場合、電流計測部8aが計測した計測値と、電流計測部8bが計測した計測値とを入れ替えて演算を行うことで、演算部13は正しい消費電力を算出することができる。すなわち、設定情報22に対して、電圧計測部7によって計測される電圧V1~V3と電流計測部8によって計測される電流I1~I3との組合せに関する変更を行うことで、電流計測部8の誤設置に対処することが可能である。そのため、複数の電流計測部8の取付位置の組合せに関する誤設置の場合、判定部15は、電流計測部8の設置状況が第1状況であると判定する。
【0036】
一方で、施工業者が電流I1を計測するための電流計測部8aを設置し忘れてしまったような誤設置の場合、演算部13は、第1分岐回路6aの消費電力を算出することができない。そのため、このような誤設置の場合、判定部15は、電流計測部8の設置状況が第2状況であると判定する。第1状況と第2状況とを区別する判定方法の詳細については、「(3)判定処理」の欄で説明する。
【0037】
判定部15は、設置状況の判定が完了すると、判定結果に関する情報を通知部14に表示させる。また、判定部15は、電流計測部8の設置状況が第1状況であると判定した場合、設定情報22を変更するための変更指示を、変更部16に出力する。
【0038】
通知部14は、例えばカラー液晶ディスプレイなどの表示装置で構成される。例えば通知部14は、記憶部12に記憶される算出値情報23に基づいて消費電力を示す画面を表示する。また、通知部14は、判定結果に関する情報を表示することで、判定部15による判定結果をユーザに対して通知する。判定結果に関する情報は、例えば、電流計測部8の設置状況に異常がなかったことを示す情報、電流計測部8の誤設置に対処するために設定情報22を変更したことを示す情報、電流計測部8の再設置が必要であることを示す情報などである。ユーザや施工業者は、このような通知を確認することで、電流計測部8の設置状況について知ることができる。なお、本実施形態の通知部14は、少なくとも判定部15にて電流計測部8の設置状況が第2状況であると判定された場合には、判定結果を通知する。したがって、少なくとも判定部15にて電流計測部8の設置状況が第2状況であると判定された場合には、ユーザや施工業者は、電流計測部8の設置状況が第2状況であることを知ることができる。
【0039】
なお、本実施形態では、通知部14は、カラー液晶ディスプレイなどの表示装置で構成される場合を例示している。しかし、通知部14は、カラー液晶ディスプレイなどの表示装置で構成される場合に限らず、発光ダイオードなどを用いた表示ランプによる通知、あるいはスピーカを用いた音(音声を含む)による通知を行うように構成されてもよい。
【0040】
変更部16は、判定部15にて電流計測部8の設置状況が異常であると判定された場合に、記憶部12に記憶される設定情報22を変更可能な処理部である。変更部16が設定情報22を変更することで、演算部13が各分岐回路6での消費電力を算出する際の設定が変更される。例えば変更部16は、設定情報22に対して、電流計測部8の取付向きに関する変更を行う。また、変更部16は、三相四線式のように電線3が3本以上ある場合、電圧計測部7によって計測される電圧V1~V3と電流計測部8によって計測される電流I1~I3との組合せに関する変更を行う。
【0041】
上述した取得部11、演算部13、判定部15、及び変更部16の各々は、例えばマイクロコンピュータを主構成とする。マイクロコンピュータは、マイクロコンピュータのメモリに記録されたプログラムをCPU(Central Processing Unit)で実行することにより、種々の機能を実現する。プログラムは、あらかじめマイクロコンピュータのメモリに記録されていてもよい。また、プログラムは、メモリカードのような記録媒体に記録されて提供されたり、電気通信回線を通して提供されたりしてもよい。なお、取得部11、演算部13、判定部15、及び変更部16は、それぞれ別のマイクロコンピュータで構成されていてもよいし、1つに集約されたマイクロコンピュータで構成されていてもよい。
【0042】
(3)判定処理
次に、本実施形態の判定システム1における判定部15の判定処理について図2~5を参照しつつ説明する。この判定処理は、例えば、電流計測部8が設置された直後のタイミングや、日付が変わるタイミングなどの所定のタイミングで行われる。本実施形態では、設定情報22が変更部16によって一度も変更されていない状態であるデフォルトの状態である場合の判定処理について説明する。
【0043】
判定部15は、判定処理を開始すると、図2に示すように、記憶部12に記憶される電圧電流情報21及び設定情報22を参照し、電流計測部8の設置状況が異常であるか否かの判定を行う(ステップS10)。判定部15は、各分岐回路6での消費電力を算出するために必要な、電圧V1と電流I1のペアと、電圧V2と電流I2のペアと、電圧V3と電流I3のペアのそれぞれのペアが所定の条件を満たしているか否かを判定する。所定の条件を満たす電圧と電流のペアがあった場合、判定部15は設置状況が異常であると判定する。ここでは、第1分岐回路6aでの消費電力を算出するために必要な電圧V1及び電流I1のペアが所定の条件を満たしているか否かを判定する点について説明するが、電圧V2及び電流I2のペアと、電圧V3及び電流I3のペアとに対しても同様の判定が行われる。
【0044】
判定部15は、位相情報と力率情報とのうちの少なくとも1つに基づいて、電流計測部8の設置状況が異常であるか否かの判定を行う。ここで、位相情報は、電圧電流情報21から得られる情報であって、電圧V1~V3及び電流I1~I3の位相に関する情報である。また、力率情報は、電圧電流情報21から得られる情報であって、電圧V1~V3及び電流I1~I3の力率に関する情報である。言い換えると、力率情報は、電圧電流情報21から得られる情報であって、交流電力の力率に関する情報である。本実施形態では、位相情報及び力率情報は、判定部15によって電圧電流情報21から得られる情報である。しかし、位相情報及び力率情報は、取得部11や演算部13などの判定部15以外の処理部によって電圧電流情報21から得られる情報であってもよい。
【0045】
まず、判定部15が、位相情報に基づいて電流計測部8の設置状況が異常であるか否かを判定する場合について説明する。電圧V1及び電流I1は同相の電圧電流であるため、電流計測部8aの設置状況が正常であれば、電圧V1の位相角と電流I1の位相角には所定の相関性がある。言い換えると、電圧V1の位相角と電流I1の位相角に所定の相関性がない場合、電流計測部8aの設置状況が異常であると言える。そこで判定部15は、位相情報に含まれる電圧V1と電流I1との間の位相差に関する位相差情報に基づいて、電圧V1と電流I1との位相差が所定の範囲内か否かを確認する。本実施形態では、電圧V1に対する電流I1の位相差が「-60度以上0度以下」の範囲外である場合、判定部15は、電圧V1及び電流I1の組合せが所定の条件を満たすと判定する。なお、本実施形態では、位相差情報は、判定部15によって電圧電流情報21から得られる情報である。しかし、位相差情報は、取得部11や演算部13などの判定部15以外の処理部によって電圧電流情報21から得られる情報であってもよい。
【0046】
また、判定部15は、位相情報に含まれる電圧V1~V3に対する電流I1~I3の進み又は遅れに関する進み遅れ情報に基づいて、電圧V1及び電流I1のペアが所定の条件を満たすか否かを確認してもよい。一般的に、戸建住宅などの住宅では電流I1の位相は、電圧V1の位相に対して遅れる。すなわち、電流I1の位相が電圧V1の位相に対して進んでいる場合、電流計測部8の設置状況が異常であると判定できる。したがって、電流I1の位相が電圧V1の位相に対して進んでいる場合、判定部15は電圧V1及び電流I1のペアが所定の条件を満たすと判定するようにしてもよい。なお、本実施形態では、進み遅れ情報は、判定部15によって電圧電流情報21から得られる情報である。しかし、進み遅れ情報は、取得部11や演算部13などの判定部15以外の処理部によって電圧電流情報21から得られる情報であってもよい。
【0047】
次に、判定部15が、力率情報に基づいて電流計測部8の設置状況が異常であるか否かを判定する場合について説明する。電圧V1及び電流I1は同相であるため、電流計測部8aの設置状況が正常であれば、電圧V1と電流I1との力率は所定の値以上となる。言い換えると、電圧V1と電流I1との力率が所定の値未満である場合、電流計測部8aの設置状況が異常であると言える。そこで判定部15は、力率情報に基づいて、電圧V1と電流I1との力率が所定の値未満であるか否かを確認する。本実施形態では、電圧V1と電流I1との力率が0.5未満である場合、判定部15は、電圧V1及び電流I1のペアが所定の条件を満たすと判定する。
【0048】
また、位相情報又は力率情報に基づいて電流計測部8の設置状況を判定する際、電流値情報を参照し、電流I1の値が所定の値以上であることを条件にして確認するようにすることが好ましい。電流I1の値が所定の値未満である場合、ノイズの影響により、判定部15が判定処理を正確に行えない恐れがあるからである。本実施形態では、電流I1の値が1[A]以上であることを条件に、電圧V1と電流I1のペアが所定の条件を満たすか否かを確認する。なお、電流値情報は、電圧電流情報21から得られる情報であって、電流計測部8によって計測される電流I1~I3の値に関する情報である。本実施形態では、電流値情報は、判定部15によって電圧電流情報21から得られる情報である。しかし、電流値情報は、取得部11や演算部13などの判定部15以外の処理部によって電圧電流情報21から得られる情報であってもよい。
【0049】
ここにおいて、位相角や電流値などの2値間の比較において、「以上」としているところは、2値が等しい場合、及び2値の一方が他方を超えている場合の両方を含む。ただし、ここでいう「以上」は、2値の一方が他方を超えている場合のみを含む「超える」と同義であってもよい。つまり、2値が等しい場合を含むか否かは条件などの設定次第で任意に変更できるので、「超える」か「以上」かに技術上の差異はない。同様に、「以下」においても「未満」と同義であってもよい。
【0050】
判定部15は、電圧V2及び電流I2のペアと、電圧V3及び電流I3のペアとにおいても同様の判定を行う。そして、3つの電圧電流のペアのうちどれか1つのペアでも所定の条件を満たす場合、判定部15は、電流計測部8の設置状況が異常であると判定する(ステップS11でYES)。その後、判定部15は処理をステップS12に進める。一方、3つの電圧電流のペアが所定の条件を満たさない場合、判定部15は、設置状況が正常である(異常なし)と判定する(ステップS11でNO)。その後、判定部15は、判定処理を終了する。
【0051】
ステップS12の処理において、判定部15は、電流計測部8の取付向き確認処理を行う。取付向き確認処理について図3を参照しつつ説明する。まず判定部15は、電圧電流情報21に基づいて、電圧V1~V3と電流I1~I3とによって構成される電圧電流の全てのペアのそれぞれが所定の条件を満たすかについて確認する(ステップS31)。ここで、「全てのペア」とは、本実施形態においては、電圧V1及び電流I1と、電圧V1及び電流I2と、電圧V1及び電流I3と、電圧V2及び電流I1と、電圧V2及び電流I2と、電圧V2及び電流I3と、電圧V3及び電流I1と、電圧V3及び電流I2と、電圧V3及び電流I3との9つのペアのことである。
【0052】
判定部15は、全てのペアのうちに、所定の条件を満たすペアがあるか否かを確認する。判定部15は、位相情報と力率情報とのうちの少なくとも1つに基づいて、全てのペアのうちに所定の条件を満たすペアがあるか否かを確認する。
【0053】
まず、判定部15が、位相情報に含まれる位相差情報に基づいて、全てのペアのうちに所定の条件を満たすペアがあるか否かを確認する場合について説明する。本実施形態では、電圧に対する電流の位相差が、「0度以上60度以内」である場合、判定部15は所定の条件を満たすと判定する。
【0054】
次に、判定部15が、力率情報及び進み遅れ情報に基づいて、全てのペアのうちに所定の条件を満たすペアがあるか否かを確認する場合について説明する。本実施形態では、電圧と電流との力率が0.5以上であり、電圧に対して電流が進んでいる場合に、所定の条件を満たすと判定される。
【0055】
また、電圧と電流のペアが所定の条件を満たすか否かを確認する際、電流値情報に基づいて電流の値が所定の値以上であることを条件にして確認するようにすることが好ましい。電流の値が所定の値未満である場合、ノイズの影響により、判定部15が判定処理を正確に行えない恐れがあるからである。本実施形態では、電流の値が1[A]以上であることを条件に、電圧と電流のペアが所定の条件を満たすか否かを確認する。
【0056】
全てのペアのうちに所定の条件を満たすペアがなかった場合(ステップS32でNO)、判定部15は、電流計測部8の取付向きは正しいと判断して取付向き確認処理(ステップS12)を終了する。一方、全てのペアのうちに所定の条件を満たすペアがあった場合(ステップS32でYES)、判定部15は、所定の条件を満たすペアの電流を計測している電流計測部8の取付向きが誤っていると判定する。例えば、電圧V1及び電流I3のペアと、電圧V2と電流I1のペアとが所定の条件を満たしていた場合、判定部15は、電流I3を計測している電流計測部8c、及び、電流I1を計測している電流計測部8aの取付向きが誤っていると判定する。
【0057】
判定部15は、取付向きが誤っていると判断した電流計測部8に関する設定情報22を変更するための変更指示を、変更部16に出力する(ステップS33)。その後、判定部15は取付向き確認処理(ステップS12)を終了する。変更部16によって、設定情報22は、取付向きが誤っていると判断された電流計測部8により計測される電流値の正負を反転させる内容に変更される。具体的には、設定情報22は電流値に-1を乗算するように変更される。設定情報22の内容が変更されることにより、電流計測部8の取付向きに関する誤設置に対処することできる。
【0058】
図2に戻り、判定部15は、変更部16によって設定情報22が変更されたか否かを確認する(ステップS13)。具体的には、判定部15は、変更部16によって電流計測部8の取付向きに関する設定情報22の変更が行われたか否かを確認する。変更部16によって設定情報22の変更が行われていない場合(ステップS13でNO)、処理はステップS16までスキップされる。一方、変更部16によって設定情報22の変更が行われている場合(ステップS13でYES)、判定部15は、電流計測部8の設置状況が異常であるか否かの判定を行う(ステップS14)。この処理はステップS10の処理と同じ処理である。すなわち、判定部15は、変更部16によって電流計測部8の取付向きに関する設定情報22の変更が行われた後、電流計測部8の設置状況を再判定する。変更部16によって設定情報22が変更された後に、判定部15が電流計測部8の設置状況を再判定することにより、設定情報22の変更によって電流計測部8の誤設置に対処できたか否かを判定することができる。なお、ステップS14の処理の内容はステップS10と同様であるため、説明を省略する。
【0059】
判定部15は、電流計測部8の設置状況が正常である(異常なし)と再判定すると(ステップS15でNO)、電流計測部8の設置状況が第1状況であると判定する(ステップS17)。そして、判定部15は判定処理を終了する。一方、判定部15は、電流計測部8の設置状況が異常であると再判定すると(ステップS15でYES)、電圧電流の組合せ確認処理を行う(ステップS16)。
【0060】
電圧電流の組合せ確認処理について、図4を参照しつつ説明する。判定部15は、第1~第3分岐回路6a~6cの消費電力を算出する際に組合せ得る全ての電圧電流の組合せの中で、所定の条件を満たす組合せが存在するか否かを確認する(ステップS41)。
【0061】
ここで、「全ての電圧電流の組合せ」には、以下に示す6つの組合せが含まれる。「全ての電圧電流の組合せ」に含まれる1つ目の組合せは、電圧V1及び電流I1のペアと、電圧V2及び電流I2のペアと、電圧V3及び電流I3のペアとによって構成される組合せである。「全ての電圧電流の組合せ」に含まれる2つ目の組合せは、電圧V1及び電流I1のペアと、電圧V2及び電流I3のペアと、電圧V3及び電流I2のペアとによって構成される組合せである。「全ての電圧電流の組合せ」に含まれる3つ目の組合せは、電圧V1及び電流I2のペアと、電圧V2及び電流I1のペアと、電圧V3及び電流I3のペアとによって構成される組合せである。「全ての電圧電流の組合せ」に含まれる4つ目の組合せは、電圧V1及び電流I2のペアと、電圧V2及び電流I3のペアと、電圧V3及び電流I1のペアとによって構成される組合せである。「全ての電圧電流の組合せ」に含まれる5つ目の組合せは、電圧V1及び電流I3のペアと、電圧V2及び電流I1のペアと、電圧V3及び電流I2のペアとによって構成される組合せである。「全ての電圧電流の組合せ」に含まれる6つ目の組合せは、電圧V1及び電流I3のペアと、電圧V2及び電流I2のペアと、電圧V3及び電流I1のペアとによって構成される組合せである。
【0062】
判定部15は、位相情報と力率情報とのうちの少なくとも1つに基づいて、全ての電圧電流の組合せのうちに所定の条件を満たす組合せがあるか否かを確認する。
【0063】
まず、判定部15が、位相情報に含まれる位相差情報に基づいて、全ての電圧電流の組合せのうちに所定の条件を満たす組合せがあるか否かを確認する場合について説明する。3つの電圧電流のペアの位相差が所定の範囲内である組合せは、判定部15によって所定の条件を満たすと判定される。本実施形態では、判定部15は、電圧に対する電流の位相差が「-60度以上0度以下」の範囲内である場合、電圧電流間の位相差が所定の範囲内であると判定される。
【0064】
次に、判定部15が、力率情報及び進み遅れ情報に基づいて、全ての電圧電流の組合せのうちに所定の条件を満たす組合せがあるか否かを確認する場合について説明する。判定部15は、3つの電圧電流のペアの力率が所定の値以上であり、電圧の位相に対して電流の位相が遅れている組合せを、所定の条件を満たすと判定する。本実施形態では、判定部15は、電圧と電流の力率が0.5以上の場合に、所定の値以上であると判定する。
【0065】
所定の条件を満たす組合せが存在する場合(ステップS41でYES)、判定部15は、電流計測部8の設置状況が第1状況であると判定する(ステップS42)。そして、判定部15は、電圧電流の組合せ確認処理(ステップS16)を終了する。一方、所定の条件を満たす組合せが存在しない場合(ステップS41でNO)、判定部15は、電流計測部8の設置状況が第2状況であると判定する(ステップS43)。そして、判定部15は、電圧電流の組合せ確認処理(ステップS16)を終了する。
【0066】
図2に戻り、設置状況が第1状況である場合(ステップS18でYES)、判定部15は、設定情報22に含まれる電圧と電流の組合せに関する情報を変更するための変更指示を、変更部16に出力する(ステップS19)。変更指示を入力した変更部16は、変更指示に基づいて、設定情報22に含まれる電圧と電流の組合せに関する情報を変更する。すなわち、判定部15にて電流計測部8の設置状況が第1状況であると判定された場合、変更部16は、設定情報22を変更する。したがって、設置状況が第1状況である場合に、ユーザが設定情報22を変更する必要がなくなる。変更部16によって設定情報22が変更されると、判定部15による判定処理は終了する。
【0067】
その一方で、設置状況が第1状況ではない場合、すなわち第2状況である場合(ステップS18でNO)、判定部15は、通知部14に判定結果を通知させる(ステップS20)。具体的には、判定システム1は、通知画面G1を通知部14に表示させることで(図5参照)、ユーザ又は施工業者に判定結果を通知する。その後、判定部15は判定処理を終了する。
【0068】
以上のように本実施形態の判定システム1は、電圧計測部7及び電流計測部8から電圧電流情報21を取得する取得部11と、電圧電流情報21に基づいて電流計測部8の設置状況を判定する判定部15とを備えている。判定部15は、電流計測部8の設置状況が異常である場合、電流計測部8の設置状況を、電圧電流情報21に基づいて、第1状況と第2状況とに区別して判定する。第1状況とは、消費電力を算出する際の設定を変更することで、電流計測部8の誤設置への対処が可能な電流計測部8の設置状況である。第2状況とは、上記設定を変更することで、電流計測部8の誤設置への対処が不可能な電流計測部8の設置状況である。すなわち、判定部15は、電流計測部8の設置状況を従来より詳細に判定することができる。したがって、ユーザが電流計測部8の設置状況を確認する際の手間を減らすことができる。
【0069】
また、本実施形態の判定システム1は、判定部15にて電流計測部8の設置状況が第1状況であると判定された場合、設定情報22を変更する変更部16を備えている。したがって、電流計測部8の設置状況が、設定情報22を変更することで電流計測部8の誤設置への対処が可能な第1状況である場合に、ユーザが設定情報22を変更する必要がなくなる。
【0070】
また、本実施形態の判定システム1は、判定部15にて電流計測部8の設置状況が異常であると判定された場合に、設定情報22を変更可能な変更部16を備えている。そして、判定部15は、変更部16によって設定情報22が変更された後、電流計測部8の設置状況を再判定する。例えば、変更部16が電流計測部8の取付向きに関して設定情報22を変更した後に、判定部15は電流計測部8の設置状況を再判定する。変更部16によって設定情報22が変更された後に、判定部15が電流計測部8の設置状況を再判定することにより、設定情報22の変更によって電流計測部8の誤設置に対処できたか否かを判定することができる。
【0071】
また、本実施形態の判定システム1は、判定部15にて電流計測部8の設置状況が異常であると再判定された場合、変更部16は、設定情報22を更に変更する。このように判定部15が設定情報22を複数回変更することで、電流計測部8の様々な誤設置に対処することが可能である。例えば、電流計測部8の向きに関する誤設置と、電圧と電流の組合せに関する誤設置が同時に行われたような場合である。このような場合、変更部16が設定情報22に対して電流計測部8の取付向きに関する変更をした後に、判定部15にて設置状況が異常であると再判定される。その後、変更部16が設定情報22に対して電圧と電流の組合せに関する変更を行う。言い換えると、変更部16が設定情報22に含まれるパラメータを変更した後に判定部15によって設置状況が異常であると判定された場合、変更部16は、設定情報22に含まれる異なるパラメータを変更する。このように、判定部15にて電流計測部8の設置状況が異常であると再判定された場合、変更部16は、設定情報22を更に変更することで、電流計測部8の様々な誤設置に対処することが可能となる。
【0072】
(変形例)
本実施形態では、判定システム1は、取得部11、記憶部12、演算部13、通知部14、判定部15、及び変更部16を備えているが、記憶部12、演算部13、通知部14、及び変更部16は、必須ではない。判定システム1は、少なくとも取得部11及び判定部15を有していればよい。
【0073】
また、本実施形態では、判定部15による判定処理において、電流計測部8の取付向きを確認する取付向き確認処理と、電圧と電流の組合せを確認する組合せ確認処理とを含んでいた。しかし、判定処理は必ずしも取付向き確認処理と組合せ確認処理との両方を含んでいる必要はない。すなわち、判定部15は、取付向き確認処理と組合せ確認処理とのうちのいずれか一方の確認処理を行い、第1状況か第2状況かを区別してもよい。
【0074】
また、本実施形態では、三相四線式の配電方式において判定システム1が適用される場合について説明した。しかし、判定システム1は、例えば配電方式が単相三線式や単相二線式であっても適用可能である。
【0075】
また、本実施形態では、戸建住宅を需要家施設の一例として説明しているが、この例に限らず、需要家施設は、集合住宅の各住戸などの戸建住宅以外の住宅、あるいは事務所、店舗などの非住宅であってもよい。
【0076】
また、本実施形態では、判定システム1は、取得部11及び判定部15を含む1つのシステムで実現されているが、2つ以上のシステムで実現されていてもよい。例えば、取得部11及び判定部15の機能が、2つ以上のシステムに分散して設けられていてもよい。また、取得部11及び判定部15のうち少なくとも1つの機能が、2つ以上のシステムに分散して設けられていてもよい。また、取得部11及び判定部15の各機能が、複数の装置に分散して設けられていてもよい。例えば、取得部11の機能が2つ以上の装置に分散されて設けられていてもよい。また、判定システム1の少なくとも一部の機能が、例えばクラウドコンピューティングにより実現されていてもよい。
【0077】
(判定方法、プログラム)
上述の実施形態(各変形例も含む)は、様々な実施形態の一つに過ぎない。上述の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計などに応じて種々の変更が可能である。また、判定システム1と同様の機能は、判定方法、プログラム又はプログラムを記録した記録媒体などで具現化されてもよい。
【0078】
本実施形態に係る判定方法は、取得ステップと、判定ステップと、を有する。取得ステップでは、電線3間の電圧V1~V3を計測する電圧計測部7及び電線3に流れる電流I1~I3を計測する電流計測部8から、消費電力を算出するための電圧電流情報21を取得する。判定ステップでは、電圧電流情報21に基づいて、電流計測部8の設置状況を、設定情報22を変更することで電流計測部8の誤設置への対処が可能な第1状況と、前記対処が不可能な第2状況とに区別して判定する。
【0079】
また、本実施形態に係る(コンピュータ)プログラムは、上述した取得ステップ及び判定ステップを、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0080】
判定システム1及び判定方法の実行主体は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、判定システム1又は判定方法の実行主体としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリにあらかじめ記録されていてもよい。また、プログラムは、電気通信回線を通じて提供されてもよいし、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブなどの記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1又は複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散されて設けられていてもよい。
【0081】
(まとめ)
上記実施形態及び変形例から明らかなように、本開示は、下記の第1~第13の態様を含む。以下では、実施形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
【0082】
第1態様に係る判定システム(1)は、取得部(11)と、判定部(15)と、を備える。取得部(11)は、電線(3)間の電圧(V1~V3)を測定する電圧計測部(7)及び電線(3)に流れる電流(I1~I3)を計測する電流計測部(8)から、消費電力を算出するための電圧電流情報(21)を取得する。判定部(15)は、取得部(11)で取得された電圧電流情報(21)に基づいて電流計測部(8)の設置状況を判定する。また、判定部(15)は、上記設置状況が異常である場合、上記設置状況を、電圧電流情報(21)に基づいて、第1状況と第2状況とに区別して判定する。第1状況は、消費電力を算出する際の設定を変更することで電流計測部(8)の誤設置への対処が可能な設置状況である。第2状況は、上記対処が不可能な設置状況である。
【0083】
この態様によれば、判定部(15)は、電圧電流情報(21)に基づいて、第1状況と、第2状況と、を区別して電流計測部(8)の設置状況を判定することができる。
【0084】
第2態様に係る判定システム(1)は、第1態様において、変更部(16)を更に備える。変更部(16)は、判定部(15)にて設置状況が第1状況であると判定された場合、上記設定を変更する。
【0085】
この態様によれば、変更部(16)は、電流計測部(8)の設置状況が第1状況である場合に、消費電力を算出する際の設定を変更する。したがって、電流計測部(8)の設置状況が第1状況である場合に、ユーザが設定を変更する必要がなくなる。
【0086】
第3態様に係る判定システム(1)は、第1態様において、変更部(16)を更に備える。変更部(16)は、判定部(15)にて設置状況が異常であると判定された場合に、上記設定を変更可能である。判定部(15)は、変更部(16)によって消費電力を算出する際の設定が変更された後、設置状況を再判定する。
【0087】
この態様によれば、変更部(16)は、電流計測部(8)の設置状況が異常である場合、消費電力を算出する際の設定を変更可能である。そのため、電流計測部(8)の設置状況が異常である場合にユーザが消費電力を算出する際の設定を変更する必要がなくなる。また、判定部(15)は、変更部(16)により消費電力を算出する際の設定が変更された後に電流計測部(8)の設置状況を再判定する。したがって、ユーザは、消費電力を算出する際の設定を変更した後で電流計測部(8)の誤設置に対処することができたのか否かを判定する必要がなくなる。
【0088】
第4態様に係る判定システム(1)では、第3態様において、判定部(15)にて設置状況が異常であると再判定された場合、変更部(16)は、上記設定を更に変更する。
【0089】
この態様によれば、電流計測部(8)の設置状況が異常であると再判定された場合に、ユーザが更に消費電力を算出する際の設定を変更する必要がなくなる。
【0090】
第5態様に係る判定システム(1)は、第1態様から第4態様のいずれか1つにおいて、通知部(14)を、更に備える。通知部(14)は、判定部(15)による判定結果を通知する。
【0091】
この態様によれば、通知部(14)は判定部(15)による判定結果を通知する。したがって、ユーザは判定部(15)による判定結果を知ることができるようになる。
【0092】
第6態様に係る判定システム(1)では、第5態様において、通知部(14)は、少なくとも判定部(15)にて設置状況が第2状況であると判定された場合に、判定結果を通知する。
【0093】
この態様によれば、少なくとも電流計測部(8)の設置状況が第2状況である場合に、通知部(14)は、判定部(15)による判定結果を通知する。したがって、ユーザは、少なくとも電流計測部(8)の設置状況が第2状況である場合に、判定部(15)による判定結果を知ることができるようになる。
【0094】
第7態様に係る判定システム(1)では、第1態様から第6態様のいずれか1つにおいて、上記設定の変更は、電流計測部(8)の取付向きに関する変更を含む。
【0095】
この態様によれば、電流計測部(8)の取付向きに関する誤設置に対処できるようになる。
【0096】
第8態様に係る判定システム(1)では、第1態様から第7態様のいずれか1つにおいて、上記設定の変更は、電線(3)が3本以上ある場合に、上記電圧と上記電流との組合せに関する変更を含む。
【0097】
この態様によれば、電圧計測部(7)によって計測される電圧と電流計測部(8)によって計測される電流の組合せに関する電流計測部(8)の誤設置に対処できるようになる。
【0098】
第9態様に係る判定システム(1)では、第1態様から第8態様のいずれか1つにおいて、判定部(15)は、位相情報と力率情報とのうちの少なくとも1つに基づいて、電流計測部(8)の設置状況を判定する。位相情報は、電圧電流情報(21)から得られる情報であって電圧(V1~V3)及び電流(I3~I3)の位相に関する情報である。力率情報は、電圧電流情報(21)から得られる情報であって交流電力の力率に関する情報である。
【0099】
この態様によれば、位相情報と力率情報との少なくとも1つを用いることで、判定部(15)は、電流計測部(8)の設置状況を判定することができる。
【0100】
第10態様に係る判定システム(1)では、第9態様において、位相情報は、電圧(V1~V3)と電流(I1~I3)との間の位相差に関する位相差情報を含む。判定部(15)は、位相差情報と電流値情報とに基づいて、電流計測部(8)の設置状況を判定する。電流値情報は、電圧電流情報(21)から得られる情報であって電流(I1~I3)の値に関する情報である。
【0101】
この態様によれば、位相差情報と、電流値情報とを用いることで、判定部(15)は、電流計測部(8)の設置状況を判定することができる。
【0102】
第11態様に係る判定システム(1)では、第9態様において、位相情報は、電圧(V1~V3)に対する電流(I1~I3)の進み又は遅れに関する進み遅れ情報を含む。判定部(15)は、進み遅れ情報と、力率情報と、電流値情報とに基づいて、電流計測部(8)の設置状況を判定する。電流値情報は、電圧電流情報(21)から得られる情報であって電流(I1~I3)の値に関する情報である。
【0103】
この態様によれば、進み遅れ情報と、力率情報と、電流値情報とを用いることで、判定部(15)は電流計測部(8)の設置状況を判定することができる。
【0104】
なお、第2態様から第11態様に係る構成については、判定システム(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【0105】
第12態様に係る判定方法は、取得ステップと、判定ステップと、を有する。取得ステップでは、電線(3)間の電圧(V1~V3)を計測する電圧計測部(7)及び電線(3)に流れる電流(I1~I3)を計測する電流計測部(8)から、消費電力を算出するための電圧電流情報(21)を取得する。判定ステップでは、電圧電流情報(21)に基づいて、電流計測部(8)の設置状況を、消費電力を算出する際の設定を変更することで電流計測部(8)の誤設置への対処が可能な第1状況と、上記対処が不可能な第2状況とに区別して判定する。
【0106】
この態様によれば、電圧電流情報(21)に基づいて、電流計測部(8)の設置状況を、第1状況と第2状況とに区別して判定することができる。
【0107】
第13態様に係るプログラムは、第12態様の判定方法を、1以上のプロセッサに実行させる。
【0108】
この態様によれば、電圧電流情報(21)に基づいて、電流計測部(8)の設置状況を、第1状況と第2状況とに区別して判定することができる。
【符号の説明】
【0109】
1 判定システム
3 電線
7 電圧計測部
8 電流計測部
11 取得部
14 通知部
15 判定部
16 変更部
21 電圧電流情報
I1,I2,I3 電流
V1,V2,V3 電圧
図1
図2
図3
図4
図5