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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】消防車
(51)【国際特許分類】
   A62C 27/00 20060101AFI20240104BHJP
【FI】
A62C27/00 501
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020081104
(22)【出願日】2020-05-01
(65)【公開番号】P2021175450
(43)【公開日】2021-11-04
【審査請求日】2023-04-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 福山市芦田川大橋下(川岸) 販売日 令和1年11月22日 行仁コミュニティセンター 販売日 令和1年12月25日 平川市 柏木町(地内) 販売日 令和2年1月16日 横須賀市消防総合訓練センター(第12分団) 販売日 令和2年1月23日 横須賀市消防総合訓練センター(第24分団) 販売日 令和2年1月23日 東海市消防署南出張所 販売日 令和2年2月14日 佐久穂町 第7分団 2号車班 販売日 令和2年2月16日 埼玉西部消防局(柳瀬分署) 販売日 令和2年2月25日 埼玉西部消防局(広瀬分署) 販売日 令和2年2月25日 東秩父消防団第2分団第1部 販売日 令和2年2月27日 岡山市消防教育訓練センター(福谷分団) 販売日 令和2年2月28日 岡山市消防教育訓練センター(野谷分団) 販売日 令和2年2月28日 横芝光町役場 販売日 令和2年3月3日 西条市消防本部 販売日 令和2年3月6日 印西地区消防組合 印西消防署 販売日 令和2年3月10日 日立グローバルライフソリューションズ株式会社 販売日 令和2年3月18日 最上広域市町村圏事務組合消防本部 販売日 令和2年3月19日 さつま町消防本部 販売日 令和2年3月23日 南房総市役所 販売日 令和2年3月25日 釜石消防署 販売日 令和2年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】520154531
【氏名又は名称】ジーエムいちはら工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】池田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】清水 英憲
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 潤一
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-231702(JP,A)
【文献】特開2019-171902(JP,A)
【文献】特開2013-217351(JP,A)
【文献】特開2010-151058(JP,A)
【文献】実開平07-039857(JP,U)
【文献】特開2011-140820(JP,A)
【文献】特開2006-169849(JP,A)
【文献】特開2019-005428(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0037760(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106669074(CN,A)
【文献】特開2017-070720(JP,A)
【文献】特開2003-028085(JP,A)
【文献】特開2003-094958(JP,A)
【文献】特開2003-328752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンが搭載されたキャビンと、
前記エンジンの排気ガス中の粒子状物質を除去する黒煙除去装置を含む排気系が搭載されたシャシと、
パワーテイクオフ軸を介して前記エンジンの動力が伝達されるポンプが配置されており、前記シャシの上に設置されたボディとを有し、
前記ボディは、前記ポンプが設置されるポンプ室を備え、
前記ポンプ室の側壁には、開口が設けられており、
前記黒煙除去装置の少なくとも一部分は、前記ポンプ室の下方に設置されており、
前記ポンプ室の内部には、後方へ向かう気流を形成する第1のファンと、前記ポンプ室の後部から前記側壁の前記開口へ向かう気流を形成する第2のファンとを備えることを特徴とする消防車。
【請求項2】
前記開口において、前記ポンプに水を取り込むための吸水口、前記ポンプから送り出された水を吐出する吐出口及び前記ポンプを経由せずに前記吐出口に水を送る中継口が露出することを特徴とする請求項1に記載の消防車。
【請求項3】
前記第1のファン及び前記第2のファンは、前記パワーテイクオフ軸の出力のオンに連動して作動し、前記パワーテイクオフ軸の出力のオフに連動して停止することを特徴とする請求項1又は2に記載の消防車。
【請求項4】
前記黒煙除去装置によって加熱された前記シャシ内の空気を前記キャビンと前記ボディとの隙間に排気するダクトを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の消防車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放水用のポンプを備えた消防車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、消防車は、放水用のポンプ及びその制御装置といった消火設備を、ベース車両に艤装して製造される。ベース車両は、下部にエンジンが搭載されたキャビンと、伝動装置、操舵装置、制動装置及び懸架装置が搭載されたシャシとを備える。シャシには、エンジンで発生した排気ガスを処理する排気系も搭載される。シャシの上方には、艤装品が取り付けられるボディが設置される。艤装品の一つであるポンプは、パワーテイクオフ軸を介してエンジンから動力が伝達される。ポンプは、ポンプ室と称されるボディ内の小部屋に収容される。ポンプ室には、ポンプを動作させるための電装品も設置される。
【0003】
パワーユニットがディーゼルエンジンであるベース車両は、排気ガス中の粒子状物質を除去するために黒煙除去装置が設置されている。黒煙除去装置は、排気ガス中の粒子状物質をフィルタで除去する。フィルタに付着した粒子状物質は、フィルタを加熱して高温にする強制再燃焼と呼ばれる処理により、フィルタから除去される。黒煙除去装置は排気系の一部であるため、シャシの下部に設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-5428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
消防車は、火災現場において放水を行うために、停車した状態でエンジンを回し続けてポンプを駆動させるが、走行に伴う気流による空冷が行われないため、車両において発生した熱が拡散しにくい。特に、強制再燃焼が行われる黒煙除去装置は、シャシに設置されているため、走行に伴う気流による空冷が行われない状態では、黒煙除去装置で発生した熱は、上方のボディに籠もってしまう。このため、黒煙除去装置で発生した熱により、ポンプ室が高温になってしまうことがあった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ポンプ室が高温になることを抑制した消防車を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る消防車は、エンジンが搭載されたキャビンと、エンジンの排気ガス中の粒子状物質を除去する黒煙除去装置を含む排気系が搭載されたシャシと、パワーテイクオフ軸を介してエンジンの動力が伝達されるポンプが配置されており、シャシの上に設置されたボディとを有し、ボディは、ポンプが設置されるポンプ室を備え、ポンプ室の側壁には、開口が設けられており、黒煙除去装置の少なくとも一部分は、ポンプ室の下方に設置されており、ポンプ室の内部には、後方へ向かう気流を形成する第1のファンと、ポンプ室の後部から側壁の開口へ向かう気流を形成する第2のファンとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る消防車は、ポンプ室が高温になることを抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る消防車の右側面概略図である。
図2図2は、実施の形態に係る消防車の左側面概略図である。
図3図3は、実施の形態に係る消防車の艤装品及び排気系の配置を上面側から示す模式図である。
図4図4は、実施の形態に係る消防車の艤装品及び排気系の配置を右面側から示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る消防車の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係る消防車の右側面概略図である。図2は、実施の形態に係る消防車の左側面概略図である。実施の形態に係る消防車10は、下部にエンジン111が搭載されたキャビン11と、伝動装置、操舵装置、制動装置及び懸架装置が搭載されたシャシ12とを備える。なお、伝動装置、操舵装置、制動装置及び懸架装置の図示は省略している。消防車10は、シャシ12に設置されたボディ13を備えている。シャシ12の上に設置されたボディ13は、シャシ12の側面も覆っている。すなわち、ボディ13は、シャシ12に上方から覆い被さるように設置されている。ボディ13は、ポンプ室131、上部資機材庫132及び後部資機材庫133に区画されている。ポンプ室131には、放水用のポンプ20が設置されている。上部資機材庫132及び後部資機材庫133には、ホース、防火服、投光器及び呼吸器といった消火活動に使用する資機材が搭載される。なお、後部資機材庫133の代わりに乗車スペースを設置してもよい。
【0012】
ポンプ20は、パワーテイクオフ軸112を介してエンジン111から動力が伝達される。ポンプ室131の前壁31には、パワーテイクオフ軸112が貫通する開口31aが形成されている。開口31aは、パワーテイクオフ軸112が干渉しない程度の大きさとなっている。開口31aには、パワーテイクオフ軸112とは干渉しない程度しか隙間がないため、キャビン11に搭載されたエンジン111の熱気がポンプ室131の前壁31の開口31aを通じてポンプ室131に流入しにくい。
【0013】
ポンプ室131の側壁32には、ポンプ20に水を取り込むための吸水口321、ポンプ20から送り出された水を吐出する吐出口322及び中継口323が設けられている。ポンプ室131の側壁32のうち、吸水口321が配置された部分の開口321a、吐出口322が配置された部分の開口322a及び中継口323が配置された部分の開口323aは、吸水口321、吐出口322及び中継口323における送水配管の外径よりも大きくなっており、隙間が形成されている。このように、消防車10は、開口321a,322a,323aにおいて、吸水口321、吐出口322及び中継口323が露出している。
【0014】
また、ポンプ室131の側壁32には、ポンプ20を動作させるための電装品の一つである操作装置21が設置されている。操作装置21は、吸水口321、吐出口322及び中継口323の各々のボールコックの開閉状況、ポンプ20の圧力、ポンプ20の流量、積算流量、ポンプ20の回転速度及びポンプ20の使用時間といった情報を表示する表示装置211と、ポンプ20を操作する押しボタン212とを備えている。なお、操作装置21以外の電装品については、図示を省略している。また、ポンプ室131の右側の側壁32には、圧力計331及び連成計332を備えた手動操作装置33が設置されている。手動操作装置33は、表示装置211とは別の回路でポンプ20に接続されており、表示装置211の故障時にもポンプ20を操作できるようになっている。
【0015】
図3は、実施の形態に係る消防車の艤装品及び排気系の配置を上面側から示す模式図である。図4は、実施の形態に係る消防車の艤装品及び排気系の配置を右面側から示す模式図である。
【0016】
図3及び図4に示すように、シャシ12には、エンジン111で発生した排気ガスを処理する排気系が搭載されている。排気系には、黒煙除去装置40及びエキゾーストパイプ41が含まれる。黒煙除去装置40の周囲には、遮熱板が設置されており、黒煙除去装置40で発生した熱が周囲に伝わりにくくなっている。黒煙除去装置40の周囲に設置される遮蔽板のうち、黒煙除去装置40を上方に設置される遮蔽板39は、シャシ12とポンプ室131との境界部分に設置されている。遮蔽板39は、排気系が発する熱によって温められた空気がポンプ室131に流入することを抑制する。また、エキゾーストパイプ41に断熱材43を巻き付けて、排気系の熱が外部に伝わらないようにしている。
【0017】
黒煙除去装置40の少なくとも一部分は、シャシ12のうちポンプ室131の下方に当たる部分に設置されている。また、消防車10は、黒煙除去装置40によって加熱されたシャシ12内の空気をキャビン11とボディ13との間の空間に逃がすためのダクト50を備えている。したがって、黒煙除去装置40によって加熱された空気は、ポンプ室131の下方には滞留しにくい。また、図1に示すように、ボディ13のうち、黒煙除去装置40の側方に当たる部分には、パンチング加工が施されて排気口51が形成されている。ボディ13に排気口51が形成されているため、黒煙除去装置40によって加熱された空気は、排気口51からもボディ13の外に排出される。さらに、図3に示すように、ボディ13のうち、ポンプ室131の外側かつ黒煙除去装置40の上方に当たる部分には、スリット52が形成されており、黒煙除去装置40によって加熱された空気は、スリット52からもボディ13の外に排出される。なお、ここではボディ13にスリット52が形成されている構造について説明したが、ボディ13にスリット52を設けなくてもよい。
【0018】
なお、車両の側面において、キャビン11とボディ13との隙間を、耐熱性部材で塞いでもよい。キャビン11とボディ13との隙間を、耐熱性部材で塞ぐことにより、エンジン111によって加熱された熱気及びダクト50を通じてキャビン11とボディ13との間に排出された熱気が、ポンプ室131の側壁32の開口321a,322a,323aを経由してポンプ室131に流入することを抑制できる。
【0019】
ポンプ室131の内部には、複数のファン60が設置されている。複数のファン60には、車両後方に向かう気流を形成する第1のファン60aと、ポンプ室131の側壁32に形成された開口321a,322a,323aに向かう気流を形成する第2のファン60bとが含まれる。第1のファン60a及び第2のファン60bは、ポンプ室131の天板38に設置されている。
【0020】
第1のファン60a及び第2のファン60bの運転停止を切り替えるスイッチは、ボディ13に設置されても良いし、キャビン11に設置されてもよい。また、パワーテイクオフ軸112の出力のオンオフと第1のファン60a及び第2のファン60bのオンオフとを連動させてもよい。具体的には、第1のファン60a及び第2のファン60bを、パワーテイクオフ軸112の出力のオンに連動して作動させ、パワーテイクオフ軸112の出力のオフに連動して停止させてもよい。パワーテイクオフ軸112の出力のオンオフと第1のファン60a及び第2のファン60bのオンオフとを連動させることにより、ポンプ20を稼働していない状態で第1のファン60a及び第2のファン60bを運転することがなくなるとともに、ポンプ20の稼働中には第1のファン60a及び第2のファン60bを確実に運転することができる。
【0021】
第1のファン60aよりも前方には、天板38から下方に延びる遮蔽板37が設置されている。ポンプ室131の内部に遮蔽板37が設置されているため、前壁31の開口31aを通じてポンプ室131に流入した熱気が、第1のファン60aによってポンプ室131に拡散されることは防止される。
【0022】
黒煙除去装置40で発生した熱が上方の遮蔽板39に伝わると、ポンプ室131内部の空気が暖められて、ポンプ室131内部で対流が発生し、ポンプ室131の天板38付近の温度が高くなる。ポンプ室131内の天板38付近の空気は、第1のファン60aによって後方へ送られ、さらに第2のファン60bによって側壁32の開口321a,322a,323aを通じてポンプ室131の外へ排出される。図3には、第1のファン60a及び第2のファン60bが発生させる気流を白抜きの矢印で示している。
【0023】
また、ポンプ室131の後壁36には、スリット36aが形成されており、第1のファン60aによって後方へ送られた暖まった空気の一部は、スリット36aを通じて後部資機材庫133へ排出される。なお、ここでは後壁36にスリット36aが形成されている構造について説明したが、後壁36にスリット36aを設けなくてもよい。
【0024】
実施の形態に係る消防車10は、黒煙除去装置40で加熱された空気をキャビン11とボディ13との間に排気するダクト50及び側方に排気する排気口51を備えるため、シャシ12には熱気が滞留しにくい。また、実施の形態に係る消防車10は、シャシ12に熱気が滞留しにくいことにより、ポンプ室131を含むボディ13の温度上昇を抑制することができる。また、実施の形態に係る消防車10は、ポンプ室131の中に第1のファン60a及び第2のファン60bを備えるため、遮蔽板39を通じてシャシ12から伝わった熱を、ポンプ室131の外へ強制的に排熱することができる。したがって、実施の形態に係る消防車10は、ポンプ室131が高温になることを抑制することができる。
【0025】
このように、実施の形態に係る消防車10は、黒煙除去装置40で発生した熱がポンプ室131に留まらずにポンプ室131から排出されるため、ポンプ室131が高温になることを抑制できる。したがって、ポンプ室131に設置された操作装置21を始めとする電装品の電子部品が高温によって故障することを防ぐことができる。
【0026】
なお、上記の実施の形態において、第2のファン60bは、吸水口321、吐出口322及び中継口323が露出する開口321a,322a,323aに向かう気流を形成したが、吸水口321、吐出口322及び中継口323が露出する開口321a,322a,323a以外の開口に向かう気流を形成してもよい。すなわち、第2のファン60bが側壁32の任意の開口に向かって気流を形成すれば、遮蔽板39を通じてシャシ12から伝わった熱を、ポンプ室131の外へ排出することができる。
【符号の説明】
【0027】
10 消防車
11 キャビン
12 シャシ
13 ボディ
20 ポンプ
21 操作装置
31 前壁
31a 開口
32 側壁
33 手動操作装置
36 後壁
36a スリット
37 遮蔽板
38 天板
39 遮蔽板
40 黒煙除去装置
41 エキゾーストパイプ
43 断熱材
50 ダクト
51 排気口
52 スリット
60 ファン
60a 第1のファン
60b 第2のファン
111 エンジン
112 パワーテイクオフ軸
131 ポンプ室
132 上部資機材庫
133 後部資機材庫
211 表示装置
212 押しボタン
321 吸水口
322 吐出口
323 中継口
321a 開口
322a 開口
323a 開口
331 圧力計
332 連成計
図1
図2
図3
図4