(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】刺激提示システム、刺激提示方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
A61M 21/00 20060101AFI20240104BHJP
【FI】
A61M21/00 B
(21)【出願番号】P 2023502189
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 JP2022002917
(87)【国際公開番号】W WO2022181168
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2021029307
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】西山 高史
(72)【発明者】
【氏名】松本 秋憲
(72)【発明者】
【氏名】井澤 洋介
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/066075(WO,A1)
【文献】特開2021-43480(JP,A)
【文献】特開平5-245148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザを睡眠から覚醒させるための刺激を提示する刺激提示システムであって、
前記ユーザの脳波および脈波を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記ユーザの前記脳波に基づいて、前記ユーザの覚醒度を推定する第一推定部と、
前記取得部により取得された前記ユーザの前記脈波に基づいて、前記ユーザのリラックス度を推定する第二推定部と、
推定された前記ユーザの前記覚醒度および前記リラックス度に基づいて、前記ユーザに前記刺激を提示するタイミングを決定し、決定された前記タイミングで前記ユーザへの前記刺激の提示を制御する信号を出力する刺激制御部と、
前記ユーザの操作を受け付ける操作受付部と、を備え、
前記操作受付部は、前記ユーザにより入力された睡眠時間の設定の指示を受け付け、
前記刺激制御部は、前記ユーザの前記覚醒度が低く、かつ、前記ユーザの前記リラックス度が高いと判定された回数が、設定された前記睡眠時間の半分の時間に相当する回数確認された場合に、前記ユーザへの前記刺激の提示を制御する前記信号を出力する、
刺激提示システム。
【請求項2】
前記刺激制御部は、前記ユーザの前記覚醒度が低く、かつ、前記ユーザの前記リラックス度が高いと判定された回数が、前記一定の時間内に所定の回数に到達する前に、前記睡眠時間の終了までの残り時間が所定の時間未満となった場合に、前記ユーザへの前記刺激の提示を制御する前記信号を出力する、
請求項
1に記載の刺激提示システム。
【請求項3】
前記第一推定部は、
前記脳波のパワーに基づいて前記覚醒度の指標を算出し、
算出した前記覚醒度の指標の値が第一閾値よりも小さい場合、前記覚醒度は高いと推定し、
前記覚醒度の指標の値が前記第一閾値以上である場合、前記覚醒度は低いと推定し、
前記第一閾値は、前記ユーザの覚醒状態と睡眠状態との境界を示す値であり、
前記覚醒度の指標の値が前記第一閾値以上となる時点を前記ユーザの入眠時点と推定し、
前記第二推定部は、
前記脈波に基づいて前記リラックス度の指標を算出し、
算出した前記リラックス度の指標の値が第二閾値よりも小さい場合、前記リラックス度は小さいと推定し、前記リラックス度の指標の値が前記第二閾値以上である場合、前記リラックス度は大きいと推定する、
請求項1
または2に記載の刺激提示システム。
【請求項4】
前記刺激制御部は、
算出された前記ユーザの前記覚醒度の指標の値と前記リラックス度の指標の値との組である座標を、覚醒度の指標およびリラックス度の指標の2軸で表される座標平面上にプロットする、
請求項
3に記載の刺激提示システム。
【請求項5】
ユーザを睡眠から覚醒させるための刺激を提示する刺激提示システムであって、
前記ユーザの脳波および脈波を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記ユーザの前記脳波に基づいて、前記ユーザの覚醒度を推定する第一推定部と、
前記取得部により取得された前記ユーザの前記脈波に基づいて、前記ユーザのリラックス度を推定する第二推定部と、
推定された前記ユーザの前記覚醒度および前記リラックス度に基づいて、前記ユーザに前記刺激を提示するタイミングを決定し、決定された前記タイミングで前記ユーザへの前記刺激の提示を制御する信号を出力する刺激制御部と、を備え、
前記第一推定部は、
前記脳波のパワーに基づいて前記覚醒度の指標を算出し、
算出した前記覚醒度の指標の値が第一閾値よりも小さい場合、前記覚醒度は高いと推定し、
前記覚醒度の指標の値が前記第一閾値以上である場合、前記覚醒度は低いと推定し、
前記第一閾値は、前記ユーザの覚醒状態と睡眠状態との境界を示す値であり、
前記覚醒度の指標の値が前記第一閾値以上となる時点を前記ユーザの入眠時点と推定し、
前記第二推定部は、
前記脈波に基づいて前記リラックス度の指標を算出し、
算出した前記リラックス度の指標の値が第二閾値よりも小さい場合、前記リラックス度は小さいと推定し、前記リラックス度の指標の値が前記第二閾値以上である場合、前記リラックス度は大きいと推定し、
前記刺激制御部は、
算出された前記ユーザの前記覚醒度の指標の値と前記リラックス度の指標の値との組である座標を、覚醒度の指標およびリラックス度の指標の2軸で表される座標平面上にプロットし、
算出された複数の前記座標のそれぞれを前記座標平面上に時系列順にプロットし、前記覚醒度の指標の値が初めて前記第一閾値以上となった座標の前記リラックス度の指標の値を第二閾値に決定する
、
刺激提示システム。
【請求項6】
ユーザを睡眠から覚醒させるための刺激を提示する刺激提示システムであって、
前記ユーザの脳波および脈波を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記ユーザの前記脳波に基づいて、前記ユーザの覚醒度を推定する第一推定部と、
前記取得部により取得された前記ユーザの前記脈波に基づいて、前記ユーザのリラックス度を推定する第二推定部と、
推定された前記ユーザの前記覚醒度および前記リラックス度に基づいて、前記ユーザに前記刺激を提示するタイミングを決定し、決定された前記タイミングで前記ユーザへの前記刺激の提示を制御する信号を出力する刺激制御部と、を備え、
前記第一推定部は、
前記脳波のパワーに基づいて前記覚醒度の指標を算出し、
算出した前記覚醒度の指標の値が第一閾値よりも小さい場合、前記覚醒度は高いと推定し、
前記覚醒度の指標の値が前記第一閾値以上である場合、前記覚醒度は低いと推定し、
前記第一閾値は、前記ユーザの覚醒状態と睡眠状態との境界を示す値であり、
前記覚醒度の指標の値が前記第一閾値以上となる時点を前記ユーザの入眠時点と推定し、
前記第二推定部は、
前記脈波に基づいて前記リラックス度の指標を算出し、
算出した前記リラックス度の指標の値が第二閾値よりも小さい場合、前記リラックス度は小さいと推定し、前記リラックス度の指標の値が前記第二閾値以上である場合、前記リラックス度は大きいと推定し、
前記刺激制御部は、
算出された前記ユーザの前記覚醒度の指標の値と前記リラックス度の指標の値との組である座標を、覚醒度の指標およびリラックス度の指標の2軸で表される座標平面上にプロットし、
算出された複数の前記座標のそれぞれを前記座標平面上に時系列順にプロットし、前記覚醒度の指標の値が初めて前記第一閾値以上となった座標と、当該座標の直前にプロットされた座標とを結ぶ直線と、前記直線と前記第一閾値を示す直線との交点の座標を算出し、
算出された前記交点の前記リラックス度の指標の値を前記第二閾値に決定する
、
刺激提示システム。
【請求項7】
ユーザを睡眠から覚醒させるための刺激を提示する刺激提示システムであって、
前記ユーザの脳波および脈波を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記ユーザの前記脳波に基づいて、前記ユーザの覚醒度を推定する第一推定部と、
前記取得部により取得された前記ユーザの前記脈波に基づいて、前記ユーザのリラックス度を推定する第二推定部と、
推定された前記ユーザの前記覚醒度および前記リラックス度に基づいて、前記ユーザに前記刺激を提示するタイミングを決定し、決定された前記タイミングで前記ユーザへの前記刺激の提示を制御する信号を出力する刺激制御部と、を備え、
前記第一推定部は、
前記脳波のパワーに基づいて前記覚醒度の指標を算出し、
算出した前記覚醒度の指標の値が第一閾値よりも小さい場合、前記覚醒度は高いと推定し、
前記覚醒度の指標の値が前記第一閾値以上である場合、前記覚醒度は低いと推定し、
前記第一閾値は、前記ユーザの覚醒状態と睡眠状態との境界を示す値であり、
前記覚醒度の指標の値が前記第一閾値以上となる時点を前記ユーザの入眠時点と推定し、
前記第二推定部は、
前記脈波に基づいて前記リラックス度の指標を算出し、
算出した前記リラックス度の指標の値が第二閾値よりも小さい場合、前記リラックス度は小さいと推定し、前記リラックス度の指標の値が前記第二閾値以上である場合、前記リラックス度は大きいと推定し、
前記刺激制御部は、
算出された前記ユーザの前記覚醒度の指標の値と前記リラックス度の指標の値との組である座標を、覚醒度の指標およびリラックス度の指標の2軸で表される座標平面上にプロットし、
所定の時間内に前記座標平面にプロットされた前記座標を含む2以上の座標のうちの前記覚醒度の指標の値がいずれも前記第一閾値より小さい場合、前記2以上の座標を通る直線と、前記第一閾値を示す境界線との交点の前記リラックス度の指標の値を前記第二閾値に決定する
、
刺激提示システム。
【請求項8】
ユーザを睡眠から覚醒させるための刺激を提示する刺激提示システムであって、
前記ユーザの脳波および脈波を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記ユーザの前記脳波に基づいて、前記ユーザの覚醒度を推定する第一推定部と、
前記取得部により取得された前記ユーザの前記脈波に基づいて、前記ユーザのリラックス度を推定する第二推定部と、
推定された前記ユーザの前記覚醒度および前記リラックス度に基づいて、前記ユーザに前記刺激を提示するタイミングを決定し、決定された前記タイミングで前記ユーザへの前記刺激の提示を制御する信号を出力する刺激制御部と、を備え、
前記第一推定部は、
前記脳波のパワーに基づいて前記覚醒度の指標を算出し、
算出した前記覚醒度の指標の値が第一閾値よりも小さい場合、前記覚醒度は高いと推定し、
前記覚醒度の指標の値が前記第一閾値以上である場合、前記覚醒度は低いと推定し、
前記第一閾値は、前記ユーザの覚醒状態と睡眠状態との境界を示す値であり、
前記覚醒度の指標の値が前記第一閾値以上となる時点を前記ユーザの入眠時点と推定し、
前記第二推定部は、
前記脈波に基づいて前記リラックス度の指標を算出し、
算出した前記リラックス度の指標の値が第二閾値よりも小さい場合、前記リラックス度は小さいと推定し、前記リラックス度の指標の値が前記第二閾値以上である場合、前記リラックス度は大きいと推定し、
前記刺激制御部は、
算出された前記ユーザの前記覚醒度の指標の値と前記リラックス度の指標の値との組である座標を、覚醒度の指標およびリラックス度の指標の2軸で表される座標平面上にプロットし、
所定の時間内に前記座標平面にプロットされた前記座標を含む2以上の座標の前記覚醒度の指標の値がいずれも前記第一閾値より小さい場合、前記2以上の座標のうちのいずれかの座標の前記覚醒度の指標の値と前記第一閾値との差分が所定の範囲内にあるとき、前記覚醒度の指標の値に対応する前記リラックス度の指標の値を前記第二閾値に決定する
、
刺激提示システム。
【請求項9】
ユーザを睡眠から覚醒させるための刺激を提示する刺激提示システムであって、
前記ユーザの脳波および脈波を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記ユーザの前記脳波に基づいて、前記ユーザの覚醒度を推定する第一推定部と、
前記取得部により取得された前記ユーザの前記脈波に基づいて、前記ユーザのリラックス度を推定する第二推定部と、
推定された前記ユーザの前記覚醒度および前記リラックス度に基づいて、前記ユーザに前記刺激を提示するタイミングを決定し、決定された前記タイミングで前記ユーザへの前記刺激の提示を制御する信号を出力する刺激制御部と、を備え、
前記第一推定部は、
前記脳波のパワーに基づいて前記覚醒度の指標を算出し、
算出した前記覚醒度の指標の値が第一閾値よりも小さい場合、前記覚醒度は高いと推定し、
前記覚醒度の指標の値が前記第一閾値以上である場合、前記覚醒度は低いと推定し、
前記第一閾値は、前記ユーザの覚醒状態と睡眠状態との境界を示す値であり、
前記覚醒度の指標の値が前記第一閾値以上となる時点を前記ユーザの入眠時点と推定し、
前記第二推定部は、
前記脈波に基づいて前記リラックス度の指標を算出し、
算出した前記リラックス度の指標の値が第二閾値よりも小さい場合、前記リラックス度は小さいと推定し、前記リラックス度の指標の値が前記第二閾値以上である場合、前記リラックス度は大きいと推定し、
前記刺激提示システムは、さらに、推定された前記ユーザの前記覚醒度および前記リラックス度を含むデータを格納する記憶部を備え、
前記刺激制御部は、
算出された前記ユーザの前記覚醒度の指標の値と前記リラックス度の指標の値との組である座標を、覚醒度の指標およびリラックス度の指標の2軸で表される座標平面上にプロットし、
所定の時間内に前記座標平面にプロットされた前記座標を含む2以上の座標の前記覚醒度の指標の値がいずれも前記第一閾値より小さい場合、前記記憶部に格納された前記データに基づいて、前記第二閾値を決定する
、
刺激提示システム。
【請求項10】
ユーザを睡眠から覚醒させるための刺激を提示する刺激提示システムであって、
前記ユーザの脳波および脈波を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記ユーザの前記脳波に基づいて、前記ユーザの覚醒度を推定する第一推定部と、
前記取得部により取得された前記ユーザの前記脈波に基づいて、前記ユーザのリラックス度を推定する第二推定部と、
推定された前記ユーザの前記覚醒度および前記リラックス度に基づいて、前記ユーザに前記刺激を提示するタイミングを決定し、決定された前記タイミングで前記ユーザへの前記刺激の提示を制御する信号を出力する刺激制御部と、を備え、
前記第一推定部は、
前記脳波のパワーに基づいて前記覚醒度の指標を算出し、
算出した前記覚醒度の指標の値が第一閾値よりも小さい場合、前記覚醒度は高いと推定し、
前記覚醒度の指標の値が前記第一閾値以上である場合、前記覚醒度は低いと推定し、
前記第一閾値は、前記ユーザの覚醒状態と睡眠状態との境界を示す値であり、
前記覚醒度の指標の値が前記第一閾値以上となる時点を前記ユーザの入眠時点と推定し、
前記第二推定部は、
前記脈波に基づいて前記リラックス度の指標を算出し、
算出した前記リラックス度の指標の値が第二閾値よりも小さい場合、前記リラックス度は小さいと推定し、前記リラックス度の指標の値が前記第二閾値以上である場合、前記リラックス度は大きいと推定し、
前記刺激制御部は、
算出された前記ユーザの前記覚醒度の指標の値と前記リラックス度の指標の値との組である座標を、覚醒度の指標およびリラックス度の指標の2軸で表される座標平面上にプロットし、
前記ユーザにより設定された睡眠時間内における全ての前記覚醒度の指標の値が前記第一閾値より小さく、かつ、全ての前記覚醒度の指標の値と前記第一閾値との差分が所定の範囲を超える場合、前記睡眠時間内における全ての前記リラックス度の指標の値の中央値を前記第二閾値と決定する
、
刺激提示システム。
【請求項11】
前記刺激提示システムは、さらに、推定された前記覚醒度およびリラックス度に基づいて前記ユーザに提示する表示情報を生成し、生成した前記表示情報を出力する表示制御部を備える、
請求項1~
10のいずれか1項に記載の刺激提示システム。
【請求項12】
ユーザを睡眠から覚醒させるための刺激を提示する刺激提示方法であって、
前記ユーザの脳波および脈波を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにより取得された前記ユーザの前記脳波に基づいて、前記ユーザの覚醒度を推定する第一推定ステップと、
前記取得ステップにより取得された前記ユーザの前記脈波に基づいて、前記ユーザのリラックス度を推定する第二推定ステップと、
推定された前記ユーザの前記覚醒度および前記リラックス度に基づいて、前記ユーザに前記刺激を提示するタイミングを決定し、決定された前記タイミングで前記ユーザへの前記刺激の提示を制御する信号を出力する刺激制御ステップと、
前記ユーザにより入力された睡眠時間の設定の指示を受け付ける受付ステップと、を含
み、
前記刺激制御ステップにおいては、前記ユーザの前記覚醒度が低く、かつ、前記ユーザの前記リラックス度が高いと判定された回数が、設定された前記睡眠時間の半分の時間に相当する回数確認された場合に、前記ユーザへの前記刺激の提示を制御する前記信号を出力する、
刺激提示方法。
【請求項13】
請求項
12に記載の刺激提示方法をコンピュータに実行させるための、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺激提示システム、刺激提示方法、プログラム、および、モデル生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、脳波などの生体信号を計測して、ユーザが起床時間に覚醒しやすくなるように、睡眠環境を制御する技術が知られている。例えば、特許文献1には、ユーザの就寝時刻から起床時刻までの間の睡眠深度の推移(言い換えると、睡眠周期)を予測した結果に基づいて、睡眠中の音または光などの環境の制御の時間的なパターンを決定する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、ユーザの睡眠周期を予測した結果に基づいて、ユーザの睡眠環境を制御するため、ユーザの身体的および精神的な状態(以下、ユーザの状態)に応じて適切にユーザの睡眠環境を制御することが難しい。
【0005】
そこで、本発明は、ユーザの状態に応じて適切にユーザの睡眠環境を制御することができる刺激提示システム、刺激提示方法、プログラム、および、モデル生成システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る刺激提示システムは、ユーザを睡眠から覚醒させるための刺激を提示する刺激提示システムであって、前記ユーザの脳波および脈波を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記ユーザの前記脳波に基づいて、前記ユーザの覚醒度を推定する第一推定部と、前記取得部により取得された前記ユーザの前記脈波に基づいて、前記ユーザのリラックス度を推定する第二推定部と、推定された前記ユーザの前記覚醒度および前記リラックス度に基づいて、前記ユーザに前記刺激を提示するタイミングを決定し、決定された前記タイミングで前記ユーザへの前記刺激の提示を制御する信号を出力する刺激制御部と、を備える。
【0007】
本発明の一態様に係る刺激提示方法は、ユーザを睡眠から覚醒させるための刺激を提示する刺激提示方法であって、前記ユーザの脳波および脈波を取得する取得ステップと、前記取得ステップにより取得された前記ユーザの前記脳波に基づいて、前記ユーザの覚醒度を推定する第一推定ステップと、前記取得ステップにより取得された前記ユーザの前記脈波に基づいて、前記ユーザのリラックス度を推定する第二推定ステップと、推定された前記ユーザの前記覚醒度および前記リラックス度に基づいて、前記ユーザに前記刺激を提示するタイミングを決定し、決定された前記タイミングで前記ユーザへの前記刺激の提示を制御する信号を出力する刺激制御ステップと、を含む。
【0008】
本発明の一態様に係るプログラムは、前記刺激提示方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0009】
本発明の一態様に係る刺激提示システムは、ユーザを睡眠から覚醒させるための刺激を提示する刺激提示システムであって、前記ユーザの脳波および脈波を取得する取得部と、脳波および脈波の時系列データと、前記刺激を提示するタイミングとの関係性を予め学習させた機械学習モデルに、前記取得部により取得された前記脳波および前記脈波の時系列データを入力して得られる出力結果に基づいて、前記ユーザに前記刺激を提示するタイミングを決定し、決定された前記タイミングで前記ユーザへの前記刺激の提示を制御する信号を出力する刺激制御部と、を備える。
【0010】
本発明の一態様に係るモデル生成システムは、ユーザを睡眠から覚醒させるための刺激を提示するタイミングを決定するためのモデル生成システムであって、前記ユーザの脳波および脈波を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記脳波および前記脈波に基づいて前記ユーザに前記刺激を提示するタイミングを決定し、決定された前記タイミングで前記ユーザへの前記刺激の提示が行われた後に、前記タイミングに対する前記ユーザの評価を取得し、取得された前記評価と、前記脳波および前記脈波の時系列データと、前記刺激を提示したタイミングとの組を学習データとして、脳波および脈波の時系列データと、前記刺激を提示するタイミングとの関係性を学習することにより、前記刺激を提示するタイミングを決定するためのモデルを生成するモデル生成部と、を備え、前記モデル生成部は、前記モデルにより決定された前記刺激を提示するタイミングを、前記ユーザへの前記刺激の提示を制御する信号を出力する刺激制御部へ出力する。
【0011】
本発明の一態様に係る刺激提示システムは、ユーザを睡眠から覚醒させるための刺激を提示する刺激提示システムであって、前記ユーザの脳波および脈波を取得する取得部と、前記刺激を提示するタイミングを決定するためのモデルに、前記取得部により取得された前記脳波および前記脈波の時系列データを入力して得られる出力結果に基づいて、前記ユーザに前記刺激を提示するタイミングを決定し、決定された前記タイミングで前記ユーザへの前記刺激の提示を制御する信号を出力する刺激制御部と、前記刺激制御部により決定された前記タイミングで前記ユーザへの前記刺激の提示が行われた後に、前記タイミングに対する前記ユーザの評価を取得し、取得された前記評価に基づいて、前記脳波および前記脳波の時系列データと、前記刺激を提示するタイミングとの関係性を学習することにより、前記モデルを更新するモデル更新部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ユーザの状態に応じて適切にユーザの睡眠環境を制御することができる刺激提示システム、刺激提示方法、プログラム、および、モデル生成システムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る刺激提示システムの概要を示す図である。
【
図2】
図2は、実施の形態における生体計測器の外観を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る刺激提示システムの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、脳波の種類を周波数帯域別に示す図である。
【
図5】
図5は、リラックス度の指標について説明するための図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係る刺激提示システムの動作例1のフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施の形態に係る刺激提示システムの動作例2のフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施の形態に係る刺激提示システムの動作例3のフローチャートである。
【
図9】
図9は、第二閾値の決定方法の第1例を説明するための図である。
【
図10】
図10は、第二閾値の決定方法の第2例を説明するための図である。
【
図11】
図11は、第二閾値の決定方法の第3例を説明するための図である。
【
図13】
図13は、比較例1における刺激提示の制御条件を示す図である。
【
図16】
図16は、他の実施の形態に係る刺激提示システムの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図17】
図17は、他の実施の形態に係る刺激提示システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図19】
図19は、刺激の提示が行われたタイミングに対するユーザの評価を受け付ける受付画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0015】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0016】
(実施の形態)
[刺激提示システムの概要]
まず、実施の形態に係る刺激提示システムの構成について説明する。
図1は、実施の形態に係る刺激提示システムの概要を示す図である。
図2は、実施の形態における生体計測器10の外観を示す斜視図である。
【0017】
実施の形態に係る刺激提示システムは、ユーザを睡眠から覚醒させるための刺激をユーザに提示する(以下、与えるともいう)システムである。より具体的には、刺激提示システムは、ユーザの生体情報に基づいて推定されたユーザの生理状態に応じて適切なタイミングで睡眠中のユーザに刺激を与えることにより、ユーザを睡眠から覚醒させるシステムである。睡眠は、数時間以上の睡眠に限られず、短時間(例えば、20分など)の睡眠(いわゆる、仮眠)も含む。
【0018】
刺激提示システムは、例えば、生体計測器10(例えば、ウェアラブルデバイス)と、端末装置20(例えば、ユーザの携帯端末)と、刺激提示部40(例えば、照明機器)と、を備える。例えば、
図1に示されるように、刺激提示システムは、刺激提示部40の動作を制御するコントローラー50を備えてもよい。コントローラー50は、例えば、照明機器に加え、空調機器など複数の機器を制御してもよい。また、
図1の例では、刺激提示部40は、室内に設置された照明機器であるが、ユーザに光刺激を与えることができればよく、例えば、スタンドライトでもよい。また、
図1は、刺激提示部40は、ユーザに光刺激を与える例を示しているが、例えば、刺激は、光、音、振動またはこれらのいずれかを組み合わせた刺激であってもよい。また、刺激提示システムは、サーバ装置30(
図3参照)を備えてもよい。
【0019】
刺激提示システムは、生体計測器10によって計測されるユーザの生体情報(生体信号ともいう)に基づいて、ユーザの中枢神経の状態(言い換えると、覚醒度)、および、ユーザの自律神経の状態(言い換えると、リラックス度)を推定する。
図2に示されるように、生体計測器10は、脳波計測部11および脈波計測部12を含むイヤーフック型(耳掛け型)のセンサデバイスであってもよい。また、例えば、
図2に示されるように、生体計測器10は、スピーカ16(例えば、イヤフォン)を備えてもよい。ユーザは、スピーカ16を装着することにより、周囲の音のユーザの睡眠に対する影響を低減することができるとともに、睡眠からの覚醒時にスピーカ16からユーザに音刺激が提示されてもよい。音刺激は、例えば、自然の音(鳥のさえずり、または、川のせせらぎなど)、または、ユーザが好む音楽などであってもよい。
【0020】
また、刺激提示システムは、推定したユーザの覚醒度およびリラックス度に基づいてユーザに提示する表示情報を生成し、ユーザの端末装置20の表示部(例えば、ディスプレイ)に表示させてもよい。ユーザは、ディスプレイに表示された表示情報を確認することで、睡眠中の自身の生理状態を把握することができる。これにより、ユーザが自身の睡眠の時間、深さ、および質をコントロールしやすくなる。
【0021】
[刺激提示システムの構成]
続いて、実施の形態に係る刺激提示システムの構成について説明する。
図3は、実施の形態に係る刺激提示システムの機能構成の一例を示すブロック図である。
図3に示されるように、刺激提示システム100は、例えば、生体計測器10と、端末装置20と、サーバ装置30と、刺激提示部40と、を備える。以下、各構成について説明する。
【0022】
[生体計測器]
生体計測器10は、ユーザの脳波および脈波を計測するセンサである。生体計測器10は、例えば、イヤーフック型(耳掛け型)のセンサデバイスであり、ユーザの生体信号として脳波(EEG:ElectroEncephaloGram)、および、脈波(PPG:PhotoPlethysmoGram)を計測する。
【0023】
生体計測器10は、例えば、脳波計測部11と、脈波計測部12と、制御部13と、記憶部14と、通信部15とを備える。上述したように、生体計測器10は、スピーカ16を備えてもよい。また、生体計測器10は、加速度センサ(不図示)を備えてもよい。脳波の振幅は、数μV~数十μVオーダと非常に小さく、脳波には、ユーザの頭部または頸部の動きによって生じるノイズが容易に混入してしまう。そこで、加速度の大きさを検知し、ユーザが静止していないと判定されている期間に脳波計測部11によって計測されるユーザの脳波を、覚醒度の推定に使用しない。これにより、ユーザの動きに由来するノイズが少ない脳波を使用して覚醒度が推定されるため、推定精度が高められる。
【0024】
加速度センサは、例えば、3軸加速度センサであり、X、Y、Zの各方向の加速度を計測し、計測結果を加速度データとして出力する。加速度データは、ユーザが静止状態であるか否かの判定に用いられる。加速度センサは、ピエゾ抵抗型の加速度センサであってもよいし、静電容量型の加速度センサであってもよいし、熱検知型の加速度センサであってもよい。
【0025】
脳波計測部11は、ユーザの脳波を計測する。脳波計測部11は、例えば、ユーザの耳上部(言い換えれば、側頭部)に接する第1の電極と、ユーザの耳たぶに接する第2電極との間の電圧値を計測して脳波データとして出力する回路である。なお、第1の電極および第2の電極の位置は一例であり、特に限定されない。
【0026】
脈波計測部12は、ユーザの脈波を計測する。脈波計測部12は、例えば、光電脈波法を用いて脈波を計測する脈波センサである。光電脈波法は、赤外光または赤色光(反射型の場合は緑色光も使用可能)を体表面に照射し、体内を透過する光の変化量または体内で反射する光の変化量を、血流量の変化としてとらえる脈波の計測方法である。脈波計測部12は、例えば、ユーザの耳たぶ付近を対象として脈波を計測し、脈波データを出力する。
【0027】
制御部13は、加速度センサによって出力される加速度データ、脳波計測部11によって出力される脳波データ、および、脈波計測部12によって出力される脈波データを通信部15に端末装置20へ送信させる。制御部13は、具体的には、マイクロコンピュータによって実現されるが、プロセッサによって実現されてもよい。
【0028】
記憶部14は、加速度データ、脳波データ、および、脈波データを通信部15に送信させるために制御部13が実行するプログラムが記憶される記憶装置である。記憶部14には、脳波データ、および、脈波データが一時的に記憶されてもよい。記憶部14は、例えば、半導体メモリなどによって実現される。
【0029】
通信部15は、制御部13の制御に基づいて、脳波データ、および、脈波データを端末装置20に送信する。通信部15は、具体的には、無線通信を行う無線通信回路であるが、有線通信を行う有線通信回路であってもよい。通信部15によって行われる通信の通信規格は、特に限定されない。
【0030】
スピーカ16(
図2参照)は、制御部13の制御に基づいて音を出力する。つまり、生体計測器10は、イヤフォン機能を有する。スピーカ16は、一般的なイヤフォンに用いられるスピーカであってもよいし、骨伝導スピーカであってもよい。
【0031】
[端末装置]
端末装置20は、生体計測器10から脳波データ、および、脈波データを取得し、これらのデータに基づいてユーザの覚醒度の指標の値およびリラックス度の指標の値を算出し、これらの指標の値に基づいてユーザの覚醒度およびリラックス度を推定する。そして、端末装置20は、推定した覚醒度およびリラックス度に基づいて、ユーザの生理状態を判定する。端末装置20は、具体的には、スマートフォンまたはタブレット端末などの携帯型端末装置であるが、パーソナルコンピュータなどの据え置き型端末装置であってもよい。端末装置20は、例えば、通信部21と、情報処理部22と、記憶部23と、表示部24と、操作受付部25とを備える。
【0032】
[通信部]
通信部21は、脳波データ、および、脈波データを生体計測器10の通信部15から受信する。通信部21は、具体的には、無線通信を行う無線通信回路であるが、有線通信を行う有線通信回路であってもよい。通信部21によって行われる通信の通信規格は、特に限定されない。なお、通信部21は、端末装置20とサーバ装置30との通信にも用いられる。
【0033】
[情報処理部]
情報処理部22は、通信部21によって受信されたデータを入力として、ユーザの状態に応じた適切なタイミングでユーザに刺激を提示するための情報処理を行う。情報処理部22は、具体的には、マイクロコンピュータによって実現されるが、プロセッサによって実現されてもよい。情報処理部22は、具体的には、取得部22aと、第一推定部22bと、第二推定部22cと、刺激制御部22dと、表示制御部22eとを備える。
【0034】
取得部22aは、ユーザの脳波および脈波を取得する。
【0035】
第一推定部22bは、生体計測器10の脳波計測部11により計測されたユーザの大脳皮質の表面の電位である脳波を取得し、取得した脳波に基づいて、ユーザの覚醒度を推定する。第一推定部22bがユーザの覚醒度を推定するとは、第一推定部22b例えば、第一推定部22bは、ユーザにより設定された睡眠時間の開始時刻から終了時刻までの所定期間の少なくとも一部の期間(以下、対象期間ともいう)に計測された脳波に基づいて、ユーザの覚醒度の指標の値を算出し、算出した値に基づいてユーザの覚醒度を推定する。対象期間および覚醒度の推定方法の詳細については後述する。
【0036】
ここで、
図4を参照しながら脳波の種類および覚醒度の指標について説明する。
図4は、脳波の種類を周波数帯域別に示す図である。
図4に示されるように、脳波は、周波数帯域の違いにより4つのタイプに分類される。デルタ波(δ波)は、シータ波よりも周波数が遅い律動波であり、その周波数帯域は1Hz~3Hzである。デルタ波は、深い睡眠時に観察されることが知られている。シータ波は、アルファ波よりも周波数が遅い律動波であり、その周波数帯域は4~7Hzである。シータ波は、睡眠時に優位である。具体的には、シータ波は、浅い睡眠、または、レム(REM)睡眠時の脳波などに観察されることが知られている。アルファ波は、通常、覚醒時かつ閉眼時に観察される脳波で、律動波であり、その周波数帯域は8~13Hzである。ベータ波は、アルファ波よりも周波数が速い律動波であり、その周波数帯域は14~40Hzである。ベータ波は、生理的には覚醒、かつ開眼時、精神活動時に優位な脳波などに観察されることが知られている。
【0037】
覚醒度の指標は、言い換えると、ユーザの中枢神経系(脳と脊髄)の活動のうち、脳幹の間脳に位置する視床および視床下部などが介在する睡眠覚醒サイクルの制御(睡眠と覚醒との切り替え)の状態を示すパラメータ(以下、中枢神経活動パラメータともいう)であり、例えば、覚醒時に優位であるベータ波帯域のパワーに対する、睡眠時に優位であるシータ波帯域のパワーの比(θ/β比)であってもよい。この場合、θ/βの値が小さいほどユーザの覚醒度が高いと推定され、θ/βの値が大きいほどユーザの覚醒度が低いと推定される。
【0038】
また、覚醒度の指標は、全ての成分(例えば、1~40Hz)のパワーに占めるベータ波帯域の成分のパワーの比率であってもよい。この場合、全ての成分のパワーに占めるベータ波成分のパワー比率が大きいほど、ユーザの覚醒度が高いと推定され、全ての成分のパワーに占めるベータ波成分のパワー比率が小さいほど、ユーザの覚醒度が低いと推定される。
【0039】
また、覚醒度の指標は、全ての成分のパワーに占めるシータ波成分のパワーの比率が小さいほど、ユーザの覚醒度が高いと推定され、全ての成分のパワーに占めるシータ波成分のパワー比率が大きいほど、ユーザの覚醒度が低いと推定される。
【0040】
なお、このような選択的注意度の推定方法は一例であり、既存の他の方法が用いられてもよい。例えば、上述のパワーに代えて、パワースペクトル密度(μV/√Hz)、パワースペクトル密度の周波数積分値(μV)2(以下、パワーと表記)、または、μVpp(micro Volt peak-to-peak)などの指標が用いられてもよい。
【0041】
第二推定部22cは、生体計測器10の脈波計測部12により計測された脈波を取得し、取得した脈波に基づいて、ユーザのリラックス度を推定する。例えば、第二推定部22cは、ユーザにより設定された睡眠時間の開始時刻から終了時刻までの所定の期間の少なくとも一部の期間(いわゆる、対象期間)に計測された脈波に基づいて、ユーザのリラックス度の指標の値を算出し、算出した値に基づいてユーザのリラックス度を推定する。
【0042】
ここで、
図5を参照しながらリラックス度の指標について説明する。
図5は、リラックス度の指標について説明するための図である。
【0043】
リラックス度の指標は、言い換えると、ユーザの脳(脳幹)と心臓とを介在する自律神経系の活動の状態を示すパラメータ(以下、自律神経活動パラメータ)であり、例えば、RMSSD(Root Mean Square of Successive Difference)と呼ばれる迷走神経緊張強度の指標の値を脈波のピークの時間間隔(PP間隔ともいう)の平均で割った比率、すなわち、RMSSD/PP間隔平均(%)であってもよい。この場合、RMSSD/PP間隔平均(%)の値が大きいほどユーザのリラックス度が高いと推定され、RMSSD/PP間隔平均(%)の値が小さいほどユーザのリラックス度が低いと推定される。脈波のピークの時間間隔(PP間隔)は、例えば、
図5の(a)に示される心電波形の隣接するR波同士の間隔(RR間隔)に対応し、PP間隔の平均値は、例えば、10秒間のPP間隔から算出される。これは、
図5の(b)に示される心電波形の連続する複数のR波のうち隣接するR波同士の間隔(RR間隔)の10秒間の平均値に対応する。
【0044】
なお、リラックス度の指標は、上記の例に限られない。例えば、リラックス度の指標は30秒間のPP間隔から算出され、LF(Low Frequency)成分(周波数帯域0.04~0.15Hz)のパワー(交感神経系の活動の指標)およびHF(High Frequency)の成分(周波数帯域0.15~0.40Hz)のパワー(副交感神経系の活動の指標)との比率であるLF/HF比であってもよい。LF/HF比は、自律神経系を構成する交感神経系および副交感神経系の活動のバランスとみなされる場合があり、いわゆる、ストレス指数(交感神経の活性度)として使用される。例えば、LF/HF比が小さいほど、ユーザのリラックス度が高いと推定し、LF/HF比が大きいほど、ユーザのリラックス度が低い(つまり、ユーザが緊張している)と推定する。
【0045】
刺激制御部22dは、第一推定部22bにより推定された覚醒度、および、第二推定部22cにより推定されたリラックス度に基づいて、ユーザに刺激を提示するタイミングを決定し、決定されたタイミングでユーザへの刺激の提示を制御する信号(以下、刺激提示信号ともいう)を出力する。より具体的には、刺激制御部22dは、第一推定部22bにより推定された覚醒度、および、第二推定部22cにより推定されたリラックス度に基づいて、ユーザの状態を判定し、ユーザの覚醒度が低く、かつ、リラックス度が高い状態であると判定された回数が、一定の時間内に所定の回数確認された場合、刺激提示信号を出力する。
【0046】
例えば、ユーザにより入力された睡眠時間(例えば、20分)の設定の指示を受信すると、刺激制御部22dは、ユーザの覚醒度が低く、かつ、リラックス度が高い状態であると判定された回数が、睡眠時間(例えば、20分)の半分に相当する回数(例えば、10回)確認された場合に、刺激提示信号を出力する。また、例えば、刺激制御部22dは、ユーザの覚醒度が低く、かつ、リラックス度が高い状態であると判定された回数が、一定の時間内に所定の回数に到達する前に、睡眠時間の終了までの残り時間が所定の時間未満となった場合に、刺激提示信号を出力してもよい。一定の時間は、例えば、ユーザにより設定された睡眠時間(例えば、20分)の9割の長さの時間(例えば、18分)であってもよい。
【0047】
また、刺激制御部22dは、算出されたユーザの覚醒度の指標の値とリラックス度の指標の値との組である座標を、覚醒度の指標およびリラックス度の指標の2軸で表される座標平面にプロットしてもよい。
【0048】
また、刺激制御部22dは、例えば、リラックス度の指標の第二閾値を決定してもよい。例えば、刺激制御部22dは,算出された複数の座標のそれぞれを座標平面上に時系列順にプロットし、覚醒度の指標の値が初めて第一閾値以上となった座標の前記リラックス度の指標の値を第二閾値に決定してもよい。
【0049】
また、例えば、刺激制御部22dは,算出された複数の座標のそれぞれを座標平面上に時系列順にプロットし、覚醒度の指標の値が初めて第一閾値以上となった座標と、当該座標の直前にプロットされた座標とを結ぶ直線と、当該直線と第一閾値を示す直線との交点の座標を算出し、算出された交点のリラックス度の指標の値を前記第二閾値に決定してもよい。
【0050】
また、例えば、刺激制御部22dは、所定の時間内に座標平面にプロットされた座標を含む2以上の座標の覚醒度の指標の値がいずれも第一閾値より小さい場合、2以上の座標を通る直線と、第一閾値を示す境界線との交点のリラックス度の指標の値を第二閾値に決定してもよい。
【0051】
また、例えば、刺激制御部22dは、所定の時間内に座標平面にプロットされた座標を含む2以上の座標の覚醒度の指標の値がいずれも第一閾値より小さい場合、2以上の座標のうちのいずれかの座標の覚醒度の指標の値と第一閾値との差分が所定の範囲内にあるとき、覚醒度の指標の値に対応するリラックス度の指標の値を第二閾値に決定してもよい。
【0052】
また、例えば、刺激制御部22dは、所定の時間内に座標平面にプロットされた座標を含む2以上の座標の覚醒度の指標の値がいずれも第一閾値より小さい場合、記憶部23に格納されたデータに基づいて、第二閾値を決定してもよい。
【0053】
刺激制御部22dは、ユーザにより設定された睡眠時間内における全ての覚醒度の指標の値が第一閾値より小さく、かつ、全ての覚醒度の指標の値と第一閾値との差分が所定の範囲を超える場合、睡眠時間内における全てのリラックス度の指標の値の中央値を第二閾値と決定してもよい。
【0054】
なお、刺激制御部22dの具体的な動作については後述する。
【0055】
表示制御部22eは、第一推定部22bにより推定された覚醒度、および、第二推定部22cにより推定されたリラックス度に基づいて、ユーザに提示する表示情報を生成し、生成した表示情報を出力してもよい。表示情報については、上述したため、ここでの説明を省略する。
【0056】
[記憶部]
記憶部23は、情報処理部22がユーザの状態に応じた適切なタイミングでユーザに刺激を提示するための情報処理を行うために実行するプログラム、当該情報処理に必要な各種情報などが記憶される記憶装置である。また、記憶部23は、推定されたユーザの覚醒度およびリラックス度を含むデータを格納してもよい。記憶部23は、例えば、半導体メモリなどによって実現される。
【0057】
[表示部]
表示部24は、情報処理部22(より詳細には、表示制御部22e)の制御に基づいて表示情報を表示する。表示情報は、ユーザの覚醒度およびリラックス度に基づいて生成される。表示情報は、例えば、ユーザの生理状態の時系列データを示す表またはグラフであってもよいし、ユーザの体調管理または睡眠管理に関するアドバイスであってもよいし、ユーザの睡眠の傾向に関する情報であってもよい。表示部24は、例えば、液晶パネルまたは有機EL(Electro Luminescence)パネルなどの表示パネルによって実現される。
【0058】
[操作受付部]
操作受付部25は、ユーザの操作を受け付ける。操作受付部25は、例えば、タッチパネルによって実現されるが、ハードウェアボタンによって実現されてもよい。
【0059】
[サーバ装置]
サーバ装置30は、例えばクラウド(言い換えると、クラウドサーバ)として実現されてもよい。例えば、サーバ装置30は、端末装置20で行われる処理の一部または全部を行ってもよい。より具体的には、サーバ装置30は、端末装置20の情報処理部22に含まれる構要素を備えてもよいし、備えなくてもよい。また、サーバ装置30および端末装置20における構成要素の振り分けは、特に限定されず、各構成要素が端末装置20およびサーバ装置30に同様に振り分けられてもよい。
【0060】
[刺激提示部]
刺激提示部40は、端末装置20からの出力された制御信号に基づいて、端末装置20により決定されたタイミングでユーザに刺激を提示する。刺激提示部40は、例えば、光、音、または、振動もしくはそれらのいずれかが組み合わされた刺激をユーザに提示する。なお、ユーザに刺激を提示するとは、ユーザに刺激を与えることである。刺激提示部40がユーザに光による刺激を提示するとは、例えば、ライトが点灯することであり、音による刺激を提示するとは、例えば、スピーカが音声を出力することであり、振動による刺激を提示するとは、例えば、バイブレータが振動を発生することである。
【0061】
刺激提示部40は、端末装置20から出力されたユーザへの刺激の提示を制御する信号を取得してもよく、コントローラー50(
図1参照)を介して当該信号を取得してもよい。
【0062】
また、刺激提示部40は、例えば、端末装置20に備えられてもよく、生体計測器10に備えられてもよく、これらとは別の装置に備えられてもよい。また、刺激提示システム100は、2つ以上の刺激提示部40を備えてもよい。
【0063】
[刺激提示システムの動作]
続いて、刺激提示システム100の動作について図面を参照しながら説明する。
【0064】
[動作例1]
まず、刺激提示システム100の動作例1について説明する。
図6は、刺激提示システム100の動作例1のフローチャートである。
【0065】
図6に示されるように、端末装置20の取得部22aは、生体計測器10の脳波計測部11で計測されたユーザの脳波、および、脈波計測部12により計測されたユーザの脈波を取得する(S101)。取得部22aは、取得した脳波を第一推定部22bに出力し、脈波を第二推定部22cに出力する(不図示)。取得部22aは、ユーザにより設定された睡眠時間の開始時刻から終了時間までの少なくとも一部の期間(いわゆる、対象期間)に計測された脳波および脈波を取得してもよい。そして、取得部22aは、取得した脳波を第一推定部22bに出力し、脈波を第二推定部22cに出力してもよい。取得部22aは、睡眠時間の終了時刻まで、対象期間(例えば、一定時間)毎の脳波および脈波を、順次、第一推定部22bおよび第二推定部22cに出力してもよい。
【0066】
続いて、第一推定部22bは、取得した脳波に基づいて、ユーザの覚醒度を推定する(S102)。より具体的には、第一推定部22bは、脳波に基づいて覚醒度の指標を算出し、算出した覚醒度の指標の値が第一閾値よりも小さい場合、覚醒度は高いと推定し、覚醒度の指標の値が第一閾値以上である場合、覚醒度は低いと推定する。上述したように、覚醒度の指標は、例えば、θ/βであってもよい。第一閾値は、ユーザの覚醒状態と睡眠状態との境界を示す値であり、覚醒度の指標がθ/βで表される場合、第一閾値は、例えば1である。第一推定部22bは、覚醒度の指標の値が第一閾値以上となる時点をユーザの入眠時点と推定してもよい。
【0067】
第二推定部22cは、取得した脈波に基づいて、ユーザのリラックス度を推定する(S103)。より具体的には、第二推定部22cは、脈波に基づいてリラックス度の指標を算出し、算出したリラックス度の指標の値が第二閾値よりも小さい場合、リラックス度は小さいと推定し、リラックス度の指標の値が第二閾値以上である場合、リラックス度は大きいと推定する。上述したように、リラックス度の閾値は、例えば、RMSSD/PP間隔平均(%)であってもよい。
【0068】
なお、ステップS102とステップS103とは同時に行われてもよいし、ステップS103の後にステップS102が行われてもよい。
【0069】
続いて、刺激制御部22dは、ステップS102で推定されたユーザの覚醒度、および、ステップS103で推定されたユーザのリラックス度に基づいて、ユーザに刺激を提示するタイミングを決定する(S104)。例えば、刺激制御部22dは、ユーザの覚醒度およびリラックス度に基づいて、ユーザの覚醒度が低く、かつ、ユーザのリラックス度が高いと判定された回数が、一定の時間内に所定の回数確認された場合、刺激提示信号を出力する。例えば、ユーザにより入力された睡眠時間(例えば、20分)の設定の指示を受信すると、刺激制御部22dは、ユーザの覚醒度が低く、かつ、リラックス度が高い状態であると判定された回数が、睡眠時間(例えば、20分)の半分に相当する回数(例えば、10回)確認された場合に、刺激提示信号を出力する。また、例えば、刺激制御部22dは、ユーザの覚醒度が低く、かつ、リラックス度が高い状態であると判定された回数が、一定の時間内に所定の回数に到達する前に、睡眠時間の終了までの残り時間が所定の時間未満となった場合に、刺激提示信号を出力してもよい。一定の時間は、例えば、ユーザにより設定された睡眠時間(例えば、20分)の9割の長さの時間(例えば、18分)であってもよい。
【0070】
続いて、刺激制御部22dは、ステップS104で決定されたタイミングでユーザへの刺激の提示を制御する信号(つまり、刺激提示信号)を出力する(S105)。
【0071】
続いて、刺激提示部40は、ステップS105で刺激制御部22dから出力された刺激提示信号を受信すると(不図示)、刺激提示信号に基づいて、ユーザに刺激を提示する(S106)。例えば、刺激提示部40がライトである場合、刺激提示部40は、刺激提示信号に基づいて、決定されたタイミングに点灯し、光の明るさを徐々に明るくしつつ、光色を黄白色から青白色へと変化させる。
【0072】
以上説明したように、刺激提示システム100は、生体計測器10によって計測されるユーザの生体信号(脳波および脈波)に基づいて、ユーザの覚醒度(いわゆる、中枢神経系の活動の状態)、および、ユーザのリラックス度(いわゆる、自律神経系の活動の状態)を推定することができる。これにより、刺激提示システム100は、ユーザの状態(つまり、生理状態)を判定し、ユーザの状態に応じた適切なタイミングでユーザを睡眠から覚醒させるための刺激を提示することができる。
【0073】
[動作例2]
続いて、刺激提示システム100の動作例2について説明する。
図7は、刺激提示システム100の動作例2のフローチャートである。
【0074】
端末装置20の取得部22aは、生体計測器10の脳波計測部11で計測されたユーザの脳波、および、脈波計測部12により計測されたユーザの脈波を取得し、取得した脳波を第一推定部22bに出力し、脈波を第二推定部22cに出力する(不図示)。取得部22aは、対象期間毎に脳波および脈波を取得して、第一推定部22bおよび第二推定部22cに出力してもよい。
【0075】
続いて、
図7に示されるように、第一推定部22bは、取得した脳波に基づいて、ユーザの覚醒度が低いか否かを推定し(S201)、ユーザの覚醒度が低くない(つまり、覚醒度が高い)と推定した場合(S201でNo)、覚醒度が高い状態が所定時間(例えば、1分)維持されているか否かを判定する(S202)。刺激制御部22dは、ユーザの覚醒度が高い状態が所定時間(1分)維持されていると判定した場合(S202でYes)、睡眠時間の終了時間までの残り時間が所定時間(例えば、2分)未満であるか否かを判定する(S203)。そして、ステップS203において、刺激制御部22dは、残り時間が所定時間(2分)未満でないと判定した場合(No)、ステップS201に戻り、第一推定部22bは、新たに取得した脳波に基づいて、ユーザの覚醒度が低いか否かを推定する。一方、ステップS202において、刺激制御部22dは、ユーザの覚醒度が高い状態が所定時間(1分)維持されていないと判定した場合(No)、ステップS201に戻り、第一推定部22bは、新たに取得した脳波に基づいて、ユーザの覚醒度が低いか否かを推定する。また、刺激制御部22dは、ステップS202においてユーザの覚醒度が高い状態が所定時間(1分)維持され(Yes)、かつ、ステップS203において終了時間までの残り時間が所定時間(2分)未満でないと判定した場合(No)、ステップS201に戻り、第一推定部22bは、新たに取得した脳波に基づいて、ユーザの覚醒度が低いか否かを推定する。
【0076】
一方、ステップS201において、第一推定部22bは、ユーザの覚醒度が低いと推定した場合(Yes)、第二推定部22cは、取得した脈波に基づいて、ユーザのリラックス度が高いか否かを推定する(S204)。そして、第二推定部22cは、ユーザのリラックス度が高いと推定した場合(S204でYes)、刺激制御部22dは、リラックス度が高い状態が所定時間(例えば、1分)維持されているか否かを判定する(S205)。刺激制御部22dは、ユーザのリラックス度が高い状態が所定時間(1分)維持されていると判定した場合(Yes)、覚醒度が低く、かつ、リラックス度が高いと判定された回数をカウントする(つまり、当該回数に1を加える)(S206)。そして、刺激制御部22dは、ステップS206でカウントされた回数が所定回数(例えば、10回)に到達したか否かを判定し(S207)、所定回数に到達していないと判定した場合(S207でNo)、ステップS201に戻り、第一推定部22bは、新たに取得した脳波に基づいて、ユーザの覚醒度が低いか否かを推定する。一方、ステップS204において、第二推定部22cは、ユーザのリラックス度が高くない(つまり、リラックス度が低い)と判定した場合(No)、ステップS201に戻り、第一推定部22bは、新たに取得した脳波に基づいて、ユーザの覚醒度が低いか否かを推定する。また、刺激制御部22dは、ステップS205においてユーザのリラックス度が高い状態が所定時間(1分)維持されていないと判定した場合(No)、ステップS201に戻り、第一推定部22bは、新たに取得した脳波に基づいて、ユーザの覚醒度が低いか否かを推定する。
【0077】
刺激制御部22dは、ステップS203において終了時間までの残り時間が所定時間(2分)未満と判定した場合(Yes)、または、ステップS207において、ステップS206でカウントされた回数が所定回数(10回)に到達したと判定した場合(Yes)、ユーザに刺激を提示する制御信号(つまり、刺激提示信号)を出力する(S208)。
【0078】
続いて、刺激提示部40は、取得した制御信号(つまり、刺激提示信号)に基づいて、ユーザに刺激を提示する(S209)。上述したように、このとき、例えば刺激提示部40がライトである場合、取得した刺激提示信号(例えば、制御パターン1とする)に基づいて点灯し、光の明るさおよび色調を徐々に変化させてもよい。
【0079】
そして、刺激制御部22dは、第一推定部22bにより推定されたユーザの覚醒度が高いか否かを判定し(S210)、ユーザの覚醒度が高くないと判定した場合(S210でNo)、ステップS209に戻り、刺激提示信号(例えば、制御パターン2とする)に基づいてユーザに刺激を提示する。そして、刺激制御部22dは、第一推定部22bにより推定されたユーザの覚醒度が高いか否かを判定し(S210)、ユーザの覚醒度が高いと判定した場合(S210でYes)、刺激の提示の終了を指示する信号(終了指示信号)を出力する(S211)。
【0080】
刺激提示部40は、終了指示信号を取得すると(不図示)、刺激の提示を終了する(S212)。
【0081】
以上説明したように、刺激提示システム100は、(1)ユーザの状態が、覚醒度が低く、かつ、リラックス度が高い状態であると判定された回数が所定回数に到達した場合、(2)当該回数が所定回数に到達する前に所定時間が終了する場合、または、(3)ユーザの状態が、覚醒度が低く、かつ、リラックス度が高い状態に一度もならずに時間切れとなる場合に、ユーザに刺激を提示してユーザの覚醒度が高くなったときに刺激の提示を終了することができる。したがって、刺激提示システム100は、ユーザの状態に応じた適切な睡眠環境制御を行うことができる。
【0082】
[動作例3]
続いて、刺激提示システム100の動作例3について説明する。
図8は、刺激提示システム100の動作例3のフローチャートである。動作例3では、第一推定部22bおよび第二推定部22cにより、ユーザの状態が、覚醒度が低く、かつ、リラックス度が高いと推定されたものの、刺激制御部22dが判定を行う前に時間切れになる場合に、刺激提示信号を出力する点で、動作例2と異なる。具体的には、動作例2のステップS204とS205との間に、ステップS305の終了時間までの残り時間が所定時間(2分)未満であるか否かの判定処理が追加された点が異なる。
【0083】
以上により、刺激提示システム100は、ユーザが設定した睡眠時間の終了時間までにユーザを覚醒させるように制御することができる。
【0084】
[リラックス度の指標の第二閾値の決定方法]
続いて、リラックス度の指標の第二閾値の決定方法について説明する。以下では、図中の1、2、および、3などの番号は、脳波および脈波が計測された対象期間の時間的な順番を示している。また、覚醒度の指標の値は、縦軸の上方向(覚醒方向)に向かうほどθ/βの値は小さくなり、縦軸の下方向(眠気方向)に向かうほどθ/βの値は大きくなる。また、ユーザの状態を視覚的に理解しやすいように、「覚醒」、「眠気」「緊張」および「リラックス」と記載している。
【0085】
[第1例]
まず、リラックス度の指標の第二閾値を決定する方法の第1例について説明する。
図9は、第二閾値の決定方法の第1例を説明するための図である。
【0086】
まず、
図9の(a)に示されるように、刺激制御部22dは、第一推定部22bにより算出されたユーザの覚醒度の指標の値とリラックス度の指標の値との組である座標を、覚醒度の指標およびリラックス度の指標の2軸で表される座標平面上にプロットする。点1は、仮眠前のユーザの状態を示している。ユーザは設定した睡眠時間が開始すると、ユーザの状態は、仮眠前(点1)よりも覚醒度が低くなり、リラックス度が高くなる方向に遷移する(点2)。点1および点2が第一閾値よりも覚醒側にあるため、ユーザは覚醒度が高い状態であると判定される。
【0087】
続いて、
図9の(b)に示されるように、時間の経過とともに、ユーザの状態は、覚醒度が高い状態(点1および点2)から覚醒度が低い状態(眠気状態)に遷移している(点3)。このとき、刺激制御部22dは、覚醒度の指標が第一閾値(θ/β=1)よりも大きくなった時点(つまり、点3)が入眠時点であると判定する。つまり、
図9の(b)に示されるように、刺激制御部22dは、ユーザが入眠した時点のリラックス度の指標の値(例えば、RMSSD/PP間隔平均(%))を第二閾値(図中の境界値)と決定する。
【0088】
続いて、
図9の(c)に示されるように、刺激制御部22dは、覚醒度の指標(いわゆる、中枢神経活動パラメータ)の第一閾値(θ/β=1)およびリラックス度の指標(いわゆる、自律神経活動パラメータ)の第二閾値(RMSSD/PP間隔平均(%)))で座標平面を4つの領域に区分する。これらの閾値で区分される4つの領域は、ユーザの状態の判定に用いられる。以下、4つの領域ののうち右上領域を第1象限、左上領域を第2象限、左下領域を第3象限、右下領域を第4象限ともいう。刺激制御部22dは、プロットされた点がどの象限に位置するかを判定することにより、ユーザの状態を判定する。
【0089】
なお、刺激制御部22dは,算出された複数の座標のそれぞれを座標平面上に時系列順にプロットし、覚醒度の指標の値が初めて第一閾値以上となった座標のリラックス度の指標の値を第二閾値に決定してもよい。
【0090】
これにより、刺激提示システム100は、覚醒度の指標の値が第一閾値以上となったとき、つまり、ユーザが入眠したと推定されたときのリラックス度の指標の値を第二閾値に決定するため、簡便に第二閾値を決定することができる。
【0091】
なお、刺激制御部22dは,算出された複数の座標のそれぞれを座標平面上に時系列順にプロットし、覚醒度の指標の値が初めて第一閾値以上となった座標と、当該座標の直前にプロットされた座標とを結ぶ直線と、直線と第一閾値を示す直線との交点の座標を算出し、算出された交点のリラックス度の指標の値を第二閾値に決定してもよい。
【0092】
これにより、刺激提示システム100は、直線と第一閾値を示す直線との交点におけるリラックス度の指標の値を第二閾値に決定するため、簡便に第二閾値を決定することができる。
【0093】
[第2例]
続いて、リラックス度の指標の第二閾値を決定する方法の第2例について説明する。
図10は、第二閾値の決定方法の第2例を説明するための図である。第2例では、第1例と異なり、ユーザの状態が覚醒状態から眠気状態に遷移しない場合に第二閾値を決定する方法を説明する。
【0094】
第2例では、刺激制御部22dは、所定の時間内(例えば、3分以内)に座標平面にプロットされた座標を含む2以上の座標の覚醒度の指標の値がいずれも第一閾値より大きい場合、2以上の座標を通る直線と、第一閾値を示す境界線との交点のリラックス度の指標の値を第二閾値に決定する。
【0095】
例えば、
図10の(a)に示されるように、ユーザは設定した睡眠時間が開始すると、ユーザの状態は、仮眠前(点1)よりも覚醒度が低くなり、リラックス度が高くなる方向に遷移する(点2)。しかしながら、点3の時点で、ユーザのリラックス度は高くなったものの、ユーザの覚醒度が低い状態に遷移しない。この場合、点1、点2、点3を通る直線(例えば、近似直線)を引く。
【0096】
続いて、
図10の(b)に示されるように、刺激制御部22dは、近似直線と、第一閾値を示す境界線との交点におけるリラックス度の指標の値を第二閾値(図中の境界値)と決定する。
【0097】
続いて、
図10の(c)に示されるように、刺激制御部22dは、覚醒度の指標の第一閾値(θ/β=1)およびリラックス度の指標の第二閾値(RMSSD/PP間隔平均(%)))で座標平面を4つの領域(I:第1象限、II:第2象限、III:第3象限、IV:第4象限)に区分する。そして、刺激制御部22dは、プロットされた点がどの象限に位置するかを判定することにより、ユーザの状態を判定する。
【0098】
これにより、刺激制御部22dは、直線と第一閾値との交点の座標を求めることで、簡便に第二閾値を決定することができる。
【0099】
[第3例]
続いて、リラックス度の指標の第二閾値を決定する方法の第3例について説明する。
図11は、第二閾値の決定方法の第3例を説明するための図である。第3例では、ユーザの覚醒度の指標の値と第一閾値との差分が所定の範囲内にあるとき、当該指標の値に対応するリラックス度の指標の値を第二閾値とする点で、第2例と異なる。
【0100】
第3例では、刺激制御部22dは、所定の時間内に座標平面にプロットされた座標を含む2以上の座標の覚醒度の指標の値がいずれも第一閾値より大きい場合、2以上の座標のうちのいずれかの座標の覚醒度の指標の値と第一閾値(θ/β=1)との差分が所定の範囲内(0.2以内、すなわち、θ/β=0.8以上1以下)にあるとき、覚醒度の指標の値に対応するリラックス度の指標の値を第二閾値に決定する。
【0101】
例えば、
図11の(a)に示されるように、ユーザは設定した睡眠時間が開始すると、ユーザの状態は、仮眠前(点1)よりも覚醒度が低くなり、リラックス度が高くなる方向に遷移する(点2)。
【0102】
しかしながら、
図11の(b)に示されるように、ユーザの状態は、点2よりも点3で、第一閾値との差分が所定の範囲から離れ、点3から点4に遷移すると、点4における覚醒度の指標の値と第一閾値との差分が所定の範囲内に入る。刺激制御部22dは、点4におけるユーザのリラックス度の指標の値を第二閾値(図中の境界値)と決定する。
【0103】
続いて、
図10の(c)に示されるように、刺激制御部22dは、覚醒度の指標の第一閾値(θ/β=1)およびリラックス度の指標の第二閾値(RMSSD/PP間隔平均(%)))で座標平面を4つの領域(I:第1象限、II:第2象限、III:第3象限、IV:第4象限)に区分する。そして、刺激制御部22dは、プロットされた点がどの象限に位置するかを判定することにより、ユーザの状態を判定する。
【0104】
これにより、刺激制御部22dは、プロットされた座標の覚醒度の指標の値と第一閾値との差分が所定の範囲の値であるか否かを判定することにより、簡便に第二閾値を決定することができる。
【0105】
なお、刺激制御部22dは、ユーザにより設定された睡眠時間内における全ての覚醒度の指標の値が第一閾値より大きく、かつ、全ての覚醒度の指標の値と第一閾値との差分が所定の範囲を超える場合、(言い換えると、ユーザの覚醒度が高く、第一閾値の近傍に遷移せずに睡眠時間が終了した場合、)睡眠時間内における全てのリラックス度の指標の値の中央値を第二閾値と決定してもよい。
【0106】
これにより、入眠しにくい性質のユーザに対しても、睡眠環境の制御が可能となる。
【0107】
[表示例]
続いて、表示部24に表示される表示情報について説明する。
図12は、表示情報の一例を示す図である。
【0108】
表示制御部22eは、第一推定部22bおよび第二推定部22cにより推定された覚醒度およびリラックス度に基づいて、ユーザに提示する表示情報を生成し、生成した表示情報を出力する。表示部24は、表示制御部22eから出力された表示情報を表示する。
【0109】
ここでは、表示情報は、睡眠時間におけるユーザの覚醒度およびリラックス度の指標の値の遷移を示すグラフである。端末装置20の表示部24には、グラフが表示され、ユーザは、自身の睡眠の質などを把握することができる。
【0110】
表示情報には、睡眠コントロールのためのアドバイス、または、ユーザにとって適切な睡眠時間などが含まれてもよい。
【0111】
[実施例]
続いて、本実施の形態に係る刺激提示システム100を適用してユーザの状態を判定してユーザに刺激を提示した場合(実施例1)のユーザの状態と、所定の時間でユーザに刺激を提示した場合(比較例1)のユーザの状態と、について検証した結果を説明する。睡眠時間はいずれも20分である。被験者は、比較例1および実施例1のいずれの場合も生体計測器10を装着して仮眠した。
【0112】
[比較例1]
図13は、比較例1における刺激提示の制御条件を示す図である。20分間の仮眠において、
図13に示されるように、前半18分間の真っ暗な状態(光環境)から、後半2分間に、ユーザの覚醒を促すために、ライトを点灯し、光の明るさおよび色調を徐々に上げた漸増光で覚醒制御を行った。ユーザの状態を示す結果を
図14に示す。
【0113】
図14に示されるように、比較例1では、ユーザは緊張で、かつ、覚醒の状態で起床した。ライトの点灯開始のタイミングが悪く、ユーザは交感神経系が優位な状態であったためであると考えられる。そのため、ユーザをリラックスさせつつ、覚醒させる目的が達成できていない。点灯前よりも仮眠後の方が、リラックス度が僅かに上昇する理由は、点灯前にリラックス度が最小値を示したため、副交感神経系によるリラックス度を上昇させる調節が働いたためと考えられる。
【0114】
[実施例1]
図15は、実施例1の結果を示す図である。
図15に示されるように、実施例1では、ユーザは、副交感神経系が優位なリラックス状態、かつ、覚醒度が低い状態で起床した。すなわち、ユーザが睡眠状態から覚醒状態に移行する際に、リラックス度を僅かな減少に抑える(より詳細には、交感神経系の活動の上昇を必要最小限度に抑える)ことができた。この結果から、黄白色漸増光を当てることによる目的(ユーザにリラックスを保たせながら覚醒させる)が達成されている。
【0115】
以上の実験結果から、ユーザの睡眠制御を時間で行うよりはむしろ、ユーザの状態を判定しながら適切なタイミングで刺激を与えることにより、ユーザの睡眠をより適切に制御することができることが確認できた。
【0116】
[効果など]
以上説明したように、刺激提示システム100は、ユーザを睡眠から覚醒させるための刺激を提示する刺激提示システムであって、ユーザの脳波および脈波を取得する取得部22aと、取得部22aにより取得されたユーザの脳波に基づいて、ユーザの覚醒度を推定する第一推定部22bと、取得部22aにより取得されたユーザの脈波に基づいて、ユーザのリラックス度を推定する第二推定部22cと、推定されたユーザの覚醒度およびリラックス度に基づいて、ユーザに刺激を提示するタイミングを決定し、決定されたタイミングでユーザへの刺激の提示を制御する信号を出力する刺激制御部22dと、を備える。
【0117】
このような刺激提示システム100は、取得したユーザの脳波および脈波などの生体情報に基づいてユーザの覚醒度およびリラックス度を推定するため、ユーザの状態に応じて適切なタイミングでユーザに刺激を提示することができる。そのため、刺激提示システム100は、ユーザの状態に応じて適切にユーザの睡眠環境を制御することができる。
【0118】
また、例えば、刺激制御部22dは、ユーザの覚醒度が低く、かつ、ユーザのリラックス度が高いと判定された回数が、一定の時間内に所定の回数確認された場合、信号を出力する。
【0119】
このような刺激提示システム100は、ユーザの入眠できている状態が所定の回数確認された場合に、ユーザを睡眠から覚醒させるための刺激を提示するため、ユーザは効果的な睡眠を取ることができて、より良い状態で睡眠から覚醒することができる。
【0120】
また、例えば、刺激提示システム100は、さらに、ユーザの操作を受け付ける操作受付部25を備え、操作受付部25は、ユーザにより入力された睡眠時間の設定の指示を受け付け、刺激制御部22dは、睡眠時間の設定の指示を示す信号を受信すると、ユーザの覚醒度が低く、かつ、ユーザのリラックス度が高いと判定された回数が睡眠時間の半分の時間に相当する回数確認された場合に、ユーザへの刺激の提示を制御する信号を出力する。
【0121】
このような刺激提示システム100は、ユーザが設定した睡眠時間の中で、ユーザの状態に応じた適切なタイミングでユーザに刺激を提示することができる。そのため、刺激提示システム100は、ユーザに効果的に睡眠と適切な状態での覚醒とを提供することができる。
【0122】
また、例えば、刺激制御部22dは、ユーザの覚醒度が低く、かつ、ユーザのリラックス度が高いと判定された回数が、一定の時間内に所定の回数に到達する前に、睡眠時間の終了までの残り時間が所定の時間未満となった場合に、ユーザへの刺激の提示を制御する信号を出力する。
【0123】
このような刺激提示システム100は、ユーザが設定した睡眠時間内でユーザの睡眠環境を制御することができる。
【0124】
また、例えば、第一推定部22bは、脳波のパワーに基づいて覚醒度の指標を算出し、算出した覚醒度の指標の値が第一閾値よりも小さい場合、覚醒度は高いと推定し、覚醒度の指標の値が第一閾値以上である場合、覚醒度は低いと推定し、第一閾値は、ユーザの覚醒状態と睡眠状態との境界を示す値であり、覚醒度の指標の値が第一閾値以上となる時点をユーザの入眠時点と推定し、第二推定部22cは、脈波に基づいてリラックス度の指標を算出し、算出したリラックス度の指標の値が第二閾値よりも小さい場合、リラックス度は小さいと推定し、リラックス度の指標の値が第二閾値以上である場合、リラックス度は大きいと推定する。
【0125】
このような刺激提示システム100は、中枢神経系の活動状態を示す指標に基づいてユーザの覚醒度を推定し、自律神経系の活動状態を示す指標に基づいてユーザのリラックス度を推定するため、より正確にユーザの状態を判定することができる。また、ユーザの覚醒状態と睡眠状態との境界を示す値を第一閾値として使用することにより、ユーザの入眠時点を容易に推定することができる。そのため、刺激提示システム100は、ユーザの状態に応じて適切にユーザの睡眠環境を制御することができる。
【0126】
また、例えば、刺激制御部22dは、算出されたユーザの覚醒度の指標の値とリラックス度の指標の値との組である座標を、覚醒度の指標およびリラックス度の指標の2軸で表される座標平面上にプロットする。
【0127】
このような刺激提示システム100は、ユーザの状態を2つの閾値で区分けされた領域で判定することができるため、より適切にユーザの状態を判定することができる。
【0128】
また、例えば、刺激制御部22dは,算出された複数の座標のそれぞれを座標平面上に時系列順にプロットし、覚醒度の指標の値が初めて第一閾値以上となった座標のリラックス度の指標の値を第二閾値に決定する。
【0129】
このような刺激提示システム100は、覚醒度の指標の値が第一閾値以上となったとき、つまり、ユーザが入眠したと推定されたときのリラックス度の指標の値を第二閾値に決定するため、簡便に第二閾値を決定することができる。
【0130】
また、例えば、刺激制御部22dは,算出された複数の座標のそれぞれを座標平面上に時系列順にプロットし、覚醒度の指標の値が初めて第一閾値以上となった座標と、当該座標の直前にプロットされた座標とを結ぶ直線と、直線と第一閾値を示す直線との交点の座標を算出し、算出された交点のリラックス度の指標の値を第二閾値に決定する。
【0131】
このような刺激提示システム100は、直線と第一閾値を示す直線との交点におけるリラックス度の指標の値を第二閾値に決定するため、簡便に第二閾値を決定することができる。
【0132】
また、例えば、刺激制御部22dは、所定の時間内に座標平面にプロットされた座標を含む2以上の座標の覚醒度の指標の値がいずれも第一閾値より小さい場合、2以上の座標を通る直線と、第一閾値を示す境界線との交点のリラックス度の指標の値を第二閾値に決定する。
【0133】
このような刺激提示システム100は、ユーザの覚醒度が高い状態で入眠しづらい場合でも、プロットされた2以上の点を通る直線を引くことで簡便に第二閾値を決定することができる。
【0134】
また、例えば、刺激制御部22dは、所定の時間内に座標平面にプロットされた座標を含む2以上の座標の覚醒度の指標の値がいずれも第一閾値より小さい場合、2以上の座標のうちのいずれかの座標の覚醒度の指標の値と第一閾値との差分が所定の範囲内にあるとき、覚醒度の指標の値に対応するリラックス度の指標の値を第二閾値に決定する。
【0135】
このような刺激提示システム100は、ユーザの覚醒度の指標の値と第一閾値との差分を取ることで、簡便に第二閾値を決定することができる。
【0136】
また、例えば、刺激提示システム100は、さらに、推定されたユーザの覚醒度およびリラックス度を含むデータを格納する記憶部を備え、刺激制御部は、所定の時間内に座標平面にプロットされた座標を含む2以上の座標の覚醒度の指標の値がいずれも第一閾値より小さい場合、記憶部に格納されたデータに基づいて、第二閾値を決定する。
【0137】
このような刺激提示システム100は、例えば、ユーザが不眠気味などの性質であっても、ある程度適切に睡眠環境を制御することができる。
【0138】
また、例えば、刺激制御部22dは、ユーザにより設定された睡眠時間内における全ての覚醒度の指標の値が第一閾値より小さく、かつ、全ての覚醒度の指標の値と第一閾値との差分が所定の範囲を超える場合、睡眠時間内における全てのリラックス度の指標の値の中央値を第二閾値と決定する。
【0139】
このような刺激提示システム100は、例えば、不眠気味などのユーザの性質に応じて、適切にユーザの睡眠環境を制御することができる。
【0140】
また、例えば、刺激提示システム100は、さらに、推定された覚醒度およびリラックス度に基づいてユーザに提示する表示情報を生成し、生成した表示情報を出力する表示制御部を備える。
【0141】
このような刺激提示システム100は、ユーザに自身の状態を把握させることができる。
【0142】
また、刺激提示システム100などのコンピュータが実行する刺激提示方法は、ユーザを睡眠から覚醒させるための刺激を提示する刺激提示方法であって、ユーザの脳波および脈波を取得する取得ステップと、取得ステップにより取得されたユーザの脳波に基づいて、ユーザの覚醒度を推定する第一推定ステップと、取得ステップにより取得されたユーザの脈波に基づいて、ユーザのリラックス度を推定する第二推定ステップと、推定されたユーザの覚醒度およびリラックス度に基づいて、ユーザに刺激を提示するタイミングを決定し、決定されたタイミングでユーザへの刺激の提示を制御する信号を出力する刺激制御ステップと、を含む。
【0143】
このような刺激提示方法は、取得したユーザの脳波および脈波などの生体情報に基づいてユーザの覚醒度およびリラックス度を推定するため、ユーザの状態に応じて適切なタイミングでユーザに刺激を提示することができる。そのため、刺激提示方法は、ユーザの状態に応じて適切にユーザの睡眠環境を制御することができる。
【0144】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態では、情報処理部22は、所定のアルゴリズムに基づいて、ユーザの脳波および脈波からユーザの覚醒度およびリラックス度を推定し、覚醒度およびリラックス度に基づいてユーザに刺激を提示するタイミングを決定したが、機械学習モデルを用いて当該タイミングを決定してもよい。
【0145】
[刺激提示システムの構成]
図16は、他の実施の形態に係る刺激提示システムの機能構成の一例を示すブロック図である。
図16に示されるように、他の実施の形態に係る刺激提示システム100aは、生体計測器10と、端末装置20aと、サーバ装置30aと、刺激提示部40とを備える。
【0146】
刺激提示システム100aは、端末装置20aが学習部22fと機械学習モデル26とを備え、第一推定部22bおよび第二推定部22cを備えない点で、実施の形態に係る刺激提示システム100と異なる。以下、実施の形態に係る刺激提示システム100と異なる点を中心に説明し、重複する内容については説明を省略または簡略化する。
【0147】
[端末装置]
端末装置20aは、生体計測器10から脳波データおよび脈波データを取得し、取得した脳波および脈波の時系列データを機械学習モデル26に入力して得られる出力結果に基づいて、ユーザに刺激を提示するタイミングを決定する。そして、端末装置20aは、決定したタイミングでユーザへの刺激の提示を制御する信号を刺激提示部40へ出力する。機械学習モデル26は、脳波および脈波の時系列データと、刺激を提示するタイミングとの組を教師データとして、脳波および脈波の時系列データと刺激を提示するタイミングとの関係性を学習する。機械学習モデル26の学習は、学習部22fにより行われる。
【0148】
[情報処理部]
情報処理部220は、通信部21によって受信されたデータ(例えば、脳波データおよび脈波データ)を入力として、機械学習モデル26を用いて、ユーザの状態に応じた適切なタイミングでユーザに刺激を提示するための情報処理を行う。また、情報処理部220は、機械学習モデル26の学習と再学習(更新ともいう)とを行うための情報処理を行ってもよい。情報処理部220は、具体的には、マイクロコンピュータによって実現されるが、プロセッサによって実現されてもよい。情報処理部220は、例えば、機能的な構成要素として、取得部22aと、刺激制御部22dと、表示制御部22eと、学習部22fとを備える。これらの構成要素の機能は、例えば、情報処理部220を構成するマイクロコンピュータまたはプロセッサが記憶部23aに記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0149】
取得部22aは、ユーザの脳波および脈波を取得する。
【0150】
刺激制御部22dは、機械学習モデル26に、取得部22aにより取得された脳波および脈波の時系列データを入力して得られる出力結果に基づいて、ユーザに刺激を提示するタイミングを決定し、決定されたタイミングでユーザへの刺激の提示を制御する信号を出力する。
【0151】
表示制御部22eは、ユーザに提示する表示情報を生成し、生成した表示情報を表示部24へ出力する。表示情報は、例えば、機械学習モデル26により出力された出力結果であってもよい。出力結果は、例えば、ユーザに刺激を提示するタイミングを決定するために使用されるデータ(例えば、ユーザの覚醒度およびリラックス度の推移データ)であってもよいし、ユーザに刺激を提示するタイミング候補を示すデータであってもよい。タイミング候補は、例えば、1つのタイミングであってもよいが、一定の時間幅であってもよい。
【0152】
学習部22fは、機械学習モデル26を学習させる。学習は、教師データを用いて行われるが、教師データを用いずに行われてもよい。前者の場合、例えば、学習部22fは、脳波および脈波の時系列データと、刺激を提示するタイミングとの組を教師データとして機械学習モデル26を学習させてもよい。また、学習部22fは、ユーザへの刺激の提示が行われた後に、当該刺激の提示が行われたタイミングに対するユーザの評価を取得し、取得された評価に基づいて機械学習モデル26を再学習させることにより機械学習モデル26のパラメータを更新してもよい。教師データは、入力データとして脳波および脈波の時系列データと、出力データとして刺激の提示を行うタイミングとを有する。具体的には、教師データは、入力データとして脳波および脈波の時系列データと、出力データとして刺激の提示を行うタイミングとの組を含むデータセットであってもよいし、複数のデータセット(例えば、第1教師データおよび第2教師データ)を含んでもよい。例えば、第1教師データは、後述する第1機械学習モデルの学習に使用される教師データであり、例えば、入力データとして教師データの上記入力データ(つまり、脳波および脈波の時系列データ)と、出力データとして覚醒度およびリラックス度の推移との組を含むデータセットである。例えば、第2教師データは、第2機械学習モデルの学習に使用される教師データであり、入力データとして覚醒度およびリラックス度の推移と、出力データとして教師データの上記出力データ(つまり、刺激の提示を行うタイミング)との組を含むデータセットである。
【0153】
[記憶部]
記憶部23aは、情報処理部220が実行するコンピュータプログラムなどが記憶される記憶装置である。記憶部130は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)によって実現されるが、半導体メモリによって実現されてもよい。また、例えば、記憶部23aは、機械学習モデル26を記憶している。機械学習モデル26は、脳波および脈波の時系列データと、刺激を提示するタイミングとの関係性を予め学習させた学習済みのモデルである。機械学習モデル26は、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)、または、LSTM(Long Short Term Memory)などであってもよいが、これに限定されない。機械学習モデル26は、1つ以上のモデルから構成されてもよい。例えば、機械学習モデル26は、取得部22aにより取得された脳波および脈波の時系列データを入力として、ユーザの覚醒度およびリラックス度の推移の推定結果を出力する第1機械学習モデル(
図16で不図示)と、第1機械学習モデルから出力された推定結果を入力としてユーザに刺激を提示するタイミングを出力する第2機械学習モデル(
図16で不図示)とを含んでもよい。具体的には、機械学習モデル26は、第1機械学習モデルおよび第2機械学習モデルが連結された1つの機械学習モデルであってもよい。
【0154】
[サーバ装置]
サーバ装置30aは、例えば、クラウドサーバであり、端末装置20aで行われる処理の一部または全部を行ってもよい。例えば、サーバ装置30aは、端末装置20aから取得した脳波および脈波の時系列データと、刺激を提示するタイミングと、タイミングに対する評価とが紐づけられたデータを取得し、取得したデータを教師データとして記憶部33に記憶してもよい。また、サーバ装置30aは、機械学習モデル34を再学習することにより機械学習モデル34のパラメータを更新してもよい。そして、サーバ装置30aは、学習済みのパラメータを端末装置20aへ出力し、端末装置20aの記憶部23aに記憶された機械学習モデル26のパラメータを更新してもよい。
【0155】
[情報処理部]
情報処理部32は、例えば、機械学習モデル26の学習および再学習(更新ともいう)を行うための情報処理を行ってもよい。情報処理部32は、具体的には、マイクロコンピュータによって実現されるが、プロセッサによって実現されてもよい。情報処理部32は、例えば、機能的な構成要素として、学習部32aを備える。この構成要素の機能は、例えば、情報処理部32を構成するマイクロコンピュータまたはプロセッサが記憶部33に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0156】
学習部32aは、例えば、記憶部33に記憶された教師データを用いて機械学習モデル34の学習と再学習とを行い、学習済みパラメータを端末装置20aへ出力する。
【0157】
[記憶部]
記憶部33は、情報処理部32により実行されるコンピュータプログラムなどが記憶される記憶装置である。記憶部33は、例えば、HDDによって実現されるが、半導体メモリによって実現されてもよい。また、例えば、記憶部33は、機械学習モデル34を記憶している。機械学習モデル34は、脳波および脈波の時系列データと、刺激を提示するタイミングとの関係性を予め学習させた学習済みのモデルである。機械学習モデル34は、1つ以上のモデルから構成されてもよい。例えば、機械学習モデル34は、脳波および脈波の時系列データを入力として、ユーザの覚醒度およびリラックス度の推移の推定結果を出力する第1機械学習モデル(
図16で不図示)と、第1機械学習モデルから出力された推定結果を入力としてユーザに刺激を提示するタイミングを出力する第2機械学習モデル(
図16で不図示)とを含んでもよい。
【0158】
[刺激提示システムの動作]
続いて、刺激提示システム100aの動作について
図17を参照しながら説明する。
図17は、他の実施の形態に係る刺激提示システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【0159】
図17に示されるように、端末装置20aの取得部22aは、生体計測器10の脳波計測部11で計測されたユーザの脳波、および、脈波計測部12により計測されたユーザの脈波を取得する(S401)。取得部22aは、取得した脳波および脈波を刺激制御部22dに出力する(不図示)。取得部22aは、ユーザにより設定された睡眠時間の開始時刻から終了時間までの少なくとも一部の期間(いわゆる、対象期間)に計測された脳波および脈波(脳波および脈波の時系列データともいう)を取得してもよい。そして、取得部22aは、取得した脳波および脈波を刺激制御部22dに出力してもよい。取得部22aは、睡眠時間の終了時刻まで、対象期間(例えば、一定時間)毎の脳波および脈波を、順次、刺激制御部22dに出力してもよい。
【0160】
続いて、刺激制御部22dは、取得した脳波および脈波の時系列データを機械学習モデル26に入力し(S402)、機械学習モデル26から出力された出力結果に基づいて、ユーザに刺激を提示するタイミングを決定する(S403)。機械学習モデル26の出力結果は、例えば、ユーザの脳波および脈波の時系列データに基づいて推定されたユーザの覚醒度およびリラックス度の推移と、刺激を提示するタイミング候補とを含んでもよい。タイミング候補については上述したため、ここでの説明を省略する。刺激制御部22dは、例えば、一定の時間幅から1つのタイミングを決定してもよい。
【0161】
続いて、刺激制御部22dは、ステップS403で決定されたタイミングでユーザへの刺激の提示を制御する信号(いわゆる、刺激提示信号)を出力する(S404)。
【0162】
続いて、刺激提示部40は、ステップS404で刺激制御部22dから出力された信号(いわゆる、刺激提示信号)を受信すると(不図示)、刺激提示信号に基づいて、ユーザに刺激を提示する(S405)。例えば、刺激提示部40がライトである場合、刺激提示部40は、刺激提示信号に基づいて、決定されたタイミングに点灯し、光の明るさを徐々に明るくしつつ、光色を黄白色から青白色へと変化させる。
【0163】
図示していないが、表示制御部22eは、ステップS405でユーザへの刺激の提示が行われた後に、機械学習モデル26の出力結果とユーザへの刺激提示結果とをユーザに提示する表示情報を生成し、生成された表示情報を出力する。表示部24は、表示制御部22eから出力された表示情報を表示する。
図18は、表示情報の一例を示す図である。
図18に示されるように、表示情報は、例えば、ユーザの覚醒度およびリラックス度の推移を示すグラフと、刺激提示のタイミング(図中の×印)と、刺激の種類(図中のライトの点灯マーク)とを含んでもよい。操作受付部25は、例えば、ユーザにより「次へ」のボタンがタッチされると、次の情報を提示する指示の入力操作を受け付ける。
【0164】
図19は、刺激の提示が行われたタイミングに対するユーザの評価を受け付ける受付画面の一例を示す図である。例えば、操作受付部25が次の情報を提示する指示の入力操作を受け付けると、表示部24は、ユーザの評価を受け付けるための受付画面を表示する。例えば、
図19に示されるように、ユーザは、刺激の提示が行われたタイミングが適切ではなかったと感じた場合、「タイミングは適切でしたか?」の問いに対して「いいえ」のボタンをタッチして、早かったまたは遅かったなどの理由を入力してもよい。操作受付部25は、ユーザによる評価の入力操作を受け付けると、当該評価を学習部22fに出力する。学習部22fは、刺激の提示が行われたタイミングに対するユーザの評価を取得すると、取得された評価に基づいて機械学習モデル26を再学習させることにより機械学習モデル26を更新してもよい。
【0165】
[効果など]
以上説明したように、刺激提示システム100aは、ユーザを睡眠から覚醒させるための刺激を提示する刺激提示システムであって、ユーザの脳波および脈波を取得する取得部22aと、脳波および脈波の時系列データと、刺激を提示するタイミングとの関係性を予め学習させた機械学習モデル26に、取得部22aにより取得された脳波および脈波の時系列データを入力して得られる出力結果に基づいて、ユーザに刺激を提示するタイミングを決定し、決定されたタイミングでユーザへの刺激の提示を制御する信号を出力する刺激制御部22dと、を備える。
【0166】
このような刺激提示システム100aは、取得したユーザの脳波および脈波などの生体情報を機械学習モデル26に入力して得られる出力結果に基づいてユーザに刺激を提示するタイミングを決定することができる。そのため、刺激提示システム100aは、ユーザの状態に応じて適切なタイミングでユーザに刺激を提示することができる。
【0167】
また、例えば、刺激提示システム100aは、さらに、機械学習モデル26を学習させる学習部22fを備え、学習部22fは、脳波および脈波の時系列データと、刺激を提示するタイミングとの組を教師データとして機械学習モデル26を学習させ、刺激制御部22dにより決定されたタイミングでユーザへの刺激の提示が行われた後に、当該タイミングに対するユーザの評価を取得し、取得された評価に基づいて機械学習モデル26を再学習させることにより機械学習モデル26を更新する。
【0168】
このような刺激提示システム100aは、当該刺激の提示が行われたタイミングに対するユーザの評価に基づいて機械学習モデル26を再学習するため、再学習された機械学習モデル26を用いることにより、適切なタイミングを決定することができる。そのため、刺激提示システム100aは、ユーザの状態に応じてより適切なタイミングでユーザに刺激を提示することができる。
【0169】
また、例えば、刺激提示システム100aでは、機械学習モデル26は、取得部22aにより取得された脳波および脈波の時系列データを入力として、ユーザの覚醒度およびリラックス度の推移の推定結果を出力する第1機械学習モデルと、第1機械学習モデルから出力された推定結果を入力としてユーザに刺激を提示するタイミングを出力する第2機械学習モデルとを含む。
【0170】
このような刺激提示システム100aは、ユーザの脳波および脈波の時系列データを入力としてユーザの覚醒度およびリラックス度の推移を出力する第1機械学習モデルと、ユーザの覚醒度およびリラックス度の推移を入力としてユーザへの刺激の提示を行うタイミングを出力する第2機械学習モデルとを用いて、ユーザの脳波および脈波の時系列データから刺激の提示を行うタイミングを決定することができる。そのため、刺激提示システム100aは、ユーザの状態に応じてより適切なタイミングで刺激を提示することができる。
【0171】
(変形例1)
なお、刺激提示システム100aでは、刺激制御部22dは機械学習モデル26の出力結果に基づいてユーザに刺激を提示するタイミングを決定し、決定されたタイミングでユーザへの刺激の提示を制御する信号を出力したが、これに限られない。例えば、刺激制御部22dは、ユーザに刺激を提示するタイミングを決定するためのモデルを生成するモデル生成部により決定されたタイミングでユーザへの刺激の提示を制御する信号を出力してもよい。ここで、モデルのアルゴリズムは、例えば、ロジスティック回帰、重回帰、決定木、最近傍法、単純ベイズ分類器、サポートベクターマシン、または、ニューラルネットワークなどであってもよい。
【0172】
例えば、変形例1に係る刺激提示システムは、ユーザを睡眠から覚醒させるための刺激を提示するタイミングを決定するためのモデル生成システムにより生成されたモデルを用いて当該タイミングを決定する。
【0173】
モデル生成システムは、例えば、ユーザの脳波および脈波を取得する取得部22aと、取得部22aにより取得された脳波および脈波に基づいてユーザに刺激を提示するタイミングを決定し、決定されたタイミングでユーザへの刺激の提示が行われた後に、タイミングに対するユーザの評価を取得し、取得された評価と、脳波および脈波の時系列データと、刺激を提示したタイミングとの組を学習データとして、脳波および脈波の時系列データと、刺激を提示するタイミングとの関係性を学習することにより、刺激を提示するタイミングを決定するためのモデルを生成するモデル生成部と、を備え、モデル生成部は、モデルにより決定された刺激を提示するタイミングを、ユーザへの刺激の提示を制御する信号を出力する刺激制御部22dへ出力する。モデル生成部は、端末装置が備えてもよいし、サーバ装置が備えてもよい。
【0174】
このようなモデル生成システムは、刺激の提示が行われたタイミングに対するユーザの評価に基づいて、ユーザを睡眠から覚醒させるための刺激を提示するタイミングを決定するためのモデルを生成するため、ユーザの状態に応じてより適切なタイミングを決定することができる。そのため、変形例1に係る刺激提示システムは、ユーザの状態に応じてより適切なタイミングでユーザに刺激を提示することができる。
【0175】
また、モデル生成部は、例えば、取得部22aにより取得されたユーザの脳波に基づいてユーザの覚醒度を推定し、取得部22aにより取得されたユーザの脈波に基づいてユーザのリラックス度を推定し、覚醒度およびリラックス度に基づいて、ユーザに刺激を提示するタイミングを決定してもよい。
【0176】
このようなモデル生成システムは、ユーザの覚醒度およびリラックス度に基づいてユーザに刺激を提示するタイミングを決定するため、ユーザの状態に応じて適切なタイミングを決定することができる。そのため、変形例1に係る刺激提示システムは、ユーザの状態に応じて適切なタイミングでユーザに刺激を提示することができる。
【0177】
(変形例2)
他の実施の形態の変形例2について説明する。他の実施の形態に係る刺激提示システムは、学習部22fを備え、変形例1に係る刺激提示システムは、モデル更新部を備えた。変形例2に係る刺激提示システムは、モデルを更新するモデル更新部を備える。ここで、モデルは、変形例1と同様であってもよい。
【0178】
変形例2に係る刺激提示システムは、ユーザを睡眠から覚醒させるための刺激を提示する刺激提示システムであって、ユーザの脳波および脈波を取得する取得部22aと、刺激を提示するタイミングを決定するためのモデルに、取得部22aにより取得された脳波および脈波の時系列データを入力して得られる出力結果に基づいて、ユーザに刺激を提示するタイミングを決定し、決定されたタイミングでユーザへの刺激の提示を制御する信号を出力する刺激制御部22dと、刺激制御部22dにより決定されたタイミングでユーザへの刺激の提示が行われた後に、タイミングに対するユーザの評価を取得し、取得された評価に基づいて、脳波および脳波の時系列データと、刺激を提示するタイミングとの関係性を学習することにより、モデルを更新するモデル更新部と、を備える。
【0179】
このような刺激提示システムは、例えば、モデルの学習および再学習を行う学習部、または、モデルを生成するモデル生成部とは別に、モデルを更新するモデル更新部を備えるため、モデルの学習およびモデルの生成のように処理量が大きくなりにくく、更新に必要なデータを取得して処理を行うことができる。
【0180】
なお、他の実施の形態、変形例1および変形例2では、第一推定部22bおよび第二推定部22cを備えない例を説明したが、第一推定部22bおよび第二推定部22cを備えてもよい。この場合、刺激提示システムは、第一推定部22bおよび第二推定部22cにより推定されたユーザの覚醒度およびリラックス度に基づいて刺激を提示するタイミングを決定し、決定されたタイミングでユーザに刺激を提示した後に、ユーザの評価を取得してもよい。そして、刺激提示システムは、ユーザの評価に基づいて、脳波および脈波の時系列データとタイミングとの関係性を学習することにより、より適切なタイミングを決定することができる。
【0181】
ここで、ユーザの評価に基づいて、脳波および脳波の時系列データと、刺激を提示するタイミングとの関係性を学習することについて具体的に説明する。例えば、ユーザの評価が良好でなかった場合、評価が良好でないタイミングと、脳波および脈波の時系列データとの関係性をモデルに学習させるための教師データとして、ユーザの脳波および脈波の時系列データと、ユーザへの刺激の提示が行われたタイミングとの組のデータセットを使用する。また、例えば、ユーザの評価が良好であった場合、評価が良好であるタイミングと、脳波および脈波の時系列データとの関係性をモデルに学習させるための教師データとして、ユーザの脳波および脈波の時系列データと、ユーザへの刺激の提示が行われたタイミングとの組のデータセットを使用する。
【0182】
例えば、刺激を提示するタイミングが早かったと評価された場合、ユーザから提示された理想的なタイミングまでの脳波および脈波の時系列データと、タイミングとの関係性をモデルに学習させる。また、例えば、刺激を提示するタイミングが早かったとも遅かったとも評価されていない場合、ユーザへの刺激の提示が行われたタイミングから所定時間(例えば、数分)前までの脳波および脈波の時系列データと、タイミングとの関係性をモデルに学習させる。また、例えば、刺激を提示するタイミングが遅かったと評価された場合、ユーザから提示された理想的なタイミングまでの脳波および脈波の時系列データと、タイミングとの関係性をモデルに学習させる。
【0183】
なお、教師データとしては、ユーザの評価が良好であった場合のデータセットのみが使用されてもよい。
【0184】
例えば、上記実施の形態では、ユーザの状態が二次元座標によって表示されたが、ユーザの状態の表示態様は特に限定されない。ユーザの状態は、例えば、5段階の数値または文字で表示されてもよい。
【0185】
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよいし、複数の処理が並行して実行されてもよい。
【0186】
また、上記実施の形態において、各構成要素は、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0187】
また、各構成要素は、ハードウェアによって実現されてもよい。各構成要素は、回路(または集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0188】
また、本発明の全般的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0189】
例えば、本発明は、刺激提示方法として実現されてもよいし、刺激提示方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現されてもよいし、このようなプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現されてもよい。
【0190】
また、本発明は、上記実施の形態の端末装置として実現されてもよいし、汎用の端末装置を上記実施の形態の端末装置として動作させるためのアプリケーションプログラムとして実現されてもよい。また、本発明は、このようなアプリケーションプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現されてもよい。
【0191】
また、上記実施の形態では、刺激提示システムは、複数の装置によって実現されたが。単一の装置として実現されてもよい。刺激提示システムが複数の装置によって実現される場合、上記実施の形態で説明された刺激提示システムが備える構成要素は、複数の装置にどのように振り分けられてもよい。
【0192】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、または、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素および機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0193】
10 生体計測器
11 脳波計測部
12 脈波計測部
22a 取得部
22b 第一推定部
22c 第二推定部
22d 刺激制御部
22e 表示制御部
22f 学習部
23、23a 記憶部
25 操作受付部
26 機械学習モデル
30、30a サーバ装置
100、100a 刺激提示システム