(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】衣服、熱中症予防システム及び水分補給警告システム
(51)【国際特許分類】
A41D 13/002 20060101AFI20240104BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20240104BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A61B5/00 N
G08B21/02
(21)【出願番号】P 2019069656
(22)【出願日】2019-04-01
【審査請求日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2018068735
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518212241
【氏名又は名称】公立大学法人公立諏訪東京理科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋元 伸晃
(72)【発明者】
【氏名】組田 良則
(72)【発明者】
【氏名】近藤 敏仁
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/063065(WO,A1)
【文献】特開2017-153576(JP,A)
【文献】特開平3-286919(JP,A)
【文献】特開2003-10349(JP,A)
【文献】特開2014-134905(JP,A)
【文献】特開2007-16335(JP,A)
【文献】特開2017-214673(JP,A)
【文献】特開2016-132835(JP,A)
【文献】特開2016-37671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B1/00-7/00
A61B5/00-5/01
G08B19/00-21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の身体の少なくとも一部を覆う衣服本体と、
前記衣服本体に取り付けられ、前記衣服本体の外部から内部へ送風するファンと、
前記ファンから前記衣服本体の内部に入る吸入空気の絶対湿度を計測するための第1湿度センサと、
前記衣服本体の内部から出る排出空気の絶対湿度を計測するための第2湿度センサと、
を備え、
前記
衣服本体は、身頃と、前記身頃の左右に接続される一対の袖と、前記身頃の上部に接続される襟とを有し、
前記ファンは、前記身頃に配置され、
前記第1湿度センサは、前記身頃の外表面に配置され、
前記第2湿度センサは、前記一対の袖と、前記襟のそれぞれの内表面に配置される衣服。
【請求項2】
前記ファンの風量を計測するための風量計測装置を備える
請求項1に記載の衣服。
【請求項3】
前記風量計測装置は、前記ファンの空気の入口又は出口に設けられる風量センサである
請求項2に記載の衣服。
【請求項4】
前記風量計測装置は、前記ファンの空気の入口及び出口の差圧を計測するための圧力センサを含み、
前記圧力センサから得た情報に基づき前記ファンの風量を演算する制御装置を備える
請求項2に記載の衣服。
【請求項5】
前記風量計測装置は、前記ファンを駆動する電源電圧を検出する検出機構を含み、
前記検出機構から得た情報に基づき前記ファンの風量を演算する制御装置を備える
請求項2に記載の衣服。
【請求項6】
前記ファンは、前記排出空気の温度が前記排出空気の露点温度以上となる風量で送風する
請求項1から5のいずれか1項に記載の衣服。
【請求項7】
前記装着者の体温を計測する体温センサを備える
請求項1から6のいずれか1項に記載の衣服。
【請求項8】
前記体温センサは、深部体温を計測する
請求項7に記載の衣服。
【請求項9】
前記装着者の心拍数を計測する心拍センサを備える
請求項1から8のいずれか1項に記載の衣服。
【請求項10】
前記装着者の周辺の湿球温度及び黒球温度を計測する環境センサを備える
請求項1から9のいずれか1項に記載の衣服。
【請求項11】
前記第1湿度センサ及び前記第2湿度センサから得た情報に基づき前記装着者の発汗量を演算する制御装置と、
前記発汗量の推移が所定の条件を満たした場合に警報を発する警報装置と、
を備える請求項1から10のいずれか1項に記載の衣服。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか1項に記載の衣服と、管理装置と、を備え、
前記衣服は、前記第1湿度センサ及び前記第2湿度センサから得られた情報を無線通信により送信する通信装置を備え、
前記管理装置は、前記通信装置から情報を受信し前記装着者の発汗量を記憶する
熱中症予防システム。
【請求項13】
前記発汗量の推移が所定の条件を満たした場合に、管理者に対して警報を発する警報装置を備える
請求項12に記載の熱中症予防システム。
【請求項14】
前記衣服は、前記発汗量の推移が所定の条件を満たした場合に、前記装着者に対して警報を発する警報装置を備える
請求項12に記載の熱中症予防システム。
【請求項15】
請求項1から10のいずれか1項に記載の衣服と、管理装置と、を備え、
前記衣服は、前記第1湿度センサ及び前記第2湿度センサから得られた情報を無線通信により送信する通信装置を備え、
前記管理装置は、前記通信装置から情報を受信し前記装着者の発汗量を記憶する
水分補給警告システム。
【請求項16】
前記発汗量の推移が所定の条件を満たした場合に、管理者に対して警報を発する警報装置を備える
請求項15に記載の水分補給警告システム。
【請求項17】
前記衣服は、前記発汗量の推移が所定の条件を満たした場合に、前記装着者に対して警報を発する警報装置を備える
請求項15に記載の水分補給警告システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服、熱中症予防システム及び水分補給警告システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工事現場等においては、作業者は高温の環境下で作業に従事することがある。高温の環境下においては、作業者の熱中症を予防することが必要となる。従来から、熱中症を防ぐための、作業者に装着させる装置が知られている。例えば特許文献1には、温度センサ及び湿度センサを備えたヘルメットが記載されている。特許文献1のヘルメットによれば、管理者がヘルメット内の状況を把握できるので、異常発生時には作業者に連絡することが可能となる。非特許文献1には、熱へのばく露を止めることが必要とされている兆候が記載されている。非特許文献2には、熱中症の症状が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】「熱中症を防ごう」、厚生労働省労働基準局、都道府県労働局、労働基準監督署、平成25年4月
【文献】「職場の「熱中症」を防ごう」、東京労働局労働基準部健康課、平成29年2月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のヘルメットは、単にヘルメット内の温度及び湿度を計測するだけである。このため、特に作業者の体内水分量の減少量等、熱中症になる可能性の推定に必要な、作業者である装着者の身体の状態を正確に検出するには限界がある。したがって、熱中症になる可能性の推定精度を向上させることが難しい。
【0006】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、熱中症になる可能性の推定に必要な、作業者である装着者の身体の状態をより高い精度で計測できる衣服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様の衣服は、装着者の身体の少なくとも一部を覆う衣服本体と、前記衣服本体に取り付けられ、前記衣服本体の外部から内部へ送風するファンと、前記ファンから前記衣服本体の内部に入る吸入空気の絶対湿度を計測するための第1湿度センサと、前記衣服本体の内部から出る排出空気の絶対湿度を計測するための第2湿度センサと、を備える。
【0008】
衣服の望ましい態様として、前記ファンの風量を計測するための風量計測装置を備える。
【0009】
衣服の望ましい態様として、前記風量計測装置は、前記ファンの空気の入口又は出口に設けられる風量センサである。
【0010】
衣服の望ましい態様として、前記風量計測装置は、前記ファンの空気の入口及び出口の差圧を計測するための圧力センサを含み、前記圧力センサから得た情報に基づき前記ファンの風量を演算する制御装置を備える。
【0011】
衣服の望ましい態様として、前記風量計測装置は、前記ファンを駆動する電源電圧を検出する検出機構を含み、前記検出機構から得た情報に基づき前記ファンの風量を演算する制御装置を備える。
【0012】
衣服の望ましい態様として、前記ファンは、前記ファンは、前記排出空気の温度が前記排出空気の露点温度以上となる風量で送風する。
【0013】
衣服の望ましい態様として、前記衣服本体は、身頃と、前記身頃に接続される袖と、を備え、前記ファンは、前記身頃に位置し、前記第2湿度センサは、前記袖の内表面に位置する。
【0014】
衣服の望ましい態様として、前記衣服本体は、前記装着者の腰及び臀部を覆う腰部と、前記腰部に接続され前記装着者の脚を覆う脚部と、を備え、前記ファンは、前記腰部に位置し、前記第2湿度センサは、前記脚部26の内表面に位置する。
【0015】
衣服の望ましい態様として、前記衣服本体は、身頃と、前記身頃に接続される袖と、前記身頃に接続され前記装着者の腰及び臀部を覆う腰部と、前記腰部に接続され前記装着者の脚を覆う脚部と、を備え、前記ファンは、前記身頃又は前記腰部に位置し、前記第2湿度センサは、前記袖又は前記脚部の内表面に位置する。
【0016】
衣服の望ましい態様として、前記装着者の体温を計測する体温センサを備える。
【0017】
衣服の望ましい態様として、前記体温センサは、深部体温を計測する。
【0018】
衣服の望ましい態様として、前記装着者の心拍数を計測する心拍センサを備える。
【0019】
衣服の望ましい態様として、前記装着者の周辺の湿球温度及び黒球温度を計測する環境センサを備える。
【0020】
衣服の望ましい態様として、前記第1湿度センサ及び前記第2湿度センサから得た情報に基づき前記装着者の発汗量を演算する制御装置と、前記発汗量の推移が所定の条件を満たした場合に警報を発する警報装置と、を備える。
【0021】
本開示の一態様の熱中症予防システムは、上述した衣服と、管理装置と、を備え、前記衣服は、前記第1湿度センサ及び前記第2湿度センサから得られた情報を無線通信により送信する通信装置を備え、前記管理装置は、前記通信装置から情報を受信し前記装着者の発汗量を記憶する。
【0022】
熱中症予防システムの望ましい態様として、前記発汗量の推移が所定の条件を満たした場合に、管理者に対して警報を発する警報装置を備える。
【0023】
熱中症予防システムの望ましい態様として、前記衣服は、前記発汗量の推移が所定の条件を満たした場合に、前記装着者に対して警報を発する警報装置を備える。
【0024】
本開示の一態様の水分補給警告システムは、上述した衣服と、管理装置と、を備え、前記衣服は、前記第1湿度センサ及び前記第2湿度センサから得られた情報を無線通信により送信する通信装置を備え、前記管理装置は、前記通信装置から情報を受信し前記装着者の発汗量を記憶する。
【0025】
水分補給警告システムの望ましい態様として、前記発汗量の推移が所定の条件を満たした場合に、管理者に対して警報を発する警報装置を備える。
【0026】
水分補給警告システムの望ましい態様として、前記衣服は、前記発汗量の推移が所定の条件を満たした場合に、前記装着者に対して警報を発する警報装置を備える。
【発明の効果】
【0027】
本開示によれば、熱中症になる可能性の推定に必要な、作業者である装着者の身体の状態をより高い精度で計測できる衣服を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、実施形態の熱中症予防システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0030】
(実施形態)
図1は、実施形態の熱中症予防システムの模式図である。
図2は、実施形態の衣服の断面図である。
【0031】
本実施形態の熱中症予防システム1は、作業者の熱中症の発症を抑制するためのシステムである。熱中症予防システム1は、例えば建設現場等における作業者に適用される。熱中症予防システム1は、作業者が水分を補給すべきであることを警告する、作業者に水分を補給するよう指示する、又は作業者に休憩をとることを促すもしくは指示する水分補給警告システムでもある。
図1に示すように、熱中症予防システム1は、衣服10と、管理部9と、を含む。
【0032】
衣服10は、作業者の上半身に装着される。以下の説明において、衣服10を装着する人間を装着者と記載する。
図1及び
図2に示すように、衣服10は、衣服本体2と、ファン6と、バッテリー16と、第1湿度センサ51と、第2湿度センサ521と、第2湿度センサ522と、第2湿度センサ523と、風量センサ61と、体温センサ56と、心拍センサ58と、環境センサ54と、制御装置11と、警報装置12と、通信装置13と、アンテナ14と、を備える。
【0033】
図1に示すように、衣服本体2は、装着者の身体の一部を覆う。本実施形態の衣服本体2は、長袖の上着である。衣服本体2の材料は、透湿性の低い材料である好ましい。例えば衣服本体2の材料として、綿、ナイロン、ポリエステル等又はそれらの混紡が挙げられる。衣服本体2の全体で形成される空間の温湿度計測を行う方が、発汗量計測精度は向上すると考えられるので、衣服本体2からの空気流出はなるべく防いだ方が好ましい。そのため、さらに衣服本体2の気密性を向上させるため、衣服本体2に防風性又は防水性のコーティング材料を付着させてもよい。衣服本体2は、身頃20と、袖21と、袖22と、襟23と、を備える。身頃20は、装着者の胴体を覆う部材である。袖21、袖22及び襟23は、身頃20に接続される。袖21及び袖22は、装着者の腕を覆う部材である。袖21、袖22は、裾が装着者の手首周辺に位置するような長さを有する。襟23は、装着者の首を覆う部材である。以下の説明において、衣服本体2で囲まれる領域を内部Iとし、内部Iの外側の領域を外部Eとする。装着者が汗をかくと、内部Iに水蒸気が供給される。
【0034】
図1に示すように、ファン6は、身頃20に設けられる。ファン6の数は、例えば2つである。2つのファン6は、身頃20の後ろ部分(後ろ身頃)に配置される。ファン6は外部Eの空気を内部Iに送る。すなわち、ファン6は、装着者の身体と衣服本体2との間の空間に向かって送風する。汗による水蒸気を含む内部Iの空気が、ファン6によって外部Eに排出される。ファン6の風量は、風量センサ61によって計測される。ファン6は、風量が所定の値になるように、手動又は後述する制御装置11に含まれる制御回路で調節できる。ファン6は、内部Iから出る排出空気の温度が排出空気の露点温度以上となる風量で送風するように調節される。すなわち、ファン6は、排出空気の周辺のものに結露が生じない風量で送風するように調節される。ファン6の最低風量は、排出空気が露点温度以上となるような風量であることが好ましい。これは、一般的に湿度センサは相対湿度が100%より高い空気の湿度(露点温度以下である空気の湿度)を計測できないためである。排出空気の相対湿度を100%以下にするためには、後述する第2湿度センサ52が計測した温度が露点温度以上になるように制御装置11がファン6の風量を増加させればよい。一般的な作業環境である排出空気の相対湿度が100%にならないような環境下(排出空気の周辺のものに結露が生じない環境下)で使用される場合には、装着者の暑さに対する耐性及び発汗量に応じて、簡易的に手動でファン6の風量を好みの風量に設定しても、排出空気は露点以上となる。このため、後述する第2湿度センサ52は、正確な絶対湿度を計測できる。第2湿度センサ52の表面の空気が入れ替わるように、ファン6の最低風量は、0.01l/min以上であることが好ましい。ファン6の風量は、0.01l/min以上5000l/min以下であることがより好ましい。
【0035】
バッテリー16は、ファン6、第1湿度センサ51、第2湿度センサ52、体温センサ56、心拍センサ58、環境センサ54、制御装置11、警報装置12、通信装置13、アンテナ14に電力を供給する。制御装置11、警報装置12、通信装置13及びアンテナ14は一体化された基板上に形成されていてもよい。
【0036】
第1湿度センサ51は、ファン6から内部Iに入る吸入空気の絶対湿度(以下、第1絶対湿度という)を計測するためのセンサである。絶対湿度は、単位体積当たりの空気に含まれる水蒸気の量である。
図1に示すように、第1湿度センサ51は衣服本体2の外表面に位置する。第1湿度センサ51は身頃20の外表面に位置する。第1湿度センサ51は、外部Eの空気の温度及び相対湿度を計測する。
【0037】
第2湿度センサ521、第2湿度センサ522及び第2湿度センサ523は、内部Iから出る排出空気の絶対湿度(以下、第2絶対湿度という)を計測するためのセンサである。
図2に示すように、第2湿度センサ521、第2湿度センサ522及び第2湿度センサ523は、衣服本体2の内表面に位置する。第2湿度センサ521は、袖21の内表面に位置する。第2湿度センサ522は、袖22の内表面に位置する。第2湿度センサ523は、襟23の内表面に位置する。第2湿度センサ52は、内部Iの空気の温度及び相対湿度を計測する。なお、以下の説明において、第2湿度センサ521、第2湿度センサ522及び第2湿度センサ523をそれぞれ区別する必要がない場合には、第2湿度センサ52と記載される。
【0038】
風量センサ61は、ファン6の風量を計測するためのセンサである。風量センサ61は、ファン6の空気の出口に取り付けられている。風量センサ61は、ファン6の空気の入口に取り付けられてもよい。ファン6の風量を計測する風量計測装置は、風量センサ61に限定されない。風量計測装置は、ファン6の差圧を計測するための圧力センサを含んでもよい。ファン6の風量は、後述の制御装置11によって、圧力センサから得た情報に基づいて演算される。風量計測装置は、ファン6を駆動する電源電圧を検出する検出機構を含んでもよい。ファン6の風量は、後述の制御装置11によって、検出機構から得た情報に基づいて演算される。
【0039】
体温センサ56は、装着者の体温を計測するセンサである。体温センサ56は、
図2に示すように、衣服本体2の内表面に取り付けられている。体温センサ56は、袖21の内表面に位置する。体温センサ56は、装着者の皮膚に面する位置に配置される。体温センサ56は、装着者の皮膚に接することが好ましい。また、体温センサ56は、装着者の深部体温を計測できることがより好ましい。深部体温の指標としては、口腔温、直腸温、鼓膜温が挙げられる。体温センサ56が深部体温を計測する場合、体温センサ56の取付位置は適宜調節される。
【0040】
心拍センサ58は、装着者の心拍数を計測するセンサである。心拍センサ58は、
図2に示すように、衣服本体2の内表面に取り付けられている。心拍センサ58は、身頃20の前部分(前身頃)に位置する。心拍センサ58は、装着者の心臓に近い位置に配置される。心拍センサ58は、装着者の皮膚に接することが好ましい。
【0041】
環境センサ54は、装着者の周辺の湿球温度、乾球温度及び黒球温度を計測するセンサである。環境センサ54は、
図1に示すように、衣服本体2の外表面に取り付けられている。
【0042】
制御装置11は、コンピュータであり、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入力インターフェース、及び出力インターフェースを含む。制御装置11は、第1湿度センサ51、第2湿度センサ52、風量センサ61、体温センサ56、心拍センサ58及び環境センサ54と電気的に接続されており、計測値を受信する。制御装置11は、各センサから得た情報に基づいて医学的パラメータを演算する。例えば、制御装置11は医学的パラメータとして発汗量を演算する。制御装置11は、発汗量変動、深部体温変動及び心拍間隔等を演算することが好ましい。さらに、制御装置11は、上述した各センサから得た情報及び算出された医学的パラメータから、作業環境及び装着者個人の熱中症の危険度を指数化し、指数に基づき警報装置12又は通信装置13を制御することが好ましい。また、制御装置11は、ファン6と電気的に接続されており、ファン6の風量を制御してもよい。制御装置11は、
図1に示すように衣服本体2に取り付けられている。
【0043】
制御装置11は、装着者の体重、年齢、作業場所及び作業工程等の、装着者に関する情報を記憶している。例えば、制御装置11は、後述する管理装置91に記憶された装着者に関する情報を通信装置13を介して得ることができる。または、作業前に装着者に関する情報が制御装置11に対して直接入力されてもよい。
【0044】
制御装置11は、第1湿度センサ51から受信した吸入空気の温度及び相対湿度に基づいて第1絶対湿度を演算する。相対湿度から絶対湿度を推定するのには各種の近似式があるが、ここでは比較的よく用いられるTenensの式で推定することとし、第1絶対湿度をX[g/m3]、吸入空気の温度をtA[K]、吸入空気の相対湿度をRHA[%]、吸入空気の飽和水蒸気圧をeA[hPa]とした場合、制御装置11は、下記式(1)及び式(2)からXを得る。
【0045】
【0046】
【0047】
制御装置11は、第1絶対湿度(X)及び風量センサ61から受信したファン6の風量に基づき、単位時間当たりに内部Iに入る水分の質量を演算する。単位時間当たりに内部Iに入る水分の質量をA[g/min]、ファン6の風量をV[m3/min]とした場合、制御装置11は、下記式(3)からAを得る。
【0048】
【0049】
制御装置11は、第2湿度センサ521、第2湿度センサ522及び第2湿度センサ523の少なくとも1つから受信した排出空気の温度及び相対湿度に基づいて第2絶対湿度を演算する。第2絶対湿度をY[g/m3]、排出空気の温度をtB[K]、排出空気の相対湿度をRHB[%]、排出空気の飽和水蒸気圧をeB[hPa]とした場合、制御装置11は、下記式(4)及び式(5)からYを得る。
【0050】
【0051】
【0052】
制御装置11は、第2絶対湿度(Y)及びファン6の風量に基づき、単位時間当たりに内部Iから出る水分の質量の和を演算する。この水分の質量の和をB[g/min]とした場合、制御装置11は、下記式(6)からBを得る。
【0053】
【0054】
単位時間当たりに装着者の上半身から蒸発した水分の質量をC[g/min]とした場合、制御装置11は、下記式(7)からCを得る。以下の説明において、単位時間当たりに装着者の上半身から蒸発した水分の質量(C)は発汗量と記載される。
【0055】
【0056】
制御装置11は、発汗量を所定間隔毎に演算し記憶する。制御装置11は、発汗量の推移に基づき装着者が熱中症になる可能性があるか否かを判定する。制御装置11は、発汗量の推移が所定の条件を満たした場合に、装着者が熱中症になる可能性があると判定する。例えば、制御装置11は、発汗量に関して予め決められた閾値を記憶しており、発汗量が閾値を超えた場合に、装着者が熱中症になる可能性があると判定する。または、制御装置11は、発汗量に関して予め決められた閾値及び閾回数を記憶しており、発汗量が閾値を超えた回数が閾回数を超えた場合に、装着者が熱中症になる可能性があると判定する。
または、制御装置11は、発汗量を積算し、積算した発汗量が閾値を超えた場合に装着者が熱中症になる可能性があると判定する。この場合の閾値は、例えば、装着者の体重の1.5%に相当する質量である(非特許文献1参照)。装着者の体重の減少量は、装着者の全身発汗量で計測できる。熱中症罹患の予防のためには、上述した閾値よりも小さい値を閾値とすることが好ましい。制御装置11は、頭部の発汗量を算出できるが、予め頭部の発汗量と全身の発汗量との相関を記憶しておくことで、頭部発汗量から全身発汗量(体重の減少量)を推定できる。または、制御装置11は、所定時間内で積算した発汗量に関して閾値を記憶しており、所定時間内で積算した発汗量が閾値を超えた場合に、装着者が熱中症になる可能性があると判定する。または、制御装置11は、所定時間内での積算した発汗量に関する第1閾値と、装着者の周辺の湿球温度(又は乾球温度)に関する第2閾値を記憶しており、第1閾値と第2閾値に基づいて装着者が熱中症になる可能性を判定する。例えば、制御装置11は、湿球温度が第2閾値を超え且つ所定時間内で積算した発汗量が第1閾値よりも低い場合に、装着者が熱中症になる可能性があると判定する。
【0057】
制御装置11は、発汗量の推移が所定の条件を満たした場合に、装着者が水分を補給すべきであると判定する。例えば、制御装置11は、全身発汗量に関して予め決められた閾値を記憶しており、全身発汗量が閾値を超えた場合に、装着者が水分を補給すべきであると判定する。制御装置11は、発汗量の情報に基づき、装着者が補給すべき水分の量を算出する。例えば、制御装置11が算出する装着者が補給すべき水分の量は、全身発汗量に相当する水分の量である。なお、制御装置11が算出する装着者が補給すべき水分の量は、全身発汗量に相当する水分の量とは異なる量であってもよい。
【0058】
制御装置11は、体温の推移に基づき装着者が熱中症になる可能性があるか否かを判定する。例えば、制御装置11は、装着者の休憩中に体温センサ56から受信した体温が作業開始前の体温に戻らない場合に、装着者が熱中症になる可能性があると判定する(非特許文献1参照)。
【0059】
制御装置11は、心拍数の推移に基づき装着者が熱中症になる可能性があるか否かを判定する。例えば、制御装置11は、1分間の心拍数が180から装着者の年齢を引いた値を超える状態が数分続く場合に、装着者が熱中症になる可能性があると判定する。または、制御装置11は、装着者の作業強度のピークから1分後における1分間の心拍数が120を超える場合に、装着者が熱中症になる可能性があると判定する(非特許文献1参照)。
【0060】
制御装置11は、環境センサ54が計測した情報に基づき、暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature)を演算する。制御装置11は、装着者の作業工程を記憶しているので、装着者が屋外にいるか屋内にいるか把握している。装着者が屋外にいる場合、制御装置11は、湿球温度、乾球温度及び黒球温度に基づき暑さ指数を演算する。装着者が屋内にいる場合、制御装置11は、湿球温度及び黒球温度に基づき暑さ指数を演算する。制御装置11は、装着者が熱中症になる可能性があるか否かの判定に暑さ指数も用いることができる。
【0061】
また、制御装置11は、発汗量に、体温センサ56、心拍センサ58及び環境センサ54から得た情報を組み合わせて、装着者が熱中症になる可能性があるか否かを判定してもよい。
【0062】
警報装置12は、装着者に自身が熱中症になる可能性があることを認識させるための装置である。警報装置12は、
図1に示すように衣服本体2に取り付けられている。装着者が熱中症になる可能性があると制御装置11が判定した場合、警報装置12は警報を発する。警報の種類は特に限定されない。警報の例としては、音、光又は振動が挙げられる。また、警報装置12は、自身に水分補給が必要であることを認識させるための装置である。警報装置12は、装着者が水分を補給すべきであると制御装置11が判定した場合、警報装置12は警報を発する。警報の種類は特に限定されない。警報の例としては、音、光又は振動が挙げられる。例えば、装着者が水分を補給すべきであると制御装置11が判定した場合、警報装置12は、制御装置11が算出した装着者が補給すべき水分の量を表示する。例えば、装着者が水分を補給すべきであると制御装置11が判定した場合、警報装置12は、制御装置11が算出した装着者が補給すべき量の水分を摂取するよう、装着者に音声等で指示する。また、警報装置12においては、水分補給の指示と、例えば連続作業時間に基づく休憩を促す指示と、が併用されてもよい。
【0063】
通信装置13及びアンテナ14は、制御装置11が得た情報を管理部9に送信するための装置である。通信装置13は、
図1に示すように衣服本体2に取り付けられている。アンテナ14は、
図1に示すように衣服本体2の外表面に取り付けられている。
【0064】
管理部9は、装着者を監視する管理者がいる場所である。
図1に示すように、管理部9は、管理装置91と、警報装置92と、を備える。管理装置91は、複数の衣服10から情報を受信する。管理装置91は、複数の装着者の作業場所、作業工程及び年齢等の情報を記憶している。
【0065】
管理装置91は、制御装置11から得た発汗量及び各センサから得た情報を記憶する。管理装置91は、発汗量、体温、心拍数及び熱さ指数の推移に基づき、装着者が熱中症になる可能性があるか否かを判定する。管理装置91は、発汗量、体温、心拍数及び熱さ指数の推移に基づき、装着者が水分を補給すべきであるか否かを判定する。具体的な判定方法は、制御装置11の判定方法と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0066】
警報装置92は、装着者が熱中症になる可能性があることを、管理者に認識させるための装置である。装着者が熱中症になる可能性があると管理装置91が判定した場合、警報装置92は、管理者に対して警報を発する。警報装置92は、装着者が水分を補給すべきであることを管理者に認識させるための装置である。装着者が水分を補給すべきであると管理装置91が判定した場合、警報装置92は、管理者に対して警報を発する。警報装置12と同様に、警報の種類は特に限定されない。また、警報装置92においては、水分補給の指示と、例えば連続作業時間に基づく休憩を促す指示と、が併用されてもよい。
【0067】
なお、制御装置11は、第2湿度センサ521、第2湿度センサ522及び第2湿度センサ523のうち2つ以上から受信した排出空気の温度及び相対湿度に基づいて第2絶対湿度を演算してもよい。例えば、制御装置11は、第2湿度センサ521及び第2湿度センサ522の計測結果の平均に基づいて、発汗量を演算する。また、衣服10は、必ずしも第2湿度センサ521、第2湿度センサ522及び第2湿度センサ523を備えなくてもよい。衣服10は、第2絶対湿度を計測するためのセンサ(第2湿度センサ)を少なくとも1つ備えていればよい。
【0068】
ファン6の風量が制御装置11により自動で調節される場合、制御装置11は、排出空気の温度が露点温度未満となった場合にファン6の風量を大きくしてもよい。また、制御装置11は、発汗量の増加にしたがってファン6の風量を大きくしてもよい。
【0069】
衣服10は、風量センサ61、体温センサ56、心拍センサ58及び環境センサ54を備えていなくてもよい。衣服10は、風量センサ61に代えて、ファン6の差圧を計測する圧力センサ又はファン6を駆動する電源電圧を検出する検出機構を備えてもよい。衣服10は、少なくとも、ファン6の風量を計測することが可能であれば、どのように風量を計測してもよい。衣服10は、センサとして第1湿度センサ51と、第2湿度センサ521、第2湿度センサ522及び第2湿度センサ523の少なくとも1つと、を備えていればよい。また、第1湿度センサ51、第2湿度センサ52は、必ずしも温度及び相対湿度を計測するセンサでなくてもよく、絶対湿度を計測できればよい。例えば、第1湿度センサ51及び第2湿度センサ52は、光(近赤外光)を利用した水分計(赤外線水分計)であってもよい。水分には特定の波長の近赤外光を吸収する性質がある。赤外線水分計は、吸光度の大きさに基づいて絶対湿度を計測する。第1湿度センサ51の位置は、身頃20の外表面に限定されず、例えばファン6の内部等であってもよい。第2湿度センサ52の位置は、衣服本体2の内表面に限定されず、例えば袖21又は袖22の裾等であってもよい。
【0070】
衣服10は、上述したセンサ以外のセンサを備えていてもよい。例えば、衣服10は、装着者の脳血流を計測する脳血流センサを備えていてもよい。脳血流センサとしては、近赤外光を用いて頭皮上から非侵襲的に脳機能を計測する装置が知られている。このような装置は近赤外線分光法(NIRS:Near Infrared Spectroscopy)脳計測装置と呼ばれる。また、衣服10は、加速度センサを備えていてもよい。これにより、衣服10は装着者の眩暈等を検出できる。
【0071】
装着者が衣服本体2の内側に下着を着る場合、衣服10は、下着への汗の吸収量を検出する吸収量検出装置を備えていてもよい。この場合、制御装置11は、算出した発汗量を、吸収量検出装置から得た情報に基づいて補正することができる。
【0072】
衣服10は、通信装置13及びアンテナ14を備えていなくてもよい。このような場合であっても、衣服10が警報装置12を備えているので、装着者は自身が熱中症になる可能性があることを認識することができる。
【0073】
衣服10は、制御装置11を備えていなくてもよい。このような場合、第1湿度センサ51、第2湿度センサ52、風量センサ61、体温センサ56、心拍センサ58及び環境センサ54が計測した情報は、通信装置13を介して管理装置91に送信される。そして、管理装置91は、上述した式(1)から式(7)に基づいて発汗量を演算し、装着者が熱中症になる可能性があるか否かを判定する。なお、衣服10が制御装置11を備えている場合でも、管理装置91が発汗量を演算してもよい。
【0074】
制御装置11及び管理装置91は、過去に各センサが計測した情報を蓄積し、その情報に基づいて熱中症になる可能性があるか否かの判定基準を変更してもよい。また、制御装置11及び管理装置91は、人工知能(AI:Artificial Intelligence)を有していてもよい。蓄積した情報を人口知能に学習させることで、熱中症になる可能性があるか否かの判定精度を向上させることができる。
【0075】
衣服10は、警報装置12を備えていなくてもよい。管理部9は、警報装置92を備えていなくてもよい。ただし、熱中症予防システム1は、警報装置12及び警報装置92の少なくとも一方を有していることが好ましい。
【0076】
以上で説明したように、衣服10は、衣服本体2と、ファン6と、第1湿度センサ51と、第2湿度センサ52と、を備える。衣服本体2は、装着者の身体の少なくとも一部を覆う。ファン6は、衣服本体2に取り付けられ、衣服本体2の外部Eから内部Iへ送風する。第1湿度センサ51は、ファン6から衣服本体2の内部Iに入る吸入空気の絶対湿度を計測するための装置である。第2湿度センサ52は、衣服本体2の内部Iから出る排出空気の絶対湿度を計測するための装置である。
【0077】
これにより、衣服10は、第1湿度センサ51及び第2湿度センサ52から得る情報に基づき、装着者の体の発汗量を得ることができる。その結果、衣服10は、熱中症になる可能性の推定に必要な、作業者である装着者の身体の状態をより高い精度で計測できる。
【0078】
また、衣服10は、ファン6の風量を計測するための風量計測装置(風量センサ61)を備える。これにより、風量計測装置(風量センサ61)によって、リアルタイム計測による風量の補正が可能である。より正確な風量値に基づいて、装着者の発汗量を演算することができるので、より好適に装着者の発汗量を得ることができる。
【0079】
また、衣服10は、風量計測装置は、ファン6の空気の入口又は空気出口に設けられる風量センサ61である。これにより、容易にファン6の風量を計測することができる。
【0080】
また、衣服10は、風量センサ61に代えて、ファン6の空気の入口及び出口の差圧を計測するための圧力センサを備えてもよい。衣服10は、圧力センサから得た情報に基づきファン6の風量を演算する制御装置11を備えてもよい。これにより、容易にファン6の風量を計測することができる。
【0081】
また、衣服10は、風量センサ61に代えて、ファン6を駆動する電源電圧を検出する検出機構を備えてもよい。衣服10は、検出機構から得た情報に基づきファン6の風量を演算する制御装置11を備えてもよい。これにより、容易にファン6の風量を計測することができる。
【0082】
また、衣服10において、ファン6は、排出空気の温度が排出空気の露点温度以上となる風量で送風する。
【0083】
これにより、排出空気の相対湿度が100%未満となる。排出空気に含まれる水分による結露が抑制される。このため、第2湿度センサ52によって得られる絶対湿度の精度が向上する。その結果、衣服10は、発汗量の計測精度を向上させることができる。
【0084】
また、衣服10において、衣服本体2は、身頃20と、身頃20に接続される袖21(袖22)と、を備える。ファン6は、身頃20に位置する。第2湿度センサ521(第2湿度センサ522)は、袖21(袖22)の内表面に位置する。
【0085】
これにより、第2湿度センサ521(第2湿度センサ522)は、装着者の脇の下を通過した空気を計測する。このため、衣服10によって計測される発汗量と実際に装着者の身体から生じた発汗量との乖離が小さくなる。衣服10は、発汗量の計測精度を向上させることができる。
【0086】
また、衣服10は、装着者の体温を計測する体温センサ56を備える。これにより、衣服10は、装着者の身体の状態をより高い精度で計測できる。
【0087】
また、衣服10において、体温センサ56は、深部体温を計測する。これにより、衣服10は、装着者の身体の状態をより高い精度で計測できる。
【0088】
また、衣服10は、装着者の心拍数を計測する心拍センサ58を備える。これにより、衣服10は、装着者の身体の状態をより高い精度で計測できる。
【0089】
また、衣服10は、装着者の周辺の湿球温度及び黒球温度を計測する環境センサ54を備える。これにより、衣服10は、装着者の身体の状態をより高い精度で計測できる。
【0090】
また、衣服10は、制御装置11と、警報装置12と、を備える。制御装置11は、第1湿度センサ51及び第2湿度センサ52から得た情報に基づき装着者の発汗量を演算する。警報装置12は、発汗量の推移が所定の条件を満たした場合に警報を発する。
【0091】
大量の発汗は熱中症の初期症状であるため(非特許文献2参照)、衣服10は、装着者に熱中症の初期症状が出ているか否かを検出できる。すなわち、衣服10は、早期に熱中症を検出できる。衣服10は、熱中症になる可能性の推定精度を向上させることができる。警報装置12により、装着者は、自身が熱中症になる可能性があることを早期に認識することができる。したがって、衣服10は、熱中症の重症化を抑制できる。
【0092】
また、熱中症予防システム1は、衣服10と、管理装置91と、を備える。衣服10は、第1湿度センサ51及び第2湿度センサ52から得られた情報を無線通信により送信する通信装置13を備える。管理装置91は、通信装置13から情報を受信し装着者の発汗量を記憶する。
【0093】
これにより、管理装置91は、離れた場所にいる装着者に熱中症の初期症状が出ているか否かを検出できる。すなわち、熱中症予防システム1は、早期に熱中症を検出できる。熱中症予防システム1は、熱中症になる可能性の推定精度を向上させることができる。管理者は、装着者が熱中症になる可能性があることを管理装置91によって認識することができる。したがって、熱中症予防システム1は、熱中症の重症化を抑制できる。
【0094】
また、熱中症予防システム1は、発汗量の推移が所定の条件を満たした場合に管理者に対して警報を発する警報装置92を備える。
【0095】
これにより、管理者は、装着者が熱中症になる可能性があることを早期に認識することができる。したがって、熱中症の重症化が抑制される。
【0096】
また、熱中症予防システム1において、衣服10は、発汗量の推移が所定の条件を満たした場合に装着者に対して警報を発する警報装置12を備える。
【0097】
これにより、装着者は、自身が熱中症になる可能性があることを早期に認識することができる。したがって、熱中症の重症化が抑制される。
【0098】
水分補給警告システム1は、衣服10と、管理装置91と、を備える。衣服10は、第1湿度センサ51及び第2湿度センサ52から得られた情報を無線通信により送信する通信装置13を備える。管理装置91は、通信装置13から情報を受信し装着者の発汗量を記憶し、表示する。
【0099】
これにより、管理装置91は、離れた場所にいる装着者に水分補給が必要か否かを検出できる。管理者は、装着者に水分補給が必要であることを管理装置91によって認識することができ、装着者に水分補給や休憩を指示することができる。したがって、水分補給警告システム1は、装着者の発汗による体内水分減少に起因する熱中症罹患を予防することができる。水分補給警告システム1は、衣服10を着用する装着者の安全な労務管理に資する。
【0100】
また、水分補給警告システム1は、発汗量の推移が所定の条件を満たした場合に、管理者に対して警報を発する警報装置92を備える。
【0101】
これにより、管理者は、装着者に水分補給が必要であることを早期に認識することができる。したがって、装着者の発汗による体内水分減少に起因する熱中症罹患を予防することができる。
【0102】
また、水分補給警告システム1において、衣服10は、発汗量の推移が所定の条件を満たした場合に、装着者に対して警報を発する警報装置12を備える。
【0103】
これにより、装着者は、自身の発汗による体内水分減少によって自身に水分補給が必要な状態になったことを早期に認識することができる。これにより、装着者は、適切な量の水分を自発的に摂取したり、休憩を取ったりすることができる。したがって、装着者の発汗による体内水分減少による熱中症罹患を予防することができる。水分補給警告システム1においては、警報装置92を用いた管理者による水分摂取の指示と、警報装置12を用いた装着者への自発的な水分摂取の指示と、が併用されてもよい。
【0104】
(第1変形例)
図3は、第1変形例の衣服の背面図である。
図3に示すように、第1変形例の衣服10Aは、衣服本体2Aと、第2湿度センサ521Aと、第2湿度センサ522Aと、を備える。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0105】
衣服本体2Aは、ズボンである。衣服本体2Aは、腰部25と、脚部26と、脚部27と、を備える。腰部25は、装着者の腰及び臀部を覆う部材である。脚部26及び脚部27は、装着者の脚を覆う部材である。脚部26及び脚部27は、筒状であって腰部25に接続される。脚部26及び脚部27は、裾が装着者の足首周辺に位置するような長さを有する。ファン6は、腰部25に設けられる。ファン6は、腰部25の後ろ部分(後ろ身頃)に配置される。
【0106】
第2湿度センサ521A及び第2湿度センサ522Aは、衣服本体2の内表面に位置する。第2湿度センサ521Aは、脚部26の内表面に位置する。第2湿度センサ522Aは、脚部27の内表面に位置する。なお、以下の説明において、第2湿度センサ521A及び第2湿度センサ522Aをそれぞれ区別する必要がない場合には、第2湿度センサ52Aと記載される。
【0107】
制御装置11は、第2湿度センサ521A及び第2湿度センサ522Aの少なくとも1つから受信した排出空気の温度及び相対湿度に基づいて第2絶対湿度を演算する。なお、制御装置11は、第2湿度センサ521A及び第2湿度センサ522Aから受信した排出空気の温度及び相対湿度に基づいて第2絶対湿度を演算してもよい。例えば、制御装置11は、第2湿度センサ521A及び第2湿度センサ522Aの計測結果の平均に基づいて、発汗量を演算してもよい。
【0108】
上述したように、衣服本体2は、装着者の腰及び臀部を覆う腰部25と、腰部25に接続される脚部26(脚部27)と、を備える。ファン6は、腰部25に位置する。第2湿度センサ521A(第2湿度センサ522A)は、脚部26(脚部27)の内表面に位置する。
【0109】
これにより、第2湿度センサ521A(第2湿度センサ522A)は、装着者の股間を通過した空気を計測する。このため、衣服10Aによって計測される発汗量と実際に装着者の身体から生じた発汗量との乖離が小さくなる。衣服10Aは、発汗量の計測精度を向上させることができる。
【0110】
(第2変形例)
図4は、第2変形例の衣服の背面図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0111】
図4に示すように、第2変形例の衣服10Bは、衣服本体2Bを備える。衣服本体2Bは、衣服本体2Bは、上着部101と、ズボン部102と、を備える。上着部101は、実施形態の衣服本体2と同様に、身頃20と、袖21と、袖22と、襟23と、を備える。ズボン部102は、第1変形例の衣服本体2Aと同様に、腰部25と、脚部26と、脚部27と、を備える。衣服本体2Bにおいては、身頃20と腰部25とが接続されている。すなわち、上着部101及びズボン部102が一体となっている。
図4に示すように、ファン6は、身頃20に設けられる。なお、ファン6は、腰部25に設けられてもよい。
【0112】
制御装置11は、第2湿度センサ521、第2湿度センサ522、第2湿度センサ523、第2湿度センサ521A及び第2湿度センサ522Aの少なくとも1つから受信した排出空気の温度及び相対湿度に基づいて第2絶対湿度を演算する。なお、制御装置11は、第2湿度センサ521、第2湿度センサ522、第2湿度センサ523、第2湿度センサ521A及び第2湿度センサ522Aのうち2つ以上から受信した排出空気の温度及び相対湿度に基づいて第2絶対湿度を演算してもよい。
【0113】
上述したように、衣服本体2は、身頃20と、身頃20に接続される袖21(袖22)と、身頃20に接続され装着者の腰及び臀部を覆う腰部25と、腰部25に接続される脚部26(脚部27)と、を備える。ファン6は、身頃20又は腰部25に位置する。第2湿度センサ(第2湿度センサ52又は第2湿度センサ52A)は、袖21(袖22)又は脚部26(脚部27)の内表面に位置する。
【0114】
これにより、第2湿度センサ52又は第2湿度センサ52Aは、装着者の脇の下又は装着者の股間を通過した空気を計測する。このため、衣服10Bによって計測される発汗量と実際に装着者の身体から生じた発汗量との乖離が小さくなる。衣服10Bは、発汗量の計測精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0115】
1 熱中症予防システム、水分補給警告システム
10、10A、10B 衣服
101 上着部
102 ズボン部
11 制御装置
12 警報装置
13 通信装置
14 アンテナ
16 バッテリー
2、2A、2B 衣服本体
20 身頃
21、22 袖
23 襟
25 腰部
26、27 脚部
51 第1湿度センサ
52(521、522、523)、52A(521A、522A) 第2湿度センサ
54 環境センサ
56 体温センサ
58 心拍センサ
6 ファン
61 風量センサ(風量計測装置)
9 管理部
91 管理装置
92 警報装置
I 内部
E 外部