(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】エアゾール容器用アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
B65D 83/14 20060101AFI20240104BHJP
B65D 83/20 20060101ALI20240104BHJP
B65D 83/28 20060101ALI20240104BHJP
B05B 9/04 20060101ALI20240104BHJP
A61M 35/00 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
B65D83/14 200
B65D83/20
B65D83/28 100
B05B9/04
A61M35/00 Z
(21)【出願番号】P 2019156925
(22)【出願日】2019-08-29
【審査請求日】2022-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000222129
【氏名又は名称】東洋エアゾール工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000104526
【氏名又は名称】キタノ製作株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】中島 康友
(72)【発明者】
【氏名】上條 北斗
(72)【発明者】
【氏名】尾形 謙
(72)【発明者】
【氏名】温井 竜子
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊介
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-226081(JP,A)
【文献】特表平10-507399(JP,A)
【文献】特開2016-098015(JP,A)
【文献】特開2007-330313(JP,A)
【文献】特開2000-225360(JP,A)
【文献】米国特許第05876139(US,A)
【文献】特開2015-229525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00
B65D 83/08-83/76
B05B 9/04
A61M 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を噴射可能な押ボタンと、噴射された内容物を塗布対象に塗布可能な塗布部とを有し、前記押ボタンはエアゾール容器本体の容器口部の上部に設けられたステムに接続されるように構成されているエアゾール容器用アクチュエータであって、
前記押ボタンは、ボタン本体と、前記ボタン本体を前記ステムに接続するステム接続基部と、前記ボタン本体に前記塗布部を接続する塗布部接続基部とを有し、
前記ステム接続基部は、前記ステム側から前記塗布部側までを連通する通過孔を少なくとも1つ有し、
前記塗布部は、前記ステムに対向する取付面と、塗布対象に内容物を塗布する塗布面とを有し、
前記塗布部は、前記ステムから噴射された内容物を、噴射時に前記取付面の外側から前記塗布面の外側に透過可能に構成され、
前記塗布部は、前記
ボタン本体に取り付けられ、
前記ステム接続基部は、前記ボタン本体と別体で構成されているとともに、前記ボタン本体から独立して上下動可能に構成されていることを特徴とするエアゾール容器用アクチュエータ。
【請求項2】
前記塗布部は、着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール容器用アクチュエータ。
【請求項3】
前記通過孔には、前記取付面に向かって霧状に噴射可能な噴射口が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエアゾール容器用アクチュエータ。
【請求項4】
前記ステム接続基部の前記取付面に対向する面には、前記通過孔に連通するとともに、前記取付面側に開放した通過溝が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のエアゾール容器用アクチュエータ。
【請求項5】
前記通過孔は、前記ステム側から前記塗布部側に向かって複数に分岐していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のエアゾール容器用アクチュエータ。
【請求項6】
前記塗布部接続基部と前記ボタン本体とは、ヒンジを介して接続され、
前記塗布部接続基部は、前記ヒンジを回転中心として前記ボタン本体から開閉可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のエアゾール容器用アクチュエータ。
【請求項7】
前記エアゾール容器は、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のエアゾール容器用アクチュエータを備えていることを特徴とするエアゾール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗布面を有するエアゾール容器用アクチュエータに関し、特に、簡単な操作で迅速に内容物を塗布面上に透過可能且つ、内容物を塗布対象に塗布可能なエアゾール容器用アクチュエータおよびエアゾール製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、制汗消臭剤、鎮痛消炎剤、害虫忌避剤、クリーナー、塗料等、塗布対象に内容物を直接塗布して効能を得るエアゾール容器用アクチュエータは、様々なものが提案されている。
例えば、特許文献1には、エアゾール容器本体(エアゾール容器)の容器口部に設けられたステム(30)に接続し内容物(エアゾール組成物6)を塗布対象(患部)に塗布可能な塗布部(10)とを有したエアゾール容器用アクチュエータ(塗布部材1)を使用したエアゾール製品(人体用エアゾール製品100)が記載されている。
【0003】
このエアゾール製品(人体用エアゾール製品100)のエアゾール容器用アクチュエータ(塗布部材1)は、押ボタン(本体2)と、押ボタン(本体2)の上面に貼付された円柱状の塗布部(10)と、押ボタン(本体2)の中心から軸線下方に延びる円筒状の筒部と、筒部の下端に設けられたステム接続基部(ステム装着部2c)と、筒部をステム接続基部(ステム装着部2c)から押ボタン(本体2)の上面まで連通する本体通路(2b)とを有しており、本体通路(2b)の上部開口にさらに設けられた貯留空間(2a)に内容物(エアゾール組成物6)を一時的に貯留できるものである。
【0004】
また、塗布部(10)は、軟質発泡体(11)と硬質発泡体(12)とで構成された積層体であり、貯留された内容物(エアゾール組成物6)は、塗布部(10)に一時貯留されると共に、塗布部(10)内部で内容物(エアゾール組成物6)内の液化ガスの気化熱によって塗布部(10)を冷却した後、塗布対象(患部)に軟質発泡体(11)を押し当てることで、塗布部(10)が塗布対象(患部)の形状に応じて変形し、塗布対象(患部)と密着して薬液を効率よく塗布できるものである。
【0005】
さらに、軟質発泡体(11)と硬質発泡体(12)には、内容物(エアゾール組成物6)の流出通路となる本体通路(2b)と同軸方向に伸び貫通する中心通路(11a、12a)が設けられており、貯留空間(2a)に放出された内容物(エアゾール組成物6)の一部を直接軟質発泡体(11)に含浸できるとともに、内容物(エアゾール組成物6)内の液化ガスの気化による推進力によって中心通路(11a、12a)から外方に短時間で塗布部(10)に内容物(エアゾール組成物6)を含浸でき、噴射操作から塗布対象(患部)に塗布可能になるまでの時間を短縮できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1で公知のエアゾール容器用アクチュエータには、未だ改善の余地があった。
すなわち、内容物を一度貯留空間内に貯留してから塗布部に含浸し、さらに塗布対象に塗布部を押し当てて塗布部内の内容液を塗布する構成のため、噴射操作から塗布対象に塗布可能になるまで時間差が発生してしまう虞があった。
また、貯留空間内に内容物が残液として残り、貯留空間内で劣化する虞や、残液が乾燥して残液内の成分が本体通路に固着し、本体通路を閉塞してしまう虞があった。
さらに、塗布部に含浸した内容物を、塗布部から染み出させるために塗布対象に強く塗布部を押し当ててしまい、必要以上の内容物を噴射してしまう虞があった。
また、塗布部内を貫通する中心通路を設け、中心通路から外方に短時間で塗布部に内容物を含浸しているが、内容物の一部が中心通路から塗布対象に意図せず直接噴射されてしまう虞や、内容物が塗布対象にぶつかるなどして空気中に舞い散り、誤って吸引してしまう虞があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するものであり、簡単な構成で、アクチュエータ内に内容物を貯留する必要がなく、意図せず塗布対象に内容液を直接噴射することを防止でき、必要以上の内容物を噴射することなく塗布対象に内容液を塗布可能なエアゾール容器用アクチュエータを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のエアゾール容器用アクチュエータは、内容物を噴射可能な押ボタンと、噴射された内容物を塗布対象に塗布可能な塗布部とを有し、前記押ボタンはエアゾール容器本体の容器口部の上部に設けられたステムに接続されるように構成されているエアゾール容器用アクチュエータであって、前記押ボタンは、ボタン本体と、前記ボタン本体を前記ステムに接続するステム接続基部と、前記ボタン本体に前記塗布部を接続する塗布部接続基部とを有し、前記ステム接続基部は、前記ステム側から前記塗布部側までを連通する通過孔を少なくとも1つ有し、前記塗布部は、前記ステムに対向する取付面と、塗布対象に内容物を塗布する塗布面とを有し、前記塗布部は、前記ステムから噴射された内容物を、噴射時に前記取付面の外側から前記塗布面の外側に透過可能に構成され、前記塗布部は、前記ボタン本体に取り付けられ、前記ステム接続基部は、前記ボタン本体と別体で構成されているとともに、前記ボタン本体から独立して上下動可能に構成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係るエアゾール容器用アクチュエータによれば、塗布部は、塗布部接続基部を介して押ボタンに接続され、塗布部の取付面は、ステムから噴射された内容物を、噴射時に取付面の外側から塗布面の外側に透過可能に構成されているため、押ボタン内に内容物を貯留することがなく、迅速に内容物を塗布面上に到達させることができ、噴射操作から塗布対象に内容物を塗布可能になるまでの時間差を大幅に短縮できる。
また、押ボタン内に内容物を貯留することがないため、押ボタン内で無駄となってしまう残液が少なく、押ボタン内で内容物が劣化したり、通過孔が乾燥した残液内の成分で閉塞されるようなことがない。
さらに、塗布部は、内容物を取付面から透過することで塗布面上に到達するように構成されているため、内容物が直接噴射されるような孔はなく、意図せず内容物を直接噴射してしまうことや、空気中に内容物が広範囲に舞い散るようなことがない。
また、ステム接続基部は、ボタン本体と別体で構成されているため、ステムの形状に合わせてエアゾール容器用アクチュエータ全体を設計変更する必要がなく、ステム接続基部のみ設計変更すればよく、ステム接続基部以外は共通のものを使用でき、金型製作コストを低減でき、在庫管理を簡単化することもできる。
また、塗布部はボタン本体に取り付けられ、ステム接続基部は、ボタン本体と別体で構成されているとともに、ボタン本体から独立して上下動可能に構成されているため、ボタン本体が側方から衝撃や不意に力を受けた場合でも、ステムに負荷がかかることがなく、塗布面越しにステム接続基部を押圧しない限り、ステムが押し下げられて内容物が噴射されることはないため、誤噴射を防止できる。
また、塗布面越しにステム接続基部を押圧して内容物を噴射させるため、塗布対象に塗布面を密着させた状態でのみ内容物が噴射され、塗布対象への内容物の塗布動作と内容物の取り出し動作とが一体となり、内容物を噴射しすぎるなどの無駄を生じることがない。
【0011】
請求項2に記載の構成によれば、塗布部は、着脱可能に構成されているため、塗布対象に直接内容物を噴射する形態や、空間内に内容物を噴霧する形態など、必要に応じて塗布部を着脱して塗布・噴射形態を変えることができる。
また、塗布部の仕様を変更したい場合や、塗布部が汚れた等で交換したい場合などに、簡単に塗布部を取り外し、所望の塗布部を取り付けることができる。
請求項3に記載の構成によれば、通過孔には、取付面に向かって霧状に噴射可能な噴射口が設けられているため、内容物を取付面の外側から拡散するように塗布面の外側に到達させることができ、内容物を塗布対象に均一に塗布しやすくなる。
【0012】
請求項4に記載の構成によれば、ステム接続基部の取付面に対向する面には、通過孔に連通するとともに、取付面側に開放した通過溝が設けられているため、通過溝の形状や長さを調整することで、内容物を取付面の外側の広範囲から塗布面の外側に到達させることができ、内容物を塗布対象により一層均一に塗布しやすくなる。
請求項5に記載の構成によれば、通過孔は、ステム側から塗布部側に向かって複数に分岐しているため、内容物を分散させて取付面側の広範囲に噴射できるため、通過孔の分岐を調整することで、塗布面の外側に満遍なく内容物を到達させることができる。
【0013】
請求項6に記載の構成によれば、塗布部接続基部とボタン本体とは、ヒンジを介して接続され、塗布部接続基部は、ヒンジを回転中心としてボタン本体から開閉可能に構成されているため、通過孔側を露出させることができ、例えば、通過孔の先端に噴射口を設けることで、噴射口から所望の噴射形態で塗布対象や空間中に内容物を噴射する形態に切り替えることができる。
また、塗布部接続基部とボタン本体とがヒンジ接続されているため、塗布部接続基部をボタン本体から離脱させた際、塗布部接続基部を紛失してしまうことがなく、再びボタン本体に塗布部接続基部を取り付ける際に向きを間違えて取り付けてしまうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の
参考例に係るエアゾール容器用アクチュエータ100を備えたエアゾール製品Pを示す断面図。
【
図2】本発明の
参考例に係るエアゾール容器用アクチュエータ100を示す断面図。
【
図3】本発明の
参考例に係るエアゾール容器用アクチュエータ100のステム接続基部112を示す上面図および断面図。
【
図4】本発明の
参考例に係るエアゾール容器用アクチュエータ100を備えたエアゾール製品Pの噴射状態を示す断面図。
【
図5】本発明の他の
参考例に係るエアゾール容器用アクチュエータ200aを備えたエアゾール製品Pの噴射状態を示す断面図。
【
図6】本発明の他の
参考例に係るエアゾール容器用アクチュエータ200aを備えたエアゾール製品Pの霧状噴射状態を示す断面図。
【
図7】本発明の他の
参考例に係るエアゾール容器用アクチュエータ200bを備えたエアゾール製品Pの噴射状態を示す断面図。
【
図8】本発明の他の
参考例に係るエアゾール容器用アクチュエータ300を備えたエアゾール製品Pの噴射状態を示す断面図。
【
図9】本発明の他の実施形態に係るエアゾール容器用アクチュエータ400を備えたエアゾール製品Pの噴射状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の
参考例に係るエアゾール容器用アクチュエータ100について、図面に基づいて説明する。
エアゾール容器用アクチュエータ100は、
図1乃至
図4に示すように、エアゾール容器本体Cの容器口部の上部に設けられたステムSと、ステムSに接続され、ステムSを下方に押圧してエアゾール容器本体C内の内容物Nを噴射可能な押ボタン110と、ステムSから噴射された内容物Nを塗布対象に塗布可能な塗布部120とを有している。
【0016】
押ボタン110は、ボタン本体111と、ボタン本体111をステムSに接続するステム接続基部112と、ボタン本体111に塗布部120を接続する塗布部接続基部116とを有している。
ステム接続基部112は、ステム嵌合部115と、ボタン本体111と別体に形成されるとともに、ボタン本体111に相対位置を固定された状態で接続しており、ステムSから噴射された内容物Nを通過可能な通過孔113と、通過孔113に連通して内容物Nを塗布部120側へ誘導する通過溝114とを有している。
【0017】
塗布部120は、ボタン本体111側の面である取付面121と、塗布対象に直接内容物Nを塗布する塗布面122とを有し、塗布部接続基部116の外周面に被さるように接続し、塗布部接続基部116と保持カバー117とに挟まれることで、塗布部120とボタン本体111との相対的な位置関係が固定されている。
塗布面122は、ステム接続基部112の上面と当接している。
また、塗布部120は、薄い発泡ラバーで構成されている。
保持カバー117は、塗布部接続基部116に着脱可能に係合している。
【0018】
内容物Nは、エアゾール容器本体C内に噴射剤と共に充填されており、内容物Nを取り出す際、噴射剤と共にステムSから噴射される。
噴射剤として使用されるガスの種類としては、一般的にエアゾール製品に使用されている既知の液化ガスおよび圧縮ガスを使用することができる。
噴射剤として使用される液化ガスの種類としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、またはこれらを含む液化石油ガス、ジメチルエーテル、ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロフルオロカーボンなどがあり、また、噴射剤として使用される圧縮ガスの種類としては、例えば、窒素、炭酸ガス、圧縮空気、酸素、ヘリウム、亜酸化窒素などがあり、これらの一種、または複数種を用いてもよい。
【0019】
次に、本発明の参考例に係るエアゾール容器用アクチュエータ100を用いた、内容物Nの噴射および塗布について、図面に基づいて説明する。
まず、エアゾール容器用アクチュエータ100を下方に押圧し、ステムSを押し下げることで、エアゾール容器本体C内の内容物NをステムSを介して取り出す。
取り出された内容物Nは、ステムSに連通している通過孔113を通り、通過溝114を介して発泡ラバーで構成された塗布部120内の取付面121に到達する。
【0020】
さらに、内容物Nは、エアゾール容器本体C内の噴射剤の圧力と、内容物Nと共に噴射された噴射剤の気化膨張による圧力によって、取付面121から塗布部120を透過して素早く塗布面122上に到達する。
ここで、塗布対象に塗布面122を接触させて、塗布面122上の内容物Nを塗布対象に塗りこむことができる。
【0021】
このとき、通過溝114は直接塗布部120に接触しており、内容物Nを通過溝114から塗布部120に向かって噴射できるため、エアゾール容器用アクチュエータ100内に内容物Nが貯まることがなく、迅速に内容物Nを塗布面122上まで到達させることができる。
これによって、エアゾール容器用アクチュエータ100内で内容物Nが長時間保持されて劣化してしまうことや、乾燥した内容物Nの成分が通過孔113や通過溝114に固着して閉塞させてしまうようなことがない。
【0022】
また、塗布部120が十分に薄く形成されている場合、取付面121からより素早く塗布面122に内容物Nが到達できるため、噴射操作から塗布対象に内容物Nを塗布可能になるまでの時間差をより一層短縮することができるとともに、液化ガスの含有割合が少ない場合でも、液化ガスの気化膨張による冷却効果を効率よく得ることができる。
また、塗布面122を塗布対象に押し付けることでステムSを押し下げて内容物Nを取り出す場合でも、塗布面122を塗布対象に押し付けてエアゾール容器本体C内から内容物Nを取り出し始めてから内容物Nが塗布面122に到達するまでの時間が短いため、使用感を向上できる。
【0023】
さらに、噴射された内容物Nは塗布部120を透過することのみで塗布面122上に到達し、直接エアゾール容器用アクチュエータ100外へ噴射される孔などがないため、内容物Nの不必要な舞い散りを防ぎ、塗布対象以外への内容物Nの誤噴射や、内容物Nを誤って吸引してしまうようなことがない。
また、エアゾールバルブを、ステムSを側方に向かって傾斜させるような力でバルブ開放可能なチルトバルブにすることで、塗布部120をステムSを押し下げる方向へ押圧するだけでなく、塗布部120を塗布対象に当てながら横方向に移動して内容物Nを塗布対象に塗り込むような動作であっても、エアゾール容器本体C内の内容物NをステムSから取り出し塗布部120を透過させることができ、作業効率が向上する。
【0024】
次に、本発明の他の
参考例に係るエアゾール容器用アクチュエータ200a、200b、300、
および本発明の一実施形態に係るエアゾール容器用アクチュエータ400について、
図5乃至
図8に基づいて説明する。
なお、エアゾール容器用アクチュエータ100と同様の構成については、一部説明を省略する。
【0025】
エアゾール容器用アクチュエータ200aは、
図5に示すように、塗布部220がステムSの押下方向に対して傾斜して取り付けられており、通過孔213も、ステムSから塗布部220に向かうように傾斜して設けられている。
これによって、エアゾール容器用アクチュエータ200aの上面に押圧面219を設けることができ、塗布面222に触れることなく押圧面219を押して容易にエアゾール容器用アクチュエータ200aを介してステムSを押圧でき、内容物Nを噴射する際に、押圧面219を押圧して内容物Nを塗布面222上に供給すると同時に、エアゾール容器用アクチュエータ200aを持ち替えることなく塗布対象に内容物Nを塗り拡げることが簡単にできる。
また、エアゾール容器用アクチュエータ200aは、
図6に示すように、塗布部接続基部216がボタン本体211とヒンジ部223によってヒンジ接続されており、塗布部220を塗布部接続基部216ごと通過孔213から離脱させることができるため、通過孔213の先端に噴射口218を設けることで、噴射口218から霧状やジェット状など所望の噴射形態で塗布対象や空間中に内容物Nを噴射する形態に切り替えることもできる。
【0026】
さらに、
図7に示すエアゾール容器用アクチュエータ200bのように、噴射口218と塗布部220とが離れた構成にすると、噴射口218から噴射された内容物Nが塗布部220の広範囲に霧状に噴射される。
これによって、内容物Nを取付面221の外側から拡散するように塗布面222の外側に到達させることができ、エアゾール容器用アクチュエータ200aに比べて、塗布面222上の広範囲に内容物Nを迅速に供給できるため、塗布対象の広範囲に内容物Nをより一層広く均一に塗り拡げやすくなる。
【0027】
エアゾール容器用アクチュエータ300は、
図8に示すように、通過孔313が複数に分岐して取付面321に向かって連通しており、これによって、取付面321のより広範囲から内容物Nを塗布面322上に透過させることができ、塗布対象に内容物Nを塗り拡げる効率を向上できる。
【0028】
エアゾール容器用アクチュエータ400は、
図9に示すように、ボタン本体411は固定部材418を介してマウンティングカップMに相対位置を固定的に接続されるとともに、ステム接続基部412がボタン本体411から独立して形成されている。
これによって、ボタン本体411が側方から衝撃や不意に力を受けた場合でも、ステムSに負荷がかかることがなく、塗布面422越しにステム接続基部412を押圧しない限り、ステムSが押し下げられて内容物Nが噴射されることはないため、誤噴射を防止できる。
【0029】
また、塗布面422越しにステム接続基部412を押圧して内容物Nを噴射させるため、塗布対象に塗布面422を密着させた状態でのみ内容物Nが噴射され、塗布対象への内容物Nの塗布動作と内容物Nの取り出し動作とが一体となり、内容物Nを噴射しすぎるなどの無駄を生じることがない。
なお、本発明の参考例に係るエアゾール容器用アクチュエータ100、200a、200b、300、および本発明の一実施形態に係るエアゾール容器用アクチュエータ400を使用したエアゾール製品Pとして想定されるものは、例えば、制汗消臭剤、鎮痛消炎剤、害虫忌避剤、化粧水、美容液、化粧下地、日焼け止め、洗顔、育毛剤、ヘアカラーなどの人体用品や、クリーナー、ワックス、防水剤、撥水剤、塗料、染み抜き剤などの家庭用品や工業用品、オイルスプレーなどの食用品が挙げられる。
【0030】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0031】
なお、上述した実施形態では、ステム接続基部は取付面に当接するように構成されているものとして説明したが、ステム接続基部と取付面との位置関係はこれに限定されず、例えば、所定の長さ離れた状態でステム接続基部と取付面とが位置していてもよく、内容物の噴射時にのみステム接続基部と取付面とが当接するように構成してもよい。
また、上述した実施形態では、ステム接続基部は、取付面に向かって内容物を噴射するように通過孔を設けているものとして説明したが、ステム接続基部の構成はこれに限定されず、例えば、通過孔をステム接続基部の側方に内容物を噴射するように設け、取付面の外縁部付近から内容物を透過させるように構成してもよい。
【0032】
また、上述した実施形態では、保持カバーが塗布部接続基部の外周面に被さるように接続し、塗布部が塗布部接続基部と保持カバーとに挟まれることで、塗布部とボタン本体との相対位置が固定されているものとして説明したが、塗布部とボタン本体との接続関係はこれに限定されず、例えば、保持カバーを設けずに塗布部が塗布部接続基部に接着されることで塗布部とボタン本体との相対位置が固定されていてもよく、塗布部と保持カバーとが一体に成形され、塗布部を塗布部接続基部と保持カバーとで挟み込むことなく保持カバーが塗布部接続基部に着脱可能に接続されることで、塗布部とボタン本体との相対位置が固定されていてもよい。
また、上述した実施形態では、保持カバーは、塗布部接続基部に着脱可能に係合しているものとして説明したが、保持カバーと塗布部接続基部との係合関係はこれに限定されず、例えば、保持カバーが塗布部接続基部から離脱できないように溶着されていてもよい。
【0033】
また、上述した実施形態では、塗布部接続基部がボタン本体とヒンジ接続されることで、塗布部を着脱可能にするとともに、内容物を直接塗布対象または空間に噴射可能にするものとして説明したが、塗布部を着脱可能にする構成はこれに限定されず、例えば、塗布部のみ塗布部接続基部から着脱可能に構成されていてもよく、塗布部接続基部がボタン本体とネジ係合され塗布部接続基部ごと塗布部を着脱可能に構成されていてもよく、ステム接続基部を別体として形成してステム接続基部以外を塗布部ごと取り去ることで着脱可能に構成されていてもよく、塗布部接続基部の一部が分離して塗布部と共に着脱可能に構成されていてもよい。
また、上述した実施形態では、内容物は、エアゾール容器内に噴射剤と共に充填されており、内容物を取り出す際、噴射剤と共にステムから噴射されるものとして説明したが、内容物のエアゾール容器内の充填状態や噴射方法はこれに限定されず、例えば、エアゾール容器内で、可撓性の袋である内袋の内側に内容物を充填するとともに内袋の外側に噴射剤を充填し、内袋の内側のみステムと連通するように内袋とステムとを接続することで、噴射時には噴射剤は噴射されることがなく、噴射剤の圧力で内袋を押圧して内容物のみステムから取り出すように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0034】
100、200a、200b、300、400 ・・・ エアゾール容器用アクチュエータ
110、210、310、410 ・・・ 押ボタン
111、211、311、411 ・・・ ボタン本体
112、212、312、412 ・・・ ステム接続基部
113、213、313、413 ・・・ 通過孔
114、414 ・・・ 通過溝
115、215、315、415 ・・・ ステム嵌合部
116、216、316、416 ・・・ 塗布部接続基部
117、217、317、417 ・・・ 保持カバー
120、220、320、420 ・・・ 塗布部
121、221、321、421 ・・・ 取付面
122、222、322、422 ・・・ 塗布面
218 ・・・ 噴射口
418 ・・・ 固定部材
219 ・・・ 押圧面
223 ・・・ ヒンジ部
C ・・・ エアゾール容器本体
M ・・・ マウンティングカップ
N ・・・ 内容物
P ・・・ エアゾール製品
S ・・・ ステム