(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】衛生材料の表面材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 13/511 20060101AFI20240104BHJP
【FI】
A61F13/511 300
(21)【出願番号】P 2019163342
(22)【出願日】2019-09-06
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】523419521
【氏名又は名称】エム・エーライフマテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089152
【氏名又は名称】奥村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】松永 篤
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大士
(72)【発明者】
【氏名】黛 寛
(72)【発明者】
【氏名】佐座 規仁
(72)【発明者】
【氏名】橋本 隆司
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3218416(JP,U)
【文献】特開2005-312700(JP,A)
【文献】特開平06-136654(JP,A)
【文献】特開2013-027686(JP,A)
【文献】国際公開第2019/147091(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
A61L 15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未脱脂綿を構成繊維とする短繊維不織布と、ポリプロピレン系共重合体及び親水剤を含むポリプロピレン系長繊維を構成繊維とする長繊維不織布とが接合されてなり、
該親水剤は該ポリプロピレン系長繊維本体に内包されており、
前記接合は、短繊維不織布の構成繊維と長繊維不織布の構成繊維相互間が絡合することにより達成されており、
前記短繊維不織布は、肌側に配置されることを特徴とする衛生材料の表面材。
【請求項2】
未脱脂綿が未脱脂漂白綿である請求項1に記載の衛生材料の表面材。
【請求項3】
未脱脂綿に、脱脂綿、漂白綿、絹繊維及びレーヨン繊維よりなる群から選ばれた少なくとも一種の他種繊維が混綿されてなる請求項1に記載の衛生材料の表面材。
【請求項4】
ポリプロピレン系共重合体がプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体を含む請求項1に記載の衛生材料の表面材。
【請求項5】
親水剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミド及びグリセリンモノ脂肪酸エステルよりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物である請求項1に記載の衛生材料の表面材。
【請求項6】
短繊維不織布の構成繊維相互間は、水流絡合により結合している請求項1に記載の衛生材料の表面材。
【請求項7】
長繊維不織布の構成繊維相互間は、部分的に施された熱圧着部位で結合している請求項1に記載の衛生材料の表面材。
【請求項8】
未脱脂綿が集積されてなるシート状繊維ウェブと、ポリプロピレン系共重合体に親水剤が練り込まれているポリプロピレン系長繊維を構成繊維とする長繊維不織布とを積層した積層体に、高圧水流を施すことにより、未脱脂綿相互間を絡合せしめると共に、未脱脂綿とポリプロピレン系長繊維を絡合せしめることを特徴とする請求項1に記載の衛生材料の表面材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキンや使い捨ておむつ等の衛生材料の表面に用いる表面材に関し、特に、肌触りがよくスポット吸液性に優れた衛生材料の表面材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、衛生材料の表面材として、短繊維不織布又は長繊維不織布が採用されている。短繊維不織布は、肌触りの点で優れているが破断強度が低いという欠点があった。一方、長繊維不織布は、高破断強度であるが肌触りが悪いという欠点があった。このため、特許文献1には、長繊維不織布と特定の短繊維不織布とを接合した衛生材料の表面材が開示されている。そして、肌側に配置される特定の短繊維不織布として、高融点と低融点の少なくとも2種の熱可塑性樹脂成分を有する熱融着性複合短繊維相互間を低融点成分で融着したものが採用されている(特許文献1、請求項1)。また、長繊維不織布としても、高融点と低融点の少なくとも2種の熱可塑性樹脂成分を有する熱融着性複合長繊維相互間を低融点成分で融着したものが採用されている(特許文献1、請求項3)。
【0003】
しかしながら、熱可塑性樹脂成分よりなる短繊維で構成される短繊維不織布は、木綿や絹等の天然繊維で構成される短繊維不織布に比べると、肌触りが悪く、しかも肌がかぶれる恐れもあった。さらに、長繊維不織布も熱可塑性樹脂成分よりなる長繊維で構成されているため、吸液されにくく、体液が肌に沿って拡散しやすいということもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、肌触りがよく肌がかぶれにくく、しかも体液のスポット吸液性に優れた衛生材料の表面材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の手段に関する。
<1>
未脱脂綿を構成繊維とする短繊維不織布と、ポリプロピレン系共重合体及び親水剤を含むポリプロピレン系長繊維を構成繊維とする長繊維不織布とが接合されてなり、該親水剤は該ポリプロピレン系長繊維本体に内包されており、
前記接合は、短繊維不織布の構成繊維と長繊維不織布の構成繊維相互間が絡合することにより達成されており、
前記短繊維不織布は、肌側に配置されることを特徴とする衛生材料の表面材。
<2>
未脱脂綿が未脱脂漂白綿である<1>に記載の衛生材料の表面材。
<3>
未脱脂綿に、脱脂綿、漂白綿、絹繊維及びレーヨン繊維よりなる群から選ばれた少なくとも一種の他種繊維が混綿されてなる<1>に記載の衛生材料の表面材。
<4>
ポリプロピレン系共重合体がプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体を含む<1>に記載の衛生材料の表面材。
<5>
親水剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミド及びグリセリンモノ脂肪酸エステルよりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物である<1>に記載の衛生材料の表面材。
<6>
短繊維不織布の構成繊維相互間は、水流絡合により結合している<1>に記載の衛生材料の表面材。
<7>
長繊維不織布の構成繊維相互間は、部分的に施された熱圧着部位で結合している<1>に記載の衛生材料の表面材。
<8>
未脱脂綿が集積されてなるシート状繊維ウェブと、ポリプロピレン系共重合体に親水剤が練り込まれているポリプロピレン系長繊維を構成繊維とする長繊維不織布とを積層した積層体に、高圧水流を施すことにより、未脱脂綿相互間を絡合せしめると共に、未脱脂綿とポリプロピレン系長繊維を絡合せしめることを特徴とする<1>に記載の衛生材料の表面材の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る衛生材料の表面材は、肌に接する側が未脱脂綿を構成繊維とする短繊維不織布であるため、肌当たりが良好で肌がかぶれにくいという効果を奏する。そして、短繊維不織布の裏面に、親水剤が練り込まれているポリプロピレン系長繊維を構成繊維とする長繊維不織布が接合されている。練り込まれている親水剤は、徐々に長繊維表面に移行するので、吸液しやすくなっており、短繊維不織布中の体液を速やかに吸液する。すなわち、短繊維不織布中の未脱脂綿で弾かれた体液は、速やかに裏面の長繊維不織布側に吸液されるので、体液が短繊維不織布に沿って拡散しにくく、スポット吸液性に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、特定の短繊維不織布と特定の長繊維不織布とを接合することにより、上記課題を解決したものである。すなわち、本発明は、未脱脂綿を構成繊維とする短繊維不織布と、親水剤が練り込まれているポリプロピレン系長繊維を構成繊維とする長繊維不織布とが接合されてなり、前記接合は、短繊維不織布の構成繊維と長繊維不織布の構成繊維相互間が絡合することにより達成されており、前記短繊維不織布は、肌側に配置されることを特徴とする衛生材料の表面材及びその製造方法に関するものである。
【0009】
本発明に係る衛生材料の表面材は、短繊維不織布と長繊維不織布とが接合されてなるものである。本発明で用いる短繊維不織布は、未脱脂綿を構成繊維とするものである。構成繊維は未脱脂綿単独であってもよいし、未脱脂綿と他種繊維が混綿されていてもよい。他種繊維としては、脱脂綿、漂白綿、絹繊維又はレーヨン繊維等を採用することができる。他種繊維は1種を単独で採用してもよく、2種以上を併用してもよい。未脱脂綿は表面に油脂分(原綿表面に付着しているコットンワックス及び綿実油等)が残存しているものである。油脂分が残存していると、体液を弾きやすく、スポット吸液性に優れるからである。また、未脱脂綿の中でも、白色に漂白した未脱脂漂白綿を採用する方が、清潔感があるので好ましい。
【0010】
短繊維不織布は、構成繊維相互間が絡合されている。絡合させる手段としては、構成繊維が集積されてなるシート状繊維ウェブに、高圧水流を施す方法又はニードルパンチを施す方法等が挙げられる。短繊維不織布の目付は任意であるが、一般的に15~25g/m2程度の低目付である。かかる低目付の短繊維不織布の構成繊維相互間を絡合させるには、高圧水流を施す方法が適している。
【0011】
本発明で用いる長繊維不織布を構成している長繊維は、ポリプロピレン系共重合体と親水剤を含むものである。長繊維が親水剤を含むとは、親水剤が長繊維本体に内包されていることを意味する。親水剤を含む長繊維は、例えば、ポリプロピレン系共重合体と親水剤を溶融混練し、紡糸して長繊維とすることで製造することができる。ポリプロピレン系共重合体と親水剤の溶融混練は、特に制限されず、従来公知の方法で溶融混練することができる。親水剤を長繊維表面に塗布すると、短繊維不織布側に移行しやすくなり、スポット吸液性が低下するので好ましくない。また、親水剤が塗布された長繊維は、水流交絡法に用いた場合、親水剤が水流により脱落し、スポット吸液性が低下する場合がある。
【0012】
ポリプロピレン系共重合体としては、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体、プロピレン・α-オレフィンブロック共重合体又はプロピレン単独重合体等が用いられる。ここで、α-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン等のプロピレン以外のα-オレフィンが用いられる。かかるα-オレフィンとプロピレンとを共重合することにより、長繊維の結晶化が低下し、練り込まれている親水剤が徐々に長繊維表面に移行しやすくなり、スポット吸液性に優れる傾向がある。このため、長繊維は、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体を含むことが好ましく、長繊維の全質量に対して90質量%以上含むことがより好ましい。なお、α-オレフィンの共重合量は、1~10モル%が好ましい。
【0013】
ポリプロピレン系共重合体のメルトフローレイト(MFR、ASTM D1238、230℃、荷重2160g)は、溶融紡糸可能であれば、特に限定されない。例えば、MFRは、1g/10分~1000g/10分であってもよく、5g/10分~500g/10分であることが好ましく、10g/10分~100g/10分であることがより好ましい。ポリプロピレン系共重合体のMFRが上記範囲内であると、強度が向上する傾向にあり、好ましい。ポリプロピレン系共重合体の融点は、長繊維の製造に適した範囲であれば特に制限されないが、親水剤の長繊維への移行の観点から、125℃~155℃が好ましく、130℃~150℃がより好ましい。長繊維は、前述のポリプロピレン系共重合体以外の他の共重合体を含んでいてもよい。他の共重合体としては、ポリエチレン及びポリブテンなどのポリオレフィンや、ポリアミド、ポリエステルなどが挙げられる。
【0014】
長繊維は、従来公知の親水剤を含む。親水剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミド、グリセリンモノ脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、アルキルポリオキシエチレンアルコール、多価アルコール脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物、アルコキシ化アルキルフェノールなどが挙げられる。これらの親水剤は、1種単独で、または複数種を混合して用いられる。これらの中でも親水剤としては、優れた親水性を付与する観点で、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミド及びグリセリンモノ脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミド及びグリセリンモノ脂肪酸エステルを含むことがより好ましい。
【0015】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、たとえば、オキシアルキレン基がオキシエチレン基又はオキシプロピレン基であり、アルキル基が炭素数8~20のアルキル基であるのが好ましい。具体的には、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシプロピレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシプロピレンテトラデシルエーテル、ポリオキシプロピレンドデシルエーテル、ポリオキシプロピレンデシルエーテル又はポリオキシプロピレンオクチルエーテル等が用いられる。オキシアルキレン基の付加モル数は、特に制限されないが、親水性をより向上させる観点から、3モル~20モルが好ましい。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、親水性の観点から、ポリオキシエチレンステアリルエーテルが好ましい。
【0016】
ポリオキシアルキレンアルキルアミドとしては、ポリオキシエチレンラウリルアミドやポリオキシエチレンステアリルアミド、ポリオキシプロピレンラウリルアミド、ポリオキシプロピレンステアリルアミド等を採用するのが好ましい。
【0017】
グリセリンモノ脂肪酸エステルとしては、グリセリンモノステアレートやグリセリンモノオレエート等を採用することができる。
【0018】
長繊維中に含有される親水剤の量は、親水性をより向上させる観点から、長繊維の全質量に対して、0.5~5質量%が好ましい。
【0019】
長繊維不織布を構成する長繊維の平均繊維径は、5μm~30μmが好ましい。長繊維の平均繊維径は、光学顕微鏡を用いて単繊維の繊維径を100本測定し、平均値とすることで求めることができる。長繊維相互間は、従来公知の方法で結合されていることが好ましい。具体的には、長繊維相互間が部分的に施された熱圧着部位で結合しているのが好ましい。非熱圧着部位の長繊維が動きやすく、短繊維と絡合しやすいからである。長繊維不織布の目付は、10~80g/m2が好ましく、11~75g/m2がより好ましく、12~70g/m2がさらに好ましい。長繊維不織布が熱圧着加工されている場合、刻印形状は特に制限されず、円、楕円、ひし形等の従来公知の形状にすることができる。長繊維不織布における熱圧着部の面積率は、長繊維不織布の全面積に対して、5%~30%が好ましく、5%~20%がより好ましい。
【0020】
長繊維は、本発明の目的を損なわない範囲で、任意成分として、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス等の種々公知の添加剤を含んでもよい。これらの添加剤は、長繊維に内包されていてもよく、繊維の表面に付着していてもよい。
【0021】
長繊維不織布の製造方法は特に制限されず、従来公知の方法で製造することができる。長繊維不織布の製造方法としては、具体的には、スパンボンド法、メルトブローン法、フラッシュ紡糸法、静電紡糸法等が挙げられる。これらの中でも、生産性の観点からスパンボンド法が好ましい。
【0022】
長繊維相互間の結合方法は、特に制限されないが、例えば、熱圧着加工、超音波融着等の熱融着法、ニードルパンチを一例とする機械的交絡法を上げることができる。これらの中でも、非結合部位の長繊維が動きやすく、短繊維と絡合しやすいため、熱圧着加工が好ましい。熱圧着加工は、従来公知の方法で行うことができる。例えば、刻印形状を有するエンボスロールと、平滑ロールの間に、長繊維不織布を通すことにより行うことができる。刻印形状を有するエンボスロール間に長繊維不織布を通してもよい。エンボスロールの温度は、長繊維不織布を熱圧着することができれば特に制限されず、例えば、100℃~140℃とすることができる。線圧力は、長繊維不織布を熱圧着することができれば特に制限されず、例えば、10N/60mm~200N/60mmとすることができる。
【0023】
短繊維不織布と長繊維不織布とは、各々の構成繊維が絡合することにより、接合されている。各々の構成繊維を絡合するには、高圧水流を施すか又はニードルパンチを施せばよい。そして、短繊維不織布側を肌側とすることで、肌当たりが良好で肌がかぶれにくい衛生材料の表面材となる。
【0024】
本発明に係る衛生材料の表面材は、以下の製造方法により合理的に得られる。すなわち、以下の製造方法によって、短繊維不織布を得ると同時に短繊維不織布と長繊維不織布とを接合できるのである。かかる製造方法は、未脱脂綿が集積されてなるシート状繊維ウェブと、ポリプロピレン系共重合体に親水剤が練り込まれているポリプロピレン系長繊維を構成繊維とする長繊維不織布とを積層した積層体に、高圧水流を施すことにより、未脱脂綿相互間を絡合せしめると共に、未脱脂綿とポリプロピレン系長繊維を絡合せしめるというものである。
【0025】
未脱脂綿が集積されてなるシート状繊維ウェブは、未脱脂綿(必要により他種繊維を混綿したもの)をカード機で開繊しながらコンベア上に堆積させることにより得られる。そして、このシート状繊維ウェブと長繊維不織布とを積層し、主としてシート状繊維ウェブ側から高圧水流を施す。これにより、シート状繊維ウェブ中の未脱脂綿が絡合して短繊維不織布が形成されると共に、未脱脂綿と長繊維不織布中の長繊維とが絡合し、短繊維不織布と長繊維不織布が接合されることになるのである。
【0026】
生理用ナプキンや使い捨ておむつ等の衛生材料は、肌に接する表面材と下着に防漏材との間に吸液体が挟まれてなるものである。本発明に係る衛生材料の表面材は、短繊維不織布側と肌側となるようにして衛生材料に適用されるのである。
【実施例】
【0027】
実施例
ポリオキシエチレン(5モル)ステアリルエーテル50重量%、ポリオキシエチレン(10モル)ステアリルアミド25重量%及びグリセリンモノステアレート25重量%を含む親水剤20重量部と、MFR:60g/10分のプロピレン単独重合体80重量部と、酸化防止剤(Ciba社製、商品名Irgafos 168)0.05重量部を、230℃で溶融混練して押出し、ペレット状のマスターバッチを用意した。
【0028】
次いで、融点(Tm)142℃、MFR60g/10分のプロピレン・エチレンランダム共重合体100重量部に対して、前記マスターバッチを8.1重量部加えて混合し、長繊維不織布製造用のポリプロピレン系共重合体組成物を用意した。
【0029】
次いで、ポリプロピレン系共重合体組成物をスパンボンド法により溶融紡糸し、長繊維を得ると共に集積したウェブに、熱圧着加工を行い、目付け20g/m2の長繊維不織布を得た。なお、熱圧着加工は、刻印形状が菱形、エンボス面積率が18%、エンボス面積(刻印一つ当たりの面積)が0.41mm2のエンボスロールと、平滑ロールの間にウェブを通し、この際の温度を125℃、線圧力を60N/mmとして行った。以上のようにして、長繊維の平均繊維径が18μmで、目付20g/m2の長繊維不織布を製造した。
【0030】
一方、平均繊維長25mmの未脱脂漂白綿を、パラレルカード機で開繊及び集積し、目付20g/m2のシート状繊維ウェブを得た。このシート状繊維ウェブを、コンベアに載置した前記長繊維不織布の上に積層し、搬送した。そして、孔径0.1mmの噴出孔が孔間隔0.6mmで横一列に配置された水流噴出装置を用い、シート状繊維ウェブ側から3MPaの噴出圧力で高圧水流を施し、次いで6MPaの噴出圧力で高圧水流を施した。この二回の高圧水流処理により、未脱脂漂白綿相互間及び未脱脂漂白綿と長繊維相互間を絡合せしめ、短繊維不織布と長繊維不織布とが接合されてなる衛生材料の表面材を得た。
【0031】
この衛生材料の表面材の短繊維不織布側に、青色に着色された着色水を1cc滴下し、5分間静置した。そして、着色水の縦方向及び横方向の拡がり径を測定し、両者の拡がり径を加算したところ、約49mmであった。一般に、拡がり径が80mm以下であるとスポット吸液性が良好であるといわれており、実施例に係る衛生材料の表面材は、スポット吸液性に優れたものであると認められる。