(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】照明システム
(51)【国際特許分類】
H05B 47/155 20200101AFI20240104BHJP
H05B 47/115 20200101ALI20240104BHJP
【FI】
H05B47/155
H05B47/115
(21)【出願番号】P 2019173746
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-06-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 和樹
(72)【発明者】
【氏名】奥野 達也
(72)【発明者】
【氏名】薮亀 順平
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-316263(JP,A)
【文献】特開2009-140826(JP,A)
【文献】特開2003-216765(JP,A)
【文献】特開2018-028560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/00、47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定空間の広範囲を照らす、少なくとも1つのアンビエントライトと、
前記所定空間内の作業領域を局所的に照らす、少なくとも1つのタスクライトと、
前記アンビエントライトおよび前記タスクライトの点灯状態を制御するように構成された制御装置と、
を備え、
前記タスクライトは、互いに近接する前記作業領域を複数含むブロック領域において、当該各作業領域に対応して複数設けられ、
前記制御装置は、前記ブロック領域を構成する複数の前記作業領域の全てが空き状態である場合、前記タスクライトの点灯状態を制御して、複数の前記作業領域の所定の一部が使用状態である場合に空き状態の前記作業領域に照射される照明光よりも誘目性の高い照明光を
空き状態の前記作業領域に照射させ
、当該作業領域の利用を促進する、照明システム。
【請求項2】
前記作業領域に在席するユーザの状態を検知する第3のセンサを備え、
前記制御装置は、前記ブロック領域を構成する複数の前記作業領域の所定の一部が使用状態である場合に、前記第3のセンサの検知情報に基づいて前記タスクライトの点灯状態を変更する、請求項
1に記載の照明システム。
【請求項3】
所定空間の広範囲を照らす、少なくとも1つのアンビエントライトと、
前記所定空間内の作業領域を局所的に照らす、少なくとも1つのタスクライトと、
前記アンビエントライトおよび前記タスクライトの点灯状態を制御するように構成された制御装置と、
を備え、
前記タスクライトの光色をCIExy色度座標で表した場合において、前記制御装置は、前記作業領域が使用されていない空き状態である場合に、前記タスクライトの点灯状態を制御して、
前記作業領域の使用状態における照明光よりも前記アンビエントライトの照明光との色差が大きくなるように、前記作業領域の使用状態における照明光よりも誘目性の高い
当該照明光と光色が異なる照明光であって、使用状態における照明光の光色が示すCIExy色度座標内の位置を中心とした少なくともマクアダム楕円3-Stepの範囲の外側である光色の照明光を空き状態の前記作業領域に照射させ、当該作業領域の利用を促進する、照明システム。
【請求項4】
前記作業領域の使用状況に関する情報を検知するセンサを備え、
前記制御装置は、前記センサの検知情報に基づいて前記作業領域が空き状態であると判断した場合に、前記タスクライトの点灯状態を制御して、前記作業領域の使用状態における照明光よりも誘目性の高い照明光を照射させる、請求項
3に記載の照明システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記作業領域が空き状態である場合に、前記タスクライトの点灯状態を制御して、前記作業領域の使用状態における照明光よりも高出力の照明光を照射させる、請求項
3または4に記載の照明システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記作業領域が空き状態である場合に、前記タスクライトの点灯状態を制御して、前記作業領域の使用状態における照明光よりも少なくとも15%高出力の照明光を照射させる、請求項
5に記載の照明システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記作業領域が空き状態である場合に、前記タスクライトの点灯状態を制御して、前記作業領域の使用状態における照明光よりも照射範囲が大きくなるように照明光を照射させる、請求項
3~6のいずれか1項に記載の照明システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記作業領域が空き状態である場合に、前記タスクライトの点灯状態を制御して、前記作業領域の使用状態における照明光よりも照射面の動きが大きくなるように照明光を照射させる、請求項
3~7のいずれか1項に記載の照明システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記作業領域が空き状態である場合に、前記タスクライトの点灯状態を制御して、前記作業領域に映像を投影させる、請求項
3~8のいずれか1項に記載の照明システム。
【請求項10】
前記所定空間の明るさおよび色温度の少なくとも一方を検知する第2のセンサを備え、
前記制御装置は、前記作業領域が空き状態である場合に、前記第2のセンサの検知情報に基づいて前記タスクライトの点灯状態を変更する、請求項
3~9のいずれか1項に記載の照明システム。
【請求項11】
前記作業領域を使用していない前記所定空間内のユーザと前記作業領域の距離を計測する第4のセンサを備え、
前記制御装置は、前記作業領域が空き状態である場合に、前記第4のセンサにより計測される前記距離に基づいて前記タスクライトの点灯状態を制御する、請求項1~
10のいずれか1項に記載の照明システム。
【請求項12】
前記アンビエントライトは、前記作業領域を含む第1空間を照らす第1アンビエントライトと、前記作業領域を含まない、第1空間に隣接する第2空間を照らす第2アンビエントライトとを有し、
前記第1アンビエントライトの照明光は、前記第2アンビエントライトの照明光と、光色が異なる、請求項1~
11のいずれか1項に記載の照明システム。
【請求項13】
所定空間の広範囲を照らす、少なくとも1つのアンビエントライトと、
前記所定空間内の作業領域を局所的に照らす、少なくとも1つのタスクライトと、
前記アンビエントライトおよび前記タスクライトの点灯状態を制御するように構成された制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記作業領域が使用されていない空き状態である場合に、前記タスクライトの点灯状態を制御して、前記作業領域の使用状態における照明光よりも誘目性の高い照明光を空き状態の前記作業領域に照射させ、
前記アンビエントライトは、前記作業領域を含む第1空間を照らす第1アンビエントライトと、前記作業領域を含まない、第1空間に隣接する第2空間を照らす第2アンビエントライトとを有し、
前記第1アンビエントライトの照明光は、前記第2アンビエントライトの照明光と光色が異なり、
前記第1アンビエントライトの光色、および前記第2アンビエントライトの光色をCIExy色度座標で表した場合に、前記第2アンビエントライトの光色が、第1アンビエントライトの光色が示すCIExy色度座標内の位置を中心とした少なくともマクアダム楕円3-Stepの範囲の外側である
、照明システム。
【請求項14】
前記アンビエントライトは、前記作業領域を含む第1空間を照らす第1アンビエントライトと、前記作業領域を含まない、第1空間に隣接する第2空間を照らす第2アンビエントライトとを有し、
前記第1アンビエントライトの照明光は、前記第2アンビエントライトの照明光と、出力が異なる、請求項1~
13のいずれか1項に記載の照明システム。
【請求項15】
前記第1アンビエントライトの照明光は、前記第2アンビエントライトの照明光と、出力が少なくとも15%異なる、請求項
14に記載の照明システム。
【請求項16】
所定空間の広範囲を照らす、少なくとも1つのアンビエントライトと、
前記所定空間内の作業領域を局所的に照らす、少なくとも1つのタスクライトと、
前記アンビエントライトおよび前記タスクライトの点灯状態を制御するように構成された制御装置と、
を備え、
前記アンビエントライトは、前記作業領域を含む第1空間を照らす第1アンビエントライトと、前記作業領域を含まない、第1空間に隣接する第2空間を照らす第2アンビエントライトとを有し、
前記第1アンビエントライトの照明光は、前記第2アンビエントライトの照明光と光色が異なり、
前記制御装置は、前記作業領域が使用されていない空き状態である場合に、前記タスクライトの点灯状態を制御して、前記作業領域の使用状態における照明光よりも誘目性の高い照明光を空き状態の前記作業領域に照射させ、
前記第2空間が使用されていない空き状態である場合に、前記第2アンビエントライトの出力を上昇または低下させる
、照明システム。
【請求項17】
前記第2空間の使用状況に関する情報を検知する第5のセンサを備え、
前記制御装置は、前記第5のセンサの検知情報に基づいて前記第2空間が空き状態であると判断した場合に、前記第2アンビエントライトの出力を上昇または低下させる、請求項
16に記載の照明システム。
【請求項18】
前記作業領域を使用していない前記所定空間内のユーザと前記作業領域の距離を計測する第4のセンサを備え、
前記制御装置は、前記第1空間内の前記作業領域と前記第2空間が空き状態である場合、かつ前記第4のセンサの検知結果に基づいて前記第2空間にユーザが進入したと判断された場合に、前記第2アンビエントライトの出力を低下させ、ユーザが前記第2空間を利用した場合、または前記第2空間から離脱したと判断された場合に前記第2アンビエントライトの出力を出力低下前の状態に戻す制御を行う、請求項
16または
17に記載の照明システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明システムに関し、特にタスクライトおよびアンビエントライトを備えた照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW:Activity based working)と呼ばれる働き方が注目されており、ABWを導入したオフィス(ABWオフィス)が台頭している。ABWオフィスは、ユーザの仕事内容に応じて、それに適した空間を用意することで組織のパフォーマンスを向上させる空間設計がなされたオフィスである。ABWオフィスでは、例えば照明の明るさ、光色等を変化させることによって、各自の仕事に集中し易い作業空間、知識を共有するための共創空間など、目的とする空間設計がなされる。
【0003】
例えば、特許文献1には、作業領域を局所的に照らすタスク照明、および作業領域を含む空間の全体を照らすアンビエント照明が組み合わされたタスク・アンビエント照明を実現する照明システムが提案されている。この照明システムでは、作業領域の照度が周辺部の照度より高く、かつ周辺部の色温度と作業領域の色温度との差が小さくなるように、タスクライトおよびアンビエントライトの少なくとも一方が制御される。
【0004】
また、アンビエント照明の群をゾーンごとに制御し、特にアンビエント照明を他ゾーンに比べ暗く制御し、該ゾーンに含まれる作業領域に個別かつ選択的にタスク照明を照射することで、デジタル制御でゾーニングを変更できる、アクティブゾーニングが可能である。アクティブゾーニングは、ユーザ(ワーカ)や組織の流動的なパフォーマンスに応じてフレキシブルなレイアウト変更を要求されるABWオフィスにおいて好適な制御手法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記手法をABWに適用し、アンビエント照明とタスク照明を作業領域で作業するユーザに対して好適な条件に調整したところ、この空間を離れた場所から見ると、作業領域が薄暗く認知しにくいため、ユーザがこの空間に気づかない場合がある。これを改善するために、タスク照明の調光率を上げたところ、作業領域で作業するユーザに対してタスクライトが眩しすぎて作業に支障をきたすことがわかった。つまり、この改善策は、作業領域で作業を行うユーザに好適な照明環境を提供しつつ、この空間を使用していない他のユーザにこの空間を認知させ利用を促進するものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様である照明システムは、所定空間の広範囲を照らす、少なくとも1つのアンビエントライトと、前記所定空間内の作業領域を局所的に照らす、少なくとも1つのタスクライトと、前記アンビエントライトおよび前記タスクライトの点灯状態を制御するように構成された制御装置とを備える。前記制御装置は、前記作業領域が使用されていない空き状態である場合に、前記タスクライトの点灯状態を制御して、前記作業領域の使用状態における照明光よりも誘目性の高い照明光を照射させるように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様である照明システムによれば、ABW等の空間設計に適したタスク・アンビエント照明を実現しつつ、使用されていない作業領域をユーザに認識させ、その利用を促進することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態である照明システムを示す図である。
【
図2】第1の実施形態である照明システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態である照明システムの変形例を示す図である。
【
図4】第2の実施形態である照明システムの構成を示すブロック図である。
【
図5】第3の実施形態である照明システムを示す図である。
【
図6】第3の実施形態である照明システムの構成を示すブロック図である。
【
図7】第3の実施形態である照明システムの変形例を示す図である。
【
図8】照明システムの制御手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】刺激強度水準と明るさの弁別閾を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る照明システムの実施形態の一例について詳細に説明する。但し、本開示の照明システムは、以下で説明する実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態の各構成要素を選択的に組み合わせることは当初から想定されている。
【0011】
本開示の装置およびシステムの主体は、コンピュータを備えている。このコンピュータがプログラムを実行することによって、本開示の装置およびシステムの主体の機能が実現される。コンピュータは、プログラムに従って動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって上記機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、集積回路(IC)または大規模集積回路(LSI)を含む1つまたは複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集積されていてもよく、複数のチップに設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよく、複数の装置に備えられていてもよい。また、プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記憶媒体に記憶される。プログラムは、記憶媒体に予め格納されていてもよく、インターネット等を含む広域通信網を介して記憶媒体に供給されてもよい。
【0012】
図1および
図2は、第1の実施形態である照明システム10を示す図である。
図1および
図2に例示するように、照明システム10は、所定空間の広範囲を照らす、少なくとも1つのアンビエントライトと、所定空間内の作業領域3を局所的に照らす、少なくとも1つのタスクライト12とを備える。本実施形態では、アンビエントライトとして、作業領域3を含む第1の空間である作業空間1を照らす第1アンビエントライト11と、作業領域3を含まない、第1の空間に隣接する第2の空間である共創空間2を照らす第2アンビエントライト15とが設けられている。
【0013】
照明システム10は、ABW等の空間設計に好適である。作業空間1は、例えば各自の仕事に集中し易い空間であって、作業空間1には各自が1人で使用する複数の作業領域3が存在する。共創空間2は、例えばミーティング、ティーブレイクなど、コミュニケーションを図るための空間であって、共創空間2には作業領域3が存在しない。
図1では、作業領域3が使用されている使用状態(上図)と、作業領域3が使用されていない空き状態(下図)を示している。作業空間1には、例えば、複数の机と椅子が設置されて複数の作業領域3が設けられている。
【0014】
なお、第2の空間は、第1の空間と異なる用途の空間であればよく、共創空間2に限定されない。第2の空間は、例えば廊下やエントランス等であってもよい。また、第2の空間には、ミーティングのための机、椅子等が配置されていてもよい。
【0015】
照明システム10は、作業領域3の使用状況に関する情報を検知するセンサと、アンビエントライトおよびタスクライト12の点灯状態を制御するように構成された制御装置14を備える。本実施形態では、センサとして、作業領域3を含む作業空間1を撮像するカメラ13を備える。詳しくは後述するが、制御装置14は、カメラ13の検知情報に基づいて作業領域3が使用されていない空き状態であると判断した場合に、少なくともタスクライト12の点灯状態を制御して、作業領域3の使用状態における照明光よりも誘目性の高い照明光を照射させる。
【0016】
第1アンビエントライト11は、作業空間1の広範囲を照らす照明器具であって、作業空間1全体の明るさを確保する。同様に、第2アンビエントライト15は、共創空間2の広範囲を照らす照明器具であって、共創空間2全体の明るさを確保する。アンビエントライトは、一般的にベースライトとも呼ばれる。アンビエントライトの種類、配置、数等は特に限定されず、アンビエントライトには、例えばシーリングライト、ラインライト、フロアライト、ダウンライト、ペンダントライトなど、種々の照明器具を適用できる。
【0017】
第1アンビエントライト11の照明光は、第2アンビエントライト15の照明光と出力および光色の少なくとも一方が異なるように制御されることが好ましい。本実施形態では、第1アンビエントライト11の照明光が、第2アンビエントライト15の照明光と比較して、光量が少なくなるように制御される。或いは、第1アンビエントライト11の照明光が、第2アンビエントライト15の照明光と比較して、光量が少なく、かつ色温度が高くなるように、または光量が同等で色温度が高くなるように制御されてもよい。
【0018】
制御装置14は、例えば、同一照射面の直下照度が、第1アンビエントライト11<第2アンビエントライト15<タスクライト12となるように各ライトの出力を制御する。また、各ライトの色温度が、第2アンビエントライト15<第1アンビエントライト11≦タスクライト12となるように制御されてもよい。この場合、良好な作業空間1と共創空間2をデザインできる。
【0019】
ユーザが、作業領域3を認知していない状態で、第2空間、または第1空間、第2空間以外の空間から第1空間を見た場合、まず照射領域が広い第1アンビエントライト11が照らされている領域を視認し、その後、タスクライト12が照らしている作業領域3を視認する。その場合、隣接した第2空間を広く照らしている第2アンビエントライト15の照射領域と、第1アンビエントライト11の照射領域の明るさや光色が異なっていると、第1アンビエントライト11の照射領域が際立つことで誘目性が高まり、結果的にタスクライト12の照射領域の誘目性が高まる。
【0020】
また、制御装置14は、第2空間が使用されていない空状態である場合に、第2アンビエントライト15の出力を上昇または低下させてもよい。例えば、照明システム10は、第2空間の使用状況に関する情報を検知するセンサ(第5のセンサ)を備え、制御装置14は、当該センサの検知情報に基づいて第2空間が空き状態であるか否かを判定する。そして、空き状態であると判断した場合に、第2アンビエントライト15の出力を上昇または低下させる。当該センサには、作業領域3の使用状況に関する情報を検知するセンサと同種のセンサを適用できる。
【0021】
第2空間が空き状態である場合、在席ユーザの作業性を考慮する必要が無いので、例えば、第2アンビエントライト15の出力を低下させて第2アンビエントライト15の照射領域を暗くすることで第1アンビエントライト11の照射領域の誘目性を高めることができる。また、第2空間を使用するのではなく、第2空間を通りがかっただけである場合にも、ユーザが第2空間に滞在している一時的な時間内のみ第2アンビエントライト15の出力を低下させて第2アンビエントライト15の照射領域を暗くすることで第1アンビエントライト11の照射領域の誘目性を高めることができる。
【0022】
タスクライト12は、作業領域3がその周囲よりも明るくなるように、作業領域3を局所的に照らす照明器具である。タスクライト12は、例えば、作業領域3毎に1つずつ設けられる。言い換えると、タスクライト12が設けられた場所が作業領域3となる。タスクライト12の種類、配置、数等は特に限定されない。
図1に示す例では、作業空間1の天井であって、作業領域3を構成する机の直上にタスクライト12が設置されている。タスクライト12は、ダウンライトやスポットライトであってもよく、ダクトレールに取り付けられて移動可能であってもよい。
【0023】
タスクライト12は、照明光の出力(光量)、光色、および配光角の少なくともいずれか1つが変更可能であることが好ましく、作業領域3の使用状態と空き状態とで、光量、光色、照射範囲の少なくともいずれか1つが異なる照明光を照射するように構成される。また、タスクライト12は、光の照射方向を変更可能な首振り機能を有していてもよい。また、タスクライト12は、映像投影機能を有し、作業領域3に所定の映像コンテンツを投影可能であってもよい。
【0024】
タスクライト12の光源は特に限定されないが、好ましくはLED(Light Emitting Diode)等の半導体発光素子である。タスクライト12は、例えば赤色、緑色、青色のLEDを含み、制御回路によって各色のLEDの光量が調整されることで、照明光の出力、色温度等が制御される。また、タスクライト12は、例えば光学レンズを有し、光源とレンズの距離を変更することで配光角、すなわち照射範囲の大きさを変更できる。
【0025】
図3に例示するように、タスクライト12は、作業領域3の机上に配置されたデスクライトであってもよい。この場合も、作業領域3の使用状態と空き状態とで、光量、光色、照射範囲の少なくともいずれか1つが異なる照明光が照射される。なお、1つの作業領域3に対して、天井に取り付けられるダウンライトと机上に取り付けられるデスクライトなど、複数のタスクライト12が設けられてもよく、作業領域3毎に異なるタスクライト12が設けられてもよい。
【0026】
カメラ13は、作業領域3の使用状況に関する情報を検知するためのセンサとして使用される。カメラ13は、例えば、複数の作業領域3を撮像可能な可視光または赤外線カメラである。カメラ13は、作業空間1のみを撮像可能に構成されてもよく、作業空間1と共創空間2の両方を撮像可能に構成されてもよい。
図1に示す例では、作業空間1の天井であって、作業領域3の直上にカメラ13が設けられている。カメラ13は、照明システム10の専用機器であってもよく、防犯システム等の他のシステムで兼用される機器であってもよい。
【0027】
カメラ13は、例えば、映像を処理して人を検知する画像センサを搭載している。カメラ13は、制御装置14に対して、作業領域3にユーザが在席しているときに検知信号を送信してもよく、作業領域3が空いているときに検知信号を送信してもよい。また、作業領域3が複数存在する場合、カメラ13は、作業領域3の各々について使用状況を検知できるように設定される。
【0028】
なお、作業領域3の使用状況に関する情報を検知するためのセンサとして、カメラ13の代わりに、赤外線センサ、電磁波センサ、超音波センサ、重量センサなど、従来公知の人感センサを用いてもよい。また、LPS(Local Positioning System)と呼ばれる屋内位置情報システムにおけるスキャナや、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)と呼ばれるレーザーによる測距システムにおけるレーザーセンサ、および作業領域3に設置されるパソコン等の電子機器のON/OFF信号などに基づいて作業領域3の使用状況が判断されてもよい。
【0029】
制御装置14は、第1アンビエントライト11およびタスクライト12の点灯状態を制御するように構成されている。制御装置14は、カメラ13の検知情報に基づいて、またはパソコン等の電子機器のON/OFF信号に基づいて作業領域3の使用状況を判断し、その使用状況に応じて少なくともタスクライト12の点灯状態を制御する。制御装置14は、第1アンビエントライト11の点灯状態を制御するアンビエント照明点灯制御部22と、タスクライト12の点灯状態を制御するタスク照明点灯制御部23とを含む。なお、制御装置14は、第2アンビエントライト15の点灯状態も制御する。
【0030】
制御装置14は、プロセッサ20、メモリ21、および入出力インターフェイス等を備えるコンピュータで構成される。プロセッサ20は、例えばCPUまたはGPUで構成され、制御プログラムを読み出して実行することにより上記各制御部の機能を実現する。メモリ21は、ROM、HDD、SSD等の不揮発性メモリと、RAM等の揮発性メモリとを含む。制御プログラムは、不揮発性メモリに記憶されている。また、メモリ21には、少なくとも複数のタスクライト12の識別情報(位置情報)が記憶されている。
【0031】
制御装置14は、例えば、タブレット端末で構成される。この場合、タブレット端末に照明システム10の機能を実行する制御プログラム(アプリケーションソフト)をインストールすることで、タブレット端末を制御装置14として機能させることができる。スマートフォン等の他の携帯端末、作業空間1等に設置されたパソコン、或いは照明システム10の専用コントローラに制御装置14の機能を持たせてもよい。
【0032】
制御装置14の機能を有するタブレット端末は、アンビエントライトおよびタスクライト12を操作するリモコンとしても使用できる。制御装置14は、例えば、タブレット端末の操作に基づいて点灯制御信号を作成し、第1アンビエントライト11等に点灯制御信号を出力することで、第1アンビエントライト11等を点灯または消灯させる。また、タブレット端末を用いて、各ライトの点灯状態、センサの検知範囲など、照明システム10の各種設定を変更することもできる。
【0033】
制御装置14は、作業領域3が使用されていない空き状態である場合に、少なくともタスクライト12の点灯状態を制御して、作業領域3の使用状態における照明光よりも誘目性の高い照明光を照射させるように構成されている。本実施形態では、カメラ13(画像センサ)の検知情報に基づいて作業領域3の使用状況が判断される。作業領域3が空き状態の場合、省エネの観点からタスクライト12を消灯させることが一般的であるが、照明システム10では、例えば空き状態でより明るい照明光を照射することにより、作業領域3をユーザに認識させ、その利用を促進することができる。
【0034】
ここで、誘目性の高い照明光(以下、「誘目光」という場合がある)とは、ユーザの目を引く、目立ち易い照明光を意味し、比較対象は作業領域3が使用状態である場合に照射される照明光(以下、「通常光」という場合がある)である。制御装置14は、作業領域3が空き状態である場合に、タスクライト12と共に、第1アンビエントライト11の点灯状態を制御してタスク照明の誘目性を高めてもよい。
【0035】
制御装置14は、作業領域3が空き状態である場合に、タスクライト12の点灯状態を制御して、通常光よりも高出力の誘目光を照射させるように構成されていてもよい。タスク照明点灯制御部23は、例えば、カメラ13から作業領域3にユーザが在席していないことを示す検知情報を取得したとき、またはユーザの在席を示す情報を受信しないときに、作業領域3が空き状態であると判断する。そして、通常光よりも高出力の誘目光を照射させるための点灯制御信号をタスクライト12の制御回路に出力する。この場合、作業領域3の照度は、通常光の照射時<誘目光の照射時となる。
【0036】
他方、制御装置14は、作業領域3が使用状態である場合に、タスクライト12の点灯状態を制御して通常光を照射させる。作業領域3には、通常光の光量、色温度等を調整するための操作部が設けられていてもよい。タスク照明点灯制御部23は、例えば、作業領域3が使用状態である場合に、予め定められた設定情報に基づいて、または当該操作部の操作信号に基づいて、通常光を照射させるための点灯制御信号をタスクライト12の制御回路に出力する。
【0037】
制御装置14のメモリ21には、各タスクライト12の識別情報が、カメラ13によって監視される作業領域3の各々と関連付けられた状態で記憶されている。すなわち、タスク照明点灯制御部23は、カメラ13の検知情報に基づいて、複数の作業領域3のうちいずれが空き状態であるかを判断し、その作業領域3に対応するタスクライト12に対して誘目光を照射させるための点灯制御信号を出力する。
【0038】
制御装置14は、上記の通り、作業領域3が空き状態である場合に、タスクライト12の点灯状態を制御して、照射面が明るくなるように、通常光より高出力の誘目光を照射させてもよい。タスク照明点灯制御部23は、例えば、作業領域3が空き状態であると判断したときに、通常光より高出力の誘目光を照射させるための点灯制御信号を、当該作業領域3に対応するタスクライト12の制御回路に出力する。
【0039】
制御装置14は、作業領域3が空き状態である場合に、タスクライト12の点灯状態を制御して、通常光よりも第1アンビエントライト11の照明光との色差が大きくなるように、通常光と異なる光色の誘目光を照射させてもよい。タスク照明点灯制御部23は、例えば、作業領域3が空き状態であると判断したときに、通常光と異なる色温度の誘目光を照射させるための点灯制御信号を、当該作業領域3に対応するタスクライト12の制御回路に出力する。誘目光の色温度は、第1アンビエントライト11の照明光の色差が大きくなる限り、通常光の色温度より低くてもよく、高くてもよい。
【0040】
制御装置14は、作業領域3が空き状態である場合に、タスクライト12の点灯状態を制御して、通常光よりも照射領域が大きくなるように照明光を照射させてもよい。すなわち、制御装置14は、通常光よりも配光角が大きく照射範囲の広い誘目光を照射させるように構成されていてもよい。タスク照明点灯制御部23は、例えば、作業領域3が空き状態であると判断したときに、通常光よりも配光角が大きな誘目光を照射させるための点灯制御信号を、当該作業領域3に対応するタスクライト12の制御回路に出力する。
【0041】
制御装置14は、作業領域3が空き状態である場合に、タスクライト12の点灯状態を制御して、通常光よりも照射面の動きが大きくなるように照明光を照射させてもよい。なお、通常光は一般的に動きのない照明光である。すなわち、制御装置14は、動きのある誘目光を照射させるように構成されていてもよい。
【0042】
誘目光の動きとしては、揺らぎ、点滅等が挙げられ、規則的な動きであってもよく、不規則な動きであってもよい。タスク照明点灯制御部23は、例えば、作業領域3が空き状態であると判断したときに、揺らぎ、点滅等の動きのある誘目光を照射させるための点灯制御信号を、当該作業領域3に対応するタスクライト12の制御回路に出力する。
【0043】
制御装置14は、作業領域3が空き状態である場合に、タスクライト12の点灯状態を制御して、作業領域3に映像を投影させるように構成されていてもよい。映像コンテンツは特に限定されず、作業領域3の利用を促進できるものであればよく、動画、静止画のいずれであってもよい。タスク照明点灯制御部23は、例えば、作業領域3が空き状態であると判断したときに、誘目光として映像を投影させるための点灯制御信号を、当該作業領域3に対応するタスクライト12の制御回路に出力する。
【0044】
誘目光は、上述のように、作業領域3における照度、周囲光との色差、照射範囲、および光の動きから選択される少なくとも1つが通常光よりも大きい照明光である。また、誘目光の照射には、作業領域3にユーザの目を引くような映像を投影することが含まれる。制御装置14は、誘目光として、表1に示すような各特性を任意に組み合わせた照明光を照射してもよい。例えば、所定の映像コンテンツを投影しつつ、通常光よりも照度が高くなるような誘目光を照射してもよい。
【0045】
【0046】
図9は、刺激強度水準と明るさの弁別閾を示す図であって、文献(Steinhardt, J.: J. gen. Physiol. 20 (1936) 185)に記載されたものである。
図9の横軸は、基準光の刺激強度(I)を表し、
図9の縦軸は、基準光とテスト光の刺激強度差をΔIとした際のウェーバー比(ΔI/I)を表す。視角で2°以上になると、曲線に不連続な変化が現れる。これは視角が2°以上になると、網膜中心小窩の外までに広がるので、桿体も視覚に参与するために、曲線は桿体視部分と錐体視部分とに分かれるためである。
【0047】
本実施形態において、有効視野範囲内にタスクライト12の光が入っている場合においてはすでにタスクライト12の光が認知されている状態であるので、有効視野範囲外を想定する。文献(Objective and Subjective Sizes of the Effective Visual Field during Game Playing Measured by the Gaze-contingent Window Method, International Journal of Affective Engineering Vol.12 No.1 pp.11-19 (2013))によると、有効視野範囲は約20~25°の範囲に存在すると考えられる。加えて、視作業を行うオフィス環境を想定すると、桿体のみが働く暗所視環境ではなく、薄明視・明所視環境が想定される。
図9を見ると、24°視野における不連続変化点(=暗所視→薄明視の変化点)のウェーバー比は約1.15である。よって、本実施形態で想定される環境においては、どの明るさ、視野においても1.15倍の変化があれば違いを認識できる。この1.15倍の変化は照度計による机上面照度測定、または制御装置の設定値により判断される。
【0048】
制御装置14は、例えば、作業領域3が空き状態である場合に、タスクライト12の点灯状態を制御して、通常光よりも少なくとも15%高出力の照明光を照射させる。この場合、作業領域3がよりユーザに認識され易くなる。制御装置14は、誘目光の照射時における作業領域3の照度が、通常光の照射時よりも15%以上高くなるようにタスクライト12の点灯状態を制御する。
【0049】
一般的に、CIExy色度図上で色覚正常者が色の違いを区別することができない範囲を等色実験の結果から示したマクアダム楕円が知られている。マクアダム楕円は、特定の中心色に対する識別変動の標準偏差をCIExy色度図に表わす楕円である。このマクアダム楕円は、マクアダム楕円1-Stepとも呼ばれている。
【0050】
マクアダム楕円3-Stepは、その楕円の短辺、および長辺のそれぞれの長さ(標準偏差)が、マクアダム楕円1-Stepにおけるそれぞれに対して3倍となる関係を示している。本実施形態では、マクアダム楕円3-Stepに相当する範囲変化があれば光色の違いを認識できる。
【0051】
制御装置14は、上記の通り、作業領域3が空き状態である場合に、通常光よりも第1アンビエントライト11の照明光との色差が大きくなるように、タスクライト12の点灯状態を制御してもよい。そして、タスクライト12の光色をCIExy色度座標で表した場合に、制御装置14は、通常光の光色が示すCIExy色度座標内の位置を中心とした少なくともマクアダム楕円3-Stepの範囲の外側である光色の誘目光を照射させてもよい。この場合、作業領域3がよりユーザに認識され易くなる。このマクアダム楕円3-Stepの範囲の変化は色彩照度計などによる机上面光色測定、または制御装置の設定値により判断される。
【0052】
上記構成を備えた照明システム10によれば、ABW等の空間設計に適したタスク・アンビエント照明を実現しつつ、使用されていない空き状態の作業領域3に誘目光を照射することで、その作業領域3をユーザに認識させ、その利用を促進することができる。
【0053】
なお、制御装置14は、各アンビエントライトについて、例えば各光色をCIExy色度座標で表した場合に、第2アンビエントライト15の光色が、第1アンビエントライト11の光色が示すCIExy色度座標内の位置を中心とした少なくともマクアダム楕円3-Stepの範囲の外側となるように点灯制御してもよい。また、第1アンビエントライト11の照明光が、第2アンビエントライト15の照明光と、出力が少なくとも15%異なるように各アンビエントライトを制御してもよい。
【0054】
図4は、第2の実施形態である照明システム10xの構成を示すブロック図である。
図4に例示するように、照明システム10xは、照度センサ16(第2のセンサ)を備える点で、照明システム10と異なる。照度センサ16は、作業空間1の明るさおよび色温度の少なくとも一方を検知するように構成されている。この場合、制御装置14xは、作業領域3の使用状況に関する情報を検知するカメラ13と共に、照度センサ16の検知情報に基づいて、少なくともタスクライト12の点灯状態を制御するように構成される。
【0055】
制御装置14xは、例えば、天候や夕方の西日の影響等により、作業領域3の周囲の照度が高いことが検知された場合に、作業領域3の周囲の照度が低い場合よりもタスクライト12の出力を上げて、作業領域3の照度を上げることが好ましい。この場合、作業領域3の周囲が明るくても、作業領域3の誘目性を高めることができる。タスク照明点灯制御部23は、カメラ13の検知情報に基づいて作業領域3が空き状態であると判断したときに、照度センサ16の検知情報をさらに考慮して、必要により、出力、色温度等の誘目光の特性を変更する。
【0056】
制御装置14xは、照度センサ16により検知される作業領域3の周囲の照度が所定の閾値を超えたときに誘目光の出力を上げる等、誘目性をさらに高めた照明光を照射させてもよい。また、制御装置14xは、作業領域3の周囲の色温度が所定の閾値を超えたとき、または所定の閾値未満となったときに、周囲の光との色差がより大きくなるような色温度に変更する等、誘目性をさらに高めた照明光を照射させてもよい。或いは、制御装置14xは、作業領域3の周囲の照度および色温度の少なくとも一方に基づいて予め定められた出力等の特性値のマップまたは計算式を用いて、誘目光の特性を変更してもよい。
【0057】
制御装置14xは、例えば、作業領域3が空き状態である場合に、照度センサ16の検知情報に基づいて、当該作業領域3に対応するタスクライト12の点灯状態を以下のように変更する。制御装置14xは、作業領域3の周囲の照度が高い場合に、周囲の照度が低い場合よりも高出力の誘目光を照射させ、作業領域3の照度をより高くする。或いは、作業領域3の周囲の照度が高い場合に、周囲の照度が低い場合よりも第1アンビエントライト11の照明光との色差が大きな色温度の誘目光を照射させる。
【0058】
制御装置14xは、作業領域3の周囲の照度が高い場合に、周囲の照度が低い場合よりも配光角が大きく照射範囲の広い誘目光を照射させてもよい。或いは、作業領域3の周囲の照度が高い場合に、周囲の照度が低い場合よりも照射面の動きが大きな誘目光を照射させてもよい。また、制御装置14xは、作業領域3の周囲の照度が所定の閾値を超えたときに、周囲の照度が閾値以下のときに照射される映像を含まない誘目光に加えて、さらに映像を投影させてもよい。
【0059】
制御装置14xは、作業空間1において作業領域3の周囲が明るい場合、周囲が暗い場合と比較して、表2に示すように、作業領域3の照度、誘目光と周囲光との色差、照射範囲、および光の動きから選択される少なくとも1つを変更することが好ましい。制御装置14xは、作業領域3の周囲が明るい場合にのみ、誘目光として映像を投影してもよい。
【0060】
【0061】
図5および
図6は、第3の実施形態である照明システム10yを示す図である。
図5および
図6に例示するように、照明システム10yでは、互いに近接する作業領域3を複数含むブロック領域5において、各作業領域3に対応してタスクライト12が複数設けられている。本実施形態では、ブロック領域5を構成する複数の作業領域3の全てが空き状態である場合に、タスクライト12の点灯状態を制御して、複数の作業領域3の所定の一部が使用状態である場合の照明光よりも誘目性の高い照明光を照射させる。
【0062】
制御装置14yは、カメラ13の検知情報に基づいて、ブロック領域5を構成する作業領域3の使用状況を確認する。制御装置14yは、複数の作業領域3の全てが空き状態である場合に、複数の作業領域3の所定の一部が使用状態である場合に空き状態の作業領域3照射される誘目光(以下、「在席時誘目光」)よりも誘目性の高い誘目光(以下、「全空時誘目光」)を照射させるように構成されている。言い換えると、複数の作業領域3の一部が使用され、1つ以上が空いている場合、全空時誘目光よりも誘目性を抑えた在席時誘目光を照射させる。
【0063】
つまり、本実施形態におけるタスク照明の誘目性は、通常光<在席時誘目光<全空時誘目光の関係を満たす。ブロック領域5の作業領域3にユーザが在席しているときに、例えば、隣接する空き状態の作業領域3に出力の高い誘目光を照射すると、当該ユーザの集中力が損なわれ、作業空間1の意義が失われる可能性がある。そこで、本実施形態では、誘目性を抑えた在席時誘目光を設定することにより、良好な作業環境を確保している。また、作業領域3にユーザが在席している場合、当該ユーザの存在により作業領域3の認知効果が高まっているため、照明による誘目性を抑えても問題がない。
【0064】
ここで、複数の作業領域3の所定の一部が使用状態である場合とは、作業領域3の所定数(例えば、1つ)が使用状態である場合、所定割合(例えば、30%)が使用状態である場合、空き状態の作業領域3に隣接する作業領域3が使用状態である場合など、任意に設定できる。例えば、ブロック領域5を構成する作業領域3の1つが使用状態であっても、隣接する作業領域3が使用状態でなければ、その作業領域3に対して全空時誘目光と同じ誘目光を照射してもよい。
【0065】
制御装置14yは、カメラ13の検知情報に基づいて、ブロック領域5を構成する複数の作業領域3の所定の一部が使用されていると判断したときに、空き状態の作業領域3に対応するタスクライト12の点灯状態を以下のように変更する。制御装置14yは、例えば、全空時誘目光よりも配光角が小さく照射範囲の狭い在席時誘目光を照射させてもよい。
図5に示す例では、通常光の照射範囲P1<在席時誘目光の照射範囲P3<全空時誘目光の照射範囲P2となっている。
【0066】
また、制御装置14yは、全空時誘目光よりも低出力の在席時誘目光を照射させてもよい。照射範囲P1,P2,P3における照度は、例えばP1<P3<P2の関係を満たす。制御装置14yは、全空時誘目光よりも第1アンビエントライト11の照明光との色差が小さな色温度の在席時誘目光を照射させてもよい。或いは、全空時誘目光よりも照射面の動きが小さな在席時誘目光を照射させてもよく、映像を含む全空時誘目光に変えて、映像を含まない在席時誘目光を照射させてもよい。
【0067】
制御装置14yは、上述のように、複数の作業領域3の所定の一部が使用状態である場合、所定の一部が使用状態ではない場合(作業領域3の全てが空き状態の場合を含む)と比較して、誘目性を抑えた在席時誘目光を照射させる。例えば、作業領域3の照度、誘目光と周囲光との色差、照射範囲、および光の動きについて、表3に示すような関係を満たす。制御装置14yは、作業領域3の全てが空き状態である場合にのみ、誘目光として映像を投影してもよい。
【0068】
【0069】
照明システム10yは、さらに、作業領域に在席するユーザの状態を検知する生体センサ17(第3のセンサ)を備えていてもよい。この場合、制御装置14yは、ブロック領域5を構成する複数の作業領域3の所定の一部が使用状態であるときに、生体センサ17の検知情報に基づいてタスクライト12の点灯状態を変更するように構成される。制御装置14yは、例えばカメラ13、照度センサ16、および生体センサ17の検知情報に基づいて、タスクライト12の点灯状態を制御するように構成される。
【0070】
生体センサ17は、例えば心拍数、体温、表情、姿勢、動作等を検知し、作業領域3に在席するユーザの集中力、ストレス度などを推定するための情報を取得する。カメラ13を生体センサ17として兼用してもよく、パソコンに搭載されたWebカメラを生体センサ17として利用してもよい。生体センサ17には、カメラ(画像センサ)の他に、赤外線センサ、超音波センサ、脈拍センサ、加速度センサ等を用いてもよい。生体センサ17の検知情報を考慮することで、作業領域3に在席するユーザの状態を把握し、その状態に応じて出力等を抑えた在席時誘目光を照射することができる。
【0071】
制御装置14yは、生体センサ17の検知情報から在席ユーザのストレス度を推定し、ストレス度が所定の閾値を超えたときに、誘目性をさらに抑えた在席時誘目光を照射させてもよい。この場合、在席時誘目光の出力を下げる、周囲光との色差を小さくする、照射範囲を小さくする、照射面の動きを小さくする、映像を含まない誘目光に切り替えるなどの手段が例示できる。或いは、ストレス度に応じて予め定められた出力等の特性値のマップまたは計算式を用いて、在席時誘目光の特性を変更してもよい。一方、在席ユーザのストレス度が低い場合は、誘目性の高い誘目光を照射してもよい。
【0072】
図7に例示するように、作業空間1には、複数のブロック領域6,7が設けられていてもよい。この場合、作業空間1の全体で作業領域3の使用状況を判断するのではなく、ブロック領域6,7毎に作業領域3の使用状況を判断して、在席時誘目光の点灯制御を実行することが好ましい。
【0073】
図7に示す例では、ブロック領域7を構成する全ての作業領域3が空き状態であるため、ブロック領域7の作業領域3に対しては誘目性の高い全空時誘目光が照射される。一方、ブロック領域6では、1つ以外の作業領域3が使用状態であるため、空き状態の作業領域3には誘目性を抑えた在席時誘目光が照射される。
【0074】
照明システム10,10x、10yは、さらに、作業領域3を使用していない所定空間内のユーザと作業領域3の距離を計測する第4のセンサを備えていてもよい。この場合、制御装置14,14x,14yは、作業領域3が空き状態である場合に、第4のセンサにより計測される距離に基づいて、当該作業領域3に対応するタスクライト12の点灯状態を制御するように構成される。第4のセンサには、赤外線センサ、電磁波センサ、超音波センサ等を用いてもよく、カメラ13、屋内位置情報システムにおけるスキャナや、LIDERにおけるレーザーセンサを第4のセンサとして兼用してもよい。
【0075】
具体例としては、第4のセンサにより計測されるユーザと空き状態の作業領域3の距離に基づいて、その作業領域3に対応する誘目光の特性を変更する、または誘目光の照射を開始することが挙げられる。例えば、当該距離が所定の閾値以下である場合に、誘目光の出力を上げてもよく、誘目光の照射を開始してもよい。この場合、省エネを図りつつ、空き状態の作業領域3をユーザに認識させることができる。
【0076】
制御装置は、上記の通り、第2空間が使用されていない空き状態である場合に、第2アンビエントライト15の出力を上昇または低下させてもよい。この場合、制御装置は、第1空間内の作業領域3と第2空間が空き状態である場合、かつ第4のセンサの検知結果に基づいて第2空間にユーザが進入したと判断された場合に、第2アンビエントライト15の出力を低下させ、ユーザが第2空間を利用した場合、または第2空間から離脱したと判断された場合に第2アンビエントライト15の出力を出力低下前の状態に戻す制御を行ってもよい。
【0077】
図8は、照明システム10yにおける制御手順の一例を示すフローチャートである。なお、S12~S14を省略したものが照明システム10の制御手順の一例となり、S12,S13を省略したものが照明システム10xの制御手順の一例となる。
【0078】
図8に例示するタスク照明の点灯制御では、まず初めに、作業領域3の使用状況に関する情報を検知するセンサであるカメラ13の検知情報に基づいて、作業領域3が空き状態であるか否かを判断する(S10)。そして、作業領域3が空き状態である場合に、その作業領域3に対応するタスクライト12の点灯状態を制御して、通常光よりも誘目性の高い誘目光を照射し、その作業領域3の使用が開始されるまで誘目光の照射を継続する(S15)。なお、その作業領域3が使用されている場合は、例えばユーザの操作に基づいて、操作信号に対応する通常光が照射される(S16)。
【0079】
作業領域3が空き状態である場合、作業領域3を使用していないターゲットとなるユーザ(例えば、共創空間2にいるユーザ)と空き状態の作業領域3との距離を計測し、この距離に基づいて対応するタスクライト12の点灯状態を制御してもよい。
図8に示す例では、この距離が所定の閾値以下である場合に、その作業領域3に誘目光を照射する(S11,S15)。
【0080】
さらに、複数の作業領域3が近接配置されてブロック領域が形成されている場合、カメラ13の検知情報に基づいて、当該ブロック領域を構成する作業領域3の使用状況を確認する(S12)。そして、複数の作業領域3の所定の一部(例えば、空き状態の作業領域3に隣接する作業領域3)が使用されている場合は、この条件を満たさない場合よりもタスクライト12の出力を抑える等、誘目光の誘目性を抑える(S13)。
【0081】
このとき、生体センサ17の検知情報に基づいて在席ユーザのストレス度を推定し、ストレス度を考慮して誘目光の特性を変更してもよい。さらに、照度センサ16の検知情報に基づいて誘目光の特性を変更してもよい(S14)。例えば、照度センサ16により検知される作業領域3の周囲の照度が所定の閾値を超えた場合に、タスクライト12の出力を上げてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 作業空間、2 共創空間、3 作業領域、5,6,7 ブロック領域、10 照明システム、11 第1アンビエントライト、12 タスクライト、13 カメラ、14 制御装置、15 第2アンビエントライト、16 照度センサ、17 生体センサ、20 プロセッサ、21 メモリ、22 アンビエント照明点灯制御部、23 タスク照明点灯制御部