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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】縦型洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 37/40 20060101AFI20240104BHJP
【FI】
D06F37/40 E
D06F37/40 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019237020
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021104209
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮地 成佳
(72)【発明者】
【氏名】市川 晶
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-118676(JP,A)
【文献】中国実用新案第207039362(CN,U)
【文献】中国実用新案第207699867(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 37/00~37/42
H02K 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯物を収容して回転可能な内槽と、
前記内槽を収容する外槽であって、前記内槽に対して洗濯物を出し入れするための出入口が形成された上端部と、底壁が設けられた下端部とを有する外槽と、
前記内槽を回転させる駆動力を発生するモータを少なくとも有し、前記底壁の下側に配置された駆動部と、
前記底壁の下面部に取り付けられた上端部を有して前記駆動部を取り囲む筒部と、前記筒部の内部空間を下側から塞ぐ閉塞部とを有するカバーと、
前記カバーにおいて前記駆動部に臨む内面部に取り付けられた遮音部材と
前記筒部と前記下面部との隙間を塞ぎ、前記内槽の中心軸を取り囲む環状のクッション部材とを含む、縦型洗濯機。
【請求項2】
前記カバーの前記内面部は、複数の平坦面によって構成される、請求項1に記載の縦型洗濯機。
【請求項3】
前記カバーを前記底壁に固定するボルトが挿入される挿通穴が前記クッション部材に形成されている、請求項1または2に記載の縦型洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、縦型洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示された縦型洗濯機は、洗濯水を受ける水槽と、水槽の底部に設けられた洗濯機モータと、洗濯機モータを下方から跨ぐようにコ字状に折曲げて構成されて水槽の底部にねじ止めされた水槽固定金具に取り付けられたモータカバーとを含む。モータカバーは、円筒容器状であって、洗濯機モータを下方から覆う。これにより、縦型洗濯機が設置された防水パンにおいて排水不良が発生して防水パンに洗濯水が溜まった場合には、洗濯槽モータが洗濯水に浸かることが防止される。水槽の底部とモータカバーの上端との間には隙間が設けられるので、モータカバー内の洗濯機モータは、この隙間を介して大気に開放される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-118676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のモータカバーの用途は、防水だけであり、このモータカバーには、洗濯機モータなどの駆動部の作動音が外部に漏れることを防止する用途が想定されない。特に、モータカバーと水槽の底部との間には、洗濯機モータを大気に開放させる隙間が設けられるので、洗濯機モータの作動音は、この隙間から外部に漏れやすい。
【0005】
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、駆動部の作動音の外部への漏れを防止できる縦型洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、洗濯物を収容して回転可能な内槽と、前記内槽を収容する外槽であって、前記内槽に対して洗濯物を出し入れするための出入口が形成された上端部と、底壁が設けられた下端部とを有する外槽と、前記内槽を回転させる駆動力を発生するモータを少なくとも有し、前記底壁の下側に配置された駆動部と、前記底壁の下面部に取り付けられた上端部を有して前記駆動部を取り囲む筒部と、前記筒部の内部空間を下側から塞ぐ閉塞部とを有するカバーと、前記カバーにおいて前記駆動部に臨む内面部に取り付けられた遮音部材とを含む、縦型洗濯機である。
【0007】
また、本発明は、前記カバーの前記内面部が、複数の平坦面によって構成されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前記縦型洗濯機が、前記筒部と前記下面部との間に配置されるクッション部材をさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カバーでは、筒部が、外槽の底壁の下側に配置された駆動部を取り囲み、閉塞部が、筒部において駆動部が配置された内部空間を下側から塞ぐ。筒部の上端部が底壁の下面部に取り付けられるので、カバーは、駆動部をほぼ密閉状態で覆う。さらに、遮音部材がカバーの内面部に取り付けられる。これにより、カバー内の駆動部の作動音の外部への漏れを防止できる。
【0010】
また、本発明によれば、カバーの内面部が複数の平坦面によって構成されるので、当該内面部が曲面によって構成される場合と比べて、遮音部材をカバーの内面部に容易かつ確実に取り付けることができる。
【0011】
また、本発明によれば、カバーの筒部と外槽の底壁の下面部との間に配置されるクッション部材によって、カバーのがたつきを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る縦型洗濯機の模式的な縦断面右側面図である。
図2図2は、洗濯機に含まれるカバーの斜視図である。
図3図3は、洗濯機における要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。図1は、この発明の一実施形態に係る縦型洗濯機1の模式的な縦断面右側面図である。図1の紙面に直交する方向を縦型洗濯機1の左右方向Xといい、図1における左右方向を縦型洗濯機1の前後方向Yといい、図1における上下方向を縦型洗濯機1の上下方向Zという。左右方向Xのうち、図1の紙面の奥側を縦型洗濯機1の左側X1といい、図1の紙面の手前側を縦型洗濯機1の右側X2という。前後方向Yのうち、図1における左側を前側Y1といい、図1における右側を後側Y2という。上下方向Zのうち、上側を上側Z1といい、下側を下側Z2という。
【0014】
縦型洗濯機1には、乾燥機能を有する洗濯乾燥機も含まれるが、以下では、乾燥機能が省略された洗濯運転を実行する洗濯機を例に取って縦型洗濯機1について説明する。縦型洗濯機1は、その外殻をなす筐体2と、筐体2内に配置された外槽3と、外槽3内に収容された内槽4と、内槽4内に収容された回転翼5とを含む。外槽3および内槽4は、洗濯槽6を構成する。縦型洗濯機1は、内槽4および回転翼5を回転させる駆動力を発生するモータ7と、内槽4の回転にブレーキをかけたりモータ7の駆動力を内槽4に断続して伝えたりするブレーキクラッチ機構8とを含む。
【0015】
筐体2は、例えば金属製であり、ボックス状に形成される。筐体2の上面2Aには、筐体2の内外を連通させる開口部15が形成される。上面2Aには、開口部15を開閉する扉16が設けられる。
【0016】
外槽3は、例えば樹脂製であり、有底円筒状に形成される。外槽3は、ばねおよび減衰機構を有する吊棒やショックアブソーバなどの支持部材17を介して筐体2に連結される。これにより、外槽3および内槽4を含む洗濯槽6の全体が、支持部材17によって弾性支持される。外槽3は、上下方向Zに沿って配置された略円筒状の円周壁3Aと、円周壁3Aの中空部分を下側Z2から塞ぐ底壁3Bと、円周壁3Aの上側Z1側の端縁を縁取りつつ円周壁3Aの円中心側へ張り出したリング状の環状壁3Cとを有する。底壁3Bは、外槽3の下端部を構成し、環状壁3Cは、外槽3の上端部を構成する。環状壁3Cの中央には、円周壁3Aの中空部分に上側Z1から連通する出入口18が形成される。出入口18は、筐体2の開口部15に対して下側Z2から対向し、連通した状態にある。環状壁3Cには、出入口18を開閉する扉19が設けられる。底壁3Bは、略水平に延びる円板状に形成され、底壁3Bの円中心位置には、底壁3Bを貫通する貫通穴3Dが形成される。
【0017】
外槽3内には、水が溜められる。外槽3の環状壁3Cには、水道水の蛇口につながった給水路20が上側Z1から接続され、水道水が給水路20から外槽3内に供給される。給水路20の途中には、給水を開始したり停止したりするために開閉される給水弁21が設けられる。外槽3の底壁3Bには、排水路22が下側Z2から接続され、外槽3内の水は、排水路22から機外に排出される。排水路22の途中には、排水を開始したり停止したりするために開閉される排水弁23が設けられる。
【0018】
内槽4は、例えば金属製であり、外槽3よりも一回り小さい有底円筒状に形成され、内部に洗濯物Qを収容することができる。内槽4は、上下方向Zに沿って配置された略円筒状の円周壁4Aと、内槽4の下端に設けられて円周壁4Aの中空部分を下側Z2から塞ぐ底壁4Bとを有する。
【0019】
円周壁4Aの内周面は、内槽4の内周面である。円周壁4Aの内周面の上端部は、円周壁4Aの中空部分を上側Z1に露出させる出入口24である。出入口24は、内槽4の上端に形成される。出入口24は、外槽3の出入口18に対して下側Z2から対向し、連通した状態にある。使用者は、開放された開口部15、出入口18および出入口24を介して、内槽4に対して上側Z1から洗濯物Qを出し入れする。
【0020】
内槽4は、外槽3内に同軸上で収容される。外槽3内に収容された状態の内槽4は、その中心軸をなして上下方向Zに延びる軸線Jを中心として回転可能である。また、内槽4の円周壁4Aおよび底壁4Bには、貫通穴4Cが複数形成され、外槽3内の水は、貫通穴4Cを介して、外槽3と内槽4との間で行き来できる。そのため、外槽3内の水位と内槽4内の水位とが一致する。
【0021】
内槽4の底壁4Bは、外槽3の底壁3Bに対して上側Z1に間隔を隔てて略平行に延びる円板状に形成され、底壁4Bにおいて軸線Jと一致する円中心位置には、底壁4Bを貫通する貫通穴4Dが形成される。底壁4Bには、貫通穴4Dを取り囲みつつ軸線Jに沿って下側Z2へ延び出た管状の支持軸25が設けられる。支持軸25は、外槽3の底壁3Bの貫通穴3Dに挿通されて、支持軸25の下端部は、底壁3Bよりも下側Z2に位置する。
【0022】
回転翼5は、いわゆるパルセータであり、軸線Jを円中心とする円盤状に形成され、内槽4と同心状になるように内槽4内において底壁4B上に配置される。回転翼5において内槽4の出入口24を臨む上面には、放射状に配置される複数の羽根5Aが設けられる。回転翼5には、その円中心から軸線Jに沿って下側Z2へ延びる回転軸26が設けられる。回転軸26は、支持軸25の中空部分に挿通されて、回転軸26の下端部は、外槽3の底壁3Bよりも下側Z2に位置する。
【0023】
モータ7は、インバータモータなどの電動モータである。モータ7は、筐体2内において、外槽3の底壁3Bの下側Z2に配置される。モータ7は、上側Z1へ突出して軸線Jを中心として回転する出力軸30を有し、発生した駆動力を出力軸30から出力する。
【0024】
ブレーキクラッチ機構8は、例えばブレーキバンドなどによって構成された公知のブレーキ(図示せず)と、公知のクラッチ(図示せず)を含む。ブレーキクラッチ機構8は、公知の減速機構31を内蔵する。モータ7の出力軸30は、ブレーキクラッチ機構8におけるクラッチを介して、内槽4の支持軸25の下端部に連結される。出力軸30および支持軸25は、モータ7から内槽4への駆動力の伝達経路を構成する。クラッチは、この伝達経路を遮断したり接続したりする。出力軸30は、減速機構31を介して回転軸26の下端部に連結される。そのため、回転軸26に連結された回転翼5は、モータ7の作動時には、モータ7の駆動力が伝達されることによって、出力軸30よりも低速で回転する。
【0025】
モータ7およびブレーキクラッチ機構8は、駆動部32を構成する。モータ7の出力軸30が内槽4の支持軸25に直結されてもよく、その場合の駆動部32は、モータ7を少なくとも有すればよい。駆動部32は、外槽3の底壁3Bの下側Z2に配置される。具体的には、モータ7は、出力軸30の中心が軸線Jと一致するように配置され、ブレーキクラッチ機構8は、外槽3の底壁3Bとモータ7との間に配置される。
【0026】
縦型洗濯機1は、CPUやROMやRAMなどを含むマイコンとして筐体2内に内蔵された制御部35を含む。制御部35は、モータ7、ブレーキクラッチ機構8、給水弁21および排水弁23などの動作を制御することによって、洗濯運転を実行する。洗濯運転は、洗濯物Qを洗う洗い工程と、洗い工程の後に洗濯物Qをすすぐすすぎ工程と、すすぎ工程の後に内槽4を回転させて洗濯物Qを脱水する脱水工程とを有する。
【0027】
制御部35は、洗い工程では、排水弁23を閉じた状態で、給水弁21を所定時間だけ開いて外槽3および内槽4に所定水位まで水を溜めた後に、モータ7を作動させて回転翼5を回転させる。これにより、回転する回転翼5の羽根5Aによる機械力や、回転翼5の回転に伴って内槽4内に発生した水流による機械力によって、内槽4内の洗濯物Qが攪拌される。ここでの攪拌によって、洗濯物Qから汚れが除去される。なお、制御部35は、ブレーキクラッチ機構8のクラッチの動作を制御することによって、回転翼5とともに内槽4も回転させてもよい。また、内槽4内に洗剤が投入されてもよく、この場合、内槽4内の洗濯物Qでは、洗剤によって汚れが分解される。所定の洗い時間が経過すると、制御部35は、ブレーキクラッチ機構8のブレーキを作動させて回転翼5を停止し、排水弁23を開いて外槽3および内槽4の排水を行い、洗い工程を終了する。
【0028】
制御部35は、すすぎ工程では、排水弁23を閉じた状態で、給水弁21を所定時間だけ開いて外槽3および内槽4に所定水位まで水道水を溜めた後に、回転翼5を回転させる。これにより、内槽4内の洗濯物Qがすすがれる。所定のすすぎ時間が経過すると、制御部35は、回転翼5を停止し、排水弁23を開いて外槽3および内槽4の排水を行い、すすぎ工程を終了する。すすぎ工程は、複数回実施されてもよい。
【0029】
制御部35は、脱水工程では、排水弁23を開いた状態でモータ7を作動させて、内槽4を所定の脱水回転数で高速回転させる。脱水回転数での内槽4の高速回転により生じた遠心力によって、内槽4内の洗濯物Qが脱水される。脱水により洗濯物Qから染み出た水は、排水路22から機外に排出される。制御部35は、内槽4を所定時間高速回転させた後に、モータ7を停止して、ブレーキクラッチ機構8のブレーキを作動させることによって、内槽4を停止する。脱水工程は、中間脱水工程として、洗い工程の後に実施されてもよい。また、すすぎ工程が複数回実施される場合には、中間脱水工程は、最後のすすぎ工程以外の各すすぎ工程の後に実施されてもよい。最後のすすぎ工程の後に最終的に実行される脱水工程を、中間脱水工程と区別して最終脱水工程という。最終脱水工程での脱水回転数は、中間脱水工程での脱水回転数よりも高くてもよい。
【0030】
縦型洗濯機1は、外槽3の底壁3Bに取り付けられて駆動部32を覆うカバー40と、カバー40に取り付けられた遮音部材41と、底壁3Bの下面部3Eとカバー40との間に配置されるクッション部材42とをさらに含む。
【0031】
図2を参照して、カバー40は、筒部40Aと、筒部40Aの内部空間40Bを下側Z2から塞ぐ閉塞部40Cとを一体的に有し、例えば板金によって構成された金属製である。筒部40Aは、平面視において多角形の輪郭を有する角筒であって、軸線Jと同軸上に配置される。この実施形態における筒部40Aは、上下方向Zに長い長方形平板状の8枚の縦板43を、軸線Jを取り囲む環状に配置することによって構成される。そのため、筒部40Aは、平面視において八角形の輪郭を有する。
【0032】
これら8枚の縦板43のうち、軸線Jを挟んで対向する一対の縦板43Aの上端部には、軸線Jを基準とする径方向Rの外側へ張り出した矩形板状の第1フランジ部43Bが設けられる。第1フランジ部43Bは、上下方向Zに一致した板厚方向を有し、縦板43Aにおける上側Z1の短辺に沿って長手である。第1フランジ部43Bの長手方向における両端部には、第1フランジ部43Bを上下方向Zに貫通した挿通穴43Cが1つずつ形成される。第1フランジ部43Bの上端面と、第1フランジ部43Bが設けられた縦板43Aの上端面とは、面一に配置される。
【0033】
一対の縦板43A以外の6枚の縦板43のそれぞれの上端部には、径方向Rの外側へ張り出した矩形板状の第2フランジ部43Dが設けられる。第2フランジ部43Dは、第1フランジ部43Bよりも一回り以上小さく、対応する縦板43における上側Z1の短辺の途中に設けられる。第2フランジ部43Dの上端面と、第2フランジ部43Dが設けられた縦板43の上端面とは、面一に配置される。
【0034】
筒部40Aの上端部40Dの上端面は、8枚の縦板43の上端面と、各第1フランジ部43Bの上端面と、各第2フランジ部43Dの上端面とによって環状に構成される。上端部40Dの上端面は、この実施形態では全域において面一かつ平坦に構成されるが、上端部40Dの上端面におけるどこかに、僅かな高低差が設けられてもよい。
【0035】
8枚の縦板43のそれぞれにおいて筒部40Aの内部空間40Bに臨む内面部43Eは、縦板43における一方の主面として上下方向Zに延びる長方形状の平坦面である。8枚の縦板43は、平面視において八角形における8つの辺をなすように環状に配置されるので、これらの縦板43の内面部43Eによって区画された内部空間40Bは、八角筒状である。また、カバー40の内面部40Eは、これらの縦板43の内面部43E、つまり複数の平坦面によって構成される。
【0036】
各縦板43において内面部43Eとは反対側の外面部43Fは、縦板43における他方の主面として上下方向Zに延びる長方形状の平坦面である。第1フランジ部43Bおよび第2フランジ部43Dのそれぞれの下端面には、対応する縦板43の外面部43Fに接続された略三角形板状の補強部43Gが単数または複数設けられる。
【0037】
閉塞部40Cは、上下方向Zに一致した板厚方向を有する平板状であり、平面視において、8枚の縦板43の下端にそれぞれ接続された8つの辺を有する八角形状である。閉塞部40Cの上面部40Fおよび下面部40G(図1参照)のそれぞれは、前後左右に延びる平坦面である。上面部40Fは、カバー40の内面部40Eを構成する複数の平坦面の一つである。そのため、内面部40Eは、9つの平坦面、つまり、8枚の縦板43の内面部43Eと、閉塞部40Cの上面部40Fとによって構成される。
【0038】
遮音部材41は、特殊なゴム製、詳しくはアクリルゴム製のシートであり、図2においてドットを付して示すように、カバー40の内面部40Eの全域を覆うように取り付けられる。遮音部材41は、各縦板43の内面部43Eおよび閉塞部40Cの上面部40Fのそれぞれに応じて複数存在し、内面部43Eおよび上面部40Fにおいて対応する部分に1つずつ貼り付けられる。内面部40Eを構成する内面部43Eおよび上面部40Fは、いずれも平坦面である。そのため、内面部43Eに貼り付けられた遮音部材41は、内面部43Eに沿った長方形の平板状である。上面部40Fに貼り付けられた遮音部材41は、上面部40Fに沿った八角形の平板状である。
【0039】
クッション部材42は、例えばゴム製であり、上端部40Dの上端面の全域に貼り付けられる。平面視におけるクッション部材42の形状は、筒部40Aの上端部40Dの上端面の形状と一致する。そのため、クッション部材42には、筒部40Aにおける8枚の縦板43の上端面を縁取る環状部42Aと、環状部42Aから突出して第1フランジ部43Bまたは第2フランジ部43Dにそれぞれ上側Z1から重なる複数の突出部42Bとを一体的に有する。第1フランジ部43Bに重なる突出部42Bには、突出部42Bを上下方向Zに貫通して第1フランジ部43Bの挿通穴43Cに上側Z1からつながった挿通穴42Cが形成される。
【0040】
クッション部材42の上端面は、環状部42Aの上端面と、各突出部42Bの上端面とによって環状に構成される。この実施形態におけるクッション部材42の上端面には、第2フランジ部43Dおよびその周辺の領域に浅い凹み42Dが形成されることによって僅かな高低差が設けられるが、クッション部材42の上端面は、全域において面一かつ平坦に構成されてもよい。
【0041】
以上のようなカバー40は、図3に示すように、外槽3の底壁3Bの下面部3Eに下側Z2から取り付けられる。具体的には、下面部3Eでは、外周領域3Fに複数のリブ3Gが設けられるものの、外周領域3Fによって取り囲まれた中央領域3Hは、比較的平坦であり、カバー40の筒部40Aの上端部40Dが、この中央領域3Hに取り付けられる。この状態では、筒部40Aの上端部40Dの上端面、つまり、各縦板43、第1フランジ部43Bおよび第2フランジ部43Dのそれぞれの上端面が、下面部3Eに対して下側Z2から対向配置され、下面部3Eとの間でクッション部材42を挟んで圧縮する。これにより、筒部40Aの上端部40Dと下面部3Eとの隙間は、これらの間に配置されたクッション部材42によって塞がれた状態にある。
【0042】
第1フランジ部43Bの各挿通穴43Cには、ボルトBが1つずつ下側Z2から挿通され、クッション部材42の挿通穴42Cを通って底壁3Bに組み付けられる。これにより、カバー40は、底壁3Bに固定された状態にある。また、カバー40では、筒部40Aが、駆動部32を、横方向、詳しくは径方向Rの外側から非接触で取り囲んだ状態にあり、閉塞部40Cが、駆動部32を下側Z2から非接触で覆った状態にある。つまり、駆動部32は、カバー40の内部空間40Bに配置される。そのため、カバー40において内部空間40Bを区画する内面部40Eは、遮音部材41越しに駆動部32に臨んだ状態にある(図1参照)。
【0043】
以上のように、カバー40では、筒部40Aが、外槽3の底壁3Bの下側Z2に配置された駆動部32を取り囲み、閉塞部40Cが、筒部40Aにおいて駆動部32が配置された内部空間40Bを下側Z2から塞いだうえ、筒部40Aの上端部40Dが底壁3Bの下面部3Eに取り付けられる。そのため、カバー40は、駆動部32をほぼ密閉状態で覆った状態にある。さらに、遮音部材41が、カバー40の内面部40Eに取り付けられる。これにより、カバー40内の駆動部32の作動音の外部への漏れを防止できる。
【0044】
必要な遮音性を確保するために、デュロメータータイプAによって計測したときの遮音部材41の硬度は、A95以上であることが好ましい。この硬度を有する遮音部材41は、変形しにくい。しかし、前述したように複数の平坦面によって構成された内面部40Eであれば、内面部40Eが曲面によって構成される場合と比べて、遮音部材41を変形させなくても内面部40Eに容易かつ確実に取り付けることができる。また、筒部40Aと外槽3の底壁3Bの下面部3Eとの間に配置されるクッション部材42によって、カバー40のがたつきを防止できる。また、カバー40と遮音部材41との組み合わせによって、特に500Hz以下の低中周波数の作動音の遮音性を向上できる。
【0045】
このように、カバー40は、駆動部32の作動音を遮る遮音カバーである。また、カバー40は、一般的なモータカバーとしても機能する。縦型洗濯機1の運搬時には、例えば発砲スチロール製の保護材(図示せず)が、筐体2の底に形成された開口2B(図1参照)を通って筐体2内に取り付けられるが、モータカバーとして機能するカバー40は、この保護材を駆動部32や外槽3に接触しないように位置決めする。
【0046】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0047】
例えば、カバー40には、排水路22や配線(図示せず)を通すための穴や切欠きが形成されてもよい。ただし、これらの穴や切欠きから駆動部32の作動音が漏れないように、排水路22や配線の周囲の隙間が、スポンジなどのシール材(図示せず)によって埋められることが好ましい。
【0048】
カバー40は、前述した実施形態では八角筒状であったが、6角筒状などのように他の多角筒状であってもよい。また、カバー40の筒部40Aでは、内面部が複数の平坦面によって構成されればよく、筒部40Aの外面部は、円周面であってもよい。
【0049】
また、前述した実施形態では、内槽4の回転中心である軸線Jは、この実施形態では垂直に延びるが、垂直方向に対して傾斜して配置されてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 縦型洗濯機
3 外槽
3B 底壁
3C 環状壁
3E 下面部
4 内槽
7 モータ
18 出入口
32 駆動部
40 カバー
40A 筒部
40B 内部空間
40C 閉塞部
40D 上端部
40E 内面部
41 遮音部材
42 クッション部材
Q 洗濯物
Z2 下側
図1
図2
図3