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特許7411961走行支援装置、走行支援システム、及び走行支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】走行支援装置、走行支援システム、及び走行支援方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240104BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20240104BHJP
   B60W 50/023 20120101ALI20240104BHJP
   G06F 9/455 20180101ALI20240104BHJP
   G06F 11/07 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G08G1/09 H
B60W50/023
G06F9/455 150
G06F11/07 140R
G06F11/07 196
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020060566
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021162871
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】打越 忠宏
(72)【発明者】
【氏名】大石 将仁
(72)【発明者】
【氏名】小野 耕司郎
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-23321(JP,A)
【文献】特開2019-152896(JP,A)
【文献】国際公開第2019/167231(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G06F 9/455
G06F 11/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される検出装置により検出される、前記車両の周辺の物体の位置及び速度に関する第1移動情報に基づいて前記車両の第1走行制御量を特定する第1アプリケーション、及び、前記車両に搭載される通信装置を介して前記物体から受信される、前記物体の位置及び速度に関する第2移動情報に基づいて前記車両の第2走行制御量を特定する第2アプリケーションのうちの少なくとも1つの実行を制御する第1OSと、
前記第1走行制御量及び前記第2走行制御量のうちの少なくとも1つに基づいて前記車両の走行制御を行う第3アプリケーションの実行を制御する第2OSと、
プロセッサ上で実行され、前記第1OS及び前記第2OSの実行を制御するハイパーバイザーと、
を備える、走行支援装置。
【請求項2】
前記第1走行制御量は、前記車両が前記物体に衝突することを回避するための第1回避量であり、
前記第2走行制御量は、前記車両が前記物体に衝突することを回避するための第2回避量であり、
前記第3アプリケーションは、前記第1回避量及び前記第2回避量のうちの少なくとも1つに基づいて前記車両の走行制御を行う、請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項3】
さらに、前記ハイパーバイザーは、前記第1OS及び前記第2OSのうちの少なくとも1つに関連する障害の発生を検出する、請求項1又は2に記載の走行支援装置。
【請求項4】
前記第1OS及び前記第2OSのうちの少なくとも1つに関連する障害の発生が検出された場合、前記ハイパーバイザーは、当該OSを復旧させるための処理を当該OSに対して行う、請求項3に記載の走行支援装置。
【請求項5】
前記第1OS及び前記第2OSのうちの少なくとも1つに関連する障害の発生を検出する第4アプリケーションの実行を制御する第3OSをさらに備える、請求項1又は2に記載の走行支援装置。
【請求項6】
前記第1OS及び前記第2OSのうちの少なくとも1つに関連する障害の発生が検出された場合、前記第4アプリケーションは、当該OSを復旧させるための処理を当該OSに対して行う、請求項5に記載の走行支援装置。
【請求項7】
前記第1OSは、前記第2OSに関連する障害の発生を検出する第5アプリケーションの実行をさらに制御し、
前記第2OSは、前記第1OSに関連する障害の発生を検出する第6アプリケーションの実行をさらに制御する、請求項1又は2に記載の走行支援装置。
【請求項8】
前記第2OSに関連する障害の発生が検出された場合、前記第5アプリケーションは、前記第2OSを復旧させるための処理を前記第2OSに対して行い、
前記第1OSに関連する障害の発生が検出された場合、前記第6アプリケーションは、前記第1OSを復旧させるための処理を前記第1OSに対して行う、請求項7に記載の走行支援装置。
【請求項9】
前記第1OSは、前記第1走行制御量及び前記第2走行制御量のうちの少なくとも1つを示すデータを前記ハイパーバイザーへ送信し、
前記第2OSは、前記第1走行制御量及び前記第2走行制御量のうちの少なくとも1つを示すデータを前記ハイパーバイザーから受信する、請求項1~8の何れか一項に記載の走行支援装置。
【請求項10】
前記第1OS及び前記第2OSのうちの少なくとも1つは、仮想OSである、請求項1~9の何れか一項に記載の走行支援装置。
【請求項11】
前記第1OSは、前記第1アプリケーション及び前記第2アプリケーションの両方の実行を制御する、請求項1~10の何れか一項に記載の走行支援装置。
【請求項12】
前記第1OSは、少なくとも前記第2アプリケーションの実行を制御し、
前記第2OSは、さらに前記第1アプリケーションの実行を制御する、請求項1~10の何れか一項に記載の走行支援装置。
【請求項13】
前記第2アプリケーションの実行を制御する第4OSをさらに備え、
前記第1OSは、少なくとも前記第1アプリケーションの実行を制御する、請求項1~10の何れか一項に記載の走行支援装置。
【請求項14】
前記第1OSの種類は、前記検出装置の種類と対応付けられており、
前記第4OSの種類は、前記通信装置の種類と対応付けられている、請求項13に記載の走行支援装置。
【請求項15】
前記第1OS及び前記第4OSのうちの少なくとも1つのOSの種類が前記第2OSの種類と異なる、請求項13又は14に記載の走行支援装置。
【請求項16】
前記第2OSの種類の堅牢性能が、前記第1OS及び前記第4OSのうちの少なくとも1つのOSの堅牢性能より高い、請求項13~15の何れか一項に記載の走行支援装置。
【請求項17】
前記第2OSの種類のリアルタイム性能が、前記第1OS及び前記第4OSのうちの少なくとも1つのOSの種類のリアルタイム性能よりも高い、請求項13~16の何れか一項に記載の走行支援装置。
【請求項18】
前記プロセッサをさらに備える、請求項1~17の何れか一項に記載の走行支援装置。
【請求項19】
車両に搭載される検出装置により検出される、前記車両の周辺の物体の位置及び速度に関する第1移動情報に基づいて前記車両の第1走行制御量を特定する第1アプリケーション、及び、前記車両に搭載される通信装置を介して前記物体から受信される、前記物体の位置及び速度に関する第2移動情報に基づいて前記車両の第2走行制御量を特定する第2アプリケーションのうちの少なくとも1つの実行を制御する第1OSと、
前記第1走行制御量及び前記第2走行制御量のうちの少なくとも1つに基づいて前記車両の走行制御を行う第3アプリケーションの実行を制御する第2OSと、
プロセッサ上で実行され、前記第1OS及び前記第2OSの実行を制御するハイパーバイザーと、
を備える、走行制御システム。
【請求項20】
走行支援装置において実行される走行制御方法であって、
車両に搭載される検出装置により検出される、前記車両の周辺の物体の位置及び速度に関する第1移動情報に基づいて前記車両の第1走行制御量を特定する第1アプリケーション、及び、前記車両に搭載される通信装置を介して前記物体から受信される、前記物体の位置及び速度に関する第2移動情報に基づいて前記車両の第2走行制御量を特定する第2アプリケーションのうちの少なくとも1つの実行を第1OSが制御するステップと、
前記第1走行制御量及び前記第2走行制御量のうちの少なくとも1つに基づいて前記車両の走行制御を行う第3アプリケーションの実行を第2OSが制御するステップと、
プロセッサ上で実行されるハイパーバイザーが、前記第1OS及び前記第2OSの実行を制御するステップと、
を含む走行制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、走行支援装置、走行支援システム、及び走行支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に搭載された検出装置から取得する移動情報に加えて、車両周辺に存在する物体から取得した移動情報を利用して、車両が当該物体に衝突することを回避するように車両の走行を支援する技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-142787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらこの種の従来技術は、車両の走行制御量の特定と、特定した走行制御量に基づく車両の走行の制御との両方を1つのOS(Operating System)のみを用いて実行する。そのため、例えば、当該OSに一時的に障害が生じると、車両の走行制御量の特定と車両の走行の制御との両方の実行が、同時に不能になり、又は、不安定になる虞がある。
【0005】
本開示の非限定的な実施例は、車両の走行制御量の特定及び車両の走行の制御の両方の安定性を向上させることができる走行支援装置、走行支援システム、及び走行支援方法の提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施例に係る走行支援装置は、車両に搭載される検出装置により検出される、前記車両の周辺の物体の位置及び速度に関する第1移動情報に基づいて前記車両の第1走行制御量を特定する第1アプリケーション、及び、前記車両に搭載される通信装置を介して前記物体から受信される、前記物体の位置及び速度に関する第2移動情報に基づいて前記車両の第2走行制御量を特定する第2アプリケーションのうちの少なくとも1つの実行を制御する第1OSと、前記第1走行制御量及び前記第2走行制御量のうちの少なくとも1つに基づいて前記車両の走行制御を行う第3アプリケーションの実行を制御する第2OSと、プロセッサ上で実行され、前記第1OS及び前記第2OSの実行を制御するハイパーバイザーと、を備える。
【0007】
本開示の一実施例に係る走行支援装置システムは、車両に搭載される検出装置により検出される、前記車両の周辺の物体の位置及び速度に関する第1移動情報に基づいて前記車両の第1走行制御量を特定する第1アプリケーション、及び、前記車両に搭載される通信装置を介して前記物体から受信される、前記物体の位置及び速度に関する第2移動情報に基づいて前記車両の第2走行制御量を特定する第2アプリケーションのうちの少なくとも1つの実行を制御する第1OSと、前記第1走行制御量及び前記第2走行制御量のうちの少なくとも1つに基づいて前記車両の走行制御を行う第3アプリケーションの実行を制御する第2OSと、プロセッサ上で実行され、前記第1OS及び前記第2OSの実行を制御するハイパーバイザーと、を備える。
【0008】
本開示の一実施例に係る走行支援方法は、走行支援装置において実行される走行制御方法であって、車両に搭載される検出装置により検出される、前記車両の周辺の物体の位置及び速度に関する第1移動情報に基づいて前記車両の第1走行制御量を特定する第1アプリケーション、及び、前記車両に搭載される通信装置を介して前記物体から受信される、前記物体の位置及び速度に関する第2移動情報に基づいて前記車両の第2走行制御量を特定する第2アプリケーションのうちの少なくとも1つの実行を第1OSが制御するステップと、前記第1走行制御量及び前記第2走行制御量のうちの少なくとも1つに基づいて前記車両の走行制御を行う第3アプリケーションの実行を第2OSが制御するステップと、プロセッサ上で実行されるハイパーバイザーが、前記第1OS及び前記第2OSの実行を制御するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施例によれば、車両の走行制御量の特定及び車両の走行の制御の両方の安定性を向上させることができる走行支援装置、走行支援システム、及び走行支援方法を構築できる。
【0010】
本開示の一実施例における更なる利点及び効果は、明細書及び図面から明らかにされる。かかる利点及び/又は効果は、いくつかの実施形態並びに明細書及び図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つ又はそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施の形態に係る走行支援システム100の構成例を示す図
図2】走行支援システム100の動作を説明するためのシーケンスチャート
図3】ゲストOS24に障害が発生したときにおける走行支援システム100の動作を説明するためのシーケンスチャート
図4】本実施形態に係る走行支援装置90の別の構成例を示す図
図5図4に示す走行支援装置90に含まれる複数のゲストOSのうちの少なくとも1つに障害が発生したときの走行支援システム100の動作を説明するためのシーケンスチャート
図6】本実施形態に係る走行支援装置90のさらに別の構成例を示す図
図7図6に示す走行支援装置90に含まれる複数のゲストOSのうちの少なくとも1つに障害が発生したときの走行支援システム100の動作を説明するためのシーケンスチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
(実施の形態)
まず、本開示に係る実施形態を創作するに至った背景について説明する。公知技術(例えば特許文献1に記載の技術など)では、車両の走行制御量の特定処理と、特定した走行制御量に基づく車両の走行の制御とを、1つのOSのみを用いて実行する。そのため、例えば、当該OSに一時的に障害が生じると、車両の走行制御量の特定と車両の走行の制御との両方の実行が、同時に不能になり、又は、不安定になる虞がある。あるいは、車両の走行制御量の特定のためのソフトウェアに障害が生じて走行制御量の特定が一時的に不能になると、障害がOSに波及したり、又は、他のソフトウェアに波及することにより、車両の走行の制御が共倒れ的に不能になる虞がある。
【0014】
また、特許文献1に記載の技術では、車両に搭載された検出装置から取得する移動情報に基づいた第1走行制御量の特定と、車両周辺に存在する物体から取得した移動情報に基づいた第2走行制御量の特定とに関しても、1つのOSのみを用いて実行する。このため、例えば、当該OSに一時的に障害が生じると、第1走行制御量の特定と、第2走行制御量の特定と、車両の走行の制御との全ての実行が、同時に不能になり、又は、不安定になる虞がある。そこで、車両の第1走行制御量の特定、車両の第2走行制御量の特定、及び、車両の走行の制御の全てに関して、安定性又は堅牢性を向上可能であることが望まれる。以下、本開示に係る実施形態について説明する。
【0015】
図1は、本開示の実施の形態に係る走行支援システム100の構成例を示す図である。走行支援システム100は、例えば乗用車、貨物車、乗合車などの車両に搭載される。走行支援システム100は、車両周辺の物体を検出する検出手段を冗長構成にすることで、何れかの検出手段に障害が発生した場合でも、車両が車両周辺の物体に衝突することを回避できるように構成されている。
【0016】
図1に示すように、走行支援システム100は、例えば、無線装置1、カメラ2、ミリ波レーダ3、地図DB(Database)4、車速センサ5、GPS(Global Positioning System)モジュール6、パワートレインシステム7、ブレーキシステム8、ステアリングシステム9、HMI(Human Machine Interface)10、及び、走行支援装置90を備える。また、走行支援装置90は、例えば、物体検出部20、車外通信制御部30、走行支援制御部40、ハイパーバイザー50、及びハードウェア60を備える。
【0017】
無線装置1は、本開示に係る通信装置の一例である。無線装置1は、車両周辺に存在する物体に搭載される装置との間で、所定の通信規格に基づく無線通信(例えば、移動体通信(例えばW-CDMA又はLTE(Long Term Evolution)など)、無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、V2V(Vehicle to Vehicle)、又は、V2X(Vehicle to Everything)など)により情報の送受信を行うことが可能である。なお、当該物体に搭載される装置は、例えば車両の先行車、後続車などに搭載される通信手段、車両の周辺に存在する人が所有する端末装置、センタサーバ、V2X通信機器などである。
【0018】
カメラ2は、本開示に係る検出装置の一例である。カメラ2は、例えばCCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子を備え、車両周辺の映像を撮像する全方向カメラ、パノラマカメラなどの外部撮像部である。以下では車両周辺の映像を「周辺映像」と称する。周辺映像は、例えば、車両の前方の風景、車両の側方(車両の運転席ドア側又は車両の助手席ドア側)の風景、車両の後方の風景などである。風景には、例えば、車両が走行中の車道に存在する物体が含まれる。車道に存在する物体は、例えば、車両、人、動物などである。
【0019】
カメラ2は、例えば、車外の風景を撮像できる位置に配置される。当該位置は、フロントグリル、サイドミラー、天井、リアバンパーなどである。カメラ2は、不図示の画像処理部を備える。当該画像処理部は、カメラ2で撮影された画像を解析することにより、車両周辺に存在する物体を検出し、車両周辺に存在する物体を検出したことを示す情報である物体検出情報を、物体検出部20に入力する。物体検出部20の構成の詳細については後述する。
【0020】
ミリ波レーダ3は、本開示に係る検出装置の一例である。ミリ波レーダ3は、車両周辺に存在する物体の位置を検出するためのセンサである。ミリ波レーダ3は、例えば車両の前方、後方、側方などに設けられる。例えば、車両の前方に設けられるミリ波レーダ3がミリ波を発振し、ミリ波が車両前方の物体に当たることで反射し、パルス状の音波の一部がミリ波レーダ3に戻る。車両から物体までの距離が長くなるほど、ミリ波レーダ3からミリ波が発振されてからその一部がミリ波レーダ3に戻るまでの時間が長くなる。この関係性を利用して、ミリ波レーダ3は、ミリ波を発振してから、物体で反射したミリ波がミリ波レーダ3に戻るまでの往復時間を測定することにより、物体までの距離を推定し、推定した距離とミリ波レーダ3の配置位置とに基づき、車両を基準にした物体の位置を検出する。例えば、車両の前方に設けられるミリ波レーダ3であれば、車両から数m~数十m離れた前方位置に存在する物体を検出できる。ミリ波レーダ3は、検出した物体の位置を示す情報である物体位置情報を物体検出部20に入力する。
【0021】
なお、走行支援システム100は、車両周辺に存在する物体の位置を検出するためのセンサとして、ミリ波レーダ3の代わりに、例えば、レーザ光を照射するLIDAR(Light Detection And Ranging)、超音波を発振する超音波ソナーなどを備えてもよい。なお、LIDAR及び超音波ソナーも、本開示に係る検出装置の一例である。
【0022】
図DB4は、ダイナミックマップ、3D高精細マップなどの地図情報を記憶する。車速センサ5は、車両の現在車速を検出し、そして、検出した速度を示す速度情報を走行支援制御部40に入力する。
【0023】
GPSモジュール6は、衛星から送信されるGPS信号を受信し、GPSモジュール6が搭載される車両の位置を測位し、測位結果である車両位置情報を走行支援制御部40に入力する。
【0024】
パワートレインシステム7は、走行支援制御部40から入力される駆動力制御情報に基づき、例えば、内燃機関を備えた車両に搭載されるスロットル装置の開度及び燃料噴射量を制御する。
【0025】
ブレーキシステム8は、走行支援制御部40から入力される制動力制御情報に基づき、油圧式ブレーキの液圧回路に設けられたアクチュエータを制御する。電動車両の場合、ブレーキシステム8は、走行支援制御部40から入力される制動力制御情報に基づき、走行用主電動機の駆動装置を制御することにより、回生ブレーキによる制動力を発生させてもよい。
【0026】
ステアリングシステム9は、走行支援制御部40から入力される操舵量制御情報に基づき、ステアリングハンドルを駆動することにより、車両の進行方向を設定する。
【0027】
HMI10は、車両の乗員の入力操作を受け付けるユーザインタフェイスである。HMI10は、例えば、車両の目的地を設定するためのタッチパネル、乗員が車両の走行モードを切り替えるためのボタンなどを含む。
【0028】
(物体検出部20の構成)
図1に示すように、物体検出部20は、例えば、第1情報取得部21、第1判定部22、第1回避量部23、及びゲストOS24を備える。ここで、第1回避量部23は、本開示に係る第1アプリケーションの一例である。また、ゲストOS24は、本開示に係る第1OSの一例である。なお、図1では、第1情報取得部21、第1判定部22、及び、第1回避量部23がそれぞれ別々に構成される例を示しているが、本開示はかかる例に限定されない。これらのうちの何れか2以上は、例えば一体のアプリケーションとして一体的に構成されてもよい。
【0029】
例えば、物体検出部20は、まず、カメラ2及びミリ波レーダ3などの検出装置による検出結果を当該検出装置から取得する。そして、物体検出部20のゲストOS24は、第1回避量部23の実行を制御する。これにより、第1回避量部23は、当該検出結果に基づく、車両の周囲の物体の位置及び速度に関する第1の移動情報に基づいて、車両の第1走行制御量を特定し得る。ここで、当該第1走行制御量は、例えば、車両が該当の物体に衝突することを回避するために必要な走行制御量を示す第1回避量であってよい。
【0030】
以下、物体検出部20の機能についてより詳細に説明する。第1情報取得部21は、物体検出情報及び物体位置情報を取得し、これらの情報を第1判定部22に入力する。
【0031】
第1判定部22は、第1情報取得部21で取得された物体検出情報及び物体位置情報と、後述する走行支援制御部40の走行情報取得部42で取得された走行情報とを入力する。そして、第1判定部22は、これらの情報に基づいて、例えば車両の車速、車両の位置、車両周辺の物体の位置などを推定する。さらに、第1判定部22は、推定したこれらの情報に基づき、車両が車両周辺の物体に衝突するまでの時間を算出する。算出された時間が短いほど、車両が車両周辺の物体に衝突する可能性(以下では、「第1可能性」と称する)が高くなる。
【0032】
第1判定部22は、例えば、第1可能性を示す値と、車両が車両周辺の物体に衝突すると判定できる第1閾値とを比較する。第1可能性を示す値が第1閾値以上の場合、第1判定部22は、車両が車両周辺の物体に衝突することを回避するために必要な第1回避走行の制御量を示す第1回避制御情報を生成して、第1回避量部23に入力する。
【0033】
第1回避走行には、例えば、強制的にブレーキをかけることで制動をアシストすること、強制的にハンドルの操舵量を変更することで車両の進路を変更すること、運転者がアクセルペダルを踏んでいてもアクセルオフ状態にすることで車両のスピードを低下させること、などが含まれる。
【0034】
第1回避量部23は、第1回避制御情報を入力して、車両が車両周辺の物体に衝突することを回避するために必要な第1回避量を設定する。そして、第1回避量部23は、設定した第1回避量を示す第1回避量情報を生成して、第1回避量情報を走行制御部43に入力する。第1回避量は、例えば、車両が車両周辺の物体に衝突することを回避するために必要なブレーキの制動量、ハンドルの操舵量などある。
【0035】
ゲストOS24は、物体検出部20が第1回避量情報を生成するアプリケーションの実行を制御するOSである。当該アプリケーションは、車両に搭載される検出装置(例えばカメラ2又はミリ波レーダ3など)により検出される、車両周辺の物体の位置及び速度に関する第1移動情報に基づいて車両の第1走行制御量を特定するための第1アプリケーションである。なお、当該第1アプリケーションは、第1回避量部23と同一であってもよいし、又は、第1回避量部23を少なくとも含んでいてもよい。また、当該アプリケーションには例えばASIL(Automotive Safety Integrity Level)-Bが適用されてもよい。
【0036】
ASILは、自動車業界向けの機能安全規格であるISO26262に規定された、自動車の安全性要求と安全性対策を指定する指標である。ASILには、D、C、B、A、QMという5段階の安全性レベルが定められており、安全性の基準が高い順に、D、C、B、A、QMとなっている。例えば、エアバッグ、アンチロックブレーキシステム、パワーステアリングなどは、故障に伴うリスクが最も高いため、これらの機構には、安全を確保するための最も厳しい要件であるASIL-Dが適用される。なお、バックライトにはASIL-A、ヘッドライト、ブレーキランプなどにはASIL-B、クルーズコントロールにはASIL-Cが適用される。
【0037】
(車外通信制御部30の構成)
図1に示すように、車外通信制御部30は、例えば、第2情報取得部31、第2判定部32、第2回避量部33、及びゲストOS36を備える。ここで、第2回避量部33は、本開示に係る第2アプリケーションの一例である。また、ゲストOS36は、本開示に係る第1OS及び第4OSの一例である。なお、図1では、第2情報取得部31、第2判定部32、及び、第2回避量部33がそれぞれ別々に構成される例を示しているが、本開示はかかる例に限定されない。これらのうちの何れか2以上は、例えば一体のアプリケーションとして一体的に構成されてもよい。
【0038】
例えば、車外通信制御部30は、まず、車両の周辺の物体と無線装置1との通信に基づき、当該物体の位置及び速度に関する第2移動情報を当該物体から無線装置1を介して受信し得る。そして、車外通信制御部30のゲストOS36は、少なくとも第2回避量部33の実行を制御する。これにより、第2回避量部33は、当該第2移動情報に基づいて、車両の第2走行制御量を特定し得る。ここで、当該第2走行制御量は、例えば、車両が該当の物体に衝突することを回避するために必要な走行制御量を示す第2回避量であってよい。
【0039】
以下、車外通信制御部30の機能についてより詳細に説明する。第2情報取得部31は、無線装置1で受信された無線情報を第2判定部32に入力する。無線情報には、例えば、車両周辺に存在する物体の位置、速度などが含まれる。
【0040】
第2判定部32は、第2情報取得部31で取得された無線情報と、上記の走行情報とを入力する。そして、第2判定部32は、これらの情報に基づいて、例えば車両の車速、車両の位置、車両周辺の物体の位置などを推定する。さらに、第2判定部32は、推定したこれらの情報に基づき、第1判定部22と同様に、車両が車両周辺の物体に衝突するまでの時間を算出する。算出された時間が短いほど、車両が車両周辺の物体に衝突する可能性(以下では「第2可能性」と称する)が高くなる。
【0041】
第2判定部32は、例えば、第2可能性を示す値と、車両が車両周辺の物体に衝突すると判定できる第2閾値とを比較する。第2可能性を示す値が第2閾値以上の場合、第2判定部32は、車両が車両周辺の物体に衝突することを回避するために必要な第2回避走行の制御量を示す第2回避制御情報を生成して、第2回避量部33に入力する。
【0042】
第2回避走行には、前述した第1回避走行と同様に、例えば、強制的にブレーキをかけることで制動をアシストすること、強制的にハンドルの操舵量を変更することで車両の進路を変更すること、運転者がアクセルペダルを踏んでいてもアクセルオフ状態にすることで車両のスピードを低下させること、などが含まれる。
【0043】
第2回避量部33は、第2回避制御情報を入力して、車両が車両周辺の物体に衝突することを回避するために必要な第2回避量を設定する。そして、第2回避量部33は、設定した第2回避量を示す第2回避量情報を生成して、第2回避量情報を走行制御部43に入力する。第2回避量は、前述した第1回避量と同様に、例えば、車両が車両周辺の物体に衝突することを回避するために必要なブレーキの制動量、ハンドルの操舵量などある。
【0044】
ゲストOS36は、車外通信制御部30が第2回避量情報を生成するアプリケーションの実行を制御するOSである。当該アプリケーションは、車両に搭載される通信装置(例えば無線装置1など)を介して車両周囲の物体から受信される、当該物体の位置及び速度に関する第2移動情報に基づいて車両の第2走行制御量を特定するための第2アプリケーションである。なお、当該アプリケーションは、第2回避量部33と同一であってもよいし、又は、第2回避量部33を少なくとも含んでいてもよい。また、当該アプリケーションには例えばASIL-Bが適用されてもよい。
【0045】
(走行支援制御部40の構成)
図1に示すように、走行支援制御部40は、例えば、地図情報取得部41、走行情報取得部42、走行制御部43、及びゲストOS46を備える。ここで、走行制御部43は、本開示に係る第3アプリケーションの一例である。また、ゲストOS46は、本開示に係る第2OSの一例である。なお、図1では、地図情報取得部41、走行情報取得部42、及び、走行制御部43がそれぞれ別々に構成される例を示しているが、本開示はかかる例に限定されない。これらのうちの何れか2以上は、例えば一体のアプリケーションとして一体的に構成されてもよい。
【0046】
例えば、走行支援制御部40は、まず、物体検出部20により特定された第1走行制御量を物体検出部20から取得する。また、走行支援制御部40は、車外通信制御部30により特定された第2走行制御量を車外通信制御部30から取得する。そして、走行支援制御部40に含まれるゲストOS46は、少なくとも走行制御部43の実行を制御し得る。これにより、走行制御部43は、当該第1走行制御量及び当該第2走行制御量のうちの少なくとも1つに基づいて車両の走行制御を行い得る。
【0047】
又は、物体検出部20により車両の第1回避量が特定されており、かつ、車外通信制御部30により車両の第2回避量が特定されたとする。この場合、走行支援制御部40は、第1回避量を物体検出部20から取得し、そして、第2回避量を車外通信制御部30から取得し得る。そして、走行支援制御部40に含まれるゲストOS46は、少なくとも走行制御部43の実行を制御し得る。これにより、走行制御部43は、当該第1回避量及び当該第2回避量のうちの少なくとも1つに基づいて車両の走行制御を行い得る。
【0048】
以下、走行支援制御部40の機能についてより詳細に説明する。地図情報取得部41は、GPSモジュール6から車両位置情報を入力する。そして、地図情報取得部41は、地図DB4の地図情報上に車両の位置を設定して、走行情報取得部42に入力する。
【0049】
走行情報取得部42は、地図情報上に設定された車両位置情報と車速情報とを取得する。そして、走行情報取得部42は、これらを走行情報として、第1判定部22及び第2判定部32に入力する。
【0050】
走行制御部43は、前述した第1回避量情報及び第2回避量情報を入力し、これらの情報に基づいて走行制御情報を生成する。走行制御情報は、パワートレインシステム7、ブレーキシステム8、及び、ステアリングシステム9のうちの少なくとも一つを制御するための情報である。走行制御情報は、例えば、駆動力制御情報、制動力制御情報、又は、操舵量制御情報などである。なお、走行制御情報を入力したパワートレインシステム7などが、走行制御情報に従って動作することにより、前述した第1回避走行及び第2回避走行が実行される。
【0051】
ゲストOS46は、前述した第1走行制御量(例えば第1回避量など)、及び、第2走行制御量(例えば第2回避量など)のうちの少なくとも1つに基づいて車両の走行制御を行う第3アプリケーションの実行を制御するOSである。例えば、第3アプリケーションは、第1走行制御量及び第2走行制御量のうちの少なくとも1つに基づいて、周辺装置(パワートレインシステム7など)に送出される走行制御情報を生成する。当該第3アプリケーションは、例えば、車両の走行制御を行う自動運転のアプリケーション、又は、車両の走行制御量を決定する所定のプログラムなどであってよい。なお、当該第3アプリケーションは、走行制御部43と同一であってもよいし、又は、少なくとも走行制御部43を含んでいてもよい。また、当該アプリケーションには例えばASIL-Dが適用されてもよい。つまり、当該アプリケーションには、安全性の確保のための最も厳しい要件が適用されてもよい。
【0052】
(ハードウェア60)
ハードウェア60は、不図示のCPU(Central Processing Unit)又はECU(Electronic Control Unit)等のプロセッサを含み、複数のコンピュータプログラムの実行環境を提供する。なお、ハードウェア60は、1つのプロセッサを含んで構成されてもよいし、複数のプロセッサを含んで構成されてもよい。複数のプロセッサは、本実施の形態に係る走行支援システムを構成し得る。
【0053】
(ハイパーバイザー50)
ハードウェア60上にハイパーバイザー50の仮想化レイヤが作成される。ハイパーバイザー50は、ハードウェア60上で実行され、複数のゲストOS24~46の実行を制御する仮想化ソフトウェアであり得る。ハイパーバイザー50により、ハードウェア60上に異なる複数のゲストOS24~46を仮想化して搭載できる。すなわち1つの情報処理装置上に複数の仮想的な情報処理装置(バーチャルマシン)を実現できる。なお、ハイパーバイザー型の仮想化ソフトの一例として、「COQOS Hypervisor SDK」「QNX Hypervisor」などがあり、本実施の形態ではこれらを利用できるが、仮想化ソフトはこれらに限定されない。また、走行支援システム100の仮想化環境は図1の例に限定されず、例えば、ハードウェア60上にハイパーバイザー50のレイヤを構築し、その上に2つのゲストOS(例えばゲストOS24とゲストOS36)のレイヤを構築してもよい。又はハードウェア60上にホストOSを構築し、その上にハイパーバイザー50を構築して、その上に2つのゲストOSのレイヤを構築してもよい。ここで、ホストOSは、本開示に係る第1OS又は第2OSの一例である。
【0054】
前述したように、本実施の形態に係る走行支援システム100は、ハイパーバイザー50により、複数のバーチャルマシンを並行して動作させることができる。そのため、例えば、物体検出部20に含まれる各アプリケーション又はゲストOS24に障害が生じた場合であっても、走行支援制御部40に含まれる各アプリケーション及びゲストOS46に上記の障害の影響を与えることなく、安全性要求レベルが高い走行支援制御部40の動作を継続できる。つまり、走行支援制御部40による車両の走行制御に関して堅牢性を向上させることができる。
【0055】
(動作)
次に走行支援システム100の動作を説明する。まず図2を参照して、複数のゲストOSの何れにも障害が発生していないときにおける走行支援システム100の動作を説明する。図2は走行支援システム100の動作を説明するためのシーケンスチャートである。
【0056】
走行支援制御部40のゲストOS46は、周辺装置70(例えば地図DB4、車速センサ5など)から送信される車両位置情報、車速情報などを受信すると(ステップS1)、これらを走行情報として、物体検出部20及び車外通信制御部30に入力する(ステップS2、ステップS3)。
【0057】
車外通信制御部30に含まれるゲストOS36が、無線装置1で受信された無線情報を受信すると(ステップS4)、車外通信制御部30に含まれる第2回避量部33は、当該無線情報と当該走行情報に基づいて、第2回避量情報を生成する。そして、ゲストOS36は、生成された第2回避量情報を走行支援制御部40に入力する(ステップS5)。
【0058】
物体検出部20に含まれるゲストOS24が、周辺装置70(例えばカメラ2、ミリ波レーダ3など)から送信される物体検出情報、物体位置情報などのセンサ情報を受信すると(ステップS6)、物体検出部20に含まれる第1回避量部23は、当該センサ情報と当該走行情報に基づき、第1回避量情報を生成する。そして、ゲストOS24は、生成された第1回避量情報を走行支援制御部40に入力する(ステップS7)。
【0059】
その後、走行支援制御部40に含まれる走行制御部43は、第1回避量情報及び第2回避量情報に基づき、走行制御情報を生成する。例えば、第1回避量情報及び第2回避量情報の両方が入力済みである場合、走行制御部43は、第1回避量情報のみに基づいて走行制御情報を生成してもよいし、あるいは、第1回避量情報及び第2回避量情報の組み合わせに基づいて走行制御情報を生成してもよい。また、第2回避量情報のみが入力済みである場合、走行制御部43は、第2回避量情報のみに基づいて、走行制御情報を生成する。
【0060】
そして、走行支援制御部40のゲストOS46は、生成された走行制御情報を周辺装置70(パワートレインシステム7など)に入力する(ステップS8)。
【0061】
(ゲストOSの監視処理の例1)
次に、図3を参照して、例えば、ゲストOS24に障害が発生し、その後、ゲストOS24がハイパーバイザー50によりリセットされたことで復旧する場合の動作を説明する。図3は、ゲストOS24に障害が発生したときにおける走行支援システム100の動作を説明するためのシーケンスチャートである。以下では、図2に示す処理と同様の処理については説明を省略し、図2に示す処理と異なる処理について説明する。
【0062】
図3に示すように、まず、ハイパーバイザー50は、例えば一定周期ごとに、例えばゲストOS24などの各ゲストOSの状態を監視するための監視信号を送信する(ステップS10)。
【0063】
例えば、ゲストOS24などから一定周期以内に、監視信号に対する応答信号が返信されない場合、ハイパーバイザー50は、ゲストOS24に障害が発生したと判断する(ステップS11)。
【0064】
ゲストOS24に障害が発生した場合、ハイパーバイザー50は、ゲストOS24に対してリセット信号を送信する(ステップS12)。そして、リセット信号の入力によりゲストOS24が復旧すると、ゲストOS24は、障害が復旧したことを示す復旧通知をハイパーバイザー50に送信する(ステップS13)。
【0065】
その後、復旧したゲストOS24は、少なくとも第1回避量部23の実行を制御する。これにより、第1回避量部23は、第1回避量情報を生成する。そして、ゲストOS24は、生成された第1回避量情報を走行支援制御部40に入力する(ステップS14)。走行支援制御部40に含まれる走行制御部43は、第1回避量情報に基づき、走行制御情報を生成する。そして、走行支援制御部40に含まれるゲストOS46は、生成された走行制御情報を周辺装置70(パワートレインシステム7など)に入力する(ステップS15)。
【0066】
なお、各ゲストOSの監視には、ハイパーバイザー50の代わりに、監視機能を有する監視専用のゲストOSを用いてもよいし、監視機能を有する複数のゲストOSを用いてもよい。これらの構成例を図4図7を参照して説明する。
【0067】
(ゲストOSの監視処理の例2)
図4は、本実施形態に係る走行支援装置90の別の構成例を示す図である。図4は、各ゲストOSを監視する仮想的な監視装置(監視VM(Virtual Machine)80)を走行支援装置90がさらに備える場合における走行支援装置90の構成例を示す。但し、本開示はかかる例に限定されず、監視VM80は、走行支援装置90以外の装置(例えばパワートレインシステム7など)に備えられてもよい。また、図4に示すように、監視VM80は、ゲストOS81を備える。なお、ゲストOS81は、本開示に係る第3OSの一例である。
【0068】
ゲストOS81は、上記のゲストOS24~46のうちの少なくとも1つに関連する障害の発生を検出する第4アプリケーションの実行を制御するOSである。例えば、第4アプリケーションは、ゲストOS24~46を監視する監視信号を生成すると共に、ゲストOS24~46に障害が発生したときに復旧させるリセット信号を生成する。また、第4アプリケーションには例えばASIL-Dが適用されてもよい。図4に示す例では、ハイパーバイザー50により、ハードウェア60上に異なるゲストOS24~81を仮想化して搭載できる。
【0069】
図5は、図4に示す走行支援装置90に含まれる複数のゲストOSのうちの少なくとも1つに障害が発生したときの走行支援システム100の動作を説明するためのシーケンスチャートである。図5に示すように、例えばゲストOS24に障害が発生した場合、ゲストOS81は、ゲストOS24に対してリセット信号を送信する(ステップS12)。
【0070】
リセット信号によりゲストOS24が復旧すると、ゲストOS24は、障害が復旧したことを示す復旧通知をゲストOS81に送信する(ステップS13)。この例によれば、ゲストOS81が監視処理を行うので、ハイパーバイザー50の処理負荷を軽減することができる。又はハイパーバイザー50のプログラムを簡略化することもできる。
【0071】
(ゲストOSの監視処理の例3)
図6は、本実施形態に係る走行支援装置90のさらに別の構成例を示す図である。図6は、走行支援装置90に含まれる複数のゲストOS(例えば、ゲストOS24~46など)のそれぞれが、互いのゲストOSに対する監視の機能を有している場合における走行支援装置90の構成例を示している。この例では、複数のゲストOS24~46の各々が、互いのゲストOSの状態をそれぞれ監視し得る。例えば、車外通信制御部30に含まれるゲストOS36は、走行支援制御部40に含まれるゲストOS46に関連する障害の発生を検出する第5アプリケーションの実行を制御してよい。また、ゲストOS46は、ゲストOS36に関連する障害の発生を検出する第6アプリケーションの実行を制御してよい。
【0072】
図7図6に示す走行支援装置90に含まれる複数のゲストOSのうちの少なくとも1つに障害が発生したときの走行支援システム100の動作を説明するためのシーケンスチャートである。なお、図7は、ゲストOS36がゲストOS24の状態を監視しており、そして、ゲストOS24に障害が発生したときの動作例を示している。
【0073】
ゲストOS36は、例えば一定周期ごとに、ゲストOS24の状態を監視するための監視信号を送信する(ステップS20)。
【0074】
ゲストOS24から一定周期以内に監視信号に対する応答信号が返信されない場合、ゲストOS36は、ゲストOS24に障害が発生したと判断する(ステップS21)。
【0075】
ゲストOS24に障害が発生した場合、ゲストOS36は、ゲストOS24に対してリセット信号を送信する(ステップS22)。リセット信号の入力によりゲストOS24が復旧すると、ゲストOS24は、障害が復旧したことを示す復旧通知をゲストOS36に送信する(ステップS23)。
【0076】
その後、復旧したゲストOS24は、少なくとも第1回避量部23の実行を制御する。これにより、第1回避量部23は、第1回避量情報を生成する。そして、ゲストOS24は、生成された第1回避量情報を走行支援制御部40に入力する(ステップS24)。その後、走行支援制御部40に含まれる走行制御部43は、当該第1回避量情報に基づき、走行制御情報を生成する。例えば、走行制御部43は、当該第1回避量情報のみに基づいて走行制御情報を生成してもよいし、又は、当該第1回避量情報と、ステップS5で取得された第2回避量情報との組み合わせに基づいて走行制御情報を生成してもよい。その後、走行支援制御部40に含まれるゲストOS46は、生成された走行制御情報を周辺装置70(パワートレインシステム7など)に入力する(ステップS25)。
【0077】
図6及び図7に示す走行支援システム100によれば、監視専用のゲストOS81を用意しなくても、既存のゲストOSを改良することで各ゲストOSの状態監視を実現できる。
【0078】
(効果)
以上に説明したように本実施の形態に係る走行支援装置90は、車両に搭載される検出装置により検出される、車両の周辺の物体の位置及び速度に関する第1移動情報に基づいて車両の第1走行制御量を特定する第1アプリケーション、及び、車両に搭載される通信装置を介して物体から受信される、物体の位置及び速度に関する第2移動情報に基づいて車両の第2走行制御量を特定する第2アプリケーションのうちの少なくとも1つの実行を制御する第1OSと、第1走行制御量及び第2走行制御量のうちの少なくとも1つに基づいて車両の走行制御を行う第3アプリケーションの実行を制御する第2OSと、プロセッサ上で実行され、第1OS及び第2OSの実行を制御するハイパーバイザーと、を備える。第1OSは、例えば、ゲストOS24及びゲストOS36の何れかに対応する。第2OSは、例えば、ゲストOS46に対応する。
【0079】
これにより、例えばハイパーバイザー50が、走行支援装置90に含まれている複数のゲストOSを切り替えながら当該複数のゲストOSの実行を制御できる。このため、例えば、当該複数のゲストOSのうちの何れかに一時的に障害が発生した場合であっても、当該障害の影響範囲が、当該OSにより制御され得る各アプリケーション(又は処理)のみに留まり得るので、当該複数のゲストOSのうちの残りのゲストOS自体、及び、これらのゲストOSにより制御され得る各アプリケーションに関しては正常な動作を継続させることができる。従って、共倒れ的に動作不能になることを防止できる。従って、例えば、物体検出部20に含まれるゲストOS24に障害が発生したことにより第1回避量情報を生成できない状態のときであっても、車外通信制御部30に含まれるゲストOS36や各アプリケーションは、正常な動作を継続することができる。このため、車外通信制御部30により第2回避量情報が正常に生成されるので、走行支援制御部40は、当該第2回避量情報を用いることにより、走行制御情報の生成を継続できる。つまり、本実施形態によれば、走行制御情報の生成に関する堅牢性及び/又は安定性を向上させることができる。
【0080】
また、ゲストOS24に障害が発生したときであっても、走行支援制御部40に含まれるゲストOS46や各アプリケーションは、正常な動作を継続することができ、動作不能になることを防止できる。つまり、本実施形態によれば、車両の走行制御自体に関する堅牢性及び/又は安定性も向上させることができる。
【0081】
(変形例)
以下では、本実施形態の変形例について説明する。例えば、走行支援装置90は、前述した複数のゲストOSだけでなく、他の種類のゲストOSをさらに備えてもよい。例えば、走行支援装置90は、HMI10に含まれ得る表示装置に表示される画像を生成するアプリケーションの実行を制御するゲストOSをさらに備えてもよい。そして、当該ゲストOSは、ハイパーバイザー50によってハードウェア60上に仮想化して搭載されてよい。当該表示装置は、例えば、センターディスプレイ、運転席前に設けられる車載メータパネル、ヘッドアップディスプレイ、電子ミラーなどである。
【0082】
なお、前述した実施形態における複数のゲストOS(例えばゲストOS24、ゲストOS36及びゲストOS46など)の種類は、全て同じであってもよいし、又は、異なっていてもよい。後者の場合、複数のゲストOSの内の何れか2以上が同じ種類であり、かつ、残りのゲストOSの種類は別の種類であってもよい。あるいは、全てのゲストOSの種類がそれぞれ互いに異なっていてもよい。
【0083】
なお、例えば、以下のような態様も本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0084】
(1)第1走行制御量は、車両が物体に衝突することを回避するための第1回避量であり、第2走行制御量は、車両が物体に衝突することを回避するための第2回避量であり、第3アプリケーションは、第1回避量及び第2回避量のうちの少なくとも1つに基づいて車両の走行制御を行う。
【0085】
(2)さらに、ハイパーバイザーは、第1OS及び第2OSのうちの少なくとも1つに関連する障害の発生を検出する。
【0086】
(3)第1OS及び第2OSのうちの少なくとも1つに関連する障害の発生が検出された場合、ハイパーバイザーは、当該OSを復旧させるための処理を当該OSに対して行う。
【0087】
(4)走行支援装置は、第1OS及び第2OSのうちの少なくとも1つに関連する障害の発生を検出する第4アプリケーションの実行を制御する第3OSをさらに備える。第3OSは、例えばハイパーバイザー50に設けられるOSでもよいし、ハイパーバイザー50と並列にプロセッサ(ハードウェア60)上に仮想化して搭載されるOSでもよい。
【0088】
(5)第1OS及び第2OSのうちの少なくとも1つに関連する障害の発生が検出された場合、第4アプリケーションは、当該OSを復旧させるための処理を当該OSに対して行う。
【0089】
(6)第1OSは、第2OSに関連する障害の発生を検出する第5アプリケーションの実行をさらに制御し、第2OSは、第1OSに関連する障害の発生を検出する第6アプリケーションの実行をさらに制御する。
【0090】
(7)第2OSに関連する障害の発生が検出された場合、第5アプリケーションは、第2OSを復旧させるための処理を第2OSに対して行い、第1OSに関連する障害の発生が検出された場合、第6アプリケーションは、第1OSを復旧させるための処理を第1OSに対して行う。
【0091】
(8)第1OSは、第1走行制御量及び第2走行制御量のうちの少なくとも1つを示すデータをハイパーバイザーへ送信し、第2OSは、第1走行制御量及び第2走行制御量のうちの少なくとも1つを示すデータをハイパーバイザーから受信する。
【0092】
(9)第1OS及び第2OSのうちの少なくとも1つは、仮想OSである。
【0093】
(10)第1OSは、第1アプリケーション及び第2アプリケーションの両方の実行を制御する。例えば、第1OSは、センサ系の制御及び車々間通信系の制御を行い、第2OSは走行制御を行う。
【0094】
(11)第1OSは、少なくとも第2アプリケーションの実行を制御し、第2OSは、さらに第1アプリケーションの実行を制御する。例えば、第1OSは、車々間通信系の制御を行い。第2OSは、センサ系の制御及び走行制御を行う。
【0095】
(12)第2アプリケーションの実行を制御する第4OSをさらに備え、第1OSは、少なくとも第1アプリケーションの実行を制御する。例えば、第1OSは、例えばセンサ系の制御を行い、第2OSは走行制御を行い、第4OSは車々間通信系の制御を行う。
【0096】
(13)第1OSの種類は、検出装置の種類と対応付けられており、第4OSの種類は、通信装置の種類と対応付けられている。
【0097】
(14)第1OS及び第4OSのうちの少なくとも1つのOSの種類が第2OSの種類と異なる。
【0098】
(15)第2OSの種類の堅牢性能が、第1OS及び第6OSのうちの少なくとも1つのOSの堅牢性能より高い。堅牢性能は、例えば、エラーの発生のし難さや、セキュリティ性能の高さなどを表す指標である。
【0099】
(16)第2OSの種類のリアルタイム性能が、第1OS及び第4OSのうちの少なくとも1つのOSの種類のリアルタイム性能よりも高い。リアルタイム性能は、例えば、OSが特定の処理を所定の期間までに完了する性能や能力などを表す指標である。
【0100】
(17)走行支援装置はプロセッサをさらに備える。
【0101】
(18)本実施の形態に係る走行制御システムは、車両に搭載される検出装置により検出される、車両の周辺の物体の位置及び速度に関する第1移動情報に基づいて車両の第1走行制御量を特定する第1アプリケーション、及び、車両に搭載される通信装置を介して物体から受信される、物体の位置及び速度に関する第2移動情報に基づいて車両の第2走行制御量を特定する第2アプリケーションのうちの少なくとも1つの実行を制御する第1OSと、第1走行制御量及び第2走行制御量のうちの少なくとも1つに基づいて車両の走行制御を行う第3アプリケーションの実行を制御する第2OSと、プロセッサ上で実行され、第1OS及び第2OSの実行を制御するハイパーバイザーと、を備える。
【0102】
(19)本実施の形態に係る走行制御方法は、走行支援装置において実行される走行制御方法であって、車両に搭載される検出装置により検出される、車両の周辺の物体の位置及び速度に関する第1移動情報に基づいて車両の第1走行制御量を特定する第1アプリケーション、及び、車両に搭載される通信装置を介して物体から受信される、物体の位置及び速度に関する第2移動情報に基づいて車両の第2走行制御量を特定する第2アプリケーションのうちの少なくとも1つの実行を第1OSが制御するステップと、第1走行制御量及び第2走行制御量のうちの少なくとも1つに基づいて車両の走行制御を行う第3アプリケーションの実行を第2OSが制御するステップと、プロセッサ上で実行されるハイパーバイザーが、第1OS及び第2OSの実行を制御するステップと、を含む。
【0103】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、本開示に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0104】
以上、本開示の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術は、本開示において例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれ得る。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本開示の一実施例は、走行支援装置及び走行支援システムに好適である。
【符号の説明】
【0106】
1 無線装置
20 物体検出部
30 車外通信制御部
40 走行支援制御部
50 ハイパーバイザー
60 ハードウェア
90 走行支援装置
100 走行支援システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7