(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】手押ユニットおよび運搬台車
(51)【国際特許分類】
B62B 5/06 20060101AFI20240104BHJP
【FI】
B62B5/06 D
B62B5/06 E
(21)【出願番号】P 2019087570
(22)【出願日】2019-05-07
【審査請求日】2022-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】597144484
【氏名又は名称】ジー・オー・ピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117857
【氏名又は名称】南林 薫
(72)【発明者】
【氏名】千田 豊治
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第2614015(CN,Y)
【文献】登録実用新案第3209689(JP,U)
【文献】中国実用新案第208360248(CN,U)
【文献】特開2015-016779(JP,A)
【文献】特開平10-109648(JP,A)
【文献】特開2018-162062(JP,A)
【文献】特開2010-159054(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0429075(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬物を積載して走行部によって走行する台車本体部に着脱可能に装着される支持部材と、
前記支持部材に対して着脱可能に装着され、運搬台車を走行させるときに使用者が手で押すための手押部材と、を有する手押ユニットであって、
前記手押部材は、前記支持部材が挿入可能であって、前記支持部材の上端が上方に突き抜けるように貫通する装着穴が設けられた装着部を有
し、
前記支持部材は、
棒状の本体部と、
前記装着部の下面と当接することにより前記装着部を支持する板状の支持部と、
前記支持部の下端に一体で形成され、前記支持部を前記本体部に取り付けるために前記本体部に固定される取付部と、を有することを特徴とする手押ユニット。
【請求項2】
前記手押部材は、グリップ部を有し、
前記グリップ部は、上端が前記支持部材の上端と略同一の高さであることを特徴とする請求項1に記載の手押ユニット。
【請求項3】
前記支持部は、平面視において、略円形または略円形の一部が切欠かれた形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の手押ユニット。
【請求項4】
前記支持部は、平面視において、略多角形または略多角形の一部が切欠かれた形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の手押ユニット。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1項に記載の手押ユニットと、
前記台車本体部と、を有することを特徴とする運搬台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手押ユニットおよび運搬台車に関する。特に、運搬台車を走行させるときに使用者が手で押すための手押ユニット等に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場等で使用される運搬台車には、運搬台車の本体の四隅部等に単管を挿入可能な構成を有するものがある。例えば、特許文献1には、手押し棒として単管を挿入可能なコーナ部材が四隅部に設けられた運搬台車が開示されている。このような構成であれば、運搬台車の使用者は、運搬台車の移動の際に、運搬台車の本体に差し込んだ単管を手押し棒として用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された手押し棒は、使用者が手で掴むときの部位は一定であり、手で掴むときの部位を変えることができない。
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、使用者が手で掴む部位を変更できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、運搬物を積載して走行部によって走行する台車本体部に着脱可能に装着される支持部材と、前記支持部材に対して着脱可能に装着され、運搬台車を走行させるときに使用者が手で押すための手押部材と、を有する手押ユニットであって、前記手押部材は、前記支持部材が挿入可能であって、前記支持部材の上端が上方に突き抜けるように貫通する装着穴が設けられた装着部を有し、前記支持部材は、棒状の本体部と、前記装着部の下面と当接することにより前記装着部を支持する板状の支持部と、前記支持部の下端に一体で形成され、前記支持部を前記本体部に取り付けるために前記本体部に固定される取付部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、使用者が手で掴む部位を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態の運搬台車の一例を示す斜視図である。
【
図5】手押部材、支持部材、コーナ部材の一例を示す図である。
【
図7】第2の実施形態の運搬台車の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本実施形態に係る手押部材および運搬台車について図面を参照して説明する。なお、説明の便宜上、以下の各実施形態で示す手押部材および運搬台車の上下方向は、支持部材および手押部材が台車本体部に装着された状態での方向を基準とする。また、運搬台車の前後方向を運搬台車の長手方向とし、左右方向を運搬台車の短手方向とする。ただし、本実施形態の運搬台車は、前後左右を含め任意の方向に走行することができる。
【0009】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る運搬台車1の一例を示す斜視図である。
図2は、運搬台車1の一例を示す側面図である。
図3は、運搬台車1を後側から見た背面図である。
図4は、運搬台車1の一例を示す平面図である。なお、
図1は支持部材40および手押部材80が台車本体部20に装着される前の状態を示し、
図2~
図4は支持部材40および手押部材80が台車本体部20に装着された後の状態を示している。
運搬台車1は、台車本体部20、走行部30、支持部材40(40A、40B)、手押部材80を備えている。
【0010】
台車本体部20は複数のフレーム部等が連結して構成され、運搬物を積載する。台車本体部20は、平面視において前後方向を長手方向とし、左右方向を短手方向とする略矩形状である。台車本体部20は、前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、左側フレーム部21d、コーナ部材22、補強フレーム部(補強部)25、載置板26等を有している。
【0011】
前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、左側フレーム部21dは、例えば、アルミニウム合金製の角状の中空状パイプ等を用いることができる。また、コーナ部材22は、例えば、押出し成形により形成されるアルミニウム合金製である。コーナ部材22は、上方に開口する挿入孔23と、下方を閉塞するストッパ部24(
図4、
図5を参照)とを有する。コーナ部材22の挿入孔23には、支持部材40が挿入される。挿入孔23に挿入された支持部材40の下端はストッパ部24によって支持される。
【0012】
前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、および、左側フレーム部21dは、コーナ部材22により4つの角部で結合されることで、略矩形状の四方のフレーム枠を構成する。フレーム枠内は複数の補強フレーム部25が前後左右方向に付き合わされ、ボルト、リベット、溶接等で接合されることで格子状に構成される。補強フレーム部25は、例えば、アルミニウム合金製の角状の中空状パイプや断面凹凸状のプレート等を用いることができる。
載置板26は、運搬物を積載するための平面状の板である。載置板26は、各フレーム部や各補強フレーム部25にリベットやボルトを介して結合される。
【0013】
走行部30は、台車本体部20および運搬物の荷重を支持しながら走行面を走行する。走行部30は、複数のキャスター31、32を有している。本実施形態では、走行部30は、台車本体部20の4隅に配置される4つのキャスター31と、前後方向の中央であって左右に離れて配置される2つのキャスター32との6つを有する。キャスター31、32は、車輪33と、車輪33を回転可能に支持するフォーク部材34とを有する。キャスター31、32はそれぞれ取付板を介して台車本体部20に取り付けられる。キャスター31、32は、それぞれ鉛直軸線O回りに旋回可能である(
図2、
図3を参照)。なお、4つのキャスター31はブレーキ付きキャスターであり、2つのキャスター32はブレーキなしキャスターである。ブレーキ付きキャスターである4つのキャスター31は、それぞれ上下に揺動可能なブレーキペダル35を有する。
【0014】
支持部材40は、手押部材80を着脱可能に支持する。また、支持部材40は、手押部材80を支持していない場合には、運搬台車1を走行させるときに使用者が手で押すための第2の手押部材として機能する。
支持部材40は、長さが1000mm前後の長尺状である。支持部材40は下端をコーナ部材22の挿入孔23に挿入することで台車本体部20に装着され、挿入孔23から抜き出すことで台車本体部20から離脱されるように、着脱可能である。本実施形態の運搬台車1は、2つの支持部材40(40A、40B)を有し、隣り合う2つのコーナ部材22の挿入孔23に挿入される。ここで、支持部材40Aは右側かつ後側、支持部材40B
は左側かつ後側に位置する。支持部材40Aと支持部材40Bとは、略同一の構成である。なお、支持部材40A、40Bを使い分ける必要がない場合には単に支持部材40として説明する。
【0015】
図5は、手押部材80、支持部材40(40B)、コーナ部材22の一例を示す背面図である。
支持部材40は、本体部としての本体部材41と、保護部材50と、補強部材60とを有する。
本体部材41は、長尺状かつパイプ状の部材、あるいは棒状部材である。本体部材41は、軽量化を図るために、例えば、アルミニウム合金製であって、押し出し成形により形成されている。また、本体部材41は、外径が例えば40~50mm(ここでは略44mm)の略円形であり、使用者が掴みやすい外径である。また、本体部材41は、内部が十字状に補強され、強度を向上させている。ただし、本体部材41は、上述した寸法、形状に限定されるものではなく、各種の棒状部材や管状部材、単管(JIS G 3444に規定されている一般構造用炭素鋼鋼管)等が適用できる。
【0016】
保護部材50は、支持部材40を第2の手押部材として機能させている場合(支持部材40が手押部材80を支持していない場合)に、使用者の手を保護する。
保護部材50は、本体部材41の上側であって、上端から所定の距離離れた位置にボルトやリベット等で固定される。本実施形態の保護部材50は、本体部材41の上端から100~200mm離れた位置に固定されるのが好適であり、更には120~180mm離れた位置に固定されるのが好適である。なお、本体部材41のうち、本体部材41の上端から保護部材50の上端までの範囲が、支持部材40を第2の手押部材として機能させている場合に、使用者が運搬台車1を走行させるときに手で掴む支持側グリップ部42である。支持側グリップ部42は、長手方向が本体部材41の長手方向と同じ方向であり、具体的には略上下方向である。
【0017】
また、保護部材50は、支持部としての保護部51と、取付部52とを有しており、これらが一体で形成されている。また、保護部材50は、内部に本体部材41を挿入するために上下に開口する取付穴を有する。保護部材50は、例えば、ポリエチレン等の樹脂材料からなり、射出成形によって一体に形成される。保護部材50は視認性を向上させるために台車本体部20、具体的には前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、左側フレーム部21d、本体部材41、手押部材80と異なる色が付されている。例えば、前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、左側フレーム部21d、本体部材41、手押部材80が、シルバー等の金属色の場合には金属色とは異なる色、例えば赤、緑、青等、色の三原色であってもよく、オレンジ色、黄色等であってもよい。
【0018】
保護部51は、支持側グリップ部42の外周面(外側面)よりも外側に突出することで、使用者が支持側グリップ部42を掴んだ手を保護する形状である。保護部51は、略円板状の形状である。また、保護部51は、平面視において略円形の形状である。保護部51の半径寸法は、平面視において、支持側グリップ部42を掴んでいる使用者の手(例えば手の甲等)が保護部51に重畳してはみ出さない(平面視において外形線の内側に収まる)寸法に設定される。具体的には、保護部51の半径寸法は、50~80mmの範囲が好適であり、更には55~70mmの範囲が好適である。また、保護部51の外径寸法は、100~160mmの範囲が好適であり、更には110~140mmの範囲が好適である。また、保護部51は、一定の厚みを有している。具体的には、保護部51の上下方向寸法は、5~30mmの範囲が好適であり、更には10mm~20mmの範囲が好適である。なお、保護部51の寸法は特に限定されるものではない。また、保護部51の形状は、支持側グリップ部42を掴んでいる使用者の手を保護できる形成であれば、どのような
形状であってもよい。保護部51は、平面視において、略三角形(略正三角形を含む)、略四角形(略正三角形を含む)、略五角形(略正三角形を含む)、略六角形(略正三角形を含む)、略七角形(略正三角形を含む)、略八角形(略正八角形を含む)等の略多角形状(略正多角形を含む)であってもよい。また、保護部51は、平面視において、略円形の一部が切欠かれた形状(略半円状、略扇状等)であってもよい。また、保護部51は、平面視において、略多角形の一部が切欠かれた形状であってもよい。なお、保護部51は、運搬物を積載するときの最大積載高さを示す指標となる。
【0019】
取付部52は、保護部51の下端から一体で延出する円筒状であり、本体部材41よりも大きい外径を有する。
保護部材50の取付穴に本体部材41を挿入して、本体部材41の上端から所定の位置で取付部52をボルトやリベット等で本体部材41に固定することで、保護部材50を本体部材41に固定することができる。
【0020】
補強部材60は、本体部材41の下端、具体的には下端の近接した位置にボルトやリベット等で固定される。補強部材60は、本体部材41の強度を補強すると共に、本体部材41をコーナ部材22の挿入孔23に挿入したときに挿入孔23との間でガタ付きを抑制する。補強部材60は、例えばアルミニウム合金製等である。
図6(a)は、補強部材60の一例を示す図であり、
図5に示すI-I線の断面図である。
図6(b)は、コーナ部材22の挿入孔23の一例を示す図である。
【0021】
図6(a)に示すように、補強部材60は、略円筒状であって、本体部材41の外径よりも大きい外径を有する。補強部材60は、外周面のうち一部が径方向に向かって膨らむ複数(ここでは2つ)の膨出部61a、61bを有する。膨出部61a、61bは緩やかな傾斜部62を経て径方向に突出する。補強部材60は、内部に本体部材41を挿入するために上下に開口する取付穴63を有する。したがって、取付穴63に本体部材41を挿入して、本体部材41の下端から所定の位置で補強部材60をボルトやリベット等で本体部材41に固定することで、補強部材60を本体部材41に固定することができる。
【0022】
図6(b)に示すように、補強部材60が挿入されるコーナ部材22の挿入孔23は、平面75a、75b、75cと、補強部材60の円形の曲率半径と略同一の円弧面75dとにより囲まれている。また、挿入孔23には、補強部材60の膨出部61a、61bの挿入を許容する凹部としての空間76a、76bを有する。したがって、膨出部61a、61bを空間76a、76bに合わせて、本体部材41に固定された補強部材60を挿入孔23に挿入することで、支持部材40が所定の位置に位置決めされる。このように、補強部材60は位置決め部として機能する。
図6(b)に示す挿入孔23の形状は、平面視において挿入孔23の中心を通る前後方向の直線(あるいは左右方向の直線)から45度の角度で傾斜した直線Lhに対して略対称である。また、補強部材60の形状も、平面視において本体部材41の中心を通る直線Lhに対して略対称である。したがって、支持部材40は、本体部材41の長手方向に沿った軸線回りに180度、回転させた状態でも、補強部材60を挿入孔23に挿入することができる。コーナ部材22は、4つの角部のそれぞれで挿入孔23の円弧面75dが台車本体部20の外側寄りに位置するように配置される。
【0023】
手押部材80は、支持部材40に対して着脱可能に装着され、支持部材40によって支持される。手押部材80は、支持部材40に対して装着した場合、運搬台車1を走行させるときに使用者が手で押すための第1の手押部材として機能する。
手押部材80は、手押側グリップ部81と、連結部82a、82bと、装着部83a、83bとを有する。
手押側グリップ部81は、支持部材40に対して手押部材80を装着した場合に、使用
者が運搬台車1を走行させるときに手で掴む部位である。手押側グリップ部81は、長手方向が支持側グリップ部42と異なる方向であり、具体的には略水平方向に沿った略左右方向である。手押側グリップ部81は、長尺状かつパイプ状の部材、あるいは棒状部材である。手押側グリップ部81は、軽量化を図るために、例えば、アルミニウム合金製であって、押し出し成形により形成されている。手押側グリップ部81は、左右方向寸法が台車本体部20の左右方向の長さと略同一または台車本体部20の左右方向の長さよりも短い。また、手押側グリップ部81の左右方向寸法は、支持側グリップ部42の上下方向寸法よりも長い。また、手押側グリップ部81は、外径が例えば40~50mm(ここでは略44mm)の略円形であり、使用者が掴みやすい外径である。
【0024】
連結部82a、82bは、装着部83a、83bから手押側グリップ部81を使用者が掴み易い位置(前後方向の位置や高さ等)に配置する部位である。連結部82a、82bは、手押側グリップ部81の両端にそれぞれ設けられる。連結部82aは手押側グリップ部81の一方の端部と装着部83aとを連結し、連結部82bは手押側グリップ部81の他方の端部と装着部83bとを連結する。連結部82a、82bは、手押側グリップ部81の端部から前側かつ斜め下側に向かって延出する。連結部82a、82bは、例えば、アルミニウム合金製であって、手押側グリップ部81の両端にそれぞれ、ネジ、リベット、溶接等で接合される。
【0025】
装着部83a、83bは、手押部材80を支持部材40に着脱可能に装着するための部位である。装着部83a、83bは、連結部82a、82bのうち手押側グリップ部81が設けられる側とは反対側に設けられる。装着部83a、83bは、円筒状であり、支持側グリップ部42よりも大きい外径を有する。装着部83a、83bはそれぞれ、内部に本体部材41のうち支持側グリップ部42を挿入するために上下に開口する装着穴84を有する。装着部83aの装着穴84と、装着部83bの装着穴84との間の間隔は、左右方向に隣り合うコーナ部材22の挿入孔23の間の間隔と略同一である。装着部83a、83bは、例えば、アルミニウム合金製であって、連結部82a、82bにそれぞれ、ボルト、リベット、溶接等で接合される。
【0026】
次に、運搬台車1を使用者が走行させる場合について説明する。
(第1の走行方法)
まず、手押部材80を装着せずに支持部材40を用いて運搬台車1を走行させる第1の走行方法について説明する。
使用者は、支持部材40A、40Bを、それぞれコーナ部材22の各挿入孔23に挿入することで、台車本体部20に装着する。この場合、使用者は手で支持部材40A、40Bの支持側グリップ部42を掴んで運搬台車1を移動させることができる。
【0027】
ここで、支持側グリップ部42は、長手方向が上下方向であるために、使用者が支持部材40A、40Bの支持側グリップ部42をそれぞれの手で掴むと、運搬台車1の平面視において、手の甲が台車本体部20の外側寄りに、手の親指が台車本体部20の内側寄りになる手の向きとなる。
このとき、支持部材40の保護部51は、支持側グリップ部42の外周面よりも外側に向かって突出し、平面視において、支持側グリップ部42を掴んでいる使用者の手(例えば手の甲等)が保護部51と重畳する。したがって、支持部材40A、40Bの上端部が壁や物体に接近した際に、手よりも先に保護部51が壁や物体に接触するため、支持側グリップ部42を掴んでいる使用者の手が周囲の壁や物体に接触することが防止または抑制される。なお、本実施形態の保護部51は、平面視において、外形線の一部が台車本体部20の外側に位置することで台車本体部20と重なり合わず、残りが台車本体部20の内側に位置することで台車本体部20と重なり合う。
【0028】
(第2の走行方法)
次に、手押部材80を用いて運搬台車1を走行させる第2の走行方法について説明する。第2の走行方法では、上述した第1の走行方法の手の向きと異なる手の向きで、手押部材80を握ることができる。
使用者は、手押部材80を、台車本体部20に装着された支持部材40A、40Bに装着する。具体的には、手押部材80を上方から支持部材40A、40Bに近づけ、手押部材80の各装着部83a、83bの装着穴84に支持部材40A、40Bの各支持側グリップ部42を挿入させる。手押部材80の装着部83a、83bの下面が支持部材40A、40Bの保護部51の上面と当接することで、手押部材80が支持部材40A、40Bによって支持される。すなわち、手押部材80は、支持部材40Aと支持部材40Bとに架け渡された状態で支持される。なお、支持部材40A、40Bの各支持側グリップ部42の一部は、手押部材80の装着部83a、83bによって覆われる。使用者は手で手押部材80の手押側グリップ部81を掴んで運搬台車1を移動させることができる。
【0029】
ここで、
図2の側面図に示すように、手押部材80の手押側グリップ部81は、上端が支持部材40の上端と略同一の高さである。ここで、略同一の高さとは、手押部材80の手押側グリップ部81の上端と、支持部材40の上端との間の上下方向の差が0mm~20mmをいうものとする。
また、
図4の平面図に示すように、手押部材80の手押側グリップ部81は、台車本体部20とは重なり合わないように位置する。具体的には、手押側グリップ部81は、台車本体部20の後側フレーム部21bよりも後側に位置する。
【0030】
また、手押側グリップ部81は、長手方向が略左右方向であるために、使用者が手押側グリップ部81をそれぞれの手で掴むと、運搬台車1の平面視において、手の甲が上側に、手の親指が下側になる手の向きとなる。したがって、手押部材80を装着することによって、使用者が手で掴むときの手の向きを、手押部材80を装着していない場合(第1の走行方法)とは異なる手の向きに変えることができる。ここで、異なる手の向きとは、同じ右手(あるいは左手)で掴んだときに手の向きが異なることをいう。
【0031】
本実施形態の手押部材80によれば、運搬台車1の台車本体部20に着脱可能に装着される支持部材40A、40Bによって支持され、支持部材40A、40Bに対して着脱可能に装着される。したがって、手押部材80を支持部材40A、40Bに装着する場合と、手押部材80を支持部材40A、40Bに装着しない場合とで、使用者が手で掴む部位を変更することができる。このように、使用者が手で掴む部位を変更できることで、例えば、使用者の好みに応じた部位を手で掴んで運搬台車1を走行させることができる。
また、本実施形態の手押部材80を支持部材40A、40Bに着脱可能であるために、運搬物を台車本体部20に積み降ろす場合に、手押部材80を支持部材40A、40Bから離脱させることで容易に運搬物を積み降ろすことができる。
【0032】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係る運搬台車2について
図7を参照して説明する。
図7は、第2の実施形態に係る運搬台車2の一例を示す斜視図である。なお、第2の実施形態の運搬台車1と同様の構成は、同一符号を付して適宜、説明を省略する。
運搬台車2は、台車本体部20、走行部30、支持部材40(40A~40D)、手押部材80(80A、80B)を備えている。
【0033】
本実施形態の運搬台車2は、4つの支持部材40(40A~40D)を有し、それぞれ4つのコーナ部材22の挿入孔23に挿入される。ここで、支持部材40Aは右側かつ後側、支持部材40Bは左側かつ後側、支持部材40Cは右側かつ前側、支持部材40Dは左側かつ前側に位置する。支持部材40A~40Dは、それぞれ略同一の構成である。な
お、支持部材40A~40Dを使い分ける必要がない場合には単に支持部材40として説明する。
【0034】
本実施形態では、支持部材40Aと支持部材40Bに装着する手押部材80Aに加えて、支持部材40Cと支持部材40Dに装着する手押部材80Bを有する。なお、手押部材80Aは、第1の実施形態の手押部材80と同一の構成である。また、手押部材80Aと手押部材80Bとは略同一の構成であり、手押部材80Aを上下方向に沿った鉛直軸線の軸回りに180度回転させたものが手押部材80Bである。
【0035】
使用者は、手押部材80Aを台車本体部20に装着された支持部材40A、40Bに装着し、手押部材80Bを台車本体部20に装着された支持部材40C、40Dに装着する。手押部材80Bを支持部材40C、40Dに装着することで、手押部材80Aと手押部材80Bとは、
図4に示す左右方向寸法の中心線C1に直交する台車本体部20の前後方向寸法の中心線C2に対して略対称である。
【0036】
このように、手押部材80A、80Bを装着することによって、使用者は運搬台車2を走行させるときに、手押部材80Aまたは手押部材80Bの何れかを手で掴むことができる。例えば、運搬台車2を
図7に示す前側に向かって押す場合には手押部材80Aを用い、
図7に示す後側に向かって押す場合には手押部材80Bを用いることができる。したがって、使用者は運搬台車2を押す方向に応じて手押部材80A、80Bを使い分けることができる。
【0037】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態に係る運搬台車について説明する。
本実施形態の運搬台車は、第1の実施形態の運搬台車1あるいは第2の実施形態の運搬台車2と同様の部材により構成されるが、支持部材40と手押部材80とが一体であり、手押部材80が支持部材40に対して着脱できない点で異なる。
【0038】
ここでは、
図1を参照して本実施形態の運搬台車について説明する。
運搬台車は、台車本体部20、走行部30、手押ユニットを備えている。
手押ユニットは、支持部材40(40A、40B)と手押部材80とが一体で構成されることで略コ字状であり、台車本体部20に対して着脱可能である。
【0039】
支持部材40は、本体部としての本体部材41と、保護部材50と、補強部材60とを有する。本体部材41は、例えば、保護部材50よりも下側が第1のグリップ部であり、保護部材50よりも上側が手押部材80を固定するときの固定部である。
手押部材80は、第2のグリップ部としての手押側グリップ部81と、連結部82a、82bと、装着部83a、83bとを有する。第2のグリップ部としての手押側グリップ部81は、第1のグリップ部としての本体部材41を掴むときの手の向きが異なる。
【0040】
手押ユニットの製造者は、手押部材80を支持部材40A、40Bに固定することで手押ユニットを製造する。具体的には、製造者は、手押部材80を上方から支持部材40A、40Bに近づけ、手押部材80の各装着部83a、83bの装着穴84に支持部材40A、40Bの上部を挿入させる。手押部材80の装着部83a、83bの下面が支持部材40A、40Bの保護部51の上面と当接させた状態で、ボルト、リベット、溶接等で、装着部83a、83bを支持部材40A、40Bにそれぞれ固定することで、手押ユニットが製造される。
【0041】
使用者は、手押ユニットのうち支持部材40A、40Bを、それぞれコーナ部材22の各挿入孔23に挿入することで、手押ユニットを台車本体部20に装着する。この場合、
使用者は手押ユニットのうち、手で支持部材40A、40Bの本体部材41を掴んで運搬台車1を移動させることができると共に、手で手押部材80の手押側グリップ部81を掴んで運搬台車1を移動させることができる。
【0042】
本実施形態の手押ユニットによれば、運搬台車の台車本体部20に着脱可能に装着され、それぞれ異なる手の向きで握る第1のグリップ部と第2のグリップ部とを有する。したがって、使用者が手で掴む部位を変更することができる。また、手押ユニットは、第1のグリップ部の外周面よりも外側に突出させて第1のグリップ部を掴んだ手が周囲の物体に接触しないように保護する保護部51を有する。したがって、本実施形態の手押ユニットによれば、使用者が第1のグリップ部を掴んだ手を保護することができる。
また、手押ユニットは、第2のグリップ部の外周面よりも外側に突出させて第2のグリップ部を掴んだ手が周囲の物体に接触しないように保護する保護部を有していてもよい。
また、手押ユニットは、第1のグリップ部の保護部51および第2のグリップ部の保護部の少なくとも何れか一方を有していてもよい。
【0043】
以上、本発明の各実施形態について図面を参照して詳細に説明したが、前記実施形態は、本発明の実施にあたっての具体例を示したに過ぎない。本発明の技術的範囲は、前記各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態あるいは変形例を組み合せてもよい。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0044】
上述した各実施形態では、手押部材80(80A、80B)の手押側グリップ部81が直線状である場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、手押部材80(80A、80B)の手押側グリップ部81は、一部あるいは全部が曲がっていても、水平方向に対して傾斜していてもよい。
また、上述した各実施形態では、手押部材80(80A、80B)が連結部82a、82bを有する場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、手押部材80(80A、80B)は連結部82a、82bを省いて、手押側グリップ部81と装着部83a、83bとが直接、連結されていてもよい。
【0045】
また、上述した各実施形態では、手押部材80(80A、80B)が、2つの連結部82a、82bと、2つの装着部83a、83bとを有する場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、手押部材80(80A、80B)は、手押側グリップ部81と、一つの連結部82aと、一つの装着部83aとを有していてもよい。すなわち、手押部材80(80A、80B)は、2つの支持部材に架け渡された状態で支持されず、一つの支持部材に対して支持されていてもよい。
【0046】
また、上述した各実施形態では、支持部材40(40A~40D)が、補強部材60を有する場合について説明したが、この場合に限られず、補強部材60がなくてもよい。補強部材60がない場合には、本体部材41の下端をコーナ部材22の挿入孔23に直接、挿入する。この場合、コーナ部材22の挿入孔23は適宜、本体部材41の外径に応じた内径に設定する。
【0047】
また、上述した各実施形態では、手押部材80の各装着部83a、83bの装着穴84に支持部材40A、40Bの各支持側グリップ部42を挿入する場合について説明したが、この場合に限られず、凹凸の関係を逆にしてもよい。すなわち、手押部材80の各装着部83a、83bに下側に突出する突起を設け、装着部83a、83bの突起を、各支持側グリップ部42の上方に開口する孔に挿入するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1、2:運搬台車 20:台車本体部 30:走行部 40(40A~40D):支持部材 41:本体部材 42:支持部側グリップ部 80:手押部材 81:手押部側グリップ部 82a、82b:連結部 83a、83b:装着部