(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/04 20180101AFI20240104BHJP
G01N 23/083 20180101ALI20240104BHJP
G01N 23/18 20180101ALI20240104BHJP
【FI】
G01N23/04
G01N23/083
G01N23/18
(21)【出願番号】P 2019172807
(22)【出願日】2019-09-24
【審査請求日】2022-07-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100186761
【氏名又は名称】上村 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【氏名又は名称】和田 雄二
(72)【発明者】
【氏名】畑野 良太
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-101692(JP,A)
【文献】特開2017-125800(JP,A)
【文献】特許第6537008(JP,B1)
【文献】特開2009-264915(JP,A)
【文献】特開2006-071423(JP,A)
【文献】特開2011-242374(JP,A)
【文献】特開2012-208084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-G01N 23/2276
G01N 21/84-G01N 21/958
G06T 1/00-G06T 7/90
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波の照射ライン上を通過する被検査物の一次元の透過信号を、メモリ上で二次元の画像に展開する画像生成部と、
前記画像生成部において前記被検査物の一部分
である部分画像が生成される度に、当該部分画像を対象として画像処理を行う画像処理部と、
前記画像処理部
の複数回の処理結果に基づいて、
複数の画像処理後の前記部分画像
を結合することによって得られる合成画像の品質を検査する検査部と、を備え
、
前記画像処理部は、前回画像処理した部分画像の少なくとも一部を今回画像処理する部分画像に加えて画像処理し、前記合成画像を生成する、検査装置。
【請求項2】
前記画像処理部による前記画像処理と並行して、前記検査部が画像処理後の部分画像に対して検査する、請求項
1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記電磁波はX線であり、
前記品質は、異物混入の有無、割れ欠けの有無、及び欠品の有無の少なくとも一つである、請求項1
または2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記画像処理部及び前記検査部の少なくとも一方は、機械学習によって自動設定されるプログラムを備える、請求項1~
3のいずれか一項に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検査装置の一つとして、包装された食品等の検査対象物(被検査物)を検査する装置が挙げられる。例えば、下記特許文献1に係る検査装置では、検査対象物の画像の全体を複数の第1部分画像に分割すると共に、当該画像の全体を複数の第1部分画像とは異なる複数の第2部分画像に分割する態様が開示されている。この検査装置では、まず、複数の第1部分画像に対して異常の有無を判断すると共に、複数の第2部分画像に対して異常の有無を判断する。続いて、異常が含まれていると判断される第1部分画像と、異常が含まれていると判断される第2部分画像との重なりに基づいて、検査装置は、検査対象物に関する異常の有無を判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、取得した画像の全体を複数の第1部分画像及び複数の第2部分画像にそれぞれ分割した後に、検査対象物の品質が判定される。このような手法では、一つの検査対象物の品質を検査するために要する時間が長くなる傾向にある。
【0005】
ところで、包装された食品等の被検査物を検査する検査装置は、インライン測定するために、生産ラインに設けられることがある。例えば、生産ラインに設けられた検査装置に対して上記特許文献1の手法を採用する場合、当該検査装置が工場ラインのボトルネックになってしまう。
【0006】
本発明の一側面の目的は、被検査物の品質を高速で判定可能な検査装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る検査装置は、電磁波の照射ライン上を通過する被検査物の一次元の透過信号を、メモリ上で二次元の画像に展開する画像生成部と、画像生成部において被検査物の一部分を含む部分画像が生成される度に、当該部分画像を対象として画像処理を行う画像処理部と、画像処理部の一または複数回の処理結果に基づいて、画像処理後の部分画像の品質を検査する検査部と、を備える。
【0008】
この検査装置によれば、画像処理部は、被検査物の一部分を示す部分画像が画像生成部にて生成されると、当該部分画像を対象として画像処理を行い、次の隣接する部分画像が生成されると、次の部分画像に対して画像処理を行う。このように画像生成部で部分画像が生成される度に、新たに生成された部分画像に対して画像処理を繰り返して行く。この場合、画像生成部による部分画像の生成を実施する間に、画像処理部は、既に生成された部分画像に対して画像処理できる。これにより、被検査物が照射ラインを通過してから、当該被検査物の品質の検査が終了するまでの時間を短縮できる。したがって上記検査装置を用いることによって、被検査物の品質を高速で判定可能になる。
【0009】
画像処理部は、前回画像処理した部分画像の少なくとも一部、例えば今回処理対象とする部分画像と接する前回の部分画像との境界領域を、今回画像処理する部分画像に加えて画像処理してもよい。この場合、検査部は、前回画像処理した部分画像と、今回画像処理した部分画像との境界を良好に検査できる。このため、被検査物の品質を精度よく判定できる。
【0010】
画像処理部による画像処理と並行して、検査部が画像処理後の部分画像に対して検査してもよい。この場合、画像処理部が既に生成された部分画像に対して画像処理する間に、検査部は、既に画像処理された部分画像の品質を検査できる。これにより、被検査物が照射ラインを通過してから、当該被検査物の品質の検査が終了するまでの時間をさらに短縮できる。したがって、被検査物の品質をより高速で判定可能になる。
【0011】
電磁波はX線であり、品質は、異物混入の有無、被検査物の割れ欠けの有無、及び欠品の有無の少なくとも一つでよい。この場合、被検査物における異物混入の有無、被検査物の割れ欠けの有無、及び欠品の有無の少なくとも一つを、X線を用いて高速で判定可能になる。
【0012】
画像処理部及び検査部の少なくとも一方は、機械学習によって自動設定されるプログラムを備えてもよい。上記検査装置にこのようなプログラムが採用された場合であっても、当該検査装置は、被検査物の品質を高速で判定可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一側面によれば、被検査物の品質を高速で判定可能な検査装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態に係るX線検査装置の構成図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されるシールドボックスの内部構成の一部を示す模式平面図である。
【
図4】
図4は、複数の部分画像の合成画像を示す模式図である。
【
図5】
図5(a),(c),(e)のそれぞれは、物品が電磁波の照射ラインを通過する状態を示す模式図である。
図5(b)は、第1タイミングにて生成される部分画像を示す図であり、
図5(d)は、第2タイミングにて生成される部分画像を示す図であり、
図5(f)は、第3タイミングにて生成される部分画像を示す図である。
【
図6】
図6は、画像処理後の複数の部分画像と、当該部分画像の合成画像とを示す模式図である。
【
図7】
図7(a)は、所定の部分画像の画像処理結果を示す模式図であり、
図7(b)は、
図7(a)に示される部分画像の直後に生成される部分画像の画像処理結果を示す模式図であり、
図7(c)は、
図7(a)に示される部分画像の一部と、
図7(b)に示される部分画像とを結合した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一側面に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。各図において同一又は相当の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る検査装置の概略構成図である。
図2は、
図1に示されるシールドボックスの内部構成の一部を示す模式平面図である。
図1に示されるように、検査装置1は、電磁波を用いて物品Gの品質を検査する装置である。物品Gは、例えば食品等の内容物を収容する包装体であり、搬入コンベア51の搬送方向Aに沿って流れる被検査物である。搬送方向Aにおける各物品Gの寸法は、略同一である。本実施形態では、電磁波はX線であり、物品Gの品質は、物品G内の異物混入の有無、物品Gの割れ欠けの有無、及び欠品の有無の少なくとも一つである。このため、本実施形態に係る検査装置1は、X線検査装置である。なお、物品Gの品質は異物混入の有無、割れ欠けの有無、及び欠品の有無に限られない。例えば、物品Gの品質検査として、空洞の有無、形状異常の有無、収納される付属品の有無等の検査が実施されてもよい。なお、物品Gの欠品は、例えば物品Gが空袋であることも含む。
【0017】
検査前の物品Gは、搬入コンベア51によって検査装置1に搬入される。検査後の物品Gは、搬出コンベア52によって検査装置1から搬出される。検査装置1によって不良品と判定された物品Gが存在する場合、当該物品Gは、例えば検査装置1よりも後段(下流)にて排除される。
【0018】
検査装置1は、装置本体2と、支持脚3と、シールドボックス4と、搬送部5と、電磁波照射部6と、電磁波検出部7と、表示操作部8と、制御部10と、を備えている。
【0019】
装置本体2は、制御部10等を収容している。支持脚3は、装置本体2を支持している。シールドボックス4は、装置本体2に設けられている。シールドボックス4は、外部への電磁波の漏洩を防止する。シールドボックス4の内部には、電磁波による物品Gの検査が実施される検査領域Rが設けられている。シールドボックス4には、搬入口4a及び搬出口4bが形成されている。検査前の物品Gは、搬入コンベア51から搬入口4aを介して検査領域Rに搬入される。検査後の物品Gは、検査領域Rから搬出口4bを介して搬出コンベア52に搬出される。搬入口4a及び搬出口4bのそれぞれには、電磁波の漏洩を防止する電磁波遮蔽カーテン(図示省略)が設けられている。
【0020】
搬送部5は、シールドボックス4内に配置されている。搬送部5は、搬入口4aから検査領域Rを介して搬出口4bまで、搬送方向Aに沿って物品Gを搬送する。搬送部5は、例えば、搬入口4aと搬出口4bとの間に掛け渡されたベルトコンベアである。
【0021】
図1及び
図2に示されるように、電磁波照射部6は、シールドボックス4内に配置されている電磁波源である。電磁波照射部6は、搬送部5によって搬送される物品Gに電磁波を照射する。本実施形態では、電磁波照射部6は、平面視にて搬送方向Aに垂直に延びるライン状の電磁波を物品Gに照射する。電磁波照射部6は、例えば、X線を出射するX線管と、X線管から出射されたX線を搬送方向Aに垂直な面内において扇状に広げるコリメータと、を有している。この場合、電磁波照射部6から照射されるX線には、例えば、低エネルギー(長波長)から高エネルギー(短波長)までの様々なエネルギー帯のX線が含まれている。
【0022】
電磁波検出部7は、電磁波照射部6から照射された電磁波を検出するラインセンサであり、シールドボックス4内に配置されている。電磁波検出部7は、電磁波照射部6から照射される電磁波の照射ラインL上に配置されており、物品Gを透過した電磁波を検出する。電磁波検出部7であるラインセンサは、平面視にて、搬送方向Aに垂直に延びる方向に沿って一次元に配列された電磁波検出素子(例えば、X線検出素子)によって構成されている。当該ラインセンサは、物品G及び搬送部5の搬送ベルトを透過した電磁波を検出する。
【0023】
図1に示されるように、表示操作部8は、装置本体2に設けられているユーザインターフェースである。表示操作部8は、各種情報を表示すると共に、各種条件の入力を受け付ける。表示操作部8は、例えば、タッチパネル付の液晶ディスプレイであり、当該タッチパネル用の操作画面を表示する。この場合、オペレータは、表示操作部8を介して各種条件を入力できる。
【0024】
制御部10は、装置本体2内に配置されている集積回路である。制御部10は、検査装置1の各部の動作を制御する。制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、メモリ等を有する。メモリは、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有する。制御部10には、電磁波検出部7から電磁波の検出結果が入力される。
【0025】
図3は、制御部の機能構成図である。
図3に示されるように、制御部10は、透過信号取得部21と、画像生成部22と、画像処理部23と、検査部24と、判定部25と、出力部26と、記録部27とを備えている。
【0026】
透過信号取得部21は、電磁波検出部7の検出結果を取得する。電磁波検出部7の検出結果は、例えば、電磁波の照射ラインL上を通過する物品Gの一次元の透過信号である。当該透過信号は、電磁波検出部7が物品Gの少なくとも一部を透過した電磁波を検出することによって生成される信号である。透過信号取得部21は、取得した一次元の透過信号を画像生成部22に送信する。
【0027】
画像生成部22は、例えば主にGPUによって構成され、物品Gの透過信号をメモリ上で二次元の画像に展開する。二次元の画像が展開されるメモリは、例えばGPUに含まれるメモリであるが、これに限られない。画像生成部22は、例えば、電磁波検出部7による電磁波の検出結果に基づいて透過画像(画像)を生成する。本実施形態では、画像生成部22は、物品Gが照射ラインLを通過する間、並びに、物品Gが照射ラインLを通過した後に、メモリ上で物品Gの画像を展開する。物品Gの画像は、物品Gの透過信号から生成される二次元の画像であり、その画像を生成しながら、生成された画像を端から一定間隔で読み出すことにより、部分画像として画像処理部23及び記録部27へ送信される。本実施形態では、部分画像は、物品Gの一部分におけるX線透過画像であり、所定期間内に取得される透過信号を用いて生成される。所定期間は、搬送方向Aに沿った物品Gの長さを、搬送部5による物品Gの搬送速度にて除した値よりも短い期間である。この場合、物品Gの全体は、複数の部分画像を順に並べることによって確認できる。
【0028】
画像生成部22は、複数の部分画像を合成して物品Gの全体を示す合成画像を生成してもよい。
図4は、複数の部分画像の合成画像を示す模式図である。
図4に示される合成画像GPは、複数の部分画像P
1~P
n(nは2以上の自然数)が合成されることによって生成され、物品Gの全体を示す。部分画像P
1~P
nは、搬送方向Aに沿って順に並んでおり、且つ、順に生成される。こうして、二次元画像が生成される端から一定間隔で部分画像P
1~P
nが順次読み出されて、部分画像P
1から順番に画像処理部23へ移される。
図4においては、搬送方向Aに沿った部分画像P
1~P
nの幅は一定であるが、これに限られない。例えば、搬送方向Aに沿った部分画像P
1の幅は、他の部分画像P
2~P
nの幅よりも大きくてもよい。各部分画像は、メモリの容量にもよるが、例えば128×128画素によって構成される。
【0029】
画像処理部23は、例えば主にGPUによって構成され、画像生成部22にて生成される画像に対して画像処理を実施する。具体的には、画像処理部23は、画像生成部22から読み出された部分画像Pnに対して画像処理を実施するが、その際、処理済の部分画像Pn-1の一部(互いに接する境界部分)を含めた部分画像Pnに対しても画像処理を実施する。したがって、境界部分については、画像処理が2度行われる。これは、境界線上に異物がある場合、当該異物を確実に検出可能とするためである。本実施形態では、画像処理部23は、画像生成部22において部分画像が生成される度に、当該部分画像を対象として画像処理を繰り返す。部分画像に対する画像処理は、例えば、二値化処理、物品領域特定処理、物品領域からの特徴量の抽出処理等を含む。画像処理部23は、画像処理後の部分画像(以下、単に「処理画像」とも呼称する)を、検査部24と記録部27とに送信する。画像処理部23は、複数の部分画像が結合されたものに対して画像処理してもよい。この場合、画像処理部23は、画像処理後の合成された部分画像を検査部24と記録部27とに送信する。
【0030】
画像処理部23は、例えば、一又は複数の画像処理アルゴリズムを用いることによって、部分画像に対して画像処理を実施する。画像処理アルゴリズムとは、各画像に施す画像処理の処理手順を示す型である。画像処理アルゴリズムは、1つの画像処理フィルタ、又は、複数の画像処理フィルタの組み合わせによって構成される。複数の画像処理アルゴリズムは、インターネット等のネットワークを介して外部から取得可能である。また、複数の画像処理アルゴリズムは、USBメモリ又はリムーバブルハードディスク等の外部記憶媒体から取得可能である。複数の画像処理アルゴリズムのうちの少なくとも1つ以上は、生物界における遺伝及び進化のメカニズムを応用した手法である遺伝的アルゴリズム(GA=Genetic Algorithms)を採用し得る。この場合、検査装置1の仕様、検査条件等に基づき、複数の画像処理フィルタから各画像を自動生成できる。複数の画像処理アルゴリズムの少なくとも一部は、例えば作業者が表示操作部8を介して適宜設定できる。
【0031】
画像処理部23は、上記画像処理アルゴリズムを用いる代わりに、機械学習によって自動設定されるプログラムを用いて上記画像処理を実施してもよい。このようなプログラムは、機械学習によって生成される予測モデル(学習済モデル)であり、機械学習の結果得られたパラメータ(学習済パラメータ)が組み込まれた推論プログラムである。学習済モデルに用いられる機械学習の例としては、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、遺伝的アルゴリズム等が挙げられる。学習済モデルは、畳み込みニューラルネットワークを含んでもよいし、複数の階層(例えば、8層以上)のニューラルネットワークを含んでもよい。すなわち、上記プログラムに相当する学習済モデルは、ディープラーニングによって生成されてもよい。
【0032】
検査部24は、画像処理部23の処理結果に基づいて、物品Gの品質を検査する。部分画像の品質として、異物混入の有無、割れ欠けの有無、及び欠品の有無の少なくとも一つが挙げられるが、これに限られない。本実施形態における物品Gの品質検査は、例えば、画像処理後の画像に対する異物確認検査、欠品確認検査、収納数確認検査、空洞確認検査等を含む。本実施形態では、検査部24は、画像処理部23の一または複数回の処理結果に基づいて、画像処理後の部分画像(すなわち、物品Gの一部)の品質を検査する。検査部24は、例えば、一又は複数の画像処理アルゴリズム、及び機械学習によって自動設定されるプログラムの少なくとも一方を用いて、物品Gの品質を検査する。検査部24は、品質検査結果を判定部25及び記録部27に送信する。
【0033】
本実施形態では、検査部24は、画像処理部23による画像処理と並行して、画像処理後の部分画像に対して検査する。例えば、検査部24が所定の部分画像の品質を検査する間に、画像処理部23は、当該部分画像よりも後に生成される部分画像を画像処理する。
【0034】
判定部25は、検査部24から受信した品質検査結果に基づいて、物品Gが良品であるか否かを判定する。例えば、判定部25は、各部分画像に対する品質検査結果を総合して、物品G内における異物の有無、物品Gの割れ欠けの有無、物品Gの欠品の有無等を判定する。判定部25は、判定結果を出力部26及び記録部27に送信する。
【0035】
出力部26は、検査装置1における制御部10以外の部分、及び検査装置1とは異なる装置の少なくとも一方に、判定部25の判定結果を出力する。これにより、検査装置1、及び検査装置1とは異なる装置(例えば、検査装置1よりも下流に配置した振分装置)との少なくとも一方は、物品Gが不良品であるときの動作を実行できる。検査装置1とは異なる上記装置の別例としては、例えば搬入コンベア51、搬出コンベア52、報知装置等が挙げられる。
【0036】
記録部27は、制御部10にて生成される信号、データ等を記録する。例えば、記録部27は、透過信号取得部21から送信される透過信号と、画像生成部22から送信される各部分画像及び合成画像のデータと、画像処理部23から送信される画像処理後の部分画像、当該部分画像の処理結果、及び画像処理後の合成画像のデータと、検査部24から送信される品質検査結果と、判定部25から送信される判定結果とを記録する。記録部27は、例えば、ある物品Gに対する画像処理後の合成画像と、当該物品Gの品質検査結果とを関連付けて記録してもよい。この場合、作業者による物品G毎の品質検査結果の確認を迅速化できる。
【0037】
次に、
図5(a)~(f)を参照しながら、物品Gの部分画像の取得方法の一例について説明する。
図5(a),(c),(e)のそれぞれは、物品Gが電磁波の照射ラインLを通過する状態を示す模式図である。
図5(a),(c),(e)に示されるように、物品Gの内部には異物Cが混入されている。
【0038】
図5(a)では、第1タイミングにおける物品Gと電磁波検出部7との位置関係が示される。第1タイミングでは、異物Cは、搬送方向Aにおいて電磁波検出部7よりも上流側に位置する。
図5(b)には、第1タイミングにて生成される部分画像31が示される。部分画像31は、第1タイミングを終点とした所定期間内に取得される透過信号に基づいてメモリ上に展開される二次元の画像であり、物品Gの一部を示す部分31aを含む。
【0039】
図5(c)では、第2タイミングにおける物品Gと電磁波検出部7との位置関係が示される。第2タイミングでは、異物Cは、平面視にて電磁波検出部7に重なる。
図5(d)には、第2タイミングにて生成される部分画像32が示される。部分画像32は、部分31aとは異なり、且つ、物品Gの一部を示す部分32aと、異物Cを示す部分32bとを含む。部分画像32は、第1タイミングを始点とすると共に第2タイミングを終点とする期間内に取得される透過信号に基づいてメモリ上に展開される二次元の画像である。本実施形態では、部分画像32は、部分画像31が生成されてから部分画像31が画像処理されるまでの間に生成される。
【0040】
図5(e)では、第3タイミングにおける物品Gと電磁波検出部7との位置関係が示される。第3タイミングでは、異物Cは、搬送方向Aにおいて電磁波検出部7よりも下流側に位置する。
図5(f)には、第3タイミングにて生成される部分画像33が示される。部分画像33は、部分31a,32aとは異なり、且つ、物品Gの一部を示す部分33aを含む。部分画像33は、第2タイミングを始点とすると共に第3タイミングを終点とする期間内に取得される透過信号に基づいてメモリ上に展開される二次元の画像である。本実施形態では、部分画像33は、部分画像32が生成されてから部分画像32が画像処理されるまでの間に生成される。もしくは、部分画像33は、部分画像31の画像処理が完了するまでの間に生成されてもよい。換言すると、本実施形態における所定の部分画像は、当該部分画像よりも前に生成された部分画像の画像処理が完了するまでの間に生成される。
【0041】
図6は、画像処理後の複数の部分画像と、当該複数の部分画像の合成画像とを示す模式図である。
図6には、画像処理後の部分画像に相当する処理画像41~43が示される。処理画像41は、
図5(b)に示される部分画像31を画像処理することによって得られる。同様に、処理画像42は、
図5(d)に示される部分画像32を画像処理することによって得られ、処理画像43は、
図5(f)に示される部分画像33を画像処理することによって得られる。処理画像41~43を結合する事によって、合成画像40が得られる。処理画像42には、部分画像32の部分32bに相当し、異物Cを示す部分42aが表示される。処理画像42は、例えば、処理画像41の検査中に得られる。処理画像43は、例えば、処理画像41の検査中もしくは処理画像42の検査中に得られる。
【0042】
次に、以上に説明した本実施形態に係る検査装置1の作用効果について、以下に説明する比較例を参照しながら説明する。比較例に係る検査装置は、検査装置1と実質的に同一構成を備える。しかしながら、比較例に係る検査装置では、本実施形態に係る検査装置と異なり、被検査物の全体を含む画像が生成された後、当該画像に対して画像処理が実施される。すなわち比較例では、被検査物の部分画像は生成されない。そして、被検査物の全体を含む画像の処理結果に基づいて、被検査物の品質が検査される。このような比較例においては、被検査物の全体が電磁波の照射ラインを通過した後に初めて、画像処理と品質検査とが実施される。よって、画像処理の負荷、もしくは品質検査項目数等によっては、被検査物が上記照射ラインを通過してから当該被検査物の品質検査が完了するまでに、数秒要することがある。ここで近年、生産ラインの高速化のため、被検査物のインライン測定に要求される時間は、例えば1秒未満と非常に短い。したがって、上述した比較例に係る検査装置を生産ラインに導入する場合、当該検査装置は、生産ラインにおけるボトルネックになってしまう。
【0043】
これに対して本実施形態に係る検査装置1によれば、画像処理部23は、被検査物である物品Gの一部分を示す部分画像が画像生成部22にて生成されると、当該部分画像を対象として画像処理を行い、次の隣接する部分画像が生成されると、当該次の部分画像を対象として画像処理を行う。このように画像生成部22で部分画像が生成される度に、新たに生成された部分画像に対して画像処理を繰り返して行く。この場合、画像生成部22による部分画像の生成を実施する間に、画像処理部23は、既に生成された部分画像に対して画像処理できる。これにより、物品Gが照射ラインLを通過してから、当該物品Gの品質の検査が終了するまでの時間を短縮できる。よって検査装置1を用いることによって、物品Gの品質を高速で判定可能になる。したがって、例えば検査装置1を生産ラインに導入しても、検査装置1は、当該生産ラインにおけるボトルネックになることを防止できる。
【0044】
本実施形態では、画像処理部23による画像処理と並行して、検査部24が画像処理後の部分画像に対して検査する。このため、画像処理部23が既に生成された部分画像に対して画像処理する間に、検査部24は、既に画像処理された部分画像の品質を検査できる。これにより、物品Gが照射ラインLを通過してから、当該物品Gの品質の検査が終了するまでの時間をさらに短縮できる。したがって、物品Gの品質をより高速で判定可能になる。
【0045】
本実施形態では、電磁波はX線であり、品質は、異物混入の有無、割れ欠けの有無、及び欠品の有無の少なくとも一つである。このため、物品Gにおける異物混入の有無、割れ欠けの有無、及び欠品の有無の少なくとも一つを、X線を用いて高速で判定可能になる。
【0046】
本実施形態では、画像処理部23及び検査部24の少なくとも一方は、機械学習によって自動設定されるプログラムを備えてもよい。一般に、機械学習によって自動設定されるプログラムを用いた画像処理等に要する時間は、単に画像処理アルゴリズムを用いる場合よりも長くなる傾向にある。しかしながら、上記検査装置1においては、物品Gが照射ラインLを通過する間に上記プログラムを用いた処理が実施される。このため、検査装置1では、物品Gが照射ラインLを通過した後に処理されるデータ量は、上記比較例よりも顕著に低減される。したがって、検査装置1は、上記プログラムを用いた場合であっても物品Gの品質を高速で判定可能である。
【0047】
以下では、上記実施形態の変形例について説明する。以下の変形例において、上記実施形態と重複する箇所の説明は省略する。したがって以下では、上記実施形態と異なる箇所を主に説明する。
【0048】
まず、
図7(a),(b)を参照しながら、単に部分画像の品質検査結果のみにて物品の品質を判定することによって、誤判定がなされる可能性について説明する。
図7(a)は、所定の部分画像の画像処理結果を示す模式図である。
図7(a)には、画像処理後の部分画像である処理画像46が示される。処理画像46には、異物Cを示す部分46aが含まれる。部分46aの大きさは、検査装置1が異物Cと判定可能な大きさ未満である。このため、例えば処理画像46のみの品質を検査した場合、処理画像46の品質は良好であると判定される可能性が高い。
【0049】
図7(b)は、
図7(a)に示される部分画像の直後に生成される部分画像の画像処理結果を示す模式図である。
図7(b)には、画像処理後の部分画像である処理画像47が示される。処理画像47には、異物Cを示す部分47aが含まれる。部分47aの大きさは、部分46aと同様に、検査装置1が異物Cと判定可能な大きさ未満である。このため、例えば処理画像47のみの品質を検査した場合、処理画像47の品質は良好であると判定される可能性が高い。よって、単に各処理画像の品質検査結果を総合した場合、物品の品質が誤判定される可能性がある。
【0050】
これに対して本変形例では、最初に生成された部分画像を除いて、複数の画像処理後の部分画像を結合することによって得られる合成画像の品質を検査する。
図7(c)は、
図7(a)に示される部分画像の一部と、
図7(b)に示される部分画像とを結合した図である。本変形例では、今回処理対象とする部分画像と接する前回の部分画像との境界領域を、今回画像処理する部分画像に加えて画像処理する。具体的には、
図7(c)に示されるように、前回画像処理した部分画像の一部を、今回画像処理する部分画像に加えて画像処理する(すなわち、画像処理を繰り返す)ことによって得られる合成画像45が生成される。このような合成画像45においては、
図7(a),(b)に示される部分46a,47aが結合された部分45aが含まれる。部分45aは、検査装置1が異物Cと判断可能な大きさ以上である。このため、合成画像45の品質を検査した場合、物品に異物が含まれていることを判定できる。
【0051】
以上に説明した本変形例では、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。加えて本変形例では、最初に生成された部分画像を除いて、複数の画像処理後の部分画像を結合することによって得られる合成画像の品質を検査する。これにより、物品の品質が誤判定されにくくなる。したがって本変形例では、物品の品質検査の高速化と、当該品質検査の高精度化とを両立できる。
【0052】
以上、本発明の一側面に係る実施形態及び変形例について説明したが、本発明の一側面は、上述した実施形態及び変形例に限定されない。例えば、上記実施形態及び上記変形例では、画像処理部と検査部とは互いに別の構成部分であるが、これに限られない。例えば、検査部は画像処理部の一部でもよい。いずれにせよ本発明の一側面では、制御部が、部分画像の画像処理及び検査を実施する。
【0053】
上記変形例では、合成画像は、前回画像処理した部分画像の一部を、今回画像処理する部分画像に加えて画像処理することによって得られるが、これに限られない。当該合成画像は、例えば、前回画像処理した部分画像の一部と、今回画像処理した部分画像とを結合することによって得られてもよい。すなわち、前回画像処理した部分画像をさらに画像処理することなく、合成画像を生成してもよい。また、合成画像は、例えば、前回画像処理した部分画像の全体と、今回画像処理した部分画像とを結合してもよい。もしくは、前回画像処理した部分画像だけでなく、さらに前に画像処理した部分画像を、今回画像処理した部分画像に結合してもよい。すなわち、合成画像は、複数の画像処理済みの部分画像を含んでもよい。
【0054】
上記実施形態及び上記変形例では、画像処理後の部分画像が複数の領域に分割され、且つ、各領域の品質が検査されてもよい。この場合、第1の手法にて分割した複数の領域の品質と、第1の手法とは異なる第2の手法にて分割した複数の領域の品質とのそれぞれが検査されてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…検査装置、2…装置本体、3…支持脚、4…シールドボックス、5…搬送部、6…電磁波照射部、7…電磁波検出部、8…表示操作部、10…制御部、21…透過信号取得部、22…画像生成部、23…画像処理部、24…検査部、25…判定部、26…出力部、27…記録部、31~33,P1~Pn…部分画像、40,45,GP…合成画像、41~43,46,47…処理画像、C…異物、G…物品、L…照射ライン。