(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】ハンマー打撃装置
(51)【国際特許分類】
B25D 17/10 20060101AFI20240104BHJP
B25D 9/02 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
B25D17/10
B25D9/02
(21)【出願番号】P 2020052976
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】510155210
【氏名又は名称】アピュアン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】渡部 幸雄
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-228768(JP,A)
【文献】実開昭59-082681(JP,U)
【文献】実開昭51-112279(JP,U)
【文献】登録実用新案第3007890(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0065231(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25D 17/10
B25D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダの内部に上下方向に摺動可能に配設されて、該シリンダの内部を上部内空域と下部内空域とに区画する摺動部と、該摺動部から下方へ突成されて、該シリンダの下端部に下方開口された摺動孔を介して下方へ突出された杆部と、該杆部の下端部に設けられた打撃部とが一体化されたハンマー体と、
前記シリンダの内部に圧縮空気を流入可能な作動状態と該圧縮空気を流入不能な停止状態とに変換する操作手段と、
前記操作手段による作動状態で、前記圧縮空気の流入により前記シリンダの上部内空域と下部内空域との各内圧を交互に増減させて、前記摺動部を上下方向に繰り返し往復移動させる圧力変換手段と
を備え
、前記シリンダの下部内空域に、前記ハンマー体の摺動部に弾接した状態で前記ハンマー体を支持可能なバネ部材が配設されると共に、前記シリンダに、前記下部内空域と外部とを連通させる細孔部が設けられている
エアシリンダ型打撃工具
と、
該エアシリンダ型打撃工具の下方に配設され、上下方向に往復移動するハンマー体の打撃部によって打ちつけられる打撃対象物が載置される載置台と、
を備えたハンマー打撃装置であって、
前記エアシリンダ型打撃工具は、操作手段による停止状態で、前記ハンマー体の打撃部が前記載置台の上面に当接され、かつ、前記バネ部材が弾縮状態で前記ハンマー体の摺動部に弾接するように、設けられたものであることを特徴とするハンマー打撃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
圧縮空気の流入によりハンマー体を往復移動させるエアシリンダ型打撃工具、および該エアシリンダ型打撃工具を備えたハンマー打撃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、砂などを叩いて地ならしするための工具として、圧縮空気により作動する打撃工具が用いられる。圧縮空気を使用する打撃工具は、軽量かつ小型化できることから、屋外での地ならし作業に用いられる。こうした打撃工具としては、例えば特許文献1の構成が提案されている。かかる構成は、圧縮空気を流入することにより、シリンダ内に配されたピストンを前後方向に往復移動させてチゼルを打撃して振動させる。このチゼルの振動によって前記地ならし作業を行うことができる。
【0003】
また、前記打撃工具は、地ならし作業の他に、例えば、鋳造物の不要部位(湯口等で形成された部位)を打撃して削除する作業にも用いられ得る。かかる作業には、前記鋳造物を載置する載置台の上方に前記打撃工具を固定したものが用いられる。すなわち、金型から取り外した鋳造物を前記載置台上に載置し、前記打撃工具を駆動させることにより、該鋳造物の不要部位を削除する。このように打撃工具は、鋳造物の製造工程でも適用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来の、圧縮空気により作動する打撃工具は、該圧縮空気によりシリンダ内を往復移動するピストンと、該ピストンにより打撃されるチゼルとを別部材するものである。こうした従来構成の他に、前記ピストンとチゼルとが一体化されたもの(以下、ハンマー体という)を備えた構成も知られている。この構成は、前記圧縮空気によりハンマー体が往復移動するものであり、該往復移動するハンマー体の先端部によって前記地ならし作業や前記鋳造物の不要部位を削除する作業などに用いられる。
【0006】
こうしたハンマー体を備えた打撃工具にあっては、前述したように小型かつ軽量であること及び保管場所の省スペース化等の理由により、壁や棚などに取り付けられたフックに吊り下げられて保管される場合がある。そして、この場合には、一般的にハンマー体の先端部を下向きにした状態で保管される。
ところが、この打撃工具を使用後に保管する際に、該打撃工具を吊り下げると、ハンマー体が急激に降動する場合があった。そのため、例えば、打撃工具の直下に別の部材を置いた場合や、別の部材の直上に該打撃工具を保管した場合などでは、ハンマー体の急激な降下によって該別の部材を傷付けてしまう虞があった。
同様に、前述したように載置台の上方に打撃工具を配設した構成では、該打撃工具の使用後にハンマー体が急激に降下することにより、該載置台を傷つけてしまう虞があった。また、場合によっては載置台とハンマー体との間に手指を挟むおそれもあり、安全上、改善が求められていた。
【0007】
本発明は、使用後にハンマー体が急激に降下することを防ぎ、該ハンマー体の下方にある部材を該急激な降下により傷付けてしまうことを抑制し得るエアシリンダ型打撃工具およびハンマー打撃装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一発明は、シリンダと、前記シリンダの内部に上下方向に摺動可能に配設されて、該シリンダの内部を上部内空域と下部内空域とに区画する摺動部と、該摺動部から下方へ突成されて、該シリンダの下端部に下方開口された摺動孔を介して下方へ突出された杆部と、該杆部の下端部に設けられた打撃部とが一体化されたハンマー体と、前記シリンダの内部に圧縮空気を流入可能な作動状態と該圧縮空気を流入不能な停止状態とに変換する操作手段と、前記操作手段による作動状態で、前記圧縮空気の流入により前記シリンダの上部内空域と下部内空域との各内圧を交互に増減させて、前記摺動部を上下方向に繰り返し往復移動させる圧力変換手段とを備えたエアシリンダ型打撃工具において、前記シリンダの下部内空域に、前記ハンマー体の摺動部に弾接した状態で前記ハンマー体を支持可能なバネ部材が配設されると共に、前記シリンダに、前記下部内空域と外部とを連通させる細孔部が設けられていることを特徴とするエアシリンダ型打撃工具である。
【0009】
ここで、前述した従来の、圧縮空気によりハンマー体を往復移動させる構成について、本発明の発明者らが鋭意検討したところ、ハンマー体の先端部を下向きに保管すると、該ハンマー体の自重によりシリンダの内圧が変化して、該ハンマー体の急激な降下を生ずるという知見を得た。本発明は、こうした発明者らの鋭意研鑽により得られた知見に基づいて達成されたものである。
【0010】
かかる本発明の構成にあっては、シリンダ内部の下部内空域に細孔部が設けられていることから、圧縮空気を流入停止した停止状態で、該下部内空域の内圧を該細孔部により減圧できる。そのため、前記停止状態で下部内空域の内圧が上部内空域に比して高圧であっても、前記細孔部により該下部内空域を徐々に減圧できる。ここで、細孔部は、当然ながら圧縮空気を流入中の作動状態で、ハンマー体を上方移動できるように、下部内空域の内圧増加を妨げない比較的細径であることが必要である。こうした細孔部によれば、前記停止状態で下部内空域の内圧を徐々に減圧できることから、前述したようにハンマー体の打撃部を下向きに保管した際に、該ハンマー体の急激な降下を抑制でき、該ハンマー体を比較的ゆっくりと降下させ得る。
さらに、シリンダ内部の下部内空域には、バネ部材が配設されていることから、前記保管の際に降下するハンマー体の降下速度を抑えることができ、該ハンマー体の急激な降下の抑制に寄与する。
したがって、本発明の構成によれば、使用後にハンマー体の打撃部を下向きにして保管する際に、該ハンマー体の急激な降下を防ぐことができるから、該保管位置の下方に別部材を置いた場合にも、該ハンマー体との衝突によって当該別部材を傷付けてしまうことや手指を挟んでしまうことを防止でき、安全性能が向上する。
【0011】
また、本構成は、前述したようにシリンダ内部の下部内空域にハンマー体と弾接するバネ部材が設けられていることから、圧縮空気を流入する作業状態でハンマー体の往復移動により生ずる振動を緩和できる。これにより、本発明の構成は、作業者が手に持って作業する際に、該作業者に伝わる振動を抑制できると共に、前記振動により生ずる騒音を低減できる。
【0012】
本発明の第二発明は、前述した第一発明のエアシリンダ型打撃工具と、該エアシリンダ型打撃工具の下方に配設され、上下方向に往復移動するハンマー体の打撃部によって打ちつけられる打撃対象物が載置される載置台とを備えたハンマー打撃装置であって、前記エアシリンダ型打撃工具は、操作手段による停止状態で、前記ハンマー体の打撃部が前記載置台の上面に当接され、かつ、前記バネ部材が弾縮状態で前記ハンマー体の摺動部に弾接するように、設けられたものであることを特徴とするハンマー打撃装置である。
【0013】
かかる構成にあっては、前記第一発明のエアシリンダ型打撃工具を備えたものであることから、該エアシリンダ型打撃工具の使用後に、ハンマー体を徐々に降下させることができる。本構成によれば、エアシリンダ型打撃工具の使用後に、ハンマー体の急激な降下を抑制できるため、載置台とハンマー体の打撃部との衝突により該載置台を傷つけてしまうことを抑制できる。さらに、本構成では、停止状態でハンマー体の打撃部が載置台の上面に当接されるように設けられていることから、該停止状態での保管中に、ハンマー体と載置台との間にゴミが付着したり、誤って別部材が置かれたりすることを防止できる。また、上述のようなバネ部材を設けることにより、載置台にハンマー体の荷重が継続的に強くかかって載置台やハンマー体の先端に負荷がかかる、ことを抑制できる利点もある。
【0014】
さらに、エアシリンダ型打撃工具は、前述したようにハンマー体の往復移動による振動が抑制されることから、本構成のハンマー打撃装置にあっては、載置台の上方にエアシリンダ型打撃工具を配設するための支持手段に、前記振動が伝達することを抑制できる。そのため、前記振動によってエアシリンダ型打撃工具に位置ズレが生じてしまうことを抑制できる。さらに、本構成のハンマー打撃装置は、エアシリンダ型打撃工具の使用中に生ずる騒音も低減される。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエアシリンダ型打撃工具によれば、使用後にハンマー体の打撃部を下向きにして保管する際に、該ハンマー体の急激な降下を防ぐことができるから、該保管位置の下方に在る別部材を該ハンマー体との衝突によって傷付けてしまうなどの不具合を解消することでき、安全性に優れる。さらに、ハンマー体の往復移動により生ずる振動が作業者に伝わることを抑制できると共に、該振動により生ずる騒音も抑制できる。
また、本発明のハンマー打撃装置によれば、使用後にハンマー体の急激な降下を抑制できることから、該ハンマー体との衝突により載置台を傷付けてしまうことを抑制できる。さらに、ハンマー体の振動がエアシリンダ型打撃工具を支持する支持部材に伝わることを抑制できると共に、使用中の騒音を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】エアシリンダ型打撃工具1の縦断面図である。
【
図2】操作ハンドル13の操作によりハンマー体12が降下した状態における、エアシリンダ型打撃工具1の従断面図である。
【
図3】該エアシリンダ型打撃工具1を載置台5上に配設したハンマー打撃装置81の正面図である。
【
図4】使用状態におけるエアシリンダ型打撃工具1の作動を示す説明図である。
【
図5】
図4から続くエアシリンダ型打撃工具1の作動を示す説明図である。
【
図6】使用状態から停止状態に変換した際の、ハンマー体12の動作を示す説明図である。
【
図7】
図6から続くハンマー体12の動作を示す説明図である。
【
図8】
図7から続くハンマー体12の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明にかかる実施形態を添付図面に従って以下に説明する。
本実施例のエアシリンダ型打撃工具1は、
図1,2に示すように、円筒状のシリンダ11と、該シリンダ11の長手方向(上下方向)に沿って摺動するハンマー体12と、該シリンダ11の内部に圧縮空気を流入させる操作ハンドル13と、該圧縮空気を後述の上部内空域21aと下部内空域21bとの一方へ送出する圧力弁機構14とを備えたものである。
【0018】
前記シリンダ11は、円筒形の胴部11aと、該胴部11aの下部に設けられた底部11bと、該胴部11aの上部に設けられた天井部11cとを備え、密閉状の内部空域21を有する。そして、底部11bを上下方向に貫通する摺動孔22が形成されると共に、天井部11cに圧縮空気を供給するエア供給口23が設けられている。天井部11cには、エア供給口23から供給された圧縮空気を前記圧力弁機構14へ流入させるエア流路25が設けられており、該エア流路25が該圧力弁機構14を介して前記内部空域21に連通されている。さらに、天井部11cには、前記エア流路25を、エア供給口23から供給された圧縮空気が圧力弁機構14へ通過可能な開放状態と通過不能な閉鎖状態とに変換する開閉弁26が配設されている。この開閉弁26は、シリンダ11の外面に傾動可能に配設された操作ハンドル13により、前記エア流路25を開放状態と閉鎖状態とに変換可能に設けられている。こうした操作ハンドル13と開閉弁26とによりエア流路25を開閉する機構は、従来から公知のものを適用できることから、詳細を省略する。
【0019】
シリンダ11の胴部11aには、その長手方向に沿って胴側室30が設けられると共に、該胴側室30の下端部と内部空域21の下端部とを連通する第一通気孔31aが設けられている。この胴側室30は、その上端部が前記圧力弁機構14を介して、前記エア流路25に連通されている。さらに、胴部11aには、前記第一通気孔31aの上方に、胴側室30と内部空域21とを連通する第二通気孔31bが設けられている。この第二通気孔31bには、一方向バルブ(図示せず)が配設されており、内部空域21から胴側室30へ空気を流通可能とする一方、該胴側室30から内部空域21へ空気を流通不能とする。
尚、第一通気孔31aは、前記内部空域21を上下方向に摺動する前記ハンマー体12の摺動部41が移動下限位置(
図8参照)にある状態で、該摺動部41よりも下方となる部位に設けられている。
【0020】
前記ハンマー体12は、シリンダ11の内部空域21で上下方向に摺動する摺動部41と、該摺動部41の下端から下方へ延成された円柱状の杆部42と、該杆部42の下端に設けられた打撃部43とが一体的に形成されたものである。そして、杆部42が、前記シリンダ11の摺動孔22に挿通されて、該シリンダ11の下方に突出されている。尚、この摺動孔22には、図示しないOリングが配設されており、該摺動孔22にハンマー体12の杆部42が挿通されている状態で、空気の流通ができないようになっている。ただし、Oリングは必須の構成要件ではなく、Oリングを使用しない構成であっても勿論よい。
【0021】
ハンマー体12の摺動部41は、前記杆部42に比して径大かつ短尺の円柱形に形成され、該摺動部41の外径がシリンダ11の内部空域21の内径に比して僅かに小さい寸法となっている。そして、摺動部41の外周面には、拡縮自在な金属製のCリングが配設されており、該Cリングが周方向に亘ってシリンダ11の内周面に当接される。
【0022】
このようにシリンダ11の内部空域21に配設された前記摺動部41によって、該シリンダ11の内部空域21が、該摺動部41の上側の上部内空域21aと下側の下部内空域21bとに区画されている。これら上部内空域21aと下部内空域21bとは、夫々の内容積が前記摺動部41の上下移動により増減する。すなわち、ハンマー体12の摺動部41が下方へ移動する場合(
図4参照)には、上部内空域21aの内容積が増加する一方、下部内空域21bの内容積が減少する。逆に、ハンマー体12の摺動部41が上方へ移動する場合(
図5参照)には、下部内空域21bの内容積が増加する一方、上部内空域21aの内容積が減少する。
【0023】
そして、前記内部空域21の上部内空域21aには、前記圧力弁機構14を介してエア流路25が連通されており、下部内空域21bには、前記した第一通気孔31aを介して胴側室30が連通されている。すなわち、内容積が変動する下部内空域21に常時臨む位置に第一通気孔31aが設けられている。そして、胴側室30は、前記圧力弁機構14を介してエア流路25が連通されている。ここで、第一通気孔31aは、前述したように、前記摺動部41の移動下限位置よりも下方部位に設けられることから(
図8参照)、該摺動部41の上下移動に関わらず、前記下部内空域21bに連通する。同様に、上部内空域21aとエア流路25とを連通する口部(図示せず)は、前記摺動部41の移動上限位置よりも上方に設けられている。
【0024】
前記圧力弁機構14は、エア流路25を通過する圧縮空気を前記上部内空域21aへ流入させる上部流入状態と、該圧縮空気を前記胴側室30を介して前記下部内空域21bへ流入させる下部流入状態とに変換するものである。具体的には、常態で圧力弁機構14が前記上部流入状態であることから、
図4に示すように前記操作ハンドルの操作により前記開閉弁26を開放状態とすると、エア流路25を通過した圧縮空気が圧力弁機構14を介して上部内空域21aに流入する。これにより、上部内空域21aの内圧が増加して、ハンマー体12の摺動部41が下方移動する。この摺動部41の下方移動に伴って、下部内空域21bと胴側室30との内圧が増加し、該内圧の増加により圧力弁機構14が前記下部流入状態へ変換されて、エア流路25を通過した圧縮空気が胴側室30を介して下部内空域21bに流入する。これにより、
図5に示すように、下部内空域21bの内圧が増加して、ハンマー体12の摺動部41が上方移動する。この摺動部41の上方移動に伴って、上部内空域21aの内圧が増加し、該内圧の増加により圧力弁機構14が前記上部流入状態へ変換されて、エア流路25を通過した圧縮空気が上部内空域21aに流入する。このように前記開閉弁26の開放状態で、圧力弁機構14が前記上部流入状態と下部流入状態とに繰り返し変換されることにより、ハンマー体12の摺動部41が上下方向の往復移動を繰り返す。
尚、こうした圧力弁機構14は、従来から公知のものを適用できることから、詳細につては省略する。
【0025】
また、前記シリンダ11の下部内空域21bには、上下方向に伸縮可能なコイルバネ61が配設されると共に、上部内空域21aには、上下方向に伸縮可能なコイルバネ62が配設されている。本実施例にあって、下部内空域21bのコイルバネ61は、シリンダ11の底部11bとハンマー体12の摺動部41とに弾接され、上部内空域21aのコイルバネ62は、天井部11cと該摺動部41とに弾接されている。これらコイルバネ61,62により、前記した圧縮空気の上部内空域21aへの流入に伴って上下移動するハンマー体12の摺動部41が、シリンダ11の天井部11cと底部11bとに衝突することを防止できると共に、該摺動部41の上下移動により生ずる振動を軽減することができる。
【0026】
ここで、こうしたコイルバネ61,62の弾性力(弾性係数)と、上部内空域21aおよび下部内空域21bに流入する圧縮空気の流入圧とにより、シリンダ11の内部空域21を前記摺動部41が上下移動可能な移動下限位置(
図8参照)と移動上限位置とが定まる。
尚、本実施例にあって、前記移動下限位置は、摺動部41が移動できる最下限位置であり、前述した圧縮空気の流入により摺動部41が上下に往復移動する際における下限位置(
図5(A)参照)に比して下方にある。同様に、前記移動上限位置は、摺動部41が移動できる最上限位置であり、前述した圧縮空気の流入により往復移動する際における上限位置(
図4(A)参照)に比して上方にある。すなわち、前記圧縮空気の流入時に、摺動部41は、移動下限位置と移動上限位置との間で、該移動下限位置と移動上限位置との間隔よりも狭い所定ストロークによって上下方向に往復移動する。こうしたストロークは、圧縮空気の流量や内部空域21の容積などにより定められる。
【0027】
また、シリンダ11の胴部11aには、前記下部内空域21bと外部とを連通する細孔部65が設けられている。ここで、細孔部65は、その孔断面積(空気の通過面積)が前記第一通気孔31aおよび第二通気孔31bの孔断面積に比して小径となるように形成されている。これにより、ハンマー体12の摺動部41が下方移動する際には、下部内空域21bの空気が第一通気孔31aや第二通気孔31bを通って胴側室30へ流入し易く、また、胴側室30を介して流入した圧縮空気により下部内空域21bの内圧を安定して増加させ得る。このように圧縮空気の流入により生ずる下部内空域21bの圧力変換に対して、細孔部65の影響(該細孔部65を介した外部への空気流出)を可及的に抑制できることから、前述したように、ハンマー体12の摺動部41を安定して繰り返し往復移動させることができる。
【0028】
次に、前述のエアシリンダ型打撃工具1を備えたハンマー打撃装置81について説明する。
図3に示すように、ハンマー打撃装置81は、前記エアシリンダ型打撃工具1のハンマー体12により打撃される打撃対象物(図示せず)を載置する載置台82と、該載置台82の上方位置に該エアシリンダ型打撃工具1を固定する固定支持部材83とを備える。
【0029】
載置台82は、水平方向に沿った上面82aを備え、該上面82aに前記打撃対象物が載置されるものである。一方、固定支持部材83は、前記載置台82の上面82aから所定高さ位置に前記エアシリンダ型打撃工具1を位置決めして固定するものであり、ボルト等の固定手段により該エアシリンダ型打撃工具1を固定する。エアシリンダ型打撃工具1は、ハンマー体12の打撃部43を下向きとし且つシリンダ11(内部空域21)の長手方向が垂直方向に沿うように、前記固定支持部材83に固定される。そして、エアシリンダ型打撃工具1を固定する前記高さ位置は、
図8に示すように、該エアシリンダ型打撃工具1のハンマー体12の摺動部41を前記移動下限位置とした場合に該ハンマー体12の打撃部43が載置台82の上面82aに当接するように設定されている。
【0030】
次に、本実施例のハンマー打撃装置81を構成するエアシリンダ型打撃工具1の作動について説明する。
エアシリンダ型打撃工具1のエア供給口23には、圧縮空気を供給するコンプレッサー等のエア供給装置(図示せず)が接続される。そして、このエア供給口23に圧縮空気が供給される状態で、
図4に示すように、操作ハンドル13が操作されて、エア流路25が開放状態となると、該エア流路25から圧力弁機構14を介して圧縮空気がシリンダ11の上部内空域21aに流入される。このようにエア流路25の開放状態では、前述したように圧力弁機構14が前記上部流入状態と下部流入状態とに繰り返し変換されることにより、ハンマー体12が上下に繰り返し往復移動する(
図4,5参照)。
【0031】
こうしたハンマー体12の上下動により、載置台82の上面82aに載置した打撃対象物を、該ハンマー体12の打撃部43により繰り返し打撃できる。ハンマー体12の上下動を停止する際には、前記操作ハンドル13を操作して、エア流路25を閉鎖状態とする。これにより、シリンダ11の上部内空域21aと下部内空域21bとへの圧縮空気の流入が停止して、ハンマー体12が停止する(
図6参照)。このようにエアシリンダ型打撃工具1の操作ハンドル13を操作することにより、載置台82に載置する打撃対象物を取り替えることができ、複数の打撃対象物を順次打撃することができる。
【0032】
一方、打撃対象物への打撃作業を止める際には、操作ハンドル13の操作により圧縮空気の供給を停止し、さらに前記エア供給装置を停止させる。こうしてエアシリンダ型打撃工具1を作動停止した際には、ハンマー体12の停止位置がエア供給の停止タイミングによって異なる。例えば、
図6に示すように、ハンマー体12の停止位置がシリンダ11の内部空域21の上端寄り位置(換言すると、上部内空域21aの容積が下部内空域21bよりも大きくなる位置)となる場合もある。この場合には、ハンマー体12の打撃部43が載置台82の上面82aから上方に離間した位置で停止する。
【0033】
このように作動停止した状態では、シリンダ11の上部内空域21aと下部内空域21bとに空気の流入が無いが、該下部内空域21bの空気が前記細孔部65を介して外部へ流出することから、下部内空域21bの内圧が徐々に低下する。ここで、細孔部65は、前述したように孔径が小さいことから、下部内空域21bから空気流出が比較的緩やかに進む。そのため、下部内空域21bの内圧低下も比較的緩やかに進行し、
図7に示すように、ハンマー体12が徐々に降下していく。さらに、ハンマー体12の降下速度は、シリンダ11の下部内空域21bに配設されたコイルバネ61の弾性力によっても抑えられることから、該ハンマー体12は、一層ゆっくりと降下する。
この後、
図8に示すように、ハンマー体12の摺動部41が前記移動下限位置となるに伴って、該ハンマー体12の打撃部43が載置台82の上面82aに当接する。そしてことき、コイルバネ61は弾縮状態となり、該コイルバネ61によってハンマー体12が下から支持された状態となる。これにより、ハンマー体12の降下が停止し、この状態で保持される。
【0034】
尚、前記した細孔部65とコイルバネ61,62とを備えない構成(以下、比較例の構成という)について説明する。この比較例の構成は、細孔部65とコイルバネ61,62との他は実施例と同じ構成であり、前述した従来構成に相当する。
かかる比較例の構成にあっても、実施例と同様に、操作ハンドルの操作により圧縮空気を流入することにより、ハンマー体を上下に往復移動させて、打撃対象物を繰り返し打撃することができる。そして、圧縮空気の供給停止により、ハンマー体の摺動部がシリンダの内部空域の上端寄り位置で停止した場合には、前記実施例と同様に、ハンマー体の打撃部が載置台の上面から上方に離間した位置で停止する。この作動停止状態では、シリンダの上部内空域と下部内空域とが圧力弁機構を介して閉鎖回路を構成することから、ハンマー体が前記停止位置で一時的に停留するものの、該ハンマー体が自重により徐々に降下して下部内空域および胴側室の内圧が増加する。そして、下部内空域21bおよび胴側室30の内圧が圧力弁機構を作動させる圧力に達すると、下部内空域21bから上部内空域21aへ空気が流れ、該下部内空域21bの減圧と上部内空域21aの増圧とが急激に進む。これにより、ハンマー体が急速降下して、該ハンマー体の打撃部が載置台の上面に衝突する。このため、載置台の上面が傷付く虞があると共に、作動停止後に載置台に部材を置いていた場合に当該部材が傷付いてしまう。
【0035】
こうした比較例の構成に対して、本実施例の構成は、前述したように作動停止した状態でハンマー体12が徐々に降下することから(
図6~8参照)、載置台82の上面82aを傷付けてしまうことを抑制できる。さらに、作動停止後に載置台82に部材を置いていた場合にも当該部材が傷付くことを抑制できる。さらに、作動停止後にハンマー体12が降下して載置台82に当接することから、該載置台82上にゴミが付着したり、前記した部材が置かれたりすることを防止できるという優れた利点もある。
【0036】
さらに、本実施例の構成にあっては、シリンダ11の上部内空域21aと下部内空域21bとにコイルバネ61,62を夫々配設したことから、ハンマー体12の往復移動により生ずる振動を抑制することができる。そのため、前記振動によってエアシリンダ型打撃工具1を固定支持部材83に固定する固定手段が緩んでしまうことを抑制でき、該エアシリンダ型打撃工具1を所望の固定位置に位置決めした状態を比較的長期に亘って保持できる。
【0037】
前述した実施例にあって、操作ハンドル13と開閉弁26とにより、本発明にかかる操作手段が構成されている。そして、エア流路25の開放状態が、本発明の作動状態に相当し、閉鎖状態が、本発明の停止状態に相当する。また、圧力弁機構14により、本発明にかかる圧力変換手段が構成されている。また、下部内空域21bに配設されたコイルバネ61により、本発明にかかるバネ部材が構成されている。
【0038】
本発明にあっては、前述した実施例に限定されるものではなく、上述した実施例以外であっても本発明の趣旨の範囲内で適宜変更した構成を実施可能である。
例えば、シリンダ11の上部内空域21aにコイルバネを配設しない構成とすることもできる。また、上部内空域21aと下部内空域21bとに夫々配設するコイルバネ61,62に代えて、板バネ等を配設した構成することも可能である。
【0039】
また、実施例にあって、圧力弁機構14は、これに限定されず、圧縮空気の流入先を上部内空域21aと下部内空域21bとに変換する機能を有する構成であれば、様々な構成のものを適用可能である。さらに、上部内空域21aと下部内空域21bとの内圧を交互に増圧または減圧させる機能を有するものであれば、圧力弁機構14の他の構成も適用可能である。例えば、上部内空域21aと下部内空域21bとの内圧を夫々検出するセンサと、該センサにより作動される電磁弁とを備え、該電磁弁によりエア流路25を該上部内空域21aと連通する状態と該下部内空域21bと連通する状態とに変換する構成とすることができる。
【0040】
また、実施例のハンマー打撃装置81は、ハンマー体12の摺動部41が移動下限位置にある際に該ハンマー体12の打撃部43が載置台82の上面82aに当接するように配設された構成であるが、これに限らず、例えば、摺動部41が移動下限位置の直上位置にある際に打撃部43が載置台82の上面82aに当接するように配設された構成としても良い。
【0041】
また、実施例では、ハンマー体12を往復作動させるストロークが、摺動部41の移動下限位置と移動上限位置との間隔よりも狭く設定したものであるが、これに限らず、該移動下限位置と移動上限位置との間でハンマー体12を上下に往復移動させる構成とすることもできる。
【0042】
また、実施例では、エアシリンダ型打撃工具1がハンマー打撃装置81を構成するものとしたが、これに限らず、該エアシリンダ型打撃工具1を所定の作業場所に持ち運んで使用することもできる。この場合には、エアシリンダ型打撃工具1を単独で用いることから、作業者が持って操作することになる。このようにエアシリンダ型打撃工具1を単独で使用する場合にあっても、該エアシリンダ型打撃工具1を保管する際に、ハンマー体12の打撃部43を下向きにした状態で保管すると、前記実施例と同様に、ハンマー体12がゆっくりと移動下限位置まで降下する。これにより、他の部材上にエアシリンダ型打撃工具1を保管した場合に、降下したハンマー体12によって当該部材を傷つけてしまうことを抑制できる。
【符号の説明】
【0043】
1 エアシリンダ型打撃工具
11 シリンダ
12 ハンマー体
13 操作手段
14 圧力弁機構
41 摺動部
42 杆部
43 打撃部
61 コイルバネ
81 ハンマー打撃装置
82 載置台