(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】誘導性T細胞レセプター及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20240104BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20240104BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20240104BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20240104BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240104BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240104BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240104BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240104BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240104BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240104BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240104BHJP
A61K 47/62 20170101ALI20240104BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/725 ZNA
C12N15/10 200Z
C12N15/867 Z
C12P21/02 C
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K48/00
A61K38/17
A61K35/76
A61K35/17
A61K47/62
C12N5/10
(21)【出願番号】P 2020548789
(86)(22)【出願日】2019-03-13
(86)【国際出願番号】 EP2019056228
(87)【国際公開番号】W WO2019175209
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-01-28
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517419917
【氏名又は名称】メディジーン イミュノテラピーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ミロシェヴィッチ,スラヴォリュブ
(72)【発明者】
【氏名】ニーヴス,アドリアーナ
(72)【発明者】
【氏名】ショーデル,クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,アレクサンダー
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/158116(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/135470(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/098078(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00- 15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の核酸分子を含む組成物であって、前記1つ以上の核酸分子が、
(a)
(i)配列番号2と少なくとも90%同一のアミノ酸配列であって、配列番号2と比較して位置44及び/又は47にアミノ酸置換を場合により含むアミノ酸配列をコードする核酸配列、及び
(ii)配列番号2と少なくとも90%同一のアミノ酸配列をコードする前記核酸配列に下流連結された誘導性二量体化ドメインをコードする核酸配列
を含む核酸配列A;並びに
(b)
(i)配列番号4と少なくとも90%同一のアミノ酸配列であって、配列番号4と比較して位置4、5、37、63、77及び79からなる群より選択される位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を含むアミノ酸配列をコードする核酸配列、及び
(ii)配列番号4と少なくとも90%同一のアミノ酸配列をコードする前記核酸配列に下流連結された誘導性二量体化ドメインをコードする核酸配列であって、該二量体化ドメインが、(a)(i)の配列番号2と少なくとも90%同一のアミノ酸配列をコードする核酸配列に連結された二量体化ドメインに対応する、核酸配列
を含む核酸配列B
を含み、
(a)(i)の配列番号2と少なくとも90%同一の前記アミノ酸配列が、配列番号2と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、組成物。
【請求項2】
前記核酸配列A及び前記核酸配列Bが、別個の核酸分子により含まれるか、又は1つの核酸分子中に含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(a)(a)(i)の前記核酸配列が、配列番号2のアミノ酸配列と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含むアミノ酸配列をコードし、前記置換が、T44A及びT47Aからなる群より選択され;並びに/又は
(b)(b)(i)の前記核酸配列が、配列番号4のアミノ酸配列と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含むアミノ酸配列をコードし、前記置換が、K4V、N5P、Y37K、L63A、S77A及びR79Aからなる群より選択される、
請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(c)(a)(i)の前記核酸配列が、配列番号2のアミノ酸配列と比較して2つのアミノ酸置換を含むアミノ酸配列をコードし、前記2つの置換が、T44A及びT47Aであり;並びに
(d)(b)(i)の前記核酸配列が、配列番号4のアミノ酸配列と比較して3つのアミノ酸置換を含むアミノ酸配列をコードし、前記3つの置換が、K4V、N5P及びY37K又はL63A、S77A及びR79Aである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記二量体化ドメインが、ホモ二量体化ドメイン又はヘテロ二量体化ドメインである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記二量体化ドメインが、ERT2、FKBP、カルシニューリンA(CNA)、CyP-Fas、GyrB、GAI、GID1、Snap-tag、HaloTag、eDHFR及びmTORのFRBドメインからなる群より選択されるホモ二量体化ドメイン又はヘテロ二量体化ドメインである、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項で定義される前記核酸配列A及び前記核酸配列Bを含む発現カセット、又は少なくとも2つの発現カセットであって、少なくとも1つの発現カセットが、請求項1~6のいずれか一項で定義される前記核酸配列Aを含み、少なくとも1つの発現カセットが、請求項1~6のいずれか一項で定義される前記核酸配列Bを含む少なくとも2つの発現カセット。
【請求項8】
1つ以上の請求項7で定義される発現カセットを含むベクターであって、レトロウイルスベクター又はレンチウイルスベクターである、ベクター。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物、請求項7に記載の発現カセット又は請求項8に記載のベクターと、請求項1~6のいずれか一項で定義される配列番号2と少なくとも90%同一のアミノ酸配列をコードする前記核酸配列に連結された前記二量体化ドメイン及び配列番号4と少なくとも90%同一のアミノ酸配列をコードする前記核酸配列に連結された前記二量体化ドメインに対応する二量体化剤とを含むキットであって、前記二量体化剤が前記二量体化ドメインの二量体化を誘導することができる、キット。
【請求項10】
前記二量体化剤が、4-ヒドロキシタモキシフェン、エンドキシフェン、4-(1-[4-(ジメチルアミノエトキシ)フェニル]-2-フェニル-1-ブテニル)フェニル、AP21967及び23,27-エポキシ-3H-ピリド[2,1-c][1,4]オキサアザシクロヘントリアコンチン、FK1012、FK506、FKCsA、ラパマイシン、クーママイシン、ジベレリン、HaXS並びにTMP-HTagからなる群より選択される、請求項9記載のキット。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか一項で定義される前記核酸配列A及び前記核酸配列B、請求項7で定義される発現カセット又は請求項8で定義されるベクターを含む宿主細胞であって、宿主細胞は、Tリンパ球であり、請求項9で定義される前記二量体化剤を含む、宿主細胞。
【請求項12】
Tリンパ球が、ヒトTリンパ球である、請求項11に記載の宿主細胞。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか一項で定義される前記核酸配列A及び前記核酸配列Bによりコードされる、タンパク質。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか一項で定義される前記核酸配列Aによりコードされるタンパク質及び前記核酸配列Bによりコードされるタンパク質を二量体化するための、請求項9で定義される二量体化剤の使用。
【請求項15】
二量体化剤が、エンドキシフェンである、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
請求項1~6のいずれか一項で定義される前記核酸配列Aによりコードされるタンパク質及び前記核酸配列Bによりコードされるタンパク質を二量体化するための方法であって、請求項9で定義される前記二量体化剤を前記タンパク質に追加する工程を含む、方法。
【請求項17】
誘導性T細胞レセプターを調製するための方法であって、請求項1~6のいずれか一項で定義される前記核酸配列A及び前記核酸配列B、請求項7で定義される発現カセット又は請求項8で定義されるベクターを、前記核酸配列A及び前記核酸配列Bの発現を可能にする条件下で宿主細胞にin vitroで導入する工程を含む、方法。
【請求項18】
T細胞療法において使用するための、請求項1~6のいずれか一項で定義される組成物、請求項7で定義される発現カセット、請求項8で定義されるベクター、請求項11で定義される宿主細胞又は請求項13で定義されるタンパク質。
【請求項19】
ガンの処置において使用するための、請求項1~6のいずれか一項で定義される組成物、請求項7で定義される発現カセット、請求項8で定義されるベクター、請求項11で定義される宿主細胞又は請求項13で定義されるタンパク質。
【請求項20】
前記ガンが、固形ガン又は血液ガンである、請求項19に記載の組成物、発現カセット、ベクター、宿主細胞又はタンパク質。
【請求項21】
請求項1~6のいずれか一項で定義される組成物、請求項7で定義される発現カセット、請求項8で定義されるベクター、請求項11で定義される宿主細胞又は請求項13で定義されるタンパク質を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導性T細胞レセプター(をコードする核酸)、このような誘導性T細胞レセプター(コードする核酸)を含む組成物及びキット、ベクター及び宿主細胞、誘導性T細胞レセプター及びこのようなT細胞レセプターを含む宿主細胞の調製におけるそれらの使用、このような誘導性T細胞レセプターを調製するための及びT細胞レセプターを二量体化するための方法、並びに特にガンを処置するためのこのような化合物及びそれらを含む医薬組成物の医療用途に関する。特に、本発明は、特許請求の範囲で定義されるように、1つ以上の核酸分子を含む組み合わせであって、前記1つ以上の核酸分子が、二量体化ドメインに連結されたTCRアルファ鎖をコードする核酸配列Aと、二量体化ドメインに連結されたTCRベータ鎖をコードする核酸配列Bとを含む組み合わせ、並びにこのような核酸分子によりコードされるタンパク質、並びに対応する使用及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
強力なT細胞療法の開発はまた、オンターゲット及びオフターゲット副作用などの有害事象のリスクの増加を伴う。T細胞療法がより効率的になるにつれて、サイトカイン放出症候群などの急性毒性はより明白になった。安全な養子T細胞療法のために、遺伝子改変T細胞をコントロールする能力が非常に重要である。遺伝子改変T細胞をコントロールする方法の開発は、集中的な研究の対象になっている。T細胞抑制薬の投与は、一般に、不完全かつ非特異的である。自殺遺伝子などのさらなる安全スイッチを用いたT細胞の操作は、最終的には、それらの細胞のほとんどの枯渇につながっている。しかしながら、その結果として起こる基本アポトーシスの増加及び残りのT細胞のエクスパンションは、その有効性を制限する可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
したがって、本発明の根底にある技術的問題は、上記目的に対応することであった。技術的問題は、本明細書に記載され、実施例に示され、特許請求の範囲で定義される手段及び方法により解決された。
【0004】
本発明者らは上記問題に取り組み、コントロール可能なTCRタンパク質発現を誘発するリコンビナントT細胞レセプター(TCR)の改変を開発した。本発明の誘導性TCRは、定常アルファ及び/又はベータ鎖における突然変異を含み、両鎖の対形成の喪失をもたらす。加えて、本発明の誘導性TCRは、定常アルファ鎖及びベータ鎖の下流に付加された二量体化ドメインを含む。二量体化ドメインは、二量体化剤の追加に応じた条件付き二量体化状態を特徴とする。各二量体化剤を用いた二量体化の誘導により、所定のTCRの膜発現が達成される。
【0005】
したがって、本発明は、リコンビナント抗原特異的T細胞レセプター(TCR)の改変であって、前記抗原特異的リコンビナントTCRのタンパク質膜発現のコントロールを誘発する改変を提供する。さらなる態様では、本発明は、このようなTCR改変をコードする核酸、このような核酸を含むベクター、このようなベクター及び核酸を含む宿主細胞、並びにそれらの様々な使用及び用途を提供する。
【0006】
具体的には、驚くべきことに本発明との関連で見出されたように、TCRのC末端定常アルファ及び/又はベータ鎖における点突然変異は、2つの鎖の自然対形成の抑制又は阻害をもたらす。その結果として、TCRは、T細胞レセプター複合体CD3と一緒に正しく対形成したアルファ及びベータ鎖の複合体を形成し得ない。したがって、リコンビナントT細胞の表面上で発現されるTCRがないか又はごく少数であることにより、T細胞は、抗原を認識することができず、その後、機能をトリガーすることができない。
【0007】
加えて、二量体化剤の追加によるTCRの二量体化を可能にするために、二量体化ドメインは、TCRのアルファ及びベータ鎖の定常領域の下流に導入され、二量体化ドメイン及び二量体化剤は、点突然変異によるTCRの対形成の抑制/阻害を克服する。したがって、オーバーレイの原理は、TCRアルファ及びベータ鎖の誘導された二量体化、例えば化学的に誘導された二量体化(CID)であり、二量体化剤の非存在下では、鎖は対形成しない。
【0008】
したがって、本発明は、それぞれ定常アルファ及びベータ鎖の下流に二量体化ドメインを有する誘導性T細胞レセプター(TCR)であって、二量体化剤による誘導により、二量体化して細胞膜の表面上で発現される誘導性T細胞レセプター(TCR)に関する。
【0009】
一態様では、本発明は、1つ以上の核酸分子を含む組み合わせであって、前記1つ以上の核酸分子が、
(a)(i)配列番号2と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97,5%、98%、98,5%又は99%同一のアミノ酸配列をコードする核酸配列、及び(ii)配列番号2と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97,5%、98%、98,5%又は99%同一のアミノ酸配列をコードする前記核酸配列に下流連結された誘導性二量体化ドメインをコードする核酸配列を含む核酸配列A;並びに(b)(i)配列番号4と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98,5%又は99%同一のアミノ酸配列をコードする核酸配列、及び(ii)(a)(ii)の配列番号2と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97,5%、98%、98,5%又は99%同一のアミノ酸配列をコードする前記核酸配列に連結された前記二量体化ドメインの局在化と同様に、配列番号4と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97,5%、98%、98,5%又は99%同一のアミノ酸配列をコードする前記核酸配列に下流連結された誘導性二量体化ドメインであって、(a)(ii)の配列番号2と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97,5%、98%、98,5%又は99%同一のアミノ酸配列をコードする前記核酸配列に連結された前記二量体化ドメインに対応する誘導性二量体化ドメインをコードする核酸配列を含む核酸配列B
を含み、(a)(i)の配列番号2と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97,5%、98%、98,5%若しくは99%同一の前記アミノ酸配列が、配列番号2と比較して少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのアミノ酸置換を含み、及び/又は(b)(i)の配列番号4と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97,5%、98%、98,5%若しくは99%同一の前記アミノ酸配列が、配列番号4と比較して少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つのアミノ酸置換を含む組み合わせに関する。
【0010】
本発明によれば、それぞれ(TCR定常アルファ鎖をコードする)配列番号2又は(TCR定常ベータ鎖対立遺伝子2をコードする)配列番号4と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97,5%、98%、98,5%又は99%同一のアミノ酸配列をコードする前記核酸配列に下流連結された誘導性二量体化ドメインをコードする核酸配列を含む核酸配列A又はBの記載はまた、前記核酸配列A又はBによりコードされる対応するアミノ酸配列(すなわち、タンパク質)が、それぞれ配列番号2又は4と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97,5%、98%、98,5%若しくは99%同一のアミノ酸配列をコードする前記核酸配列によりコードされるアミノ酸配列(すなわち、タンパク質)に下流連結された誘導性二量体化ドメインを含むことを意味する。換言すれば、TCR定常アルファ又はベータ鎖及び二量体化ドメインをコードするコード核酸配列は連結されているだけではなく、コード及び発現されるアミノ酸配列及びしたがってポリペプチドも連結されている(すなわち、それぞれ、誘導性二量体化ドメインに連結されたTCR定常アルファ鎖を含むタンパク質、及び/又は誘導性二量体化ドメインに連結されたTCR定常ベータ鎖を含むタンパク質をもたらす)。本発明との関連で理解されるように、配列番号2又は4と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97,5%、98%、98,5%又は99%同一のアミノ酸配列をコードする前記核酸配列は、それぞれTCR定常アルファ又はベータ鎖をコードする。核酸配列A及びB(及びしたがって前記配列を含む核酸分子)によりコードされるアミノ酸配列(すなわち、タンパク質)は、好ましくは、本発明との関連では、それぞれ誘導性二量体化ドメインを含むTCRアルファ及びベータ鎖(各可変及び定常領域を含む)をコードすると理解されるので、本明細書に記載される誘導性TCRの提供及び調製に適切である。
【0011】
本発明によれば、核酸配列Aは、好ましくは、可変及び定常領域を含むTCRアルファ鎖をコードし、核酸配列Bは、好ましくは、可変及び定常領域を含むTCRベータ鎖をコードする。当技術分野で公知であるように、TCRは、アルファ及びベータ鎖から主に構成され、各鎖は、可変及び定常領域を含み、TCRは、隣接膜貫通領域及び細胞質領域をさらに含む。定常領域は、TCRの可変領域の下流及び細胞膜の近位に位置し、続いて膜貫通領域及び短い細胞質領域がある。アルファ及びベータ鎖の定常領域は、通常、細胞外ドメインにおけるシステインベースのジスルフィド結合により対形成する(例えば、Glusman et al., Immunity (2001), 15: 337-349; Call et al., Cell (2002), 111: 967-979を参照のこと)。本発明の要点は、TCRのアルファ及び/又はベータ鎖の定常領域が、アルファ及びベータ鎖の前記対形成の喪失をもたらす1つ以上の突然変異を含むことにある(すなわち、核酸配列Aにより含まれる対応するTCR定常アルファ鎖をコードする配列番号2と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、9697%、97,5%、98%、98,5%又は99%同一のアミノ酸配列、及び核酸配列Bにより含まれる対応するTCR定常ベータ鎖をコードする配列番号4と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97,5%、98%、98,5%又は99%同一のアミノ酸配列、ここで、前記鎖は、TCR定常アルファ及び/又はベータ鎖における1つ以上の突然変異により、対形成能力障害を示す)。したがって、それぞれ配列番号1及び/又は3と比較した核酸配列A及び/又はBにより含まれるヌクレオチド差異であって、本明細書に記載されるアミノ酸置換をもたらすヌクレオチド差異は、好ましくは、TCRのアルファ及び/又はベータ鎖の自然対形成の喪失をもたらす。本発明によれば、この自然対形成の喪失は、核酸配列A及びBに導入される配列によりコードされる二量体化ドメインを介した誘導された(コントロールされた)二量体化により克服され得、前記二量体化ドメインは、本明細書に記載される適切な二量体化剤の追加により二量体化する。すなわち、適切な二量体化剤の追加により誘導されない限り、前記二量体化ドメインは二量体化しないか又は少なくとも実質的に二量体化しないので、誘導性二量体化ドメインとも称される。したがって、本明細書に記載及び提供される核酸分子の組み合わせは、本明細書に記載される二量体化剤の追加により誘導され得る(すなわち、各アルファ及びベータ鎖の二量体化の誘導)誘導性TCR(iTCR)の調製を提供するか、又はそれに使用され得る。本明細書で使用される場合、「組み合わせ」という用語はまた、前記核酸分子の1つ以上が組み合わせで含まれるか又は一緒にされた「組成物」を含み得るか又は「組成物」と称され得る。
【0012】
本明細書に記載される核酸分子の核酸配列Aは、配列番号2(TCRアルファ鎖のヒト定常領域のaa配列をコードする配列番号2)と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97,5%、98%、98,5%又は99%、好ましくは少なくとも97,5%、98%、98,5%又は99%、より好ましくは少なくとも98,5%又はさらに99%同一のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。本明細書に記載される核酸分子の核酸配列Bは、配列番号4(TCRベータ鎖のヒト定常領域のaa配列をコードする配列番号4)と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97,5%、98%、98,5%又は99%、好ましくは少なくとも97,5%、98%、98,5%又は99%、より好ましくは少なくとも98%又はさらに98.5%同一のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。本発明との関連では、配列番号2と比較したアミノ酸置換は、好ましくは、保存的アミノ酸置換である。保存的アミノ酸置換は当技術分野で公知であり、特定の物理的及び/又は化学的特性を有するあるアミノ酸が、同じ化学的又は物理的特性を有する別のアミノ酸と交換されたアミノ酸置換が挙げられる。例えば、保存的アミノ酸置換は、例えば、酸性アミノ酸が別の酸性アミノ酸で置換されたもの、非極性側鎖を有するアミノ酸が非極性側鎖を有する別のアミノ酸で置換されたもの、塩基性アミノ酸が別の塩基性アミノ酸で置換されたもの、極性側鎖を有するアミノ酸が極性側鎖を有する別のアミノ酸で置換されたものなどであり得、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性及び/又は両親媒性における類似性に基づいて作製され得る。例えば、「保存的」置換は、以下の表Iにおいて「例示的な置換」として掲載されている置換を意味し得る。本明細書で使用される場合、「高度に保存的な」置換は、以下の表Iにおいて「好ましい置換」という見出しで示されている置換を意味する。
【表1】
【0013】
本発明の一実施態様では、(a)(i)の配列番号2と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97,5%、98%、98,5%若しくは99%(好ましくは、少なくとも98,5又は99%%)同一の前記アミノ酸配列は、配列番号2と比較して位置44及び/若しくは47にアミノ酸置換を含み、並びに/又は(b)(i)の配列番号4と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97,5%、98%、98,5%又は99%(好ましくは、少なくとも98%又は98,5%)同一の前記アミノ酸配列は、配列番号4と比較して位置4、5、37、63、77及び/若しくは79にアミノ酸置換を含む。本発明の一実施態様では、配列番号2と比較した位置44及び/又は47のアミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換である。
【0014】
配列番号2に示されるアミノ酸配列は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列によりコードされ得る。したがって、配列番号2と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97,5%、98%、98,5%又は99%(好ましくは、少なくとも98,5%又は99%)同一のアミノ酸配列であって、本明細書に記載される(a)(i)の核酸配列によりコードされるアミノ酸配列は、各ヌクレオチド配列が、配列番号2と比較した対応するアミノ酸置換をもたらすために置き換えられた配列番号1のヌクレオチド配列によりコードされ得る。配列番号2のアミノ酸配列はまた、1つ以上のヌクレオチドが置き換えられた配列番号1のヌクレオチド配列によりコードされ得、このような置き換えは、アミノ酸置換に翻訳されない(サイレント突然変異)。したがって、配列番号2と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97,5%、98%、98,5%又は99%(好ましくは、少なくとも98%又は98,5%)同一のアミノ酸配列をコードする核酸配列は、各ヌクレオチド配列が、配列番号2と比較した対応するアミノ酸置換をもたらすために置き換えられた配列番号1のヌクレオチド配列であって、アミノ酸置換をもたらさないさらなるヌクレオチド置き換えをさらに含むヌクレオチド配列に対応し得る。
【0015】
同様に、配列番号4に示されるアミノ酸配列は、配列番号3に示されるヌクレオチド配列によりコードされ得る。したがって、配列番号4と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97,5%、98%、98,5%又は99%(好ましくは、少なくとも98,5%又は99%)同一のアミノ酸配列であって、本明細書に記載される(b)(i)の核酸配列によりコードされるアミノ酸配列は、各ヌクレオチド配列が、配列番号4と比較した対応するアミノ酸置換をもたらすために置き換えられた配列番号3のヌクレオチド配列によりコードされ得る。配列番号4のアミノ酸配列はまた、1つ以上のヌクレオチドが置き換えられた配列番号3のヌクレオチド配列によりコードされ得、このような置き換えは、アミノ酸置換に翻訳されない(サイレント突然変異)。したがって、配列番号4と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97,5%、98%、98,5%又は99%(好ましくは、少なくとも98%又は98,5%)同一のアミノ酸配列をコードする核酸配列は、各ヌクレオチド配列が、配列番号4と比較した対応するアミノ酸置換をもたらすために置き換えられた配列番号3のヌクレオチド配列であって、アミノ酸置換をもたらさないさらなるヌクレオチド置き換えをさらに含むヌクレオチド配列に対応し得る。
【0016】
表2は、ヒトTCRのアルファ及びベータ鎖のアルファ及びベータ定常領域(それぞれ、配列番号2及び4を参照のこと)の両方に導入されたアミノ酸変化を示し、(TCR定常アルファ鎖の)配列番号2及び(TCR定常ベータ鎖の)配列番号4と比較したアミノ酸配列の変化は、実施例1~6に見られ得るように、アルファ及びベータ鎖対形成の障害をもたらすが、TCRのアルファ鎖とCD3イプシロン及びデルタサブユニットとの正確なアセンブリ、並びにTCRのベータ鎖とCD3ガンマ及びイプシロンサブユニットとのアセンブリを依然として可能にする。置換のアミノ酸位置は、
図11及び12に示されているように、配列表を参照して、及びIMGTナンバリングシステムを参照して示されている。当業者には明らかであるように、IMGTナンバリングにしたがって、位置84.1は、ヒトTCRアミノ酸配列の位置84と85との間の位置である(Lefranc, M.-P., Immunology Today 18, 509 (1997))。
【表2】
【0017】
表
3は、ヒトTCRのベータ定常領域(配列番号4)に導入されたアミノ酸変化を示し、(TCR定常ベータ鎖の)配列番号4と比較したアミノ酸配列の変化は、実施例7及び8に見られ得るように、アルファ及びベータ鎖対形成の障害をもたらすが、TCRのアルファ鎖とCD3イプシロン及びデルタサブユニットとの正確なアセンブリ、並びにTCRのベータ鎖とCD3ガンマ及びイプシロンサブユニットとのアセンブリを依然として可能にする。C1及びC2と称されるTCRベータ鎖定常領域の2つの対立遺伝子がある。置換のアミノ酸位置は、
図12に示されているように、配列表を参照して、及びIMGTナンバリングシステムを参照して示されている。以下の表
3は、ベータ定常鎖の2つの対立遺伝子間の差異を示す。配列番号4は、位置4、5及び37(以下の表に示されているIMGTナンバリングを使用した場合には1.3、1.4及び29)のアミノ酸K、N及びYを示すC2定常鎖を指すが、
図12は、C1定常鎖を示す。表
3に概説されている位置における定常鎖の突然変異は、アルファ及びベータ鎖の対形成の減少をもたらす。
【表3】
【0018】
本発明の一実施態様では、それぞれ核酸配列A及びBに下流連結された前記二量体化ドメインは、好ましくはTCRの発現及び局在化後に細胞質領域で発現されると、TCRのC末端に位置する。これとの関連では、当業者には明らかであるように、TCRは、通常、(CD3複合体との)アルファ及びベータ鎖の複合体形成後に(例えば、Call et al., loc. cit.を参照のこと)、すなわち、本明細書で定義及び提供される核酸配列A及びBによりコードされる前記二量体化ドメインの二量体化後に、細胞の膜に局在化する。
【0019】
本発明の一実施態様では、本明細書に記載及び提供される組み合わせ(又は組成物)について、前記核酸配列A及び核酸配列Bは、別個の核酸分子により含まれ得るか、又は1つの核酸分子中に含まれ得る。例えば、核酸配列A及びBは、同じ核酸分子、例えば発現カセット上に位置し得る。このような発現カセットでは、核酸配列A及びBは、好ましくは、同程度の量の発現を可能にするために、同じ発現コントロール下、例えば同じプロモーター又は同じプロモータータイプのコントロール下にあり得る。
【0020】
本発明の一実施態様では、(a)(i)の前記核酸配列は、配列番号2と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97,5%、98%、98,5%又は99%(好ましくは、少なくとも98,5%又は99%)同一のアミノ酸配列であって、配列番号2のアミノ酸配列と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含むアミノ酸配列をコードし、前記置換は、T44A及びT47Aからなる群より選択され;並びに/又は(b)(i)の前記核酸配列は、配列番号4と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97,5%、98%、98,5%又は99%(好ましくは、少なくとも98%又は98,5%)同一のアミノ酸配列であって、配列番号4のアミノ酸配列と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含むアミノ酸配列をコードし、前記置換は、L63A、S77A及びR79Aからなる群より選択される。別の実施態様では、(b)(i)の前記核酸は、配列番号4と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97,5%、98%、98,5%又は99%(好ましくは、少なくとも98%又は98,5%)同一のアミノ酸配列であって、配列番号4のアミノ酸配列と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含むアミノ酸配列をコードし、前記置換は、K4V、N5P及びY37Kからなる群より選択される。
【0021】
本発明の好ましい一実施態様では、(a)(i)の前記核酸配列は、配列番号2と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97,5%、98%、98,5%又は99%(好ましくは、少なくとも98,5%又は99%)同一のアミノ酸配列であって、配列番号2のアミノ酸配列と比較して2つのアミノ酸置換を含むアミノ酸配列をコードし、前記2つの置換は、T44A及びT47Aであり;並びに(b)(i)の前記核酸配列は、配列番号4と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97,5%、98%、98,5%又は99%(好ましくは、少なくとも98%又は98,5%)同一のアミノ酸配列であって、配列番号4のアミノ酸配列と比較して3つのアミノ酸置換を含むアミノ酸配列をコードし、前記3つの置換は、L63A、S77A及びR79Aである。
【0022】
別の好ましい実施態様では、(a)(i)の前記核酸配列は、配列番号2と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97,5%、98%、98,5%又は99%(好ましくは、少なくとも98,5%又は99%)同一のアミノ酸配列をコードし、(b)(i)の前記核酸配列は、配列番号4と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97,5%、98%、98,5%又は99%(好ましくは、少なくとも98%又は98,5%)同一のアミノ酸配列であって、配列番号4のアミノ酸配列と比較して3つのアミノ酸置換を含むアミノ酸配列をコードし、前記3つの置換は、K4V、N5P及びY37Kである。
【0023】
本発明の一実施態様では、核酸配列Aは、配列番号5に示されるアミノ酸配列をコードする。
【0024】
本発明の一実施態様では、核酸配列Bは、配列番号6に示されるアミノ酸配列をコードする。
【0025】
本発明との関連では、誘導性二量体化ドメインは、二量体化剤の追加により二量体化する二量体化ドメインである。それぞれ核酸配列A及びBによりコードされるアミノ酸配列(すなわち、タンパク質)では、二量体化ドメインは、対形成能力障害を示す(それぞれ配列番号2又は配列番号4と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98,5%又は99%同一の核酸配列によりコードされる)定常アルファ又はベータ鎖の下流(すなわち、C末端)に連結され位置する。好ましくは、誘導性二量体化ドメインは、iTCRの細胞質ドメインに位置する。当業者が把握するように、TCRは小胞体(ER)で形成され、次いで、アルファ及びベータ鎖の対形成により、CD3と複合体形成し、次いで、ゴルジ装置を介して細胞膜/細胞表面に局在化する。本発明との関連では、iTCRのアルファ及びベータ鎖は、本明細書に記載及び提供される各定常領域における突然変異により対形成しないので、誘導性二量体化ドメインを介した二量体化によりERから離脱しない(そして、適切な二量体化剤の追加により二量体化する)。本発明との関連では、誘導性二量体化ドメインは、ホモ又はヘテロ二量体化ドメイン、好ましくはホモ二量体化ドメインであり得る。本発明との関連では、このような二量体化ドメインの適切な例は当技術分野で公知であり、とりわけ、エストロゲンレセプター(例えば、ERT2;Ballister, Publicly Accessible Penn Dissertations (2014), 1202: Inducible Protein Dimerization: New Tools and Applications to Understanding the Mitotic Checkpointを参照のこと)、FKBP(Ballister, loc.citを参照のこと)、FKBP/カルシニューリンA(CNA)(Ho et al., Nature (1996), 382: 822-826を参照のこと); FKBP/CyP-Fas(Belshaw et al., PNAS (1996), 93: 4304-4607を参照のこと)、FKBP/mTORのFRBドメイン(. Ballister, Publicly Accessible Penn Dissertations (2014), 1202: Inducible Protein Dimerization: New Tools and Applications to Understanding the Mitotic Checkpoint)、GyrB(M.A. Farrar et al., Methods in Enzymology, Volume 327, 2000, pages 421-429).)、GAI/GID1(Miyamato et al., Nature Chemical Biology (2012), 8: 465-470)、Snap-Tag/HaloTag(Erhart et al., Chem & Biol (2013), 20: 549-557を参照のこと)及びeDHFR/HaloTag(Ballister et al., Nature Communications 5, Article number: 5475 (2014), doi: 10.1038/ncomms6475)を含む。
【0026】
本発明は、本明細書に記載及び提供される核酸配列A及び核酸配列Bを含む発現カセット、又は少なくとも2つの発現カセットであって、少なくとも1つの発現カセットが本明細書に記載及び提供される核酸配列Aを含み、少なくとも1つの発現カセットが本明細書に記載及び提供される核酸配列Bを含む少なくとも2つの発現カセットに関する。本発明の一実施態様では、核酸配列A及びBは、同じエレメント(例えば、プロモーター及び/又はエンハンサー、オペレーター、リプレッサー及び転写終結シグナルなど)のコントロール下にあり、同じ発現コントロールにより含まれる場合には、同じエレメントの共通のコントロール下にあり得る。プロモーターは、例えば、構成的プロモーター又は誘導性プロモーターであり得る。哺乳動物宿主細胞のための適切なプロモーター/エンハンサーは当技術分野で公知であり、例えば、SV40、AdMLP、メタロチオネインプロモーター、7.5Kプロモーター、MIEP、EF1A、CMV、PGKなどを含む。
【0027】
本発明はさらに、本明細書に記載及び提供される核酸配列A及び/若しくはB又は本明細書に記載及び提供される発現カセットを含むベクターに関する。適切なベクターは、ベクターが導入される(トランスフォーメーション、トランスダクションされる)各宿主細胞に依存し、当技術分野で公知である。本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、限定されないが、プラスミド、ウイルスベクター(レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、ポリオーマウイルスベクター及びアデノウイルス随伴ベクター(AAV)を含む;本発明との関連では、レトロウイルス及びレンチウイルスベクターが好ましい)、ファージ、ファージミド、コスミド及び人工染色体(BAC及びYACを含む)を包含する。ベクターそれ自体は、一般に、挿入フラグメント(導入遺伝子)及びベクターの「骨格」として機能するより長い配列を含むヌクレオチド配列、一般にはDNA配列である。操作されたベクターは、典型的には、宿主細胞における自己複製起点(ポリヌクレオチドの安定な発現が所望である場合)、選択マーカー及び制限酵素切断部位(例えば、マルチクローニングサイト、MCS)を含む。ベクターは、本明細書に記載される当技術分野で公知のプロモーター/エンハンサー及び他のコントロールエレメント、例えばオペレーター、リプレッサー及び転写終結シグナル、並びに遺伝子マーカー、レポーター遺伝子、ターゲティング配列及び/又はタンパク質精製タグをさらに含み得る。当業者に公知であるように、多くの適切なベクターが利用可能であり、多くが市販されている。適切なベクターの例は、例えば、J. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (4th edition), Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (2012)に提供されている。
【0028】
本発明のベクターはまた、発現ベクターであり得る。「発現ベクター」又は「発現構築物」は、適切な宿主細胞における異種ポリヌクレオチド配列、例えば本発明との関連で記載及び提供される(核酸配列A及びBによりコードされる)TCR鎖をコードする配列の転写及びそれらのmRNAの翻訳のために使用され得る。複製起点、選択マーカー及び制限酵素切断部位の他に、発現ベクターは、典型的には、発現させるべき異種ポリヌクレオチドに作動可能に連結された1つ以上の調節配列を含む。「調節配列」という用語は、特定の宿主生物又は宿主細胞における(異種)ポリヌクレオチドの作動可能に連結されたコード配列の発現に必要な核酸配列を指し、したがって、転写調節配列及び翻訳調節配列を含む。典型的には、原核細胞における異種ポリヌクレオチド配列の発現に必要な調節配列としては、プロモーター、場合によりオペレーター配列及びリボソーム結合部位が挙げられる。真核生物では、典型的には、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、エンハンサー及び場合によりスプライスシグナルが必要とされる。また、培養培地中への目的のポリペプチドの分泌を可能にするために、特定の開始シグナル及び分泌シグナルもベクターに導入され得る。核酸は、それが特に同じポリヌクレオチド分子上の別の核酸配列と機能的な関係になるように配置された場合、「作動可能に連結」されている。例えば、プロモーターは、それがコード配列の発現を引き起こすことができる場合、異種遺伝子のコード配列と作動可能に連結されている。プロモーターは、典型的には、目的のポリペプチドをコードする遺伝子の上流に配置され、前記遺伝子の発現をレギュレーションする。哺乳動物宿主細胞の発現のための例示的な調節配列としては、哺乳動物細胞において高いレベルのタンパク質の発現を指令するウイルス配列、例えばサイトメガロウイルス(CMV)に由来するプロモーター及び/又はエンハンサー(例えば、CMVプロモーター/エンハンサー)、サルウイルス40(SV40)(例えば、SV40プロモーター/エンハンサー)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))及びポリオーマが挙げられる。前記に示されているように、発現ベクターはまた、複製起点及び選択マーカーを含み得る。本発明のベクターは、1つ以上の選択マーカーをさらに含み得る。真核宿主細胞に使用するに適切な選択マーカーとしては、限定されないが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(hgprt)及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(aprt)遺伝子が挙げられる。他の遺伝子としては、dhfr(メトトレキサート抵抗性)、gpt(ミコフェノール酸抵抗性)、neo(G-418抵抗性)及びhygro(ハイグロマイシン抵抗性)が挙げられる。ベクター増幅は、発現レベルを増加させるために使用され得る。一般に、選択マーカー遺伝子は、発現させるべきポリヌクレオチド配列に直接連結され得るか、又はコトランスフォーメーションにより同じ宿主細胞に導入され得る。上記を考慮して、したがって、本発明はさらに、ベクターに挿入された(すなわち、含まれる)1つ以上の本明細書に記載されるヌクレオチド配列を提供する。具体的には、本発明は、本明細書に記載及び提供される核酸配列A及び/又はBを含む(複製可能な)ベクターを提供する。
【0029】
当業者は、例えば、ヌクレオチド配列A及び/又はBによりコードされるアミノ酸配列(タンパク質)の発現を目的とした宿主細胞に基づいて、適切な発現ベクターを容易に選択することができるであろう。適切な発現ベクターの特定の例は、ウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクター、例えばMP71ベクター又はレトロウイルスSINベクター;及びレンチウイルスベクター又はレンチウイルスSINベクターである。ウイルスベクターは、例えば、リンパ球に感染することができ、これは続いて、ヌクレオチド配列A及び/又はBによりコードされるアミノ酸配列(タンパク質)を発現すると想定される。適切な発現ベクターの別の例は、Sleeping Beauty(SB)トランスポゾントランスポザーゼDNAプラスミド系、すなわちSB DNAプラスミドである。本発明の核酸及び/又は、特に発現構築物はまた、一過性RNAトランスフェクションにより細胞に移入され得る。ネイティブTCR発現のために現在使用されているウイルスベクターは、典型的には、1つのベクターにおけるTCRアルファ鎖遺伝子及びTCRベータ鎖遺伝子を、ブタテッショウウイルス由来の内部リボソーム進入部位(IRES)配列又は2Aペプチド配列のいずれかと連結し、トランスダクション細胞内のウイルスプロモーターのコントロール下で単一のメッセンジャーRNA(mRNA)分子の発現をもたらす。しかしながら、当業者は、本発明のヌクレオチド配列A及び/又はBを適切な発現系、例えばCRISPR/Cas又はSleeping Beauty(SB)トランスポゾンに導入するための他の公知の系を容易に選択して使用することもできるであろう。
【0030】
本発明はまた、本明細書に記載及び提供される核酸配列によりコードされる、とりわけ、核酸配列A及び/又はBによりコードされるアミノ酸配列及びタンパク質(この文脈では互換的に使用される)に関する。核酸配列A及びBを含む核酸によりコードされるアミノ酸配列(タンパク質)の組み合わせは、本明細書に記載及び提供されるiTCRの調製を提供するか又はそれに有用である。したがって、本発明はまた、核酸配列A及びBを含む核酸によりコードされるアミノ酸配列(タンパク質)を使用することにより調製されるか、又は核酸配列A及びBを含む核酸を使用することにより調製されるiTCRに関する。本明細書に記載されるように、iTCRは、アルファ及びベータ鎖の対形成の障害を示すTCRであって、アルファ及びベータ鎖の両方に(本明細書に記載される)C末端誘導性二量体化ドメインを含むが、適切な二量体化剤の追加により二量体化するTCRである。TCRの対形成能力は、本発明との関連では、所定のTCR産生細胞の細胞膜において、細胞膜における(それぞれ配列番号2及び4に示されるTCR定常アルファ及びベータ鎖を有する)ネイティブヒトTCRの量と比較して少なくとも2、3、4又は5倍未満のTCRが測定され得る場合に「損なわれた」とみなされ得る。適切な測定方法は当技術分野で公知であり、例えば、本明細書に例示されるフローサイトメトリーを含む。
【0031】
本発明はまた、配列番号2と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97,5%、98%、98,5%又は99%(好ましくは、少なくとも98,5%又は99%)同一のアミノ酸配列及びタンパク質コード核酸配列であって、配列番号4のネイティブヒトTCR定常ベータ鎖と対形成することができないTCR定常アルファ鎖をコードするアミノ酸配列及びタンパク質コード核酸配列に関する。本発明はまた、配列番号4と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97,5%、98%、98,5%又は99%(好ましくは、少なくとも98%又は98,5%)同一のアミノ酸配列及びタンパク質コード核酸配列であって、配列番号2のネイティブヒトTCR定常アルファ鎖と対形成することができないTCR定常ベータ鎖をコードするアミノ酸配列及びタンパク質コード核酸配列に関する。
【0032】
本明細書に記載されるように、(下流連結された二量体化ドメインを有するそれぞれTCRアルファ又はベータ鎖をコードする)核酸A又はBによりコードされる(それぞれTCR定常アルファ又はベータ鎖をコードする)配列番号2又は4と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97,5%、98%、98,5%又は99%(好ましくは、少なくとも98,5%又は99%)同一のアミノ酸配列に連結された誘導性二量体化ドメインは、適切な二量体化剤の追加により二量体化して、両鎖を一緒にする。このような二量体化剤は、当業者に公知であるように、本明細書で提供される組み合わせ又は組成物の核酸分子を使用して調製すべきiTCRのアルファ及びベータ鎖に連結された対応する二量体化ドメインに依存する。例えば、適切な二量体化剤は、(各二量体化ドメインに応じて)タモキシフェン(例えば、4-ヒドロキシタモキシフェン)、エンドキシフェン、AP21967、4-(1-[4-(ジメチルアミノエトキシ)フェニル]-2-フェニル-1-ブテニル)フェノール及び23,27-エポキシ-3H-ピリド[2,1-c][1,4]オキサアザシクロヘントリアコンチン、FK1012、FK506、FKCsA、ラパマイシン、クメルマイシン、ジベレリン、HaXS及びTMP-HTagを含む。本発明の一実施態様では、特に核酸配列A及びBによりコードされる二量体化ドメインであるエストロゲンレセプター(例えば、ERT2)の場合、二量体化剤は、タモキシフェン又はエンドキシフェン、好ましくはエンドキシフェンである。適切な二量体化ドメイン/二量体化剤ペアの例は表4に示されている。
【0033】
【0034】
本発明はまた、それぞれ配列番号2又は4(核酸配列Aの場合には配列番号2及び核酸配列Bの場合には配列番号4)と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97,5%、98%、98,5%又は99%(好ましくは、少なくとも98,5%又は99%)同一のアミノ酸配列に連結された二量体化ドメインに対応する二量体化剤と一緒に、本明細書に記載及び提供される核酸配列A及び/若しくはBを含む1つ以上の核酸分子を含む組み合わせ若しくは組成物、本明細書に記載及び提供される発現カセット、本明細書に記載及び提供される宿主細胞並びに/又は本明細書に記載及び提供されるベクターを含むキットに関し、前記二量体化剤は、前記二量体化ドメインの二量体化を誘導することができる。二量体化ドメインの二量体化を誘導する能力は、本明細書にも例示される当技術分野で公知の方法により測定され得る。本質的に、薬剤の追加により、細胞膜において、本発明の方法、組み合わせ、組成物、化合物、ベクター、宿主細胞又はキットを使用して調製されたiTCRの増加した発現及び局在化が測定され得る場合、前記薬剤は、本発明との関連では、誘導性二量体化ドメインを二量体化することができる;好ましくは、所定の宿主細胞の細胞膜では、前記二量体化剤の追加なしの場合よりも少なくとも2倍、3倍、4倍又は5倍(好ましくは、少なくとも5倍)多いiTCRが存在する。細胞表面上のTCRを測定するための適切な方法は当技術分野で公知であり、フローサイトメトリーを含む(例えば、
図2を参照のこと)。二量体化ドメイン及び二量体化剤の適切なペアは表
4に例示されている。
【0035】
本発明はまた、本明細書に記載及び提供される核酸配列A及び核酸配列Bを含む核酸分子、本明細書に記載及び提供される発現カセット並びに/又は本明細書に記載及び提供されるベクターを含む宿主細胞に関する。適切な宿主細胞は当技術分野で公知であり、とりわけ、原核及び真核細胞、好ましくは真核細胞、例えば哺乳動物細胞を含む。宿主細胞は、例えば、産生宿主細胞又はエフェクター宿主細胞を含み得る。
【0036】
本発明にしたがって、様々な宿主細胞が使用され得る。本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、本明細書に記載される核酸分子若しくはベクターのレシピエントであり得るか若しくは前記レシピエントであった、及び/又は本発明のアミノ酸配列(すなわち、タンパク質)(例えば、iTCR)を発現する(及び場合により分泌する)細胞を包含する。「細胞」及び「細胞培養物」という用語は、特に明確な指定がない限り、互換的に使用される。「宿主細胞」という用語はまた、「宿主細胞株」を含む。一般に、「宿主細胞」という用語は原核細胞又は真核細胞を含み、限定されないが、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、植物細胞及び動物細胞、例えば昆虫細胞及び哺乳動物細胞、例えばマウス細胞、ラット細胞、マカク細胞又はヒト細胞などが挙げられる。上記を考慮して、したがって、本発明は、とりわけ、本明細書に記載されるアミノ酸配列(例えば、iTCR)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド又はベクター、例えば発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。本発明のポリヌクレオチド及び/又はベクターは、当技術分野で公知の慣用的な方法を使用して、例えばトランスフェクション、トランスフォーメーションなどにより宿主細胞に導入され得る。
【0037】
「トランスフェクション」は、核酸分子又はポリヌクレオチド(ベクターを含む)をターゲット細胞に計画的に導入するプロセスである。例は、RNAトランスフェクション、すなわち、RNA(例えば、in vitroで転写されるRNA、すなわちivtRNA)を宿主細胞に導入するプロセスである。前記用語は、主に、真核細胞における非ウイルス的方法に使用される。「トランスダクション」という用語は、多くの場合、ウイルス媒介性核酸分子又はポリヌクレオチド移入を説明するために使用される。動物細胞のトランスフェクションは、典型的には、材料の取り込みを可能にするために、細胞膜に一過性の孔又は「穴」を開けることを含む。トランスフェクションは、リン酸カルシウム法を使用して、エレクトロポレーションにより、細胞のスクイージングにより、又は陽イオン性脂質を材料と混合してリポソームを生成し、これを細胞膜と融合させ、その積荷を内側に蓄積させることにより行なわれ得る。真核宿主細胞をトランスフェクションするための例示的な技術としては、脂質小胞媒介性取り込み、熱ショック媒介性取り込み、リン酸カルシウム媒介性トランスフェクション(リン酸カルシウム/DNAの共沈降)、マイクロインジェクション及びエレクトロポレーションが挙げられる。
【0038】
「トランスフォーメーション」という用語は、細菌細胞への、及びまた非動物真核細胞(植物細胞を含む)への核酸分子又はポリヌクレオチド(ベクターを含む)の非ウイルス的移入を説明するために使用される。したがって、トランスフォーメーションは、細胞膜を通したその周囲からの直接的な取り込み及びその後の外来性遺伝物質(核酸分子)の取り込みから生じる細菌細胞又は非動物真核細胞の遺伝子改変である。トランスフォーメーションは、人工的な手段により行なわれ得る。トランスフォーメーションが起こるために、細胞又は細菌は、トランスフォーメーション受容性状態になければならず、これは飢餓及び細胞密度などの環境条件に対する期間限定の応答として起こり得る。原核生物トランスフォーメーションのために、技術としては、熱ショック媒介性取り込み、インタクトな細胞と細菌プロトプラストとの融合、マイクロインジェクション及びエレクトロポレーションが挙げられ得る。植物トランスフォーメーションのための技術としては、例えば、A. tumefaciensによるAgrobacterium媒介性移入、急速に噴射されるタングステン又は金ミクロ射出粒子、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション及びポリエチレングリコール媒介性取り込みが挙げられる。上記を考慮して、したがって、本発明はさらに、本明細書に記載される少なくとも1つのポリヌクレオチド配列及び/又はベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0039】
本発明のアミノ酸配列(例えば、タンパク質)の発現のために、挿入されたポリヌクレオチド配列の発現をモデュレーションし、並びに/又は所望により遺伝子産物(すなわち、RNA及び/又はタンパク質)を改変及びプロセシングする宿主細胞が選択され得る。遺伝子産物のこのような改変(例えば、グリコシル化)及びプロセシング(例えば、切断)は、TCRの機能に重要であり得る。異なる宿主細胞が、遺伝子産物の翻訳後プロセシング及び改変のための特徴的かつ特異的な機序を有する。産物の正しい改変及びプロセシングを確実にするために、適切な細胞株又は宿主系が選択され得る。この目的のために、一次転写産物の適切なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化及びリン酸化のための細胞機序を有する真核宿主細胞が使用され得る。(a)特に可溶形の本発明のタンパク質(例えば、iTCR)を発現させ及び取得するための宿主細胞(「産生宿主細胞」)、並びに(b)本発明のTCRを発現し、エフェクター機能を有する宿主細胞(「エフェクター宿主細胞」)を提供することが本明細書で想定される。このような「フェクター宿主細胞」は治療適用に特に有用であり、それを必要とする被験体への投与に想定される。好ましい「エフェクター宿主細胞」としては、リンパ球、例えば細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、CD8+T細胞、CD4+T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、ガンマ/デルタT細胞が挙げられる。
【0040】
本発明のタンパク質の発現のために使用される「産生宿主細胞」は、好ましくは、多量のリコンビナントタンパク質を発現することができる。「産生宿主細胞」として使用され得る例示的な哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、例えばDHFRマイナスCHO細胞、例えばDG44及びDUXBI 1細胞、NSO細胞、COS細胞(SV40T抗原を有するCVIの誘導体)、HEK293細胞(ヒト腎臓細胞)及びSP2細胞(マウス骨髄腫細胞)が挙げられる。他の例示的な宿主細胞株としては、限定されないが、HELA(ヒト子宮頸ガン)、CVI(マウス腎臓株)、VERY、BHK(ベビーハムスター腎臓)、MDCK、293、WI38、R1610(チャイニーズハムスター線維芽細胞)、BALBC/3T3(マウス線維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓株)、P3x63-Ag3.653(マウス骨髄腫)、BFA-IcIBPT(ウシ内皮細胞)及びRAJI(ヒト白血球)が挙げられる。宿主細胞株は、典型的には、業者American Tissue Culture Collection (ATCC)又は公開されている文献から入手可能である。細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞又は植物細胞などの非哺乳動物細胞も容易に入手可能であり、上記「産生宿主細胞」としても使用され得る。例示的な細菌宿主細胞としては、腸内細菌、例えばEscherichia coli、Salmonella; Bacillaceae、例えばBacillus subtilis; Pneumococcus; Streptococcus及びHaemophilus influenzaが挙げられる。他の宿主細胞としては、酵母細胞、例えばSaccharomyces cerevisiae及びPichia pastorisが挙げられる。昆虫細胞としては、限定されないが、Spodoptera frugiperda細胞が挙げられる。前記によれば、考えられる発現系(すなわち、上記発現ベクターを含む宿主細胞)としては、リコンビナントバクテリオファージDNA、プラスミドDNA又はコスミドDNA発現ベクターを用いてトランスフォーメーションされた細菌(例えば、E. coli、B. subtilis)などの微生物;リコンビナント酵母発現ベクターでトランスフォーメーションされた酵母(例えば、Saccharomyces、Pichia);リコンビナントウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染させた昆虫細胞系;リコンビナントウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染させたか又はリコンビナントプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)を用いてトランスフォーメーションされた植物細胞系が挙げられる。哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)又は哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)主要最初期プロモーター(MIEP)プロモーター)を含有するリコンビナント発現構築物を有する哺乳動物発現系は、多くの場合に好ましい。適切な哺乳動物宿主細胞は、公知の細胞株(例えば、COS細胞、CHO細胞、BLK細胞、293細胞、3T3細胞)から選択され得るが、しかしながら、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、CD8+T細胞、CD4+T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、γ/δT細胞などのリンパ球を使用することも考えられる。
【0041】
前記によれば、本発明はまた、本明細書に記載されるタンパク質を生産及び取得するための方法であって、(i)前記タンパク質の発現を引き起こす条件下で宿主細胞(すなわち、産生宿主細胞)をインキュベーションする工程、及び(ii)前記タンパク質を精製する工程を含む方法を提供する。発現ベクターを有する宿主細胞を、本明細書で提供されるタンパク質、特に本明細書に記載されるそれぞれ核酸配列A及びBによりコードされる定常アルファ鎖及び/又はベータ鎖の産生に適切な条件下で成長させ、アルファ鎖及び/又はベータ鎖のタンパク質合成についてアッセイする。二本鎖TCRの発現のために、アルファ鎖及びベータ鎖の両方をコードするベクターは、分子全体の発現のために宿主細胞において共発現され得る。
【0042】
本発明のタンパク質(例えば、iTCR)が発現されたら、それは、当技術分野で公知の任意の精製方法により、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー)、アフィニティクロマトグラフィー、特にプロテインA、プロテインG、若しくはレクチンアフィニティクロマトグラフィー、サイズカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、示差溶解度、疎水性相互作用クロマトグラフィーにより、又はタンパク質の精製のための任意の他の標準的な技術により精製され得る。当業者は、回収すべきタンパク質の個々の特徴に基づいて適切な精製方法を容易に選択することができるであろう。
【0043】
前述のように、本発明はまた、本発明のヌクレオチド配列、ベクター又はタンパク質を含む「エフェクター宿主細胞」を提供する。前記エフェクター宿主細胞は、慣用的な方法を使用して、本発明のタンパク質をコードする核酸配列を含むように改変され、本明細書に記載されるタンパク質を特に細胞表面上で発現すると想定される。本発明の目的のために、「本発明のタンパク質を発現する改変宿主細胞」は、一般に、例えば添付の実施例に記載されているRNAトランスフェクションにより、本発明のタンパク質を発現するように処理又は変化された(エフェクター又は産生)宿主細胞を指す。本明細書の他の場所に記載されるものなどの他の改変方法又はトランスフェクション法又はトランスダクション法も想定される。したがって、「改変宿主細胞」という用語は、本発明のタンパク質を好ましくは発現する「トランスフェクションされた」、「トランスダクションされた」及び「遺伝子操作された」宿主細胞を含む。好ましくは、このような「(改変)エフェクター宿主細胞」(特に「(改変)エフェクターリンパ球」)は、タンパク質がその特異的な抗原ターゲットに結合すると、細胞内シグナル伝達を通してエフェクター機能を媒介することができる。このようなエフェクター機能としては、例えば、パーフォリン(ターゲット細胞膜に穴を作る)、グランザイム(細胞内で作用してアポトーシスをトリガーするプロテアーゼである)の遊離、Fasリガンド(Fasを有するターゲット細胞においてアポトーシスを活性化する)の発現、並びにサイトカイン、好ましくはTh1/Tc1サイトカイン、例えばIFN-γ、IL-2及びTNF-αの遊離が挙げられる。したがって、処置すべき被験体におけるその抗原ターゲットを認識してそれに結合することができる本発明のタンパク質を発現するように操作されたエフェクター宿主細胞は、上記エフェクター機能を実行し、それにより、ターゲット(例えば、ガン)細胞を死滅させると想定される。ターゲット細胞の細胞溶解は、例えば、トランスフェクションレシピエントT細胞との共培養中に蛍光標識ターゲット細胞の消失を検出するCTL蛍光死滅アッセイ(CTL, USA)を用いて評価され得る。
【0044】
上記を考慮して、エフェクター宿主細胞は、好ましくは、機能的iTCR(すなわち、これは、典型的には本明細書に記載されるiTCRアルファ鎖及びベータ鎖を含む);並びにまた、シグナル伝達サブユニットCD3ガンマ、デルタ、イプシロン及びゼータ(CD3複合体)を発現する。また、共レセプターのCD4又はCD8の発現も望ましい場合がある。一般に、抗原の結合、レセプターの活性化及び下流シグナリングに関与する必要な遺伝子(例えば、Lck、FYN、CD45及び/又はZap70)を有するリンパ球、すなわちT細胞は、エフェクター宿主細胞として特に適切である。しかしながら、「結合ドメイン」として本発明のTCRを発現するが、CD3シグナル伝達サブユニット及び/又は前記下流シグナリング分子を含まない(すなわち、本明細書に記載される抗原ターゲットを認識することができるが、CD3及び/又は前記下流シグナリング分子により媒介されるエフェクター機能を有しない)エフェクター宿主細胞も本明細書で想定される。このようなエフェクター細胞は、本明細書に記載される抗原ターゲットを認識することができ、場合により、CD3シグナリング及び/又は前記下流シグナリング分子のシグナリングに関連しない他の機能を引き起こすことができると想定される。例としては、本発明のタンパク質を発現し、例えば、抗原ターゲットの認識により細胞傷害性顆粒を放出することができるNK又はNKT細胞が挙げられる。したがって、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、CD8+T細胞、CD4+T細胞、ナチュラル-キラー(NT)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、γ/δT細胞は、本発明によれば、有用なリンパ球エフェクター宿主細胞であると考えられる。本発明のリコンビナントiTCRを発現するこのようなリンパ球はまた、本明細書では「改変エフェクターリンパ球」とも称される。しかしながら、当業者は、一般に、当技術分野で公知のリコンビナント遺伝子操作方法により、所望のエフェクター機能をもたらすタンパク質シグナリング経路の任意の成分を適切な宿主細胞に導入し得ることを容易に認識するであろう。エフェクター宿主細胞、特にリンパ球、例えばT細胞は、処置すべき被験体から得られ、本発明のタンパク質を発現するようにトランスフォーメーション又はトランスダクションされた自己宿主細胞であり得る。典型的には、タンパク質のリコンビナント発現は、添付の実施例に記載されているウイルスベクターを使用することにより達成されるであろう。患者から細胞を取得及び単離するための技術は、当技術分野で公知である。前述のように、本明細書で提供されるエフェクター宿主細胞は、治療適用に特に想定される。治療有効性を増加させるために、宿主細胞のさらなる遺伝子改変が望ましい場合がある。例えば、「エフェクター宿主細胞」として自己CD8+T細胞を使用する場合、適切なさらなる改変としては、内因性TCR、CTLA-4及び/又はPD-1の発現のダウンレギュレーション;並びに/又は、CD28、CD134、CD137などの共刺激分子の増幅が挙げられる。上述の遺伝子改変を達成するための手段及び方法は、当技術分野で記載されている。
【0045】
宿主細胞のターゲットゲノム遺伝子操作方法は当技術分野で公知であり、siRNAを用いた遺伝子ノックダウンの他に、いわゆる「プログラム可能なヌクレアーゼ」、例えばジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)及びとりわけKim & Kim Nature Reviews Genetics 15, 321-334 (2014)に議論されている細菌のクラスタ化され規則的に間隔があいた短い回文構造の繰返し(CRISPR)-Cas(CRISPR関連)系から誘導されるRNA誘導操作ヌクレアーゼ(RGEN)が挙げられる。例えば、TALENなどのプログラム可能なヌクレアーゼは、PD-1、CTLA-4又は内因性TCRなどの「所望ではない」タンパク質をコードするDNA領域を切断し、それにより、それらの発現を減少させるために用いられ得る。T細胞を(エフェクター)宿主細胞として使用する場合、内因性TCRのダウンレギュレーションは、内因性及び外因性TCRアルファ鎖/ベータ鎖の望ましくない「誤対形成」を減少させる利点を有する。
【0046】
本発明はまた、本明細書に記載及び提供される核酸配列Aによりコードされるタンパク質及び核酸配列Bによりコードされるタンパク質を二量体化するための、本明細書に記載される二量体化剤の使用に関する。本発明の一実施態様では、本明細書に記載及び提供される核酸配列Aによりコードされるタンパク質及び核酸配列Bによりコードされるタンパク質を二量体化するために使用すべき二量体化剤は、エンドキシフェンであり得る。
【0047】
本発明はさらに、本明細書に記載及び提供される核酸配列Aによりコードされるタンパク質及び核酸配列Bによりコードされるタンパク質を二量体化するための方法であって、本明細書に記載される二量体化剤(例えば、タモキシフェン又はエンドキシフェン、好ましくはエンドキシフェン)を前記タンパク質に追加する工程を含む方法に関する。
【0048】
本発明はさらに、誘導性T細胞レセプター(iTCR)を調製するための方法であって、本明細書に記載及び提供される核酸配列A及び核酸配列B、本明細書に記載及び提供される発現カセット又は本明細書に記載及び提供されるベクターを、前記核酸配列A及び前記核酸配列Bの発現を可能にする条件下で、宿主細胞にin vitroで導入する工程を含む方法に関する。適切なトランスフォーメーション/トランスダクション方法及び発現方法は当技術分野で公知であり、本明細書にも記載される。
【0049】
本発明はさらに、改変T細胞、例えばTリンパ球を生成するための、本明細書に記載及び提供される組み合わせ若しくは組成物、本明細書に記載及び提供される発現カセット又は本明細書に記載及び提供されるベクターの使用に関する。
【0050】
本発明はさらに、T細胞療法において使用するための、本明細書に記載及び提供される組み合わせ若しくは組成物、本明細書に記載及び提供される発現カセット、本明細書に記載及び提供されるベクター、本明細書に記載及び提供される宿主細胞又は本明細書に記載及び提供されるタンパク質に関する。
【0051】
本発明はさらに、ガンの処置において使用するための、本明細書に記載及び提供される組み合わせ若しくは組成物、本明細書に記載及び提供される発現カセット、本明細書に記載及び提供されるベクター、本明細書に記載及び提供される宿主細胞又は本明細書に記載及び提供されるタンパク質に関する。この文脈で処置され得るガンは、全ての種類のガン、特に固形ガン(例えば、小細胞上肺ガン、乳ガン、結腸直腸ガン、膵臓ガン、卵巣ガン、皮膚ガン、前立腺ガン、脳又は神経系のガン、頭頸部ガン、精巣ガン、肺ガン、肝臓ガン、腎臓ガン、膀胱ガン、胃腸ガン、骨ガン、内分泌系のガン、リンパ系のガン、線維肉腫、神経直腸腫瘍、中皮腫、類表皮ガン腫又はカポジ肉腫)及び血液ガン(白血病)を含む。
【0052】
本発明はさらに、本明細書に記載及び提供される組み合わせ組成物、本明細書に記載及び提供される発現カセット組成物、本明細書に記載及び提供されるベクター組成物、本明細書に記載及び提供される宿主細胞組成物又は本明細書に記載及び提供されるタンパク質組成物を含む医薬組成物に関する。
【0053】
「医薬組成物」という用語は、特に、ヒトへの投与に適切な組成物を指す。しかしながら、非ヒト動物への投与に適切な組成物もまた、一般に、前記用語により包含される。医薬組成物及びその成分(すなわち、活性剤及び場合により賦形剤)は、好ましくは、薬学的に許容し得るものであり、すなわち、レシピエントにおいて望ましくない局所作用又は全身作用を全く引き起こさずに、所望の治療効果を誘発することができる。本発明の薬学的に許容し得る組成物は、例えば、無菌であり得る。具体的には、「薬学的に許容し得る」という用語は、動物、より具体的にはヒトにおける使用のために、規制当局又は他の一般に認められている薬局方により承認されていることを意味し得る。上記活性剤(例えば、宿主細胞又はiTCR)は、好ましくは、医薬組成物中に治療有効量で存在する。「治療有効量」は、所望の治療効果を誘発する活性剤の量を意味する。治療有効性及び毒性は、標準的な手順により、例えば細胞培養物又は試験動物において、例えばED50(個体群の50%に治療効果がある用量)及びLD50(個体群の50%に致死的である用量)で決定され得る。治療効果と毒性作用との間の用量比は治療指数であり、これはED50/LD50比として表現され得る。大きな治療指数を示す医薬組成物が好ましい。
【0054】
核酸、タンパク質、ベクター又は宿主細胞の正確な投与量は、公知の技術を使用して当業者により確認可能であろう。適切な投与量は、十分な量の本発明の活性剤を提供し、好ましくは治療に有効であり、すなわち、所望の治療効果を誘発する。当技術分野で公知であるように、処置の目的(例えば、寛解維持対疾患の急性増悪)、投与経路、投与時刻及び投与頻度、製剤、年齢、体重、全般的な健康状態、性別、食事、疾患状態の重症度、薬物の組み合わせ、反応過敏性及び治療法に対する耐容性/応答性のための調整が必要であり得る。適切な投与量範囲は、細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータを使用して決定され得、ED50が含まれ得る。典型的には、投与量は、投与経路に応じて、0.1~100000μgで変化し得、総用量は最大約2gであり得る。本発明の活性剤の例示的な投与量は、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、約1mg/kg~約10mg/kg、約1mg/kg~約5mg/kg、約0.01mg/kg~約1mg/kg又は約0.1mg/kg~約1mg/kgの範囲内である。特定の投与量及び送達方法に関する指針は、文献に提供されている。処置は、本発明の活性剤の治療有効用量の単回投与又は治療有効用量の複数回投与を必要とし得ることが認識されている。例えば、いくつかの医薬組成物は、特定の組成物の製剤、半減期及びクリアランス速度に応じて、3~4日間毎に1回、週1回又は2週間毎に1回又は1カ月以内に1回投与され得る。医薬組成物は、1つ以上の賦形剤及び/又はさらなる活性剤を場合により含み得る。
【0055】
「賦形剤」という用語は、充填剤、結合剤、崩壊剤、コーティング剤、吸着剤、接着防止剤、潤滑剤、保存剤、抗酸化剤、芳香剤、着色剤、甘味剤、溶媒、共溶媒、緩衝剤、キレート剤、粘度付与剤、表面活性剤、希釈剤、湿潤剤、担体、希釈剤、保存剤、乳化剤、安定化剤及び等張化剤を含む。所望の本発明の医薬組成物を調製するために適切な賦形剤を選択することは当業者の知識範囲内である。本発明の医薬組成物に使用するための例示的な担体としては、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース及び水が挙げられる。典型的には、適切な賦形剤の選択は、とりわけ、使用される活性剤、処置すべき疾患、及び医薬組成物の所望の製剤に依存するであろう。
【0056】
本発明はさらに、上記に詳述される1つ以上の本発明の活性剤(例えば、宿主細胞又はiTCR構築物)と、処置すべき疾患の治療及び/又は予防に適切な1つ以上のさらなる活性剤とを含む医薬組成物を提供する。組み合わせに適切な活性成分の好ましい例としては、公知の抗ガン薬、例えばシスプラチン、マイタンシン誘導体、ラケルマイシン、カリケアマイシン、ドセタキセル、エトポシド、ゲムシタビン、イホスファミド、イリノテカン、メルファラン、ミトキサントロン、ポルフィマーナトリウム、フォトフリンII、テモゾロミド、トポテカン、グルクロン酸トリメトレキサート、アウリスタチンE、ビンクリスチン及びドキソルビシン;並びに、ペプチド細胞毒素、例えばリシン、ジフテリア毒素、シュードモナス細菌外毒素A、DNAアーゼ及びRNAアーゼ;放射性核種、例えばヨウ素131、レニウム186、インジウム111、イットリウム90、ビスマス210及び213、アクチニウム225及びアスタチン213;プロドラッグ、例えば抗体に指向する酵素プロドラッグ;免疫刺激剤、例えばIL-2、ケモカイン、例えばIL-8、血小板因子4、悪性黒色腫成長刺激タンパク質など、抗体又はそのフラグメント、例えば抗CD3抗体又はそのフラグメント、補体活性化因子、異種タンパク質ドメイン、同種タンパク質ドメイン、ウイルス/細菌タンパク質ドメイン及びウイルス/細菌ペプチドが挙げられる。様々な経路が、本発明の医薬組成物の投与のために適用可能である。典型的には、投与は非経口的に達成されるであろう。非経口送達方法としては、局所、動脈内、筋肉内、皮下、髄内、くも膜下腔内、脳室内、静脈内、腹腔内、子宮内、膣内、舌下又は鼻腔内投与が挙げられる。
【0057】
本発明の医薬組成物は、とりわけ、使用される活性剤に応じて様々な剤形で、例えば固形剤、液剤、気体剤形、若しくは凍結乾燥剤形で製剤化され得、とりわけ、軟膏、クリーム、経皮パッチ、ゲル、散剤、錠剤、液剤、エアゾール、顆粒剤、丸剤、懸濁剤、乳化剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、エリキシル剤、エキス剤、チンキ剤、若しくは液体エキス剤の剤形で、又は所望の投与方法に特に適切な剤形で製剤化され得る。医薬を生産するためのそれ自体が公知のプロセスは、Remington’s Pharmaceutical Sciences (Ed. Maack Publishing Co, Easton, Pa., 2012)の第22版に示され、例えば、慣用的な混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、封鎖又は凍結乾燥プロセスを含み得る。例えば、本明細書に記載される宿主細胞を含む医薬組成物は、典型的には、液体剤形で提供され、好ましくは薬学的に許容し得る緩衝液を含む。本発明の医薬組成物が調製された後、それらを適切な容器に入れ、示された容態の処置のためにラベルされ得る。このようなラベルは、例えば、投与量、投与頻度及び投与方法を含むであろう。
【0058】
上記を考慮して、したがって、本発明は、医薬として使用するための、本明細書に記載されるタンパク質(例えば、iTCR)、核酸、ベクター及び/又は宿主細胞を提供する。「処置」という用語は、その全ての文法形において、それを必要とする被験体の治療的又は予防的処置を含む。「治療的処置又は予防的処置」は、臨床徴候及び/若しくは病的徴候の完全予防を目的とする予防的処置、又は臨床徴候及び/若しくは病的徴候の回復又は寛解を目的とする治療的処置を含む。したがって、「処置」という用語はまた、疾患の回復又は予防を含む。
【0059】
「被験体」又は「個体」又は「動物」又は「患者」という用語は、治療が望まれる任意の被験体、特に哺乳動物被験体を指すために本明細書で互換的に使用される。哺乳動物被験体としては、一般に、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、雌ウシなどが挙げられる。しかしながら、本明細書で提供されるタンパク質(例えば、iTCR)、核酸、ベクター、宿主細胞及び医薬組成物は、ヒト被験体の処置のために特に想定されることが容易に理解されるであろう。
【0060】
治療のために、タンパク質(例えば、iTCR)、核酸、ベクター(例えば、ウイルスベクター)又は宿主細胞は、それを必要とする被験体に直接投与され得る。前記方法は、(a)本発明の(i)タンパク質(例えば、iTCR)、(ii)核酸、(iii)ベクター、(iv)宿主細胞及び/又は(v)医薬組成物の1つ以上を提供する工程;並びに(b)(i)~(v)の1つ以上をそれを必要とする被験体に投与する工程を含み得る。場合により、前記方法は、ガン治療のさらに他の工程、例えば放射線療法又は1つ以上の抗ガン剤の投与を含み得る。
【0061】
本発明の処置はまた、(a)リンパ球を含む被験体のサンプルを提供する工程;(b)本発明のタンパク質(例えば、iTCR)、核酸、ベクター、宿主細胞及び/又は医薬組成物の1つ以上を提供する工程、(c)工程(b)の(i)~(v)の1つ以上を工程(a)のリンパ球に導入し、それにより、改変リンパ球を得る工程、(d)工程(c)の改変リンパ球をそれを必要とする被験体又は患者に投与する工程を含み得る。工程(a)で提供されるリンパ球は、前記「エフェクター宿主細胞」であると特に想定され、有利には、T細胞、NK細胞及び/又はNKT細胞、特にCD8+T細胞から選択され;当技術分野で公知な慣用的な方法により、以前の工程(a’)で被験体のサンプル(特に血液サンプル)から得られ得る。しかしながら、本発明のタンパク質(例えば、iTCR)を好ましくは発現することができ、本明細書に記載される所望の生物学的エフェクター機能を発揮する他のリンパ球を使用することも考えられる。また、前記リンパ球は、典型的には、被験体の免疫系との適合性のために選択され、すなわち、前記リンパ球は、好ましくは免疫反応を誘発しないであろう。例えば、「遍在的レシピエント細胞」、すなわちin vitroで成長及びエクスパンションさせることのできる所望の生物学的エフェクター機能を発揮する遍在的な適合性のリンパ球を使用することが考えられる。したがって、このような細胞の使用は、工程(a)における被験体自身のリンパ球を入手及び提供する必要性がないであろう。ex vivo工程(c)の導入は、エレクトロポレーションを介して、本明細書に記載される核酸又はベクターをリンパ球に導入することにより、又はエフェクター宿主細胞との関連で以前に記載されるレンチウイルスベクター若しくはレトロウイルスベクターなどのウイルスベクターでリンパ球を感染させることにより実施され得る。他の考えられる方法としては、リポソームなどのトランスフェクション試薬の使用、すなわち一過性RNAトランスフェクションが挙げられる。例えば、(レトロ)ウイルスベクター又は一過性RNAトランスフェクションによる(初代)T細胞への抗原特異的TCR遺伝子の移入は、その後にドナーに再導入され得る腫瘍関連抗原特異的T細胞であって、前記抗原を発現する腫瘍細胞を特異的にターゲティング及び破壊する腫瘍関連抗原特異的T細胞を生成するための有望なツールに相当する。
【0062】
上記を考慮して、したがって、本発明のさらなる態様は、改変リンパ球を生成するための、本明細書の他の場所に記載されるタンパク質(例えば、iTCR)、核酸配列、ベクター及び/又は宿主細胞の使用である。例えば、核酸及びベクターをリンパ球に導入するための手段及び方法は当技術分野で公知であり、上記本明細書に記載される。
【0063】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」及び「the」という単数形は、文脈上特に明確な指示がない限り、複数の対象物を含むことに注意しなければならない。したがって、例えば、「試薬」への言及は、1つ以上のこのような異なる試薬を含み、「方法」への言及は、本明細書に記載される方法について改変又は置き換えられ得る当業者に公知な等価な工程及び方法への言及を含む。
【0064】
特に指示がない限り、一連の又は最小量のエレメントの前にある「少なくとも」という用語は、一連の全てのエレメントを指すと理解すべきである。当業者は、単に慣用的な実験を使用して、本明細書に記載される本発明の具体的な実施態様に対する多くの均等物を認識又は確認することができるであろう。このような均等物は、本発明により包含されることが意図される。また、「少なくとも」という用語は、厳密な量および上限を含み、例えば、「少なくとも5つ」はまた、「厳密に5つ」の意味を包含し、又は「少なくとも3つ」は、「厳密に3つ」を含む。
【0065】
「及び/又は」という用語は、本明細書で使用される場合にはいつでも、「及び」、「又は」及び「前記用語により接続されるエレメントの全ての組み合わせ又は任意の他の組み合わせ」の意味を含む。
【0066】
本明細書で使用される場合、「約」又は「およそ」という用語は、所定の数値又は範囲の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内を意味する。しかしながら、それはまた具体数を含み、例えば「約20」は20を含む。
【0067】
「未満」、「少なくとも」又は「超える」という用語は具体数を含む。例えば、20未満は、20未満か又はそれに等しいことを意味する。同様に、多い又は超えるは、それぞれ多いか若しくはそれに等しい、又は超えるか若しくはそれに等しいことを意味する。
【0068】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲の全体を通して、文脈上特に必要がない限り、「含む(comprise)」という単語及び「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などの変化形は、記載の整数若しくは工程、又は整数群若しくは工程群を包含するが、任意の他の整数若しくは工程、又は整数群若しくは工程群を排除するものではないと理解されるであろう。本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、「含有する」若しくは「含む(including)」という用語、又は本明細書で使用される場合、「有する」という用語で置換され得ることがある。また、「含む」及びその変形はまた、「からなる」という意味を含む。
【0069】
本明細書で使用される場合、「からなる」は、特許請求の範囲の構成要件に明記されていないあらゆるエレメント、工程又は成分を排除する。本明細書で使用される場合、「から本質的になる」は、特許請求の範囲の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない材料又は工程を排除しない。
【0070】
本明細書における各場合では、「含む」、「から本質的になる」及び「からなる」という用語はいずれも、他の2つの用語のいずれかと置き換えられ得る。
【0071】
本発明は、本明細書に記載される特定の方法、プロトコール、材料、試薬及び物質に限定されず、したがって変更され得ると理解すべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施態様を説明する目的のためだけのものであり、本発明の範囲を限定する意図はなく、本発明の範囲は特許請求の範囲のみにより定義される。
【0072】
本明細書の文書全体で引用される全ての刊行物及び特許(全ての特許、特許出願、科学文献、製造業者の仕様書、説明書などを含む)(上記又は下記)はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。本明細書中のものはいずれも、本発明が先行発明を理由としてこのような開示に先んじる権利がないことの承認であると捉えられるものではない。参照により組み入れられる材料が本明細書と相反するか又は矛盾する範囲では、本明細書は、任意のこのような材料を取り替えるであろう。
【0073】
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」又は「核酸」という用語は、ポリリボヌクレオチド配列及びポリデオキシリボヌクレオチド配列、例えば、各々一本鎖及び/又は二本鎖形で鎖状若しくは環状の改変又は改変されていないRNA又はDNA又はその混合物(ハイブリッド分子を含む)を含む。したがって、本発明の核酸は、DNA(例えば、dsDNA、ssDNA、cDNA)、RNA(例えば、dsRNA、ssRNA、mRNA、ivtRNA)、その組み合わせ又はその誘導体(例えば、PNA)を含む。「核酸配列」又は「(ポリ)ヌクレオチド配列」という用語は、本明細書では互換的に使用される。同様に、当業者には明らかであるように、「アミノ酸配列」、「ポリペプチド」又はタンパク質という用語は、本明細書では互換的に使用され得る。
【0074】
ポリヌクレオチドは、慣用的なホスホジエステル結合又は非慣用的な結合(例えば、アミド結合、例えば、ペプチド核酸(PNA)に見られるような)を含み得る。本発明のポリヌクレオチドはまた、1つ以上の改変塩基、例えばトリチル化塩基及び異常な塩基、例えばイノシンを含有し得る。本発明の結合分子がポリヌクレオチドから発現され得る限り、他の改変(化学的改変、酵素的改変又は代謝的改変を含む)も考えられ得る。ポリヌクレオチドは、本明細書の他の場所で定義される単離形態で提供され得る。ポリヌクレオチドは、調節配列、例えば転写コントロール配列(プロモーター、エンハンサー、オペレーター、リプレッサー及び転写終結シグナルを含む)、リボソーム結合部位、イントロンなどを含み得る。
【0075】
本発明はさらに、iTCR機能をスクリーニング又は試験するための方法であって、ベクター(例えば、レンチウイルスベクター、例えばpCDHなど)を使用して、レポーター遺伝子(例えば、蛍光タンパク質、例えばGFP、YFP、CFP、eGFP、ieGFP;好ましくはieGFP)を宿主細胞(例えば、TCR
-宿主細胞;好ましくはTリンパ球、例えばJurkat-76など)に導入する工程、ベクター(例えば、レンチウイルスベクター、例えばpCDHなど;好ましくは前記レポーター遺伝子と同じベクター)を使用して、本明細書に記載及び提供される核酸配列A及びBを含む1つ以上の核酸分子(好ましくは発現カセット;「iTCR構築物」)を同じ宿主細胞にさらに導入する工程、本明細書に記載される二量体化剤(例えば、エストロゲンレセプター(例えば、ETR2)が二量体化ドメインである場合にはタモキシフェン又はエンドキシフェン)と一緒に前記宿主細胞を、(i)TCRにより認識される抗原ペプチドと共にインキュベーションする工程、並びに前記レポーター遺伝子のシグナリングを、ヒトネイティブTCR遺伝子カセット(すなわち、定常アルファ及びベータ鎖の下流に連結された二量体化ドメインを有しないそれぞれ配列番号2及び4のTCR定常アルファ及びベータ鎖)を除いて同じベクター構築物が導入されたコントロール細胞のものと比較する工程を含む方法に関する。細胞膜への(i)TCRの取り込みは、当技術分野で公知の方法により、例えば、本明細書に例示されるフローサイトメトリーにより測定され得る(例えば、
図4及び実施例3を参照のこと)。iTCR構築物で処理された宿主細胞と、ネイティブTCRで処理された細胞との同程度のシグナリングは、本発明によるiTCR機能の成功を示す。この文脈における「同程度」は、例えば、iTCR構築物を有する宿主細胞のシグナリングが、ネイティブTCR構築物を有する宿主細胞のものの少なくとも60%、70%、80%又は90%ほどの強さ、好ましくはネイティブTCR構築物を有する宿主細胞のものの少なくとも93%、95%、96%、98%、98,5%又は99%ほどの強さである場合を意味し得る。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1】
図1は、誘導性TCRの概略図を示す。点突然変異(「アスタリスク」)は、所定のTCRの定常(「c」)アルファ(「α」)及びベータ(「β」)鎖に導入されている。突然変異により、TCRアルファ-CD3及びTCRベータ-CD3複合体は、小胞体中で対形成し得ない。二量体化ドメイン(「DD」)又はあるいはヘテロ二量体化ドメイン(「HD」)は、同じTCRの定常アルファ及びベータ鎖の両方のC末端に挿入されている。二量体化又はヘテロ二量体化剤(「DA又はHA」)の導入により、アルファ及びベータ鎖の対形成並びにCD3(「CD3」)及びTCRを含むその後の機能クラスタの形成(CD3ゼータ鎖(「ζ鎖」、ゼータ鎖」を含む)が発生し得るので、TCRは、細胞の表面上で発現され得る。
【
図2】
図2は、誘導性TCR G11-3(iTCR-G11-3、MHC-II拘束TCR)をトランスダクションし、10μM 4-ヒドロキシタモキシフェン(4-ヒドロキシタモキシフェン、4-(1-[4-(ジメチルアミノエトキシ)フェニル]-2-フェニル-1-ブテニル)フェノール、Sigma-Aldrich、DMSO中5mMストック)による誘導の6時間後に、CD3-TCR複合体の膜発現についてフローサイトメトリーにより試験したTCR
-Jurkat-76(Jurkat76細胞は、CD8陰性ヒトT細胞リンパ腫Jurkat細胞株のTCRα-及びβ-誘導体であり、M. Heemskerkにより寄贈された)細胞を示す。細胞を含有する細胞培養培地で4-ヒドロキシタモキシフェンを10μMに希釈し(中央のプロット)、又は4-ヒドロキシタモキシフェンを追加しなかった(「タモキシフェンなし」、左端及び右端のプロット)。非トランスダクションJurkat-76細胞をTCR発現のネガティブコントロールとして使用し、、wt G11-3をトランスダクションしたJurkat-76 (Milosevic S. et al., J Virol 2006 Nov 80(21):10357-64)をG11-3 TCR発現のポジティブコントロールとして使用した。細胞を抗CD3-PECy7及び抗panTCR-PEで染色した。分析ツールFlowJo V10を使用して、プロットを生成した。
【
図3a-1】
図3aは、10μM 4-ヒドロキシタモキシフェンによる誘導後に、又はタモキシフェンを用いずに、iTCR-G11-3をトランスダクションし、CD3-TCR複合体の膜発現についてフローサイトメトリーにより評価したTCR
-Jurkat-76細胞を示す。非トランスダクションTCR
-Jurkat-76細胞をTCR発現のネガティブコントロールとして使用した。細胞を抗CD3-PECy7及び抗panTCR-PEで染色し、4-ヒドロキシタモキシフェン処理の0.5時間、1時間、4時間、6時間及び24時間後にフローサイトメトリーを実施した。
図3bは、5μM又は10μM 4-ヒドロキシタモキシフェンのいずれかを使用した経時的(0.5時間、1時間、4時間、6時間及び24時間)なiTCR-G11-3誘導の動態を示す。細胞を抗CD3-PECy7及び抗panTCR-PEで染色し、4-ヒドロキシタモキシフェン処理の0.5時間、1時間、4時間、6時間及び24時間後にフローサイトメトリーを実施した。graphPad Prism 7を使用して、グラフをプロットした。分析ツールFlowJo V10を使用して、プロットを生成した。
【
図3a-2】
図3aは、10μM 4-ヒドロキシタモキシフェンによる誘導後に、又はタモキシフェンを用いずに、iTCR-G11-3をトランスダクションし、CD3-TCR複合体の膜発現についてフローサイトメトリーにより評価したTCR
-Jurkat-76細胞を示す。非トランスダクションTCR
-Jurkat-76細胞をTCR発現のネガティブコントロールとして使用した。細胞を抗CD3-PECy7及び抗panTCR-PEで染色し、4-ヒドロキシタモキシフェン処理の0.5時間、1時間、4時間、6時間及び24時間後にフローサイトメトリーを実施した。
図3bは、5μM又は10μM 4-ヒドロキシタモキシフェンのいずれかを使用した経時的(0.5時間、1時間、4時間、6時間及び24時間)なiTCR-G11-3誘導の動態を示す。細胞を抗CD3-PECy7及び抗panTCR-PEで染色し、4-ヒドロキシタモキシフェン処理の0.5時間、1時間、4時間、6時間及び24時間後にフローサイトメトリーを実施した。graphPad Prism 7を使用して、グラフをプロットした。分析ツールFlowJo V10を使用して、プロットを生成した。
【
図3b】
図3aは、10μM 4-ヒドロキシタモキシフェンによる誘導後に、又はタモキシフェンを用いずに、iTCR-G11-3をトランスダクションし、CD3-TCR複合体の膜発現についてフローサイトメトリーにより評価したTCR
-Jurkat-76細胞を示す。非トランスダクションTCR
-Jurkat-76細胞をTCR発現のネガティブコントロールとして使用した。細胞を抗CD3-PECy7及び抗panTCR-PEで染色し、4-ヒドロキシタモキシフェン処理の0.5時間、1時間、4時間、6時間及び24時間後にフローサイトメトリーを実施した。
図3bは、5μM又は10μM 4-ヒドロキシタモキシフェンのいずれかを使用した経時的(0.5時間、1時間、4時間、6時間及び24時間)なiTCR-G11-3誘導の動態を示す。細胞を抗CD3-PECy7及び抗panTCR-PEで染色し、4-ヒドロキシタモキシフェン処理の0.5時間、1時間、4時間、6時間及び24時間後にフローサイトメトリーを実施した。graphPad Prism 7を使用して、グラフをプロットした。分析ツールFlowJo V10を使用して、プロットを生成した。
【
図4】
図4は、iTCR-G11-3及び誘導性NFAT応答性GFPレポーター(ieGFP)をトランスダクションし、5μM 4-ヒドロキシタモキシフェンで6時間誘導したJurkat-76を示す。関連TDAWRFAMNYPRNPT(「TDA」)ペプチド又は非関連PEVWILSPLLRHG(「PEV」)ペプチドのいずれかをロードしたLCLを培養物に追加した。共培養物におけるLCL:Jurkat-76の比は1:1であった。wt(野生型)G11-3をトランスダクションしたJurkat-76をポジティブコントロールとして使用した。コインキュベーションの24時間後にフローサイトメトリーを実施し、CD3、TCR及びGFP発現について細胞を評価した。分析ツールFlowJo V10を使用して、プロットを生成した。
【
図5a】
図5aは、iTCR-G11-3及びieGFPをトランスダクションし、1μM 4-ヒドロキシタモキシフェンで一晩誘導し、又は処理せずに放置した(なし)Jurkat-76を示す。非関連PEVペプチドをロードしたLCLを培養物に追加し、Incucyte Zoomデバイス(IncuCyte Zoom HD/2CLR System, Essen Bioscience)を使用してGFP誘導を経時的に追跡した(1時間、1.5時間及び3.5時間が示されている)。
図5bは、iTCR-G11-3及びieGFPをトランスダクションし、1μM 4-ヒドロキシタモキシフェンで一晩誘導し、又は処理せずに放置した(なし)Jurkat-76を示す。関連TDAペプチドをロードしたLCLを培養物に追加し、Incucyte Zoomデバイスを使用してGFP誘導を経時的に追跡した(1時間、1.5時間及び3.5時間が示されている)。
図5c:iTCR-G11-3及びieGFPをトランスダクションしたJurkat-76を、0.1μM、1μM又は5μM 4-ヒドロキシタモキシフェンで一晩誘導した。関連TDAペプチドをロードしたLCLを培養物に追加し、Incucyte Zoomデバイスを使用してGFP誘導を13時間追跡した。wt-G11-3をトランスダクションしたJurkat-76をポジティブコントロールとして使用した。動態の最初の14時間が示されている。Excelを使用して、グラフをプロットした。GFP蛍光強度は、緑色較正単位(GCU)×mm
2としてy軸に示されている。
【
図5b】
図5aは、iTCR-G11-3及びieGFPをトランスダクションし、1μM 4-ヒドロキシタモキシフェンで一晩誘導し、又は処理せずに放置した(なし)Jurkat-76を示す。非関連PEVペプチドをロードしたLCLを培養物に追加し、Incucyte Zoomデバイス(IncuCyte Zoom HD/2CLR System, Essen Bioscience)を使用してGFP誘導を経時的に追跡した(1時間、1.5時間及び3.5時間が示されている)。
図5bは、iTCR-G11-3及びieGFPをトランスダクションし、1μM 4-ヒドロキシタモキシフェンで一晩誘導し、又は処理せずに放置した(なし)Jurkat-76を示す。関連TDAペプチドをロードしたLCLを培養物に追加し、Incucyte Zoomデバイスを使用してGFP誘導を経時的に追跡した(1時間、1.5時間及び3.5時間が示されている)。
図5c:iTCR-G11-3及びieGFPをトランスダクションしたJurkat-76を、0.1μM、1μM又は5μM 4-ヒドロキシタモキシフェンで一晩誘導した。関連TDAペプチドをロードしたLCLを培養物に追加し、Incucyte Zoomデバイスを使用してGFP誘導を13時間追跡した。wt-G11-3をトランスダクションしたJurkat-76をポジティブコントロールとして使用した。動態の最初の14時間が示されている。Excelを使用して、グラフをプロットした。GFP蛍光強度は、緑色較正単位(GCU)×mm
2としてy軸に示されている。
【
図5c】
図5aは、iTCR-G11-3及びieGFPをトランスダクションし、1μM 4-ヒドロキシタモキシフェンで一晩誘導し、又は処理せずに放置した(なし)Jurkat-76を示す。非関連PEVペプチドをロードしたLCLを培養物に追加し、Incucyte Zoomデバイス(IncuCyte Zoom HD/2CLR System, Essen Bioscience)を使用してGFP誘導を経時的に追跡した(1時間、1.5時間及び3.5時間が示されている)。
図5bは、iTCR-G11-3及びieGFPをトランスダクションし、1μM 4-ヒドロキシタモキシフェンで一晩誘導し、又は処理せずに放置した(なし)Jurkat-76を示す。関連TDAペプチドをロードしたLCLを培養物に追加し、Incucyte Zoomデバイスを使用してGFP誘導を経時的に追跡した(1時間、1.5時間及び3.5時間が示されている)。
図5c:iTCR-G11-3及びieGFPをトランスダクションしたJurkat-76を、0.1μM、1μM又は5μM 4-ヒドロキシタモキシフェンで一晩誘導した。関連TDAペプチドをロードしたLCLを培養物に追加し、Incucyte Zoomデバイスを使用してGFP誘導を13時間追跡した。wt-G11-3をトランスダクションしたJurkat-76をポジティブコントロールとして使用した。動態の最初の14時間が示されている。Excelを使用して、グラフをプロットした。GFP蛍光強度は、緑色較正単位(GCU)×mm
2としてy軸に示されている。
【
図6】iTCR-G11-3及びieGFPをトランスダクションしたJurkat-76を0.05μM又は0.1μM 4-ヒドロキシタモキシフェンで一晩誘導した。サンプルを洗浄し、洗浄の1時間、2時間及び4時間後に、関連TDAペプチドをロードしたLCLを追加し、Incucyte Zoomデバイスを使用してGFP誘導を追跡した。ポジティブコントロール(左端列の写真)では、関連TDAペプチドをロードしたLCLを培養物に追加し、洗浄を実施しなかった。
【
図7a】
図7aは、誘導性TCR iTCR NY-ESO(iTCR-NY-ESO、MHC-I拘束TCR、上プロット)又はwt-NY-ESO TCR(下プロット)のいずれかをトランスダクションし、CD3-TCR複合体の膜発現についてフローサイトメトリーにより試験したTCR
-Jurkat-76細胞を示す。トランスダクション細胞はまた、BFP(青色蛍光タンパク質。iTCRをコードするベクターはまた、別個に発現されるレポーター遺伝子として青色蛍光タンパク質(mTag-BFP)を含有するので、トランスダクション細胞のみがBFP陽性である)を発現する(左のプロット)。右のプロットは、BFP+細胞のCD3及びTCR染色を示す。細胞を抗CD3-PECy7及び抗panTCR-PEで染色した。分析ツールFlowJo V10を使用して、プロットを生成した。
図7bは、誘導性TCR NY-ESO(iTCR-NY-ESO、MHC-I拘束TCR、上プロット)又はwt-NY-ESO TCR(下プロット)のいずれかをトランスダクションし、1μM 4-ヒドロキシタモキシフェン(DMSO中5mMストック)で誘導したTCR
-Jurkat-76細胞を示す。細胞を含有する細胞培養培地で4-ヒドロキシタモキシフェンを10μMに希釈した。トランスダクション細胞はまた、BFPを発現する(左のプロット)。右のプロットは、BFP+細胞のCD3及びTCR染色を示す。細胞を抗CD3-PECy7及び抗panTCR-PEで染色した。分析ツールFlowJo V10を使用して、プロットを生成した。
【
図7b】
図7aは、誘導性TCR iTCR NY-ESO(iTCR-NY-ESO、MHC-I拘束TCR、上プロット)又はwt-NY-ESO TCR(下プロット)のいずれかをトランスダクションし、CD3-TCR複合体の膜発現についてフローサイトメトリーにより試験したTCR
-Jurkat-76細胞を示す。トランスダクション細胞はまた、BFP(青色蛍光タンパク質。iTCRをコードするベクターはまた、別個に発現されるレポーター遺伝子として青色蛍光タンパク質(mTag-BFP)を含有するので、トランスダクション細胞のみがBFP陽性である)を発現する(左のプロット)。右のプロットは、BFP+細胞のCD3及びTCR染色を示す。細胞を抗CD3-PECy7及び抗panTCR-PEで染色した。分析ツールFlowJo V10を使用して、プロットを生成した。
図7bは、誘導性TCR NY-ESO(iTCR-NY-ESO、MHC-I拘束TCR、上プロット)又はwt-NY-ESO TCR(下プロット)のいずれかをトランスダクションし、1μM 4-ヒドロキシタモキシフェン(DMSO中5mMストック)で誘導したTCR
-Jurkat-76細胞を示す。細胞を含有する細胞培養培地で4-ヒドロキシタモキシフェンを10μMに希釈した。トランスダクション細胞はまた、BFPを発現する(左のプロット)。右のプロットは、BFP+細胞のCD3及びTCR染色を示す。細胞を抗CD3-PECy7及び抗panTCR-PEで染色した。分析ツールFlowJo V10を使用して、プロットを生成した。
【
図8a】
図8a:iTCR-NY-ESO-mTag-BFP(MHC-I拘束TCR)及びieGFPをトランスダクションしたJurkat-76を、非関連VLDGLDVLLペプチド又は関連ペプチドSLLMWITQCのいずれかをロードしたT2細胞と共にインキュベーションした。共培養物におけるT2:Jurkat-76の比は1:1であった。CD19のコインキュベーション染色の24時間後にフローサイトメトリーを実施し、青色蛍光、APC及びFITCチャネルの蛍光を決定した。ゲーティング戦略は、CD19
-(陰性)(したがって、CD19
+(陽性)であるT2ターゲット細胞を除く)及びBFP
+でゲーティングし、FACSのFITCチャネルのieGFPの蛍光を決定することであった。分析ツールFlowJo V10を使用して、プロットを生成した。
図8b:iTCR-NY-ESO(MHC-I拘束TCR)及びieGFPをトランスダクションしたJurkat-76を、1μMエンドキシフェン((E/Z)-エンドキシフェン塩酸塩水和物、Sigma-Aldrich))で一晩誘導し、次いで、非関連VLDGLDVLL(「T2-irr.Pept.」)ペプチド又は関連ペプチドSLLMWITQC(「T2-rel.pept.」)のいずれかをロードしたT2細胞と共にインキュベーションした。共培養物におけるT2:Jurkat-76の比は1:1であった。コインキュベーションの24時間後にフローサイトメトリーを実施し、BFP(トランスダクタント)、CD3、TCR及びGFP発現について細胞を評価した。分析ツールFlowJo V10を使用して、プロットを生成した。
【
図8b】
図8a:iTCR-NY-ESO-mTag-BFP(MHC-I拘束TCR)及びieGFPをトランスダクションしたJurkat-76を、非関連VLDGLDVLLペプチド又は関連ペプチドSLLMWITQCのいずれかをロードしたT2細胞と共にインキュベーションした。共培養物におけるT2:Jurkat-76の比は1:1であった。CD19のコインキュベーション染色の24時間後にフローサイトメトリーを実施し、青色蛍光、APC及びFITCチャネルの蛍光を決定した。ゲーティング戦略は、CD19
-(陰性)(したがって、CD19
+(陽性)であるT2ターゲット細胞を除く)及びBFP
+でゲーティングし、FACSのFITCチャネルのieGFPの蛍光を決定することであった。分析ツールFlowJo V10を使用して、プロットを生成した。
図8b:iTCR-NY-ESO(MHC-I拘束TCR)及びieGFPをトランスダクションしたJurkat-76を、1μMエンドキシフェン((E/Z)-エンドキシフェン塩酸塩水和物、Sigma-Aldrich))で一晩誘導し、次いで、非関連VLDGLDVLL(「T2-irr.Pept.」)ペプチド又は関連ペプチドSLLMWITQC(「T2-rel.pept.」)のいずれかをロードしたT2細胞と共にインキュベーションした。共培養物におけるT2:Jurkat-76の比は1:1であった。コインキュベーションの24時間後にフローサイトメトリーを実施し、BFP(トランスダクタント)、CD3、TCR及びGFP発現について細胞を評価した。分析ツールFlowJo V10を使用して、プロットを生成した。
【
図9】iTCR-NY-ESO(MHC-I拘束TCR)をトランスダクションしたCD8
+PBL又はwt-NY-ESOを発現するCD8
+PBLを1、5、10若しくは20μMエンドキシフェンで一晩誘導し、又は誘導せずに放置した(エンドキシフェンなし)。誘導の24時間後、関連ペプチドSLLMWITQC又は非関連ペプチドVLDGLDVLLをロードしたT2細胞を培養物に追加した。T2ターゲットによる刺激の24時間後に培養上清を用いて実施した標準的なIFN-γELISAにより、IFN-γ分泌を検出した。誘導の48時間後にフローサイトメトリーを実施し、BFP(トランスダクタント)、CD3及びBV6-5について細胞を評価した。示されている例示的なプロットは、誘導なしの場合の又は20μMエンドキシフェンありの場合のiTCR-NY-ESOトランスダクションCD8
+PBLである。分析ツールFlowJo V10を使用して、プロットを生成した。graphPad Prism 7を使用して、グラフをプロットした。
【
図10】i-NY-ESO(MHC-I拘束TCR)をトランスダクションしたCD8
+PBL又はwt-NY-ESOを発現するCD8
+PBLを10μMエンドキシフェンで20時間誘導し(+誘導)、又は処理せずに放置した(誘導なし)。次いで、細胞を、関連ペプチドをロードしたNuclightRedを発現するT2細胞(+pept)又は非関連コントロールペプチドをロードしたT2 NuclightRed細胞(+ctrl)と共にインキュベーションした。Incucyte Zoomデバイスを使用して、T2細胞の死滅を経時的に追跡した。A)写真は、T細胞及びターゲット細胞のインキュベーションの42時間後を示す。上パネルでは、T細胞をエンドキシフェンで誘導しなかった。下パネルは、エンドキシフェンで誘導したT細胞を示す。T2 NuclightRed細胞は中央に表示されており、暗灰色である。エフェクター細胞は薄灰色である。B)グラフは、経時的なT2 NuclightRed細胞の密度(最大42時間)を示す。モックは、非トランスダクションCD8+PBLである。
【
図11-1】ヒト定常アルファ領域のIMGTによるアミノ酸ナンバリング命名法を使用したTCRアルファ定常領域:http://www.imgt.org/IMGTrepertoire/Proteins/alleles/index.php?species=Homo%20sapiens&group=TRAC&gene=TRAC1,
【
図11-2】ヒト定常アルファ領域のIMGTによるアミノ酸ナンバリング命名法を使用したTCRアルファ定常領域:http://www.imgt.org/IMGTrepertoire/Proteins/alleles/index.php?species=Homo%20sapiens&group=TRAC&gene=TRAC1,
【
図11-3】ヒト定常アルファ領域のIMGTによるアミノ酸ナンバリング命名法を使用したTCRアルファ定常領域:http://www.imgt.org/IMGTrepertoire/Proteins/alleles/index.php?species=Homo%20sapiens&group=TRAC&gene=TRAC1,
【
図12-1】ヒト定常ベータ領域対立遺伝子C1のIMGTによるアミノ酸ナンバリング命名法を使用したTCRベータ定常領域:http://www.imgt.org/IMGTrepertoire/Proteins/alleles/index.php?species=Homo%20sapiens&group=TRBC&gene=TRBC1.
【
図12-2】ヒト定常ベータ領域対立遺伝子C1のIMGTによるアミノ酸ナンバリング命名法を使用したTCRベータ定常領域:http://www.imgt.org/IMGTrepertoire/Proteins/alleles/index.php?species=Homo%20sapiens&group=TRBC&gene=TRBC1.
【
図12-3】ヒト定常ベータ領域対立遺伝子C1のIMGTによるアミノ酸ナンバリング命名法を使用したTCRベータ定常領域:http://www.imgt.org/IMGTrepertoire/Proteins/alleles/index.php?species=Homo%20sapiens&group=TRBC&gene=TRBC1.
【
図12-4】ヒト定常ベータ領域対立遺伝子C1のIMGTによるアミノ酸ナンバリング命名法を使用したTCRベータ定常領域:http://www.imgt.org/IMGTrepertoire/Proteins/alleles/index.php?species=Homo%20sapiens&group=TRBC&gene=TRBC1.
【
図13】PRAME抗原を認識するwt TCR(wt TCR)、並びに定常ベータ鎖(配列番号4)におけるアミノ酸残基4、5及び37がそれぞれV、P及びKに突然変異したPRAME抗原を認識するTCRをトランスダクションしたTCR
-Jurkat-76細胞。モックコントロールは、非トランスダクションJurkat-76 TCR-/-細胞である。CD3及びTCR発現について、フローサイトメトリーにより細胞を評価した。分析ツールFlowJo V10を使用して、プロットを生成した。
【
図14】ieGFPレポーターを含有するTCR
-Jurkat-76細胞を、定常アルファ及びベータ鎖の両C末端にエストロゲンレセプターを有し、定常ベータ鎖(配列番号4)におけるアミノ酸残基4、5及び37がそれぞれV、P及びKに突然変異したG11-3 TCRでトランスダクションした。細胞を1μMエンドキシフェンで24時間誘導した。次いで、細胞を、関連TDAWRFAMNYPRNPTペプチド(関連)又は非関連PEVWILSPLLRHGペプチド(非関連)のいずれかをロードしたLCL細胞と共にインキュベーションした。共培養物におけるLCL:Jurkat-76の比は1:1であった。コインキュベーションの24時間後に、誘導eGFPのフローサイトメトリー評価を実施した。分析ツールFlowJo V10を使用して、プロットを生成した。
【0077】
以下の実施例は本発明を例示するが、しかしながら、本発明及び特許請求の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0078】
実施例
【0079】
略語及び同義語
APC 抗原提示細胞
BFP 青色蛍光タンパク質
ER 小胞体
ERT2 エストロゲンレセプター(突然変異された変異体)
GFP 緑色蛍光タンパク質
iTCR 誘導性TCR
ieGFP 誘導性強化GFP
LCL リンパ芽球様細胞株
On/off 誘導性TCR
PBL 末梢血リンパ球
TCR T細胞レセプター
4-OH-タモキシフェン 4-ヒドロキシタモキシフェン
【0080】
実施例1:T細胞レセプターを誘導性にする
【0081】
TCRアルファ及びベータ鎖対形成を障害することを目的として、本発明者らは、TCRアルファ定常及びTCRベータ定常領域のアミノ酸突然変異であって、TCRアルファ及びベータ鎖対形成を障害するるが、TCRアルファ鎖とCD3イプシロン及びCD3デルタとの対形成、並びにTCRベータ鎖とCD3ガンマ及びCD3イプシロンとの対形成を妨げないアミノ酸突然変異を検索した。このようなアミノ酸を同定するために、本発明者らは文献の広範な検索を行い、公知のTCRの結晶構造がTCRアルファ及びベータ鎖とCD3サブユニットとの不変相互作用を保持することを検討した(表
2及び
3)。問題のTCRを誘導性にするために、二量体化(例えば、ERT2)又はヘテロ二量体化(例えば、FKBP、FRB)ドメインを、各突然変異非対形成アルファ及びベータ定常領域のC末端に挿入する。このiTCRを有する細胞を二量体化剤(例えば、4-ヒドロキシタモキシフェン、4-(1-[4-(ジメチルアミノエトキシ)フェニル]-2-フェニル-1-ブテニル)フェノール、Sigma-Aldrich)又はヘテロ二量体剤(例えば、AP21967、23,27-エポキシ-3H-ピリド[2,1-c][1,4]オキサアザシクロヘントリアコンチン;Sigma-Aldrich)に曝露することにより、TCRα-CD3εδ複合体は、小胞体中でTCRβ-CD3εγ複合体と対形成し、続いて、TCRα-CD3εδ-TCRβ-CD3εγは、ゴルジ装置中でCD3ζとアセンブルされ、細胞表面に輸送されるはずである(Feige MJ., et al. J Biol Chem. 2015 Oct 30; 290(44):26821-31)。iTCRが細胞表面上にあると、それは、元の非誘導性TCRと同等に、抗原提示細胞(APC)により提示されるそのpMHC複合体を認識するはずである(
図1)。
【0082】
実施例2:Jurkat-76細胞における4-ヒドロキシタモキシフェンを使用した、MHCクラスII拘束iTCRアルファ及びベータ鎖対形成の障害並びにアルファ及びベータ対形成の誘導の試験
iTCR-G11-3を含有する合成カセットをレンチウイルスベクターpCDHにクローニングし、0.5×10
6個のTCR
-/-Jurkat-76細胞にトランスダクションした(
図2~6)。iTCR-G11-3 TCRカセットは、MHCクラスII拘束TCR G11-3のV-アルファ及びV-ベータ配列と(Milosevic S. et al., J Virol 2006 Nov 80(21):10357-64)、表
2に示されているアルファ及びベータ定常領域に突然変異と、各アルファ及びベータ定常領域のC末端にERT2とを含有する。ERT2は、エストロゲンレセプターのヒトリガンド結合ドメインの突然変異型であり、タモキシフェン活性代謝産物に結合し得るが、エストラジオールに結合し得ない(Feil R., et al., Biochem Biophys Res Commun. 1997 Aug 28;237(3):752-7)。ERT2ヌクレオチド及びアミノ酸配列は、それぞれ配列番号7及び8に示されている。フローサイトメトリーを使用して、iTCR-G11-3を有する非誘導性Jurkat細胞を抗CD3(CD3-PECy7、SK7、557851、BD)及び抗TCR(panTCR-PE、IP26、B49177、Beckman Coulter)で染色することにより、iTCR-G11-3の発現の欠如を試験した。4-ヒドロキシタモキシフェンによる誘導がない場合、CD3又はTCRを細胞の表面上で検出することができなかった。対照的に、iTCR-G11-3を有するJurkat細胞を10μM 4-ヒドロキシタモキシフェンで誘導することにより、誘導の6時間後に、TCR及びCD3の両方を細胞の表面上で検出することができた(
図2)。iTCRの表面発現を検出し得る最も早い時点及び最も遅い時点を特定するために、iTCR-G11-3を有するJurkat細胞を5又は10μM 4-ヒドロキシタモキシフェンで誘導し、処理の0.5時間、1時間、4時間、6時間及び24時間後に、CD3及びTCR発現についてアッセイした(
図3a及び3b)。非誘導性Jurkat及び非トランスダクションTCR
-/-JurkatをTCR/CD3表面発現のネガティブコントロールとして使用した。誘導の4時間後に表面iTCR発現を検出することができ、24時間後であっても発現は持続していた。
【0083】
実施例3:Jurkat-76細胞における4-ヒドロキシタモキシフェンを用いた、iTCRアルファ及びベータ鎖対形成の誘導後のMHCクラスII拘束iTCR機能の試験
一般に、TCRトランスダクションJurkat細胞は、pMHC認識によりサイトカインを分泌しないので、本発明者らは、機能的TCRシグナリングのリードアウトとして誘導性NFAT応答性GFPレポーターカセット(ieGFP)を使用した。ieGFPカセットをレンチウイルスベクターpCDH(System Biosciences)にクローニングし、0.5×10
6個のTCR
-/-Jurkat-76細胞にトランスダクションした。次いで、ieGFPを有する同じJurkat細胞を、iTCR-G11-3カセットを有するレンチウイルスベクターをトランスダクションした(
図4~6)。また、wt G11-3 TCRを、ieGFPを有するJurkat細胞にトランスダクションし、G11-3 TCRシグナリングのポジティブコントロールとして機能させた(
図4及び5c)。非関連ペプチド「PEV」(PEVWILSPLLRHG)又はペプチド「TDA」(TDAWRFAMNYPRNPT)(これは、G11-3 TCRにより認識される)のいずれかをロードした(抗原提示細胞として使用した)LCL細胞を、iTCR-G11-3-ieGFP Jurkat細胞又はwt-G11-3-ieGFP Jurkat細胞のいずれかと共にインキュベーションした。ペプチドを1×10
-5Mの濃度でロードした。予想どおり、5μM 4-ヒドロキシタモキシフェンで誘導し、LCL+TDAと共にインキュベーションした後に、wt-G11-3を発現するJurkat細胞、又はiTCR-G11-3を発現するJurkat細胞のいずれかについてのみ、GFPシグナル及びしたがって機能的TCRシグナリングが見られた(
図4)。抗CD3(CD3-PECy7、SK7、557851、BD)及び抗TCR(panTCR-PE、IP26、B49177、Beckman Coulter)の染色について、フローサイトメトリー分析を実施した。
【0084】
実施例4:4-ヒドロキシタモキシフェンの除去時の、pMHC認識後iTCRシグナリングの速度及びTCRシグナルカスケードのスイッチオフの速度の決定。
iTCR-G11-3がどれほど速くシグナリングし得るかを決定するために、iTCR-G11-3及びieGFPを有する1×10
4個のJurkat細胞を1μM 4-ヒドロキシタモキシフェンで一晩(ON)誘導した。誘導なしの場合のTCR発現の欠如をモニタリングするために、iTCR-G11-3及びieGFPを有するJurkat細胞をコントロールとして処理せずに放置した。PEV非関連ペプチドをロードしたLCL(
図5a)又はTDA関連ペプチドをロードしたLCL(
図5b)のいずれかを培養物に追加し、Incucyteデバイスを使用してGFPシグナルを経時的に追跡した。関連ペプチドをロードしたAPC(抗原提示細胞)とのインキュベーションの1時間後直ぐに、GFPシグナルは開始し(
図5b及び5c)、シグナルは、インキュベーションの約7時間後まで増加し続ける(
図5c)。ペプチドを1×10
-5Mの濃度でロードした。興味深いことに、iTCR-G11-3 TCRにより誘発されたGFPシグナルは、wt-G11-3 TCRにより誘発されたシグナルよりも経時的に常に高かった(
図5c)。APCとして機能するLCL上のiTCR発現T細胞に非関連ペプチドが提示されると、GFPの誘導は見られなかった。
4-ヒドロキシタモキシフェンの除去時にiTCRがどれほと速くダウンレギュレーションされるかを分析するために、最初に、iTCR-G11-3及びieGFPを発現するJurkat細胞を0.05μM又は0.1μM 4-ヒドロキシタモキシフェンで一晩誘導した。翌日、細胞から4-ヒドロキシタモキシフェンを洗い流し、又は洗浄せずに放置し(ポジティブコントロール)、4-ヒドロキシタモキシフェンの除去の1時間、2時間又は4時間後に、関連TDAペプチドをロードしたLCLと共にインキュベーションし、続いて、Incucyteを使用してGFPシグナルを検出した(
図6)。0.05μM 4-ヒドロキシタモキシフェンで誘導した細胞から二量体化剤を洗い流した1時間後に、及び0.1μM 4-ヒドロキシタモキシフェンを洗い流した4時間後に、未洗浄コントロールと比較したGFPシグナルの減少が既に見られた。したがって、iTCRを迅速に誘導し、二量体化剤の除去により迅速にダウンレギュレーションすることができた。
【0085】
実施例5:Jurkat-76細胞における4-ヒドロキシタモキシフェンを用いた、iTCRアルファ及びベータ鎖対形成の誘導後のMHCクラスI拘束iTCRの発現及び機能の試験
P2Aにより分離されたiTCR-NY-ESO TCR及びmTag-BFPを含有する合成カセットをレンチウイルスベクターpCDHにクローニングし、0.5×10
6個のTCR
-/-Jurkat-76細胞にトランスダクションした(
図7及び8)。iTCRをコードするベクターはまた、別個に発現されるレポーター遺伝子として青色蛍光タンパク質(mTag-BFP)を含有するので、全てのトランスダクション細胞はBFP陽性である。iTCR-NY-ESO TCRカセットは、NY-ESO抗原(ベンチマークNY-ESO TCR;国際公開公報第2005/113595号を参照のこと)を認識するMHCクラスI拘束TCRのV-アルファ及びV-ベータ配列と、表
2に示されているアルファ及びベータ定常領域に突然変異と、各アルファ及びベータ定常領域のC末端にERT2とを含有する。フローサイトメトリーのために、iTCR-NY-ESOを有する非誘導性Jurkat細胞を抗CD3及び抗TCRで染色することにより、iTCR-NY-ESOの発現の欠如を試験したところ、4-ヒドロキシタモキシフェンによる誘導なしの場合の細胞の表面上では、CD3又はTCRを検出することができなかった(
図7a)。対照的に、iTCR-NY-ESOを有するJurkat細胞を1μM 4-ヒドロキシタモキシフェンで誘導することにより、TCR及びCD3の両方を細胞の表面上で検出することができた(
図7b)。抗CD3(CD3-PECy7、SK7、557851、BD)及び抗TCR(panTCR-PE、IP26、B49177、Beckman Coulter)の染色について、フローサイトメトリー分析を実施した。
誘導の際に、iTCR-NY-ESOが機能的であるかを決定するために、ieGFPを有するJurkat細胞を、iTCR-NY-ESOカセットを有するレンチウイルスベクターをトランスダクションした。また、wt NY-ESO TCRを、ieGFPを有するJurkat細胞にトランスダクションし、NY-ESO TCRシグナリングのポジティブコントロールとして機能させた。非関連ペプチドVLDGLDVLL(
図8a)又は関連ペプチドSLLMWITQC(
図8b)(これは、NY-ESO TCRにより認識される)のいずれかをロードしたT2細胞を、iTCR-NY-ESO-ieGFP Jurkats又はwt-NY-ESO-ieGFP Jurkatと共にインキュベーションした。ペプチドを1×10
-5Mの濃度でロードした。予想どおり、1μM 4-ヒドロキシタモキシフェンで誘導し、T2+関連ペプチドと共にインキュベーションした後に、wt-NY-ESOを発現するJurkat、又はiTCR-NY-ESOを発現するJurkatのいずれかについてのみ、GFPシグナル及びしたがって機能的TCRシグナリングが見られた。CD19
陰性BFP陽性細胞についてゲーティング戦略をゲーティングし、続いて、ieGFP蛍光(CD19-APCeF780、HIB19、47-0199-42、eBioscience)を決定した。
【0086】
実施例6:CD8
+PBLにおけるエンドキシフェンを用いた、iTCRアルファ及びベータ鎖対形成の誘導後のMHCクラスI拘束iTCR発現及び機能の試験
市販の細胞単離キット(CD8+未使用)を使用してCD8
+細胞について、健常ドナー由来のPBLを濃縮し、iTCR-NY-ESOカセットを有するレンチウイルスベクター又はポジティブコントロールとしてwt-NY-ESOを有するレンチウイルスベクターをトランスダクションした。4-ヒドロキシタモキシフェンによるiTCR-NY-ESOの誘導は、試験したいかなる濃度においてもPBLでiTCR-NY-ESOを誘導しなかったので(データは示さず)、本発明者らは、エンドキシフェンと称される別の活性タモキシフェン代謝産物を使用した。いずれかのiTCR-NY-ESOを有するCD8
+細胞を20μMエンドキシフェンで一晩誘導し、又は処理せずに放置した。次いで、CD3(CD3-PECy7、SK7、557851、BD)及び特異的V-ベータファミリーBV6-5(抗体:TRBV6-5-PE、IMMU 222、IM2292、Beckman Coulter)について、細胞を染色した。エンドキシフェンによる処理は、細胞の表面上におけるiTCR-NY-ESOの誘導をもたらした(
図9)。処理なしの場合、内因性発現BV6-5陽性細胞のみが見られる。
PBLにおいて誘導された場合にiTCR-NY-ESOが機能的であるかを決定するために、関連ペプチドSLLMWITQC又は非関連ペプチドVLDGLDVLLをロードしたT2細胞を、1、5、10若しくは20μMエンドキシフェン誘導iTCR-NY-ESO CD8
+PBL又は非誘導iTCR-NY-ESO CD8
+PBL又はポジティブコントロールとしてwt-NY-ESOを有するCD8
+PBLと共にインキュベーションした。ペプチドを1×10
-5Mの濃度でロードした。1日後、培養物の上清を収集し、標準的なIFN-γELISAを実施した。wt-NY-ESOについてはエンドキシフェン処理にかかわらず、及びiTCR-NY-ESOについてはエンドキシフェンによる誘導後にのみ、IFN-γを高レベルで検出することができた(
図9)。これらの結果は、iTCR-NY-ESOをPBLの表面上で誘導することができ、それがwt-NY-ESO TCRと同じ機能特徴を有することを示している。
さらなる実験では、i-TCRを有するT細胞は細胞毒性であり、ターゲットを排除し得ることが見出された。この場合もやはり、i-NY-ESO(MHC-I拘束TCR)をトランスダクションしたCD8
+PBL又はwt-NY-ESOを発現するCD8
+PBLを10μMエンドキシフェンで20時間誘導し(+誘導)、又は処理せずに放置した(誘導なし)。次いで、細胞を、関連ペプチドをロードしたNuclightRedを発現するT2細胞(+pept)又は非関連コントロールペプチドをロードしたT2 NuclightRed細胞(+ctrl)と共にインキュベーションした。Incucyte Zoomデバイスを使用して、T2細胞の死滅を経時的に追跡した。
図10Aの写真は、T細胞及びターゲット細胞のインキュベーションの42時間後を示す。上パネルでは、T細胞をエンドキシフェンで誘導しなかった。下パネルは、エンドキシフェンで誘導したT細胞を示す。T2 NuclightRed細胞は中央に表示されており、暗灰色である。エフェクター細胞は薄灰色である。
図10Bでは、グラフは、経時的なT2 NuclightRed細胞の密度(最大42時間)を示す。
図10では、モックという表示の細胞は、非トランスダクションCD8+PBLである。
【0087】
実施例7:wt TCR、並びにベータ鎖(配列番号4、表
3を参照のこと)に突然変異K4V、N5P及びY37Kを有するTCRをトランスダクションしたTCR-/-細胞におけるCD3及びTCR発現の試験。
Jurkat-76 TCR-/-を、PRAME抗原を認識するwt TCR(wt TCR)、並びに定常ベータ鎖(配列番号4)にアミノ酸突然変異K4V、N5P及びY37Kを有するPRAMEを認識するTCRをトランスダクションした。モックコントロールは、非トランスダクションJurkat-76 TCR-/-細胞である。フローサイトメトリーを実施し、CD3及びTCR発現について細胞を評価した。分析ツールFlowJo V10を使用して、プロットを生成した。
図13から分かるように、突然変異TCRはCD3及びTCRの発現を示さないが、これは、突然変異TCRが膜上で発現され得ないことを示している。
【0088】
実施例8:ベータ鎖(配列番号4、表
3)における突然変異K4V、N5P及びY37KはTCR発現を妨げるが、これは、アルファ及びベータ定常鎖のC末端に含まれるエストロゲンレセプターの二量体化によりレスキューされ得る
ieGFPレポーターを含有するJurkat-76を、定常アルファ及びベータ鎖のC末端の両方にエストロゲンレセプターを有し、定常ベータ鎖(配列番号4、表
3)にアミノ酸残基K4V、N5P及びY37Kを有するG11-3 TCRにトランスダクションした。細胞を1μMエンドキシフェンで24時間誘導した。次いで、細胞を、非関連ペプチド又は関連ペプチドのいずれかをロードしたLCL細胞と共にインキュベーションした。共培養物におけるLCL:Jurkat-76の比は1:1であった。コインキュベーションの24時間後にフローサイトメトリーを実施し、eGFP発現について細胞を評価した。分析ツールFlowJo V10を使用して、プロットを生成した。
図14は、ieGFPが、関連ペプチドに応答して発現されたことを示す。これは、ベータ定常鎖の位置4、5及び37に突然変異を有するTCRが、エンドキシフェン誘導二量体化後に依然として機能的であることを明らかにしている。したがって、エンドキシフェンにより誘導される二量体化後のTCR-CD3複合体形成を妨げずに、定常ベータ鎖(配列番号4)の位置4、5及び37のアミノ酸を突然変異させることができる。
【配列表】