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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】二酸化塩素発生装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 11/02 20060101AFI20240104BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20240104BHJP
   A61L 9/12 20060101ALI20240104BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
C01B11/02 F
B01J23/42 M
A61L9/12
A61L9/01 F
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020553797
(86)(22)【出願日】2019-10-21
(86)【国際出願番号】 JP2019041278
(87)【国際公開番号】W WO2020090539
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2018202566
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391003392
【氏名又は名称】大幸薬品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】辻本 翔平
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-110277(JP,A)
【文献】特開2010-57429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 11/02
B01J 23/42
A61L 9/12
A61L 9/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加湿機構とバブリング機構とを備えた二酸化塩素発生装置であって、
当該装置は、反応用容器と加湿用容器と空気導入装置とを含み、
前記反応用容器は、亜塩素酸塩水溶液、及び、触媒を含み、
前記加湿用容器は、加湿用溶液を含み、
前記加湿用容器は、装置外部から空気を導入する第1の導管を備え、
前記加湿用容器と前記反応用容器とは第2の導管によって接続されており
前記加湿用容器は、概ね密閉されており、
前記空気導入装置は前記二酸化塩素発生装置の流路に設けられており、
前記加湿用容器は、前記空気導入装置の作動時に、前記第1の導管を介して提供される空気が前記加湿用溶液中にバブリングされることにより、前記加湿用容器中の空気が加湿されるように構成され
前記反応用容器は、前記加湿用容器中の加湿された空気が前記第2の導管を介して、前記反応用容器中の亜塩素酸塩水溶液にバブリングされるように構成されている
ことを特徴とする、
装置。
【請求項2】
加湿機構とバブリング機構とを備えた二酸化塩素発生装置であって、
当該装置は、反応用容器と反応液保持容器と加湿用容器と空気導入装置とを含み、
前記反応用容器は、触媒を含み、
前記反応液保持容器は、亜塩素酸塩水溶液を含み、
前記加湿用容器は、加湿用溶液を含み、
前記加湿用容器は、装置外部から空気を導入する第1の導管を備え、
前記加湿用容器と前記反応液保持容器は、第2の導管によって接続されている、または、それぞれの容器に含まれる溶液の上方の空気が容器間を移動可能なように相互に連結されており、
前記反応液保持容器と前記反応用容器は第3の導管によって接続されており、
前記加湿用容器は、概ね密閉されており、
前記反応液保持容器は、概ね密閉されており、
前記空気導入装置は前記二酸化塩素発生装置の流路に設けられており、
前記加湿用容器は、前記空気導入装置の作動時に、前記空気導入装置から前記第1の導管を介して提供される空気が前記加湿用溶液中にバブリングされることにより、前記加湿用容器中の空気が加湿されるように構成され、
前記反応液保持容器は、前記空気導入装置の作動時に、前記加湿用容器中の加湿された空気が前記反応液保持容器中に提供されるように構成されており、
前記反応用容器は、前記空気導入装置の作動時に、前記反応液保持容器中の亜塩素酸塩水溶液が前記第3の導管を介して、前記反応用容器中に提供され、続いて、前記反応液保持容器中の加湿された空気が前記第3の導管を介して、前記反応用容器中の前記亜塩素酸塩水溶液にバブリングされるように構成されており、
前記反応液保持容器及び前記反応用容器は、前記空気導入装置を作動状態から停止させる場合に、前記空気導入装置の作動状態において前記反応用容器中に移動していた前記亜塩素酸塩水溶液が、前記第3の導管を介して、前記反応液保持容器中に戻るように構成されている、
ことを特徴とする、
装置。
【請求項3】
請求項2に記載の二酸化塩素発生装置であって、
前記反応用容器が、前記反応液保持容器の上方に配置されることを特徴とする、
装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の二酸化塩素発生装置であって、
前記装置は、前記空気導入装置の作動時に前記反応用容器中の前記亜塩素酸塩水溶液にバブリングされる空気が、前記触媒に接触するように構成されることを特徴とする、
装置。
【請求項5】
請求項1または2項に記載の二酸化塩素発生装置であって、
前記反応用容器は、少なくとも部分的に開放されており、前記反応用容器内で生成された二酸化塩素を含む空気が前記装置の外部へ放出されるように構成されることを特徴とする、
装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の二酸化塩素発生装置であって、
前記空気導入装置の作動時において、前記反応用容器が、前記亜塩素酸塩水溶液および前記触媒のみを含むことを特徴とする、
装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載の二酸化塩素発生装置であって、
電気分解機構を含まないことを特徴とする、
装置。
【請求項8】
請求項1または2に記載の二酸化塩素発生装置であって、
前記亜塩素酸塩水溶液が、亜塩素酸アルカリ金属塩水溶液または亜塩素酸アルカリ土類金属塩水溶液であることを特徴とする、
装置。
【請求項9】
請求項8に記載の二酸化塩素発生装置であって、
前記亜塩素酸アルカリ金属塩水溶液が、亜塩素酸ナトリウム水溶液、亜塩素酸カリウム水溶液、または、亜塩素酸リチウム水溶液であり、
亜塩素酸アルカリ土類金属塩水溶液が、亜塩素酸カルシウム水溶液、亜塩素酸マグネシウム水溶液、または、亜塩素酸バリウム水溶液である、
ことを特徴とする、
装置。
【請求項10】
請求項1または2に記載の二酸化塩素発生装置であって、
前記亜塩素酸塩水溶液の濃度が0.01~45重量%であることを特徴とする、
装置。
【請求項11】
請求項1または2に記載の二酸化塩素発生装置であって、
前記加湿用溶液が水であることを特徴とする、
装置。
【請求項12】
請求項11に記載の二酸化塩素発生装置であって、
前記加湿用溶液が水道水であることを特徴とする、
装置。
【請求項13】
請求項1または2に記載の二酸化塩素発生装置であって、
前記触媒が、固体触媒であることを特徴とする、
装置。
【請求項14】
請求項13に記載の二酸化塩素発生装置であって、
前記触媒が、金属系触媒、鉱物系触媒、炭素系触媒、または、これらの組み合わせであることを特徴とする、
装置。
【請求項15】
請求項14に記載の二酸化塩素発生装置であって、
前記金属触媒が、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、鉄(Fe)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、または、これらの金属の化合物、を含む触媒であり、
前記鉱物系触媒が、シリカ(Si)、または、シリカを含む化合物、を含む触媒であり、
前記炭素系触媒が、活性炭を含む触媒、
であることを特徴とする、
装置。
【請求項16】
請求項1または2に記載の二酸化塩素発生装置であって、
前記触媒が、担体に担持されていることを特徴とする、
装置。
【請求項17】
請求項16に記載の二酸化塩素発生装置であって、
前記担体が、チタン、バルブ金属、ステンレス、ニッケル、セラミックス、炭素、および、多孔質物質からなる群から選択される材料を含む担体であることを特徴とする、
装置。
【請求項18】
請求項1または2に記載の二酸化塩素発生装置であって、
前記空気導入装置が、前記二酸化塩素発生装置の流路の始点から前記流路内へ空気を導入する装置、前記二酸化塩素発生装置の流路の途中において前記流路内の空気を一方向に移動させる装置、または、前記二酸化塩素発生装置の流路の終点から前記流路内の空気を吸引する装置、であることを特徴とする、
装置。
【請求項19】
請求項18に記載の二酸化塩素発生装置であって、
前記空気導入装置が、電動式のエアポンプであることを特徴とする、
装置。
【請求項20】
請求項1または2に記載の二酸化塩素発生装置であって、
前記装置を1月継続して作動させた時点において前記装置から放出される空気に含まれる二酸化塩素濃度が、前記装置を1週間継続して作動させた時点において前記装置から放出される空気に含まれる二酸化塩素濃度と比較して、少なくとも50%以上維持されることを特徴とする、
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な二酸化塩素発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化塩素ガスは、低濃度(例えば、0.1ppm以下)では動物の生体に対して安全なガスである一方、そのような低濃度でも、細菌・真菌・ウイルス等の微生物に対する失活作用や、消臭作用等を有していることが知られている。
【0003】
二酸化塩素の発生方法としては、例えば、溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸塩水溶液、および、pH調整剤を含む組成物により、安定的に二酸化塩素を発生させる方法(特許文献1)や、亜塩素酸塩を含有する電解液を電気分解して二酸化塩素を製造する方法が知られている(特許文献2)。
【0004】
また、近年、固形の亜塩素酸塩に可視光を照射することによって二酸化塩素を発生させる装置も提案されている(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO/2008/111357
【文献】WO/2009/154143
【文献】WO/2015/098732
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の二酸化塩素発生装置と比較して、より簡易な構成で、長期間安定して二酸化塩素を発生させることができる装置を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、亜塩素酸塩水溶液と触媒との反応による二酸化塩素発生メカニズムを利用した、新規な二酸化塩素発生装置の開発に成功し、本発明を完成させるに到った。
【0008】
すなわち本発明は、一実施形態は、加湿機構とバブリング機構とを備えた二酸化塩素発生装置であって、
当該装置は、反応用容器と加湿用容器と空気導入装置とを含み、
前記反応用容器は、亜塩素酸塩水溶液、及び、触媒を含み、
前記加湿用容器は、加湿用溶液を含み、
前記加湿用容器は、装置外部から空気を導入する第1の導管を備え、
前記加湿用容器と前記反応用容器とは第2の導管によって接続されている、または、それぞれの容器に含まれる溶液の上方の空気が容器間を移動可能なように相互に連結されており、
前記加湿用容器は、概ね密閉されており、
前記空気導入装置は前記二酸化塩素発生装置の流路に設けられており、
前記加湿用容器は、前記空気導入装置の作動時に、前記第1の導管を介して提供される空気が前記加湿用溶液中にバブリングされることにより、前記加湿用容器中の空気が加湿されるように構成され
前記反応用容器は、前記加湿用容器中の加湿された空気が前記第2の導管を介して、前記反応用容器中の亜塩素酸塩水溶液にバブリングされるように構成されている
ことを特徴とする。
【0009】
本発明の一実施形態は、加湿機構とバブリング機構とを備えた二酸化塩素発生装置であって、
当該装置は、反応用容器と反応液保持容器と加湿用容器と空気導入装置とを含み、
前記反応用容器は、触媒を含み、
前記反応液保持容器は、亜塩素酸塩水溶液を含み、
前記加湿用容器は、加湿用溶液を含み、
前記加湿用容器は、装置外部から空気を導入する第1の導管を備え、
前記加湿用容器と前記反応液保持容器は、第2の導管によって接続されている、または、それぞれの容器に含まれる溶液の上方の空気が容器間を移動可能なように相互に連結されており、
前記反応液保持容器と前記反応用容器は第3の導管によって接続されており、
前記加湿用容器は、概ね密閉されており、
前記反応液保持容器は、概ね密閉されており、
前記空気導入装置は前記二酸化塩素発生装置の流路に設けられており、
前記加湿用容器は、前記空気導入装置の作動時に、前記空気導入装置から前記第1の導管を介して提供される空気が前記加湿用溶液中にバブリングされることにより、前記加湿用容器中の空気が加湿されるように構成され、
前記反応液保持容器は、前記空気導入装置の作動時に、前記加湿用容器中の加湿された空気が前記反応液保持容器中に提供されるように構成されており、
前記反応用容器は、前記空気導入装置の作動時に、前記反応液保持容器中の亜塩素酸塩水溶液が前記第3の導管を介して、前記反応用容器中に提供され、続いて、前記反応液保持容器中の加湿された空気が前記第3の導管を介して、前記反応用容器中の前記亜塩素酸塩水溶液にバブリングされるように構成されており、
前記反応液保持容器及び前記反応用容器は、前記空気導入装置を作動状態から停止させる場合に、前記空気導入装置を作動状態において前記反応用容器中に移動していた前記反応液が、前記第3の導管を介して、前記反応液保持容器中に戻るように構成されている、
ことを特徴とする。
【0010】
本発明の一実施形態は、前記反応用容器が、前記反応液保持用容器の上方に配置されることを特徴とする。
【0011】
本発明の一実施形態は、前記空気導入装置の作動時に前記反応用容器中の前記亜塩素酸塩水溶液にバブリングされる空気が、前記触媒に接触するように構成されることを特徴とする。
【0012】
本発明の一実施形態は、前記反応用容器は、少なくとも部分的に開放されており、前記反応用容器内で生成された二酸化塩素を含む空気が前記装置の外部へ放出されるように構成されることを特徴とする。
【0013】
本発明の一実施形態は、前記空気導入装置の作動時において、前記反応用容器が、前記亜塩素酸塩水溶液および前記触媒のみを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の一実施形態は、電気分解機構を含まないことを特徴とする。
【0015】
本発明の一実施形態は、前記亜塩素酸塩水溶液が、亜塩素酸アルカリ金属塩水溶液または亜塩素酸アルカリ土類金属塩水溶液であることを特徴とする。
【0016】
本発明の一実施形態は、前記亜塩素酸アルカリ金属塩水溶液が、亜塩素酸ナトリウム水溶液、亜塩素酸カリウム水溶液、または、亜塩素酸リチウム水溶液であり、亜塩素酸アルカリ土類金属塩水溶液が、亜塩素酸カルシウム水溶液、亜塩素酸マグネシウム水溶液、または、亜塩素酸バリウム水溶液であることを特徴とする。
【0017】
本発明の一実施形態は、前記亜塩素酸塩水溶液の濃度が0.01~45重量%であることを特徴とする。
【0018】
本発明の一実施形態は、前記加湿用溶液が水であることを特徴とする。
【0019】
本発明の一実施形態は、前記加湿用溶液が水道水であることを特徴とする。
【0020】
本発明の一実施形態は、前記触媒が、固体触媒であることを特徴とする。
【0021】
本発明の一実施形態は、前記触媒が、金属系触媒、鉱物系触媒、炭素系触媒、または、これらの組み合わせであることを特徴とする。
【0022】
本発明の一実施形態は、前記金属触媒が、白金(Pt)、ルテニウム(Rh)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、鉄(Fe)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、または、これらの金属の化合物、を含む触媒であり、前記鉱物系触媒が、シリカ(Si)、または、シリカを含む化合物、を含む触媒であり、前記炭素系触媒が、活性炭を含む触媒、であることを特徴とする。
【0023】
本発明の一実施形態は、前記触媒が、担体に担持されていることを特徴とする。
【0024】
本発明の一実施形態は、前記担体が、チタン、バルブ金属、ステンレス、ニッケル、セラミックス、炭素、および、多孔質物質からなる群から選択される材料を含む担体であることを特徴とする。
【0025】
本発明の一実施形態は、前記空気導入装置が、前記二酸化塩素発生装置の流路の始点から前記流路内へ空気を導入する装置、前記二酸化塩素発生装置の流路の途中において前記流路内の空気を一方向に移動させる装置、または、前記二酸化塩素発生装置の流路の終点から前記流路内の空気を吸引する装置、であることを特徴とする。
【0026】
本発明の一実施形態は、前記空気導入装置が、電動式のエアポンプであることを特徴とする。
【0027】
本発明の一実施形態は、前記装置を1月継続して作動させた時点において前記装置から放出される空気に含まれる二酸化塩素濃度が、前記装置を1週間継続して作動させた時点において前記装置から放出される空気に含まれる二酸化塩素濃度と比較して、少なくとも50%以上維持されることを特徴とする。
【0028】
上記に挙げた本発明の一又は複数の特徴を任意に組みわせた発明も、本発明の範囲に含まれる。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、従来の二酸化塩素発生方法/発生装置に対して、少なくとも以下の1つ以上の利点を有する。
【0030】
(1)安全性、耐久性の向上
本発明は、亜塩素酸塩と触媒との反応による二酸化塩素の発生を利用する。この手法では、
急激な反応により大量の二酸化塩素が発生するリスクがほとんどなく、また、二酸化塩素ガス以外の有害ガスが発生しないことが確認されているため、亜塩素酸塩に酸性物質を添加して二酸化塩素を発生させる手法や、電気分解を用いる手法と比較して安全性が高い(例えば、電気分解による二酸化塩素発生においては、電解液が劣化すると塩素ガスや水素ガス等が発生し得る)。また、本発明の装置の動力は空気導入装置のみであるため、装置の故障のリスクが低く、また、装置が故障した場合の修繕も容易である。
【0031】
(2)メンテナンスフリー
本発明は、亜塩素酸塩水溶液の水分の蒸発を防ぐ加湿機構を備えることにより、数か月に渡ってメンテナンスなしで安定的に二酸化塩素を発生させることができる。また、亜塩素酸塩水溶液が寿命に達したときは、亜塩素酸塩水溶液を交換するだけで装置の稼働を継続することができる。
【0032】
(3)小型化、コストダウン
本発明は、例えば電気分解による二酸化塩素発生装置等と比較して極めて簡素な構造であるため、装置の小型化やコストダウンが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、本発明の設計例1を示す。
図2図2は、本発明の設計例2(反応停止時)を示す。
図3図3は、本発明の設計例2(反応時)を示す。
図4図4は、本発明の設計例3(反応停止時)を示す。
図5図5は、本発明の設計例4(反応停止時)を示す。
図6図6は、本発明の設計例4(反応時)を示す。
図7図7は、本発明の設計例5(反応停止時)を示す。
図8図8は、本発明の設計例6(反応停止時)を示す。
図9図9は、実験1に用いた装置の設計を示す。
図10図10は、実験1の結果(二酸化塩素の発生量)を示す。
図11図11は、実験2の結果(発生ガスの定性分析)を示す。
図12図12は、実験3の結果(加湿機構なし)を示す。
図13図13は、実験3の結果(加湿機構あり)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明を実施するための形態を、図1図8に示す設計例を用いて説明する。
【0035】
設計例1
図1に示す本発明の一実施形態に係る二酸化塩素発生装置は、反応用容器5’と加湿用容器3と空気導入装置1とを備え、反応用容器5’は亜塩素酸塩水溶液6および触媒7を含み、加湿用容器3は加湿用溶液4を含む。空気導入装置1と加湿用容器3とは、第1の導管2によって接続されており、加湿用容器3と反応用容器5’とは第2の導管2’によって接続されている。加湿用容器3は、概ね密閉されている。
【0036】
反応用容器5’においては、亜塩素酸塩水溶液6と触媒7との反応により、二酸化塩素が生成される。空気導入装置1が作動すると、第1の導管2を介して提供される空気が加湿用溶液4中にバブリングされることにより、前記加湿用容器3中の空気が加湿され、さらに、
加湿用容器3中の加湿された空気が第2の導管2’を介して、反応用容器5’中の亜塩素酸塩水溶液6にバブリングされる。バブリングによって亜塩素酸塩水溶液6と触媒7とが撹拌されると、触媒7の表面で生成された二酸化塩素が触媒表面から遊離し、再び触媒7の表面で二酸化塩素が生成される。バブリングによって遊離した二酸化塩素は、反応用容器5’の上部に設けられた第3の導管(ガス放出管)2’’を介して、空気とともに装置外へ放出される。
【0037】
図1に示す本発明の二酸化塩素発生装置は、空気導入装置1を中心とするバブリング機構を備えることにより、亜塩素酸塩水溶液6と触媒7との反応を促進させつつ、生成された二酸化塩素を装置外へ放出することができる。また、本発明の二酸化塩素発生装置は、加湿用容器3を中心とする加湿機構を備えることにより、反応用容器5’中の亜塩素酸塩水溶液6の蒸発を防ぐことによって、極めて長期間の装置の稼働を可能にする。
【0038】
設計例2
図2および図3に示す本発明の一実施形態に係る二酸化塩素発生装置も、設計例1と同様の原理で二酸化塩素を生成する装置であるが、本設計例では、触媒と亜塩素酸塩水溶液との反応の制御機構をさらに備える。
【0039】
(1)反応停止時
反応停止時の装置を図2に示す。設計例2の装置においては、設計例1の装置に加え、さらに反応液保持容器5を備える。反応液保持容器5は亜塩素酸塩水溶液6のみを含み、触媒7は含まない。一方、反応用容器9は触媒7のみを含み、亜塩素酸塩水溶液6を含まない。反応用容器9は反応液保持容器5の上方に設置され、反応用容器9と反応液保持容器5とは、導管2’’によって接続される。導管2’’は、下端が反応液保持容器5中の亜塩素酸塩水溶液6に浸漬されるように設置される。この状態においては、亜塩素酸塩水溶液6と触媒7が接触しないため、二酸化塩素は発生しない。
【0040】
(2)反応時
反応時の装置を図3に示す。空気導入装置1が作動すると、図中の矢印方向に流路が形成され、反応液保持容器5中の亜塩素酸塩水溶液6が、導管2’’を介して反応用容器9中に誘導される。空気導入装置1の作動中は、反応液保持容器5中が陽圧となるため、亜塩素酸塩水溶液6が反応用容器9中に存在する状態が維持される、また、亜塩素酸塩水溶液6は、導管2’’を介して供給される空気によってバブリングされる。この状態においては、亜塩素酸塩水溶液6と触媒7が接触しており、また、バブリングによって亜塩素酸塩水溶液6と触媒7とが撹拌されるため、設計例1の場合と同様に効率的に二酸化塩素が生成される。バブリングによって遊離した二酸化塩素は、反応用容器9の上部から、空気とともに装置外へ放出される。
【0041】
(3)反応時再停止時
(2)の状態から空気導入装置1を停止すると、反応液保持容器5の陽圧状態が解除されるため、反応用容器9中にあった亜塩素酸塩水溶液6が反応液保持容器5中へ戻り、再び図2の状態となる。この状態においては、亜塩素酸塩水溶液6と触媒7が接触しないため、二酸化塩素は発生しない。
【0042】
このように、設計例2の装置は、設計例1の装置と同様に、極めて長期間にわたって二酸化塩素を発生させることができるのみならず、空気導入装置という簡易な機構によって、二酸化塩素の発生を制御することができる。
【0043】
設計例3
図4に示す本発明の一実施形態に係る二酸化塩素発生装置は、設計例2と同様の制御機構を備える装置である。設計例3では、加湿用容器3と反応液保持容器5とが一体となっており、それぞれの容器の上方の空気のみが容器間を移動可能なように設計されている。導管2’を省略し、加湿用容器3と反応液保持容器5とを一体とすることで、装置のサイズダウンを可能とする。
【0044】
設計例4
図5および図6に示す本発明の一実施形態に係る二酸化塩素発生装置は、設計例2と同様の制御機構を備える装置である。設計例4では、導管2’の反応液保持容器側の端部が亜塩素酸塩水溶液に浸漬されるように、かつ、導管2’の反応液保持容器側の端部が導管2’’の下端よりも下になるように設置される。このように設計することで、空気導入装置1の作動中において、反応液保持容器5においてもバブリングを行うことができる。
【0045】
装置の作動/停止を繰り返すと、亜塩素酸塩水溶液6中の二酸化塩素溶存量が増加し得る。亜塩素酸塩水溶液6中の二酸化塩素溶存量が増加すると、反応停止時においても亜塩素酸塩水溶液6から二酸化塩素が放出され得る。本設計例においては、反応液保持容器5においてもバブリングを行うことで、亜塩素酸塩水溶液6が反応液保持容器5中に存在する場合に溶存二酸化塩素を除去することが可能となり、反応停止時における二酸化塩素の放出を防ぐことができる。また、反応時においても、溶存二酸化塩素の影響による二酸化塩素の過剰な放出を防ぐことができ、結果として、より安定的な二酸化塩素発生の制御が可能となる。
【0046】
設計例5
図7に示す本発明の一実施形態に係る二酸化塩素発生装置は、設計例2と同様の制御機構を備える装置である。設計例5では、設計例2とは異なり、流路の途中に空気導入装置が設置される。
【0047】
設計例6
図8に示す本発明の一実施形態に係る二酸化塩素発生装置は、設計例2と同様の制御機構を備える装置である。設計例6では、設計例2とは異なり、流路の終端部に吸引式の空気導入装置が設置される。
【0048】
以上において、設計例を参照して本発明の内容を説明したが、本発明はいろいろな態様により具現化することができ、ここに記載される設計例に限定されるものとして解釈されてはならない。例えば、本発明の一実施形態においては、装置を構成する容器や導管の配置を様々に変更することによって、装置の大きさや形状を最適化することができる。
【0049】
本発明で使用される亜塩素酸塩としては、例えば亜塩素酸アルカリ金属塩や亜塩素酸アルカリ土類金属塩が挙げられる。亜塩素酸アルカリ金属塩としては、例えば亜塩素酸ナトリウム・亜塩素酸カリウム・亜塩素酸リチウムが挙げられ、亜塩素酸アルカリ土類金属塩としては、亜塩素酸カルシウム・亜塩素酸マグネシウム・亜塩素酸バリウムが挙げられる。なかでも、入手が容易という点から、亜塩素酸ナトリウム・亜塩素酸カリウムが好ましく、亜塩素酸ナトリウムが最も好ましい。これら亜塩素酸素アルカリは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用しても構わない。亜塩素酸塩水溶液における亜塩素酸アルカリの割合は、0.01重量%~45重量%であることが好ましい。0.01重量%未満の場合は、二酸化塩素の発生に必要な亜塩素酸塩が短期間で枯渇する可能性があり、45重量%を超える場合は、亜塩素酸塩が飽和して結晶が析出しやすいという問題が生じる可能性がある。安全性や安定性、二酸化塩素の発生効率などを鑑みた場合、好ましい範囲は、0.1重量%~25重量%であり、より好ましい範囲は1重量%~20重量%であり、さらに好ましい範囲は2~15%である。
【0050】
本発明の装置において用いる触媒は、亜塩素酸塩水溶液と反応して二酸化塩素を発生させる触媒であれば限定されないが、反応停止時において亜塩素酸塩水溶液と分離される必要があるため、固体触媒(または、不均一系触媒)であることが好ましい。本発明の装置に用い得る固体触媒の例としては、金属触媒(例えば、白金(Pt)、ルテニウム(Rh)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、鉄(Fe)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、または、これらの金属の化合物)、鉱物系触媒(例えば、シリカ(Si)、または、シリカを含む化合物)、炭素系触媒(例えば、活性炭を含む触媒)が挙げられる。
【0051】
本発明の装置において用いる触媒は、単独で用いられてもよいが、亜塩素酸塩水溶液と触媒との反応効率を向上させるために、担体に担持されたものを用いてもよい。触媒が担持される担体は、亜塩素酸塩水溶液と触媒との反応効率の向上に寄与する限り限定されないが、例えば、チタン、バルブ金属、ステンレス、ニッケル、セラミックス、炭素、および、多孔質物質、からなる群から選択される材料を含む担体であることが好ましい。
【0052】
本発明の装置において用いられる空気導入装置は、装置の流路中の空気または亜塩素酸塩水溶液を一方向に移動させることができるものであれば限定されないが、例えば電動式のエアポンプであってよい。電動式のエアポンプへの電気の供給は、電力ケーブルを介して電力供給装置から行ってもよいし、電池を利用してもよい。
【0053】
本発明の装置において用いられる空気導入装置は、装置の流路中の空気または亜塩素酸塩水溶液を一方向に移動させることができる限り、様々な位置に設置することができる。例えば、空気導入装置を流路の始点に設置して、流路内へ空気を導入してもよく、空気導入装置を流路の途中に設置して、流路内の空気を一方向に移動させてもよく、空気導入装置を流路の終点に設置して、流路内の空気を吸引することにより、装置の流路中の空気または亜塩素酸塩水溶液を一方向に移動させてもよい。
【0054】
本発明の装置において、空気導入装置によって装置内の流路に導入されるガスは、典型的には空気であるが、例えば、窒素やアルゴン等の不活性化ガスを用いてもよい。
【0055】
本発明の二酸化塩素発生装置は、装置において発生した二酸化塩素ガスを装置の外へと放出するための送風ファンをさらに備えてもよい。送風ファンを備えることによって、装置内で発生した二酸化塩素ガスを効率よく装置外へと送り出すことができ、また、ファンの風量を調節することによって、装置外へと送り出す二酸化塩素ガスの量を調節することもできる。例えば、二酸化塩素ガスの発生量が比較的多い場合は、送風ファンの風量を強めることによって装置外の二酸化塩素ガスをより遠くへ拡散させ、二酸化塩素ガスの発生量が比較的少ない場合には、送風ファンの風量を弱めることによって装置外の二酸化塩素ガスが必要以上に拡散されることを防ぐことにより、装置外の二酸化塩素ガス濃度が一定の範囲内に収まるように調節することができる。
【0056】
本明細書において用いられる用語は、特定の実施態様を説明するために用いられるのであり、発明を限定する意図ではない。
【0057】
また、本明細書において用いられる「含む」との用語は、文脈上明らかに異なる理解をすべき場合を除き、記載された事項(部材、ステップ、要素または数字等)が存在することを意図するものであり、それ以外の事項(部材、ステップ、要素または数字等)が存在することを排除しない。
【0058】
異なる定義が無い限り、ここに用いられるすべての用語(技術用語および科学用語を含む。)は、本発明が属する技術の当業者によって広く理解されるのと同じ意味を有する。ここに用いられる用語は、異なる定義が明示されていない限り、本明細書および関連技術分野における意味と整合的な意味を有するものとして解釈されるべきであり、理想化され、または、過度に形式的な意味において解釈されるべきではない。
【0059】
本発明の実施態様は模式図を参照しつつ説明される場合があるが、模式図である場合、説明を明確にするために、誇張されて表現されている場合がある。
【0060】
本明細書において、例えば、「1~10w/w%」と表現されている場合、当業者は、当該表現が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10w/w%を個別具体的に指すことを理解する。
【0061】
本明細書において、成分含有量や数値範囲を示すのに用いられるあらゆる数値は、特に明示がない限り、用語「約」の意味を包含するものとして解釈される。例えば、「10倍」とは、特に明示がない限り、「約10倍」を意味するものと理解される。
【0062】
本明細書中に引用される文献は、それらのすべての開示が、本明細書中に援用されているとみなされるべきであって、当業者は、本明細書の文脈に従って、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、それらの先行技術文献における関連する開示内容を、本明細書の一部として援用して理解する。
【実施例
【0063】
本発明の効果を確認するため、以下の実験を行った。
【0064】
[実験1.触媒と亜塩素酸塩水溶液との反応]
本実験においては、本発明の装置をより簡素化した図9に示す装置を用いて、二酸化塩素発生実験を行った。触媒としてはチタン(担体)に白金ベースの触媒を担持させたものを用い、亜塩素酸塩水溶液は1%亜塩素酸塩ナトリウム水溶液1Lを用いた。空気導入装置11を用いて、亜塩素酸塩水溶液14および触媒15を含む反応用容器13へ、約1L/minの流量で空気をバブリングさせた。一方、コントロールとして、触媒を使用しないこと以外は上記と同様の条件で、装置を作動させた。
【0065】
両条件における二酸化塩素発生の比較を図10に示す。図10に示すとおり、触媒を用いる条件においては二酸化塩素が発生したが、触媒を用いない条件においては二酸化塩素が発生しなかった。すなわち、本発明の装置において二酸化塩素を発生させるためには、触媒が必要であることが確認された。
【0066】
[実験2.発生ガスの定性分析]
実験1の方法で発生したガスを収集し、その成分をイオンクロマトグラフィによって定性分析を行った。その結果を図11に示す。図11に示すとおり、亜塩素酸塩と触媒との反応によって発生したガス成分は、実質的に二酸化塩素のみであった。
【0067】
[実験3.加湿機構の効果の確認]
実験1で使用した装置(図9に示す装置)と、設計例1に示す本発明の装置(図1に示す装置)とを用いて、長時間の装置稼働テストを行った。実験1で使用した装置を用いた場合の結果を図12に示し、設計例1に示す本発明の装置を用いた場合の結果を図13に示す。図12に示すとおり、加湿機構を有しない装置は、1カ月程度までは安定的に二酸化塩素を発生したが、約1カ月程度で亜塩素酸塩水溶液の水分が蒸発し、二酸化塩素の発生量が不安定になる現象が見られた。一方、図13に示すとおり、加湿機構を有する装置は、3カ月以上に渡って安定的に二酸化塩素を放出し続けた。以上のとおり、本発明の装置が有する加湿機構は、装置の長時間の安定的な稼働を可能にすることが示された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13