(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】磁性層付き石膏系建材、磁性層付き石膏系建材の製造方法
(51)【国際特許分類】
E04F 13/072 20060101AFI20240104BHJP
E04C 2/04 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
E04F13/072
E04C2/04 E
(21)【出願番号】P 2021008585
(22)【出願日】2021-01-22
(62)【分割の表示】P 2018546232の分割
【原出願日】2017-10-03
【審査請求日】2021-01-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2016204734
(32)【優先日】2016-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000160359
【氏名又は名称】吉野石膏株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健
(72)【発明者】
【氏名】島崎 潤悦
(72)【発明者】
【氏名】横山 至
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】金子 隆男
【合議体】
【審判長】居島 一仁
【審判官】土屋 真理子
【審判官】佐藤 史彬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0236444(US,A1)
【文献】特開2015-83338(JP,A)
【文献】実公平4-10027(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C2/00-2/04,E04B1/62-1/686,E04B1/94,E04F13/00-13/30,E04B2/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石膏系建材と、
前記石膏系建材の表面の少なくとも一部を覆う磁性層と、
無機被膜と、を有し、
前記磁性層は鉄粉と、バインダーとを含有し、
前記鉄粉は、還元鉄粉およびアトマイズ鉄粉から選択された1種類以上であり、
前記バインダーは有機バインダーであり、
前記無機被膜は無機系難燃材料を含有し、
前記無機被膜は前記磁性層の表面の少なくとも一部を覆うように配置され、
前記無機系難燃材料が、金属水酸化物系難燃材料、アンチモン系難燃材料、リン化合物系難燃材料、アルカリ金属珪酸塩系難燃材料から選択された1種以上であ
り、
前記無機被膜の単位面積当たりの質量が30g/m
2
以上60g/m
2
以下である磁性層付き石膏系建材。
【請求項2】
前記無機系難燃材料が、アルカリ金属珪酸塩系難燃材料である請求項1に記載の磁性層付き石膏系建材。
【請求項3】
前記磁性層は、前記鉄粉の単位面積当たりの含有量が0.3kg/m
2以上であり、密度が2.0g/cm
3以上である請求項1
または請求項
2に記載の磁性層付き石膏系建材。
【請求項4】
ISO5660-1コーンカロリーメータ法に示された発熱性試験において、加熱時間20分における総発熱量が8MJ/m
2
以下である、不燃の性能を満たす請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の磁性層付き石膏系建材。
【請求項5】
石膏系建材の表面の少なくとも一部に、鉄粉とバインダーとを含有する鉄粉含有塗材を塗工し、磁性層を形成する磁性層形成工程と、
前記磁性層に、無機被膜を形成する無機被膜形成工程を有し、
前記鉄粉は、還元鉄粉およびアトマイズ鉄粉から選択された1種類以上であり、
前記バインダーは有機バインダーであり、
前記無機被膜は無機系難燃材料を含有し、
前記無機被膜は前記磁性層の表面の少なくとも一部を覆うように配置され、
前記無機系難燃材料が、金属水酸化物系難燃材料、アンチモン系難燃材料、リン化合物系難燃材料、アルカリ金属珪酸塩系難燃材料から選択された1種以上であ
り、
前記無機被膜の単位面積当たりの質量が30g/m
2
以上60g/m
2
以下である磁性層付き石膏系建材の製造方法。
【請求項6】
前記無機系難燃材料がアルカリ金属珪酸塩系難燃材料である請求項
5に記載の磁性層付き石膏系建材の製造方法。
【請求項7】
前記磁性層は、前記鉄粉の単位面積当たりの含有量が0.3kg/m
2以上であり、密度が2.0g/cm
3以上である請求項
5または請求項
6に記載の磁性層付き石膏系建材の製造方法。
【請求項8】
前記磁性層形成工程では、前記鉄粉含有塗材をロールコーター、フローコーター、掻き取り法のいずれかにより、前記石膏系建材の表面の少なくとも一部に塗工する請求項
5から請求項
7のいずれか一項に記載の磁性層付き石膏系建材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性層付き石膏系建材、磁性目地処理材、磁性層付き石膏系建材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば学校の校舎や、商業施設等において、壁等にマグネット等の磁性体により印刷物等を固定するニーズがあった。このため、壁等を形成する際に用いる建材として、マグネットが吸着可能な建材が求められていた。
【0003】
マグネットを吸着可能な建材として、薄い鉄板を表面に配置した建材が知られていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、鉄板を表面に配置、固定した建材は、切断等の加工をすることができなくなる。
【0005】
石膏系建材の大きな利点の一つとして、カッター等により容易に切断等の加工をすることができ、施工現場で所望の形状に加工することができるという点が挙げられるが、鉄板を表面に配置した石膏系建材では、係る利点を損なうという問題があった。
【0006】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、本発明の一側面では、マグネットを吸着することができ、かつ容易に自由な形状に加工することができる磁性層付き石膏系建材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明の一形態によれば、石膏系建材と、
前記石膏系建材の表面の少なくとも一部を覆う磁性層と、を有し、
前記磁性層は鉄粉と、バインダーとを含有し、前記鉄粉の単位面積当たりの含有量が0.3kg/m2以上、前記磁性層の密度が2.0g/cm3以上である磁性層付き石膏系建材を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一形態によれば、マグネットを吸着することができ、かつ容易に自由な形状に加工することができる磁性層付き石膏系建材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る磁性層付き石膏系建材の斜視図。
【
図2】本発明の実施形態に係る磁性層付き石膏系建材の斜視図。
【
図3】本発明の実施形態に係る磁性層付き石膏系建材のマグネット吸着試験の説明図。
【
図6】実験例1で用いたマグネットの対1mm鉄板への吸着力の評価方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[磁性層付き石膏系建材]
本実施形態の磁性層付き石膏系建材の一構成例について説明する。
【0011】
本実施形態の磁性層付き石膏系建材は石膏系建材と、石膏系建材の表面の少なくとも一部を覆う磁性層と、を有することができる。そして、磁性層は鉄粉と、バインダーとを含有し、鉄粉の単位面積当たりの含有量を0.3kg/m2以上、磁性層の密度を2.0g/cm3以上とすることができる。
【0012】
以下に本実施形態の磁性層付き石膏系建材の構成例について具体的に説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の磁性層付き石膏系建材10は、石膏系建材11と、石膏系建材11の表面の少なくとも一部を覆う磁性層12とを有することができる。
【0014】
なお、
図1に示した磁性層付き石膏系建材10においては、石膏系建材11の一方の主表面11aの表面全体に磁性層12を形成した例を示したが、磁性層は、マグネット等の磁性体を吸着することが要求される部分に形成されていれば良く、係る形態に限定されるものではない。例えば、一方の主表面11aのうち、一部を覆う様に磁性層を形成することもできる。また、一方の主表面11aのみだけではなく、他方の主表面11bの一部、または全部や、側面部の一部または全部についても磁性層を配置することもできる。
【0015】
また、磁性層の形状についても、連続した面形状を有している必要はなく、磁性層の形状は、例えば線状形状や、ドット形状等であっても良い。本実施形態の磁性層付き石膏系建材は、複数の連続していない磁性層を有することもできる。
【0016】
本実施形態の磁性層付き石膏系建材が含む各部材について以下に説明する。
【0017】
石膏系建材11としては特に限定されるものではなく、各種石膏系建材を用いることができる。例えばJIS A 6901(2014)で規定される石膏ボード、JIS A 6901(2014)で規定される石膏ボードよりも軽量である石膏ボード(以下、両者をまとめて石膏ボードともいう)、ガラスマット石膏ボード、ガラス繊維不織布入石膏板、スラグ石膏板等が挙げられる。本実施形態の磁性層付き石膏系建材は、特に建造物の壁を構成する材料として好ましく用いることができる。そして、壁材等に広く用いられることから、石膏系建材は石膏ボードであることが好ましい。ここでいう石膏ボードは既述のようにJIS A 6901(2014)で規定される石膏ボード、またはJIS A 6901(2014)で規定される石膏ボードよりも軽量な石膏ボードを意味する。なお、JIS A 6901(2014)で規定される石膏ボードよりも軽量な石膏ボードは、例えば比重が0.3以上0.65未満の石膏ボードであることが好ましい。
【0018】
磁性層12は、鉄粉とバインダーとを含有し、鉄粉の単位面積当たりの含有量が0.3kg/m2以上、磁性層の密度が2.0g/cm3以上であることが好ましい。
【0019】
磁性層12は、マグネット等の磁性体を吸着できるようにするために設けられた層であり、鉄粉を含有することで、マグネット等の磁性体を吸着することができる。
【0020】
鉄粉の材料としては特に限定されるものではなく、マグネットとの吸着性や、磁性層付き石膏系建材に要求される色味、その他の特性等に応じて任意に選択することができる。鉄粉は、酸化鉄粉、還元鉄粉、アトマイズ鉄粉から選択された一種以上を含有することができる。なお、例えば磁性層付き石膏系建材について、不燃性を高めることが要求される場合には、鉄粉として、酸化鉄粉を用いることが好ましい。酸化鉄粉に含まれる酸化鉄の種類は特に限定されないが、四酸化三鉄を好ましく用いることができる。
【0021】
また、鉄粉の粒径は特に限定されるものではなく、任意の粒径の鉄粉を用いることができる。本実施形態の磁性層付き石膏系建材の磁性層には一般的に用いられている粒径の鉄粉を用いることが好ましく、例えば平均粒径が20μm以上200μm以下の鉄粉を好適に用いることができる。
【0022】
なお、平均粒径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味し、体積基準の平均粒径、すなわち体積平均粒径となる。
【0023】
上述の様に、磁性層は、鉄粉の単位面積当たりの含有量が0.3kg/m2以上であることが好ましい。これは、鉄粉の単位面積当たりの含有量を0.3kg/m2以上とすることで、磁性層付き石膏系建材の表面に、マグネット等の磁性体を十分な吸着力で吸着させることができるためである。特にマグネット等の磁性体の吸着力を高める観点からは、磁性層の鉄粉の単位面積当たりの含有量は、0.8kg/m2以上であることがより好ましい。
【0024】
磁性層の鉄粉の単位面積当たりの含有量の上限値は特に限定されるものではなく、例えば磁性層付き石膏系建材に要求される吸着力やコスト等に応じて任意に選択することができる。磁性層の鉄粉の単位面積当たりの含有量は、例えば10kg/m2以下であることが好ましい。
【0025】
また、磁性層の密度は2.0g/cm3以上であることが好ましく、2.5g/cm3以上であることがより好ましい。これは磁性層の密度を2.0g/cm3以上とすることで、マグネットの吸着力を特に高めることができ、磁性層がより確実にマグネット等の磁性体を吸着できるようになるからである。
【0026】
磁性層の密度の上限値は特に限定されるものではなく、例えば磁性層付き石膏系建材に要求される吸着力やコスト等に応じて任意に選択することができる。磁性層の密度は、例えば5.0g/cm3以下であることが好ましい。
【0027】
磁性層に含まれるバインダーについては特に限定されるものではなく、無機バインダーや、有機バインダー等を用いることができる。無機バインダーを用いることで、有機バインダーを用いた場合よりも不燃性を高めることができるが、有機バインダーを用いた場合と比較して、一般的にコストが高くなる傾向がある。このため、磁性層付き石膏系建材に要求される性能や、コスト等に基づいて、任意にバインダーを選択することができる。
【0028】
無機バインダーとしてはアルカリ金属珪酸塩系、リン酸塩系、シリカゾル系等が挙げられ、有機バインダーとしては酢酸ビニル系、アクリル系、ポリエステル系等を挙げることができる。バインダーとしては、上述の無機バインダー、及び有機バインダーから選択された一種以上を好ましく用いることができる。
【0029】
なお、既述のようにバインダーとして無機バインダーを用いた場合、有機バインダーを用いた場合よりも、不燃性を高めることができる。そして、無機バインダーの中でも、アルカリ金属珪酸塩系のバインダーは難燃材料としても働くため、特に不燃性を高めることが求められる用途においては、アルカリ金属珪酸塩系のバインダーを好ましく用いることができる。
【0030】
磁性層は、鉄粉とバインダー以外にも任意の成分を含有することができる。磁性層は、例えば防錆剤を含有することができる。磁性層が防錆剤を含有することで、磁性層に含まれる鉄粉の酸化が進行し、変色したり、マグネット等の磁性体の吸着力に変化が生じることを抑制することができる。
【0031】
磁性層が防錆剤を含有する場合、磁性層は、防錆剤を鉄粉に対して0.1質量%以上の割合でさらに含有することが好ましく、0.3質量%以上の割合で含有することがより好ましい。
【0032】
磁性層が防錆剤を含有する場合、その含有量の上限値は特に限定されるものではないが、過度に添加しても防錆の効果に大きな変化はなく、また磁性層の強度が低下する恐れがある。このため、磁性層は防錆剤を、例えば鉄粉に対して20質量%以下の割合で含有することが好ましい。
【0033】
防錆剤の種類は特に限定されるものではないが、防錆剤は、例えば水溶性またはエマルションの有機酸系防錆剤、キレート系防錆剤、有機酸アミン系防錆剤、脂肪酸系防錆剤、及び亜硝酸塩系防錆剤から選択された一種以上を含むことが好ましい。
【0034】
なお、磁性層は、その他にも任意の添加剤を含有することもでき、例えば増粘剤や、消泡剤、磁性層の色味を調整するための顔料、充填材(嵩増し材)等を含有することもできる。
【0035】
また、後述のように、磁性層に無機被膜を含浸させる、もしくは無機被膜を磁性層に含有させることもできる。このため、磁性層は、後述する無機被膜の成分、すなわち例えば無機系難燃材料を含有することもできる。この場合、磁性層は、該無機被膜の成分を20g/m2以上の割合で含有することが好ましく、30g/m2以上の割合で含有することがより好ましい。
【0036】
磁性層12の厚さは特に限定されるものではないが、例えば0.1mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましい。
【0037】
なお、磁性層の厚さtの上限値は特に限定されるものではないが、例えば5.0mm以下であることが好ましい。
【0038】
本実施形態の磁性層付き石膏系建材は、上述の石膏系建材、及び磁性層以外にも任意の部材を有することもできる。例えば、無機被膜を有することもできる。
【0039】
本実施形態の磁性層付き石膏系建材が無機被膜を有する場合の構成例を
図2に示す。
図2に示す様に、本実施形態の磁性層付き石膏系建材20は、石膏系建材11、磁性層12に加えて、さらに無機被膜21を有することができる。
【0040】
無機被膜21をさらに有することにより、磁性層付き石膏系建材20の不燃性能を特に高めることができるため好ましい。
【0041】
無機被膜21は例えば
図2に示すように磁性層12の表面、すなわち磁性層12上に配置することができるが、磁性層12の表面に無機被膜21を配置することでプライマー処理を兼ねることができる。このため、磁性層12の表面に無機被膜21を配置することで、他にプライマー処理を施すことなく壁紙の施工等を行うことが可能になり、好ましい。
【0042】
本実施形態の磁性層付き石膏系建材が無機被膜21を有する場合、無機被膜21の配置は特に限定されるものではない。例えば、無機被膜21は、磁性層12の表面の少なくとも一部を覆うように配置することができる。無機被膜21を磁性層12の表面の少なくとも一部を覆うように配置する場合、特に
図2に示すように、磁性層12の表面全体を覆うように形成、配置することがより好ましい。また、無機被膜21は磁性層12に含浸させる、または無機被膜21を磁性層12に含有させることもできる。この場合、無機被膜21は膜の状態で存在する必要はなく、例えば既述のように磁性層12の一成分として存在していてもよい。無機被膜21を磁性層12に含浸させ、または磁性層12の一成分として存在させた場合についても、プライマー処理を施すことなく壁紙の施工等を行うことができる。
【0043】
無機被膜21の単位面積当たりの質量は特に限定されるものではないが、20g/m2以上であることが好ましく、30g/m2以上であることがより好ましい。
【0044】
無機被膜21の材料は特に限定されるものではないが、無機被膜21は、例えば無機系難燃材料を含有することが好ましい。無機系難燃材料としては、例えば金属水酸化物系難燃材料、アンチモン系難燃材料、リン化合物系難燃材料、アルカリ金属珪酸塩系難燃材料から選択された1種以上を好ましく用いることができる。
【0045】
ここまで、本実施形態の磁性層付き石膏系建材が含む部材について説明したが、以下に本実施形態の磁性層付き石膏系建材の特性等について説明する。
【0046】
本実施形態の磁性層付き石膏系建材は、表面が平滑であることが好ましい。
【0047】
ここで、本実施形態の磁性層付き石膏系建材の表面(主表面)が平滑であるとは、磁性層付き石膏系建材の厚さを複数箇所で測定した場合に、厚さのばらつきが500μm以下であることを意味している。
【0048】
なお、磁性層付き石膏系建材の厚さについては、JIS A 6901(2014)の「7.3.1 寸法」の「a)厚さ」での規定と同様に測定することができる。具体的には、試料である磁性層付き石膏系建材の端面から25mm以内であって、両側面から80mm以上内側の領域において、等間隔で6か所の測定位置で厚さを測定することができる。このため、測定した該6か所での厚さのばらつきが、500μm以下の場合に表面が平滑であるといえる。
【0049】
磁性層付き石膏系建材の表面が平滑であることで、例えば壁材等として用いた場合に、平坦な壁を形成することができ、好ましい。また、磁性層付き石膏系建材の表面が平滑であることで、磁性層付き石膏系建材の表面について、壁紙を貼ることによる壁紙貼り(壁紙仕上げ)や、塗料を塗布することによる塗装仕上げ、ラミネート加工等の化粧仕上げ、化粧マグネットを配置することによる化粧マグネット仕上げ等を容易に行うことが可能になる。なお、化粧マグネット仕上げとは、一方の主表面にマグネットを配置した壁紙や、化粧板、化粧紙を該マグネットにより磁性層付き石膏系建材に吸着させ、壁の表面を仕上げることをいう。
【0050】
また、本実施形態の磁性層付き石膏系建材は、厚さtがJIS A 6901(2014)の規格を満たしていることが好ましい。
【0051】
JIS A 6901(2014)の規格を満たしているとは、磁性層付き石膏系建材の厚さが9.5mm以上10.0mm以下、12.5mm以上13.0mm以下、15.0mm以上15.5mm以下、16.0mm以上16.5mm以下、18.0mm以上18.5mm以下、21.0mm以上21.5mm以下、25.0mm以上25.5mm以下のいずれかの範囲に属していることを意味する。
【0052】
これは、磁性層付き石膏系建材の厚さtがJIS A 6901(2014)の規格を満たしている場合、磁性層付き石膏系建材の厚さが、通常用いられている石膏系建材の厚さと同様の規格を満たしていることになる。このため、例えば本実施形態の磁性層付き石膏系建材と、通常の石膏系建材とを同時に用いて壁等を形成した場合でも、厚さの調整等を行うことなく、用いた石膏系建材の種類による凹凸のない面一な壁、すなわち平坦な壁を容易に形成することができ、好ましいからである。
【0053】
磁性層付き石膏系建材の厚さtは、より一般的に用いられている石膏系建材と同様に、9.5mm以上10.0mm以下、12.5mm以上13.0mm以下、15.0mm以上15.5mm以下、21.0mm以上21.5mm以下、のいずれかの範囲に属していることがより好ましい。
【0054】
なお、ここでいう磁性層付き石膏系建材の厚さtとは、
図1、
図2に示したように、磁性層付き石膏系建材全体の厚さを意味している。例えば
図1に示した磁性層付き石膏系建材10のように、磁性層付き石膏系建材が、石膏系建材11と、磁性層12とから構成される場合には、石膏系建材11と、磁性層12との厚さの合計が該磁性層付き石膏系建材10の厚さtとなる。また、
図2に示した磁性層付き石膏系建材20のように、磁性層付き石膏系建材が、石膏系建材11と、磁性層12と、無機被膜21とから構成される場合には、石膏系建材11と、磁性層12と、無機被膜21との厚さの合計が、該磁性層付き石膏系建材20の厚さtとなる。
【0055】
磁性層付き石膏系建材の厚さは、JIS A 6901(2014)に規定された方法により評価を行うことができる。
【0056】
本実施形態の磁性層付き石膏系建材は、準不燃の性能を満たすことが好ましい。すなわち、本実施形態の磁性層付き石膏系建材は、準不燃材料であると認定されることが好ましい。なお、準不燃とは、建築基準法施工令第1条第5号で規定されている。準不燃材料と認められるためには、通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後10分間、燃焼しないものであること、防火上有害な変形、溶融、亀裂その他の損傷を生じないものであること、避難上有害な煙またはガスを発生しないものであることを満たすことが要求される。
【0057】
また、本実施形態の磁性層付き石膏系建材は、不燃の性能を満たすことが好ましい。すなわち、不燃材料であると認定されることが好ましい。なお、不燃とは、建築基準法第2条第9号、及び建築基準法施工令108条の2で規定されている。不燃材料と認められるためには、通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後20分間、燃焼しないものであること、防火上有害な変形、溶融、亀裂その他の損傷を生じないものであること、避難上有害な煙またはガスを発生しないものであることを満たすことが要求される。建築基準法の内装制限によって、建物の用途や規模により使用できる建築材料が準不燃材料か不燃材料と決められている。本実施形態の磁性層付き石膏系建材は、使用する建物が要求される内装制限に適応することができる、すなわち準不燃材料にもなるし、不燃材料にもなるので、いかなる用途や規模の建物においても使用できる。
【0058】
本実施形態の磁性層付き石膏系建材が、準不燃、または不燃の性能を満たすための具体的な方法は特に限定されるものではない。例えば既述のように磁性層に加えてさらに無機被膜を配置することや、石膏系建材の材料、磁性層の材料について燃えにくい材料を選択することにより、準不燃、不燃の性能を満たす磁性層付き石膏系建材とすることができる。
【0059】
既述の様に、本実施形態の磁性層付き石膏系建材は、磁性層を配置することにより、マグネット等の磁性体を吸着することが可能である。マグネットの吸着力については特に限定されるものではないが、例えば、以下のマグネット吸着試験の特性を満たすことが好ましい。
【0060】
まず
図3に示す様に、本実施形態の磁性層付き石膏系建材31を、主表面31aが垂直になるように立てる。そして、マグネット部分の直径が17mmφであり、対1mm鉄板への吸着力が3.5Nであるマグネット32を1個用い、該マグネット1個により、主表面31aにA4用紙33を1枚貼り付けた場合に、A4用紙が落下しない吸着力を有することが好ましい。なお、ここでいう主表面31aが垂直になるように立てるとは、地面等の水平方向に対して、板状形状を有する磁性層付き石膏系建材31の主表面、すなわちマグネットを吸着させる面が垂直になるように立てることを意味する。以下、同様の記載については同様の意味を有する。
【0061】
また、磁性層付き石膏系建材の主表面に壁紙を配置した場合にも同様の特性を有することがより好ましい。すなわち、主表面31aに壁紙が施工された磁性層付き石膏系建材31を、主表面31aが垂直になるように立てる。そして、マグネット部分の直径が17mmφであり、対1mm鉄板への吸着力が3.5Nであるマグネット32を1個用い、該マグネット1個により、主表面31aにA4用紙33を1枚貼り付けた場合に、A4用紙33が落下しない吸着力を有することが好ましい。
【0062】
なお、磁性層付き石膏系建材の主表面に壁紙を配置し、マグネット吸着試験を実施する場合、壁紙としては、例えば汎用的に使用される厚さ0.3mmの壁紙を用いることができる。壁紙としては例えばビニールクロス等を用いることができる。
【0063】
また、上述のいずれのマグネット吸着試験においても、A4用紙としては、厚さ0.09mm、質量64g/m2のA4用紙を好ましく用いることができる。また、本マグネット吸着試験に限らず、本明細書において、A4用紙としては上記厚さ、質量を有するA4用紙を好ましく用いることができる。
【0064】
上記いずれかのマグネット吸着試験を実施する際、磁性層を配置する位置は特に限定されないが、本実施形態の磁性層付き石膏系建材は、磁性層を石膏系建材の表面の少なくとも一部に設けることでマグネットを吸着するのに十分な吸着力を発揮する。このため、少なくともマグネット32を配置する部分には磁性層が設けられていることが好ましい。
【0065】
また、マグネット32と、A4用紙33との位置は特に限定されないが、マグネット32の中心と、A4用紙33の上端との間の距離Lは3cmであることが好ましく、マグネット32の中心は、A4用紙33の幅方向の中央に配置されていることが好ましい。
【0066】
以上に本実施形態の磁性層付き石膏系建材について説明してきたが、本実施形態の磁性層付き石膏系建材は、石膏系建材の表面の少なくとも一部に磁性層を配置することで、マグネット等の磁性体を吸着することが可能になる。また、石膏系建材の表面の少なくとも一部に磁性層や、場合によってはさらに無機被膜を形成しているのみであるため、容易に切断等を行い、自由な形状に加工することができる。
【0067】
また、従来用いられていた鉄板を表面に配置、固定した石膏系建材では、該鉄板のために、ビスや釘を打つことが困難になるため、石膏系建材の止め付けが困難になるという問題があった。さらには、壁紙、塗装による仕上げを行う際に、壁紙や塗料との接着性が低下する等の問題があった。
【0068】
一方、本実施形態の磁性層付き石膏系建材によれば、石膏系建材の表面の少なくとも一部に磁性層や、場合によってはさらに無機被膜を形成しているのみであるため、釘やビス等も容易に打つことができる。さらに、壁紙や、塗料との接着性も十分に高いものとすることができる。
[磁性層付き石膏系建材の製造方法]
次に、本実施形態の磁性層付き石膏系建材の製造方法の一構成例について説明する。本実施形態の磁性層付き石膏系建材の製造方法により、既述の磁性層付き石膏系建材を製造することができる。このため、既に説明した事項の一部は説明を省略する。
【0069】
本実施形態の磁性層付き石膏系建材の製造方法は、石膏系建材の表面の少なくとも一部に、鉄粉とバインダーとを含有する鉄粉含有塗材を塗工し、磁性層を形成する磁性層形成工程を有することができる。
【0070】
そして、磁性層形成工程において、磁性層は鉄粉の単位面積当たりの含有量が0.3kg/m2以上であり、かつ磁性層の密度が2.0g/cm3以上となるように形成することが好ましい。
【0071】
磁性層の鉄粉の単位面積当たりの含有量や、磁性層の密度は、例えば鉄粉含有塗材に含まれる鉄粉の粒径や、鉄粉、練り水等の各成分の含有量(含有割合)により調整することができる。また、鉄粉含有塗材に充填材(嵩増し材)を添加する場合には、該充填材の添加量(含有量)により調整することもできる。充填材としては例えば骨材等を用いることができ、骨材としては、例えば炭酸カルシウム、パーライト、シラスバルーン等の無機骨材が好ましい。
【0072】
磁性層の密度のより好ましい範囲等については既述のため、説明を省略する。
【0073】
磁性層形成工程において、鉄粉含有塗材を石膏系建材の表面の少なくとも一部に塗工する手段、方法は特に限定されるものではない。ただし、形成する磁性層の厚さが均一になるように塗工することが好ましい。このため、磁性層形成工程では、鉄粉含有塗材をロールコーター、フローコーター、掻き取り法のいずれかにより、石膏系建材の表面の少なくとも一部に塗工することが好ましい。
【0074】
ここで、ロールコーターとは、回転するローラに鉄粉含有塗材を塗り付け、該ローラにより石膏系建材の表面に磁性層を形成する手段である。また、フローコーターとは、搬送している石膏系建材の上方から、石膏系建材の表面に対して鉄粉含有塗材を薄い膜状に流下し、石膏系建材の表面に磁性層を形成する手段である。また、掻き取り法とは、石膏系建材の表面に供給した鉄粉含有塗材を、例えばブレード等により掻き取り、石膏系建材の表面に所望の厚さとなるように展ばし、磁性層を形成する手段(方法)である。
【0075】
なお、磁性層形成工程に供給する石膏系建材は、予め磁性層を形成しない部分にはマスキング等を行っておき、所望のパターンを有する磁性層を形成することもできる。
【0076】
本実施形態の磁性層付き石膏系建材の製造方法は、上述の磁性層形成工程に加えて、任意の工程を有することもできる。
【0077】
本実施形態の磁性層付き石膏系建材は、既述のように磁性層に無機被膜を有することもできる。このため、上記磁性層形成工程に加えて、磁性層に無機被膜を単位面積当たりの質量が20g/m2以上となるように形成する無機被膜形成工程をさらに有することもできる。
【0078】
なお、無機被膜の単位面積当たりの質量は、既述のように30g/m2以上とすることもできる。このため、無機被膜形成工程では、磁性層に無機被膜を単位面積当たりの質量が30g/m2以上となるように形成することもできる。
【0079】
既述のように、無機被膜は磁性層の表面の少なくとも一部を覆うように配置することができる。また、無機被膜は磁性層に含浸させる、または無機被膜を磁性層に含有させることもできる。
【0080】
無機被膜が磁性層の一部に含まれる場合には、例えば磁性層を形成する際の鉄粉含有塗材に、無機被膜の材料を添加することもでき、この場合は磁性層形成工程において同時に無機被膜も形成されることになる。
【0081】
本実施形態の磁性層付き石膏系建材の製造方法は、必要に応じて、形成した磁性層や、無機被膜を乾燥させる乾燥工程や、磁性層付き石膏系建材や、原料となる石膏系建材を任意のサイズに切断する切断工程等をさらに有することもできる。
[磁性目地処理材]
次に、本実施形態の磁性目地処理材の一構成例について説明する。
【0082】
既述の磁性層付き石膏系建材を用いることで、マグネット等の磁性体を吸着できる壁等を形成することができるが、磁性層付き石膏系建材により壁等を形成した際に、磁性層付き石膏系建材間の境目にマグネットの吸着力が弱くなる部分が生じる場合がある。
【0083】
そこで、本実施形態の磁性目地処理材を用いて、磁性層付き石膏系建材間の目地処理を行うことで、磁性層付き石膏系建材間の境目にマグネットの吸着力が弱くなる部分が生じることを防ぐことができる。
【0084】
本実施形態の磁性目地処理材は、例えば鉄粉と、バインダーとを含有し、鉄粉の含有量を2.0g/cm3以上とすることができる。
【0085】
これは、本実施形態の磁性目地処理材の鉄粉の含有量が2.0g/cm3以上の場合、十分な鉄粉を含有しているといえ、該目地処理材が固まった場合に十分なマグネットの吸着力を示し、好ましいからである。特にマグネットの吸着力を高める観点から、本実施形態の磁性目地処理材の鉄粉の含有量は、2.5g/cm3以上であることがより好ましい。
【0086】
本実施形態の磁性目地処理材の鉄粉の含有量の上限値は特に限定されるものではないが、目地処理材の性状を確保する観点から、例えば5.0g/cm3以下であることが好ましい。
【0087】
本実施形態の磁性目地処理材に用いる鉄粉としては特に限定されないが、鉄粉が、酸化鉄粉、還元鉄粉、アトマイズ鉄粉から選択された一種以上を含有することが好ましい。磁性目地処理材は通常流動性を有する状態で供給され、バインダーや、その他の添加剤との間で酸化等の反応が進行しやすいため、鉄粉の品質を安定させる観点から、鉄粉は酸化鉄粉であることがより好ましい。酸化鉄粉としては特に限定されないが、四酸化三鉄を好ましく用いることができる。
【0088】
また、鉄粉の粒径は特に限定されるものではなく、任意の粒径の鉄粉を用いることができる。本実施形態の磁性目地処理材には一般的に用いられている粒径の鉄粉を用いることが好ましく、例えば平均粒径が20μm以上200μm以下の鉄粉を好適に用いることができる。
【0089】
なお、平均粒径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味し、体積基準の平均粒径、すなわち体積平均粒径となる。
【0090】
また、本実施形態の磁性目地処理材は、その他に任意の成分を含有することもできる。本実施形態の磁性目地処理材は、例えば防錆剤を含有することができる。磁性目地処理材が防錆剤を含有することで、磁性目地処理材に含まれる鉄粉の酸化が進行し、変色したり、マグネットの吸着力に変化が生じることを抑制することができる。
【0091】
磁性目地処理材が防錆剤をさらに含有する場合、磁性目地処理材は、防錆剤を鉄粉に対して0.1質量%以上の割合でさらに含有することが好ましく、0.3質量%以上の割合で含有することがより好ましい。
【0092】
本実施形態の磁性目地処理材が防錆剤を含有する場合、その含有量の上限値は特に限定されるものではないが、過度に添加しても防錆の効果に大きな変化はなく、また製造コストを勘案して、防錆剤は、例えば鉄粉に対して20質量%以下の割合で含有することが好ましい。
【0093】
防錆剤の種類は特に限定されるものではないが、防錆剤は、例えば水溶性またはエマルションの有機酸系防錆剤、キレート系防錆剤、有機酸アミン系防錆剤、脂肪酸系防錆剤、及び亜硝酸塩系防錆剤から選択された一種以上を含むことが好ましい。
【0094】
なお、磁性目地処理材は、その他にも任意の添加剤を含有することもでき、例えば磁性目地処理材の色味を調整するための顔料等を含有することもできる。
【0095】
本実施形態の磁性目地処理材によれば、鉄粉を含有するため、磁性層付き石膏系建材間の目地処理を行う際等に用いることで、壁等を構成する複数の磁性層付き石膏系建材間でマグネットの吸着力が低下することを抑制することができる。
[壁構造体]
次に、既述の磁性層付き石膏系建材を用いた壁構造体の構成例について
図4、
図5を用いて説明する。
図4は、壁構造体である間仕切壁について、高さ方向と平行でかつ壁の主表面と垂直な面での断面図を示しており、
図5は、間仕切壁の斜視図を示している。なお、
図5においては間仕切壁の構造が分かりやすいように、
図4では示している天井軽鉄下地等の記載を省略している。
【0096】
本実施形態の壁構造体は、既述の磁性層付き石膏系建材を含むことができ、特に既述の磁性層付き石膏系建材と、磁性目地処理材とを含むことが好ましい。以下、具体的な構成例を示す。
【0097】
図4に示す間仕切壁40は、鉄筋コンクリートの床スラブF1上に施工される。間仕切壁40の下端部は、床スラブF1に固定され、間仕切壁40の上端部は、上階の鉄筋コンクリートの床スラブF2に固定される。間仕切壁40の軸組は、鋼製のスタッド41、床ランナ421及び上部ランナ(天井ランナ)422により構成される。スタッド41は、軽量鉄骨製のチャンネル型部材からなり、床ランナ421及び上部ランナ422は、軽量溝型鋼からなる。床ランナ421、上部ランナ422は、アンカーボルト等の係止具43によって床スラブF1、F2にそれぞれ固定され、スタッド41は、下端部及び上端部が床ランナ421及び上部ランナ422にそれぞれ係止する。スタッド41は、300~600mm程度の寸法に設定された所定間隔(例えば、455mm間隔)を隔てて壁芯方向に整列し、床スラブF1、F2の間に垂直に立設する。
【0098】
下貼ボード44が、ビス45によってスタッド41の両側に取付けられ、上貼ボード46が、ステープル等の係止具47及び接着剤から選択された1種以上によって下貼ボード44の表面に固定される。下貼ボード44としては、JIS A 6901(2014)で規定される石膏ボード、前記石膏ボードよりも軽量である石膏ボード、石膏板、硬質石膏板、ガラス繊維補強石膏板、珪酸カルシウム板等の不燃性の建材ボードを好適に用いることができる。
【0099】
上貼ボード46の表面には、塗装又はクロス等の表装仕上材48が施工される。
【0100】
間仕切壁40の内部には、グラスウールや、ロックウール等の断熱材49を配置することができる。そして、床スラブF1上には床仕上材50を施工し、巾木51を、間仕切壁40の下端縁に取付けることができる。巾木51として、汎用の既製巾木、例えば、ビニール巾木等を使用し得る。
【0101】
更に、天井軽鉄下地52を、上階の床スラブF2から懸吊することもできる。そして、天井軽鉄下地52の表面には、天井仕上材53を配置することができる。
【0102】
天井仕上材53は、天井廻り縁等の見切り縁54を介して、室内側壁面に連接する。見切り縁54として、樹脂または金属製の既製見切り縁、またはジョイナーや、木材の加工品を使用し得る。
【0103】
そして、
図5に示すように、下貼ボード44は、横張り方向に施工され、上下の下貼ボード44は、横目地55において互いに突付けられる。複数の横目地55は、突付け目地形態の継目として水平且つ平行に延びる。
【0104】
上貼ボード46は、縦張り方向に施工され、目透かし目地、突付け目地、ジョイント工法目地等の所望の目地形態の縦目地56を介して相互連接する。複数の縦目地56は、垂直且つ平行に延びる。
【0105】
そして、上貼ボード46としては既述の磁性層付き石膏系建材を好適に用いることができる。また、上貼ボード46間の縦目地56は、既述の磁性目地処理材を用いて目地処理を行うことが好ましい。
【0106】
このように上貼ボード46として既述の磁性層付き石膏系建材を用いることにより、壁構造体である間仕切壁について、マグネット等の磁性体を吸着可能な壁とすることができるため好ましい。特に、上貼ボード46間の縦目地56を既述の磁性目地処理材で目地処理することにより、上貼ボード46間についても、マグネット等の磁性体の吸着力が低下することを特に抑制できるため、特に好ましい。
【0107】
なお、ここでは壁構造体として間仕切り壁の構成を例に説明したが、本実施形態の壁構造体は、間仕切り壁に限定されるものではなく、既述の磁性層付き石膏系建材を用いた各種壁構造体を包含する。また、ここでは磁性層付き石膏系建材を下貼ボードに固定した例を示したが、本実施形態の壁構造は、これに限定されるものではなく、既述の磁性層付き石膏系建材をスタッドにビス等で固定する壁構造体を包含する。
【実施例】
【0108】
以下に具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実験例1]
実験例1では、
図1に示す磁性層付き石膏系建材を作製し、マグネット吸着試験を実施した。
【0109】
まず、磁性層付き石膏系建材の製造条件について説明する。
【0110】
石膏系建材11として、厚さ8.7mm×幅300mm×長さ400mmの石膏ボードを用意し、その一方の主表面11a上の全面に磁性層12を形成した。
【0111】
磁性層は、鉄粉100質量部に対して、バインダーとして有機バインダーである酢酸ビニル樹脂を7.7質量部、増粘剤0.7質量部、消泡剤0.2質量部、防錆剤0.5質量部、及び練り水とを混合して形成した鉄粉含有塗材を、掻き取り法により、石膏系建材11の主表面上に厚さが1mmとなるように塗工し、乾燥することで形成した。
【0112】
鉄粉としては表1に示すように、実験例1-1~実験例1-8では還元鉄粉を、実験例1-9~実験例1-16ではアトマイズ鉄粉を、実験例1-17~実験例1-24では酸化鉄粉を用いた。なお、酸化鉄粉としては四酸化三鉄の粉末を用いている。
【0113】
防錆剤としては有機酸系防錆剤を用いている。
【0114】
また、実験例1-1~実験例1-24では、磁性層12は、それぞれ鉄粉の単位面積当たりの含有量が表1に示した値となるように形成した。具体的には例えば実験例1-1、実験例1-9、実験例1-17では鉄粉の単位面積当たりの含有量が0.1kg/m2、となるように磁性層を形成している。なお、各実験例の磁性層12を形成する際、上述の鉄粉含有塗材に用いる鉄粉の粒径を選択し、また鉄粉含有塗材に添加する練り水の量を調整することで、磁性層12の鉄粉の単位面積当たりの含有量が、各実験例について所望の値となるように調整した。
【0115】
また、いずれの実験例でも形成した磁性層の密度は2.5g/cm3であり、磁性層の厚さは1.0mm±0.25mmの範囲内にあることを確認した。
【0116】
マグネット吸着試験は
図3に示すように、まず、各実験例で作製した磁性層付き石膏系建材31を、主表面31aが垂直になるように立てる。そして、マグネット部分の直径が17mmφであり、対1mm鉄板への吸着力が3.5Nであるマグネット32を1個用い、該マグネット1個により、主表面31aにA4用紙33を貼り付けた。そして、A4用紙33が落下するまで、A4用紙33の枚数を増やしていき、A4用紙33が落下した際の枚数-1枚を、該磁性層付き石膏系建材のマグネット吸着力として評価した。
【0117】
なお、マグネット吸着試験で用いたマグネットは、
図6に示すように、該マグネット61を厚さ1mmの鉄板62に吸着させ、マグネット61に接続しておいたフック611を、図示しないオートグラフにより3mm/secの速度でブロック矢印Aに沿って引き上げ、最大強度を測定した。そして、該最大強度を、対1mm鉄板への吸着力とし、本実験例では同じマグネットを用いた。
【0118】
また、
図3に示したマグネット吸着試験を実施する際、マグネット32の中心と、A4用紙33の上端との間の距離Lが3cmであり、マグネット32の中心が、A4用紙33の幅方向の中央に位置するようにマグネットを配置した。
【0119】
そして、A4用紙33としては、厚さ0.09mm、質量64g/m2のA4用紙を用いた。
【0120】
評価結果を表1に示す。
【0121】
表1中、各実験例番号の下の数値が、マグネット吸着試験の結果を示している。
【0122】
実験例1-3~実験例1-8、実験例1-11~実験例1-16、実験例1-19~実験例1-24が実施例であり、実験例1-1、実験例1-2、実験例1-9、実験例1-10、実験例1-17、実験例1-18が比較例となる。
【0123】
【表1】
表1に示した結果から磁性層中の鉄粉の単位面積当たりの含有量が0.3kg/m
2以上の場合には、A4用紙を1枚以上保持することができ、係る磁性層を有する磁性層付き石膏系建材は、十分なマグネット吸着力を有することが確認できた。
[実験例2]
実験例2では、実験例1において磁性層中の鉄粉の単位面積当たりの含有量が同じ場合にマグネット吸着力が一番劣る酸化鉄粉を用い、磁性層の密度が異なる磁性層付き石膏系建材を作製し、マグネット吸着力について評価を行った。
【0124】
本実験例では、各実験例で形成する磁性層が所望の密度となるように、磁性層を形成する際に用いた鉄粉含有塗材中に含まれる練り水の添加量を選択、調整し、磁性層の密度が異なる実験例2-1~実験例2-4の磁性層付き石膏系建材の試料を作製した。なお、磁性層を形成する際に用いる鉄粉含有塗材については、練り水以外の成分の含有量については実験例1(実験例1-17~実験例1-24)の場合と同様にして調製した。
【0125】
そして、各実験例について、それぞれ磁性層が表2に示した密度となるように調製した鉄粉含有塗材を、掻き取り法により石膏系建材11の主表面上に厚さが1mmとなるように塗工し、乾燥することで磁性層を形成した。なお、いずれの実験例においても磁性層中の鉄粉の単位面積当たりの含有量は0.3kg/m2であり、磁性層の厚さは1.0mm±0.25mmの範囲内にあることを確認した。
【0126】
上述のように、各実験例について磁性層が所望の密度となるように鉄粉含有塗材を調製した点以外は、実験例1の場合と同様にして磁性層付き石膏系建材を作製した。
【0127】
作製した磁性層付き石膏系建材については、実験例1の場合と同様にマグネット吸着試験を実施した。結果を表2に示す。表2中、各実験例番号の下の数値が、マグネット吸着試験の結果を示している。
【0128】
実験例2-1が比較例、実験例2-2~実験例2-4が実施例となる。
【0129】
【表2】
表2に示した結果から、磁性層の密度が2.0g/cm
3以上である実験例2-2~実験例2-4は、A4用紙を1枚以上保持することができ、係る磁性層を有する磁性層付き石膏系建材は十分なマグネット吸着力を有することが確認できた。
【0130】
一方、磁性層の密度が2.0g/cm3未満である実験例2-1は、A4用紙を1枚も保持できておらず、マグネット吸着力が十分ではないことを確認できた。
[実験例3]
実験例3では、実験例1-17~実験例1-24で作製した磁性層付き石膏系建材の磁性層上の全面に、汎用的な厚さ0.3mmの壁紙を貼った試験体を作製した。なお、壁紙としてはビニールクロスを用いた。そして、係る壁紙を貼った試験体を用いた点以外は、実験例1の場合と同様にマグネット吸着試験を実施した。なお、マグネット吸着試験は、壁紙を貼付した面を用いて行った。
【0131】
評価結果を表3に示す。表3には、壁紙を貼る前の対応する磁性層付き石膏系建材の実験例1における実験例番号を併せて示している。例えば実験例3-1では、表3に示すように実験例1-17で作製した磁性層付き石膏系建材の磁性層上に壁紙を貼付している。また、磁性層の単位面積当たりの鉄粉の含有量を併せて示している。
【0132】
実験例3-1、実験例3-2が比較例、実験例3-3~実験例3-8が実施例となる。
【0133】
【表3】
表3に示した結果から、磁性層の単位面積当たりの鉄粉の含有量が0.3kg/m
2以上である実験例3-3~実験例3-8は、A4用紙を1枚以上保持することができ、係る磁性層を有する磁性層付き石膏系建材は、壁紙を表面に配置した場合でも十分なマグネット吸着力を有することが確認できた。
【0134】
また、実験例3-3~実験例3-8と、対応する実験例1-19~実験例1-24との、マグネット吸着試験の結果の比較から壁紙を貼った場合であっても、壁紙を貼っていない場合と同様のマグネット吸着力を有することが確認できた。
【0135】
一方、磁性層の単位面積当たりの鉄粉の含有量が0.3kg/m
2未満である実験例3-1、実験例3-2は、A4用紙を1枚も保持できておらず、マグネット吸着力が十分ではないことを確認できた。
[実験例4]
実験例4では、
図1、または
図2に示す磁性層付き石膏系建材を作製し、不燃性試験を実施した。
【0136】
まず、磁性層付き石膏系建材の製造条件について説明する。
【0137】
石膏系建材11として、厚さ8.7mm×幅99mm×長さ99mmの石膏ボードを用意し、その一方の主表面11a上の全面に磁性層12を形成した。
【0138】
磁性層は、鉄粉100質量部に対して、バインダーとして有機バインダーである酢酸ビニル樹脂を7.7質量部、増粘剤0.7質量部、消泡剤0.2質量部、防錆剤0.5質量部、及び練り水24質量部とを混合して形成した鉄粉含有塗材を、掻き取り法により、石膏系建材11の主表面上に厚さが1mmとなるように塗工し、乾燥することで形成した。
【0139】
鉄粉としては表4に示すように、実験例4-1~実験例4-5では還元鉄粉を、実験例4-6~実験例4-10ではアトマイズ鉄粉を、実験例4-11では酸化鉄粉を用いた。なお、酸化鉄粉としては四酸化三鉄の粉末を用いている。
【0140】
防錆剤としては有機酸系防錆剤を用いている。
【0141】
実験例4-1~実験例4-11では、磁性層12の鉄粉の単位面積当たりの含有量は2.0kg/m2、磁性層12の密度は2.5g/cm3であり、磁性層の厚さは1.0±0.25mmの範囲内にあることを確認した。
【0142】
そして、実験例4-2~実験例4-5、実験例4-7~実験例4-10については、磁性層12の上面の全体を覆うように無機被膜21を形成した。無機被膜21は、アモルファスシリカ、マイカ、珪酸ナトリウム、珪酸リチウム及び水を含有するスラリーを塗布し、乾燥することで形成した。このため、無機被膜21は、無機系難燃材料であるアルカリ金属珪酸塩系難燃材料を含有している。無機被膜21は、各実験例について、無機被膜の単位面積当たりの質量が表4に示した値となるように、無機被膜21の厚さを調整して形成した。
【0143】
なお、実験例4-1、実験例4-6、実験例4-11については、無機被膜を形成せず、
図1に示した石膏系建材11と、磁性層12とを有する磁性層付き石膏系建材としている。
【0144】
得られた磁性層付き石膏系建材の発熱性試験として、ISO5660-1コーンカロリーメータ法に示された発熱性試験に準拠して行い、加熱時間10分、または20分における総発熱量と最高発熱速度について測定した。
【0145】
評価結果を表4に示す。
【0146】
実験例4-1~実験例4-11はいずれも実施例となる。
【0147】
【表4】
表4に示した結果から、無機被膜を形成することで不燃性能を高めることができることを確認できた。特に無機被膜の単位面積当たりの質量が増加するのに伴い、不燃性能が高くなることも確認できた。
【0148】
特に鉄粉として還元鉄粉、またはアトマイズ鉄粉を用いた場合、無機被膜の単位面積当たりの質量を一定量以上とすることで、準不燃材料として認められる基準である加熱開始時間10分における総発熱量が8MJ/m2以下であることを確認できた(実験例4-3、実験例4-8)。そして、さらに無機被膜の単位面積の質量を増加させることで、不燃材料として認められる基準である加熱開始時間20分における総発熱量が8MJ/m2以下になることを確認できた(実験例4-4、実験例4-5、実験例4-9、実験例4-10)。
【0149】
また、鉄粉として酸化鉄粉を用いた場合、無機被膜を形成していなくても加熱開始時間20分における総発熱量が8MJ/m2以下になることも確認できた。
【0150】
なお、実験例1、3と同様にしてマグネット吸着試験を実施したところ、いずれの実験例で作製した磁性層付き石膏系建材においてもA4用紙を1枚以上保持できることを確認できた。
[実験例5]
実験例5では、
図1に示す磁性層付き石膏系建材を作製し、磁性層を形成する際の手段による平滑性の比較を行った。
【0151】
磁性層付き石膏系建材の製造条件について説明する。
【0152】
石膏系建材11として、厚さ8.7mm×幅910mm×長さ1820mmの石膏ボードを用意し、その一方の主表面11a上の全面に磁性層12を形成した。
【0153】
鉄粉100質量部に対して、バインダーとして有機バインダーである酢酸ビニル樹脂を7.7質量部、増粘剤0.7質量部、消泡剤0.2質量部、防錆剤0.5質量部、及び練り水24質量部とを混合して形成した鉄粉含有塗材を用意した。なお、鉄粉としては還元鉄粉を、防錆剤としては有機酸系防錆剤を、それぞれ用いている。
【0154】
そして、実験例5-1ではフローコーターを用いて、実験例5-2ではロールコーターを用いて、実験例5-3では掻き取り法を用いて、磁性層の厚さが1mmとなるように磁性層を塗工し、乾燥することで磁性層を形成した。
【0155】
得られた磁性層は、いずれも鉄粉の単位面積当たりの含有量が2.0kg/m2、密度が2.5g/cm3となっている。また、磁性層の厚さは1.0mm±0.25mmの範囲内となった。
【0156】
そして、各実験例で作製した磁性層付き石膏系建材について、JIS A 6901(2014)の「7.3.1 寸法」の「a)厚さ」での規定と同様に厚さの測定を実施した。具体的には、作製した磁性層付き石膏系建材の端面から25mm以内であって、両側面から80mm以上内側の領域において、等間隔で6か所の測定位置で厚さを測定した。
【0157】
また、磁性層を形成する前に予め、上記磁性層付き石膏系建材の厚さを測定した各測定点と同じ位置における石膏ボードの厚さの測定を実施した。そして、磁性層付き石膏系建材の測定値と、予め測定しておいた石膏ボードの厚さとから磁性層の厚さを算出した。
【0158】
結果を表5-1~表5-3に示す。表5-1~表5-3は、それぞれ実験例5-1~実験例5-3で作製した磁性層付き石膏系建材の厚さの測定結果、測定値の最大値と最小値との差、測定値の平均値を示している。
【0159】
実験例5-1~実験例5-3はいずれも実施例となる。
【0160】
【0161】
【0162】
【表5-3】
表5-1~表5-3に示した結果から、いずれの手段により磁性層を形成した場合でも、平滑な表面の磁性層付き石膏系建材を製造できることを確認できた。
【0163】
また、実験例5-1~実験例5-3で作製した磁性層付き石膏系建材は、その厚さがいずれの測定点でも9.5mm以上10.0mm以下の範囲内にあり、JIS A 6901(2014)の規格を満たしていることも確認できた。
[実験例6]
実験例6では、
図1に示す磁性層付き石膏系建材を作製した。ただし、本実験例では、磁性層に防錆剤を配合し、得られた磁性層付き石膏系建材の防錆性能の比較を行った。
【0164】
磁性層付き石膏系建材の製造条件について説明する。
【0165】
石膏系建材11として、厚さ8.7mm×幅99mm×長さ99mmの石膏ボードを用意し、その一方の主表面11a上の全面に磁性層12を形成した。
【0166】
磁性層12を形成するにあたってまず、鉄粉100質量部に対して、バインダーとして有機バインダーである酢酸ビニル樹脂を7.7質量部、増粘剤0.7質量部、消泡剤0.2質量部、及び練り水24質量部を混合して鉄粉含有塗材を調製した。また、鉄粉含有塗材にはさらに、各実験例について、鉄粉に対する割合が表6の示す割合となるように防錆剤を添加した。
【0167】
鉄粉含有塗材を調製する際、鉄粉としては還元鉄粉を用いている。また、防錆剤としては、表6に記載のとおり、実験例6-1~実験例6-6では有機酸系防錆剤を、実験例6-7~実験例6-12では脂肪酸系防錆剤を、実験例6-13~実験例6-18では有機酸アミン系防錆剤を、実験例6-19~実験例6-24では亜硝酸塩系防錆剤をそれぞれ用いている。
【0168】
そして、調製した鉄粉含有塗材を、掻き取り法により、石膏系建材11の主表面上に厚さが1mmとなるように塗工し、乾燥することで磁性層を形成し、磁性層付き石膏系建材を作製した。得られた磁性層付き石膏系建材の磁性層の厚さは1.0±0.25mmの範囲内にあることを確認した。
【0169】
なお、鉄粉含有塗材に添加した防錆剤は最大でも鉄粉に対して0.5質量%であり、微量であることから、得られた磁性層の鉄粉の単位面積当たりの含有量は実験例6-1~実験例6-24のいずれにおいても2.0kg/m2となった。また、同様の理由から、実験例6-1~実験例6-24のいずれの実験例においても磁性層の密度は2.5g/cm3となっている。
【0170】
得られた磁性層付き石膏系建材を40℃、90%RHの環境中に24時間静置した後、錆の発生を目視で確認した。評価結果を表6に示す。
【0171】
なお、実験例6-1~実験例6-24はいずれも実施例となる。
【0172】
【表6】
表6に示すとおり、各種防錆剤を鉄粉比0.1質量%以上配合した磁性層付き石膏系建材は錆が発生しないことを確認できた。
【0173】
なお、実験例1、3と同様にしてマグネット吸着試験を実施したところ、いずれの実験例で作製した磁性層付き石膏系建材においてもA4用紙を1枚以上保持できることを確認できた。
【0174】
以上に磁性層付き石膏系建材、磁性目地処理材、磁性層付き石膏系建材の製造方法を、実施形態等で説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されない。特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0175】
本出願は、2016年10月18日に日本国特許庁に出願された特願2016-204734号に基づく優先権を主張するものであり、特願2016-204734号の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0176】
10、20、31 磁性層付き石膏系建材
11 石膏系建材
12 磁性層
21 無機被膜