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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】産業用複合シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20240104BHJP
   B32B 27/02 20060101ALI20240104BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20240104BHJP
   C08K 5/1535 20060101ALI20240104BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20240104BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
B32B27/30 101
B32B27/02
C08K5/103
C08K5/1535
C08L27/06
B32B5/02 A ZAB
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021122564
(22)【出願日】2021-07-27
(65)【公開番号】P2023018432
(43)【公開日】2023-02-08
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000239862
【氏名又は名称】平岡織染株式会社
(72)【発明者】
【氏名】狩野 俊也
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-117654(JP,A)
【文献】特表2016-516093(JP,A)
【文献】特開2012-207065(JP,A)
【文献】特開2016-186534(JP,A)
【文献】特表2014-507438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、B32B、C08J5
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛を基材として、塩化ビニル系樹脂、及びフランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物〔化1〕を少なくとも含有する組成物からなる軟質塩化ビニル樹脂層が、前記布帛の1面以上に形成されてなり、前記布帛が、ポリアルキレンフラノエート〔化3〕繊維、またはアルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体〔化4〕繊維からなるマルチフィラメント糸条を織編要素に含むことを特徴とする産業用複合シート。
【化1】
【化3】
【化4】
【請求項2】
前記組成物が、ポリグリセリン脂肪酸エステル化合物〔化2〕の1種以上をさらに含む請求項1に記載の産業用複合シート。
【化2】
【請求項3】
1)前記ポリアルキレンフラノエート繊維が、ポリエチレンフラノエート繊維、ポリプロピレンフラノエート繊維、ポリブチレンフラノエート繊維、及びポリトリメチレンフラノエート繊維から選ばれた1種以上であり、2)前記アルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維が、ポリエチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維、ポリプロピレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維、ポリブチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維、及びポリトリメチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維から選ばれた1種以上である請求項1に記載の産業用複合シート。
【請求項4】
前記布帛の織編要素が、経糸条/緯糸条、経糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条、経糸条/緯糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条、から選ばれた1種である請求項1に記載の産業用複合シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業・園芸用ビニールハウス、医療用簡易クリーンブース、工業用簡易クリーンブース、公共施設用パーティション、自動車・鉄道車両の被覆保護材、床・壁の被覆保護材、屋根・天井の防水被覆材などに用いる産業資材フィルムと、さらに大型テント構造物(スポーツ施設、パビリオン、サーカス、プラネタリウムなど)、テント倉庫、建築養生(防音)シート、建築空間の膜屋根(膜天井)、ビジュアルファサード、フレキシブルコンテナ、昇降式シートシャッター、フロアシート、間仕切りシートなどに用いるターポリン、及びトラック幌、野積防水シート、屋形テントなどに用いる帆布、及び建築養生メッシュシート、防風防雪ネット、防眩ネット、日除ファサードなどに用いるメッシュシートなどの産業用複合シートに関する。より詳しくは、植物由来物質から合成された可塑剤を少なくとも含む軟質塩化ビニル樹脂製の再生循環型産業資材フィルムに関し、またポリアルキレンフラノエート繊維糸条、またはアルキレンフラノエート含有共重合体繊維糸条を織編要素とする布帛を基材とするターポリン、帆布、及びメッシュシートなどの再生循環型産業用複合シートに関し、さらに植物由来物質による布帛、及び植物由来物質による可塑剤を少なくとも含む軟質塩化ビニル樹脂層とからなる再生循環型の産業用複合シートに関する。本明細書においてバイオマス由来は動植物由来を意味し、再生循環型とは主にカーボンニュートラルを意味する。
【背景技術】
【0002】
大型テント構造物(スポーツ施設、パビリオン、サーカス、プラネタリウムなど)、テント倉庫、建築養生(防音)シート、建築空間の膜屋根(膜天井)、ファサードシート、フレキシブルコンテナ、昇降式シートシャッター、フロアシート、間仕切りシートなどに用いられるターポリン、及びトラック幌、野積防水シート、屋形テントなどに用いられる帆布、さらには建築養生メッシュシート、防風防雪ネット、防眩ネット、ファサードメッシュなどに用いられるメッシュシートなどの産業用複合シートの基材には、ポリエチレンテレフタレート(以下PET樹脂)から紡糸したポリエステル繊維糸条を織編要素とする布帛が用いられている。特に空隙率6~25%程度の布帛(織布)の両面に熱可塑性樹脂組成物フィルムを積層したものがターポリンで、空隙率0~10%程度の布帛の両面に液状の熱可塑性樹脂組成物を含浸塗工し、それを皮膜化したものが帆布で、また空隙率15~70%程度の粗目織物の全面に液状の熱可塑性樹脂組成物を含浸塗工し、塗工物を皮膜化したものがメッシュシートである。これらの産業用複合シートの基材に用いられる石油系物質を出発物質として合成されたPET樹脂布帛を、植物を出発物質として合成したPET樹脂布帛に転換することは、二酸化炭素量を増大させない低環境負荷かつ低炭素社会の提案の1つである。
【0003】
一方近年、PETボトルごみを原料化し、繊維(カーペット、衣類)・シート・成形品(文具・雑貨・容器)などへのリサイクル事業が定着しているが、回収PETボトルの品質にバラつきが大きく、リサイクル品の品質・物性などは劣っていた。しかし昨今では、飲料用PETボトルを直ちに資源回収に回すというリサイクル意識が広く定着し、品質劣化の少ない優良な回収PETが安定的に得られるようになったことで、以前では成し得なかった、新たな飲料用PETボトルに再生する「ボトルtoボトル」水平リサイクルが実現している。その背景に、プラスチックの原料となる石油の枯渇予測、プラスチックの焼却で発生する二酸化炭素の地球温暖化(異常気象、風水害、水位上昇、生態系異常など)、劣化プラスチック(マイクロプラスチック粒子)による海洋汚染、生物被害などの問題が切実となり、単なるプラスチックごみ削減に留まらず、天然物の代用、廃プラスチックの解重合による燃料化など様々な取り組みがなされている。そして最近ではプラスチックを低環境負荷な製品に置き換えることでの地球環境保全を唱え、特に世界的に使用量が多いPET樹脂を植物由来物質から合成されたPET樹脂に置換が検討されている。この植物由来のPET樹脂はBiomassエチレングリコールとBiomassテレフタル酸から合成される。Biomassエチレングリコールは、例えばサトウキビの廃蜜糖の発酵によるバイオエタノールを脱水してエチレンとし、これを酸化してエチレンオキサイドとし、さらに加水分解したジオールであり、またBiomassテレフタル酸は、例えばトウモロコシ糖の発酵によるイソブタノールを脱水してイソブチレンとし、ラジカル反応による二量化、環化により得たパラキシレンをテレフタル酸に転換したものである。しかしながらBiomassテレフタル酸の製造工程が多段階に煩雑化して全工程に係わるエネルギーが嵩むことで、得られる植物由来のPET樹脂が、エネルギーロスを含む高価で非合理なものとなる本末転倒は否めない。(※Biomassとバイオマスは同義で、「再生可能な生物由来の有機性資源」を意味し、本願明細書において、化学物質名詞の前に付くバイオマスをBiomassとして、カタカナの連続表記による誤認を回避し、以下の段落も同様とした)
【0004】
一方で、PET樹脂の代替にポリアルキレンフラノエート樹脂が注目されている。特にポリエチレンフラノエート樹脂(以下PEF樹脂)は、モノエチレングリコールと2,5-フランジカルボン酸との重縮合によって得られ、これらのモノマーは植物からも調達可能である。モノエチレングリコールはサトウキビの廃蜜糖の発酵によるBiomassエタノールを脱水してBiomassエチレンとし、これを酸化してBiomassエチレンオキサイドとし、さらに加水分解したBiomassジオールであり、同様に2,5-フランジカルボン酸はフルクトース(果糖)の脱水(含酸素5員環構造の生成)、酸化により合成したBiomass2,5-フランジカルボン酸なのでバイオマス度100%が可能である。具体的にPEF樹脂はガスバリア層を備える多層容器に用いられ、PEF樹脂がBiomassポリエチレングリコールと、Biomassフランジカルボン酸とから得られるPEF樹脂であるガスバリア性多層容器の発明が特許文献1に開示されている。またテレフタレート系ポリエステル樹脂と、PEF樹脂とを含む容器であって、PEF樹脂の割合を2~25質量%とする、軽量、かつ強度の高い容器(樹脂成形品)の発明が特許文献2に開示されている。特許文献1の多層構造のポリエステル樹脂容器、特許文献2のポリエステル樹脂ブレンドによる樹脂容器は短期間使用される家庭用品であるため樹脂劣化をほとんど受けず、再利用ポテンシャルの高い資源ではあるが、多層構造や樹脂ブレンドが仇となって水平リサイクルは困難である。
【0005】
従ってより合成が容易、かつ、石油由来のPET樹脂と同等以上の性能を有する植物由来のバイオマス樹脂が開発されれば、植物由来樹脂から紡糸した繊維による再生循環型のバイオマス布帛を得ることができ、また同時に、バイオマス布帛を被覆する熱可塑性樹脂組成物フィルム、及びバイオマス布帛を含浸被覆する熱可塑性樹脂組成物皮膜などの構成素材についても高バイオマス化が推進され、特に軟質塩化ビニル樹脂組成物において、その主体成分である塩化ビニル樹脂、及び可塑剤の合成プロセスにおける脱石油依存が合理的に展開できれば、より再生循環型の産業用複合シートが現実のものとなる。そしてさらに産業用複合シートを構成する上記の熱可塑性樹脂組成物フィルムも単体で再生循環型の産業資材フィルムとして広く活用できる。そしてこのような再生循環型の産業資材フィルムや産業用複合シートへの転換によって、仮に焼却処分したとしても、発生する二酸化炭素はカーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とするバイオ樹脂が再び二酸化炭素となって自然に還り、それを再度植物が吸収する循環)にカウントされ、地球環境の保全に貢献し得るキャンペーンとして、早急な開発とその実用化が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-199258号公報
【文献】特開2018-104070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、特定の可塑剤を少なくとも含む軟質塩化ビニル樹脂製の再生循環型の産業資材フィルムの提供と、特定の布帛、及び特定の可塑剤を少なくとも含む軟質塩化ビニル樹脂層とからなるターポリン、帆布、及びメッシュシートなどの再生循環型の産業用複合シートの提供を課題とする。本発明の産業資材フィルム、及び産業用複合シートによれば、これらの焼却処分時に発生する二酸化炭素の多くがカーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とする原料、及び製品が二酸化炭素として自然に還り、それを再度植物が吸収する循環)にカウントされ、地球環境における二酸化炭素量の増加を抑止可能な、低環境負荷かつ低炭素社会の実現に貢献することができる。本発明において再生循環型とは主にカーボンニュートラルを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる点を考慮し検討を重ねた結果、1)塩化ビニル系樹脂、及び特定のフランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物を少なくとも含有する組成物からなる産業資材フィルム、及び2)特定の布帛を基材として、塩化ビニル系樹脂、及び特定のフランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物を少なくとも含有する組成物からなる軟質塩化ビニル樹脂層が、特定の布帛の1面以上に形成されてなる産業用複合シートが、カーボンニュートラルに適合して再生循環型製品となり得ることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち本発明の産業用複合シートに用いるフィルムは、塩化ビニル系樹脂、及びフランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物〔化1〕を少なくとも含有する組成物からなることが好ましく、前記組成物が、ポリグリセリン脂肪酸エステル化合物〔化2〕の1種以上をさらに含むことができる。フランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物〔化1〕は、フランジカルボン酸とアルコールとの反応(エステル化)によって合成された可塑剤で、特にフランジカルボン酸、及びアルコールが植物由来物質から合成されたものが好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステル化合物〔化2〕は、グリセリンと脂肪酸との反応(エステル化)によって合成される可塑剤で、上から順にモノエステル化合物、ジエステル化合物、トリエステル化合物で、特にグリセリン、及び脂肪酸が植物由来物質から合成されたものが好ましい。塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル系モノマーのラジカル重合によって得られ、特に塩化ビニル系モノマーが植物由来物質から合成されたものが好ましい。〔化1〕及び塩化ビニル系樹脂、または〔化1〕,〔化2〕及び塩化ビニル系樹脂の全てが植物由来物質から合成されたものであることが最も好ましいが、少なくとも〔化1〕は植物由来物質から合成された化合物であることが好ましく、〔化2〕も植物由来物質から合成された化合物であることが好ましい。これによって、本発明の産業資材フィルム、及びフィルム構築物の廃材が焼却処分されたとしても、それから発生する二酸化炭素はカーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とするバイオマスフィルムが自然に還り、それを再度植物が吸収する循環)にカウントされる要件を具備することで、理論的に再生循環型の産業資材フィルムとなり得る。
【化1】
【化2】
【0010】
本発明の産業用複合シートは、ポリアルキレンフラノエート繊維、またはアルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維からなるマルチフィラメント糸条を織編要素に含む布帛を基材として、塩化ビニル系樹脂、及びフランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物〔化1〕を少なくとも含有する組成物からなる軟質塩化ビニル樹脂層が、前記布帛の1面以上に形成されてなることが好ましく、前記組成物が、ポリグリセリン脂肪酸エステル化合物〔化2〕の1種以上をさらに含むことができる。フランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物〔化1〕は、フランジカルボン酸とアルコールとの反応(エステル化)によって合成された可塑剤で、特にフランジカルボン酸、及びアルコールが植物由来物質から合成されたものが好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステル化合物〔化2〕は、グリセリンと脂肪酸との反応(エステル化)によって合成された可塑剤で、上から順にモノエステル化合物、ジエステル化合物、トリエステル化合物で、特にグリセリン、及び脂肪酸が植物由来物質から合成されたものが好ましい。塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル系モノマーのラジカル重合によって得られ、特に塩化ビニル系モノマーが植物由来物質から合成されたものが好ましい。〔化1〕及び塩化ビニル系樹脂、または〔化1〕,〔化2〕及び塩化ビニル系樹脂の全てが植物由来物質から合成されたものであることが最も好ましいが、少なくとも〔化1〕は植物由来物質から合成された化合物であることが好ましく、〔化2〕も植物由来物質から合成された化合物であることが好ましい。これによって、本発明の産業用複合シート、及びシート構築物の廃材が焼却処分されたとしても、発生する二酸化炭素はカーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とするバイオマスフィルムが自然に還り、それを再度植物が吸収する循環)にカウントされる要件を具備することで、理論的に再生循環型の産業用複合シートとなり得る。
【化1】
【化2】
【0011】
本発明の産業用複合シートは、前記布帛が、ポリアルキレンフラノエート〔化3〕繊維、またはアルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体〔化4〕繊維からなるマルチフィラメント糸条を織編要素に含むことが好ましく、1)前記ポリアルキレンフラノエート繊維が、ポリエチレンフラノエート繊維、ポリプロピレンフラノエート繊維、ポリブチレンフラノエート繊維、及びポリトリメチレンフラノエート繊維から選ばれた1種以上であり、2)前記アルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維が、ポリエチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維、ポリプロピレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維、ポリブチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維、及びポリトリメチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維から選ばれた1種以上であることが好ましい。ポリアルキレンフラノエート〔化3〕は、アルキレングリコールとフランジカルボン酸との重縮合によって得られ、特にアルキレングリコール、及びフランジカルボン酸が植物由来物質から合成されたものが好ましい。アルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体〔化4〕は、アルキレングリコールとフランジカルボン酸、及びテレフタル酸との重縮合によって得られる交互またはランダム共重合体〔化4上〕、またはブロック共重合体〔化4下〕であり、特にアルキレングリコール、フランジカルボン酸、及びテレフタル酸が植物由来物質から合成されたものが最も好ましい。少なくともアルキレングリコール、及びフランジカルボン酸が植物由来物質から合成されたものが好ましい。これによって、本発明の産業資材シ-ト、及びシート構築物の廃材が焼却処分されたとしても、発生する二酸化炭素はカーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とするバイオマスフィルムが自然に還り、それを再度植物が吸収する循環)にカウントされる要件を具備することで、理論的に再生循環型の産業用複合シートとなり得る。
【化3】
【化4】
【0012】
本発明の産業用複合シートは、前記布帛の織編要素が、経糸条/緯糸条、経糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条、経糸条/緯糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条、から選ばれた1種であることが好ましい。ここで「経糸条/緯糸条」は二軸織物、「経糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条」は三軸織物、「経糸条/緯糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条」は四軸織物を表している。特に三軸織物、及び四軸織物を基材に用いることで、得られる産業用複合シートの寸法安定性、破壊強度、耐貫通性、引裂防止性に極めて優れるので、特にターポリン及び帆布に関しては、テント構造物などの用途以外に、フレキシブル防犯シャッター、機動隊・自衛隊の防護服・防護カバー、爆破工事現場の破砕飛散物避け、作業現場の落下物受け装備などの特殊用途にも活用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の産業資材フィルム、及び産業用複合シートによれば、これらの焼却処分時に発生する二酸化炭素の多くがカーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とする原料、及び製品が二酸化炭素として自然に還り、それを再度植物が吸収する再生循環)にカウントされ、二酸化炭素排出量の増大を抑止可能な、低環境負荷かつ低炭素社会の実現に貢献できるので、特に産業資材フィルムは、農業・園芸用ビニールハウス、医療用簡易クリーンブース、工業用簡易クリーンブース、公共施設用パーティション、自動車・鉄道車両の被覆保護材、床・壁の被覆保護材、屋根・天井の防水被覆材などに広く用いることが期待され、また産業用複合シートは、大型テント構造物(スポーツ施設、パビリオン、サーカス、プラネタリウムなど)、テント倉庫、建築養生(防音)シート、建築空間の膜屋根(膜天井)、ビジュアルファサード、フレキシブルコンテナ、昇降式シートシャッター、フロアシート、間仕切りシートなどに用いるターポリン、及びトラック幌、野積防水シート、屋形テントなどに用いる帆布、及び建築養生メッシュシート、防風防雪ネット、防眩ネット、日除ファサードなどに用いるメッシュシートなどに広く用いることが期待される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のA)産業資材フィルムは、塩化ビニル系樹脂、及びフランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物を少なくとも含有する組成物からなる態様(Aa)であり、またこの組成物が、ポリグリセリン脂肪酸エステル化合物をさらに含む態様(Ab)である。また本発明の再生循環型のB)産業用複合シートは、布帛を基材として、塩化ビニル系樹脂、及びフランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物を少なくとも含有する組成物からなる軟質塩化ビニル樹脂層が、布帛の1面以上に形成されてなる態様(Ba)であり、また組成物がポリグリセリン脂肪酸エステル化合物をさらに含む態様(Bb)であり、また布帛が、ポリアルキレンフラノエート繊維、またはアルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維からなるマルチフィラメント糸条を織編要素に含む態様(Bc)であり、また布帛の織編要素が、経糸条/緯糸条、経糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条、経糸条/緯糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条、から選ばれた1種である態様(Bd)である。
【0015】
本発明の産業資材フィルムは、軟質塩化ビニル樹脂(可塑剤含有)組成物であり、懸濁重合によるストレート塩化ビニル樹脂(細粒)100質量部に、可塑剤を30~100質量部を主体とし、塩化ビニル系樹脂用安定剤として、カルシウム亜鉛複合系、バリウム亜鉛複合系、有機錫ラウレート、有機錫メルカプタイト、エポキシ系などの安定剤を任意使用することができる。必要に応じて、顔料、難燃剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防黴剤、抗菌剤、帯電防止剤、架橋剤などを任意使用することができる。この軟質塩化ビニル樹脂組成物をカレンダー圧延成型、またはTダイス押出成型して厚さ0.1~1mmとする態様が好ましい。このような樹脂組成物において主体とする可塑剤は、フランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物〔化1〕であり、この組成物に追加で含むことのできる可塑剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステル化合物〔化2〕の1種以上である。同様に本発明の再生循環型の産業資材シートは、1)布帛を基材として、その片面以上に、軟質塩化ビニル樹脂フィルムを積層してなるターポリン、2)布帛を基材として、その両面に、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層を形成してなる帆布、3)粗目布帛を基材として、その両面に、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層を形成してなるメッシュシートであり、ターポリン用の軟質塩化ビニル樹脂フィルムは上述のフィルムと同一、帆布用、及びメッシュシート用の軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層は、乳化重合によるペースト塩化ビニル樹脂(微粒子)100質量部に、可塑剤を30~100質量部を主体とし、塩化ビニル系樹脂用安定剤として、カルシウム亜鉛複合系、バリウム亜鉛複合系、有機錫ラウレート、有機錫メルカプタイト、エポキシ系などの安定剤を任意使用することができる。必要に応じて、顔料、難燃剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防黴剤、抗菌剤、帯電防止剤、架橋剤などを任意使用することができる。このペースト状物を布帛にコーティング、または布帛をペースト状物の液浴中にディッピングし、これを熱処理ゲル化させた皮膜が好ましい。このような樹脂組成物において主体とする可塑剤は、フランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物〔化1〕であり、この組成物に追加で含むことのできる可塑剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステル化合物〔化2〕の1種以上である。
【0016】
フランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物〔化1〕は、フランジカルボン酸とアルコールとの反応(エステル化)によって合成された可塑剤でn=4~20、特に2,5-フランジカルボン酸とC4~C12(C13~C20であってもよい)のアルコールとの反応(エステル化)によって合成された2,5-フランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物が好ましい。2,5-フランジカルボン酸は、例えば、フルクトース(果糖)の脱水(含酸素5員環構造の生成)、酸化により合成される再生循環可能なバイオマス化合物である。再生循環とは、バイオマス製品の燃焼で排出された二酸化炭素が、植物に吸収され、植物の生産する糖をバイオマス化合物に転化してバイオマス化合物(この段落では〔化1〕の可塑剤)を合成するサイクルを意味する。フランジカルボン酸のカルボン酸の配位は2,5位以外、2,3位、2,4位、3,4位の態様も可能であるが、バイオマス化合物としては2,5-フランジカルボン酸が最も合成が簡便である。〔化1〕の具体例は、2,5-フランジカルボン酸とC4アルコールとの反応による2,5-フランジカルボン酸ジブチル(MW268)、及び2,5-フランジカルボン酸ジイソブチル(MW268)、同様にC5アルコールとの反応による2,5-フランジカルボン酸ジペンチル(MW296)、同様にC6アルコールとの反応による2,5-フランジカルボン酸ジヘキシル(MW324)、同様にC7アルコールとの反応による2,5-フランジカルボン酸ジヘプチル(MW352)、同様にC8アルコールとの反応による2,5-フランジカルボン酸ジ(2-エチルヘキシル)(MW380)、同様にC9アルコールとの反応による2,5-フランジカルボン酸ジノニル(MW408)及び、2,5-フランジカルボン酸ジイソノニル(MW408)、同様にC10アルコールとの反応による2,5-フランジカルボン酸ジデシル(MW436)及び、2,5-フランジカルボン酸ジイソデシル(MW436)、同様にC11アルコールとの反応による2,5-フランジカルボン酸ジウンデシル(MW464)、同様にC12アルコールとの反応による2,5-フランジカルボン酸ジラウリル(MW492)などで、複数種を併用することができる。合成に用いるC4~C12アルコールも植物由来の化合物であることが好ましく、Biomassエタノール、BiomassブタノールなどBiomassアルコールの二量化、三量化によって得ることが可能である。これによって得られるこれらのフランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物〔化1〕はバイオマス度100%となり再生循環可能となり得る。
【化1】
【0017】
また、ポリグリセリン脂肪酸エステル化合物〔化2〕は、ポリグリセリンと脂肪酸をエステル化したもので、ポリグリセリン脂肪酸モノエステル化合物〔化2上〕、ポリグリセリン脂肪酸ジエステル化合物〔化2中〕、ポリグリセリン脂肪酸トリエステル化合物〔化2下〕、及びこれらの混合物の何れかである。ポリグリセリンはグリセリンをモノマーとして脱水縮合して得られる多量体(ポリマー)で、重合度n=2~10,特にn=2,4,6が好ましい。特にグリセリンは、生物(動物、魚類、昆虫類など)の油脂に含むトリアシルグリセロールを加水分解して得られるもの、油脂(動物系、植物系)を鹸化して得られる石鹸製造時の副産物(グリセリン)、油脂とメタノールのエステル交換反応による脂肪酸メチルエステル生成時の副産物(グリセリン)、Biomassプロピレンをエピクロルヒドリンに転化し、これを加水分解したBiomassグリセリンなど、非石油由来のBiomassグリセリンが好ましい。また脂肪酸は、炭素数2~10の飽和または不飽和脂肪酸が好ましく、これらは直鎖状または分岐状であってもよく具体的に、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸(ヘキサン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、カプリン酸(デカン酸)、2-エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸、ラウリン酸(ドデカン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)などであるが、非石油由来の観点において、ベニバナ油、コーン油、大豆油、オリーブ油、ヤシ油、及びパーム油などに含むリノール酸、リノレン酸、オレイン酸、ラウリン酸(ドデカン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)などが好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステル化合物〔化2〕としては、ポリグリセリン/カプリル酸モノ(またはジ、またはトリ)エステル、ポリグリセリン/カプリン酸モノ(またはジ、またはトリ)エステル、ポリグリセリン2-エチルヘキサン酸モノ(またはジ、またはトリ)エステル、ポリグリセリン/ラウリン酸モノ(またはジ、またはトリ)エステル、ポリグリセリン/パルミチン酸モノ(またはジ、またはトリ)エステル、などである。(※「/」は化学物質のカタカナ名詞の連続による視認混乱を回避するために用いた。ポリグリセリン脂肪酸エステル化合物において全て同様の扱いとする)このようなバイオマス由来のグリセリンによるポリグリセリンと、バイオマス由来の脂肪酸をエステル化して得られるポリグリセリン脂肪酸エステル化合物〔化2〕が、再生循環可能なバイオマス化合物となり得る。フランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物〔化1〕の配合質量に対するポリグリセリン脂肪酸エステル化合物〔化2〕の併用は1~50質量%である。化合物〔化2〕の併用量が多い程、軟質塩化ビニル樹脂フィルム、及び軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層に対するフィラー分散、及び充填効果に優れ、また特に化合物〔化2〕の分岐構造により可塑剤移行抑止の効果に優れ、物品表面が可塑剤でベタつく現象を生じ難いので煤塵の付着が低減し、それによって汚れ防止の効果を奏し、また可塑剤の揮散抑止効果により長期的な風合い保持を奏することが可能となる。
【化2】
*式中Rはアルキル基
【0018】
本発明の産業資材フィルム、及び産業資材シートに用いる塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル系樹脂とは塩化ビニルモノマーの単独重合体(乳化重合タイプ、懸濁重合タイプで重合度が700~3800のもの)、架橋塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂の他、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/アクリルグラフト重合体など、塩化ビニル含有成分が60質量%を越える共重合体が挙げられる。塩化ビニルモノマーは、ナフサを熱分解して得たエチレンと、塩を電気分解して得られる塩素を反応させ二塩化エチレンとし、この二塩化エチレンを熱分解して得る直接塩素化法、及びナフサを熱分解して得たエチレンと、直接塩素化法で副生する塩化水素を酸素の存在下で反応させ二塩化エチレンとし、この二塩化エチレンを脱水して熱分解して得るオキシ塩素化法が汎用である。しかし本発明において用いる塩化ビニル系樹脂は、サトウキビの廃蜜糖の発酵によるBiomassエタノールを脱水して得られるBiomassエチレンを由来とする塩化ビニルモノマーを用いて重合されたバイオマス塩化ビニル系樹脂が好ましい。このバイオマス塩化ビニル系樹脂用の可塑剤として、Biomassフランジカルボン酸ジアルキルエステル化合物〔化1〕を用い、必要に応じてBiomassポリグリセリン脂肪酸エステル化合物〔化2〕をさらに可塑剤として含む組成物により製造された産業資材フィルム、及び産業用複合シートは、カーボンニュートラルなバイオマス産業資材フィルム、及び産業用複合シートとなり得る。またバイオマス度が任意である場合は、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、フタル酸エステル系、イソフタル酸エステル系、テレフタル酸エステル系、シクロヘキサンジカルボン酸エステル系、シクロヘキセンジカルボン酸エステル系、アジピン酸系、セバシン酸系、塩素化パラフィン系、ポリエステル系、エチレン/酢酸ビニル/一酸化炭素三元共重合体樹脂、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル/一酸化炭素三元共重合体樹脂などの可塑剤を、全可塑剤量に対して1~50質量%併用してもよい。特にエポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油は、化学構造の大豆油、アマニ油部分がバイオマス由来なので、本発明における併用可塑剤に最適となる。
【0019】
本発明の産業用複合シートの基材に用いる布帛は、少なくともポリアルキレンフラノエート〔化3〕繊維、またはアルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体〔化4〕繊維からなるマルチフィラメント糸条を織編要素に含む、1)空隙率6~25%程度のターポリン用の織布(平織物、斜子織物、朱子織物、綾織物、ラッセル織物など)で、長繊維マルチフィラメント糸条で織編される目付量100~500g/mの織布、2)空隙率0~10%程度の帆布用布帛(平織物、斜子織物、朱子織物、綾織物など)で、短繊維紡績(スパン)マルチフィラメント糸条で織編される目付量100~500g/mのスパン布帛、3)及び空隙率10~70%程度のメッシュシート用の粗目織物(平織物、模紗織物、積重ネットなど)で、長繊維マルチフィラメント糸条で織編される目付量30~200g/mの粗目織物、樹脂で糸条全体を被覆した長繊維マルチフィラメント糸条(コーテッドヤーン)で、目付量25~350g/mの織編メッシュ、積重メッシュが例示できる。空隙率は、経糸条/緯糸条、経糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条、経糸条/緯糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸などの軸糸同士の交絡・交差によって生じる隙間の総和であり、布帛の単位面積中に占める糸条の面積を百分率として求め、100から差し引いた値として求めることができる。具体的に糸条幅の平均値を求め、糸条の打込本数/インチの関係から1インチ平米当たりの空隙率による換算値として算出可能である。
【0020】
これらの織布、スパン布帛、粗目織物、及びメッシュは、ポリアルキレンフラノエート繊維マルチフィラメント糸条、またはアルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維から構成されるが、これ以外の繊維として、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート:PET、ポリブチレンテレフタレート:PBT、ポリナフタレンテレフタレート:PNF)繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、から選ばれた1種以上のマルチフィラメント糸条(長繊維、短繊維紡績糸)を混用することができ、これら糸条の混用率はバイオマス度の観点から50質量%以下が好ましい。混用糸条は任意の打ち込み間隔(n本交互、n本引揃え交互、n本跨ぎ:nは整数)で規則的配置、あるいはランダム配置して、外観上、格子模様、幾何学模様となる態様であってもよい。そして上記糸条による布帛の織編要素は、経糸条/緯糸条、経糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条、経糸条/緯糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条、から選ばれた1種である。ここで「経糸条/緯糸条」は二軸織物、「経糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条」は三軸織物、「経糸条/緯糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条」は四軸織物を表している。(※布帛の織編要素の説明において、「/」は糸条方向の組み合わせ、すなわちandを意味する。布帛の織編要素において全て同様)特に三軸織物、及び四軸織物を基材に用いることで、得られる産業用複合シートの寸法安定性、破壊強度、耐貫通性、引裂防止性に極めて優れるので、テント構造物などの用途以外に、フレキシブル防犯シャッター、機動隊・自衛隊の防護服・防護カバー、爆破工事現場の破砕飛散物避け、作業現場の落下物受け装備などの特殊用途にも活用することができる。そしてターポリンは、空隙率6~25%程度の織布の両面に熱可塑性樹脂組成物フィルムを積層した態様で、また帆布は、空隙率0~10%程度の布帛の両面に液状の熱可塑性樹脂組成物を含浸塗工し、それを皮膜化した態様で、またメッシュシートは、空隙率10~70%程度の粗目織物の全面に液状の熱可塑性樹脂組成物を含浸塗工し、塗工物を皮膜化した態様である。
【0021】
本発明の産業用複合シートの基材に用いる布帛は、少なくともポリアルキレンフラノエート〔化3〕繊維、またはアルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体〔化4〕繊維からなるマルチフィラメント糸条を織編要素に含むもので、具体的に1)ポリアルキレンフラノエート繊維が、ポリエチレンフラノエート繊維、ポリプロピレンフラノエート繊維、ポリブチレンフラノエート繊維、及びポリトリメチレンフラノエート繊維から選ばれた1種以上が例示できる。〔化3〕の「-(CH2n-」はアルキレン基を示し、nは2以上10以下の整数、具体的にエチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ドデシレンなどであるが、特にnは2,3,4の何れかが好ましい。また好ましい重合度mは500~1000である
【化3】
これらのポリアルキレンフラノエート繊維は、密度1.41~1.45g/cm3、融点210~230℃、強度(E-modulus)3.1~3.3GPa、の少なくとも1項を満たすポリアルキレンフラノエート樹脂から溶融紡糸された繊維が特に好ましい。ポリエチレンフラノエート繊維は具体的に、モノエチレングリコールと2,5-フランジカルボン酸との重縮合によって得られるPEF樹脂から溶融紡糸された繊維で、ポリプロピレンフラノエート繊維は具体的に、モノプロピレングリコールと2,5-フランジカルボン酸との重縮合によって得られるPPF樹脂から溶融紡糸された繊維で、ポリエチレンフラノエート繊維は具体的に、モノブチレングリコールと2,5-フランジカルボン酸との重縮合によって得られるPBF樹脂から溶融紡糸された繊維で、ポリトリメチレンフラノエート繊維は具体的に、トリメチレングリコールと2,5-フランジカルボン酸との重縮合によって得られるPtMF樹脂から溶融紡糸された繊維である。特にポリエチレンフラノエート繊維は100%バイオマス化が容易で好ましく、バイオマス度100%を達成するモノエチレングリコールは例えば、サトウキビの廃蜜糖の発酵によるBiomassエタノールを脱水してエチレンとし、これを酸化してエチレンオキサイドとし、さらに加水分解した植物由来のジオールで、これらは再生持続可能である。また2,5-フランジカルボン酸は例えば、フルクトース(果糖)の脱水(含酸素5員環構造の生成)、酸化により合成した植物由来の化合物が好ましく、これらは再生持続可能である。上記ポリアルキレンフラノエート繊維全般において、原料となるフランジカルボン酸のカルボン酸の配位は2,5位以外、2,3位、2,4位、3,4位の態様も可能であるが、植物由来化合物として2,5-フランジカルボン酸が最も合成が容易である。再生持続可能とは、バイオマス製品の燃焼により排出された二酸化炭素が、植物に吸収され、植物の生産する糖をバイオマスモノマーに転化し、これによりバイオマス製品を合成するサイクルを意味する。
【0022】
また、アルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体〔化4〕繊維は、ポリエチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維、ポリプロピレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維、ポリブチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維、及びポリトリメチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維から選ばれた1種以上が例示できる。〔化4〕の「-(CH2n-」はアルキレン基を示し、nは2以上10以下の整数、具体的にエチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ドデシレンなどであるが、特にnは2,3,4の何れかが好ましい。
【化4】
これらのアルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維は、密度1.38~1.42g/cm3、融点220~250℃、強度(E-modulus)2.5~3.0GPa、の少なくとも1項を満たすアルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体樹脂から溶融紡糸された繊維が特に好ましい。このアルキレン(Alk)/フラノエート(F)/テレフタレート(T)共重合体樹脂の態様は、1)〔-Alk-F-Alk-T-〕を繰り返し単位m(特に好ましくは500~1000)とする交互共重合体〔化4上〕、2)交互共重合体において〔F〕と〔T〕の配置が不規則なランダム共重合体(ランダムなので〔化4〕に図示してない)、3)〔-Alk-T-〕m1(特に好ましくはm1が125~250)重合体単位と〔-Alk-F-〕m2(特に好ましくはm2が375~750)重合体単位を含むブロック共重合体〔化4下〕が例示でき、下記具体例においても同様1)~3)の態様の何れかである。ポリエチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維は具体的に、モノエチレングリコールとテレフタル酸、及び2,5-フランジカルボン酸との重縮合によって得られるPE/F/T樹脂から溶融紡糸された繊維で、ポリプロピレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維は具体的に、モノプロピレングリコールとテレフタル酸、及び2,5-フランジカルボン酸との重縮合によって得られるPP/F/T樹脂から溶融紡糸された繊維で、ポリブチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維は具体的に、モノブチレングリコールとテレフタル酸、及び2,5-フランジカルボン酸との重縮合によって得られるPB/F/T樹脂から溶融紡糸された繊維で、ポリトリメチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維は具体的に、トリメチレングリコールと、テレフタル酸、及び2,5-フランジカルボン酸との重縮合によって得られるPtM/F/T樹脂から溶融紡糸された繊維である。特にポリエチレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維では高バイオマス化が容易で好ましい。高バイオマス度となり得るモノエチレングリコール、及び2,5-フランジカルボン酸は段落〔0021〕に記載と同一である。これらの共重合体繊維において、テレフタル酸成分も植物由来のBiomassテレフタル酸であることが好ましい。またテレフタル酸成分の1~99質量%をイソフタル酸、またはフタル酸に置換することもできる。(※「/」は共重合成分を明確にするための存在で、共重合体において全て同様の扱いとする)

【0023】
本発明の産業用複合シートの基材に用いる布帛の織編(経糸条/緯糸条、経糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条、経糸条/緯糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条)に用いる糸条は、1)空隙率6~25%程度のターポリン用の織布(平織物、斜子織物、朱子織物、綾織物、ラッセル織物など)を構成する長繊維マルチフィラメント糸条で、その繊度が250~2000デニール(278~2222dtex)程度で、278dtexのフィラメント数は100~200本、1111dtexのフィラメント数だと400~800本であり、無撚(断面が楕円または扁平)であっても撚糸であってもよい。2)空隙率0~10%程度の帆布用布帛(平織物、斜子織物、朱子織物、綾織物など)を構成する短繊維紡績(スパン)マルチフィラメント糸条で、その繊度が綿番手の10番手(591dtex)~60番手(97dtex)の範囲、特に10番手(591dtex)、14番手(422dtex)、16番手(370dtex)、20番手(295dtex)、24番手(246dtex)、30番手(197dtex)などであり、これらの単糸、または双糸(片撚糸)、単糸2本以上による合撚糸(諸撚糸)などが使用できる他、嵩高加工糸条(タスラン加工糸、ウーリー加工糸など)、カバリング糸条(マルチフィラメント糸の外周に同種または異種の短繊維を巻き付けた芯鞘複合糸)なども使用できる。3)空隙率10~70%程度のメッシュシート用の粗目織物(平織物、模紗織物、積重ネットなど)を構成する長繊維マルチフィラメント糸条で、その繊度は、1)と同様で、特に樹脂で糸条全体を被覆した長繊維マルチフィラメント糸条(コーテッドヤーン)であってもよい。
【0024】
本発明の産業用複合シートにおいて、1)空隙6~25%程度の織布(平織物、斜子織物、朱子織物、綾織物、ラッセル織物など)で、長繊維マルチフィラメント糸条で織編される目付量100~500g/mの織布を基材とするターポリンは、この基材の両面に軟質塩化ビニル系樹脂組成物からカレンダー圧延成型、あるいはTダイス押出成型された厚さ0.1~1mmのフィルム、またはシートを熱圧ラミネートして得ることができ、空隙率6~25%の空隙部(軸糸の交絡により生じる空隙)を介在して、織布の表裏に配置されたフィルム、またはシート同士が溶融一体化することで表裏の軟質塩化ビニル樹脂層が織布と強固に接着する特徴を有している。ターポリンの厚さは0.4~1.5mm、質量500~2000g/mの範囲だと、大型テント構造物(室内スポーツ施設、パビリオン、イベントホール)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(膜天井)などの膜構造物の原反素材、フレキシブルコンテナの原反素材に適する。また2)空隙率0~10%程度の帆布用布帛(平織物、斜子織物、朱子織物、綾織物など)で、短繊維紡績(スパン)マルチフィラメント糸条で織編される目付量100~500g/mのスパン布帛を基材とする帆布は、この基材の両面に軟質塩化ビニル樹脂系組成物の液状物をディップ塗工、あるいはコーティング塗工し、塗工物を乾燥させて0.05~0.3mmの皮膜化して得ることができ、塗工物の一部はスパン布帛に含浸した状態が好ましい。帆布の厚さは0.4~1.0mm、質量400~1500g/mの範囲だと、トラック幌、テント倉庫などの原反素材に適する。また3)及び空隙率10~70%程度のメッシュシート用の粗目織物(平織物、模紗織物、積重ネットなど)で、長繊維マルチフィラメント糸条で織編される目付量30~200g/mの粗目織物を基材とするメッシュシートは、この基材の全体に軟質塩化ビニル系樹脂組成物の液状物をディップ塗工し、塗工物を乾燥させて0.05~0.3mmの皮膜化して得ることができ、塗工物の一部は粗目織物に含浸した状態が好ましい。また軟質塩化ビニル系樹脂組成物の液状物を糸条全体に塗工被覆した長繊維マルチフィラメント糸条(コーテッドヤーン)を織編して得たメッシュシートである。メッシュシートの厚さは0.4~1.0mm、質量200~1000g/mの範囲だと、建築養生メッシュシート、防風防雪ネット、防眩ネット、ファサードメッシュなどの原反素材に適する。
【0025】
本発明の産業資材フィルム、及び産業用複合シートの表面の片面以上に、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル/シリコン系共重合体樹脂、フッ素系共重合体樹脂、アクリル系樹脂とフッ素系共重合体樹脂のブレンド、ウレタン/シリコン系グラフト共重合体樹脂、及びウレタン/フッ素系グラフト共重合体樹脂、などの塗膜からなる防汚層が形成されていてもよく、また、フッ素系樹脂層/アミノエチル化アクリル樹脂エポキシ硬化物接着層、フッ素系樹脂層/アクリル系樹脂接着層、フッ素系樹脂層/アクリル系樹脂層/アミノエチル化アクリル樹脂エポキシ硬化物接着層、及びフッ素系樹脂層/アクリル系樹脂層/塩化ビニル系樹脂接着層などのフッ素系樹脂フィルムを防汚層として積層することができる。これらの防汚層を、大型テント(パビリオン)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、モニュメントなどの膜構造物に適用することで屋外使用時の耐久性を飛躍的に向上させる。さらにこれらの防汚層の表面には、1次粒子径3nm~150nmの無機コロイド物質を原料とするナノ粒子が、シランカップリング剤の加水分解縮合物を含むバインダー成分に担持されてなる帯電防止性防汚層が設けられていてもよい。無機コロイド物質は、光触媒性酸化チタンゾル、光触媒性酸化亜鉛ゾル、光触媒性酸化錫ゾル、酸化チタンゾル、酸化亜鉛ゾル、酸化錫ゾル、シリカゾル、酸化アルミニウムゾル、酸化ジルコニウムゾル、酸化セリウムゾル、及び複合酸化物(酸化亜鉛-五酸化アンチモン複合または酸化スズ-五酸化アンチモン複合)ゾルなどの金属酸化物である。
【0026】
本発明の産業資材フィルム、及び産業用複合シートの接合・縫製は、高周波ウエルダー融着法、熱板融着法、熱風融着法、超音波融着法などの熱融着、及びミシン縫い縫製が適用可能である。特に高周波融着法において、ウエルドバーによる発熱プレスにより表裏の軟質塩化ビニル樹脂層が再溶融し、布帛(基材)を再加熱することで布帛(糸条)との接着効果が増すことで更に膜構造体のラップ接合部におけるクリープ性(糸抜破壊の抑止性)を向上させる。特にポリアルキレンフラノエート繊維からなる糸条を布帛の構成要素とすることで、産業用複合シート同士のラップ(Lap)接合部分に糸抜破壊を生じることなく、接合部強度、及び接合部の耐クリープ性に優れたものとする。この効果の主要因は、ポリアルキレンフラノエート樹脂(繊維原料)の融点は210~230℃と、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET繊維原料)の融点250~270℃よりも20~60℃低く、軟質塩化ビニル樹脂層の200℃以下の融点に接近することで、製造時、及びLap接合時における布帛と軟質塩化ビニル樹脂層との密着性が効果的に向上したものと考察される。また産業用複合シート本体の強度性能、及び耐引裂強度が十二分に発現された主要因は、PET樹脂(繊維原料)の強度(E-modulus)2.1~2.2GPaに対し、ポリアルキレンフラノエート樹脂(繊維原料)の強度が3.1~3.3GPaと、約50%高い値による好結果と考察する。また産業用風号シート本体の柔軟性が発現された主要因は、PET樹脂から繊維を溶融紡糸し、これを延伸冷却化した際の結晶化速度が約2~3分に対し、ポリアルキレンフラノエート樹脂(繊維原料)の場合は約20~30分と約10倍遅い結晶化による好結果と考察する。またアルキレン/フラノエート/テレフタレート共重合体繊維においても同様の融点差、強度差、結晶化速度差による効果が十分に発現されるものと考察される。
【0027】
実施例
本発明を下記の実施例及び比較例を挙げて更に説明するが、本発明はこれらの例の範囲に限定されるものではない。
バイオマス度(バイオマス由来の証明)
ポリマーを構成する全炭素原子中に含む炭素同位体「14C」濃度(ポリマー中の「14C」と「12C」の検出比)を加速器質量分析計(Accelerator Mass Spectrometry)により求め、「14C」の検出比によりバイオ化率が証明される。
大気中の炭素同位体「14C」量は、宇宙線による「14C」生成と、放射崩壊(半減期約5730年)とが平衡状態にありほぼ一定で、大気中の「14C」は光合成によって植物に蓄積され、続く食物連鎖で動物中に分布することで地球上全ての生物の「14C」濃度(「14C」と「12C」の検出比)はほぼ一定である。その一方、石油は1~2億年前の生物由来物質であるため、石油中の「14C」濃度は半減期を大きく過ぎていることで実質ゼロと見做されることで、バイオマス由来製品には一定濃度の「14C」が含まれ、石油由来製品には「14C」が含まれないことになる。従って「14C」濃度(「14C」と「12C」の検出比)測定によりバイオマス由来製品であることの証明となり得る。
【0028】
[実施例1]
〈布帛(1)によるターポリン〉
ポリエチレンフェノラート樹脂(密度1.43g/cm3、融点210~230℃、ガラス転移温度Tg88℃、強度:E-modulus3.1~3.3GPa)を溶融紡糸したポリエチレンフェノラート(PEF)繊維による1000d(1111dtex)マルチフィラメント糸条(フィラメント数192本)、S撚200T/mを経糸群、及び緯糸群として、経糸条19本/インチ×緯糸条20本/インチの打ち込み密度とする、質量190g/m、空隙率10%の布帛(1)を用いる。
※ポリエチレンフェノラート(PEF)繊維は、モノエチレングリコールと2,5-フランジカルボン酸との重縮合によって得られるポリエチレンフェノラート(PEF)樹脂から溶融紡糸されるもので、重合モノマーは何れもバイオマス由来化合物で、モノエチレングリコールは、サトウキビの廃蜜糖の発酵によるバイオマス・エタノールを脱水してバイオマス・エチレンとし、これを酸化してバイオマス・エチレンオキサイドとし、さらに加水分解したもの、また2,5-フランジカルボン酸は、フルクトース(果糖)の脱水(含酸素5員環構造の生成)、酸化により合成した植物由来化合物もので、得られるポリエチレンフェノラート(PEF)繊維はバイオマス度100%となり、この繊維糸条を織編要素とする布帛(1)もバイオマス度100%となる。
<ターポリンの製造>
布帛(1)の両面に下記〔配合1〕の軟質塩化ビニル樹脂コンパウンドから165℃~180℃の熱条件でカレンダー成型による厚さ0.16mmのフィルムを、ラミネーターにより170℃の熱ロール条件でフィルムを軟化させた状態で積層すれば、厚さ0.75mm、質量915g/mのターポリン態様の産業用複合シート(1)が得られる。この産業用複合シート(1)のバイオマス度は理論的におよそ100%となる(難燃剤、安定剤、顔料、紫外線吸収剤を除く)
※成型した〔配合1〕による厚さ0.16mmのフィルムは、別途本発明の産業資材フィルムとして利用できる。
〔配合1〕軟質塩化ビニル樹脂コンパウンド組成物
懸濁重合による塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
※サトウキビの廃蜜糖の発酵によるBiomassエタノールを脱水して得られるBiomassエ
チレンを塩素化した塩化ビニルモノマーのラジカル重合によるBiomassポリマー
2,5-フランジカルボン酸ジイソノニル(可塑剤) 60質量部
※2,5-フランジカルボン酸とイソノニルアルコールとの反応(エステル化)によっ
て合成され、2,5-フランジカルボン酸はフルクトース(果糖)の脱水(含酸素5員
環構造の生成)、酸化により合成される植物由来で、イソノニルアルコールはサトウキ
ビの廃蜜糖の発酵によるBiomassアルコールを経由するバイオマス度100%の化合物
エポキシ化大豆油(部分バイオマス可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
ルチル型二酸化チタン(白色顔料) 5質量部
ベンゾトリアゾール系化合物(紫外線吸収剤) 0.3質量部
【0029】
[実施例2]
〈布帛(2)による帆布〉
ポリエチレンフェノラート樹脂(密度1.43g/cm3、融点210~230℃、ガラス転移温度Tg88℃、強度:E-modulus3.1~3.3GPa)を溶融紡糸したポリエチレンフェノラート(PEF)短繊維紡績糸(S撚600T/m)による、経糸20番手双糸(590dtex)46本/インチ×緯糸20番手双糸(590dtex)42本/インチ:空隙率5%:質量228g/mの平織スパン布を布帛(2)に用いる。
※ポリエチレンフェノラート(PEF)繊維は、モノエチレングリコールと2,5-フランジカルボン酸との重縮合によって得られるポリエチレンフェノラート(PEF)樹脂から溶融紡糸される長繊維を4~10cm長に切断したステープルによる紡績糸で、重合モノマーは何れもバイオマス由来化合物で、モノエチレングリコールは、サトウキビの廃蜜糖の発酵によるバイオマス・エタノールを脱水してバイオマス・エチレンとし、これを酸化してバイオマス・エチレンオキサイドとし、さらに加水分解したもの、また2,5-フランジカルボン酸は、フルクトース(果糖)の脱水(含酸素5員環構造の生成)、酸化により合成したバイオマス由来化合物もので、得られるポリエチレンフェノラート(PEF)繊維は100%バイオマス由来の紡績糸となり、この紡績糸を織編要素とする布帛(2)もバイオマス度100%となる。
<帆布の製造>
下記〔配合2〕の軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物を充填した液浴中に、布帛(2)を浸漬し、布帛(2)に〔配合2〕のペーストゾル組成物をディップ含浸させ、布帛(2)を引き上げると同時にゴムロールで圧搾後、180℃の熱風炉で3分間、〔配合2〕のペーストゾル組成物のゲル化を完結させれば、布帛(2)に軟質塩化ビニル樹脂が含浸し、かつ布帛(2)の両面に軟質塩化ビニル樹脂層が形成された厚さ0.47mm、質量560g/mの帆布態様の産業用複合シート(2)が得られる。この産業用複合シート(2)のバイオマス度は理論的におよそ100%となる(難燃剤、安定剤、顔料、紫外線吸収剤、硬化剤などの配合剤を除く)
〔配合2〕軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物
乳化重合による塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
※サトウキビの廃蜜糖の発酵によるバイオマス・エタノールを脱水して得られるバイオ
マス・エチレンを塩素化した塩化ビニルモノマーのラジカル重合によるBiomassポリマ

2,5-フランジカルボン酸ジイソノニル(可塑剤) 60質量部
※2,5-フランジカルボン酸とイソノニルアルコールとの反応(エステル化)によっ
て合成され、2,5-フランジカルボン酸はフルクトース(果糖)の脱水(含酸素5員
環構造の生成)、酸化により合成される植物由来で、イソノニルアルコールはサトウキ
ビの廃蜜糖の発酵によるBiomassアルコールを経由するバイオマス度100%の化合物
エポキシ化大豆油(部分バイオマス可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
ルチル型酸化チタン(白色顔料) 5質量部
シアニングリーン(緑顔料) 5質量部
ベンゾトリアゾール系化合物(紫外線吸収剤) 0.3質量部
イソシアヌレート変性トリイソシアネート(硬化剤) 5質量部
【0030】
[実施例3]
〈布帛(3)によるメッシュシート〉
ポリエチレンフェノラート樹脂(密度1.43g/cm3、融点210~230℃、ガラス転移温度Tg88℃、強度:E-modulus3.1~3.3GPa)を溶融紡糸したポリエチレンフェノラート(PEF)繊維による、糸密度「750d(833dtex)フィラメント数147本、S撚200T/m:/3本引揃」を、経緯糸条として、経糸条8本/インチ、緯糸条9本/インチの打ち込みで模紗織した、質量195g/m、空隙率15%の粗目状の布帛(3)を用いる。
※ポリエチレンフェノラート(PEF)繊維は、モノエチレングリコールと2,5-フランジカルボン酸との重縮合によって得られるポリエチレンフェノラート(PEF)樹脂から溶融紡糸されるもので、重合モノマーは何れもバイオマス由来化合物で、モノエチレングリコールは、サトウキビの廃蜜糖の発酵によるBiomassエタノールを脱水してBiomassエチレンとし、これを酸化してBiomassエチレンオキサイドとし、さらに加水分解したもの、また2,5-フランジカルボン酸は、フルクトース(果糖)の脱水(含酸素5員環構造の生成)、酸化により合成したバイオマス由来化合物で、得られるポリエチレンフェノラート(PEF)繊維はバイオマス度100%となり、この繊維糸条を織編要素とする粗目状の布帛(3)もバイオマス度100%となる。
<メッシュシートの製造>
前述の〔配合2〕の軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物を充填した液浴中に、布帛(3)を浸漬し、布帛(3)に〔配合2〕のペーストゾル組成物をディップ含浸させ、布帛(3)を引き上げると同時にゴムロールで圧搾して180℃の熱風炉で3分間、〔配合2〕のペーストゾル組成物のゲル化を完結させれば、布帛(3)に軟質塩化ビニル樹脂が含浸し、かつ布帛(3)全面に軟質塩化ビニル樹脂層が形成された厚さ0.42mm、質量465g/m、空隙率13%のメッシュシート態様の産業用複合シート(3)が得られる。この産業用複合シート(3)のバイオマス度は理論的におよそ100%となる(難燃剤、安定剤、顔料、紫外線吸収剤、硬化剤などの配合剤を除く)
【0031】
[実施例4]
実施例1の〔配合1〕の2,5-フランジカルボン酸ジイソノニル:Mw408を、2,5-フランジカルボン酸ジイソデシル:Mw436に全量置換して〔配合3〕とした以外は実施例1と同様とすれば、厚さ0.75mm、質量915g/mのターポリン態様の産業用複合シート(4)が得られる。この産業用複合シート(4)のバイオマス度は理論的におよそ100%となる(難燃剤、安定剤、顔料、紫外線吸収剤などの配合剤を除く)
※成型した〔配合3〕による厚さ0.16mmのフィルムは、別途本発明の産業資材フィルムとして利用できる。
【0032】
[実施例5]
実施例1の〔配合1〕の2,5-フランジカルボン酸ジイソノニル60質量部の30質量部を、ポリグリセリン/オレイン酸モノエステル30質量部に置換して〔配合4〕とした以外は、実施例1と同様とすれば、厚さ0.75mm、質量915g/mのターポリン態様の産業用複合シート(5)が得られる。この産業用複合シート(5)のバイオマス度は理論的におよそ100%となる(難燃剤、安定剤、顔料、紫外線吸収剤などの配合剤を除く)
※ポリグリセリン/オレイン酸モノエステルは、ポリグリセリンとオレイン酸をエステル化したバイオマス度100%のモノエステルで、ポリグリセリンは、油脂とメタノールのエステル交換反応による脂肪酸メチルエステル生成時に副産するグリセリンを単離し、これを脱水縮合して得られるバイオマス由来のグリセリン二量体(平均重合度n=2)で、オレイン酸(CH3(CH2)7CH=CH(CH2)7COOH)は、オリーブ油から精製された植物由来のものを用いる。
※成型した〔配合4〕による厚さ0.16mmのフィルムは、別途本発明の産業資材フィルムとして利用できる。
【0033】
[実施例6]
実施例1の〔配合1〕の2,5-フランジカルボン酸ジイソノニル60質量部の30質量部を、ポリグリセリン/リノール酸ジエステル30質量部に置換して〔配合5〕とした以外は、実施例1と同様とすれば、厚さ0.75mm、質量915g/mのターポリン態様の産業用複合シート(6)が得られる。この産業用複合シート(6)のバイオマス度は理論的におよそ100%となる(難燃剤、安定剤、顔料、紫外線吸収剤などの配合剤を除く)
※ポリグリセリン/リノール酸ジエステルは、ポリグリセリンとリノール酸をエステル化したバイオマス度100%のジエステルで、ポリグリセリンは、油脂とメタノールのエステル交換反応による脂肪酸メチルエステル生成時に副産するグリセリンを単離し、これを脱水縮合して得られるバイオマス由来のグリセリン二量体(平均重合度n=2)で、リノール酸(CH3(CH2)4(CH=CHCH2)2(CH2)6COOH)は、ベニバナ油から精製された植物由来のものを用いる。
※成型した〔配合5〕による厚さ0.16mmのフィルムは、別途本発明の産業資材フィルムとして利用できる。
【0034】
[実施例7]
実施例1の〔配合1〕の2,5-フランジカルボン酸ジイソノニル60質量部の30質量部を、ポリグリセリン/ミリスチン酸トリエステル30質量部に置換して〔配合6〕とした以外は、実施例1と同様とすれば、厚さ0.75mm、質量915g/mのターポリン態様の産業用複合シート(7)が得られる。この産業用複合シート(7)のバイオマス度は理論的におよそ100%となる(難燃剤、安定剤、顔料、紫外線吸収剤などの配合剤を除く)
※ポリグリセリン/ミリスチン酸トリエステルは、ポリグリセリンとミリスチン酸をエステル化したバイオマス度100%のトリエステルで、ポリグリセリンは、油脂とメタノールのエステル交換反応による脂肪酸メチルエステル生成時に副産するグリセリンを単離し、これを脱水縮合して得られるバイオマス由来のグリセリン二量体(平均重合度n=2)で、ミリスチン酸(CH3(CH2)12COOH)は、ヤシ油から精製された植物由来のものを用いる。
※成型した〔配合6〕による厚さ0.16mmのフィルムは、別途本発明の産業資材フィルムとして利用できる。
【0035】
[実施例8]
実施例1の布帛(1)を布帛(4)に置き換えた以外は、実施例1と同様とすれば、厚さ0.75mm、質量908g/mのターポリン態様の産業用複合シート(8)が得られる。この産業用複合シート(8)のバイオマス度は理論的におよそ100%となる(難燃剤、安定剤、顔料、紫外線吸収剤などの配合剤を除く)
〈布帛(4)〉
ポリエチレン/フェノラート/テレフタレート交互共重合体樹脂(密度1.40g/cm3、融点230~240℃、ガラス転移温度Tg82℃、強度:E-modulus2.6~2.7GPa)を溶融紡糸したポリエチレン/フェノラート/テレフタレート(PE/F/T)繊維による1000d(1111dtex)マルチフィラメント糸条(フィラメント数192本)、S撚200T/mを経糸群、及び緯糸群として、経糸条19本/インチ×緯糸条20本/インチの打ち込み密度とする、質量180g/m、空隙率10%の布帛(4)を用いる。布帛(4)は下記のモノマー構成によってバイオマス度100%となる。
※ポリエチレン/フェノラート/テレフタレート(PE/F/T)繊維は、モノエチレングリコール50モル%と、2,5-フランジカルボン酸25モル%、及びテレフタル酸25モル%との重縮合によって得られる共重合体(PE/F/T)樹脂から溶融紡糸されるもので、モノエチレングリコールは、サトウキビの廃蜜糖の発酵によるバイオエタノールを脱水してエチレンとし、これを酸化してエチレンオキサイドとし、さらに加水分解したバイオマス由来モノマー、また2,5-フランジカルボン酸は、フルクトース(果糖)の脱水(含酸素5員環構造の生成)、酸化により合成した植物由来モノマーで、テレフタル酸は、トウモロコシ糖の発酵によるイソブタノールを脱水してイソブチレンとし、ラジカル反応による二量化、環化により得たパラキシレンをテレフタル酸に転換した植物由来モノマーである。
【0036】
[実施例9]
実施例1の布帛(1)を布帛(5)に置き換えた以外は、実施例1と同様とすれば、厚さ0.77mm、質量913g/mのターポリン態様の産業用複合シート(9)が得られる。この産業用複合シート(9)のバイオマス度は理論的におよそ100%となる(難燃剤、安定剤、顔料、紫外線吸収剤などの配合剤を除く)
〈布帛(5)三軸平織物〉
実施例1で用いたBiomassポリエチレンフェノラート樹脂を溶融紡糸したポリエチレンフェノラート(PEF)繊維による1000d(1111dtex)マルチフィラメント糸条(フィラメント数192本、S撚200T/m)を経糸群及び左上バイアス糸群/右上バイアス糸群に用い、経糸群は1インチ間13本の織組織とし、また左上バイアス糸群/右上バイアス糸群は各々1インチ間13本の織組織とする、質量188g/m、空隙率(目抜け部総和)10%の三軸平織物を布帛(5)に用いる。この布帛(5)のバイオマス度は100%である。
【0037】
[実施例10]
実施例1の布帛(1)を布帛(6)に置き換えた以外は、実施例1と同様とすれば、厚さ0.80mm、質量919g/mのターポリン態様の産業用複合シート(10)が得られる。この産業用複合シート(10)のバイオマス度は理論的におよそ100%となる(難燃剤、安定剤、顔料、紫外線吸収剤などの配合剤を除く)
〈布帛(6)四軸平織物〉
実施例1で用いたBiomassポリエチレンフェノラート樹脂を溶融紡糸したポリエチレンフェノラート(PEF)繊維による1000d(1111dtex)マルチフィラメント糸条(フィラメント数192本、S撚200T/m)を経糸群、緯糸群、及び左上バイアス糸群/右上バイアス糸群に用い、経糸群及び緯糸群は1インチ間10本の織組織とし、また左上バイアス糸群/右上バイアス糸群は各々1インチ間10本の織組織とする、質量は194g/m、空隙率(目抜け部総和)8%の四軸平織物を布帛(6)に用いる。この布帛(6)のバイオマス度は100%である。
【0038】
[参考例1]
実施例1のバイオマス度100%の産業用複合シート(1)の両面に下記〔配合7〕のアクリル系樹脂塗料を100メッシュのグラビアロールにより塗工し、120℃の熱風炉で2分間加熱乾燥し、アクリル系樹脂塗膜層(5g/m/片面)を表裏に形成し中間体A(1)とする。
〔配合7〕アクリル系樹脂塗料
メタアクリル酸アルキルエステル・アクリル酸アルキルエステル共重合体
100質量部
メチルエチルケトン(MEK希釈剤) 250質量部
トルエン(希釈剤) 250質量部
次にこの中間体A(1)の片表面に下記〔配合8〕のアミノエチル化アクリル樹脂エポキシ組成物の溶液を100メッシュのグラビアロールにより塗工し、120℃の熱風炉で2分間加熱乾燥し、アクリル系樹脂塗膜層(5g/m/片面)を表面側に半硬化の状態で付帯する中間体B(1)とする。
〔配合8〕アミノエチル化アクリル樹脂エポキシ組成物
メタクリル酸アルキルエステル・アクリル酸アルキルエステル・メタクリル酸共重合
物のカルボキシル基にポリエチレンイミンをグラフトし、
側鎖が、-COO(CHCHNH)Hの化学式で示されるアミン価(固形分1g
に含むアミンmmol数)0.7~1.3mmol/gの一級アミノ基含有アクリル系樹脂
100質量部
エポキシ樹脂(エポキシ当量260g/eqのビスフェノールA骨格含有3官能
エポキシ樹脂) 20質量部
メチルエチルケトン(MEK希釈剤) 150質量部
トルエン(希釈剤) 150質量部
次に、この中間体B(1)のアミノエチル化アクリル樹脂エポキシ半硬化物層面側に、厚さ25μm、53g/mのポリビニリデンフルオライド(PVdF)フィルムのコロナ処理面側を対向し、150℃の熱ロール条件でラミネーターを通過させ、熱圧着してフッ素系樹脂フィルムを積層して防汚層を形成することで、煤塵汚れ防止性、及び雨筋汚れ防止性に優れ、拭き取り洗浄により美麗外観を回復可能な産業用複合シート(11)を得る。この産業用複合シート(11)のバイオマス度は理論上およそ93%になる。
【0039】
[比較例1]
実施例1の〔配合1〕を〔配合9〕に変更した以外は、実施例1と同様とすれば、厚さ0.75mm、質量915g/mのターポリン態様の産業用複合シート(12)が得られる。この産業用複合シート(12)のバイオマス度は理論的に約23%となる(難燃剤、安定剤、顔料、紫外線吸収剤を除く)バイオマス度が23%程度では、この産業用複合シートの焼却処分時に発生する二酸化炭素の大半以上がカーボンニュートラルに合致しないことで、低環境負荷かつ低炭素社会の構築への貢献が乏しいことが明らかである。
〔配合9〕軟質塩化ビニル樹脂コンパウンド組成物
懸濁重合による塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
※石油由来のエチレンを塩素化した塩化ビニルモノマーとするポリマー
フタル酸ジイソノニル(可塑剤) 60質量部
エポキシ化大豆油(部分バイオマス可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
ルチル型二酸化チタン(白色顔料) 5質量部
ベンゾトリアゾール系化合物(紫外線吸収剤) 0.3質量部
【0040】
[比較例2]
実施例1の布帛(1)を布帛(7)に変更し、〔配合1〕を〔配合9〕に変更した以外は、実施例1と同様とすれば、厚さ0.75mm、質量904g/mのターポリン態様の産業用複合シート(13)が得られる。この産業用複合シート(13)のバイオマス度はエポキシ化大豆油(部分バイオマス可塑剤)10質量部による約3%となる。バイオマス度が3%程度では、この産業用複合シートの焼却処分時に発生する二酸化炭素のほぼ全量がカーボンニュートラルに合致しないことで、低環境負荷かつ低炭素社会の構築への貢献が乏しいことが明らかである。
<布帛(7)>
ポリエチレンテレフタート樹脂(密度1.36g/cm3、融点250~270℃、ガラス転移温度Tg76℃、強度:E-modulus2.1~2.2GPa)を溶融紡糸したポリエチレンフェノラート(PET)繊維による1000d(1111dtex)マルチフィラメント糸条(フィラメント数192本)、S撚200T/mを経糸群、及び緯糸群として、経糸条19本/インチ×緯糸条20本/インチの打ち込み密度とする、質量179g/m、空隙率10%の布帛(7)を用いる。
※ポリエチレンテレフタート樹脂は、石油由来のエチレングリコールと、石油由来のテレフタル酸から合成されたものである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の産業資材フィルム、及びシートによれば、これらの焼却処分時に発生する二酸化炭素の多くがカーボンニュートラル(植物が吸収した二酸化炭素を由来とする原料、及び製品が二酸化炭素として自然に還り、それを再度植物が吸収する再生循環)にカウントされ、排出される二酸化炭素量の増大を抑止可能な、低環境負荷かつ低炭素社会の実現に貢献できるので、特に産業資材フィルムは、農業・園芸用ビニールハウス、医療用簡易クリーンブース、工業用簡易クリーンブース、公共施設用パーティション、自動車・鉄道車両の被覆保護材、床・壁の被覆保護材、屋根・天井の防水被覆材などに広く用いることが期待され、また産業用複合シートは、大型テント構造物(スポーツ施設、パビリオン、サーカス、プラネタリウムなど)、テント倉庫、建築養生(防音)シート、建築空間の膜屋根(膜天井)、ビジュアルファサード、フレキシブルコンテナ、昇降式シートシャッター、フロアシート、間仕切りシートなどに用いるターポリン、及びトラック幌、野積防水シート、屋形テントなどに用いる帆布、及び建築養生メッシュシート、防風防雪ネット、防眩ネット、日除ファサードなどに用いるメッシュシートなどに広く用いることが期待される。