(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】軌道用砕石搬送車
(51)【国際特許分類】
E01B 27/02 20060101AFI20240104BHJP
【FI】
E01B27/02
(21)【出願番号】P 2021134006
(22)【出願日】2021-08-19
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】391030125
【氏名又は名称】保線機器整備株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】細川 誠二
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 洋治
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-226803(JP,A)
【文献】特表2008-516122(JP,A)
【文献】特開2014-008855(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0175666(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 27/02
B61D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砕石を積載してレール上を走行すると共に、砕石散布箇所にて砕石を散布する軌道用砕石搬送車であって、
レール上を走行する運搬散布車本体と、
前記運搬散布車本体に搭載され、砕石を積載すると共に排出する砕石積載箱と、
前記砕石積載箱から排出された砕石を当該軌道用砕石搬送車の前端部または後端部まで移動させる固定式上側コンベアと、
前記固定式上側コンベアの下方であって、当該軌道用砕石搬送車に対し前後方向にスライド可能に設けられ、前記固定式上側コンベアによって当該軌道用砕石搬送車の前端部または後端部まで移動した砕石を受け取ると、当該軌道用砕石搬送車の前端部または後端部から離れた位置まで砕石を移動させるスライド式下側コンベアと
、
前記スライド式下側コンベアとは別体であって、レール上を走行する車輪が設けられ、前記スライド式下側コンベアにおける前記運搬散布車本体から突出した部分を下方から支持する下側コンベア支持台車とを備えることを特徴とする軌道用砕石搬送車。
【請求項2】
請求項
1記載の軌道用砕石搬送車において、
前記下側コンベア支持台車は、
レール上を走行する車輪が設けられたコンベア架台受トロリと、
前記コンベア架台受トロリの上部に設けられた下側コンベア当接部を上昇させて、当該下側コンベア当接部を前記スライド式下側コンベア下面に当接して前記スライド式下側コンベアを下方から支持したり、当該下側コンベア当接部を下降させて前記スライド式下側コンベア下面から離間させる下側コンベア受架台とを備えることを特徴とする軌道用砕石搬送車。
【請求項3】
請求項
1または請求項
2に記載の軌道用砕石搬送車において、
前記下側コンベア支持台車には、前記スライド式下側コンベアによって搬送された砕石を散布する砕石散布機が設けられていることを特徴とする軌道用砕石搬送車。
【請求項4】
請求項1~請求項
3のいずれか一の請求項に記載の軌道用砕石搬送車において、
前記固定式上側コンベアの長手方向の長さは、前記運搬散布車本体の長手方向の長さよりも長く形成され、前記運搬散布車本体の前端部または後端部の少なくとも一方から突出し、
前記スライド式下側コンベアの長手方向の長さは、前記固定式上側コンベアの長手方向の長さよりも長く形成されていることを特徴とする軌道用砕石搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道のレール上を走行して砕石を運搬すると共に、砕石を散布する軌道用砕石搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道のレール上を走行して砕石を運搬すると共に、砕石を散布する軌道用砕石搬送車として、例えば、台車と荷台との間に、荷台に設けた複数の排出口を通じて荷台から落下する砕石を道床上に散布するベルトコンベアを搭載した軌道用砕石散布車が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1のような軌道用砕石搬送車は、通常は、砕石散布場所にベルトコンベア先端が位置するように軌道用砕石搬送車を移動させる必要があり、軌道用砕石搬送車を砕石散布場所に正確に移動させるためには、軌道用砕石搬送車を砕石散布場所近傍で少しずつ移動させる小移動させる必要がある。
【0005】
しかし、上記特許文献1のような軌道用砕石搬送車は、相当な重量がある砕石を積載しているため、小移動が困難であり、砕石の散布作業に手間や時間がかかり作業効率が悪い、という問題があった。
【0006】
特に、砕石散布場所が勾配区間である場合には、相当な重量がある砕石を積載した軌道用砕石搬送車を小移動させることは、尚更、難易度が増していた。
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑みなされたもので、砕石散布場所近傍における軌道用砕石搬送車の小移動を不要にして、砕石散布の作業性を向上させることができる軌道用砕石搬送車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係る軌道用砕石搬送車は、砕石を積載してレール上を走行すると共に、砕石散布箇所にて砕石を散布する軌道用砕石搬送車であって、レール上を走行する運搬散布車本体と、前記運搬散布車本体に搭載され、砕石を積載すると共に排出する砕石積載箱と、前記砕石積載箱から排出された砕石を当該軌道用砕石搬送車の前端部または後端部まで移動させる固定式上側コンベアと、前記固定式上側コンベアの下方であって、当該軌道用砕石搬送車に対し前後方向にスライド可能に設けられ、前記固定式上側コンベアによって当該軌道用砕石搬送車の前端部または後端部まで移動した砕石を受け取ると、当該軌道用砕石搬送車の前端部または後端部から離れた位置まで砕石を移動させるスライド式下側コンベアと、前記スライド式下側コンベアとは別体であって、レール上を走行する車輪が設けられ、前記スライド式下側コンベアにおける前記運搬散布車本体から突出した部分を下方から支持する下側コンベア支持台車とを備えることを特徴とする。
また、本発明に係る軌道用砕石搬送車では、前記下側コンベア支持台車は、レール上を走行する車輪が設けられたコンベア架台受トロリと、前記コンベア架台受トロリの上部に設けられた下側コンベア当接部を上昇させて、当該下側コンベア当接部を前記スライド式下側コンベア下面に当接して前記スライド式下側コンベアを下方から支持したり、当該下側コンベア当接部を下降させて前記スライド式下側コンベア下面から離間させる下側コンベア受架台とを備えることも特徴とする。
また、本発明に係る軌道用砕石搬送車では、前記下側コンベア支持台車には、前記スライド式下側コンベアによって搬送された砕石を散布する砕石散布機が設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係る軌道用砕石搬送車では、前記固定式上側コンベアの長手方向の長さは、前記運搬散布車本体の長手方向の長さよりも長く形成され、前記運搬散布車本体の前端部または後端部の少なくとも一方から突出し、前記スライド式下側コンベアの長手方向の長さは、前記固定式上側コンベアの長手方向の長さよりも長く形成されていることも特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る軌道用砕石搬送車では、砕石積載箱から積載していた砕石を排出させると、その砕石を固定式上側コンベアが受けて当該軌道用砕石搬送車の前端部または後端部まで移動して落下させ、固定式上側コンベアの下方のスライド式下側コンベアが受ける。スライド式下側コンベアは、当該軌道用砕石搬送車に対し前後方向にスライド可能に設けられているため、当該軌道用砕石搬送車の前端部または後端部まで移動した砕石を受けると、当該軌道用砕石搬送車の前端部または後端部から砕石散布場所に移動して砕石を散布する。
そのため、砕石の積載によって相当な重量がある軌道用砕石搬送車自体は砕石散布場所近傍で停車させ、砕石散布場所へはスライド式下側コンベアのみを小移動させて砕石を散布することができるので、軌道用砕石搬送車全体の小移動が不要になり、砕石散布の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る実施形態の軌道用砕石搬送車においてスライド式下側コンベアを収容して延ばしていない状態の側面図である。
【
図2】本発明に係る実施形態の軌道用砕石搬送車においてスライド式下側コンベアを収容して延ばしていない状態の平面図である。
【
図3】本発明に係る実施形態の軌道用砕石搬送車においてスライド式下側コンベアを繰り出して延ばした状態の側面図である。
【
図4】本発明に係る実施形態の軌道用砕石搬送車においてスライド式下側コンベアを繰り出して延ばした状態の平面図である。
【
図5】本発明に係る実施形態の軌道用砕石搬送車の拡大正面図である。
【
図6】(a)~(c)それぞれ本発明に係る実施形態の軌道用砕石搬送車を構成する固定式上側コンベアの平面図、側面図、正面図である。
【
図7】(a)~(c)それぞれ本発明に係る実施形態の軌道用砕石搬送車を構成するスライド式下側コンベアの平面図、側面図、正面図である。
【
図8】本発明に係る実施形態の軌道用砕石搬送車を構成する下側コンベア支持台車の拡大側面図である。
【
図9】本発明に係る実施形態の軌道用砕石搬送車を構成する下側コンベア支持台車の拡大正面図である。
【
図10】本発明に係る実施形態の軌道用砕石搬送車を構成する下側コンベア支持台車の拡大平面図である。
【
図11】本発明に係る実施形態の軌道用砕石搬送車1を牽引して砕石散布場所まで移動させる際の各作業車との連結状態の一例を示す図である。
【
図12】砕石散布場所近傍まで移動させた本発明に係る実施形態の軌道用砕石搬送車を道床砕石交換車から切り離して、砕石散布箇所で砕石の散布を行っている状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施の形態の軌道用砕石搬送車1について図面を参照しながら具体的に説明する。尚、下記に説明する実施形態は、あくまで本発明の一例であり、本発明に係る実施形態の軌道用砕石搬送車1は、本発明の技術的思想の範囲内で適宜変更可能である。
【0012】
<実施形態の軌道用砕石搬送車1の構成>
本発明に係る実施形態に係る軌道用砕石搬送車1は、砕石を積載してレール上を走行すると共に、砕石散布箇所にて砕石を散布する作業車であって、運搬散布車本体11と、砕石積載箱12と、砕石積載箱傾斜機構部13と、固定式上側コンベア14と、スライド式下側コンベア15と、下側コンベア支持台車16等を備えて構成される。
【0013】
(運搬散布車本体11)
運搬散布車本体11は、線路の軌道レールR、R上を走行するもので、
図1(a),(b)に示すように、軌道レールR、R上を走行する前後左右にそれぞれ複数の車輪11aが設けられていると共に、この軌道用砕石搬送車1を牽引する軌道車(図示せず。)や道床砕石交換作業車(図示せず。)等と連結するための軌道車用連結部11b等が設けられて構成される。
【0014】
運搬散布車本体11の上部には、左右それぞれに砕石積載箱12が回動軸12aを中心に回動可能に設けられていると共に、運搬散布車本体11の下部中央には、左右両側の砕石積載箱12,12が落下した砕石を搬送する固定式上側コンベア14が固定されていると共に、固定式上側コンベア14の下方にスライド式下側コンベア15が運搬散布車本体11の長手方向にスライド可能に設けられている。
【0015】
また、運搬散布車本体11における固定式上側コンベア14およびスライド式下側コンベア15の左右両側には、左右両側の砕石積載箱12,12それぞれを回動軸12a,12aを中心に回動して砕石積載箱12,12それぞれに積載された砕石を落下させる砕石積載箱傾斜機構部13,13が設けられている。
【0016】
尚、運搬散布車本体11の長手方向であるレールRと平行方向の長さは、例えば、5400mm(5.4m)であり、短手方向であるレールRと直交する方向の幅は、例えば、2630mm(2.63m)としている。
【0017】
(砕石積載箱12)
砕石積載箱12は、運搬散布車本体11の長手方向の長さとほぼ同じ長さに形成されて砕石を積載する箱であって、運搬散布車本体11の左右両側に運搬散布車本体11の長手方向である走行方向と平行に設けられた回動軸12aを中心に回動可能に設けられ、砕石を積載すると共に、砕石積載箱傾斜機構部13が回動軸12aを中心に回動することによって傾斜して積載していた砕石を固定式上側コンベア14の上に落下させるものである。
【0018】
尚、左右の回動軸12aは、それぞれ、運搬散布車本体11の短手方向の中央近くに間隔を開けて設けられ、それぞれ、運搬散布車本体11左右両側それぞれの砕石積載箱12の底面内側が回動可能に連結されており、左右両側それぞれの砕石積載箱12は砕石積載箱傾斜機構部13によって回動軸12aを中心に回動して傾斜した際には運搬散布車本体11の短手方向の中央側へ砕石を落下させるように構成されている。
【0019】
(砕石積載箱傾斜機構部13)
砕石積載箱傾斜機構部13は、運搬散布車本体11上面の左右両側にそれぞれ基部が回動可能に固定され、先端側から油圧の入出等よってピストン13bを伸縮するシリンダ13a等で構成されており、ピストン13b先端部は運搬散布車本体11の左右両側にそれぞれ設けられた砕石積載箱12の底面に回動可能に連結されている。
【0020】
そのため、砕石積載箱傾斜機構部13では、シリンダ13aに油圧等を送ってピストン13bを伸縮させて回動軸12aを中心に砕石積載箱12を回動させることによって
図5に示すように傾斜させ、積載していた砕石を運搬散布車本体11の中央に設けられた固定式上側コンベア14上に落下させる。
【0021】
(固定式上側コンベア14)
固定式上側コンベア14は、
図6(a)~(c)に示すように、例えば、6000mm(6m)程の長さを有する一対のローラー支持板14a,14a間の前後端それぞれに設けたローラー14b,14b間に渡されたベルトコンベア14cで構成され、運搬散布車本体11の短手方向の中央であって運搬散布車本体11の左右それぞれに設けた砕石積載箱12よりも下方に設けられており、左右それぞれの砕石積載箱12から排出された砕石を受けると共に、モーター(図示せず。)等の回転によって作動して左右それぞれの砕石積載箱12から排出された砕石を運搬散布車本体11の前端部または後端部まで移動できるように構成されている。
【0022】
固定式上側コンベア14の全長はほぼ6000mm(6m)で、運搬散布車本体11の全長の5400mm(5.4m)よりも長く形成されており、固定式上側コンベア14の前後端が運搬散布車本体11にそれぞれ突出するように固定される。尚、ここでは、固定式上側コンベア14の幅は、700mmであり、ベルト14cの幅は500mmとしている。
【0023】
(スライド式下側コンベア15)
スライド式下側コンベア15は、
図7(a)~(c)に示すように、例えば、7000mm(7m)程の長さを有する一対のローラー支持板15a,15a間の前後端それぞれに設けたローラー15b,15b間に渡されたベルトコンベア15cで構成され、固定式上側コンベア14の下方であって運搬散布車本体11の長手方向に最大5000mm(5m)程、スライド可能に取り付けられており、
図3および
図4に示すように運搬散布車本体11の前後端部からそれぞれ最大例えば5755mm程度飛び出すように構成されている。つまり、スライド式下側コンベア15は、固定式上側コンベア14によって運搬散布車本体11の前端部または後端部まで移動した砕石を受け取ると、当該軌道用砕石搬送車1の前端部または後端部から最大例えば5755mm程、離れた位置まで砕石を移動できるように構成されている。
【0024】
(下側コンベア支持台車16)
下側コンベア支持台車16は、
図3や
図4に示すようにレールR上を走行してスライド式下側コンベア15先端部を下方から支持するもので、運搬散布車本体11とは独立して構成されている。
【0025】
つまり、下側コンベア支持台車16は、レールR上を走行する車輪16a1が設けられたコンベア架台受トロリ16aと、コンベア架台受トロリ16aの上部に設けられ、スライド式下側コンベア15のローラー支持板15a,15aの下側面に当接する下側コンベア当接部16b1が設けられた下側コンベア受架台16bとで構成されている。
【0026】
また、下側コンベア支持台車16の前端部または後端部先端には、水平方向に例えば180度程度回転して、砕石を散布する砕石散布機16cが砕石散布機取付け部16a2を介して着脱可能に取り付けられている。そのため、運搬散布車本体11の前後端部からそれぞれ最大例えば5000mm(5m)程度までさらに砕石を運んで砕石散布機16cによって散布することができるため、運搬散布車本体11の前後端部からそれぞれ最大例えば5000mm(5m)程度の範囲で軌道用砕石搬送車1の小移動を省略することができる。
【0027】
<本発明に係る実施形態の軌道用砕石搬送車1を使用した砕石の散布方法の一例>
次に、以上のように構成された本発明に係る実施形態の軌道用砕石搬送車1を使用した砕石の散布方法の一例について説明する。
【0028】
図11(a),(b)は、それぞれ、実施形態の軌道用砕石搬送車1を牽引して砕石散布場所まで移動させる際の各作業車との連結状態の一例を示す平面図、側面図である。
【0029】
図11では、実施形態の軌道用砕石搬送車1は、ショベルカー2aおよび砕石搬送ベルトコンベア2bが搭載された道床砕石交換車2が連結され、道床砕石交換車2には砕石搬送ベルトコンベア3aが搭載された乗継コンベア台車3が連結され、乗継コンベア台車3には砕石昇降エレベータ4aや砕石搬送ベルトコンベア4b等が搭載された砕石積載ダンプ車4が連結され、砕石積載ダンプ車4には軌道車5が連結され、軌道車5がこれら4台の車を牽引して砕石散布箇所近傍まで走行する。
【0030】
そして、軌道用砕石搬送車1が砕石散布箇所近傍に到達すると、砕石積載ダンプ車4から砕石搬送ベルトコンベア4aや砕石搬送ベルトコンベア4bを使用して砕石を乗継コンベア台車3の砕石搬送ベルトコンベア3aを介して道床砕石交換車2の砕石搬送ベルトコンベア2bへ搬送する。道床砕石交換車2では、ショベルカー2aが砕石搬送ベルトコンベア2b上の砕石を実施形態の軌道用砕石搬送車1の左右両側の砕石積載箱12,12へ運ぶ。
【0031】
実施形態の軌道用砕石搬送車1の左右両側の砕石積載箱12,12に砕石が満杯ないしは散布量に到達すると、作業員は実施形態の軌道用砕石搬送車1を道床砕石交換車2から切り離して、実施形態の軌道用砕石搬送車1のみを砕石散布箇所へ移動させる。
【0032】
図12(a),(b)は、それぞれ、砕石散布場所近傍まで移動させた実施形態の軌道用砕石搬送車1を道床砕石交換車2から切り離して、砕石散布箇所で砕石の散布を行っている状態の一例を示す平面図、側面図である。
【0033】
図12(a),(b)に示すように、砕石散布場所近傍で実施形態の軌道用砕石搬送車1のみを道床砕石交換車2から切り離し、散布箇所へは砕石を積載した実施形態の軌道用砕石搬送車1のみで移動する。そして砕石散布箇所へ到達すると、砕石積載箱傾斜機構部13は砕石が積載された左右の砕石積載箱12,12それぞれを傾斜させて固定式上側コンベア14,14の上に砕石を落下させ、固定式上側コンベア14,14におけるベルト14cの回転によって砕石積載箱12から排出された砕石を軌道用砕石搬送車1の前端部または後端部まで移動させ、固定式上側コンベア14の作動によってスライド式下側コンベア15の上に砕石を搬送する。
【0034】
スライド式下側コンベア15は、固定式上側コンベア14の下方で運搬散布車本体11に対し前後方向、つまり運搬散布車本体11の長手方向に最大例えば5000mm(5m)程度スライド可能であるため、散布箇所を小移動しながら砕石を散布する。
【0035】
その際、スライド式下側コンベア15は、重量のある砕石を搬送するためその砕石散布機16cが設けられた先端部は下がり易いが下側コンベア支持台車16によって下方から支持することができるので、スライド式下側コンベア15は砕石散布機16cが設けられた先端側を下げることなく、円滑に砕石を散布することができる。
【0036】
特に、下側コンベア支持台車16の前端部または後端部先端には、水平方向に例えば180度程度回転して砕石を散布する砕石散布機16cが砕石散布機取付け部16a2を介して着脱可能に取り付けられているため、砕石散布機16cによって180度程度回転して砕石を散布することができる。
【0037】
<本発明に係る実施形態の軌道用砕石搬送車1のまとめ>
以上説明したように、本発明に係る軌道用砕石搬送車1は、レール上を走行する運搬散布車本体11と、運搬散布車本体11に搭載され、砕石を積載すると共に排出する砕石積載箱12と、砕石積載箱12から排出された砕石を軌道用砕石搬送車1の前端部または後端部まで移動させる固定式上側コンベアと、固定式上側コンベア14の下方であって、運搬散布車本体11に対し前後方向にスライド可能に設けられ、固定式上側コンベア14によって運搬散布車本体11の前端部または後端部まで移動した砕石を受け取ると、運搬散布車本体11の前端部または後端部から離れた位置まで砕石を移動させるスライド式下側コンベア15と、下側コンベア支持台車16等を備える。
【0038】
そのため、砕石の積載によって相当な重量がある軌道用砕石搬送車1自体は砕石散布場所近傍で停車させ、砕石散布場所へはスライド式下側コンベア15のみを小移動させて砕石を散布することができるので、砕石を積載した軌道用砕石搬送車1全体の小移動が不要になり、砕石散布の作業性を向上させることができる。
【0039】
また、本発明に係る軌道用砕石搬送車1では、さらに、スライド式下側コンベア15先端部を下方から支持する下側コンベア支持部として、スライド式下側コンベア15とは別体であって、レール上を走行する車輪16a1が設けられた下側コンベア支持台車16を有する。
【0040】
そのため、スライド式下側コンベア15を運搬散布車本体11の前後端部から長く延ばして砕石を搬送して散布する際に、スライド式下側コンベア15先端部等が砕石の重量によって下がる場合には、下側コンベア支持台車16で下方からスライド式下側コンベア15を支持することができるので、砕石散布の作業性をよりさせることができる。
【0041】
また、本発明に係る軌道用砕石搬送車1では、下側コンベア支持台車16の下側コンベア当接部16b1の高さは、スライド式下側コンベア15の高さよりも所定の高さだけ低く、スライド式下側コンベア15に砕石が積載された際に、砕石の重量によってスライド式下側コンベア15が下がってスライド式下側コンベア15の下面が下側コンベア支持台車16の上面に当接して支持するように構成している。
【0042】
そのため、スライド式下側コンベア15の上に砕石が運ばれる前の状態では、下側コンベア支持台車16は、運搬散布車本体11の前後端部からスライド式下側コンベア15が最大例の5000mm(5m)延ばされた場合でも下側コンベア支持台車16の下側コンベア当接部16b1がスライド式下側コンベア15下面に当接しないので、スライド式下側コンベア15の下方でレールRに沿って自由に移動させることが可能で、任意の位置で下側コンベア支持台車16を停めてスライド式下側コンベア15を支持することができ、この点でも砕石散布の作業性をよりさせることができる。
【0043】
尚、上記実施形態の説明では、スライド式下側コンベア15先端部を下方から支持する下側コンベア支持台車16は、コンベア架台受トロリ16aの上部に下側コンベア受架台16bを設けて説明したが、本発明では、これに限定されず、コンベア架台受トロリ16aと下側コンベア受架台16bとの間に下側コンベア受架台16bを昇降させる昇降機構部(図示せず。)を設けるようにしても勿論良い。下側コンベア受架台16bを昇降させる昇降機構部(図示せず。)によれば、スライド式下側コンベア15を運搬散布車本体11の前後端部からそれぞれ最大例えば5000mm(5m)移動して延ばして砕石を搬送する場合でもあるいは砕石を搬送しない場合でも、下側コンベア受架台16bを下降させることによってスライド式下側コンベア15のローラー支持板15a,15aの下側面に下側コンベア当接部16b1を当接させずにスライド式下側コンベア15の下方でレールRに沿って移動させることが自由にできると共に、下側コンベア受架台16bを上昇させることによってスライド式下側コンベア15はより確実に水平状態等の最適な状態に維持することも可能となるので、砕石の搬送および散布作業をより円滑に行うことができる。
【0044】
また、上記実施形態の説明では、下側コンベア支持部としてスライド式下側コンベア15とは別体でレール上を走行する下側コンベア支持台車16によって説明したが、本発明では、これに限定されるものではなく、砕石の重量によってスライド式下側コンベア15の降下を防止できれば十分であるため、スライド式下側コンベア15の前後の先端にヒンジ等の回動軸(図示せず。)を中心に上下に回動して折り畳み可能な脚部(図示せず。)等を設けて、スライド式下側コンベア15の前後の先端部を運搬散布車本体11の前後端部から延ばした際には、水平方向等に折り畳んでいた脚部(図示せず。)を鉛直方向になるように回動して(拡げて)、鉛直方向に立設した脚部(図示せず。)によってスライド式下側コンベア15先端部を下方から支持するように構成しても良い。尚、この際に脚部(図示せず。)の下方にレール上を走行可能な車輪を設けても省略してもどちらでも良い。
【符号の説明】
【0045】
1 軌道用砕石搬送車
11 運搬散布車本体
11a 車輪
11b 軌道車用連結部
12 砕石積載箱
12a 回動軸
13 砕石積載箱傾斜機構部
13a シリンダ
13b ピストン
14 固定式上側コンベア
14a ローラー支持板
14b ローラー
14c ベルトコンベア
15 スライド式下側コンベア
15a ローラー支持板
15b ローラー
15c ベルトコンベア
16 下側コンベア支持台車(下側コンベア支持部)
16a コンベア架台受トロリ
16a1 車輪
16b 下側コンベア受架台
16b1 下側コンベア当接部
16c 砕石散布機
2 道床砕石交換車
2a ショベルカー
2b 砕石搬送ベルトコンベア
3 乗継コンベア台車
3a 砕石搬送ベルトコンベア
4 砕石積載ダンプ車
5 軌道車
R レール