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特許7412021水管理システム、水管理サーバ及び水管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】水管理システム、水管理サーバ及び水管理方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 25/00 20060101AFI20240104BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
A01G25/00 501D
A01G7/00 603
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021575533
(86)(22)【出願日】2020-02-06
(86)【国際出願番号】 JP2020004642
(87)【国際公開番号】W WO2021157033
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】515019537
【氏名又は名称】株式会社ナイルワークス
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(72)【発明者】
【氏名】和氣 千大
(72)【発明者】
【氏名】黒川 圭一
(72)【発明者】
【氏名】柳下 洋
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏記
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特許第6555781(JP,B2)
【文献】特開2018-161087(JP,A)
【文献】特開2019-140954(JP,A)
【文献】特開2017-131130(JP,A)
【文献】特許第4006098(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 25/00 - 25/16
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場の水状態を変化させる被制御対象の動作を介して前記圃場の水管理を行う水管理システムであって、
前記圃場の気温又は日射量を含む気象状態と前記圃場の施肥状態の少なくともいずれかの入力を受け付ける状態入力部と、
前記状態入力部で受け付けた前記気象状態と前記施肥状態の少なくともいずれかに基づいて、前記被制御対象の目標動作を決定し、前記目標動作に基づく前記被制御対象の動作をユーザに要求して又は前記目標動作に基づいて前記被制御対象を動作させて、前記圃場の水状態を管理する水管理装置と、
前記気象状態を用いる生育診断モデルを利用して前記圃場に生育している作物の生育状態を診断して前記生育状態に応じた作業指示を出力する生育診断装置と
を備え
前記水管理装置は、前記生育診断装置の一部を構成し、
前記生育診断モデルは、前記作物の生育状態値の目標値である目標生育状態値と、前記生育状態値の推定値である推定生育状態値とを生成するものであり、
前記水管理装置は、前記推定生育状態値が前記目標生育状態値に近付くように、前記被制御対象の前記目標動作を決定する
ことを特徴とする水管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水管理システムにおいて、
前記被制御対象は、水源から前記圃場に水を供給する給水装置を含み、
前記水管理装置は、
前記気象状態と前記施肥状態の少なくともいずれかに基づいて、前記給水装置による給水タイミング及び給水量並びに前記圃場の水深の少なくとも1つを目標値として生成し、
前記目標値に基づく前記給水装置の動作を前記ユーザに要求して又は前記目標値に基づいて前記給水装置を動作させて前記圃場の水状態を制御する
ことを特徴とする水管理システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水管理システムにおいて、
前記被制御対象は、前記圃場から水を排出する排水装置を含み、
前記水管理装置は、
前記気象状態と前記施肥状態の少なくともいずれかに基づいて、前記排水装置による排水タイミング及び排水量並びに前記圃場の水深の少なくとも1つを目標値として生成し、
前記目標値に基づく前記排水装置の動作を前記ユーザに要求して又は前記目標値に基づいて前記排水装置を動作させて前記圃場の水状態を制御する
ことを特徴とする水管理システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の水管理システムにおいて、
前記作物は水稲であり、
前記生育状態値は、前記水稲の収量、籾数、赤色光吸収率、有効受光面積率、籾内の蓄積デンプン量及び籾内のタンパク質含有率の少なくともいずれかを含む
ことを特徴とする水管理システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の水管理システムにおいて、
前記生育状態に応じた作業指示は、肥料の種類、散布タイミング及び量に関する内容を含み、
前記水管理装置は、前記肥料の種類、散布タイミング及び量に基づいて、前記被制御対象の前記目標動作を決定する
ことを特徴とする水管理システム。
【請求項6】
請求項に記載の水管理システムにおいて、
前記肥料の種類は、施肥すべき元素、化学肥料、籾殻及び有機肥料の少なくとも1つを含む
ことを特徴とする水管理システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の水管理システムにおいて、
前記生育状態に応じた作業指示は、前記圃場への給水タイミング又は前記圃場からの排水タイミングに関する内容を含む
ことを特徴とする水管理システム。
【請求項8】
請求項に記載の水管理システムにおいて、
前記生育状態に応じた作業指示は、現時点における前記圃場の検出水温又は推定水温と目標水温の大小関係に応じた、前記圃場への給水タイミング又は前記圃場からの排水タイミングの作業指示を含む
ことを特徴とする水管理システム。
【請求項9】
請求項に記載の水管理システムにおいて、
前記生育状態に応じた作業指示は、将来における前記圃場の推定水温と目標水温の大小関係に応じた、前記圃場への給水タイミング又は前記圃場からの排水タイミングの作業指示を含む
ことを特徴とする水管理システム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の水管理システムにおいて、
前記生育状態に応じた作業指示は、前記圃場への給水量又は前記圃場からの排水量を含む
ことを特徴とする水管理システム。
【請求項11】
請求項10に記載の水管理システムにおいて、
将来における推定夜間水温が目標夜間水温よりも高い場合、その前の前記圃場の昼間水深を目標昼間水深よりも浅くするように前記給水量又は前記排水量を設定する
ことを特徴とする水管理システム。
【請求項12】
請求項10に記載の水管理システムにおいて、
将来における推定夜間水温が目標夜間水温よりも低い場合、その前の前記圃場の昼間水深を目標昼間水深よりも深くするように前記給水量又は前記排水量を設定する
ことを特徴とする水管理システム。
【請求項13】
請求項10に記載の水管理システムにおいて、
将来における推定昼間水温が目標昼間水温よりも低い場合、その前の前記圃場の昼間水深を目標昼間水深よりも浅くするように前記給水量又は前記排水量を設定する
ことを特徴とする水管理システム。
【請求項14】
請求項10に記載の水管理システムにおいて、
将来における推定昼間水温が目標昼間水温よりも高い場合、その前の前記圃場の昼間水深を目標昼間水深よりも深くするように前記給水量又は前記排水量を設定する
ことを特徴とする水管理システム。
【請求項15】
圃場の水状態を変化させる被制御対象の動作を介して前記圃場の水管理を行う水管理サーバであって、
前記圃場の気温又は日射量を含む気象状態と前記圃場の施肥状態の少なくともいずれかの入力を受け付ける状態入力部と、
前記気象状態と前記施肥状態の少なくともいずれかに基づいて、前記被制御対象の目標動作を決定し、前記目標動作に基づく前記被制御対象の動作をユーザに要求して又は前記目標動作に基づいて前記被制御対象を動作させて、前記圃場の水状態を管理する水管理装置と
前記気象状態を用いる生育診断モデルを利用して前記圃場に生育している作物の生育状態を診断して前記生育状態に応じた作業指示を出力する生育診断装置と
を備え
前記生育診断モデルは、前記作物の生育状態値の目標値である目標生育状態値と、前記生育状態値の推定値である推定生育状態値とを生成するものであり、
前記水管理装置は、前記推定生育状態値が前記目標生育状態値に近付くように、前記被制御対象の前記目標動作を決定する
ことを特徴とする水管理サーバ。
【請求項16】
圃場の水状態を変化させる被制御対象の動作を介して前記圃場の水管理を行う水管理方法であって、
生育診断装置において、生育診断モデルを利用して前記圃場に生育している作物の生育状態を診断して前記生育状態に応じた作業指示を出力する生育診断ステップと、
水管理装置において、前記圃場の気温又は日射量を含む気象状態と前記圃場の施肥状態の少なくともいずれかに基づいて、前記被制御対象の目標動作を決定する目標動作決定ステップと、
前記水管理装置において、前記目標動作に基づく前記被制御対象の動作をユーザに要求して又は前記目標動作に基づいて前記被制御対象を動作させて、前記圃場の水状態を管理する水管理ステップと
を備え
前記生育診断モデルは、前記作物の生育状態値の目標値である目標生育状態値と、前記生育状態値の推定値である推定生育状態値とを生成するものであり、
前記水管理装置は、前記推定生育状態値が前記目標生育状態値に近付くように、前記被制御対象の前記目標動作を決定する
ことを特徴とする水管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水管理システム、水管理サーバ及び水管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016-220681号(以下「JP2016-220681A」という。)では、各圃場における水門の管理を省力化すること及び各圃場に最適となる水の管理をすることができる水位情報管理システムを提供すること等を目的にしている([0007]、要約)。当該目的を達するため、JP2016-220681A(要約)では、圃場に給水用水門1a及び排水用水門1b並びに水位計測用指標を設置し、所定の空路を飛行する無人飛行体27から圃場又は水位計測指標を撮影する工程と、撮影された画像を無人飛行体から送信する工程と、送信された画像を解析して水位を算出する工程と、所定の基準水位と無人飛行体から送信され解析された水位情報とを比較し、無線モジュールを有した給水用水門又は排水用水門に対して開閉指示を送信する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように、JP2016-220681A(要約)では、無人飛行体27が撮影した画像に基づいて、圃場の水位を算出し、給水用水門1a及び排水用水門1bを開閉する。しかしながら、JP2016-220681Aでは、圃場の状態を踏まえた水管理の点で改善の余地がある。
【0004】
本発明は上記のような課題を考慮してなされたものであり、圃場の状態に応じてより好適に水管理することが可能な水管理システム、水管理サーバ及び水管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る水管理システムは、圃場の水状態を変化させる被制御対象の動作を介して前記圃場の水管理を行うものであって、
前記圃場の気温又は日射量を含む気象状態と前記圃場の施肥状態の少なくともいずれかの入力を受け付ける状態入力部と、
前記状態入力部で受け付けた前記気象状態と前記施肥状態の少なくともいずれかに基づいて、前記被制御対象の目標動作を決定し、前記目標動作に基づく前記被制御対象の動作をユーザに要求して又は前記目標動作に基づいて前記被制御対象を動作させて、前記圃場の水状態を管理する水管理装置と
を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、圃場の水状態を変化させる被制御対象を、圃場の気温又は日射量を含む気象状態と圃場の施肥状態の少なくともいずれかに基づいてユーザ又は水管理システムにより動作させて圃場の水状態を制御する。これにより、圃場に関する気象状態と施肥状態の少なくともいずれかを考慮した水状態で作物を生育することが可能となる。
【0007】
前記被制御対象は、水源から前記圃場に水を供給する給水装置を含んでもよい。前記水管理装置は、前記気象状態と前記施肥状態の少なくともいずれかに基づいて、前記給水装置による給水タイミング及び給水量並びに前記圃場の水深の少なくとも1つを目標値として生成してもよい。また、前記水管理装置は、前記目標値に基づく前記給水装置の動作を前記ユーザに要求して又は前記目標値に基づいて前記給水装置を動作させて前記圃場の水状態を制御してもよい。これにより、圃場の気温又は日射量を含む気象状態と圃場の施肥状態の少なくともいずれかに基づいて圃場の給水を制御可能となる。
【0008】
前記被制御対象は、前記圃場から水を排出する排水装置を含んでもよい。前記水管理装置は、前記気象状態と前記施肥状態の少なくともいずれかに基づいて、前記排水装置による排水タイミング及び排水量並びに前記圃場の水深の少なくとも1つを目標値として生成してもよい。また、前記水管理装置は、前記目標動作に基づく前記排水装置の動作を前記ユーザに要求して又は前記目標動作に基づいて前記排水装置を動作させて前記圃場の水状態を制御してもよい。これにより、圃場の気温又は日射量を含む気象状態と圃場の施肥状態の少なくともいずれかに基づいて圃場の排水を制御可能となる。
【0009】
前記水管理システムは、前記気象状態を用いる生育診断モデルを利用して前記圃場に生育している前記作物の生育状態を診断して前記生育状態に応じた作業指示を出力する生育診断装置を備えてもよい。また、前記水管理装置は、前記生育診断装置の一部を構成してもよい。前記生育診断モデルは、前記作物の生育状態値の目標値である目標生育状態値と、前記生育状態値の推定値である推定生育状態値とを生成するものであってもよい。前記水管理装置は、前記推定生育状態値が前記目標生育状態値に近付くように、前記被制御対象の前記目標動作を決定してもよい。これにより、作物の推定生育状態値を目標生育状態値に近付けて、作物を好適な状態で育成することが可能となる。
【0010】
前記作物が水稲である場合、前記生育状態値は、前記水稲の収量、赤色光吸収率、籾数、有効受光面積率、籾内の蓄積デンプン量及び籾内のタンパク質含有率の少なくともいずれかを含んでもよい。これにより、水稲の生育状態を考慮して、圃場(水田)の水管理を好適に行うことが可能となる。
【0011】
前記生育状態に応じた作業指示は、肥料の種類、散布タイミング及び量に関する内容を含んでもよい。前記水管理装置は、前記肥料の種類、散布タイミング及び量に基づいて、前記被制御対象の前記目標動作を決定してもよい。これにより、水管理を肥料の種類、散布タイミング及び量に関連付けて行うことが可能となる。
【0012】
前記肥料の種類は、施肥すべき元素、化学肥料、籾殻及び有機肥料の少なくとも1つを含んでもよい。
【0013】
前記生育状態に応じた作業指示は、前記圃場への給水タイミング又は前記圃場からの排水タイミングに関する内容を含んでもよい。これにより、気象状態と施肥状態の少なくともいずれかを考慮して、圃場への給水タイミング又は圃場からの排水タイミングの作業指示を行うことが可能となる。
【0014】
前記生育状態に応じた作業指示は、現時点における前記圃場の検出水温又は推定水温と目標水温との大小関係に応じた、前記圃場への給水タイミング又は前記圃場からの排水タイミングの作業指示を含んでもよい。これにより、現時点での圃場の検出水温又は推定水温と目標水温との大小関係に応じた、給水タイミング又は排水タイミングを作業指示として示すことが可能となる。
【0015】
前記生育状態に応じた作業指示は、将来における前記圃場の推定水温と目標水温との大小関係に応じた、前記圃場への給水タイミング又は前記圃場からの排水タイミングの作業指示を含んでもよい。これにより、将来における圃場の推定水温と目標水温との大小関係に応じた、給水タイミング又は排水タイミングを作業指示として示すことが可能となる。
【0016】
前記生育状態に応じた作業指示は、前記圃場への給水量又は前記圃場からの排水量を含んでもよい。これにより、気象状態と施肥状態の少なくともいずれかを考慮して、圃場への給水量又は圃場からの排水量の作業指示を行うことが可能となる。
【0017】
将来における(例えば当日から翌日にかけての)推定夜間水温が目標夜間水温よりも高い場合、その前(例えば当日)の前記圃場の昼間水深を目標昼間水深よりも浅くするように前記給水量又は前記排水量を設定してもよい。これにより、夜間水温が目標夜間水温よりも高い分を、水深を浅くすることで(又は、水量を少なくすることで)補うこと(作物にとって、実質的に夜間水温が下がることと同様の効果を奏すること)が可能となる。
【0018】
将来における(例えば当日から翌日にかけての)推定夜間水温が目標夜間水温よりも低い場合、その前(例えば当日)の前記圃場の昼間水深を目標昼間水深よりも深くするように前記給水量又は前記排水量を設定してもよい。これにより、夜間水温が目標夜間水温よりも低い分を、水深を深くすることで(又は、水量を多くすることで)補うこと(作物にとって、実質的に夜間水温が上がることと同様の効果を奏すること)が可能となる。
【0019】
将来(例えば当日)における推定昼間水温が目標昼間水温よりも低い場合、その前(例えば当日)の前記圃場の昼間水深を目標昼間水深よりも浅くするように前記給水量又は前記排水量を設定してもよい。これにより、昼間水深を浅くすることで(又は水量を少なくすることで)昼間水温を上がり易くし、昼間水温が目標昼間水温よりも低い分を補うことが可能となる。
【0020】
将来(例えば当日)における推定昼間水温が目標昼間水温よりも高い場合、その前(例えば当日)の前記圃場の昼間水深を目標昼間水深よりも深くするように前記給水量又は前記排水量を設定してもよい。これにより、昼間水深を深くすることで(又は水量を多くすることで)昼間水温を上がり難くし、昼間水温が目標昼間水温よりも高い分を補うことが可能となる。
【0021】
本発明に係る水管理サーバは、圃場の水状態を変化させる被制御対象の動作を介して前記圃場の水管理を行うものであって、
前記圃場の気温又は日射量を含む気象状態と前記圃場の施肥状態の少なくともいずれかの入力を受け付ける状態入力部と、
前記気象状態と前記施肥状態の少なくともいずれかに基づいて、前記被制御対象の目標動作を決定し、前記目標動作に基づく前記被制御対象の動作をユーザに要求して又は前記目標動作に基づいて前記被制御対象を動作させて、前記圃場の水状態を管理する水管理装置と
を備えることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る水管理方法は、圃場の水状態を変化させる被制御対象の動作を介して前記圃場の水管理を行う方法であって、
水管理装置において、前記圃場の気温又は日射量を含む気象状態と前記圃場の施肥状態の少なくともいずれかに基づいて、前記被制御対象の目標動作を決定する目標動作決定ステップと、
前記水管理装置において、前記目標動作に基づく前記被制御対象の動作をユーザに要求して又は前記目標動作に基づいて前記被制御対象を動作させて、前記圃場の水状態を管理する水管理ステップと
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、圃場の状態に応じたより好適な水管理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係る作物育成システムの概要を示す全体構成図である。
図2】第1実施形態の圃場センサ群及びドローンの構成を簡略的に示す構成図である。
図3】第1実施形態の生育診断サーバの構成を簡略的に示す構成図である。
図4】第1実施形態の水管理制御のフローチャートである。
図5】第2実施形態の水管理制御のフローチャートである。
図6】本発明の第3実施形態に係る作物育成システムの概要を示す全体構成図である。
図7】第3実施形態の水管理制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
A.第1実施形態
<A-1.構成>
[A-1-1.全体構成]
図1は、本発明の第1実施形態に係る作物育成システム10の概要を示す全体構成図である。作物育成システム10(以下「システム10」ともいう)は、圃場500に生育する作物502(水稲)の生育診断を行うと共に、作物502に薬剤を散布することができる。また、システム10は、圃場500の水管理を行う水管理システムでもある。
【0026】
図1に示すように、システム10は、圃場センサ群20と、生育診断サーバ22と、ドローン24と、第1ユーザ端末26と、第2ユーザ端末28と、第3ユーザ端末30と、上流側水門32と、下流側水門34とを有する。圃場センサ群20、ドローン24、第1ユーザ端末26及び第2ユーザ端末28は、通信ネットワーク38(無線基地局36を含む。)を介して互いに無線通信が可能であると共に、生育診断サーバ22と通信可能である。無線通信としては、無線基地局36を介さない通信(例えば、LTE(Long Term Evolution)、WiFi等)を用いることができる。生育診断サーバ22は、通信ネットワーク38を介して情報提供サーバ40と通信可能である。
【0027】
[A-1-2.圃場センサ群20]
図2は、第1実施形態の圃場センサ群20及びドローン24の構成を簡略的に示す構成図である。圃場センサ群20は、水田としての圃場500及びその周辺に設置されて圃場500及びその周辺における各種データを検出して生育診断サーバ22等に提供する。
【0028】
図2に示すように、圃場センサ群20には、例えば、水源水温センサ50、圃場水温センサ52、気温センサ54、水深センサ56、土壌温度センサ58、上流側流量センサ60、下流側流量センサ62及び照度センサ64が含まれる。
【0029】
水源水温センサ50は、圃場500に水を供給する水源504(図1)の水温(以下「水源水温Tsw」ともいう。)を検出する。水源504は、圃場500の周りを流れる用水やため池が想定されており、基本的には外気の影響を受けて値が一定しない。圃場水温センサ52は、水田である圃場500に貯められた水(以下「貯留水」ともいう。)の水温(以下「圃場水温Tfw」又は「水温Tfw」ともいう。)を検出する。気温センサ54は、圃場500の気温(以下「圃場気温Tfa」又は「気温Tfa」ともいう。)を検出する。
【0030】
水深センサ56は、圃場500の貯留水の水深(以下「水深H」ともいう。)を検出する。水深Hは、圃場500における貯留水の深さ(底から表面までの距離)であるが、貯留水の水位(表面の高さ)を代わりに用いてもよい。換言すると、水位は、水深Hと実質的に同義のものとして用いることができる。
【0031】
土壌温度センサ58は、圃場500の土壌の温度(以下「土壌温度Te」ともいう。)を検出するものであり、例えばその検出素子を土壌中に埋没させて値を検出する。上流側流量センサ60は、水源504からの水が圃場500に流入する給水路506(図1)に配設され、給水路506における流量(以下「流量Q1」ともいう。)検出する。下流側流量センサ62は、圃場500から水を排出する排水路508(図1)に配設され、排水路508における流量(以下[流量Q2]ともいう。)を検出する。照度センサ64は、圃場500の日射量(以下「日射量X」ともいう。)を検出する。
【0032】
さらに、圃場センサ群20には、降水量センサ、風速計、気圧計及び湿度計が含まれてもよい。降水量センサは、圃場500の降水量を検出する。風速計は、圃場500の風速を検出する。気圧計は、圃場500の気圧を検出する。湿度計は、圃場500の湿度を検出する。
【0033】
[A-1-3.生育診断サーバ22]
(A-1-3-1.概要)
図3は、第1実施形態の生育診断サーバ22の構成を簡略的に示す構成図である。生育診断サーバ22(以下「診断サーバ22」ともいう。)は、生育診断モデルを用いた生育診断を行い、診断結果に基づいてユーザに作業指示を行う生育診断装置である。作業指示には、施肥のタイミング、肥料の種類・量、農薬の散布タイミング、農薬の種類・量、圃場500の水管理等が含まれる。
【0034】
図3に示すように、診断サーバ22は、入出力部70と、通信部72と、演算部74と、記憶部76とを有する。入出力部70(状態入力部)は、圃場センサ群20、ドローン24等との信号の入出力を行う。通信部72は、図示しないモデム等を有する。通信部72は、通信ネットワーク38を介することで、圃場センサ群20、ドローン24、第1ユーザ端末26、第2ユーザ端末28、第3ユーザ端末30、情報提供サーバ40等との通信が可能である。
【0035】
演算部74は、中央演算装置(CPU)を含み、記憶部76に記憶されているプログラムを実行することにより動作する。演算部74が実行する機能の一部は、ロジックIC(Integrated Circuit)を用いて実現することもできる。演算部74は、前記プログラムの一部をハードウェア(回路部品)で構成することもできる。後述するドローン24の演算部等も同様である。
【0036】
記憶部76は、演算部74が用いるプログラム及びデータを記憶するものであり、ランダム・アクセス・メモリ(以下「RAM」という。)を備える。RAMとしては、レジスタ等の揮発性メモリと、ハードディスク、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリとを用いることができる。また、記憶部76は、RAMに加え、リード・オンリー・メモリ(ROM)を有してもよい。後述するドローン24の記憶部等も同様である。
【0037】
(A-1-3-2.演算部74)
図3に示すように、演算部74は、生育診断管理部80と、ドローン飛行管理部82と、画像処理部84とを有する。生育診断管理部80は、生育診断モデルを用いた生育診断を行うと共に、生育診断の結果に基づく作業指示を行う。ドローン飛行管理部82は、ドローン24の飛行(経路等)を管理する。画像処理部84は、ドローン24が撮影した画像を処理して作物502の生育状態値V(検出生育状態値Vd)を算出する。
【0038】
生育診断管理部80は、生育診断部90と、作業指示部92とを有する。生育診断部90は、生育診断モデルを用いた生育診断を実行する。作業指示部92は、生育診断部90が実行した生育診断の結果に基づいて、ユーザ600(図1)等への作業指示を生成し、第1ユーザ端末26等に表示させる。作業指示部92は、圃場500の水管理に関する作業指示を行う水管理部100を有する。
【0039】
(A-1-3-3.記憶部76)
記憶部76は、生育診断管理部80、ドローン飛行管理部82等を実現するために演算部74が用いるプログラム及びデータを記憶すると共に、圃場データベース110(以下「圃場DB110」という。)を有する。圃場DB110は、圃場500毎のデータを蓄積する。圃場500毎のデータには、例えば、過去に栽培された作物502の種類、収量、くず米率、生育診断モデルのパラメータ及び施肥状態が含まれる。施肥状態には、既に散布した肥料の種類、量及び散布タイミングが含まれる。施肥状態には、これから散布する肥料の種類、量及び散布タイミングが含まれてもよい。
【0040】
[A-1-4.ドローン24]
第1実施形態において、ドローン24は、圃場500(作物502)の画像を取得する手段として機能すると共に、作物502に対する薬液(液体肥料を含む。)を散布する手段としても機能する。ドローン24は、発着地点510(図1)において離着陸する。
【0041】
図2に示すように、ドローン24は、ドローンセンサ群120と、通信部122と、飛行機構124と、撮影機構126と、散布機構128と、ドローン制御部130とを有する。
【0042】
ドローンセンサ群120は、グローバル・ポジショニング・システム・センサ(以下「GPSセンサ」という。)、速度計、高度計、ジャイロセンサ、液量センサ(いずれも図示せず)等を有する。GPSセンサは、ドローン24の現在位置情報を出力する。速度計は、ドローン24の飛行速度を検出する。高度計は、ドローン24下方の地面に対する距離としての対地高度を検出する。ジャイロセンサは、ドローン24の角速度を検出する。液量センサは、散布機構128のタンク内の液量を検出する。
【0043】
通信部122は、通信ネットワーク38を介しての電波通信が可能であり、例えば、電波通信モジュールを含む。通信部122は、通信ネットワーク38(無線基地局36を含む。)を介することで、生育診断サーバ22、第1ユーザ端末26、第2ユーザ端末28等との通信が可能である。
【0044】
飛行機構124は、ドローン24を飛行させる機構であり、複数のプロペラと、複数のプロペラアクチュエータとを有する。プロペラアクチュエータは、例えば電動モータを有する。
【0045】
撮影機構126は、圃場500又は作物502の画像を撮影する機構であり、カメラ140を有する。第1実施形態のカメラ140は、マルチスペクトルカメラであり、特に作物502の生育状況を分析できる画像を取得する。撮影機構126は、圃場500に対して特定の波長の光線を照射する照射部をさらに備え、当該光線に対する圃場500からの反射光を受光可能になっていてもよい。特定の波長の光線は、例えば赤色光(波長約650nm)と近赤外光(波長約774nm)であってもよい。当該光線の反射光を分析することで、作物502の窒素吸収量を推定し、推定した窒素吸収量に基づいて作物502の生育状況を分析することができる。
【0046】
カメラ140は、ドローン24の本体の下部に配置され、ドローン24の周辺を撮影した周辺画像に関する画像データを出力する。カメラ140は、動画を撮影するビデオカメラである。或いは、カメラ140は、動画及び静止画の両方又は静止画のみを撮影可能としてもよい。
【0047】
カメラ140は、図示しないカメラアクチュエータにより向き(ドローン24の本体に対するカメラ140の姿勢)を調整可能である。或いは、カメラ140は、ドローン24の本体に対する位置が固定されてもよい。
【0048】
散布機構128は、薬剤(液体肥料を含む。)を散布する機構であり、例えば、薬剤タンク、ポンプ、流量調整弁及び薬剤ノズルを有する。
【0049】
ドローン制御部130は、ドローン24の飛行、撮影、薬剤の散布等、ドローン24全体を制御する。ドローン制御部130は、図示しない入出力部、演算部及び記憶部を含む。ドローン制御部130は、飛行制御部150、撮影制御部152及び散布制御部154を有する。飛行制御部150は、飛行機構124を介してドローン24の飛行を制御する。撮影制御部152は、撮影機構126を介してドローン24による撮影を制御する。散布制御部154は、散布機構128を介してドローン24による薬剤散布を制御する。
【0050】
[A-1-5.第1ユーザ端末26]
第1ユーザ端末26は、圃場500において、操作者としてのユーザ600(図1)の操作によりドローン24を制御すると共に、ドローン24から受信した情報(例えば、位置、薬剤量、電池残量、カメラ映像等)を表示する携帯情報端末である。なお、第1実施形態では、ドローン24の飛行状態(高度、姿勢等)は、第1ユーザ端末26が遠隔制御するのではなく、ドローン24が自律的に制御する。従って、第1ユーザ端末26を介してユーザ600からドローン24に飛行指令が送信されると、ドローン24は自律飛行を行う。但し、離陸や帰還等の基本操作時、及び緊急時にはマニュアル操作が行なえるようになっていてもよい。第1ユーザ端末26は、図示しない入出力部(タッチパネル等を含む。)、通信部、演算部及び記憶部を備え、例えば、一般的なタブレット端末により構成される。
【0051】
また、第1実施形態の第1ユーザ端末26は、生育診断サーバ22からの作業指示等を受信して表示する。
【0052】
[A-1-6.第2ユーザ端末28]
第2ユーザ端末28は、圃場500において、操作者以外のユーザ602(図1)が用いる携帯情報端末であり、ドローン24の飛行情報(現在の飛行状況、飛行終了予定時刻等)、ユーザ602に対する作業指示、生育診断の情報等を、診断サーバ22又はドローン24から受信して表示する。第2ユーザ端末28は、図示しない入出力部(タッチパネル等を含む。)、通信部、演算部及び記憶部を備え、例えば、一般的なスマートホンにより構成される。
【0053】
[A-1-7.第3ユーザ端末30]
第3ユーザ端末30は、圃場500以外の場所(例えば、ユーザ600、602が所属する会社)において、生育診断サーバ22による生育診断を利用するためにユーザ600、602等が用いる端末である。第3ユーザ端末30は、図示しない入出力部(例えばキーボード及び表示部を含む。)、通信部、演算部及び記憶部を備え、例えば、デスクトップ型パーソナルコンピュータ(PC)又はノート型PCにより構成される。
【0054】
[A-1-8.上流側水門32及び下流側水門34]
上流側水門32(以下「水門32」ともいう。)は、圃場500への給水路506に設けられる。下流側水門34(以下「水門34」ともいう。)は、圃場500からの排水路508に設けられる。水門32、34の開閉は、図示しない第1・第2開閉機構を介してユーザ600、602等が行う。第1・第2開閉機構は、ユーザ600等が手動で操作するハンドル、バルブ等により構成される。或いは、第1・第2開閉機構は、ユーザ600等の操作によりオンオフされて水門32、34を開閉する電動アクチュエータ(電動モータ等)を有してもよい。
【0055】
[A-1-9.情報提供サーバ40]
情報提供サーバ40は、気象衛星等により得られた圃場500に関する情報(圃場情報)を生育診断サーバ22に提供する。ここにいう圃場情報には、例えば、圃場500の気温Tfa、降水量、天気予報等が含まれる。
【0056】
<A-2.第1実施形態の制御>
[A-2-1.概要]
第1実施形態の水管理システム10では、生育診断制御、ドローン飛行管理制御、生育状態検出制御及び薬液散布制御が行われる。生育診断制御は、圃場センサ群20からの各種検出値に基づいて、作物502の生育診断を行う制御である。生育診断制御では、ユーザ600等に対する作業指示も行われる。ドローン飛行管理制御は、生育診断制御等のため圃場500においてドローン24の飛行を管理する制御である。生育状態検出制御は、ドローン24のカメラ140により圃場500(又は作物502)の画像を取得し、この画像を処理して作物502の生育状態を検出する制御である。薬剤散布制御は、ドローン24を用いて薬液(液体肥料を含む。)を散布する制御である。
【0057】
ドローン飛行管理制御、生育状態検出制御及び薬液散布制御は、いずれも生育診断制御における作業指示に基づいて行われる。以下では、生育診断制御、ドローン飛行管理制御、生育状態検出制御及び薬液散布制御の概要について先に説明した後、生育診断制御の一部としての水管理制御について説明する。
【0058】
[A-2-2.生育診断制御]
上記のように、生育診断制御は、生育診断モデルを用いて、作物502の生育診断を行う制御であり、主として生育診断サーバ22(特に生育診断管理部80の生育診断部90)が実行する。ここに言う生育診断には、例えば、圃場500毎の収量の推定値(推定収量)が含まれる。また、生育診断制御では、水田としての圃場500の水管理、施肥、薬剤散布等に関する作業指示も行われる。作業指示は、例えば、第1ユーザ端末26、第2ユーザ端末28又は第3ユーザ端末30の表示部に表示される。
【0059】
生育診断モデルでは、作物502(水稲)の収量、赤色光吸収率、籾数、有効受光面積率、籾内の蓄積デンプン量及び籾内のタンパク質含有率を算出することができる。生育診断モデルとしては、例えば、特開2015-000049号又は特開2018-082648号に記載のものを用いることができる。
【0060】
第1実施形態の生育診断制御は、圃場500の水管理を行う水管理制御を含む。水管理制御については、図4を参照して後述する。
【0061】
[A-2-3.ドローン飛行管理制御]
上記のように、ドローン飛行管理制御は、生育診断制御等のため圃場500においてドローン24の飛行を管理する制御であり、主として生育診断サーバ22(特にドローン飛行管理部82)が実行する。具体的には、ドローン飛行管理制御では、圃場500を撮影する際の飛行経路、目標速度、目標高度等が指令される。
【0062】
[A-2-4.生育状態値検出制御]
生育状態値検出制御は、ドローン24のカメラ140の画像に基づいて、圃場500に生育する作物502の生育状態値Vを検出する制御である。生育状態値検出制御では、ドローン24のカメラ140により圃場500(作物502)の画像を取得して診断サーバ22に送信し、診断サーバ22において、画像を処理して作物502の生育状態値V(検出生育状態値Vd)を算出する。
【0063】
例えば、作物502としての水稲の近赤外光(NIR)及び赤外光(IR)を撮影した場合、カメラ140で受光した近赤外光と赤外光の光量の差が全体光量に占める割合である赤色光吸収率(つまり、作物502に吸収されている赤色光の割合)に基づいて、水稲の成長度合いを判定可能である。ここで算出する検出生育状態値Vdは、作物502の生育フェーズに合わせて選択することができる。
【0064】
生育フェーズは、栄養生長期と、生殖生長期と、登熟期とを含む。栄養生長期は、発芽から穂の基となるもの(穂の原基)ができるまでの期間である。生殖生長期は、穂の原基ができてから出穂・開花までの期間である。登熟期は、出穂・開花から成熟までの期間である。
【0065】
栄養生長期では、例えば、作物502の高さ、葉の数、赤色光吸収率、有効受光面積率(圃場面積において光合成を行うことができる葉の面積率)、NDVI(Normalized Difference Vegetation Index)、分けつ数、葉身長、作物502の密度(土と作物502の面積割合)を用いることができる。生殖生長期では、例えば、作物502の高さ、葉の数、有効受光面積率、NDVIを用いることができる。登熟期では、例えば、籾数、NDVIを用いることができる。
【0066】
[A-2-5.薬剤散布管理制御]
薬剤散布制御は、生育診断制御により提示された作業指示に基づいて、圃場500におけるドローン24の薬剤散布(液体肥料を含む。)を管理する制御であり、主として生育診断サーバ22が実行する。
【0067】
[A-2-6.水管理制御]
(A-2-6-1.概要)
上記のように、水管理制御は、圃場500の水管理を行う制御であり、生育診断制御の一部である。第1実施形態の水管理制御において、診断サーバ22は、圃場500の水管理に関する作業指示をユーザ600等に提示する。具体的には、圃場500に配置された水門32、34に関する作業指示を第1ユーザ端末26等に提示する。ユーザ600等は、この作業指示に従って水門32、34を操作することで、圃場500の水管理を行う。
【0068】
ユーザ600等(農家)が、1日中水門32、34を操作し続けることは現実的でない。また、稲作は比較的暑い時期に行われ、日中の暑い時間帯に水門32、34を操作することもユーザ600等にとって酷である。そこで、第1実施形態では、水門32、34を朝及び夕方に操作することを前提として作業指示を行う。
【0069】
(A-2-6-2.具体的な流れ)
図4は、第1実施形態の水管理制御のフローチャートである。第1実施形態の水管理制御は、基本的に、診断サーバ22(特に水管理部100)が実行する。図4に示す水管理制御の一部は、生育診断制御における他の制御と重複していることに留意されたい。
【0070】
ステップS11において、診断サーバ22は、生育診断モデルにより、現時点における生育状態値Vの目標値(以下「目標生育状態値Vtar」又は「目標値Vtar」という。)を取得する。目標値Vtarは、作物502の種類、基準時点(例えば田植え)からの経過期間(以下「経過期間T」ともいう。)等によって生育診断モデルにより算出されるものであり、基準値又は理想値と言い換えることもできる。経過期間Tは、現時点の生育フェーズと言い換えてもよい。
【0071】
ステップS12において、診断サーバ22は、生育診断モデルにより、現時点における生育状態値Vの推定値(以下「推定生育状態値Ve」又は「推定値Ve」という。)を算出する。推定値Veは、現時点までの気象条件、施肥の実施状況等に基づいて生育診断モデルにより算出される。圃場センサ群20からの検出値を用いることができる。ドローン24が取得した画像に基づく生育状態値Vの検出値(以下「検出生育状態値Vd」又は「検出値Vd」という。)を用いることができる場合、検出値Vdを優先して用いてもよい。
【0072】
ステップS13において、診断サーバ22は、目標生育状態値Vtarと推定生育状態値Ve(又は検出生育状態値Vd)との差分Dを算出する。
【0073】
ステップS14において、診断サーバ22は、経過期間T(又は生育フェーズ)及び差分Dに基づいて、圃場500の水温Tfwの目標値(以下「目標水温Tfwtar」ともいう。)を算出する。すなわち、作物502としての水稲には、生育フェーズ毎に昼夜それぞれの適温が存在する。そのため、差分Dがゼロ又はその近傍値である場合(換言すると、差分Dが所定範囲内である場合)、現在の生育フェーズに応じた昼夜の適温それぞれを目標水温Tfwtarとして設定する。以下では、昼間の目標水温Tfwtarを目標昼間水温Tfwdtarともいい、夜間の目標水温Tfwtarを目標夜間水温Tfwntarともいう。
【0074】
生育状態値Vの推定値Veが目標値Vtarを下回り、作物502の成長が遅れており、且つ、差分Dがゼロであるときの目標水温Tfwtarよりも作物502の成長を早める圃場水温Tfwが存在する場合、診断サーバ22は、当該圃場水温Tfwを目標水温Tfwtarとして選択する。また、生育状態値Vの推定値Veが目標値Vtarを上回り、作物502の成長が早過ぎており、且つ、差分Dがゼロであるときの目標水温Tfwtarよりも作物502の成長を抑制する圃場水温Tfwが存在する場合、診断サーバ22は、当該圃場水温Tfwを目標水温Tfwtarとして選択する。このように目標水温Tfwtarを選択することにより、生育状態値Vの目標値Vtarと推定値Veとの差分Dを小さくするように試みる。
【0075】
ステップS15において、診断サーバ22は、情報提供サーバ40から圃場500に関する気象予報情報Iceを取得する。気象予報情報Iceには、圃場500の気温Tfaの推定値(以下「推定気温Tfae」ともいう。)が含まれる。
【0076】
ステップS16において、診断サーバ22は、目標水温Tfwtar、現在水温Tfw、現在気温Tfa及び推定気温Tfaeに基づいて圃場500の水深Hの目標値(以下「目標水深Htar」ともいう。)を算出する。上記のように、第1実施形態では、ユーザ600等(農家)の利便性を考慮して、水門32、34の操作を朝と夕方に行うことを前提としている。そこで、例えば、朝に水門32、34を操作することにより、例えば日中最も暑い時間帯(例えば14時頃)の推定水温Tfweが目標昼間水温Tfwdtarに近付くように、目標水深Htarを設定する。
【0077】
例えば、昼間の推定気温Tfaeが比較的高く、現在の水深H及び現在の水温Tfwでは推定水温Tfweが目標昼間水温Tfwdtarを上回ることが想定される場合、目標昼間水深Hdtarを深くして、水温Tfwの上昇を抑制する(但し、現在の水温Tfwが目標昼間水温Tfwdtarを上回っている場合はこの限りでない。)。反対に、昼間の推定気温Tfaeが比較的低く、現在の水深H及び現在の水温Tfwでは推定水温Tfweが目標昼間水温Tfwdtarを下回ることが想定される場合、目標水深Htarを浅くして、水温Tfwの上昇を促進する(但し、現在の水温Tfwが目標昼間水温Tfwdtarを上回っている場合はこの限りでない。)。
【0078】
同様に、夕方に水門32、34を操作することにより、例えば夜間最も寒い時間帯(例えば翌日の4時頃)の推定水温Tfwneが目標夜間水温Tfwntarに近付くように、目標夜間水深Hntarを設定する。
【0079】
例えば、夜間の推定気温Tfaeが比較的高く、現在の水深H及び現在の水温Tfwでは推定水温Tfweが目標夜間水温Tfwntarを上回ることが想定される場合、目標水深Htarを浅くして、水温Tfwの下降を促進する(但し、現在の水温Tfwが目標夜間水温Tfwntarを下回っている場合はこの限りでない。)。反対に、夜間の推定気温Tfaeが比較的低く、現在の水深H及び現在の水温Tfwでは推定水温Tfweが目標夜間水温Tfwntarを下回ることが想定される場合、目標水深Htarを深くして、水温Tfwの下降を促進する(但し、現在の水温Tfwが目標夜間水温Tfwntarを大幅に上回っている場合はこの限りでない。)。
【0080】
ステップS17において、診断サーバ22は、目標水深Htarを実現するためのユーザへの作業指示を算出する。具体的には、診断サーバ22は、ユーザ600等が水門32、34を操作する想定時刻における水門32、34の操作方法(開度、開時間等)を特定する。換言すると、診断サーバ22は、上流側水門32による給水タイミング及び給水量、下流側水門34による排水タイミング及び排水量、並びに圃場500の水深Hを目標値として算出する。
【0081】
上記の処理を経ることで、例えば、将来における(例えば当日から翌日にかけての)推定夜間水温Tfwneが目標夜間水温Tfwntarよりも高い場合、その前(例えば当日)における圃場500の昼間水深Hdを目標昼間水深Hdtarよりも浅くするように給水量及び排水量を設定する。また、将来における推定夜間水温Tfwneが目標夜間水温Tfwntarよりも低い場合、その前における圃場500の水深Hを目標昼間水深Hdtarよりも深くするように給水量及び排水量を設定する。さらに、将来(例えば当日)における推定昼間水温Tfwdeが目標昼間水温Tfwdtarよりも低い場合、その前(例えば当日)における圃場500の昼間水深Hdを目標昼間水深Hdtarよりも浅くするように給水量及び排水量を設定してもよい。さらにまた、将来における推定昼間水温Tfwdeが目標昼間水温Tfwdtarよりも高い場合、その前における圃場500の昼間水深Hdを目標昼間水深Hdtarよりも深くするように給水量及び排水量を設定してもよい。
【0082】
ステップS18において、診断サーバ22は、ステップS17で特定した水門32、34の操作方法を、第1ユーザ端末26等を介してユーザ600等に提示する。
【0083】
<A-3.第1実施形態の効果>
第1実施形態によれば、圃場500の水状態を変化させる水門32、34(被制御対象)を、圃場500の気温Tfaを含む気象状態に基づいてユーザ600等により動作させて圃場500の水状態を制御する(図4)。これにより、圃場500の気象状態を考慮した水状態で作物502を生育することが可能となる。
【0084】
第1実施形態において、作物育成システム10(水管理システム)は、水源504から圃場500に水を供給する上流側水門32(給水装置)を被制御対象として含む(図1)。水管理部100(水管理装置)は、圃場500の気象状態に基づいて、上流側水門32による給水タイミング及び給水量並びに圃場500の水深Hを水門32の目標値として生成する(図4のS16、S17)。また、この目標値に基づく水門32の動作を、作業指示を介してユーザ600等に要求して圃場500の水状態を制御する(S18)。これにより、圃場500の気温Tfaに基づいて圃場500の給水を制御可能となる。
【0085】
第1実施形態において、作物育成システム10(水管理システム)は、圃場500から水を排出する下流側水門34(排水装置)を被制御対象として含む(図1)。診断サーバ22(水管理装置)は、圃場500の気象状態に基づいて、水門34による排水タイミング及び排水量並びに圃場500の水深Hを目標値として生成する(図4のS16、S17)。また、この目標値に基づく水門34の動作を、作業指示を介してユーザ600等に要求して圃場500の水状態を制御する(S18)。これにより、圃場500の気温Tfaに基づいて圃場500の排水を制御可能となる。
【0086】
第1実施形態において、作物育成システム10(水管理システム)は、圃場500の気象状態(気温Tfa等)を用いる生育診断モデルを利用して圃場500に生育している作物502の生育状態を診断して生育状態に応じた作業指示を出力する生育診断サーバ22(生育診断装置)を備える(図1図3)。水管理部100(水管理装置)は、生育診断サーバ22の一部を構成する(図3)。生育診断モデルは、作物502の目標生育状態値Vtarと、推定生育状態値Veを生成する(図4のS11、S12)。水管理部100は、推定生育状態値Veが目標生育状態値Vtarに近付くように、水門32、34(被制御対象)の目標動作を決定する(S17)。これにより、作物502の推定生育状態値Veを目標生育状態値Vtarに近付けて、作物502を好適な状態で育成することが可能となる。
【0087】
第1実施形態において、生育状態値Vは、水稲の収量、赤色光吸収率、籾数、有効受光面積率、籾内の蓄積デンプン量及び籾内のタンパク質含有率を含む。これにより、水稲の生育状態を考慮して、圃場500(水田)の水管理を好適に行うことが可能となる。
【0088】
第1実施形態において、生育状態に応じた作業指示は、圃場500への給水タイミング及び圃場500からの排水タイミングを含む(図4のS17、S18)。これにより、圃場500の気象状態を考慮して、圃場500への給水タイミング及び圃場500からの排水タイミングの作業指示を行うことが可能となる。
【0089】
第1実施形態において、生育状態に応じた作業指示は、将来における圃場500の推定水温Tfweと目標水温Tfwtarの大小関係に応じた、圃場500への給水タイミング及び圃場500からの排水タイミングの作業指示を含む(図4のS17、S18)。これにより、将来における圃場500の推定水温Tfweと目標水温Tfwtarとの大小関係に応じた、給水タイミング及び排水タイミングを作業指示として示すことが可能となる。
【0090】
第1実施形態において、生育状態に応じた作業指示は、圃場500への給水量及び圃場500からの排水量を含む(図4のS17、S18)。これにより、圃場500の気象状態を考慮して、圃場500への給水量及び圃場500からの排水量の作業指示を行うことが可能となる。
【0091】
第1実施形態において、将来における(例えば当日から翌日にかけての)推定夜間水温Tfwneが目標夜間水温Tfwntarよりも高い場合、その前(例えば当日)における圃場500の昼間水深Hdを目標昼間水深Hdtarよりも浅くするように給水量及び排水量を設定する(図4のS17)。これにより、夜間水温Tfwnが目標夜間水温Tfwntarよりも高い分を、水深Hを浅くすることで(又は、水量を少なくすることで)補うこと(作物502にとって、実質的に夜間水温Tfwnが下がることと同様の効果を奏すること)が可能となる。
【0092】
第1実施形態において、将来における推定夜間水温Tfwneが目標夜間水温Tfwntarよりも低い場合、その前における圃場500の水深Hを目標昼間水深Hdtarよりも深くするよう給水量及び排水量を設定する(図4のS17)。これにより、夜間水温Tfwnが目標夜間水温Tfwntarよりも低い分を、水深Hを深くすることで(又は、水量を多くすることで)補うこと(作物502にとって、実質的に夜間水温Tfwnが上がることと同様の効果を奏すること)が可能となる。
【0093】
第1実施形態において、将来における推定昼間水温Tfwdeが目標昼間水温Tfwdtarよりも低い場合、その前における圃場500の昼間水深Hdを目標昼間水深Hdtarよりも浅くするように給水量及び排水量を設定してもよい(図4のS17)。これにより、昼間水深Hdを浅くすることで(又は圃場500の水量を少なくすることで)昼間水温Tfwdを上がり易くし、昼間水温Tfwdが目標昼間水温Tfwdtarよりも低い分を補うことが可能となる。
【0094】
将来における推定昼間水温Tfwdeが目標昼間水温Tfwdtarよりも高い場合、その前における圃場500の昼間水深Hdを目標昼間水深Hdtarよりも深くするように給水量及び排水量を設定してもよい(図4のS17)。これにより、昼間水深Hdを深くすることで(又は水量を多くすることで)昼間水温Tfwdを上がり難くし、昼間水温Tfwdが目標昼間水温Tfwdtarよりも高い分を補うことが可能となる。
【0095】
B.第2実施形態
<B-1.構成(第1実施形態との相違)>
第2実施形態の基本的構成は、第1実施形態(図1図3)と同様である。以下では、第1実施形態と同様の構成要素には、同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。第1実施形態の水管理制御は図4に示すものであったが、第2実施形態の水管理制御は図5に示すものである点で第1実施形態と異なる。
【0096】
<B-2.第2実施形態の制御>
図5は、第2実施形態の水管理制御のフローチャートである。第1実施形態の水管理制御(図4)では、生育フェーズ及び差分Dに基づいて目標水温Tfwtarを算出し(S14)、現在水温Tfw、目標水温Tfwtar、現在気温Tfa及び推定気温Tfaeに基づいて目標水深Htarを算出した(S16)。これに対し、第2実施形態の水管理制御(図5)では、施肥の状態を考慮する。
【0097】
図5のステップS21~S23は、図4のステップS11~S13と同様である。
【0098】
図5のステップS24において、診断サーバ22は、対象となっている圃場500の現在の施肥状態を確認する。現在の施肥状態には、既に散布した肥料の種類、量、散布タイミング及び散布方法が含まれる。現在の施肥状態の確認は、圃場DB110から読み出して行う。
【0099】
ステップS25において、診断サーバ22は、現在の生育フェーズ、差分D及び現在の施肥状態に基づいて、必要な肥料の種類、量、散布タイミング及び散布方法(将来的な施肥の情報)を判定する。散布タイミングは、今回の作業周期の話である(そうでない場合、将来的な肥料の情報は今回の判定で考慮しない。)。
【0100】
ステップS26において、診断サーバ22は、生育フェーズ(又は経過期間T)、現在の施肥状態及び将来的な施肥の情報に基づいて、圃場500の目標水温Tfwtarを算出する。すなわち、診断サーバ22は、現在の施肥状態及び将来的な施肥の情報に基づいて、土壌の窒素濃度(アンモニウムイオン)を推定する。そして、土壌の窒素濃度に応じた目標水温Tfwtarを算出する。
【0101】
或いは、肥料には、効果を発揮しやすい水温が存在するものがある。そのため、現在の施肥状態及び/又は将来的な施肥状態に応じて好適な水温Tfwが存在する。そこで、第2実施形態では、現在又は将来の施肥状態に基づいて目標水温Tfwtarを設定してもよい。
【0102】
ステップS27、S28は、図4のステップS15、S16と同様である。但し、目標水深Htarを設定するに際し、肥料が機能しなくなる水深Hになることは制限される。
【0103】
ステップS29において、診断サーバ22は、ステップS25で判定した施肥のための具体的な作業を特定する。ここでの肥料の種類は、施肥すべき元素、化学肥料、籾殻及び有機肥料の少なくとも1つを含む。加えて、診断サーバ22は、ステップS28で設定した目標水深Htarを実現するためのユーザへの作業指示も算出する。具体的には、診断サーバ22は、ユーザ600等が水門32、34を操作する想定時刻における水門32、34の操作方法(開度、開時間等)を特定する。換言すると、診断サーバ22は、上流側水門32による給水タイミング及び給水量、下流側水門34による排水タイミング及び排水量、並びに圃場500の水深Hを目標値として算出する。
【0104】
ステップS30において、診断サーバ22は、ステップS29で特定した将来的な施肥の内容(肥料の種類、量、散布方法、散布タイミング)並びに水門32、34の操作方法を、第1ユーザ端末26等を介してユーザ600等に提示する。
【0105】
<B-3.第2実施形態の効果>
第2実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて又はこれに代えて、以下の効果を奏することができる。
【0106】
第2実施形態によれば、圃場500の水状態を変化させる水門32、34(被制御対象)を、圃場500の施肥状態に基づいてユーザ600等により動作させて圃場500の水状態を制御する(図5)。これにより、圃場500の施肥状態を考慮した水状態で作物502を生育することが可能となる。
【0107】
第2実施形態において、生育状態に応じた作業指示は、肥料の種類、散布タイミング及び量を含む(図5のS29、S30)。水管理部100(水管理装置)は、肥料の種類、散布タイミング及び量に基づいて、水門32、34(被制御対象)の目標動作を決定する(S29)。これにより、水管理を肥料の種類、散布タイミング及び量に関連付けて行うことが可能となる。
【0108】
C.第3実施形態
<C-1.構成(第1・第2実施形態との相違)>
図6は、本発明の第3実施形態に係る作物育成システム10Aの概要を示す全体構成図である。第3実施形態の基本的構成は、基本的に、第1・第2実施形態(図1図3)と同様である。以下では、第1・第2実施形態と同様の構成要素には、同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。第1・第2実施形態は、診断サーバ22からの作業指示に基づいて、ユーザ600等が水門32、34を操作するものであった(図4及び図5)。これに対し、第3実施形態は、診断サーバ22が水門32、34の動作を制御する。
【0109】
図6に示すように、作物育成システム10Aは、水門32、34の開閉を行う水門アクチュエータ200、202を有する。水門アクチュエータ200、202は、通信ネットワーク38(無線基地局36を含む。)を介して診断サーバ22と通信可能であり、診断サーバ22からの制御信号に基づいて水門32、34の開度を制御する。水門32、34の開度は、全閉及び全開に加えて、半開等を調節することができる。或いは、水門32、34の開度は、全閉及び全開のみ調整可能としてもよい。
【0110】
<C-2.第3実施形態の制御>
図7は、第3実施形態の水管理制御のフローチャートである。上記のように、第1・第2実施形態の水管理制御(図4及び図5)では、診断サーバ22からの作業指示に基づいて、ユーザ600等が水門32、34を操作するものであった。そのため、ユーザ600等の利便性を考慮して、水門32、34の操作は、朝及び夕方に行うものとして作業指示が行われた。これに対し、第3実施形態の水管理制御(図7)では、診断サーバ22が水門32、34の動作を制御する。そのため、第1・第2実施形態と比較して、水門32、34の制御は、時間的制約が少ないため、リアルタイムに行うことができる。但し、騒音等を考慮して、水門32、34の開閉を制限する時間帯を設けてもよい。
【0111】
図7のステップS31、S32、S33、S34、S35、S36は、基本的に図4のステップS11、S12、S13、S14、S15、S16と同様である。但し、ステップS36で算出する目標水深Htarは、各時点での目標値として設定され、時々刻々変化する。
【0112】
ステップS37において、診断サーバ22は、目標水深Htarに基づいて水門アクチュエータ200、202それぞれの目標開度Otarを算出する。
【0113】
ステップS38において、診断サーバ22は、目標開度Otarに基づいて水門アクチュエータ200、202を遠隔制御する。
【0114】
<C-3.第3実施形態の効果>
第3実施形態によれば、第1・第2実施形態の効果に加えて又はこれに代えて、以下の効果を奏することができる。
【0115】
第3実施形態によれば、圃場500の水状態を変化させる水門32、34(被制御対象)を、圃場500の気温Tfaに基づいて作物育成システム10(水管理システム)により動作させて圃場500の水状態を制御する(図7)。これにより、圃場500の気象状態を考慮した水状態で作物502を生育することが可能となる。
【0116】
第3実施形態において、生育状態に応じた水門32、34の制御は、現時点における圃場500の検出水温Tfwd又は推定水温Tfweと目標水温Tfwtarの大小関係に応じた、圃場500への給水タイミング及び圃場500からの排水タイミングを含む(図7)。これにより、現時点での圃場500の検出水温Tfwd又は推定水温Tfweと目標水温Tfwtarとの大小関係に応じた、給水タイミング又は排水タイミングで水門32、34を制御することが可能となる。
【0117】
第3実施形態において、水管理部100(水制御装置)は、比較的短い間隔で水門32、34(被制御対象)を制御する(図7)。これにより、第1・第2実施形態と比較してリアルタイム性を持った水管理をすることが可能となる。
【0118】
D.変形例
なお、本発明は、上記実施形態に限らず、本明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下の構成を採用することができる。
【0119】
<D-1.構成>
第1実施形態の作物育成システム10は、図1に示すような構成要素を有していた。しかしながら、例えば、圃場500の気温Tfa(又は日射量X)を含む気象状態と圃場500の施肥状態の少なくともいずれかに基づいて圃場500の水状態を制御する観点からすれば、これに限らない。例えば、作物育成システム10は、ドローン24、第1ユーザ端末26、第2ユーザ端末28、第3ユーザ端末30、水門32、34及び情報提供サーバ40の1つ又は複数を省略することも可能である。第2・第3実施形態も同様である。
【0120】
第1実施形態では、生育診断の機能(生育診断管理部80)を生育診断サーバ22に設けた(図3)。しかしながら、例えば、圃場500の気温Tfa(又は日射量X)を含む気象状態と圃場500の施肥状態の少なくともいずれかに基づいて圃場500の水状態を制御する観点からすれば、これに限らない。例えば、生育診断の機能をドローン24に持たせることも可能である。第2・第3実施形態も同様である。
【0121】
第1実施形態では、作物502として水稲を用いた。しかしながら、例えば、圃場500の気温Tfa(又は日射量X)を含む気象状態と圃場500の施肥状態の少なくともいずれかに基づいて圃場500の水状態を制御する観点からすれば、これに限らない。例えば、作物502は、小麦、大麦、大豆等であってもよい。第2・第3実施形態も同様である。
【0122】
第1実施形態では、水源504から圃場500に水を供給する給水装置として、上流側水門32を用いた(図1)。しかしながら、例えば、水源504から圃場500に水を供給する観点からすれば、これに限らない。例えば、水門32に加えて又はこれに替えて、バルブ又はポンプを用いてもよい。また、例えば、圃場500の水深Hを制御する観点からすれば、下流側水門34等の排水装置が存在すれば、上流側の給水装置は省略することも可能である。第2・第3実施形態も同様である。
【0123】
第1実施形態では、圃場500から水を排出する排水装置として、下流側水門34を用いた(図1)。しかしながら、例えば、圃場500から水を排出する観点からすれば、これに限らない。例えば、水門34に加えて又はこれに替えて、バルブ又はポンプを用いてもよい。また、例えば、圃場500の水深Hを制御する観点からすれば、上流側水門32等の給水装置が存在すれば、下流側の排水装置は省略することも可能である。第2・第3実施形態も同様である。
【0124】
<D-2.制御>
第1・第3実施形態では、圃場500の気温Tfaを用いた制御を行った(図4及び図7)。しかしながら、例えば、気象状態に基づいて圃場500の水状態を制御する観点からすれば、これに限らない。例えば、圃場500の気温Tfaの代わりに又はこれに加えて圃場500の日射量X(目標値、推定値及び検出値)を用いることも可能である。
【0125】
第1・第3実施形態では、圃場500の気温Tfaを用いて目標水温Tfwtarを算出したのに対し(図4のS14、図7のS34)、第2実施形態では現在の施肥状態等を用いて目標水温Tfwtarを算出した(図5のS24、S25)。両方を組み合わせて、圃場500の気温Tfa及び現在の施肥状態等を用いて目標水温Tfwtarを算出してもよい。
【0126】
第1~第3実施形態では、水管理制御は生育診断モデルの利用を前提としていた(図4図5及び図7)。しかしながら、例えば、圃場500の気象状態と施肥状態の少なくともいずれかに基づいて圃場500の水状態を制御する観点からすれば、これに限らない。例えば、生育診断モデルを用いずに、気象状態又は施肥状態を入力として、これらの状態に対応する出力を記憶したテーブルを設けておくことで、水管理を行うことも可能である。
【0127】
<D-3.その他>
第1~第3実施形態では、図4図5及び図7に示すフローを用いた。しかしながら、例えば、本発明の効果を得られる場合、フローの内容(各ステップの順番)は、これに限らない。例えば、図4のステップS11とS12の順番を入れ替えることが可能である。
【符号の説明】
【0128】
10…作物育成システム(水管理システム)
22…生育診断サーバ(生育診断装置、水管理サーバ)
32…上流側水門(被制御対象、給水装置)
34…下流側水門(被制御対象、排水装置)
70…入出力部(状態入力部)
100…水管理部(水管理装置)
500…圃場 502…作物
504…水源 H…圃場の水深
Hd…圃場の昼間水深
Hdtar…圃場の目標昼間水深
Tfa…圃場の気温 Tfwd…圃場の検出水温
Tfwde…圃場の推定昼間気温 Tfwe…圃場の推定水温
Tfwne…圃場の推定夜間気温
Tfwtar…圃場の目標水温
V…生育状態値 Ve…推定生育状態値
Vtar…目標生育状態値 X…日射量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7