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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】スプールアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61G 3/08 20060101AFI20240104BHJP
【FI】
A61G3/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022125619
(22)【出願日】2022-08-05
(65)【公開番号】P2023026363
(43)【公開日】2023-02-24
【審査請求日】2022-08-05
(31)【優先権主張番号】63/232,709
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519251601
【氏名又は名称】宏霖工業股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アヴラハム・ジヴ
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0210247(US,A1)
【文献】実開昭49-056623(JP,U)
【文献】実開平01-102052(JP,U)
【文献】特開平9-193741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 3/08
B60R 22/34-46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプールアセンブリであって、トーションシャフトと、シャフトスリーブと、二つのラチェット歯車と、を含み、
前記シャフトスリーブは、前記トーションシャフトの外周に同軸に配設され、該シャフトスリーブの内周壁面と前記トーションシャフトの外周壁面との間に離間距離を有し、
前記二つのラチェット歯車は、円板部と、該円板部の周縁に連続して配列される複数のラチェットギヤと、を備え、前記円板部は、前記シャフトスリーブの外側面の周囲に装着され、かつ内板面を備え前記トーションシャフトの軸方向両端は、それぞれ前記二つのラチェット歯車の前記円板部を通じて突出しており、
該二つのラチェット歯車の円板部はそれぞれ、支持強化用構造体を有し、該支持強化用構造体は、前記トーションシャフトの外周壁面と前記シャフトスリーブの内周壁面との間に位置すると共に、前記内板面に対してオフセットして形成され、
該ラチェット歯車は、該内板面に沿って延びる、該トーションシャフトの中心軸線と直交する基準平面を有し、該二つのラチェット歯車の基準平面はそれぞれ、該支持強化用構造体を通過することを特徴とするスプールアセンブリ。
【請求項2】
前記支持強化用構造体は、前記トーションシャフトの外周を囲繞する支持環状部を含み、該支持環状部が、前記円板部の内板面に対して、前記シャフトスリーブの中央部分に向く方向に偏位することを特徴とする請求項1に記載のスプールアセンブリ。
【請求項3】
前記シャフトスリーブの軸方向両端にそれぞれ、間隔を置いて配置される複数の係合凸部を有し、
前記二つのラチェット歯車の円板部は、該円板部の中心に位置する中心軸孔と、該中心軸孔の外周を囲繞する支持領域と、該支持領域の周囲に配列される複数の固着孔と、を有し、該複数の固着孔の孔縁が該支持領域の外周縁に隣接し、前記トーションシャフトの両端がそれぞれ、該二つのラチェット歯車の中心軸孔内に挿設固定され、前記シャフトスリーブの両端の複数の係合凸部がそれぞれ、該二つのラチェット歯車上における対応する固着孔内に挿設固定され、
前記支持強化用構造体の支持環状部が、前記支持領域に位置し、かつ前記トーションシャフトと前記シャフトスリーブの係合凸部とに隣接することを特徴とする請求項2に記載のスプールアセンブリ。
【請求項4】
前記支持強化用構造体は、前記トーションシャフトの周囲に配列される複数の支持ブロックを含み、該支持ブロックのそれぞれの前記シャフトスリーブの中央部分に向く側面は、前記円板部の内板面に対して偏位し、該支持ブロックのそれぞれが、前記トーションシャフトと前記シャフトスリーブとに当接することを特徴とする請求項1に記載のスプールアセンブリ。
【請求項5】
前記シャフトスリーブの軸方向両端にそれぞれ、間隔を置いて配置される複数の係合凸部を有し、
前記二つのラチェット歯車の円板部は、該円板部の中心に位置する中心軸孔と、該中心軸孔の外周を囲繞する支持領域と、該支持領域の周囲に配列される複数の固着孔と、を有し、該複数の固着孔の孔縁は、該支持領域の外周縁に隣接し、前記トーションシャフトの両端はそれぞれ、該二つのラチェット歯車の中心軸孔内に挿設固定され、前記シャフトスリーブの両端の複数の係合凸部はそれぞれ、該二つのラチェット歯車上における対応する固着孔内に挿設固定され、
前記支持強化用構造体の各支持ブロックは、前記支持領域に位置し、かつ対応する前記シャフトスリーブの係合凸部と前記トーションシャフトとの間に配置されることを特徴とする請求項4に記載のスプールアセンブリ。
【請求項6】
前記シャフトスリーブの外周面に、滑り止め面が形成されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のスプールアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートベルトシステムのリトラクタ又は車椅子の固定具に関し、特に、リトラクタ又は車椅子の固定具内に設置され、ウェビングを連結するためのスプールアセンブリに関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗り物の乗員の安全を確保するために設置されるシートベルトシステムは、乗員の身体をシートに拘束するためのウェビングと、ウェビングと接続されるリトラクタと、を備える。緊急時には、シートベルトシステムは、リトラクタ内のスプールアセンブリに巻かれているウェビングをロックし、当該ウェビングが引っ張られるような状態となっていることにより、乗員がシートにしっかりと保持されるようになる。
【0003】
従来技術のリトラクタにおける、ウェビングを連結すると共にロック装置に接続されるスプールアセンブリは、図8図10に示すように、トーションシャフト60と、該トーションシャフト60の外周に同軸に配設されるシャフトスリーブ70と、トーションシャフト60とシャフトスリーブ70が一体に組み付けるように形成される組立体の軸方向両端に固設される二つのラチェット歯車80と、を含み、該シャフトスリーブ70は、ウェビングを連結するために用いられ、該ラチェット歯車80は、ロック手段に接続され、当該ロック手段によってロック及びアンロックされる。このような従来技術のリトラクタにおいてのスプールアセンブリの機械強度は、一般的な乗り物のシートベルトシステムに対して十分に対応できる。
【0004】
しかしながら、従来技術のリトラクタは、車両内に搬入される車椅子を固定する固定具に適用される場合、そのスプールアセンブリの機械強度が不十分である可能性があり、特に、衝突事故時に、車椅子を確実に固定することができない虞がある。具体的に説明すると、スプールアセンブリのシャフトスリーブに連結されるウェビングが張力を受けた状態下、シャフトスリーブは、ラジアル荷重、リニア荷重、トルク荷重及び曲げ荷重などを受けている。図11及び図12は、スプールアセンブリのシャフトスリーブ70に作用する、異なる方向からのラジアル荷重を示している。かかるラジアル力は、シャフトスリーブ70自体と、シャフトスリーブ70の端部に設置され、ラチェット歯車80に嵌合固定されるための複数の係合凸部71と、によって受けている。図13及び図14は、スプールアセンブリのシャフトスリーブ70に作用するリニア荷重を示している。かかるリニア力は、トーションシャフト60と、シャフトスリーブ70の係合凸部71と、によって受けている。
図15は、スプールアセンブリのシャフトスリーブ70に作用するトルク荷重を示している。かかるトルクは、シャフトスリーブ70の係合凸部71によって受けている。図16は、スプールアセンブリのシャフトスリーブ70が曲げ荷重を受けている状態を示している。
【0005】
上記内容及び図面から分かるように、スプールアセンブリのシャフトスリーブ70端部の係合凸部71にかかる、ラジアル力とリニア力とは異なる応力である。尚、図11及び図12に示すように、シャフトスリーブ70にかかるラジアル力のせん断応力は、シャフトスリーブ70周りに均一に分布し、ところが、シャフトスリーブ70が、継ぎ目のあるパイプ材である場合、シャフトスリーブ70端部にかかるラジアル力のせん断応力は、シャフトスリーブ70端部周りに均等に分布するのではなく、パイプの継ぎ目72に近づくほど大きくなる。
【0006】
シャフトスリーブ70にかかるリニア力については、当該リニア力のせん断応力は、ウェビング90にかかっている張力と同じ方向にシャフトスリーブ70に作用する。例えば、図13及び図14に示すように、ウェビング90にかかる張力が上向きの場合、せん断応力は、シャフトスリーブ70の下半分に上向きに作用する。また、シャフトスリーブ70にかかっているリニア力のせん断応力の度合いは、パイプの継ぎ目72とウェビング90との相対位置によって変化する。例えば、図13に示すように、スプールアセンブリの回転により、シャフトスリーブ70の下半分に係合凸部71が二つしかない場合、シャフトスリーブ70は、この二つの係合凸部71でせん断応力を受け止めており、この場合、各係合凸部71が受けるせん断応力は比較的大きい。図14に示すように、シャフトスリーブ70の下半分に三つの係合凸部71が回ってきた場合、このときのシャフトスリーブ70は、三つの係合凸部71でせん断応力を受け止めており、この場合、各係合凸部71が受けるせん断応力は比較的小さい。
【0007】
上記のウェビング90に張力がかかっている状態でのスプールアセンブリの応力解析から分かるように、シャフトスリーブ70両端部の係合凸部71とラチェット歯車80の円板部との間の結合構造は、シャフトスリーブ70の機械強度が負荷に十分に耐えられるかどうかの鍵となる。
【0008】
従来技術のスプールアセンブリの構成において、シャフトスリーブ70端部の複数の係合凸部71がラチェット歯車80の円板部に係合固定されるとき、シャフトスリーブ70の本体と両端の係合凸部71との連結部分が、支持構造によって支持されていない。ラチェット歯車80に係合固定されている係合凸部71が、溶接手段によってラチェット歯車80の円板部の外板面に一体に結合されていても、ラチェット歯車80は、その円板部におけるトーションシャフト60とシャフトスリーブ70の係合凸部71との間に位置する支持部分だけで、係合凸部71を径方向に支持している。すなわち、図10に示すように、シャフトスリーブ70における、円板部の内板面と支持部分との間に位置する部位に作用するせん断応力の伝達経路L1は、円板部の内板面に沿って、シャフトスリーブ70の軸心方向と直交する方向にシャフトスリーブ70を通過し、シャフトスリーブ70に作用する荷重が比較的小さい横断面に集中するため、シャフトスリーブ70の本体と両端の係合凸部71との連結部分が、負荷に十分に耐えられるとは思えない。従って、従来技術のスプールアセンブリが、車椅子を固定する固定具に適用される場合、人が乗っている車椅子を搭載する車両が加速したり、ブレーキがかかったりするたびに、又は衝突事故に遭う場合に、スプールアセンブリのシャフトスリーブ70に通常よりもはるかに大きな負荷が発生し、すると、シャフトスリーブ70における円板部の内板面と支持部分との間の、せん断応力を受け止める部位は、機械強度が不足して変形したり折れたりする虞があるので、従来技術のスプールアセンブリを改良する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2020-37398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、機械強度が高く、車椅子を固定するための固定具に適用可能なリトラクタのスプールアセンブリを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、スプールアセンブリであって、トーションシャフトと、シャフトスリーブと、二つのラチェット歯車と、を含み、
前記シャフトスリーブは、前記トーションシャフトの外周に同軸に配設され、該シャフトスリーブの内周壁面とトーションシャフトの外周壁面との間に離間距離を有し、
前記二つのラチェット歯車は、円板部と、該円板部の周縁に連続して配列される複数のラチェットギヤと、を備え、該二つのラチェット歯車の円板部における互いに対向する側面は、内板面であり、前記トーションシャフトとシャフトスリーブとが一体に組み付けるように構成された組立体の軸方向両端がそれぞれ、該二つのラチェット歯車の円板部に固設連結され、
該二つのラチェット歯車の円板部はそれぞれ、支持強化用構造体を有し、該支持強化用構造体は、前記トーションシャフトの外周壁面とシャフトスリーブの内周壁面との間に位置すると共に、前記内板面に対してオフセットして形成され、
該ラチェット歯車は、該内板面に沿って延びる、該トーションシャフトの中心軸線と直交する基準平面を有し、該二つのラチェット歯車の基準平面はそれぞれ、該支持強化用構造体を通過することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記の技術手段によって、本発明に係るスプールアセンブリは、以下に示すような優れた点と効果を有する。
その1、重負荷に耐えられる高機械強度。本発明に係るスプールアセンブリは、ラチェット歯車の円板部上の、同軸に組み付けられるトーションシャフトとシャフトスリーブとの間に位置する支持強化用構造体を有し、当該支持強化用構造体がラチェット歯車の内板面に対してオフセットして形成されることから、トーションシャフトの軸心方向と直交する基準平面が当該支持強化用構造体を通過することにより、シャフトスリーブに作用する荷重が広い横断面に分散されると共に、ラチェット歯車とシャフトスリーブとの間の単位面積当たりの応力が低減されるので、より高い荷重に耐えられる機械強度を持たせることが可能となる。
その2、スプールアセンブリの製造過程中、支持強化用構造体を簡単に成形することが可能である。上述したように、本発明に係るスプールアセンブリの支持強化用構造体は、ラチェット歯車上における、円板部に連結されるトーションシャフトとシャフトスリーブとの間に位置し、かつラチェット歯車の内板面に対してオフセットして形成されており、このような構造は、プレス機を利用してラチェット歯車、トーションシャフト、シャフトスリーブをカシメ固定加工する際に簡単に成形されることができる。
【0013】
また、本発明に係るスプールアセンブリは、シャフトスリーブの外周面を粗面化して滑り止め面が形成されることにより、シャフトスリーブとウェビングとの連結安定性を確保することができるので、ウェビングからの負荷を、シャフトスリーブに均一に作用させる効果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るスプールアセンブリの第1の好適な実施例の外端面を示す平面模式図である。
図2図1のA―A線断面模式図である。
図3図2の部分拡大模式図である。
図4】本発明に係るスプールアセンブリの第2好適な実施例の外端面を示す平面模式図である。
図5図4のB―B線断面模式図である。
図6図5の部分拡大模式図である。
図7】シートベルトシステムが車椅子を固定するための固定具に適用される例を示す模式図である。
図8】従来技術のスプールアセンブリの外端面を示す平面模式図である。
図9図8のC-C線断面模式図である。
図10図9の部分拡大模式図である。
図11】従来技術のスプールアセンブリのシャフトスリーブ上における異なる位置に作用するラジアル荷重を示す端面視模式図(一)である。
図12】従来技術のスプールアセンブリのシャフトスリーブ上における異なる位置に作用するラジアル荷重を示す端面視模式図(二)である。
図13】従来技術のスプールアセンブリのシャフトスリーブ上における異なる位置に作用するリニア荷重を示す端面視模式図(一)である。
図14】従来技術のスプールアセンブリのシャフトスリーブ上における異なる位置に作用するリニア荷重を示す端面視模式図(二)である。
図15】従来技術のスプールアセンブリのシャフトスリーブに作用するトルク荷重を示す端面視模式図である。
図16】従来技術のスプールアセンブリのシャフトスリーブに作用する曲げ荷重を示す側面視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1及び図4は、本発明に係るスプールアセンブリ1の複数の好適な実施例を示したものであり、図面に示されるスプールアセンブリ1は、トーションシャフト10、シャフトスリーブ20及び二つのラチェット歯車30を含む。
【0016】
図1図3及び図4図6に示された本発明の好適な実施例において、前記トーションシャフト10は、長さが予め定められた円柱状ロッド体であり、延伸方向に沿った中心軸線100を有する。
【0017】
図1図3及び図4図6に示すように、前記シャフトスリーブ20は、長さが予め定められた円柱状管体であって、前記トーションシャフト10の外周に同軸に配設されると共に、両端にそれぞれ、間隔を置いて設置される複数の係合凸部21が形成され、該シャフトスリーブ20の内径は、該トーションシャフト10の外径よりも大きく、具体的に説明すると、該シャフトスリーブ20の内周壁面と該トーションシャフト10の外周壁面との間に離間距離を有し、当該離間距離は、スプールアセンブリ1の設計に応じて、適宜変更することができる。
【0018】
図1及び図4に示された本発明の好適な実施例においての前記シャフトスリーブ20は、金属板を曲げ加工により形成され、軸方向に沿った継ぎ目を有するパイプ材であり、図面から分かるように、その継ぎ目の両側に位置する係合凸部21間の間隔が、他の係合凸部21間の間隔と比べ、より広い離間距離を有する。図2に示された好適な実施例においては、前記シャフトスリーブ20は、外周面が粗面化された滑り止め面22を有し、該滑り止め面22が設けられることにより、シャフトスリーブ20の外周面とウェビングとの連結安定性を向上させることができ、ウェビングがシャフトスリーブ20に整然と巻かれることが可能となり、ひいてはウェビングからの負荷をシャフトスリーブ20に均一に作用させることができる。
【0019】
図1図3及び図4図6に示すように、前記二つのラチェット歯車30はそれぞれ、前記シャフトスリーブ20とトーションシャフト10との組み合わせにより構成された組立体の軸方向両端に固設連結される共に、円板部31と、該円板部31の周縁に連続して配列される複数のラチェットギヤ32と、を備える。該二つのラチェット歯車30の円板部31が互いに対向する側面は内板面31aとして定義され、その反対側の側面は外板面31bとして定義される。前記二つのラチェット歯車30は、それぞれの内板面31aに沿って延び、前記トーションシャフト10の中心軸線100と直交する基準平面310を有する。前記二つのラチェット歯車30の円板部31にはそれぞれ、支持強化用構造体33A、33Bを有し、該支持強化用構造体33A、33Bは、該トーションシャフト10の外周壁面と該シャフトスリーブ20の内周壁面との間に位置すると共に、該内板面31aに対して偏位して形成され、前記基準平面310はそれぞれ、該支持強化用構造体33A、33Bを通過する。
【0020】
図3及び図6に示すように、本発明に係るスプールアセンブリ1において、前記内板面31aに沿って延び、前記トーションシャフト10の中心軸線100と直交する基準平面310が、前記ラチェット歯車30の内板面31aに対して偏位して形成される支持強化用構造体33A、33Bを通過することによって、前記シャフトスリーブ20の係合凸部21の内側に作用するせん断応力は、その伝達経路Lが、該内板面31aと延伸支持強化用構造体33A、33Bの内側面との間で斜めになっているため、シャフトスリーブ20に作用する荷重が比較的広い横断面に分散されると共に、ラチェット歯車30とシャフトスリーブ20との間の単位面積当たりの応力が低減されるので、従来技術のスプールアセンブリと比べ、より高い荷重に耐えられる機械強度を得ることができる。
【0021】
上述した技術的特徴に基づき、本発明に係るスプールアセンブリ1の支持強化用構造体33A、33Bは、様々な実施形態を有する。本発明の技術特徴及び実用的な効果を理解できるように、且つ発明の内容に従って実現できるように、図面に示す好適な実施形態によって、以下のとおり詳細に説明する。ところが、以下の説明は、本発明の好適な実施形態に過ぎず、本発明に対して何ら限定を行うものではない。
【0022】
図1図3及び図4図6に示された本発明の好適な実施例において、前記二つのラチェット歯車30は、その円板部31の中心に位置する中心軸孔311と、該中心軸孔311の外周を囲繞する支持領域312と、該支持領域312の外周に配列される複数の固着孔313と、を有する。詳しく説明すると、前記複数の固着孔313の孔縁が前記支持領域312の該周縁に隣接し、前記トーションシャフト10の両端がそれぞれ、前記二つのラチェット歯車30の中心軸孔311内に挿設固定され、前記シャフトスリーブ20の両端の複数の係合凸部21がそれぞれ、該二つのラチェット歯車30上における対応する固着孔313内に挿設固定される。
【0023】
図1図3に示す本発明の第1の好適な実施例においての支持強化用構造体33Aは、前記トーションシャフト10の外周を囲繞し、かつ該トーションシャフト10とシャフトスリーブ20の係合凸部21との間の支持領域312に位置する支持環状部331を含み、該支持環状部331が前記円板部31の内板面31aに対して偏位して形成される。前記中心軸孔311は、前記支持環状部331内に位置すると共に、前記固着孔313の、前記トーションシャフト10の中央部分に面する側に偏位する。詳しく説明すると、前記支持環状部331は、前記トーションシャフト10及びシャフトスリーブ20上の各係合凸部21に当接しており、また、前記円板部31の内板面31aに対して偏位する支持環状部331の前記トーションシャフト10の中央部分に面する側面は、該円板部31の内板面31aに対して、オフセット距離d1を有する。
【0024】
図4図6に示す本発明の第2の好適な実施例においての支持強化用構造体33Bは、前記中心軸孔311の外周の支持領域312に配列される複数の支持ブロック332を含み、該各支持ブロック332における、前記シャフトスリーブ20の中央部分に面する側面は、前記円板部31の内板面31aに対して偏位し、該支持領域312内に配置された各支持ブロック332は、対応する前記シャフトスリーブ20の係合凸部21と前記トーションシャフト10との間に位置する。尚、前記支持ブロック332が前記トーションシャフト10及び対応する前記シャフトスリーブ20の係合凸部21に当接することは好ましい。また、該支持ブロック332の前記トーションシャフト10の中央部分に面する側面は、前記円板部31の内板面31aに対して、オフセット距離d2を有する。
【0025】
上述した技術特徴によれば、本発明に係るスプールアセンブリ1の全体的な機械強度を著しく向上させることができ、乗り物の乗員の安全を確保するためのシートベルトシステムのリトラクタに適用されると、より高い安全性を得ることができる。例えば、スプールアセンブリ1のラチェット歯車30が、リトラクタのロック装置によりロックされ、乗員を拘束するウェビングは引っ張られるような状態となった場合において、図3及び図6に示すように、ウェビングを連結するシャフトスリーブ20は、ラチェット歯車30の円板部31に形成された支持強化用構造体33A、33Bにより支持されていることで、当該シャフトスリーブ20に作用する負荷が広い横断面に分散されると共に、ラチェット歯車30とシャフトスリーブ20との間の単位面積当たりの応力が低減されるので、より高い荷重に耐えられる機械強度を得ることが可能となる。
【0026】
また、本発明に係るスプールアセンブリ1は、乗り物(例えば、リハビリテーションの送迎バスや、福祉車両など)内に設置されている、車椅子2を固定する固定具3にも適用することができる。固定具3により車椅子2を車両内に固定する際に、固定式固定機構又は調整式固定機構4により車両の床に設置された複数の固定具3から、スプールアセンブリに連結されるウェビング5を引き出して、ウェビング5の先端に取り付けられるフックを車椅子2のフレームに掛けて、車椅子2を固定し、これにより、車両内に搭載された車椅子2は、該車両の走行中に安定して保持されることができる。
【0027】
人が乗っている車椅子2を搭載する車両が加速したり、ブレーキがかかったりするたびに、又は衝突事故に遭う場合に、車椅子2を拘束するウェビング5が引っ張られて、スプールアセンブリに大きな負荷がかかっている。この際に、図3及び図6に示すように、本発明に係るスプールアセンブリ1において、前記内板面31aに沿って延び、前記トーションシャフト10の中心軸線100と直交する基準平面310が、前記ラチェット歯車30の内板面31aに対して偏位して形成される支持強化用構造体33A、33Bを通過することによって、前記シャフトスリーブ20の係合凸部21の内側に作用するせん断応力は、その伝達経路Lが、該内板面31aと延伸支持強化用構造体33A、33Bの内側面との間で斜めになっているため、シャフトスリーブ20に作用する荷重が比較的広い横断面に分散されると共に、ラチェット歯車30とシャフトスリーブ20との間の単位面積当たりの応力が低減されるので、従来技術のスプールアセンブリと比べ、より高い荷重に耐えられる機械強度を得ることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 スプールアセンブリ
10 トーションシャフト
100 中心軸線
20 シャフトスリーブ
21 係合凸部
22 滑り止め面
30 ラチェット歯車
31 円板部
31a 内板面
31b 外板面
310 基準平面
311 中心軸孔
312 支持領域
313 固着孔
32 ラチェットギヤ
33A、33B 支持強化用構造体
331 支持環状部
332 支持ブロック
d1、d2 オフセット距離
L、L1 せん断応力の伝達経路
2 車椅子
3 固定具
4 調整式固定機構
5 ウェビング
60 トーションシャフト
70 シャフトスリーブ
71 係合凸部
72 継ぎ目
80 ラチェット歯車
90 ウェビング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16