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特許7412038再測量要否判定装置、測量システム、ドローンシステム、および再測量要否判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】再測量要否判定装置、測量システム、ドローンシステム、および再測量要否判定方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20240104BHJP
【FI】
G01C15/00 102C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022513709
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(86)【国際出願番号】 JP2020015481
(87)【国際公開番号】W WO2021205501
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】515019537
【氏名又は名称】株式会社ナイルワークス
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【弁理士】
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100139778
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【弁理士】
【氏名又は名称】狩生 咲
(72)【発明者】
【氏名】末永 知宏
(72)【発明者】
【氏名】和氣 千大
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏記
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-87163(JP,A)
【文献】特開2019-120986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象エリアの座標を測量する際、または、ドローンの位置を測位する際に記録した基準点の座標からの前記基準点の現在の座標の変化状態に基づいて再測量の要否を判定する要否判定部と、
前記基準点の識別情報と当該基準点の座標情報を記録する記録部と、
前記記録部が、前記対象エリアの座標を取得する際に記録した基準点として複数の基準点の識別情報を記録している場合に、前記複数の基準点の座標が、同一方向に同一距離だけ変化しているか否かを判定し、同一方向に同一距離だけ変化している場合は、前記対象エリアの座標を、基準点の座標の変化と同一方向に同一距離だけ補正する相対変化取得部と、
を備え、
前記要否判定部は、前記識別情報に基づいて新たに取得した前記基準点の座標情報が、記録部に記録された前記座標情報から所定値以上変化している場合に、再測量が必要と判定し、前記複数の基準点の座標が、同一方向に同一距離だけ変化している場合は、再測量不要と判定する、
再測量要否判定装置。
【請求項2】
前記複数の基準点として、3以上の基準点を記録し、前記複数の基準点を結んで形成される多角形の内部に、前記対象エリアの全体が含まれる請求項記載の、再測量要否判定装置。
【請求項3】
前記複数の基準点として、前記対象エリアの座標から所定距離以内の基準点を記録する請求項又は請求項記載の、再測量要否判定装置。
【請求項4】
前記要否判定部による判定結果を表示部に送信して、前記表示部を介して表示させる、
請求項1乃至3のいずれかに記載の、再測量要否判定装置。
【請求項5】
前記要否判定部は、前記判定結果に加えて、基準点の座標変化量の情報を前記表示部に送信して、前記表示部を介して表示させる、
請求項4に記載の、再測量要否判定装置。
【請求項6】
座標測量装置と、再測量要否判定装置とを備え、
前記座標測量装置は、対象エリアの座標を取得して前記再測量要否判定装置に送り、
前記再測量要否判定装置は、請求項1乃至5のいずれかに記載の再測量要否判定装置である、測量システム。
【請求項7】
飛行を制御する飛行制御部を有し、前記対象エリアの上空を飛行するドローンと、
前記対象エリアの再測量の要否を判定する再測量要否判定部
を有する飛行管理装置と、
を備え、
前記再測量要否判定部は、請求項1乃至5のいずれかに記載の再測量要否判定装置であり、
前記再測量要否判定部が再測量が必要と判定した場合に、前記飛行制御部がドローンの飛行を禁止する、または前記対象エリアの座標再測量の要求を表示部に表示させるドローンシステム。
【請求項8】
前記対象エリアの座標に基づいて前記対象エリア内に前記ドローンの飛行ルートを生成する飛行ルート生成部を備え、
複数の基準点の座標が、同一方向に同一距離だけ変化している場合は、前記再測量要否判定部は、前記飛行ルートの座標を、基準点の座標の変化と同一方向に同一距離だけ補正する、
請求項7記載のドローンシステム。
【請求項9】
前記対象エリアの座標を前記再測量要否判定装置に送る、座標測量装置を備える、請求項7又8記載のドローンシステム。
【請求項10】
対象エリアの座標を測量する際に記録した複数の基準点の座標が変化しているか否かを判定する、第1のステップと、
前記複数の基準点の座標が、同一方向に同一距離だけ変化しているか否かを判定し、同一方向に同一距離だけ変化している場合は、前記対象エリアの座標を、基準点の座標の変化と同一方向に同一距離だけ補正する、第2のステップと、
前記基準点の座標の変化に基づいて再測量の要否を判定する、第3のステップと、
を備え、
前記第3のステップにおいて、前記複数の基準点の座標が、同一方向に同一距離だけ変化している場合は、再測量不要と判定する、再測量要否判定方法。
【請求項11】
前記複数の基準点として、3以上の基準点を記録し、複数の基準点を結んで形成される多角形の内部に、前記対象エリアの全体が含まれる
請求項10記載の、再測量要否判定方法。
【請求項12】
前記複数の基準点として、前記対象エリアの座標から所定距離以内の基準点を記録する請求項10又は請求項11記載の、再測量要否判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、再測量要否判定装置、測量システム、ドローンシステム、および再測量要否判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にドローンと呼ばれる小型ヘリコプター(マルチコプター)の応用が進んでいる。その重要な応用分野の一つとして農地(圃場)への農薬や液肥などの散布が挙げられる(たとえば、特許文献1)。比較的狭い農地においては、有人の飛行機やヘリコプタではなくドローンの使用が適しているケースが多い。
【0003】
特許文献2には、所定時間後に非散布領域上空に機体が進入しかつ進入時の飛行速度および飛行高度が非散布領域上空で要求される飛行速度および飛行高度を下回ると判定した場合、加速及び上昇する無人ヘリコプタが開示されている。
【0004】
特許文献3には、散布区画ごとに最適な散布量、散布速度、散布高度からなる散布パターンを決定する農薬散布方法が開示されている。
【0005】
特許文献4には、風情報と散布作業における散布領域の許容偏差とに基づき、飛行体の飛行位置を制御する飛行制御方法が開示されている。
【0006】
ドローンを使用して、圃場への散布作業を行う場合、基準点を利用した相対測位により、圃場の測量を行う。基準点は、基本的に固定されているが、地殻変動などにより、既存の座標値と、現在の座標値との間にずれが生じうる。このため、同じ圃場であっても、後に散布作業を行う際に圃場の再測量が必要となる場合がある。
【0007】
特許文献5には、測量データを解析することにより、測量結果の適否を判断し、再測量が必要な場合に、迅速に再測量を開始する測量システムが開示されている。また、特許文献6には、三次元スキャナーやステレオ画像処理などの三次元計測機器を用い、変位前後の計測で三次元点群データを取得することにより、多数の計測点の変位を測定する三次元変位計測方法が開示されている。
【0008】
ここで、圃場の再測量には、圃場の周囲を歩行して測量しなければならないため、使用者の負担が大きい。一方、地殻変動が起こった場合、同じプレート上の基準点及び圃場の座標は、同一方向に同一距離だけ変化することがある。このとき、既存の座標値と、現在の座標値との間にはずれが生じているが、同じプレート上の基準点及び圃場の相対的な位置関係は変化しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許公開公報 特開2001-120151
【文献】特許公開公報 特開2006-121997
【文献】特許公開公報 特開2018-111429
【文献】特許公開公報 特開2019-8409
【文献】特許公開公報 特開平10-267656
【文献】特許公開公報 特開2007-170820
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
基準点の座標が変化した場合の、圃場の再測量の必要性の判断を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本願発明の一の観点に係る再測量要否判定装置は、対象エリアの座標を取得する際、または、ドローンの位置を測位する際に記録した基準点の座標からの前記基準点の現在の座標の変化状態に基づいて再測量の要否を判定する要否判定部、を備える。
前記対象エリアの座標を測量する際、または、ドローンの位置を測位する際に記録した基準点の識別情報と当該基準点の座標情報を記録する記録部を備え、前記要否判定部は、前記識別情報に基づいて新たに取得した前記基準点の座標情報が、前記記録部に記録された前記座標情報から所定値以上変化している場合に、再測量が必要と判定するものとしてよい。
【0012】
前記記録部が、前記対象エリアの座標を取得する際に記録した基準点として複数の基準点の識別情報を記録している場合に、前記複数の基準点の座標が、同一方向に同一距離だけ変化しているか否かを判定し、同一方向に同一距離だけ変化している場合は、前記対象エリアの座標を、基準点の座標の変化と同一方向に同一距離だけ補正する相対変化取得部をさらに備え、前記要否判定部は、前記複数の基準点の座標が、同一方向に同一距離だけ変化している場合は、再測量不要と判定するものとしてもよい。
【0013】
また、前記複数の基準点として、3以上の基準点を用い、前記複数の基準点を結んで形成される多角形の内部に、前記対象エリアの全体が含まれるものとしてもよい。あるいは、前記複数の基準点として、前記対象エリアの座標から所定距離以内の基準点を記録するものとしてよい。
前記要否判定部による判定結果を表示部に送信して、前記表示部を介して表示させる構成にしてよい。また、前記要否判定部は、前記表示部に送信する情報として、前記判定結果に加えて、基準点の座標変化量の情報を送信するものとしてよい。
【0014】
また、上記目的を達成するため、本願発明の別の観点に係る測量システムは、座標測量装置と、再測量要否判定装置とを備え、前記座標測量装置は、対象エリアの座標を取得するとともに、対象エリアの座標を前記再測量要否判定装置に送るものとしてよい。
【0015】
また、上記目的を達成するため、本願発明の別の観点に係るドローンシステムは、飛行を制御する飛行制御部を有し、前記対象エリアの上空を飛行するドローンと、前記対象エリアの再測量の要否を判定する再測量要否判定部とを有する飛行管理装置と、を備える。
【0016】
この発明のドローンシステムは、前記対象エリアの座標に基づいて前記対象エリア内に前記ドローンの飛行ルートを生成する飛行ルート生成部を備え、複数の基準点の座標が、同一方向に同一距離だけ変化している場合は、前記再測量要否判定部は、前記ドローンの座標を、基準点の座標の変化と同一方向に同一距離だけ補正するものとしてよい。
【0017】
また、前記対象エリアの座標を取得するとともに、対象エリアの座標を取得する際に記録した基準点の座標値を前記再測量要否判定装置に送る、座標測量装置を備えるものとしてよい。
【0018】
また、上記目的を達成するため、本願発明の別の観点に係る再測量要否判定方法は、対象エリアの座標を取得する際に記録した基準点の座標が変化しているか否かを判定する、第1のステップと前記基準点の座標の変化に基づいて再測量の要否を判定する、第2のステップと、を備える。
【0019】
前記対象エリアの座標を測量する際に記録した前記基準点の識別情報と当該基準点の座標情報を予め記録部に記録し、前記第2のステップでは、前記識別情報に基づいて新たに取得した前記基準点の座標情報が、前記記録部に記録された前記座標情報から所定値以上変化している場合に、再測量が必要と判定する、構成にしてよい。
【0020】
また、本願発明の別の観点に係る再測量要否判定方法は、対象エリアの座標を測量する際に記録した複数の基準点の座標が変化しているか否かを判定する、第1のステップと、前記複数の基準点の座標が、同一方向に同一距離だけ変化しているか否かを判定し、同一方向に同一距離だけ変化している場合は、前記対象エリアの座標を、基準点の座標の変化と同一方向に同一距離だけ補正する、第2のステップと、前記基準点の座標の変化に基づいて再測量の要否を判定する、第3のステップと、を備え、前記第3のステップにおいて、前記複数の基準点の座標が、同一方向に同一距離だけ変化している場合は、再測量不要と判定する構成にしてよい。
【0021】
また、この再測量要否判定方法は、前記複数の基準点として、3以上の基準点を用い、前記複数の基準点を結んで形成される多角形の内部に、前記対象エリアの全体が含まれる構成にしてよい。
【発明の効果】
【0022】
基準点の座標が変化した場合の、圃場の再測量の頻度を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本願発明に係るドローンシステムに含まれるドローンの平面図である。
図2】上記ドローンの正面図である。
図3】上記ドローンの右側面図である。
図4】上記ドローンの背面図である。
図5】上記ドローンの斜視図である。
図6】上記ドローンの飛行制御システムの全体概念図である。
図7】上記ドローンが有する機能ブロック図である。
図8】上記ドローンシステムが有するドローン、ユーザインターフェース装置、座標測量装置および飛行管理装置の機能ブロック図である。
図9】再測量要否測定方法の実施例を説明する模式図である。
図10】再測量要否測定方法の制御フロー図(1)である。
図11】再測量要否測定方法の制御フロー図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図を参照しながら、本願発明を実施するための形態について説明する。図はすべて例示である。以下の詳細な説明では、説明のために、開示された実施形態の完全な理解を促すために、ある特定の詳細について述べられている。しかしながら、実施形態は、これらの特定の詳細に限られない。また、図面を単純化するために、周知の構造および装置については概略的に示されている。
【0025】
まず、本願発明にかかるドローンの構成について説明する。本願明細書において、ドローンとは、動力手段(電力、原動機等)、操縦方式(無線であるか有線であるか、および、自律飛行型であるか手動操縦型であるか等)を問わず、複数の回転翼を有する飛行体全般を指すこととする。
【0026】
図1乃至図5に示すように、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4b(ローターとも呼ばれる)は、ドローン100を飛行させるための手段であり、飛行の安定性、機体サイズ、および、電力消費量のバランスを考慮し、8機(2段構成の回転翼が4セット)備えられている。各回転翼101は、ドローン100の筐体110からのび出たアームにより筐体110の四方に配置されている。すなわち、進行方向左後方に回転翼101-1a、101-1b、左前方に回転翼101-2a、101-2b、右後方に回転翼101-3a、101-3b、右前方に回転翼101-4a、101-4bがそれぞれ配置されている。なお、ドローン100は図1における紙面下向きを進行方向とする。
【0027】
回転翼101の各セットの外周には、略円筒形を形成する格子状のプロペラガード115-1,115-2,115-3,115-4が設けられ、回転翼101が異物と干渉しづらくなるようにしている。図2および図3に示されるように、プロペラガード115-1,115-2,115-3,115-4を支えるための放射状の部材は水平ではなくやぐら状の構造である。衝突時に当該部材が回転翼の外側に座屈することを促し、ローターと干渉することを防ぐためである。
【0028】
回転翼101の回転軸から下方には、それぞれ棒状の足107-1,107-2,107-3,107-4が伸び出ている。
【0029】
モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、102-4a、102-4bは、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4bを回転させる手段(典型的には電動機だが発動機等であってもよい)であり、一つの回転翼に対して1機設けられている。モーター102は、推進器の例である。1セット内の上下の回転翼(たとえば、101-1aと101-1b)、および、それらに対応するモーター(たとえば、102-1aと102-1b)は、ドローンの飛行の安定性等のために軸が同一直線上にあり、かつ、互いに反対方向に回転する。
【0030】
ノズル103-1、103-2、103-3、103-4は、散布物を下方に向けて散布するための手段であり4機備えられている。なお、本願明細書において、散布物とは、農薬、除草剤、液肥、殺虫剤、種、および、水などの圃場に散布される液体または粉体を一般的に指すこととする。
【0031】
タンク104は散布物を保管するためのタンクであり、重量バランスの観点からドローン100の重心に近い位置でかつ重心より低い位置に設けられている。ホース105は、タンク104と各ノズル103-1、103-2、103-3、103-4とを接続する手段であり、硬質の素材から成り、当該ノズルを支持する役割を兼ねていてもよい。ポンプ106は、散布物をノズルから吐出するための手段である。
【0032】
図6に本願発明に係るドローン100の飛行制御システムの全体概念図を示す。本図は模式図であって、縮尺は正確ではない。同図において、ドローン100、座標測量装置300、操作器401、基地局404およびサーバ405が移動体通信網400を介して互いに接続されている。これらの接続は、移動体通信網400に代えてWi-Fiによる無線通信を行ってもよいし、一部又は全部が有線接続されていてもよい。また、構成要素間において、移動体通信網400に代えて、又は加えて、直接接続する構成を有していてもよい。
【0033】
基地局404は、GPS等のGNSSの測位衛星410と通信を行い、また基準点情報提供システムを介して得られる圃場の周辺に位置する電子基準点の座標情報を取得して、取得した電子基準点の座標情報に基づいて、自己の基地局404の座標情報を確定させる。また、この際基地局404は、自己の座標情報を確定させるために用いた電子基準点の識別情報(ID)を記憶する。ドローン100、座標測量装置300は、GPS等のGNSSの測位衛星410と通信を行い、確定された基地局404の座標情報に基づいて、ドローン100、座標測量装置300の座標を取得する。ドローン100、座標測量装置300および基地局404が通信する測位衛星410は複数あってもよい。
【0034】
操作器401は、使用者の操作によりドローン100に指令を送信し、また、ドローン100から受信した情報(たとえば、位置、散布物の貯留量、電池残量、カメラ映像等)を表示するための手段であり、コンピューター・プログラムを稼働する一般的なタブレット端末等の携帯情報機器によって実現されてよい。操作器401は、ユーザインターフェース装置としての入力部および表示部を備える。本願発明に係るドローン100は自律飛行を行なうよう制御されるが、離陸や帰還などの基本操作時、および、緊急時にはマニュアル操作が行なえるようになっていてもよい。携帯情報機器に加えて、緊急停止専用の機能を有する非常用操作器(図示していない)を使用してもよい。非常用操作器は緊急時に迅速に対応が取れるよう大型の緊急停止ボタン等を備えた専用機器であってもよい。さらに、操作器401とは別に、操作器401に表示される情報の一部又は全部を表示可能な小型携帯端末、例えばスマートホンがシステムに含まれていてもよい。小型携帯端末は、例えば基地局404と接続されていて、基地局404を介してサーバ405からの情報等を受信可能である。
【0035】
圃場403は、ドローン100による散布の対象となる田圃や畑等である。実際には、圃場403の地形は複雑であり、事前に地形図が入手できない場合、あるいは、地形図と現場の状況が食い違っている場合がある。通常、圃場403は家屋、病院、学校、他の作物圃場、道路、鉄道等と隣接している。また、圃場403内に、建築物や電線等の侵入者が存在する場合もある。
【0036】
基地局404は、RTK-GNSS基地局として機能し、ドローン100の正確な位置を提供できるようになっている。また、Wi-Fi通信の親機機能等を提供する装置であってもよい。Wi-Fi通信の親機機能とRTK-GNSSの基地局が独立した装置であってもよい。また、基地局404は、3G、4G、およびLTE等の移動通信システムを用いて、サーバ405と互いに通信可能であってもよい。基地局404およびサーバ405は、営農クラウドを構成する。
【0037】
また、基地局404は、基準点との相対測位によって正確な座標を取得することができる。ここでの、基準点は、いわゆる電子基準点である。電子基準点は、GNSS連続観測点であり、約20km間隔で設置されている。複数の電子基準点の相対的な位置関係は、相対測位を行うことで、100万分の1の精度で得られる。この精度は、隣接する2つの電子基準点の相対的な位置関係を2cmの誤差で得られることを意味する。同様に、基地局404と電子基準点との相対的な位置関係も、100万分の1の精度で得られる。
【0038】
ここで、相対測位は、2点で、同時に4個以上の同じGNSS衛星を観測し、GNSS衛星からの電波信号が2点に到達する時間差を測定して、相対的な位置関係を求める方法である。
この基地局404の座標情報を用いて、RTK-GNSS測位を行うことで、ドローン100の位置を、例えば、数cmの誤差で提供できるようになっている。
【0039】
サーバ405は、典型的にはクラウドサービス上で運営されているコンピュータ群と関連ソフトウェアであり、操作器401と携帯電話回線等で無線接続されていてもよい。サーバ405は、ハードウェア装置により構成されていてもよい。サーバ405は、ドローン100が撮影した圃場403の画像を分析し、作物の生育状況を把握して、飛行ルートを決定するための処理を行ってよい。また、保存していた圃場403の地形情報等をドローン100に提供してよい。加えて、ドローン100の飛行および撮影映像の履歴を蓄積し、様々な分析処理を行ってもよい。
【0040】
小型携帯端末は例えばスマートホン等である。小型携帯端末の表示部には、ドローン100の運転に関し予測される動作の情報、より具体的にはドローン100が発着地点に帰還する予定時刻や、帰還時に使用者が行うべき作業の内容等の情報が適宜表示される。また、小型携帯端末からの入力に基づいて、ドローン100の動作を変更してもよい。
【0041】
通常、ドローン100は圃場403の外部にある発着地点から離陸し、圃場403に散布物を散布した後に、あるいは、散布物の補充や充電等が必要になった時に発着地点に帰還する。発着地点から目的の圃場403に至るまでの飛行経路(侵入経路)は、サーバ405等で事前に保存されていてもよいし、使用者が離陸開始前に入力してもよい。発着地点は、ドローン100に記憶されている座標により規定される仮想の地点であってもよいし、物理的な発着台があってもよい。
【0042】
図7に本願発明に係る散布用ドローンの実施例の制御機能を表したブロック図を示す。フライトコントローラー501は、ドローン全体の制御を司る構成要素であり、具体的にはCPU、メモリー、関連ソフトウェア等を含む組み込み型コンピュータであってよい。フライトコントローラー501は、操作器401から受信した入力情報、および、後述の各種センサーから得た入力情報に基づき、ESC(Electronic Speed Control)等の制御手段を介して、モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、102-4a、102-4bの回転数を制御することで、ドローン100の飛行を制御する。モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、102-4a、102-4bの実際の回転数はフライトコントローラー501にフィードバックされ、正常な回転が行なわれているかを監視できる構成になっている。あるいは、回転翼101に光学センサー等を設けて回転翼101の回転がフライトコントローラー501にフィードバックされる構成でもよい。
【0043】
フライトコントローラー501が使用するソフトウェアは、機能拡張・変更、問題修正等のために記憶媒体等を通じて、または、Wi-Fi通信やUSB等の通信手段を通じて書き換え可能になっている。この場合において、不正なソフトウェアによる書き換えが行なわれないように、暗号化、チェックサム、電子署名、ウィルスチェックソフト等による保護が行われている。また、フライトコントローラー501が制御に使用する計算処理の一部が、操作器401上、または、サーバ405上や他の場所に存在する別のコンピュータによって実行されてもよい。フライトコントローラー501は重要性が高いため、その構成要素の一部または全部が二重化されていてもよい。
【0044】
フライトコントローラー501は、通信機530を介して、さらに、移動体通信網400を介して操作器401とやり取りを行ない、必要な指令を操作器401から受信すると共に、必要な情報を操作器401に送信できる。この場合に、通信には暗号化を施し、傍受、成り済まし、機器の乗っ取り等の不正行為を防止できるようにしておいてもよい。基地局404は、移動体通信網400を介した通信機能に加えて、RTK-GNSS基地局の機能も備えている。RTK基地局404の信号とGPS等の測位衛星410からの信号を組み合わせることで、フライトコントローラー501により、ドローン100の絶対位置を数センチメートル程度の精度で測定可能となる。フライトコントローラー501は重要性が高いため、二重化・多重化されていてもよく、また、特定のGNSS衛星の障害に対応するため、冗長化されたそれぞれのフライトコントローラー501は別の衛星を使用するよう制御されていてもよい。
【0045】
6軸ジャイロセンサー505はドローン機体の互いに直交する3方向の加速度を測定する手段であり、さらに、加速度の積分により速度を計算する手段である。6軸ジャイロセンサー505は、上述の3方向におけるドローン機体の姿勢角の変化、すなわち角速度を測定する手段である。磁気センサー506は、地磁気の測定によりドローン機体の方向を測定する手段である。気圧センサー507は、気圧を測定する手段であり、間接的にドローンの高度も測定することもできる。レーザーセンサー508は、レーザー光の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段であり、IR(赤外線)レーザーであってもよい。ソナー509は、超音波等の音波の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段である。これらのセンサー類は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよい。また、機体の傾きを測定するためのジャイロセンサー(角速度センサー)、風力を測定するための風力センサーなどが追加されていてもよい。また、これらのセンサー類は、二重化または多重化されていてもよい。同一目的の複数のセンサーが存在する場合には、フライトコントローラー501はそのうちの一つのみを使用し、それが障害を起こした際には、代替のセンサーに切り替えて使用するようにしてもよい。あるいは、複数のセンサーを同時に使用し、それぞれの測定結果が一致しない場合には障害が発生したと見なすようにしてもよい。
【0046】
流量センサー510は散布物の流量を測定するための手段であり、タンク104からノズル103に至る経路の複数の場所に設けられている。液切れセンサー511は散布物の量が所定の量以下になったことを検知するセンサーである。
【0047】
生育診断カメラ512aは、圃場403を撮影し、生育診断のためのデータを取得する手段である。生育診断カメラ512aは例えばマルチスペクトルカメラであり、互いに波長の異なる複数の光線を受信する。当該複数の光線は、例えば赤色光(波長約650nm)と近赤外光(波長約774nm)である。また、生育診断カメラ512aは、可視光線を受光するカメラであってもよい。
【0048】
病理診断カメラ512bは、圃場403に生育する作物を撮影し、病理診断のためのデータを取得する手段である。病理診断カメラ512bは、例えば赤色光カメラである。赤色光カメラは、植物に含有されるクロロフィルの吸収スペクトルに対応する周波数帯域の光量を検出するカメラであり、例えば波長650nm付近の帯域の光量を検出する。病理診断カメラ512bは、赤色光と近赤外光の周波数帯域の光量を検出してもよい。また、病理診断カメラ512bとして、赤色光カメラおよびRGBカメラ等の可視光帯域の少なくとも3波長の光量を検出する可視光カメラの両方を備えていてもよい。なお、病理診断カメラ512bはマルチスペクトルカメラであってもよく、波長650nm乃至680nm付近の帯域の光量を検出するものとしてもよい。
【0049】
なお、生育診断カメラ512aおよび病理診断カメラ512bは、1個のハードウェア構成により実現されていてもよい。
【0050】
障害物検知カメラ513はドローン侵入者を検知するためのカメラであり、画像特性とレンズの向きが生育診断カメラ512aおよび病理診断カメラ512bとは異なるため、生育診断カメラ512aおよび病理診断カメラ512bとは別の機器である。スイッチ514はドローン100の使用者が様々な設定を行なうための手段である。障害物接触センサー515はドローン100、特に、そのローターやプロペラガード部分が電線、建築物、人体、立木、鳥、または、他のドローン等の侵入者に接触したことを検知するためのセンサーである。なお、障害物接触センサー515は、6軸ジャイロセンサー505で代用してもよい。カバーセンサー516は、ドローン100の操作パネルや内部保守用のカバーが開放状態であることを検知するセンサーである。薬剤注入口センサー517はタンク104の注入口が開放状態であることを検知するセンサーである。
【0051】
これらのセンサー類はドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。また、ドローン100外部の基地局404、操作器401、または、その他の場所にセンサーを設けて、読み取った情報をドローン100に送信してもよい。たとえば、基地局404に風力センサーを設け、風力・風向に関する情報を移動体通信網400経由又はWi-Fi通信経由でドローン100に送信するようにしてもよい。
【0052】
フライトコントローラー501はポンプ106に対して制御信号を送信し、吐出量の調整や吐出の停止を行なう。ポンプ106の現時点の状況(たとえば、回転数等)は、フライトコントローラー501にフィードバックされる構成となっている。
【0053】
LED107は、ドローン100の操作者に対して、ドローン100の状態を知らせるための表示手段である。LED107に替えて、または、それに加えて液晶ディスプレイ等の表示手段を使用してもよい。ブザーは、音声信号によりドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるための出力手段である。通信機530は、3G、4G、およびLTE等の移動体通信網400と接続されており、移動体通信網400を介して基地局404、サーバ405で構成される営農クラウド、操作器と通信可能に接続される。通信機に替えて、または、それに加えて、Wi‐Fi、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、NFC等の他の無線通信手段、または、USB接続などの有線通信手段を使用してもよい。スピーカー520は、録音した人声や合成音声等により、ドローン100の状態(特にエラー状態)を知らせる出力手段である。天候状態によっては飛行中のドローン100の視覚的表示が見にくいことがあるため、そのような場合には音声による状況伝達が有効である。警告灯521はドローン100の状態(特にエラー状態)を知らせるストロボライト等の表示手段である。これらの入出力手段は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。
【0054】
座標測量装置300は、RTK-GNSSの観測点としての機能を有する装置であり、基地局404または電子基準点と通信を行って、基地局404または電子基準点を基準として圃場403の座標情報を測量することができる。座標測量装置300は、使用者により保持して歩行することが可能な小型の装置であり、例えば棒状の装置である。座標測量装置300は、下端を地面についた状態で、使用者が直立して上部を保持できる程度の長さの、杖のような装置であってもよい。ある圃場403の座標情報を読み取るために使用可能な座標測量装置300の個数は、1個であっても複数であってもよい。複数の座標測量装置300により1か所の圃場403に関する座標情報を測量可能な構成によれば、複数の使用者がそれぞれ座標測量装置300を保持して圃場403を歩行することができるため、測量作業を短時間で完了することができる。
【0055】
また、座標測量装置300は、圃場における障害物の情報を測量することができる。障害物は、ドローン100が衝突する危険のある壁や法面、電柱、電線などや、薬剤散布又は監視を要さない各種物体を含む。
【0056】
座標測量装置300は、入力部301、座標検出部302、および送信部303を備える。
【0057】
入力部301は、座標測量装置300の本体部に設けられる構成であり、例えば使用者の押下を受け付けるボタンである。使用者は、座標測量装置300の下端の3次元座標を測量する際に、入力部301のボタンを押下する。
【0058】
また、入力部301は、入力される情報が圃場の外周に関する座標であるか、障害物の外周の座標であるかを区別して入力可能に構成してもよい。さらに、入力部301は、障害物の外周の座標を、障害物の種類と関連付けて入力可能に構成しても良い。
【0059】
座標検出部302は、基準点情報提供システムまたは基地局404と適宜通信を行って座標測量装置300の下端の3次元座標を、基地局404との相対測位により検出可能な機能部である。
【0060】
送信部303は、入力部301への入力に基づいて、当該入力時の座標測量装置300下端の3次元座標、及び当該3次元座標の測量の基準とした電子基準点の識別情報(ID)を、ネットワークNWを介して操作器401又は飛行管理装置600に送信する機能部である。送信部303は、当該3次元座標を、ポインティングされた時刻情報(または順番)とともに送信する。
【0061】
圃場403の座標情報を読み取る工程において、使用者は、座標測量装置300を持って圃場403を移動する。まず、当該圃場403の3次元座標を取得する。使用者は、圃場403の端点又は端辺上において入力部301によるポインティングを行う。次いで、使用者は、障害物の端点又は端辺上において入力部301によるポインティングを行う。
【0062】
ポインティングされて送信される圃場の端点又は端辺上の3次元座標(圃場外周の3次元座標)および障害物の端点又は端辺上の3次元座標(障害物の3次元座標)は、飛行管理装置600により受信される。また、ポインティングされる3次元座標は、操作器401の受信部により受信され、操作器401が備える表示部により表示されてもよい。
【0063】
●制御システムの概要
図8に示すように、ドローンシステム1000は、例えばドローン100、ユーザインターフェース装置200、座標測量装置300および飛行管理装置600を含むシステムであり、これらはネットワークNWを通じて互いに通信可能に接続されている。飛行管理装置600は、ハードウェア構成であってもよいし、サーバ405上に構成されていてもよい。ドローン100、ユーザインターフェース装置200、および飛行管理装置600は、無線で互いに接続されていてもよいし、一部又は全部が有線により接続されていてもよい。
【0064】
なお、図8に示した構成は例示であり、ある構成要素が別の構成要素を包含していてもよいし、各構成要素が有する機能部は、別の構成要素が有していてもよい。例えば、飛行管理装置600の機能の一部および全部がドローン100に搭載されていてもよい。
【0065】
ユーザインターフェース装置200は、作業者による入力部および表示部を備えていればよく、操作器401の機能により実現されてもよい。また、ユーザインターフェース装置200は、パーソナルコンピュータであってもよく、パーソナルコンピュータにインストールされたWebブラウザを介して、Web上のUIに情報を入力し、表示させてもよい。
【0066】
●ドローンの機能部
ドローン100は、情報処理を実行するためのCPU(Central Processing Unit)などの演算装置、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの記憶装置を備え、これによりソフトウェア資源として少なくとも、飛行制御部1001および散布制御部1002を有する。
【0067】
飛行制御部1001は、モーター102を稼働させ、ドローン100の飛行および離着陸を制御する機能部である。飛行制御部1001は、例えばフライトコントローラー501によって実現され、飛行高度、飛行速度、および飛行ルートを制御して、ドローン100を圃場403の上空に飛行させる。
【0068】
散布制御部1002は、ポンプ106を稼働させ、ノズル103-1、103-2、103-3、103-4からの散布物の散布を制御する機能部である。散布制御部1002は、例えばフライトコントローラー501によって実現される。
【0069】
●飛行管理装置の機能部
図8に示すように、飛行管理装置600は、少なくとも圃場403内においてドローン100が飛行する飛行ルートを決定する機能を有する装置である。飛行管理装置600は、情報処理を実行するためのCPU(Central Processing Unit)などの演算装置、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの記憶装置を備え、これによりソフトウェア資源として少なくとも、圃場情報取得部610、経路生成部620および再測量要否判定部650を有する。なお、飛行管理装置600は、ドローンシステム1000に含まれる構成要素(ハードウエア)のいずれかが有する機能部、すなわち飛行管理部として実現されていてもよい。飛行管理装置600は、更に、当該飛行ルートの各地点における高度、速度および散布流量の少なくともいずれかを決定する飛行態様決定部630を有するように構成しても良い。
【0070】
圃場情報取得部610は、ドローン100が飛行する圃場の境界の3次元座標を座標測量装置300から取得し、記録する機能部である。圃場の3次元座標は、航空写真又は農地バンクのデータを参照してもよいし、作業者により入力されるデータを使用してもよい。また、圃場の3次元座標は、RTK-GNSSの移動局の機能を有する装置により圃場の座標情報を測量し、当該測量結果を受信することで取得してもよい。
【0071】
経路生成部620は、少なくとも圃場内におけるドローン100の飛行ルートを生成する機能部である。経路生成部620は、ドローン100が圃場403内に薬剤を散布しながら飛行する際、当該薬剤が圃場に網羅的に行き渡るような飛行ルートを生成する。経路生成部620により生成された飛行ルートは、ユーザインターフェース装置200の表示部に表示されてもよい。またその際、飛行ルートは、圃場の画像に重ね合わされて表示されてもよい。経路生成部620は、経路生成対象エリアに複数種類の運転経路を生成可能であってもよい。この場合、飛行管理装置600は、経路選択部640をさらに備え、いずれの運転経路に決定するかを選択可能にしてもよい。
【0072】
再測量要否判定部650は、圃場の再測量の要否を判定する機能部である。再測量要否判定部650は、既存情報格納部651、既存情報読出部652、現在情報取得部653、座標変化取得部654、相対変化取得部655および要否判定部656を有する。
【0073】
既存情報格納部651は、圃場の3次元座標を取得する際に測量の基準点として利用した圃場の周囲に位置する、複数の電子基準点のIDおよび3次元座標を、例えば、インターネットなど任意好適な通信ネットワークを経て基地局404又は座標測量装置300から取得する。既存情報格納部651は、取得した、複数の電子基準点のIDおよび3次元座標を、既存情報として記録部に格納する。ここでは、電子基準点を単に基準点と称することもある。なお、圃場の3次元座標の測量基準点として利用した電子基準点のIDおよび3次元座標を、座標測量装置300が圃場403の測量の際に取得し、飛行管理装置600に送る構成にしてもよい。
ここで、記録部に格納されるIDおよび3次元座標を取得する電子基準点は、圃場の3次元座標を取得する際に測量の基準点として利用したものに限られない。インターネットなど任意好適な通信ネットワークを経て取得した、他の電子基準点のIDおよび3次元座標の情報を記録してもよい。また、圃場の上空を飛行するドローンの位置を測位する際に利用した基準点を用いてもよい。
【0074】
なお、再測量の要否の判定に用いる複数の基準点として、3以上の基準点を用い、基準点を結んで形成される多角形の内部に、ドローン100の座標を取得するのに用いる基地局404が配置されてもよい。また、基準点を結んで形成される多角形の内部に、圃場403の全体が含まれるようにしてもよい。また、複数の基準点として、圃場403の座標から所定距離以内の基準点を用いてもよい。
【0075】
電子基準点の座標値は、基本的に固定されているが、地殻変動があると、測量時に取得した既存の座標値と、現在の座標値との間にずれが生じる。このずれが、ドローン100が実際に飛行する際の、飛行位置のずれをもたらす。そして、実際の圃場から外側にはみ出して飛行することになるため安全上好ましくない。また、ドローンを圃場での薬剤散布時に用いる場合には、散布薬剤が圃場の外に漏れるリスクが高くなる。このため、既存の座標値と、現在の座標値との間のずれが大きくなった場合には、圃場の再測量を行うことが望ましい。しかし、地殻変動は不定期に発生し、また地殻変動による座標ずれの大きさも大小さまざまであるため、圃場の再測量の要否を使用者が判断することは困難であった。また、ドローンの飛行の度に圃場の再測量を行うのは、使用者の負担が大きい、という課題があった。
【0076】
一方、地殻変動が起こった場合であっても、同じ地殻プレート上の基準点及び圃場の座標は、同一方向に同一距離だけ変化することがある。このとき、既存の座標値と、現在の座標値との間にはずれが生じているが、同じプレート上の基準点及び圃場403の相対的な位置関係は変化しない。従って、電子基準点及び圃場403の座標を同一方向に同一距離だけ補正することで、圃場403とドローン100との間で、所望の位置関係を保つことができる。この場合、既存の座標値と、現在の座標値との間にはずれが生じていても、再測量は行わなくても座標ずれをシステム上で解消させることができる。再測量の頻度を下げることは、使用者の負担を大きく軽減する。
【0077】
再測量の要否の判定に3以上の基準点を用い、基準点を結んで形成される多角形の内部に、圃場403の全体が含まれるようにすると、再測量の要否をより精度よく判断できる。
【0078】
図9(A)乃至図9(C)は、電子基準点の座標値が変化した場合を模式的に示す図である。図9(A)乃至図9(C)では、圃場403が矩形に表されており、圃場の周囲に4つの電子基準点409-1,409-2,409-3, 409-4が配置されている例を示している。図9(A)は、複数の基準点の全てについて座標値が変化しない例を示し、図9(B)は、複数の基準点の全てについて座標値が同一方向に同一距離変化する例を示し、図9(C)は、複数の基準点の座標値の変化が、基準点ごとに異なる例を示している。
【0079】
再測量要否判定部650は、すでに測量されている圃場をドローン100が飛行する際に、再測量の要否を判定する。
【0080】
図10は、再測量要否判定方法の制御フロー図である。
再測量の要否の判定にあたり、先ず、既存情報読出部652が、記録部に格納されている、複数の基準点の既存情報を読み出して各基準点のIDおよび3次元座標を取得する。既存情報に含まれる3次元座標を既存座標と称する。また、現在情報取得部653が、基準点情報提供システムとの通信により、既存情報に含まれるIDに対応する基準点の現在の3次元座標を現在座標として取得する。
【0081】
次に、第1のステップとして、座標変化取得部654が、既存座標と現在座標とを比較する。既存情報として格納されている複数の基準点、好ましくは、全ての基準点について、既存座標と現在座標が一致しているか否かを判定する。図9(A)に示すように、既存座標と現在座標が一致している場合は、基準点の座標が変化していないと判定される。ここで、一致とは、完全に一致している状態に加えて、各座標の誤差が所定値未満である状態を含む。
【0082】
次に、第2のステップとして、相対変化取得部655が、既存情報として格納されている複数の基準点、好ましくは、全ての基準点について、既存座標に対して現在座標が、同一方向に同一距離だけ変化しているか否かを判定する。図9(B)に示すように、4つの電子基準点409-1a、409-2a、409-3a、409-4aが、409-1b、409-2b、409-3b、409-4bの既存座標と現在座標に同一方向に同一距離だけ変化している場合は、基準点間の相対位置が変化していないと判定される。この場合、圃場403aが、403bに、各基準点と同一方向に同一距離だけ移動したと考えられる。ここで、再測量の要否の判定に3以上の基準点を用い、基準点(例えば、409-1a、409-2a、409-3a、409-4a)を結んで形成される多角形の内部に、圃場403の全体が含まれるようにすると、再測量の要否をより精度よく判断できる。つまり、各基準点と圃場が同一の地盤プレート上に乗っており、同一方向に同一距離だけ変化している確率がより高くなる。
複数の基準点の座標が、同一方向に同一距離だけ変化している場合は、飛行管理装置600が備える経路生成部620は、飛行ルートの座標を、基準点の座標の変化と同一方向に同一距離だけ補正する。
【0083】
この場合は、既存情報格納部651の記録部に記録された圃場403の座標を、電子基準点409の位置の変化分だけ補正する。ここで、同一方向に同一距離だけ移動とは、完全に一致している状態に加えて、各座標の変化量の差分が所定値未満である状態を含む。
【0084】
次に、第3のステップとして、要否判定部656が、再測量の要否を判定する。要否判定部656は、複数の基準点409の座標が変化していない、又は、複数の基準点409の座標が、同一方向に同一距離だけ変化している場合は、再測量不要と判定し、それ以外の場合、すなわち、図9(C)に示すように、各基準点409の移動の方向、距離が一定でない場合は、再測量要と判定する。
【0085】
既存座標と現在座標が一致しているか否かの判定においては、例えば、基準点の座標を得る際に用いられる相対測位の精度や、圃場403の測量やドローン100の位置取得に用いられるRTK-GNSS測位の誤差の範囲内で、一致しているか否かを判定する構成にすることができる。既存座標に対して現在座標が、同一方向に同一距離だけ変化しているかの判定においても、同様である。
【0086】
次に、第4のステップとして、ユーザインターフェース装置200により再測量の要否判定結果を出力する。ユーザインターフェース装置200は、操作器401やパーソナルコンピュータで構成することができ、Webブラウザを介して再測量の要否判定結果を表示させてもよい。再測量の要否判定結果としてユーザインターフェース装置200に、再測量が必要である旨を表示しても良いし、これに加えて、既存座標と現在座標の誤差の大きさを表示しても良い。または、例えば、図9(C)に示すような、各基準点における既存座標と現在座標の変化状態を表示しても良い。なお、再測量が必要な場合、ドローン100が有する飛行制御部1001は、ドローン100の飛行を禁止できる。
【0087】
また、再測量の要否判定結果が、再測量が不要である場合であっても、例えば、図9(A)、(B)に示すような、各基準点における既存座標と現在座標の変化状態を表示しても良い。
【0088】
再測量の要否の判定の結果、再測量を行った場合は、この再測量の際に得られた基準点のIDおよび3次元座標を、新たに既存情報として、既存情報格納部651の記録部に格納する。
【0089】
この再測量の要否の判定は、経路生成部620が飛行ルートを生成する際に、自動的に行う構成にすることができる。また、使用者が操作器401を操作して、再測量の要否を判定してもよい。あるいは、座標測量装置300の操作により、再測量の要否の判定する構成にしてもよいし、通信ネットワークを経て接続されている、操作器401以外の、タブレット端末、スマートホン、パーソナルコンピュータなど任意好適な通信端末の操作により再測量の要否を判定する構成にしてもよい。また、再測量の要否の判定を行う時期は、ドローン100が飛行する際に限定されない。1日に1回、1月に1回など、ドローン100の飛行の有無によらず、定期的に再測量の要否の判定を行ってもよい。
【0090】
上述した実施例では、圃場403の測量を行う際に、複数の電子基準点の座標情報に基づいて、基地局又は測量点の座標を確定する例を説明したが、圃場403の測量に用いる電子基準点は、必ずしも複数である必要はなく、一つの電子基準点に基づいて基地局404や測量点の座標を確定させることも可能である。
【0091】
図11は、一つの電子基準点の座標情報に基づく再測量要否判定方法の制御フロー図である。
【0092】
上述した実施例と同様に、再測量の要否の判定にあたり、先ず、既存情報読出部652が、記録部に格納されている、複数の基準点の既存情報を読み出して各基準点のIDおよび3次元座標を取得する。また、現在情報取得部653が、基準点情報提供システムとの通信により、既存情報に含まれるIDに対応する基準点の現在の3次元座標を現在座標として取得する。
【0093】
次に、第1のステップとして、座標変化取得部654が、既存座標と現在座標とを比較する。既存情報として格納されている全ての基準点について、既存座標と現在座標が一致しているか否かを判定する。既存座標と現在座標が一致している場合は、基準点の座標が変化していないと判定される。ここで、一致とは、完全に一致している状態に加えて、各座標の誤差が所定値未満である状態を含む。
【0094】
次に、第2のステップとして、要否判定部656が、再測量の要否を判定する。要否判定部656は、複数の基準点409の座標が変化していない場合は、再測量不要と判定し、それ以外の場合、すなわち、基準点409が移動している場合は、再測量要と判定する。
【0095】
既存座標と現在座標が一致しているか否かの判定においては、例えば、基準点の座標を得る際に用いられる相対測位の精度や、圃場403の測量やドローン100の位置取得に用いられるRTK-GNSS測位の誤差の範囲内で、一致しているか否かを判定する構成にすることができる。
次に、第3ステップとして、前実施例と同様にユーザインターフェース装置200により再測量の要否判定結果を出力する。
【0096】
(本願発明による技術的に顕著な効果)
本願発明にかかる再測量要否判定装置、測量システム、ドローンシステム、および再測量要否判定方法においては、基準点の座標が変化した場合の、圃場の再測量の必要性を判断することができる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11