(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】サウナハット
(51)【国際特許分類】
A61H 33/06 20060101AFI20240104BHJP
A42B 1/019 20210101ALI20240104BHJP
A42B 1/04 20210101ALI20240104BHJP
A42B 1/12 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
A61H33/06 U
A42B1/019 D
A42B1/019 N
A42B1/019 Z
A42B1/04 R
A42B1/04 Z
A42B1/12 A
(21)【出願番号】P 2023106546
(22)【出願日】2023-06-28
【審査請求日】2023-06-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523248024
【氏名又は名称】株式会社K設計
(74)【代理人】
【識別番号】100147393
【氏名又は名称】堀江 一基
(72)【発明者】
【氏名】桑原 伊央里
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-340419(JP,A)
【文献】登録実用新案第3208980(JP,U)
【文献】特開2017-020151(JP,A)
【文献】特開2000-008217(JP,A)
【文献】特表2000-502760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B1/00-1/248
A42C1/00
A61H33/06
A61H33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サウナで頭部に着用する帽体を有するサウナハットであって、
前記帽体の外側表面の少なくとも一部を構成する最外層と、
前記帽体の内側表面の少なくとも一部を構成する最内層と、
前記最外層と前記最内層の間に配置される発泡樹脂層と、
前記発泡樹脂層における前記最外層
側の表面を被覆する金属層と、を有
し、
前記最内層は、化学繊維によるメッシュ生地で構成され、前記最内層には、保冷剤、保冷バッグまたは氷を収納する内ポケットが当該最内層のみにより形成されているサウナハット。
【請求項2】
前記最外層は、タオル生地、フェルト生地およびコットン生地のうちいずれかを含む請求項1に記載のサウナハット。
【請求項3】
前記発泡樹脂層は、ポリオレフィン、ポリスチレンおよびポリウレタンのうち少なくとも1つである請求項1に記載のサウナハット。
【請求項4】
前記金属層は、蒸着アルミニウム層である請求項1に記載のサウナハット。
【請求項5】
前記内ポケットは、前記内ポケットの開口縁を前記内ポケット内部へ折り返した返しが形成されている請求項1に記載のサウナハット。
【請求項6】
前記内ポケットは、前記最内層における頂部付近に配置される仕切り部と、前記仕切り部の両側に配置される互いに独立した第1および第2開口を有する請求項
5に記載のサウナハット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サウナルーム内で頭部に着用するサウナハットに関する。
【背景技術】
【0002】
サウナは、蒸気などにより所定の比較的高い温度(たとえば摂氏70度~110度)に保たれるサウナルームに入る温浴法の一種であり、疲労回復や代謝向上、リラックス効果をもたらすものとして注目されている。サウナルーム内では、入浴者の頭部だけが過度に温められることを防止するために、頭部に着用するサウナハットを用いる場合がある。
【0003】
従来のサウナハットとしては、頭部に直接温度の高い蒸気などが当たり続けることを防止するために、断熱性の高いウールフェルトなどの生地を用いたものがある。また、より断熱効果を高めたサウナハットとして、布状の繊維にアルミ薄をコーティングした生地を用いてゴム輪などの縁を形成したものも提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、布状の繊維にアルミ薄をコーティングした従来のサウナハットはアルミ薄が露出しており、公衆浴場等での着用にはファッション性の観点で課題があり、また、アルミ薄表面での光の反射が視界に入ることは、リラックス空間の形成においては好ましくない。また、布状の繊維にアルミ薄をコーティングした生地は、コスト面や断熱性の観点でも改善の余地がある。
【0006】
本発明は、断熱性に優れており、かつデザインの自由度を有するサウナハットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るサウナハットは、
サウナで頭部に着用する帽体を有するサウナハットであって、
前記帽体の外側表面の少なくとも一部を構成する最外層と、
前記帽体の内側表面の少なくとも一部を構成する最内層と、
前記最外層と前記最内層の間に配置される発泡樹脂層と、
前記発泡樹脂層における前記最外層側および前記最内層側の少なくとも一方の表面を被覆する金属層と、を有する。
【0008】
本発明に係るサウナハットは、発泡樹脂層と発泡樹脂層の表面を被覆する金属層を有する。金属層は輻射による伝熱を効果的に防止するとともに、発泡樹脂層は熱伝導による伝熱を効果的に防止する。したがって、このような発泡樹脂層と金属層とを有するサウナハットは、断熱性に優れている。特に発泡樹脂層は、内部の空隙が空気などの流体を保持する効果が高く、布状の繊維に比べても優れた断熱性を奏するとともに、蒸着等により金属層を表面に形成しやすく、比較的安価である。なお、発泡樹脂層と金属層との間に、PETなどの非発泡性の樹脂層が挟まれていても構わない。
【0009】
また、本発明に係るサウナハットは、帽体の外側表面を構成する最外層により金属層および発泡樹脂層がカバーされている点でも、金属層表面の対流が抑えられ、外部からの熱気を効果的に遮断できる。また、最外層が金属層および発泡樹脂層を覆うため、最外層として比較的デザインの自由度が高い布地などを採用することが可能であり、ファッション性を容易に高めることができる。また、帽体の内側表面を構成する最内層を有することにより、汗などを吸収した発泡樹脂層などが直接装着者の頭部に触れることを防止し、肌触りを改善できる。
【0010】
また、たとえば、前記最外層は、タオル生地、フェルト生地およびコットン生地のいずれかを含んでいてもよい。
【0011】
最外層としては、たとえば断熱性が良好で、デザインの自由度の高いタオル生地やフェルト生地、コットンなどを採用できる。
【0012】
また、たとえば、前記最内層は、化学繊維によるメッシュ生地で構成されてもよい。
【0013】
最内層としては、たとえば、発汗しても良好な肌触りを保つことができて、適度な通気性のある化学繊維によるメッシュ生地を採用することができる。
【0014】
また、たとえば、前記発泡樹脂層は、ポリオレフィン、ポリスチレンおよびポリウレタンのうち少なくとも1つであってもよい。
【0015】
発泡樹脂層を、これらの樹脂で構成することにより、断熱性の優れたサウナハットを、比較的安価に実現できる。とくに、発泡樹脂層をポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィンとすることにより、発泡樹脂層の耐熱性を高めることができる。発泡樹脂層の厚みは特に限定されないが、たとえば0.1~10mm程度とすることができ、0.5~5mm程度とすることが特に好ましい。
【0016】
また、たとえば、前記金属層は、蒸着アルミニウム層であってもよい。
【0017】
金属層としては特に限定されないが、蒸着アルミニウム層とすることにより、均一性が高く比較的安価で軽量な金属層を実現できる。
【0018】
また、たとえば、前記金属層は、前記発泡樹脂層における前記最外層側の表面を被覆してもよい。
【0019】
このようなサウナハットは、金属層の両側で空気の流れが抑制されるため、高い断熱効果を奏する。さらに、金属層の内側には薄くても断熱効果の高い発泡樹脂層を配置し、金属層の外側にはデザインの自由度の高い生地を用いることで、機能性とファッション性を両立できる。
【0020】
また、たとえば、前記最内層には、返しつきまたはフタつきの内ポケットが形成されていてもよい。
【0021】
このような内ポケットを有するサウナハットは、内ポケットに保冷バッグや氷などを入れた状態で頭に被ることで、サウナルーム内での頭部の温度上昇をより効果的に防止することが可能である。また、返しやフタは、内ポケットに収納される保冷バッグや氷が内ポケットから滑り出る問題を防止する。また、発泡樹脂層や金属層および最外層による断熱効果により、保冷効果をより長時間維持できる。
【0022】
また、たとえば、前記内ポケットは、前記最内層における頂部付近に配置される仕切り部と、前記仕切り部の両側に配置される互いに独立した第1および第2開口を有してもよい。
【0023】
このような内ポケットを有するサウナハットは、内ポケットに保冷バッグや氷などを入れた状態で頭に被ることで、頭頂部近傍の広い範囲を効果的に冷却することができ、頭部の温度上昇をさらに効果的に防止することが可能である。また、小さく分割された内ポケットに保冷バッグや氷などを入れることで、着用時の快適性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るサウナハットの外観図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すサウナハットの内側の状態を示す底面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すサウナハットの頂部近傍の部分断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すサウナハットを構成する各層の拡大模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施形態
図1は、本発明の一実施形態に係るサウナハット10の外観図である。サウナハット10は、サウナで頭部に着用する帽体12を有する。サウナハット10は、サウナルーム内においてサウナの入浴者が頭部に着用することにより、入浴者の頭部が過度に温められる問題を防止する。
【0026】
図1に示すように、サウナハット10の帽体12は、下方に向けて若干末広がりとなる、いわゆる「チューリップハット」と呼ばれる形状である。ただし、サウナハット10の形状としては、チューリップハット型のみには限定されず、バケットハット型、クロッシュ型、キャップ型その他の形状であってもかまわない。
【0027】
図2は、
図1に示すサウナハット10の分解斜視図である。サウナハット10の帽体12は、最外層20と、中間層60と、最内層30とを有する多層構造であり、後述するように、中間層60は、さらに発泡樹脂層40と金属層50とを有する(
図5参照)。最外層20、中間層60および最内層30は、それぞれ略帽体状の形状を有する独立した布体として形成されたのち、たとえば縫製されることにより互いに連結され、サウナハット10の帽体12を構成する。ただし、サウナハット10における最外層20、中間層60および最内層30の連結方法は縫製のみには限定されず、接着や圧着などの他の方法により連結されていてもよい。
【0028】
図2に示す最外層20は、帽体12の外側表面12aの少なくとも一部(サウナハット10では外側表面12aの全体)を構成する。
図1に示すように、最外層20は、入浴者がサウナハット10を着用した状態において、周りの人から視認できる部分であり、サウナハット10のファッション性において重要な部分である。最外層20における外側の頂部には、乾燥時や保管時においてサウナハット10を吊るすための引っ掛け部22が形成されている。
【0029】
最外層20の材質は、特に限定されないが、デザインの自由度や断熱性の観点から、最外層20がタオル生地、フェルト生地またはコットン生地などを含むことが好ましく、タオル生地またはフェルト生地で構成されることがより好ましい。最外層20は、断熱性を高める観点から、後述する中間層60における発泡樹脂層40および金属層50より厚いことが好ましい。また、最外層20を、ある程度の厚みのあるタオル生地またはフェルト生地で構成することにより、金属層50の外側表面近傍での対流を効果的に抑制し、断熱効果を高めることができる。最外層の厚みは特に限定されないが、たとえば、1~30mm程度とすることができる。
【0030】
図2に示す最内層30は、サウナハット10の底面図である
図3に示すように、帽体12の内側表面12bの少なくとも一部(サウナハット10では内側表面12bのうち縁部分を除く残りの部分)を構成する。最内層30は、サウナハット10の着用者の頭部に対して直接接触する部分であり、サウナハット10の装着感および肌触りなどにおいて重要な部分である。
【0031】
最内層30の材質は、特に限定されないが、べたつきを防止して心地良い肌触りを実現する観点から、たとえばナイロンやポリエステルなどの化学繊維によるメッシュ(網目)生地で構成されることが好ましい。最内層30の厚みは特に限定されないが、たとえば、0.1~3mm程度とすることができる。また、
図2に示すように、最内層30には、内ポケット34が形成されていることが好ましく、内ポケット34に保冷バッグや氷などを入れた状態でサウナハット10を頭に被ることで、サウナルーム内での頭部の温度上昇をより効果的に防止することが可能である。
【0032】
内ポケット34の形状および配置は特に限定されないが、サウナハット10の内ポケット34は、
図3に示すように最内層30における頂部32付近に配置される仕切り部34cと、仕切り部34cの両側に配置される互いに独立した第1開口34aおよび第2開口34bを有する。内ポケット34に仕切り部34cを設けることにより、保冷剤や氷等を内ポケット34の異なる位置に分散して配置しやすくなり、保冷剤や氷等による頭部の冷却効果を高めることができる。
【0033】
また、内ポケット34付近の断面図である
図4に示すように、内ポケット34は、返し34dつきまたはフタつきであることが、内ポケット34に収納される保冷バッグや氷が第1または第2開口34a、34bから滑り出る問題を防止する観点から好ましい。また、サウナハット10では、先述した最外層20および後述する中間層60の断熱効果により、内ポケット34内の保冷剤や氷等の冷却効果を、長時間持続させることができる。
【0034】
図2に示す中間層60は、帽体12における最外層20と最内層30との間に挟まれており、
図1に示す帽体12の外側表面12aにも、
図3に示す帽体12の内側表面12bにも露出しない。
図5は、帽体12の断面の一部分を拡大した拡大断面図である。
図5に示すように、最外層20と最内層30の間に配置される中間層60は、発泡樹脂層40と金属層50とを有する。
【0035】
図5に示す中間層60の発泡樹脂層40は、最外層20と最内層30との間に配置される。発泡樹脂層40を構成する発泡樹脂としては、特に限定されないが、たとえばポリオレフィン、ポリスチレンおよびポリウレタンなどが挙げられる。特に、発泡樹脂層40は、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィンとすることが、発泡樹脂層40の耐熱性を高める観点から好ましい。
【0036】
発泡樹脂層40の厚みは特に限定されないが、たとえば0.1~10mm程度とすることができ、0.5~5mm程度とすることが特に好ましい。発泡樹脂層40の厚みは最外層20の厚みより薄くてもよい。発泡樹脂層40は、熱伝導率の低い空気を保持する細かく分割された部屋を有し、対流および熱伝導による伝熱を効果的に防止し、薄くても高い断熱性を奏する。
【0037】
図5に示す金属層50は、発泡樹脂層40における最外層20側の表面を被覆する。金属層50の材質としては、特に限定されないが、蒸着アルミニウム層であることが、軽量かつ化学的に安定であり、また、低コストであるため好ましい。ただし、金属層50は、銅やニッケルなどのアルミニウム以外の金属の膜であってもよく、スパッタリング膜やメッキ層のように蒸着以外の方法で形成された層であってもかまわない。
【0038】
金属層50は、熱伝導率自体は樹脂に比べて高い傾向があるが、輻射による伝熱を効果的に防止することが可能である。金属層50の厚みは特に限定されないが、たとえば10nm以上1000nm未満とすることができる。金属層50は、薄くても輻射による伝熱を効果的に防止することが可能であるから、金属層50の厚みは、発泡樹脂層40の厚みより薄いことが好ましい。
【0039】
図2および
図5に示すように、サウナハット10では、発泡樹脂層40における最外層20側の表面を金属層50が被覆し、発泡樹脂層40と金属層50が一体となって中間層60を構成することにより、金属層50と発泡樹脂層40の性質の異なる断熱効果の相乗効果が期待できる。また、サウナハット10では、金属層50の外側に最外層20を配置し、金属層50の内側に発泡樹脂層40を配置することにより、金属層50の両側で空気の流れが抑制されるため、高い断熱効果を奏する。さらに、金属層50の内側には薄くても断熱効果の高い発泡樹脂層40を配置し、金属層50の外側にはデザインの自由度の高い生地を用いることで、機能性とファッション性を両立できる。
【0040】
中間層60の厚みは、最外層20の厚みより薄くすることが可能であり、これにより帽体12が厚くなりすぎることを効果的に防止することができる。なお、発泡樹脂層40と金属層50との間には、PETなどの非発泡性の樹脂層が挟まれていても構わない。
【0041】
また、サウナハット10では、発泡樹脂層40が直接肌に触れないように、発泡樹脂層40の内側に最内層30を配置することにより、べたつきを防止して心地良い肌触りを実現する。
【0042】
以上、実施形態を挙げて本発明に係るサウナハットを説明してきたが、本発明の技術的範囲は上述した実施形態のみには限定されず、他の実施形態や変形例を数多く有することは言うまでもない。例えば、サウナハット10は、
図5に示すような4層構造のみには限定されず、最外層20や最内層30を多層構造としてもよい。また、中間層60では、金属層50が発泡樹脂層40の最内層30側の表面を覆っていてもよく、金属層50が発泡樹脂層40の最外層20側および最内層30側の両側の表面を覆っていてもよい。また、最外層20および最内層30の材質も上述したもののみには限定されず、たとえば最外層20がメッシュ生地を含んでいてもよく、最内層30がタオル生地を含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10…サウナハット
12…帽体
12a…外側表面
12b…内側表面
20…最外層
22…引っ掛け部
30…最内層
32…頂部
34…内ポケット
34a…第1開口
34b…第2開口
34c…仕切り部
34d…かえし
40…発泡樹脂層
50…金属層
60…中間層
【要約】
【課題】断熱性に優れており、かつデザインの自由度を有するサウナハットを提供する。
【解決手段】サウナで頭部に着用する帽体を有するサウナハットであって、前記帽体の外側表面の少なくとも一部を構成する最外層と、前記帽体の内側表面の少なくとも一部を構成する最内層と、前記最外層と前記最内層の間に配置される発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層における前記最外層側および前記最内層側の少なくとも一方の表面を被覆する金属層と、を有する。
【選択図】
図2