IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デクセリアルズ株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】接続構造体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20240104BHJP
   H01R 11/01 20060101ALI20240104BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20240104BHJP
   H05K 3/32 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
H01L21/60 321E
H01R11/01 501C
H01R43/00 H
H05K3/32 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017224235
(22)【出願日】2017-11-22
(65)【公開番号】P2018093194
(43)【公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-11-19
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2016233714
(32)【優先日】2016-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 雄太
【合議体】
【審判長】山田 正文
【審判官】畑中 博幸
【審判官】岩間 直純
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-066573(JP,A)
【文献】特開昭53-033390(JP,A)
【文献】特開平11-112119(JP,A)
【文献】特開2015-232660(JP,A)
【文献】特開平9-320345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端子が放射状に並列した端子パターンを有する第1の電子部品と、第1の電子部品の端子パターンに対応した端子パターンを有する第2の電子部品とを、略球形の導電粒子を含有し、異方性導電接続の際に樹脂流動し、硬化可能な異方性導電接着フィルムを用いて異方性導電接続する接続構造体の製造方法であって、
異方性導電接着フィルムが、平面視で絶縁性樹脂層に導電粒子が複数の同心円(同心楕円を含む)上に配置され、かつ第1の同心円上の第1の導電粒子と円の中心とを結ぶ直線を第1の直線とし、第1の同心円に隣接する第2の同心円上の導電粒子であって、第1の導電粒子に最近接した第2の導電粒子と円の中心とを結ぶ直線を第2の直線とした場合に第1の直線と第2の直線が一致しないように導電粒子が配置されている多重円領域を有する接続構造体の製造方法。
【請求項2】
異方性導電接着フィルムが、平面視で絶縁性樹脂層に導電粒子が複数の同心円上に所定間隔で配置され、かつ第1の同心円上の第1の導電粒子と円の中心とを結ぶ直線を第1の直線とし、第1の同心円に隣接する第2の同心円上の導電粒子であって、第1の導電粒子に最近接した第2の導電粒子と円の中心とを結ぶ直線を第2の直線とし、第2の同心円に隣接する第3の同心円上の導電粒子であって、第2の導電粒子に最近接した第3の導電粒子と円の中心とを結ぶ直線を第3の直線とした場合に、第2の直線と第1の直線とがなす角度と、第3の直線と第2の直線とがなす角度とが等しい請求項記載の接続構造体の製造方法。
【請求項3】
異方性導電接着フィルムにおいて、複数の多重円領域が隙間無く配置されている請求項又は記載の接続構造体の製造方法。
【請求項4】
絶縁性樹脂層の最低溶融粘度が3000~15000Pa・sである請求項のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
絶縁性樹脂層に略球形の導電粒子が配置され、異方性導電接続の際に樹脂流動し、硬化可能な異方性導電接着フィルムであって、
平面視で絶縁性樹脂層に導電粒子が複数の同心円上に配置され、かつ第1の同心円上の第1の導電粒子と円の中心とを結ぶ直線を第1の直線とし、第1の同心円に隣接する第2の同心円上の導電粒子であって、第1の導電粒子に最近接した第2の導電粒子と円の中心とを結ぶ直線を第2の直線とした場合に第1の直線と第2の直線が一致しないように導電粒子が配置されている多重円領域を有する異方性導電接着フィルム。
【請求項6】
平面視で絶縁性樹脂層に導電粒子が複数の同心円上に所定間隔で配置され、かつ第1の同心円上の第1の導電粒子と円の中心とを結ぶ直線を第1の直線とし、第1の同心円に隣接する第2の同心円上の導電粒子であって、第1の導電粒子に最近接した第2の導電粒子と円の中心とを結ぶ直線を第2の直線とし、第2の同心円に隣接する第3の同心円上の導電粒子であって、第2の導電粒子に最近接した第3の導電粒子と円の中心とを結ぶ直線を第3の直線とした場合に、第2の直線と第1の直線とがなす角度と、第3の直線と第2の直線とがなす角度とが等しい請求項記載の異方性導電接着フィルム。
【請求項7】
複数の多重円領域が隙間無く配置されている請求項又は記載の異方性導電接着フィルム。
【請求項8】
絶縁性樹脂層の最低溶融粘度が3000~15000Pa・sである請求項のいずれかに記載の異方性導電接着フィルム。
【請求項9】
請求項のいずれかに記載の異方性導電接着フィルムを帯状に裁断することにより得られる帯状の異方性導電接着フィルムであって、湾曲した導電粒子の配列を有する異方性導電接着フィルム。
【請求項10】
第1の電子部品と第2の電子部品とが、請求項のいずれかに記載の異方性導電接着フィルムを介して異方性導電接続されてなる接続構造体。
【請求項11】
第1の電子部品と第2の電子部品とを、請求項のいずれかに記載の異方性導電接着フィルムを介して異方性導電接続する接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性導電フィルムを用いた接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ICチップなどの電子部品では端子のファインピッチ化が進んでいる。また、電子部品の軽量化に伴い、比較的比重の軽いFPC(Flexible printed circuits)やプラスチック基板が多用されている。また、電子部品の実装には、導電粒子を絶縁性樹脂層に分散させた異方性導電フィルムが広く使用されている。
【0003】
しかしながら、FPCやプラスチック基板を用いると、環境温度が熱膨張に影響するために異方性導電接続する前の同一電子部品間においても端子レイアウトが微細に異なってくるといった問題がある。また、電子部品を実装した製品を量産化するために異方性導電接続を連続して行う場合に、圧着温度が個々の接続で変動すると、圧着温度が熱膨張に影響するために端子の位置が予め定められた位置からずれやすくなるという問題もある。製造ロットの違う電子部品間では端子が設けられた基板等の材料の線膨張率が異なる場合があるので、同様の問題が発生する。このように、電子部品の熱膨張に関係した問題は、接続工程の前後に存在している。
【0004】
これに対し、複数の端子が並列した端子パターンにおいて、個々の端子を、端子パターン外の一点を通る放射状の直線に沿わせたものとすることが提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【0005】
一方、複数の端子が平行に並列した端子パターン同士を異方性導電接続する場合に、端子がファインピッチ化した場合にも各端子で十分な数の導電粒子が捕捉されるように、異方性導電フィルムにおける導電粒子を所定の配列方向と粒子間距離で格子状に配列させることが提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-112119号公報
【文献】特開2007-19550号公報
【文献】特開2015-232660号公報
【文献】特開2016-66573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、第1、第2の電子部品の端子パターンを、特許文献1、特許文献2、特許文献3に記載のように、複数の端子が放射状に並列したものとし、この端子パターン同士を、異方性導電フィルムを用いて接続すると、個々の端子の傾きにより、導電粒子を十分に捕捉できない端子が生じてしまう。また、端子毎の捕捉状態が著しく異なることで、接続の良否判定を行うのに時間を要するなど、生産性の問題が生じる場合もある。
【0008】
例えば、図9に示したように、第1の電子部品30Aの端子パターン21Aが、複数の端子20Aが放射状に並列した端子パターン(即ち、端子パターン21Aの外の一点Pを中心とする放射状の直線Rに個々の端子20Aが沿っている端子パターン)を有し、第2の電子部品30Bが第1の電子部品の端子パターン21Aと一致する端子パターンを有し、これらを、絶縁性樹脂層2に導電粒子1が正方格子に配列している異方性導電フィルム10xにより接続する場合、端子パターン21Aと端子パターン21Bの有効接続領域の中には導電粒子1を全く捕捉できない端子20a、20bが生じる。図中、かかる端子20a、20bに斜めハッチングを付した。また、第1の電子部品30Aと第2の電子部品30Bの対向する端子間に捕捉される導電粒子1を黒く塗りつぶした。なお、図において導電粒子と端子の重複部分が導電粒子の面積の1/2以下の場合、その導電粒子は捕捉されないとして黒く塗りつぶしてはいない。
また、図10に示したように、同様の場合において、異方性導電フィルム10yの導電粒子1が6方格子に配列しているときも、端子パターン21Aを構成する端子の中に導電粒子1を全く捕捉できない端子20cが生じる。
【0009】
このような問題に対し、本発明は、複数の端子が放射状に並列した端子パターンを有する第1の電子部品と、第1の電子部品の端子パターンに対応した端子パターンを有する第2の電子部品とを異方性導電フィルムを用いて異方性導電接続して得られる接続構造体において、導電粒子が捕捉されない端子を低減ないし解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、複数の端子が放射状に並列した端子パターンを有する電子部品同士を異方性導電接続する場合に、端子の有効接続面積やピッチに応じて異方性導電フィルムの導電粒子の個数密度を変え、好ましくは導電粒子の配列状態を規定すると、接続構造体において導電粒子を捕捉していない端子を低減ないし解消できることを見いだし、本発明を想到した。
【0011】
即ち、第1の本発明は、複数の端子が放射状に並列した端子パターンを有する第1の電子部品と、第1の電子部品の端子パターンに対応した端子パターンを有する第2の電子部品とを異方性導電フィルムを用いて異方性導電接続する接続構造体の製造方法であって、
端子1個当たりの有効接続面積を3000μm2以上とし、
異方性導電フィルムにおける導電粒子の個数密度を2000個/mm2以上20000個/mm2以下とする接続構造体の製造方法である。
【0012】
第2の本発明は、複数の端子が放射状に並列した端子パターンを有する第1の電子部品と、第1の電子部品の端子パターンに対応した端子パターンを有する第2の電子部品とを異方性導電フィルムを用いて異方性導電接続する接続構造体の製造方法であって、
異方性導電フィルムが、平面視で絶縁性樹脂層に導電粒子が格子状に配列した異方性導電フィルムであり、格子状の配列における配列ピッチ及び配列方向が、第1の電子部品と第2の電子部品の有効接続領域において各端子に導電粒子を3個以上捕捉させるものとなる接続構造体の製造方法である。
【0013】
第3の本発明は、複数の端子が放射状に並列した端子パターンを有する第1の電子部品と、第1の電子部品の端子パターンに対応した端子パターンを有する第2の電子部品とを異方性導電フィルムを用いて異方性導電接続する接続構造体の製造方法であって、
異方性導電フィルムが、平面視で絶縁性樹脂層に導電粒子が複数の同心円(同心楕円を含む)上に所定間隔で配置され、かつ第1の同心円上の第1の導電粒子と円の中心とを結ぶ直線を第1の直線とし、第1の同心円に隣接する第2の同心円上の導電粒子であって、第1の導電粒子に最近接した第2の導電粒子と円の中心とを結ぶ直線を第2の直線とした場合に第1の直線と第2の直線が一致しないように導電粒子が配置されている多重円領域を有する接続構造体の製造方法である。
【0014】
また本発明は、第2の接続構造体の製造方法に使用する異方性導電フィルムとして、複数の端子が放射状に並列した端子パターンを有する第1の電子部品と、第1の電子部品の端子パターンに対応した端子パターンを有する第2の電子部品とを異方性導電接続するために使用する、導電粒子が格子状に配列した異方性導電フィルムであって、
異方性導電フィルムにおいて導電粒子の配列ピッチが最も小さい配列軸又は次に小さい配列軸と異方性導電フィルムの短手方向とがなす角度をγとし、
端子パターンを構成する各端子の長手方向に伸びた中心軸と端子パターンの短手方向とがなす角度の最大値をαmaxとした場合に、
γ>αmaxとなる配列軸を有する異方性導電フィルムを提供する。
【0015】
第3の接続構造体の製造方法に使用する異方性導電フィルムとして、絶縁性樹脂層に導電粒子が配置されている異方性導電フィルムであって、
平面視で絶縁性樹脂層に導電粒子が複数の同心円上に配置され、かつ第1の同心円上の第1の導電粒子と円の中心とを結ぶ直線を第1の直線とし、第1の同心円に隣接する第2の同心円上の導電粒子であって、第1の導電粒子に最近接した第2の導電粒子と円の中心とを結ぶ直線を第2の直線とした場合に第1の直線と第2の直線が一致しないように導電粒子が配置されている多重円領域を有する異方性導電フィルムを提供する。
【0016】
さらに本発明は、上述の接続構造体の製造方法で製造された接続構造体を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の端子が放射状に並列した端子パターンを有する電子部品同士を接続して接続構造体を得るにあたり、導電粒子が捕捉されない端子を低減ないし解消することができる。
【0018】
特に、第1の接続構造体の製造方法によれば、端子面積が比較的大きく、端子1個当たりの有効接続面積が3000μm2以上の場合に、異方性導電フィルムにおける導電粒子の配置が規則的であってもランダムであっても、接続構造体において導電粒子が捕捉されない端子を低減ないし解消することができる。
【0019】
第2の接続構造体の製造方法によれば、異方性導電フィルムにおける導電粒子が格子状に規則配列している場合に、接続構造体において導電粒子が捕捉されない端子を低減ないし解消することができる。また、端子パターンを構成する端子毎における導電粒子の捕捉状態を均一化できる。特に端子パターンが左右対称である場合に、顕著な効果が得られる。
【0020】
第3の接続構造体の製造方法によれば、電子部品の端子の大きさや端子ピッチに関わらず、接続構造体において導電粒子が捕捉されない端子を低減ないし解消することができる。また、端子パターンを構成する端子毎における導電粒子の捕捉状態を均一化できる。特に端子パターンが左右対称である場合に、顕著な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A図1Aは、第1の発明の接続構造体の製造方法で使用する電子部品の端子パターンの平面図である。
図1B図1Bは、第1の発明の接続構造体の製造方法で使用する電子部品の端子パターンの重なり状態を示す平面図である。
図1C図1Cは、第1の電子部品と、熱膨張した第2の電子部品の端子パターンの重なり状態を示す平面図である。
図2図2は、異方性導電フィルムのフィルム厚方向の断面図である。
図3A図3Aは、第2の発明の接続構造体の製造方法で使用する電子部品の端子パターンの平面図である。
図3B図3Bは、第2の発明の接続構造体の製造方法で使用する異方性導電フィルムにおける導電粒子の格子状の配列の説明図である。
図4図4は、第3の発明の接続構造体の製造方法で使用する異方性導電フィルムにおける多重円領域の説明図である。
図5A図5Aは、多重円領域から切り出す矩形領域の説明図である。
図5B図5Bは、多重円領域から切り出した矩形領域を敷き詰めた、異方性導電フィルムにおける導電粒子配置の説明図である。
図6A図6Aは、多重円領域から切り出す6角形領域の説明図である。
図6B図6Bは、多重円領域から切り出した6角形領域を敷き詰めた、異方性導電フィルムにおける導電粒子配置の説明図である。
図7A図7Aは、同心円が楕円からなる多重円領域及びその多重円領域から切り出す矩形領域の説明図である。
図7B図7Bは、同心円が楕円からなる多重円領域から切り出した矩形領域を敷き詰めた、異方性導電フィルムにおける導電粒子配置の説明図である。
図8A図8Aは、実施例における導電粒子の配置と端子との関係図である。
図8B図8Bは、実施例における導電粒子の配置と端子との関係図である。
図9図9は、複数の端子が放射状に並列している従来の接続構造体の端子における導電粒子の捕捉状態の説明図である。
【0022】
図10図10は、複数の端子が放射状に並列している従来の接続構造体の端子における導電粒子の捕捉状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は、同一又は同等の構成要素を表している。
【0024】
[第1の発明]
(接続構造体の全体構造)
図1Aは、第1の本発明の接続構造体の製造方法で使用する第1の電子部品30Aの端子パターン21Aと第2の電子部品30Bの端子パターン21Bの平面図であり、図1Bは、これらの端子パターン21A、21Bの重なり状態を示す平面図である。
【0025】
この端子パターン21Aでは複数の端子20Aが放射状に並列している。即ち、各端子20Aは、端子パターン21A外の点Pを通る放射状の直線Rを中心軸として帯状に形成されている。本実施例において、点Pは端子パターン21Aの幅の中心線Q上にあり、中心線Qと各端子20Aの長手方向に伸びた中心軸となっている直線Rとがなす角度θの隣り合う端子パターン同士の差Δθは一定であり、Δθ=αとなっている。なお、本発明において、この角度θに限定は無く、角度θは一定角度ずつ変化してもよく、規則的に変化してもよい。また、各端子20Aの中心軸をなす直線Rの全てが点Pを通る必要はない。例えば、直線Rと中心線Qとのなす角度が小さい端子においては、直線Rは中心線Qと平行でもよい。同じ角度で傾斜している端子が並列している部分があってもよい。点Pが、左右対称に複数存在していてもよい。また、複数の端子20Aからなる端子パターン21Aが、中心線Qに対して左右対称になっていなくてもよい。
【0026】
第2の電子部品30Bの端子パターン21Bは第1の電子部品30Aの端子パターン21Aに対応しており、図1Bに示すように、所定温度でこれらは丁度重なり合うように形成されている。なお、このように端子パターン21A、21Bにおいて、各端子20A、20Bが放射状に形成されていると、仮に第1の電子部品30Aと第2の電子部品30Bの一方が他方に対して熱などにより相対的に膨張しても、図1Cに示すように、第1の電子部品30Aの各端子20Aと、それに対応する第2の電子部品30Bの各端子20Bとは重なり合うことができる。なお、図1Cにおいて、実線で示した符号30Bは膨張後の第2の電子部品を示しており、破線で示した符号30Bは膨張前の第2の電子部品を示している。なお、本発明では個々の電子部品において、引き回しの配線の配線幅と端子幅とは同じでも異なっていてもよく、引き回し配線の配線高さと端子高さも同じでも異なっていてもよい。引き回し配線の配線高さと端子高さとが異なっている例としては、ICチップなどが挙げられる。
【0027】
なお、ICチップは熱膨張の影響がFPCやプラスチック基板などに対して著しく低いので、図1Cに示した接続構造体では、第1の電子部品がICチップになり、膨張する第2の電子部品がFPCやプラスチック基板となる。
【0028】
(有効接続面積)
第1の発明では、上述のように放射状に形成されている端子20A、20Bの1個当たりの有効接続面積を3000μm2以上とする。ここで端子の有効接続面積とは、第1の電子部品30Aの端子20Aと、第2の電子部品30Bの端子20Bと、異方性導電フィルム10Aとが実際に重なり合っている有効接続領域の面積をいい、例えば、図1Cのように第1の電子部品30Aの端子20Aと、第2の電子部品30Bの端子20Bとが部分的に重なっている場合に、その部分的に重なっている領域と異方性導電フィルム10Aとが重なっている領域20Cの面積をいう。図1Cでは有効接続領域20Cの一つに斜めハッチングを付した。第1の発明では、端子1個当たりの有効接続面積を3000μm2以上とするため、端子20A、20Bの1個当たりの面積を3000μm2以上とすることが好ましく、そのために端子1個当たりの幅を5~300μmとすることが好ましく、20~200μmとすることがより好ましい。端子長さを10~3000μmとすることが好ましく、500~2000μmとすることがより好ましい。また、端子間スペースを10~300μmとすることが好ましく、20~200μmとすることがより好ましい。なお、端子幅と端子間スペースは、必要に応じて上限を1000μm程度とすることもできる。
【0029】
(異方性導電フィルム)
・個数密度
異方性導電フィルム10Aでは、例えば図1Cに示すように、絶縁性樹脂層2に導電粒子1が保持されている。第1の発明では、上述のように比較的端子面積が大きく、端子1個当たりの有効接続面積が3000μm2以上の場合に、異方性導電フィルム10Aにおける導電粒子1の個数密度を2000個/mm2以上20000個/mm2以下とし、好ましくは7000個/mm2以上15000個/mm2以下とする。これにより、接続構造体の各端子における導電粒子の捕捉性を向上させることができる。
【0030】
なお、導電粒子の個数密度と、導電粒子1個の平面視面積の平均から次式で算出される面積占有率は、異方性導電フィルムを電子部品に熱圧着するために押圧治具に必要とされる推力の指標となる。
【0031】
面積占有率(%)
=[平面視における導電粒子の個数密度(個/mm2)]×[導電粒子1個の平面視面積の平均(mm2/個)]×100
【0032】
面積占有率は好ましくは35%以下、より好ましくは0.3~30%の範囲である。これにより、異方性導電フィルムを電子部品に熱圧着するために押圧治具に必要とされる推力を低く抑えることが可能となる。
【0033】
・粒子配置
異方性導電フィルム10Aにおける導電粒子1の配置には特に制限はない。ランダムでもよく、格子状等に配列していてもよい。格子状の配列としては、正方格子、6方格子、斜方格子、長方格子等を挙げることができる。これらの格子形状の配列軸を、フィルムの長手方向に対して傾斜させてもよい。導電粒子全体としての粒子配置として、導電粒子1が所定間隔で直線状に並んだ粒子列を所定の間隔で並列させてもよい。
【0034】
・導電粒子
導電粒子1としては、ニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウムなどの金属粒子、ハンダなどの合金粒子、金属被覆樹脂粒子、表面に絶縁性微粒子が付着している金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。2種以上を併用することもできる。中でも、金属被覆樹脂粒子が、接続された後に樹脂粒子が反発することで端子との接触が維持され易くなり、導通性能が安定する点から好ましい。また、導電粒子の表面には公知の技術により絶縁性微粒子が付着していてもよく、導通特性に支障を来さない絶縁処理が施されていてもよい。
【0035】
異方性導電フィルム10Aにおける導電粒子1の粒子径は、導通抵抗の上昇を抑制し、且つショートの発生を抑制するために、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは3μm以上10μm未満である。絶縁性樹脂層に分散させる前の導電粒子の粒子径は、一般的な粒度分布測定装置により測定することができ、また、平均粒子径も粒度分布測定装置を用いて求めることができる。測定装置としては、一例としてFPIA-3000(マルバーン社)を挙げることができる。異方性導電フィルムにおける導電粒子の粒子径は、SEMなどの電子顕微鏡観察から求めることができる。この場合、導電粒子径を測定するサンプル数を200以上、好ましくは1000以上とすることが望ましい。
【0036】
なお、導電粒子として、その表面に絶縁性微粒子が付着しているものを使用する場合、本発明における導電粒子の粒子径は、表面の絶縁性微粒子を含めない粒子径を意味する。
【0037】
・導電粒子が非接触で存在する個数割合
また、異方性導電フィルム10Aにおける導電粒子1は、フィルムの平面視にて互いに接触することなく存在し、フィルム厚方向にも導電粒子1が互いに重なることなく存在していることが好ましい。そのため、導電粒子全体に対し、導電粒子1同士が互いに非接触で存在する個数割合は95%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは99.5%以上である。これは、規則的配置でもランダム配置でも同様である。後述するように、転写型を使用して導電粒子1を規則的に配置させると、導電粒子1同士が互いに非接触で存在する割合を容易に制御することができるので好ましい。ランダム配置の場合は、絶縁性樹脂に導電粒子1を混練して異方性導電フィルムを作製することが容易なため、性能やコストとの兼ね合いで、転写型を利用する製造方法と、混練を利用する製造方法とどちらを選択してもよい。なお、導電粒子を規則的に配置する方法は転写型を利用するものに制限されるものではない。
【0038】
・導電粒子のフィルム厚方向の位置
導電粒子1が互いに接触することなく存在する場合に、そのフィルム厚方向の位置が揃っていることが好ましい。例えば、図2に示したように、導電粒子1のフィルム厚方向の埋込量Lbを揃えることができる。これにより、端子における導電粒子1の捕捉性が安定し易い。なお、本発明において、導電粒子1は、絶縁性樹脂層2から露出していても、完全に埋め込まれていてもよい。
【0039】
ここで、埋込量Lbは、導電粒子1が埋め込まれている絶縁性樹脂層2の表面(絶縁性樹脂層2の表裏の面のうち、導電粒子1が露出している側の表面、又は導電粒子1が絶縁性樹脂層2に完全に埋め込まれている場合には、導電粒子1との距離が近い表面)であって、隣接する導電粒子間の中央部における接平面2pと、導電粒子1の最深部との距離をいう。
・埋込率
導電粒子1の平均粒子径Dに対する埋込量Lbの割合を埋込率(Lb/D)とした場合に、埋込率は30%以上105%以下が好ましい。埋込率(Lb/D)を30%以上とすることにより、導電粒子1を絶縁性樹脂層2によって所定の位置に維持し、また、105%以下とすることにより、異方性導電接続時に端子間の導電粒子を不用に流動させるように作用する絶縁性樹脂層の樹脂量を低減させることができる。また、埋込率が100%以上で導電粒子が絶縁性樹脂層2から露出していると、接続時にかかる圧力が導電粒子1に伝わり易くなる。また、導電粒子1が絶縁性樹脂層2から露出していると、異方性導電接続時に押圧治具による導電粒子1の押し込みによって生じる、該導電粒子1の変形に対する絶縁性樹脂層2の抵抗が低減されるため、接続後の圧痕の状態が均一になり易い。これにより、接続後の状態が確認し易くなる。導電粒子1が絶縁性樹脂層2から過度に露出している場合は、後述する第2の絶縁性樹脂層を設けてもよい。
【0040】
なお、本発明において、埋込率(Lb/D)の数値は、異方性導電フィルムに含まれる全導電粒子数の99%以上、好ましくは99.9%以上、より好ましくは99.99%以上が、当該埋込率(Lb/D)の数値になっていることをいう。したがって、埋込率が30%以上105%以下とは、異方性導電フィルムに含まれる全導電粒子数の99%以上、好ましくは99.9%以上、より好ましくは99.99%以上の埋込率が30%以上105%以下であることをいう。このように全導電粒子の埋込率(Lb/D)が揃っていることにより、押圧の加重が導電粒子に均一にかかるので、端子における導電粒子の捕捉状態が良好になり、導通の安定性が向上する。
(絶縁性樹脂層)
・絶縁性樹脂層の粘度
異方性導電フィルム10Aにおいて、絶縁性樹脂層2は最低溶融粘度が1000Pa・s程度することができ、1100Pa・s以上であればよく、好ましくは2000Pa・s以上、より好ましくは3000~15000Pa・s、さらに好ましくは3000~10000Pa・sである。最低溶融粘度は、一例として回転式レオメータ(TA instruments社製)を用い、測定圧力5gで一定に保持し、直径8mmの測定プレートを使用し求めることができ、より具体的には、温度範囲30~200℃において、昇温速度が10℃/分、測定周波数10Hz、前記測定プレートに対する荷重変動5gとすることにより求めることができる。
【0041】
絶縁性樹脂層2の最低溶融粘度を2000Pa・s以上の高粘度とすることにより、異方性導電接続時に端子間で挟持されるべき導電粒子1が樹脂流動により流されてしまうことを防止できる。
【0042】
・絶縁性樹脂層の組成
絶縁性樹脂層2は、硬化性樹脂組成物から形成することができ、例えば、熱重合性化合物と熱重合開始剤とを含有する熱重合性組成物から形成することができる。熱重合性組成物には必要に応じて光重合開始剤を含有させてもよい。
【0043】
熱重合開始剤と光重合開始剤を併用する場合に、熱重合性化合物として光重合性化合物としても機能するものを使用してもよく、熱重合性化合物とは別に光重合性化合物を含有させてもよい。好ましくは、熱重合性化合物とは別に光重合性化合物を含有させる。例えば、熱重合開始剤としてカチオン系硬化開始剤、熱重合性化合物としてエポキシ樹脂を使用し、光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤、光重合性化合物としてアクリレート化合物を使用する。
【0044】
光重合開始剤として、波長の異なる光に反応する複数種類を含有させてもよい。これにより、異方性導電フィルムの製造時における、絶縁性樹脂層を構成する樹脂の光硬化と、異方性導電接続時に電子部品同士を接着するための樹脂の光硬化とで使用する波長を使い分けることができる。
【0045】
異方性導電フィルムの製造時の光硬化では、絶縁性樹脂層に含まれる光重合性化合物の全部又は一部を光硬化させることができる。この光硬化により、絶縁性樹脂層2における導電粒子1の配置が保持乃至固定化され、ショートの抑制と捕捉性の向上が見込まれる。また、この光硬化により、異方性導電フィルムの製造工程における絶縁性樹脂層の粘度を適宜調整してもよい。特にこの光硬化は、絶縁性樹脂層2の層厚Laと導電粒子1の平均径Dとの比(La/D)が0.6未満である場合に行うことが好ましい。導電粒子の平均径に対して絶縁性樹脂層2の層厚が薄い場合にも絶縁性樹脂層2で導電粒子の配置の保持乃至固定化をより確実に行うと共に、絶縁性樹脂層2の粘度調整を行い、異方性導電フィルムを用いた電子部品同士の接続において歩留まりの低下を抑制するためである。
【0046】
絶縁性樹脂層における光重合性化合物の配合量は30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、2質量%未満がさらに好ましい。光重合性化合物が多すぎると接続時の押し込みにかかる推力が増加するためである。
【0047】
熱重合性組成物の例としては、(メタ)アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む熱ラジカル重合性アクリレート系組成物、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含む熱カチオン重合性エポキシ系組成物等が挙げられる。熱カチオン重合開始剤を含む熱カチオン重合性エポキシ系組成物に代えて、熱アニオン重合開始剤を含む熱アニオン重合性エポキシ系組成物を使用してもよい。また、特に支障を来さなければ、複数種の重合性化合物を併用してもよい。併用例としては、カチオン重合性化合物とラジカル重合性化合物の併用などが挙げられる。
【0048】
ここで、(メタ)アクリレート化合物としては、従来公知の熱重合型(メタ)アクリレートモノマーを使用することができる。例えば、単官能(メタ)アクリレート系モノマー、二官能以上の多官能(メタ)アクリレート系モノマーを使用することができる。
【0049】
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ系化合物等を挙げることができる。特に、気泡の原因となる窒素を発生しない有機過酸化物を好ましく使用することができる。
【0050】
熱ラジカル重合開始剤の使用量は、少なすぎると硬化不良となり、多すぎると製品ライフの低下となるので、(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し、好ましくは2~60質量部、より好ましくは5~40質量部である。
【0051】
エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、それらの変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などを挙げることができ、これらの2種以上を併用することができる。また、エポキシ化合物に加えてオキセタン化合物を併用してもよい。
【0052】
熱カチオン重合開始剤としては、エポキシ化合物の熱カチオン重合開始剤として公知のものを採用することができ、例えば、熱により酸を発生するヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、フェロセン類等を用いることができ、特に、温度に対して良好な潜在性を示す芳香族スルホニウム塩を好ましく使用することができる。
【0053】
熱カチオン重合開始剤の使用量は、少なすぎても硬化不良となる傾向があり、多すぎても製品ライフが低下する傾向があるので、エポキシ化合物100質量部に対し、好ましくは2~60質量部、より好ましくは5~40質量部である。
【0054】
熱重合性組成物は、膜形成樹脂やシランカップリング剤を含有することが好ましい。膜形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等を挙げることができ、これらの2種以上を併用することができる。これらの中でも、成膜性、加工性、接続信頼性の観点から、フェノキシ樹脂を好ましく使用することができる。重量平均分子量は10000以上であることが好ましい。また、シランカップリング剤としては、エポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤等を挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、主としてアルコキシシラン誘導体である。
【0055】
熱重合性組成物には、溶融粘度調整のために、前述の導電粒子に付着している絶縁性微粒子とは別に、絶縁性フィラを含有させてもよい。この絶縁性フィラとしてはシリカ粉やアルミナ粉などが挙げられる。絶縁性フィラの大きさは粒径20~1000nmが好ましく、また、配合量はエポキシ化合物等の重合性化合物100質量部に対して5~50質量部とすることが好ましい。
【0056】
さらに、本発明の異方性導電フィルムには、上述の絶縁フィラとは異なる充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料)、有機溶剤、イオンキャッチャー剤などを含有させてもよい。
【0057】
・絶縁性樹脂層の層厚
本発明の異方性導電フィルムでは、絶縁性樹脂層2の層厚は導電粒子1の粒子径や接続対象物や端子高さによって変動するため特に限定されないが、一例として、平均粒子径Dが10μm未満の場合は、絶縁性樹脂層2の層厚Laと導電粒子1の平均粒子径Dとの比(La/D)を0.3以上10以下とすることが好ましく、絶縁性樹脂層2における導電粒子1の配置の維持の点から、比(La/D)を0.4以上とすることがより好ましい。また、異方性導電接続時の過度な樹脂流動の抑制及び低圧実装の実現の点から3以下とすることが好ましく、1以下とすることがより好ましい。さらに、導電粒子1を絶縁性樹脂層2から露出させることを容易とし、低圧実装をより容易にする点からは、この比(La/D)を1未満とすることが好ましく、より好ましくは0.6未満、さらに好ましくは0.5以下である。尚、比(La/D)を3以下とする場合、絶縁性樹脂層2よりも最低溶融粘度の低い第2の絶縁性樹脂層を設けることが好ましい場合がある。
【0058】
一方、平均粒子径Dが10μm以上の場合には、La/Dは、上限に関しては、3.5以下、好ましくは2.5以下、より好ましくは2以下とし、下限に関しては0.8以上、好ましくは1以上、より好ましくは1.3より大きくする。
【0059】
また、平均粒子径Dの大きさに関わらず、絶縁性樹脂層2の層厚Laが大き過ぎてこの比(La/D)が過度に大きくなると、異方性導電接続時に導電粒子1が端子に押し付けられにくくなると共に、樹脂流動により導電粒子が流されやすくなる。そのため導電粒子が位置ずれしやすくなり、端子における導電粒子の捕捉性が低下する。また、導電粒子を端子に押し付けるために押圧治具に必要とされる推力も増大し、低圧実装の妨げになる。反対に絶縁性樹脂層2の層厚Laが小さすぎてこの比が過度に小さくなると、導電粒子1を絶縁性樹脂層2によって所定の位置に維持することが困難となる。
【0060】
第2の絶縁性樹脂層と絶縁性樹脂層2との最低溶融粘度は、差があるほど、異方性導電フィルムを介して接続する2つの端子間の空間が第2の絶縁性樹脂層で充填され易くなり、電子部品同士の接着性を向上させる効果が期待できる。また、この差があるほど絶縁性樹脂層2の移動量が第2の絶縁性樹脂層に対して相対的に小さくなるため、端子における導電粒子の捕捉性が向上しやすくなる。
【0061】
第2の絶縁性樹脂層を有する異方性導電フィルムを用いて接続する場合、第2の絶縁性樹脂層が絶縁性樹脂層2の熱圧着ツールで加圧する電子部品側にあると(言い換えると絶縁性樹脂層2がステージに載置される電子部品側にあると)、導電粒子の不本意な移動を避けることができ、捕捉性を向上させる点から好ましい。また、第2の絶縁性樹脂層が絶縁性樹脂層2の導電粒子が設けられている側にあると、導電粒子を保持する樹脂が十分に存在することになるため安定した接続状態を得るためには好ましい(導電粒子の挟持を保持する樹脂量が相対的に多くなるために好ましい)。また、第2の絶縁性樹脂層が絶縁性樹脂層2の導電粒子が設けられている側の反対にあると、一般的にはステージに載置される電子部品側に導電粒子が近づくため、上記と同様の理由により、捕捉性の観点から好ましい。これらは、電子部品の端子や材質、接続方法によって適宜使い分ければよい。
【0062】
また、絶縁性樹脂層2と第2の絶縁性樹脂層との最低溶融粘度は、差があるほど異方性導電接続時に導電粒子を含有している絶縁性樹脂層2の移動量が第2の絶縁性樹脂層の移動量に対して相対的に小さくなるため、端子における導電粒子の捕捉性が向上しやすくなる。第2の絶縁性樹脂層を予めツール側に設けられる電子部品に貼り合せて使用する場合には、タック層としても用いることができる。
【0063】
絶縁性樹脂層2と第2の絶縁性樹脂層との最低溶融粘度比は、実用上は、絶縁性樹脂層2と第2の絶縁性樹脂層の層厚の比率にもよるが、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは8以上である。一方、この比が大きすぎると異方性導電フィルムを長尺の巻装体にした場合に、樹脂のはみだしやブロッキングが生じる虞があるので、実用上は15以下が好ましい。第2の絶縁性樹脂層の好ましい最低溶融粘度は、より具体的には、上述の比を満たし、かつ3000Pa・s以下、より好ましくは2000Pa・s以下であり、さらに好ましくは100~2000Pa・sである。
【0064】
なお、第2の絶縁性樹脂層は、絶縁性樹脂層2と同様の樹脂組成物において、粘度を調整することにより形成することができる。
【0065】
第2の絶縁性樹脂層の層厚は、異方性導電フィルムの用途に応じて適宜設定することができる。第2の絶縁性樹脂層の層厚は、好ましくは4~20μmであり、また、導電粒子径の好ましくは1~8倍である。
【0066】
また、絶縁性樹脂層2と第2の絶縁性樹脂層を合わせた異方性導電フィルム全体の最低溶融粘度は、異方性導電フィルムの用途や、絶縁性樹脂層2と第2の絶縁性樹脂層の層厚の比率等に応じて定めるが、実用上は8000Pa・s以下、バンプ間への充填を行い易くするために200~7000Pa・sとしてもよく、好ましくは、200~4000Pa・sである。
【0067】
絶縁性樹脂層2と第2の絶縁性樹脂層を挟んで反対側に第3の絶縁性樹脂層が設けられていてもよい。第3の絶縁性樹脂層はタック層として機能させることができる。また、第2の絶縁性樹脂層と同様に、電子部品の電極やバンプによって形成される空間を充填させるために設けてもよい。
【0068】
第3の絶縁性樹脂層の樹脂組成、粘度及び層厚は第2の絶縁性樹脂層と同様でもよく、異なっていても良い。絶縁性樹脂層2と第2の絶縁性樹脂層と第3の絶縁性樹脂層を合わせた異方性導電フィルムの最低溶融粘度は特に制限はないが、8000Pa・s以下としてもよく、200~7000Pa・sであってもよく、200~4000Pa・sとすることもできる。
【0069】
上述した第2の絶縁性樹脂層及び第3の絶縁性樹脂層に関する記載は第2の発明にのみ適用されるものではなく、第1の発明や第3の発明に適用してもよい。
【0070】
[第2の発明]
(接続構造体の全体構造)
図3Aは、第2の本発明の接続構造体の製造方法で使用する第1の電子部品30Aの端子パターン21Aと第2の電子部品30Bの端子パターン21Bの平面図であり、図3Bは、第2の発明の接続構造体の製造方法で製造した接続構造体の端子における導電粒子の捕捉状態の説明図である。
【0071】
図3A図3Bに示した電子部品30A、30Bも、図1Aに示した第1の発明で使用する電子部品30A、30Bと同様に、端子パターン21A、21Bにおいて、複数の端子20A、20Bが放射状に並列している。
【0072】
ただし、第2の発明で使用する電子部品30A、30Bの端子パターン21A、21Bには、図1Aに示した第1の発明で使用するものに対して、端子1個当たりの有効接続面積についての制限はなく、異方性導電フィルム10Bにおける導電粒子の個数密度にも制限はない点で異なっている。そのため、ノーマルピッチの端子パターンや、ファインピッチの端子パターンに適用することができ、例えば、端子幅が5~50μm、好ましくは5~25μmであり、端子間スペースが10~50μm、好ましくは10~25μmの端子に適用することができる。
【0073】
一方、第2の発明において異方性導電フィルム10Bとしては、一例として図3Bに示したように、平面視で絶縁性樹脂層に導電粒子1が格子状に配列したものを使用し、かつ、格子状の配列における配列ピッチ及び配列方向が、第1の電子部品と第2の電子部品の有効接続領域において各端子に導電粒子が3個以上捕捉されるように定められている。尚、フィルム幅方向で各端子に捕捉される導電粒子が3個以上あることが好ましい。有効接続領域で各端子に捕捉される導電粒子は10個以上あれば好ましく、11個以上であればより好ましい。
【0074】
この配列ピッチ及び配列方向は、電子部品30A、30Bの端子パターン21A、21Bに応じて適宜定められる。例えば、図3Bに示した異方性導電フィルム10Bにおいて、導電粒子1が配列ピッチ(即ち、格子間距離)L1で正方格子に配列している場合に、任意の導電粒子1xの周囲には、導電粒子1xに導電粒子中心間距離で最も近い距離(格子間距離)L1に4つの導電粒子1aが存在し、導電粒子1aと前記導電粒子1xとを結ぶことにより配列軸Ta1、Ta2が引ける。また、導電粒子1xから次に近い距離にある導電粒子としては、格子間距離L1の1.4倍の距離に4つの導電粒子1bが存在し、導電粒子1bと前記導電粒子1xとを結ぶことにより配列軸Tb1、Tb2が引ける。これらの配列軸Ta1、Ta2、Tb1、Tb2について、配列軸と端子パターン21Aの短手方向とがなす角度をβとする。一方、各端子20Aの長手方向に伸びた中心軸(直線R)と、端子パターン21Aの短手方向とがなす角度のうち最大のものをαmaxとする。このとき、β>αmaxを満たす角度βが存在するように配列軸の方向を定める。また、図3Bに示すようにβ>αmaxを満たす配列軸Ta1において導電粒子の配列ピッチL1を、有効接続領域における各端子の長さよりも短くする。これにより、各端子は有効接続領域において必ず配列軸Ta1と交差する。したがって、この異方性導電フィルム10Bによれば、各端子において導電粒子を捕捉することが可能となる。これは、端子パターン21Aの短手方向において十分な数の導電粒子が存在することが前提になる。具体的な一例としては、端子パターンAに重ね合わせた異方性導電フィルムの、端子パターン21Aの短手方向の配列軸において、各端子に導電粒子が好ましくは5個以上、より好ましくは12個以上、さらに好ましくは13個以上が存在するようにすればよい。端子の傾斜角度にもよるが、密に導電粒子が配置されていれば、一つの端子で3個以上の粒子の捕捉を満足させることができる。このようにすることで、β>αmaxを満たす配列軸において導電粒子の配列ピッチを適宜定めることにより、第1の電子部品と第2の電子部品の有効接続領域において各端子に捕捉される導電粒子の数を3個以上とすることができる。
【0075】
β>αmaxを満たす角度βが存在する導電粒子の配列例としては、(i)6方格子とし、その格子軸(軸内での導電粒子の配列ピッチが最小となるもの)を端子パターン21の短手方向とするもの、(ii)(i)の6方格子配列を30°回転させた配列、(iii)正方格子とし、その格子軸(軸内での導電粒子の配列ピッチが最小となるもの)を端子パターン21の短手方向とするもの、(iv)(iii)の正方向視配列を45°回転させたもの、を挙げることができる。(i)では図3Bにおけるβの最大値が60°となり、(ii)では図3Bにおけるβの最大値が30°となり、(iii)及び(iv)では図3Bにおけるβの最大値が45°となる。導電粒子が(i)~(iv)の配列であると、端子パターン21が左右対称であれば、端子パターン21の左右での捕捉状態が同一になり、接続における良否判定が行い易くなる。
【0076】
β>αmaxを満たす角度βが存在する導電粒子の配列を得るために、6方格子又は正方格子を、端子パターン21の長手方向又は短手方向に伸縮した粒子配置としてもよく、例えば、(iii)の正方格子の配列軸Ta(導電粒子の配列ピッチが最小の配列軸)を端子パターン21の短手方向に合わせ、端子パターンの長手方向に正方格子を伸ばすことにより長方格子の配列としてもよく、(iv)の正方格子の配列軸Tb(導電粒子の配列ピッチが2番目に小さい配列軸)を端子パターン21の短手方向に合わせ、端子パターンの長手方向に正方格子を伸ばすことにより斜方格子(菱形の格子)の配列としてもよい。
【0077】
導電粒子の配列ピッチが最小の配列軸又はその次に小さい配列軸を端子パターンの短手方向に合わせると、異方性導電フィルムには配列パターンの短手方向と平行な配列軸が存在することになり、且つ左右対の格子配列となる。そのため、配列パターンが長手方向で左右対称であれば、捕捉状態は左右で同一か限りなく近くなるため、捕捉状態を判定することが容易になり、接続構造体の生産性の点からは好ましくなる。
【0078】
なお、図3Bでは導電粒子中心間距離で最も近い距離となる配列軸Ta1を端子パターン21Aの短手方向としたが、端子パターン21Aの長手方向とすることが好ましい場合がある。図3Bでは端子パターンの短手方向に導電粒子が十分な数が存在することを前提とするが、ICチップのように端子長が制限される場合は、端子長が短い方向に配列軸(異方性導電フィルムの配列軸において導電粒子の配列ピッチが最小となるもの)を合わせることで端子あたりの導電粒子の補足数を所定の数以上に満足させ易くなる。
【0079】
また、配列軸が(i)の向きの6方格子配列では、βの最大値を上述のように60°とすることができるが、格子を伸縮することによりβの最大値を調整することができる。導電粒子の配列を6方格子、正方格子又はそれらを伸縮したものとする場合に、βの最大値の下限については、5°以上としてもよく、15°以上とすることが好ましく、30°以上とすることがより好ましい。また上限については、85°以下としてもよく、75°以下が好ましく、60°以下がより好ましい。傾斜角が小さすぎても大きすぎても導電粒子が密になる領域が発生し、ファインピッチに適用し難くなる虞が生じるためである。
【0080】
第2の発明で使用する異方性導電フィルム10Bとしては、前記配列軸Ta1、Ta2、Tb1、Tb2と異方性導電フィルム10Bの短手方向とがなす角度をγとした場合に、γ>αmaxが満たされることが好ましい。これにより、異方性導電フィルム10Bを用いて第1の電子部品30Aと第2の電子部品30Bとを異方性導電接続する場合に、異方性導電フィルム10Bの短手方向を端子パターンの短手方向に合わせることにより、上述のβ>αmaxが満たされることになる(異方性導電接続時に端子パターンの長手方向と異方性導電フィルムの長手方向が同一の場合は、β=γとなる)。
【0081】
第2の発明で使用する異方性導電フィルムにおける導電粒子の格子状の配列として、図3Bに示した正方格子の他、6方格子、斜方格子、長方格子等を挙げることができる。
【0082】
また、第2の発明で使用する異方性導電フィルムの導電粒子自体の構成、個数密度、絶縁性樹脂層の構成等は第1の発明と同様にすることができる。
【0083】
[第3の発明]
(接続構造体の全体構造)
第3の発明は、上述の第2の発明で使用する異方性導電フィルムに代えて、導電粒子の配置に関し、多重円領域を有する異方性導電フィルムを使用するものである。
【0084】
多重円領域としては、例えば、図4に示す多重円領域25を挙げることができる。この多重円領域25では、異方性導電フィルム10Cの平面視で絶縁性樹脂層2に導電粒子1が複数の同心円上に配置されている。この同心円上では所定間隔(導電粒子の中心間距離L2一定)で配置されていることが、配列の設計工数が削減できるため好ましい。また、第1の同心円22a上の第1の導電粒子1aと円の中心とを結ぶ直線を第1の直線23aとし、第1の同心円22aに隣接する第2の同心円22b上の導電粒子であって、第1の導電粒子1aに最近接した第2の導電粒子1bと円の中心とを結ぶ直線を第2の直線23bとした場合に第1の直線23aと第2の直線23bが一致しないように導電粒子が配置されていると、捕捉性の向上とショートの抑制が両立できるため好ましい。
【0085】
図4に示した多重円領域25では、さらに、第2の同心円22bに隣接する第3の同心円22c上の導電粒子であって、第2の導電粒子1bに最近接した第3の導電粒子1cと円の中心とを結ぶ直線を第3の直線23cとした場合に、第2の直線22bと第1の直線22aとがなす角度θと、第3の直線23cと第2の直線23bとがなす角度θとが等しく、同様に定めた第4の直線23dと第3の直線23cとがなす角度も上述の角度θに等しくなっている。このように一定の角度θずつ直線23a、23b、23c、23dを傾斜させることにより端子が放射状に並列している場合には、各端子においていずれかの場所で導電粒子が捕捉されることになる。この角度θの大きさは、ショート抑制や導電粒子個数を低減させて捕捉を安定させる点から1~40°とすることが好ましい。
【0086】
また、図4に示した多重円領域25のように、各同心円間距離(隣接する同心円の半径の差)L3と各同心円における導電粒子の中心間距離L2を等しくしてもよい。このように各同心円間距離L3と各同心円における導電粒子の中心間距離L2を等しくすることにより導電粒子を配置する設計上の決め事を確定させることができるので、異方性導電フィルムの製造の際の品質管理を好ましく行うことができる。またこれにより、多重円領域25では6方格子に類似した粒子配置が認められるようになり、導電粒子を密に配置し、捕捉性を向上させることが可能となる。
【0087】
第3の発明で使用する異方性導電フィルム10Cでは、導電粒子の配置が上述の多重円領域から形成されている。この場合、異方性導電フィルムは1個の多重円領域から形成されていてもよく、複数の多重円領域から形成されていてもよい。1個の多重円領域から形成されている異方性導電フィルムを長尺の帯状に裁断して異方性導電フィルムの製品とすること(即ち、図5A図5Bの粒子配置の異方性導電フィルムを裁断して帯状の異方性導電フィルムとすること)で、湾曲した粒子配列が並列している粒子配置のフィルムを得られる。この粒子配置の異方性導電フィルムを使用することにより、放射状の端子パターンのように個々の端子の傾斜角が漸次変化する場合に、安定した捕捉を得易くなると考えられる。
【0088】
一方、複数の多重円領域により形成されている異方性導電フィルムを長尺の帯状に裁断して異方性導電フィルムの製品とすることで、後述するように、1個の接続構造体の製造に使用する異方性導電フィルムの長さと多重円領域の最大長との比を整数にすることができ、これにより接続領域における粒子の捕捉状態が比較し易くなる。よって、良否判定が容易になり、異方性接続体の製造コストの削減に有用となる。
【0089】
複数の多重円領域から形成する場合、異方性導電フィルムにおける導電粒子の配置は、例えば図5Aに示すように、多数の同心円からなる多重円領域25から所定形状の領域(例えば、正方形領域26)を切り出し、切り出した領域を図5Bに示すように隙間無く並べた配置とすることができる。このように隙間なく並べた場合、隣り合う多重円領域において導電粒子が重複する場合、又は隣り合う導電粒子間距離が導電粒子径の2倍以内、好ましくは0.5倍以内となった場合、ショートを防止する点から、それらの一方の導電粒子を削除することができる。
【0090】
多重円領域25から切り出す形状に特に制限はなく、図6Aに示すように、多数の同心円からなる多重円領域25から6角形領域27を切り出し、切り出した6角形領域27を図6Bに示すように隙間無く並べた配置とすることができる。切り出す形状を3角形や、長方形、菱形などの4角形としてもよい。多重円領域25から切り出す多角形の形状は、切り出した形状を隙間無く並べられるように辺の数や辺の長さを適宜選択すればよい。また、2種以上の多角形領域を切り出し、隙間無く並べてもよい。
【0091】
接続構造体の1個分の製造に使用する異方性導電フィルムの長さLfは、複数個の接続構造体を連続して接続する場合においても、各接続構造体において導電粒子の捕捉を安定させるといった接続構造体の生産性等の点から定めることができる。例えば、異方性導電フィルムのフィルム長手方向の多重円領域1個分の最大長Lxを、接続構造体をなす電子部品の端子パターンの幅(即ち、接続構造体の1個分の製造に使用する異方性導電フィルムの長さLf)の整数分の1以上とすることで(即ち、上述の異方性導電フィルムの長さLfを、その異方性導電フィルムに形成されている多重円領域の1個分の最大長Lxの整数倍以下とすることで)、個々の接続構造体の製造において同じ数の多重円領域が含まれることになるから、連続して得られた接続構造体間の導電粒子の捕捉状態の比較が容易になるという利点を得られる。上記した整数分の1とは、より具体的には1/200以上(多重円領域の最大長Lxに対して、異方性導電フィルムの長さLfが200倍以下)が好ましく、1/100以上(100倍以下)がより好ましく、1/50以上(50倍以下)がさらに好ましい。[多重円領域の1個分の最大長Lx]と[接続構造体の1個分の製造に使用する異方性導電フィルムの長さLf]との比Lx/Lfの好ましい数値は、使用するフィルムの長さと接続対象の端子レイアウトによって変動するため、上述の数値に限定されるものではない。一方、1個分の接続構造体の製造に使用する異方性導電フィルムの長さLfに対して、そこに含まれる多重円領域の1個分の最大長Lxは、製造された複数の接続構造体間で導電粒子の捕捉状態を比較し易くするためには、特に上限は無いが、一例として10倍以下としてもよく、5倍以下が好ましく、2倍以下がより好ましく、1.2倍以下がさらに好ましい。このようにすることで、連続的に接続構造体を生産する場合に、各接続構造体において同様の粒子配列形状の異方性導電フィルムが接続されることになるので、接続構造体を安定した品質で生産しやすくなると考えられる。
【0092】
多重円領域25から切り出した領域を隙間なく並べる場合に、隣り合う領域同士で重複する導電粒子や、導電粒子間距離が導電粒子径の2倍以内、好ましくは0.5倍以内となった導電粒子の一方は削除することが好ましい。また、例えば、隣り合う領域同士の繋ぎ目部分で、多重円領域25の最外部にある円が、例えば図6Bにおける繋ぎ目部分28のように、連続した曲線としてつながるようにしてもよい。これにより、切り出した多重円領域25の繋ぎ目の部分で、イレギュラーな不良(端子における導電粒子の補足数の低下やショート発生など)を回避させ易くなる効果が期待できる。また、このような繋ぎ目部分28のように、粒子密度が局所的に疎になった部分に、導電粒子を意図的に配置してもよい。
【0093】
また、第3の発明において、多重円領域を形成する同心円は楕円でもよい。例えば、図7Aに示すように、多重円領域25を複数の同心の楕円22p、22q、22r、22sから形成することができる。この場合、各同心の楕円上における導電粒子の中心間距離L2は一定であり、この距離L2は各楕円間の短径方向の距離L3と等しくなっている。なお、本発明においては、各楕円間の長径方向の距離と、楕円上における導電粒子の中心間距離L2とを等しくしてもよい。
【0094】
また、第1の同心楕円22p上の第1の導電粒子1pと楕円の中心とを結ぶ直線を第1の直線23pとし、第1の同心楕円に隣接する第2の同心楕円22q上の導電粒子であって、第1の導電粒子1pに最近接した第2の導電粒子1qと楕円の中心とを結ぶ直線を第2の直線23qとした場合に第1の直線23pと第2の直線23qが一致しないように導電粒子が配置されている。なお、同様に第3の直線23rと第4の直線23sとを規定した場合に、第1の直線23pと第2の直線23qが挟む角度θ1と、第2の直線23qと第3の直線23rとが挟む角度θ2と第3の直線23rと第4の直線23sとが挟む角度θ3は、同一としてもよく異ならせてもよい。
【0095】
図7Aに示すように多重円領域25を形成する同心円が楕円の場合にも、図7Bに示すように、異方性導電フィルムにおける導電粒子1の配置は、所定形状の領域(例えば矩形領域26)を切り出し、切り出した領域を隙間無く並べた配置とすることができる。このように隙間なく並べた場合にも、ショート防止のため、重複する導電粒子や導電粒子間距離が導電粒子の2倍以内、好ましくは0.5倍以内の導電粒子は取り除くことが好ましい。また、この場合においても繋ぎ目部分28のように、粒子密度が局所的に疎になった部分には、導電粒子を意図的に配置してもよい。また、上述したように多重円領域25を有する異方性導電フィルムを帯状に裁断したものが本発明には含まれ、図7A図7Bに示すように、多重円領域から切り出した領域を隙間なく並べた配置の異方性導電フィルムを帯状に裁断したものも含まれる。したがって、帯状に裁断した異方性導電フィルムには、湾曲した粒子配列が並列して見える場合や、湾曲した粒子配列が連続して見える場合がある。
【0096】
第3の発明で使用する異方性導電フィルムの導電粒子自体の構成、個数密度、絶縁性樹脂層の構成等は第1の発明や第2の発明と同様にすることができる。
【0097】
第3の発明で使用する異方性導電フィルムを使用すると、任意の導電粒子とその導電粒子に近接した2個以上の導電粒子が1直線上にのらないので、異方性導電接続する第1の電子部品及び第2の電子部品における端子の大きさやピッチによらず、各端子における導電粒子の捕捉性を向上させることができる。導電粒子同士からなる直線上に、それ以外の導電粒子が重畳することなく存在することができるので、端子が傾斜しても、端子の長手方向が十分に長ければ、捕捉される導電粒子は存在することが可能になるからである。したがって、本発明は、第3の発明で使用する異方性導電フィルムも包含する。また、本発明は、上述の第1、第2、第3の発明の方法で製造した接続構造体も包含する。
【0098】
[異方性導電フィルムの製造方法]
第1の発明、第2の発明、第3の発明で使用する異方性導電フィルムは、導電粒子の配置や密度をそれぞれの発明に適したものとするが、導電粒子が所定の粒子配置及び粒子密度の異方性導電フィルムを製造する方法自体には特に限定はない。例えば、導電粒子を所定の配列に配置するための転写型を製造し、転写型の凹部に導電粒子を充填し、その上に、剥離フィルム上に形成した絶縁性樹脂層を被せて圧力をかけ、絶縁性樹脂層に導電粒子を押し込むことにより、絶縁性樹脂層に導電粒子を転着させる。あるいはさらにその導電粒子上に絶縁性接着層を積層する。こうして、異方性導電フィルムを得ることができる。
【0099】
また、転写型の凹部に導電粒子を充填した後、その上に絶縁性樹脂層を被せ、転写型から絶縁性樹脂層の表面に導電粒子を転写させ、絶縁性樹脂層上の導電粒子を絶縁性樹脂層内に押し込むことにより異方性導電フィルムを製造してもよい。
【0100】
なお、転写型としては、凹部に導電粒子を充填するもの他、凸部の天面に微粘着剤を付与してその天面に導電粒子が付着するようにしたものを用いても良い。これらの転写型は機械加工、フォトリソグラフィ、印刷法等の公知の技術を用いて製造することができる。
【0101】
また、導電粒子を所定の配列に配置する方法としては、転写側を用いる方法に代えて、二軸延伸フィルムを用いる方法等を使用してもよい。導電粒子を、所定の配置で設けられた貫通孔を通過させる方法等を使用してもよい。
【0102】
[接続構造体の製造方法]
第1の発明、第2の発明、第3の発明のいずれにおいても、それぞれで接続する第1の電子部品と第2の電子部品に適した異方性導電フィルムを使用し、第1の電子部品と第2の電子部品を加熱加圧することにより第1の電子部品と第2の電子部品が異方性導電接続された接続構造体を得るが、この場合の加熱加圧方法自体に特に制限はない。
【0103】
例えば、ステージに一方の電子部品を載置し、その上に異方性導電フィルムを介してもう一方の電子部品を載置し、圧着ツールで加熱押圧することにより接続構造体を製造する場合に、ステージに載置する電子部品をICチップ、ICモジュール、FPC、ガラス基板、プラスチック基板、リジッド基板、セラミック基板などの第2の電子部品とし、圧着ツールで加熱加圧する電子部品をFPC、ICチップ、ICモジュールなどの第1の電子部品とする。そして、各種基板等の第2の電子部品に異方性導電フィルム仮貼りして仮圧着し、仮圧着した異方性導電フィルムにICチップ等の第1の電子部品を合わせ、熱圧着することにより接続構造体を製造する。なお、第2の電子部品ではなく、第1の電子部品に異方性導電フィルムを仮貼りして接続構造体を製造することもできる。また、本発明の接続方法は熱圧着に限定されるものではなく、光硬化を利用した圧着や、熱と光を併用した圧着など、公知の態様を含む。
【0104】
ただし、本発明の接続構造体の製造方法は、第1の電子部品および第2の電子部品の少なくとも一方を、FPCやプラスチック基板などの熱膨張しやすい材質のものとする場合に意義が高く、特に第1の電子部品と第2の電子部品の双方が熱膨張しやすい材質のものである場合に一層本発明の意義が高くなる。
【0105】
一方、接続対象とする電子部品としては、ICチップのように端子パターンが多段になっているものや、矩形の接続面の対向する辺に端子パターンが形成されているものなどを包含する。また、4辺全てに端子パターンが形成されているものも包含する。実用上好ましい態様は、アライメントを電子部品の短辺方向のみで調整できることから、主要な端子パターンが電子部品の長辺方向にのみ存在するものになる。
【実施例
【0106】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0107】
実施例1
端子が放射状に配列した端子パターン同士を接続した接続構造体を製造する場合に、各端子が捕捉する導電粒子数を、複数の端子が放射状に配列した端子パターンと粒子配列を作図上で重ね合わせることにより求め、端子における導電粒子の最少捕捉数が3個以上の場合をOK、3個未満の場合をNGとした。
【0108】
この場合、第1の電子部品における端子パターンは以下の形状を有するものとした。
【0109】
(1)端子パターン21として、図8Aに示すように2個の端子からなる放射状の配列を想定した。
(2)端子パターン21の中心線Qと端子20の長手方向に伸びた中心軸Rとがなす角度αを角度0.01~1°ずつ変化させ、最大値αmaxを14°とした。
(3)点Pと反対側の端子幅Ltは100μm、端子長は1000μm、端子間スペースLsは100μmである。
【0110】
第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子における有効接続面積は、100000μm2とした。
【0111】
異方性導電フィルム10としては、導電粒子の粒子径を3.2μmとし、導電粒子の配置をランダムとし、個数密度を4000個/mm2とした。導電粒子のランダムな配置状態は、個数密度が4000個/mm2となるようにバインダー樹脂中に混練りし、フィルム厚み20μmとした実際の異方性導電フィルムから得られた平面視の画像から、導電粒子の輪郭を抜き取って描画したものを使用した。
【0112】
その結果、端子20の中心軸Rを最大値αmaxまで傾斜させた場合における該端子20の導電粒子の最少捕捉数の評価はOKであり、中心線Qと中心軸Rがなす角度がいずれの大きさにおいても端子20が1個も導電粒子を捕捉しない場合は存在しなかった。
【0113】
比較例1
実施例1において、端子パターンの形状を同じとし、端子幅Ltを10μm、端子間スペースLsを20μm、有効接続面積を2000μm2とした以外は、実施例1と同様に各端子が捕捉する導電粒子数をシミュレーションにより求めた。
その結果、端子における導電粒子の最少捕捉数は0個であり、その評価はNGだった。
比較例2
実施例1において、導電粒子の個数密度を2000個/mm2未満とする以外は実施例1と同様に各端子が捕捉する導電粒子数をシミュレーションにより求めた。
その結果、端子における導電粒子の最少捕捉数は0個であり、その評価はNGだった。
【0114】
実施例2
実施例1と同様の端子パターンに対し、実施例1と同様にして端子が捕捉する導電粒子数を作図上で求めた。
【0115】
異方性導電フィルムとしては、導電粒子の粒子径を3.2μmとし、導電粒子の配置を正方格子とし、格子間距離(導電粒子中心間距離)を10μmとした。
【0116】
その結果、端子20の中心軸Rを最大値αmaxまで傾斜させた場合における該端子20の導電粒子の最少捕捉数の評価はOKであり、中心線Qと中心軸Rがなす角度がいずれの大きさにおいても端子20が1個も導電粒子を捕捉しない端子は存在しなかった。
【0117】
比較例3
実施例2において、角度αmaxを10°とし、格子間距離を20μmとした。その結果、端子における導電粒子の最少捕捉数は0個であり、その評価はNGだった。
【0118】
実施例3
実施例1と同様の端子パターンに対し、実施例1と同様にして端子が捕捉する導電粒子数を作図上で求めた。但し、異方性導電フィルムとしては、以下の導電粒子配置のものを使用した。
【0119】
即ち、異方性導電フィルムは、図5Bに示した多重円領域を有するものとした。この場合、多重円領域は次の仕様とした。
第1の同心円の直径は、20μm。
各同心円における導電粒子中心間距離L2は10μm。
各同心円間の距離L3は10μm。
第1の直線23aと第2の直線23bとがなす角度θは5°。
切り出す矩形領域は一辺が100μmの正方形。
【0120】
その結果、端子における導電粒子の最少捕捉数の評価はOKであった。
【0121】
なお、図8Bに示すように、上述の異方性導電フィルム10C上に一つの端子20(200μm×10μm)をおき、その端子を該端子の中心の周りに0°~360°まで1°刻みで回転させたときの該端子における導電粒子の捕捉数を計測した。その結果、導電粒子の最少捕捉数は角度40°のときに6個であり、導電粒子を1個も捕捉しない端子は存在しなかった。
【符号の説明】
【0122】
1、1a、1b、1c、1p、1q、1x 導電粒子
2 絶縁性樹脂層
3 導電粒子分散層
10、10x、10y、10A、10B、10C 異方性導電フィルム
20、20A、20B 端子
20C 有効接続領域
21 端子パターン
21A 第1の電子部品の端子パターン
21B 第2の電子部品の端子パターン
22a、22b、22c、22d 同心円
22p、22q、22r、22s 同心楕円
23a 第1の直線
23b 第2の直線
23c 第3の直線
23d 第4の直線
25 多重円領域
26 領域
27 6角形領域
28 繋ぎ目部分
30A 第1の電子部品
30B 第2の電子部品
L1 配列ピッチ(格子間距離)
L2 同心円上(同心楕円上)の導電粒子の中心間距離
L3 同心円間(同心楕円間)の距離
P 端子パターン外の点
Q 点Pを通る端子パターンの中心線
R 端子の中心軸
T 配列軸
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10