(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】無人車両の制御装置及び無人車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240104BHJP
B62D 5/065 20060101ALI20240104BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
G05D1/02 H
G05D1/02 W
B62D5/065 B
B62D6/00
(21)【出願番号】P 2017231094
(22)【出願日】2017-11-30
【審査請求日】2020-10-01
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻原 正紀
(72)【発明者】
【氏名】山村 龍
(72)【発明者】
【氏名】馬場 昭典
【合議体】
【審判長】渋谷 善弘
【審判官】鈴木 貴雄
【審判官】田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-196051(JP,A)
【文献】実開平5-61506(JP,U)
【文献】特開2002-264833(JP,A)
【文献】特開2011-235760(JP,A)
【文献】特開2000-339029(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0208393(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
B62D 6/00
B62D 5/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理装置から送信された走行コースデータに基づいて作業現場を無人で走行する無人車両の操舵装置を作動する第1油圧アクチュエータに供給される作動油の温度データを取得する温度データ取得部と、
前記温度データに基づいて
前記走行コースデータに含まれる前記無人車両の走行パラメータを変更する変更指令を出力する指令出力部と、を備える
無人車両の制御装置。
【請求項2】
前記走行パラメータは、前記無人車両の制限走行速度を含み、
前記指令出力部は、前記温度データに基づいて、前記制限走行速度を変更する、
請求項1に記載の無人車両の制御装置。
【請求項3】
前記温度データに基づいて、前記操舵装置の最大操舵速度を算出する最大操舵速度算出部を備え、
前記指令出力部は、前記最大操舵速度に基づいて、前記制限走行速度を変更する、
請求項2に記載の無人車両の制御装置。
【請求項4】
前記作動油の温度と前記操舵装置の最大操舵速度との相関データを記憶する記憶部を備え、
前記最大操舵速度算出部は、前記温度データと前記相関データとに基づいて、前記最大操舵速度を算出する、
請求項3に記載の無人車両の制御装置。
【請求項5】
前記第1油圧アクチュエータに最大流量で前記作動油が供給されているときの前記操舵装置の操舵速度データを算出する操舵速度データ算出部を備え、
前記最大操舵速度算出部は、前記操舵速度データに基づいて、前記操舵装置の最大操舵速度を算出する、
請求項3又は請求項4に記載の無人車両の制御装置。
【請求項6】
前記走行パラメータは、前記操舵装置の操舵速度を含み、
前記指令出力部は、前記温度データに基づいて、前記操舵速度を変更する、
請求項1に記載の無人車両の制御装置。
【請求項7】
前記第1油圧アクチュエータに接続される油圧回路における前記作動油の流通状態を調整可能なバルブ装置を制御するバルブ制御部を備え、
前記バルブ制御部は、前記無人車両の走行開始前に、前記第1油圧アクチュエータが作動するように前記バルブ装置を制御する、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の無人車両の制御装置。
【請求項8】
前記油圧回路は、第2油圧アクチュエータに接続され、
前記バルブ制御部は、前記無人車両の走行開始前に、前記第2油圧アクチュエータに供給される前記作動油が流れる前記油圧回路の少なくとも一部において前記作動油を循環させる、
請求項7に記載の無人車両の制御装置。
【請求項9】
管理装置から送信された走行コースデータに基づいて作業現場を無人で走行する無人車両の操舵装置を作動する第1油圧アクチュエータに供給される作動油の温度データを取得することと、
前記温度データに基づいて
前記走行コースデータに含まれる前記無人車両の走行パラメータを変更する変更指令を出力することと、を含む
無人車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人車両の制御装置及び無人車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱山のような広域の作業現場において無人車両が使用される場合がある。作業現場において無人車両の走行コースが設定される。無人車両は走行コースに従って走行するように制御される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業現場が寒冷地である場合、油圧装置を作動する作動油の温度が低下する。温度の低下に伴って作動油の粘度が上昇すると、油圧装置の応答性が低下する可能性がある。例えば、無人車両の操舵装置が油圧により作動する場合、作動油の温度が低下し、粘度が上昇すると、操舵装置の操舵応答性が低下する可能性がある。操舵装置の操舵応答性が低下すると、走行コースに従って走行する無人車両の追従性能が低下する可能性がある。
【0005】
本発明の態様は、走行コースに従って走行する無人車両の追従性能の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、無人車両の操舵装置を作動する第1油圧アクチュエータに供給される作動油の温度データを取得する温度データ取得部と、前記温度データに基づいて前記無人車両の走行パラメータを変更する変更指令を出力する指令出力部と、を備える無人車両の制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の態様によれば、走行コースに従って走行する無人車両の追従性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る管制システム及び無人車両の一例を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る無人車両の一例を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る管理装置及び制御装置の一例を示す機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る記憶部に記憶されている相関データの一例を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る記憶部に記憶されている相関データの一例を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る無人車両が走行しているときにバルブ装置に出力される制御指令と操舵角との関係を示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る走行コースの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る無人車両の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る無人車両の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、第3実施形態に係る無人車両の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、第3実施形態に係る油圧回路の一部を模式的に示す図である。
【
図12】
図12は、コンピュータシステムの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
<第1実施形態>
[管制システム]
図1は、本実施形態に係る管制システム1及び無人車両2の一例を模式的に示す図である。無人車両2とは、運転者による運転操作によらずに、無人で走行する車両をいう。無人車両2は、管制システム1からの後述する走行コースデータに基づいて走行する。なお、無人車両2は、遠隔操作により走行してもよいし、自律走行してもよい。無人車両2は、作業現場において稼働する。本実施形態において、作業現場は鉱山又は採石場であり、無人車両2は作業現場を走行して積荷を運搬するダンプトラックである。鉱山とは、鉱物を採掘する場所又は事業所をいう。無人車両2に運搬される積荷として、鉱山又は採石場において掘削された鉱石又は土砂が例示される。
【0011】
管制システム1は、管理装置3と、通信システム4とを備える。管理装置3は、コンピュータシステムを含み、例えば鉱山の管制施設5に設置される。通信システム4は、管理装置3と無人車両2との間で通信を実施する。管理装置3に無線通信機6が接続される。通信システム4は、無線通信機6を含む。管理装置3と無人車両2とは、通信システム4を介して無線通信する。無人車両2は、管理装置3からの走行コースデータに基づいて、作業現場を走行する。
【0012】
[無人車両]
無人車両2は、走行装置21と、走行装置21に支持される車両本体22と、車両本体22に支持されるダンプボディ23と、制御装置30とを備える。
【0013】
走行装置21は、走行装置21を駆動する駆動装置24と、走行装置21を制動するブレーキ装置25と、走行方向を調整する操舵装置26と、車輪27とを有する。
【0014】
車輪27が回転することにより、無人車両2は自走する。車輪27は、前輪27Fと後輪27Rとを含む。車輪27にタイヤが装着される。
【0015】
駆動装置24は、無人車両2を加速させるための駆動力を発生する。駆動装置24は、ディーゼルエンジンのような内燃機関を含む。なお、駆動装置24は、電動機を含んでもよい。駆動装置24で発生した動力が後輪27Rに伝達される。ブレーキ装置25は、無人車両2を減速又は停止させるための制動力を発生する。操舵装置26は、無人車両2の走行方向を調整可能である。無人車両2の走行方向は、車両本体22の前部の向きを含む。操舵装置26は、前輪27Fを操舵することによって、無人車両2の走行方向を調整する。
【0016】
制御装置30は、駆動装置24を作動するためのアクセル指令、ブレーキ装置25を作動するためのブレーキ指令、及び操舵装置26を作動するためのステアリング指令を出力する。駆動装置24は、制御装置30から出力されたアクセル指令に基づいて、無人車両2を加速させるための駆動力を発生する。駆動装置24の出力が調整されることにより、無人車両2の走行速度が調整される。ブレーキ装置25は、制御装置30から出力されたブレーキ指令に基づいて、無人車両2を減速させるための制動力を発生する。操舵装置26は、制御装置30から出力されたステアリング指令に基づいて、無人車両2を直進又は旋回させるために前輪27Fの向きを変えるための力を発生する。
【0017】
また、無人車両2は、無人車両2の位置を検出する位置検出装置28を備える。無人車両2の位置が、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)を利用して検出される。全地球航法衛星システムは、全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)を含む。全地球航法衛星システムは、緯度、経度、及び高度の座標データで規定される無人車両2の絶対位置を検出する。全地球航法衛星システムにより、グローバル座標系において規定される無人車両2の位置が検出される。グローバル座標系とは、地球に固定された座標系をいう。位置検出装置28は、GPS受信機を含み、無人車両2の絶対位置(座標)を検出する。
【0018】
また、無人車両2は、無線通信機29を備える。通信システム4は、無線通信機29を含む。無線通信機29は、管理装置3と無線通信可能である。
【0019】
[油圧システム]
図2は、本実施形態に係る無人車両2の一例を模式的に示す図である。
図2に示すように、無人車両2は、油圧システム10を有する。
【0020】
油圧システム10は、駆動装置24で発生した駆動力により作動する油圧ポンプ11と、流路を介して油圧ポンプ11と接続されるバルブ装置12と、油圧ポンプ11から供給された作動油に基づいて駆動する第1油圧アクチュエータ13と、油圧ポンプ11から供給された作動油に基づいて駆動する第2油圧アクチュエータ14と、作動油を収容する作動油タンク15とを有する。
【0021】
駆動装置24は、油圧ポンプ11の動力源である。油圧ポンプ11は、第1油圧アクチュエータ13の動力源及び第2油圧アクチュエータ14の動力源である。油圧ポンプ11は、駆動装置24の出力軸と接続され、駆動装置24で発生した駆動力により作動する。油圧ポンプ11は、作動油タンク15に収容されている作動油を吸引して、吐出口から吐出する。
【0022】
第1油圧アクチュエータ13は、操舵装置26を作動する。操舵装置26は、第1油圧アクチュエータ13で発生した動力により作動する。第1油圧アクチュエータ13は、油圧シリンダである。第1油圧アクチュエータ13は、作動油の流量に基づいて伸縮する。第1油圧アクチュエータ13が伸縮することにより、第1油圧アクチュエータ13に連結されている操舵装置26が作動する。
【0023】
油圧ポンプ11から吐出された作動油は、流路16A、バルブ装置12、及び流路16Bを介して、第1油圧アクチュエータ13に供給される。第1油圧アクチュエータ13から流出した作動油は、流路16B、バルブ装置12、及び流路16Dを介して、作動油タンク15に戻される。
【0024】
以下の説明においては、第1油圧アクチュエータ13を適宜、ステアリングシリンダ13、と称する。
【0025】
ステアリングシリンダ13は、ボトムを有するシリンダチューブ131と、シリンダチューブ131の内部空間をボトム室13Bとヘッド室13Hとに区画するピストン132と、ピストン132に連結されるロッド133とを備える。ボトム室13Bに流路16Bbが接続される。ヘッド室13Hに流路16Bhが接続される。
【0026】
油圧ポンプ11から吐出された作動油は、流路16A、バルブ装置12、及び流路16Bbを介して、ボトム室13Bに供給される。ボトム室13Bに作動油が供給されると、ステアリングシリンダ13は伸びる。
【0027】
また、油圧ポンプ11から吐出された作動油は、流路16A、バルブ装置12、及び流路16Bhを介して、ヘッド室13Hに供給される。ヘッド室13Hに作動油が供給されると、ステアリングシリンダ13は縮む。
【0028】
左側の前輪27Fと右側の前輪27Fとはリンク機構を介して連結される。本実施形態において、ステアリングシリンダ13は、ステアリングシリンダ13L及びステアリングシリンダ13Rを含む。ステアリングシリンダ13L及びステアリングシリンダ13Rの作動により、リンク機構を介して連結されている左側の前輪27Fと右側の前輪27Fとは、同期して作動する。なお、ステアリングシリンダ13は1つでもよい。
【0029】
第2油圧アクチュエータ14は、ダンプボディ23を作動する。ダンプボディ23は、第2油圧アクチュエータ14で発生した動力により作動する。第2油圧アクチュエータ14は、油圧シリンダである。第2油圧アクチュエータ14は、作動油に基づいて伸縮する。第2油圧アクチュエータ14が伸縮することにより、第2油圧アクチュエータ14に連結されているダンプボディ23が上下方向に移動する。
【0030】
油圧ポンプ11から吐出された作動油は、流路16A、バルブ装置12、及び流路16Cを介して、第2油圧アクチュエータ14に供給される。第2油圧アクチュエータ14から流出した作動油は、流路16C、バルブ装置12、及び流路16Dを介して作動油タンク15に戻される。
【0031】
以下の説明においては、第2油圧アクチュエータ14を適宜、ホイストシリンダ14、と称する。
【0032】
バルブ装置12は、制御装置30からの動作指令に基づいて作動する。バルブ装置12は、ステアリングシリンダ13及びホイストシリンダ14のそれぞれに接続される油圧回路16における作動油の流通状態を調整可能である。バルブ装置12は、ステアリングシリンダ13に供給される作動油の流量及び方向を調整可能な第1の流量調整弁と、ホイストシリンダ14に供給される作動油の流量及び方向とを調整可能な第2の流量調整弁とを含む。
【0033】
また、油圧回路16には、ステアリングシリンダ13に供給される作動油の温度を検出する温度センサ17が設けられる。温度センサ17は、ステアリングシリンダ13に接続されている流路16Bにおける作動油の温度を検出する温度センサ17Aと、作動油タンク15における作動油の温度を検出する温度センサ17Bとを含む。
【0034】
また、操舵装置26には、操舵装置26の操舵角を検出する操舵角センサ18が設けられる。操舵角センサ18は、例えばポテンショメータを含む。
【0035】
[管理装置及び制御装置]
図3は、本実施形態に係る管理装置3及び制御装置30の一例を示す機能ブロック図である。制御装置30は、通信システム4を介して管理装置3と通信可能である。
【0036】
管理装置3は、走行コースを生成する走行コース生成部3Aと、記憶部3Bと、通信部3Cとを有する。
【0037】
走行コース生成部3Aは、走行コースを含む走行コースデータを生成する。走行コースは、無人車両2の目標走行経路を示す。また、走行コースデータは、走行コースに間隔をあけて設定された複数のポイントのそれぞれにおける目標走行速度及び目標走行方位を含む。記憶部3Bは、走行コース生成部3Aにおいて走行コースデータを生成するために必要なプログラムを記憶する。走行コース生成部3Aは、生成した走行コースデータを通信部3Cに出力する。通信部3Cは、走行コースデータを無人車両2の制御装置30に送信する。
【0038】
制御装置30は、通信部31と、走行コースデータ取得部32と、温度データ取得部33と、操舵角データ取得部34Aと、操舵速度データ算出部34Bと、最大操舵速度算出部35と、指令出力部36と、走行制御部37と、バルブ制御部38と、記憶部39とを備える。
【0039】
走行コースデータ取得部32は、管理装置3から送信された走行コースデータを、通信部31を介して取得する。
【0040】
温度データ取得部33は、温度センサ17により検出されたステアリングシリンダ13に供給される作動油の温度Tを示す温度データを取得する。
【0041】
操舵角データ取得部34Aは、操舵角センサ18により検出された操舵装置26の操舵角θを示す操舵角データを取得する。
【0042】
操舵速度データ算出部34Bは、操舵角データ取得部34Aにより取得された操舵角データに基づいて、操舵装置26の操舵速度Vθを示す操舵速度データを算出する。操舵速度Vθとは、単位時間当たりの操舵角θの変化量をいう。
【0043】
最大操舵速度算出部35は、温度データ取得部33に取得された作動油の温度データに基づいて、操舵装置26の最大操舵速度Vθmaxを算出する。操舵装置26の最大操舵速度Vθmaxとは、操舵装置26が操舵可能な操舵速度Vθの最高値をいう。操舵装置26は、ステアリングシリンダ13で発生する動力に基づいて作動する。ステアリングシリンダ13を作動する作動油の粘度ηは、作動油の温度Tに基づいて変化する。作動油の粘度ηが高いと、ステアリングシリンダ13のピストン132は高速で移動することができず、その結果、ステアリングシリンダ13のピストン132が移動可能な最高移動速度は低下する。ピストン132の最高移動速度が低下すると、操舵装置26の最大操舵速度Vθmaxは低下する。作動油の粘度ηが低いと、ステアリングシリンダ13のピストン132は高速で移動することができる。その結果、ステアリングシリンダ13のピストン132が移動可能な最高移動速度は増加する。ピストン132の最高移動速度が増加すると、操舵装置26の最大操舵速度Vθmaxは増大する。最大操舵速度算出部35は、温度センサ17により検出された作動油の温度データに基づいて、操舵装置26の最大操舵速度Vθmaxを算出(推定)することができる。
【0044】
指令出力部36は、作動油の温度データに基づいて、無人車両2の走行パラメータを変更する変更指令を出力する。走行パラメータは、管理装置3から制御装置30に送信される走行コースデータに含まれる。本実施形態において、走行パラメータは、無人車両2の制限走行速度Vsmaxを含む。制限走行速度Vsmaxとは、無人車両2の走行速度Vsを制限する制限値(最高速度)をいう。指令出力部36は、作動油の温度データに基づいて、制限走行速度Vsmaxを変更する変更指令を出力する。本実施形態において、指令出力部36は、作動油の温度データから算出される最大操舵速度Vθmaxに基づいて、無人車両2の走行速度Vsを制限する制限走行速度Vsmaxを変更する変更指令を出力する。
【0045】
走行制御部37は、変更後の走行パラメータである制限走行速度Vsmaxに基づいて、操舵装置26を含む走行装置21を制御する運転指令を走行装置21に出力する。運転指令は、走行装置21の走行状態を制御する指令であり、走行コースデータ及び走行パラメータに基づいて決定される。走行装置21の走行状態は、走行装置21の駆動、制動、及び旋回を含む。走行制御部37は、走行コースデータ及び走行パラメータである制限走行速度Vsmaxに基づいて、走行装置21の駆動、制動、及び旋回させるための運転指令を走行装置21に出力する。
【0046】
バルブ制御部38は、バルブ装置12を制御する制御指令をバルブ装置12に出力する。バルブ装置12は、ステアリングシリンダ13に供給される単位時間当たりの作動油の流量Qを調整可能な第1の流量調整弁を含む。以下の説明においては、第1の流量調整弁が全開状態のときにステアリングシリンダ13に供給される作動油の流量Qを適宜、作動油の最大流量Qmax、と称する。
【0047】
[最大操舵速度の第1の算出方法]
次に、最大操舵速度算出部35による操舵装置26の最大操舵速度Vθmaxの第1の算出方法について説明する。
【0048】
本実施形態において、記憶部39には、作動油の温度Tと操舵装置26の最大操舵速度Vθmaxとの相関データが記憶されている。最大操舵速度算出部35は、温度センサ17により検出された作動油の温度データと記憶部39に記憶されている相関データとに基づいて、操舵装置26の最大操舵速度Vθmaxを算出することができる。
【0049】
図4は、本実施形態に係る記憶部39に記憶されている相関データの一例を模式的に示す図である。
図4において、横軸は作動油の温度Tを示し、縦軸は最大操舵速度Vθmaxを示す。上述のように、作動油の粘度ηは、作動油の温度Tに基づいて変化する。作動油の粘度ηが高いと、ステアリングシリンダ13のピストン132が移動可能な最高移動速度は低下し、その結果、操舵装置26の最大操舵速度Vθmaxは低下する。作動油の粘度ηが低いと、ステアリングシリンダ13のピストン132が移動可能な最高移動速度は増加し、その結果、操舵装置26の最大操舵速度Vθmaxは増大する。
【0050】
相関データは、実験又はシミュレーションにより予め導出される。導出された相関データは、記憶部39に記憶される。
【0051】
図5は、本実施形態に係る記憶部39に記憶されている相関データの一例を模式的に示す図である。
図5に示すように、記憶部39には、作動油の温度Tと最大操舵速度Vθmaxとの関係を示すテーブルデータが記憶される。本実施形態においては、複数の無人車両2のそれぞれについて相関データが導出され、記憶される。
図5に示す例では、第1の無人車両2、第2の無人車両2、及び第3の無人車両2のそれぞれについての相関データが記憶される。また、複数の無人車両2のそれぞれについて、ダンプボディ23に積荷がない空荷状態のときの相関データと、ダンプボディ23に積荷がある積荷状態のときの相関データとのそれぞれが導出され、記憶される。
【0052】
なお、
図4及び
図5は、第1の流量調整弁が全開状態であり、ステアリングシリンダ13に最大流量Qmaxで作動油が供給されているときの相関データを示す。
【0053】
最大操舵速度算出部35は、温度センサ17により検出された作動油の温度データと、記憶部39に記憶されている相関データとに基づいて、作動油がある温度Tのときの操舵装置26の最大操舵速度Vθmaxを導出することができる。
【0054】
[最大操舵速度の第2の算出方法]
次に、最大操舵速度算出部35による操舵装置26の最大操舵速度Vθmaxの第2の算出方法について説明する。
【0055】
バルブ制御部38は、無人車両2が走行しているときに、バルブ装置12を制御して、ステアリングシリンダ13に供給される作動油の流量Qを調整する第1の流量調整弁を全開状態にする。操舵速度データ算出部34Bは、ステアリングシリンダ13に最大流量Qmaxで作動油が供給されているときの操舵装置26の操舵速度Vθを示す操舵速度データを算出する。
【0056】
図6は、本実施形態に係る無人車両2が走行しているときにバルブ装置12に出力される制御指令(電流)と操舵角θとの関係を示す図である。無人車両2が走行しているとき、バルブ装置12の第1の流量調整弁が全開状態であり、ステアリングシリンダ13に最大流量Qmaxで作動油が供給される期間PRが生じる。期間PRにおける操舵角θが操舵角センサ18によって検出される。最大操舵速度算出部35は、操舵角センサ18の検出データに基づいて、操舵速度Vθを算出することができる。
【0057】
ステアリングシリンダ13に最大流量Qmaxで作動油が供給されることにより、ステアリングシリンダ13のピストン132は、最高移動速度で作動し、操舵装置26は、最大操舵速度Vθmaxで作動する。最大操舵速度算出部35は、期間PRにおいて操舵角センサ18により検出された操舵速度データに基づいて、最大操舵速度Vθmaxを算出することができる。また、最大操舵速度算出部35は、期間PRにおいて温度センサ17に検出された作動油の温度Tに基づいて、作動油が温度Tのときの最大操舵速度Vθmaxを算出することができる。
【0058】
[走行コース]
図7は、本実施形態に係る走行コースCrの一例を示す図である。
図7に示すように、無人車両2は、走行コースCrに従って走行するように制御される。作動油の粘度ηが高く、操舵装置26の操舵応答性が低下すると、
図7に示すように、無人車両2の実際の走行軌跡Csは、走行コースCrから外れてしまう。操舵装置26の操舵応答性とは、走行コースデータに基づいて操舵装置26を作動させるためにバルブ制御部38がバルブ装置12に制御指令を出力してから、操舵装置26の実際の操舵角θが制御指令に応じた目標操舵角θrefになるまでに要する時間を含む。
【0059】
作動油の粘度ηが高いと、バルブ装置12に制御指令を出力しても、操舵装置26の実際の操舵角θが制御指令に応じた目標操舵角θrefになるまでに時間を要することとなる。その結果、
図7に示すように、走行コースCrと実際の走行軌跡Csとにずれが生じてしまうこととなる。
【0060】
そこで、本実施形態においては、無人車両2が旋回するときにおいて(カーブを曲がるときにおいて)、作動油の温度Tが低く作動油の粘度ηが高いとき、指令出力部36は、無人車両2の制限走行速度Vsmaxを低くして、無人車両2を低速で走行させる。これにより、操舵装置26の操舵応答性が低くても、無人車両2は、走行コースCrに従って走行することができる。一方、作動油の温度Tが高く作動油の粘度ηが低いとき、指令出力部36は、無人車両2の制限走行速度Vsmaxを高くして、無人車両2を高速で走行させる。作動油の温度Tが高いとき、操舵装置26の操舵応答性が高いため、無人車両2は、走行コースCrに従って走行することができる。
【0061】
また、本実施形態においては、無人車両2が走行するカーブの曲率の変化率が大きいとき(曲がり具合がきついとき)、指令出力部36は、無人車両2の制限走行速度Vsmaxを低くして、無人車両2を低速で走行させる。これにより、無人車両2は、走行コースCrに従って走行することができる。一方、無人車両2が走行するカーブの曲率の変化率が小さいとき(曲がり具合が緩やかなとき)、指令出力部36は、無人車両2の制限走行速度Vsmaxを高くして、無人車両2を高速で走行させる。カーブの曲率の変化率が小さいとき、無人車両2は、高速で走行しても、走行コースCrに従って走行することができる。
【0062】
このように、指令出力部36は、走行コース生成部3Aで生成された走行コースデータから、無人車両2が走行するカーブの曲率の変化率を導出することができる。指令出力部36は、作動油の温度データに基づいて、無人車両2が走行コースに従って走行するように、無人車両2の走行パラメータである制限走行速度Vsmaxを変更する。
【0063】
本実施形態において、バルブ制御部38は、操舵装置26が最大操舵速度Vθmaxで作動するように、バルブ装置12を制御する。すなわち、バルブ制御部38は、無人車両2を旋回させるとき、第1の流量調整弁を全開状態にする。指令出力部36は、操舵装置26が最大操舵速度Vθmaxで作動したときに、無人車両2が走行コースCrに従って走行するように、制限走行速度Vsmaxを変更する。
【0064】
指令出力部36は、所定の演算式に基づいて、最大操舵速度Vθmaxで操舵装置26が操舵されたときに無人車両2が走行コースのカーブに従って走行可能な制限走行速度Vsmaxを算出することができる。なお、無人車両2が走行コースのカーブに従って走行可能な無人車両2の最大操舵速度Vθmaxと制限走行速度Vsmaxとの関係を示す相関データが実験又はシミュレーションによって予め導出され、記憶部39に記憶されてもよい。指令出力部36は、記憶部39に記憶されている相関データに基づいて、最大操舵速度Vθmaxで操舵装置26が操舵されたときに無人車両2が走行コースのカーブに従って走行可能な制限走行速度Vsmaxを算出してもよい。
【0065】
[制御方法]
図8は、本実施形態に係る無人車両2の制御方法の一例を示すフローチャートである。管理装置3において、走行コース生成部3Aは、走行コースデータを生成する。走行コースデータは、例えば走行コースのカーブの曲率の変化率、及び無人車両2の走行速度Vsの初期値を示す走行速度Vsdefを含む。走行速度Vsdefは、作動油の温度Tが規定の初期温度(例えば常温)のときに無人車両2が走行コースのカーブに従って走行できる走行速度Vsである。作動油の温度Tが初期温度まで上昇していれば、操舵装置26が最大操舵速度Vθmaxで作動することにより、無人車両2は、走行速度Vsdefで走行しても、走行コースのカーブに従って走行することができる。管理装置3は、生成した走行コースデータを、通信システム4を介して無人車両2の制御装置30に送信する。
【0066】
制御装置30において、走行コースデータ取得部32は、走行コースデータを取得する(ステップS11)。走行コースデータ取得部32は、走行コースデータを取得することによって、走行コースの曲率の変化率を取得することができる。また、走行コースデータ取得部32は、走行コースデータを取得することによって、走行速度Vsdefを取得することができる。
【0067】
温度データ取得部33は、温度センサ17から作動油の温度データを取得する(ステップS12)。本実施形態において、温度データ取得部33は、温度センサ17Aから作動油の温度データを取得する。なお、温度データ取得部33は、温度センサ17Bから作動油の温度データを取得してもよい。
【0068】
最大操舵速度算出部35は、温度データ取得部33により取得された作動油の温度データと、記憶部39に記憶されている作動油の温度Tと操舵装置26の最大操舵速度Vθmaxとの関係を示す相関データとに基づいて、温度データ取得部33に取得された作動油の温度Tに対応する操舵装置26の最大操舵速度Vθmaxを算出する(ステップS13)。
【0069】
指令出力部36は、ステップS13で算出された操舵装置26の最大操舵速度Vθmaxと、走行コースデータ取得部32に取得された走行コースデータとに基づいて、最大操舵速度Vθmaxで操舵装置26が操舵されたときに無人車両2が走行コースのカーブに従って走行することができる制限走行速度Vsmaxを算出する(ステップS14)。
【0070】
指令出力部36は、制限走行速度Vsmaxが走行速度Vsdefよりも低いとき、走行速度Vsdefを制限走行速度Vsmaxに変更する変更指令を出力する(ステップS15)。
【0071】
走行制御部37は、変更後の制限走行速度Vsmaxに基づいて、操舵装置26を含む無人車両2の走行装置21を制御する運転指令を走行装置21に出力する(ステップS16)。
【0072】
無人車両2は、走行コースのカーブを、変更後の制限走行速度Vsmaxに基づいて走行する。無人車両2は、変更後の制限走行速度Vsmax以下の走行速度Vsで走行するため、操舵装置26の操舵応答性が低くても、走行コースに従って走行することができる。
【0073】
[効果]
以上説明したように、本実施形態によれば、無人車両2の制御装置30は、無人車両2の操舵装置26を作動するステアリングシリンダ13に供給される作動油の温度データを取得する温度データ取得部33と、作動油の温度データに基づいて無人車両2の制限走行速度Vsmaxを変更する変更指令を出力する指令出力部36と、を備える。これにより、作業現場が寒冷地であり、作動油の温度Tの低下に伴って作動油の粘度ηが上昇し、操舵装置26の操舵応答性が低下しても、作動油の温度データに基づいて、制限走行速度Vsmaxを変更することにより、無人車両2を走行コースに従って走行させることができる。例えば、作動油の温度Tが低いときには、無人車両2の制限走行速度Vsmaxを低い値に設定して、無人車両2を低速で走行させることにより、無人車両2を走行コースに従って走行させることができる。また、作動油の温度Tが低く、走行コースのカーブの曲率の変化率が大きいときには、無人車両2の制限走行速度Vsmaxを更に低い値に設定して、無人車両2をより低速で走行させることにより、無人車両2を走行コースに従って走行させることができる。また、作動油の温度Tが高いときには、無人車両2の制限走行速度Vsmaxを高い値に設定して、無人車両2を高速で走行させることにより、無人車両2の作業効率(運搬効率)を向上させつつ、無人車両2を走行コースに従って走行させることができる。
【0074】
このように、本実施形態においては、走行コースに従って走行する無人車両2の走行性能を示す追従性能の低下を抑制することができる。
【0075】
作動油の温度Tと操舵装置26の最大操舵速度Vθmaxとの相関データを記憶する記憶部39が設けられる。これにより、最大操舵速度算出部35は、温度センサ17で検出された作動油の温度データと記憶部39に記憶されている相関データとに基づいて、温度センサ17で検出された作動油の温度Tに対応する操舵装置26の最大操舵速度Vθmaxを容易に算出することができる。
【0076】
なお、上述のステップS13において、最大操舵速度算出部35は、
図4及び
図5を参照して説明した最大操舵速度Vθmaxの第1の算出方法により、最大操舵速度Vθmaxを算出することとしたが、
図6を参照して説明した最大操舵速度Vθmaxの第2の算出方法により、最大操舵速度Vθmaxを算出してもよい。なお、最大操舵速度算出部35は、最大操舵速度Vθmaxの第1の算出方法及び第2の算出方法の両方を用いて、最大操舵速度Vθmaxを算出してもよい。
【0077】
<第2実施形態>
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0078】
上述の第1実施形態においては、走行パラメータが無人車両2の制限走行速度Vsmaxを含み、作動油の温度データに基づいて制限走行速度Vsmaxが変更されることとした。本実施形態においては、走行パラメータが操舵装置26の操舵速度Vθを含み、作動油の温度データに基づいて操舵装置26の操舵速度Vθが変更される例について説明する。
【0079】
また、上述の第1実施形態においては、ステアリングシリンダ13に最大流量Qmaxで作動油が供給され、操舵装置26が最大操舵速度Vθmaxで操舵されることした。本実施形態においては、ステアリングシリンダ13に最大流量Qmaxよりも少ない流量Qで作動油が供給される場合がある。上述のように、ステアリングシリンダ13の最大流量Qmaxとは、ステアリングシリンダ13に供給される単位時間当たりの作動油の流量Qを調整可能な第1の流量調整弁が全開状態のときにステアリングシリンダ13に供給される作動油の流量をいう。最大流量Qmaxよりも少ない流量Qとは、第1の流量調整弁が最大開度(全開状態)ではなく最大開度よりも小さい規定開度に調整さたときにステアリングシリンダ13に供給される作動油の流量をいう。無人車両2の走行速度Vsが高速である場合、又は無人車両2が走行するカーブの曲率の変化率が大きい場合(曲がり具合がきつい場合)等においては、操舵装置26を高速で作動させる必要がある。そのような場合、ステアリングシリンダ13に最大流量Qmaxで作動油が供給される。一方、無人車両2の走行速度Vsが低速である場合、又は無人車両2が走行するカーブの曲率の変化率が小さい場合(曲がり具合が緩やかな場合)等においては、操舵装置26を低速で作動させてもよい。そのような場合、ステアリングシリンダ13に最大流量Qmaxよりも少ない流量Qで作動油が供給される。指令出力部36は、作動油の温度データに基づいて、ステアリングシリンダ13に供給される作動油の流量Qを調整して、操舵速度Vθを変更する。
【0080】
図9は、本実施形態に係る無人車両2の制御方法の一例を示すフローチャートである。管理装置3において、走行コース生成部3Aは、走行コースデータを生成する。走行コースデータは、走行コースの曲率、及び走行コースにおける操舵装置26の操舵速度Vθの初期値を示す操舵速度Vθdefを含む。操舵速度Vθdefは、作動油の温度Tが規定温度(例えば常温)のときに無人車両2が走行コースのカーブに従って走行することができる操舵速度Vθである。作動油の温度Tが規定温度であれば、操舵装置26が操舵速度Vθdefで作動することにより、無人車両2は、走行速度Vsdefで走行コースのカーブに従って走行することができる。管理装置3は、生成した走行コースデータを、通信システム4を介して無人車両2の制御装置30に送信する。
【0081】
制御装置30において、走行コースデータ取得部32は、走行コースデータを取得する(ステップS21)。走行コースデータ取得部32は、走行コースデータを取得することによって、走行コースの曲率の変化率を取得することができる。また、走行コースデータ取得部32は、走行コースデータを取得することによって、走行速度Vsdef及び操舵速度Vθdefを取得することができる。
【0082】
温度データ取得部33は、温度センサ17から作動油の温度データを取得する(ステップS22)。
【0083】
指令出力部36は、温度データ取得部33に取得された作動油の温度データに基づいて、無人車両2が走行速度Vsdefで走行コースのカーブを走行したときに、走行コースのカーブに従って走行することができる操舵装置26の目標操舵速度Vθrefを算出する(ステップS23)。
【0084】
記憶部39には、作動油の温度Tとその作動油の温度Tに対応する操舵装置26の最大操舵速度Vθmaxとの関係を示す相関データが記憶されている。本実施形態において、作動油がある温度Tであるときの目標操舵速度Vθrefは、その温度Tに対応する最大操舵速度Vθmaxによって示される。
【0085】
最大操舵速度Vθmaxは、
図4及び
図5を参照して説明した最大操舵速度Vθmaxの第1の算出方法により算出されてもよいし、
図6を参照して説明した最大操舵速度Vθmaxの第2の算出方法により算出されてもよい。
【0086】
指令出力部36は、目標操舵速度Vθrefが操舵速度Vθdefよりも低いとき、操舵速度Vθdefを目標操舵速度Vθrefに変更する変更指令を出力する(ステップS24)。
【0087】
すなわち、指令出力部36は、無人車両2が走行速度Vsdef(規定走行速度)で走行したときに走行コースに従って走行するように、操舵速度Vθを操舵速度Vθdefから目標操舵速度Vθrefに変更する。
【0088】
走行制御部37は、変更後の目標操舵速度Vθrefに基づいて、操舵装置26を含む無人車両2の走行装置21を制御する運転指令を走行装置21に出力する(ステップS25)。
【0089】
無人車両2は、走行コースのカーブを、変更後の目標操舵速度Vθrefで操舵しながら走行する。これにより、無人車両2は、操舵装置26の操舵応答性が低くても、走行コースに従って走行速度Vsdefで走行することができる。
【0090】
以上説明したように、本実施形態によれば、作動油の温度Tが低く、ある流量Qで作動油をステアリングシリンダ13に供給すると望みの操舵速度Vθを得ることができない場合には、ステアリングシリンダ13に供給する作動油の流量Qを増大して、操舵速度Vθを上昇させる。これにより、無人車両2は、走行コースに従って走行速度Vsdef(規定走行速度)走行することができる。
【0091】
<第3実施形態>
第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0092】
上述の実施形態については、無人車両2の走行中において走行パラメータを調整することにより、作動油の温度Tが低くても、無人車両2を走行コースに従って走行させることについて説明した。
【0093】
本実施形態においては、無人車両2の走行開始前に作動油の温度Tを上昇させることによって操舵応答性を改善して、無人車両2を走行コースに従って走行させる例について説明する。
【0094】
図10は、本実施形態に係る無人車両2の制御方法の一例を示すフローチャートである。無人車両2の走行開始前において、すなわち無人車両2の車輪27の回転が停止している状態において、バルブ制御部38は、ホイストシリンダ14に供給される作動油が流れる油圧回路16の少なくとも一部において作動油を循環させる。本実施形態において、バルブ制御部38は、ダンプボディ23を下げた状態で、油圧ポンプ11から作動油を吐出して、流路16Cを含む油圧回路16の少なくとも一部において作動油を循環させる。
【0095】
図11は、本実施形態に係る油圧回路16の一部を模式的に示す図である。ホイストシリンダ14は、ボトムを有するシリンダチューブ141と、シリンダチューブ141の内部空間をボトム室14Bとヘッド室14Hとに区画するピストン142と、ピストン142に連結されるロッド143とを備える。
【0096】
ボトム室14Bに流路16Cbが接続される。ヘッド室14Hに流路16Chが接続される。バルブ装置12は、流路16Cb及び流路16Chに接続される流量調整弁121(第2の流量調整弁)と、リリーフ弁122とを有する。流路16Aは、油圧ポンプ11と接続される。流路16Daは、流量調整弁121に接続される。流路16Dbは、流路16Aに接続される。リリーフ弁122は、流路16Dbに配置される。
【0097】
流量調整弁121は、バルブ制御部38からの制御指令に基づいて作動する。流量調整弁121は、方向制御弁を含む。バルブ制御部38は、油圧ポンプ11から吐出された作動油がボトム室14B及びヘッド室14Hの一方に供給されるように、流量調整弁121を制御する。
【0098】
油圧ポンプ11から吐出された作動油は、流路16A、流量調整弁121、及び流路16Cbを介して、ボトム室14Bに供給される。ボトム室14Bに作動油が供給されると、ホイストシリンダ14は伸び、ダンプボディ23は上がり、ダンプ動作する。
【0099】
また、油圧ポンプ11から吐出された作動油は、流路16A、流量調整弁121、及び流路16Chを介して、ヘッド室14Hに供給される。ヘッド室14Hに作動油が供給されると、ホイストシリンダ14は縮み、ダンプボディ23は下がる。
【0100】
本実施形態において、バルブ制御部38は、油圧ポンプ11の作動及びバルブ装置12の作動を制御する。作動油の温度Tを上昇させるとき、バルブ制御部38は、ダンプボディ23を下げた状態で、油圧ポンプ11を作動し続ける。ダンプボディ23を下げた状態は、ピストン142がシリンダチューブ141のボトム側の端部(ストロークエンド)に移動した状態を含む。ダンプボディ23を下げた状態で、油圧ポンプ11が作動し続けると、ヘッド室14Hの圧力が上昇する。ヘッド室14Hの圧力が閾値以上に上昇すると、リリーフ弁122が開放される。これにより、油圧ポンプ11から吐出され、流路16Aを流れた作動油は、リリーフ弁122及び流路16Dbを介して、作動油タンク15に戻される。すなわち、ダンプボディ23を下げた状態で、油圧ポンプ11を作動し続けると、油圧ポンプ11から吐出された作動油は、流路16A、リリーフ弁122、流路16Db、及び作動油タンク15を含む油圧回路16の一部の循環経路において循環する(ステップS31)。
【0101】
作動油が循環することにより、流路との摩擦抵抗によって、作動油の温度Tは上昇する。これにより、作動油タンク15に収容される作動油の温度Tが上昇する。
【0102】
ホイストシリンダ14に供給される作動油が流れる流路16Aを含む油圧回路16の少なくとも一部において作動油を循環させて作動油タンク15の作動油の温度Tを上昇させた後、バルブ制御部38は、無人車両2の走行開始前に、ステアリングシリンダ13が作動するようにバルブ装置12を制御する(ステップS32)。
【0103】
無人車両2の走行開始前において、ステアリングシリンダ13が作動することにより、前輪27Fに装着されているタイヤと地面とが接触した状態で、タイヤの向きが切り換えられる。すなわち、すえ切り動作が実施される。ステアリングシリンダ13が作動するように油圧ポンプ11からステアリングシリンダ13に作動油が供給されることにより、温度Tが上昇している作動油タンク15の作動油がステアリングシリンダ13に供給されることとなる。
【0104】
温度Tが上昇している作動油がステアリングシリンダ13に供給された状態で、無人車両2の走行が開始される。温度Tが上昇している作動油がステアリングシリンダ13に供給されるので、操舵装置26の操舵応答性の低下が抑制される。
【0105】
なお、
図10を参照して説明した処理は、無人車両2の走行開始前において、温度センサ17に検出された作動油の温度Tが許容値以下であるときに実施されればよい。
【0106】
<コンピュータシステム>
図12は、コンピュータシステム1000の一例を示すブロック図である。上述の管理装置3及び制御装置30のそれぞれは、コンピュータシステム1000を含む。コンピュータシステム1000は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ1001と、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含むメインメモリ1002と、ストレージ1003と、入出力回路を含むインターフェース1004とを有する。上述の管理装置3の機能及び制御装置30の機能は、プログラムとしてストレージ1003に記憶されている。プロセッサ1001は、プログラムをストレージ1003から読み出してメインメモリ1002に展開し、プログラムに従って上述の処理を実行する。なお、プログラムは、ネットワークを介してコンピュータシステム1000に配信されてもよい。
【0107】
なお、上述の実施形態において、無人車両2の制御装置30の機能の少なくとも一部が管理装置3に設けられてもよいし、管理装置3の機能の少なくとも一部が制御装置30に設けられてもよい。
【0108】
管理装置3及び制御装置30の少なくとも一方を含むコンピュータシステム1000は、無人車両2の操舵装置26を作動するステアリングシリンダ13に供給される作動油の温度データを取得することと、作動油の温度データと無人車両2の走行コースデータとに基づいて無人車両2の走行パラメータを変更する変更指令を出力すること、を実行することができる。これにより、無人車両2は、走行コースに従って走行することができる。
【0109】
<その他の実施形態>
なお、上述の第1実施形態においては、走行パラメータが無人車両2の制限走行速度Vsmaxを含み、上述の第2実施形態においては、走行パラメータが操舵装置26の操舵速度Vθを含むこととした。また、上述の実施形態においては、第1の算出方法又は第2の算出方法に基づいて最大操舵速度Vθmaxが算出され、算出された最大操舵速度Vθmaxに基づいて、走行パラメータが変更されることとした。作動油の温度Tと走行パラメータとの相関データが記憶部39に記憶され、指令出力部36は、温度データ取得部33により取得された作動油の温度データと、記憶部39に記憶されている相関データとに基づいて、走行パラメータを変更する変更指令を出力してもよい。例えば、作動油の温度Tと無人車両2の制限走行速度Vsmaxとの相関データ(テーブルデータ)が記憶部39に記憶されている場合、指令出力部36は、温度データ取得部33により取得された作動油の温度データと、記憶部39に記憶されている相関データとに基づいて、無人車両2の制限走行速度Vsmaxを変更する変更指令を出力してもよい。また、作動油の温度Tと操舵装置26の操舵速度Vθとの相関データ(テーブルデータ)が記憶部39に記憶されている場合、指令出力部36は、温度データ取得部33により取得された作動油の温度データと、記憶部39に記憶されている相関データとに基づいて、操作装置26の操舵速度Vθを変更する変更指令を出力してもよい。
【0110】
なお、上述の実施形態において、温度センサ17は、ステアリングシリンダ13に接続されている流路16Bにおける作動油の温度を検出する温度センサ17Aと、作動油タンク15における作動油の温度を検出する温度センサ17Bとを含むこととした。温度センサ17は、ステアリングシリンダ13に供給される作動油の温度を検出できればよく、温度センサ17が設置される位置は限定されない。温度センサ17は、油圧回路16の任意の位置に設置することができる。
【0111】
なお、上述の実施形態においては、走行コースデータが管理装置3において生成され、無人車両2は管理装置3から送信された走行コースデータに従って走行することとした。無人車両2の制御装置30が走行コースデータを生成してもよい。すなわち、制御装置30が走行コース生成部を有してもよい。また、管理装置3及び制御装置30のそれぞれが走行コース生成部を有してもよい。
【0112】
なお、上述の実施形態においては、無人車両2が運搬車両の一種であるダンプトラックであることとした。無人車両2は、例えば油圧ショベル又はブルドーザのような作業機を備える作業機械でもよい。
【符号の説明】
【0113】
1…管制システム、2…無人車両、3…管理装置、3A…走行コース生成部、3B…記憶部、3C…通信部、4…通信システム、5…管制施設、6…無線通信機、10…油圧システム、11…油圧ポンプ、12…バルブ装置、13…ステアリングシリンダ(第1油圧アクチュエータ)、14…ホイストシリンダ(第2油圧アクチュエータ)、14B…ボトム室、14H…ヘッド室、15…作動油タンク、16…油圧回路、16A…流路、16B…流路、16C…流路、16D…流路、17…温度センサ、17A…温度センサ、17B…温度センサ、18…操舵角センサ、21…走行装置、22…車両本体、23…ダンプボディ、24…駆動装置、25…ブレーキ装置、26…操舵装置、27…車輪、27F…前輪、27R…後輪、28…位置検出装置、29…無線通信機、30…制御装置、31…通信部、32…走行コースデータ取得部、33…温度データ取得部、34A…操舵角データ取得部、34B…操舵速度データ算出部、35…最大操舵速度算出部、36…指令出力部、37…走行制御部、38…バルブ制御部、39…記憶部、121…流量調整弁、122…リリーフ弁、131…シリンダチューブ、132…ピストン、133…ロッド、141…シリンダチューブ、142…ピストン、143…ロッド。