(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】液体水素製造設備及び水素ガス製造設備
(51)【国際特許分類】
F25J 1/00 20060101AFI20240104BHJP
C01B 3/00 20060101ALI20240104BHJP
C01B 3/38 20060101ALI20240104BHJP
C01B 3/56 20060101ALI20240104BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20240104BHJP
H01M 8/0612 20160101ALN20240104BHJP
【FI】
F25J1/00 C
F25J1/00 D
C01B3/00 Z
C01B3/38
C01B3/56 Z
C01B32/50
H01M8/0612
(21)【出願番号】P 2018063762
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2021-03-22
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 智教
(72)【発明者】
【氏名】林 尚一郎
(72)【発明者】
【氏名】森 秀樹
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】松井 裕典
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-208913(JP,A)
【文献】国際公開第2017/186336(WO,A1)
【文献】特開2016-84940(JP,A)
【文献】特開2003-81605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J1/00-5/00
C01B3/00-6/34
C01B32/00-32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素を改質して水素ガスを生成する改質器と、
前記水素ガスを液化して液体水素を生成する水素液化装置と、
前記液体水素を貯えるための貯蔵器と、
前記水素ガスを生成する過程で生じる二酸化炭素を圧縮するガス圧縮器と、
前記貯蔵器内で生じるボイルオフガスと
、前記ガス圧縮器で圧縮された前記二酸化炭素と、を熱交換させて前記二酸化炭素を液化する熱交換器と、
を備えることを特徴とする、液体水素製造設備。
【請求項2】
炭化水素を改質して水素ガスを生成する改質器と、
液体窒素の気化熱を利用して前記水素ガスを冷却することで、前記水素ガスを液化して液体水素を生成する水素液化装置と、
前記水素ガスを生成する過程で生じる二酸化炭素を圧縮するガス圧縮器と、
前記水素液化装置から排出される窒素ガスと
、前記ガス圧縮器で圧縮された前記二酸化炭素と、を熱交換させて前記二酸化炭素を液化する熱交換器と、
を備えることを特徴とする、液体水素製造設備。
【請求項3】
前記炭化水素は、液化天然ガスに主成分として含まれるメタンである、請求項1又は2に記載の液体水素製造設備。
【請求項4】
前記改質は水蒸気改質である、請求項1乃至3のいずれかに記載の液体水素製造設備。
【請求項5】
炭化水素を改質して水素ガスを生成する改質器と、
外部から供給される液体水素を貯えるための貯蔵器と、
前記水素ガスを生成する過程で生じる二酸化炭素を圧縮するガス圧縮器と、
前記貯蔵器内で生じるボイルオフガスと
、前記ガス圧縮器で圧縮された前記二酸化炭素と、を熱交換させて前記二酸化炭素を液化する熱交換器と、
を備えることを特徴とする、水素ガス製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体水素製造設備及び水素ガス製造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、炭化水素から水素ガスを生成し、当該水素ガスを液化することで液体水素を製造する液体水素製造設備が知られている。このような液体水素製造設備が、例えば、特開2002-243360号公報(特許文献1)で提案されている。
【0003】
特許文献1の液体水素製造設備は、液化天然ガスを気化した天然ガスから水素ガスを生成する水素ガス生成装置と、前記生成された水素ガスを液化する水素液化装置と、を備える。また、前記液体水素製造設備は、前記水素ガス生成装置と前記水素液化装置との間に設けられる熱交換器をさらに備える。当該熱交換器は、前記液化天然ガスと前記生成した水素ガスとを熱交換させることで予冷された水素ガスを前記水素液化装置に供給する。
【0004】
ところで、特許文献1には、水素ガスを生成する過程で生じる二酸化炭素の処理について記載されていない。当該二酸化炭素を処理するために、従来からいわゆるCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)が行われている。当該CCSでは、二酸化炭素の液化が行われることが多い。例えば、当該二酸化炭素の液化を効率良く行うためのハイブリッド水素供給ステーションが、特開2010-208913号公報(特許文献2)で提案されている。
【0005】
特許文献2のハイブリッド水素供給ステーションは、天然ガスを水蒸気により改質するオンサイト型水素供給ステーションと、液体水素を受け入れて液体水素もしくは水素ガスを供給するオフサイト型水素供給ステーションとを備える。オンサイト型水素供給ステーションで生じる二酸化炭素は、熱交換器でオフサイト型水素供給ステーションから抽出された液体水素の冷熱により液化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-243360号公報
【文献】特開2010-208913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2のハイブリッド水素供給ステーションは、液体水素を製造するものではない。また、特許文献2のハイブリッド水素供給ステーションは、貯蔵器に貯えられた液体水素の一部を抽出して二酸化炭素を液化しているので、需要者に供給すべき液体水素を減少させてしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、水素ガスを生成する過程で生じる二酸化炭素を効率良く液化することが可能な、液体水素製造設備を提供することを目的とする。また、本発明は、貯蔵器に貯えられた液体水素の一部を抽出して二酸化炭素を液化するような従来技術と比較して、需要者に供給すべき液体水素を減少させずに、水素ガスを生成する過程で生じる二酸化炭素を液化することが可能な、水素ガス製造設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の一つの側面からの液体水素製造設備は、炭化水素を改質して水素ガスを生成する改質器と、前記水素ガスを液化して液体水素を生成する水素液化装置と、前記液体水素を貯えるための貯蔵器と、前記貯蔵器内で生じるボイルオフガスと、前記水素ガスを生成する過程で生じる二酸化炭素と、を熱交換させて前記二酸化炭素を液化する熱交換器と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、液体水素を貯えるための貯蔵器内で生じるボイルオフガスと、水素ガスを生成する過程で生じる二酸化炭素と、を熱交換させることで、前記二酸化炭素を液化するための冷熱源として前記ボイルオフガスの冷熱を利用することができる。したがって、液体水素製造設備において前記二酸化炭素を効率良く液化することが可能となる。
【0011】
また、本発明の別の側面からの液体水素製造設備は、炭化水素を改質して水素ガスを生成する改質器と、液体窒素の気化熱を利用して前記水素ガスを冷却することで、前記水素ガスを液化して液体水素を生成する水素液化装置と、前記水素液化装置から排出される窒素ガスと、前記水素ガスを生成する過程で生じる二酸化炭素と、を熱交換させて前記二酸化炭素を液化する熱交換器と、を備えることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、水素液化装置から比較的低温な状態で排出される窒素ガスと、水素ガスを生成する過程で生じる二酸化炭素と、を熱交換させることで、前記二酸化炭素を液化するための冷熱源として前記窒素ガスの冷熱を利用することができる。したがって、液体水素製造設備において前記二酸化炭素を効率良く液化することが可能となる。
【0013】
前記炭化水素は、液化天然ガスに主成分として含まれるメタンであってもよい。
【0014】
上記構成によれば、液化天然ガスに主成分として含まれるメタンを改質器に供給するので、前記メタンを改質して水素ガスを生成する過程で生じる二酸化炭素を効率良く液化することが可能となる。
【0015】
例えば、前記改質は水蒸気改質であってもよい。
【0016】
さらに、前記課題を解決するために、本発明の水素ガス製造設備は、炭化水素を改質して水素ガスを生成する改質器と、外部から供給される液体水素を貯えるための貯蔵器と、前記貯蔵器内で生じるボイルオフガスと、前記水素ガスを生成する過程で生じる二酸化炭素と、を熱交換させて前記二酸化炭素を液化する熱交換器と、を備えることを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、外部から供給される液体水素を貯えるための貯蔵器内で生じるボイルオフガスと、水素ガスを生成する過程で生じる二酸化炭素と、を熱交換させることで、前記二酸化炭素を液化するための冷熱源として前記ボイルオフガスの冷熱を利用することができる。したがって、貯蔵器から液体水素を抽出しなくても前記二酸化炭素を液化することができる。その結果、貯蔵器内の液体水素を需要者に供給する場合に、貯蔵器に貯えられた液体水素の一部を抽出して二酸化炭素を液化するような従来技術と比較して、需要者に供給すべき液体水素を減少させずに、前記二酸化炭素を液化することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、水素ガスを生成する過程で生じる二酸化炭素を効率良く液化することが可能な、液体水素製造設備を提供することができる。また、本発明によれば、貯蔵器に貯えられた液体水素の一部を抽出して二酸化炭素を液化するような従来技術と比較して、需要者に供給すべき液体水素を減少させずに、水素ガスを生成する過程で生じる二酸化炭素を液化することが可能な、水素ガス製造設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る液体水素製造設備の概略構成図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る液体水素製造設備の概略構成図である。
【
図3】その他の実施形態に係る水素ガス製造設備の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る液体水素製造装置について図面を参照して説明する。なお、本実施形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、全ての図を通じて、同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0021】
以下の説明及び図面において、化学式の末尾に(G)が付されている場合、その物質が気体の状態であることを意味する。また、化学式の末尾に(L)が付されている場合、その物質が液体の状態であることを意味する。
【0022】
1.第1実施形態
(全体構成)
図1に、本発明の第1実施形態に係る液体水素製造設備10Aを示す。本実施形態に係る液体水素製造設備10Aは、液化天然ガス(Liquefied Natural Gas、いわゆる「LNG」)に主成分として含まれるメタンCH
4(L)(炭化水素)を改質して水素ガスH
2(G)を生成する改質器20と、当該水素ガスH
2(G)を液化して液体水素H
2(L)を生成する水素液化装置30と、当該液体水素H
2(L)を貯えるための貯蔵器40と、を備える。また、液体水素製造設備10Aは、貯蔵器40内で生じるボイルオフガスと、水素ガスH
2(G)を生成する過程で生じる二酸化炭素CO
2(G)と、を熱交換させて当該二酸化炭素CO
2(G)を液化する熱交換器60を備える。
【0023】
(改質器20)
改質器20は、水蒸気H2O(G)を用いて、上記メタンCH4(L)を改質して水素ガスH2(G)を生成する。すなわち、改質器20は、水蒸気改質によって上記メタンCH4(L)から水素ガスH2(G)を生成する。改質器20で生成された水素ガスH2(G)は、水素液化装置30へと送られる。また、水素ガスH2(G)を生成する過程で生じる二酸化炭素CO2(G)は、後述するガス圧縮器50へと送られる。
【0024】
(水素液化装置30)
水素液化装置30は、液体窒素N2(L)の気化熱を利用して改質器20で生成された水素ガスH2(G)を冷却することで、当該水素ガスH2(G)を液化して液体水素H2(L)を生成する。水素液化装置30で生成された液体水素H2(L)は、貯蔵器40へと送られる。例えば、水素液化装置30は、液体窒素N2(L)の気化熱を利用して水素ガスH2(G)を冷却したあと、ヒートポンプを用いて前記水素ガスH2(G)をさらに冷却し、そのあと前記水素ガスH2(G)を断熱膨張させることで、前記水素ガスH2(G)を液化して液体水素H2(L)を生成してもよい。
【0025】
また、液体水素H2(L)を生成する過程で、前記液体窒素N2(L)が気化して窒素ガスN2(G)が生じる。当該窒素ガスN2(G)は、低温状態であるので、例えば、所定の温度まで加熱されたあと、大気中へと排出されてもよい。なお、貯蔵器40に貯えられた液体水素H2(L)は、例えば、船舶及び車両などの搬送体に積み込まれて目的地まで搬送されてもよい。
【0026】
(貯蔵器40)
貯蔵器40は、水素液化装置30で生成された液体水素H2(L)を貯える。当該液体水素H2(L)は、約-253°Cという極低温状態であるので、貯蔵器40は断熱保冷性能を有するが、このように断熱保冷性能を有していたとしても、液体水素H2(L)は貯蔵器40内で少量ずつ自然蒸発する。すなわち、貯蔵器40内でボイルオフガス(すなわち、水素ガスH2(G))が生じる。当該ボイルオフガスは、熱交換器60へと送られる。
【0027】
(熱交換器60)
熱交換器60は、貯蔵器40内で生じたボイルオフガスと、改質器20で水素ガスH2(G)を生成する過程で生じた二酸化炭素CO2(G)と、を熱交換させて前記二酸化炭素CO2(G)を液化する。二酸化炭素CO2(G)は、常温常圧の状態では液化しないので、ガス圧縮器50で圧縮されてから熱交換器60に供給される。
【0028】
前記ボイルオフガスは、熱交換器60で二酸化炭素CO2(G)と熱交換されたあと、水素液化装置30に向かう流路へと送られるか、又は、液体水素製造設備10A内に設けられた発電器70へと送られる。前記ボイルオフガスは、所定の温度まで加熱され、且つ、圧縮されたあとで、前記水素液化装置30に向かう流路へと送られることが好ましい。当該流路へと送られた水素ガスH2(G)は、水素液化装置30において再び液化される。また、発電器70に送られた水素ガスH2(G)は、発電の燃料として利用される。
【0029】
そして、液化した二酸化炭素CO2(L)は、CCSサイト80に搬送されて地中に貯蔵される。
【0030】
(効果)
本実施形態に係る液体水素製造設備10Aは、液体水素H2(L)を貯えるための貯蔵器40内で生じるボイルオフガスと、水素ガスH2(G)を生成する過程で生じる二酸化炭素CO2(G)と、を熱交換させることで、前記二酸化炭素CO2(G)を液化するための冷熱源として前記ボイルオフガスの冷熱を利用することができる。したがって、液体水素製造設備10Aにおいて前記二酸化炭素CO2(G)を効率良く液化することが可能となる。
【0031】
また、本実施形態では、液化天然ガスに主成分として含まれるメタンCH4(L)を改質器20に供給するので、当該メタンCH4(L)を改質して水素ガスH2(G)を生成する過程で生じる二酸化炭素CO2(G)を効率良く液化することが可能となる。
【0032】
2.第2実施形態
図2に、本発明の第2実施形態に係る液体水素製造設備10Bを示す。なお、本実施形態に係る液体水素製造設備10Bは、多くの点で上記第1実施形態に係る液体水素製造設備10Aと同じ構造を有する。したがって、同一部分には同じ参照番号を付し、同様となる説明は繰り返さない。
【0033】
本実施形態では、水素液化装置30において液体水素H2(L)を生成する過程で生じる窒素ガスN2(G)は、熱交換器60へと送られる。また、本実施形態では、貯蔵器40内で生じるボイルオフガス(すなわち、水素ガスH2(G))は、水素液化装置30に向かう流路へと送られるか、又は、液体水素製造設備10B内に設けられた発電器70へと送られる。前記ボイルオフガスは、所定の温度まで加熱され、且つ、圧縮されたあとで、前記水素液化装置30に向かう流路へと送られることが好ましい。当該流路へと送られた水素ガスH2(G)は、水素液化装置30において再び液化される。また、発電器70に送られた水素ガスH2(G)は、発電の燃料として利用される。
【0034】
(熱交換器60)
本実施形態では、熱交換器60は、水素液化装置30から排出される窒素ガスN2(G)と、改質器20で水素ガスH2(G)を生成する過程で生じる二酸化炭素CO2(G)と、を熱交換させて前記二酸化炭素CO2(G)を液化する。二酸化炭素CO2(G)を液化する過程で、前記液体窒素N2(L)が気化して窒素ガスN2(G)が生じる。当該窒素ガスN2(G)は、低温状態であるので、例えば、所定の温度まで加熱されたあと、大気中へと排出されてもよい。
【0035】
そして、液化した二酸化炭素CO2(L)は、上記第1実施形態と同様に、CCSサイト80に搬送されて地中に貯蔵される。
【0036】
(効果)
本実施形態に係る液体水素製造設備10Bは、水素液化装置30から比較的低温な状態で排出される窒素ガスN2(G)と、水素ガスH2(G)を生成する過程で生じる二酸化炭素CO2(G)と、を熱交換させることで、前記二酸化炭素CO2(G)を液化するための冷熱源として前記窒素ガスN2(G)の冷熱を利用することができる。したがって、液体水素製造設備10Bにおいて前記二酸化炭素CO2(G)を効率良く液化することが可能となる。
【0037】
3.その他の実施形態
本発明は、液体水素製造設備だけでなく、水素ガス製造設備にも適用可能である。この場合の一例を
図3に示す。
図3に示すように、本実施形態に係る水素ガス製造設備12は、水素液化装置30及びそれに付随する各種ラインを備えないことを除き、上記第1実施形態に係る液体水素製造設備10Aと同じ構造を有する。したがって、同一部分には同じ参照番号を付し、同様となる説明は繰り返さない。
【0038】
なお、上記各種ラインとは、具体的には、水素液化装置30に水素ガスH2(G)を供給するライン及び液体窒素N2(L)を供給するラインのことである。また、水素液化装置30から液体水素H2(L)を排出するライン及び窒素ガスN2(G)を排出するラインのことである。さらに、貯蔵器40内で生じたボイルオフガスが熱交換器60で二酸化炭素CO2(G)と熱交換されたあと、水素液化装置30に向かう流路へと送られるラインのことである。
【0039】
本実施形態の貯蔵器40は、外部から供給される液体水素H2(L)を貯えるものである。当該液体水素H2(L)は、例えば、外部に設けられた液体水素製造設備で製造されたあと、船舶及び車両などの搬送体に積み込まれて搬送され、貯蔵器40に供給されてもよい。
【0040】
(効果)
本実施形態に係る水素ガス製造設備12は、外部から供給される液体水素H2(L)を貯えるための貯蔵器40内で生じるボイルオフガスと、水素ガスH2(G)を生成する過程で生じる二酸化炭素CO2(G)と、を熱交換させることで、前記二酸化炭素CO2(G)を液化するための冷熱源として前記ボイルオフガスの冷熱を利用することができる。したがって、貯蔵器40から液体水素H2(L)を抽出しなくても前記二酸化炭素CO2(G)を液化することができる。その結果、貯蔵器40内の液体水素H2(L)を需要者に供給する場合に、貯蔵器に貯えられた液体水素の一部を抽出して二酸化炭素を液化するような従来技術と比較して、需要者に供給すべき液体水素H2(L)を減少させずに、前記二酸化炭素CO2(G)を液化することが可能となる。
【0041】
4.変形例
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。したがって、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【0042】
上記実施形態では、炭化水素は、液化天然ガスに主成分として含まれるメタンCH4(L)である場合について説明したが、これに限定されない。すなわち、炭化水素は、液化天然ガスに主成分として含まれるエタンであってもよいし、液化石油ガス(Liquefied Petroleum Gas、いわゆる「LPG」)に主成分として含まれるプロパンであってもよいし、又は、その他の炭化水素であってもよい。
【0043】
上記実施形態では、改質器20で行われる改質は、水蒸気H2O(G)を用いる水蒸気改質である場合について説明したが、これに限定されない。すなわち、改質器20で行われる改質は、炭化水素から水素ガスH2(G)を生成して二酸化炭素CO2(G)を排出するのであれば、いわゆる接触改質であってもよいし、又は、その他の改質であってもよい。
【0044】
上記第1実施軽形態では、貯蔵器40内で生じて熱交換器60で熱交換されたボイルオフガス(すなわち、水素ガスH2(G))は、液体水素製造設備10A内の発電器70で利用される場合について説明したが、これに限定されない。例えば、前記熱交換されたボイルオフガスは、液体水素製造設備10A内のその他の機器で利用されてもよいし、又は、液体水素製造設備10Aの外部に設けられた発電器若しくはその他の機器で利用されてもよい。なお、上記その他の実施形態の貯蔵器40内で生じたボイルオフガスについても同様であるため、ここではその説明を繰り返さない。
【符号の説明】
【0045】
10 液体水素製造設備
12 水素ガス製造設備
20 改質器
30 水素液化装置
40 貯蔵器
50 ガス圧縮器
60 熱交換器
70 発電器
80 CCSサイト