(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】車両用路面描画投光ユニット
(51)【国際特許分類】
F21S 43/40 20180101AFI20240104BHJP
F21S 43/14 20180101ALI20240104BHJP
F21S 43/15 20180101ALI20240104BHJP
F21S 43/239 20180101ALI20240104BHJP
F21S 43/249 20180101ALI20240104BHJP
F21S 45/47 20180101ALI20240104BHJP
B60Q 1/50 20060101ALI20240104BHJP
F21S 43/145 20180101ALI20240104BHJP
F21S 43/31 20180101ALI20240104BHJP
F21W 103/60 20180101ALN20240104BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240104BHJP
【FI】
F21S43/40
F21S43/14
F21S43/15
F21S43/239
F21S43/249
F21S45/47
B60Q1/50 Z
F21S43/145
F21S43/31
F21W103:60
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2018239086
(22)【出願日】2018-12-21
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145458
【氏名又は名称】秋元 正哉
(72)【発明者】
【氏名】大野 雅典
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/164328(WO,A1)
【文献】特開2017-174735(JP,A)
【文献】特開2018-174160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 43/40
F21S 43/14
F21S 43/15
F21S 43/239
F21S 43/249
F21S 45/47
B60Q 1/50
F21S 43/145
F21S 43/31
F21W 103/60
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両上下方向に所定の間隔をおいて配置される複数の光源と、
前記複数の光源の各々と対向する位置に設けられ、前記複数の光源からの出射光を絞って所定形状寸法の複数の像画パターンを生成する複数の光透過部を有する遮光部材と、
前記遮光部材を挟んで前記複数の光源と反対側に配置される投影レンズと、
前記複数の光源と前記遮光部材との間に配置され、前記複数の光源からの出射光を対応する前記複数の光透過部を通って前記投影レンズの主点方向に向かうように光路制御を行う複数の光路制御部と、
を備え、
前記投影レンズは前記遮光部材側の面が光入射面でその反対側の面が光出射面となり、前記光入射面と前記光出射面とが互いに外側に凸の非球面からなる両凸レンズ形状を有しており、
前記複数の光源は、前記複数の光源からの出射光が各光路制御部で光路制御された後、対応する前記複数の光透過部を通り、前記複数の光源の光軸が前記投影レンズの光軸上にある主点で交差するようにそれぞれ配置されており、
前記複数の光源からの出射光は対応する前記複数の光透過部を通って複数の像画パターンを生成し、前記複数の像画パターンを前記投影レンズによって、上下左右反転して集光方向に屈折させて出射し路面上に投影して複数の描画パターンを描画し、
前記複数の像画パターンと対応する前記複数の描画パターンとは前記投影レンズを挟んで互いの略中心を対応する前記複数の光源の各光軸が通る位置に位置していて、
前記複数の光透過部は、対応する前記複数の像画パターンの輪郭が対応する前記複数の描画パターンの略輪郭に結像する位置に設けられていることを特徴とする車両用路面描画投光ユニット。
【請求項2】
前記複数の光路制御部は前記複数の光源からの出射光を導光し前記複数の光透過部に向けて
光路制御する導光体、又は前記複数の光源からの出射光を反射し前記複数の光透過部に向けて集光するリフレクタであることを特徴とする請求項1に記載の車両用路面描画投光ユニット。
【請求項3】
前記複数の光透過部は、光を遮光する部材に部分的に設けられた窓孔、光を遮光する部材に部分的に設けられた透明部材、及び光を透過する部材に部分的に配設されたマスキング部材の非マスキング部の透明部分、のいずれかで構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の車両用路面描画投光ユニット。
【請求項4】
前記複数の像画パターンの内、前記投影レンズの光軸から相対的に上方に形成される第1の像画パターンは、相対的に下方に形成される第2の像画パターンよりも相対的に前方側に第1の描画パターンとして形成されることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の車両用路面描画投光ユニット。
【請求項5】
前記複数の光源は、LEDを含む点状発光体又は有機ELを含む面状発光体のいずれかであることを特徴とする請求項1~請求項4いずれかに記載の両用路面描画投光ユニット。
【請求項6】
前記複数の光源を個別に点消灯制御可能な制御部をさらに有することを特徴とする請求項1~請求項5いずれかに記載の車両用路面描画投光ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用路面描画投光ユニットに関するものであり、詳しくは、車両に搭載した投光ユニットによって路面上に適宜な描画パターンを描画する車両用路面描画投光ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用路面描画投光ユニットとしては、例えば、特許文献1に「車両用灯具」として開示されたものがある。
【0003】
それは、
図12に示すように、複数(具体的には4個)の光源(例えば、LEDチップ)81a~81dが基板80に実装されてなる光源ユニット82と投影レンズ83とを備えており、光源ユニット82は投影レンズ83の光入射面83a側に位置すると共に複数のLEDチップ81a~81dが灯具の車両搭載時の上下方向に沿って配列されており、投影レンズ83は光入射面83aに、LEDチップ81a~81dの夫々からの出射光を所望の配光パターンに配光制御するレンズステップが形成されており、光出射面83bは凸形状を有している。
【0004】
光源ユニット82と投影レンズ83は、光源ユニット82を構成するLEDチップ81a~81dの発光面が投影レンズ83の後方焦点fよりも前方あるいは同位置に位置する範囲において、投影レンズ83が光軸AXに沿って車両搭載時の前後方向に移動可能に配置されて互いの距離が適宜設定できるようになっている。
【0005】
そこで、光軸AXから最も遠い位置にあるLEDチップ81aを点灯するときは、投影レンズ83をLEDチップ81aに対応する位置に移動して光源ユニット82と投影レンズ83との距離を所定の距離に設定し、LEDチップ81aに対して光軸AXに次第に近づく方向に位置するLEDチップ81b~81dの夫々が点灯するときは、投影レンズ83を光源ユニット82から次第に遠ざかる方向に移動して光源ユニット82と投影レンズ83との距離が次第に遠ざかるように距離設定を行う。
【0006】
これにより、LEDチップ81aの点灯時の出射光によって車両から最も近い位置の路面上に投影光Laによる配光パターン(描画パターン)が描画され、図示しないが、LEDチップ81b、81cの夫々の点灯時の出射光によって車両から次第に遠方の位置の路面上に投影光による配光パターン(描画パターン)が描画され、LEDチップ81dの点灯時の出射光によって車両から最も遠い位置の路面上に投影光Ldによる配光パターン(描画パターン)が描画される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記構成からなる車両用灯具は、LEDチップ81a~81dの点灯に対応して投影レンズ83を所定の位置に移動するための動力源及び駆動部が必要とされる。そのため、車両用灯具を安価で簡便な構成とすることは難しい。
【0009】
そこで、本発明は上記問題に鑑みて創案なされたもので、その目的とするところは、動力源及び駆動部を必要とすることなく安価で簡便な構成により、路面上の所定の位置に複数の所望の描画パターンを鮮明に描画することができる車両用路面描画投光ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載された発明は、車両上下方向に所定の間隔をおいて配置される複数の光源と、前記複数の光源の各々と対向する位置に設けられ、前記複数の光源からの出射光を絞って所定形状寸法の複数の像画パターンを生成する複数の光透過部を有する遮光部材と、前記遮光部材を挟んで前記複数の光源と反対側に配置される投影レンズと、前記複数の光源と前記遮光部材との間に配置され、前記複数の光源からの出射光を対応する前記複数の光透過部を通って前記投影レンズの主点方向に向かうように光路制御を行う複数の光路制御部と、を備え、前記投影レンズは前記遮光部材側の面が光入射面でその反対側の面が光出射面となり、前記光入射面と前記光出射面とが互いに外側に凸の非球面からなる両凸レンズ形状を有しており、前記複数の光源は、前記複数の光源からの出射光が各光路制御部で光路制御された後、対応する前記複数の光透過部を通り、前記複数の光源の光軸が前記投影レンズの光軸上にある主点で交差するようにそれぞれ配置されており、前記複数の光源からの出射光は対応する前記複数の光透過部を通って複数の像画パターンを生成し、前記複数の像画パターンを前記投影レンズによって、上下左右反転して集光方向に屈折させて出射し路面上に投影して複数の描画パターンを描画し、前記複数の像画パターンと対応する前記複数の描画パターンとは前記投影レンズを挟んで互いの略中心を対応する前記複数の光源の各光軸が通る位置に位置していて、前記複数の光透過部は、対応する前記複数の像画パターンの輪郭が対応する前記複数の描画パターンの略輪郭に結像する位置に設けられていることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の請求項2に記載された発明は、前記複数の光路制御部は前記複数の光源からの出射光を導光し前記複数の光透過部に向けて光路制御する導光体、又は前記複数の光源からの出射光を反射し前記複数の光透過部に向けて集光するリフレクタであることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の請求項3に記載された発明は、請求項1又は請求項2のいずれかにおいて、前記複数の光透過部は、光を遮光する部材に部分的に設けられた窓孔、光を遮光する部材に部分的に設けられた透明部材、及び光を透過する部材に部分的に配設されたマスキング部材の非マスキング部の透明部分、のいずれかで構成されることを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の請求項4に記載された発明は、請求項1~請求項3のいずれかにおいて、前記複数の像画パターンの内、前記投影レンズの光軸から相対的に上方に形成される第1の像画パターンは、相対的に下方に形成される第2の像画パターンよりも相対的に前方側に第1の描画パターンとして形成されることを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の請求項5に記載された発明は、請求項1~請求項4のいずれかにおいて、前記複数の光源は、LEDを含む点状発光体又は有機ELを含む面状発光体のいずれかであることを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の請求項6に記載された発明は、請求項1~請求項5のいずれかにおいて、前記複数の光源を個別に点消灯制御可能な制御部をさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、光源と、光源からの出射光を絞って所定形状寸法の像画パターンを生成する光透過部を有する遮光部材と、像画パターンを上下左右反転して集光方向に屈折させて出射した出射光を、路面上に投影して描画パターンを描画する投影レンズとにより描画光学系を構成し、遮光部材の位置を、光透過部の像画パターンの輪郭が描画パターンの略輪郭に結像するように設定した。
【0023】
これにより、動力源及び駆動部を必要とすることなく安価で簡便な構成により、路面上の所定の位置に複数の所望の描画パターンを鮮明に描画することができる車両用路面描画投光ユニットの実現が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の車両用路面描画投光ユニットの機能説明図である。
【
図2】本発明に係る第1の実施形態の車両用路面描画投光ユニットの構成斜視図である。
【
図3】本発明に係る第1の実施形態の車両用路面描画投光ユニットの構成縦断面図である。
【
図4】本発明に係る第1の実施形態の車両用路面描画投光ユニットによる路面描画の説明図である。
【
図5】同じく、本発明に係る第1の実施形態の車両用路面描画投光ユニットによる路面描画の説明図である。
【
図6】本発明に係る第2の実施形態の車両用路面描画投光ユニットの構成図である。
【
図7】本発明に係る第3の実施形態の車両用路面描画投光ユニットの構成図である。
【
図8】本発明に係る第4の実施形態の車両用路面描画投光ユニットの構成図である。
【
図9】本発明に係る第5の実施形態の車両用路面描画投光ユニットの構成図である。
【
図10】光源からの出射光の光路制御手段の説明図である。
【
図11】同じく、光源からの出射光の光路制御手段の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明の好適な実施形態を
図1~
図11を参照しながら、詳細に説明する(同一部分については同じ符号を付す)。尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限られるものではない。
【0026】
本発明の車両用路面描画投光ユニット(以下、「投光ユニット」と略称する)は、例えば
図1にあるように、車両55の前部に搭載して車両前方あるいは車両斜め前方の路面50上に投影像により複数の図形や絵柄等の描画パターン51を鮮明に描画することにより、他車両や歩行者等の道路ユーザーに対して自車両の進行方向や動き等に関する事前情報を発信して交通事故等の異常事態の発生を未然に防止するためのものである。
【0027】
そこで、上記目的を実現するために、投光ユニットはその概略構成として、光源と、光源からの出射光を絞って所定の像画パターンを生成する遮光部材と、遮光部材で生成された像画パターンを光軸に対して上下左右反転すると共に集光方向に光路制御(屈折)して投影像を路面上に投影して描画パターンを描画する投影レンズを備えている。
【0028】
図2及び
図3は、本発明に係る第1の実施形態の投光ユニットの構成図である。そのうち
図2は投光ユニットを前方斜め上方から見た斜視図、
図3は車両搭載時の前後方向に沿う縦断面図である。
【0029】
投光ユニット1は、複数の光源(本実施形態においては3個のLED)10、11、12、複数の導光体(本実施形態においては3個の導光体)20、21、22、遮光部材30及び投影レンズ40により描画光学系が形成され、基板2及びヒートシンク3により放熱系が形成されている。
【0030】
なお、以下の説明において方向を示す記述は、投光ユニット1を車両に搭載したときの車両の方向に対応する方向を示すものである。
【0031】
3個のLED10、11、12は、各基板2の一方の面上に、上下方向に直線状に所定の間隔を置いて配列実装され、基板2の他方の面が複数の放熱フィン3aを備えたヒートシンク3に面接触することにより基板2がヒートシンク3に熱伝導良好に支持固定されている。
【0032】
3個の導光体20、21、22の夫々は、中実柱状の略角錐台形状を有しており、LED10と導光体20とが、LED10の光出射面10aと導光体20の、略角錐台形状の上底に対応する面(上底面)20aとを対峙させて互いに対向配置され、同様に、LED11と導光体21とが、LED11の光出射面11aと導光体21の、略角錐台形状の上底に対応する面(上底面)21aとを対峙させて互いに対向配置され、同様に、LED12と導光体22とが、LED12の光出射面12aと導光体22の、略角錐台形状の上底に対応する面(上底面)22aとを対峙させて互いに対向配置されている。
【0033】
導光体20はLED10に対して、導光体20の長手方向に沿う中心軸CX0がLED10の光軸AX0と同一直線上に位置するように配置されており、同様に、導光体21はLED11に対して、導光体21の長手方向に沿う中心軸CX1がLED11の光軸AX1と同一直線上に位置するように配置されており、同様に、導光体22はLED12に対して、導光体22の長手方向に沿う中心軸CX2がLED12の光軸AX2と同一直線上に位置するように配置されている。各LED10、11、12からの光は各導光体20、21、22からも光軸AX0、AX1、AX2(=導光体の中心軸CX0、CX1、CX2)のまま照射される。
【0034】
導光体20、21、22の夫々の、略角錐台形状の下底に対応する面(下底面)20b、21b、22b側には、該下底面20b、21b、22bの夫々に沿って配置された下底面20b、21b、22b側に凸の湾曲板状の遮光部材30を有している。
【0035】
遮光部材30は、導光体20、21、22の下底面20b、21b、22bの夫々に対向する位置に、図形や絵柄等の所定のパターンからなる3つの光透過部30a、30b、30cが設けられており、光透過部30aはその略中心をLED10の光軸AX0が通る位置に位置し、同様に、光透過部30bはその略中心をLED11の光軸AX1が通る位置に位置し、同様に、光透過部30cはその略中心をLED12の光軸AX2が通る位置に位置している。光透過部30a、30b、30cは遮光部材30の湾曲形状に沿って形成されている。
【0036】
なお、光透過部30a、30b、30cは、光を遮光する部材に窓孔を設けることで形成するか、あるいは光を遮光する部材にインサート成形や二色成形等により部分的に透明部材の部分を設けことで形成するか、あるいは透明部材に遮光印刷により部分的にマスキングして形成する等の種々の形成方法が考えられる。光透過部30a、30b、30cの周囲においては各導光体20、21、22からの照射は遮光部材30によって遮光される。
【0037】
光透過部30a、30b、30cは、本実施形態においてはいずれも三角形の形状を有している。
【0038】
遮光部材30の、導光体20、21、22と反対側には、投影レンズ40が配置されている。投影レンズ40は、遮光部材30に向く側の面が光入射面41となると共にその反対側の面が光出射面42となり、光入射面41及び光出射面42が互いに外側に凸の非球面からなる両凸レンズ形状を有している。
【0039】
本実施形態においては、遮光部材30は投影レンズ40の光軸LXから上方に離れるほど前方に湾曲する形状をとっている。ここで、投影レンズ40の光軸LXを前後方向に延びる軸とすると、上下方向で異なる位置にある光透過部30a、30b、30cは互いに前後方向においてもずれた位置となる。ここで、出射光の出射方向を前方としている。また、上下方向は車両に設置された状態での方向である。
【0040】
本実施形態の場合、相対的に上に位置(光軸LXから相対的に遠い)する光透過部30aは、相対的に下に位置(光軸LXから相対的に近い)する光透過部30bよりも投影レンズ40の光軸LXに沿って前方に位置する。光透過部30a、30bを透過した光が作り出す描画パターン51a、51bは路面50上では前後位置が逆転し、描画パターン51aが後方、描画パターン51bが前方に描かれる。
【0041】
また、本実施形態においては、同一の光透過部であっても、所定のパターンを形成する端部(=光透過と遮光の境界)は、投影レンズ40の光軸LXから上方に離れるほど前方に位置する。光透過部30aの下端(三角形形状の先端部)よりも上端部(三角形形状の先端部とは対向する辺部)では光軸LXに沿って前方に位置する。光透過部30aを透過した光が作り出す描画パターン51aは路面50上では前後位置が逆転し、下端(三角形形状の先端部)よりも上端部(三角形形状の先端部とは対向する辺部)のほうが後方に描かれる。
【0042】
尚、変形例としては、遮光部材30は投影レンズ40の光軸LXから下方に離れるほど前方に湾曲する形状をとり、遮光部材30に光透過部を形成させていてもよい。光軸LXから下方に、やはり複数の光透過部を設けると前後及び上下に異なる位置になる。光軸LXから相対的に遠い光透過部が、光軸LXから相対的に近い光透過部より前方に位置する。
【0043】
本実施形態の説明に戻る。遮光部材30は、概略投影レンズ40の光入射面41に沿った形状に配置されており、LED10、11、12はいずれも、夫々の光軸AX0、AX1、AX2が各導光体20、21、22及び遮光部材30の各光透過部30a、30b、30cを通って投影レンズ40の光軸LX上に位置する主点Oで交差して通るように配列実装されている。
【0044】
そこで、
図4に示すように、路面50に対して適宜な傾斜角度(投影レンズ40の光軸L
Xと路面50とのなす角度)θを持って車両(図示せず)に搭載された上記構成の投光ユニット1によって、投光ユニット1の前方(車両に対しては斜め前方)の所定の位置に投影像による3つに描画パターン51a、51b、51cを描画したものとする。なお、描画パターン51a、51b、51cはいずれも三角形の形状を有するものとする。
【0045】
この場合、三角形状の描画パターン51aは、LED10から出射して遮光部材30の光透過部30aで絞られて生成された三角形状の像画パターンが、投影レンズ40によって光軸LXに対して上下左右反転されると共に集光方向に屈折されてその投影像が路面50上に描画されたものである。したがって、遮光部材30の光透過部30aで生成された像画パターンと路面50上に描画された描画パターン51aとは、投影レンズ40を挟んで互いの略中心をLED10の光軸AX0が通る位置に位置している。
【0046】
同様に、三角形状の描画パターン51bは、LED11から出射して遮光部材30の光透過部30bで絞られて生成された三角形状の像画パターンが、投影レンズ40によって光軸LXに対して上下左右反転されると共に集光方向に屈折されてその投影像が路面50上に描画されたものである。したがって、遮光部材30の光透過部30bで生成された像画パターンと路面50上に描画された描画パターン51bとは、投影レンズ40を挟んで互いの略中心をLED11の光軸AX1が通る位置に位置している。
【0047】
また同様に、三角形状の描画パターン51cは、LED12から出射して遮光部材30の光透過部30cで絞られて生成された三角形状の像画パターンが、投影レンズ40によって光軸LXに対して上下左右反転されると共に集光方向に屈折されてその投影像が路面50上に描画されたものである。したがって、遮光部材30の光透過部30cで生成された像画パターンと路面50上に描画された描画パターン51cとは、投影レンズ40を挟んで互いの略中心をLED12の光軸AX2が通る位置に位置している。
【0048】
ところで、投光ユニット1によって描画パターン51aを路面50上に鮮明に描画するためには、投影レンズ40による投影像が描画パターン51aの略輪郭に沿って結像することが求められる。そのため、
図5に示すように、LED10から出射して遮光部材30の光透過部30aで絞られて生成された像画パターン35の輪郭35aが、投影レンズ40を介して投影される投影像による描画パターン51aの略輪郭51aaに沿って焦点を結ぶように光透過部(像面)30aの位置及び形状寸法が設定されている。
【0049】
同様に、投光ユニット1によって描画パターン51bを路面上に鮮明に描画するためには、投影レンズ40による投影像が描画パターン51bの略輪郭に沿って結像することが求められる。そのため、図示しないが、LED11から出射して遮光部材30の光透過部30bで絞られて生成された像画パターンの輪郭が、投影レンズ40を介して投影される投影像による描画パターン51bの略輪郭に沿って焦点を結ぶように光透過部(像面)30bの位置及び形状寸法が設定されている。
【0050】
また同様に、投光ユニット1によって描画パターン51cを路面上に鮮明に描画するためには、投影レンズ40による投影像が描画パターン51cの略輪郭に沿って結像することが求められる。そのため、図示しないが、LED12から出射して遮光部材30の光透過部30cで絞られて生成された像画パターンの輪郭が、投影レンズ40を介して投影される投影像による描画パターン51cの略輪郭に沿って焦点を結ぶように光透過部(像面)30cの位置及び形状寸法が設定されている。
【0051】
したがって、遮光部材30は、光透過部(像面)51a、光透過部(像面)51b及び光透過部(像面)51cの夫々を含む形状で形成されている。
【0052】
なお、投光ユニット1は上述のように、LED10、11、12から出射して遮光部材30の光透過部30a、30b、30cの夫々で絞られて投影レンズ40の光入射面41に照射された各像画パターンは、投影レンズ40によって光軸LXに対して上下左右反転されると共に集光方向に屈折されてその投影像による描画パターン51a、51b、51cが路面50上に描画される。
【0053】
それと同様に、LED10、11、12から出射して遮光部材30の光透過部30a、30b、30cの夫々で絞られて投影レンズ40の光入射面41に照射された各像画パターンは、投影レンズ40によって光軸LXに対して上下左右反転された位置の路面50上に投影像による描画パターン51a、51b、51cとして描画される。
【0054】
具体的には、
図4に戻って、本実施形態においては、遮光部材30に設けられた光透過部30a、30b、30cは、上下方向に、且つ、上から光透過部30a、光透過部30b及び光透過部30cの順に配置されており、光透過部30bと光透過部30cとの間に投影レンズ40の光軸L
Xが位置している。
【0055】
これに対し、路面50上に描画される描画パターン51a、51b、51cは、投影レンズ40の光軸LXに沿う前後方向に、且つ、車両側から光透過部30aによる像画パターンを投影した描画パターン51a、光透過部30bによる像画パターンを投影した描画パターン51b及び光透過部30cによる像画パターンを投影した描画パターン51cの順に描画されており、描画パターン51bと描画パターン51cとの間に投影レンズ40の光軸LXが位置している。
【0056】
遮光部材30に設けられる複数の光透過部は、投影レンズ40の光軸LXの上側、下側あるいは光軸LXを挟んだ両側に設けることができる。それにより、路面50上に描画される描画パターンが投影レンズ40の光軸LXの車両側、光軸LXの、車両と反対側あるいは光軸LXを挟んだ両側に形成される。
【0057】
なお、光透過部は投影レンズ40の光軸LX上に設けることもでき、それにより路面50上に形成される描画パターンも投影レンズ40の光軸LX上に形成される。
【0058】
以上のように、路面上に描画される描画パターンの、車両(投光ユニット)からの位置及び形状寸法を想定して該描画パターンの略輪郭に沿って略焦点を結ぶように遮光部材に設けられる光透過部の位置及び形状寸法を設定する。これにより、光源から出射して遮光部材の光透過部で絞られて生成された像画パターンが、投影レンズを介してその投影像により路面上に鮮明な描画パターンとして描画される。
【0059】
図6は、本発明に係る第2の実施形態の投光ユニットの構成図である。
【0060】
第2の実施形態の投光ユニット1は、上述の第1の実施形態の投光ユニットにおける描画光学系の構成に対して、導光体20、21、22の替わりにリフレクタ(反射部材)60、61、62を設けたことが異なる。各LED10、11、12からの光は各リフレクタ60、61、62からも光軸AX0、AX1、AX2のまま照射される。
【0061】
これにより、LED10、11、12の夫々からの出射光が、リフレクタ60、61、62で反射集光されて集光効率が高められて遮光部材30の光透過部30a、30b、30cに照射される。そのため、光透過部30a、30b、30cで絞られて生成される像画パターンに対する光利用効率が向上して路面上に描画される鮮明な描画パターンの明るさが向上する。
【0062】
図7は、本発明に係る第3の実施形態の投光ユニットの構成図である。
【0063】
第3の実施形態の投光ユニット1は、上述の第1の実施形態の投光ユニットにおける描画光学系の構成に対して、導光体20、21、22を削除したことが異なる。
【0064】
これにより、LED10、11、12の夫々からの出射光が直接、遮光部材30の光透過部30a、30b、30cで絞られて像画パターンが生成されて投影レンズ40を介して路面上に鮮明な描画パターンとして描画される。なお、遮光部材30は、隣接するLED同士の出射光が夫々の光透過部において互いに干渉するのを抑制するために、光入射面31側を段差状に形成することも可能である。
【0065】
本実施形態の投光ユニット1は、部品点数が削減されるために構成が簡略化されて製造コストの低減を図ることができる。
【0066】
図8は、本発明に係る第4の実施形態の投光ユニットの構成図である。
【0067】
第4の実施形態の投光ユニット1は、上述の第1の実施形態の投光ユニットにおける描画光学系の構成に対して、光源のLED10、11、12及び導光体20、21、22の替わりに有機EL等の面状発光体65、66、67を用いたことが異なる。
【0068】
これにより、面状発光体65、66、67の夫々からの出射光が、遮光部材30の光透過部30a、30b、30cで絞られて像画パターンが生成されて投影レンズ40を介して路面上に鮮明な描画パターンとして描画される。なお、
図8において、E
X0は面状発光体65の光軸、E
X1は面状発光体66の光軸、E
X2は面状発光体67の光軸を示している。面状発光体65、66、67はいずれも、夫々の光軸E
X0、E
X1、E
X2が遮光部材30の各光透過部30a、30b、30cを通って投影レンズ40の光軸L
X上に位置する主点Oで交差して通るように配列実装されている。
【0069】
本実施形態の投光ユニット1は、第1の実施形態の投光ユニットを構成する導光体20、21、22及び第2の実施形態の投光ユニットを構成するリフレクタ60、61、62を用いないため投光ユニットの薄型化が実現できる。また、部品点数が削減されるために構成が簡略化されて製造コストの低減を図ることができる。
【0070】
図9は、本発明に係る第5の実施形態の投光ユニットの構成図である。
【0071】
第5の実施形態の投光ユニット1は、上述の第1の実施形態の投光ユニットにおける描画光学系の構成に対して、光源のLED10、11、12、導光体20、21、22及び遮光部材30を削除して、第1の実施形態の投光ユニット1に配置された遮光部材30に設けられた光透過部30a、30b、30cの夫々の位置に対応する位置に、光透過部30a、30b、30cの夫々と形状寸法が同一の、有機EL等の面状発光体70、71、72を、光透過部30a、30b、30cの夫々に沿って配設する。
【0072】
ここで、投影レンズ40の光軸LXを前後方向に延びる軸とすると、面状発光体70、71、72の夫々は異なる高さ位置に配置される。ここで、出射光の出射方向を前方としている。また、上下方向は車両に設置された状態での方向である。本実施形態では上下で異なる位置にある面状発光体70、71、72は互いに前後方向においてもずれた位置に置かれる。相対的に上に位置する面状発光体70は、相対的に下に位置する面状発光体71よりも投影レンズ40の光軸LX延伸方向で前方となる。
【0073】
本実施形態では夫々の面状発光体70、71が作り出す路面上の描画パターンでは前後位置が逆転し、面状発光体70が形成する描画パターンが後方、面状発光体71が形成する描画パターンが前方に描かれる。
【0074】
また、本実施形態では同一の面状発光体であっても、湾曲した形状を有しており投影レンズ40の光軸LXから上方に離れるほど前方に位置する。面状発光体70の下端(三角形形状の先端部)よりも上端部(三角形形状の先端部とは対向する辺部)では光軸LX延伸方向で前方に位置する。面状発光体70が作り出す路面上の描画パターン形状は前後位置が逆転し、面状発光体70の下端(三角形形状の先端部)よりも上端部(三角形形状の先端部とは対向する辺部)が路面上後方に描画パターンを形成する。
【0075】
これにより、面状発光体70、71、72の夫々から出射される光は、第1の実施形態の投光ユニットにおいて、LED10、11、12から出射して遮光部材30の光透過部30a、30b、30cの夫々で絞られて生成された各像画パターンに対応し、投影レンズ40を介してその投影像により路面上に鮮明な描画パターンとして描画される。なお、
図8において、E
X0は面状発光体70の光軸、E
X1は面状発光体71の光軸、E
X2は面状発光体72の光軸を示している。
面状発光体70、71、72はいずれも、夫々の光軸E
X0、E
X1、E
X2が投影レンズ40の光軸L
X上に位置する主点Oで交差して通るように配列実装されている。
【0076】
本実施形態の投光ユニット1は、描画光学系が最低限の部品点数で構成されるため、構成が極めて簡略化されて製造コストの大幅な低減を図ることができる。
【0077】
なお、実施例1は次のような変形例をとることもできる。光源のLED10、11、12において、例えば、基板2に実装されたLED10が、その光軸A
X0が投影レンズの主点方向を向いていない場合は、
図10に示すように、導光体20をその中心軸C
X0が投影レンズの主点を向くように配置することにより、LED10からの出射光が投影レンズの主点方向に向かうように光路制御を行うことができる。
【0078】
すなわち、各LED10、11、12からの光は、各導光体20、21、22からは導光体の中心軸CX0、CX1、CX2が光軸の光に変換されて照射される。各導光体20、21、22からの照射光は遮光部材30の各光透過部30a、30b、30cを通って投影レンズ40の光軸LX上に位置する主点Oで交差して通るようにされている。
【0079】
あるいは、実施例2の変形例として導光体20の替わりに、
図11に示すように、リフレクタ60をその中心軸R
X0が投影レンズの主点を向くように配置することにより、LED10からの出射光が投影レンズの主点方向に向かうように光路制御を行うことができる。すなわち、各LED10、11、12からの光は、リフレクタ60、61、62からは光軸が変換されて照射される。各リフレクタ60、61、62からの照射光は遮光部材30の各光透過部30a、30b、30cを通って投影レンズ40の光軸L
X上に位置する主点Oで交差して通るようにされている。
【0080】
なお、上記第1の実施形態の投光ユニットは、光源のLEDと導光体との組み合わせで構成され、第2の実施形態の投光ユニットは、光源のLEDとリフレクタとの組み合わせで構成されていたが、光源に面状発光体を用いて、面状発光体と導光体との組み合わせ、面状発光体とリフレクタとの組み合わせも可能である。
【0081】
尚、上記いずれの実施形態においても複数有す光源は同時に点消灯しても構わないし、個別に点消灯させるようにしてもよい。各光源の点消灯は不図示の制御部によって制御される。例えば、第1の実施形態においては光源10、11、12の順に点灯させることで路面上では描画パターン51a、51b、51cの順で表示させることができる。先に点灯させた光源は別の光源が点灯した時点で点灯を継続させることもできるし、消灯させることもできる。
【符号の説明】
【0082】
1… 車両用路面描画投光ユニット(投光ユニット)
2… 基板
3… ヒートシンク
3a… 放熱フィン
10… 光源(LED)
10a… 光出射面
11… 光源(LED)
11a… 光出射面
12… 光源(LED)
12a… 光出射面
20… 導光体
20a… 上底面
20b… 下底面
21… 導光体
21a… 上底面
21b… 下底面
22… 導光体
22a… 上底面
22b… 下底面
30… 遮光部材
30a… 光透過部
30b… 光透過部
30c… 光透過部
31… 光入射面
35… 像画パターン
40… 投影レンズ
41… 光入射面
42… 光出射面
50… 路面
51… 描画パターン
51a… 描画パターン
51aa… 輪郭
51b… 描画パターン
51c… 描画パターン
55… 車両
60… リフレクタ
61… リフレクタ
62… リフレクタ
65… 面状発光体
66… 面状発光体
67… 面状発光体
70… 面状発光体
71… 面状発光体
72… 面状発光体