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特許7412078透明で着色されたリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミックならびにそのガラスセラミックの製造方法および使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】透明で着色されたリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミックならびにそのガラスセラミックの製造方法および使用
(51)【国際特許分類】
   C03C 10/14 20060101AFI20240104BHJP
   C03C 4/02 20060101ALI20240104BHJP
   C03B 32/02 20060101ALI20240104BHJP
   F24C 15/10 20060101ALI20240104BHJP
   H05B 6/12 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
C03C10/14
C03C4/02
C03B32/02
F24C15/10 B
H05B6/12 305
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018239990
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2019112298
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】10 2017 131 051.7
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】10 2018 110 908.3
(32)【優先日】2018-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フリードリヒ ズィーバース
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー ホーホライン
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第02405906(FR,A1)
【文献】特開平02-055243(JP,A)
【文献】特開2017-222561(JP,A)
【文献】特表2012-520226(JP,A)
【文献】特表2016-522777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00,
C03B 32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ4mmで0.1%~38.5%の明度Yを有する、透明で着色されたリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミックにおいて、標準光源D65の光が厚さ4mmのガラスセラミックを通過した後に、色度図CIExyY-2°において以下の座標:
【表1】
によって決定される白色領域W1における色度点を有し、かつ、
酸化物換算の重量%で、
LiO 2~5.5
ΣNaO+KO 0.1~<4
MgO 0~3
ΣCaO+SrO+BaO 0~5
ZnO 0~4
0~3
Al 18~25
SiO 60~70
TiO 1.5~5.5
ZrO 0~2.5
SnO 0.1~<0.7
ΣTiO+ZrO+SnO 3~6.5
0~5
MoO 0.01~0.3
Fe 0.005~0.25
0~0.02
から本質的に成る組成を有することを特徴とする、リチウムアルミニウムシリケートガラスセラミック。
【請求項2】
着色成分として0.2重量%未満のNdを含有することを特徴とする、請求項1記載のリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミック。
【請求項3】
含有量が0.015重量%未満であることを特徴とする、請求項1または2記載のリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミック。
【請求項4】
透過において標準光D65(2゜)を用いて測定したCIELAB表色系における彩度cが、4mmの厚さで最大でも21であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミック。
【請求項5】
470~630nmの波長範囲における最大透過率値対最小透過率値の比が最大でも2.5である透過率曲線の平坦なプロファイルを有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミック。
【請求項6】
1600nmの波長および4mmの厚さで45~85%の赤外線透過率を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミック。
【請求項7】
Fe含有量が0.005~0.25重量%であり、かつ/またはTiO含有量が1.6重量%を超え、かつ/またはZrO含有量が0.3~<2.2重量%であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミック。
【請求項8】
酸化物換算の重量%で、
LiO 3~5
ΣNaO+KO 0.2~<3
MgO 0~1.5
ΣCaO+SrO+BaO 0.2~4
ZnO 0~3
0~2
Al 18~24
SiO 60~69
TiO 1.5~5.5
ZrO 0~2.5
SnO 0.1~<0.7
ΣTiO+ZrO+SnO 3.5~6.3
0~3
MoO 0.01~0.25
Fe >0.03~0.15
0~<0.01
から本質的に成る組成を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミック。
【請求項9】
不可避の不純物を除いて、酸化ヒ素および酸化アンチンを含まないことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載のリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミック。
【請求項10】
主結晶相として高温石英混晶を含むことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載のリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミック。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の透明で着色されたリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミックから物品を製造する方法において、
a)20~80重量%のカレットを含有する工業用原料のバッチセットを準備する工程、
b)前記バッチセットを少なくとも1600℃に達する温度で溶融および清澄して溶融ガラスを得る工程、
c)ガラス中で結晶が形成されない還元状態を前記溶融ガラスにおいて調整する工程、
d)前記溶融ガラスを冷却し、加工温度Vの近傍の温度で成形し、それによって望ましい形状の物品を作製する工程、
e)フラッシュ炉内で室温に冷却し、それによってガラス中の望ましくない応力を除去する工程、
f)前記ガラスの温度を3~60分以内に約680℃の温度範囲に上昇させる工程、
g)前記ガラスの温度を約10~100分かけて680~800℃の核形成の温度範囲内に上昇させる工程、
h)結晶化核を含有するガラスの温度を5~80分以内に850~980℃の高い結晶成長速度の温度範囲に上昇させる工程、
i)850~980℃の最大温度にある温度範囲内に60分まで維持する工程、その後に
j)得られたガラスセラミックを150分未満で室温に冷却し、そうすることによってガラスをセラミック化する全継続時間が300分未満になる工程
を有することを特徴とする、方法。
【請求項12】
調理器具、暖炉覗き窓、調理面、グリル面または焙焼面としての、耐火性ウィンドウ、オーブン覗き窓、照明領域のカバーにおける、任意に複合ラミネートの安全ガラスとしての、熱処理におけるキャリアプレートまたは炉ライニングとしての、請求項1から10までのいずれか1項記載のガラスセラミックを含む物品の使用。
【請求項13】
透過光の色度点を補正するために施されるカラーフィルターまたはカラー層を使用していない、2.5~6mmの厚さおよび1.2~<5%の光透過率を有するプレートである、暗色に着色された調理面としての請求項12に記載の物品の使用。
【請求項14】
不透明な上側および/または下側コーティングとして設計されたマスクを有し、かつ透過光を補正するために施されるカラーフィルターまたはカラー層を使用していない、2.5~6mmの厚さおよび5~80%の光透過率を有するプレートである、着色された調理面としての請求項12に記載の物品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の透明で着色されたリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミックに関する。
【0002】
本発明はまた、ガラスセラミックの製造方法およびそのようなガラスセラミックの使用に関する。
【0003】
LiO-Al-SiO系のガラスを、主結晶相として高温石英混晶(HQMK)またはキータイト混晶(KMK)を有するガラスセラミックに変換できることが一般に知られている。第1のタイプのガラスセラミックについては「β-石英」または「β-ユークリプタイト」という同義語も文献に見出され、第2のタイプについては「β-スポジュメン」が結晶相の用語として見出される。
【0004】
これらのLASガラスセラミックの主な特徴は、それらの透明性、酸およびアルカリに対する良好な耐薬品性、高い機械的強度、ならびに室温から適用温度までの温度範囲内でのそれらの低い熱膨張係数α20/700<1.5・10-6/である。熱膨張挙動は一般に、材料がそれらの適用温度の範囲内で非常に低い膨張、通常は0±1・10-6/Kを有するように調整されている。高い機械的強度と相まって、それらの適用温度での熱膨張率が低いことから、これらのガラスセラミックは顕著な耐温度差性および耐温度変化性を有する。高温での使用に対する要件には、ガラスセラミックがそれらの寿命の間に要求される特性(例えば熱膨張率、透過率、応力蓄積など)を保持することが含まれる。耐温度性の点では、高い適用温度でのガラスセラミックの収縮(圧縮)が低くても重要なパラメーターである。通常、ガラスセラミック品は使用中に不均一に加熱されるので、収縮度が大幅に異なることで経時的に強い収縮が物品に蓄積する。
【0005】
LASガラスセラミックの大規模工業的な製造はいくつかの段階で行われる。まず結晶性出発ガラスがカレットと粉末状バッチ原料の混合物から溶融および清澄される。その際、溶融ガラスは1550℃から最大1750℃、通常は1700℃までの温度に達する。1750℃を超える、一般に1900℃前後の温度での高温清澄化が行われる場合もある。酸化ヒ素および酸化アンチモンは、良好な気泡品質の点から1700℃未満の従来の清澄温度で技術的および経済的に有利であると証明された清澄剤である。比較的新しい文献では、環境に優しい清澄剤SnOを単独で、またはハロゲン化物(F、Cl、Br)、CeO、MnO、Fe、硫黄化合物などの1種以上の清澄添加剤と組み合わせて使用することも広まっている。
【0006】
溶融および清澄後、ガラスは一般に、キャスティング法、プレス法、ロール法またはフロート法によって熱間成形される。多くの用途のために、ガラスセラミックは平坦な形、例えばスライスの形が必要とされる。圧延法、および最近では浮遊法もプレートの製造に使用される。これらのLASガラスを経済的に製造するために、熱間成形において低い融点および低い加工温度Vが望ましい。さらに、ガラスは成形中に失透を示してはならず、すなわち、ガラスセラミック品の強度を低下させるかまたは視覚的に妨げとなる約5μmを超えるより大きな結晶を形成してはならない。成形はガラスの加工温度V(粘度10dPas)の近傍で行われるので、より大きな結晶の形成を回避するためには、溶融物の上限失透温度が加工温度の近傍、好ましくは加工温度未満であることを保証しなければならない。
【0007】
ロール成形において重要な領域は、ガラスがロールによって成形され冷却される前の溶融ガラスと貴金属ノズル(一般にPt/Rh合金)との接触である。フロート法の場合、ガラスが高い結晶成長速度を有する液体Snと接触しているスパウトリップとフロート浴の前部とのガラス接触である。
【0008】
結晶性LASガラスは、制御された結晶化(セラミック化)によって、その後の温度プロセスにおいてガラスセラミックに変換される。このセラミック化は2段階温度プロセスで行われ、この場合、一般にZrO/TiO混晶からの核が680℃~800℃の温度で核形成することによってまず生成される。SnOも核形成に関与している。高温石英混晶は高温でこれらの核上で成長する。通常は850~960℃の最大製造温度で、ガラスセラミックの構造は均質化され、光学的、物理的および化学的特性が調整される。経済的な製造のために、短いセラミック化時間が有利である。
【0009】
温度が約930℃~1250℃の温度範囲に上昇するとキータイト混晶への更なる変換が起こる。この変換と共にガラスセラミックの熱膨張係数が増大する。遷移領域では、主結晶相としてキータイト混晶を有し、通常は二次相として高温石英混晶を有する透明ガラスセラミックを製造することが可能である。さらに温度が上昇するとさらに結晶が成長し、それに伴う光散乱によって、透明が半透明になり、さらに不透明な外観を呈することになる。
【0010】
透過および散乱は、ガラスセラミックの外観および光学的特性にとって重要な特性である。
【0011】
そのようなガラスセラミックの1つのクラスは、透明で着色されていないガラスセラミックである。これらのガラスセラミックは、それらがあまり散乱しないことから透明であり、それらの製造中に着色剤が添加されないことから着色されてない。
【0012】
透明で着色されていないガラスセラミックの場合、高い明度、つまり高い光透過率が望ましい。したがって、そのようなガラスセラミックの厚さ4mmにおける光透過率は80%を超える。しかしながら、透明で着色されていないガラスセラミックは、バッチ原料中に現れる不純物、例えばFeなどによって固有色をあまり示さない。この固有色は望ましくなく、技術的手段によって最小限に抑えられる。したがって、欧州特許出願公開第1837312号明細書(EP 1837312 A1)に示されているように、Ndをドープすることによって赤褐色の色かぶり有する透明で着色されていないガラスセラミックを物理的に脱色することが可能である。
【0013】
透明で着色されたガラスセラミックは、可視光で吸収する1種以上の着色化合物の意図的な添加によって透過率が低下するという点で、透明で着色されていないガラスセラミックとは異なる。つまり、着色されたガラスセラミックの組成の一部としてのこれらの着色化合物は、着色されていないガラスセラミックと比較してガラスセラミックの吸収係数を増加させる。定義された厚さにおける透過率曲線の結果として得られるスペクトルプロファイルは、ガラスセラミックの色とその明度を引き起こす。
【0014】
着色されたガラスセラミックという用語の同義語として、体積着色されたガラスセラミックという用語も文献で使用されている。両方の用語は、ガラスセラミックがその組成中にガラスセラミックの吸収係数に影響を及ぼす着色成分を含有するという事実に基づいている。したがって、これらの材料は、着色されていないガラスセラミックから製造された物品を着色するために有色コーティングを有するそれとは根本的に異なる。そのようなコーティングは、ガラスセラミックの吸収係数に影響を及ぼさない。
【0015】
調理面として使用される場合、ガラスセラミックの明度は、黒色の外観を達成するためと調理面の下にある技術部品が見えにくくなってしまうことを防ぐために、一般に1~5%の値に制限される。この範囲の値によって、通常はLEDを使用した表示能力が保証され、ラジエーターからの放射によるグレアが回避される。約2%を超える比較的高い明度値の場合、その値は調理面の下にある設置機器および上からの照明に依存し、通常は不透明な下側コーティングとして設計されているマスクが施される。インジケーター、ディスプレイウィンドウ、センサー、発光プロジェクターのための領域はコーティングなしで留まる。他の用途の場合、例えばガラスセラミック調理器具については、特定の色相と組み合わせて通常は5%よりも高い明度が望ましい。透明で着色された本ガラスセラミックについては、明度Yは80%までである。
【0016】
結晶性ガラス中の着色化合物は、通常、それから製造されたガラスセラミック中の着色化合物とは異なって着色するという特徴を示す。このことは、例えば米国特許第3788865号明細書(US 3788865)において、着色成分NiO、Fe、CoO、Cr、MnO、CuO、ZnS、Vについて個別にまたは組み合わせて記載されている。結晶性ガラスおよびそれから製造されたガラスセラミックの列挙された透過率曲線は、ガラスセラミックがそれらの吸収帯のために可視光で平坦な透過率プロファイルを持たないことを示す。
【0017】
による従来の着色は、結晶性出発ガラスのセラミック化の間に生じる。以前の研究(独国特許発明第19939787号明細書(DE 19939787 C2))に示されているように、酸化バナジウムの着色状態への変換のためには酸化還元プロセスが必要条件である。結晶性出発ガラス中では、Vは依然として比較的弱く着色し、僅かに緑色がかった色相をもたらす。セラミック化の間に酸化還元プロセスが起こり、バナジウムは還元され、酸化還元パートナーは酸化される。主な酸化還元パートナーとして働くのは、清澄剤、一般に酸化アンチモン、酸化ヒ素または酸化スズである。バナジウムは、酸化還元プロセス後にV4+またはV3+として還元酸化状態で部分的に存在し、電子・電荷移動反応によって強力に着色すると仮定することができる。出発ガラス中の酸化還元パートナーの種類および量に加えて、例えば、高い融点および高温での長い滞留時間によるか、またはバッチへの還元成分の添加による、溶融時にガラス中で調整される酸化還元状態も影響を及ぼす。酸化バナジウムの着色効果に及ぼす更なる影響にはセラミック化条件がある。特に、高いセラミック化温度およびより長いセラミック化時間がより強い着色をもたらす。
【0018】
標準光源D65が使用される場合、明度はCIE標準表色系CIExyYによるY値で表される。CIE国際規格のドイツでの実施は、DIN 5033に規定されている。文献には、明度についてDIN EN 410による光透過率、積分透過率または光透過率という用語も見出される。測定された透過率のスペクトル値から、つまり、可視光スペクトルを表す380~780nmの範囲のスペクトル透過率から、明度Y、ならびに標準光源D65の定義された発光スペクトルを有する光源の色度座標xおよびy、ならびに2℃の観測者角度が計算される。光源から放射された各光は、CIExyY色空間のスペクトル色線内にx座標とy座標を有する色度点(Farbort)を持つ。例えば、標準光源D65の光および2°の観測者角度の色度点はx=0.31およびy=0.33である。
【0019】
同様にスペクトル色線がまたがる色空間内には、いわゆる黒体曲線がある。黒体曲線上の各点は、定義された温度で黒体放射体から放射された光の色度点に相当する。例えば、標準光源D65は、定義によると約6,500Kの温度を有する黒体放射体に相当する。太陽も黒体放射体に相当し、したがって日光の色は黒体曲線上にあるので、この曲線は人間の知覚において特別な役割を果たす。太陽の位置に応じて、色度点は冷たい色度点と暖かい色度点との間でシフトし、その際、20,000Kの色温度は晴天に相当し、3,500Kの温度は夕暮れ直前の夕方に相当する。したがって、黒体曲線上またはその近傍の色度座標は、白色、特に自然光として知覚される。
【0020】
CIExyY色空間における更なる特徴は、x=0.33およびy=0.33でのいわゆる無彩色点である。この色度点は、全可視スペクトル範囲(標準光源E)にわたって同じ強度で放射する理論上の光源に相当し、したがってすべてのスペクトル色を等しい割合で含む。
【0021】
特定の光源の光が、透明で着色された材料を通過する場合、異なる波長では材料の透過率は通常異なることから、つまり、異なる波長では材料の吸収係数は異なることから、透過された光スペクトルは、一般的に元の光源の光スペクトルにもはや相当しない。つまり、透明で着色された材料を透過する前後の光の色度点を測定する場合、特に異なるxおよびy色度座標を測定する。つまり、この材料は透過された光の色度点のシフトを引き起こす。これに関する唯一の例外は、定義によると可視スペクトル範囲内の各波長に対して同じスペクトル透過率、つまり、このスペクトル範囲内で一定の吸収係数を有する減光フィルターである。したがって、光が減光フィルターを通過する場合、光のx座標およびy座標は変化せず、明度Yのみが減少する。
【0022】
透明で着色された本ガラスセラミックについては、明度Yは、標準光D65および2°の観測者角度および色度座標x、yを使用して示される。以下で、透過された光の色度点をごく僅かしかシフトさせないガラスセラミックのことを、「無彩色」、「色味が少ない」または「無彩色点の近傍の色度点もしくは色度座標を有する」と呼ぶ。これに関して、特に「無彩色点の近傍の色度点を有する」という表現は、ガラスセラミックを透過した後の標準光源Eの光がx=0.33およびy=0.33の近傍に色度点を有することを意味すると理解される。近傍とは、最大±0.1の距離に関連する。
【0023】
あるいは明度Lおよび色度座標a、bを有するCIELAB表色系を使用することができる。色の尺度として、次の計算式に従ってパラメーターc(彩度)が求められる:
【数1】
【0024】
カラーモデルは、DIN EN ISO 11664-4「測色-第4部:CIE 1976 L色空間」で規格化されている。CIELAB表色系の座標は、CIE表色系の色度座標x、yおよび明度Yから公知の方法で計算することができる。CIELABは、均等色差を目的としていることから、CIExyY表色系よりも人間の色知覚を表すのに優れている。CIELAB表色系では、差ΔEは2つの色度点(L、a、bi,j間の色差の尺度である。普通の観測者により依然として区別され得る最小色差は、訓練および順応時間ならびに1~5の照度に依存する。これらの関係は、透過測定に加えて、反射(Remission)、すなわち上から見た場合にも適用される。
【0025】
【数2】
【0026】
両方のガラスセラミックタイプ(透明で着色されていないものと、透明で着色されたもの)に共通しているのは、視覚的に目立たない低散乱に対する要求である。低散乱は、物品、場合によっては下側コーティングを見ること、またはガラスセラミックの下に配置された光を発するインジケーターもしくはスクリーンを見ることに支障をきたさないようにし、輪郭がはっきりと鮮明に見えるようにするために不可欠である。散乱が視覚的に目立っていることは、インジケーターの外観について判断を下すことによって簡単に評価することができる。
【0027】
ガラスセラミックの散乱率は、この明細書の文脈において、さらに曇り度(ヘイズ)を測定することによって決定される。曇り度は、ASTM D1003-13によれば、入射光ビームから平均して2.5°よりも大きくずれている透過した光の百分率である。散乱に関与するのは、結晶子サイズ、結晶と残留ガラスの屈折率の差、ならびに介在物および不均一性である。曇り度の値が10%を超えると散乱は一般に妨げとなり、視覚的に目立つ。散乱が目立つのは周囲の照明およびガラスセラミックからのインジケーターの距離などの他の要因にも依存するので、インジケーターの尖鋭度について判断を下すためには、発光インジケーターによる実用的な測定がさらに推奨される。
【0028】
例えば、調理面、暖炉窓および覗き窓としての、一連の用途のために、物品または発光インジケーターを見るときに色の変化がないかまたはごく僅かしかないことが望ましい。この場合、ガラスセラミックの背後にある物品は原色に忠実に見える。多色インジケーター、特に白色LED、RGB-LED、OLED、プロジェクター、蛍光管、ディスプレイおよびスクリーンなどの色は、光がガラスセラミックを通過する際に変化しないかまたはごく僅かしか変化しない。通常はLEDとして設計されたインジケーターとして設計された有色インジケーター、例えば、実質的に単色である赤系紫色、青色、緑色、黄色、橙色、赤色のインジケーターの場合、それらの強度は光が通過するときに異なって吸収されないことが望ましい。この場合、市販のLEDを特別な電子制御なしに使用して強度を補正することができるので、異なる色を有する複数のLEDを組み合わせることは技術的により簡単でより経済的である。
【0029】
少ない色味変化に対するこれらの要件は、着色化合物の吸収帯によって通常引き起こされるように、可視域でのガラスセラミックのスペクトル透過率について、より高いまたはより低い透過率を有するスペクトル領域のない曲線の可能な限り平坦なプロファイルを意味する。特に、人間の目がより高い知覚感度を有する470~630nmの波長領域がここでは関与する。
【0030】
しかしながら、他方で着色化合物はそれらの吸収によって、各用途に望ましい透明で着色されたガラスセラミックの望ましい明度を保証すべきである。この場合、人間の観測者にとって、これらの望ましいガラスセラミックは、ほぼ無色の灰色を呈しているように見える。
【0031】
ガラスセラミックとは対照的に、ガラスの場合、他のより広い吸収帯のために、平坦な透過率プロファイルおよび灰色の色相を表すことが可能である。例えば、米国特許出願公開第20150274579号明細書(US 20150274579 A1)は、電磁調理面用の強化ガラスプレートを記載している。0.8~1.8重量%のFe、0.02~0.06重量%のCoO、0~0.005重量%のSeおよび0~0.1重量%のCrの着色化合物の含有量により、430~630nmの望ましい平坦な透過率プロファイルおよび白色LEDを有する表示において利点を提供する厚さ4mmで最大でも10%の光透過率を有する灰色のガラスを製造することが可能である。しかしながら、これらの着色酸化物は、ガラスセラミック中でのそれらの着色効果が異なり、平坦な透過率プロファイルを生成することができないので、灰色のガラスセラミックの作製には適していない。
【0032】
色味が少ない透明で着色されたガラスセラミック、つまり、低彩度c、または無彩色点の近傍の色度座標ひいては透射光でニュートラルグレートーンを有するガラスセラミックは、先行技術から公知ではない。これは、結晶化における吸収帯が通常はより狭く、不利にシフトするという事実に基づく。したがって、例えば、ガラス中のCoOは青色を呈し、ガラスセラミック中では紫色を呈する。さらに、強力に着色するFe/Ti-およびSn/Ti着色錯体によって、ガラスセラミック中にスペクトルの短波長領域の新しい吸収帯が形成される。
【0033】
例えば、特開昭50-51235号公報(JP H5051235 A2)は、0.08~0.8重量%のFe含有量において0.8~2重量%の高含有量のNdにより脱色されている、最大でも75%の明度を有する、色味が少ない、つまり灰色のガラスセラミックを記載しており、これは、Ndのコストが高いために経済的に不利である。さらに、Ndの吸収帯が狭いために、望ましい平坦な透過率プロファイルを達成することができない。
【0034】
独国特許出願公開第2844030号明細書(DE 2844030 A1)の文献には、まずチタン、鉄、ナトリウムおよびカリウムの酸化物によって引き起こされる天然の琥珀色の着色をNdの添加によって補償し、それによって灰色のガラスセラミックを作製する、透明で調色されたガラスセラミックの製造方法が記載されている。少量の酸化モリブデン、酸化タングステンおよび/または酸化バナジウムをさらに添加することによって、スモークグレー、淡黄色または栗色の着色が達成される。着色酸化物の添加により、このガラスセラミック中で無彩色点から黄色の方向に向かう。この方法もNdが高価で吸収帯が狭いために不利である。
【0035】
改善された表示能力を有する調理面用の酸化バナジウム着色ガラスセラミックは、多数の比較的新しい文献に記載されている。
【0036】
国際公開第2010102859号(WO 2010102859 A1)には、そのような調理面が開示されている。オペレーターにそのような調理面において著しく改善された情報内容を有する改善された操作用表示を提供するために、その発明によれば、ガラスセラミックが、全波長領域において450nmを超える可視光の範囲において0.1%を超える透過率値、可視域で0.8~5%の光透過率および1600nmの赤外域で45~85%の透過率を有すること、表示装置が設けられていること、ならびに表示装置が、異なる色および/またはシンボルマークを有する異なる運転状態を表示するように設計されていることが提案されている。好ましい実施形態では、通常の赤色インジケーターの代わりに、またはそれに加えて、青色、緑色、黄色、橙色または白色などの1つ以上の多色ディスプレイが使用されている。ガラスセラミックの示された透過率プロファイルは平坦なプロファイルに対する要求に近いが、スペクトル透過率は長波長スペクトル範囲で約550nmから急激に増加するという欠点を有する。結果として、ガラスセラミックを通過する青色および緑色のLEDの強度は、赤色のLEDの強度よりも著しく低下される。ガラスセラミックの色は、スペクトルの長波長領域でのより高い透過率によって白色点もしくは無彩色点から赤色の方向にシフトされ、例えば白色LEDなどの多色インジケーターが色彩的に変化する。
【0037】
青色LEDを有する表示を可能にする透過率プロファイルは、国際公開第2010137000号(WO 2010137000 A2)および米国特許第2012085336号明細書(US 2012085336 AA)の各文献に開示されている、酸化バナジウムにより着色されたガラスセラミックも示している。第1の文献では、ガラスセラミックは3mmの厚さで450~480nmの各波長に対して1.5%~5%の明度および0.5%を超える透過率を有する。第2の文献には、厚さ4mmで400nm~500nmの各波長に対して0.2%~4%の透過率を有するガラスセラミックプレートが開示されている。これらの文献においても、望ましい平坦な透過率プロファイルは達成されていない。
【0038】
米国特許出願公開第20130098903号明細書(US 20130098903 A1)は、少なくとも1つの加熱手段、制御および/または監視手段ならびに赤色ではない少なくとも1つの発光表示を含む内部要素から成る調理装置を開示しており、ここで、内部要素はガラスまたはバナジウム着色ガラスセラミックのプレートによって覆われている。プレートは、420nm~480nmの少なくとも1つの波長に対して2.3~40%の光透過率および少なくとも0.6%のスペクトル透過率を有する。調理装置は、内部要素を見えなくするための少なくとも1つのマスキング手段を上側、下側または内部に有する。
【0039】
改善された表示能力を有するこれらの比較的新しいガラスセラミック調理面では、Vが着色のために使用される。なぜなら、それは可視光領域で吸収し、赤外線領域で高い透過率を可能にする特別な特性を有しているからである。可視スペクトルの長波長領域での透過率の増加、したがって平坦ではない透過率プロファイルは、ガラスセラミックの色度点が白色点もしくは無彩色点から大幅にずれている欠点を有する。
【0040】
特に、白色LED、ディスプレイ、ハロゲンランプなどの技術的および経済的に入手可能な発光素子と組み合わせた先行技術から公知のガラスセラミックでは、ガラスセラミックを透過した後の色度点を黒体曲線の領域において日光の色温度に相当する色温度で実現する発光現象を生じさせることは不可能である。
【0041】
先行技術からの着色されたガラスセラミックのこの欠点を克服するために、一連の追加の技術的手段が開発されてきた。
【0042】
米国特許出願公開第20140146530号明細書(US 20140146530 A1)、国際公開第2012076414号(WO 2012076414 A1)および国際公開第2012168011号(WO 2012168011 A1)の各文献には、カラーフィルターまたは色彩印象-補償フィルターが記載されており、これらはインジケーター領域のガラスセラミック上に施されており、可視スペクトルの長波長領域でのより大きな吸収によってガラスセラミックとフィルターとの組合せの色を白色点もしくは無彩色点の方向に補正するかまたは他の望ましい色度点に補正する。それにより、白色LEDおよび多色インジケーター、ならびに色歪みがないかまたは色度点が補正されたディスプレイおよびスクリーンを表示することが可能である。
【0043】
国際公開第2012076414号(WO 2012076414 A1)の文献には、CIE標準表色系CIExyY(2°)における先行技術による調理面用の着色が異なるガラスセラミックタイプ(図1および図2のクラスA~E)の透過スペクトルおよび色度点が詳細に記載されている。
【0044】
インジケーターから透過された光については、黒体曲線に沿った好ましい白色領域が定義され、これはそのような補償フィルターを用いてのみ達成することができる。先行技術によるこれらのガラスセラミックタイプの色度座標は、図1(b)に黒の×印として本発明に取り込まれている。
【0045】
この解決策は、追加のカラーフィルターのコストが高いために経済的に不利である。技術的な欠点は、フィルターの引っかき感度が比較的高く、剥離する危険性があるという点と、これらのフィルターが比較的高い温度を有する領域に対しては一般に適していないという点とである。さらに、これらのカラーフィルターは、透過した多色光および単色光を吸収してその強度を低下させ、それによってシステム全体のエネルギー効率を悪化させる。
【0046】
白色点からずれるようにシフトされたスペクトル的に不均一な透過率プロファイルおよび色度座標を有する基材に適合された色補正のために、色彩的に制御可能な発光手段もしくはインジケーターに関する電子措置も、例えば国際公開第2012076412号(WO 2012076412 A1)に開示されている。発光手段は少なくとも2つの原色照明器具からなり、これに関して、少なくとも1つの原色照明器具の基本色明度が補正されている。技術的な例は、例えば色彩的に制御可能なRGB-LEDまたは電子的に色補正されたLCDディスプレイおよびTFTディスプレイである。これらの措置は、制御を含めた電子部品のコストのために経済的に不利である。特にディスプレイの場合、相応の制御によって色補正を実行することは可能であるが、より強く透過された色の明度はより弱く透過された色に比べて減少されなければならないので、ディスプレイの全体的な明度を犠牲にしなければならない。しかしながら、この場合、ガラスセラミックを透過した後のディスプレイの望ましい明度を得るためには、非常に高い輝度を有する高価なディスプレイを使用しなければならない。
【0047】
酸化バナジウムにより着色されたガラスセラミックを多色インジケーターの光が通過するときの色の変化を補正するための更なる複雑な解決策は、米国特許出願公開第20160281961号明細書(US 20160281961 A1)に開示されている。これに関して、この物品は、ガラスセラミック、光源および発光化合物を含み、これらは調理面上に少なくとも1つの発光面を形成する。この発光化合物は、光がガラスセラミックを通過した後に望ましい色度点を有するようにするために光源の波長スペクトルを変換する。
【0048】
これらの用途の多くの場合、高いIR透過率も望ましい。用途に応じて、高いIR透過率に対する要件は、800nmの近IRから4μmの波長までの様々な範囲に関連する。
【0049】
ガラスセラミックにおいて特徴的であり、用途面で許容されるのは、水の混入に起因するものとみなされる2700~3500nmの範囲のIR吸収帯である。
【0050】
本発明の課題は、先行技術の上記欠点を克服する、透明で着色されたリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミックを見出すことである。そのようなガラスセラミックの明度は広範囲にわたって調節可能であるべきである。さらに、ガラスセラミックは経済的かつ環境に優しい製造に適しているべきである。すなわち、溶融性および清澄性が良好であり、低い融点および成形温度ならびに高い耐失透性を有し、短時間でセラミック化可能である。本発明によるガラスセラミックは、それらの使用に課される他のあらゆる要件、例えば、耐薬品性、機械的強度、耐温度性、およびその特性、例えば、熱膨張率、透過率、応力の蓄積などの変化に対する高い耐温度性/耐経時性などを満たすべきである。
【0051】
この課題は、特許請求項1に記載のリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミックによって解決される。好ましい実施態様は、従属請求項に挙げられている。
【0052】
ガラスセラミックの製造方法およびその使用を見出すことも本発明の課題である。
【0053】
本発明による透明で着色されたLASガラスセラミックは、厚さ4mmで、0.1%~80%、つまり少なくとも0.1%かつ最大80%の明度Yを有し、標準光源D65の光が厚さ4mmのガラスセラミックを通過した後に白色領域W1における色度点を有することを特徴とする。この色度点は、色度図CIExyY-2°において次の座標によって決定される:
【表1】
【0054】
ここで、白色領域W1は、CIExyY色空間における黒体曲線に沿った領域として生じ、これは約2,750Kから約1,000,000Kまでの色温度にわたり、上限において黒体曲線と比較して上向きに約y=0.04だけシフトしており、下限においては下向きにy=0.07だけシフトしている。
【0055】
これにより以下の効果が生じる:D65標準光源の光は、定義によると約6,500Kの色温度を有し、2°で観測者が直接観測するとx=0.31およびy=0.33の色度点を有する。つまり、本発明により、光がセパレータを通過するときに、望ましくない色かぶりを生じさせることなく、光の色度点を実質的に黒体曲線に沿ってより高い色温度とより低い色温度の両方にシフトさせることができる。つまり、白色光は、厚さ4mmのガラスセラミックを通過した後も依然として白色光として知覚される。
【0056】
これは、最大でも80%の透過率を有する先行技術から公知のガラスセラミックでは不可能である。
【0057】
ガラスセラミックを通過した後の光の色度点は、例えばコニカミノルタ製の色彩計CS-150を用いて直接測定することができる。同様に、ガラスセラミックの透過率スペクトルを測定し、ひいてはCIEの仕様に従ってD65標準光の既知のスペクトルおよび2°の通常の観測者の目の感度の助けを借りて色度点を計算することが可能である。
【0058】
例えば、ディスプレイなどの表示装置は、通常、5,000K(温白色)、6,500K(昼光色)または9,300K(冷白色)の色温度を有する白色光を放射するように調整されている。つまり、本発明による物品は、さらに適合させる必要なしに市販のディスプレイを用いて、ディスプレイにとって望ましいディスプレイから放射された光の色度点を物品の外側領域に生じさせることを可能にする。
【0059】
好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、標準光源D65の光が厚さ4mmのガラスセラミックを通過した後に白色領域W2における色度点を有することを特徴とする。この色度点は、色度図CIExyY-2°において次の座標によって決定される:
【表2】
【0060】
ここで、白色領域W2は、CIExyY色空間における黒体曲線に沿った領域として生じ、これは約3,500Kから約20,000Kまでの色温度にわたり、上限においては黒体曲線と比較して上向きに約y=0.025だけシフトしており、下限値では下向きにy=0.04だけシフトしている。
【0061】
つまり、この領域はW1と比較して、自然日光の色度点の領域に相当する黒体曲線のより短い部分に沿って延び、さらに、黒体曲線からのx座標およびy座標のずれがより小さい。したがって、そのようなガラスセラミックを通過する白色光は、特に白色および自然光として知覚される。
【0062】
特に好ましくは、ガラスセラミックは、厚さ4mmでガラスセラミックを通過した後の標準光源D65の光が白色領域W3の色度点を有することを特徴とし、これは、約5,000Kから約20,000Kまでの色温度のCIExyY色空間における黒体曲線に沿って延び、上限においては黒体曲線と比較して上向きに約y=0.025だけシフトしており、下限においては下向きにy=0.04だけシフトしていることを特徴とする。つまり、白色領域W3は、領域W2に実質的に相当するが、色温度は5,000Kの段階で始まる。この色範囲は昼白色に相当し、それに応じて、人間の観測者により、特に純粋な白色、特に冷白色として知覚される:
【表3】
【0063】
そのような着色効果は、例えば、着色成分として0.003~0.5重量%のMoOを含有する透明で着色されたLASガラスセラミックによって達成することができる。MoOによって着色する場合、低減された色、つまり彩度を得るためには、0.003重量%の最小含有量が必要である。これらの着色成分は色度座標を無彩色点から黄色もしくは橙赤色にシフトさせるので、より低い明度が望ましい場合、またはFeもしくはV含有量が増加するにつれて、より高いMoO含有量が必要である。好ましくは、無彩色点の近傍の色度点を調整するために、少なくとも0.01重量%、さらに好ましくは少なくとも0.03重量%、特に好ましくは少なくとも0.05重量%のMoOが含まれている。ガラスセラミック中にはMo原子の様々な価数が存在しているので、組成の所定の含有量は、分析的にこの化合物に関連する。上限として、MoO含有量は、0.5重量%、好ましくは0.3重量%、さらに好ましくは0.25重量%、特に好ましくは0.2重量%である。
【0064】
MoOの添加はガラス粘度の低下を引き起こし、ガラスの溶融性にとって好ましいことが分かった。しかしながら、特に還元酸化モリブデン種は核形成剤としても作用し、失透安定性を悪化させることがある。したがって、含有量を制限することが有利である。
【0065】
ガラスセラミックは、有利には0.2重量%未満のNdを含有する。なぜなら、この着色酸化物の場合、526nm、584nmおよび748nmの波長での狭い吸収帯により少ない色味が達成されるからである。Ndの含有量が高いと、これは平坦ではない透過率プロファイルをもたらし、使用された標準光源からガラスセラミックの色度座標がより大きくずれるという欠点を伴う。多色インジケーターまたはスクリーンの場合、記載された波長領域は、ガラスセラミックを通過するときに大幅に吸収される。Ndの好ましい含有量は、0.12重量%未満、さらに好ましくは0.06重量%未満である。特に好ましくは、Ndは使用されず、ガラスセラミックは技術的にNdを含まない。この場合、含まれる不純物の含有量は一般に10ppm未満である。この効果は、他の着色剤の添加とは無関係に起こる。したがって、ガラスセラミックは、他の着色成分とは無関係に、有利には0.2重量%未満のNdを含有する。
【0066】
したがって、好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、着色成分として0.003~0.5重量%のMoOまたは0.2重量%未満のNdを含有する。したがって、特に好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、着色成分として0.003~0.5重量%のMoOおよび0.2重量%未満のNdを含有する。MoOとNdのこの組合せによって、特に中立色のガラスセラミックを広範囲の明度にわたって達成することができる。
【0067】
本発明によるガラスセラミックのCIELAB表色系における透過光で測定された彩度cは、有利には最大でも21、特に好ましくは最大でも15、特に最大でも7である。
【0068】
好ましくは、ここで、色度座標は、a=0±17、b=0±17、さらに好ましくはa=0±12、b=0±12、さらに好ましくはa=0±8、b=0±8、特に好ましくはa=0±6、b=0±6であり、ひいては無彩色軸からのずれはほとんどない。
【0069】
特許請求の範囲に記載された色度座標の値は、4mm厚の研磨された試験片および標準光D65(2°)に基づいている。
【0070】
厚さの変化と共に、ガラスセラミックの色度座標は、4mmに基づいた彩度cが大きいほどより強くシフトする。本発明による彩度cの範囲が2~12mmまたは少なくとも2.5~6mmの全厚さ範囲で保たれるガラスセラミックが好ましい。
【0071】
あるいは少ない色味は、均等に知覚される色コントラストが色度点の周りにあるものの、円上ではなく、いわゆるマクアダム楕円上にあるCIExyY表色系で表すこともできる。本発明によるガラスセラミックの透過光で測定された色度座標は、CIExyY表色系における白色点または無彩色点の近傍の厚さ4mmについてのものである。好ましい範囲Δx=±0.13およびΔy=±0.10が良好な近似値である。
【0072】
標準光D65(2°)の場合、色度点はx=0.3127およびy=0.3290である。標準光(2°)の色の位置は白色点とも呼ばれる。したがって、ガラスセラミックの好ましい実施形態の色度点の範囲は0.1827≦x≦0.4427および0.2290≦y≦0.4290である。より狭い範囲のΔx=±0.08およびΔy=±0.06、さらに好ましくはΔx=±0.05~Δy=±0.04の白色点により一層近い色度座標が、ガラスセラミックを光が変色せずに透過するのに有利である。そのようなガラスセラミックの場合、透過された光の色度点にせいぜい僅かな変化しか生じない。
【0073】
他の種類の標準光の場合、それぞれの白色点の位置はシフトし、例えば、標準光Cの場合、x=0.309およびy=0.319であり、標準光Aの場合、x=0.448およびy=0.407である。有利には達成可能な色度座標の上限および下限は、照明に応じて所定の許容誤差で適合されるべきである。
【0074】
白色点または無彩色点からのガラスセラミックの色度点(x、y)の距離dは色と相関しており、様々な実施例のために以下で示される。標準光D65(2°)で測定した場合の距離dについては、
【数3】
がもたされる。
【0075】
本発明による透明で着色されたガラスセラミックは、物品を見たとき、またはガラスセラミックの下に配置された光を発するインジケーターもしくはスクリーンを見たときに視覚的に目立たない低散乱を有する。曇り度の測定において、それらは、好ましくは10%未満、好ましくは6%未満、さらに好ましくは4%未満、特に好ましくは2.5%未満のヘイズ値を有することを特徴とする。発光インジケーターの視覚的な外観の追加の実用的な測定が、調理台として使用するためのガラスセラミックの実用的な判断にとって有利である。
【0076】
好ましくは、本発明による透明で着色されたリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミックは、470~630nmの可視光の範囲においてスペクトル透過率の平坦な曲線プロファイルを有することが好ましい。この波長範囲では、555nmで最大となる人間の目の感度がより高く、限界値は青色(470nm)および赤色LEDインジケーター(630nm)の波長において特徴的である。平坦な透過率プロファイルにより、多色の白色LEDを有する色彩が少ないもしくは歪みのない表示が保証される。さらに、色の変化が少ないディスプレイ、スクリーン、例えばTFTスクリーンも示される。ガラスセラミック品を見ることは、様々な用途のために色彩的な変化がほとんどなく、光学グレーフィルターに相当する。平坦な透過率プロファイルは、ガラスセラミックの色度座標が物品の厚さにほとんど依存しないという利点を有する。
【0077】
透過率曲線の平坦なプロファイルは、好ましくは、470~630nmの波長範囲における最大でも2.5、好ましくは最大でも2、さらに好ましくは最大でも1.8の最高スペクトル透過率対最低スペクトル透過率の比によって特徴付けられる。
【0078】
さらに、平坦な透過率プロファイルは、有利には、例えばNdにおいて特徴的であるように、隣接する波長の透過率値が著しく異なる狭い吸収帯を含むべきではない。470~680nmの波長範囲では、50nmを含むすべての範囲内のスペクトル透過率は、好ましくは2.0未満、さらに好ましくは1.7未満、最も好ましくは1.5未満の差で異なるべきである。
【0079】
MoOにより着色された本発明によるガラスセラミックにおける赤外線およびUVにおける透過率曲線のプロファイルは、酸化バナジウムにより着色された従来の表示可能なガラスセラミックに基づくガラスセラミック用途から生じる要件を満たす。
【0080】
950nm~2500nmの全波長範囲において、25%のスペクトル透過率を超えないことが好ましい。好ましくは、この範囲の透過率は、4mmの厚さにおいて少なくとも30%、特に好ましくは少なくとも40%である。この波長範囲では、例えば調理台の場合、赤外線センサーを使用して鍋底の温度が検出される。
【0081】
1600nmの波長の場合、赤外線透過率、つまり1600nmでのスペクトル透過率は40%を超えるべきである。好ましくは、赤外線透過率は1600nmおよび厚さ4mmで45~85%である。特に好ましくは、1600nmでの赤外線透過率は50~80%の値を有する。それにより、輻射加熱されたガラスセラミック調理面の要求は、高い調理速度および調理面の周囲の不適切な加熱に対する保護の点で満たされる。
【0082】
ガラスセラミック暖炉窓については、暖炉の経歴を深めるために赤外線の所定の透過性が望ましい。
【0083】
酸化バナジウムにより着色された従来の確立されたガラスセラミックの場合、ここでも調理面においてIRセンサーが使用されるので、遠IRにおいて約3~4.3μmの透過窓が望ましい。遠IRでは、3,700nmで従来のガラスセラミックの場合のように少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%の赤外線透過率が有利である。
【0084】
紫外光領域では、本発明によるガラスセラミックは、同様に持続的な保護を保証すべきである。すなわち、300nm未満の波長での透過率は0.1%をずっと下回るべきである。
【0085】
IRおよびUVにおける透過率に関するすべてのデータは、4mmの研磨された試験片および標準光D65(2°)を用いた測定に基づいている。
【0086】
酸化モリブデンによる着色も酸化還元プロセスに基づくことが分かった。結晶性出発ガラス中で、MoOは依然として比較的弱く着色する。想定されるように、酸化還元プロセスはセラミック化の間に起こり、モリブデンは還元され、酸化還元パートナー、例えばSn2+がSn4+に酸化される。試験により、より強い酸化還元反応がバナジウムによる着色よりもモリブデンによる着色のために必要であることが分かった。したがって、0.05~0.8重量%の含有量のより還元性の強い清澄剤SnOが好ましい。より低い含有量は清澄にとってほとんど有効ではなく、より高い含有量はSn含有結晶による成形中に望ましくない失透を促進する。好ましくは、SnO含有量は0.1~<0.7重量%である。特に好ましくは、SnO含有量は0.6重量%未満である。酸化アンチモンまたは酸化ヒ素などの酸化還元パートナー以外の清澄剤による着色はあまり効果的でないことが判明した。
【0087】
酸化モリブデンによる着色は酸化還元プロセスであるので、例えば、高い融点および高温での長い滞留時間によるか、または還元成分の添加による、溶融時にガラス中で調整される酸化還元状態も影響を及ぼす。着色効果に及ぼす更なる影響にはセラミック化条件がある。特に、高いセラミック化温度およびより長いセラミック化時間がより強い着色をもたらす。Fe、V、CeO、TiOなどの他の多価成分の添加により、それら独自の着色効果に加えて酸化還元プロセスに影響を及ぼすことができ、それによってガラスセラミックの明度および色度座標の点で酸化モリブデンの着色に影響を及ぼすことができる。
【0088】
成分Feは、MoOによる着色を低減させ、CIELAB表色系における色度点をより高いb*値、つまり黄色にシフトさせる。したがって、0.25重量%よりも高い含有量は好ましくない。Fe含有量は、好ましくは最大0.15重量%、特に好ましくは0.1重量%以下である。低鉄原料のコストが高いことから、Fe含有量を0.005重量%未満に減らすことは非経済的である。好ましい下限は、0.03重量%を超える、特に好ましくは0.05重量%を超える含有量である。
【0089】
成分Vは、色度点を橙赤色、つまり、より高いa、b値およびCIE表色系においてより高いx値にシフトさせる。この成分は、MoOとの組合せ着色に適している。しかしながら、Vはより強く着色するので、有利にはその含有量は可能な限り低い彩度cを達成するために制限されなければならない。したがって、0.02重量%よりも高い含有量は好ましくない。Vの含有量は、好ましくは0.015重量%未満、さらに好ましくは最大0.01重量%である。特に好ましくは、組成物にVは添加されず、ガラスセラミック中には数ppm、通常は1~15ppmの不純物のみが存在する。つまり、酸化モリブデンは主着色剤であり、成分関係(重量%)にはMoO/V>1、好ましくは>3、さらに好ましくは>5、特に好ましくは>10が適用される。
【0090】
TiOは核形成用成分として有利である。酸化モリブデンによる着色も補われているので(すなわち、この添加は、光透過率Yのより低い値をもたらす)、1.6重量%を超える最小含有量が好ましい。2.5重量%、さらに好ましくは3.0重量%、特に好ましくは3.5重量%の最小含有量が好ましい。
【0091】
つまり、TiOが有利には最も重要な核形成剤であり、成分関係(重量%)TiO/ZrO>1、好ましくは2、さらに好ましくは>3が適用される。
【0092】
上記の多価着色成分FeおよびVに加えて、更なる着色成分、例えばクロム化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、銅化合物、タンタル化合物、ニオブ化合物、セリウム化合物、タングステン化合物、ビスマス化合物、セレン化合物、希土類化合物、硫化物化合物などもガラスセラミックの色度座標を調整するために使用することができる。ここで、多価元素は特別な役割を果たす。なぜなら、それらはモリブデンの着色をもたらす酸化還元プロセスにさらに影響を及ぼすことができるからである。着色成分の含有量は、好ましくは最大2重量%、さらに好ましくは1重量%未満の量に制限される。さらに、これらの化合物は赤外域での透過率を低下させる可能性があるので、有利には制限されることが望ましい。図1(a)は、CIE表色系において選択された着色成分を添加した場合の、MoOにより着色されたガラスセラミックの色度点のシフトの方向を概略的に示す。
【0093】
Crの含有量は、好ましくは0.02重量%未満、特に好ましくは0.01重量%未満であり、ガラスセラミックは、特に不可避の不純物を除いてCrを含まない。
【0094】
好ましい実施形態において、本発明によるリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミック、もしくはそれから製造された物品は、(酸化物換算の重量%で)以下の成分:
LiO 2~5.5
Al 16~26
SiO 58~72
MoO 0.003~0.5
を含有する。
【0095】
酸化物LiO、AlおよびSiOは、所定の範囲で必要な高温石英混晶相および/またはキータイト混晶相の構成成分である。
【0096】
LiOの含有量は、有利には2~5.5重量%であるべきである。この最小含有量は、低い熱膨張率を有する結晶の形態のために必要であるが、5.5重量%よりも含有量が高いと製造プロセスにおいて望ましくない失透がもたらされる。2.8重量%を超えるLiO含有量が好ましい。なぜなら、この成分がMoOによる着色を強めるからである。3~5重量%の含有量が特に良好な結果をもたらす。
【0097】
Alの選択された含有量は、有利には16~26重量%である。より高い含有量は、成形中のムライトの失透傾向のために不利である。最小含有量は、有利には16重量%である。18~25重量%の範囲が好ましい。
【0098】
SiO含有量は、有利には最大72重量%であるべきである。なぜなら、この成分がガラスの粘度を大幅に増加させるからである。好ましくは、この成分はさらに最大70重量%、さらに最大69重量%の値に制限される。ガラスの良好な溶融のためと低い成形温度のために、より高い含有量のSiOは非経済的である。SiOの最小含有量は、有利には58重量%、特に60重量%であるべきである。なぜなら、この量は、要求される性能特性、例えば耐薬品性および耐温度性などにとって有利であるからである。さらに、散乱はセラミック化時間が短いと減少される。
【0099】
更なる実施形態によれば、リチウムアルミニウムシリケートガラスセラミック、もしくはそれから製造された物品は、好ましくは、酸化物換算の重量%で、以下のものから本質的に成る組成を有する:
LiO 3~5
ΣNaO+KO 0.1~<4
MgO 0~3
ΣCaO+SrO+BaO 0~5
ZnO 0~4
0~3
Al 18~25
SiO 60~70
TiO 1.5~5.5
ZrO 0~2.5
SnO 0.1~<0.7
ΣTiO+ZrO+SnO 3~6.5
0~5
MoO 0.01~0.3
Fe 0.008~0.025
0~0.02
【0100】
「~から本質的に成る」という用語は、列挙された成分が全組成物の少なくとも96%、一般に少なくとも98%であるべきであることを意味する。
【0101】
アルカリ金属酸化物NaO、KOおよびアルカリ土類金属酸化物CaO、SrO、BaOならびにBの添加により、ガラスの成形中の溶融性および失透安定性が改善される。これらの成分は結晶相に組み込まれるのではなく、ガラスセラミックの残留ガラス相に本質的に留まるので、それらの含有量は制限されなければならない。含有量が多すぎるとガラスセラミックの熱膨張率が許容できないほど増加し、結晶性出発ガラスからガラスセラミックへの変換における結晶化挙動が損なわれ、特にこの場合、短いセラミック化時間が犠牲にされる。さらに、より高い含有量はガラスセラミックの耐経時性/耐温度性に好ましくない影響を及ぼす。アルカリ金属酸化物NaO+KOの合計は、少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.2重量%であるべきである。上限は、4重量%未満、好ましくは3重量%未満であることが有利である。
【0102】
アルカリ土類金属酸化物CaO+SrO+BaOの合計は、最大5重量%、好ましくは最大4重量%であるべきである。0.2重量%の最小合計が好ましい。
【0103】
上記のアルカリ金属酸化物、Bおよびアルカリ土類金属酸化物は、結晶間の残留ガラス相以外に、ガラスセラミックの表面上にも蓄積する。セラミック化すると約200~1000nm厚のガラス状表面層が形成され、これは結晶をほぼ含まず、これらの元素の量は多く、リチウムの量は低い。このガラス状表面層は、ガラスセラミックの耐薬品性に好ましい影響を及ぼす。
【0104】
を任意に添加すると耐失透性が増加する。3重量%よりも高い含有量は、それがガラスセラミックの散乱を増加させるので好ましくない。好ましくは、最大2重量%のBが含まれる。
【0105】
更なる成分として、MgO、ZnOおよびPを高温石英混晶に組み込むことができる。ZnO含有量は、セラミック化の間の亜鉛スピネル(Gahnite)などの望ましくない結晶相の形成の問題のために、有利には最大でも4重量%、特に好ましくは最大でも3重量%の値に制限される。MgO含有量は、最大3重量%、特に好ましくは1.5重量%までに制限されることが好ましい。なぜなら、ガラスセラミックの膨張係数をさもなければ許容できないほど増加させるからである。Pの添加は5重量%までであることができ、好ましくは3%に制限される。耐失透性のためにPを添加することが好ましい。より高い含有量は、耐酸性および短いセラミック化時間に好ましくない影響を及ぼす。
【0106】
この実施形態では、TiO、ZrOおよびSnOが核形成剤として提供される。合計量は3~6.5重量%であるべきである。核形成中に種晶が高密度で形成されるように最小量がここでは必要とされ、この種晶上で高温石英混晶が小さな結晶子サイズと結び付いて多数成長する。合計して6.5重量%よりも高いと成形中に耐失透性が悪化する。これは特に、好ましくは0.7重量%未満の値に制限される成分SnOおよび2.5重量%に制限される成分ZrOに適用される。TiO成分は非常に効果的であり、セラミック化時間が短いために重要な成分である。TiO含有量は、少なくとも1.5重量%かつ最大でも5.5重量%であるべきである。5.5重量%よりも高い含有量は耐失透性にとって不利であり、ガラスセラミック中に望ましくないTi含有結晶相、例えばルチルなどを誘発し得る。
【0107】
経済的な製造のために、結晶性出発ガラスは、溶融性および清澄性が良好であり、高い耐失透性を有し、短時間でセラミック化可能であるべきである。溶融ガラスの粘度を低下させるためには、SiO、Al、ZrOの最大含有量をさらに制限することが有利であると判明し、その一方で、アルカリ金属酸化物NaO+KO、アルカリ土類金属酸化物CaO+SrO+BaOの最小含有量はより高い値で選択することができる。
【0108】
短いセラミック化時間および良好な耐失透性に対する要求をさらに最適化するためには、核形成剤の含有量を制限し、かつNaO+KO、B、CaO+SrO+BaOおよびPの最大含有量を制限しなければならない。
【0109】
好ましくは、リチウムアルミニウムシリケートガラスセラミック、もしくはそれから製造された物品は、これに関して、酸化物換算の重量%で、以下のものから本質的に成る組成を有する:
LiO 3~5
ΣNaO+KO 0.2~<3
MgO 0~1.5
ΣCaO+SrO+BaO 0.2~4
ZnO 0~3
0~2
Al 18~24
SiO 60~69
TiO 1.5~5.5
ZrO 0~2.5
SnO 0.1~<0.7
ΣTiO+ZrO+SnO 3.5~6.3
0~3
MoO 0.01~0.25
Fe >0.03~0.015
0~<0.01
【0110】
ZrOは核形成に関与することが特に好ましく、ZrO含有量は0.3~<2.2重量%である。これは、ガラスセラミックの使用に課される要件、例えば耐薬品性にとって有利である。
【0111】
本発明によるガラスセラミックは、任意にAs、Sb、CeOなどの化学的清澄剤の添加物および酸化マンガン、硫酸塩化合物、ハロゲン化物化合物(F、Cl、Br)などの清澄添加物を2.0重量%までの全含有量で含有する。
【0112】
好ましくは、ガラスセラミックは環境の観点から重大な影響を及ぼす清澄剤である酸化ヒ素および酸化アンチモンを技術的に含まない。すなわち、ガラスセラミックは、これらの成分を原料不純物としてのみ含有する。不純物として、両成分は、それぞれ1000ppm未満の含有量、好ましくは500ppm未満の含有量で存在する。
【0113】
清澄助剤としてハロゲン化物化合物の添加を省くことも好ましい。これらは、ガラス屑の寿命にとって好ましくないHF、HClおよびHBrなどの腐食性化合物を溶融および成形中に形成する。したがって、ガラスおよびガラスセラミックは、不可避的な微量のF、Cl、Brを含まず、それらの個々の含有量は500ppm未満である。
【0114】
多数の元素、例えばB、F、Clなど、アルカリ元素Rb、CsまたはMn、Hfなどの元素の化合物は、大規模工業的に使用されるバルク原料中で通常見られる不純物である。他の化合物、例えば、元素W、Nb、Ta、Y、希土類元素、Bi、V、Cr、Niの化合物が、少ない割合で、典型的にはppm範囲で含まれていてもよい。
【0115】
ガラスセラミックを製造するための結晶性ガラスの含水量は、バッチ原料の選択および溶融時のプロセス条件に応じて、有利には0.015~0.06モル/lである。これは0.16~0.64mm-1のβ-OH価に相当する。ガラスセラミックへの変換時にIR帯が変化し、これを含水量測定のために使用する。結果として、測定に起因してガラスセラミックのβ-OH価は、含水量が変化することなく、約1.6倍に増加する。これとβ-OH価の測定方法は、例えば欧州特許出願公開第1074520号明細書(EP 1074520 A1)に記載されている。
【0116】
本発明による組成物により、費用効果の高いバッチ原料、低い溶融温度および成形温度、良好な耐失透性ならびに短いセラミック化時間などの経済的な製造にとって好ましい作製条件が可能になる。
【0117】
低い溶融温度および成形温度は、高温での溶融ガラスの粘度がより低いことによって保証される。これに関して、溶融ガラスの粘度が10dPasとなる温度および溶融ガラスの粘度が10dPasとなる加工温度Vが特性値である。本発明による結晶性ガラスの10-温度は、有利には1775℃未満、好ましくは1760℃未満であり、加工温度は、有利には1335℃未満、好ましくは1325℃未満である。低いガラス粘度が、気泡の浮上ひいては清澄化も促進するので、低いガラス粘度は気泡品質にとっても有利である。
【0118】
結晶性ガラスは、溶融物からの成形中に十分な耐失透性を有する。成形材料(例えば、圧延プロセスにおけるノズルの貴金属)と接触して成形される間、ガラスセラミックの強度に重大な影響を及ぼす視覚的に目立つ結晶は形成されない。臨界失透が起こる限界温度、すなわち失透上限(OEG)は、有利には加工温度V未満、好ましくは10℃以下である。この最小の差で、成形プロセスにおいて十分なプロセスウィンドウが定義される。特に有利なのは、少なくとも20℃であるプロセスウィンドウV-OEGである。つまり、差V-OEGは、耐失透性の尺度である。
【0119】
結晶性ガラスは、以下に記載される多段階温度プロセスによってガラスセラミックに変換される。
【0120】
第1の実施形態では、ガラスセラミックは透明着色であり、主結晶相として高温石英混晶を含む。
【0121】
散乱を最小限に抑えるために、結晶子サイズを最小限に抑えることが有利である。増大する散乱ゆえに好ましい上限は、70nm未満、好ましくは60nm未満の平均結晶子サイズである。
【0122】
ガラスセラミックの高温石英混晶の結晶相割合は、有利には少なくとも50重量%かつ有利には最大でも80重量%である。この範囲は、ガラスセラミックの望ましい機械的および熱的特性を得るために有利である。特に55~75重量%の割合が好ましい。
【0123】
ガラスセラミックの熱膨張率は、通常、使用にとって重要な温度範囲、つまり、例えば室温~約700℃の調理面において、約0±1・10-6/Kの値に調整される。好ましくは、適用温度の範囲における平均膨張は、ゼロ膨張から最大でも±0.5・10-6/Kだけずれる。
【0124】
他の実施形態では、透明で着色されたガラスセラミックは、主結晶相としてキータイト混晶を含む。平均結晶子サイズは、散乱が許容ヘイズ値を超えないように150nm未満であることが好ましい。結晶相割合は55重量%を超えることが好ましい。
【0125】
ガラスセラミックは両方の種類の結晶を含んでいてもよい。ガラスセラミックの実施形態の異なる特性の組合せによって、含まれる結晶相に応じて、多数の用途が技術的および経済的に有利には用いられる。
【0126】
経済的な理由から、主結晶相として高温石英混晶を有する透明で着色されたガラスセラミックと主結晶相としてキータイト混晶を有するガラスセラミックの両方を、結晶性リチウムアルミニウムシリケートガラスの同じ組成から製造することができる場合に有利である。
【0127】
本発明によるガラスセラミックもしくはそれから製造された物品のための好ましい幾何学的形状はプレートの形態である。プレートは、有利には2mm~20mmの厚さを有する。なぜなら、その厚さにより重要な用途が切り開かれるからである。より薄い厚さでは強度が損なわれ、より高い厚さはより多くの材料を要するためにあまり経済的ではない。したがって、高い強度が重要である安全ガラスとしての使用を除き、厚さは、好ましくは最大でも6mmに選択される。
【0128】
プレート状の幾何学的形状に適した成形方法は、特にロール法およびフロート法である。溶融ガラスを成形する好ましい方法は、2つのロールを用いたものである。なぜなら、この方法は、冷却がより速いために失透の点で有利であるからである。
【0129】
ここで、ガラスセラミックプレートおよび有利にはそれから製造された物品は、平らに形成することができるだけでなく、三次元的に変形することもできる。例えば、面取りされた、屈曲したまたは湾曲したプレートを使用することができる。プレートは、長方形または他の形状で存在していてもよく、平らな領域に加えて、三次元的に変形された領域、例えば、凸部もしくは凹部としてウォックまたはロール状のウェブもしくは表面の領域も含むことができる。プレートの幾何学的変形は、熱間成形の場合、例えば、構造化された成形ロールによって、または、例えばバーナー、赤外線ラジエーターによる出発ガラスのその後の熱間成形によって、または重力降下によって行われる。ボーリングまたは研削および場合によってはその後の研磨によって、ボーリング孔またはファセットなどの幾何学的形状も取り付けることができる。セラミック化は、幾何学的形状の制御されない変化を回避するために、セラミック形状を支持して、例えば平らな支持層を用いて行われる。使用に必要とされる場合、片面または両面のその後の研磨が任意に可能である。
【0130】
本発明によるガラスセラミックを製造する本発明による方法は、溶融ガラスの温度が少なくとも1600℃に達することを特徴とする。溶融ガラスの最低温度1600℃は、セラミック化のための出発ガラスの十分に還元された状態を調整するために必要である。これには、セラミック化の間にモリブデンを着色還元状態に変換することができ、それによって酸化還元パートナーとして酸化される比較的低い原子価状態の多価成分、例えばAs3+、Sn2+、Ti3+が十分な濃度で存在することが必要である。溶融ガラスが非常に還元された状態に調整されている場合、モリブデンの一部は既に還元されてガラスを着色することができ、一般に結晶性出発ガラスは依然として大部分が未着色である。好ましくは、溶融温度は少なくとも1640℃である。
【0131】
ここで、高温で還元状態を調整するためのメカニズムは、溶融ガラス中で浮上してガラスを抜けるO清澄気泡が形成されることであり、その際、溶融ガラスは還元される。
【0132】
国際公開第2010102859号(WO 2010102859 A1)の文献に示されるように、結晶化可能出発ガラスの酸化還元状態は、温度pO(T)を関数としたガラスの酸素分圧の測定によって決定することができる。
【0133】
溶融時に行われる結晶性出発ガラスの意図的に調整された酸化還元状態が、ガラスセラミックの望ましい透過率プロファイルに好ましい効果を及ぼすことが分かった。これは酸化モリブデンの着色効果を強め、同じ着色に対して必要とされる含有量がより低く、経済的に有利である。
【0134】
溶融時に結晶性ガラスがあまりに還元されすぎると原子価の低いモリブデンの割合がより多くなり、早くもガラス中で制御不可能な核形成および結晶化をもたらす。これらは主に高温石英混晶相である。つまり、本発明による方法の場合、結晶性ガラス中で望ましくない結晶化が依然として生じない場合に限ってガラスは還元される。
【0135】
以下の方法パラメーターは、ガラスを還元するのに適している:
- 粉末状および/または液状の還元剤を出発混合物に添加する。これに適しているのは、金属、炭素および/または酸化可能な炭素もしくは金属化合物例えばAlもしくはSi粉末、糖類、木炭、カーボンブラック、SiC、TiC、MgS、ZnSなど、
- ガス状還元剤、例えばフォーミングガスなども適している、
- バッチ中の硝酸塩化合物の添加の減少、
- バッチセット中のカレット割合の増加、
- 高い溶融温度および清澄温度ならびに高温での溶融物の滞留時間。
【0136】
さらに、ガラスセラミックを製造する本発明による方法は、
a)20~80重量%のカレットを含有する工業用原料のバッチセット(Gemengesatz)を準備する工程;
b)少なくとも1600℃に達する温度でバッチを溶融および清澄する工程;
c)冷却されたガラス中で結晶が形成されないガラス中の還元状態を調整する工程;
c)溶融ガラスを冷却し、加工温度Vの近傍の温度で成形し、それによって望ましい形状の物品を作製する工程;
d)フラッシュ炉内で室温に冷却し、それによってガラス中の望ましくない応力を除去する工程
を有することを特徴とする。
【0137】
バッチセットは、溶融後に本発明による組成および特性を有するガラスが形成されるように形成されている。20~80重量%のカレットを添加することによって、溶融が促進され、より高いタンク処理量を得ることができる。それは1750℃未満の溶融ガラスの最大温度で従来の溶融タンクで清澄することができ、またはより高い最大温度で追加の高温-清澄用ガラス屑を用いて清澄することができる。
【0138】
成形の場合、キャスティング法、プレス法、ロール法またはフロート法などの従来のガラス技術が好ましい。シート状の幾何学的形状を有する物品は、ロール法またはフロート法により製造され、冷却炉内での応力を回避するために室温に冷却される。体積および表面欠陥の点で品質を確保した後、このガラスリボンから望ましいサイズのプレートが製造される。
【0139】
次のプロセス工程は、結晶性ガラスの本発明によるガラスセラミックへの変換である。このセラミック化は、幾何学的形状の制御されない変化を回避するために、平らなまたは三次元の、通常はセラミック製の支持層上で実施される。使用に必要とされる場合、片面または両面のその後の研磨が任意に可能である。セラミック化のための本発明による方法の場合、熱的に緩和された結晶性出発ガラスは、1050℃の最大温度でガラスセラミックに変換される。好ましくは、最大温度は980℃未満である。低い最大結晶化温度は、低い平均結晶サイズ値およびそれと関連する低散乱にとって有利である。
【0140】
セラミック化方法の更なる実施形態では、経済的な理由から、300分未満、好ましくは200分未満、特に好ましくは120分未満の短いセラミック化時間が好ましい。
【0141】
さらに好ましくは、結晶性ガラスはローラー炉内でセラミック化される。このセラミック化の場合、熱的に緩和された結晶性出発ガラスは、3分から60分以内に約680℃の温度範囲に加熱される。必要とされる高い加熱速度はローラー炉において大規模工業的に実現することができる。約680℃のこの温度範囲は、ガラスの変態温度にほぼ対応する。この温度を上回る約800℃までは、高い核形成速度を有する範囲である。核形成の温度範囲は10分から100分の期間にわたって変化する。その後、結晶化核を含有するガラスの温度は5分から80分以内に850℃から980℃までの温度に高められ、この温度は結晶相の高い結晶成長速度によって際立つ。主結晶相として高温石英混晶を有するガラスセラミックの製造の場合、温度は最大970℃に制限される。この最大温度は60分まで維持される。それによってガラスセラミックの構造は均質化され、光学的、物理的および化学的特性が調整される。得られたガラスセラミックは計150分未満で室温に冷却される。好ましくは、より遅い速度で約700℃まで冷却が実施される。
【0142】
着色のためにMoOを有する組成物を選択することによって、結晶性ガラスの酸化還元状態を調整することにより、ならびに溶融およびセラミック化時の製造パラメーターによって、本発明による透明で着色されたガラスセラミックを用いて広範囲の明度Yを表すことができ、これは使用に応じて4mmの厚さで好ましくは0.1~80%の値を有する(標準光D65、2°)。
【0143】
下限として、少なくとも0.3%、好ましくは少なくとも0.8%、さらに好ましくは少なくとも1.2%の明度が有利である。これらの値は暗黒色の外観をもたらし、ガラスセラミックを通して見ることを妨げる。上限は使用に依存し、あるいは最大でも70%、最大でも50%または最大でも45%である。これらの値では無彩色度が低い灰色の着色が明らかに知覚可能である。
【0144】
有利には、プレート状の幾何学的形状における透明で着色されたリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミックは、暖炉覗き窓、調理面、グリル面または焙焼面として、耐火性ウィンドウ、オーブン覗き窓(特に熱分解炉用)、照明領域のカバーにおいて、任意に複合ラミネートの安全ガラスとして、熱処理におけるキャリアプレートまたは炉ライニングとして使用される。
【0145】
暖炉覗き窓の場合、燃焼室と炎が良好中立色で見えることが望ましい。明度は、2.5~6mmの構造厚さに対して、好ましくは1~80%の値、特に5~80%の値である。ここで、使用にとって望ましい明度の所望の値は、本構造厚さに対して設定される。より高い明度を有する透明なガラスセラミック板と比較して、燃焼室は炎が消えると視認しにくくなり、燃料材料の残留物が隠される。視認性を下げるために、明度の上限は、有利には50%、好ましくは35%、さらに好ましくは25%である。炎の視認性のために、下限は、有利には8%、好ましくは10%、さらに好ましくは12%である。さらに好ましい明度の範囲は8~25%である。
【0146】
例えば耐火性ウィンドウ、オーブン、照明または安全ガラス用の他の覗き窓は、2.5~6mmの構造厚さに対する明度が、好ましくは0.1~80%の範囲にあり、少ない色味もしくは彩度ひいて灰色に見えるという利点がある。 耐火性ウィンドウにおけるコンポーネントとしてガラスセラミックプレートを使用するには、少ない色味が、通常用いられるソーダ石灰ガラス板も取り付けられているガラス前面に組み込むために有利である。
【0147】
暗色に着色された調理面の場合、黒色の外観を達成するためと調理面の下にある技術部品が見えにくくなってしまうことを防ぐために、ガラスセラミックプレートの明度は、2.5~6mmの構造厚さに対して、好ましくは1.2~5%である。ここで、使用にとって望ましい明度の所望の値は、本構造厚さに対して設定される。この値の範囲により、通常はLEDを用いた表示能力が保証され、ラジエーターからの放射によるグレアが回避される。これらの調理面の場合、透過光の色補正のためのカラーフィルターまたはカラー層などの技術的措置の使用は、本発明による低彩度を利用することによって省かれることが好ましい。
【0148】
2.5~6mmの構造厚さに対して約2%から始まり最大80%までのより高い明度の値を有する代替的な実施形態における調理面の場合、調理面の下にある技術部品を見通せることを防ぐために、一般に、通常は不透明な上側コーティングおよび/または下側コーティングとして設計されたマスクがさらに施される。下限値は調理台の構造および照明に応じて異なる。コーティングを施していない領域は、センサー領域、有色および白色インジケーター装置、調理ゾーンマーカーならびにディスプレイおよびスクリーンを取り付けるために提供される。
【0149】
透明で着色されたガラスセラミックプレートの上側と下側でコーティングを組み合わせ、それによって部分的に透明な層を取り込むこととも可能である。同様に、例えば調理ゾーン用にマスクを施すこともできる。それによって既知の様々な種類のコーティング、例えば有機または無機装飾塗料、光輝塗料、シリコーンおよびゾルゲルベースの塗料、スパッタ層、金属層、オキシナイトライド層、オキシカーバイド層などを先行技術により使用可能かつ組合せ可能である。ここで、層は重ねて施すこともできる。下側カラーコーティングを有する調理面の場合、下側コーティングの色は、ガラスセラミックの本発明による少ない色味および低散乱のために、ほとんどまたは全く歪められない。
【0150】
先行技術では、調理面の2つの実施形態について、コーティング、表示装置およびセンサーの種類および技術的設計ならびに固定または導光のために更なるコンポーネントと一緒に調理台にそれらを組み込むことに関する様々な適用可能な手段が、米国特許出願第2016281961号明細書(US 2016281961 A)、米国特許出願公開第20130098903号明細書(US 20130098903 A1)および独国特許出願公開第102016101036号明細書(DE 102016101036 A1)に開示されている。
【0151】
有利には、1つ以上のインジケーターが、低減された色を有する本発明によるガラスセラミック調理面の下に配置される。この表示装置は、発光電子部品、例えば白色または有色LED、RGB-LED、OLED、LCD、蛍光インジケーター、プロジェクター、蛍光管、ディスプレイおよびスクリーンなどから成る。7セグメントディスプレイを含む、点状と面状の両方のあらゆる形態のインジケーターが可能である。インジケーターから放射する発光スペクトルは、単色であることができるか、または多色で複数の極大値および広い領域を有することができるので、インジケーターは有色(例えば赤系紫、青色、青系紫色、赤色、緑色、黄色、橙色など)または白色で見える。ガラスセラミックの彩度が低いため、妨げとなる色歪みなしに白黒およびカラーディスプレイまたはスクリーンを見ることができる。下側に施されるカラーフィルターまたはカラー層の取り付けは、好ましくは省かれる。インジケーターの視認性を改善し得るためには、これらは屈折率が適合されたポリマーで接着することができるか、または遮光板を取り付けることができる。反射防止層、散乱層、拡散層または防眩層をガラスセラミックプレートに施すことができる。
【0152】
さらに、制御要素、センサー要素およびコントロール要素/操作要素、例えば容量性または誘導性タイプのものなどをガラスセラミックプレートに取り付け、印刷、ボンディングまたは押圧することができる。広い波長範囲にわたる高いIR透過率は、温度制御用のセンサーにとって有利である。それにより運転状態の表示に加えて、ユーザーは調理面上でインタラクティブに作業をこなすことが可能である。例えば、レシピを読んだり、画像を見たり、またはイントラネットと通信することができる。この制御は、タッチスクリーンを介して行うことができる。調理面の下側は、通常のネップを有するか、または滑らかに設計されていてもよい(研磨またはフロートによる)。有色インジケーターは歪みがなくより明るく知覚可能なので、改善された表示能力は、下側が滑らかな調理面上で特に顕著である。調理面はインジケーター用のより薄い厚さの領域を含むことができる。透過率は層の厚に指数関数的に依存するので、インジケーター、例えばスクリーンにおける明度は大幅に増加される。しかしながら、調理面の他の領域は、それらが本発明による明度を有するように、より厚くされるべきである。
【0153】
その改良された表示能力のために、調理面は連続的なガラスセラミックプレートの一部として形成されていてよく、したがって0.5mを上回る寸法および改善されたインタラクティブ機能を有するより大きな作業プレートもしくは台所用テーブルとして存在することができる。
【0154】
調理面の加熱は、ガスバーナー、誘導コイルまたは放射ラジエーターもしくはハロゲンラジエーターを用いて通常どおり行われる。
【0155】
本発明によるガラスセラミックは、国際公開第2014/170275号(WO 2014170275 A2)に記載されているように、電磁放射による局所的に変化された透過を有する領域の製造に適している。例えば光透過率が増加したそのような領域はディスプレイ窓にとって有利である。
【0156】
暖炉覗き窓または炉覗き窓でも、例えば板の縁部を不透明に覆うためなどにコーティングが望ましい場合がある。ガラスセラミックプレートの上側もしくは下側へのコーティングの配置は、審美性ならびに化学的および物理的特性に対する特定の要件に従って行われる。
【0157】
これらの用途は、主結晶相としてキータイト混晶または高温石英混晶を有するリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミックによって代替される。
【0158】
主結晶相としてキータイト混晶を有するガラスセラミックは、この結晶相がマイクロ波放射にカップリングすることが少なく、結果として加熱されることが少ないので、カバープレート、電子デバイスのケーシング部品(バックカバー)として、または電子レンジに組み込んで使用される。
【0159】
両方のガラスセラミック実施形態についてのさらに好ましい用途は、それらが主結晶相として高温石英混晶またはキータイト混晶を有するものであるかにかかわらず、調理器具、ビーマーの反射体としてである。セラミック、太陽電池または製薬産業または医療技術において、それらは特に高純度条件下での製造方法に適しており、例えばバッキングプレート(セッタープレート)として、化学的または物理的コーティング法が実施される炉または真空室のライニングとして、または化学的に耐性のある実験室設備として適している。それらはさらに、高温または極低温用途のためのガラスセラミック物品として、焼却炉用の炉の窓として、高温環境を遮蔽するための熱シールドとして、反射体、投光照明、プロジェクター、プロジェクター、ビーマー、複写機用のカバーとして、例えば暗視装置における熱機械的負荷を伴う用途のために、または加熱要素用のカバーとして、特に調理面、グリル面もしくは焙焼面として、白物製品として、ラジエーターカバーとして、ウェハー基材として、UV保護を有する物品として、ファサードプレートとして、または例えば電子機器のケーシング部品および/もしくは携帯電話、ラップトップ、スキャナーガラス、LIDARセンサーのカバーもしくはケーシングなどのIT用のカバーガラス用の材料として、または耐衝撃保護ウィンドウ用のコンポーネントとして使用される。
【0160】
室温付近の好ましい用途は、例えば法線距離としてまたはウェハーステージとして、天文学およびLCDもしくはEUVリソグラフィなどにおける反射光学部品用のミラー支持材料として、またはレーザジャイロスコープとしてなどの精密部品としての用途である。
【0161】
本発明の透明で着色されたガラスセラミックは、低散乱を意味する透明性に対する要件を満たし、低彩度を有し、それらの用途に課される他のあらゆる要件、例えば低い熱膨張、耐薬品性、機械的強度、耐温度性、およびその特性(例えば、熱膨張率、透過率、応力の蓄積など)の変化に対する高い耐温度性/耐経時性などを満たす。
【図面の簡単な説明】
【0162】
図1】2°標準観測者による色空間CIExyYの色度図を示す(CIExyY-2°)。
図2】異なる波長範囲における厚さ4mmを有する列挙された結晶性ガラスおよびガラスセラミックの例の透過率曲線を示す。
図3】異なる波長範囲における厚さ4mmを有する列挙された結晶性ガラスおよびガラスセラミックの例の透過率曲線を示す。
図4】異なる波長範囲における厚さ4mmを有する列挙された結晶性ガラスおよびガラスセラミックの例の透過率曲線を示す。
図5】異なる波長範囲における厚さ4mmを有する列挙された結晶性ガラスおよびガラスセラミックの例の透過率曲線を示す。
図6】異なる波長範囲における厚さ4mmを有する列挙された結晶性ガラスおよびガラスセラミックの例の透過率曲線を示す。
図7】異なる波長範囲における厚さ4mmを有する列挙された結晶性ガラスおよびガラスセラミックの例の透過率曲線を示す。
図8】異なる波長範囲における厚さ4mmを有する列挙された結晶性ガラスおよびガラスセラミックの例の透過率曲線を示す。
図9】異なる波長範囲における厚さ4mmを有する列挙された結晶性ガラスおよびガラスセラミックの例の透過率曲線を示す。
【0163】
本発明は、以下の実施例によってさらに明確にされる。
【0164】
図1(a)および(b)は、2°標準観測者による色空間CIExyYの色度図を示す(CIExyY-2°)。図1(a)は、様々な着色化合物をドープしたときのCIE標準表色系における色シフトの方向を定性的に示す。ここで、ガラスセラミックの組成、明度Yおよび出発色度点の位置に応じて、色の矢印の方向に多少の変化が生じる可能性がある。図1(b)では、黒体曲線は点線として示され、2つの白色領域W1およびW2は破線として示され、本発明による例の色度座標は黒い四角として示され、先行技術からの例は黒の×印を示す。先行技術から示されている例は、国際公開第2012076414号(WO 2012076414 A1)から公知の種類のガラスセラミックならびにSCHOTT AG社およびEurokera社から市販されているガラスセラミックに相当する。先行技術からの例は、いずれも白領域W1の外側である。国際公開第2012076414号(WO 2012076414 A1)から公知のように、これらのガラスセラミックの場合、白色領域W1は追加の複雑な補償フィルターを使用することによってのみ得ることができる。しかしながら、本発明による例は、そのようなフィルターがなくてもこの領域をカバーする。示されている色度点はすべて、材料厚さ4mmに基づいている。
【0165】
図2図9には、異なる波長範囲における厚さ4mmを有する列挙された結晶性ガラスおよびガラスセラミックの例の透過率曲線が示されている。
【0166】
結晶性ガラス1~36は、ガラス産業で通常用いられる工業用バッチ原料から1620℃で4時間溶融した。この選択により、経済的な原料および望ましくない不純物の低い不純物含有量に対する要件と相いれることができる。焼結シリカガラス製のるつぼ中でバッチを溶融した後、溶融物をシリカガラス製の内側るつぼを有するPt/Rhるつぼに注ぎ、1600℃の温度で60分間撹拌することによって均質化した。この均質化の後、ガラスを1640℃で2時間清澄した。続いて、応力を減少させるために約120×140×30mmの大きさの切片を注ぎ、640℃から始まり室温まで冷却炉内で冷却した。鋳片は試験とセラミック化のために必要なサイズに細分した。
【0167】
使用される工業用原料における典型的な微量元素による汚染物質は、200ppmのB、30ppmのCl、1ppmのCoO、3ppmのCr、200ppmのCsO、3ppmのCuO、200ppmのF、400ppmのHfO、3ppmのNiO、500ppmのRbO、5ppmのVである。
【0168】
表1は、結晶性ガラスの基本組成およびそれらの特性を示す。基本組成ベースガラス1は、本発明の範囲外の先行技術による比較用ガラス1に相当する。表1には、ガラス状態における諸特性である変態温度T[℃]、加工温度V[℃]、10温度[℃]、失透上限値OEG[℃]も列挙されている。OEGを測定するために、ガラスをPt/Rh10るつぼ中で溶融する。続いて、るつぼを加工温度の範囲の様々な温度で5時間維持する。溶融ガラスがるつぼ壁に接触する面に第1の結晶が現れる最大温度によりOEGが決定される。ベースガラスのガラス特性は、着色化合物を僅かにドープしてもほとんど変化しない。
【0169】
この基本組成のバッチ原料に、異なる含有量の着色化合物を加え、新たなガラスを溶融する。成分MoOを添加することによって、本発明による組成物が得られる。このようにして得られた表2のガラスは、ガラス1の基本組成を有し、所定の着色化合物および任意の還元添加剤の点で異なるのみである。それらは表2に列挙されたセラミック化プログラムにより結晶化する。得られたガラスセラミックの透過率特性と散乱率を列挙した。X線回折により測定された主結晶相もまた列挙している。いくつかの例では、20℃~300℃もしくは700℃の熱膨張率も測定した。
【0170】
例1および2は、異なるプログラムを用いて比較用ガラス1からセラミック化された、0.023重量%のV含有量を有する、先行技術(国際公開第2010102859号(WO 2010102859 A1))からの比較例である。本発明による例3および4は、0.015重量%未満のVを含有する。Vを含まない例と比較すると、標準光源D65のこれらの光は、赤色の方向により強くシフトし、すなわちx座標>0.4となる。しかしながら、比較例1および2とは対照的に、その値は依然としてx<0.5の範囲にある。しかしながら、例3および4のガラスセラミックを厚さ4mmで透過した光は、白色領域W1にはあるが、V含有量のために白色領域W2内にはない。例3および4は、本発明による唯一の例であり、これらも特に好ましい白色領域W2内にはない。
【0171】
更なる比較例17および27は、0.01重量%を超えるCrを含有する。そのようなガラスセラミックによって透過された標準光源D65の光は、もはや白色領域W1内にない。
【0172】
同じ酸化物組成の結晶性出発ガラスの場合、異なるセラミック化ならびに還元性化合物およびカレットのバッチへの添加が透過率に及ぼす影響が認められる。糖を添加すると、これは測定可能な残留物なしに酸化されるが、ガラスの酸化還元状態に影響を与える。ガラス29の場合、ZnSとして0.07重量%のSをバッチに添加する。ガラス中の分析濃度S<10ppmは検出限界未満である。糖とSの両方を添加するとMoによる着色の大幅な増強がもたらされる。
【0173】
図5には、異なるセラミック化によって結晶性ガラス6から様々な透過スペクトルがどのように得られるかを示している。この図と図2からも、Moによる着色がセラミック化の時点で始まることが分かる。
【0174】
主結晶相として高温石英混晶を有する表2のガラスセラミックスの場合、着色化合物をドープしても熱膨張率はほとんど変化しない。選択した例では、熱膨張率は20℃~300℃、および20℃~700℃で測定し、それぞれの場合において平均値-0.27付近の±0.07・10-6/K未満および0.13・10-6/Kの範囲にある。測定されなかった例の値もこの範囲に含まれることが想定される。
【0175】
表3は更なる結晶性ガラスの組成および選択された特性を示す。ここで、その組成を有する比較用ガラス22は、EuroKera社のガラスセラミックKeraVision(登録商標)に相当する。Fe、V、MnおよびCoでドープされたガラスは、比較用ガラスセラミック30(表4)に変換された後、本発明による少ない色味には到達せず、特に、そのようなガラスセラミックを透過した光は、もはや白色領域W1内にはない。実施例32および40は、より高いTiO含有量を有し、酸化モリブデンによる着色の増強を示す。結晶性ガラス25および26から製造された例33および34は、SnOではなくAsで清澄した。これは、より弱い酸化還元パートナーの記載した欠点を示している。Snと比較して、MoOによる着色は著しく低く、還元性化合物の添加も、SnOにより清澄されたガラスセラミックとは異なり、明度を有意に低下させることはできない。
【0176】
セラミック化プログラム1の場合、セラミック化炉において600℃の温度にまで20分で加熱する。さらに加熱を続ける。室温から680℃までの合計時間は23分である。680℃~800℃の温度範囲は核形成にとって重要である。したがって、さらに加熱を続ける。680℃~800℃の合計時間は19分である。約800℃を超えると望ましい高温石英混晶相の結晶化が起こる。800℃~最大温度918℃に達するまでの合計時間は24分である(加熱速度5℃/分)。最大温度918℃で10分間保持することで、結晶および残留ガラスの組成を調整し、微細構造を均質化する。それによってガラスセラミックの化学的および物理的特性が調整される。冷却は800℃まで制御し(冷却速度6℃/分)、次いで炉の扉を開くことによって試験片を室温まで急冷する。つまり、まとめると次のようになる:
セラミック化プログラム1(セラミック化時間96分):
a)23分以内に室温から680℃に加熱する;
b)19分以内に680℃から800℃に加熱し、その際、10℃/分で730℃に加熱し、さらに5℃/分で800℃にさらに加熱する;
c)24分以内に800℃から918℃に温度を上昇させ、最大温度で10分間保持する)20分以内に800℃まで冷却し、次いで素早く室温に冷却する。
【0177】
セラミック化プログラム2の場合、セラミック時間が短縮される。
【0178】
セラミック化プログラム(セラミック化時間68分):
a)26分で室温から740℃に素早く加熱する;
b)18分で740℃から825℃に温度を上昇させる(加熱速度4.7℃/分);
c)4分で820℃から930℃に温度を上昇させ(加熱速度26℃/分)、最大温度で4分間保持する;
d)16分以内に800℃に冷却し、次いで素早く室温に冷却する。
【0179】
追加のセラミック化プログラム3を用いて、主要結晶相としてキータイト混晶を有するガラスセラミックへの変換を行う。このプログラムの場合、プログラム1と同じ手順で800℃まで加熱した。次いで、プログラム1とは異なり、5℃/分の加熱速度で10分の保持時間で最大温度960℃に加熱した。最大温度から6℃/分で800℃に冷却し、次いで室温に素早く冷却した。
【0180】
セラミック化プログラム3を用いて製造されたガラスセラミック例9および12は、X線回折により測定して主結晶相として79%のキータイト混晶を含有する。同時に、結晶子サイズは約120nm拡大されるので、表示エレメントをガラスセラミックの下に使用したときに妨げとなる散乱が生じる。セラミック化プログラム1および2を用いて製造された他のガラスセラミックは、一般に全結晶相割合の90%を超える高温石英混晶を含有する。更なる結晶相は、核形成相ZrTiOである。同時に、70nm未満の結晶子サイズは非常に小さいことから、表示エレメントをガラスセラミックの下に使用したときに妨げとなる散乱は生じない。
【0181】
主結晶相としての高温石英混晶を有するガラスセラミックの熱膨張率は、20~700℃の範囲で0±0.5・10-6/Kであり、つまり、温度安定性ガラスセラミックに対する要件に合致する。例えば、20~700℃の範囲では、例1の基本組成の熱膨張率は0.13・10-6/Kであり、例39の熱膨張率は0.29・10-6/Kである。
【0182】
透過率測定は、Perkin-Elmer Lambda 900の装置を用いて研磨プレート上で実施した。透過率は3.5~4.1mmの厚さを有する試験片について測定し、4mmの厚さに換算した。スペクトル透過率は選択された波長に対して示している。可視光スペクトルを表す380nm~780nmの範囲で測定されたスペクトル値から、CIELAB表色系における明度Lおよび色度座標a、bならびにCIE表色系におけるDIN 5033による明度(brightness)Yおよび色度座標x、yを選択された標準光源および観測者角度2゜で計算した。彩度cおよび標準光源D65の光の色度座標x=0.3127およびy=0.3290からの色差dを示している。これは以下のように計算した:
【数4】
【0183】
470~630nmの範囲の透過率曲線のプロファイルから、曲線の平坦度を計算した(この範囲の最大透過率値対最低透過率値の商)。同様に最大透過率値および最低透過率値の波長も示している。これらの値は、4mm厚の研磨された試験片の値である。
【0184】
ガラスセラミックの散乱率は、曇り度(ヘイズ)を測定することによって決定される。その際、両面を研磨した3.5~4.1mm厚の試験片を、BYK Gardener社の市販の測定装置「ヘイズ-ガードプラス」(規格ASTM D1003-13)により標準光Cを用いて測定する。散乱率は、表中のヘイズ値によって特徴付けられる。
【0185】
さらに、7セグメントディスプレイタイプの市販の白色LED(製造元Opto Devices、OS39D3BWWAタイプ)を使用して目視検査を行う。研磨したガラスセラミック試験片を白色LED上に1mmの間隔を空けて置き、上方から全角度範囲dにおいて31cmの間隔を空けて、すなわち、ガラスセラミック表面に垂直~すれすれのところで観測した。ガラスセラミック試験片の明度に応じて、ガラスセラミックプレートに対するこの間隔における白色LEDの輝度は60cd/mに制御されるか、もしくは非常に暗色のガラスセラミックサンプルY<0.5%の場合には最大出力により動作される。外光の影響を排除するために、評価は約4ルクスの低い周囲光を有する暗室で行われる。これらの条件は、調理台にとって非常に重要な設置と照明の状況を意味する。
【0186】
ここで、表中の目視評価は次のことを意味する(1=散乱なし、2=低いが許容できる散乱、3=可視散乱、この場合、調理台のデザインをさらに工夫する必要がある、4=著しい妨げとなる散乱、許容できない)。レベル4からの評価は許容され得ず、レベル3からの評価は回避されることが好ましい。主結晶相としてキータイト混晶(KMK)を用いた実施例9および12を除いて、可視散乱のある例はない。
【0187】
【表4】
【0188】
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
【0189】
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【0190】
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9