(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20240104BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240104BHJP
C09D 7/47 20180101ALI20240104BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20240104BHJP
C09D 5/24 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/61
C09D7/47
C09D7/20
C09D5/24
(21)【出願番号】P 2019073358
(22)【出願日】2019-04-08
【審査請求日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2018081715
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000214250
【氏名又は名称】ナガセケムテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】常田 義真
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】久留島 康功
(72)【発明者】
【氏名】安江 秀国
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1355029(KR,B1)
【文献】国際公開第2007/083771(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0152843(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105153906(CN,A)
【文献】特表2013-537570(JP,A)
【文献】特開2010-245498(JP,A)
【文献】特開2004-124086(JP,A)
【文献】特開2016-216714(JP,A)
【文献】特開2010-159365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)
グラフェン、単層カーボンナノチューブ、及び2層カーボンナノチューブからなる群より選択される少なくとも1つであるカーボンナノ材料、
(b)ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン、及びシリケート樹脂からなる群より選択される少なくとも1つのバインダー樹脂、
(c)レベリング剤、及び
(d)水と有機溶剤との混合溶剤を含み、
(c)レベリング剤の含有量が固形分全体に対して5~40重量%であり、
前記混合溶剤中の有機溶剤の濃度が30~90重量%である、
コーティング組成物。
【請求項2】
50%の2-プロパノール水溶液により重量比で50倍希釈し、3500rpm、23℃の条件下で5分間遠心分離処理に供した直後の上澄みの吸光度が、前記遠心分離処理前の吸光度の50%以上である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
(c)レベリング剤がポリエステル構造を有する化合物、又はポリエーテル構造を有する化合物である、請求項1
または2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
(d)有機溶剤がメタノール、エタノール、及びプロパノールからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1~
3のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
(a)カーボンナノ材料、(b)バインダー樹脂、(c)レベリング剤、及び(d)有機溶剤を含み、
(a)カーボンナノ材料がグラフェンであり、
(b)バインダー樹脂がアクリル樹脂であり、
(c)レベリング剤がポリエステル構造を有する化合物である、
コーティング組成物。
【請求項6】
(a)カーボンナノ材料、(b)バインダー樹脂、(c)レベリング剤、及び(d)有機溶剤を含み、
(a)カーボンナノ材料がカーボンナノチューブであり、
(b)バインダー樹脂がメラミンであり、
(c)レベリング剤がポリエーテル構造を有する化合物である、
コーティング組成物。
【請求項7】
以下の工程(1)~(2):
(1)(e)分散剤の存在下、(a)カーボンナノ材料を水中で分散処理することにより(a)カーボンナノ材料の水分散体を得る工程;及び
(2)工程(1)で得られた(a)カーボンナノ材料の水分散体に、(b)バインダー樹脂、(c)レベリング剤、及び(d)水と有機溶剤との混合溶剤を添加することによりコーティング組成物を得る工程;
を含み、
前記混合溶剤中の有機溶剤の濃度が30~90重量%である、
請求項1~
6のいずれか1項に記載のコーティング組成物の製造方法。
【請求項8】
以下の工程(1)~(2):
(1)(e)分散剤の存在下、(a)カーボンナノ材料を水中で分散処理することにより(a)カーボンナノ材料の水分散体を得る工程;及び
(2)工程(1)で得られた(a)カーボンナノ材料の水分散体に、(b)バインダー樹脂、(c)レベリング剤、及び(d)有機溶剤を添加することによりコーティング組成物を得る工程;
を含む、請求項
5または6に記載のコーティング組成物の製造方法。
【請求項9】
工程(1)で使用される(e)分散剤100重量部に対して、工程(2)で使用される(c)レベリング剤の量が5~2400重量部である、請求項
7または8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング組成物に関する。詳しくは、カーボンナノ材料の分散性を向上したコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノ材料は、導電性が高く、延伸加工性が高く、低着色であることから、導電性コーティング剤への適用が期待されている。しかし、カーボンナノ材料は、アスペクト比が大きく、配位不飽和な構造を有しているため、分子間相互作用が強く、凝集しやすい性質を持つ。カーボンナノ材料が凝集した状態では、本来の導電性や透明性等の特性を発揮できないため、導電性コーティング剤におけるカーボンナノ材料の分散性を高めることが求められている。
【0003】
これまでに、カーボンナノ材料の分散性を高めるために、分散剤を配合することが知られている(特許文献1)。しかし、分散剤を配合しても、コーティング組成物を構成するためにバインダー樹脂やその他の添加剤を加えると、凝集が起こることが多く、使用できるバインダー樹脂や添加剤に制約があった。これは、バインダー樹脂等が分散剤と相互作用した結果、分散剤がカーボンナノ材料の近傍に存在できなくなり、凝集したからと推測される。
【0004】
また、カーボンナノ材料の分散性を高めるために、超音波による分散処理が知られている(特許文献2)。しかし、超音波処理は調節が困難であり、過度に処理を行うとカーボンナノ材料が切断や破壊を受け、その結果、新たな活性面が生じてさらに凝集しやすくなってしまう傾向があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-263608号公報
【文献】特開2006-16222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、カーボンナノ材料の分散性の高いコーティング組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、レベリング剤を新たに添加することで、バインダーや溶剤を添加しても分散性を維持したコーティング組成物を得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、(a)カーボンナノ材料、(b)バインダー樹脂、(c)レベリング剤、及び(d)有機溶剤を含むコーティング組成物に関する。
【0009】
前記コーティング組成物において、50%の2-プロパノール水溶液により重量比で50倍希釈し、3500rpm、23℃の条件下で5分間遠心分離処理に供した直後の上澄みの吸光度が、遠心分離処理前の吸光度の50%以上であることが好ましい。
【0010】
前記コーティング組成物において、(a)カーボンナノ材料がグラフェン、カーボンナノチューブ、及びフラーレンからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0011】
前記コーティング組成物において、(b)バインダー樹脂がアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン、及びシリケート樹脂からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0012】
前記コーティング組成物において、(c)レベリング剤がポリエステル構造を有する化合物、又はポリエーテル構造を有する化合物であることが好ましい。
【0013】
前記コーティング組成物において、(d)有機溶剤がメタノール、エタノール、及びプロパノールからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0014】
前記コーティング組成物において、(a)カーボンナノ材料がグラフェンであり、(b)バインダー樹脂がアクリル樹脂であり、(c)レベリング剤がポリエステル構造を有する化合物であることが好ましい。
【0015】
前記コーティング組成物において、(a)カーボンナノ材料がカーボンナノチューブであり、(b)バインダー樹脂がメラミンであり、(c)レベリング剤がポリエーテル構造を有する化合物であることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、以下の工程(1)~(2):
(1)(e)分散剤の存在下、(a)カーボンナノ材料を水中で分散処理することにより(a)カーボンナノ材料の水分散体を得る工程;及び
(2)工程(1)で得られた(a)カーボンナノ材料の水分散体に、(b)バインダー樹脂、(c)レベリング剤、及び(d)有機溶剤を添加することによりコーティング組成物を得る工程;
を含む、前記コーティング組成物の製造方法に関する。
【0017】
前記コーティング組成物の製造方法において、工程(1)で使用される(e)分散剤100重量部に対して、工程(2)で使用される(c)レベリング剤の量が5~2400重量部であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のコーティング組成物は、カーボンナノ材料の分散性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(1)コーティング組成物
本発明は、(a)カーボンナノ材料、(b)バインダー樹脂、(c)レベリング剤、及び(d)有機溶剤を含むコーティング組成物に関する。
【0020】
本発明のコーティング組成物において、分散性の点から、50%の2-プロパノール水溶液により重量比で50倍希釈し、3500rpm、23℃の条件下で5分間遠心分離処理に供した直後の上澄みの吸光度が、遠心分離処理前の吸光度の50%以上であることが好ましく、55%以上がより好ましく、60%以上が更に好ましい。ここで2-プロパノールの濃度は重量100分率である。
【0021】
(a)カーボンナノ材料
カーボンナノ材料としては、例えば、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン等が挙げられる。これらのカーボンナノ材料は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。コーティング組成物におけるカーボンナノ材料の含有量は特に限定されないが、コーティング組成物の固形分全体に対して0.01~90重量%が好ましく、0.1~50重量%がより好ましく、0.13~30重量%がさらに好ましい。また、後述の方法で基材上に塗布してコーティング塗膜を形成し積層体を製造したときに、積層体上で0.01~50.0mg/m2となる量が好ましく、0.1~10.0mg/m2となる量がより好ましい。
【0022】
カーボンナノチューブの種類は特に限定されず、アーク放電法、レーザ蒸発法、化学気相成長法(CVD法)等の各種公知技術により製造されたカーボンナノチューブを適宜選択して用いることができる。単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブおよびこれらを任意の割合で含む混合物のいずれも使用可能である。導電性に優れる点から、単層カーボンナノチューブであることが好ましい。
【0023】
カーボンナノチューブの長さは、典型的には1~2000μmであり、好ましくは5~1000μmであり、より好ましくは5~500μmである。2000μmを超えると、カーボンナノチューブの凝集、切断、破壊が生じやすいことから好ましくない。また、1μm未満であると、十分な導電経路が形成できないため好ましくない。
【0024】
カーボンナノチューブの直径は、典型的には0.1~50nmであり、好ましくは0.3~20nmであり、さらに好ましくは、0.5~10nmである。50nmを超えると、導電性が低下することがある。また、0.1nm未満のカーボンナノチューブは製造することが困難である。
【0025】
(b)バインダー樹脂
バインダー樹脂は、特に限定されないが、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、メラミン、及びシリケート樹脂からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。その理由は、コーティング組成物中の他の成分との相溶性が高く、これらのバインダーを含有するコーティング組成物を用いて形成した積層体は、基材に対する親和性や、成膜性が良好であるためである。これらのバインダーは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
ポリエステル樹脂としては、2つ以上のカルボキシル基を分子内に有する化合物と2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物とを重縮合して得られた高分子化合物であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
アクリル樹脂としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂等が挙げられる。これらのアクリル樹脂としては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基、燐酸基などの酸基を有する重合性単量体を構成モノマーとして含む重合体であればよく、例えば、酸基を有する重合性単量体の単独又は共重合体、酸基を有する重合性単量体と共重合性単量体との共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系単量体を主たる構成モノマー(例えば、50モル%以上)として含んでいれば共重合性単量体と重合していてもよく、この場合、(メタ)アクリル系単量体及び共重合性単量体のうち、少なくとも一方が酸基を有していればよい。
【0029】
(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、酸基を有する(メタ)アクリル系単量体[(メタ)アクリル酸、スルホアルキル(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド等]又はその共重合体、酸基を有していてもよい(メタ)アクリル系単量体と、酸基を有する他の重合性単量体[他の重合性カルボン酸、重合性多価カルボン酸又は無水物、ビニル芳香族スルホン酸等]及び/又は共重合性単量体[例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル単量体等]との共重合体、酸基を有する他の重合体単量体と(メタ)アクリル系共重合性単量体[例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル等]との共重合体、ロジン変性ウレタンアクリレート、特殊変性アクリル樹脂、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートエマルジョン等が挙げられる。
【0030】
これらの(メタ)アクリル系樹脂の中では、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル重合体(アクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体等)、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル-スチレン共重合体(アクリル酸-メタクリル酸メチル-スチレン共重合体等)等が好ましい。
【0031】
ポリウレタンとしては、イソシアネート基を有する化合物とヒドロキシル基を有する化合物を共重合させて得られた高分子化合物であれば特に限定されず、例えば、エステル・エーテル系ポリウレタン、エーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタン、アクリル系ポリウレタン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、ベンゼン環を多数有した多官能型であるテトラキス(ヒドロキシフェニル)エタン型又はトリス(ヒドロキシフェニル)メタン型、ビフェニル型、トリフェノールメタン型、ナフタレン型、オルソノボラック型、ジシクロペンタジエン型、アミノフェノール型、脂環式等のエポキシ樹脂、シリコーンエポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
ポリオレフィン樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
シリケート樹脂としては、例えば、下記式(I)により表されるアルコキシシランのモノマー同士が縮合したアルコキシシランであって、シロキサン結合(Si-O-Si)を1分子内に1個以上有するオリゴマー等が挙げられる。
SiR1
4 (I)
(式中、R1は、水素、水酸基、炭素数1~4のアルコキシ基、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いフェニル基である。但し、4つのR1のうち少なくとも1個は炭素数1~4のアルコキシ基又は水酸基である)
シリケート樹脂は、式(I)により表されるアルコキシシランが2分子以上縮合したものであることが好ましい。
【0035】
シリケート樹脂の構造は特に限定されず、直鎖状であっても良く、分岐状でも良い。また、シリケート樹脂は、式(I)により表される化合物を単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。
【0036】
上記シリケート樹脂として、 シリコンアルコキシドアクリル系樹脂、シリコンアルコキシドエポキシ系樹脂、シリコンアルコキシドビニル系樹脂、シリコンアルコキシドメタクリル系樹脂、シリコンアルコキシドチオール系樹脂、シリコンアルコキシドアミノ系樹脂、シリコンアルコキシドイソシアネート系樹脂、シリコンアルコキシドアルキル系樹脂、及びシリコンアルコキシド基以外の官能基を有しないシリコンアルコキシド系樹脂などのシリコンアルコキシド系樹脂を挙げることができる。
【0037】
上記シリケート樹脂の具体的な構成成分としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルフェノキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン又はテトラフェノキシシラン、メチルシリケートオリゴマー、エチルシリケートオリゴマーなどのアルコキシシリケートオリゴマー等を挙げることができる。これらの中でもテトラアルコキシシラン、テトラフェノキシシラン、アルコキシシリケートオリゴマーが好ましい。
【0038】
シリケート樹脂の重量平均分子量は特に限定されないが、150より大きく4000以下であることが好ましく、240より大きく3000以下であることがより好ましく、330~2500であることがさらに好ましい。
【0039】
バインダー樹脂の含有量は、特に限定されないが、コーティング組成物の固形分全体に対して30~98重量%が好ましく、40~90重量%がより好ましく、50~80重量%がさらに好ましい。バインダー樹脂の含有量が30重量%未満であると、積層体の強度が弱くなることがあり、一方、98重量%を超えると、積層体中のカーボンナノ材料の割合が相対的に少なくなり、積層体の導電性を十分に確保することができないことがある。
【0040】
(c)レベリング剤
レベリング剤を配合することにより、本発明のコーティング組成物の基材塗布性が良好となる。他方で、後述する通り、(a)カーボンナノ材料に対しては予め分散処理を施す必要があり、分散処理の際に(a)カーボンナノ材料の分散状態を安定化させる分散剤を使用するが、コーティング組成物とする過程で分散剤がバインダー樹脂等の他の成分と相互作用し、カーボンナノ材料近傍に分散剤が存在しなくなる結果、コーティング組成物の分散安定性が低下する問題が生じやすい。レベリング剤は良好な基材塗布性を得るために添加されるが、カーボンナノ材料と相互作用して分散機能を補う結果、コーティング組成物の分散安定性を向上させる。レベリング剤としては、親水性が高い方が、水-有機溶剤中での分散力に優れることから、HLB値が9以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、12以上であることがさらに好ましい。なお、HLB値は、以下の計算方法により計算することができる。
グリフィン法:[(親水部分の分子量)÷(全体の分子量)]×20
【0041】
具体的なレベリング剤としては、ポリエステル系レベリング剤、ポリエーテル系レベリング剤、フッ素系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤が挙げられる。これらの中でも、エステル結合を有するポリエステル系レベリング剤や、エーテル結合を有するポリエーテル系レベリング剤は、カーボンナノ材料と相互作用しやすく、水-アルコール中でナノカーボン材料を分散させる性能が高いために、好ましい。
【0042】
ポリエステル系レベリング剤としては、ポリエステル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0043】
ポリエーテル系レベリング剤としては、セルロースエーテル;プルラン;ポリエチレングリコール:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン等のシリコーン変性ポリエーテル;ポリグリセリン;ポリエーテルポリオール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ラウリルアルコールアルコキシレート等のアルキルエーテル誘導体、アルキルエーテル硫酸塩等が挙げられる。これらのレベリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
フッ素系レベリング剤としては、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロブタンスルホン酸、含フッ素基・親水性基・親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基含有カルボン酸塩、パーフルオロアルキル基・リン酸基含有リン酸エステル等が挙げられる。これらのレベリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
シリコーン系レベリング剤としては、ポリシロキサン等の他、アミノ基、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の反応性基を導入した反応性ポリシロキサンの他、アルキル基、エステル基、アラルキル基、フェニル基、ポリエーテル基等の非反応性を導入した非反応性ポリシロキサン等が挙げられる。これらのレベリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
アクリル系レベリング剤としては、シリコーンとアクリルからなるアクリル系共重合物等が挙げられる。これらのレベリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
レベリング剤としては、後述の分散剤と同じ物質を使用することもできるが、分散剤よりも低いHLB値を持つレベリング剤を使用することが好ましい。
【0048】
レベリング剤の含有量は、特に限定されないが、コーティング組成物の固形分全体に対して0.01~40重量%であることが好ましく、0.1~20重量%であることがより好ましく、1~10重量%であることがさらに好ましい。レベリング剤の含有量が0.01重量%未満であると、分散安定性と基材塗布性が不十分という傾向があり、一方、40重量%を超えると、膜強度が不十分となったり、塗布ムラが生じる傾向がある。
【0049】
(d)有機溶剤
有機溶剤は、コーティング組成物の基材に対する親和性を高める機能を有する。有機溶剤としては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-プロパノール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のエチレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のプロピレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールエーテルアセテート類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン(o-、m-、あるいはp-キシレン)、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類:酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸エチル、オルト酢酸メチル、オルトギ酸エチル等のエステル類:ハロゲン類、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、γ-ブチロラクトン、N-メチルピロリドン等のアミド化合物;トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、カテコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、等のヒドロキシル基含有化合物;ジメチルスルホキシド等のスルホ基を有する化合物;ハロゲン類、イソホロン、プロピレンカーボネート、アセチルアセトン、アセトニトリル、水とこれらの有機溶剤との混合溶剤(含水有機溶剤)、2種以上の有機溶剤の混合溶剤等が挙げられる。カーボンナノ材料の分散安定性と基材への塗布性の点から、これらの中でも、有機溶剤同士の混合溶剤、水と有機溶剤との混合溶剤が好ましく、アルコール同士の混合溶剤、水とアルコール類との混合溶剤がより好ましい。アルコール同士の混合溶剤としては、メタノール、エタノール、及び、2-プロパノールを適宜混合させた溶剤が好ましい。水とアルコール類との混合溶剤としては水とメタノール、水とエタノール、水と2-プロパノールの組み合わせが好ましい。水と有機溶剤との混合溶剤を用いる場合、有機溶剤の濃度は30~90重量%が好ましく、40~80重量%がより好ましい。また、塗布性向上のために、エチレングリコール類、プロピレングリコール類、アミド化合物等を添加することも有効である。
【0050】
有機溶剤は、コーティング組成物を用いて形成する積層体中には残留しないことが好ましい。なお、本明細書においては、コーティング組成物の全ての成分を完全に溶解させるもの(即ち、「溶剤」)と、不溶成分を分散させるもの(即ち、「分散媒」)とを特に区別せずに、いずれも「溶剤」と記載する。
【0051】
塗布性や液安定性の観点から、コーティング組成物中の固形分は、コーティング組成物中の0.01~20重量%であることが好ましく、0.1~10重量%であることがより好ましく、0.5~5重量%であることがさらに好ましい。この濃度は、上記有機溶剤や、水と上記有機溶剤との混合溶剤のコーティング組成物への添加量により調節できる。
【0052】
コーティング組成物の具体例としては、(a)カーボンナノ材料がグラフェンであり、(b)バインダー樹脂がアクリル樹脂であり、(c)レベリング剤がポリエステル構造を有する化合物であるコーティング組成物が挙げられる。また、(a)カーボンナノ材料がカーボンナノチューブであり、(b)バインダー樹脂がメラミンであり、(c)レベリング剤がポリエーテル構造を有する化合物であるコーティング組成物が挙げられる。
【0053】
(その他の成分)
コーティング組成物は、さらに、導電性高分子、架橋剤、触媒、酸化防止剤、消泡剤、レオロジーコントロール剤、中和剤、増粘剤、発泡剤等を含有していてもよい。
【0054】
導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリナフタレン、及びこれらの誘導体が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。中でも、チオフェン環を分子内に含むことで導電性が高い分子ができやすい点で、分子内にチオフェン環を少なくとも1つ含む導電性高分子が好ましい。導電性高分子は、ポリ陰イオン等のドーパントと複合体を形成していてもよい。
【0055】
分子内にチオフェン環を少なくとも1つ含む導電性高分子の中でも、導電性や化学的安定性に極めて優れている点で、ポリ(3,4-二置換チオフェン)がより好ましい。また、導電性高分子が、ポリ(3,4-二置換チオフェン)、又は、ポリ(3,4-二置換チオフェン)とポリ陰イオン(ドーパント)との複合体である場合、低温かつ短時間で粗面導電体を形成することができ、生産性にも優れることとなる。なお、ポリ陰イオンは導電性高分子のドーパントであり、その内容については後述する。
【0056】
ポリ(3,4-二置換チオフェン)としては、ポリ(3,4-ジアルコキシチオフェン)又はポリ(3,4-アルキレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。ポリ(3,4-ジアルコキシチオフェン)又はポリ(3,4-アルキレンジオキシチオフェン)としては、以下の式(I):
【0057】
【0058】
で示される反復構造単位からなる陽イオン形態のポリチオフェンが好ましい。
ここで、R1及びR2は相互に独立して水素原子又はC1-4のアルキル基を表すか、又は、R1及びR2が結合している場合にはC1-4のアルキレン基を表す。C1-4のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。また、R1及びR2が結合している場合、C1-4のアルキレン基としては、特に限定されないが、例えば、メチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1-メチル-1,2-エチレン基、1-エチル-1,2-エチレン基、1-メチル-1,3-プロピレン基、2-メチル-1,3-プロピレン基等が挙げられる。これらの中では、メチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基が好ましく、1,2-エチレン基がより好ましい。C1-4のアルキル基、及び、C1-4のアルキレン基は、その水素の一部が置換されていても良い。C1-4のアルキレン基を有するポリチオフェンとしては、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
【0059】
導電性高分子の重量平均分子量は、500~100000であることが好ましく、1000~50000であることがより好ましく、1500~20000であることがさらに好ましい。
【0060】
ドーパントは特に限定されないが、ポリ陰イオンが好ましい。ポリ陰イオンは、ポリチオフェン(誘導体)とイオン対をなすことにより複合体を形成し、ポリチオフェン(誘導体)を水中に安定に分散させることができる。ポリ陰イオンとしては、特に限定されないが、例えば、カルボン酸ポリマー類(例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリメタクリル酸等)、スルホン酸ポリマー類(例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸等)等が挙げられる。これらのカルボン酸ポリマー類及びスルホン酸ポリマー類はまた、ビニルカルボン酸類及びビニルスルホン酸類と他の重合可能なモノマー類、例えば、アクリレート類、スチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル化合物との共重合体であっても良い。これらの中では、ポリスチレンスルホン酸が特に好ましい。
【0061】
ポリスチレンスルホン酸は、重量平均分子量が20000~500000であることが好ましく、40000~200000であることがより好ましい。分子量がこの範囲外のポリスチレンスルホン酸を使用すると、ポリチオフェン系導電性高分子の水に対する分散安定性が低下する場合がある。なお、重量平均分子量はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)にて測定した値である。
【0062】
導電性高分子とポリ陰イオンとの複合体としては、導電性に特に優れることから、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合体であることが好ましい。
【0063】
導電性高分子の導電率は、0.01S/cm以上であることが好ましく、1S/cm以上であることがより好ましい。
【0064】
コーティング組成物が導電性高分子を含む場合、導電性高分子の含有量は、カーボンナノ材料の固形分100重量部に対して5~2000重量部が好ましく、10~1000重量部がより好ましい。
【0065】
架橋剤を配合することにより熱硬化性バインダー樹脂を架橋させることができ、帯電防止性能を向上できる。架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、メラミン系、ポリカルボジイミド系、ポリオキサゾリン系、ポリエポキシ系、ポリイソシアネート系、ポリアクリレート系等の架橋剤が挙げられる。これらの架橋剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
コーティング組成物が架橋剤を含有する場合、その含有量は特に限定されないが、コーティング組成物中30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましい。
【0067】
コーティング組成物が熱硬化性バインダー樹脂及び架橋剤を含有する場合、熱硬化性バインダー樹脂を架橋させるための触媒としては、特に限定されず、例えば、光重合開始剤や熱重合開始剤等が挙げられる。
【0068】
(2)コーティング組成物の製造方法
コーティング組成物の製造方法は、以下の工程:
(e)分散剤の存在下、(a)カーボンナノ材料を水中で分散処理することにより(a)カーボンナノ材料の水分散体を得る工程(1);及び
工程(1)で得られた(a)カーボンナノ材料の水分散体に、(b)バインダー樹脂、(c)レベリング剤、及び(d)有機溶剤を添加することによりコーティング組成物を得る工程(2)を含む。
【0069】
工程(1)では、(e)分散剤の存在下、(a)カーボンナノ材料を水中で分散処理することにより、カーボンナノ材料と分散剤を相互作用させ、カーボンナノ材料の水分散体を得る。分散処理方法としては、振動ミル、遊星ミル、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ジェットミル、ロールミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波装置等による分散が挙げられる。分散処理後も凝集体が残留する場合には、遠心分離処理を行い、沈殿する凝集体を除去してもよい。
【0070】
(e)分散剤としては、カーボンナノ材料を水中で分散できれば特に限定されないが、陽イオン性分散剤、陰イオン性分散剤、両イオン性分散剤、非イオン性分散剤、高分子系分散剤が挙げられる。
【0071】
陽イオン性分散剤としては、ステアリルアミンアセテート等の炭素数8~22のアルキル基を有するアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0072】
陰イオン性分散剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム等の炭素数8~18のアルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の炭素数8~18のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、デオキシコール酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の炭素数8~18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物が挙げられる。
【0073】
両イオン性分散剤としては、炭素数8~22のアルキル基を有するアルキルベタイン、炭素数8~18のアルキル基を有するアルキルアミンオキサイドが挙げられる。
【0074】
非イオン性分散剤としては、炭素数1~20のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドから構成されるブロック共重合体、炭素数1~20のアルキル基を有するアルキルフェノールポリエチレングリコールエーテル、炭素数2~4のアルキレン基を有するポリカルボキシレートエーテル等のポリオキシアルキレン誘導体、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。
【0075】
高分子系分散剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ヒドロキシセルロース、炭素数の1~8のアルキル基を有するヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体、デンプン、ゼラチン、アクリル系コポリマー、ポリカルボン酸またはその誘導体、ポリスチレンスルホン酸またはその塩などの高分子系分散剤が挙げられる。
【0076】
これらの中では、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリオキシアルキレン誘導体、ポリスチレンスルホン酸、セルロース誘導体、ポリカルボン酸、アクリル系コポリマー、アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリオキシアルキレン誘導体、ポリカルボン酸、アクリル系コポリマーがより好ましい。これらの分散剤は、2以上の分散剤を組み合わせて用いても良い。また、1以上の分岐鎖を有し、分岐鎖の分子量が15以上である分散剤が、分子鎖が全方位に広がり、分散性が高くなることから好ましい。
【0077】
分散剤は、分散安定性に優れるという理由から、HLB値が12以上が好ましく、14以上がより好ましい。
【0078】
工程(1)において、(e)分散剤は(a)カーボンナノ材料の水分散体100重量部に対して0.001~10重量部使用することが好ましく、0.001~7重量部使用することがより好ましく、0.05~5重量部使用することがさらに好ましい。(e)分散剤の使用量が0.001重量部未満では(a)カーボンナノ材料を十分に分散させることができず、高い分散安定性を得ることが出来ない場合がある。(e)分散剤の使用量が10重量部を超える場合、分散処理中に泡立ちが生じ、分散処理を阻害することがある。
【0079】
工程(2)では、工程(1)で得られた(a)カーボンナノ材料の水分散体に、(b)バインダー樹脂、(c)レベリング剤、及び(d)有機溶剤を添加することによりコーティング組成物を得る。上述のとおり、工程(1)における分散処理の際には、泡立ちが生じる場合があることから(e)分散剤の使用量に制限があるため、分散処理後に、例えば(e)分散剤がバインダー等の後から添加される成分と相互作用して(a)カーボンナノ材料近傍から解離してしまうことがあり、分散安定性が低下する問題が生じやすい。工程(1)で(a)カーボンナノ材料の水分散体を得た後に、レベリング剤を配合することにより、分散剤がバインダー等の成分と相互作用してカーボンナノ材料近傍から解離してしまった場合でも、レベリング剤がカーボンナノ材料と相互作用して分散機能を補うことができるため、分散安定性、貯蔵安定性に優れたコーティング組成物を得ることができる。(b)バインダー樹脂、(c)レベリング剤、及び(d)有機溶剤の添加方法は特に限定されず、工程(1)で得られた(a)カーボンナノ材料の水分散体に三成分を同時に添加してもよく、別々に添加してもよい。別々に添加する場合、その添加順序は特に限定されない。
【0080】
工程(1)で使用される(e)分散剤100重量部に対して、工程(2)で使用される(c)レベリング剤の量は、5~2400重量部であることが好ましく、50~1200重量部であることがより好ましく、100~600重量部であることがさらに好ましい。5重量部未満では分散安定性や基材塗布性が不十分となる傾向がある。2400重量部を超えると膜強度に悪影響を与える傾向がある。
【0081】
(3)積層体
本発明のコーティング組成物を基材の少なくとも一つの面上に塗布してコーティング塗膜を形成することにより、積層体を得ることができる。コーティング組成物は基材に直接塗布してもよいし、プライマー層等の別の層を予め基材上に設けた後で、当該層の上に塗布してもよい。
【0082】
基材の材質としては、例えば、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリスチレン樹脂、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリサルホン(PSF)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂等が挙げられる。これらの材質は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0083】
基材の厚みは、特に限定されないが、10~10000μmであることが好ましく、25~5000μmであることがより好ましい。また、透明性の観点から、基材フィルムの全光線透過率は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。
【0084】
コーティング塗膜は、コーティング組成物を基材の少なくとも一つの面上に塗布した後、加熱処理することにより得ることができる。コーティング組成物を基材の少なくとも1面に塗布する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、スリットコート法、凸版(活版)印刷法、孔版(スクリーン)印刷法、平版(オフセット)印刷法、凹版(グラビア)印刷法、スプレー印刷法、インクジェット印刷法、タンポ印刷法等を用いることができる。
【0085】
コーティング組成物を基材の少なくとも一つの面上に塗布する前に、必要に応じて、あらかじめ基材の表面に表面処理を施してもよい。表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、イトロ処理、火炎処理等が挙げられる。
【0086】
コーティング塗膜を形成する際の加熱処理は、特に限定されず公知の方法により行えば良く、例えば、送風オーブン、赤外線オーブン、真空オーブン等を用いて行えばよい。コーティング組成物が溶剤を含有する場合、溶剤は、加熱処理により除去される。
【0087】
コーティング塗膜を形成する際の加熱処理の温度条件は、特に限定されないが、150℃以下であることが好ましく、50~140℃であることがより好ましく、60~130℃であることがさらに好ましい。加熱処理の温度が150℃を超えると、用いる基材の材質が限定され、例えば、PETフィルムポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム等の一般に透明電極フィルムに用いられる基材を用いることが出来なくなる。加熱処理の処理時間は、特に限定されないが、0.1~60分間であることが好ましく、0.5~30分間であることがより好ましい。
【0088】
コーティング塗膜の厚みは、特に限定されないが、1~1000nmであることが好ましく、2~500nmであることがより好ましく、5~400nmであることがさらに好ましい。
【0089】
コーティング塗膜の表面抵抗率は、特に限定されないが、102~1011Ω/□であることが好ましく、103~1010Ω/□であることがより好ましく、104~109Ω/□であることがさらに好ましい。
【0090】
コーティング塗膜の屈折率は、特に限定されないが、1.4~1.7であることが好ましく、1.5~1.6であることがより好ましい。
【0091】
積層体のヘイズ(Haze)値は、特に限定されないが、5.0%以下であることが好ましく、4.0%以下であることがより好ましく、3.0%以下であることがさらに好ましい。ヘイズ値が5.0%を超えると、積層体の透明性が悪化することがある。なお、ヘイズ値は小さければ小さいほど好ましいため、その下限は特に限定されないが、例えば0.01%である。ヘイズ値はJIS K7136に準拠して測定することができる。
【0092】
積層体の全光線透過率は、特に限定されないが、85%以上であることが好ましく、87%以上であることがより好ましい。全光線透過率が85%未満であると、透明性が不十分(外観不良)となることがある。なお、全光線透過率の上限は100%である。全光線透過率はJIS K7136に準拠して測定することができる。
【0093】
積層体は、基材上に、コーティング塗膜に加えて、粘着層を有していてもよい。粘着層は、基材の、コーティング塗膜と接しない面に配置されることが好ましい。粘着層は、粘着剤を含有する粘着剤組成物を用いて形成される。粘着剤としては、特に限定されず、従来公知のものを使用することでき、具体的には、例えば、各種の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを単独重合又は共重合させて得られた(メタ)アクリル系樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合系樹脂、ジメチルシロキサン骨格を有するシリコーンゴムなどのシリコーン系樹脂、ポリオールとポリイソシアネートを重付加して得られるポリウレタン系樹脂、天然ゴム、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SISブロック共重合体)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBSブロック共重合体)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBSブロック共重合体)、スチレン-ブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ブチルゴム、クロロプレンゴム等のゴム系樹脂等が挙げられる。これらの中では、特に化学的安定性に優れ、化学構造設計の自由度が高く、粘着力の調整が容易な(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリウレタン系樹脂が好ましい。さらに、(メタ)アクリル系樹脂、及び、ポリウレタン系樹脂は、特に透明性に優れる点でも好ましい。
【0094】
粘着層の形成方法としては、従来公知の方法を使用することができ、例えば、粘着剤を含有する粘着剤組成物を基材に塗布し、架橋又は加熱乾燥する方法、架橋又は加熱乾燥させた粘着層を基材に転写する方法等が挙げられる。なお、粘着剤組成物は、粘着剤の他に架橋剤を含有していてもよい。
【0095】
粘着剤組成物を塗布する方法としては、従来公知の方法を使用することができ、具体的には、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法等を用いることができる。
【0096】
(4)表面保護フィルム
本発明の積層体は、低着色で透明性が求められる導電膜としての用途に好適に使用することができる。このような用途として、例えば、表面保護フィルム、偏光板、マスキングテープ、再剥離型ラベル、半導体、電子部品などの包装材料、表面保護用フィルム、偏光板用途、電子写真記録材料、磁気記録材料や、透明タッチパネルやエレクトロルミネッセンスディスプレイ、液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイに用いられる透明導電性フィルム、帯電防止フィルム等が挙げられる。
【0097】
例えば、本発明の積層体を表面保護フィルムとして使用する場合、表面保護フィルムは、偏光板、導光板などの光学フィルムを傷や汚れから保護するためのフィルムが挙げられる。例えば、液晶パネルの製造においては、偏光板、導光板などの光学部品(フィルム)は保護フィルムをつけたままの状態で、積層、組み立てられ、また、検査の工程においても、保護フィルムがついたままの状態で行われ、その後、最終的には剥がされて、破棄されるものである。表面保護フィルムに使用する場合には、積層体は粘着層を有することが好ましい。
【0098】
表面保護フィルムの粘着力は、被着体により好適な範囲は異なるが、例えば、被着体が無アルカリガラスのようなガラス基材である場合には、その粘着力は、0.05~10N/25mmであることが好ましい。
【0099】
表面保護フィルムには、必要に応じて、粘着層表面に剥離紙(セパレーター)を貼り合わせてもよい。剥離紙の材質は、例えば、紙やプラスチックフィルムが挙げられるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム等が挙げられる。
【0100】
剥離紙において、その粘着剤層と接する面には、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系、脂肪酸アミド系等の離型剤、シリカ粉等による離型剤処理が施されていてもよい。
【0101】
表面保護フィルムは、例えば、液晶パネル、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、偏光板、光拡散シート、レンズフィルム等の表面保護フィルムとして好適に使用することができ、これらの被着体を機械的及び電気的に保護することができる。
【実施例】
【0102】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。以下、「%」は特記ない限り「重量%」を意味する。
【0103】
(1)使用材料
(1-1)基材フィルム
・PETフィルム(東レ株式会社製、ルミラーT60)
(1-2)カーボンナノ材料
・カーボンナノチューブ1(製造例1にて作製、固形分率1.1%)
・カーボンナノチューブ2(製造例2にて作製、固形分率1.1%)
・カーボンナノチューブ3(製造例3にて作製、固形分率1.1%)
・カーボンナノチューブ4(製造例4にて作製、固形分率1.1%)
・グラフェン(製造例5にて作製、固形分率1.1%)
(1-3)レベリング剤
・ポリエーテル系レベリング剤(クラリアント社製、品名:Emulsogen LCN070、HLB:13)
・ポリエーテル系レベリング剤(三洋化成工業株式会社製、品名:エマルミン240、HLB:16)
・ポリエステル系レベリング剤(三洋化成工業株式会社製、品名:イオネットMO-600、HLB:14)
・フッ素系レベリング剤(デュポン社製、Capstone FS-3100、HLB:9.8)
・シリコーン系レベリング剤(東レ・ダウコーニング社製、8029 Additive)
(1-4)バインダー樹脂
・メラミン(DIC株式会社製、ベッカミンM-3、固形分率77%)
・ポリウレタン(第一工業製薬株式会社製、スーパーフレックス830HS、固形分率35%、ガラス転移温度68℃)
・ポリエステル(東亞合成株式会社製、アロンメルトPES-2405A30、固形分率30%、ガラス転移温度40℃)
・アクリル樹脂(東亞合成株式会社製、ジュリマーFC-80、固形分率30%、ガラス転移温度50℃)
・シリケート樹脂(コルコート株式会社製、エチルシリケート40、固形分率40%)
(1-5)触媒
・クメンスルホン酸(テイカ社製、品名:テイカトックス500)
(1-6)有機溶剤
・エタノール(富士フイルム和光純薬社製)
・2-プロパノール(富士フイルム和光純薬社製)
・メタノール(富士フイルム和光純薬社製)
【0104】
(2)評価方法
(2-1)表面抵抗率
コーティング塗膜の製膜直後の表面抵抗率を、表面抵抗率と装置の測定可能レンジに応じて、下記の方法から選択し、評価した。
表面抵抗率が1.0×106(Ω/□)~1.0×108(Ω/□)の場合:三菱化学株式会社製ハイレスタUP(MCP-HT450型)のUAプローブを用いて10Vの印加電圧にて測定した。
表面抵抗率が1.0×108(Ω/□)を超える場合:三菱化学株式会社製ハイレスタUP(MCP-HT450型)のUAプローブを用いて250Vの印加電圧にて測定した。
【0105】
(2-2)全光線透過率およびヘイズ
積層体の製造直後の全光線透過率およびヘイズを、JIS K7136に従い、ヘイズコンピュータ(スガ試験機社製、HZ-2)を用いて測定した。
【0106】
(製造例1)カーボンナノチューブ水分散体の作製
平均長さ300μm、直径約4nmのカーボンナノチューブ(ゼオンナノテクノロジー株式会社製、品名:ZEONANO SG101)0.1重量部、分散剤として非イオン性分散剤(BASF社製、品名:Pluronic F108、HLB:24以上)を0.6重量部、エタノール30重量部、純水70重量部をガラスビーカーに入れ、超音波ホモジナイザーにて(hielscher社製、製品名「HP50H」)にて50W、周波数30kHzで30分間分散処理を行うことで、固形分率1.1%のカーボンナノチューブ分散体1を得た。
【0107】
(製造例2)カーボンナノチューブ水分散体の作製
平均長さ300μm、直径約4nmのカーボンナノチューブ(ゼオンナノテクノロジー株式会社製、品名:ZEONANO SG101)0.1重量部、分散剤として非イオン性分散剤(BASF社製、品名:Genapol PF 80、HLB:19)を0.6重量部、純水100重量部をガラスビーカーに入れ、超音波ホモジナイザー(hielscher社製、製品名「HP50H」)にて50W、周波数30kHzで30分間分散処理を行うことで、固形分率1.1%のカーボンナノチューブ分散体2を得た。
【0108】
(製造例3)カーボンナノチューブ水分散体の作製
平均長さ10μm、直径約4nmの二層カーボンナノチューブ(アルドリッチ株式会社製、製品番号:755168)1重量部、分散剤として陰イオン性分散剤(富士フィルム和光純薬工業株式会社製、品名:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を10重量部、純水989重量部をガラスビーカーに入れ、超音波ホモジナイザー(hielscher社製、製品名「HP50H」)にて50W、周波数30kHzで30分間分散処理を行うことで、固形分率1.1%のカーボンナノチューブ分散体3を得た。
【0109】
(製造例4)カーボンナノチューブ水分散体の作製
平均長さ300μm、直径約4nmのカーボンナノチューブ(ゼオンナノテクノロジー株式会社製、品名:ZEONANO SG101)0.1重量部、分散剤として高分子系分散剤(日本触媒社製、品名:ポリビニルピロリドンK-30、HLB:15)を0.6重量部、純水100重量部をガラスビーカーに入れ、超音波ホモジナイザー(hielscher社製、製品名「HP50H」)にて50W、周波数30kHzで30分間分散処理を行うことで、固形分率1.1%のカーボンナノチューブ分散体4を得た。
【0110】
(製造例5)グラフェン水分散体の作製
カーボンナノチューブに代えてグラフェン(アイテック社製、品番:iGRAFEN-αs、平均粒径10μm)を用いた他は、製造例1と同様の操作により、固形分率1.1%のグラフェン水分散体を得た。
【0111】
(実施例1~15、比較例1~2)
実施例1~15、比較例1~2において、製造例1~4のカーボンナノチューブ水分散体または製造例5のグラフェン水分散体等のカーボンナノ材料、レベリング剤、バインダー樹脂および触媒を表1に記載した重量比(固形分比)で混合し、固形分率が1%となるように表1に記載の有機溶剤で希釈することにより、コーティング組成物を作製した。実施例12~14では表1に記載の混合有機溶剤を使用した。
【0112】
表1においてカーボンナノ材料は、分散剤を含めた重量を記載した。基材フィルムの片面にバーコート法にてコーティング組成物を塗布し、送風乾燥機を用いて120℃で2分間乾燥させることによりコーティング塗膜を形成し、積層体を得た。コーティング塗膜の膜厚は、コーティング組成物の固形分と、バーコータの番手を適宜選択することにより、40nmに調整した。
【0113】
得られた積層体について、上述した方法により表面抵抗率、全光線透過率、及びヘイズを評価した。結果を表1に示す。
【0114】
実施例1~15、比較例1~2にて製造したコーティング組成物を50重量%の2-プロパノール水溶液にて重量比で50倍希釈後、希釈液の波長648nmにおける吸光度(A)を紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、型番V-670)にて測定した。その後、遠心分離機(久保田製作所社製、型番:KUBOTA-4000)にて3500rpm、23℃の条件下で5分間遠心分離処理を行い。遠心分離処理後の上澄み液の吸光度(B)を同様に測定した。遠心前後の吸光度変化率は、以下の式により求めた。
遠心前後の吸光度変化率(%)=(B/A)×100
【表1】
【0115】
表1において、比較例1~2の「OVER」はOVER RANGEを意味し、表面抵抗率が14乗以上であることを示す。
【0116】
表1に示すように、実施例1~15の積層体は、遠心前後の吸光度変化率は50%以上であり、コーティング組成物中においてカーボンナノ材料が分散し、その結果、帯電防止性及び透明性も高い値を示した。
【0117】
レベリング剤を含まない比較例1のコーティング組成物は、カーボンナノ材料の分散性が低く、遠心分離操作でカーボンナノ材料が凝集した凝集物が沈降してしまうため、遠心前後の吸光度変化率が30%まで低下した。また、バーコータでの塗布時、カーボンナノ材料が凝集した凝集物がバーコータの溝にかきとられ、十分な量のカーボンナノ材料がコーティング塗膜に残らず、その結果、得られた比較例1の積層体は、導電性が低かった。さらに、コーティング塗膜にわずかに残った凝集物の影響により、ヘイズも4%と高い値を示した。
【0118】
カーボンナノ材料を含まないコーティング組成物で得られた比較例2の積層体は、帯電防止性を有していなかった。