(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】ガスタービンプラント
(51)【国際特許分類】
F01K 23/10 20060101AFI20240104BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20240104BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
F01K23/10 D
B01D53/62
B01D53/78
(21)【出願番号】P 2019136180
(22)【出願日】2019-07-24
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】堤 淳史
(72)【発明者】
【氏名】田中 鉄也
(72)【発明者】
【氏名】永渕 尚之
(72)【発明者】
【氏名】上條 孝
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-138748(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158561(WO,A1)
【文献】特開2015-139727(JP,A)
【文献】特開2015-218634(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0010967(US,A1)
【文献】特開2010-085078(JP,A)
【文献】特開2001-140656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/62
B01D 53/78
F01K 23/10
F02C 6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料の燃焼によって生成される燃焼ガスにより駆動するガスタービンと、
前記ガスタービンから排気された排気ガスを外部に導く排気ラインと、
前記排気ライン中に設けられた排熱回収ボイラーであって、前記ガスタービンから排気された排気ガスの熱により蒸気を発生し、前記排熱回収ボイラーの内部を通過した前記排気ガスを前記排気ラインに導く排熱回収ボイラーと、
前記排気ライン中における前記排熱回収ボイラーの下流側に設けられ、前記排気ライン中を流れる前記排気ガス中に含まれる二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置と、
前記排気ライン中における前記排熱回収ボイラーと前記二酸化炭素回収装置との間に設けられ、前記排気ガスを予め定められた温度まで冷却する熱交換器と、
前記排気ライン中であって、前記二酸化炭素回収装置と前記熱交換器との間の位置から分岐して、前記ガスタービンの入口に接続されている循環ラインと、
前記熱交換器の出口温度を計測する出口温度計測部と、
前記排熱回収ボイラーに流入する前記排気ガスを加熱する助燃バーナと、
前記出口温度に基づいて前記助燃バーナの出力を変化させる制御装置と、
を備え、
前記二酸化炭素回収装置は、前記予め定められた温度の前記排気ガスと吸収液とを接触させることで、該排気ガスに含まれる二酸化炭素を吸収する吸収塔を有し、
前記熱交換器は、前記排熱回収ボイラーを形成する材料よりも耐腐食性の高い材料で形成されているガスタービンプラント。
【請求項2】
前記制御装置は、前記出口温度が前記予め定められた温度よりも高い場合には、前記助燃バーナの出力を大きくなる方向に変化させる請求項1に記載のガスタービンプラント。
【請求項3】
前記制御装置は、前記出口温度が前記予め定められた温度よりも低い場合には、前記助燃バーナの出力を小さくなる方向に変化させる請求項1又は2に記載のガスタービンプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービンプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料を用いる発電プラント、例えばガスタービンを備えるプラントでは、当該ガスタービンの運転に伴って、高温の排気ガスが発生する。この排気ガスの熱を有効に活用するための技術として、排熱回収ボイラーがこれまでに実用化されている(下記特許文献1)。排熱回収ボイラーは、排気ガスの熱によって高温高圧の蒸気を発生させる装置である。具体的には、排熱回収ボイラーは、ガスタービンの排気ガスが流通する煙道と、この煙道の内部で下流側から上流側に向かって順に配列された節炭器、蒸発器、及び過熱器と、を有する。
【0003】
ところで、ガスタービンの排気ガスには、多量の二酸化炭素が含まれている。環境保全の観点から、二酸化炭素を可能な限り排気ガスから除去する技術が求められている。このような技術として、例えば下記特許文献2に記載されたプラントが知られている。特許文献2に記載されたプラントは、ガスタービンと、ガスタービンの排気ガスが流通する煙道ガス路に沿って設けられた排熱回収ボイラー、及び二酸化炭素回収装置と、を備えている。排気ガス中に含まれる二酸化炭素は、二酸化炭素回収装置内の吸収液に吸収除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4690885号公報
【文献】特表2015-519499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の二酸化炭素回収装置では、吸収液としてアミンを主成分とする薬剤が用いられる。この吸収液には、二酸化炭素を効率的に吸収するための、温度の適正範囲が存在する。つまり、排気ガスの温度が高すぎる場合や低すぎる場合に、二酸化炭素の吸収効率が低下してしまう。したがって、上記特許文献2に記載されているプラントのように、排熱回収ボイラーから二酸化炭素回収装置に直接排気ガスを流通させた場合、排気ガスの温度が高すぎるために、二酸化炭素の回収効率が低下してしまう可能性がある。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、より高い効率で二酸化炭素を回収することが可能なガスタービンプラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係るガスタービンプラントは、燃料の燃焼によって生成される燃焼ガスにより駆動するガスタービンと、前記ガスタービンから排気された排気ガスを外部に導く排気ラインと、前記排気ライン中に設けられた排熱回収ボイラーであって、前記ガスタービンから排気された排気ガスの熱により蒸気を発生し、前記排熱回収ボイラーの内部を通過した前記排気ガスを前記排気ラインに導く排熱回収ボイラーと、前記排気ライン中における前記排熱回収ボイラーの下流側に設けられ、前記排気ライン中を流れる前記排気ガス中に含まれる二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置と、前記排気ライン中における前記排熱回収ボイラーと前記二酸化炭素回収装置との間に設けられ、前記排気ガスを予め定められた温度まで冷却する熱交換器と、前記排気ライン中であって、前記二酸化炭素回収装置と前記熱交換器との間の位置から分岐して、前記ガスタービンの入口に接続されている循環ラインと、を備え、前記二酸化炭素回収装置は、前記予め定められた温度の前記排気ガスと吸収液とを接触させることで、該排気ガスに含まれる二酸化炭素を吸収する吸収塔を有し、前記熱交換器は、前記排熱回収ボイラーを形成する材料よりも耐腐食性の高い材料で形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示のガスタービンプラントによれば、より高い効率で二酸化炭素を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係るガスタービンプラントの構成を示す模式図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る排熱回収ボイラーの構成を示す模式図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の構成を示す模式図である。
【
図4】本開示の実施形態に係るガスタービンプラントの変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(ガスタービンプラントの構成)
以下、本開示の実施形態に係るガスタービンプラント100について、
図1から
図3を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るガスタービンプラント100は、ガスタービン1と、排熱回収ボイラー2と、二酸化炭素回収装置3と、熱交換器4と、煙突5と、湿分分離装置6Aと、吸気フィルタ6Bと、二酸化炭素圧縮装置7と、排気ラインL1と、循環ラインL2と、蒸気供給ラインL4と、蒸気回収ラインL5と、助燃バーナBと、制御装置90と、を備えている。
【0011】
(ガスタービンの構成)
ガスタービン1は、圧縮機11と、燃焼器12と、タービン13と、を有している。圧縮機11は、外部から取り込んだ空気を圧縮して高圧の圧縮空気を生成する。燃焼器12は、この圧縮空気に燃料を混合して燃焼させ、高温高圧の燃焼ガスを生成する。タービン13は、燃焼ガスによって回転駆動される。タービン13の回転力は、例えば当該タービン13と同軸に接続された発電機Gの駆動に利用される。タービン13からは高温の排気ガスが排出される。この排気ガスは、タービン13の下流側に接続された排気ラインL1によって、当該排気ラインL1上に設けられた排熱回収ボイラー2に送られる。
【0012】
(排熱回収ボイラーの概要)
排熱回収ボイラー2は、ガスタービン1の排気ガスと水とを熱交換させることにより、高温高圧の蒸気を発生させる。排熱回収ボイラーの構成については後述する。排気ラインL1上における排熱回収ボイラー2の下流側には二酸化炭素回収装置3が設けられている。排熱回収ボイラー2で水と熱交換された低温となった排気ガスは、排気ラインL1を通って、この二酸化炭素回収装置3に送られる。
【0013】
(二酸化炭素回収装置の概要)
二酸化炭素回収装置3では、アミンを主成分とする吸収液と排気ガスとを気液接触させることにより、排気ガス中に含まれる二酸化炭素が吸収液に化学結合する。(なお、吸収液はアミン以外の成分の化学吸収剤であってもよい。)これにより、排気ガス中の二酸化炭素の大部分、又は全てが除去される。二酸化炭素回収装置3の構成については後述する。二酸化炭素が除去された後の排気ガスは、排気ラインL1を通って煙突5に送られて大気中に放散される。
【0014】
一方で、排気ガスから分離された二酸化炭素は、回収ラインL6を通じて二酸化炭素圧縮装置7に送られる。二酸化炭素圧縮装置7は、圧縮機本体71と、駆動部72と、貯留部73と、を有している。圧縮機本体71は、駆動部72によって駆動されることで、二酸化炭素を圧縮する。圧縮された二酸化炭素は液化された後、貯留部73へ搬送される。
【0015】
(循環ラインの構成)
上記の排気ラインL1上において、排熱回収ボイラー2と二酸化炭素回収装置3との間の位置には、当該排気ラインL1から分岐する循環ラインL2の一端が接続されている。循環ラインL2の他端はガスタービン1の圧縮機11に接続されている。つまり、この循環ラインL2を通じて、排気ラインL1を流れる排気ガスの一部をガスタービン1(圧縮機11)に還流させることが可能である。また、循環ラインL2上には、出口温度計測部としての温度センサTと、湿分分離装置6Aと、吸気フィルタ6Bとが設けられている。温度センサTは、排気ガスの温度を計測する。温度センサTが計測した温度の値は、電気信号として制御装置90に送られる。湿分分離装置6Aは、循環ラインL2中を流通する排気ガスに含まれる湿分を取り除く。吸気フィルタ6Bは、大気中から吸気された空気と、循環ラインL2中を流通する排気ガスに含まれるススや塵埃を取り除く。なお、これら湿分分離装置6A備えない構成を採ることも可能である。
【0016】
(熱交換器の概要)
排気ラインL1上において、上記の循環ラインL2と排気ラインL1との分岐点よりも上流側であって、排熱回収ボイラー2よりも下流側の位置には、熱交換器4が設けられている。熱交換器4は、排気ラインL1中を流通する排気ガスを予め定められた温度まで冷却する。熱交換器4で冷却された排気ガスは、排気ラインL1を通じて下流側の二酸化炭素回収装置3に送られる。熱交換器4の構成については後述する。
【0017】
(蒸気の配管系統)
次いで、ガスタービンプラント100における蒸気の配管系統について説明する。排熱回収ボイラー2は、蒸気供給ラインL4によって、二酸化炭素回収装置3に接続されている。排熱回収ボイラー2で生成された蒸気は、この蒸気供給ラインL4を通じて二酸化炭素回収装置3に供給される。詳しくは後述するが、二酸化炭素回収装置3では、蒸気供給ラインL4を通じて供給された蒸気の熱によって、二酸化炭素が結合した状態の吸収液から二酸化炭素を分離させる。二酸化炭素回収装置3で利用されて低温となった蒸気(又は水)は、蒸気回収ラインL5を通じて再び排熱回収ボイラー2に送られる。なお、蒸気回収ラインL5上には、二酸化炭素回収装置3から回収された低温の蒸気を水に戻す復水器61と、この水を圧送する給水ポンプ62とが設けられている(
図2参照)。
【0018】
(排熱回収ボイラー、及び熱交換器の構成)
次に、
図2を参照して、排熱回収ボイラー2、及び熱交換器4の構成について説明する。同図に示すように、排熱回収ボイラー2は、煙道21と、この煙道21内に配置された節炭器22、蒸発器23、及び過熱器24と、蒸気タービンSTと、復水器61と、給水ポンプ62と、を有している。煙道21内において、節炭器22、蒸発器23、及び過熱器24は、排気ガスの流れる方向の下流側から上流側に向かってこの順で配列されている。給水の流れる方向において、節炭器22の上流側には、熱交換器4が設けられている。
【0019】
熱交換器4は、蒸気回収ラインL5の下流側に接続されている。熱交換器4は、煙道21と連通する筒体41と、この筒体41内に設けられた熱交換器本体42と、を有する。なお、この熱交換器4の後段に、二酸化炭素回収装置3が接続されていない場合は、
図2中の配管L200、循環ポンプ200、配管L201を有する再循環系統を設けることが可能である。当該再循環系統中の循環流量を調整して熱交換器4の出口温度を80℃以上に加熱することで、熱交換器4内部での排ガス中の水分凝縮を抑えることができる。これにより、配管42の腐食を回避するとともに、煙突5の出口温度を高温とすることで、腐食や出口での白煙発生を抑えるようにしている。一方で、本実施形態では、この循環系統をなくすことで、熱交換器4の出口排ガス温度を低下させ、且つコストを低減することができる。熱交換器4を構成する各部のうち、蒸気又は水が流通する配管(熱交換器本体42)は、排熱回収ボイラー2の配管よりも耐腐食性の高い材料で形成されている。このような材料として具体的には、SUSやインコネルが好適に用いられる(なお、排熱回収ボイラー2の配管は、一例として炭素鋼によって形成されることが一般的である。)。
【0020】
節炭器22は、熱交換器4を通じて送られてきた水と排気ガスとの間で熱交換させることで、当該水を加熱する。蒸発器23は、節炭器22で加熱されて高温となった水と排気ガスとを熱交換させることでさらに加熱して蒸気を生成する。この蒸気は過熱器24に送られる。過熱器24は、排気ガスとの熱交換によって蒸気を過熱させることで過熱蒸気を生成する。
【0021】
過熱器24で生成された過熱蒸気は、蒸気タービンSTに送られる。蒸気タービンSTは、蒸気によって回転駆動されることで、同軸に接続された発電機等(不図示)に動力を供給する。また、蒸発器23で生成された蒸気の少なくとも一部は、上述の蒸気供給ラインL4を通じて、二酸化炭素回収装置3に送られて熱源として利用される。また、蒸気タービンSTの排気は、タービン排気ラインL4bを通じて、復水器61に送られる。なお、蒸気タービンSTを備えない構成を採ることも可能である。
【0022】
さらに、煙道21の入口側(つまり、排気ガスが流入する側)の端部には、排気ガスを補助的に加熱するための助燃バーナBが設けられている。助燃バーナBとして具体的には、上述の燃焼器12と共通の燃料によって燃焼火炎を形成するバーナやトーチが好適に用いられる。助燃バーナBの出力は、温度センサTの計測値に基づいて、制御装置90によって変化させることが可能とされている。
【0023】
(二酸化炭素回収装置の構成)
続いて、
図3を参照して、二酸化炭素回収装置3の構成について説明する。同図に示すように、二酸化炭素回収装置3は、吸収塔31と、再生塔32と、熱交換器33と、リボイラー34と、冷却器36と、第一ポンプP1と、第二ポンプP2と、を有している。
【0024】
吸収塔31は上下方向に延びる筒状をなしており、その下部には、排気ラインL1が接続されている。吸収塔31の内部では、二酸化炭素と化学結合することが可能な吸収液が上方から下方に向かって流れている。なお、このような吸収液として具体的には、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、ジイソプロパノールアミン(DIPA)、メチルジエタノールアミン(MDEA)を含むアミンの水溶液や水を含まない有機溶媒、その混合物、アミノ酸系の水溶液が好適に用いられる。また吸収液はアミン以外を用いても良い。
【0025】
吸収塔31内の下部に流入した排気ガスは、上方から流れる吸収液に対して接触しながら吸収塔31内を上昇する。この時、排気ガスに含まれる二酸化炭素が吸収液に化学吸収される。二酸化炭素が除去された残余の排気ガスは、吸収塔31の上部から再び排気ラインL1中に流入する。
【0026】
二酸化炭素を吸収した吸収液は、吸収塔31の下部に接続された吸収液回収ラインL31を通じて、熱交換器33に送られる。なお、吸収液回収ラインL31上には、吸収液を圧送するための第一ポンプP1が設けられている。詳しくは後述するが、熱交換器33では、再生塔32で加熱されることで再生された吸収液と、再生する前の吸収液との熱交換が行われる。これにより、再生前の吸収液は一定程度温度が上がった状態となる。熱交換器33を通過した後、再生前の吸収液は、吸収液回収ラインL31を通じて再生塔32の上部に送られる。
【0027】
再生塔32は、二酸化炭素を吸収した状態の吸収液を再生する(二酸化炭素を分離する)ための装置である。再生塔32の内部には、吸収液加熱ラインL33の一部が挿入されている。吸収液加熱ラインL33上には、リボイラー34が設けられている。リボイラー34には、上述の蒸気供給ラインL4から高温の蒸気が供給される。リボイラー34では、この蒸気との熱交換によって、吸収液に含まれる水の一部が加熱されてストリッピングスチームとなる。ストリッピングスチームは、再生塔32内で、吸収液回収ラインL33から供給された再生前の吸収液と接触する。これにより、再生前の吸収液から二酸化炭素が放散し、吸収液が再生される(二酸化炭素を含まない状態となる)。再生前の吸収液から放散された二酸化炭素は、再生塔32の上部に接続された回収ラインL6を通じて、上述の二酸化炭素圧縮装置7に送られる。
【0028】
再生後の吸収液の一部(即ち、ストリッピングスチームとならなかった成分)は、再生塔32の下部に接続された抽出ラインL32に送られる。抽出ラインL32上には、熱交換器33、冷却器36、及び第二ポンプP2がこの順で設けられている。第二ポンプP2を駆動することにより、再生塔32から熱交換器33に、再生後の吸収液が供給される。なお、第二ポンプP2は、熱交換器33と再生塔32の間、又は冷却器36と熱交換器33の間に設けられていてもよい。熱交換器33では、上述のように、再生前の吸収液と再生後の吸収液との間で熱交換が行われる。再生後の吸収液は、熱交換器33及び冷却器36を通過することで低温となる。低温となった再生後の吸収液は、吸収塔31の上部に供給される。
【0029】
(制御装置の構成)
続いて、制御装置90について説明する。
図1に示すように、この制御装置90は、入力部91と、判定部92と、バーナ調節部93と、を有している。入力部91には、温度センサTが計測した循環ラインL2中の排気ガスの温度が電気信号として入力される。判定部92は、当該温度センサTが計測した排気ガスの温度が、予め定められた範囲内にあるか否かを判定する。バーナ調節部93は、判定部92から送られた信号に基づいて、助燃バーナBの出力(即ち、燃料供給量)を調節するための信号を送出する。
【0030】
ここで、排熱回収ボイラー2内では、蒸発器23の性能要件によって、生成される蒸気の温度と圧力が定められている。したがって、例えば排熱回収ボイラー2に流入する排気ガスの温度を高くなる方向に変化させた場合、当該温度と圧力を維持するべく、熱交換器4の出口における排気ガスの温度は低くなる方向に変化する。一方で、排熱回収ボイラー2に流入する排気ガスの温度を低くなる方向に変化させた場合、上記の温度と圧力を維持するべく、熱交換器の出口における排気ガスの温度は高くなる方向に変化する。そこで、本実施形態では、出口温度計測部としての温度センサTによって計測された排気ガスの温度に基づいて、制御装置90は助燃バーナの出力を変化させる。
【0031】
具体的には、温度センサTによって計測された温度が予め定められた温度よりも高いと判定部92によって判定された場合には、バーナ調節部93は助燃バーナBの出力を大きくなる方向に変化させる。その結果、煙道21の入口における排気ガスの温度は上がる一方で、熱交換器4の出口温度(排気ガスの温度)は低くなる方向に変化する。温度センサTによって計測された温度が予め定められた温度よりも低いと判定部92によって判定された場合には、バーナ調節部93は助燃バーナBの出力を小さくなる方向に変化させる。その結果、煙道21の入口における排気ガスの温度は下がる一方で、熱交換器4の出口温度(排気ガスの温度)は高くなる方向に変化する。なお、上記の「予め定められた温度」とは、二酸化炭素回収装置3の吸収塔31を循環する吸収剤が、最も高く吸収性能を発揮することのできる温度範囲である。このような温度として具体的には、30~50℃の範囲内にあることが望ましい。より望ましくは、この温度の範囲は35~45℃とされる。最も望ましくは、この温度は40℃とされる。
【0032】
(作用効果)
次に、本実施形態に係るガスタービンプラント100の動作について説明する。ガスタービン1を駆動することによってタービン13からは排気ガスが発生する。この排気ガスは、排熱回収ボイラー2を通過して低温となった後、二酸化炭素回収装置3に流入する。二酸化炭素回収装置3では、上述のように排気ガスから二酸化炭素が除去される。その後、排気ガスは煙突5から大気中に放散する。排気ガスから除去された二酸化炭素は、二酸化炭素圧縮装置7によって液化・貯留される。
【0033】
ここで、上述の二酸化炭素回収装置3では、吸収液としてアミンを主成分とする薬剤が用いられている。この吸収液には、二酸化炭素を効率的に吸収するための、温度の適正範囲が存在する。つまり、排気ガスの温度が高すぎる場合や低すぎる場合に、二酸化炭素の吸収効率が低下してしまう虞がある。
【0034】
そこで、本実施形態に係るガスタービンプラント100では、排気ラインL1上における排熱回収ボイラー2の下流側に熱交換器4が設けられている。この構成によれば、排熱回収ボイラー2から排出された排気ガスは、熱交換器4を通過することで上述の予め定められた温度まで冷却された後、二酸化炭素回収装置3に送られる。つまり、排気ガスの温度を、吸収液の好適な反応温度領域まで下げることができる。したがって、吸収液によって排気ガス中の二酸化炭素をより効率的に吸収することができる。
【0035】
なお、熱交換器4では、排気ガスを冷却する際に、当該排気ガス中に含まれる湿分が凝縮し、結露する可能性がある。このような結露によって、熱交換器4内の配管に腐食が生じる虞もある。しかしながら、上記の構成では、熱交換器4の配管(熱交換器本体42)は、排熱回収ボイラー2を形成する材料よりも耐腐食性の高い材料で形成されている。したがって、上記のような結露が生じた場合であっても、熱交換器4内で腐食が生じる可能性を低減することができる。
【0036】
ここで、排熱回収ボイラー2内では、蒸発器23の性能要件に基づいて、生成される蒸気の温度と圧力が定められている。したがって、例えば排熱回収ボイラー2に流入する排気ガスの温度を高くなる方向に変化させた場合、当該温度と圧力を維持するべく、熱交換器4の出口における排気ガスの温度は低くなる方向に変化する。一方で、排熱回収ボイラー2に流入する排気ガスの温度を低くなる方向に変化させた場合、上記の温度と圧力を維持するべく、熱交換器4の出口における排気ガスの温度は高くなる方向に変化する。つまり、上記の構成によれば、出口温度計測部としての温度センサTによって計測された温度に基づいて、制御装置90が助燃バーナBの出力を変化させることで、熱交換器4の出口温度を自在に調節することができる。その結果、二酸化炭素回収装置3に流入する排気ガスの温度をより精緻にコントロールすることができる。
【0037】
具体的には、上記の構成によれば、温度センサTによって計測された温度が予め定められた温度よりも高い場合には、制御装置90が助燃バーナBの出力を大きくなる方向に変化させる。これにより、熱交換器4の出口温度を低くすることができる。その結果、二酸化炭素回収装置3に流入する排気ガスの温度をより精緻にコントロールすることができる。
【0038】
また、上記の構成によれば、温度センサTによって計測された温度が予め定められた温度よりも低い場合には、制御装置90が助燃バーナBの出力を小さくなる方向に変化させる。これにより、熱交換器4の出口温度を高くすることができる。その結果、二酸化炭素回収装置3に流入する排気ガスの温度をより精緻にコントロールすることができる。
【0039】
加えて、上記構成によれば、熱交換器4では、排気ガスの温度が30~50℃の範囲内となるまで冷却される。これにより、熱交換器4の下流側に接続されている二酸化炭素回収装置3では、より効率的に排気ガスから二酸化炭素を吸収除去することができる。
【0040】
さらに、上記の構成によれば、熱交換器4を設けることのみによって、既設のガスタービンプラントに対して二酸化炭素回収装置3を事後的に取り付けることができる。つまり、大規模な改修を施すことなく、既設のガスタービンプラントに二酸化炭素回収装置3を取り付けることができる。これにより、より低いコストで、既設のガスタービンプラントの環境性能を向上させることができる。さらに、上記助燃バーナ―Bにより、排熱回収ボイラー2での発生蒸気量を増加することができ、
図3中のリボイラー34に供給するための蒸気により生じる、
図2の蒸気タービンの出力低下を回復することができる。
【0041】
なお、一般に、石炭又は油焚きボイラーやGTCCの排ガス系統に、二酸化炭素回収装置3を設置する場合、前述の排ガス温度が吸収塔31の運用温度よりも高いことから、温度低減や排ガス中の不純物除去を目的として、吸収塔31の前段にクエンチャを配置する構成が考えられる。本実施形態では、吸収塔31の運用温度まで排ガス温度を低下させることが可能であるため、クエンチャを設けないか、又は小型化することができる。
【0042】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0043】
例えば、上記実施形態の構成に加えて、
図4に示すように、クエンチャ40、及び排気ガス冷却器50をさらに備える構成を採ることも可能である。クエンチャ40は、排気ラインL1中における熱交換器4と二酸化炭素回収装置3との間に設けられている。クエンチャ40は、熱交換器4から排出された排気ガスの温度をさらに下げるための冷却装置である。クエンチャ40を設けることによって、二酸化炭素回収装置3に流入するに先立って、排気ガスの温度をさらに下げる(冷却する)ことができる。したがって、例えば熱交換器4における排気ガスの冷却が不十分な場合であっても、当該クエンチャ40によって冷却効果を補うことができる。なお、上記実施形態では、熱交換器4によって排気ガスの温度が予め低くなっていることから、たとえクエンチャ40を設ける場合であっても、当該クエンチャ40の容量を極小さなものに抑えることが可能である。これにより、製造コストのさらなる削減を図ることができる。
【0044】
排気ガス冷却器50は、循環ラインL2中における圧縮機11の上流側に設けられている。排気ガス冷却器50は、圧縮機11に流入する排気ガスの温度を下げるための装置である。排気ガス冷却器50を設けることによって、圧縮機11の圧縮効率をさらに向上させることができる。なお、上記実施形態では、熱交換器4によって排気ガスの温度が予め低くなっていることから、たとえ排気ガス冷却器50を設ける場合であっても、当該排気ガス冷却器50の容量を極小さなものに抑えることが可能である。これにより、製造コストのさらなる削減を図ることができる。
【0045】
<付記>
各実施形態に記載のガスタービンプラントは、例えば以下のように把握される。
【0046】
(1)第1の態様に係るガスタービンプラント(100)は、燃料の燃焼によって生成される燃焼ガスにより駆動するガスタービン(1)と、前記ガスタービン(1)から排気された排気ガスを外部に導く排気ライン(L1)と、前記排気ライン(L1)中に設けられた排熱回収ボイラー(2)であって、前記ガスタービン(1)から排気された排気ガスの熱により蒸気を発生し、前記排熱回収ボイラー(2)の内部を通過した前記排気ガスを前記排気ライン(L1)に導く排熱回収ボイラー(2)と、前記排気ライン(L1)中における前記排熱回収ボイラー(2)の下流側に設けられ、前記排気ライン(L1)中を流れる前記排気ガス中に含まれる二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置(3)と、前記排気ライン(L1)中における前記排熱回収ボイラー(2)と前記二酸化炭素回収装置(3)との間に設けられ、前記排気ガスを予め定められた温度まで冷却する熱交換器(4)と、前記排気ライン(L1)中であって、前記二酸化炭素回収装置(3)と前記熱交換器(4)との間の位置から分岐して、前記ガスタービン(1)の入口に接続されている循環ライン(L2)と、を備え、前記二酸化炭素回収装置(3)は、前記予め定められた温度の前記排気ガスと吸収液とを接触させることで、該排気ガスに含まれる二酸化炭素を吸収する吸収塔(31)を有し、前記熱交換器(4)は、前記排熱回収ボイラー(2)を形成する材料よりも耐腐食性の高い材料で形成されている。
【0047】
ここで、二酸化炭素回収装置(3)では、吸収液の一例としてアミンを主成分とする薬剤が用いられる。この吸収液には、二酸化炭素を効率的に吸収するための、予め定められた温度の適正範囲が存在する。つまり、排気ガスの温度が高すぎる場合や低すぎる場合に、二酸化炭素の吸収効率が低下してしまう。上記の構成によれば、排熱回収ボイラー(2)から排出された排気ガスは、熱交換器(4)を通過することで当該予め定められた温度まで冷却された後、二酸化炭素回収装置(3)に送られる。したがって、吸収液によって排気ガス中の二酸化炭素をより効率的に吸収することができる。
【0048】
(2)第2の態様に係るガスタービンプラント(100)は、前記熱交換器(4)の出口温度を計測する出口温度計測部(T)と、前記排熱回収ボイラー(2)に流入する前記排気ガスを加熱する助燃バーナ(B)と、前記出口温度に基づいて前記助燃バーナ(B)の出力を変化させる制御装置(90)と、をさらに備える。
【0049】
ここで、排熱回収ボイラー(2)内では、生成される蒸気の温度と圧力が定められている。したがって、例えば排熱回収ボイラー(2)に流入する排気ガスの温度を高くなる方向に変化させた場合、当該温度と圧力を維持するべく、熱交換器(4)の出口における排気ガスの温度は低くなる方向に変化する。一方で、排熱回収ボイラー(2)に流入する排気ガスの温度を低くなる方向に変化させた場合、上記の温度と圧力を維持するべく、熱交換器(4)の出口における排気ガスの温度は高くなる方向に変化する。つまり、上記の構成によれば、出口温度計測部(T)によって計測された温度に基づいて、制御装置(90)が助燃バーナ(B)の出力を変化させる。これにより、熱交換器(4)の出口温度を自在に調節することができる。その結果、二酸化炭素回収装置(3)に流入する排気ガスの温度をより精緻にコントロールすることができる。
【0050】
(3)第3の態様に係るガスタービンプラント(100)では、前記制御装置(90)は、前記出口温度が前記予め定められた温度よりも高い場合には、前記助燃バーナ(B)の出力を大きくなる方向に変化させる。
【0051】
ここで、排熱回収ボイラー(2)内では、生成される蒸気の温度と圧力が定められている。したがって、例えば排熱回収ボイラー(2)に流入する排気ガスの温度を高くなる方向に変化させた場合、当該温度と圧力を維持するべく、熱交換器(4)の出口における排気ガスの温度は低くなる方向に変化する。つまり、上記の構成によれば、出口温度計測部(T)によって計測された温度が予め定められた温度よりも高い場合には、制御装置(90)が助燃バーナ(B)の出力を大きくなる方向に変化させることで、熱交換器(4)の出口温度を低くすることができる。その結果、二酸化炭素回収装置(3)に流入する排気ガスの温度をより精緻にコントロールすることができる。
【0052】
(4)第4の態様に係るガスタービンプラント(100)では、前記制御装置(90)は、前記出口温度が前記予め定められた温度よりも低い場合には、前記助燃バーナ(B)の出力を小さくなる方向に変化させる。
【0053】
ここで、排熱回収ボイラー(2)内では、生成される蒸気の温度と圧力が定められている。したがって、例えば排熱回収ボイラー(2)に流入する排気ガスの温度を低くなる方向に変化させた場合、上記の温度と圧力を維持するべく、熱交換器(4)の出口における排気ガスの温度は高くなる方向に変化する。つまり、上記の構成によれば、出口温度計測部(T)によって計測された温度が予め定められた温度よりも低い場合には、制御装置(90)が助燃バーナ(B)の出力を小さくなる方向に変化させる。これにより、熱交換器(4)の出口温度を高くすることができる。その結果、二酸化炭素回収装置(3)に流入する排気ガスの温度をより精緻にコントロールすることができる。
【0054】
(5)第5の態様に係るガスタービンプラント(100)では、前記予め定められた温度は、30~50℃の範囲内にある。
【0055】
上記構成によれば、熱交換器(4)では、排気ガスの温度が30~50℃の範囲内となるまで冷却される。これにより、熱交換器(4)の下流側に接続されている二酸化炭素回収装置(3)では、より効率的に排気ガスから二酸化炭素を吸収除去することができる。
【0056】
(6)第6の態様に係るガスタービンプラント(100)は、前記二酸化炭素回収装置(3)は、前記吸収塔(31)に流入する前記排気ガスを冷却するクエンチャ(40)をさらに有する。
【0057】
上記構成によれば、吸収塔(31)に流入するに先立って、クエンチャ(40)によって排気ガスの温度をさらに下げる(冷却する)ことができる。したがって、例えば熱交換器(4)における排気ガスの冷却が不十分な場合であっても、当該クエンチャ(40)によって冷却効果を補うことができる。
【符号の説明】
【0058】
100 ガスタービンプラント
1 ガスタービン
2 排熱回収ボイラー
3 二酸化炭素回収装置
4 熱交換器
5 煙突
6A 湿分分離装置
6B 吸気フィルタ
7 二酸化炭素圧縮装置
11 圧縮機
12 燃焼器
13 タービン
21 煙道
22 節炭器
23 蒸発器
24 過熱器
31 吸収塔
32 再生塔
33 熱交換器
34 リボイラー
36 冷却器
40 クエンチャ
41 筒体
42 熱交換器本体
50 排気ガス冷却器
61 復水器
62 給水ポンプ
90 制御装置
91 入力部
92 判定部
93 バーナ調節部
200 循環ポンプ
B バーナ
G 発電機
T 温度センサ
L1 排気ライン
L2 循環ライン
L4 蒸気供給ライン
L4b タービン排気ライン
L5 蒸気回収ライン
L6 回収ライン
L31 吸収液回収ライン
L32 抽出ライン
L33 吸収液加熱ライン
L200,L201 配管
P1 第一ポンプ
P2 第二ポンプ
ST 蒸気タービン