IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産サンキョー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-エンコーダ装置 図1
  • 特許-エンコーダ装置 図2
  • 特許-エンコーダ装置 図3
  • 特許-エンコーダ装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】エンコーダ装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20240104BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
G01D5/244 D
G01D5/244 K
G01D5/245 W
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019139597
(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公開番号】P2021021682
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】大友 佑太
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-105894(JP,A)
【文献】特開2016-81301(JP,A)
【文献】特開2017-181235(JP,A)
【文献】特開平10-233381(JP,A)
【文献】特開2014-160527(JP,A)
【文献】特開2004-58769(JP,A)
【文献】特開2009-248850(JP,A)
【文献】特開2008-14799(JP,A)
【文献】特開2017-35836(JP,A)
【文献】特表2004-508792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/252
B62D 5/00-6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から電力が供給されている期間中、移動体の一定間隔毎の移動回数、および前記間隔内における位置の検出結果に基づいて絶対位置を検出する第1エンコーダと、
前記電源からの電力の供給の有無にかかわらず、前記移動体の前記一定間隔毎の累積移動回数をカウントして不揮発性メモリに記憶しておく第2エンコーダと、
を有し、
前記電源からの電力の供給が停止する際、前記第1エンコーダに駆動電圧が供給される所定の時間のバックアップ時間が設定されており、
前記電源からの電力の供給が開始された際に前記不揮発性メモリから読み出した前記累積移動回数のカウント値と前記電源からの電力の供給が開始された以降に前記第1エンコーダでカウントされた前記移動回数のカウント値とを加算した累積カウント値に基づいて前記絶対位置を算出し、前記電源からの電力の供給が停止した後の前記バックアップ時間において、前記不揮発性メモリが記憶している前記カウント値を前記累積カウント値に書き換え
前記不揮発性メモリに対しては、前記電源からの電力の供給が開始された以降、前記不揮発性メモリが書き換えられた温度より高い予め設定された雰囲気温度に達したタイミングで、前記第2エンコーダでの前記カウント値が更新されることを特徴とするエンコーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエンコーダ装置において、
前記電源からの電力の供給が停止した後の前記バックアップ時間において、前記不揮発性メモリが記憶している前記カウント値と前記累積カウント値とを比較し、前記不揮発性メモリが記憶している前記カウント値と前記累積カウント値とが相違しているときには、前記不揮発性メモリが記憶している前記カウント値を前記累積カウント値に書き換え、前記不揮発性メモリが記憶している前記カウント値と前記累積カウント値とが一致しているときには、前記不揮発性メモリが記憶している前記カウント値の書き換えを行わないことを特徴とするエンコーダ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエンコーダ装置において、
前記移動体は、回転部材であり、
前記第1エンコーダおよび前記第2エンコーダはロータリエンコーダであり、
前記一定間隔毎の移動回数は、前記回転部材の回転数であり、
前記間隔内における位置は、前記回転部材の角度位置であり、
前記絶対位置は、前記回転数および前記角度位置からなる多回転絶対角度位置であることを特徴とするエンコーダ装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のエンコーダ装置において、
前記第2エンコーダは、前記移動体と連動して移動する磁石が発生する磁界の変化に対応するパルス信号を出力する磁気素子と、前記パルス信号から駆動電圧を生成する電源回路と、前記駆動電圧および前記パルス信号を利用して、前記累積移動回数をカウントして、前記不揮発性メモリに記憶されている前記カウント値を更新するカウント処理部と、を有することを特徴とするエンコーダ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のエンコーダ装置において、
前記磁気素子は、ウィーガンドワイヤであることを特徴とするエンコーダ装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載のエンコーダ装置において、
前記第1エンコーダは、前記移動体と連動して移動する磁石が発生する磁界の変化に基づいて、前記移動体の移動量をカウントすることを特徴とするエンコーダ装置。
【請求項7】
請求項1からまでの何れか一項に記載のエンコーダ装置において、
前記不揮発性メモリは、前記移動体を駆動するモータの近傍に配置されていることを特徴とするエンコーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の移動を検出するエンコーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロボット等には、移動体の移動に伴って変動する磁石の磁界に基づいて移動体の位置を検出するエンコーダが設けられている。ここで、エンコーダは、ロボット等に搭載されている駆動用のモータの回転軸(回転部材)と一体に回転する磁石の磁界を検出して、回転軸の回転数と角度位置とからなる多回転全体角度位置を検出する(特許文献1参照)。かかるエンコーダは、電源からの電力の供給が停止している期間中、回転軸の回転の検出が不能であるため、回転軸が外力によって回転した際の回転数をカウントすることができない。そこで、バックアップ用のバッテリ等によって駆動される磁気素子によって、回転軸の回転数を常時、カウントして不揮発性メモリに記憶させておく技術が検討されている。かかる技術によれば、電源からの電力の供給が再開された際、不揮発性メモリに記憶されているカウント値を読み出せば、以降、回転軸の多回転絶対角度位置を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-132360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電源からの電力の供給が停止している期間中、移動体を駆動するモータが停止しているため、不揮発性メモリは、低い温度条件下で累積回転数が記憶される一方、電源からの電力の供給が再開されてモータが作動すると、周辺温度が上昇するため、不揮発性メモリは高温に晒される。ここで、不揮発性メモリは、強誘電体コンデンサで保持される電荷を利用するため、データを記憶した際の温度より高い温度に晒されると、データを記憶しておく時間が短くなる。それ故、電源からの電力の供給が停止している期間中に不揮発性メモリが記憶したデータが、電源からの電力の供給が再開されてモータが作動すると、周囲温度が上昇し、不揮発性メモリが記憶したデータが消失することがある。かかるデータの消失が発生すると、以降、回転軸の多回転絶対角度位置を検出することができなくなるという問題点がある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、不揮発性メモリの温度が上昇した場合でも、移動体の移動回数に対応するカウント値を不揮発性メモリに記憶させておくことのできるエンコーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明を適用したエンコーダ装置は、電源から電力が供給されている期間中、移動体の一定間隔毎の移動回数、および前記間隔内における位置の検出結果に基づいて絶対位置を検出する第1エンコーダと、前記電源からの電力の供給の有無にかかわらず、前記移動体の前記一定間隔毎の累積移動回数をカウントして不揮発性メモリに記憶しておく第2エンコーダと、を有し、前記電源からの電力の供給が停止する際、前記第1エンコーダに駆動電圧が供給される所定の時間のバックアップ時間が設定されており、前記電源からの電力の供給が開始された際に前記不揮発性メモリから読み出した前記累積移動回数のカウント値と前記電源からの電力の供給が開始された以降に前記第1エンコーダでカウントされた前記移動回数のカウント値とを加算した累積カウント値に基づいて前記絶対位置を算出し、前記電源からの電力の供給が停止した後の前記バックアップ時間において、前記不揮発性メモリが記憶している前記カウント値を前記累積カウント値に書き換え、前記不揮発性メモリに対しては、前記電源からの電力の供給が開始された以降、前記不揮発性メモリが書き換えられた温度より高い予め設定された雰囲気温度に達したタイミングで、前記第2エンコーダでの前記カウント値が更新されることを特徴とする。
【0007】
本発明において、第2エンコーダは、電源からの電力の供給の有無にかかわらず、移動体の一定間隔毎の累積移動回数をカウントして不揮発性メモリに記憶しておくため、第1エンコーダは、電源からの電力の供給が開始された際に不揮発性メモリから読み出したカウント値と電源からの電力の供給が開始された以降に第1エンコーダでカウントされた移動回数のカウント値とを加算した累積カウント値に基づいて絶対位置を算出することができる。また、電源からの電力の供給が再開された以降、不揮発性メモリの温度が上昇してデータが消失した場合でも、電源からの電力の供給が停止する際、不揮発性メモリが記憶しているカウント値を累積カウント値に書き換えるため、移動体の移動回数に対応するカウント値を不揮発性メモリに正確に記憶させておくことができる。
【0008】
本発明において、前記第1エンコーダは、前記電源からの電力の供給が停止した後の前
記バックアップ時間において、前記不揮発性メモリが記憶している前記カウント値と前記累積カウント値とを比較し、前記不揮発性メモリが記憶している前記カウント値と前記累積カウント値とが相違しているときには、前記不揮発性メモリが記憶している前記カウント値を前記累積カウント値に書き換え、前記不揮発性メモリが記憶している前記カウント値と前記累積カウント値とが一致しているときには、前記不揮発性メモリが記憶している前記カウント値の書き換えを行わない態様を採用することができる。
【0009】
本発明において、前記移動体は、回転部材であり、前記第1エンコーダおよび前記第2エンコーダはロータリエンコーダであり、前記一定間隔毎の移動回数は、前記回転部材の回転数であり、前記間隔内における位置は、前記回転部材の角度位置であり、前記絶対位置は、前記回転数および前記角度位置からなる多回転絶対角度位置である態様を採用することができる。
【0010】
本発明において、前記第2エンコーダは、前記移動体と連動して移動する磁石が発生する磁界の変化に対応するパルス信号を出力する磁気素子と、前記パルス信号から駆動電圧を生成する電源回路と、前記駆動電圧および前記パルス信号を利用して、前記累積移動回数をカウントして、前記不揮発性メモリに記憶されている前記カウント値を更新するカウント処理部と、を有する態様を採用することができる。
【0011】
本発明において、前記磁気素子は、ウィーガンドワイヤである態様を採用することができる。
【0012】
本発明において、前記第1エンコーダは、前記移動体と連動して移動する磁石が発生する磁界の変化に基づいて、前記移動体の移動量をカウントする態様を採用することができる。
【0014】
本発明において、前記不揮発性メモリは、前記移動体を駆動するモータの近傍に配置されている態様を採用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明において、第2エンコーダは、電源からの電力の供給の有無にかかわらず、移動体の一定間隔毎の累積移動回数をカウントして不揮発性メモリに記憶しておくため、第1エンコーダは、電源からの電力の供給が開始された際に不揮発性メモリから読み出したカ
ウント値と電源からの電力の供給が開始された以降に第1エンコーダでカウントされた移動回数のカウント値とを加算した累積カウント値に基づいて絶対位置を算出することができる。また、電源からの電力の供給が再開された以降、不揮発性メモリの温度が上昇してデータが消失した場合でも、電源からの電力の供給が停止する際、不揮発性メモリが記憶しているカウント値を累積カウント値に書き換えるため、移動体の移動回数に対応するカウント値を不揮発性メモリに正確に記憶させておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明を適用したエンコーダ装置の磁界発生部等の構成を模式的に示す説明図。
図2図1に示すエンコーダ装置の電気的構成を示すブロック図。
図3図1に示す磁気素子から出力されるパルス信号の説明図。
図4図1に示すエンコーダ装置の動作を示す説明図である
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して、本発明を適用したエンコーダ装置を説明する。
【0018】
(エンコーダ装置1の構成)
図1は、本発明を適用したエンコーダ装置1の電気的構成を示すブロック図である。図2は、図1に示すエンコーダ装置1の磁界発生部等の構成を模式的に示す説明図である。図3は、図1に示す磁気素子60から出力されるパルス信号の説明図である。
【0019】
図1および図2に示すように、本形態のエンコーダ装置1は、電源30から電力が供給されている期間中、移動体10の一定間隔毎の移動回数、および前記間隔内における位置からなる絶対位置を検出する第1エンコーダ40と、電源30からの電力の供給の有無にかかわらず、移動体10の一定間隔毎の累積移動回数をカウントして、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)等の不揮発性メモリ85に記憶しておく第2エンコーダ50とを有している。
【0020】
本形態において、移動体10は、モータ11の回転軸等の回転部材15であり、第1エンコーダ40および第2エンコーダ50はロータリエンコーダ41、51である。従って、移動体10の一定間隔毎の移動回数は、回転部材15の回転数であり、間隔内における位置は、回転部材15の角度位置であり、絶対位置は、回転部材15の回転数および角度位置から算出された多回転絶対角度位置である。それ故、移動体10の累積移動回数は、回転部材15の累積回転数である。
【0021】
ここで、不揮発性メモリ85は、強誘電体コンデンサで保持される電荷を利用するため、データを記憶した際の温度より高い温度に晒されると、データを記憶しておく時間が短くなる。また、本形態において、エンコーダ装置1は、モータ11の近傍に配置されており、それ故、不揮発性メモリ85は、モータ11の近傍に位置する。従って、モータ11が作動した際に発生する熱が不揮発性メモリ85に伝わりやすい。
【0022】
本形態において、第1エンコーダ40および第2エンコーダ50は磁気式のロータリエンコーダである。より具体的には、エンコーダ装置1は、回転部材15と一体に回転する磁界発生部20を有しており、磁界発生部20は、第1エンコーダ40において回転部材15の回転数をカウントするための第1磁界を発生させる第1磁石26と、第2エンコーダ50において回転部材15の回転数をカウントするための第2磁界を発生させる第2磁石27とを備えており、第1磁石26および第2磁石27はいずれも、回転部材15に同軸状に保持されている。従って、磁界発生部20(第1磁石26および第2磁石27)は、回転部材15とともに軸線L周りに一体に回転する。第1磁石26は、例えば、軸線L
周りにS極とN極が1極ずつ設けられた円板状磁石である。第2磁石27は、例えば、軸線Lの延在方向に軸線を向けた円柱状磁石であり、軸線Lの延在方向の一方側部分271および軸線Lの延在方向の他方側部分272には、軸線L周りにS極とN極が2極ずつ設けられている。但し、軸線Lの延在方向の一方側部分271と軸線Lの延在方向の他方側部分272とでは、軸線Lの延在方向で隣り合う部分が異なる極に着磁されている。
【0023】
第1エンコーダ40は、電源30から電力が供給されている期間中、回転部材15が回転した際に変化する第1磁石26の磁界(第1磁界)の変化を検出する磁気センサ46と、磁気センサ46からの出力に基づいて回転部材15の回転等を検出するデータ処理部42とを有している。本形態において、磁気センサ46は、磁気抵抗パターン460を備えた磁気抵抗素子からなる。データ処理部42は、予めメモリ等に格納されたプログラムによって動作するCPU等を備えており、磁気センサ46からの出力に基づいて回転部材15の回転量をカウントするカウント部47と、磁気センサ46からの出力に基づいて回転部材15の角度位置を算出する角度位置演算部48とを有している。また、データ処理部42は、上位の制御装置(図示せず)からの要求に基づいて、回転部材15の累積回転量、および回転部材15の角度位置を出力する。従って、上位の制御装置では、多回転絶対位置を算出することができる。
【0024】
第2エンコーダ50は、回転部材15が回転した際に第2磁石27の磁界(第2磁界)の変化に対応するパルス信号を出力する磁気素子60と、磁気素子60から出力されたパルス信号から駆動電圧Vddを生成する電源回路70と、電源回路70によって生成された駆動電圧Vdd、および磁気素子60から出力されたパルス信号を利用して、回転部材15の累積回転数をカウントするとともに、カウント値を不揮発性メモリ85に記憶されるカウント処理部80とを有している。従って、第2エンコーダ50は、電源30からの電力の有無にかかわらず、回転部材15の累積回転数をカウントすることができる。
【0025】
電源回路70は、磁気素子60から出力されるパルス信号を整流する整流回路71と、平滑用のコンデンサ72とを有している。カウント処理部80は、磁気素子60から出力されるパルス信号から回転部材15の回転に対応するパルスを判定する判定回路81と、判定回路81で判定されたパルス数(回転数)をカウントして不揮発性メモリ85に記憶されている累積移動量を更新する計数回路82とを有するとともに、不揮発性メモリ85を含んで構成されている。計数回路82は、予めメモリ等に格納されたプログラムによって動作するCPU等を備えている。
【0026】
ここで、磁気素子60は、第2磁石27の近傍において周方向で、電気角で90°離間する位置に配置された2つのウィーガンドワイヤ61、62からなり、大バルクハウゼン効果を発揮する。ウィーガンドワイヤ61、62は、強磁性ワイヤ66にコイル67が巻かれた素子であり、例えば、コイル67で直流磁界(バイアス磁界)を与えておき、外部から反対向きの磁界を与えると磁束が反転してコイル67にパルス電圧が発生する。従って、電源回路70において、コイル67からの出力を整流回路71によって整流するとともに、コンデンサ72で平滑すると、直流の駆動電圧Vddを生成して、カウント処理部80に供給することができる。それ故、第2エンコーダ50ではバックアップ用のバッテリを必要としない。
【0027】
また、2つのウィーガンドワイヤ61、62は各々、図3に示すように、出力するパルスの位置が、回転部材15の角度位置と同期する2箇所に配置されている。従って、電源回路70は、直流の駆動電圧Vddをカウント処理部80に安定して供給することができるとともに、ウィーガンドワイヤ61、62から出力するパルスを判定回路81で判定すれば、回転部材15の回転数を検出することができる。
【0028】
(動作)
図4は、図1に示すエンコーダ装置1の動作を示す説明図である。以下に説明する動作は、第1エンコーダ40のデータ処理部42に設けられたCPU、および第2エンコーダ50の計数回路82に設けられたCPU等の制御の下、実行される。まず、図4に示すように、本形態のエンコーダ装置1において、電源30からの電力の供給が停止している期間中(時間T1)、第2エンコーダ50は、回転部材15の回転を監視し、累積回転数のカウント値(C0)を不揮発性メモリ85に記憶させる。従って、電源30からの電力の供給が停止している期間中、外力によって回転部材15が回転した場合には、かかる回転も考慮した実際の累積回転数のカウント値(C0)を不揮発性メモリ85に記憶させる。
【0029】
次に、時間T2において、電源30からモータ11および第1エンコーダ40に対して電力の供給が開始されると、回転部材15は、基準となる角度位置に戻されてから駆動される。また、電源30からの電力の供給が開始されると、第1エンコーダ40のデータ処理部42は、シリアル通信によって、不揮発性メモリ85から累積回転数のカウント値(C0)を読み出す。
【0030】
次に、時間T3において、電源30からの電力の供給が開始された以降、モータ11が作動して回転部材15が回転すると、モータ11の周囲温度が上昇する。その間、第1エンコーダ40において、カウント部47は、不揮発性メモリ85から読み出された累積回転数のカウント値(C0)と、現時点までに磁気センサ46によってカウントされた回転部材15の回転数のカウント値とを加算した累積カウント値(C1)を算出する。また、角度位置演算部48は、回転部材15の角度位置を算出する。従って、データ処理部42は、現時点における回転部材15の多回転絶対角度位置に関する情報を上位の制御装置に出力することができる。
【0031】
一方、第2エンコーダ50において、カウント処理部80は、磁気素子60から出力されたパルス信号に基づいて、回転部材15の累積回転数のカウントを継続する。本形態においては、電源30からの電力の供給が開始された以降、予め設定されたタイミング(時間T31)で、不揮発性メモリ85に対して、第2エンコーダ50でのカウント値が更新される。例えば、第2エンコーダ50では、不揮発性メモリ85に対して、電源30からの電力の供給が開始された以降、雰囲気温度が40℃になったタイミングで、第2エンコーダ50でのカウント値が更新される。
【0032】
その後、時間T4において、電源30からの電力の供給が停止したとする。本形態では、電源30からの電力の供給が停止する際、所定の時間、第1エンコーダ40に駆動電圧が供給されるバックアップ時間が設定されている。従って、データ処理部42は、電源30からの電力の供給が停止した後のバックアップ時間において、不揮発性メモリ85が記憶しているカウント値(C0)を、カウント部47で算出した累積カウント値(C1)に書き換え、時間T1に戻る。
【0033】
本形態において、データ処理部42は、電源30からの電力の供給が停止した後のバックアップ時間において、不揮発性メモリ85が記憶しているカウント値(C0)と、カウント部47で算出した累積カウント値(C1)とを比較し、不揮発性メモリ85が記憶しているカウント値(C0)と、カウント部47で算出した累積カウント値(C1)とが相違している場合には、不揮発性メモリ85が記憶しているカウント値(C0)を、カウント部47で算出した累積カウント値(C1)に書き換え、不揮発性メモリ85が記憶しているカウント値(C0)と、カウント部47で算出した累積カウント値(C1)とが一致している場合には、不揮発性メモリ85が記憶しているカウント値(C0)の書き換えを行わない。
【0034】
(本形態の主な効果)
このように本形態のエンコーダ装置1において、第2エンコーダ50は、電源30からの電力の供給の有無にかかわらず、移動体10(回転部材15)の一定間隔毎の累積移動回数(回転数)をカウントして不揮発性メモリ85に記憶しておくため、第1エンコーダ40は、電源30からの電力の供給が開始された際に不揮発性メモリ85から読み出したカウント値(C0)と電源30からの電力の供給が開始された以降に第1エンコーダ40でカウントされた移動回数(回転数)のカウント値とを加算した累積カウント値(C1)に基づいて多回転絶対角度位置を算出することができる。また、電源30からの電力の供給が再開された以降、不揮発性メモリ85の温度が上昇してデータが消失した場合でも、電源30からの電力の供給が停止する際、不揮発性メモリ85が記憶しているカウント値(C0)を累積カウント値(C1)に書き換える。このため、不揮発性メモリ85は、データを記憶した際の温度より高い温度に晒されると、データを記憶しておく時間が短くなるという問題を有する場合でも、移動体10の移動回数に対応するカウント値を不揮発性メモリ85に正確に記憶させておくことができる。特に本形態では、モータ11の近傍に不揮発性メモリ85が配置されているため、不揮発性メモリ85の温度が上昇しやすいが、この場合でも、移動体10の移動回数に対応するカウント値を不揮発性メモリ85に正確に記憶させておくことができる。
【0035】
[他の実施形態]
上記実施形態では、第1エンコーダ40の磁気センサ46として磁気抵抗素子を用いたが、磁気センサ46として、1対のホール素子を用いた態様や、一対のホール素子と磁気抵抗素子とを用いた態様であってもよい。
【0036】
上記実施形態では、磁界発生部20に第1磁石26および第2磁石27を設けたが、磁界発生部20に1つの磁石を設け、1つの磁石からの磁束によって、磁気センサ46および磁気素子60が動作する態様であってもよい。
【0037】
上記実施形態では、第1エンコーダ40および第2エンコーダ50がロータリエンコーダであったが、第1エンコーダ40および第2エンコーダ50がリニアエンコーダである場合に本発明を適用してもよい。
【0038】
上記実施形態では、第1エンコーダ40および第2エンコーダ50が磁気式のエンコーダであったが、第1エンコーダ40および第2エンコーダ50の一方、あるいは双方が光学式のエンコーダである場合に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…エンコーダ装置、10…移動体、15…回転部材、20…磁界発生部、26…第1磁石、27…第2磁石、28…磁石、30…電源、40…第1エンコーダ、42…データ処理部、46…磁気センサ、47…カウント部、48…角度位置演算部、50…第2エンコーダ、60…磁気素子、61、62…ウィーガンドワイヤ、66…強磁性ワイヤ、67…コイル、70…電源回路、71…整流回路、72…コンデンサ、80…カウント処理部、81…判定回路、85…不揮発性メモリ、460…磁気抵抗パターン
図1
図2
図3
図4